トムプロジェクト

2015/12/28
【第767回】

今日は仕事納め...今年もいろんなことがありました。何度も危機がありまして、おいらのおめめもウサギちゃん状態になりました。こりゃ駄目だ!と思いきや無事乗り越えることができたのも本当に芝居にかかわっているすべての人たちの必死な力によるものだと思っています。この必死の力も、こちらが必死の力で何とかしようと思ったから生まれた力だと思っています。すべからく、己の思い、アクションがそのまま自分に返ってくる自然の原理だと思います。何事も最後まで諦めてはなりません...考えてみれば生きることは選択の連続です。しかも瞬時に判断しなくちゃいけないこともあります。その時の判断で可否が決まる局面が多々あると思うのだが、その根拠になるのは、やはり日々のモノの見方、考え方だと思います。この世の中のほとんどが表層だけで動いているだけに、モノの本質が見えにくくなっているのも事実です。そんな複雑怪奇、巧みに仕掛けられてる現代社会で本質を掴み取るのは至難の業かもしれませんね...そんななか、おいらは決してあきらめず今日もアンテナ百本立てながら、眼を皿にして路上を車中を公園を、はたまた他者が仕掛けたホールに闖入し、なんでだろう?どうしてだろう?の旅をしています。この旅はおいらにとってかけがえのない楽しい旅です。

なんだかんだいいながら今年も精一杯生きることができました。おいらにかかわった人たちに感謝の気持ちで一杯です。

では、みなさん良い年を!

767.jpg

裸木

2015/12/25
【第766回】

昨日、風間杜夫、平田満コンビが33年ぶりに復活した、つかこうへいの名作「熱海殺人事件」を新宿紀伊國屋ホールで観劇。風間杜夫66才、平田満62才、こんな歳でも2時間速射砲のごとく吐き出す台詞にただただ圧倒されました。つかこうへい独特の文体、差別用語有り、げすな言葉に、自虐、加虐、時折放つ時代への反逆精神、まさしくつかワールドの集大成みたいな作品であった。共演者のつかさんの愛娘で元宝塚娘役トップ・愛原実花、若手のノリノリ俳優の中尾明慶も大奮闘。二人のベテラン俳優に遜色ない素晴らしい演技であった。新感線の演出家いのうえひでのりも、自らの演劇の原点である作家の作品だけにその思い入れがたっぷりに込められていたような気がした。

でも、チケット¥9000は高くありませんか?こんな高いチケットも発売と同時に23ステージ分完売しちゃうんだから、たいしたたまげたの世界でございます。

終演後、杜夫ちゃんと一杯やったんだが、さすがにあれだけの台詞を喋っただけに、いつもの饒舌さを押さえ、明日の2ステージの備えているようでもありました。

新宿東口アルタの前では、いつものようにストリートミュージシャンがイブの夜を盛り上げていました。懐かしいスペインの曲が流れてきたので、思わずカンパしました。どんな人にも素敵なイブでありますようにとの願いを込めて...

766.jpg

Merry Christmas

2015/12/21
【第765回】

今年も残すところ11日になってしまいました...今年はおいらの友人、知人を含め多くの人が亡くなりました。死者とは、もう話すことができないと思いきや、おいらが今日こうして書いている言葉も亡くなった人たちにも届いていると思います。文字を考え記す行為は、おいら自身の表現であるよりも、どこからかおいらに訪れる言葉を、聞きたい感じたい人に届ける作業のような気がします。おいらが書いた文字が誰にも読まれていないという事実があれば、この言葉はかなり貧弱な言葉になるのではなかろうか...おいらと他者との言葉の通路があるからこそ、その通路で事の葉が付き、言葉として成立するのではなかろうか...おいらが発する言葉、文字は亡くなった人たちにも届いている筈だ...先週の週末に観た2本の芝居の感想を知人に聞かれ、答えた言葉が10月に亡くなった友人である演劇評論家、村井健が一瞬憑依したかのような発言をしてしまった感がある。おいらと村井が言葉の通路を往来していることがすこぶる嬉しかった。人は現前の生きてる身体に、さもすると安心してしまい真実を見逃してしまいがちだ。

すべてのみえるものは、みえないものにさわっている。

きこえるものは、きこえないものにさわっている。

感じられるものは感じられないものをさわっている。

おそらく、考えられるものは、考えられないものにさわっているだろう。

765.jpg

クリスマスイルミネーション2

 

2015/12/18
【第764回】

新宿の進学予備校の近くにサンタの格好をしているホームレスのおじさんが居た。このサンタさんのところに4人ばかりの少年少女が集まっている。好奇心旺盛なおいらは近くに寄り様子を窺う。なにやらおじさんとお話しをしているのだが、終始双方にこやかな表情で打ち解けてる感じだ。すると、子どもたちが手を合わせてサンタおじさんにお願いをしている。おじさんも仕方なく頷くと、子どもたちは一斉に、おじさんの生活用品一式が入ってると思われる頭陀袋にサインをし出した。おじさんは何とも嬉しそうな表情でサインをしている子どもたちの頭をなでている。こりゃなんだ?最後は子どもたちがおじさんと握手をして立ち去っていった。この奇妙な光景においらが突撃取材をしないわけはない...おじさんの前にたちはだかると、あのにこやかだったサンタおじさんの顔色が険しくなった。「いやいや、怪しいもんじゃござんせん(当然、あんたのほうが怪しいだろうとおいらは思っとりますが)何かをやられてる方ですか?」するとおじさん、おいらの顔をまともに見ることもなく首を振る。ホームレス生活も長いのか手も顔も決して綺麗とは言えないし、サンタの衣裳も随分とくたびれている。あんまりしつこく聞くのも失礼だと思い、最後に「記念に写真一枚とらせて頂けませんか?」と断られるのを覚悟して頼んでみたのだが、なんとなんと、それまでの迷惑そうな表情から一転して喜々として要望に応えてくれたからおいらもびっくりこきました。

それにしても、このおじさんはなんなんだろう?おいらが推測するに、このおじさんの頭多袋にサインした者が難関校の受験に合格し、その験を担いで子どもたちはサンタさん参りをしているのではなかろうか...と思いながらサンタおじさんの撮影した写真を確認したのだが、なんと消えてるではありっませんか!いや、このおやじひょっとしたら神かもしれませんぞ...

764-1.jpg764-2.jpg東京オペラシティ
クリスマスイルミネーション

2015/12/16
【第763回】

今日は朝から嬉しいニュースが飛び込んできました...第50回紀伊國屋演劇賞個人賞に高橋長英さんの受賞が決定しました。今年の2月にトム・プロジェクトがプロデュースした古川健作・日澤雄介演出「スィートホーム」の演技が評価されての受賞である。長英さんとは2006年に東憲司作・演出「骨唄」に出演して頂いてからの付き合いである。この作品が4本目になるのだが、おいらも大好きな役者、いや人間長英さんが大好きなのである。一見、小難しく取っつきにくい感じがするのだが、おっとどっこい大変面白い人なのである。酒が入るとおいらと物真似合戦が始まるのである。おいらが笠智衆、美輪明宏の物真似をすると、負けじと長英さんが仲代達矢、森進一で勝負を挑んでくる。酒の場では決着がつかず帰りの電車の中でも、人目も憚らずアクションを交えながらやり出す始末。あのインテリジェンスを漂わす長英さんからは、およそ想像がつかない。長英さんは徹底した庶民派である。地方に行っても必ず名もない小さな居酒屋を好む。大分県中津市に作家・松下竜一さん夫妻を基にした芝居、ふたくちつよし作・演出「かもめ来るころ~松下竜一と洋子~」を公演に行ったときも、中津駅前の小さなカウンターだけのうどん屋さんで昼間から安い焼酎とおでんを食べながら、ぐでんぐでんに酔っぱらったことがある。しかし、こと環境問題になると厳しい顔で地球を汚す輩を徹底的に打ちのめす。権力にもお金にも媚びることなく、たんたんと役者の仕事を続けてきた長英さん、受賞して当然である。新年、授賞式の後の飲み会では長英さんの物真似新ネタあるのかな?おいらも負けじと考えなきゃならんのかな...

