トムプロジェクト

2024/03/18
【第1869回】

大相撲三月場所も昨日で中日を迎えました。一時はモンゴル勢の勢いで純日本産の力士は見る影もない有様でしたが、ここのところ新鋭、大の里に新大関、琴ノ若の台頭で再び盛り上がりを取り戻しつつあります。おいらの年代は野球と同じく相撲も人気のスポーツでした。若乃花、栃錦、吉葉山なんて人気の力士が勢ぞろい。なかでもおいらは吉葉山のファンでした。よか男のうえに心優しい関取でした。のちに大横綱になった大鵬はまだやせっぽちで幕下あたりだったと思いますが、新聞配達の帰り道、宿を構えていた万行寺での早朝稽古を見学した時、既にこの力士は大物になる雰囲気を備えていました。激しい稽古で知られる二所一門の稽古、それはそれは激しいものでした。そんな稽古を見ながらキヨシ少年は、おいらはまだまだ甘いと思いながら気合を入れなおした次第です。

今、多くの優勝を積み重ね引退した白鵬親方の処遇を巡って相撲協会が揺れています。考えてみれば、ここ数年の相撲人気を支えてきたのはモンゴル力士の活躍があってからだと思っています。彼らが居なければとっくに潰れていたかもしれません。確かにモンゴル力士の品性は感心しないことも多々ありました。引退した元横綱、朝青龍なんて力士はひとり汚れ役を買って出たダーティーヒーロー。でも強かった!異国の地で一旗揚げる根性はただものではなかった気がする。日本の力士がなんとひ弱に見えたことか...日本も豊かになり、相撲の世界に入る若者が減少したのも理解はできますが、入門したからには頂点目指す気概は持って欲しいと思って観ています。スポーツ観戦で一番つまらないのは、気持ちが見えないプレー、現役生活そんなに長くはないのだからファンの皆さんの記憶に残るプレーを残して欲しいと思います。

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開花を待つ神田川

2024/03/15
【第1868回】

昨日の参院政倫審での世耕弘成議員の堂々たる態度にある意味感心した次第である。あそこまで堂々と演じきれれば千両役者である。誰が見てもそのからくりを知っていながら知らないと言い切る面の顔の厚さはただものではない。ほとんどの国民が説明されてないと声をあげているにも関わらず誰一人として一切明らかにしようとしない議員集団がこの国の権力を握ってることに只々呆れるばかりである。せめてもの若手の議員が立ち上がって異を唱える行動を起こせばまだしも、なんともへんちくりんパーティを開催し失笑を誘う有様である。誰もが我慢を重ねたコロナの時期、物価上昇でやり繰り生活を強いられた中、この厚顔無恥集団がコソコソと裏金作りに邁進していたかと思うと怒りを覚える。

一方、株価は上がり春闘での賃金アップ、なんだか景気の良い話に聞こえるのだが、この国の多数を占める中小企業の人達、年金生活者にとっては相変わらず苦境の日々が強いられているのが現状だ。世界幸福度ランキングも先進国の中では最下位。よく失われた30年なんて言葉を耳にしますが、このままだとこの先、失われっなっぱしの日本の未来が見えてきそうです。

「桜が一週間で散るのは、われら日本人が飽きっぽいからだ」なんて言われないようにますますの監視ともに、選挙には政治家の質をあげる投票をしましょう。

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弥生の月と星

2024/03/13
【第1867回】

昨日は春の嵐で一日荒れ模様の天気でしたが、今日は一転春らしい日和になりました。東京の桜開花宣言予想が3月19日と発表していました。年毎に早くなってきてますね。これも地球温暖化のせいでしょう。一年の中で、春の予感ほどウキウキするものはないでしょう。

人間生きてていつもこのワクワク感があれば人生楽しいに決まっています。その楽しみは待っていても訪れるものではありません。始終クンクンと嗅ぎつけ感じるチカラを保持してないとダメなんですね。

漫画家の東海林さだおさん、86歳になっても好奇心旺盛、生きることを楽しんでいます。

東海林さんの「おでん」に対する彼なりの見方が面白すぎて笑っちゃいます。

世界的和食ブームで、先陣を切ったのは寿司で次はおでんでは?でも、おでんはあまりにも身なりが貧しい。ほとんどが色は茶色、田舎っぽく、形もむさくるしい。たとえばチクワ、茶色いボロのようなものを全身にまとっている。おまけに体のまん中に穴が開いている。穴もボロも繕ってから人前に出るのが礼儀ではないのか。だが、聞くところによると、この穴はおでんのツユがよく染みこむようにチクワ自ら開けたのだという。チクワは我が身をなげうってまでおでんになりたかったのだ。だが、その一途は、はたして世界の人々に通じる一途なのだろうか。西洋合理主義から考えれば、商品の穴は欠陥である。だが、こういう考え方もある。チクワの穴の中には何も存在しない。無である。無は禅の教えにつながる。禅の教えを具現化したものがチクワということになる。ビートルズのジョン・レノンは禅に傾倒していた。ジョン・レノンは理論上チクワを食べていたことになる。そういうことになれば、世界中の人々はアッというまにチクワのファンになりおでんのファンになっていき、世界中におでんブームが巻き起こる...てな訳です。

どうです!この飛躍、こじつけ、いや想像する遊び心...いつどんな時にもこうやって生きてりゃ言うことありまっせん!さあ、今日から実践してみてはいかが皆の衆。

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春の公園

2024/03/11
【第1866回】

東日本大震災から13年。未だに避難者が2万6000人、そして、人が死んでしまうレベルの放射線を放つ溶け落ちた核燃料「デブリ」の取り出しは数グラムでさえ、13年たった今もできていません。そんな状況の中、岸田政権は原発の再稼働どころか新原発の建設まで打ち出しているのですから狂気の沙汰としか言いようがありません。聞くところによると、日本の原発の停止はアメリカの都合によってできないそうです。すべてがアメリカのお伺いを立てられないと事が進まない敗戦国の宿命、そして日米軍事同盟の縛りがそうさせています。今年元日に発生した能登半島地震然り、このままいけば地震大国日本は自ずから消滅してしまうに違いありません。何とかアメリカを粘り強く説得できる政権が誕生することを願うばかりです。

未だに故郷に戻ることが出来ない帰還困難区域の人たちの諦めに似た表情、我が子を津波に流された海を眺めながら「死ぬまで諦めきれない...」とつぶやく年老いた母親、この日が来るたびにあの惨状が甦ってくる人たちの悲しみを、残された人たちがどう受け止めるか?腐りきった現政権は勿論、この現状を少しでも前に動かす人材、システムが機能しないことに怒りと悲しみを覚えます。

昨日、村井國夫、音無美紀子ご夫婦による、歌と朗読で紡ぐ愛の物語「恋文」に行ってきました。その中で、お二人の知人である方の手紙に思わず涙しました。東日本大震災当日、津波に遭遇しながら奥様が必死に手を差し伸べながらも力尽き流され、一カ月後に見つかったご主人。そのご主人にあてた「恋文」、音無さんのところに送られ直筆で書かれた巻紙を朗読する音無さん、その「恋文」に沿う歌を唄う村井さん。両夫婦の思いが一つになる感動的な瞬間でした。

原発のない、そして戦争がない世界...どうすれば良いのか!今生きているニンゲンが思考し行動しなければいけないことを肝に銘じなければならない3月11日です。

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「恋文」町田まほろ座にて

2024/03/08
【第1865回】

先月亡くなった小澤征爾の芸術と銘打ったCD16枚組の壮大且つ繊細なる音すべて聴き終えました。改めて、小澤征爾なる人物の生きざまが、命を懸けてタクトを振る姿が目に浮かぶ。魂をスパークさせる指揮が、決して西洋の借り物でなく音楽そのものに国境が無いということを実践した人でもありました。25歳の時、インド洋の真ん中で貨物船のテッペンに登って、水平線をジロジロ見回した時、なるほど地球は随分でかくて、丸いものだと思ったそうだ。敗戦を経て世界に対峙しようとした心意気を感じる。N響とのトラブルにもめげず「僕はただ音楽をやりたい!」と世界に打って出た行動力も半端ではない。

どの世界においても冒険心からスタートした人ほど、とてつもないものを生み出している。

夢は追うものではなく、しがみつくもの。地位や名誉に翻弄されることなく、己の忠実なる魂にしがみつき行動する姿こそが新しい価値観を生み出すのではないか。

小澤さんはこんなことも言っていた。楽器から流れ出す音は人間の声と同じである。だからこそ、あれほど人目もはばからず情熱をもって演奏者に伝えるスタイルを維持し続けたに違いない。

お隣の韓国、中国、そして我が日本、もうそろそろ立身出世の妄想にピリオドを打ちませんか?いい学校に進学、一流企業に就職したからといって幸せな人生とは言えません。そんなことにお金と時間を投資するんだったら、己の心に真摯に向き合うことに投資し決断、行動し、自分の道を切り開いていく生き方の方が魅力のある人生だと確信します...一度きりの人生ですから!

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今朝の杉並区

2024/03/06
【第1864回】

昨日、新宿西口地下イベント広場でこんなものを見つけました...懐かしいですね。おいらが子供の頃は、こんな看板に憧れて映画への夢を育んだ気がします。手書きの看板の前に佇み、観たいのはやまやまなんですがお金が無く、入場するおっさんの傍に寄り添いあたかも親子のようになりすまし無料鑑賞をしたこともありました。

この看板を描いた人は、今は亡き久保板観さんです。中学一年生の頃から映画看板の絵の練習にのめりこみ、昭和32年、中学卒業後に東京青梅市にある映画館「青梅大映」で看板絵師の仕事をスタート。年間365枚以上の映画看板を描く生活をしたそうだ。その後、テレビの出現により映画産業も斜陽の憂き目にあい仕事がなくなり、商業看板業に転職。平成3年から地元商店街町おこしに馳せ参じ、平成6年からは青梅の商店街に昭和の映画看板が飾られるようになった。久保さんは平成30年脳梗塞により逝去、享年77歳。

そんな久保さんが精魂傾けて描いた看板を前にして、暇さえあれば映画館に通った日々が甦ってきます。高校時代は福岡市高校映画連盟を創設し毎日のように会長という権限を縦横無尽に利用、いや活用し、中洲の映画館に入り浸りでございました。そして、お嬢さん学校も巻き込み映画談義で楽しい時間を過ごさせて頂きました。決して映画を利用したのではございませんことよ、とことんおいらは映画が好きだった!映画にかかわる仕事がしたいという思いで東京行きを決めた次第です。

それにしても、何事においても利便性が問われる現世、このローテクな職人芸、そして生き方、貴重ですし大切にしたいですね。

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昭和の名画

2024/03/04
【第1863回】

先週の土曜日、座・高円寺にて、糸あやつり人形一糸座による「崩壊 白鯨ヲ追ウ夢」を観劇。この一座の前身は結城座です。江戸時代から継承された糸あやつり芸を初めてみたのは50年前です。50人ほどの小さな小屋で人形を操る結城孫三郎の見事な芸にすっかり魅了された記憶があります。今回の一糸座は結城座から独立して20年になるそうです。「劇団桟敷童子」の東憲司氏による、あの有名なハーマン・メルヴィルによって書かれた長編小説「白鯨」を下敷きに書かれた作品でした。「白鯨」と言えば思い出すのが1956年に上映されたグレコリー・ペック主演による映画。片足の船長を演じたグレコリー・ペックの真に迫る演技が今でも鮮明に記憶に残っています。おいらが若い頃在籍していた演劇群「走狗」でも上演しました。勿論、アングラ芝居ですから原作からは、はるかに逸脱してはいたのですがハチャメチャ奇想天外な展開でテントに集まったお客はそれなりに楽しんでいました。博多公演では室見川河畔にテントを建て、ラストには今は亡き美術家・島次郎が作ったブリキの鯨が百道の海で遊泳する姿が懐かしく想い出されます。

あやつり人形を操作する人形がまるで生きているかのように見えるのは、あやつる人の技術ではなく、身体から糸を通じてどれだけ魂を吹き込められるかにかかっていることを再確認しました。今回の芝居でも、血筋を引く江戸伝内さんの繊細な糸の捌きが人形・船長エイハブの一挙手一投足に哀歓と激しい闘争心が痛いほど感じられました。その活き活きした人形にいかに対峙していくか?生身の俳優陣の奮闘ぶりも見応えがありました

演劇はあらゆる可能性を秘めています。今回のラストにも舞台に置かれたごみにしか見えない物体が、一瞬にして空飛ぶ鯨として泳ぐ姿を眺めながら、人の想像するチカラと創造する楽しみがなんと素敵なことであるかを再認識させられながら劇場を後にしました。

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もうすぐだね

2024/03/01
【第1862回】

今日から弥生です。下旬には桜も満開、春の到来で身も心も軽快になってくるんでしょうね。

昨日で、「モンテンルパ」全公演、無事に終えることが出来ました。本番間近にコロナ、インフルエンザの猛威に襲われ、あわや公演中止なんてことになりかねない状況を、見事はねのけての今回の舞台。芝居の神さんは又してもトムを守ってくれました。スタッフ、キャスト皆さんの頑張りに只々感謝です。そして、呼んでいただいた演劇鑑賞会の方々の温かい心遣いがあってこその公演でした。心待ちにしてくださった皆様に満足していただける芝居の仕上がりであったことを、日々の報告で知らされる度に内心ホットした次第です。

一方、この国の政治、ほんまにふざけた状況に直面しています。昨日、今日と2日間にわたり開かれた衆院政治倫理審査会、首相はじめ安倍派の幹部、皆知らぬ存ぜぬの一点張り。ふざけるんじゃないよ!と言いたい。ここまで国民をなめ切った姿に開いた口が塞がらない。誰一人として脱税の意識もなく、会計責任者に責任を押し付ける白々しい顔を見るにつけテレビ中継も見る気がしなくなりました。早く解散して、選挙で自民党をこき下ろしたいところだが、喉元過ぎれば熱さを忘れるのが常の日本国民性を思えば悲観的になっちゃいます。そんなもやもやを吹き飛ばすかのような大谷選手の結婚ニュース。ここまで完璧に知られない彼の思考、行動、改めて感心してしまいます。すべてが万能、こんな人物が野球界だけにとどまってしまうのもなんとももったいない。

土の中からひょっこりと花開く野の花。おいらの顔も思わず緩んでしまいます。

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クロッカス

2024/02/28
【第1861回】

昨日、高崎演劇鑑賞会で久しぶりに「モンテンルパ」を観てきました。高崎は群馬県では規模的には一番大きな町である。日本一のだるまの産地でもあり芸術活動も活発である。駅前では早速ストリートミュージシャンがいい音鳴らしておりました。

そんな街で活動を続けてきた高崎演劇鑑賞会もコロナの影響で、ここ数年大変苦しい時期がありましたが、演劇の灯を消してはならないとの思いから少しずつ盛り返し元気な姿でトムの芝居を迎えてくれました。

今月7日、東北演劇鑑賞会でスタートした「モンテンルパ」もいよいよラストが近づいてきました。久しぶりに会った役者5人衆、さぞかしお疲れモードかな?と思いきや元気もりもりでございました。芝居もさすがに回を重ね安定した舞台を魅せてくれました。いわき演劇鑑賞会では終演後、スタンディングオベーションで大盛り上がり、役者さんたちも大感激。トム・プロジェクトのキャッチコピーでもある

「舞台の素晴らしさは 新鮮な感動であり発見です!観る側と創る側が夢のある舞台を創りたい!」に相応しい現場を創出していることに感謝と勇気をもらえます。

残り今日と明日の2ステージ、無事に千秋楽を迎えることを願うばかりです。

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梅林

2024/02/26
【第1860回】

31年振りにビクトル・エリセに逢えました...おいらにとってエリセ監督の「ミツバチのささやき」「エル・スール」は映画史の中でいつまでも記憶に残る作品でした。今回のスペイン映画「瞳をとじて」なんと31年振りの長編映画です。3時間近くの作品、人によっては冗長なシーンが多く居眠りしちゃいそうなんて方もいるんでしょうね。よくよく観てみんしゃい、このデジタル化が進みテンポを要求される時代に、ここまでじっくりと登場人物の表情を、粘り強く映し出し内面に迫る姿勢に、こちらまで見続け記憶してしまう映像のチカラ、説得力に驚嘆。この映画は、登場人物の監督が制作中に疾走した俳優を探すというシンプルなストーリーなのだが、その過程で出会う人物像がすべて過去と現在そして未来を想定させるシーンの連続である。エリセ監督の映像はいつもながら静謐な色合いを醸し出す。要するに浮いていないのである。どこまでもより深く内面に沈着していく説得力がある。観る側もスクリーンに落とし込められてしまう映像の魔術師だといっても過言ではない。得てして、作品を創る際には面白くするためにテクニックを多用し興ざめしてしまう映画が多々ある。

この監督にはこのあざとさが一切感じられない。ただひたすらに、淡々と生きていく間に無くした心のよりどころとなる何かを拾い集め、その断片一つひとつに思いを馳せ思い出す、あの日、あの時の肌で感じた体温と高揚感。31年振りに創ることが出来た監督自身の現在の心境を綴った今回の作品は、映画は永遠不滅、どんな過去をも一瞬にして蘇らせる心の琴線であることを再認識させてくれました。

邪魔しない音楽も素敵でした。映画「リオ・ブラボー」の挿入歌、ライフルと愛馬のまさかの替え歌、監督のチャーミングな一面を感じました。そして、「ミツバチのささやき」に5歳でデビューしたアナ・トレントが50年振りに再びアナ役を演じていました。彼女が記憶を亡くした父親と対峙し「Soy anna(私はアナよ)」と呼び掛けて目を閉じる...

おいらの記憶が映画を支え、映画がおいらの記憶を支える。なんとも至福な時間でございました。

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瞳をとじて

2024/02/21
【第1859回】

昨日は、トラッシュマスターズ第39回公演「掟」を下北沢駅前劇場で観てきました。ある地方都市の市長選挙を巡る顛末を描いた作品です。日本のどこかで今でも、保守的な人たちと変革しようとする人たちとの闘いは日々繰り広げられているに違いありません。国会で問題になっている裏金なんてものは、地方都市ほど日常化し未だに改められることがなく、未だに続く自民党政権の温床になっていると思われます。

今回の芝居で一番驚いたのは、なんと新劇劇団のベテラン俳優の方々が4人も出演されていること...随分昔の話になりますが、おいらが芝居を始めたころはアングラ演劇が台頭し、その新しい動きに共鳴し、新劇劇団のなかからも反新劇運動がおこりいくつものグループが誕生しました。新劇の体質が持つアカデミック的なものにNOを突きつけた俳優、演出家、作家が古典ではなく今を描く作品を上演し喝采を浴びました。状況劇場、黒テント、早稲田小劇場、天井桟敷などなど、おいらも演劇群走狗なるものに所属し7年間テント担いで全国を駆け巡りました。今まさに大衆と同じ地平に立ち生の肉体を曝け出し吠えていたんでしょうね。

新劇で長い間培われたベテラン俳優さんと若い人たちの競演は見応えがありました。中津留章仁の作品をリスペクトしながら、3時間近くの芝居を成立させようとする姿は、演劇を超えた人間の深い繋がりの感じさせてくれました。どこの世界も年齢は関係ありません。

ミュエル・ウルマンの青春に関するこんな詩があるじゃないですか。
  青春とは人生のある期間ではなく心の持ち方を云う。
  薔薇の面差し、紅の唇、しなやかな手足ではなく、
  たくましい意志、ゆたかな想像力、燃える情熱をさす。
  青春とは人生の深い泉の清新さをいう。

おいらももうすぐ78歳、そりゃ体の衰えは日々感じますよ...でも、こうやって今日も目が覚めたら生きてるんだもん...よっしゃ!今日も楽しんでやろうなんて気持ちになっちゃいますね。

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トムの支店ではございませんよ

2024/02/19
【第1858回】

おいらは、やはり詐欺師だった...先週、妻の誕生祝い(古希)で、とあるイタリアレストランに行くことになりました。初めての場所で、スマホ片手に目的地に向かうが、なかなかわからずお店に電話をしました。おいらの声がデカすぎたのか前行く二人のオッサンがおいらを振り返っていました。それにしても二人して振り返ることでもないとは思いましたが...先ずは間違えて一本目の道に迷い込み、ここではないと思い一つ先の道路に出ました。左右確認すると右手にイタリア国旗がはためいており、「この店に間違いない!」と歩き出し店のドアを開けようとした瞬間、おいらの後ろを歩いていた妻が二人のオッサンになにやら問いかけられているので、何しているのだろう?なんとこの二人のオッサン刑事だったんです。妻の話によると、先程のおいらの店探しの電話が、怪しいと感じ追跡したらしい。おいらがオレオレ詐欺の一味で、妻は騙されそうになった被害者女性と思いマークされたというわけだ...おいらが店のドアに立つ姿を指さしながら「夫です...」と答えたところ、二人の刑事はズッコケてしまいました。それにしてもこの二人、どうみても刑事には見えません、職人さんと見ましたね。その辺の服装、佇まい、見事というしかありません。まさしく演技賞もんです...妻に職務質問する前にきちんと警察手帳を見せたんですから間違いはありません。照れくさそうに立ち去る二人のデカ、疑ってスミマセンなんて顔していました。

ここで改めて、おいらはやはり詐欺師風情が拭いきれないなのかと...悲しみべきか、はたまた喜ぶべきか...でも、芝居なんてもの所詮、詐欺師の所業でございます。観に来ていただいたお客さんをいい意味で裏切り、騙すかを常日頃、思考し行動しているんですからね。

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如月の空

2024/02/15
【第1857回】

人が生きていく中で、人との出会いでその後の人生が左右されるのは当然だと思います。そして次に大切なのは、どんな本を読み、どんな映画・芝居・絵画を鑑賞し、どんな音楽を聴いてきたか?これらのことで、ほぼその人の人間形成が形創られ、豊かな人生のある程度のバロメーターになるのではないかと思っています。古典から今はやりの旬のものから何を選択するか?これも難しい判断であると同時に、やはり個々の感性が鍵となってきます。

音楽のジャンルも確かに幅広い。おいらは基本的にジャズが好きなんだが、これに拘ってるわけではない。若い頃から名曲喫茶に入り浸り(新宿にあった、らんぶる)世界のクラッシックを堪能しました。プログレッシブ・ロックの先駆者としても知られるピンクフロイドにもよく聴きました。勿論、自らギターを手にしてフォークにも熱中した20代もありました。じっくり歌詞を味わうことが出来る歌謡曲もいいですね♪旅心を唄う小林旭もなかなかよかもんです。

最近、よく聴くのがフランスのチェリスト、ゴーティエ・カプソン。今年42歳になる彼のチェロはなかなか心地よい。チェロと言えばスペイン人のカザルス、当時、独裁政権の反対しフランスに亡命しながらも、カタルーニャ人としての誇りを失わず、心を込めて格調高く演奏したカタルーニャ民謡「鳥の歌」はいつ聴いても胸に迫るものがあります。そしてもう一人、マイスキー。彼の演奏するバッハの無伴奏チェロ組曲を聴いていると、表現力豊かなバッハの世界を思う存分に描いていてエモーショナルな気分にさせてくれます。

要はチェロという楽器が「人間の声に一番近い音域」と言われているので、私たちの耳に心地よく響くのですね。

No Music No Life♪

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今宵もチェロを

2024/02/13
【第1856回】

先週の週末、久しぶりに吉祥寺井の頭公園に行ってきました。それにしても吉祥寺の街の賑わいは相変わらずです。この街の人気度、なるほどと言う点がいくつもあります。老若男女問わず楽しめるスポットが程よく点在しています。先ずは井の頭公園、池でのボート遊び、公園内のあちこちで繰り広げられる大道芸人のサービス、手作り作品が並ぶ出店、そして幼児に人気のブランコなどなど。勿論、若いカップルが愛を囁くベンチも随所に配備されています。四季折々を楽しむことが出来る樹木の種類の多さも魅力的です。

そして街中、昔ながらの戦後闇市バラック飲み屋街があると思えば、若者向きのお洒落な飲食店も変化は速いが次々とオープン。そして古着屋、安価でポップな品物があちらこちらにぶら下がっています。そして何よりも安心なのは、新宿の歌舞伎町とか渋谷、池袋に行けば必ず目にするデンジャラスゾーンがほとんどないということかな。おいらなんか、昔からクンクンと匂いを嗅ぎながら未知なる危険な地域に潜入するのが面白いと感じる人間にとっては、無味無臭な街かもしれませんね。

この日も、井の頭公園では多くの大道芸人が芸を披露していました。なかでも全身を赤銅色にコーディネートしたパントマイム芸人、前に置いた箱にお金を投げ込むと動き出しシャボン玉を飛ばしてくれました。大空に舞い上がるシャボン玉がはじけた瞬間...ウクライナ、ガザ地区で非業の死を余儀なくされている市民がオーバーラップしました。

平和は向こうから勝手に来るものではありません。平和呆けしているといつの間にか日本も徴兵制度復活なんて未来が待ち受けているかも知れません。そんなこと考えながら、この日は1万5千步歩いていました...勿論、徴兵に備えてではありませんぞ。

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平和な一日

2024/02/09
【第1855回】

昨日は久しぶりに北千住に行ってきました。もう少し足を延ばせば千葉県松戸市、そんな場所にあるシアター1010(センジュ)。この立派な劇場で「大誘拐」なる芝居を観てきました。勿論、風間杜夫、柴田理恵さんが出演しているからの観劇です。共演者は白石加代子、中山優馬。御年82歳になる白石さんの怪優ぶりは相変わらずでした。早稲田小劇場で鍛えられた声、肉体表現は世界でも十分通用すると思います。この芝居での風間、柴田さんのやり取りが観客を和ませる程よいスパイスになっていました。二人に共通しているのは遊び心です。しんどい芝居の進行のなか、ちょっとした遊びが観客の緊張をほぐして新たな緊張を呼び起こしてくれます。遊びらしく見せかけながらも、ドラマの中で成立させるのがプロの役者です。

終演後、ディープな居酒屋などが立ち並ぶ、「飲み屋横丁」を散策。この北千住も再開発が進み街の様子も一変したのですが、ここだけは戦後闇市を引き継いだ飲み屋街です。ネズミがウロチョロしているのを垣間見るだけでディープ合格。壁一面に芝居、音楽、美術のチラシを貼り、一日一組しか客を入れないと蘊蓄を語る飲み屋の親父が居ると思えば、一見の客お断りの餃子を食べさせるおかみさんの店。この横丁、変わりもんがいて歩いているだけでもおもろいところです。そんななか静かな佇まいでオープンしていた「DEVIL CURRY」に入店。店内は、カウンター席のみ、繁華街にある隠れ家のような雰囲気のお店でした。JAZZが流れる中、出てきたチキンカレー絶品でした。久々に美味なるカレーを食した喜びに浸ることが出来ました。ウロチョロ、キョロキョロ、クンクン、さすが戌年のおいら、いい店見つけることが出来ましたとさ。

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大誘拐

2024/02/07
【第1854回】

日本映画史上、傑作の一つである黒澤明監督の「七人の侍」を観ました。これまで何回も観た作品です。やはり素晴らしい!先ずはすべてがリアルだということ。衣装、メイク、かつら、小道具、セット、一分のスキがないくらい見事だ。1954年公開の映画としては、ここまで創ることが出来たのも黒澤明に対する信頼と期待の表れであろうかと思います。当時の通常作品の7倍に匹敵する2億1千万の製作費と1年を要して完成させた成果が随所に感じられます。そしてカメラワークによる実在感、黒澤映画の特徴的な撮影技法マルチカム撮影法を初めて導入している。マルチカム撮影法は1つのシーンを複数のカメラで同時撮影するという技法。その他目まぐるしく変化するシーンを8台のカメラを駆使しアングルの豊かさと臨場感を醸し出している。

この映画のテンポとリズムを生み出しているのが早坂文雄の音楽。主題曲の侍のテーマが特に素晴らしい。この曲が流れるたびに、戦国時代末期に仕事にあぶれ盗賊化した野武士軍団の襲撃に対抗する七人の侍と百姓たちに、おいらもエールを送りたくなってくる。映画を観終わってあとも、このテーマ曲を自然と口ずさみ己を奮い立たせてくれるってんだから映画音楽としての名曲であることは間違いない、

きらりと光る俳優陣の個性が堪らない。貫禄と武士の矜持を持つ志村喬、野放図さと愛嬌の三船敏郎をはじめとして、加藤大介、稲葉義男、宮口精二、千秋実、木村功の七人の侍。

百姓の藤原鎌足、土屋嘉男、左卜全、なかでも左卜全は最高でございます。意気地がなく間が抜けた役を与えたら彼にかなう役者はいないと思う。「生きる」のお通夜のシーンも絶品でございました。昔はホンマに良か役者がごろごろ居たんだなと、改めていい時代にいい映画を見せて頂いたことに感謝。

東京都心の雪騒ぎも一段落して今日は青空が広がる立春から二日目の日です。

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残り雪

2024/02/05
【第1853回】

2月2日から昨日まで、亀戸カメリアホールで上演した「モンテンルパ」無事に終えることが出来ました。今回の公演、稽古中にいろんなアクシデントがあり公演中止もありの状況の中、スタッフ、キャストの皆さんの奮闘で乗り越えることが出来ました。本当に生モノは恐いです。まさしくなにが起きるか分からないシナリオがないドラマですね。

3日間の公演全て拝見したのですが、日毎に芝居そのものが成長を遂げていました。緊張感を強いられる環境がそうさせたのかも知れません...演劇の最も難しいのは、ただやみくもに稽古をやれば良いというもではありません。やり過ぎて慣れてしまうのも良くないし、稽古不足はその稽古量の少なさがそのまま本番の舞台上にさらけ出されてしまいます。その辺りの按配をうまく調整しながら初日に照準を合わせていく難しさは、何度経験しても計算できるモノではありません。役者の精神、肉体、思考、プロデューサとしては役者を信じるしかありません...そんなことまでも熟考しながらのキャスティング。

2月7日からは、山形県鶴岡市民劇場からスタートし29日まで東北ブロック、関越ブロックの演劇鑑賞会の人たちに18ステージ観劇していただく予定です。冬の最も寒い中、この芝居で温かい気持ちになっていただければと思っています。

亀戸で70年商売している「亀戸餃子本店」に行ってまいりました。餃子と飲み物しかありません。ビールを頼むとすかさず餃子が出てきます。一皿5個食べ終わりそうになったら、すかさず絶妙なタイミングでおばちゃんが餃子再注文の催促。断ることが出来ない微妙な雰囲気なんですね...周りを見ているとビールと一皿¥300の餃子を2皿から3皿食べての会計。残された空き皿で素早く計算、まるで回転餃子といったところかな。一組の滞在時間ほぼ15分から20分。このシンプルな営業スタイル、商いの原点を見せられた感じがいたしました。

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ここにも梅が

2024/02/02
【第1852回】

戦後すぐ東京都台東区柳橋の隅田川沿いに建てられた、旧市丸邸を2001年にルーサイトギャラリーとしてオープンした古民家での朗読会を観てきました。個性的な俳優、鳥山昌克さんが数年前から企画している出し物です。今回は唐十郎「雨のふくらはぎ」泉鏡花「絵本の春」の朗読劇。二人の女優さんに囲まれて楽しそうに演じていました。唐さんの作品になるとまさしく水を得た魚、そりゃそうでしょう、20年間、唐組で唐ワールド漬けの日々だったんですから...唐作品に度々登場する鶯谷周辺の夕焼け、下谷万年町のいかがわしくも耽美な世界。これだけは身近に体験した人と心中する覚悟がないと身につけることができません。

役者にとっての存在感は大切な要因です。それをどこで獲得できるのか?勿論、まず第一は日々の生き方、何を視、何を感じ、己の中でいかように発酵させていくか。そして次に誰と出会い共同作業していくか。優れた作家、演出家と出会い、共に芝居を創ることが出来ることは千載一隅のチャンスだと思います。あとは己の努力あるのみ。

鳥山昌克さんと唐さんとの出会いも偶然ではなく必然ではなかったかと思います。これからも唐十郎の魅力を伝えていってほしい役者さんだと思いました。

それにしても、朗読中に目にする背景が素晴らしい。隅田川を行きかう屋形船、総武線を走る電車の音、高速道路の車の列、リアルタイムのなかで粛々と進行する幻想の世界は、とても贅沢なひとときでした。

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如月

2024/01/31
【第1851回】

あの似合わない黒いハットを被ったおっさん、又しても物議をかもす発言をいたしました。ほんまに情けない、こんな人をいつまでも選ぶ福岡の選挙民もこれまた情けない。この国を代表する女性外務大臣の名前は間違えるし、あまり美しくないと容貌にいちゃもん付ける人間が副総理なんて世界に対しても恥ずかしい限りだ...こんなことを言われた外務大臣も「失礼な発言です!」とお灸をすえればいいのに、聞き流す対応。なんだか女性初の首相なんて声を気にしての忖度なのかとも思ってしまいます。

連日の裏金問題の当事者の言葉もすべて虚しく聞こえてきます。一番の正直者は、議員辞職を願い出た長崎選出のオッサンかもしれませんな...悪徳5人衆なんぞは国会開幕初日、皆そろってニコニコしておりました。せめてもの芝居でもいいから「申し訳ありません!」なんて神妙な顔でもすればいいのに、あの厚顔無恥なるツラを見せられると開いた口が塞がりません。

日本の国の政治家に申したい!あなたたちは言葉に対して失礼じゃないかと思います。要するに相手(国民)の差し迫った言葉を機能として聴いているだけ。己の腹の底に染みわたる覚悟で聴いていないということだ。そしてお金のこととなると欲の皮が突っ張り、これだけは正直になるという体たらく。政治屋稼業の言葉だけが利便的にはびこっている世紀末的状況でございます。

言葉は暴力には無力でもあっても、ひとりひとりの生きるうえでの杖であったり、飢えたときの代用品になったり、身を守るシェルターにも成りうる人間のみに与えられた宝物でございます。そんな言葉をないがしろにする人達に国を任せるわけにはいきません...

