トムプロジェクト

2017/12/20
【第1036回】

今村朝子の「あひる」読了...平易な文章の中に人の思いがずっしりと感じられる小説だ。読みやすいので1時間ぐらいで読めるかな?でも、行間に詰められている想像せざるを得ない空白が、文学の深さを思い知らせてくれる。日常会話で綴られる文体で、不思議な寓話を生み出す作家の人間を凝視する優しさ、怖さがなんとも心地よい。

新宿も師走の足音とともに賑やかしい...この時期になると、道のあちこちにお恵みを乞う人達が出現する。40代の働き盛りの男性が「助けてください!」という紙を持って立っている。思わず、おいらも「何を助ければいいのかな?」なんて声をかけようと思ったのだがやめときました。一方、80代のおじいちゃんがカンカンを前において手を合わせている。百円でも入れようかなと思ったのだが、こちらもやめときました。この人たち喜捨した人たちの気持ちを正しく理解し感謝し、今ある状態からプラスに転化できるかどうかは、誰にも分らない...一方、喜捨することに自己満足している人も確かだ。師走に見る風景は、その言葉のごとくせわしさに溢れている。

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師走・新宿の空

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