トムプロジェクト

2015/10/29
【第746回】

新宿を歩いている人の表情が険しいな...先週、沖縄で見たのんびりスマイルの表情が印象的だったので余計に感じます。貧しくとも、楽しく、気持ちのいいことが一番!華のお江戸では出世、お金、ブランド、見栄なんぞに惑わされ、眉間に皺が増え、燃え尽き症候群みたいなお顔がはびこっております。昔、沖縄に二ヶ月ほど住んでたとき、二度追突されました。しかも、おいらは赤信号で停止中の出来事で、びっくりしたさ...そのとき思ったさ、沖縄のピーカンの空、海、緊張感のない空気、そりゃぴりぴりしないさ...三年住んでたスペインアンダルシアと似たとこありますな。一度きりの人生、飲んで騒いで恋をして楽しまなきゃ損ですバイ。人生は、まさしく祝祭のためにあるのでございます。満員電車の殺伐とした状況、押されてむっとし押し返すおじさんおばさんお兄ちゃん、いい感情なんて生まれませんな。この通勤時間のスタートから、戦いの火蓋が切られている悲惨な都会。しかし、生きなきゃなりまっせん!みんなが優しい感情と、感謝の気持ちを持ちさえすれば、少しはリッチな気分になれるのにな...

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シーサー

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沖縄の花嫁

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ハブに注意

2015/10/26
【第745回】

10月24日、25日沖縄で「南阿佐ヶ谷の母」無事に公演を終えることが出来ました。沖縄のお客さんの温かい応援と、スタッフ、キャストの見事な連係プレーで、いい芝居に仕上がったと思います、それにしても沖縄の空と海は果てしなく青い。その青さの中で多くの米軍基地を持つ沖縄。読谷でタクシーに乗車したときに「こんな素敵な一等地の殆どが米軍基地で占められてますね...」思わずおいらが発した言葉に年老いた現地の運転手さんが「すみませんね...」まるで申し訳なさそうに答える言葉に、この沖縄が長年に渉る受難の歴史の重みを感じました。公演地である読谷は、米軍が攻め込んできた海岸であり、今でも反撃した日本軍の壕が残っていました。綺麗な海を眺めながらお喋りに講じているお年寄りの表情は、一見穏やかではあるのだが...この綺麗な空と海は、沖縄の人達の無垢なる霊魂の願いを表してるに違いない。

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読谷の海と空

2015/10/21
【第744回】

この平和な光景がいつまでも見れますように...柔らかな芝生の上で、幸せそうな家族、親しき友、熱々のカップル、アジア・ヨーロッパの旅行者、皆、柔和な笑顔をしとりました。その中で、ひとりホームレスらしきオッさんが不安な表情で虚空を見つめておりました。でも、オッさん、世界の国々では大変なことになっとりますよ。難民、テロ、内戦、飢餓、この事実とオッさんの内実とを比較するのも難しいところあるんだが、この一見平和な風景の中に居られるだけでも幸せじゃん!と言いたい。でも、一見というところが怪しい...この風景に、あまりにも馴染みすぎると思考が停止し、よからぬ輩が着々と、銭のため欲のために世の中を汚してしまうんでございます。今話題になってる不法建築なんぞも悪しき一例。先日手にした本に依れば、この国の殆どの食品が化学物質で汚染されております。おかしな病が蔓延る理由も頷けます。おいらもクチャクチャと噛んでたガムなんぞもえらい悪玉だそうですぞ、好きなワインだって酸化防止剤、大変悪いそうです...そんなこと言ってたら何も口に出来ません...でも、確かに売らんがために有害なモノを入れているのも事実です。疑ってかかるなんて事、おいらあんまり好きじゃないんだけど、この複雑怪奇な世の中になった以上は必要なことですな。疑心暗鬼な酷い世の中にならないためにも、監視の目を緩めてはなりませんぞ...この文章書いてるときに地震、テレビ付けると福島原発の近くじゃありませんか!ほんとに原発再稼働してる場合じゃありませんがな...