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善福寺川緑地公園

2024/01/29
【第1850回】

先週の土曜日、久しぶりに刺激的な映画を堪能しました。「女王陛下のお気に入り」のヨルゴス・ランティモス監督の最新作「哀れなるものたち」。観終わった率直な感想は、若い頃よく観たゴダール、フェリーニ作品を彷彿とさせるアバンギャルドの匂いがする問題作。何が問題かというと過激な性描写に目がいき、一見エログロに見せておきながら登場人物が語る言葉の背景には現代社会に潜む社会、化学、偏見、差別、政治、制度に辛辣なメッセージが込められていること。しかも説明的ではなくユーモアを交えてのやり取りにエンタメ性を感じさせてくれること。それにしても一番驚いたことは、2016年の傑作ミュージカル「ラ・ラ・ランド」で女優志望の主人公を演じ、ベネチア国際映画祭の最優秀女優賞や、アカデミー主演女優賞など数多くの賞を受賞したエマ・ストーンの体当たり演技。これがホンマの女優魂!日本の女優さんが観たら、なんでここまでやるの?と腰を抜かしそうな過激、過剰なシーンの連発。しかも、内面の演技もしっかりしてるんだから文句のつけようがない。アップで写し出される表情には一人の女性としての揺るぎない信念と持続する強い意志を感じる。

撮影、美術、衣装、ヘアメークどれをとっても新しいものを創る野心に満ち溢れた作品であることは紛れもない事実。エンドロールの流れる不思議な図柄と音楽、これにもまいりました。エンドロール賞をあげたいくらいの終わり方。映画にとって締めのエンドロールはとっても大切なシーンだと思います。すべてを終え、観客は余韻に浸っているなか如何に幕を閉じるか...終わりよければすべて良し!って言葉がありますよね。

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問題作

2024/01/26
【第1849回】

昨日は神保町のジャズ喫茶「オリンパス」と、明治大学図書館で一冊のノンフィクション小説を読破しました。美味しい赤いチキンカレーとコーヒー、そして4000枚のレコードの中から選曲されたレコードの心地良いノリで150ページを読み終え、残りの170ページは明治大学図書館の静寂な空間で...やはり、言葉の持つ滋味、深淵の魅力は心身を虜にしちゃいます。

それにしても、改めてノンフィクション作家の凄さを感じさせる読み応えでした。何年間もの間、対象となる土地、人物に密着し体当たりで本質に迫るには相当のエネルギーを必要とします。その人の過去、現在を含め洗いざらい聞き出すんですから、それなりの人間関係を構築しないと無理な話。

おいらも芝居を創るうえでいろんなジャンルのノンフィクション小説を読んできました。中でも、九州大分県中津で多くの書を書き続けた松下竜一さんには大いなる共感を覚え、「松下竜一 その仕事全30巻」を買い込み、中津に飛び、上演許可を頂いた思い出があります。そこはノンフィクション作家と同じくらいの情熱、エネルギーを有しないと、良質な芝居なんかは創れません。

それで昨日読了した小説は?こればかりはまだまだ今の段階では秘密でございます。すべてが明らかになった時までのお楽しみ...こうやって又、新たなことにチャレンジしていくことで己を奮い立たせる日々でございます。

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冬のメタセコイア

2024/01/24
【第1848回】

今日はこの冬一番の冷え込み。故郷博多もどうやら雪が舞うらしい。それにしても能登半島の人たちにとっては厳しい日々が続いている。そんな中、新宿の街かどで若い有志が被災者に向けての募金活動を行っていた。こんな風景を目にすると、この国もまだまだ希望が持てますばい。その傍では、路上シンガーからのスターを目指す若者も居る。一度きりの人生なんだから信じたものに賭け、悔い無き人生を送れば良いのだが、この国のつまらんシステムに未だ拘り一流大学、大企業なんてコースを選択しちゃうのがほとんどかな?大好きなことに夢中になり手に職を付けて、もの創りに励む人達の目はいつもキラキラしています。おいらはこんな人種が大好きです。

永井荷風の全集を読んでいます。この作家の定まることのない生き方とマッチした文章が実に面白い。それも学問に裏付けされた書物だから説得力がある。銀座のカフェ、遊郭、ストリップ劇場をこよなく愛し、その視線はいつも弱者に注がれていた。

1952年には「温雅な詩情と高邁な文明批評と透徹した現実観照の三面が備わる多くの優れた創作を出した他江戸文学の研究、外国文学の移植に業績を上げ、わが国近代文学史上に独自の巨歩を印した」との理由で文化勲章を受章する。最後は孤独死、そして彼の遺言として遺骨は吉原の遊女の投込み寺に葬られたいと記していたらしい。

裏金疑惑の安倍派の議員たちの神経にはほとほと呆れてしまう。「安倍さんに申し訳ない...」

あほんだら!謝る相手が違うやろ...こんなセリフをいとも簡単に吐いちゃうこの人たちに政治を任した選挙民も大いに反省せにゃいかんですばい。

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冬の暮

2024/01/22
【第1847回】

黒澤明監督の傑作「生きる」を、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの脚本によりイギリスでリメイクしたヒューマンドラマ「生きる LIVINNG」鑑賞。率直な感想、やはり黒澤作品の方が圧倒的な中身の濃さで軍配が上がるかな。やはり主人公が公園を作るためにいかに命懸けで奔走したかを回想する葬式の場面が、この映画の核心のような気がします。この時代に居た役人を含めた人間像が見事な演出、演技によって主人公を際立させる手法が永遠の名作にしています。中村伸郎、藤原鎌足、千秋実などなど名脇役の丁々発止のやり取りが実に人間的だ。とりわけ印象に残るのが左卜全の面白おかしい存在感。「七人の侍」の時もピカ一だったのだが、こんな役者が居なくなったのも日本映画が今一つパッとしない一因かもしれない。

リメイクした英国映画も健闘しているというか、やはり西欧の洒脱な物語である。日本人の持つ泥臭さと対照的にイギリス紳士の佇まいを前面に押し出している。Mr.ウィリアムズを演じるビル・ナイの端正で押し付けがましくない存在感が、日本版と違うテイストを生み出している。そして、なんといっても印象に残るシーンであるブランコに乗って口ずさむ歌。日本版は志村喬の、♪いのち短し 恋せよ乙女 あかき唇 褪せぬ間に 熱き血潮の 冷えぬ間に 明日の月日は ないものを♪「ゴンドラの歌」これが絶品でした。

英国版は、スコットランド民謡の「The Rowan Tree」=「ナナカマドの木」、この歌には、今際を覚悟することで、自身の故郷や親族などに想いを馳せているという意味があるそうだ。歌詞、メロディともに乾いた感がしました。

最後に、主人公が場末の歓楽街で嬉々として遊び解放するシーンがあるのだが、日本版ではあの怪優、伊藤雄之助がアクの強い演技の連続でスクリーンを釘付けにする面白さがあったのだが、英国版はなんともあっさりした俳優さんのお陰で無味無臭のシーンになったのが残念でございました。

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昨日、見かけた早咲き梅

2024/01/19
【第1846回】

能登半島地震の今後の行方が混沌としています...二次避難を呼びかけても避難者の一割の希望者だったとか。故郷への強い拘り、ひどいのは大学生が被災した家に入り込み高級蜜柑を盗んだのを知り、我が家を守らないとの思いで劣悪な環境でありながらも留まるケース。それにしても、こんな状況でもあっても悪い奴は居るんですね。こんな奴らは普通の窃盗罪の3倍、4倍の刑を科してもらいたいもんですね。最高学府で何を学んでいることやら...

大阪万博を中止して、これから掛かる費用をそっくり被災地の復旧に充ててもらいたいもんでございます。人口の島での万博終了後、はっきりとした設計図もないまま当初の予算をはるかにオーバーした予算で強行しようとする国、大阪府のやり方に半分の人が反対してるんですから。過去の例をみても、オリンピック然り、政治屋と企業の闇の談合でこれらの催事が実施され数々の不祥事が後日談として暴露されてます。この低空飛行が続く日本、先ずは被災地に投資するのが筋だと思いますが...

「モンテンルパ」の稽古場に行ってきました。出演者5人と演出家の息もぴったり。実に活気あふれる稽古場風景でした。世の中がなんとも不穏である今こそ、芝居で元気にできればと思っています。あと二週間、体調には十分気を付けて無事初日をむかえてもらいたい!

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詐欺ではありませんよ...

2024/01/17
【第1845回】

昨日、「初春大歌舞伎」を歌舞伎座で観てきました。久しぶりの歌舞伎十分に堪能してきました。「當辰年歌舞伎賑」の賑やかしい踊りと、変化にとんだ長唄、三味線、鼓、笛の響きで幕開け。25分の休憩を挟んで「荒川十太夫」。赤穂義士四十七士のひとり堀部安兵衛が切腹する際に介添え役を務めた荒川十太夫を主役に据え、義を通そうとしたがゆえに苦悩を抱え葛藤する十太夫の役を尾上松緑が見事に演じていました。決して二枚目と言えないのですがハートがビシバシと伝わる歌舞伎役者。松平隠岐守定直役の坂東亀蔵の透き通る台詞と歯切れの良い演技もこれからの成長が楽しみです。

最後は35分の休憩(商業演劇はこの間、食事してもらったり、買い物を勧めたりでの時間でもあります。)後、「狐狸狐狸ばなし」この作品は2004年にトムでも上演しました。ケラリーノサンドロヴィッチ演出で板尾創路、篠井英介、六角精児、ラサール石井の出演での異色の芝居に仕上げた記憶があります。この芝居は通算220編余りの戯曲を書き上げた北條秀司氏の喜劇での最高傑作だと言われてきました。タイトルが示すように登場人物が織りなす狐と狸の化かし合いが目まぐるしく展開されます。その中に人間の欲、哀感がおかしみを取り混ぜながらの抱腹絶倒喜劇。松本幸四郎、尾上右近が安定した演技をする中、幸四郎の息子である市川染五郎が目を見張る芝居をしていました。将来の歌舞伎界を背負って立つ逸材であることは間違いありません。

終演は15時、歌舞伎のゆったりした時間がとても心地よかった。確かに¥18000の入場は高いと思いますが、まあこの規模で、この内容であれば納得できるかな...

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新春の歌舞伎座

2024/01/15
【第1844回】

能登半島地震の連日の報道の中、自民党のパーティ裏金疑惑、検察が一議員の逮捕で幕引きをしようという情報が流れてきました...本当にふざけるなと言いたい!まじめに働いている庶民には徹底的に厳しく税の要求をしておきながら、脱税に匹敵する犯罪行為を犯しながら国会議員というだけでこの甘い処置。この国は本当に腐りきっている...国の権力が一つの機関に集中すると濫用されるおそれがあるため、三つの権力が互いに抑制し、均衡を保つことによって権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障しようとする考え方で立法・行政・司法の三権主義があるのにこの有様。お互いが監視するどころか忖度するばかり...今からでも遅くありません。昨日の台湾での選挙での投票率71%、日本の投票率はいつも50%前後、半数の有権者が棄権している状態に危機感を持ちましょう!と言っても腰をあげようとしない体たらく状態。勿論、原因は政治不信であることははっきりしているわけだが、諦めちゃ悪徳政治屋の思う壺でございます。

そして、辺野古新基地での埋め立て強行。沖縄の人が何度も嫌だと意思表示してるのに何ら応えようとしない政府。おいら前から言ってるのだが、沖縄にある基地、日本の各地が負担するのが平等だと思います。先の大戦であれだけ沖縄に犠牲を強いながら、またしても台湾有事の際の盾にしようとするこの国の狡さに呆れてしまいます。この国がアメリカの属国であるのは理解できますが、いまだ沖縄だけにアメリカ軍基地の押しつけは勘弁してくださいな。昨日も、TV新日本風土記での沖縄のきれいな海と空に囲まれながらゆったりと時を楽しんでいる人たちを見るにつけ、この安穏な日々が永遠に続きますようにと思いました。

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睦月の空

2024/01/12
【第1843回】

この季節、すっかり葉を落とし毅然とした姿で屹立している樹木を眺めているとシベリアの収容所に8年間を過ごし、日本への帰国を果たせず病死した山本幡男さんの詩をいつも思いだします。


アムール遠く濁るところ
黑雲 空をとざして險惡
朔風は枯野をかけめぐり
萬鳥 巣にかへつて肅然

雄々しくも孤獨なるかな 裸木
堅忍の大志 瘦軀にあふれ
梢は勇ましくも 千手を伸ばし
いと遙かなる虚空を撫する


夕映 雲を破つて朱く
黄昏 將に曠野を覆はんとする
風も 寂寥に脅えて 吠ゆるを
雄々しきかな 裸木 沈默に聳え立つ

 

極まるところ 空の茜 緑と化し
日輪はいま連脈の頂きに沒したり
萬象すべて 闇に沈む韃靼の野に
あゝ 裸木ひとり 大空を撫する

 

理不尽な境遇のなか、極寒のシベリアの収容所で故郷、家族に思いを馳せながら書き綴った言葉に山本幡男さんの強靭な意思を感じる。
年頭の能登半島地震、羽田の航空事故然り、この時代、何が起こっても不思議ではない。そんな時には逆境の中で生を信じ、改めて命の尊さを感じながら過ごした人たちのことを忘れずに日々を過ごしたいと思っています。

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裸木

2024/01/09
【第1842回】

連日の能登半島地震の現地の生々しい報告を見るたびに心痛みます。コロナも落ち着き、久しぶりの一家での正月で10人の家族を亡くした男性の「何も悪いことしてないのに...なんでこんな目に合わなきゃならないのか!」涙して語る慟哭言葉が胸に迫ってきます。

13年前に輪島の朝市でふらり覗いた市中屋本店。格子窓の素敵な外観で、代々100年以上続く老舗店です。輪島塗というとなかなか敷居が高いと言われていますが、一歩店内に足を踏み入れるとなんとも懐かしい匂いと家庭的な雰囲気に魅せられついつい話し込んでしまいました。店内に展示されていたお重が気に入り半年掛かりで創っていただきました。塗っては乾かしの繰り返しでとても手間暇がかかる作業だとのことでした。

正月のおせち料理は、このお重に詰め込み新年を迎えるのが我が家の習いでした。

そんな思い出を持つ市中屋さんのご家族、親類と思われる名前が今回の地震での安否不明者のなかにありました。毎年、年賀状が来ているのですが焼失した朝市通りのお店には連絡しようがありません。今はただ無事であって欲しいと願うのみです。

焼けただれた家並みを前にして若き漆器職人が「命は助けてもらったので、残されたものがなんとか伝統を引き継ぐしかありません...」この言葉を信じるしかありません。東日本大地震然り、命ある限り残された人々がマイナスからプラスへと歩を進めてきました。

昨日、黒澤明監督「生きる」久しぶりに観ました。生きることの根源をシンプルに描いた傑作です。志村喬の鬼気迫る演技、他の共演者のキャラクターの活かし方、さすが黒澤明監督。

命ある限り、生きてさえいればなんとかなります...被災地の皆さんが一日も早く日常を取り戻し、必ずや自然の魅力に溢れた能登半島を再生してくれると思っています。

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市中屋さんのお重箱

2024/01/04
【第1841回】

明けましておめでとうございます。

 

いよいよ今年も始まり、今年こそは平穏な年であれという願いを元旦から、能登半島地震で砕かれた思いです。2日には羽田での航空事故。何とも波乱の幕開けとなりました。

ウクライナの侵攻、ガザ地区での戦闘も止むことがありません。

何としても、この不穏な流れを食い止めなきゃ未来はないと...今年も又、ひとりひとりがこの危機感をしっかりと意識して生きていかなければと強く感じています。

トム・プロジェクトも今日から「モンテンルパ」の稽古が始まります。2021年のコロナの恐怖に晒されながら、なんとか千秋楽を迎えることが出来た日のことを鮮明に覚えています。

再演である今回も、平和な日常がいかに大切であるかをこの作品を通じて伝えることが出来ればと思っています。

今年も、トムは芝居を通じて世界のいかなる人も皆平等に平穏な日々が訪れることを信じてやり抜いていきますので、皆さま何卒よろしくお願いいたします。

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謹賀新年

2023/12/27
【第1840回】

トム・プロジェクトも今日が仕事納め。

今年は1作品だけ残念ながら中止になりましたが、ほかの4作品無事に完走できました。芝居はスタッフ、キャスト含め誰一人として欠かすことが出来ないものです。まだまだ感染症も油断できないなか、みなさん程よい緊張感を保ちながら現場を創造できたと思います。そしてなによりも、芝居を観て頂いた観客の温かい声援があったからこそ完走できたと、あらためて感謝。終演後、観客席から出てこられたお客様の表情でその日の芝居の出来が分かります。今年の作品はいずれも満足気なお顔でございました。中にはロビーに立っているおいらに近寄り「良かった!」なんて声を掛けられると苦労も吹っ飛んでしまいます。

芝居は何とか無事に終えることが出来たのですが、日々メディアで流れるウクライナ、ガザ地区での目を覆う惨状、気候変動による災害などなど、世界平和には程遠いのが現状です。日本の政治の劣化も困ったもんでございます。そして一瞬にして訪れる災難、昨日、おいらが良く散歩する道路を歩いていた家族の自動車による事故。奥さんと娘さんを亡くされた遺族の悲しみはいかばかりか...この時代、何が起きても不思議じゃない世の中になってしまいました。

来年こそは、少しでも平穏な時間が流れる年であって欲しいものです。

では皆さん良い新年をお迎えくださいね。

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寒椿

2023/12/25
【第1839回】

2017年に亡くなられた作家・赤染晶子さんのエッセイ55篇と、2011年1月から3月にかけて、翻訳家並びにエッセイストの岸本佐知子さんとの「交換日記」を収めた一冊「ジャムパンの日」読了。何気ない日々のなかで起こる出来事に彼女なりの妄想を絡めた文章が面白い。

 

わたしは蠅取り紙が大好きだ。蠅取り紙は美しい。あのヴィヴィッドな黄色はゴッホの「ひまわり」を越えている。そこに黒い蠅が止まることで、とても見事な色のコントラスが生まれる。蠅は命を投げ出して、この美しさを生み出すのである。これがご飯粒では様にならない。蠅でなければならない。もしかしたら、蠅は蠅取り紙に出会うために生まれて来たのではないか。わたしには夢があった。蠅取り紙に蠅がくっつく瞬間を見たい。芸術の生まれる瞬間を観たい。

 

このなんともシュールな妄想。もしかしたら創造、想像、妄想は人生を楽しく生きる三種の神器かもしれない。これを政治の世界でも生かして欲しいが一歩間違えば、ヒトラー、プーチン、北朝鮮のかりあげ君なんかを生み出す危険もあるので要は使い方次第だ。

おいらも今朝ある妄想に駆られました...いつもは朝早くからやってくる小鳥たちが来ないので、もしや昨日イブのためのチキンをぶら下げてるニンゲンの様子を見て、鳥たちも危機感を感じ、今日のクリスマスが終わるまで身を潜めていようということになったのかしら...

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師走の新宿

2023/12/22
【第1838回】

最近、BS12での東映映画「日本侠客伝」を良く観ています。懐かしいですな!勿論、あの高倉健さん主役のシリーズものです。筋立ては決まりものの勧善懲悪、ラストは健さんの渋い歌声に乗りドスを片手に極悪非道の親分のもとに殴り込むお決まりのコース。その助っ人が鶴田浩二、池辺良などなど豪華ゲストときたもんですからたまりません。ヒロインは藤純子、透き通るような肌にしっとりとした彫り物がこれまたたまりませんことよ。そして、脇役に藤山寛美、大木実、辰巳柳太郎、島田正吾、若山富三郎、二谷英明などなど豪華な顔ぶれ。伴淳三郎、上田吉次郎なんかの登場には思わず笑いがこみ上げてきました。

思えばこのシリーズ、今は無き新宿昭和館でおいらも観たもんでございます。客席には全共闘の学生も来ていました。健さんが殴りこみに行くシーンになると「待ってました健さん!」の声があちこちから聞こえてきました。彼らにすれば時の権力を打倒するためにゲバ棒持って国会に向かう姿をオーバーラップしたに違いありません。

旧きやくざ映画の典型ながら、役者の粋、色気、そして存在感、見世物としてはなかなかのものです。監督を務めるマキノ雅弘の職人芸にただただ感心します。映画に対する愛情がスクリーン一杯に溢れかえっています。

高倉健さんみたいなスターはもう出てこないでしょう...勝新太郎、三船敏郎然り、あの時代だからこそ誕生した俳優だと思います。それにしても何事にも窮屈になったこの時代、すべてがこじんまりとし、程よくまとまり過ぎたモノに覆い尽くされていて、おもろくありません...こうなったら、自分でおもろくするしかありませんな。

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新宿南口

2023/12/20
【第1837回】

昨日は中津留章仁作・演出の「STRANGE ISLAND」を観劇。新宿御苑前駅の近くにあるサンモールスタジオの一番前のかぶりつきなので緊張しました。最前列で観るなんてことは普段ありません(つまらん芝居であっても居眠り出来ませんからね...)美しい女性が次から次に登場するのでモデル系事務所主催の芝居かなと思いながら観ていたんですが、おっとどっこい、ここは中津留イズムがびっしりと貫かれ、各俳優熱演、2時間40分の長丁場ながら最後まで楽しめました。誰しもが持つ人間の欲、愛、情、のやりとりを描きながら、社会性とエンタメ性を交えながら人の生き様を炙り出すような作品。地図にも載っていない、ある島の、ある町で展開される話の中に、今まさに日本の政治で起きている問題をぶち込むところなんかはいかにも中津留章仁らしい。

トムに所属している中嶋ベンが良い味を出していましたな...どこにも居そうでありながら、この個性はなかなか貴重であります。なんと言っても彼の芝居にはいつもハートが感じられます。表現者としては当たり前のことですが、この当たり前のことが出来ていない役者さん以外と多いのですよ。来年は彼が出演する芝居をトムでも準備していますので是非自分の目で確かめて頂ければ幸いです。

それにしても、昨日の元ライオンズの山川穂高選手のソフトバンク入団会見なんなの?

そして自民党二つの派閥事務所への東京地検特捜部の家宅捜索、この異常な状況にそろそろ気付かないと日本沈没が目に浮かびますがな。

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師走のバラ

2023/12/18
【第1836回】

いやいや先週は怒涛の日々の連続。火曜から金曜は九州。帰京した翌日は銀座博品館で上演していた劇団NLT「二階の女」を観てきました。トムで公演した「沼の中の淑女たち」に急遽出演していただいた阿知波悟美さんが出演。この作品は昭和20年四国に疎開していた当時、愛媛新聞に短編小説として発表した獅子文六の作品を飯沢匡が脚本化した作品である。正体のしれない二階の女を象徴的に描きながら、当時の市井の人たちがてんやわんやの大騒ぎ、人生の悲哀、夫婦の愛情をユーモラスかつ厳しく描いた作品でありました。最後は第二次世界世大戦に向かう不吉な予兆を感じさせるエンディングでございました。

昨日は表参道のあるスパイラルホールで島田歌穂さんと島健さん二人によるXmas Special vol.13に出かけてきました。2009年にスタートしたこの会も13回目になるとのこと。旦那さんでもある島健さんのお洒落なピアノの音に歌穂さんが心地良い歌声を乗せながらの1時間45分。二人の篤い信頼と絆があってこそのスペシャルな時間でございました。年末を飾るにふさわしい贅沢なひとときを、皆さん味わったのではないかと...それにしてもあれだけの曲数をひとりで歌い続ける歌穂さんの日頃の体調管理、大変な努力をされているんでしょうね...頭が下がります。ラストには来年2月から再演します「モンテンルパ」の芝居の宣伝までしていただきありがとうございました。

いよいよ今年も残すところ2週間となりました。この歳になると、月日が流れるのがなんとも早く感じます。喜んでいいのか悪いのか?おいらもわかりませんことよ。

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師走の表参道

2023/12/15
【第1835回】

12月13日、博多西鉄ホールで風間杜夫ひとり芝居を観劇。今回の芝居は博多が舞台になっていたので満員の客席は大変な盛り上がりでした。博多弁が出てくるたびにお客さんは大喜び。愛嬌たっぷりの牛山明もラストのシーンでは客席からすすり泣きが聞こえてきました。笑いから哀愁たっぷりの男の変貌ぶりを魅せてくれるのも、千両役者だからこその芸のなせる業でございます。終演後の杜夫ちゃん、やり切ったという表情をしていました。

昨日は4年ぶりの東住吉小学校の同窓会。77歳、78歳になるおっちゃんおばさんたちなんですが皆元気でした。でも4年前に場を盛り上げた仲間の一人は昨年亡くなったとのこと、確実に年を重ねていることを実感しました。幹事の女性がコピーしてきた小学校、中学校の卒業写真を眺めていると、懐かしいあの日あの時が蘇ってきました。終戦間もない時期、貧しいながらも皆必死豆炭で生きよったばい!おいらは小学校3年生から新聞配達に励んでおりました。戌年のおいらはクンクンと鼻を効かせて博多の街を走り回り、今尚丈夫な身体を形成してくれたんだなと...小さい頃から、おきゅうと納豆売り、郵便配達、氷配達などなどよう働きよったばい。

今度はいつ会えるか?でも、こうやって幼いころの級友と会えるなんて幸せでございます。

連絡がつかず会えない人たちも、どこかで元気で幸せに過ごしていることを願って別れました。師走の夜の博多もクリスマス一色でございました。

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おいらはどこにいるのかな?

2023/12/13
【第1834回】

長崎県大村市シーハットおおむらで、杜夫ちゃんのひとり芝居観てきました。長崎は5年ぶりかな、いつ来ても情緒あふれる坂道が多い街です。芝居のほうは絶好調!長崎のお客さんのノリで、牛山明飛んだり跳ねたり愛嬌たっぷりの演技で笑いの渦でございました。

終演後に長崎市在住の歯科医を開業している原さんに、長崎のおいしい料理をご馳走になりました。原さんとはかれこれ50年近くの付き合いかな...今は無き福岡市六本松の名物ママがやっていた「ひろ」で会ったのが最初でした、おいらはアングラ芝居の役者、原さんは九州大学の学生でした。いやまさしく青春時代でございました。酒をへべれけになるまで飲み尽くし、政治、芸術の話からエロ話まで、いくら時間があっても足りないくらいのどんちゃん騒ぎのひとときを過ごしました。そんなエネルギッシュな時間を過ごしたからこそ皆それぞれここまで生き延びてきたんですね...思案橋近くにある「かまど茶屋」、長崎に行った際にぜひ立ち寄ってくださいね!とおいらがお薦めできる素敵な店でした。

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機内からの富士山

2023/12/11
【第1833回】

先週の週末からよく目にする指名手配風の写真5枚。なんと自民党安倍派の幹部議員なんですが、どうみても悪代官に見えますな。なんと20年以上にわたって裏金返金制度があったというのだから血税納めている国民は怒り心頭でございます。死者に鞭打つじゃございませんが、統一教会問題、改ざん問題も含め到底許すことが出来ません。こんな政治屋ばかりだから日本の経済30年間停滞するのも当然至極。でも、帰するところは日本国民の選挙において半分棄権し、投票結果も相も変わらず自民党一党独裁を許しているんですからね...

未だに進展がない国会議員に月額100万円支給される「調査研究広報滞在費」。使途の公開や未使用分の返還を盛り込んだ議員立法も審議入りのめどすら立たない状況でございます。

どこまで国民を愚弄しているのだろう!そのうえ、裏金もらって脱税しているのだから世も末状態です。この際徹底的に叩かないと又暗黒の時代が延々と続くこと間違いないですね。

そんな中、明るいニュースも飛び込んできました。大谷選手の大リーグドジャース入団。こんな日本の若者も出現し本当に嬉しい限りです。彼の育った環境、思考、行動を参考にすれば日本も少しはましになると思います。彼の表情にすべてが現れています。野球は勿論、人間としての佇まいが、この汚れちまった悲しい世界に微かな希望の光を感じます。

たかが野球、されど野球...なるほど奥が深いです。

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今日の空

2023/12/08
【第1832回】

福間健二著「迷路と青空」読了。先月、健二さんの遺作の映画「きのう生まれたわけじゃない」を観て来たばかりだが、この本を読んで改めて74年間の人生、まさしく既成の概念に疑いを持ちながら自ら迷路の中に踏み込み、日々移りゆく青空の下を突き抜けていったんだなと思いました。迷路をさ迷いながら自問自答し、未知へのドアをノックし、一気になおかつ簡潔に今生きていることを肯定したい...そういうことを願っているが、なかなかそうなってくれない。その一瞬一瞬、詩を綴りながら映画を創りながら自己確認する。健二さんは詩についてこんなことを述べている。

 

詩は生きている。私は以前からそう言ってきたが、最近思うのは、生きることそのものが詩であるというように生きるにはどうしたらいいかだ。自分のためだけに生きている人生では、そうなってくれないだろう。

 

健二さんが人と関わり自然と対峙しながら、生きることと表現すること追求できるのも、この世の人でない存在も含めて感謝の気持ちを忘れずにやってきたことがうかがい知れる。

それに反して、又もや政治と金の問題が浮上し、これまでと同様時間が経てば忘れてしまうだろうなんて問答が繰り返されている。政治屋が長年はびこっているのに、未だ変化の兆しすら見えないこの国の現状に楔を打ち込めない惨状にただただ呆れるばかりだ。

こんな時は、青空とまだまだ楽しませてくれる紅葉を眺めながら、千々に乱れる怒りと諦めを諫めるしかありませんな...