763.jpg

スィートホーム

2015/12/14
【第762回】

「鴨居玲 死を見つめる男」を読了...独自の絵画を確立した画家を支えた、日動画廊の長谷川千恵子さんが書いた本である。今年が没後30年、1985年9月7日に自殺、享年57歳。彼の絵を見てスペインの画家ゴヤを連想した。勿論、生きた環境、時代は違えども、その根底に流れている精神構造は同じものを感じた。41歳で安井賞を受賞、いくら描いても満足できず世界あちこちにアトリエを求めていった放浪の画家でもある。繊細でなにごとにも夢中になる破滅型の人生ではあったが、お茶目な面も多々あり、周囲の人間を煙に巻く遊び心をも持ち合わせていた。彼の重厚かつ深く沈んだ絵を見ていると、彼の内部に潜むとてつもない闇を感じてしまう。一つの作品を完成しても次なる闇に向かってしまう絵描きの業。どんなにも酒を飲み尽くし、楽しい時を過ごしても孤独と苦悩が押し寄せる。他人の心に潜む暗部が気になって仕方が無かったのであろう...アートを追求していくと、その作品が己の化身となり、表現したモノを批評しだし、もう一人の自分が出現するという厄介な事態に陥ってしまう。まさしく芸術という魔性に取り憑かれた画家である。だからこそ、人を惹き付けるのである。己の心身を削るように描き続けた作品が、見る者の感性を揺さぶるのは至極当然のことであろう...そんな彼が唯一心を許し解放できたのがスペイン・バルデペーニャスでの日々であった。おいらにはよく分かる、あの燦々と輝く太陽と、日々祝祭のごとく人生を謳歌している人達の輪の中に居ると、全てのことが許され、己に巣くう闇がなんと可愛げで愛しいモノであったかを気づかさせてくれる。

この物欲文化に覆い尽くされ悲鳴をあげてる世界の諸君、是非スペインアンダルシアのひなびた田舎に行って、もう一度ニンゲンのあるべき姿を学んで欲しい!ほんとですよ...

762-1.jpg

「ピエロ」1983年作

762-2.jpg

「肖像」1985年作

2015/12/11
【第761回】

野坂昭如さんが亡くなった...野坂さんで想い出すのは、今から43年前くらいかな、新宿ゴールデン街の名物ママで有名な「前田」で飲んでたときに隣に座っていたのが野坂さん。ニヤついていたのだが何故かダンディな佇まいであった。前田のママは佐賀県の出身で、おいらの母の妹と同級生であったことで大変可愛がって貰った。普通だったら、とても入れて貰えない敷居の高い店であった。飲み代が高いのではなく、この店に一歩踏み込んだら知性、品性が問われ、それなりの理論武装、己の信念を抱いて酒を飲まないとママの厳しい意見が飛んでくるのである。この日も、野坂さんがニヤついた顔で女性論を語っていたのだが、すかさずママが「野坂、えらそうなこと抜かすな...」と、一刀両断。しばらく野坂さんも持論をあの早口で喋っていたのだが、最後には頭に来て帰ってしまった...この店で怒られた有名人は数知れない。世間では先生ともてはやされた著名人も、この店ではただの人である。こんな気骨のある店があったゴールデン街も、今や観光名物地になっちまっただよ。まず、おのぼり外人観光客がカメラ片手にうろちょろしとります。若い経営者が増えライト感覚になっちゃいました。まあ、無くなるよりはいいんだが、あの無骨で気骨のある店が少なくなっていくのが寂しい気がします。

昭和がどんどん遠くなっていきます...野坂さんのシャイで遊び心満点の自己演出、好きだったな。そして原点にあるのは戦争体験、死の直前まで最近の政府のきな臭い動きに警告を発していた「戦争などあり得ないと思い込んでいるうちに、気がつけば戦争に巻き込まれている。戦争とはそんなものだ」

野坂さん天国でもふざけた顔で唄ってんだろうな「マリリン・モンロー・ノー・リターン」

♪ソソソクラテスかプラトンか,ニニニーチェかサルトルか...

761.jpg

今年もそろそろ終りだニャー

2015/12/09
【第760回】

日本のJAZZもいけまっせ...JAZZと言えば、やはりアメリカが本場でございます。でも、時々掘り出し物にぶつかるときがございます。今回は『BUENOS AIRES 1952』大橋祐子トリオ、いいんですな!一曲目の「黒い瞳」から、ぞくぞくしちゃいます。祐子さんのピアノもさることながら、佐藤忍のベース、守新治のドラムもなかなかのサポートと言うより、きっちりと自己主張してるんです。昨日は、日本酒に子鰯をちょろりと焼いたモノをつまみながら、たっぷりと我が家のオーディオシステムで堪能しました。

JAZZに日本酒に小鰯、これがまた合うんですな。まさしく和洋折衷、東洋の文化と西洋の文化が小さな空間で、ほどよくブレンドして、おいらの心身を心地よく解してくれます。

若い頃、年とったらJAZZ喫茶をやろうと2000枚ほどのLPレコードを、バイトで稼いだなけなしのお金を掻き集め買い漁った時代から、今尚、JAZZをこよなく愛しているのでございます。

今は少なくなったJAZZ喫茶を、全国各地追い求めているおいらの姿は、まるで少年のようでもあります。

760.jpg

よかですばい!

2015/12/07
【第759回】

「東おんなと京おんな」昨日、東京公演終わりました。二人芝居は本当に難しいですね。二人だけのバトル、どちらかの波長が狂うと、なかなか取り戻すことが出来ません。岡本麗さんと鶴田真由さんの緊張感いかばかりか...でも役者にとっては、とてもやりがいがあると思います。日々の出来をリアルタイムで感じ取ることが出来るんですから...芝居の出来不出来は、お客の反応でよく分かります。お客が舞台に身を乗り出してくればしめたモノですが、背を引っ張られるような状態になると、なかなか取り戻すことができません。事実、芝居よりも重い日常を背負いながら、わざわざ劇場に足を運んでくださる人達に、それはそれは余程の作品を提供しなければ満足させることは出来ません。

東京の街も、ようやく秋らしくなってきましたね...例年よりも紅葉の時期が遅くなってる気がします。地球温暖化は一段と進み、自然の営みに大きな変化が起きてます。先日の世界会議でも、大国と発展途上国との意見がくいちがい悲観的な未来を想像するしかありません。利潤、便利、贅沢大好きな愚かな人間が確実に地球滅亡へのプログラムを遂行しようとしています。待ったをかけんといかんですばい!

759.jpg

紅葉3

2015/12/03
【第758回】

えらいこっちゃ...12月1日、北海道で「南阿佐ヶ谷の母」の千秋楽。12月2日には東京で「東おんなと京おんな」の初日。「だいだいの空」も新潟で12月1日の2ステージを終え帰郷。賑やかしい師走のスタートでした。日本全国、こんなにあっちゃこっちゃで公演してるところも珍しいんじゃありません。芝居はナマモノでございますので神経が休まる暇がございません。「南阿佐ヶ谷の母」の件がありますんで、「東おんなと京おんな」の稽古中に女優さんが風邪なんかにかかっちゃうと、インフルエンザ?なんて心配してしまいます。

芝居屋さんは長生きできないかも...なんて考えてもしょんなかですばい。誰が采配してるか知らんけど、この世に起きるすべての事象はケセラセラ、自然の神さんに身を任せるしかありません。でも己のチカラで少しは軌道修正できるかもしれんとニンゲンは日々自分磨きをするんでございます。考えてみれば、今ある己の姿はこれまで自分の歩いてきた結果ですからね...怠ければ当然の今が待ってますことよ...といって、四角四面の真面目が良いってもんじゃありません。この世、遊び心を失ったら色気もくそもありませんことよ...

758.jpg

紅葉

2015/11/30
【第757回】

今日は11月30日、今年も、いよいよ残すところ1カ月となりました。本当に月日が流れ去る速度が年々早くなっている気がします。残された人生なんて考える歳にもなりました。

でも、人間、特に男はいくつになってもガキですな...いい意味ではいつも少年のような夢を追いかけながら浮遊しています。子供も産めない男にとっては夢とロマンと冒険にゆだねるしかないんでしょうね。でも、これすら諦めてグダグダと時間を垂れ流している男どもがいるんですから情けなかです!ただの働き蜂で終わるのか、飲兵衛でごまかすのか...いやいや、この世に生まれたからには世の中になんかお返しせんかい!

この前、美しい白馬を見てきました。馬の目は、静かですべてを達観したような感じがします。それはあくまで人間から見た感じ方で、馬はまた違うとらえ方をしているのかもしれません。こんなわけで、この果てしない宇宙の中に生息している生き物の一種でしかない人間なんだから、もう少しは謙虚に生きないかんですばい...新聞広げると、いつものようにあちこちでドンパチの記事。いつの世も弱い者が被害にあってます...死ぬまで言い続けたい!憎悪からは何も生まれない...