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代々木公園

2015/10/19
【第743回】

昨日は、全国演鑑連・首都圏演劇鑑賞団体の第30回定期総会に出席しました。埼玉、千葉、東京の、12の鑑賞団体の代表者100人が集まり東京・国分寺で開催されました。おいらは24の劇団、創造団体のひとりとして参加させて頂きました。戦後、民主的な運動の中から新劇を支援し経済的にも大変な時期に支えてくれた大きな組織です。1時から5時までの熱心な討議を聞きながら、演劇に期待する人達の情熱に唯々頭が下がる思いがしました。演劇は、当然のごとく観客なくして成立しません。お客なんて、こんな選択肢の多い時代に、それこそあてになりまっせん...その点、演劇鑑賞団体の人達は、年間6本の会費を払い、しっかりと見続けてくれるのです。芝居を見続けることによって、民主的な社会にすることも同時並行的に運動体として捉えているところが大きな特徴です。平均年齢も高くなるなか、パワーは衰えることもなく活動されてる姿を見るにつけ、身が引き締まる思いがしました。総会の後は懇親会、お酒と中華料理、そのあと二次会...提供する劇団・創造団体が、つまらんしょうもない作品を創ろうもんなら即刻打ち首もんでございます。芝居をこよなく愛する人達のためにも、品質の良い芝居を創ることが、おいらの使命だと再確認した一日でございました。

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国分寺の老舗ケーキ店

2015/10/15
【第742回】

今年は、おいらの演劇関係者が次々と亡くなっていく...昨日も、新宿の夕景の空をぼんやり眺めていたら、亡くなった人達の魂がふんわりと浮かんだいるように思えた。まだまだ身近にいるようで、この街を慈しみ懐かしく思っているんだろう、なかなか立ち去らない様子で、おいらも思わず「戻って、又、芝居の話でもしようぜ...」と声を掛けそうになった。だって、この面々、芝居に対する情熱は半端なもんじゃございません。神さんは無情です...なんで、そんなに早く彼岸に連れてっちゃうの。そっちの世界の演劇界は人手不足なのかな...そう言えば、おいらだって、人生の第四コーナー、いずれは、そちらの仲間入りをさせては頂くんだが、なんだか久しぶりに死と向き合った感じがしております。博多に住んでる97歳の母の姿を見たことの影響もあるんだが、人は、生き物は間違いなく死んじゃいます。肉体が滅びた後の行く末は?魂は?諸説もろもろ言われているのだが、死んでしまえば終わりです、死後の世界なんてどうでもいいんじゃない...だとすれば、生きてるときが全てです。一瞬たりとも無駄にしちゃなりません!なんて言うのも窮屈だし、のんべんだらりんも情けないし、ほどほどのいい加減(湯船に入ったときの熱くもなく寒くもない状態)な心地よい時間を過ごすことがベストかな...神さん、お頼み申します、今年はもう連れていかんでくんしゃい!

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新宿の夕景

2015/10/09
【第741回】

10月7日、博多。昨日は長崎県時津町で、風間杜夫ひとり芝居「正義の味方」公演しました。地方公演は、その土地それぞれの色合いがあり演者も観客も楽しさ満載です。今回の芝居は時事ネタが随所に盛り込まれており、その反応も楽しみの一つです。博多ではプロ野球のソフトバンクホークスに絡んだネタを仕込んだのですが不発に終わりました。今年のパリーグはソフトバンクがリーグ優勝を飾り、ロッテオリオンズは3位に終わりましたが、明日から2位の日ハムも含めクライマックスシリーズが始まります。数年前、同じく3位であったロッテがリーグ優勝したソフトバンクに勝ち、セリーグ、パリーグで日本一を争う日本シリーズの出場権を勝ち取り、まさしく下克上の状況を呈しました...今年も、その悪夢を払拭させないためのネタをカルタに託して一席もうけたんですが、場内はし~んと静まり返ったまま。博多のソフトバンクファンは本当に想い出したくなかったんですな...

この芝居、時事ネタでの爆笑が、あまりにも多いので、たまにはハズレもないと、なんだか唯のおちゃらけ芝居になっても困るし、その辺のバランスが難しいところですな。

芝居が終わり、駆けつけた地元のお客さんと一杯飲むのも地方公演の楽しみです。博多では、お決まりの六本松の「ひろ」での宴会。博多の夜は、格別ですたい!

