トムプロジェクト

2016/04/08
【第804回】

富田定治・油彩個展に行ってきました...トミやんがこんな繊細な絵を描くなんてびっくりこきました。というのもトミやんとは35年前にスペインアンダルシア・グラナダで知り合いました。グラナダには当時ヒッピーまがいの日本人がごろごろしとりました。おいらもその一人かも知れませんが、群れヒッピーには入りたくなく一人距離を置いて、我が道を行く風来坊と言ったところでふらふらしてました。トミやんは元々が絵描き志望であったのだが、それでは飯が食えないので、路上で自作のアクセサリーを売りながら生計を立てていました。とってもセンスが良く商売は繁盛し、稼いだ金でスペインの安くて美味なる飲食を謳歌しとりました。女性にも受けがよくいろんな国の女性とよろしい関係も続けておったそうな...

日本に帰国して、久しぶりに会ったときには東京駅で新幹線車両の掃除人をやっとりました。おいらにこぼしてました「毎日ホームの下で待機して号令に従っておばちゃん達と仕事するなんて考えもしなかったなもし...おいどんスペインに帰りたか(彼は鹿児島出身)」

そして、次にあった時には原宿の路上でアクセサリーを売っていました。原宿路上販売の全盛時代で、機に敏なる彼はタイに素材を仕入れに行き、巧みな加工でまたたくまに人気者になりしこたまなお金を稼ぎ、さっさと鹿児島に戻り沖縄、屋久島なんかを転々して自由気ままに暮らしていました。たまに鹿児島で会った時にもにこにこにやにやするばかりで、働きもせず謎の生活をしていたのだが、突如「絵を出展したので見に来ない?」なんて言うもんだから鹿児島の美術館に行きました。そりゃ驚きましたがな、その巨大な絵は実にリアルで、まるで写真のように鮮明にして繊細な筆使いに彩られた著名な建物の油絵でした。

トミやんぼけっとしてたんじゃないんだな、ああみえてなかなかシャイなやつだったんだ。

今回、67才にしての初めての東京での個展、20点ほど展示してあったのだが、どれも見事な作品だ。聞くと鹿児島にも描き溜めた作品がたくさんあるそうな...

トミやんの自由なる精神に宿る美意識に乾杯!

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富田画伯

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