757.jpg

白馬

2015/11/27
【第756回】

昨日、熊本県荒尾市での「南阿佐ヶ谷の母」の公演に行ってきました。荒尾市は福岡県大牟田市三池炭鉱と並び炭鉱で繁栄した時期がありました。万田坑は平成10年に国の重要文化財にも指定され、日本政府からユネスコへ世界遺産候補として正式に推薦され、平成27年の世界文化遺産登録を目指しています。駅前には、そのモニュメントが建っていました。その駅前からタクシーで会館に行ったのですが、暗い夜道に人影もなく、果たして今日の公演の集客は大丈夫だろうか?という不安が過りました。荒尾総合文化センターに着くと、その不安を吹き飛ばすように、続々と観客が集まっているではありませんか...公演は無事、とんとん拍子で幕を下ろし、終演後キャストの皆さんと地元の馬刺しを中心においしい酒を酌み交わし、ラスト2ステージよろしくということで別れました。

九州に行くときは、97歳になる母に会うのが楽しみです。さすがにあと何年というところまでやってきました。おいらの顔を見ると嬉しそうな顔をします。一番心配していた息子が晩年親孝行したんで喜んでいるんでしょう...苦難の引き揚げから夫を亡くし5人の子供を育て上げた母は偉大です。こんな母のためにも一人前の男にならんといかんばい!という思いで生きてきました。別れるとき母の手を握ると、強く握り返し「酒飲みすぎたらいかんよ...」といつものアドバイスを返してきました。

756.jpg

母が描いた仏画

2015/11/24
【第755回】

先週の土曜日、10月5日に亡くなった演劇評論家・村井健のお別れの会が、紀伊國屋ホールロビーで行われた。村井は生前、建前、権威、馴れ合いを非常に嫌っていた。その村井の意思を尊重し、お偉い人の挨拶もなし、来てくれた人が小さな紙に簡単なメッセージを書き、遺影の前に置くだけのシンプルなものだった。200人ほどの人が、村井に様々な思いを伝えた。そのあとは、希望者だけで近くの中華レストランの地下に三々五々集まり談笑。130の人たちが村井を偲んでいた。村井の娘さん夕さん、息子さん空君も嬉しかったのではなかろうか...

村井は、本当に武骨で生き方が不器用ではあったが、真の侍であった。藤沢周平の小説に出てくる登場人物を彷彿させる。おいらと一度だけ激論したことがある。それは学生運動が激しい大学時代の時である。村井は全共闘の闘士でありリーダーでもあった。おいらに再三デモへの参加を呼び掛けてきたが、おいらは断り一人で闘うと言ったところ、村井は日和るのか!と責めたので、おいらは「数の力なんて信用してないし、ゲバ棒と投石で世の中変わるわけないだろう...所詮、学生なんて親のすねかじりばっかりだろう!俺は俺の生きてきた人生を信じて闘うし、組織に組することもないから二度と誘うな!」こう激しく口論したあと暫くは会うこともなかった。その後、彼が演劇評論家としてデビューして再会を果たした。

村井の笑顔は素敵だったな...特に怒った後の笑顔、お前は本当はとっても優しい奴だったんだな...簡単に笑顔を見せると社会・ニンゲン思い上がるから、仏頂面の演技してたんだな。

村井!もう彼岸の世界に逝ったんだからいつもの素敵な可愛い笑顔でのんびりしてくれ。

村井!50年間ありがとう...おまえに出会えて嬉しかったよ!

755.jpg

お前のこと忘れないよ!

2015/11/20
【第754回】

最近知人からよくこんなことを言われて困っています...「見ましたよ!驚きました...」いやいや、今BSテレビで、あの人気番組「鬼平犯科帳」が再放送され、おいらがかつら付けて盗賊役で出演しているのを見てびっくりしたみたいですな。今から22年前、おいらは役者なんかやっていないときに1本の電話が松竹からかかってきました「貞永方久監督指名であなたに出演して欲しい...」そう言えば20代の頃にやっていたアングラテント芝居を監督が観に来て誉められたことがあったっけな。でも、その時はただの風来坊、そんな人気番組を汚すことになったら監督に迷惑がかかるのではと思ったのだが、折角監督が声をかけてくれたのだからと出演を受諾。冬の京都太秦撮影所に馳せ参じた次第です。全くの無名の人物ながら監督指名の力は偉大で、床山さん、衣装さんにも虐められることなく、撮影時間待ちでドラム缶にくべられた薪で暖を取っていました。10人くらい取り囲んでいたのだが、おいらだけ黒装束のいでたちで革靴履いていたので、周囲の人から侮蔑の目で見られておりました。しまった!すべてが準備不足、履物も持って来てないし、衣装の下に着る下着もなし、ありゃらんらんの状態ながら、気持ちは十分に高揚しとりました...翌日、侮蔑の目で見てた俳優の態度ががらりと変わりました。おいらの役がゲスト主役の次ぐらいの役だったんでびっくりこいたんでしょうな。「どこの事務所に所属されてるんですか?」いやただの素人、素浪人でござんす...今にしてみれば、懐かしく楽しい時間でございました。数年前に貞永監督も亡くなり、お別れの会に出席し監督にお礼を行ってきました。
ちなみに、作品は、鬼平犯科帳 第4シリーズ 10話「密偵」でした。おいらの役は縄抜けの源七。

754.jpg

紅葉2015

2015/11/18
【第753回】

世界は、大惨事世界大戦に突入しました...憎しみの連鎖は本当に怖いし、果てしない泥沼状態を生み出します。唯々、武器商人を喜ばせるだけです。イラク戦争がきっかけでした、世界はバランスで成り立っています。政治、宗教、民族の違いがあって当然だし、よそ者が勝手に手を出したばかりに平行感覚を失い、被害者が加害者に変貌し取り返しのつかない結果を招きます...悲しいかな人間は歴史を学ぶことが出来ない生き物でしょう...不便を便利に変えたばかりに失ったモノは計り知れない。そんなに金が欲しいのか!そんなに権力を手に入れたいのか!そんなに見栄をきりたいのか!本当に悲しくなります...フランスが報復、「自由・平等 ・友愛」の国旗が泣いてます。テロとの戦い?テロの増大に繋がるのでは?

所詮、核を保持している国が、世界平和を唱えても嘘くさい...核と兵器のお金で、世界の困窮した人達をどれほど救えるか...やはり、愛する地球を滅ぼすのは癌細胞ニンゲンです。こんな時代だからこそ、少数でもいいから自然を愛し、人を慈しむ心優しい人間でありたい!

753.jpg

貧しくとも平和な世界

2015/11/16
【第752回】

ジャズ好きなおいらにとってたまらない映画観てきました。「セッション」ドラマーを目指す青年と熱血教師との一騎打ち。話は、実際に体験した恐怖のレッスンを基に脚本も書いた俊英デイミアン・チャゼル監督による作品。緊張感溢れるカメラワーク、効果的な音楽、何処にも居るような青年役のマイルズ・テラーのラストのドラム捌きは鳥肌モノ。日本の舞台演出家・蜷川幸雄を彷彿とさせる教師役のJ・K・シモンズが、これまたいいんですな。外国の俳優には、こんな実力、存在感を持ち合わせた俳優がうじゃうじゃ居るんでございます。役づくりしているのか、そのものなのか、虚像と実像を巧みに創造しているほんものの役者に拍手!1935年にデューク・エリントンが作曲したキャラバンが何度も流れるが、この映画を観て全く別物の音楽に聞こえてくるのも、この映画がもたらす人間ドラマの凝縮度からであろう。

それにしても、飯田橋ギンレイホールが放つ、珠玉の名画のラインアップ。敬意を表します。まさに、映画好きがある集まる聖地ですな。いい映画を見終わった後の、お酒が、これまた旨いんですな。名画と銘酒、これだから人生やめられませんな...

752.jpg

新宿御苑

2015/11/13
【第751回】

今年も残すところ一ヶ月半になってしまいました...新宿のお店もこれから年末に懸けて様々なデコレーションで街を華やかにしてくれるでしょう。中でも、伊勢丹の飾りは、さすが日本一のデパートらしく夢とロマンと遊び心で、道行く人を楽しませてくれます。お金もかかることとは思いますが、ここは思いっきり魅せつけて欲しいですな...その点、京王、小田急、高島屋は遅れをとっておりますな。京王デパートは、今やおばさん達の聖地になっています。一階の店に並ぶ、靴、傘、ショールなどなど小物用品の値札につけられた¥3000に吸い寄せられるように群がり漁っております。なんだか、本当に安いのか?ちょいと疑問を持たざるを得ないのだが、ここは集団心理をうまくついた商法でよござんす。

それにしても、今日の新宿の通りから聞こえてくる会話の半分近くは中国語。日本国の中国化もホントにホントになりますがな...

