トムプロジェクト

2018/01/31
【第1050回】

長年の友人であった斎藤暁さんが亡くなったことを昨日息子さんから連絡がありました...斎藤さんはNHKのテレビ界で長く、演出家・プロデューサーとして活躍され、NHKエンタープライズ21代表取締役社長、NHK専務理事、放送総局長と大役を歴任されました。大河ドラマをはじめ数多くの傑作を世に送り出した方です。そんなことよりも男としてダンディで気品があって、とっても優しい方でした。偉ぶることなく年下のおいらと対等に付き合ってくれました。おいらがまだ風来坊の時代から、気さくにゴールデン街で酌み交わし、いろんなことも教えてくれました。「けっちゃんみたいに自由に生きるだけで、僕は尊敬するよ...」なんて煽ててもくれました。何事も媚びることなく大人の仕事を凛としてこなされていく姿に、大人として歩む道を背中で教えてもらった気もします。年末に今は亡き母と弟が上京したことを知ると、紅白歌合戦のチケットを特別に頂き、母がとっても喜んだことも良い想い出のひとつです。男の品格、とっても大切だと思います...ボロは着てても、心は錦。

どんな境遇にあろうとも精神が屹立し心がピュアでありたいでござんす。おいらは、まだまだ修行中の身でござんす...昨日は斎藤さんの83年間の生涯に対してワインで献杯しました。

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はや梅でございます...

2018/01/29
【第1049回】

トム・プロジェクトでは芝居以外にも「ありがとうの手紙」というステージをやっています。先日も四国中央市土居町文化会館でやってきました。地元の人達から「ありがとうの手紙」を募集し、その手紙を下條アトムさんの温かい語りで読み上げ、沢田知可子さんの歌声を交えながら進行する舞台です。先日の公演で読み上げた方の娘さんから、当日は遠方(福岡)なので参加は出来なかったのだが、お母様から「本当に素敵な想い出が出来た...」とうれし涙の電話がかかってきたとのことで感謝の手紙が送られてきました。取り上げられたお母様の手紙は次の一文です。


                  あなた、ありがとう

そちらの天国は、どうですか。この世とあの世、どこに境があるのでしょうね。あなたが私の側にいなくなって、はや三年。朝、「いってらっしゃい」と見送ってそのまま。あなたの死の知らせ。もうパニックになって頭真っ白に。苦しかった、痛かった、心細かったね、一人で寂しかったね。もう、たまらなくて、いとおしくて、いとおしくて...。心の底が、哀しみにまみれた時は不思議と涙出なくて。会いたい、会いたい、声聞きたいよ。あなたとは、大学入学時に、知り合い、その時、ピッピッピッと電流が走り、このね。沢山笑わせてあげてね。沢山の人に幸せをあげてね。みんなをあたたかくしてあげてね。あなたの隣で、あなたの笑顔に包まれて、すごした全ての時間、本当に幸せでした。ずっとずっと一緒にいると思っていたのに。私の心のフィルムに焼き付いているよ、十年後も、二十年後も、いつまでも。私いい奥さんだったかな。今を大切にいきていくね。この星であなたと出会えたこと、あの星でもあなたと会いましょう。言い尽くせない、沢山の思いを、この言葉で「ありがとう」。わたしがそちらに行ったら、一番先に見つけるから、必ず見つけるからね。胸に飛び込んで行くからね。抱きしめてね...

 


そして、お母様が公演当日と次の日も嬉しくて、そして亡き夫を思い出してなかなか眠れなかったほどに喜ばれていたとのこと...母に最高のプレゼントを本当にありがとうございました。そして、空の上の父への想いを届けてくださって、本当にありがとうございました。と娘さんからのありがとうの手紙。
感謝の気持ちが、ありがとうになって、世界のあちこちに羽ばたいていけば戦争なんぞは無くなる筈なんですがね...日々、己の心に「ありがとう」の文字を刻み込み生きていきたいものです。

