トムプロジェクト

2017/04/26
【第946回】

今、藤原新也さんの新作「大鮃」を読んでいる...この作家はおいらより2歳年上で福岡県門司の出身である。彼の著作は「印度放浪」を皮切りに随分と読んでいる。旅が好きで写真と独特の文体で、その土地の体臭をプンプンさせながら綴られるドキュメント風小説は、鋭い文明批評にもなっている。おいらが最も好きな一冊は「鉄輪」である。彼の両親が門司で経営していた旅館が破綻し別府の鉄輪温泉に逃げたときの自伝小説でもある。写真家でもある彼の捉えた風景が、まるでその場にいるようなタッチで浮かび上がり、生と死、そしてエロスを匂わせてくれる。おいらが同じく少年時代に過ごした博多の長屋、遊郭、場末が見事にダブってくることに親しみを感じるのかも知れない...彼の著作「全東洋街道」「東京漂流」「メメント・モリ」どれもが、人が決して目に触れることのない事象をとことん凝視し続けることによって、物事の本質を突き詰めていく手法は変わることがない。

「大鮃」の中にこんな件がある

これまで太古(主人公の少年)が暮らしてきた日本のような国は、普通の日常でもテレビの中でもゲームのように人を飽きさせないようにめまぐるしく変化し、人々は数秒ごとにそれを忘れ、また次の興奮を求めて情報の渦に巻き込まれ、ついには疲れ果て、時にはひきこもりになったりする...「マークさん(太古が異国の旅先で出会った老人)。現実の世界というものはゲームの中やテレビや映画の中のように目の前が目まぐるしく変化したり、どんでん返しがあったりするような世界ではないのですね」

ハイテクに塗れ疲弊していく国家、人民の行く末に警鐘を鳴らすと同時に、己の眼、感性で現実に蠢いている自然の現象を感じ取り身体に焼き付けていくことがいかに大切なことかを書き続けてる作家の一人である。

年功序列、派閥均衡などなどで造られたアホな大臣がまたまた辞任。北朝鮮の刈り上げクンとアメリカのわざとらしい髪型クンとが一触即発だというのに、この日本の危機意識の無さ...しょんがなかんべさ!国民が選んだ政治屋さんばかりだもん...

946.jpg

新緑2

<<次の記事 前の記事>>