トムプロジェクト

2015/12/11
【第761回】

野坂昭如さんが亡くなった...野坂さんで想い出すのは、今から43年前くらいかな、新宿ゴールデン街の名物ママで有名な「前田」で飲んでたときに隣に座っていたのが野坂さん。ニヤついていたのだが何故かダンディな佇まいであった。前田のママは佐賀県の出身で、おいらの母の妹と同級生であったことで大変可愛がって貰った。普通だったら、とても入れて貰えない敷居の高い店であった。飲み代が高いのではなく、この店に一歩踏み込んだら知性、品性が問われ、それなりの理論武装、己の信念を抱いて酒を飲まないとママの厳しい意見が飛んでくるのである。この日も、野坂さんがニヤついた顔で女性論を語っていたのだが、すかさずママが「野坂、えらそうなこと抜かすな...」と、一刀両断。しばらく野坂さんも持論をあの早口で喋っていたのだが、最後には頭に来て帰ってしまった...この店で怒られた有名人は数知れない。世間では先生ともてはやされた著名人も、この店ではただの人である。こんな気骨のある店があったゴールデン街も、今や観光名物地になっちまっただよ。まず、おのぼり外人観光客がカメラ片手にうろちょろしとります。若い経営者が増えライト感覚になっちゃいました。まあ、無くなるよりはいいんだが、あの無骨で気骨のある店が少なくなっていくのが寂しい気がします。

昭和がどんどん遠くなっていきます...野坂さんのシャイで遊び心満点の自己演出、好きだったな。そして原点にあるのは戦争体験、死の直前まで最近の政府のきな臭い動きに警告を発していた「戦争などあり得ないと思い込んでいるうちに、気がつけば戦争に巻き込まれている。戦争とはそんなものだ」

野坂さん天国でもふざけた顔で唄ってんだろうな「マリリン・モンロー・ノー・リターン」

♪ソソソクラテスかプラトンか,ニニニーチェかサルトルか...

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今年もそろそろ終りだニャー

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