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ありがとうの手紙

2018/01/26
【第1048回】

東京芸術劇場で和製ミュージカルと銘打った「写楽」を観劇...あの浮世絵師写楽の絵、実は影武者の女性が描いていたという設定で進んでいくドラマ。この芝居で版元、蔦屋重三郎を演じる村井國夫さんがとっても素敵でした。御年74歳、色気もあり、重厚な演技にしびれる歌声。若い俳優にとって、こんな魅力あるベテランが居るだけで、とてつもない勉強になると思います。トム・プロジェクトでは2012年に上演した「満月の人よ」での、だらしなく飄々とした佇まいで演技する村井さんには本当にびっくりしました。それまでの村井さんのイメージは、ニヒルで威風堂々としたミュージカル俳優という認識でしかありませんでした。ところがどっこい、田舎の駄目親父を何の違和感もなく自然体で表現していく姿に唯々感動。それだけではとどまりません...2016年での「砦」の芝居では、権力に対峙する老人を、まさしく骨太で心情溢れる表現力で演じて頂きました。舞台に立つ役者の姿には、その人の過ごしてきた人生が重なります。試行錯誤の中、己の感性で何を掴み取ってきたのか?どのような人間関係を培ってきたのか?役者の一挙手一投足ですべてが視えてきます。そこが生の舞台の面白いところです。普段は、物静かで淡々と話される村井さん。舞台に上がると、74年間生きてきたエッセンスを要所要所に散りばめていく演技力は、これぞ役者。

その「砦」、今年の春、再演します。これを見逃しちゃ、芝居の話は語れませんぞなもし...

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まだまだ雪国です

2018/01/24
【第1047回】

稲垣えみ子著「寂しい生活」読了...2011年東日本大震災をきっかけに、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、エアコンなどなどほとんどの電化製品を破棄し、まるで江戸時代の生活に戻った稲垣さん。しかも、長年勤めた朝日新聞社も辞めちまった...今ある家電は、電灯、ラジオ、パソコン、携帯だけという、まさしくシンプルライフ。その環境の中で次々と新しい発見を見いだし心豊かな生活を過ごしている様が活き活きと語られている。挙げ句の果てにガスもやめちゃい新たな食生活のチャレンジしている。現世が欲望をひねり出す時代を産み出すために、有名企業が戦略十訓として掲げている。

 

もっと使わせろ

捨てさせろ

無駄使いさせろ

季節を忘れさせろ

贈り物をさせろ

組み合わせで買わせろ

きっかけを投じろ

流行遅れにさせろ

気安く買わせろ

混乱をつくり出せ

 

この戦略に踊らされ、人は終わりのない欲望ゲームに否応もなく参加させられ疲弊してしまう。そろそろこの果てしない欲望ゲームから脱せよ!という訓戒が原発事故ではなかったのか...なのに、いまだ原発を他国に売り込むこの国って一体なんだろうね!所有することの貧しさ、所有しないことによって生ずる豊かさ、そんなことを考えさせてくれる書物である。

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まだまだ溶けませんぞ...

2018/01/22
【第1046回】

名画の灯を守り続けている飯田橋ギンレイホールに行ってまいりました...この日、上映の映画はフランス映画「エル ELLE」とイランフランス合作映画「セールスマン」。いやはや「エル ELLE」の変態?人物オンパレードには楽しませていただきました。さすがおふらんす、日本人の道徳観からすれば変態に映るんでしょね。しかし、変態男に犯される主役を演じるイサベル・ユペールには圧倒されました。63歳の熟女女優がすべてを曝け出しながら、生い立ちの不孝から始まり男遍歴女遍歴、そして駄目息子を含めてなんら愚痴をこぼさず平然と仕事と私生活をこなしていくタフさに女性の底チカラを感じました。日本の女優でここまで演じ切れる人はいないでしょうね...女優は奇麗じゃなきゃ、憧れのスターじゃなきゃ、というのが定番でございます。日本だけじゃございません、この映画の主役をハリウッドの名だたる女優も全員断ったそうな。これぞ役者魂!を魅せつけられた映画でございました。あっぱれ!賞をあげたいです。

「セールスマン」は89回アカデミー賞外国映画賞受賞、第69回カンヌ国際映画祭脚本賞、男優賞受賞ということで期待して、こちらをメインに劇場に足を運んだのですが...まあ、しっかりと創られてはいるんですが、新劇を観ている感じ。設定もアーサー・ミラーの代表作「セールスマンの死」の舞台を交えながらの展開、主役を演じる俳優さんがもろ新劇の役者さん。端正な顔立ちは老舗劇団俳優座の若かりし頃の加藤剛さんを彷彿とさせましたな。ほかの俳優さんもしっかりとした演技で非の打ちどころがないのだが、破綻してるストーリーなのに破綻のない演技が、おいらにとっては食い足りない。

今日は、都心も雪が降るそうな...雪に弱い東京の交通網、週明けの飲み屋さんがっくり。こんな日は、どなたもゆっくり家で暖かい鍋でもつつきなさいな...

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どなたかな!?