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幻想の世界

2023/12/06
【第1831回】

昨日、すみだパークシアター倉にて劇団桟敷童子「空ヲ喰ラウ」を観劇。錦糸町から徒歩15分~20分かかるのだが相変わらずコアなファンでいつも満杯である。今回のパンフに主宰者である東憲司さんがこんなことを書いていた。

 

来年、劇団を旗揚げして25年を迎える。今考えると、あっという間だったような気がする。まさか25年も劇団が続くとは思わなかった。旗揚げ公演は1999年秋、辰巳の倉庫でだった...魚の匂いが充満していた。なにもかも手探りだった、がむしゃらだった...コン畜生、コン畜生の精神でここまで続けてきたような気がする。現在劇団員は17人...東京にたくさん劇団がある中で、この桟敷童子を選んでくれた...それだけで感謝である。この劇団は俳優だけでなく、大道具も小道具も、衣装も、音響も、制作業務もやらされるのである。本当に大変だと思う。これをいつまで続けるのであろう。そろそろ終焉を考えるようになった。しんどい...(笑)

 

おいらは芝居創りの原点を見る思いも含めて観客、プロデューサとしてこの劇団のファンである。頑張ってきたどころか、演劇界の数々の賞を受賞している点からみても今やなくてはならない劇団のひとつである。出来、不出来以前にこの劇団の人たちの情熱、心意気、純粋さがおいらにとってはたまらない魅力である。

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劇場近くでカワセミ発見

2023/12/04
【第1830回】

風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~最後のロマンス~」昨日、無事に東京公演終えることが出来ました。芝居が終わったあとも、まだ観たい!帰りたくないという雰囲気が漂っていました。こんなに愛されている牛山明こと風間杜夫、なんとも素敵な俳優さんです。おいらも6ステージすべて観ましたがそれぞれの趣がありました。普通、芝居は当然のことながら相手役と観客とのやり取りで成立するものですが、このひとり芝居は観客と見えない相手役とのコミュニケーションでのイレギュラー版。やはり観客の反応がその日の劇場盛り上がりを支配します。誰も手助けしてくれない杜夫ちゃん、当然のことながらその日のお客の反応を敏感に感じ取りながらドラマを進めていきます...ヤバいと思ったり、予想通り、いや、ここは違う手でやってみようなどなど...台詞を吐きながら心中穏やかじゃない状態で演じてる様が手に取るように分かります。そんなことも含めて演じ続ける風間杜夫の飽くなき探求心と遊び心に拍手を送りたい。

ベースボールシーズンも終わり、冬のスポーツと言えばラグビーですね。昨日は大学ラグビー伝統の一戦、早稲田と明治の試合が東京・国立球戯場で行われました。1923年に第1回が行われた早明戦は今年で100周年(99回目)を迎えました。おいらも1987年12月6日に旧・国立競技場、雪が舞うなかでの早明戦、よく覚えています。その後も名勝負が続きラグビー人気を盛り上げた両校の戦い、いつも楽しませてくれます。新年2日の準決勝で再び両校が相まみえるのか...勝負ごとは筋書きのないドラマ、誰にもわかりません。

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まだまだ燃えてます

2023/12/01
【第1829回】

今日から師走です。本当に1年はあっという間ですね。歳を重ねると、良いのか悪いのか余計にひしひしと感じる次第です。

風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~最後のロマンス~」東京公演、昨日で3ステージを終えることが出来ました。いやいや、日毎にエンジンがかかり満員のお客様も満足気で劇場を後にしています。なにせひとりでやるんですから、百戦錬磨の杜夫ちゃんも壁にぶち当たることもあり、日毎の体調もあり、そりゃ大変な舞台だと思います。そんな時に、おいらはプロデューサー、一観客として終演後に率直な感想を述べに楽屋に直行します。ここは長い歳月を費やし築いてきた信頼関係もあり素直に耳を傾ける杜夫ちゃん...ここが名実とも一流の役者である所以だと思います。このキャリアの役者さんのほとんどは、他人の意見を聞かず身の保身に走る傾向が多々あります。一味違う役者さんは、創っては壊しを繰り返し常に新鮮な表現を目指しながら前に進んでいます。勿論、自信があってのことだと思います。

それにしても一人で連日客席を満員にしてしまうんですから、たいしたたまげた役者さんです。

これから寒さは一層厳しくなってきます。どうか一日も早くウクライナの侵略戦争、ガザ地区での戦闘を終え、いつものように平穏なクリスマスを迎えて欲しい!演劇も平和だからこそ素敵な一日を過ごすことができるんです...

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師走のバラ

2023/11/29
【第1828回】

風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~最後のロマンス~」東京公演、昨日俳優座劇場で無事初日を迎えることが出来ました。北海道、関西、九州を巡演しての公演です。地方公演とまた違って東京という演劇激戦区での初日というのもなかなかと緊張するものでございます。劇場には演劇評論家の方々を始め芝居に対して厳しい目で観劇される方も多々いらっしゃるので、もう一度褌を締めてかからねばなりません。勿論、風間さんを愛するファンの皆さんは、杜夫ちゃんの一挙手一投足、なにをやっても楽しいなんて見方をされているかとは思いますが油断禁物、どこに落とし穴が潜んでいるのか分からないのがナマの舞台の恐さでございます。百戦錬磨の風間杜夫も、その辺のところは当然熟知していて手探り状態で芝居しているのが良くわかりました。これがナマの面白さでありスリリングな舞台の魅力です。

石川県の知事、アホですな。いや正直もんですな。こんな人が国会議員になり知事になるんですから、選んでる人もアホですなと言われないようにせにゃアカンですな。

今回の芝居の中にも、時事ネタで今の世界、日本の現状を憂えています。日々変化する世相を上手く切り取り芝居に取り込むことが出来るのも現代劇の良さだと思っています。

今日は東京公演2日目。杜夫ちゃんどんな芝居みせてくれるのかな...楽しみです。

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場外でも熱演中

2023/11/27
【第1827回】

いきなり寒くなり人も樹木もおたおたしております...一足早く紅葉した葉もひらひらと地上に落ち始め思わず枯葉♪を口ずさんでしまいました。勿論、シャンソンの名曲ですがジャズでのマイルス・デイヴィス、ビル・エバンスの演奏も極上です。

それにしてもこの季節、黄や紅で多くの人を魅了する樹々に拍手を送りたい。そんな光景を見ながら、人間もこれほど見事に変身できれば楽しいに違いないと思ってしまう。新緑の鮮やかな緑に始まり燃えるような色に変化し、風に吹かれながら舞い踊る。枝で美しさを誇り、落ちて惜しまれるなんて最高の生きざまじゃございません。

 

「昨日より今日はまされるもみじ葉の明日の色をば見でや止みなん」 恵慶法師

 

ガザ地区での停戦、人質解放、取り敢えずほっとしています。この時代に相も変わらず殺戮が日常化し、なかなか止められない世界の現状悲しい限りです。でも、これこそ人間が背負わなければならなかった業なんですかね。見渡せば、他の生き物が良いお手本を見せてくれてるはずなんですが...困ったもんでございます。

余計なことには手を出さず、自然界の法則に則って命を全うすることが困難な環境であることは分かっちゃいるけど、すべて原点回帰でいかんと大変なことになりますぞ...

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まだまだ魅せます

2023/11/24
【第1826回】

福間健二は生きていました...昨日、東中野にある粋な映画館ポレポレ東中野で福間健二監督の新作で遺作になった「きのう生まれたわけじゃない」を観てきました。今年4月に健二さんが74歳で亡くなったのを知り即、伴侶でありプロデューサーである恵子さんに連絡し自宅に伺いました。知り合って40年、こんな別れがあるなんてとても信じられない一日でした。その時、恵子さんはすでに前を向き今回の新作上映の準備を進めていました。

心の通わない母と二人で暮らし、中学校に通わず、希望を抱けない14歳の七海(ななみ)。妻を亡くし、過去にとらわれた元船乗りの77歳・寺田。ふとしたきっかけで心を通わせた二人は、友人かつ家族のような日々を過ごす。そんな中で、新たな人生の歯車が動き出すというストーリー。なんと寺田の役を健二さん自身が演じていました。いい顔してました!遺作に監督自身が主要な役を務め、詩人に相応しい透明感のある言葉を散りばめ、日常を説得力のある映像で見せられると、あたかも自らの死を予感していたとしか思えませんでした。

そして健二さんの7作目になる今回の作品が、今までの作品の集大成に匹敵する作品ではないかと...健二さん、恵子さんとの交流を通じ二人が生きてきた志、思考、人間としての在り方においらも共感しお互いに切磋琢磨することが出来たと...様々な表現方法はあるのは当然のことながら、確かなことは福間健二でしか表現できない言葉、映像を新鮮な感覚で作品として観れることがおいらにとっては秘かな楽しみでした。

今回が遺作となったのだが、この新作の健二さんの全身から発する表情は、まさしく「きのう生まれたわけじゃない」彼が信じた世界が彼の中に存在する限り、未来永劫生きてることを証明している映画だと思いました。福間健二は生きています!

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福間ワールド

2023/11/22
【第1825回】

作家、堀田善衛さんが1997年7月、60歳になった日からスペインに住み始めて430日に渡る日々を記した「スペイン430日~オリーブの樹の陰~」を読み始める。読んでいるうちに、おいらがアンダルシアの小村サロブレーニャに住み始めたことを懐かしく想い出しました。 

最初にスペインに行き、次に来る機会があれば必ず住もうと決めた村がサロブレーニャでした。グラナダ県サロブレーニャ村。グラナダからコスタ・デ・ソル(太陽の海岸)に山越えバスで一時間半南下すると海を眺めるような白い鯨の形をした巨大な塊が見える。この塊がサロブレーニャだ。砂糖きび畑と海を持つこの村は、ほぼ自給自足で生活している。

この村に着き先ずは家探し。最初に借りたマンションは家財道具付の2DK、もちろん目の前は地中海を前にしたベランダ付。家賃は日本円にして1万5千円で言うことなし。喜び勇んで住み始めたが、日本人にとって生活の一部である浴槽に問題が発生。電気でタンクの水を温めるため、大きな浴槽の三分の一溜まれば、タンクが空になってしまう始末。浴槽に身を沈めても精々身体の半分しか浸かれない。そりゃそうだ、スペイン人には湯船にゆったりと身を横たえる習慣がない。ここはスペイン流に妥協も考えたが、長く住むことを考えると、ここはどうしても譲れないところだ。管理人に契約解除を申し出る。すると、善良そうな管理人ぺぺおじさん「何とかしてみる!」この善意を無碍にも出来ず、様子を見ることになった。次の日から修理道具一式を持ち込み必死の修理を試み、シャワーのお湯を出し「ほら、こんなに熱いお湯が出るでしょう」と自慢げにのたまう。僕もしっかりと言い返す。「熱いお湯はいい。問題はこの浴槽にたっぷりお湯が溜まらんといかんのよ...」と日本人の習慣を話すのだが、ぺぺおじさん不思議そうな顔をして納得がいかず、みずから上半身裸になり、石鹸をつけてシャワーを浴び「こんなに綺麗になるのに、なんの問題があるの?」洗えば綺麗になるのは当たり前、問題はねえ...僕もすかさず反撃を取るべく浴槽の中に入り横になり身振り手振りで説明するのだが、ぺぺおじさん「なんで浴槽の中でこんな格好しなきゃならんのよ...」まるで埒が明かない様子。自分が納得いかない以上、前家賃を返すわけにはいかないと渋い答え。そりゃそうだ!ここはスペイン。異質の文化の違いを目の当たりにしてサロブレーニャの生活が始まった。

今日みたいな青空と、紅葉を眺めていると第二の故郷スペインで生活していた日々が眼前に果てしなく拡がってくる。

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今日の紅葉

2023/11/20
【第1824回】

先週の週末は歌声を鑑賞してきました。金曜日には大和田獏さんと娘さんの大和田美帆さんによる「BAKUMIHO」。獏さんが芸能生活50年、美帆さんが20年を期にこのようなユニットを結成し今回の公演が実現しました。めちゃ明るい美帆さんのキャラクターと温厚な人柄獏さんによるとっても温かい雰囲気に包まれたひとときでした。この時間を過ごして感じていたことは、コロナで亡くなられた母であり妻であった岡江久美子さんがこの二人を見守りながら最後はみんなと一緒に大きな拍手をしているなと...

土曜日は、「コットンクラブ東京」での村井國夫さんの渋い唄を堪能しました。若い後輩の俳優さんとのコラボでしたが、さすが79歳の年輪とダンディズムに拘ってきた村井さんの表現は群を抜いておりました。この年齢になっても己に厳しく鞭打って表現者としての高みを目指しているところがたまらんですばい。

急に寒くなり、東京のあちこちの樹木もかなり色づいてきました。でも道行く人の服装も様々、冬物を着た人が居るかと思えば、半そで短パンで平気な顔で散歩している人も居る有様。この情景だけでも気候変動の異常さが理解できます。新宿で歩いている外国から来た旅行者の中には、ランニングシャツで汗拭きながら闊歩している輩がいるんですから驚いてしまいます。これは明らかに食べ物の違いでしょうね...おいらもいろんな国に行きましたが日本食がやはりベスト1です。最後の食事は、白いご飯に梅干、ちりめんじゃこ、着色なしの明太子で十分でございます。

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善福寺緑地公園

2023/11/17
【第1823回】

最近、芝居関係で地方に度々行っています。おいらは生来旅人、流れ者性分で生きてきましたので、地方に行くだけでワクワクしたもんでございます。この世界にはまだまだ隠されているものがある...その隠されたものが存在するのが地方だという気がします。自分の知らない未知なるものとの出逢いで、自分自身も成長出来たのではないかと...そんな期待も持ちながら出かける地方、最近は何処に行っても同じ顔をしています。地方都市の商店街はシャッターが閉まった店が軒を貫いていて、少し郊外に行くと大きな駐車場付のショッピングセンターがあるのが普通になってきました。昔は地方色豊かな個性的な店が点在し、耳を傾けると訛り言葉で話す言葉が聞こえてきました。お店も生活と深く繋がり人の営みがまともであることを嬉しく感じられました。この国の大切な序列が、お金と所有欲へと舵を切ったところからこうなることは十分予測されたことだと思います。

その後、村おこしとか町おこしなんて動きも出てきてはいますが、これもどうやら結局は特定企業が力を持ち、その企業に寄り添わないとなかなか本来のプロジェクトと縁遠い方向に向かうことが多々あります。

でも、まだまだ地方の魅力は必ずあると思っています。それを確かめるには自分の足で、町や村のなんでもない路地に迷い込み、知覚をピクピクさせながら何かを感じようとする好奇心があれば大丈夫です。この国にはまだまだ見知らぬ魅力があちらこちらに散りばめられているはずです。ひょっとしたら鈍感になりすぎたこの国の人より、異国の人がその魅力を楽しんでいるのかも知れませんね。

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新宿西口

2023/11/15
【第1822回】

あちゃ~プロ野球史上最悪のFA宣言の選手が誕生しました。西武ライオンズに所属しながら女性問題で不祥事を起こし、自ら事の顛末をひた隠し、今年の3月実施されたWBCにいけしゃあしゃあと出場し、そのまま今年のシーズンに入り1本のホームランも打てない有様。そりゃそうだわ、いつばれるかわからない爆弾抱えて心中穏やかではないのは当たり前。その後、週刊誌で報道され、無期限出場停止。その後、持論を展開しあたかも自分が被害者であるかのような態度。西武ライオンズもさすがにクビにせず練習場を与える温情を見せていたのだが、ほかの球団の意見も聞いて見たいとFA宣言。要は不祥事のことは水に流し、高いギャラで契約してくれるところに行きたいのでライオンズ以外の球団さん検討してくださいなと言うことですな。実績、そして成績さえよければ少々のことは目をつぶってくれるし、時間が経てばほとぼりが冷めるであろうプロ野球界の悪しき風潮を巧みに利用しようとしてるんだね。

冗談じゃございませんことよ!球場に来るお客さんは、そうは簡単に許してくれないどころかブーイングが鳴りやまないでしょう。多くの野球少年に今回のことをどう説明したらよいのかホトホト困っている親御さんも居るでしょう。今回のFAの届け出もギリギリ、しかも代理人を通しての届け出、迷惑かけたライオンズの選手たちにも謝罪もせず。人間として如何なものかと思える行動ばかり。

そんな選手を、4年間20億円で迎え入れようとしている球団が、又もやソフトバンク。博多のファンの皆さんこれでいいんですかね?大金注ぎ込んでも優勝できないわけを根本的に考え直さないとそのうちファンからもそっぽを向かれますよ。

この選手の名前?どすこいの山川穂高選手です。ほんまに男を下げましたな...

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新宿南口

2023/11/13
【第1821回】

ガザへのイスラエルの無差別攻撃、ロシアのウクライナへの侵略が止まらない。ほくそ笑んでいるのは武器商人である。過去の歴史からアメリカが世界の大国に成り得た一因が武器産業であることは明らかである。今回のアメリカの立ち位置が、ダブルスタンダードである訳は必然。そんな中、世界の若者がSNSを通じて停戦への訴えの輪を広げようとしている。日本でもその運動が芽生えているのが嬉しい。おいらの時代は学生が立ち上がり、権力に対峙し激しく行動に転じたものだが、最近の学生は何故かおとなしい...そりゃ、わかる気もします。おいらの世代が政治、経済、環境含めて諸々、今の社会を形成したんのですから責任があると思います。そんな経緯を知った若者たちはほとんどが白けてしまったのかもしれませんね。

でも、誰かがストップをかけないと世界の終わりが見えてきます。これからも戦争がない世界なんぞは夢のまた夢、いかに最小単位の紛争で留まらせるかが大きなポイントだと思います。日本の若い人たちがSNSを駆使しながら平和な世界を希求する姿を見るにつけおいらも少しは希望を持てました。スポーツを楽しみ、アートの世界に酔いしれることが出来るのも平和があってのことです。

平和ボケしたニッポンの皆様、平和は勝手にどこからかやって来るものではございません。一人一人が自分の可能な範囲で平和を手繰り寄せる意識、行動を怠ってはなりません。今、目の前で見せられている悲惨な光景をしかと記憶に刻みつけ、次なるアクションに繋げようではありませんか...

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アンネも願ってます!

2023/11/10
【第1820回】

風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~最後のロマンス~」昨日、北海道苫小牧市文化会館で無事初日を迎えることが出来ました。苫小牧はこの作品の作・演出家である水谷龍二さんの故郷である。水谷さんの同級生の方々の尽力で実現できた公演です。何年経ってもこうやってともに思いやる気持ちが素晴らしい。人の繋がりが稀薄になっている昨今、聞きなれた友情なんて言葉を超越した絆を強く感じる。水谷さんも幸せもんである。

芝居は見事な仕上がり、苫小牧の観客の温かい反応をしっかりと受け止め1時間25分、隙もなく観客の思いを鷲掴みにしてしまうところが千両役者たる所以かな。

ひとり芝居をやり始めての26年間の蓄積を感じます。間の取り方、観客に対する問いかけ、どれ一つとってもドンピシャ!ひとり芝居をやるために生まれてきた男です。

昨日は本番まで時間があったので苫小牧の街をぶらり散歩。レトロな喫茶店を見つけコーヒを一杯。なぜかBGMにJAZZが流れている1975年開業の老舗喫茶店。店内には重厚感のある木目の食器棚がカウンター席の正面にあり、中には色んな形のコーヒーカップが並んでいるまさにザ・昭和の店。こんな喫茶店が生き残っているだけでも苫小牧の人たちが信じられる気がしてきます。王子製紙の城下町でありながら北海道の大地を踏みしめ、しっかりと生きている苫小牧の皆さんありがとうございました。

又、来年も新作を持って再会できることを楽しみにしています。

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苫小牧にて

2023/11/08
【第1819回】

山本顕一著「寒い国のラーゲリーで父は死んだ」読了。この本は、2005年にトム・プロジェクトで公演した「ダモイ~収容所から来た遺書~」に登場する亡き父山本幡男さんの長男が、お父さんの遺した言葉を抱きしめて書かれた本です。山本幡男さんは第二次世界大戦後、旧満州で降伏した日本人兵士等約60万人がソ連シベリア領内に連行され、極度の寒さや飢えの中で過酷な強制労働をさせられた一人です。多くの人が帰国する中、9年間もの長い収容所生活の末、帰国の願いも空しくハバロフスクの収容所で病死しました。

収容所仲間に信頼が篤かった山本幡男さんの遺書を仲間が口移しで覚え、帰国した際に遺族に伝える感動的な話を、是非舞台化したいと思ったときに逢いに行ったのが顕一さんでした。大学教授を退職されていた時期で、大変穏やかな方で即上演の許可を頂きました。上演中にも何度も観に来てくださって感謝の言葉を述べられていました。そんな顕一さんの両親への思い、兄弟に対する責任感、この本を読んで改めて顕一さんの苦悩と強い信念を思い知らされた次第です。

4人の子供たちへの遺書には万感の思いが込められています。

 

君たちに会えずに死ぬることが一番悲しい。さて、君たちは、之から人生の荒波と闘って生きてゆくのだが、君たちはどんな辛い日があろうとも光輝ある日本民族の一人として生まれたことに感謝することを忘れてはならぬ、日本民族こそは将来、東洋、西洋の文化を融合する唯一の媒介者、東洋のすぐれたる道義の文化、人道主義を以て世界文化再建設に寄与し得る唯一の民族である。この歴史的な使命を片時も忘れてはならぬ。また君たちはどんなに辛い日があろうとも、人類の文化創造に参加し、人類の幸福を増進するといふ進歩的な理想を忘れてはならぬ。偏狭で驕慢な思想に迷ってはならぬ。どこまでも真面目な、人道に基く自由、博愛、幸福、正義の道を進んで呉れ。最後に勝つものは道義であり、誠であり、まごころである。

 

未だ戦争が止まない今、この遺書の言葉の持つ意味は重い。

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獲物は見つかったのかな?

2023/11/06
【第1818回】

昨日、風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~最後のロマンス~」の最終稽古を観てきました。

74歳の杜夫ちゃん、すっかり牛山明になりきって躍動しとりました。一人で1時間半近く喋って歌って飛び跳ねて、そりゃ観てるこちらが大丈夫かいな?と思いきや、エンジン掛かるといつものペースで楽しそうにやってるところがすごかですたい!彼に果たして老いなるものが訪れるのだろうかと逆に心配さえしてしまいます。

なにせ26年という長い年月に渡りひとり芝居を続けているんですから、たいしたたまげたもんでございます。勿論、ひとり芝居だけじゃございません。舞台、映画、テレビ、そして落語もプロ並みの腕。役者をやるために生まれてきた人なんでしょうね。普段は努力してる風は一切見せないんですが、おいらが思うに彼独自の日常と役者との切り替えがとても上手いんだと思います。稽古終わりに旨そうに飲む酒と、ダジャレを発するその瞬間にも役者、風間杜夫のチャーミングさと色気を垣間見せるところもさすがです。

11月9日、北海道苫小牧でスタートする今回の芝居、東京は勿論全国各地でも公演しますので是非とも劇場に足を運んでくださいね...

昨日は阪神タイガース38年ぶりの日本一。タイガースファンの皆さんの喜び痛いほど分かります。今年はWBCから始まって昨日の日本シリーズの激闘。野球ファンにとっては充実した1年だったと思います。来年こそ、我がライオンズの有終の美を観たいもんでございます。

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井の頭公園

2023/11/01
【第1817回】

昨日、神奈川県藤沢市湘南台文化センターでの「沼の中の淑女たち」を観に行ってきました。10月3日の東京公演以来、久しぶりの観劇でした。全国各地を巡演してこの日が20ステージ目の公演。まだまだ、コロナ、インフルエンザで油断できないこの時期にキャスト、スタッフの皆さんが一丸となってここまで無事に公演できたことにまずは感謝です。なにせ演劇はナマモノですから何か一つでも事故があれば中止に追い込まれる危機にいつも晒されています。旅中に起こる体調不良、移動中の事故、不意に訪れる台風の心配などなど、主宰してるこちらとしては、昼夜問わず心落ち着くことなんぞはございません。「今日も無事に公演できますように!」とただただ祈るというより信じるのみです。

昨日の公演、見事でした。芝居の良し悪しは、やはり座組の良さで決まるんだなということを実感した次第です。出演者の5人の女優さんの自由闊達な演技、間の良さ、おのおののキャラクターが上手く活かされ1時間35分があっという間に過ぎていきました。

芝居を支えるスタッフのチームワークも見事です。地方公演はほぼ1ステージですから当日セットを仕込み、当日ばらしも当然あります。限られた時間内でセット、照明、音響の数々を手際よく処理しなければならないので大変な作業です。

こうやって、みんなの思いが一つになって日本全国に芝居を届けられるこの仕事が、未来永劫続けられる世の中であって欲しいと願いながら劇場を後にしました。

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霜月

2023/10/30
【第1816回】

コスモスの季節ですね...庭の片隅に可憐に咲いているかと思えば、畑一面に群生しているコスモス。おいらがこの季節で一番のお気に入りの花です。中でも、福岡市博多湾に浮かぶ自然豊かな能古島アイランドパークで開花するコスモスは、遅咲きも含めると10月上旬~11月上旬まで見頃を迎えます。ピーク期には約50万本が咲き、海を望む丘は色鮮やかな花のじゅうたんで覆われます。この時期になるといつもこの島を想い出します。市営のフェリーで10分もあれば行ける島で、おいらが好きな作家・檀一雄さんもこの島がお気に入りで住んでいました。今は息子さんの檀太郎さんが引き継いで住んでいるみたいです。実は、おいらもこの年位になったらこの島で晩年を過ごしたいと思ったくらいの魅力ある島です。

島の浜辺で食べた魚介類、亡くなった芝居仲間と昼間から飲んだくれ、島の散歩道に立つ檀一雄文学碑に記された「モガリ笛 いく夜もがらせ 花二逢はん」の句を絶叫した日が懐かしい。

さだまさし作詞・作曲で山口百恵が歌った「秋桜」も絶品ですね

 

淡紅の秋桜が秋の日の
何気ない陽溜まりに揺れている
此頃 涙脆くなった母が
庭先でひとつ咳をする
縁側でアルバムを開いては
私の幼い日の思い出を
何度も同じ話くりかえす
ひとりごとみたいに 小さな声で

 

コスモスを見事に描写し、歌に昇華した昭和の名曲です。

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秋桜

2023/10/27
【第1815回】

今シーズンは不満たらたらの采配でシーズンを5位で終えたライオンズ松井監督が最後にやってくれました。昨日のプロ野球ドラフト会議で大学野球界左腕ナンバーワンの国学院大武内夏暉投手の交渉権を獲得しました。ソフトバンク、ヤクルト含め3球団の競合の中、くじを引き当てました。地元福岡の出身者だけにソフトバンクは相当に悔しいに違いない。なんだか最近福岡出身の選手がぞくぞくとライオンズに集まってきてるのも何となく縁を感じます。だってライオンズはもともと福岡の球団なんだもの...近未来、ライオンズが博多に戻り、ソフトバンクが大阪に帰るなんてこともありかな?なんて思ってしまう。

このドラフト会議1965年に開始されて58年になろうとしている。考えてみればプロ野球選手を夢見て希望の球団に入れないなんてなんだか可哀想な気もしますが、この制度が無ければ間違いなく金満チームが一人勝ちになるに違いない、ソフトバンク、巨人なんてところに有能な選手が集まればつまらんプロ野球になるに違いない。嘗て、この制度がありながらインチキして選手の我が儘を通して球界の盟主読売ジャイアンツに入団した投手が居ましたな...野球の神さんもちゃんとみてござる。最近の巨人はすっかり駄目になりましたね。

スポーツにはダーティなイメージは似合いませんことよ...女性問題でライオンズに迷惑掛けてしまったホームラン打者もどうするんだろうね?出処進退早くしないとますます印象悪くしちゃうと思いますがね。

久しぶりに御茶ノ水にあるニコライ堂の前を通りました。学生時代にニコライ堂の鐘の音を聴きながら癒された、あの日あの時を想い出しました。

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ニコライ堂

2023/10/25
【第1814回】

久しぶりに挫折してしまった。第168回芥川賞受賞作、井戸川射子著「この世の喜びよ」。

ハナシの筋は、50歳くらいと推定される主人公の務めるスーパーで、15歳の少女と出会い、仲良くなり、喧嘩し、仲直りに向かう、という小世界を描いたもの。この作家、もともと詩人で言葉の選択が独特と言うより、イメージ先行で思いついた言葉を感性に従って配置しているので、主語が途中で入れ替わったり、助詞の使い方などなど従来の文章と比べかなり違和感を覚えるぶんかなり読みづらい。そして何故か言葉がすんなりと入ってこないのである。作家が敢えて、従来の小説にたいする新たな試みとして新しい文学の在り方を提言、提案しようとしているのかな?でも、入ってこない言葉ほどイラつき虚しくいらだたしいこと極まりないのでございます。

権威好きで文壇という特殊な群れに安住なさってる芥川賞選考委員の高邁な先生方、時折、いったい何を基準にして賞を選んでるのかな?と思うときがたまにある。紙文化が危ぶまれている昨今、出版業界にも忖度しながら仕事しなきゃならんのも分かります。なにも無理して賞を出す必要もないと思います。今年度は受賞作なし!こんなことがあっても決しておかしくありませんことよ。

賞を受賞しなくても世界的な作家になった村上春樹氏が居るんじゃありませんか...権威を重んじるあまり逆に、この国のカルチャー地盤低下してるんじゃないかしら?と思ってしまいます。

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色づき始めました

2023/10/23
【第1813回】

太平戦争中の1943年10月21日、2万人以上の学生が、雨の神宮外苑競技場を行進する映像を観るたびに胸が詰まる思いがする。まだたくさんの勉強をしたかったに違いない若者が、勇壮な音楽にスタンドで手を振る大勢の女子学生に囲まれて、銃を持ってずぶ濡れの学生服のまま視線を前に向けながら進む姿に彼らの葛藤を感じる。入学したばかりなのになぜ戦争に行かねばならないのか?日本、家族を守るために命を捧げよう!

