トムプロジェクト

2017/08/09
【第986回】

「夫・車谷長吉」を読了...おいらが大好きだった作家・車谷さんの奥さんであり詩人である高橋順子さんが、2015年に亡くなった長吉さんとの生活を綴った一冊。いやいや奥さんも大変な人と結婚したもんだと思いました。男48歳、女49歳の初婚同士、まだまだペンでは食べていけない旦那が強迫神経症を患い、日々の生活は想像を絶する困難のなか遂に「赤目四十八瀧心中未遂」で直木賞を受賞。おいらは受賞直後に、この作品を読んだときには、一文字いや、人文字の中に人間の悲喜こもごもの全てが盛り込まれている最近まれに見る傑作だと思い、周囲の人達に宣伝しくまったことをよく覚えている。まさしく長吉さんそのものが人間修行の旅に出て、その過程の中で出会った様々な人間模様の描き方が、キラリと光る刀のようでもあった。登場人物それぞれの、闇に覆われ見えにくい人間の業の鉱脈をより深く探っていく作家としての作業に感嘆しきり...この人の、もう一つの傑作は、朝日新聞に掲載されていた「車谷長吉の人生相談 人生に救い」これはおもろかったな。40歳の高校教師が教え子の女子生徒を好きになり「情動を抑えられません。どうしたらいいのでしょうか」という深刻な悩みに「破綻して、職業も名誉も家庭も失った時、はじめて人間とはなにかということが見えるのです。あなたは高校の教師だそうですが、好きになった女生徒と出来てしまえばよいのです」と突き放し、最後に「そうすると、はじめて人間の生とはなにかとういことが見え、この世の本当の姿が見えるのです」と回答。世の中の常識にそっぽを向き我が道を突き進み69歳で死んじゃた長吉さん...貴方が残した全作品、「車谷長吉全集 全三冊」二年前に購入し、ちょびちょび読んでますよ...

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長吉さんが画いた絵ハガキ

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