トムプロジェクト

2016/07/08
【第839回】

風間杜夫ひとり芝居が終わったと思ったら、今日から又、新しい作品の公演が始まります。

これまた再々演になる「百枚めの写真」。おいらも半世紀ばかり、いろんな反戦劇は見てきましたが、この作品は、手前みそで恐縮なんだが反戦劇ベストスリーに入る逸品です。この芝居の中に99枚の名もなき庶民の記念写真が写し出されるんですが、この写真は胸に迫ってくるものがあります。戦地にいる父、息子たちに、元気な姿を確認させるために国家が撮ったものなんだが、その表情からいろんなものを想像させてくれます。国は戦意高揚を狙った意図がみえみえなんだが、明らかに残された家族の表情には、不安と期待と願い、そして恐怖の感情が読み取れます。歴史に国家に翻弄される市井の人達の悲しみが伝わってきます。この写真に6人の俳優が立ち向かっていくさまが、まさしく演劇的です。淡々と、時には激しく俳優の生身の身体が99枚の写真と拮抗していきます。

明後日は参議院選挙です。この国は、何だか不穏な空気に支配された時代に戻りつつあります。事実、国外でも日本人がテロの対象になりました。戦争は勿論良くないのだが、その行為に絶対加担しないための憲法9条を死守するための選挙かもしれませんな...忘却の民ニッポンの皆さま、どうせ投票したって変わらないんだから...なんていつもの常套句を垂れてると、貴方も、いつの間にか百枚めの写真に撮られ、近未来の戦地にいる父、息子に送られる羽目になりますぞなもし。

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清涼

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