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博多ジャズバー ブラウニー

2015/10/07
【第740回】

村井健が亡くなった...昨日羽田空港で知った。村井とは大学の同級生であり、半世紀に渡る同志である。彼が全共闘の闘士で、軟弱な輩に檄を飛ばしている姿は今でもくっきりと覚えている。おいらは徒党を組むのが嫌で一人で戦っていた。そんなおいらをセクトに誘うこともなく安酒飲みながら、政治、文学、演劇そして好きな女性の話なんかを口角泡を飛ばしながら話したな...秋田から出てきたお前と、博多から上ってきたおいらとは何故か気があったな。おいらの芝居観て、お前がいつも言ってたな「おまえな、なまりが取れないと役者なれないぞ...」田舎もんのお前が、なんだかアカデミックなこと言いやがって、おいらはクソと思ったよ。そう言えば、お前は良く本を読み勉強してたな...その後、而立書房から売れない戯曲をたくさん出版し、今の演劇界を支えている数多くの作家を育てたな。おいらが海外放浪の旅から帰り、再び演劇の世界に戻ったときに、真っ先に電話したのもお前だった。お前のアドバイスで、トム・プロジェクトも21年続いてるよ。お前の、演劇に対する情熱、啓眼力は演劇界の大きな推進力になっていたな。今、話題になっている演劇人も、お前の強力な後押しがあったからこそ頑張れたと思うよ。彼らの後見人でもあったお前の訃報を聞いての悲しみはいかばかりか...でも、彼らはお前の演劇に対する姿勢を受け継ぎ、硬派な芝居を創り続けていくと思う。そう言えば、お前は辛口演劇評論家で敵も多かったな。でも、そこがお前の真骨頂。決して妥協することなく69年の生涯を全うしたな。お前は偉い!

最後に、お前が、今まで住んでた横浜の地に引っ越すときに、おいらが運転手で手伝ったのは良かったのだが、スピード違反で捕まり罰金払わされたな...とんだ出費になり悪かったな。もう、お前の威勢の良い辛口批評は聞けなくて寂しいけど、お前の鋼の精神を少しは見習って、少しでも良い芝居創ることが、お前への最善の供養かもしれんな...ゆっくり休んでくれ村井。

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合掌

2015/10/05
【第739回】

おいらが通勤で使う井の頭線での奇妙な風景...65歳くらいの上品な叔母様です。駅に向かう途中で良く出逢うのですが、背筋もしゃんと伸び元気に歩いている左手には何故か杖を持っているんです。こんなに元気なのになんでかしら?そのわけは駅の改札口近くで解明されました。改札口近くになると杖の出番なんです。少し足をいたわるかのような仕草で改札を通過し、エレベーターに乗り駅のホームに向かいます。年齢と、杖に頼るこのポーズであれば誰しもが、お身体が少々悪いご婦人だと思いますよね。電車が到着し、当然優先席の近辺に位置します...優先席が空いていれば問題なく座ればいいんですが、そうでない場合は、勿論、座っている人はバツが悪くて座席を譲るのが至極当たり前。ところが、この日ばかりは、若年層も含めて誰もふんぞり返って譲ろうとしません。おいらは、このご婦人の顔を見ましたよ...いやいや、不満そうな表情で、まるで世の中の非情を嘆き悲しんでいる顔をしていました。「ああ無情!誰がこんな日本にしてしまったの...」叔母さん、あんたがそうしたんや...と言いたいところだが、なんとも奇妙な感覚に襲われました。この叔母さんの心意もどうやろか?その作為に何故か大きな歪を感じ、悲しい気持ちになってきました。この行為に至る叔母さんの現在の環境、生きてきた由来が、なんとも痛ましい。この世の中、いろんな意味で、悪しき創意工夫をしながらでも生きなきゃならない時代になってきたのかも知れませんね...

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レトロなマッチ

2015/10/02
【第738回】

只今、川島なお美さんの葬儀から帰ってきました。美しい遺影の周りには、沢山のワインが飾られていました。なんだか亡くなったのが嘘のような雰囲気でした...喪主の鎧塚さんが、気丈に場を持てなしてる姿を見て何だか目頭が熱くなってきました...青山葬儀場は2014年5月の蟹江敬三さんのお別れ会以来です。人は何れ死ぬと分かっていても、別れはつらいものです。特に役者が、命よりも俳優としての最期を望むのも壮絶なものを感じます。以前、トムの舞台にも出て頂いた緒形拳さん然り。表現という魔物に取り憑かれると、ノーマールな思考も何処吹く風、唯々、果てしなき表現地獄、いや表現天国の魔界に彷徨ってしまいます。そこまでリスクを抱えての命懸けの行為が、多くのファンを魅了することも確かです。今尚、世間では、子が芸能なる世界の門を叩きたいと言ったときには、反対するのが当たり前だと言われています。この魔界の世界でモノになる人はほんの一握りです...おいらも、志し中半で倒れていった仲間を随分見続けてきました。でも、彼らが歩んだ人生も立派なドラマであり、表現だと思います。

青山葬儀場を後にして、晴れ上がった空を見上げると初秋の太陽の光がキラキラと輝いていました。そう言えば、初めてトムの稽古場で本読みしていたときの、なお美さんの瞳を想い出しました...

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合掌