2018/01/19
【第1045回】

一昨日、第158回芥川賞を受賞した若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」。これから読みますが、63歳での受賞は賞の歴史上二番目の高齢者。岩手県遠野市出身で子ども2人を育てた専業主婦。55歳のとき夫が亡くなったことをきっかけに小説講座に通うようになり、執筆活動を始めたとのこと。いやいや、人間その気になればなんだってやれることを証明しましたな。専業主婦をやりながらのもやもやした気持ちと、連れ合いの死により残された人生の尊さを改めて思い起こし行動に踏み切ったんでしょうね...おいらも、しみじみと残された人生(少ないかもしれないけど、まだまだという気もします。あくまでも本人の自覚次第だと思いますが)ほんまに考えちゃうけど、今日を生きる!ってことは、いや生きてることを実感出来るのは、やはり世のため人のためになってるかどうかがバロメーターじゃなかろうか?自己満足じゃただのマスターベーションでございます。日々新鮮!日々発見!なにか生み出さなきゃ生きてる意味がありまっせん...といって、張り切り頑張りすぎるのも良くありませんな。おいらはもともとラテンの血が流れてる性分、血気盛んではあるのだが、まあどうでもいいやなんて気質も持ってます。その幅をのらりくらりと楽しみながら生きてきた気がします。でも、勘ピューターだけは、いつもピカピカに磨いております。これが錆ついたら最期、全てがガラガラと音を立てて崩れ落ちてしまいます。今日も不可思議な街新宿ををふらりんちょんしながら次なるアイディアを探し求めております。

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今日も新宿燃えてます

2018/01/17
【第1044回】

阪神・淡路大震災から今日で23年が経つ...新宿のマンションの部屋にあるテレビを見ながら、これがこの世の出来事か!と呆然としているおいらが居た。あのときに原発の危険性を察知、予知していれば、東日本大震災で今なお廃墟となったしまった村、街はあり得なかったはずだ。自然は何度も警告をしているにも拘わらず、愚かな人間はいつの世も己の欲望に邁進するばかり...昨日も、車内で狂ったようにゲームに熱中している青年を見るにつけ未来の希望が失せるばかりだ。その顔は鬼のようであり、穏やかさ、優しさとはとうてい無縁の形相である。隣の母親も息子の負けじとゲームに興じている...こんな光景に異を唱えるわけではないが、おいらは静かに本のページをめくり続ける。生きてることは想像力を楽しむゲームではなかろうか...大きく羽ばたく想像力を駆使しながら、この世に不可欠な創造物を生み出す人たちが増えれば、自然が時折人間にお叱りをする災害も最小限に食い止めることが出来るに違いない...歴史に学ばない人類はいつか滅びるに違いない。

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冬枯れの樹

2018/01/15
【第1043回】

先週の土曜日はトムトム倶楽部の会員さん、トムの社員、所属俳優が一堂に集い新宿で新年会をやりました...芝居は観客があってこそ成り立つものです。その中でも、トムトム倶楽部の会員さんはトムの芝居が大好きでどんなものが仕上がるか判らないのに、年間会費を先払いしてくださる応援団みたいな方々ですから、まさしくお客様は神様!にぴったりの皆さんです。だからこそ、この日は華やかに楽しくをモットーに3時間プログラムを組みました。飲んで食べて一言コメント、社員と役者のコント、ジャンケン大会による景品の争奪戦などなど素敵な時間であったに違いありません...と、おいらは理解しておりますが。
そして、今日から又、仕事がいつものように始まりました。今日のランチは伊勢丹会館にあるフラメンコレストラン「ガルロチ」勿論、昼間はフラメンコショーはやっておりません。12時半に入ったのだが、広い客席においらを除いてお客は一組。なんじゃろかいな?早速、パエリアランチを頼むのであるが、こんなにお客が少ないと何だか緊張しますがな...el gordo(太った)女性が流暢な日本語で料理を運び丁寧に説明をしてくれる。さて頂きだしたのはいいとして、その女性と年配のメガネをかけた男性が、おいらの食べ姿を凝視して居るではないかいな...何だか緊張しますがな。そんなに見らんといてと思うのだが、これもお客が居ないので観察される宿命なのかな?でも、メインのパエリアは大変美味しゅうございました。注文してから調理するので25分はかかったかな。スープ、前菜、パエリア、珈琲で¥1600なのでまあまなのかなと思うのだが、どうしてお客来ないんだろう?この店の前身は「エル・フラメンコ」。新宿で45年ばかりスペインの一流フラメンコダンサーを招聘して見事なショーをやっていました。おいらがスペインで鑑賞したダンサーより格上の踊り手が観れると言うことで何度か通ったもんです。そんな馴染みの愛する店ですからエールを送りたいのだが、あの観察スタイルをやられるとちょいと引いちゃうかな?年配のおじさんはエル・フラメンコ時代から居る方で昔話をすると嬉々として話し出しました。これもまたちょいとうるさいのかな...お店の在り方は本当に難しいもんでございます。