正直言って、戦死していったこの学生たちが生きていれば、この日本も少しはマシな国になったのかもしれない...勿論、敗戦後この国が見違えるような発展を遂げたのは、日本人の勤勉性があってのことだ。いつの世も、何故か必要な人ほど早く世を去ってしまう。

戦地でよく聞く話、軍隊の上層部は徹底的に部下をいじめ倒し、戦局が危うくなると民間人を置き去りに真っ先に逃げる。こんな人たちが戦後政治にかかわったお陰で今の日本国の姿があるのも事実だ。

昨日、長崎と四国で補欠選挙があった。あれほど二世議員の弊害が言われてるさなか、なんと又、二世議員が誕生しました。確かにすべてが悪いと言わないまでにしても、二世議員の無能さ、そして代々継承しながら政治屋商店を永続して行きたいというセコさにほとほと嫌になっているこの感覚がわからない旧態依然の村社会を見せられた思いです。

本日のお決まりの増税メガネおじさんの所信表明演説もいつもながら虚しゅうございます。

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ゼラニウム
~花言葉、決意~

2023/10/20
【第1812回】

ミラクルロッテマリーンズ。ファーストステージでの10回の逆転劇、そしてまたもや昨日の盤石のチーム力を誇るオリックスを相手に9回での逆転。おいらも長い間野球観てるけどこんなことは珍しい。金満球団に勝ってくれると本当に嬉しい。昨日も角中がチャンスを作り、若手がそれに応える。安田選手はラッキーボーイ的な存在になっている。おいらはロッテの選手の中で荻野外野手が好きだ。小柄ながらしぶとく塁を狙う果敢な姿になぜか応援したくなる。角中外野手も渋いね。ねちっこくバットを短めに構え投手に向かっていく姿はまさしく職人芸だ。派手さはないがチーム一丸となって最後まで諦めないベンチの様子を見てると、なんだかちぐはぐなライオンズも見習って欲しいものだ...ベンチでヘラヘラおしゃべりしてる松井監督、平石ヘッドコーチなんとかせんと来年もBクラス確定だ。今日ロッテが勝利すると本当にわからなくなる。

平和ボケしたこの国からガザ地区の悲惨な光景を見るたびに心が痛む。戦争はいつの世も弱者、子供たちに甚大な被害をもたらす。戦争をして得をするのは武器商人だけだ。その際たる国がアメリカ合衆国、バイデン大統領の姑息な手法がなんとも信用できない。第二次世界大戦後、世界のお巡りさんみたいな振る舞いをしながら常に富を蓄えていったアメリカ。富のチカラにふれ伏してはならない...一刻も早い停戦を願うばかりだ。

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こっちの蜜はあ~まいぞ

2023/10/16
【第1811回】

先週の土曜日は、横浜演劇鑑賞会が発足しての50周年記念パーティに出席してきました。トム・プロジェクも多くの作品を呼んでいただいた鑑賞会です。東京と言う日々250から300ステージばかりの演劇、ショーが開催されてる地からの近場で50年継続してきたことに先ずは驚きました。横浜の人たちの文化に対する関心度の高さを感じます。そして、この鑑賞会の人たちの肩のチカラの抜け具合、明るさ、親しみやすさがとても好きです。

ハマっ子と言えば、隣人やよそ者を尊重し、開放的で寛容、そしてのんびりマイペースに先進的、という開港以来からのハマっ子気質が共通しているように思えます。そして乗りがいいですね。「百枚めの写真」を公演した時に、観に来ていただいた幹事の方に、横浜で上演する時には戦時中の会員さんの家族の写真をロビーに展示したらいかがですか?と提案したら即実行、公演当日懐かしい写真がロビーを埋め尽くしていました。自分の意見を持つが、人の意見も素直に聞き入れる乗りの良さを実感した次第です。

この日会員さんは勿論、創造団体の方々も出席し楽しい時間を過ごすことができました。

これから演劇を続けていくこと大変なことですが、こうした芝居が好きで創造団体を応援してくれる方々が居ることは心強いことです。AIの脅威が迫る中、演劇だけはAIに取って代われないアートだと思っています。がしかし、クオリティが問題でございます。多種多様な楽しみ方があるなかで演劇がいかに残れる存在感を示し得るか?創造団体としては日々アンテナ張って邁進するしかありませんね。

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横浜 桜木町より

2023/10/11
【第1810回】

昨日はセパ両リーグの最後の試合がありました。パリーグのロッテと楽天の試合、勝った方がクライマックスシリーズに出場出来るのでまさしく大一番。おいらは勿論ロッテを応援しました。だってライオンズの浅村をはじめ、優秀な選手を言葉巧みに楽天へ連れ出した石井監督には良いイメージがありません。そりゃプロの世界、お金も大切だし本人の野球生命を考えると仕方ない面がありますが、この人のやり方には狡猾な臭いが感じられてどうしても好きになれません。楽天は震災があった時に優勝に導いた星野監督の時代が一番輝いていた球団だと思います。一方、ロッテはライオンズ同様資金不足の球団ながら、今年就任した吉井監督の下で良く戦ったと思います。黒木ピッチングコーチ共々、選手の体調管理をしっかりとしながらの選手起用も感心します。選手を使い捨てのコマみたいに使う指導者の下、選手寿命を短くしながら去っていった選手が何人居たことか...どの指導者の下でプレーできるかはもう運命としか言えないのかな。

昨日の試合の勝因はロッテ小島のナイスピッチングに尽きると思います。一回裏楽天、いきなり満塁の好機が訪れたのに岡島のゲッツーでチャンスを潰したのが痛かったですね。そのあともゲッツーの山、これじゃ勝てませんがな。その点ロッテはツキがありましたね。先取点の岡のポテンヒットによる先取点、追加点が欲しいときに安田によるレフトポールに直撃するホームラン。野球の神様はちゃんと見てたんですね!

土曜日からは、ロッテは地元でソフトバンクを迎えてのクライマックスシリーズ第一ステージ。こちらもおいらはロッテを応援しますよ。そういえば2010年に当時のロッテはクライマックスファーストステージで2位埼玉西武に連勝、ファイナルステージでは福岡ソフトバンクを相手に1勝3敗から怒涛の3連勝を飾りクライマックスを突破。日本シリーズでもセ・リーグ覇者の中日に4勝2敗1分で勝ち越し"史上最大の下克上"を達成。これはホンマに凄かった...今年は、どうかな?わずかながら期待してまっせ!

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北海道で見つけた秋桜

2023/10/10
【第1809回】

10月7日・8日、北海道の苫小牧と伊達に行って来ました。来月上旬に公演する風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~最後のロマンス~」に備えてのワークショップということで作・演出の水谷龍二さんと一緒に一人芝居に関わることをいろいろと話してきました。苫小牧は水谷さんの出身地ということで、同級生の方々もたくさん参加されていました。苫小牧と言えば王子製紙、嘗ては日本全国の新聞用紙を調達していた工場が今も稼働中。この企業城下町の中で育った水谷さんが如何にして物書きや稼業としての夢を育んできたのか興味深いところでもありました。そして、こうやって水谷作品を上演することに尽力してくれる仲間が居ることも水谷さんの人柄であると思います。その方々が用意してくれた昼食会場、第一洋食店のハンバーグ定食とっても美味しかったです。そりゃそうだ、104年の歴史がある雰囲気満点のレストランでした。

翌日は伊達市。おいらも初めて行く街でした。苫小牧から太平洋を左に見ながら鉄の街、室蘭を過ぎたところにあり、有珠山と噴火湾に囲まれて、豊かな恵みが至る所にありながら文化の香りがするところでした。なんと、トム・プロジェクトの作品を2004年からこれまで7本上演してるんですからなかなか見識が高いなるほど納得のいく街だと思いました。この日は集まった人たちに教材を使って台詞を喋っていただきました。緊張しながらも楽しく演じてくれました。質疑応答も楽しくあっという間の時間が過ぎていきました。こうやって地方の人達と接することによって一人でも多くの演劇人口が増えると嬉しいな...見知らぬ人たちの出会いはプロデューサーにとっても次なるヒントになる貴重な機会です。

今回の機会を設定してくれた北海道演劇財団の新堂猛さんにはただただ感謝です。

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総合公園だて歴史の杜正門

2023/10/06
【第1808回】

2023年第169回芥川賞受賞作、市川沙央さんの「ハンチバッグ」読了。43歳になる著者は筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側弯症および人工呼吸器使用・電動車椅子当事者でもある。読みだした途端に、ミオパチー患者の主人公がハプニングバーのエロ記事を書いているところ始まるのだからおいらも度肝を抜かれる。舞台となっているグループホーム、医療器具などの描写が緻密であると同時に、主人公の肉体感覚の描き方が、彼女に繋がれている器具の一つ一つの感触や体温と機密に接続しており、文章の描写力に圧倒される。その中に、彼女が紙書籍を読むのに難儀しているために電子書籍を「あれは本ではない」と主張する人たちを揶揄する件は、なるほど説得力がある。

全編を貫くものは安易な共感を決して許さないという姿勢だ。綺麗ごとでもない倫理でもくくれない人間それ自体を丸ごと小説に表現していることに著者の強い意志を感じる。

このなんとも予測しがたい時代に、書き手も含めどんな作品が出てくるのか?これまでの常識と非常識の捉え方、価値観も真逆になるかもしれませんね...でも人の優しさ愛そして感謝の気持ちだけはいつの世も不変であることを信じたい。

「沼の中の淑女たち」昨日、長野県中川文化センターで旅公演初日を迎えることが出来ました。11月2日の千秋楽まで何事もなく無事の公演できることを祈るのみです!

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秋の薄暮

2023/10/04
【第1807回】

「沼の中の淑女たち」東京公演、昨日無事に千秋楽を迎えることが出来ました。連日大入り、お客さんの笑いも絶好調。何よりもキャスト、スタッフ何事もなく終えたことに感謝です。今回も、いつものように速達でハガキ一杯に見事に編集し感想を自筆で書いたO氏の郵便物が劇場に届きました。

 

田村孝裕はやはり今というものを切り取る天才だと今日も芝居を観ながら納得していました。辛口大人の童話とでも申しましょうか大富豪の跡取り娘とそこに同居するなんだかいわくありげな女性3人と話の進行役のようで実は鍵を握る若い女性の組み合わせにこの「沼」と「推し」の現代語が絡んで芝居好きの心にサクサク入ってくる話の展開となりました。この話の見えない登場人物が韓流のアイドルだというところが一層今の世相を匂わせて、こちらまでハングルのアイドルを垣間見たくなるから演者一同の熱演まさに今日の「推し」です。演劇鑑賞という「沼」にはまって50年。本日もまた素敵な芝居に巡り会えました。感謝。

 

いちはやくこんな感想を送って頂き、こちらこそ感謝です。

明日から全国各地での地方公演が始まります。東京公演の勢いそのままを地方のお客様に観て頂ければ本望です。このどんよりした空気感を吹き飛ばす芝居ですから、おおいに笑いもやもやした気分を晴らしてくださいね。

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秋の木の実 ハナミズキ

2023/10/02
【第1806回】

「沼の中の淑女たち」東京公演、残すところ今日と明日2ステージとなりました。芝居は順調に、いや快調に手応えを感じながら進んでいます。土曜日の夜のステージ終演後にトークショーがありました。この日は2回公演だったために役者さんも相当お疲れだったと思いますが、お客様のためにしっかりと裏話を面白おかしく話されていました。その中で羽田美智子さんが「この芝居は6人で走ってきたからね...」と話されたときはおいらも熱いものを感じました。体調不良で無念にも降板した岡本麗さんと共に舞台を相務めていたんですね...この思いがあっての日々の舞台、そりゃ面白い芝居になるはずですわ。

これを観客にストレートに伝えることが出来る羽田さんの人間性がよくわかる。俳優である前に、一人の人間として人の前に立つことの意味を示された発言だったと思います。

それにしても、今回の芝居の座組の良さを改めて感じました。芝居はナマモノだけに当然トチリがあることも想定内の出来事、その場に遭遇した時のお互いの一瞬のやり取りで座組が上手く行ってるのか不協和音なのかが良くわかります。おいらがこれまで観る限りにおいて、この座組は限りなくハナマルに近いベストなチームです。

神無月に入りました。この月に日本中の八百万(やおよろず)の神様が、出雲の国(島根県)に集まり会議を開き、他の国には神様がいなくなってしまうことから「神無月」と呼ばれてきました。こんな呼び方ができる日本の言葉、ロマンを感じます。

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赤坂にある公園

2023/09/28
【第1805回】

昨日、「沼の中の淑女たち」の初日を無事に迎えることが出来ました。今回の芝居の稽古中、出演者の岡本麗さんの体調不良により急遽降板せざるを得なくなりました。残すところ本番まで2週間と迫ったときにとっさの判断で感ピューターを起動させるのもプロデューサーの仕事です。演出家、プロダクションと連絡を取り合い、一日で代役、阿知波悟美さんに出演していただくことになりました。今回のことも、相手のスケジュール次第では代役決定に至るまでにそれなりの時間を要するのにドンピシャで決まったことは、この芝居是非やってちょうだいな!という芝居の神さんの采配だと思ってます。勿論、来ていただくお客様の熱い思いも後押ししてくれたんだと思っています。

昨日の初日、お見事でした。芝居の初っ端からラストまで観客席は笑いの渦、終演後においらを見つけて「ここ最近いろんな芝居を観てるんですが、こんなに笑えたのは久しぶりです...」なんて大満足な表情で劇場を後にして行きました。

日本ではなかなか成功しないシチュエーションコメディ、ドタバタではなくエスプリの効いた喜劇の書き手がなかなか生まれない土壌なんででしょうね。少しは遊び心を持った生活環境に変えねば難しい課題でもあると思います。

それにしても、この難局を乗り越え見事な初日を迎えたキャスト、スタッフの皆さんには本当に頭が下がる思いです。

地方公演を含め11月2日までの長丁場、この世の中ホンマに何が起こるかわかりません...油断禁物、もう一度気持ちを引き締め今日も劇場を笑いの沼にハマらせまっせ!

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初日

2023/09/25
【第1804回】

先週の週末、新橋演舞場で「ふるあめりかに袖はぬらさじ」を観てきました。有吉佐和子による戯曲は当時話題になり、1972年に文学座が戌井市郎の演出、杉村春子の主演で初演した舞台を観た記憶があります。筋書きとしては尊王攘夷派と開国派がしのぎを削る幕末を舞台に、神奈川・横浜の遊郭を舞台にした物語が展開します。

大竹しのぶさん、ここのところ杉村春子さんが演じた名作に挑戦してますね。杉村春子と言えば新劇を代表する大女優。決して美人とは言えないけれど演技力、人間としての存在は他を圧倒するものがありました。昔の新劇俳優には社会の中で、役者である前に一人の人間としての矜持を大切にしながら舞台に臨んでいたような気がします。考えてみれば、自分の意見を言えない人間が舞台にあがり人前で演じるなんてもってのほかですね。その点、西欧、アメリカの俳優は政治的な立場も鮮明にして俳優業を続けています。まだまだ日本ではそこまで浸透してないのが何だかもどかしい気がします。今回の芸能界を仕切ってる会社の問題も然り、日本の芸能界の歪さを象徴しています。

今回の芝居、勿論、風間杜夫さんが出演していたので観に行ったんですよ。大竹さんが主演の時は必ず共演しています。大竹さんが杜夫ちゃんと一緒に舞台に立つことによって安心できてる雰囲気がプンプン匂ってくる舞台でございました。

ここ数日、一気に秋めいてきました。空を見上げると一目でわかる雲の表情、あの猛暑の日々を過ごした日々を考えると、なんだか嬉しくなっちゃいました。

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秋の空

2023/09/22
【第1803回】

福井県越前市いまだて芸術館に行ってきました。10月9日に公演する「沼の中の淑女たち」に関連したプレセミナー・ワークショップをやってきたのでございます。先ずはおいらが「今、なぜ演劇が必要なのか」というテーマで1時間15分ほど喋ってきました。この会館では、過去トム・プロジェクトの作品を7本上演してきたので話の通りがスムーズに展開しました。演劇は映像と違って、舞台上のすべての演者の芝居が均等に観ることが出来るので、観客それぞれが自分の感性、好みでフォーカスできることの話の件ではとても興味深く聞いておられました。来場者の一人の女性が「演劇を見た後のいつまでも消えない幸せ感、温かい感覚が何とも言えません。」と芝居に対する率直な意見を嬉々として話しておられたのが印象的でした。

次に、俳優中嶋ベンさんと来場者による寸劇。地元でアマチュア演劇をやっている方の芝居はなかなかのものでした。

実はこの日、おいらがスペインを旅しているときにバレンシアで知り合った増田頼保、智雪夫妻と40年ぶりの再会を果たしました。ご夫妻二人、今立でアーチストとして活躍されていました。今立現代美術紙展の実行委員長をやったり、アートに彩られた風力発電機を創ったり、地元独自の文化を発信し続けていました。40年前バレンシアの彼らの家に泊まらせていただいたときは、おいら見果てぬ夢話を延々と話していたそうだ...その後、これまでにどこまで実現できたことやら?

人口の少ない日本の地方都市で、演劇を愛する人達との交流は、制作する我々にとって励みになると同時に、芝居創りの初心に立ち返る貴重な時間でもありました。

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眼鏡の町

2023/09/19
【第1802回】

猛暑のなかでの3連休も終わり9月も後半戦に入りました...なのに今日も相変わらずのアッチッチ、週間天気予報によれば、「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句にあるように、辛いこともいずれ時期が来れば去っていくってことなんでもう少しの我慢でございます。

それにしても、この暑さの中でもたくさん人達が行楽地に足を運んだみたいですね。花火大会、避暑地、近場の遊園地、キャンプ場どこも賑わっておりました、それにしても道路の渋滞はなんとかならないものかと思います。おいらなんかは、あの渋滞見てるだけで逆にストレスを感じるので駄目ですね。やはり日本人は辛抱強い国民性に支えられているんですね。

9月27日に初日を迎える「沼の中の淑女たち」、出演者の一人である岡本麗さんが体調不良のため降板しました。彼女とは半世紀以上の付き合いなのだが、断腸の思いではなかったのでは...福岡飯塚で育った土地柄で、気っぷが良く裏表がない誰からも愛される可愛く色気のある女優さんです。トムの作品にも何度も出演してもらい、魅力を存分に発揮してもらいました。今はただ一日も早い回復を祈ってます。

その代役として、阿知波悟美さんに急遽出演していただくことになりました。帝劇での「レ・ミゼラブル」に長く出演し、2010年にミュージカル「キャンディード」で読売演劇賞優秀女優賞を受賞したバリバリの実力派の女優さんです。運よくタイミングが合ってのことで、ここも演劇の神様が手を差し伸べてくれたんだと感謝の気持ちで一杯です。

とにかく芝居の世界は何があるかわからない世界です...楽しみにしているお客様のためにも役者、スタッフ、稽古場で今日も汗を流しています。

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猛暑の9月と千日紅

2023/09/15
【第1801回】

昨日、トラッシュマスターズ第38回公演「チョークで描く夢」を観劇。

舞台は黒板に書くチョークを製造する小さな工場。1960年から知的障害者を雇用し始め現在でも川崎、美唄工場で多くの知的障害者が仕事に従事している稀有な会社。前半は戦後間もない昭和、後半は令和のリアルタイムなドラマが展開する。現代社会の矛盾を鋭く突きつけてきた作・演出家、中津留戯曲の真骨頂を観させていただいた一日であった。

2011年3月に起きた東日本大震災の年に、震災をテーマにした「背水の孤島」を上演し演劇界を震撼させた男が、更なる良質な芝居を創り上げた。今年2月に公演した「入管収容所」もタイムリーな作品だっただけに、今年の演劇界は中津留章仁の年と言ってもいいくらいの快進撃だ。

演劇は様々なジャンルで、多種多様な表現、演出で多くの作品を生み出している。世界的にも予測不能な昨今、日常を忘れさせてくれる楽しい演劇を上演している劇場に足を運ぶ人達が多数を占めるのは勿論理解できる。演劇も娯楽のひとつではあるのだが、演劇がより良き社会にするための役割を担っているのも紛れもない事実である。100人ほどの小劇場で採算を度外視してでも心身を駆使して諸悪の根源に向き合おうとする姿にはほとほと感心してしまう。なかには自己満足な舞台も少なくないのも確かなのだが...

いいい芝居を観た後の酒ほど心地よいものはございません。昨日もウキウキほろ酔い加減で無事帰宅することができました。

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よか芝居ですたい!

2023/09/13
【第1800回】

又々暑さがぶり返してはいますが、朝晩にはなんとなく秋の気配が感じられます。

それにしてもモロッコの地震、リビアの洪水、まさしく地球の崩壊を予感させる災害が世界各地で起きています。その最中、ロシアと北朝鮮の独裁者がなにやら不穏な会談をしております。災害に戦争、まともなニンゲンなら冷静に立ち止まって地球が存続する戦略を思考するところなんですが、いつの世も独裁者には通じないことが悲しいですね。

一方、日本ではジャニーズ問題。外国から報道されやっと動き出すこの国の闇を感じますね。そして忖度するだけしておいて、ちゃっかり金儲けに走ったマスメディアも罪深い。ようやく企業も腰を上げCM出演を考え直すとのこと。演劇の世界でもジャニーズ所属のタレント、俳優を出演させれば客席が埋まるということが分かっているので起用することが常識。おいらも幾度となくそれらの公演に出かけた経験があるのだが、演劇を鑑賞するということよりもお目当ての出演者を観たいという欲望が優先しての観劇。しかも公演中に何度も劇場に足を運ぶリピーター客がほとんどでございます。確かに、演劇を観る機会が増え芝居人口の底上げにつながる可能性もあることは否めませんが、何か違うような気もします。

長い目で見ても、結局は質の高い作品を創り上演することをしないと演劇の未来はないと思っています。

質の悪い文化を生み出す国からは、質の悪い政治家、役人、企業しか生み出せないのは自明の理でございます。

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新宿西口甲州街道

2023/09/11
【第1799回】

昨日、神楽坂にあるライブハウスTHEGLEEで山崎薫コンサート「海へ。」に行って来ました。女優でもある薫さんの歌声は素敵でした。童謡でもある「われは海の子」をこれほど力強く拡がりを感じさてくれたことは新鮮でした。童謡と言えば、何となく可愛らしく叙情的に歌いがちなのだが、薫さんの歌は従来の海の概念を覆すほどのスケールでした。こんな表現が出来るのも役者として培ったものが役に立っているのでは...第二部で歌った「時には母のない子のように」、おいらも浅川マキほか数々の歌手で聴いてきたのだが、今回は山崎薫風の歌になっていました。今回のピアニスト田口真理子さんのチカラも大きいと思います。歌い手の良さを上手く活かしながらのタッチがとても心地よかった。時にはジャズ風に、時にはブルースの味付け、そして基本のクラシックと千変万化の演奏は実に聴き応えがありました。どんなジャンルにしても、表現者として自分の色を持てれば観客には確実になにものかを伝えることが出来ると思います。でも、その色を獲得することが実は非常に難しいんです。

バスケットに続き、U―18ベースボールワールドカップでの優勝、そして昨日のワールドラグビーカップの勝利、スポーツ界の躍進が続いています。演劇界も負けておられんですばい!何といっても芸術の秋ですからね。

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秋祭り

2023/09/08
【第1798回】

社長業を退任して少しは時間の余裕が出てきたので、念願の勉強に時間を費やしています。ふらっと街中に出て、その日の自然を含めて街の空気を感じながらお気に入りのジャズ喫茶に向かいます。最近では神保町にある「オリンパス」、中野の「ロンパーチッチ」、西荻窪の「ユハ」、ジャズと美味しいコーヒを飲みながら、まだ芝居のプロデューサーは続行中なのであれやこれやと次の芝居の企画に思いを巡らせています。そしてどの店もレコードに針を落としているので、まだ見ぬレコードのジャケットに目を凝らしスマホで検索し各プレーヤーの名前を確認するのも楽しみの一つです。舞台でも映画でも然り、主役がすべてではありません。名バイプレーヤーが居てこその作品です。昨日も「オリンパス」で「レッドガーランド ピアノ」が流れていたのですが、ベースのポールチェンバース、ドラムのアートテイラーが絶品でした。喫茶店のあとは明治大学の図書館へ直行。卒業生であれば駿河台、中野、和泉、生田の図書館がすべて利用できるんですから便利です。若い現役の学生さんたちに混じりながらの読書はホンマにはかどります。今日は武井照子さんの「あの日を刻むマイク」を読了。戦中戦後アナウンサーとして仕事にかかわってきた中で、やはり人の出会いがあってこそやれた仕事。その中でそれなりの業績を残した人に共通することは、精神の明晰さに尽きるとのこと。精神の明晰さ!素敵な表現ですね。

又々、台風の襲来。世の中少子化が進んでいるってのに、台風一家は子だくさんみたいですな。

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神保町の黄昏

2023/09/06
【第1797回】

砂原浩太郎「『高瀬庄左衛門御留書』読了。時代小説はいいですね...山本周五郎、藤沢周平などの作品を貪るように読んだ青春時代に比べると、ここ最近の作品で気に入っていた葉室麟さんも5年前に66歳で亡くなり寂しい気がしていました。2011年に出版した『蜩ノ記』なんかは絶品でした。武士の矜持という言葉が現代人にビシビシと伝わってきました。前藩主の側室の密通の罪を問われ十年後の切腹を言い渡された男。しかし、彼の生き様はあくまで強く美しく清廉であり、武士の生き様と家族と恋愛も含め涙がちょちょぎれた記憶があります。

おいらにとっても葉室麟さんに次ぐ時代小説の作家が出現した思いで砂原さんの小説を読み終えました。五十を前にして妻と息子を失い、息子の嫁・志穂とともに手慰みに絵を描きながら寂寥と悔恨の中に生きていた高瀬庄左衛門。そんな彼に藩の政争の嵐が静かに襲いかかろうとしている...いや、優れた時代小説に共通することは、文体の格調と美しさ。そして家屋、生活用具、登場人物の佇まい、景色、そのすべてが丁寧に緻密に記されていること。そんな文章を読んでいるうちの己の身体に一陣の清らかな風が通り過ぎる感じがし、背筋がしゃきっとしてくる感覚がたまりません。

価値観の多様化は時代の流れとして仕方ないにしても、あまりにもすべてが乱れまくっている現世、人が人として生きる上で大切な、己を抑制しながらつつましく生きることを教えてくれる時代小説は現代社会に欠かせないものだと思います。

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今日の空

2023/09/04
【第1796回】

昨日から「沼の中の淑女たち」の稽古が始まりました。女優5人による丁々発止の芝居です。

ベテランの岡本麗、円熟の柴田理恵、映像でおなじみの羽田美智子、リズム感溢れる長尾純子、トム・プロジェクのホープ森川由樹。この出演者を並べただけでもワクワクいたします。個性あふれる女優たちによるバトルがいよいよ始まったという稽古初日でございました。

プロデューサー稼業の面白いところは、キャスティングが上手くはまった時ですね。持ち味が似た者同士じゃ面白みに欠けるし、かといってあまりにも芝居の質がかけ離れていてもバランスが悪いし、そこのところの味付けがなかなか微妙なんでござんすよ。

今回は、おいらの勘といたしましては、かなり成功率が高いと思います。あとは作・演出家の腕の見せ所と言ったところかな?

お客様も、今回の芝居は期待してるんでしょうね。東京公演は完売の日もありますし、ほかの日も近々完売しそうです。観劇予定の方はお急ぎくださいませ。今回は地方公演もあり、芝居を楽しみにしている方々にも楽しんでいただける作品になると思っています。

先週の週末から日本バスケットの話題で持ち切り。野球、バスケット、そして今月にはワールドラクビー。何となくパッとしない世の中ですから、スポーツ界から勇気と希望をもらってる感じがしますね。本来ならば、この国を司る方々からの発信力と行動力で国民を鼓舞させなきゃならんのに...望み薄ですから、アスリートの溌溂としたプレーを観ながら前に進むしかありませんな。勿論、こちらもいい芝居創ってお役に立ちたいと思ってます。

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稽古場がある錦糸町

2023/09/01
【第1795回】

今日から長月というのにこの暑さ。そして今日は100年前に関東大震災が起きた日でもあります。「天災は忘れた頃にやって来る」東日本大震災然り、いや、この時代忘れた頃ではなく明日にでも来たっておかしくない世の中になってしまいました。防災のための備蓄を怠ることなく、常日頃の心がけに今一つチェックいたしましょう。

昨日は杉並区の敬老会に顔を出してきました。敬老会?おいらにとっては縁のない催しだとは思っていましたが、いよいよ向こうから勝手に押し寄せてきました。どんなもんだかと杉並公会堂に行ってみました。75歳以上のおっちゃんおばちゃんがぞろぞろと会場に向かっていました。なかには自分は老人の仲間入りはしたくない!なんて意地を張り出席しない人達も居るんでしょう...確かに生きていく上で大切なことは若さを失わないことだと思います。年老いた人達の過去の自慢話を聞くよりも、フレッシュな集まりのなか未来に向けた発信をしている場に居たほうがどれほど有益なことか、自明の理でございます。

ところで敬老会どうだった?いや、区の関係の人達の挨拶はさておいて、日本フィルハーモニー交響楽団・弦楽アンサンブルの演奏が素晴らしかった。ヴィヴァルディ「四季」より秋、ボロディン「ノクターン」などなど、映画音楽・「虹の彼方に」「慕情」も懐かしかったな。

お年寄りの青春時代を想い出させてくれるような選曲でした。そして極めつけは「津軽海峡・冬景色」弦の音色を巧みに使い分け、まるで津軽海峡が目の前に現れてきました。

以前にも杉並公会堂でジャズを聴きに行ったことがあるのですが、このホールの音響システムは抜群、身体に心地よく染み込んでいきます。

トリはソプラノ歌手・七澤結さんによる歌のステージ。歌曲「わが夢の街」「旅愁」日本の代表的な童謡「ふるさと」。何故か「ふるさと」を聴いてる途中に涙が出てきました...おいらは確実に年とってるんだなと実感した次第です...いや、この涙はもっと違う意味での涙ではないか...なんとも不思議な気持にさせられた一日でございました。

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スーパームーン

2023/08/30
【第1794回】

明後日から9月というのに何という暑さだろう...この先の予報も来月末までは覚悟しておいた方がよさそうだ。こんな時には詩集なんかに目を通すと一服の清涼剤になる。

今日は長田弘全詩集から「言葉」を紹介します。

 

悲しみを信じたことがない。

どんなときにも感情は嘘をつく。

正しさをかかげることはきらいだ。

色と匂いを信じる。いつでも

空の色が心の色だと思っている。

黒々と枝をひろげる欅の木、

夕暮れの川面の光。

真夜中過ぎの月が、好きだ。

単純なものはたくさんの意味を持つ。

いくら短い一日だって、一分ずつ

もし大切に生きれば、永遠より長いだろう。

どこにあるかわからなくても、

あるとちゃんとわかっている魂みたいに、

必要な真実は、けっして

証明できないような真実だ。

人とちがえるのは、ただ一つ

何をうつくしいかと感じるか、だ。

こんにちは、と言う。ありがとう、と言う。

結局、人生で言えることはそれだけだ。

 

一人の言葉は何でできているか?

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猛暑に涼やかさを届けてくれるムクゲ

2023/08/28
【第1793回】

今週もスタートしました。気持ちばかり秋の気配がしておりますが油断はなりません。ベランダにいつもは元気に咲いている花も今年ばかりはぐったり枯れちゃいました...お花ちゃんたちにも日焼け止めクリームが必要な時代になったのかな。水をあげるとなんとも嬉しい悲鳴をあげてる感じがします。いつも美しい花をみせてもらってありがとう!又、元気になって頂戴ね。

それにしても、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に対する中国の反応が凄いですね。

中国政府は日本からの水産物輸入を全面的に停止。日本人学校に石や卵が投げ込まれ、日本では中国の国番号86で始まる迷惑電話が相次いでいる。何の関係もない埼玉のラーメン屋にも30件ばかりの迷惑電話が掛かって困っていました。不動産を含め、中国国内の景気の減速の不満を政府に抗議するとエライ目にあっちゃうので、その捌け口として日本の向けられてるのかな?困ったもんでございますが、海洋放出したからには、先ずは漁業で生計を立てている福島の漁民に救いの手を差し伸べるのが国の仕事です。なんだか言行不一致内閣の為すことに比例して支持率も下がってますから、ここは初心に戻ってと言いたいところだが、政治屋さんのオムツかなりマヒしてますから期待薄かもしれませんな。

子供たちの夏休みも今週で終わりになりましたね。夏休み、両親と行楽地に向かう子供たちのキラキラした表情を見るにつけ、キラキラ顔が持続継続できる未来を切に願います。

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想い出の夏休みだったかな?

2023/08/25
【第1792回】

何だか今年の夏の甲子園は盛り上がってますな。長髪高校同士の準決勝、そして決勝は107年ぶりの優勝を賭けた慶応と、夏2連覇を目指す仙台育英の一戦。大谷フィーバーに匹敵するほどの、それこそ暑い熱い戦いになりました。おぼっちゃん慶応のエンジョイベースボールはいいですね!坊主頭に根性丸出しの野球は次第に無くなっていくんでしょうかね...それはそれで寂しい気もしますがね。風になびく髪も美しいが、野球道にひたすら突き進む修行僧的な坊主頭も捨てがたい。決勝の甲子園球場はほぼ慶応の応援一色、仙台育英はアウェー状態で可哀そうでした。でも、いい顔して戦ってました。負けましたがこのチームの監督も素晴らしい方でした。試合後のインタビューで「人生は敗者復活」と話されていました。この哲学があってこそのいいチームですね。今回の二人の監督の下で三年間野球に打ち込めた生徒は本当に幸せ者だとも思います。

おいらも中学時代の野球部で、こんな先生に出会っていたら西鉄ライオンズの選手で活躍してたかもしれませんな?と夢みたいなことついつい夢想しちゃいました。

一方、パリーグの我がライオンズの酷さは力抜けちゃいます。オリックス相手に地元で3連敗、3試合での得点がホームランでのたったの1点。このくそ暑いなか蒸し風呂みたいな球場に貴重な時間とお金を出して観戦したファンが気の毒でなりません。こんなクソ試合するんだったら入場無料にしろよといいたい。試合は負けることはあるのは当然ながら負け方があまりにも情けない。松井監督、名選手であったことは認めるが監督には向いておりません。試合後のインタビュー明らかに語彙の貧困さが際立っています。指導者は豊かなイメージと説得力のある言葉が命です。今回の夏の高校野球決勝戦で戦った両監督のところで修行した方がいいんじゃないかしら...ほんまに情けなか!