751-1.jpg

751-2.jpg

伊勢丹

2015/11/11
【第750回】

「南阿佐ヶ谷の母」昨日で無事、東京公演千秋楽を迎えることが出来ました...沖縄での、まさかの木の実ナナさんの骨折から心休まる日がありませんでした。能天気なおいらに、たまにはハラハラドキドキせんといかんばい!とのお達しがあったんでしょうな。でも今回はきつかったな...でも強力スタッフ、キャストの結束で何とか乗り越えられましたな。でも、まだまだ油断は出来ません。これから旅に出るんでございます。11月14日から12月1日まで東北、関西、九州、最期は北海道、計10ステージが残ってます。木の実さんは勿論、みんなの健康と無事を祈るのみ!

それにしても、昨日の国会予算委員会、大臣の香典問題の追求も分かるけど、もっと肝心なことがあるだろうに民主党。これじゃ、支持も増えんですばい!おいらが頭に来てること、確か今から3年前、当時民主党の野田首相と自民安倍党首で議員削減の約束したんじゃなかったの?議員一人年間3千万の税金を、どれだけ他のところにまわせることか...自民は勿論、他の野党も積極的に取り組まないから、おいらは今でも政治家信用できません。そんな人達が、えらそうな顔して国を治めてんだから、こりゃ絶望的ですな。

750.jpg

つわものどもがゆめのあと

2015/11/09
【第749回】

おいらも後3ヶ月すると70歳になっちまう...今年は知人が次々と居なくなっちまう。つい最近まで話していたのに、何だか狐につままれた感じだ。ついこの前も、今やってる芝居いつ来るんだい?と思わず村井健に電話しそうになっちゃった。川島なお美さんも、ふらりと劇場に来そうな気がしてならない。劇場のロビーに立つのもプロデューサーの大切な仕事なんだが、いつも来るはずの人が来ないことで亡くなったことを改めて知らされる次第だ。劇場のロビーは、日頃逢わない友人知人の生存確認の場でもあり、この歳になると、あと何回逢えるのかな?なんて思ってしまう。先週金曜日に、芝居を観に来た風間杜夫ちゃんと終演後の飲み会で、おいらが死んだ暁には杜夫ちゃんが葬儀委員長をやるなんて言ったもんだから、おいらは100歳まで生きるから風間杜夫の葬儀はおいらが仕切ってやるとお返ししました。いやはや、こんな話をするような歳になっちまっただ...

生きてこそ生きてこそ 今ここから始まる

生きてこそ生きてこそ 広がってまたつながる

こんな歌があったな...生きてこそなんぼの世界や...

749.jpg

根は一つ

2015/11/06
【第748回】

「阿佐ヶ谷の母」の心労の影響か、右目がウサギちゃん状態になっちゃいました...過去にもこれに近い苦難の日々はありんしたけど、今回はメガトン級でございます。心臓がパクパクしちゃって、お目々の血管が破裂したんでしょう。病院に行くと結膜下出血との診断、まあ10日もすれば治まるんじゃないの?考えてみりゃ、芝居の興業なんてものは博打みたいなもんで、役者のアクシデントも織り込み済みでスタートしてるみたいなもんです。大手劇団であれば稽古中もアンダーなる者を付けて、いざとなれば代役出来る按配で進行していくのですが、おいらのところは少数精鋭主義の集団であるからして、そんな余裕はありません。後は野となれ山となれの心境というか、神のみぞ知るの開き直り精神でやってきました。

日頃の行いが良いのか?芝居の神さんが守ってくれてるのか?いずれにしても21年間なんとか少々の苦難も乗り越えてやってきました。ほんまにナマモンは怖いけど、そのハラハラドキドキもスリル満点で、眠った細胞に刺激を与えていいのかもしれませんな...なにせ何事もプラス思考に持って行くおいらの習性、どんまいどんまい。

さあ、今日の公演も入れて地方含めて15公演。頼みまっせ!芝居の神さん。

748.jpg

2015/11/04
【第747回】

昨日、「南阿佐ヶ谷の母」東京公演、無事に新宿紀伊國屋ホールで初日を迎えることが出来ました。いやいや、芝居の中身より幾多の波乱のドラマを抱えての初日でした。先月の沖縄公演の二日目の朝に、出演者の木の実ナナさんが大腿部を骨折。おいらが、ホテル近くの読谷の綺麗な浜辺を散策し帰ってくると、なんと木の実さんが、今まさに救急車で運ばれてる最中、タンカに横たわってるナナさんを見て、おいらは顔面蒼白。沖縄北谷公演の開演を3時間後に差し迫ったこのタイミング、そりゃ覚悟しました。公演中止!この日を楽しみにしていた沖縄の人達のことを思うと身が引き裂かれる思いがしました。500人のホールのチケットは既に完売しており、公演関係者にも多大な迷惑を掛けることになり、おいらの心中穏やかではありません...早速、演出家水谷氏と二人で病院に向かう、車中、水谷氏と中止になったときの策を考えるのだが、やはり最悪でも車椅子で公演できるナナさんの状態を願うばかり。病院に着くと開演二時間前、診断した先生に病状を聞くと大腿部骨折、車椅子でやれないことはないが、悪化すると、その後の処置が大変だとのこと。こちらはやって欲しいとの意志を伝える。あとはナナさんの判断。ナナさんは車椅子でやりたい!との意志を医師に告げる。早速、応急措置をして頂き介護タクシーを呼んで会場に向かう。開演まで1時間半前、早速、車椅子による場当たりをやり、30分開演時間を延ばして貰って上演。ナナさんの痛みを堪えながらの女優魂、共演者の見事なフォロー、スタッフの迅速な対応により公演は見事成功。ほんまに涙がちょちょぎれました。

翌日、ナナさんは帰京し手術。手術の結果次第では、またしても東京公演、地方公演の中止もあったのだが、無事成功。あとはリハビリと術後の経過を見ながらも、なんとか初日を乗り切りました。

今回の総力戦、あらためて芝居は誰ひとり欠けても出来ないし、なんとかいい芝居を創り、来て頂いたお客様に見て貰いたい!そんな気持ちがひとつになった初日でした。

747.jpg

シーサーに守られました

2015/10/29
【第746回】

新宿を歩いている人の表情が険しいな...先週、沖縄で見たのんびりスマイルの表情が印象的だったので余計に感じます。貧しくとも、楽しく、気持ちのいいことが一番!華のお江戸では出世、お金、ブランド、見栄なんぞに惑わされ、眉間に皺が増え、燃え尽き症候群みたいなお顔がはびこっております。昔、沖縄に二ヶ月ほど住んでたとき、二度追突されました。しかも、おいらは赤信号で停止中の出来事で、びっくりしたさ...そのとき思ったさ、沖縄のピーカンの空、海、緊張感のない空気、そりゃぴりぴりしないさ...三年住んでたスペインアンダルシアと似たとこありますな。一度きりの人生、飲んで騒いで恋をして楽しまなきゃ損ですバイ。人生は、まさしく祝祭のためにあるのでございます。満員電車の殺伐とした状況、押されてむっとし押し返すおじさんおばさんお兄ちゃん、いい感情なんて生まれませんな。この通勤時間のスタートから、戦いの火蓋が切られている悲惨な都会。しかし、生きなきゃなりまっせん!みんなが優しい感情と、感謝の気持ちを持ちさえすれば、少しはリッチな気分になれるのにな...