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まあまあの味ですばい。

2018/01/11
【第1042回】

寒風吹きすさぶ新宿のビルで、まるで曲芸師の如く立ち振る舞うガラス磨きの職人。数年前にデビューしたバスタ新宿の大きな窓を、ひらりひらりと渡る姿に信号待ちのお客も驚きの表情で見とれていました。おいらも大昔にやったことがあるので、それはそれは冷や汗もんでございましたよ。生きた心地がいたしません...落下してひしゃげた蛙みたいになるのも嫌なんで、ただただ窓ばかりを見つめて磨いていました。一度、スクイジー(ガラスを磨く道具)が手元を離れ道行く人に当たりそうになったときは肝を冷やしましたな...それを機にこのバイトはやめました。一昨日も、その当時一緒にバイトしていた芝居仲間のたっちゃんとでの宴席で、この当時の話で盛り上がりました。草刈り、清掃、公衆便所のパトロール清掃などなど日銭を稼ぐために人が嫌がる仕事も厭わず黙々とこなしましたものでございます。好きな生き方をやるには、仕事に関しては選別出来る立場ではないのは至極当然。アウトローの視点から凝視する社会だからこそ見えてくるもんがあるんですな...誰に気を遣うわけでもなくおのれの感性で、それぞれの価値を見いだす絶好の機会であったかもしれません。あの日あの時の、嘗てのおいらの姿を眺めつつ、思えば遠く来たもんだ...

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街中の忍者

2018/01/09
【第1041回】

今年の第一作「Sing a Song」の稽古が始まりました...戸田恵子さんをお迎えして平和の尊さを訴えたドラマです。心温まる戸田さんの歌と演技、しっかりと支える円熟した芝居を魅せてくれる大和田獏さん、唐組で重厚な演技で人気があった鳥山昌克さん、トラッシュマスターズで個性あふれる演技で注目された高橋洋介さん、劇団チョコレートケーキで人間味あふれた表現で観客を虜にした岡本篤さん、トムプロジェクトの数々の芝居でおなじみの芯のある女優藤澤志帆さん...いやいや、いいメンバーが集まりました。2月7日の初日が楽しみです。

春の陽気で一杯の新宿では、憲法九条を守る集会が行われていました。

今年こそ、いや未来永劫、穏やかで平和な世界であってほしいものですね!何度も言います!戦争は勝者も敗者も得るものは何もありません。世界に誇る憲法九条、まさしくノーベル平和賞を受賞して当然だと思います。こんな素晴らしいものを世界に誇らしげにするどころか変えようっていう輩がいるのがおいらには信じられません。日本のお宝をもっと大切に、右も左も関係なく、もっと知らしめる働きをせねば宝の持ち腐れになっちゃいますぞなもし皆の衆。

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未来永劫の平和を

2018/01/04
【第1040回】

新しい年が始まりましたね...今日から又、エンヤコラ仕事です。おいらは仕事ってやつ生まれて以来、あんまり好きではないんですが、仕事としてではなく何かに出会いたいという好奇心から働いたのではないかと思ってます。端を楽にさせたいから働く。端とは中央や中心からいちばん離れた部分、そうです、あまり光の当たらない生き物、場所、物のために身を粉にする。これが本来の正しい仕事の定義ではなかろうか...おいらは、それはそれは子供の頃からよく働きましたよ。正月なんぞは、新聞配達、郵便配達の掛け持ちでお雑煮なんかの記憶はありまっせん。でも、一度だって嫌だとか苦しいとか思ったことはありませんでしたね...世の中の出来事をいの一番に知りたい人のために届ける新聞、待ちに待った年賀状を手にする人達の笑顔を思うと、一刻も早く届けたい。そりゃ韋駄天小僧になりますわね。

まあ、そんなわけで今年もぼちぼちやりますのでよろしくお願いいたします。

それにしても年頭から、刈り上げクンと、ややこしヘアーのおっさんが机の上の核のボタンの大きさ自慢をしてるニュースが流れるとこの時代の不幸を感じます。おいらも、この先そんなに長くない人生なんで、勝手にしてくれや!なんて思いますが、この美しい地球防衛隊の一員として微力ながらワン、ワンと吠え続けたいですね...おいら年男でもありますから。

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元旦、東京の空

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2日、スーパームーン

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3日、新宿の空