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猛暑のなかの夕暮れ

2023/08/23
【第1791回】

今日も世界的な天候不順のなか各地で戦争が行われている。にもかかわらず今年の3月、千葉の幕張メッセで4年ぶりに武器見本市が開催された。平和憲法がある日本に、武器取引をする死の商人が集まっている光景を見るだけでなんとも不自然である。戦争があればもうかる死の商人たちのにこやかな歓談姿を見るのはなんとも気色が悪い。そしてなんと政府が後援した国際的な武器見本市と銘打ってるんだから開いた口が塞がりません。

戦争や犯罪は、人間にとっての最大の尊厳である「死」をないがしろにする。死の意味と共に、すべての豊かな「個」も死に絶える。ということは人間性のすべてが否定されるということになる。

そしてもうひとつ気になることが、SNSの存在である。自由になんでも発言できることをいいことに、暴力的なゴツゴツした言葉のつぶてが日常茶飯事に飛び交い無作為に見知らぬ誰かを傷つける。今や言葉が安っぽく使われ身体に届いてこない。言葉を吐くときには己のすべてを賭けてぶつけて欲しい。要するに言葉は言霊であるということを自覚して欲しい。まあ、世の中を治めている人達の言葉があまりにも軽いのでこんな時代になっちゃったのかなとも思います。

そして今日、樹木の中からひょっこりと顔を出してる葉っぱちゃんを見つけるとなんだか元気が出てきました。日々、猛暑のなかでも毅然たる姿で立ってる樹々はいろんなことを気付かせ学ばせてくれます。ありがとさん!

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生きてます!

2023/08/21
【第1790回】

先週の週末、練馬区下井草に拠点を構える、東京芸術座アトリエ公演「アンブレイカブル~敗れざる者たち~」を観劇。戦前から演劇活動をしていた村山知義さんが創立した歴史ある劇団です。今回の芝居は戦前の日本で治安維持法違反に問われ、特高警察による過酷な取り調べや劣悪な環境の中で命を落とした者たちの話です。今この国の現状を「新しい戦前」という発言があったように不穏な動きがあちらこちらで見受けられる中でのタイムリーな公演だと思いました。

この傾向の芝居の役作りは非常に厄介です。熱くならず、かといってあまりにも冷めた表現でも観客に伝わらず、そのあたりのさじ加減が難しいと思います。今回登場する役者さん、そのあたりをじっくりと本を読みこみ稽古で積み上げていったのではなかろうか。勿論、その表現を冷静に見続け演出した演出家の手腕があっての舞台です。

おいらも長いこと芝居に関わってきましたが、この劇団のように真摯に演劇に向き合っている集団に出逢うと嬉しくなってしまいます。驕ることなく常に市井の人達に寄り添って芝居を創る!この姿勢がある限り演劇が衰退することはありません。

それにしてもこの暑さ異常ですね...外出を控え、物価の値上げで消費を控えるなか、今日も長年地元の人たちに愛された居酒屋が閉店を余儀なくされた新聞記事を眼にしました。

一寸先は闇...危機感を感じながら楽しく生きるなんて矛盾してるようには思いますが、これが世界の現状でございます。

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新宿南口

2023/08/18
【第1789回】

パルコ・プロデュース「桜の園」観劇。ロシアの作家チェーホフが120年前、死の5ヶ月前に書いた最後の作品である。急変してゆく現実を理解せず華やかな昔の夢におぼれたため、先祖代々の土地を手放さざるを得なくなった、はかなく消えゆく貴族階級の哀愁を描いた演劇における不朽の名作である。おいらも若い頃、俳優座、文学座での名優の芝居で新劇の素晴らしさを実感した記憶があります。東山千栄子、細川ちか子、宇野重吉、米倉斉加年なんて役者さんが懐かしく想い出してくる次第です。

さて今回の芝居、冒頭からなんじゃろかいな?という舞台装置で観客の度肝を奪う設定。だってコンクリートの石棺が吊り上げられ、ビニールで覆われたものを取り払うと登場人物や家具が現われる。成程、封印された過去を解き放し現代に蘇えさせるための幕開けだったのか...演出は英国のショーン・ホームズ。気鋭の演出家と言われればこれまでやったことのない発想と演出で舞台を創りたいという気持ちは十分に理解できます。

確かに今まで観た作品とは随分違った感じがします。でも、役者の表現も含めてあまりにもポップになりすぎているのではないかと思います。これでは登場人物のおかしみ、悲しみの深さが薄められてしまいます。なんだかあの嘗てのロシアの大地とかけ離れた芝居に感じられました。その中で、地味ながらきらりと光る演技と存在感を示したのが村井國夫さんでした。あの立ち振る舞い、哀愁を感じさせる台詞術、とても印象に残る演技でした。

今日も猛暑、ここまで来たら覚悟して暑さを楽しむしかありませんな皆の衆。

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猛暑もなんのその!アンネのバラ

2023/08/16
【第1788回】

終戦から78年となった昨日8月15日、政府や東京都が主催する戦没者追悼式が相次いで行われました。遺族らは戦没者を悼み、戦争の惨禍が繰り返されないよう、平和を祈りました。おいらがいつも思うことですが、確かに国のために戦地で無念の死を迎えざるをえなかった人達に鎮魂の気持を持つことは当然です。がしかし、この国が他国に対して行った数々の加害的事実に対しても同じような気持で向き合わなければいけないと思います。アジアに侵略し他国の土地を奪い数々の残虐な行為を行った歴史。例えば、太平洋戦争中に、旧花岡町、いまの大館市に強制連行された中国人が、終戦直前の昭和20年6月30日に過酷な労働や飢えに耐えかねて一斉蜂起し、鎮圧やその前後の過酷な労働による死者もあわせると400人以上が死亡した花岡事件。これに類する出来事が多々あるにもかかわらず、あまり表ざたにしないこの国も、いまウクライナに侵略したロシアとなんら変わらない歴史があったことを忘れないで欲しい。

被害者意識ばかりを主張し、加害者としての贖罪意識なくしての平和運動は片手落ちではなかろうか...まあ、いつの頃からか教科書にも日本が起こした戦争に対してうやむやにしたことにも問題があると思います。

海軍第14期飛行予備学生で特攻隊要員だった100歳になる裏千家15代の家元千玄室さんは「平和」という言葉が嫌いだという。「平和」という言葉の前には、みんなで殺し合う国と国の衝突があるから。平和という言葉を使わない世界にしなくてはならないと...そして、帰還を許されない若き特攻隊員にお茶を点て、皆が「お母さん!」って故郷に向かって飛び立ったそうだ。「天皇陛下万歳!」って言葉はなかったとのこと。

8月だけではなく、常日頃こうしたことを忘れない国でありたいですね!

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8月15日の空

2023/08/10
【第1787回】

この猛暑の中、第105回全国高校野球選手権記念大会が連日行われています。TV越しで観てるだけでも熱い戦いに暑さ倍増。高校野球の面白いところは終盤、特に9回の攻防で戦局が一変するところです。あと一球で試合終了という場面で奇跡の逆転なんて試合が何度もありました。あの甲子園球場には105年という長い年月の間に、きっと野球の魔物が潜んでいるに違いない。今日の第二試合、明豊(大分)と北海(北海道)の一戦、9回裏の土壇場で北海高校が同点に追いつき、更に延長戦で再び逆転し勝利しました。まさしく筋書きのない奇跡のドラマが用意されてるんですから野球の醍醐味十分といったところです。

こんなの見せられると芝居はとても太刀打ちできません!と白旗上げてちゃダメなんで、一工夫どころか発想の転換をしなきゃと言いたいところですが...芝居は芝居なりの良さがあると信じて創り上げるしかありませんね。

明日からお盆休みです。ご先祖様をご自宅にお迎えしてご供養する夏のいつもの風習ですが、今年は台風と重なりご先祖様、風雨にさらされ難儀されているんでは?と心配しております。

おいらがこうやって無事に生かされているのも多くの先人のお陰だと思っております。ついつい忘れがちな感謝の気持ちを、今あらためて感じる次第でございます。

「夢吐き通信」も15日までお休みです。皆さま良いお盆休みでありますように!

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夏雲

2023/08/09
【第1786回】

長年の友人でもあり、仕事も一緒にしたこともある日本舞踊春日流家元の春日鶴壽さんのお招きで「夏の涼み 芸者と屋形船」に行ってまいりました。深川の渡船場から屋形船が出発し、お台場で停船し自慢の江戸前料理、刺身と天ぷらを酒と共に食する暑気払いにぴったりのコース。この日は、鶴壽さんのお弟子さんである3人の芸者さんが日本伝統の芸をたっぷりとご披露してくれ大満足でございました。季節の踊り、お座敷遊び、江戸芸勢ぞろい、暮れ行く空と、レインボーブリッジ、湾に立ち並ぶ光景を眺めながらの大宴会申し分ありませんでした。世知辛いというか、すべてが西洋文化に押し流されている昨今、日本の伝統文化、しかも下町庶民にこよなく愛された芸の数々、改めて守らないかんと思い知らされた次第です。俺たちやっぱり日本人、踊りに歌、そして三味線、太鼓にしても、身体にしっくりきて気持んよかですばい!風情と情緒に酔いしれた2時間半でございました。

長崎は今日、78回目の原爆の日を迎えました。台風の影響で市内の屋内施設での平和祈念式典が営まれ、犠牲者に祈りをささげる様子をTVで拝見しました。鈴木史朗市長の平和宣言はハートがあり好感を持てました。改めて、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の核軍縮文書「広島ビジョン」が肯定した核抑止論に反発。「私たちの安全を本当に守るには、地球上から核兵器をなくすしかない」と強く訴えました。本気度が感じられないお偉いさんが出席しない分だけ簡素で意義ある式典だと思いました。

長崎で被爆した作家、林京子さんは「原爆による死は、人間の死じゃない...人間があのように扱われて死んでいいはずがない」と。この言葉、改めて肝に銘じたい。

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奴さんだよ

2023/08/07
【第1785回】

昨日は広島に原爆が投下されてから78年です。いつものように午前8時から行われた平和記念式典。市長、総理、国連関係の人たちのそれぞれの挨拶がありました。その中でも地元の小学生2人が「平和への誓い」として、「被爆者の思いを自分事として受け止め、自分のことばで伝えていきます。誰もが平和だと思える未来を、広島に生きる私たちがつくっていきます」と述べました。その通り、原稿用紙に目を通すこともなく、自分の言葉としてはっきりと訴えかける姿が印象的でした。総理なんぞは国会の答弁そのまま、官僚が書いた原稿をそのまま何の感情を交えることなく淡々と人間スピーカーを演じておりました。

おいらいつも思うのだが、唯一世界での原爆被爆国として世界に発せられる言葉としてはあまりにも安易ではなかろうか...発言者は、時間があるのだから、何度も何度も有効性のある言葉を自分の身体に叩き込み咀嚼しながらこの日に臨むべきなのではないだろうか。

いつもの決まり決まったセレモニーを毎年毎年見せられても本気かいな?と言う気がしてなりません。

それにしても、この国が未だ核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバーとしても参加してないことにも納得できない。それどころか核を所有しているからこそ戦争を止められるという核抑止論を助長する動きに同調する人達が増えてきている現状にも不安を感じます。

明後日は長崎での式典、台風の影響で会場も屋内に変更し、来賓者、式典出場者及び被爆者・遺族の代表者のほか、事前申込みをいただいた方や自治体など全ての参列を中止とのこと。大々的に実施するのではなく、心ある人たちによる平和の式典が実施されるいい機会になればいいのになと思います。

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テッポウユリ
~純潔~

2023/08/04
【第1784回】

連日の猛暑のなか夏休みも本番となりましたが、沖縄で想い出の夏休みを夢見た子どもたちにとっては可哀想な沖縄の旅になりました。飛行機が飛ばず、無駄な連泊を強いられ手持ちぶさたな表情がなんとも痛々しい。この台風、又もや沖縄に出戻り、更なる被害をもたらすってんだから始末が悪い。ほんまにこの世は変幻自在、人間は右往左往、確実に地球は大変換期を迎えております。

夏休みのスターはやはり花火でしょう。コロナの影響でやれなかった各地で4年振りに開催されています。東京の隅田川花火大会も100万人の人出でございました。仙台市の人口とほぼ同じ人数の人達があの狭い地域に集まったんですから、これも狂気の沙汰状態。花火処か汗だくの人をお互いに鑑賞し合ったなんて話も伝わってきています。

おいらの花火の想い出と言えば博多大濠公園での花火大会。早い時間から花火を見るための場所取りではなく、ラムネを売る場所を確保するための場所取りでございました。小さいときからよく働くキヨシ少年でした。大空に打ち上げられた美しい花火なんぞを見ている暇なんぞはありません。飛ぶように売れるラムネの球を抜く音と、打ちあがる花火の音の競演を楽しんでいた懐かしい昭和30年前後のあの日でございました。

「裸の大将」で有名な放浪の画家、山下清もちぎり絵で美しい花火の絵を創作しました。そしてこんな言葉を残しました。「みんなが爆弾なんかつくらないできれいな花火ばかり作っていたら、きっと戦争なんておきなかったんだな」

けだし名言でございます。

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「た~まや~」「か~ぎや~」

2023/08/02
【第1783回】

猛暑のなか葉月となりました。昨日の突然の豪雨にはびっくり!本当にこの現世なにが起こってもおかしくない、危険極まりない時代でございます。

そんな折、急激に勢力を拡大してきた政党の「立民がいても日本は何も良くならない」、共産に関して「日本からなくなったらいい政党」と公言し居直っている。まあ、当たり障りない発言でごまかしている輩が多い中、ここまで本音をズバリ発言していること自体驚きなんだが、この政党が政権を掌握した時の方が怖い気がする。何事も排除はよくありませんね。民主主義とは少数者の意見も聴きながら事を進めるのが基本でございます。

それにしても連日、防衛費、少子化対策への増税、どこから引き出すかなんて議論をしてますが、おいらに言わせれば議論している貴方たちの議員数を減らすことが先でしょう!と言いたい。当選回数に合わせて大臣を任命しても、官僚が書いた書類を棒読みする姿を見るたびにうんざりでございます。そんな人たちに多くの税金が払われると思うだけでも腹が立ちますバイ。庶民は度重なる物価の値上がりに悲鳴を上げています。この低迷する日本国を立て直す政治家出てこい!と言ってもすべてが程よく小さくなったこの国からは、なんとも無理な気がします。

暑い!暑い!といいながらもあっという間に夏も過ぎてしまいます。悔いのない楽しい夏にしたいもんでございます。

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8月の雲

2023/07/31
【第1782回】

先週の週末、新宿歌舞伎町に新たにオープンした新宿シアターミラノ座で、唐十郎作「少女都市からの呼び声」を観てきました。この場所は嘗ての映画館「ミラノ座」があり巨大なスクリーンと大音響のスピーカーで数多くの名画を堪能した場所でした。前の広場を挟んで「コマ劇場」もありました。この劇場で美空ひばりも観ましたな...まさしく昭和の匂いがプンプンしてくる場所でもありました。この広場では、いろんな大道芸人が現れ道行く人たちを楽しませてくれました。そのなかでも印象的だったのは、殴られ屋で商売してるオッサンでした。「どうぞ私を思いっきり殴ってストレス発散しませんか!一分間、千円で殴り放題!」多くの人達が集まり皆興味津々、おいらが覗いた時は、いかにも悪そうで屈強な男が本気でオッサンに襲いかかりぼこぼこにされてました。腫れた顔でも丁寧に「ありがとうございました」とお礼を言ってましたな。新宿は、いつの世もカオスの街、得体のしれない人種がどこからか集まりどこかへ散っていくあぶくのような街...

所で芝居の方はといいますと、この新しくできた劇場、なんだか慌てて作った感じ。ロビーは狭いし客席も少々チープな感じがいたします。何といっても入場料¥12000しますからね。それなりの座り心地は欲しいもんでございます。

少女 雪子を演じた咲妃みゆさんの透明感が素敵でした。動き、声 、表情、全てがはまってました。そして芝居を締めていたのが風間杜夫ちゃんでございました。最後は歌まで唄って貫禄十分。そして主演を演じた関ジャニ∞安田章大さんを観るために駆けつけた多くの若い女性ファンが、これをきっかけに芝居を観に来てくれたらなと思った次第です。

この日は、4年振りに開催された隅田川花火大会とも重なり、新宿の街も外国観光客も含め大賑わいでございました。

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7月31日の空

2023/07/28
【第1781回】

「海をあげる」タイトルに惹かれ読了。沖縄に住む琉球大学教育学研究科教授の上間陽子さんが書き上げたノンフィクションです。沖縄に暮らす人たちの痛切な叫び声を無視し続け、観光地としての素晴らしさだけに注目する本土の人達に対する怒りを現地に住む人たちの声を通して描き綴っている。国の最高機関が最良の決定という大義名分の元、辺野古に土砂を投入した日本に対しても絶望的な言葉で抗議している。こうなると一連の流れは沖縄に対しての搾取であり差別だと断言する。「差別をやめる責任は、差別される側ではなく差別する側の方にある。」にも関わらず、彼らの問題として全てを押し付ける。

そして彼女はこの言葉で締めくくる。

 

そして私は目を閉じる。それから、土砂が投入される前の、生き生きと生き物が宿るこっくりとした、あの海のことを考える。
ここは海だ。青い海だ。珊瑚礁のなかで、色とりどりの魚やカメが行き交う交差点、ひょっとしたらまだ人魚も潜んでいる。
私は静かな部屋でこれを読んでいるあなたにあげる。私は電車でこれを読んでいるあなたにあげる。私は川のほとりでこれを読んでいるあなたにあげる。
この海をひとりで抱えることはもうできない。だからあなたに、海をあげる。

 

これは沖縄に住む人たちの絶望を、見て見ぬふりしているすべての日本人に託したメッセージである。

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ちびっ子盆踊り

2023/07/26
【第1780回】

アメリカの俳優労組がストライキを開始した。米ハリウッドでは、過去43年で最大規模のストとなるそうだ。労組は、動画配信大手や制作会社などに対し、利益の公正な分配と労働条件の改善などを求めている。これは将来、役者の仕事もAIにとって代わられるんじゃないかという危機感から発したものだ。事実、AIで作られた映像を見てびっくりしました!どんな人物の顔、声すべて出来てしまうんだから俳優の仕事は無くなってしまう時代が、もうすぐ近くまで来てるのだからストも当然のことかもしれない。

こうなると最後に生き残るのは演劇かもしれない。舞台での生モノの役者だけは代替えは効きませんな。様々な人生を背負った老若男女の役者を、今まさに目の前で観ることができるからこその演劇である。古代から世界各国で上演されてきた演劇の底力がこれからますます底光りするんじゃないかしらと思っています。

それにしてもこの暑さ、東京は37度。この先、地球はどうなってしまうんでしょうね?今のままではあらゆる災害に晒され、当たり前の生活が成立しなくなってしまうんじゃないかしらと悲観的な状況を考えてしまいます。地球温暖化を防止するためには、いまの生活を見直し二酸化炭素の排出量を減らすことが必要とわかっちゃいるけど止められない!というのが今の世界の現状です。政治家を筆頭にニンゲンという生きもの、いよいよ地球最後の日を迎えないと気付かない鈍感な生きものなのかもしれませんね。

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猛暑に負けずミンミンミン♪

2023/07/24
【第1779回】

先週の金曜日、新宿文化センターでの島田歌穂さんの「Musical,Musical,Musical!!」に行って来ました。スペシャルゲストに上白石萌音を迎えての華やかな会でした。今回のテーマは「ミュージカルとジャズ」、そういえばジャズのスタンダードナンバーの歴史を辿ると、実は元々ミュージカルのために作られた曲が多いのも事実です。おいらが20歳のときに新宿ジャズ喫茶DIGで聴き衝撃を受けたジョン・コルトレーンの「マイ・フェイヴァリット・シングス」もミュージカル「サウンド・オヴ・ミュージック」の挿入歌である。この日はジャズ喫茶で耳にしたナンバーをたくさん聴けてとてもハッピーな一日でした。

音楽監督である島健さんと演奏者との息もピッタリ、歌穂さんがのびのびと楽しく歌う姿に観客も大満足でございました。

来年は島田歌穂さん、大和田獏さん出演の「モンテンルパ」の再演が決まっています。芝居の中で歌われる歌穂さんの歌は絶品です。獏さんの芯の強さを表現した演技も見ものだし、真山章志の迫真のシーンも見ごたえがあります。出演者のなかでもっとも若い辻井彰太の生きの良さが舞台に弾みをつけています。2021年、コロナ禍のなかでハラハラドキドキしながら上演した芝居が、多くの人達の再演を望む声に押され上演できることは本当に嬉しい限りです。

週明けもアッチッチ!夏空に映える百日紅の花を見上げると暫し暑さも吹っ飛んでしまいます。

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サルスベリ

2023/07/21
【第1778回】

先日、トム・プロジェクトに3年半勤務した石井君の送別会を行いました。振り返ってみれば29年間いろんな人達がトムのために働いてくれました。演劇業界は昔からなかなか食べていけない産業の一つに数えられていました。役者になろうなんて言ったら「何が悲しゅうて河原乞食になるの?」てな言葉が返ってきたもんでございます。そんな世界で芝居を企画して制作するなんて無謀なこととは知りつつ何とかやってこれたのも、吐夢駅に立ち寄り関わった人たちのお陰だと思っています。演劇の世界からの人もいれば、全く関係ない仕事から入社した人もいます。考えてみれば社名が吐夢ですから「よっしゃ夢でも見ようじゃないか!いやいや叶えて見せまっせ!」という意気込みがなければ継続できない仕事です。

何もないところから立ち上げ、1本の芝居を創り上げることはなかなか大変だからこそやりがいがある仕事だと思っています。まさしく無から有、この過程の中に様々なドラマがあり発見があることに興味津々のある人ほど長続きするような気がします。

いろんな事情で退社した人たちにとっても共に芝居を創りあげるなかで得たものを、今後生きる上で役立てて欲しいと思います。

人生の旅、いくつもの駅で降り、いろんな人と出会い様々な体験を得て終着駅に向かいます。

そんな長旅の中、吐夢駅に立ち寄ってくれてありがとう!感謝の気持ちで一杯です。

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夏の空

2023/07/18
【第1777回】

いやいや、一歩外に出ればサウナ状態です。散歩なんぞしてると頭がぼんやりとして参ります。高齢者は心身ともに鈍くなっていますのでおいらは大丈夫なんて言ってるととんでもないことになっちゃいますからご用心。てなことで、どうしても散歩したいならば日が沈んでからがよさそうですな。こんな時は、クーラーかけて家に居るに限ります。昨日はアマゾンビデオで「ヒトラー~最期の12日間~」観ました。ヒトラーと言えば、狂信的な言動でユダヤ人大量虐殺を犯した捉え方の映画が数多いのだが、この映画はヒトラーの衰弱していく様を周囲の人間を通して丁寧に描いています。なんだか未来の窮地に陥っていくプーチンの姿とダブってきました...今なお侵攻継続のロシア軍の兵士の中からもこんな話が出ています。ロシア兵が前線でのウクライナ側への攻撃で弾が当たらないように撃ってるらしいとのこと。なぜならばロケット弾を撃ち尽くすと部隊は交代できる。だからはやく在庫切れして、前線から引き揚げたいのが本心らしい。普通に考えてみれば、侵略もされてもいないのに同じ民族を殺戮するなんてことは狂気の沙汰である。しかもプーチンの私利私欲のために命を捧げるなんてことはどう考えても理不尽である。良心のあるロシア人であればそろそろ気づき始めてもおかしくないことである。

戦争、気候変動による地球規模の災害、そして独裁国家の不穏な動き...暑い暑いなんて言っていられないくらいの危機感を持ってないと、もしや一瞬にして地球は滅びてしまうかもしれませんね。

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納涼

2023/07/14
【第1776回】

先日、今年11月から上演する風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン最後のロマンス」のチラシ、ポスターの写真撮りをしました。現在、新宿歌舞伎町にオープンしたシアターミラノ座での公演中にも関わらず元気な姿で撮影スタジオに来てくれました。新宿梁山泊でのテント芝居に続いての本番で御年74歳になる杜夫ちゃんパワフルですな。シアターミラノ座では関ジャニ∞の安田章大、宝塚出身の咲妃みゆ他若手俳優に混じって連日大奮闘の舞台を演じきっているとのこと。

それにしても風間杜夫ひとり芝居、1997年にスタートして今年で26年。トム・プロジェクトが芝居を創り続けて来年で30年になります。トムの歩みとともに築いてきた作品です。日本国内だけではなく、ヨーロッパ、アメリカ、アジアまで巡演し数々の賞をいただいた価値ある作品でもあります。ひとつの作品がここまで長く継続できたのもスタッフの皆さんとの相性が良かったことと、お互いの信頼があったからだと思っています。勿論、映画、舞台、テレビでの長いキャリアを持つ杜夫ちゃん。どの作品も彼の魅力は発揮されているのだが、このひとり芝居は風間杜夫の人間性、表現力のすべてがてんこ盛りでございます。撮影中にも様々な表情を惜しげもなく見せてくれて現場の雰囲気は最高潮。74歳になってもお茶目で可愛い杜夫ちゃんでございました。

今週の週末からの3連休、アッチッチの日々が待ち受けております。そして連日報道される豪雨による被害、お天道様は今のニンゲンの振る舞いに相当怒りまくってるんでしょうね。こんな時代だからこそ、心穏やかに日々感謝して過ごしたいものでございます。

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夏の風物詩

2023/07/11
【第1775回】

先週の週末、女性ばかりの集団<理性的な変人たち>第三回公演「海戦」を観劇。この作品は1924年に築地小劇場のこけら落としで上演された作品です。第一次大戦中に、イギリス海軍とドイツ海軍の主力艦隊同士がぶつかった、同大戦中最大の海戦をモデルとしています。いや、面白かった!これぞ演劇でしかできないという要素が満載。音、美術、衣装、いろいろと趣向を凝らしていて飽きさせません。7人の女優も個性的、皆さんそれぞれ演技スタイルが違っていてそれなりに楽しめました。それにしても99年経った今、なぜこの作品を選択したのか?世界が又もやきな臭い世界に突入しようとしている現況を考えると当然かもしれません。そして女性だけで体当たりの演技でインパクトを与えようとしたことも正解。要するに今回の企画ハナマルでございました。おいらもこれまで、この集団の芝居すべて見てきましたが、まさしく<理性的な変人たち>の本性が見えてきたなという公演でした。トム・プロジェクトに所属している滝沢花野さんがとっても素敵でした。この集団のリーダー役でもあり、彼女の良さが随所に出てました。

表現はいつも新鮮でなければなりません。長年芝居やっているとついつい安全パイのなかでやってしまいがちですが、知らぬ間にこびりついた垢は洗い落としていかないとさし障りのない演劇になっちゃいます。勿論、経済基盤が脆い中での公演も厳しいのは承知の上なのですが、常に新しいことに挑戦、冒険していく心意気だけは忘れたくないと思っています。

そんなことを思わせてくれる一日でした。

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7月の空

2023/07/07
【第1774回】

劇団チョコレートケーキ「ブラウン管より愛をこめてー宇宙人と異邦人―」を観劇。これまで多くの戦中戦後に於ける歴史上の人物を、独自の視点で描き続けた劇団が新たな脈絡を手掛かりに創り上げた作品。作家・古川健が子供の頃に好きだった特殊撮影番組に登場するヒーローはじめ、番組にかかわる人たちとのやりとりに差別問題を絡ませる姿は、あたかもこうして芝居を創っている人間にもリアルに感じさせてくれる舞台でした。

モノを創り上げるってことは何事も大変なことです。ましてや芝居なんぞは、貴重な時間とお金を頂いて2時間拘束してしまうんですから、一歩間違えば詐欺罪で訴えられてもおかしくないモノですね。しかも、こればかりは人の観方で180度変わることだってあるんですから手強いものかもしれません。そのなかで大切なことは、やはり創る側の主張、信念、哲学だと思います。ここがぶれちゃうとアウトです。その覚悟で芝居を創ること、あとは観客の判断にゆだねるしかありません。

観劇後、三軒茶屋から下北沢に繋がる茶沢通りをブラ散歩してると一軒のよさそうな焼き鳥店に入りました。おいらの感ピューター当たりでございました。家庭的な雰囲気と手作り感満載の焼き鳥と料理。しかもリーズナブルな価格で、28年間地元で頑張っているとのこと。お客さんは良く知っています。開店直後からなじみのお客さんが入って来てました。

要するに愛がある仕事をしなきゃ!すべてこれに尽きますな...

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カノコユリ
(七夕百合)

2023/07/05
【第1773回】

この時期にして我がライオンズはや終戦。おいら70年間、ライオンズを応援してきましたが今年ほど情けないシーズンはなかったのでは...監督、ヘッドコーチ、打撃コーチが最悪ですな。今年から就任した松井稼頭央監督、確かにプレーヤーとしては一流だったんですが、監督としてはお粗末な采配が続いています。残念ながらこの方の監督続投であればライオンズの暗黒時代が間違いなく訪れるでしょう。いつも隣に居る、平石ヘッドコーチもいかがなもんでしょうかね。いくらPL学園の先輩といえども言うこと言わんといかんでしょう!へらへらした二人が画面に映るたびに、厳しくいかんかい!と檄を飛ばしたくなります。昨日のロッテ戦、今井投手が8回1安打無失点で抑えたのに対して、8安打打ちながら完封負けしてしまう始末。采配が素人でも分かるくらいのえっ!の連続。野球通の一般ファンが呆れてしまうんですからあかんです。と言っても、ファンは弱くなったライオンちゃんでも応援し続けます。明日のライオンズを背負って立つ若獅子たちに熱い応援を送ってますよ。こんな暑いときに、熱い応援に沸く満員御礼のベルーナドームを見るたびにフロント陣、何とかせんかい!といいたくなります。今の戦力、残念ながらほかのチームに比べても随分と見劣りしますが、何とか残り試合意地を見せて欲しいもんでございます。

昨日は中野に用事があり行ってきました。50年間様々なイベントを行ってきた中野サンプラザが閉館していました。おいらも何度かコンサート、芝居を観に行きました。駅近で程良いキャパが心地よいホールでした。

東京の主要地区で再開発が進行中。人にやさしい再開発を期待したいもんですね...