746-1.jpg

シーサー

746-2.jpg

沖縄の花嫁

746-3.jpg

ハブに注意

2015/10/26
【第745回】

10月24日、25日沖縄で「南阿佐ヶ谷の母」無事に公演を終えることが出来ました。沖縄のお客さんの温かい応援と、スタッフ、キャストの見事な連係プレーで、いい芝居に仕上がったと思います、それにしても沖縄の空と海は果てしなく青い。その青さの中で多くの米軍基地を持つ沖縄。読谷でタクシーに乗車したときに「こんな素敵な一等地の殆どが米軍基地で占められてますね...」思わずおいらが発した言葉に年老いた現地の運転手さんが「すみませんね...」まるで申し訳なさそうに答える言葉に、この沖縄が長年に渉る受難の歴史の重みを感じました。公演地である読谷は、米軍が攻め込んできた海岸であり、今でも反撃した日本軍の壕が残っていました。綺麗な海を眺めながらお喋りに講じているお年寄りの表情は、一見穏やかではあるのだが...この綺麗な空と海は、沖縄の人達の無垢なる霊魂の願いを表してるに違いない。

745.jpg

読谷の海と空

2015/10/21
【第744回】

この平和な光景がいつまでも見れますように...柔らかな芝生の上で、幸せそうな家族、親しき友、熱々のカップル、アジア・ヨーロッパの旅行者、皆、柔和な笑顔をしとりました。その中で、ひとりホームレスらしきオッさんが不安な表情で虚空を見つめておりました。でも、オッさん、世界の国々では大変なことになっとりますよ。難民、テロ、内戦、飢餓、この事実とオッさんの内実とを比較するのも難しいところあるんだが、この一見平和な風景の中に居られるだけでも幸せじゃん!と言いたい。でも、一見というところが怪しい...この風景に、あまりにも馴染みすぎると思考が停止し、よからぬ輩が着々と、銭のため欲のために世の中を汚してしまうんでございます。今話題になってる不法建築なんぞも悪しき一例。先日手にした本に依れば、この国の殆どの食品が化学物質で汚染されております。おかしな病が蔓延る理由も頷けます。おいらもクチャクチャと噛んでたガムなんぞもえらい悪玉だそうですぞ、好きなワインだって酸化防止剤、大変悪いそうです...そんなこと言ってたら何も口に出来ません...でも、確かに売らんがために有害なモノを入れているのも事実です。疑ってかかるなんて事、おいらあんまり好きじゃないんだけど、この複雑怪奇な世の中になった以上は必要なことですな。疑心暗鬼な酷い世の中にならないためにも、監視の目を緩めてはなりませんぞ...この文章書いてるときに地震、テレビ付けると福島原発の近くじゃありませんか!ほんとに原発再稼働してる場合じゃありませんがな...

744.jpg

代々木公園

2015/10/19
【第743回】

昨日は、全国演鑑連・首都圏演劇鑑賞団体の第30回定期総会に出席しました。埼玉、千葉、東京の、12の鑑賞団体の代表者100人が集まり東京・国分寺で開催されました。おいらは24の劇団、創造団体のひとりとして参加させて頂きました。戦後、民主的な運動の中から新劇を支援し経済的にも大変な時期に支えてくれた大きな組織です。1時から5時までの熱心な討議を聞きながら、演劇に期待する人達の情熱に唯々頭が下がる思いがしました。演劇は、当然のごとく観客なくして成立しません。お客なんて、こんな選択肢の多い時代に、それこそあてになりまっせん...その点、演劇鑑賞団体の人達は、年間6本の会費を払い、しっかりと見続けてくれるのです。芝居を見続けることによって、民主的な社会にすることも同時並行的に運動体として捉えているところが大きな特徴です。平均年齢も高くなるなか、パワーは衰えることもなく活動されてる姿を見るにつけ、身が引き締まる思いがしました。総会の後は懇親会、お酒と中華料理、そのあと二次会...提供する劇団・創造団体が、つまらんしょうもない作品を創ろうもんなら即刻打ち首もんでございます。芝居をこよなく愛する人達のためにも、品質の良い芝居を創ることが、おいらの使命だと再確認した一日でございました。

743.jpg

国分寺の老舗ケーキ店

2015/10/15
【第742回】

今年は、おいらの演劇関係者が次々と亡くなっていく...昨日も、新宿の夕景の空をぼんやり眺めていたら、亡くなった人達の魂がふんわりと浮かんだいるように思えた。まだまだ身近にいるようで、この街を慈しみ懐かしく思っているんだろう、なかなか立ち去らない様子で、おいらも思わず「戻って、又、芝居の話でもしようぜ...」と声を掛けそうになった。だって、この面々、芝居に対する情熱は半端なもんじゃございません。神さんは無情です...なんで、そんなに早く彼岸に連れてっちゃうの。そっちの世界の演劇界は人手不足なのかな...そう言えば、おいらだって、人生の第四コーナー、いずれは、そちらの仲間入りをさせては頂くんだが、なんだか久しぶりに死と向き合った感じがしております。博多に住んでる97歳の母の姿を見たことの影響もあるんだが、人は、生き物は間違いなく死んじゃいます。肉体が滅びた後の行く末は?魂は?諸説もろもろ言われているのだが、死んでしまえば終わりです、死後の世界なんてどうでもいいんじゃない...だとすれば、生きてるときが全てです。一瞬たりとも無駄にしちゃなりません!なんて言うのも窮屈だし、のんべんだらりんも情けないし、ほどほどのいい加減(湯船に入ったときの熱くもなく寒くもない状態)な心地よい時間を過ごすことがベストかな...神さん、お頼み申します、今年はもう連れていかんでくんしゃい!

742.jpg

新宿の夕景

2015/10/09
【第741回】

10月7日、博多。昨日は長崎県時津町で、風間杜夫ひとり芝居「正義の味方」公演しました。地方公演は、その土地それぞれの色合いがあり演者も観客も楽しさ満載です。今回の芝居は時事ネタが随所に盛り込まれており、その反応も楽しみの一つです。博多ではプロ野球のソフトバンクホークスに絡んだネタを仕込んだのですが不発に終わりました。今年のパリーグはソフトバンクがリーグ優勝を飾り、ロッテオリオンズは3位に終わりましたが、明日から2位の日ハムも含めクライマックスシリーズが始まります。数年前、同じく3位であったロッテがリーグ優勝したソフトバンクに勝ち、セリーグ、パリーグで日本一を争う日本シリーズの出場権を勝ち取り、まさしく下克上の状況を呈しました...今年も、その悪夢を払拭させないためのネタをカルタに託して一席もうけたんですが、場内はし~んと静まり返ったまま。博多のソフトバンクファンは本当に想い出したくなかったんですな...

この芝居、時事ネタでの爆笑が、あまりにも多いので、たまにはハズレもないと、なんだか唯のおちゃらけ芝居になっても困るし、その辺のバランスが難しいところですな。

芝居が終わり、駆けつけた地元のお客さんと一杯飲むのも地方公演の楽しみです。博多では、お決まりの六本松の「ひろ」での宴会。博多の夜は、格別ですたい!

741.jpg

博多ジャズバー ブラウニー

2015/10/07
【第740回】

村井健が亡くなった...昨日羽田空港で知った。村井とは大学の同級生であり、半世紀に渡る同志である。彼が全共闘の闘士で、軟弱な輩に檄を飛ばしている姿は今でもくっきりと覚えている。おいらは徒党を組むのが嫌で一人で戦っていた。そんなおいらをセクトに誘うこともなく安酒飲みながら、政治、文学、演劇そして好きな女性の話なんかを口角泡を飛ばしながら話したな...秋田から出てきたお前と、博多から上ってきたおいらとは何故か気があったな。おいらの芝居観て、お前がいつも言ってたな「おまえな、なまりが取れないと役者なれないぞ...」田舎もんのお前が、なんだかアカデミックなこと言いやがって、おいらはクソと思ったよ。そう言えば、お前は良く本を読み勉強してたな...その後、而立書房から売れない戯曲をたくさん出版し、今の演劇界を支えている数多くの作家を育てたな。おいらが海外放浪の旅から帰り、再び演劇の世界に戻ったときに、真っ先に電話したのもお前だった。お前のアドバイスで、トム・プロジェクトも21年続いてるよ。お前の、演劇に対する情熱、啓眼力は演劇界の大きな推進力になっていたな。今、話題になっている演劇人も、お前の強力な後押しがあったからこそ頑張れたと思うよ。彼らの後見人でもあったお前の訃報を聞いての悲しみはいかばかりか...でも、彼らはお前の演劇に対する姿勢を受け継ぎ、硬派な芝居を創り続けていくと思う。そう言えば、お前は辛口演劇評論家で敵も多かったな。でも、そこがお前の真骨頂。決して妥協することなく69年の生涯を全うしたな。お前は偉い!

最後に、お前が、今まで住んでた横浜の地に引っ越すときに、おいらが運転手で手伝ったのは良かったのだが、スピード違反で捕まり罰金払わされたな...とんだ出費になり悪かったな。もう、お前の威勢の良い辛口批評は聞けなくて寂しいけど、お前の鋼の精神を少しは見習って、少しでも良い芝居創ることが、お前への最善の供養かもしれんな...ゆっくり休んでくれ村井。

740.jpg

合掌

2015/10/05
【第739回】

おいらが通勤で使う井の頭線での奇妙な風景...65歳くらいの上品な叔母様です。駅に向かう途中で良く出逢うのですが、背筋もしゃんと伸び元気に歩いている左手には何故か杖を持っているんです。こんなに元気なのになんでかしら?そのわけは駅の改札口近くで解明されました。改札口近くになると杖の出番なんです。少し足をいたわるかのような仕草で改札を通過し、エレベーターに乗り駅のホームに向かいます。年齢と、杖に頼るこのポーズであれば誰しもが、お身体が少々悪いご婦人だと思いますよね。電車が到着し、当然優先席の近辺に位置します...優先席が空いていれば問題なく座ればいいんですが、そうでない場合は、勿論、座っている人はバツが悪くて座席を譲るのが至極当たり前。ところが、この日ばかりは、若年層も含めて誰もふんぞり返って譲ろうとしません。おいらは、このご婦人の顔を見ましたよ...いやいや、不満そうな表情で、まるで世の中の非情を嘆き悲しんでいる顔をしていました。「ああ無情!誰がこんな日本にしてしまったの...」叔母さん、あんたがそうしたんや...と言いたいところだが、なんとも奇妙な感覚に襲われました。この叔母さんの心意もどうやろか?その作為に何故か大きな歪を感じ、悲しい気持ちになってきました。この行為に至る叔母さんの現在の環境、生きてきた由来が、なんとも痛ましい。この世の中、いろんな意味で、悪しき創意工夫をしながらでも生きなきゃならない時代になってきたのかも知れませんね...

739.jpg

レトロなマッチ

2015/10/02
【第738回】

只今、川島なお美さんの葬儀から帰ってきました。美しい遺影の周りには、沢山のワインが飾られていました。なんだか亡くなったのが嘘のような雰囲気でした...喪主の鎧塚さんが、気丈に場を持てなしてる姿を見て何だか目頭が熱くなってきました...青山葬儀場は2014年5月の蟹江敬三さんのお別れ会以来です。人は何れ死ぬと分かっていても、別れはつらいものです。特に役者が、命よりも俳優としての最期を望むのも壮絶なものを感じます。以前、トムの舞台にも出て頂いた緒形拳さん然り。表現という魔物に取り憑かれると、ノーマールな思考も何処吹く風、唯々、果てしなき表現地獄、いや表現天国の魔界に彷徨ってしまいます。そこまでリスクを抱えての命懸けの行為が、多くのファンを魅了することも確かです。今尚、世間では、子が芸能なる世界の門を叩きたいと言ったときには、反対するのが当たり前だと言われています。この魔界の世界でモノになる人はほんの一握りです...おいらも、志し中半で倒れていった仲間を随分見続けてきました。でも、彼らが歩んだ人生も立派なドラマであり、表現だと思います。

青山葬儀場を後にして、晴れ上がった空を見上げると初秋の太陽の光がキラキラと輝いていました。そう言えば、初めてトムの稽古場で本読みしていたときの、なお美さんの瞳を想い出しました...

738.jpg

合掌

2015/09/30
【第737回】

今年も風間杜夫ひとり芝居「正義の味方」が始まりました。初っ端は横浜にて公開舞台稽古。

どんな名優でも初日は心臓パクパクするそうです...風間さんは舞台の袖で、手のひらに○を書き、それを飲み込んで舞台に上がるそうです。そうです!お客を飲み込んでから一気呵成に舞台で暴れちゃおうというお祈りみたいなもんですね。この日も、まるでお客を手玉に取ってる感じで、笑いをとり、お客の心を舞台に引き付けていました。こりゃ名人芸ですな!と唯々感心するのみ。お疲れさんです...楽屋に行くと杜夫ちゃん、びっしり汗を掻きもぬけの殻状態でございます。あんなに軽やかに楽しそうに見えたのですが、そこが名優の所以たるところでございます。一生懸命を見せないのがプロ、しかも一人で一時間半演じ切るんですから、たいしたたまげた俳優さんです。

この日は、横浜桜木町のジャズ喫茶「ダウンビート」にもお邪魔しました。創業1956年の老舗の店。壁に飾られたオスカーピータソン、ソニーロリンズ、マイルスデイビスなどの油絵や、切り抜きの記事が59年間の紫煙、ジャズを愛する人の思いで、茶褐色に変色していました。場所柄、開店当時は米軍基地から米兵が来店し、夜明けまで賑わっていたそうだ...時は移り変わり、ジャズ喫茶はなかなか経営が難しくなってきたのだが、こうやって頑張っているお店にはエールを送りたくなるのでございます。

公演が終わり、みなとみらいの夜空を眺めると、スーパームーンがキラキラと輝いていました。

737-1.jpg

ダウンビート

737-2.jpg

スーパームーン

2015/09/28
【第736回】

川島なお美さんが亡くなった...トム・プロジェクトの芝居にも4本出て頂いた。正直言って、おいら、川島さんのこと女優と言うより、テレビのタレントさんだとばかり思っていた。ところが、8年前の中津留章仁作・演出「とんでもない女」で下條アトムさん、吉田羊さん(今、とっても露出してます)相手に、女優意識むき出しの闘志を見て、こりゃ本気だなと、川島さんの見方を変えた次第です。あの美意識に支えられた意地は半端なもんじゃありません。何度も何度も、台本を読み返し、どんな些細なことも作、演出者にしつこく質問する姿を見るにつけ、この人、芯から芝居が好きなんだなと思いました。マスコミの世界で生きてきた人達にとって、あまりお金にもならない舞台に、全エネルギーを注ぎ込んでくれる人には、当然おいらにとっても強い味方であり同士です。なお美さんの天性の美しさと明るさは、とかく暗くなりがちな舞台を輝かせてくれました。大好きなワインを飲みながら食事しているときのなお美さんも、芝居の稽古で疲れている仲間を元気にさせてくれる活性剤の役割をしてました。素敵な旦那様、鎧塚さんと結婚して、これからまだまだ公私ともやりたかったことはたくさんあったはずです。

でも、なお美さん、貴女が残してくれた映像、舞台は我々の記憶にしっかりと刻まれてますよ...

736.jpg

「とんでもない女」

2015/09/24
【第735回】

散歩は心のオアシスだと思っています。いつもの通りを歩いていると、いつものお店がなかったり、違う店に変わっていたり、おいらの気持ちも微かに動揺したり、何かしらの想像が頭を巡ります。昨日も、吉祥寺の人気飲み屋の看板が変わっていたので、なんでやろ?予約しないと入れないくらいの店が潰れるわけがないし、心境の変化でもあったんかしら...日本酒と魚の美味しいお店が、お好み焼き屋さんになったんですから、こちとらも色々と想像してしまいます...自分の店でもないのに考えたって仕様がないとは思いますが、ここが散歩の達人の楽しみなんです。その土地その土地には、人の歴史があり多くの人達の思いがびっちりと詰まっているのでございます。その思いが幻となってしまうんですから、そりゃ愛おしさと感傷が千々に乱れ、しばし、その場所から離れることが出来ません。その思い入れこそが己の感性を養ってきたのかも知れません。それぞれの思いの連鎖が、又、新しい歴史を創ってるといってもいいんじゃございません。そんななか、時代がどんなに変化しようとも、建物が古くなろうとも、頑なに木造の築50年以上は経ているだろう家屋も存在します。これも、ついつい歩みを止め繁々と感慨深く見てしまいますな。昔の時代を彷彿とさせると同時に、人の営みを必死に守ってきた家の存在に深く敬意を抱かざるを得ません。そり曲がった板塀、剥げ落ちた玄関の門、色褪せた瓦、よくぞ生き延びた!思わず手を合わせたくなります...まさしく温故知新でございます。

735.jpg

お待ちしてました

2015/09/18
【第734回】

参院特別委員会での、安全保障関連法案の強行採決の8分間をテレビで見たのだが、なんですかあれは!といっても、日本の政治のこれまでの歴史の再現ビデオを見せられてる感じがしたのですが...この国の政治に対する意識の低さが、あのどうしようもない政治屋を生み出しているとか言いようがない。あんな人達をよくぞ投票しましたね?よくぞ投票にも行かず棄権しましたね?そのツケが昨日の茶番劇。与党も野党もだらしないのは勿論なんだが、国民の殆どが議論を尽くしていないと言ってるのに、政府はアメリカとの約束優先、そして何よりも「今は反対意見が多く、デモも見かけるけれど、時間が経てば忘れてしまうでしょう...」なんて、確かに忘れっぽい国民を見透かしたような発言を、いけしゃあしゃあと述べる政治屋を野放しにしていることに怒りを感じないと、ますます政治不感症になっちまいますぞ...