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おつかれさまでした
中野サンプラザホール

2023/07/03
【第1772回】

はや文月になってしまいました...各地で熱中症患者も多くなっています。昔は夜にクーラーをつけるなんてことはなかったのに、この異常気象の中、なんだか頭もくらくら肌もじっとり、ついついONにしちゃいますね。団扇を扇ぎながらの夏の風物詩が懐かしゅうございます。おっちゃんたちはステテコ姿で長椅子ベンチでの将棋、ガキはアイスキャンデー舐めながら路地をぶらぶらしとりました。日が暮れて夜のとばりが訪れるあの時間帯の涼みかたが最高でした。

それにしても全国の水害による被害には驚いています。その元凶は地球温暖化に起因していることは勿論のことですが、森が少なくなっていることも大きく関係しています。森の土の中には、植物の根と土の間のすきまや、小さな動物の通り道、くさった根がつくったトンネルなど、大小さまざまなすきまがある。地中にしみこんだ雨は、このすきまに入りこみ、ゆっくり時間をかけて地下を通って、やがて川に流れこむ。つまり、森は一時的に水をためこむ、天然のダムのような役割をしているんです。そんな大切な樹木をばっさりと切り倒し、人間の欲望を満たすための開発が世界に蔓延し、年を重ねるごとに水害のニュースが増え続けているんですね。

最近話題になっている東京神宮の再開発問題然り、100年かけて育てた1000本近くの樹木を伐採しようとしてるんですから、驚き、桃の木、山椒の木。

もう開発はよかですばい...自然の中でゆったりゆっくり暮らしませんか皆の衆。

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スモークツリー

2023/06/29
【第1771回】

今年3月に亡くなった詩人・映画監督の福間健二さんの伴侶であった恵子さんの「ポルトガル、西の果てまで」読了。この本を読んで、スペイン好きな恵子さんがポルトガルにより親密になっていったことが良くわかりました。

「ポルトガルは決して豊かな国ではない。人々の暮らしも芸術も交通も、ヨーロッパの「辺境」と揶揄されながら、それでもしぶとく独自のものを継承し息づかせてきた。それをささえているのは、この国の長きにわたる被支配の歴史と、近代に体験した「革命」のなかで身につけた忍耐と許容なのではないかとこのごろ思う。耐えること、受け入れること、それは自分と向き合うことである。」

岡山県の山間部で生まれ育った恵子さんにとって、ポルトガルは原風景に近いものを感じたに違いない。低い山と川に囲まれ、霧が立ち、虹が生まれ、樹々と花々があたりまえのように育つ。人々は遠い世界のことよりも狭い社会で生きることに懸命で、日々の糧のために働くことをよしとしている。

都会に長く住んでると、自分を形成してくれたアイデンティティが時折うずいてくる。そんな時、旅に出て、見る、聴く、歩く、待つことにより原点に立ち戻ることが出来る。そして己は己でしかないことを確認する。そして、旅の終わりは、次の旅のはじまりである。

この本を読んで、恵子さんは今尚、健二さんと共に素朴で誠実でシャイなポルトガルの人達と交流を重ねているような気がしてならない。

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今年も収穫しました

2023/06/26
【第1770回】

先週、6月23日は沖縄78回目の慰霊の日でした。第二次世界戦も末期、1945年4月1日、米軍が沖縄に上陸、住民をも巻き込みながら地上戦になりました。陸海空からのすさまじい物量攻撃で日本軍は南へ南へと追い詰められ抗戦する力も果て、遂に6月23日牛島長官と参謀の自決をもって沖縄戦は終結となりました。この戦いで20万人の命が奪われました。この日を慰霊の日と定め沖縄では鎮魂と平和への祈りがささげられます。

家の近くの高井戸にある居酒屋「ちゃんぷる亭」で34回目の「平和フェスタ」をやるというので出かけてきました。10人入れば満席になるお店に何とか入ることが出来ました。この日特別サービスの¥230の沖縄そばと泡盛を飲みながら、店主のママさんと息子さんによる「マブニのアンマー」の朗読、そして沖縄三味線を聴かせていただきました。手作りの温かい心のこもった会でした。中でもお客の一人、89歳になる元気なおばあちゃんの戦争に対する思いを力強く語る姿が印象的でした。

今なお沖縄に対して真っ向から向き合わない日本政府、そして又しても米中関係の緊張を背景に、自衛隊による沖縄への部隊配置が進められ、敵基地攻撃能力を持つミサイルの配備も取りざたされています。熾烈な戦争体験を持つ沖縄、そして世界で唯一の被爆国だから一番平和を訴えるチカラがあるのにいまだに米国の顔色を伺いながらの貧弱な外交に腹が立ちます。平和がつくられたと思ったら、瞬く間に蒸発するように消えてしまうのが今の日本です。ただ念仏みたいに平和を唱えていれば平和が来るわけではありません。憲法9条然り護持してればいいってことではなく積極的に運用、活用しなければただのお守りです。

辺野古をはじめ現状にあらがって平和を訴え、つくり続けている沖縄こそが平和製造工場の島かもしれんせんね。

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高井戸ちゃんぷる亭

2023/06/23
【第1769回】

昨日、相模原演劇鑑賞会にて今年度の「風を打つ」の大千秋楽を迎えることが出来ました。稽古を入れて2ヶ月と1週間、スタッフ、キャストが一丸となって事故もなく無事全公演をやり終えたことに唯々感謝です。見知らぬ土地に行き、まだまだコロナを恐れながらの長旅、よくぞやってくれたという思いです。これも今回呼んで頂いた各市民劇場、演劇鑑賞協会、演劇鑑賞会、労演の皆様のなみなみならぬ心温まる支援なくしては出来なかったこと。

コロナ禍のなか、なんとか演劇を通じて世の中を少しでもいい方向に軌道修したいと行動する会員さんのエネルギーを目の当たりにすると、創る側も自然と気合いが入るのも当然です。各会場での笑い、拍手がどれ程のチカラなるか、こればかりは舞台に立った者でしかわかりません。役者はいつも不安の中で舞台に立っているのでございます...己の表現が果たして観客に届いているのか...観客の反応を気にしながら針のむしろ状態で時空間を彷徨っています。そして、舞台を支えるスタッフの心身もタフでなければ当然勤まりません。

昨日の相模原演劇鑑賞会の皆さんの手作り満載の歓迎振りにも涙がチョチョ切れました。楽屋口に手作りの楽屋のれん、終演後の手書きで書かれた千秋楽祝いを舞台上にかざす会員の皆様。まさしく観る側と創る側が一つになった姿を見る思いでした。

何年やってても芝居はいいもんでございます...これからもいい芝居創って、演劇を楽しみにしている人たちに届けねばという思いを強くした今回の「風を打つ」でした。

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感謝

2023/06/21
【第1768回】

久しぶりに中野と新井薬師の中間にある、コーヒーお酒ジャズの店「ロンパーチッチ」に行って参りました。2011年の東日本大震災をきっかけに、どうせ死ぬんだったらやりたいことやらなきゃということで若いご夫婦が始めた店です。2000枚のレコードから程よい選曲でレコードに針を落とし、独自で選んできたコーヒー豆をドリップで時間を掛けて抽出する佇まいを見るだけで感動いたします。ジャズを愛し、来て貰ったお客様に有意義な時間を過ごして貰いたいという思いがお店全体に満ち溢れています。この日はチリ産の赤ワインまで頂いてしまいました。まさしく、コーヒーお酒ジャズの一日でした。

この店の帰りの楽しみが、近くにある手焼きせんべい「雷神堂」の割れ醤油煎餅を買って帰ることでしたが、なんとシャッターが締められ、こんなお別れの言葉が貼ってあった。

 

閉店のお知らせ

当店は6月15日(木)をもちまして閉店させて頂きました。お客様、ご近所様、クロネコヤマト様はじめ皆々様に大変お世話になりました。毎日、挨拶をしてくれる小学生達から元気を頂戴していました。あいロード祭りのお手伝いをしてくれた当時小学生のお嬢さん達が成人式に晴れ姿で来てくださいました。福岡に引っ越しされ幼児だった兄妹が6年ぶりに来店、自分のお小遣いで煎餅を購入下さいました。コロナ禍で実家の両親に会えないので、代わりに赤ちゃんを抱っこさせて頂きました。この店で多くの出逢いに恵まれました。これまでのご愛顧に心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

 雷神堂新井薬師店 店主

 


この文面を読んでいるだけでこの店の数々の人間ドラマが目に浮かんでまいります。世の流れとはいえ、人の触れ合いを大切にしてきたお店が又ひとつ無くなっていくことの寂しさを痛感した帰り道でございました。

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rompercicci

2023/06/19
【第1767回】

先週の土曜日は浅草橋にある「ルーサイトギャラリー」に出かけました。隅田川沿いにある風情ある建物です。この一帯は江戸時代から続く格式の高い花街として政財界や文化人らが通った社交場であったとのこと。時代の波には逆らえず街から料亭や芸者衆が消えていったなか、2001年秋、柳橋の活気を取り戻そうと昭和の流行歌手"市丸姐さん"の屋敷を改装し、骨董屋としてオープン。その後、今回の芝居を企画した鳥山昌克さんと相談し芝居、語りのイベントも開催されるようになりました。

いかにも色街の匂いを残した門をくぐり昔そのままの廊下、急な階段を上がると今日の演目を上演する広間に辿り着きます。目の前に広がる隅田川、川を行き交う屋形船、鉄橋を走る総武線の電車の音を背景に朗読会が始まりました。先ずは唐十郎作「銀ヤンマ」戦後の焼け跡が少しずつ復興していく中、当時、下谷万年町に住んでいた唐さんが少年時代に体験したであろう妖しさとロマンを、鍛え抜かれた声で鳥山昌克が語り掛けていきます。長年、唐十郎のもとで役者稼業をやった彼にとっては唐ワールドを展開するには最もふさわしいキャスティング。合いの手を入れる杉嶋美智子さんも雰囲気のある女優さんでした。

次の作品は室生犀星作「あじゃり」1926年発表の小説。優しい物腰で万人に慕われていた山寺の僧侶が、女のような童子を弟子に持ってから様子がおかしくなる話。杉嶋さんの語り口で哲学的な内容がより優しく切ない物語として再生していく構成となっている。

それにしても、演じる場所そのものが、すでに物語ってることを再認識した一日でもありました。先日の神戸、京都でも感じたことです。幾多の先人が生きてきた家屋、風景は何物にも代えられない貴重な財産でございます。

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朗読会の舞台

2023/06/16
【第1766回】

日本映画がカンヌで話題になっています...それにしても改めて黒澤明、小林正樹、小津安二郎、溝口健二、増村保造などなどの監督作品が今なお燦然と輝いています。その作品を支えたのは職人芸とも言えるスタッフと、主役から脇役に至るまで個性あふれる役者たち。黒澤明監督がこんなことを言ってます。「演技は大根でも存在感の牛肉役者、脇を固める器用な味付け役、くさい演技のにんにく役者、無味無臭の水のような奴、いろいろ居ますが全部必要です」さすが多くの名作を創り上げた人の言葉です。そんな役者を適材適所にキャスティングして巧みに操った才能があってこその名監督です。

そして日本映画全盛時代に、喜劇からシリアスな映画まで幅広く活躍した名優、森繁久弥さんも役者の本質を突いたような発言をしています。「ピンとキリを知ってれば、真ん中は誰でも出来るんだ!」戦中、満洲でラジオなどアナウンサーをやり戦後、舞台、映画を通じ人の醜さ穢さを嫌と言うほど舐め尽くしたが、自らが望む高い精神には触れることができなかった。そんなご時世で周囲を見渡すと、ピンからキリからも遠ざかりボヤっとした中間を漂ってるみたいな人ばかりだったという。

改めて感じます。役者は、その人の生き方のすべてが現れます...日々無数の感度の良いアンテナ立ててあらゆるものをキャッチし咀嚼して、はじめて人前に見せるものだと。

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梅雨の晴れ間

2023/06/15
【第1765回】

京都から東京に戻るのに少し時間があったので、久しぶりに「哲学の道」を散策したくなり足を延ばしてみました。「哲学の道」の中ほどには、西田幾太郎の名言「人は人、吾はわれ也、とにかくに吾行く道を吾は行くなり」と刻まれた石碑があります。20世紀初頭の哲学者である西田幾太郎氏が、毎朝思索にふけりながらこの道を歩いたことから、「哲学の道」と呼ばれるようになったとのこと。いつもは、のほほんと生きてるおいらもこの道を歩けば少しは哲学的思索に耽ることができるのかな?琵琶湖の水が流れる水路沿いの遊歩道を歩いてるだけでなんだか全身がほぐれる気がしてきます...もしや、この瞬間こそが哲学の入り口かもしれませんな。

途中バスにて熊野神社前で下車。京都に来れば必ず立ち寄るJazz Spot YAMATOYAでコーヒーを頂きました。1970年開店以来、もうすぐ80歳になるマスターが丁寧に入れてくれるドリップコーヒは勿論、なんと8000枚のレコード棚が圧巻。そのなかから当日の客層に合わせて選んでるとしか思えない選曲が絶妙。チック・コリアなど名だたるミュージシャンも何度も訪れた名店でございます。かと言って気取ったところもなく本当に心地よいお店です。JAZZを愛し、お客を大切にするこの店が、いつまでも存続することを願いながら帰路につきました。

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哲学の道

2023/06/12
【第1764回】

先週の週末は神戸演劇鑑賞会、京都労演での「風を打つ」公演に行ってまいりました。久しぶりの関西です。人情味あふれる関西弁がとても心地よくしてくれます。神戸での公演、観客の絶え間ない笑いに後押しされ、役者も大いに乗せられ上々の舞台でした。帰り際に90歳過ぎの会員さんが「芝居観て久しぶりに泣きましたわ...」笑わせて最後は号泣、こんな形で水俣を伝えることできれば本望でございます。終演後、俳優陣も改めて観客と一緒に舞台は創り上げるものだと思わせた神戸の2ステージでありました。

昨日は京都労演初日を拝見しました。なんとか雨も上がり、時折陽が差すなか呉竹文化センターに多くの会員さんが来てくれました。キャパ600人、芝居にはうってつけのホールです。京都の観客の芝居を観る目は厳しいぞなんて声を耳にしたことがあります。最近文化庁も移転したくらいの古都ですからね...おいらも後列から、芝居はもちろん観客の反応も探りながらの観劇でした。幕開きから、よしゃ!これはいけると思いました。あとは昨日同様、観客と役者の呼吸がぴったりと呼応しながら終盤のクライマックスからエンディング。昨日の舞台もそうでしたが、終幕だと思っての一回目の拍手がありました。と思いきや、正真正銘の太鼓打ちに始まるラストシーンがあり、なんだかお客様は二度楽しんだ感じがありました。

今回の神戸、京都公演で強く思ったことは、コロナもなんとか収束し再び演劇を楽しめることの喜びを取り戻しつつある兆しが見えてきたことです。アナログの魅力を兼ね備えた演劇の持つ底力を信じて全国各地を巡演したいもんでございます。

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神戸

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京都

2023/06/09
【第1763回】

梅雨の季節の楽しみのひとつが、色とりどりの紫陽花を鑑賞しながらの散策です。鮮やかな紫にうっとりして間もなく清楚な白色に心奪われ、千々に乱れる心模様を楽しんでいるのでございます。そんな散歩の道すがら、一軒の家の玄関前に4足のちびっこ靴がおかれていました。「サイズアウトしました。気にいっていただけるものがあれば、ぜひお持ち帰りいただけたら嬉しいです!」なんともほっこりする光景ではありませんか。今や世の中は消費、消耗が当たり前、まだまだ使えるのに平気で捨てちゃいます。昔なんぞは着るもの含め家具、調理品などなど擦り切れるまで使いこなしたもんです。だって、あらゆるモノすべて、己に出会うまでには様々の命が吹き込まれているはずです。それを思うとそうは簡単にポイ捨てはできまっせん。モノに対する愛着、愛情が希薄になったことと、未だ世界で無益な争いが絶えないことと無関係ではないと思います。4足のちびっこ靴を迷わず玄関前に差し出す人が一人二人と増えると争いも少なくなるはずです。人が人を思いやり、生きとし生けるものに精一杯の愛を注げば少しはましな世界になるのかな...

血迷ったプーチン、あの素晴らしい大地と芸術で世界を席巻したロシアを想いだし正気に戻り一刻も早くウクライナ侵攻を止めてちょうだいな!今日の写真を届けるのも効果があるかもね。

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ほっこり

2023/06/07
【第1762回】

昨日は、横浜演劇鑑賞会創立50周年記念観劇作品「風を打つ」を横浜関内ホールにて観劇。「風を打つ」日々進化していますね。杉坂家の家族の絆がより深く色濃いものになっています。芝居にとって重要な要素であるメリハリが鮮明になっていることが大きな要因だと思います。家族それぞれの思いを受け止める役者の受信器の感度が敏感になることによって、発信器の強度が高まり各シーンも引き締まる。当然、観客は五感を集中せざるをえなくなり舞台と客席がひとつになり、優れた芝居が出来上がるってわけですね...

それにしても演劇鑑賞会を50年継続させるって唯々敬意を表します。この長い歴史の中でいろいろ大変なことがあったとは思いますが、この3年間のコロナ禍による半端じゃない会員の減少は鑑賞会の存亡を脅かす出来事だと思います。そんななか会員として継続し会場に足を運んでくれる皆さんに「演劇鑑賞会を退会しなくて良かった!」と感じて頂く芝居やんなきゃ芝居屋じゃございません。終演後、観客の皆さんが満足げな表情で帰路につく姿を見ながらおいらもホッとした次第でございます。

横浜は風情がある街です。終演後、横浜演劇鑑賞協会をリードしてきた方々とお疲れ会をしました。関内にある「横浜ビール 驛の食卓」併設工場で造られたクラフトビールは絶品でした。芝居が上々だったので話も盛り上がり素敵な時間を過ごすことが出来ました。何年か後に又、トムの芝居でお会い出来たらという言葉を残し横浜を後にしました。

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横浜馬車道、牛馬の一服休憩所

2023/06/05
【第1761回】

先週の土曜日、劇団桟敷童子「海の木馬」すみだパークシアター倉にて観劇。いつもの劇団員一丸となって芝居創りをしているこの劇団は大好きです。今回の舞台は、終戦直後の混乱した時期に高知で起きた第128震洋隊で起きた爆発事故。2年前に「飛ぶ太陽」という戦後、福岡で起きた爆発事故を題材にした舞台の記事を見たひとりの老婆からの1本の電話から今回の芝居が始まったそうだ。「終戦直後、忌まわしい事故が全国各地でありました。それを世の中に知らせてください」そうなんです、歴史の闇に葬られた様々な出来事を伝えるのも演劇人の責務だと思います。

今回ゲスト出演した小野武彦さんの存在感が、この芝居を通奏低音として最後まで舞台を引き締めている。御年80歳の小野さん、演技をしているというよりも小野武彦ご自身の生きてきたそのものが舞台上に居る。これはなかなかできないことである。役者は常に何かをやりたがる生き物であり演じたがるものである。己に何枚もの飾り物を重ね観客に見せつけることを止め、すっぴんで舞台に上がることはなかなかできないことである。

今回の小野さんの存在を際立させているのは、勿論共演者の清廉な演技であることは間違いない。この劇団の主宰者である東憲司さんの演劇に対する姿勢が徹底していて気持ちが良い。ついつい応援したくなるのは当たり前でございます。

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錦糸町からの風景

2023/06/02
【第1760回】

昨日は久しぶりの晴天、毎年、新年に初詣に行っていた杉並区大宮八幡宮に今年は行けなかったので参拝してきました。やはり神社の佇まい、空気感しばし日常を忘れさせてくれますね。神が宿っているから神社です。その神社の杜を為しているのが大木です...何百年という間その土地の興亡を見続けた年輪の重さを感じます。そっと耳を添えて聞いてみたいもんですが、黙して語らず淡々とした表情で聳え立っています。それぞれがそれぞれの思いを抱きながら並んでいる様は神々しくもあります。勿論、神殿の中にはいろんな仏様が納められてるんですが、おいらはどうしても自然神のほうについつい気持を持っていかれます。

参拝するときの決まり文句は「生かして頂きありがとうございます。」その一言だけです。お願い事なんぞは一度もしたことはありません。お金ごときで神さんに頼むなんてこと甚だ失礼千万でございます。先ずは生かし活かされていることに感謝。あとは己が人のため社会のために何をなすべきかを思考し行動に移すだけ...きわめてシンプル。

一転、今日は台風の影響を受け朝から大雨、関東甲信地方も線状降水帯が発生する可能性があるとのこと。今日は長野県大町市文化会館で「風を打つ」の夜公演があります。長野地区での最後の公演でもあり無事に終えればと思っています。

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大宮八幡宮境内

2023/05/31
【第1759回】

生涯現役ええこっちゃ...昨日は20代の頃一緒に芝居やっていた仲間の芝居観てきました。

劇団ではない劇団・ぼっかめろん第33回公演「草稿 ジョバンニとカンパネルラの見果てぬ夜の夢の物語」。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」からヒントを得て創り上げた作品。作・構成・演出の倉沢周平、普段は明大和泉校舎正門のすぐそばでハンバーグ屋「ぐずぐず」を50年ほど続けています。心身ともボロボロになりながらも演劇に対する思いは今なお健在でございます。出演者の一人、小林達雄はもうすぐ80歳になるのですが、あっちこっち痛いと言いながら舞台上では相変わらず奇声を発しながら動き回っておりました。普段は地道なバイト生活を営んでおります。やはり好きなことをやっているのが健康には一番ですね。人間関係、お金を追いかける仕事で疲れ果て、いったい自分は何のために生きてるんだろう?なんて人が多数を占める中、周平、たっちゃんみたいに迷うことなく己の道をまっしぐらなんて生き方、潔いのではないかしら。

その真逆、この国のトップの息子の不祥事。汗水たらして必死で生きている庶民の生きざまも理解できず、世襲と言う悪しき伝統に胡坐をかいての今回の出来事。相も変わらずこんな人たちを選ぶ選挙区の皆様恥ずかしいことですぞ!広島サミットで点数上げたと思いきや、己の甘さからの大失態。こんな時にしっかりした野党が存在してれば緊張感あふれる政治が期待できるのだが...忘却の民は、今回の息子の件も10年、20年後には忘れてしまい、息子が国のトップに収まってたなんてことは十分あり得ますぞ...なんとか軌道修正しなきゃ皆の衆。

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明日から水無月

2023/05/29
【第1758回】

先週の土曜日、PLAY/GROUND Creation「桜川家の四兄弟」を観劇。作家と演出家ともにお母様を亡くされた実体験から生まれた芝居。このグループの芝居は初見なのだが、先ずは誠実な舞台創りに好感を持ちました。俳優陣のまっすぐな姿勢が狭い劇場にビシバシと伝わってきます。迫真の演技に若い観客も涙してました。誰しもがいずれは母との別れは必然です。おいらも数年前に尊敬する母との別れがありました。5人兄弟の中で唯一風来坊であったおいらをいつも心配しながら、でもどこかで信じていた母親の偉大さを、この芝居を観ながら考えていました。父親はおいらが17歳のときに亡くなったので、あまり感慨はありません。というのもおいら本人があまり家に居なかったので家族、家庭そのものの存在が希薄だったかも知れませんね。上京してから何年も博多に帰らなかったおいらに届く母の手紙から、初めて親の有り難さを感じた息子でした。書かれた文字の行間から母として親としての溢れんばかりの愛情が込められていました。こりゃ悪いことはできんばい!おいらに忍び寄る背徳の誘惑に楔を打ち込む一文字一文字でもありました。

それにしても母ものの芝居、映画はずるいと言えばずるい。誰だって泣きますよ。でも、こうやって何らの形で提示しないと、この忘却の時代、母親の有難さがわからなくなっちゃうんですね。

週明けの今日は梅雨入りみたいな一日です。こうやって季節を感じられる国、母親みたいに尊敬できる国になって欲しいもんですね。

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何か見つけたかな?

2023/05/26
【第1757回】

昨日は喜昇倶楽部公演「其の女」を下北沢にて観劇。劇団チョコレートの脚本・古川健、演出・日澤雄介コンビによる、渋谷はるかさんの一人芝居。広島で被爆しケロイドを負い、10年後、その治療のために渡米した25人の女性の一人、弘子さんにスポットをあてた芝居です。当時日本のマスコミは彼女たちを原爆乙女と呼び、原爆を落とした国に行ったと言うことで話題になりました。

先日も、サミットでの各国首脳が原爆資料館に入館したことで様々な記事が出ていました。おいらも広島、長崎での原爆資料館の記憶は今でも鮮明に刻み込まれています。あの惨状を体験すれば誰しもが核廃絶に気持が動くのは必然なのだが、ロシアのウクライナ侵攻から一気に核保有の必要性を論じる世界となりました。一部の頭が狂ったとしか思えない権力者のためにいとも簡単に世界の秩序が乱されるなんてこと何度繰り返せば済むんでしょうかね。

さて今回の芝居、文学座に所属する実力ある女優、渋谷はるかさんの初めての一人芝居への挑戦。数多くの一人芝居を手がけたおいらとしては若い俳優さんの一人芝居大いに歓迎。一人芝居の成否は、舞台上に居ない相手役の存在が見えてくるかがポイントだと思います。見えない登場人物を想像する楽しみが一人芝居にはあるんです。それは観る一人一人それぞれに違うのが更に面白い。渋谷さんの舞台も回を重ねる事に違った風景になるんでは...大いに楽しみです。

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出稼ぎバンド

2023/05/24
【第1756回】

わが心の西鉄ライオンズ、レギュラー選手で唯ひとり御存命であった中西太さんが90歳で亡くなりました。平和台球場での大きなお尻ふりふりしながらのでっかいホームランはおいら少年たちのスターでございました。1962年に選手兼任で西鉄ライオンズの監督を引き受け優勝したのが1963年、この年は南海(現ソフトバンクホークス)との最大14.5ゲーム差を逆転し、5年ぶり5度目のリーグ優勝を果たしたシーズンでもありました。おいらも勿論、平和台球場で喜びに浸っておりました。あの大きな体を胴上げしている選手の苦心惨憺ぶりがとても印象的でした。現役時代は"怪童"と称されたスラッガーで、本塁打王5回、首位打者2回、打点王3回のタイトルを獲得。監督としては一流にはなれなかったんですが、その後計8球団を渡り歩き、指導者として若松勉、イチローら名選手を育てた名伯楽でもありました。

最後にお会いしたのは2012年トム・プロジェクト「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」の博多公演でした。公演前にライオンズOBが集まっての座談会があり声をかけたところ嬉しそうな顔をされていました。この座談会には豊田、高倉、西村さんも同席し、お互いに遠慮することなく言いっぱなしの豪放磊落な楽しい会でもありました。

こうして西鉄ライオンズの選手たちはいなくなっていきました...でもあの日あの時の西鉄ライオンズは、残されたファンにとってはとてつもない宝物です。

そんな折、山川選手の事件はつらいですな。先人が築き上げた歴史に傷をつけちゃいかんばい!と言いたい。いつの世も野球は夢見る少年を虜にしてくれるものであることを肝に銘じてプレーしていただきたいもんでございます。

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今日の空

2023/05/22
【第1755回】

「風を打つ」昨日無事、東京公演千秋楽を迎えることが出来ました。各ステージ満席で本当にありがたい限りです。新しいメンバーを加えての再々演、日毎に劇中での家族の結束が強くなり、まさしく芝居は生き物だなと思った次第です。

観客のお一人がこんなことを話しながら劇場を後にしました。「この芝居こそ、今の世界に訴えるチカラがあると思います。環境、戦争、家族、皆が一様に抱えている諸問題を解決させてくれるヒントを随所に織り込んだ作品だと思います。」

そしてこんなハガキも来ました。「水俣を扱っているのに公害の悲惨さや、企業のあるいは為政者の巨悪ぶりなどが強調されることのない、それでいて切々とその恐ろしさと影響力の凄さを語りかけてくる原点に家族の再生とその愛があるからだと実感した公演でした。コロナで劇場へ足を運ぶこともめっきりと減った数年でしたが、観劇への勢いがついた作品でもあります。」

嬉しい言葉です。別に芝居の世界だけではないのですが、とにかくこれだけ物価が高騰するなかでの芝居創り厳しいものがあります。でも、こんな風に作品を観て頂ききっちりと昇華していただけると制作する側もテンションが上がります。

5月26日~6月22日まで演劇鑑賞会の公演21ステージの旅公演が始まります。芝居をこよなく愛する鑑賞会の皆様に、更なるグレードアップした作品を届けることが出来ると思いますので楽しみに待っててくださいね。

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両国駅前

2023/05/19
【第1754回】

まだ5月というのに夏の暑さのなか、昨日、両国シアターカイで「風を打つ」の初日を無事迎えることが出来ました。両国前では大相撲5月場所が開催されており海外観光客も含めて多くの人出で盛り上がっていました。大銀杏を結った力士が国技館に入る度に大きな拍手が送られ、力士も「よしゃ!」という感じで大きな体をゆさゆさと揺らしながらの背を見送っておりました。両国には多くの相撲部屋もあり、なんだかタイムスリップした感覚にとらわれ心地よい場所でもあります。劇場シアターカイの隣には、第4代将軍家綱よって建てられた回向院があり、浮世絵士の山東京伝、義太夫節を創った竹本義太夫、そして鼠小僧次郎吉の墓と、江戸時代は著名人の墓がいくつもあります。この近くには忠臣蔵で知られる吉良上野介義央(きらこうずけのすけよしひさ)の江戸上屋敷跡もあります。この辺りを散策していると江戸庶民文化の匂いがなんとなく漂って、近くの蕎麦屋に入り軽く日本酒を一杯という気にさせてくれますね。

ところで初日の芝居。満席の観客の前で上々の芝居を魅せてくれました。5人の役者のコンビネーションが抜群、カーテンコールの拍手が半端じゃないくらいの熱いものでした。この困難な時代、素敵な芝居を創ることの大切さを今改めて感じた次第です。

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国技館前

2023/05/17
【第1753回】

沖縄の本土復帰から5月15日で51年になりました。先日も石垣市で進む陸上自衛隊のミサイル基地配備計画のニュースが流れていました。島の住民の人達の意見も賛否半ばです。51年経っても一向に解決されない沖縄の苦悩、いやこれは沖縄の人達の問題ではなくその他の都道府県に住む人たちの見て見ぬふり問題だと思います。沖縄にほとんどの米軍基地を押し付け、身近に基地が来ようとすると反対する構図がなんら変わらない、変えようとしない身勝手な姿勢です。知識人も含めて沖縄に寄り添うと言ってはいますが、実際のところ沖縄は本土にとって都合の良い手段としてしか考えていないような気がします。

あの終戦を前にして、沖縄の人口の4人に1人が亡くなった沖縄戦。このきな臭い今、またしても沖縄がその最前線に立たされようとしています。台湾有事、北朝鮮、日本に復帰して沖縄は本当に良かったのか?

数年前、沖縄に行ったときに乗り合わせたタクシーの運転手さんの言葉が忘れられません。

沖縄の米軍基地の話を持ちかけると「すみませんね...」という言葉が何度も返ってきました。いやいや、その言葉は沖縄に基地を押しつけている我々の言葉です。

沖縄、水俣、戦争、家族、差別などなど、まだまだ伝えていかなきゃならない課題山積といった所です。取り敢えず明日から「風を打つ」公演します。お陰様で金曜日を除いてチケットはすでに完売です。

今回の芝居を観てなにかを感じて頂ければ嬉しい限りです。

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あっちっち~水浴びしてます

2023/05/15
【第1752回】

先週の12日(金曜日)、「風を打つ」の追い込み稽古に行って参りました。今回が再々演になる作品です。何事もそうですが、芝居もステージを重ねていくと別物の作品になっていくものなんですね。芝居の冒頭から家族のなんともいえない温かさが伝わってきました。熊本県水俣市で患者の発生が公式認定されて、今年の5月1日で67年になりました。同じ魚を食べ、水俣病になりながら、チッソ企業城下町で差別と偏見の中で過酷な生活を強いられた実在の家族の話です。その悲惨な状況を乗り越え逞しく生き抜く上で一番大切なのが明るさです。この芝居に登場する5人のそれぞれが今回、より温かく、強く、逞しくなり、逆に水俣病に感染したことにより人として、親として、子として得るものがあったという前向きな思考と行動があってこその明るさがより増していた今回の稽古場。

貴重な時間と、お金を支払ってくださるお客様に、どんなプレゼントが出来るか?芝居を創る人間すべての人が日々苦心していることです。そのための稽古場は緊張と弛緩の振れ幅の中、新たな発見の場でもあります。

この3年間、芝居の現場はコロナ禍のなか戦々恐々の日々でした。ようやく5類ということにはなりましたが、まだまだ油断は出来ません。本番直前まで、皆マスクを付けながらの稽古です。18日の初日が無事迎えられますように...

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薔薇の館

2023/05/12
【第1751回】

京王井の頭線浜田山駅前に小さな街の本屋さんがあります。先日覗いたら、小出版社の本を並べたコーナーがありました。普通の本屋さんでは目にしないものが所狭しと並んでいました。全国的にも書店が次から次へと姿を消しています。昨年の統計で書店ゼロの市区町村が26%になったという報告。確かに、ネットでの購入は便利かもしれないが、ピンポイントで検索していると世界は極端に狭くなっていく感じがします。その点、本屋さんの書棚を眺めていると今まで未知なる分野の本がいやがおう応にも目に入ってきます。そして手に取り不可思議な世界に迷い込む体験ができるという場所が本屋さんなのです。おいらがたまに足を延ばす神保町の古書店巡りも自分の足で目で新たな読書への旅をしたいからです。

そして本屋さんも工夫しないと取り残されてしまいます。浜田山の書店のように、ただベストセラーの本を積むのではなく、なにかに特化したコーナーを常設するとか、コーヒーでも飲めるスペースを設置し心地よい音楽を流し、少しでも長く店内に居させるようにするとか...町の書店の存在は、その街の文化レベルをさえ変える大きな要素だと思います。

最近世間を騒がせている闇サイトで集められた若者による強盗事件。この若者が幼い頃から読書体験をしていれば、こんなアホな発想は生まれなかったのでは...想像と創造、至福な時間を過ごすに欠かせないこの二つを手にするには本を読むことは不可欠だと思いますよ。

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曇天

2023/05/10
【第1750回】

佐藤厚志「荒地の家族」、稲垣えみ子「魂の退社」、読了。第168回芥川賞受賞作「荒地の家族」は2011年の東日本大地震から13年、今なお抱える虚無感と、何とか立て直し生き抜こうとする40歳の主人公の葛藤をドキュメンタリータッチで描いた作品。被災にあった実体験からの話なので切実である。この目まぐるしい世の中の移り変わりの中、すべての事柄が風化していく様を危うい流れと感じてる人たちが居る中、文学、映画、演劇を通して風化への歯止めを果たしている役割は大切なことだと思う。こんな時代だからこそ過去に学ぶという生き方を、すべての人が共有しないと地球は確実に滅びます。

「魂の退社」はアフロヘア―姿で朝日新聞社の記者であった稲垣さんの退社への思いっきりのメッセージ。自宅の家電を次々と処分して生きることを実践し、人生の意味、意義を問い直す下りが実に痛快である。この本に何度も出てくる日本の社会が会社に帰属してなければ何事も困ったちゃん状態になってしまうという不条理。会社員以外は人間ではない過酷な状況に追い込まれる過程を自分の実体験を通し事細かに述べている。それにしても悲壮感がなく何となく楽天的なところが著者の真骨頂といったところか。

経済主体、功利主義で進行している日本社会に踊らされていた人たちが自分に気づき、人生を取り戻すキッカケになる本になるかもしれませんね。

今日も湿気がなく爽やかな一日。野に咲く花に挨拶し、空を見上げると間違いなく5月の空でした。

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野に咲くハルジオン

2023/05/08
【第1749回】

長年の友人である詩人、映画監督の福間健二さんが74歳で亡くなりました。健二さんとのいろんな想い出が蘇ってきます。「鷽」という雑誌に、おいらは西鉄ライオンズに関するエッセイを、健二さんは詩を提供しており、これを機に付き合いが始まりました。その後、健二さん、恵子さん夫婦が出版した「ジライヤ」に博多にまつわるエッセイ<エル・スール>を連載させて頂きました。都立大学教授、詩人、映画監督という三足のわらじを楽しみながらかつ精力的にこなされていました。スペインの地でもバルをはしごして千鳥足でホテルに帰ったこともありましたね...大学退任後は詩集で萩原朔太郎賞を受賞し、映画監督としてますます闘志を燃やしていた矢先のことでおいらもびっくりしました。

5月2日、国立の自宅にお線香をあげに行きました。悲しみを耐えて気丈に接する恵子さん、相当悔しいに違いない。不意打ちを食らったと言ってました。二人の夫婦として、そしてものを創り上げる戦友としての見事な夫唱婦随を見せられたものとしては恵子さんの気持ち良く分かります。でも、恵子さんの尽きぬ思いを作品に昇華していった健二さんの生き方も悔いがなかったと思います。今年の11月には死の寸前まで編集に追われていた新作の映画が公開されるそうです。

健二さんこれまでの貴重な時間ありがとう!恵子さんこれからまた楽しい時間つくりましょうね...福間健二さんの詩集『青い家』より「窓」

 

あなたの窓が閉ざされているから

わたしは目を閉じて

自分の入る箱を想像した。

ゆうぐれの

川べりに立ち

自分を入れて流れてゆく箱を想像した。

その箱は流れていって

夜の人々は迷路に消えて

わたしもいなくなって

いま

この空に

炸裂して光るもの。

ほかに何を見るのだろう。

あなたの目

魂の窓

それがひらかれるとき

わたしは帰ってくる。

むかしのわたしとはちがう

わたしの知らないだれかになって。

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健二さんが歩いた国立大学通り

2023/05/01
【第1748回】

いやいや日本国中、コロナから解放され行楽地には人が溢れかえっています。新緑の葉も育ち最高のGWを迎えております。そんな中、気になるのが神宮の森の再開発。先日も伊藤忠商事・三井不動産・日本スポーツ振興センター・明治神宮の4つの企業が進めている計画の記事が新聞に掲載されていました。おいらにとっても神宮の森は思い出深い場所です。神宮球場、秩父宮ラクビー場、そして秋になると紅葉していく銀杏並木。これらの古木1000本を伐採しようとする計画に、先月亡くなった坂本龍一さんも死の一カ月前、小池東京都知事に再開発反対の手紙を送りました。「これらの樹々を私たちが未来の子供達へと手渡せるように」「目の前の経済的利益のために、先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません」さて、小池都知事どう動くか?

樹木が伐採されるシーンを見るたびにおいらの心痛みます。勿論、その樹木が世のため人のためになっていることは承知の上でのことですが、100年、200年、同じ場所で根を張って生きてきた樹木の生命力が、どれだけ人に勇気を与え、そして癒されてきたことか。

緑のない世界を考えただけでぞっとします。おいらが上京して60年、三畳参千円のアパートの前にも緑がありました。疲れた身体も一本の樹木に触れるだけでエネルギーを頂きました。新緑から紅葉そして裸木、その一年の変遷からおのれの時間の経過を確認し前に進んでこれました。

経済優先より環境保全、そんなことも考えながらの楽しいGWになるといいですね...

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おもしろそうにおよいでる

2023/04/28
【第1747回】

明日から大型GWが始まります。いつものように高速道路の渋滞ぶりをメディアで報じていました。普段30分で行くところが2時間半かかるなんて当たり前のようです。おいらの思考では、この情報だけで遠方への行楽を止めますが、日本の社会の頑として変わらない体制の中、仕方なく皆出かけるんですね。何十年も前から、休日分散案が唱えられてきましたがいまだに実行の機運は熟さない状態です。おいらも過去に何度か車中でのイライラ体験は経験済みだが、あのなんとも虚しい感覚はたまらなく嫌ですね。左右前後の他の車中の人たちの諦めきった表情を見てるだけで、こちらの気分も一気に萎えてきます。

そんなGWのなかでの楽しみ方の一つに近場散策。普段見慣れた通りは勿論、ちょいと横道に入ると意外な光景に遭遇することがあります。こんな所に小粋な飲み屋があったりとか、レトロな佇まいの民家に心和んだりとか...最近も可愛いノラ猫を発見し、しばし観察させて頂きました。なにもお金を掛けて人混みの多いところに行くことないんじゃない。疲れるだけです。お互いに疲れた顔つき合わせてどうすんの?GW、お盆、正月、宿泊がいつもの倍の値段、この延々と続く悪しきしきたり、いい加減どうにかしてくんろ!

おいら、お日さまに照らされキラキラ輝く葉っぱちゃん見てるだけで十分にGWでございます。

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アンネのバラも咲きました

2023/04/26
【第1746回】

先月の末だったか、新宿西口近くの「思い出横丁」付近あたりを歩いていると女性から「岡田さんじゃないですか?」なんて声を掛けられました。今の時期、皆マスクを着けているので誰だかよくわかりません。よく見ると新宿ゴールデン街にある居酒屋「ポニー」でお見かけした女性じゃありませんか...おいらに声をかけた理由は、この店のママが亡くなったことを知らせたかったとのこと。勿論、おいらはびっくりしました。この「ポニー」は大好きな店でした。ママの人となりが店一杯溢れていましたね...店の中央には囲炉裏がでんと構え、炭火で沸かした南部鉄器のお湯で飲む焼酎がなんとも言えない味でした。そしてママの手作りの料理、お客に媚びない気質でありながら困った人にはとことん相談に乗ってあげる優しさ。新宿ゴールデン街には250店舗が存在するのだが、この店は他を圧倒する気品さを持ち合わせた店でもありました。時には三味線で都都逸も聴かせてくれました。艶のある声で一瞬、花柳界の席に迷い込んだ気にもさせてくれました...手回し蓄音機で聴いた広沢虎造の浪曲「清水次郎長伝」に感動し、早速CDを買い込み自宅で何度も聴きました。昔気質のママさんが粋な雰囲気で繰り広げる時空間は本当に素敵でした。

昨日、声をかけてくれた女性の案内で新宿にあるお墓に行ってきました。ママが眠るに相応しいお寺にあるお墓に手を合わせ、これまでの感謝の気持ちを伝えました。

この年になると別れも多くなります。無念な思いで亡くなった人達も含め、しっかりと生きねばと改めて感じた一日でもありました。

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満開のつつじ

2023/04/24
【第1745回】

今日はまた寒さがぶり返しています。昨日、おいらが住んでる杉並区でも区議会選挙が実施されました。今回は選挙公報などじっくり見ながら投票しました。おいらが投票した人のこれまでの実績に大いに賛同。先ずは、過去の選挙も含めて一切、宣伝カーを持たない、名前の連呼もしないということ。選挙が始まるとうるさいよね、本人が乗ってなくてウグイス嬢に名前を連呼させるなんて愚の骨頂。こんなことを未だにやってること自体でアウトですな。二つ目にこれまで、政策本位の活動に徹するため、ボス政治家とは一線を画し、一身独立し無所属を通してること。こんなことは当たり前だと思うのだが、企業・団体献金を受けない、有権者に私的な口利き(施設入居や就職のあっせん、その他入札・契約の斡旋)を行わない。なかでも画期的なのは、いままで馴れ合いの関係で運営されてた会館をオープンにしたこと。この国の最も顕著な馴れ合い談合にくさびを打てたことに拍手を送りたい。

今回の選挙も昨年、区長選挙で初めて選出された女性区長からの政策協定、応援演説の提案に異論はないのだが、貸し借りを作りたくないと言う理由で断ったとのこと。まさしく忖度なしのクリーンな区議さんだと思いますよ。

そのほかの地方選挙、相変わらず日本の国民は大きな変化は求めていないようですな...投票率も低いし、世界のあちらこちらで不穏な動きがあるのに、なんだかこの国の鈍感力にはいつもながら危機感を覚えます。

ところでさっき、杉並区議会選挙の結果が出ました。おいらが投票した人は当選。今まで通りがんがんやってくださいね!

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藤の花言葉
~君の愛に酔う~

2023/04/21
【第1744回】

久しぶりに新宿でチンドン屋さんに遭遇しました。この姿を見るとおいらの記憶は少年時代に戻ってしまいます。昔は新しいお店がオープンするとチンドン屋さんの登場です。かつらを被り太鼓にサックスでの賑やかな光景を目のあたりにするとおいらのテンションは一気に上がります。後ろに付いたお姉さんがチラシと一緒にお菓子を振る舞うと、お菓子が欲しい子供たちはぞろぞろとついていきます。ある時、なかなかお菓子の配布が始まらず、はたと気づいた時には見知らぬ街に迷い込んだことがありました。もしや、このチンドン屋人さらいかも?なんて不安になったもんでございます。

今や新宿の宣伝手段は、大型車に派手な広告を掲載し大音量で新宿の街を徘徊することが多くなりました。ホストクラブ、新作映画、新製品などなど目にしますがなんとも味気ない気がします。それに比べてこのチンドン屋さんのアナログ宣伝はほっとします。人間の血の通った訴えが郷愁を誘います。アスファルトジャングルのなかで、人は呼吸困難に陥り心身が疲弊しております。この日のチンドン屋さんの姿を見て、一服の清涼剤と感じた人は何人いたんでしょうかね?中にはなんだこりゃなんて人もいたんでしょうね...

今日も夏のような暑さ、世界はこの異常気象の中、地球の生態体系にも狂いを生じ不穏な空気が蔓延しております...こんな時こそ、ゆっくり焦らず大地に足をつけてチンドン屋さんの佇まいの如く生きていきたいもんでございます。

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郷愁

2023/04/19
【第1743回】

昨日の夜はほんとにええ日やったな...ライオンズが5年振りに東京ドームで試合をやるというので足を運びました。相手は金満球団ソフトバンクホークス、金欠ライオンズがどんな試合を観せてくれるのか興味津々。相手チームは80億かけて補強しまくり、こちらは打てる捕手が他チームに移籍するわ、WBCに参加した選手が骨折するわ、4番バッターが開幕早々怪我するわ、踏んだり蹴ったり状態でございます。でも、こんなときに不思議なチカラを発揮するのがライオンズの伝統。この日も先発した平良投手の調子がいまいち、こりゃあかんかなと思っていたら、なんと外崎が2本、中村が1本、おまけに助っ人ペイントンが1本、計4本のホームランが飛び出し勝利しました。8本のヒットのなかの4本がホームラン、なんと効率的なことか...中でも今年40歳になるベテランおかわり君こと中村選手の芸術的なホームランは見事でした。ライオンズの有力選手のほとんどが流出していくなか、ライオンズ一筋を通してきた中村、栗山選手はライオンズの宝です。やはり、こんな選手をいつまでも応援したいですね。

この日は贅沢なセレモニーがありました。試合前には郷ひろみの国歌斉唱、始球式は松坂大輔、試合後には郷ひろみのショー。大勝した試合後に居残った4万人の観客は大喜びでございました。昔、ある劇団の代表者が球場の多くの観客を見ながらこんなことを言ってました

「劇場にもこれだけの人が来てくれたら嬉しいな...」その気持ち、よーく分かりますがな。

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盛りだくさんな一日

2023/04/17
【第1742回】

先週の15日(土曜日)「風を打つ」の稽古が始まりました。昨年は東北ブロック、中部・北陸ブロックの演劇鑑賞会で大変な好評を頂いての再々演となります。公害病の一つである水俣病をテーマにしながらも、家族の強い絆を描いたこの作品で杉坂栄美子役を演じた音無美紀子さんが、初演で頂いた文化庁芸術祭優秀賞に続き、再演で読売演劇大賞優秀女優賞を受賞しました。今回の音無さんの受賞も、この困難な状況の中、頑張ってくれたキャスト、スタッフ全員での受賞だと思っています。芝居は、まさしく関わったすべての人たちの思い行動が一つにならないと成立しないし、観客に伝わらないものだと常日頃考えています。このことを逆算してキャスト、スタッフを選択しています。芝居の創り方も日常の人間関係と同じです。オレ我オレ我の我を出す人が一人でも居ると芝居は歪みを生じます...この芝居はどこに向かって成立させようとしているのか?これまで創ってきた作品がすべてパーフェクトだとはいきませんでしたが、こうやって30年近く継続できたことは、こうした思いを常に忘れずに企画制作したからだと思っています。

今回は、前回まで功一役を演じた高橋洋介に代わり、これまで2回トムの芝居で出演してもらった生津徹さんに出演していただくことになりました。稽古初日から気合十分、生津さんのこの作品に賭ける思いがヒシヒシと伝わってきました。5月18日の東京公演初日が楽しみでございます。

稽古終了後、音無さんの受賞のお祝いを兼ねて、久しぶり17人という大人数でのささやかな宴を催しました。久しぶりの歓談、皆ほろ酔い加減でございましたよ。

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週明けの空

2023/04/14
【第1741回】

星野博美著「世界は五反田から始まった」読了。著者の実家の町工場を舞台に、祖父、父を中心とした家族の歴史が描かれる。戦時中の東京大空襲、当時の国家の誤った指示で悲惨を極め人災でほぼ全滅したような満蒙開拓団の話。いつの世も、戦争は一部の権力者の手によって始められ、最終的には無辜の民が犠牲者になるというお決まりのコースに対し、星野さんは、浅はかな有力者や権力者と距離を置き、孤立しながらも生き延びる方法。重大な局面に立たされた時の、判断力。頼る人も組織もない場所にたった一人取り残された時、しなければならない交渉術。豊かさとも感動とも程遠い、ずる賢さ。この点を強調しながら話を進めていく。考えてみれば、誰しもが己の日常の基盤からこそ戦争を問い直すことが必要かもしれない。そうしないと、突然悲劇が訪れ対処の仕様が無いなんてことになっちゃいますぞ!と示唆してくれてる本でもありました。

この作家の本、何冊か読み、文体の軽妙さ大胆さには面白さを感じていました。でも今回の著作が第49回大佛次郎賞を受賞するとはちょいと意外でした。

この本を手にしたのも芝居にできる素材になるのではとの思いからでした。勿論、芝居とは関係なく読書の楽しみから本を手にはするんですが、仕事柄どうしてもついつい芝居にならんかな?と考えちゃうのも一種の職業病ですかね...

そんなこんなしているうちに明日から「風を打つ」の稽古が始まります。いやいや、月日が流れるのがこんなに早いとは...歳のせいかな?

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野に咲くシャクヤク

2023/04/12
【第1740回】

昨日、つい先日トム・プロジェクト所属が決まった村井國夫さん、大和田獏さん、そしてオーデションでの選考の結果、トムに入りたいと言ってくださった今年玉川大学を卒業したばかりの長野優華さんの写真撮りの現場に行ってきました。村井國夫さんはさすがに渋さと色気を兼ね備え貫禄十分、演者としての長い経歴と人生経験が適度にブレンドされて絵になりますね。大和田獏さんは、その人となりが全身から溢れています。誠実、可愛さ、優しさのオーラが醸し出されていました。撮影の間、獏さんの舞台を底支えする姿が目に浮かびました。長野優華さん、初々しさは勿論、健康美そのもの、トム最年少の役者となりました。どこまで成長していくかおおいに楽しみです。

これまでたくさんの俳優さんと出会い素敵な芝居を創ってきましたが、そのなかで実績十分な役者さんがトムに入ってもらえることは大変うれしいことであり心強いことです。ベテランのお二人、選択肢は沢山あったはずなんですが...いやいや、こうなればおいらもプロデューサーとして、このお二人のためにベストな舞台を企画せねばと気が引き締まる思いでございます。芝居は志を一つにしないといいものはできません。仲良しクラブでも駄目だし芝居の根っこの部分を共有できる人が居てこその舞台です。

昨日今日と夏日を感じさせる日が続いています。そんななかハナミズキが色鮮やかに咲き誇っていました。

 

薄紅色の可愛い君のね
果てない夢がちゃんと
終わりますように
君と好きな人が
百年続きますように

 

こんな歌をつい口ずさんでいました。

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平穏な日々が百年続きますように

2023/04/10
【第1739回】

新緑が美しい季節がやってきました。おいらが一年で一番好きな季節であり、命の尊さを痛感する日々でもあります。サクラが散り、新芽から芽生えるようにニョッキリと顔を覗かし、待ちわびたかのように樹々に色鮮やかな色彩を見せつけてくれる時間は、おいらの心身を開放してくれます。そして、日々成長していく葉の色も形も、まるで人間の性格、容貌がそれぞれに違うように樹木によってさまざまであり、その一枚一枚を眺めながら、あっ!この葉は、あの人、いやこの人なのかな?なんて楽しみ方もしております。誰が指図したわけでもなく、この季節に決まったように同じ風景を魅せてくれる自然界の大きなチカラ、そして遠い昔から争いと、破壊を繰り返してきたニンゲンに罰を与えるどころか、こんな素敵なプレゼントを飽きもせず与えてくれるなんて...ただただ感謝でございます。

地方選挙の前半の結果も出ましたね。いつもながら投票率も伸びず、もう誰でもいいんじゃない?なんて雰囲気になっていますね。要するに、立候補する人も投票する人もなんだか投げやりな気分じゃないかしら...そんななか、維新が野党第一党になるような状況が形成されそうな流れになっています。維新?まだまだ正体が見えない政党のような気がしますが、大阪から始めた、リーダー自らの給料を減らした分かりやすい手法が受けたんじゃないかしら...魑魅魍魎の政治の世界だけに、確かにシンプルさはアピール度が高いですね。

どうしようもない政治家の皆さん、この新緑をどう見てますかね?

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目にも鮮やか

2023/04/06
【第1738回】

加藤健一事務所の公演「グッドラック、ハリウッド」を観劇。1980年に一人芝居『審判』を上演するため加藤健一事務所を設立。以降現在に至るまで年間3、4本のペースで創り続け今回で114回目の公演である。今年73歳、歳は取っても、滑舌、凛とした立ち姿は日頃から体調管理が万全だと思う。一人の俳優が事務所を立ち上げ43年間舞台を継続できたことに頭が下がる思いだ。俳優として、経営者としての二束のわらじは並大抵のことではないはずだ。この事務所の芝居創りの特徴は、海外の埋もれた戯曲をチョイスし日本の観客にも抵抗感なくアレンジして舞台化させてきたことに尽きる。

今回の芝居も、アメリカのよくあるウエルメイド・コメディ。すっかり売れなくなった監督、脚本家(加藤健一)と新人脚本家(関口アナン)との世代間バトルに、老監督に優しく寄り添う助手(加藤忍)があと一歩新しい世界に踏み出せない老監督にそっと背中を押し続けていく2時間の芝居。3人の登場人物でありながら飽きさせないのは、何といっても戯曲のチカラだ。1938年生まれのリー・カルチェイムという劇作家なのだが、おいらも初めて知る作家である。一人の俳優として日頃から海外の作品を探し続けていること自体、芝居は台本が命だということは熟知している証拠でもある。

トム・プロジェクトも、来年で芝居創りを始めて30年。手前みそかもしれませんが、ここまで日本の劇作家に拘り、しかも100本全てが創作劇。こんな演劇制作会社ありませんことよ。

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スイセンとカルガモ

2023/04/03
【第1737回】

日本のプロ野球も開幕しました。WBCの熱冷めやらぬなかでのプレーボール、各チームの意気込みも半端じゃなかったと思います。我がライオンズも、昨年の覇者オリックスとの対戦で所沢の球場もすべてチケット完売の盛況。初戦は9回ツーアウトまでいきましたが、昨年までライオンズに所属していた森捕手に同点ホームランを打たれ、結局延長で負けてしまいました。移籍した途端に手荒い洗礼を受けましたね。このやんちゃな森、打撃はいいんだがピッチャーのリード、そして肝心な守備がいまいちなのでライオンズにとってもおいらはそんなに損失だとは思っていませんでした。移籍した人はライオンズとは既に関係ないのでどうでもええやんけ!好きだった秋山(広島)、そして去り際がスッキリしなかった浅村(楽天)などなど、まあ適当にやって下さいというのが本音です。

オリックス3連戦で見えてきたのが、トップバッターを任された助っ人マーク・ペイトン。なんじゃい?助っ人どころか、はやお荷物になった感じ。そして4番バッターの山川のふがいなさ。この方、来年はソフトバンクに行く噂が持ちきりなんだが、こんな無様な姿では契約金相当にたたかれてしまいますぞ...この選手のホームランは魅力的なんだが、なんともムラがあり来年他チームに行ってもおいらはそんなにショックではありません。

ライオンズの良いところは主力が出て行っても若い選手が次々と現れるところです。この3連戦でも新人守護神、青山選手など躍動感あふれる選手が登場し、松井新監督に初勝利をプレゼントしました。ライオンズ嫌だったらどんどん出て行ってくださいな。ライオンズファンは何の未練もありまっせん!

東京の桜もいよいよ終わりですね...3年ぶりに桜の樹の下で宴会を楽しんでいる人たちの姿を見るにつけ、あらためて平和の有難さを感じた週末でした。

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善福寺緑地公園

2023/03/31
【第1736回】

散る桜 残る桜も 散る桜

 

なんだかはっきりしない天気ですが、散りゆくの桜を愛でながら多くの人が桜の名所を散策しています。それにしても、今年の桜の咲き具合なんともさえない感じがいたします。

天候のせいなのか、はたまた世相の暗さなのか、桜もなんとなく不安げに咲いているみたいに見えるのはおいらだけなのか?まあ、これだけ物価が上がれば財布のひもも堅くなり老後の資金のために消費が冷え込んでしまうのは自明の理。物が売れなきゃ製造販売会社も利益が出なくなり、社員の給料も上がらない。まさしく負のスパイラルまっしぐらのわがニッポン。一方、フランスでは政府の年金改革を巡って国内が騒然としています。激しいデモ隊と警察とのやりとりを見ながら、70年代の学生運動を想い出してしまいます。亡くなった友の激しい怒り、あれだけ権力に立ち向かった輩が卒業するや大企業にすんなりと入社して行く姿、戦いのあとに残る様々な人の形になんともすっきりしないものがありました。

人の生き方は様々だと思いますが、やはり筋を通した生き方をしてる人においらは共感します。最近では、やはり中村哲さんですかね...「一隅を照らす」一人ひとりが自分のいる場所で、自らが光となり周りを照らしていくことこそ、私たちの本来の役目であり、それが積み重なることで世の中がつくられる。

改めて、残された人生、しっかりと生きねば思っとります。

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様々に咲いてます

2023/03/29
【第1735回】

もうええ加減ええやろ...いまだWBC関連のニュースがお茶の間に溢れています。コーチの裏話、今日はアメリカまで追っかけてヌートバー選手のお母さんまで登場しました。確かに連日暗いニュースが続く中、今回の件は、今まで野球に興味なかった人まで巻き込み大きな社会現象になったばかりか、人間教育論までに影響を及ぼした感があります。栗山監督の言葉「夢はできる・できないではなく、やるか・やらないかだけだ」これなんかは、今生きる人誰しもに贈りたいメッセージ。今回、ヘッドコーチとして監督と一緒に戦った白井コーチは「栗山監督を言葉で表すと、信じて、任せて、感謝する。そういう人だなと。任せたあとに何が起きても全てのことにありがとう。そこがね、本当に凄いなと思う」としみじみ話していました。日々、頬がこけていく栗山監督の姿を見るたびに、孤高の中でも人間としての矜持を感じました。誰しもが思ったでしょう...こんな人が父であり、上司であり、国のトップを司る人であったらなあと。

明日からは日本のペナントレースも始まります。暫くは、この勢いで野球人気が続くに違いありません。我がライオンズも31日にオリックスとの対戦でスタートします。WBCで骨折した源田選手は居ませんけど、ライオンズ伝統の若い新スターが現れ面白いゲームにしてくれることを期待しています。がんばれ!がんばれ!ライオンズ。

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久し振りの青空

2023/03/27
【第1734回】

「ソングマン」昨日、無事千秋楽を迎えることが出来ました。観劇後、様々な意見が寄せられました。え!これトム・プロジェクトの作品?「いや、楽しかった...青春時代を懐かしく思い出させてくれましたよ。」一方、「トムらしいテイストが感じられなかった...」いやいや

若い制作者に一切任せた公演ですから、これらの反響は想定内です。改めて芝居を観る側にも演劇に対する一定の規範があることが良くわかりました。演劇とは?長年にわたって芝居に関わったおいらにもまだまだ未消化な部分があります。しかし考えてみればジャンルを問わず、観る側と創る側が共に夢を持てるものであればすべて演劇だと思います。

変な偏見を持たず、今、目の前の舞台に素直に感じる気持ちがあれば今まで感じられなかったことの一つや二つの新鮮な発見があるはずです。何事もそうなんですが、好きなことに執着していくうちに、自分自身がその道のプロになっちゃった錯覚に陥ることがあります。そんな時は、一旦身に付けた鎧を外すと意外と新鮮な風が吹きぬけて新たな気付きに自分自身驚くこともありますよ...

でも、すべての舞台がそうでないことも確かです。おいらだって、このくそ舞台に貴重な時間とお金を奪われ、どうしてくれるんだ!と怒り心頭に発することもありますよ。

要は、何事も心身ともどもいつも風通しの良い状態にしていれば、ほんの少しでも生きるヒントを貰えるんじゃないかしら?

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今日のサクラ

2023/03/24
【第1733回】

世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし...古今和歌集53 在原業平朝臣の有名な歌である。そうなんですね、桜がなかったら、そろそろ咲くのかな?もう散ってしまうんだろうか?と思い煩うことなく平穏に過ごすことが出来ると思う。でも、今こうやって桜は現実咲いているし何とも悩ましい思いをかき立てている。その複雑な心情を通して桜の魅力、そして長い冬を経て訪れた春の悩ましさを見事に表現しています。

今日も、満開になった桜が吹く風に乗って心地よいリズムに乗って散り始める光景を眺めながら、未だ覚めやらぬWBCの余韻を感じています。この桜ってやつは、この国のシンボル的存在であることは紛れない事実です。桜の季節の別れと出会い、新たなスタート、戦時中には戦意高揚のために利用されたこともあります。人生の節目としても桜は欠かせないものです。パット咲いてパット散る、このなんともいえない時間に人はなにを思うか?

「ソングマン」も今日で4回目のステージを無事終えることが出来ました。さすがに若い人たちによる芝居、テンションが全然落ちません。喜寿を迎え、さすがのおいらも心身ともそれなりに落ちてきております。今回の芝居を観ながら、嘗ての青春時代のあれこれを想い出してしまいます。苦い想い出も含めて良いことも悪いことも、今ではすべて過去形です。人生全て3分前は過去だと潔く切り捨てればとは思いますが、少しは未練がましく思ってしまうのも人の性なんでしょう...

桜の見ごろも今週一杯かな?今年も思い残すことなくサクラ♪サクラ♪堪能いたしましょう。

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神田川のサクラ

2023/03/22
【第1732回】

やりました!WBC、日本が優勝しました。おいらもハラハラドキドキしながら最後まで観てました。8回ダルビッシュ、9回大谷の豪華リレーは夢のようなシーンでした。今後決して観ることが出来ない場面に遭遇出来たことに感謝。準決勝の9回裏の逆転サヨナラ、そして今日の痺れるような試合展開の中、大谷の気迫のピッチングで1点を守りきりました。勿論、大谷、ダルビッシュは凄いのだが、今回の日本チームの勝因はチームが一丸となって戦ったことに尽きると思います。地味目の若手投手陣の頑張りも見応えがありました。メキシコ、アメリカチームの選手のほとんどがメジャーリーグばりばりの現役選手、普通だったら縮こまって心臓パクパクになってもおかしくないのだが、胸を張って堂々と投げ込む姿に感動いたしました。今時の若いもんはなんて言葉がぶっ飛ぶくらいの活躍振りでございます。急遽呼ばれたオリックスの山崎投手はじめ出場の機会が無かった選手も、気持の上でしっかりと戦う姿勢を示していたこその優勝だったと思います。

最近、あまり良いニュースがなかっただけに、今回のWBC日本の人達に夢と希望と勇気をもたらしたに違いありません。

そして、トム・プロジェクト今年最初の東京公演「ソングマン」が昨日、無事に初日を迎えることが出来ました。19日の岩手県一関市の公演を経ての舞台、若手の皆さん、今回の侍JAPAN参加した若手選手に負けず劣らず弾けて演じていました。歴史が証明しています。世の中を変革していくのはいつの世も若者でございます。

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今日のサクラ

2023/03/20
【第1731回】

ノーベル文学賞作家、大江健三郎さんが亡くなりました。若い頃にこの作家の作品貪るように読みました。おいらが好きだったのは「飼育」「個人的な体験」「芽むしり仔撃ち」「万延元年のフットボール」「同時代ゲーム」位までかな。その後の作品は観念的になり文学そのものを解体し再構築していくようでもありました。その一方、戦後民主主義者を自認し、憲法九条を守る運動、広島、沖縄の対する忌憚のない発言をしつづけてきました。言語に拘りながら、世界の危機的状況に一貫して弱者の立場に立ちながら世界に発信してきた功績は計り知れないものがあると思います。

今から半世紀ほど前になりますが、新宿に在ったジャズ喫茶ビレッジバンガードで大江さんを見かけたことがある。物静かな佇まいで店内に流れる曲を耳にしながら心地よさそうにウイスキーを何杯も飲まれていた。村上春樹然り、ジャズを愛好している作家の文体は、いずれもスイング感が溢れ、ジャズファンとしては行間から音が零れ落ちそうな感覚にとらわれ二倍楽しめる読後体験。

この時代、こうやってまた一人、平和を希求する有能な旗振り役が姿を消していく現状に不安を覚えます。こうなったら一人一人の粘り強い行動で全ての争いを止めさせるしかありません。

生きている以上、それを放棄することはとんでもない犯罪行為に匹敵するかもしれません。

世界は、地球と言う惑星はそれほど危機的状況でございます。

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こんなの好きだな

2023/03/17
【第1730回】

そりゃ観たくなりますがな...大谷が投げて打って、おまけにダルビッシュ有まで出てくるんだから、まさしく夢の競演。芝居でいえば千両役者の揃い組といったところですな。昨日のゲームで一番しびれたのは大谷のバント。誰しもがホームランを期待しているなかチームの勝利のためにバント、慌てた投手は暴投、一塁ランナーが一挙に三塁まで走塁し次打者吉田が強いヒット性の当たりで貴重な先制点が入りました。この大谷選手ってホンマに世界一ですわ!世界のお父さんお母さん誰しもがこんな子が欲しいと願うのが良くわかります。これほど非の打ち所がないと逆に気持ち悪いものだが、そう思わせない爽やかな笑顔と時折見せる勝負師の顔、こりゃたまりません...こんなスーパースターになるとほとんど外出もままならない状態の中、苦にするどころか今はすべて野球のために時間を過ごすことが一番楽しいと言い切ってるところもなんとなく大谷らしい。

昨日の試合、我がラインズの源田の渋い守備と打撃も素晴らしかったです。骨折した小指にまかれたテーピングの痛々しい姿でのなか、はつらつとしたプレーをする職人源田選手に拍手。21日アメリカマイアミでの準決勝が楽しみです。確かに史上最強の侍JAPANらしい4試合でしたから十分優勝の可能性ありと思ってますが、勝負事は何が起こるかわかりません。だから野球は面白いんですよね?