徴兵制度なんてあり得ないなんて言ってるけど、いつの世も戦争なんてものは、実に巧妙に一部の人間の功名心から準備され、いつの間にか国全体が引き返せない状況に陥るなんて構図でございます。歴史に学ばない国は必ず滅びます!子を持つ母親、若い人たちが声を上げているのに微かな光明を感じます。

734.jpg

共生

2015/09/16
【第733回】

昨日、風間杜夫ひとり芝居「正義の味方」の稽古が始まりました。思い起こせば風間さんと、ひとり芝居を創り出して18年。いやいや長いですな...最初は、ひとり芝居は邪道だと頑なに断り続けていたのだが、こんな年数になっちゃいました。作品としては6本、海外公演もスペイン、韓国、中国、ハンガリー、ルーマニア、アメリカの6カ国。いろんなことがあった18年でした。この間、風間さんは日本芸術大賞、読売演劇大賞最優秀男優賞、紫綬褒章などを受賞し、名実共に、ひとり芝居なら風間杜夫、風間杜夫ならひとり芝居なんて言葉が定着してきました。このひとり芸、彼の持ち味が存分に発揮されてると思います。やんちゃで、愛嬌があり、色気があり、哀愁もたっぷり。そして生まれ持った役者としての技量。今年66歳になるのだが、全くの衰え知らず、連日の酒飲みもお休み無し、驚異の肉体の持ち主でもあります。昨日の稽古初日も、最初から立ち稽古、大声を張り上げ、たっぷり汗を掻き、その後は陽気に飲み会。

でも、しみじみと言うてはりました...昨日、昨年やったビデオ観たのだが、全然あかんかった、恥ずかしい限りだ...この謙虚というか、貪欲な表現に対する拘りがあるからこそ今でもトップランナーで居られるのでございます。

今年の「正義の味方」は見逃せませんな!
733.jpg

錦糸町の稽古場から

2015/09/14
【第732回】

先週の週末は、いつものながら2本の芝居を観劇。1本目は劇団チョコレートケーキの名コンビ、古川健作・日澤雄介演出の芝居。新劇の7人の女優さんが昨年結成したOn7という集団に書き下ろした「その頬、熱戦に焼かれ」。原爆に被害にあった乙女が原爆投下国アメリカに治療に行った実話をもとに展開していく話...作の古川さんの丁寧な作劇と、日澤さんの斬新な演出で、7人の若き女優さんキラキラしてました。あらためて、役者を生かすも殺すも作・演出の手腕にかかっていることを実証してくれた芝居でした。

2本目は骨太な作品を創り続けるトラッシュマスターズの「そぞろの民」。作・演出の中津留章仁さん、これでもかというくらい、この国の諸問題をてんこもり、これをこなしていく役者さんも大変でございます。喋り言葉で無い台詞をなんとか身体に落としていく役者の七転八倒振りをひやひやもんで観ながらも、最後は腕力でお客を引っ張り込んでいく才気はさすがでございます。

芝居は見せ物でもありますが、お客への挑発、覚醒でもありんすよ...安全パイにこしたことはないのだが、たまにはキラリとドスを突きつけられると鈍った心身がシャキッとしますばい!
732.jpg

久し振りの晴れ間

2015/09/11
【第731回】

新宿は眠ることを知らない魔界の街...最近歌舞伎町では、ぼったくりバーが沢山摘発され、歌舞伎町の交番も多忙極まりないとか。アルコール2、3杯で2人、20万円請求されたり、アルコールの中に睡眠剤を混ぜ、現金、カードを盗まれたり...欲望の果てだから、しょうがないと言えばそうなんだが、まあよくそんなところにのこのこと出かけますな...でも、こうやって騙されながら大人の階段を上っていくんでしょうね。そして大人になったらなったで、夢も希望も失って焼き鳥屋でぼやいてる姿も想像できますな...方や、うら若き女性はホストクラブにはまり、身を持ち崩してしまうなんて構図が多いとかききますな。おいらなんか、なんであんな野郎に引っかかるのか、今もって不思議でなりません。キムタクみたいなヘアースタイルにすりゃいいってもんじゃございません。どの面下げて真似してんのや!品性も知性も感じられない面して格好つけてんじゃないよ!でもでも、お嬢様方、ついつい最初の¥3000ぽっきりの値段にホイホイ乗っちゃうんだよね。そんなお金と暇あるんだったら、被災地にボランティアとして汗を流すとか、国会に行って戦争反対のデモに参加するとか、少しは世の中人のためになることせんかいな...
この新宿という街、おいらも、ほぼ半世紀にわたりブラブラしとりますが、人間が本来持つ欲望を巧みに引き寄せる装置を備えておりますな...ゴールデン街、思い出横町、を残しなが家電店、デパートなどなど、このゴチャゴチャ感がいいんですね。最近は、中国語、ハングル、スペイン語が飛び交って、ますます怪しくなっとりますがな...

731.jpg

さあ...買ってちょうだいな!

2015/09/09
【第730回】

友人の個展で久しぶりに本郷に行ってきました。本郷と言えば、夏目漱石、二葉亭四迷、石川啄木、川端康成など多くの文人が居を構えていた場所です。中でも、樋口一葉が住んでた菊坂では、母と妹と3人で針仕事や洗い張りをするなど、苦難の日々を過ごした場所でもあります。この地に、今も威厳ある佇まいで、東京帝国大学がオッ建っている...おいらは残念ながら入学できなかったが(あたりまえやんか)、この国の中枢を担っている人達が学んだ学舎であることに間違いはない...政治家、官僚などなど、確かに国を牽引したには違いないが、おいらが思うに国家を思うに等しく庶民、人民、尚言わせて貰えば棄民にいたるまで人間なる者に思いを馳せ、そこから国家なるものの設計をして欲しかった。ならばもう少し心豊かなニッポンになったに違いない。おいらは雨降る中、赤門を眺めながら思ったさ...この重要文化財は加賀藩13代藩主前田斉泰が文政10年(1827)に11代将軍徳川家斉の娘溶姫を正室に迎えた際に建立された御守殿門...お上が庶民から吸い上げた銭っこで建てたもんでございます。だからして、今度は、お上が庶民に尽くすのが当然でしょう...この当たり前のことが未だ、この国ではなされておりません。

ところで、個展はどうだった?A・Hさんのお母さんが亡くなった時に画いた油絵≪地≫がとても印象的でした。アートは特別、特殊なことではなく、その素材は、いつもの日常の中に潜んでいます。そうなんです、生きてること自体がアートなんです。

730.jpg

赤門

730-2.jpg

2015/09/07
【第729回】

墨の世界は深いです...おいらも毛筆大好きです。人間の身体、もちろん心が一番伝わりやすいのが筆ではないでしょうか。墨を擦り、程よい濃さを作り出し、筆に乗せ、今ある気持ちを毛筆の繊細な動きに託し表現する様は躍動感に溢れています。30代の頃、世界を放浪していたときに、言語も判らないおいらを助けてくれたのも墨です。相手とのコミニュケーンをとる手段としては最良のものでした。相手の名前がわかると、漢字の当て字を使って書いてやると大喜び。例えばルイスであれば留伊須とか...これに味をしめて商いもしましたぞ。スペインの浜に白い石が沢山拾えたので、こりゃよかですばい!と、しこたま袋の詰め込んで真っ白な白に漢字の名前を画いてやると飛ぶように売れたのでございます。このお金でスペイン滞在も延長できました。
今でも、毛筆を手にすると、血湧き肉躍る感じがします。おいらの遊び心を大いに刺激し文字が絵になり、なんとも言えない書体になるのです。亡くなった映画監督・貞永方久さんがおいらの自己流に徹した墨絵、絵文字を見て「まったく、自分勝手で、わがままで、感謝知らずの気分屋で、いささかうろんなタッチなのだが、なぜかふしぎに、どこかしら魅かれる風が吹いている」これは、けなされ誉められ感想なんでしょうかね?
「字は体なり」って言葉があるじゃないですか、その顕著な表現が毛筆書体だと思ってるんですが...いずれにしても、このハイテク時代、たまには鉛筆、ペンでもよござんす、これらを駆使して己を表現してはいががですかな...


729.jpg
幽玄の世界

2015/09/04
【第728回】

卒塔婆の向こうに見えるのが新宿の高層ビル群でございます。卒塔婆と現代建築の白眉である建物が、妙に重なって見えます・・・新宿の高層ビルに何度か行った経験から、どうも居心地が良くありません。だって40階、50階に座っていても何だか落ち着きませんもの。要するに、地に足がついていない宙ぶらりん状態で飲んだり食べたりしているんでございます。現代っ子にとっては見事な夜景と、見渡すぐらいの風景に、この世と思えぬ快感を感じているんでしょうが、アナログ人間であるおいらにとっては、足下を脅かされてる怪しい気配が押し寄せてくる感覚。でも、この不安定な状況を忘れさせてくれるところが一カ所だけあります。JAZZが流れる中、美味なるお酒と真珠のような夜景、どこだって?ふふふ、秘密でございます・・・
今日も、卒塔婆の下から無数の亡者がぶつぶつ言っとります。「あんたら、調子に乗って浮かれていると、ろくな死に方しませんぜ・・・」
オリンピック エンブレム問題、新国立競技場のドタバタ劇、お上のトップが責任とらない国が良くなるわけがありません。最近、新宿の卒塔婆群も頭に来てグラグラこいとりますわ・・・

728.jpg

新宿の墓場

2015/09/02
【第727回】

昨日より、ホームページが10数年ぶりにリニューアルいたしました。いががですか?そんな記念すべき夢吐き通信なのに、なんてこった!新宿奇人変人列伝が登場しました。このオッさん前にも見かけたのだが、こちらもリニューアルしてこんな姿で現れました。この姿で新宿のど真ん中歩いていりゃ誰でも振り返りますな...それを見越してのオッさんのパフォーマンスでございます。「誰か声かけてくれないかな...写真撮ってくれないかな...」なんて物欲しそうな仕草を感じたおいら、「写真いいかな?」と問いかけると、「よろしゅうございますよ...」とお姉言葉でポーズをとってくれました。通りすがりの人達も、物珍しさのあまりパチリとやりたいところだが、変に絡まれるのが怖いのか唯々チラリと見ながら通り過ぎていくだけ。
こんなヘンテコな人達が、うじゃうじゃ居る新宿は、やっぱりおもしろ劇場です。

727.jpg

変なおじさん

2015/08/31
【第726回】

8月も今日で終わり。子どもたち、学生さんにとっては、明日から学校やで...行きたくない人、早く友達に会いたい人、人それぞれだとは思いますが、なにやら自殺者も多い季節らしい。一生バカンスだったらどれほど幸せなことか、いや、どうやって時間費やしたらいいのか困っちゃう人もいるらしいから、この判断は難しいところですな。間違いなく言えることは、このお堅いジャパニーズシステムは、人生にとって一番美味しいところである≪遊び心≫を軽視する傾向にあり、社会と人間関係を、ややこしくしてますな...
遅まきながら、「フォックスキャッチャー」観てきました。この作品は1996年のデイブ・シュルツ殺害事件を題材としており、監督は「カポーティ」や「マネーボール」などの作品で知られるベネット・ミラー。いやいや、アメリカ映画の底力を感じました。三人の主役の役の入れ込み方が半端じゃありません。金メダリストを取った二人のレスラー役、チャニング・テイタムとマーク・ラファロは、誰が見ても本職のレスリングの選手に見えます。あのロバート・デニーロが「レイジング・ブル」で、引退後のシーンのため体重を25キロ増やしてまで破滅型の主人公を演じきったことを思い出しました。ホンマモンの役者はこれですよ。日本の役者は甘いですな...時代にあった服装、ヘアーメイクしてくださいな。戦時中に、あんな頭髪ありますか?あんなおべべありますか?もうそれだけで、観客をなめてかかってるとしか思えませんことよ。
この映画の最高の見所は、アメリカの財閥一員で、殺人を犯すジョン・デュポン役を演じたスティーブ・カレルの演技。無表情の中に人間の嫉妬、憎悪、孤独、悲しみ、喜悦、狂気がまるで万華鏡のごとく見え隠れする様は鳥肌がたつ思いであった。経歴をみると、なんとコメディアン...こりゃ、日本の役者はかないません...

726.jpg最後の夏祭り

2015/08/28
【第725回】

知人の長島晃さんから、核兵器と戦争のない平和な世界の実現を願う2015広島―長崎リレーマラソンの完走便りが送られてきました。8月6日広島原爆ドーム8時15分に黙祷し、9時にスタート。長崎まで423、4㎞を駆け抜けるピースランである。ゴールは8月9日、長崎原爆投下中心地公園に11時まで。11時2秒に黙祷。いやいや、こんな形の平和アピールもあるのでございます。途中、苦しくなったときには、あの日あの時、地獄の時間を彷徨い死んでいった人達のことを思うと、この時間、平和な国で走れる喜びを噛みしめ、自ずから疲れた身体も精気を取り戻すのではないでしょうか...このリレーには、己の身体を駆使し、共に核と戦争のない平和な世界を願う襷をバトンタッチしながら駆け抜けていく行為に、まさしく壮大なアクションを感じます。
長島さんが、このリレーマラソンに、こんな言葉をコメントしています。「走ることが好きです。走ることで少しでも世の中のためにならないかと心のどこかで考えていました。昨年、長崎の山王神社で祈り捧げている年老いた姉妹から当時の悲惨な状況を伺うことが出来ました。そして、この大会に参加してくれたお礼もいただきました。人のために走りたい。私が走ることで、誰かの希望になっているのだと思った。」なんて素晴らしいコメント。人のために走りたい!なかなか言えませんね...世のため人のため、こんな考えの人が段々少なくなった昨今、ほんなごつ貴重、希少な言葉でございます。


725.jpg

夏も終わりだね...

2015/08/26
【第724回】

昨日、事務所の下にあるファミリーマートの前で、4人の男女が大きな声で話しながら飲み食いしていました。聞こえてくるのは懐かしきスペイン語、早速「どこから?」やはりスペインからの旅行者でした。おいらも3年ばかり住んでた話をすると、彼らのテンションは一気に上がり周囲の人がびっくりするほど、ほんまにスペイン人は陽気でございます。おいらが、アンダルシアの小さな村サロブレーニャに暮らしていたことで彼らは更にヒートアップ。彼らも、アンダルシアの中でも最も西にあるウエルバから15日のバカンスで日本に来たとのこと。東京、京都、大阪を観光し、今から成田空港に向かい帰国するところでした。美人のセニョリータがおいらに「なんで、又スペインで住まないの?おいでよ...」黒い大きな瞳を輝かせながら言い寄ってきました。スペイン人もお調子ものが多いのだが、日本のラテンとも言うべき博多出身のおいらを見抜いてのお誘いだろう。それにしても、スペイン人のおおらかさは得難いものでございます。国の発展なんぞは何処吹く風、その日一日が楽しく愉快であれば、それでよし。快楽天国を十分に味わい尽くそうという精神見事でございます。最後にセニョリータが、お互いの右の頬をくっつけて、口で「チュッ」と音をたてるキスの挨拶ベシートを要求してきました。いやいや、久しぶりのベシート、すっかり興奮してしまい彼らの写真を撮るのも忘れてしまいました...

724.jpg

スペインアンダルシア


2015/08/24
【第723回】

新宿はゲリラ部隊の戦場です。禁止告知の看板なんかクソ食らえ!夜毎、お巡りさんの目を盗んで路上ライブを決行中。なかなかよござんす、これが許されてはじめて国際都市ってもんです。海外に行きゃ路上ライブは、街を活性化させる風物詩でございます。疲れたおっさん、日常に麻痺した兄ちゃんねえちゃん、いけいけどんどんの若者の叫びを聞きましょう、聴いて、見てれば何か感じるんじゃございません。何かに悩み、言いたいことも言えず我慢してる皆さん、彼らみたいに自己表現すりゃいいんです。そりゃ、なかには、きみきみ人前で歌うレベルじゃないでしょう...なんて若者も居るのだが、許してあげましょう。自死、犯罪の道に走るよりは、どれほど健全なことか。
この日も、可愛い娘さんが可憐な声でセンチな歌をギターの弾き語りで歌っていました。華奢な身体ながら全身を振り絞り、道行く人に程よいアピールが効いたのか、二重の輪が出来ていました。顔ぶれはというと、おっさんがほとんど...おっさんは疲れています、癒されたいんです。職場でも、家庭に帰っても居場所がないおっさんにとっては、路上の歌姫こそ憧れのエンジェルに見えるんでしょうな...エンジェルの最後の曲が終わると、3、4名のおっさんが自主制作のCDを買い、サインをねだっていました。芸能の世界を乗り越え、救済の道に踏み出したこの光景は間違いではありませんことよ...汚辱に満ちた何処ぞの世界より、どれほど美しいことか...

723.jpg

新宿の歌姫