「ソングマン」東京公演の前に、明後日19日(日)岩手県一関文化センターで公演します。

お近くの方は是非、若者たちの青春群像劇を観に来てくださいね。

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もう少し待っててね...

2023/03/15
【第1729回】

3月21日~26日まで新宿スペースゼロで上演する「ソングマン」の最終稽古を見てきました。今回の芝居はトムの若い制作者に任せました。おいら世代とは違う感覚で創ってもらいたいとの思いを込めて...いやいや、後味の良い芝居に仕上がっていました。若い役者のピュアな感性が嫌みなく表現された青春ドラマ。通俗的だと言えばそうだが、この混沌とした世界の状況の中、ましてやマスク生活で正常なるコミュニケーションがままならない昨今、青春真っただ中でひたむきに生きようとする姿はとても爽やかで勇気づけられる芝居だと思います。

長いこと芝居に携わっていると、いつのまにか自分の演劇観が固定化される傾向があります。要するに自分はこんな形の芝居を創りたい!何事も核になるものは必要なのだが、あまりにもその核に拘り過ぎて自縄自縛状態になるケースを何度も観た記憶があります。

創っては壊し、又新たなことにチャレンジしていくことが表現者としては理想形なのだが、一旦手にしたものを手放したくないのが普通の人間でございます。

今回の芝居も、おいらがこれまで創った芝居とは随分かけ離れた芝居だと思っていましたが、所詮、テイストは違えども、伝える側の志し次第で、どんな観客にも届けられる演劇として成立するものだと改めて納得できました。今回の作・演出、なるせゆうせい君とは27年前に彼が学生だった時に出逢いトム・プロジェクトの第一回新人公演を任せました。その後、彼も自分の会社を立ち上げ作・演出・監督としてこの業界で活躍しています...おいらにとっても久しぶりのなるせ作品。昨日見た段階で、その後の彼の切磋琢磨の時間を垣間見た感じがしてなんとも感慨深いものがありました。

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こちらも満開です

2023/03/13
【第1728回】

先週の木曜から昨日まで、この国はWBCの話題で盛り上がっています。おいらも全試合TVで見ましたが侍JAPANは強い。栗山監督の勘がズバリと当たりましたね。その大ヒットはラーズ・ヌートバー選手を入れたこと。まだまだアメリカでも未知数の選手であったのだが、走攻守すべてのおいて優れているうえに彼の人間性を見抜いたことが大きい。その彼をトップバッターに持ってきたのがまさしく大ヒット。ファーストストライクから果敢に打っていく積極性が他の選手にも乗り移り連日の大量点に繋がっている。2番バッター近藤が上手くつなぎ、待ってましたの大谷とくりゃ、そりゃ勝ちますがな。村神様は不振だが、そのあとのクールな吉田がこれまた打ちまくるんだから相手の投手はお手上げ状態でございます。それに比してJAPANの投手陣は粒ぞろい、このグループでの全勝は当然の結果かな。今回対戦したチームで好感度を持てたのがチェコ。この国の選手は野球の他にも仕事を抱えながらのプレー。大したもんでございます...佐々木朗希投手の剛速球を足に当てられ七転八倒してた選手が不服そうな顔もせず元気に立ち上がりプレーを続けたシーンは球場全体大きな拍手が送られてました。それに反して、韓国戦で、ヌートバー選手が背中に球を当てられたのに韓国の投手は帽子を取って謝りもせず逆に死球を食らった選手に歩み寄る有様。こんな仁義に外れたことしてるから韓国は一次リーグで敗退も至極当然でござんす。

このあとのヌートバー選手のインタビューがユーモアあふれて笑っちゃいました。背中にボールを当てられたことに対し「丁度、凝ってるところに当たったので良かったです...」このジョークをすんなりと喋れるこの選手こそが一次リーグのMVPでしょうね!

連日の試合の最中、東日本大震災後12年目にあたる3月11日がやってきました。まだ避難している人が居て、故郷に戻ることをあきらめた人が居て、事故に遭った福島第一原子力発電所の行く末もわからず...こんな状態なのに、この国のリーダー、原発の再稼働を追加で目指す方針や次世代原子炉の開発・建設の検討など原発政策を前に進めようとしています。

こんなリーダー、政権、だれが選んだの?野球ばかりに気が行っちゃってると、この国とんでもないことになっちゃいますよ皆の衆。

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もう、こんなに咲いちゃいました
~新宿東南口~

2023/03/10
【第1727回】

今日は勿論、昨日のショウタイムを書かねばならないでしょう...なんとTV41.9%の視聴率。そりゃ観るでしょうね、あの大谷翔平が投げて打つんですから。この日は朝の5時からドーム前でグッズの争奪戦で長蛇の列。これも16番のユニフォームが一番人気。このユニフォームを着て観戦するのが夢だったという人が溢れかえった一日でした。その期待に応えて投げては4回まで1安打無失点で抑える好投。打つ方でも4打数2安打2打点、こちらも申し分ない成績でした。これだけのプレッシャーのなかでも、いつものさわやかな表情でプレーする大谷、ほんまに世界の大谷ですわ!野球界に留まらず、アスリートとしての彼の存在は絶大なるものがあります。驕らず、謙虚に、爽やかにプレーする姿に誰もケチが付けられない選手もそうそう居るものではございません。

なんとも重苦しい中国戦でしたが、牧のホームラン、代打山田の追加点につながる一打で一気に日本の流れにしてしまいました。おいらなんぞは、この一戦10対0くらいで勝利すると思っていたのだが、なんと意外に中国も強かった。この大国いずれにしても末恐ろしい潜在力を持っている。中国の宣伝のためなら人とお金はとことん注ぎ込む全体主義。アメリカから来た老監督の佇まいが妙に可笑しかった。

今日は韓国戦、昨日オーストラリアに負けただけに、必死の思いでくるだけに恐い気がする。

先発のダルビッシュ、DH大谷の活躍を皆が楽しみにしているに違いない。だが、一つ狂い始めると何が起こるのかわからないのが勝負の世界...どうなりますことやら?

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新宿東南口に咲いた
タカトオコヒガンザクラ

2023/03/08
【第1726回】

庶民は怒ってます...この物価高で多くの国民が悲鳴をあげているのに、2月27日に参院運営委員会の庶務小委員会で麹町議員宿舎の家賃が月額2568円減額した8万9642円になることに反対したのは日本維新の会の一人だけと言うんだから腹が立つ。いつもは威勢よく反対をぶち上げてる共産党、立憲民主党もこの時はだんまり。民間ならば家賃相場は50万円から55万円という相場なのに政治家先生だけがいい思いをしてるとしか言えない。給料の他、月65万円の立法事務費などをひっくるめると年収は約4000万円といわれている。これらが必至豆炭に生きている庶民の血税から支払ってると思うと更なる怒りが増してくる。金額に見合った仕事せんかい!ちんたらちんたらした仕事ぶりを見てるとこの国の未来はありまっせん...異国の地で給料泥棒してるなんたら議員にも完全に持て弄ばれこの機に及んでようやく除名する始末。この際、除名に値する議員もわんさか居るんで一緒に辞めさせたら庶民の皆様もスッキリ致します。

今日の東京は4月並みの暖かさ、コートを脱ぎ捨てる感覚は実に気持ちが良いもんでございます。この気温が続けばサクラの開花も早くなりそう。この時期、桜のつぼみを覗くのもなんともいえないトキメキを感じます。そして野の花が肩を寄せ合い春の会議をしているさまがこれまた可愛いもんでございます。

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春の会議

2023/03/06
【第1725回】

日一日と春が近づいています...トム・プロジェクトもこの春の知らせに相応しいニュースが飛び込んでおります。3月1日の大和田獏さんの所属に続き、今日は村井國夫さん所属の発表です。お二人とも、おいらが説明することなくみなさんご存じの方です。獏さんとは「萩咲く頃に」に初めて出演していただき、役者大和田獏の魅力を存分に発揮していただきたいとの思いから、その後「Sing a Song」「モンテンルパ」に出演依頼。どのシーンにおいても舞台をきっちりと締めていく技量、そして心ある演技は観客の多くが納得済み。

村井國夫さんと言えばミュージカル俳優。「マイ・フェア・レディ」「レ・ミゼラブル」は今でも伝説の舞台として語り継がれています。そしてあの声、ハリソン・フォード、ジェラール・ドパルデューの吹き替えはあまりにも有名です。そんな村井さんに、情けない九州のおじさんの役をやらせてみたら面白いんじゃない?という発想から「満月の人よ」に出演していただきました。この芝居での脱力しっぱなしの役者村井國夫においらもびっくり、今までミュージカルを観てた人も驚愕したに違いありません。その後、「砦」「芸人と兵隊」「にんげん日記」と出演していただきました。

トム・プロジェクトも今年から新体制でスタートしています。第二次トム・プロジェクトを創り上げるためになんとも心強いお二人が入ってくれたと思ってます。

これからのトム・プロジェクトの芝居、ますます目が離せませんな...

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春だね!ハナサフラン

2023/03/03
【第1724回】

今日、嬉しいニュースが入ってきました。博多で芝居をやるときにいつもお世話になっている気象予報士の吉竹顕彰(よしたけあきら)さんが、放送事業の発展や放送文化の向上に功績のあった人たちに贈られるNHK放送文化賞を受賞しました。芝居関係では脚本家で演出家の三谷幸喜さん、俳優の吉行和子さんも同時受賞。実はおいらとは従妹関係なんですよ。思い起こせば、おいらが博多で初めてテント芝居に出演した時に、当時九大の学生であったあきらちゃんを、今は無き六本松の名物スナック「ひろ」に連れて行ったことを鮮明に覚えています。その後、地元で30年以上にわたってNHK福岡の夕方のニュース番組に気象キャスターとして出演し穏やかな語り口と飾らない人柄で親しまれていました。一方、災害時には連日、緊急ニュースに出演し、詳しい状況を伝えてきました。2017年の九州北部豪雨の際には、レーダーの雨雲の様子から線状降水帯の危険性を察知し「命を大切にして下さい。それに大変危険な状況です。すぐ避難をして下さい」と呼びかけ気象予報士による「命を守る呼びかけ」の先駆けとなりました。

あきらちゃん、トムの博多公演には夕方の番組終了後に韋駄天の如く毎回駆けつけてくれました。終演後、あきらちゃんを含め仲間と一緒の飲み会も博多公演の楽しみの一つでもありました。

前回にも書きましたが<世のためにつくした人の一生ほど美しいものはない>あきらちゃんも間違いなくその一人だと思います。

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今日の空模様

2023/03/01
【第1723回】

今日から待ちに待った弥生でございます。昨日に続き、今日も東京は春の陽気です。冬のコートを脱ぎ、春の装いで颯爽と歩く若者の姿を見るにつけ、もうすぐ春ですね♪てな嬉しい気分になっちゃいます。

でも、この3月は忘れてならない東日本大震災が発生した月でもあります。もうすぐ12年になりますが、この国がこれから先も忘れてはならない3月11日がやってきます。

先日、新聞でこんな記事が掲載されていました。

 

「モンティ先生」陽気な米国人先生は子供たちから親しみを込めてそう呼ばれていました。アラスカでの少年時代に両親を亡くした彼は、教師が一人一人の子供たちと長く付き合うことの大切さを大事にしていました。「将来は日本と米国の懸け橋になりたい、人の役に立つ仕事がしたい」という思いで外国語指導助手として2009年に岩手県陸前高田市にある米崎小学校に赴任してきました。校外でも、近所の住民とお茶会を開いたり、居酒屋に飲みに行き交流を深めていたそうです。2011年3月11日は彼にとって米崎小での最後の授業、副校長から一つのお願いをされました。それは司馬遼太郎が1980年代、日本の未来を憂いて小学生の国語教科書に書いた「洪庵のたいまつ」。その一説を子供たちに英語で紹介したいと英訳を頼まれました。<世のためにつくした人の一生ほど美しいものはない>彼は快く引き受け、サラサラと英訳を書きました。その後、授業終了を報告するため市教育委員会に向かいました。その約1時間後の午後2時46分、陸前高田市を震度6弱の地震が襲い津波が押し寄せました。市教委の入った建物は津波にのまれ教育長、次長も流されました。後日、彼も遺体で見つかりました。

あの日受け取った英訳の紙片は職員室の机の上に残っていました。その後、来日した遺族に遺品として渡したが、副校長は教員を定年退職した今も、紙片のコピーを大切に保管している。<世のためにつくした人の一生ほど美しいものはない>これは26歳で亡くなったモンティことモンゴメリー・ディクソン、あなたのことですよ...

 

この不穏な時代、一日一日、生かされてる者にとっては大切なことであることを改めて思い知らされる記事でありました。

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弥生

2023/02/27
【第1722回】

先週の金曜日、読売演劇大賞の授賞式が帝国ホテルでありました。トム・プロジェクト関係では「風を打つ」に出演して頂いた音無美紀子さんが優秀女優賞。トムの作品にもお馴染みの劇団チョコレートケーキが最優秀作品賞、そして見事、読売演劇大賞を受賞しました。音無さんは「風を打つ」の初演時にも文化庁芸術祭賞優秀賞を受賞しており、再演して再度評価された今回の快挙です。

一方、劇団チョコレートケーキ大賞受賞作「生き残った子孫たちへ 戦争六篇」は演劇史上でも画期的な公演でした。昨年2022年8月、東京芸術劇場シアターイースト/シアターウエストにて上演。再演五編、新作一編、いずれも日本が関わった戦争の物語です。短期間での稽古スケジュール、そして所属している3人の男優の掛け持ち出演は大変だったと思います。ロシアのウクライナ侵攻、コロナの脅威という状況の中で戦争の本質を突きながら、平和を願った作品はどれも観客の心を揺り動かしたに違いありません。

「風を打つ」は水俣を題材にした作品。今年も5月~6月にかけて再々演を展開します。環境、戦争、家族、人間がこの地球上で生きていくために未来永劫忘れてはいけないテーマだと思っています。この大切なテーマを盛り込みながら生身で創り上げていく演劇は、このハイテクな時代では最も効率は悪いのですが、だからこそ観客に伝わるものはより密度が濃いものになり思考、行動を変えてしまうチカラに転換出来うるものと信じています。

今回の受賞も、この世界の難局を乗り越えるための過程、今日から又新しい作品に向けての戦いは始まっています!

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おめでとう!

2023/02/24
【第1721回】

新国立劇場中劇場で音楽劇「逃げろ!」の東京公演初日を観劇。いやはや若い女性で満杯、キャンセル待ちのお客様も並んでおりました。ジャニーズ事務所の男優さんと、2.5次元での人気者男優のそろい組ということでの盛況らしい。おいらは村井國夫さんの出演ということで観に来たのですが、まあこんな機会でなければこの手の芝居はなかなか足を運びませんな...内容はモーツァルト傑作台本3本を書いたイタリア詩人・作家とモーツァルトのやり取りを描いた2時間の芝居。歌と踊りを交えて若い俳優さんが所狭しと舞台上で熱演してました。その中で、やはり存在感を示したのが村井國夫さん。お孫さんのような演者に対して、負けずとも劣らないどころか演技たるものの見本を魅せてくれました。そして、トムの芝居にも出演したことのある篠井英介さんも、彼でしかできない魅惑的な表現で舞台を締めていました。主役がどんなに頑張っても、やはり脇に控える役者が居てこその芝居ということを実感した次第です。この芝居を2時間牽引した3人のミュージシャンの音楽力も見事でした。3人だけで、まるでオーケストラに匹敵する質量を発する音を展開してくれました。

今回の芝居というより、お目当ての俳優さんを観るために駆けつけた多くの観客が、これをきっかけに芝居が好きになり他の芝居も観に来てくれれば、こんな嬉しいことはありませんことよ。

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渋い!

2023/02/22
【第1720回】

昨日は、東京芸術劇場シアターイーストで劇団温泉ドラゴン「悼、灯、斉藤」(とう、とう、さいとう)を観劇。この作品は、作者である原田ゆうさんの家で起こった実話を元にした作品です。2020年6月に介護士だった実母が突然亡くなり、残された三兄弟が集まり、これまでの人生を振り返りながら、語り合い衝突しながら関係を修復していく物語。勿論、その輪の中にお父さんの存在があり、親子の微妙なやりとりも描かれていました。

今回の作品の演出・主宰者であるシライケイタ、次男役いわいのふ健、亡くなったお母さん役の大西多摩恵、長男の妻を演じた林田麻里さん。この4人はトムでも過去に一緒に仕事した人達です。時間を経過した中で、それぞれがそれぞれの形で表現の変化を観るのもプロデューサーとして楽しみの一つです。今回、母を演じる女優さんが体調不良で降板され、2週間で創りあげた多摩恵さんの奮闘振りに拍手。芝居屋さんは助けられたり、助けたり、長年芝居やってますと、その辺りの案件を阿吽の呼吸で危機を乗り越えたなんて事例は数多くあります。

母ものはやはり涙なしでは見られないですね、会場のあちこちですすり泣きが聞こえてきました。これも役者の表現力、そして演出力があっての話。10年から20年、芝居をやり続け力を蓄えていく劇団の過程も大変ドラマチックでございます。

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Welcom to Japan

2023/02/20
【第1719回】

先週の週末は、劇団トラッシュマスターズの「入管収容所」を観てきました。2021年3月6日、スリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が名古屋出入国在留管理局で死亡したウィシュマさん死亡事件をモチーフに、日本の入管庁(出入国在留管理庁)の問題に斬り込んだ舞台。未だにこの国の為政者は、不法滞在の外国人はほとんどが悪い奴らと決めつけて対応している。移民、亡命者にたいする接し方も後進国並みだ。確かにこの資源に乏しい島国が、異国の人たちに制圧される光景を想像するとあまりいい顔しないのは分かる気がする。しかしながら、先にも触れたのだがこの国の働き手が少なくなっていく将来、異国の人たちと手を携えて生きていかなければならないことも想定しなければと思う。

トラッシュマスターズの芝居は、いつも今あるこの国の問題点をいち早く取り上げ舞台に仕上げていく。ある意味、演劇は今を描いてこそのアートかもしれない。今回の舞台もメディアで報道される上っ面のことではなく、劇作家、中津留章仁が綿密に取材したことを基本に自らの想像力を駆使して2時間40分の芝居に仕上げた。出入国在留管理局の非人道的な数々が目の前で繰り広げられ戦慄さえ覚えた次第だ。これも演劇が放つチカラに違いない。演劇とは己が信じた思考を行動に移す極めてシンプルな表現でございます。

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サギは後ろ向き

2023/02/17
【第1718回】

今、第168回直木賞、第13回山田風太郎賞と併せてダブル受賞に輝いた小川哲作「地図と拳」を読んでいます。なにせ全640ページという大作、半分あたりまで来ました。登場人物が複雑で多岐にわたり、あっちゃこっちゃと引きずり回されますが満洲を舞台にどこまでが真実かどこまでが架空の話か、読み応えのある小説であることは間違いありません。

先日、作家がこの受賞に対するエッセイを書いていました。

その中で興味深かったのが祖父に対する気持ちです。祖父が亡くなる10年ほど前に自伝を出版した時に、周囲の人たちは冷ややかな反応をしたそうだ。戦時中に共産党員だった祖父は党の活動のせいで逮捕され大学も退学。学徒動員で召集された時も負の感情を抱き、天国や神の存在を信じていなかったそうだ...そんな祖父に今回の受賞をどう報告されますか?と質問してきた記者は天国の祖父に感謝の気持ちを述べるだろうという予測に対し、彼はきっぱりと「祖父の人生を尊重する限り、もう死んで骨となった伝える言葉など、僕にはない」。記者会見の短い時間で、祖父の過去を説明できるはずもなく無理だと思ったそうだ。自分がどれだけ上手に説明しても、記事では切り取られてしまうかもしれない。だから、伝えることはないと答えた。祖父はすでに死んでしまったが、その存在はきっと自分の本の中で生きている。そして、本と言う形で自分の人生を残そうと考えた祖父のことを今でも尊敬していると記している。

久しぶりに作家としての矜持を強く感じた言葉でございました。

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如月の夜空

2023/02/15
【第1717回】

昨日は日生劇場でホリプロ制作のミュージカル「バンズ・ヴィジェット」を観劇。ミュージカルになんと風間杜夫ちゃんが出演しているので、どんな歌をご披露するのか楽しみにしていました。この作品はトニー賞で10部門を独占したのだが、従来のミュージカルと違い大規模で派手な趣向のある作品というわけでもない。しかし、イスラエルに演奏旅行に来たエジプトの音楽隊が道に迷い、地元のイスラエル人と一晩交流をするというシンプルな物語の中に、国境を越えた人の交流を丁寧な描きながら、心情溢れる空気とエキゾチックかつ独創的な音楽は過去のミュージカル作品にはないものを感じました。杜夫ちゃんは誇り高い楽隊長の役、抑制の効いた演技で地味ながらも存在感を示しておりました。期待していた歌は一曲だけでしたが相手役の濱田めぐみさんと上手くハモっておりました。

それにしても御年もうすぐ74歳になるというのに、若い俳優さんと一緒に演技している姿は元気をもらえます。ここが俳優業のいいところですな...なんといっても死ぬまで現役で居られんですから。と言っても舞台は台詞を覚えなきゃ成立しないので、覚えられなくなっちゃえば舞台俳優としては引退宣言。事実、この一件で引退した俳優も居ましたね。加齢とともに日常生活でも「あれ?あれ?」を連発することも度々。本当に出てこないんだよねこれが...ましてや舞台では高い入場料金頂いて足を運んで来てるお客さんの前で台詞が出てこないとなると失笑を買うと同時に、それまで築いてきた芸歴に傷が付き仕事が激減してしまうという最悪の未来が待ってます。だからこそ舞台は価値があるんですな。生身の身体を晒しながら己自身に鞭打つ姿をハラハラドキドキ見応え十分でございます。

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寒い一日

2023/02/13
【第1716回】

週明けの東京は雨が降り寒い一日です...連日報道されているトルコ、シリアの地震による甚大な被害。厳寒の中、焚火にあたる被災者の映像を見るたびに心痛みます。シリアでは内線が続いており政権側がしかるべき救済に当たってないこともあり、ここにも理不尽な状態が続いています。天災は人の手では何とかならないにしても、せめてもの戦争は人間の思考でなんとかなるはずなのに止めることが出来ない情けない世界、いや人類。天災は今後予想もつかない出来事が起こりそうなので、せめて戦争だけは止めて欲しいと誰しもが思っているのに止まらない。今はメディアもトルコの地震報道で一色だけれど、ウクライナもロシアの無差別攻撃で危機的状況。焼けただれた我が家の前で、呆然と立ち尽くす老婆の表情は怒りを通り越し諦観の境地。確かにウクライナがロシアに占領されれば民主主義、自由主義の敗北に繋がり世界の状況は一気に変貌するに違いない。それを阻止するため西側諸国は武器を提供しウクライナの勝利につなげるための援助はしているのだが、この状況が長引けば長引くほど死傷者が増え続ける...一人の独裁者の欲望、誰かストップかける奴おらんかいな!

2月生まれのおいら、よくぞこんな寒いときに生まれここまで活かしてくれたもんだと感謝いたしております。いつもながらの通り道にいつものように梅が咲いております。いつもの風景を今年も拝観し、あらためて平和の有難さを痛感した次第でございます。

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梅は咲いたか桜はまだかいな~

2023/02/10
【第1715回】

今日はしんしんと雪が降っています...いつも雪の日に感じることはなんだか心落ち着き、そして不思議な気分にさせてくれます。あの落ちてくる速度の緩やかさに思いを寄せ、いつもの日常を銀世界へと変貌をさせることによって、それまでのすべてをリセットさせてくれそうなマジック。その雪を眺めていると、おいらが好きな詩人の一人、吉野弘さんの「雪の日に」を想い出します。

 

雪がはげしく ふりつづける
雪の白さを こらえながら

欺き(あざむき)やすい 雪の白さ
誰もが信じる 雪の白さ
信じられている雪は せつない

どこに 純白な心など あろう
どこに 汚れぬ雪など あろう
               
雪がはげしく ふりつづける
うわべの白さで 輝きながら
うわべの白さを こらえながら
雪は 汚れぬものとして
いつまでも白いものとして
空の高みに生まれたのだ
その悲しみを どうふらそう

雪はひとたび ふりはじめると
あとからあとから ふりつづく
雪の汚れを かくすため

純白を 花びらのように かさねていって
あとからあとから かさねていって
雪の汚れを かくすのだ

雪がはげしく ふりつづける
雪はおのれを どうしたら
欺かないで 生きられるだろう
それが もはや
みずからの手に負えなくなってしまったかのように
雪ははげしく ふりつづける

雪の上に 雪が
その上から 雪が
たとえようのない 重さで
音もなく かさなってゆく
かさねられてゆく
かさなってゆく かさねられてゆく

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ユキツバキ

2023/02/08
【第1714回】

新宿西口広場に80歳前後のおばあちゃんが一人、俳人の金子兜太さんが書いた「アベ政治を許さない」のプラカードを掲げて立っていました。安倍政権時代には作家・九条の会呼びかけ人の澤地久枝さんが、毎月3日午後1時に掲げようと提案をし、あちらこちらで見かけたもんですが、ここ最近では久しぶりに見かけました。その横には菅元首相の名前も連記されてました。柔和な顔でありながら、刻まれた皺と同じく彼女の強い信念を感じた次第です。おいらもその凛とした立ち姿に思わず「お疲れさまです。」と声を掛けました。

新宿西口広場と言えば、一日の通行人数は相当の数だと思います。衆目の面前でこれだけの意思表示をすることはかなりの覚悟がいるはずです。おそらく家族、親戚には「みっともないから止めなさい!」「いい歳していい加減にしなさい...」なんて言われたに違いない。でも、彼女にしてみれば今のこの国の政治、国際情勢の大きな危機感から矢も楯もたまらず今回の行動に踏み切ったに違いない。諦めちゃダメなんです...この島国ニッポン、たしかに素晴らしい自然に恵まれ、繊細な気配りを持ち合わせてはいるんですが、こと政治になるとほぼ諦めの境地の人が多いんじゃありませんかね。

何が正解か分かりませんが、己の意見を持ち、間違いだと思ったらはっきりと異見する人間でありたい...そのためには、自分磨きを日々ゴシゴシしなきゃなりませんね。

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生きてます!

2023/02/06
【第1713回】

先週末は「モリコーネ~映画を愛した音楽家~」を鑑賞。稀代の映画音楽家エンニオ・モリコーネ、この伝説のマエストロに、弟子であり親友でもある「ニュー・シネマ・パラダイス」を監督したジュゼッペ・トルナトーレ監督が5年の歳月を掛け密着取材し完成させたドキュメンタリー映画である。おいらが大好きな映画のシーンとともに流れるモリコーネの曲がなんと心地良かったことか。「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」「アルジェの戦い」「ウエスタン」「ケマダの戦い」「1990年」「天国の日々」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」「ミッション」「ニュー・シネマ・パラダイス」「アンタッチャブル」「海の上のピアニスト」などなど上演時間2時間37分、あっという間の時間でございました。考えてみれば、いつまでも心揺さぶられる映画には琴線に触れる音楽が伴走していました。自分の音楽を客観的に見られなくなった時、エンニオは音楽をまず妻に聞いてもらうことを選択すると喋っていました。謙虚で才能溢れたアーチストにも妻という良き伴走者がいたんですね。インタビューを受けるモリコーネ実にいい表情していました。貴方だったら唯一無二の旋律で映画に愛と命を吹き込むことができるはずだと納得した次第です。

唯単なる叙情に溺れることなく、渇いたアバンギャルド的音を交えながら構成していく手法は、彼自身が常に前衛の気持ちを忘れずに曲創りに邁進したからだと思います。いつ聞いても新鮮で最後には泣いちゃいます...2020年7月に91歳で亡くなったモリコーネに乾杯!

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永遠なれモリコーネ

2023/02/01
【第1712回】

ぼったくり男爵の発言がまたまた話題になっている。現在、国際大会から除外されているロシア選手らの復帰を検討すると発表。このオッサン、オリンピックを自分の利益のための道具にしてるんとちゃうかいな。この極寒のなか、ロシアの無差別攻撃でインフラが破壊されたなかで生活しているウクライナの現状を視察してからものを言わなあかんやろ。まともなオリンピック運営者であれば、ロシアのウクライナ侵攻が止まない限りオリンピックは開催しません!と宣言するべきだろう。それにしても狂犬プーチンひとりのわがままで世界がひっくり返ってるなんて恐るべき世界である。

軍事評論家が、メディアで今後の戦況をまるで予想屋みたいに語るシーンを見るたびに虚しさを覚える。こんな非常時に、颯爽と現れ事を収めるスーパーマンみたいな人物はおらんのかい...戦争してる暇なんてないぐらい、地球は温暖化により悲鳴をあげ世界各地地で災害が発生し、この先さらなる危機に瀕しているというのに、ほんまにニンゲンアホですばい。

今日から如月、あっと言う間にひと月経ってしまいました。寒さと同時に各家庭の生活も冷え込んできています。物価の更なる値上がりに続き、電気代の値上がりが又しても火計を圧迫。原発稼働している関西、九州はそのほかの地区に比べて安いという皮肉な現状。又しても原発見直しの議論もなされているという。2011年3月11日以来、この国のエネルギー政策なにか進展はあったんだろうか?外国行って大臣のためにお土産買ってふらちんしてる息子を抱えたリーダーではこの先真っ暗闇でございます。

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如月初日

2023/01/30
【第1711回】

週末は「イ二シェリン島の精霊」を鑑賞。佳作「スリー・ビルボード」を創ったマーティン・マクドナー監督の最新作ということで期待して観に行きました。1923年のアイルランドの架空の島で繰り広げられるオッサン同士の仲違いドラマ。美しいアイルランドの島、荒涼とした土地に暮らす現地の人達の表情、象徴的に登場する動物たち、カメラワークも良し。悪くはないのだが何だか唐突すぎる出来事が沢山出てきます。あんなことぐらいで指をとか...とにかくおいら日本人には理解できないシーンが何度も映し出されるので、こちらも深読みしようとはするのだが、なかなか追いつかない。この映画、映像美におんぶにだっこに拘りすぎた雰囲気芝居で創ってるんじゃあ~りませんか?と思った次第です。2023年のゴールデングローブ賞で作品賞、主演男優賞、脚本賞を受賞したのだが、おいらとしては今一つ推せませんな。

強いて言わせて貰えば、この作品が今の時代に訴えたいことは、ボタンの掛け違えでこんな悲惨で残酷なことが起きてしまいますとの警鐘かな...家庭の崩壊、ロシアのウクライナに対する不条理な侵攻、身近に起こる歪な事件などなど...人はちょいとした勘違い、自分への執拗な拘り、相手との距離感、思いやりのなさで状況は一変し最悪の結末を迎えるってことを表現したかったのかな。

折角、週末の貴重なお金と時間を費やしたので、自分なりの納め方をしないと無駄な時間とお金になってしまいますがな。

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日本の精霊

2023/01/27
【第1710回】

昨日は、今でも博多駅近くにある東住吉小学校の同級生でもある彫刻家、望月菊磨君の個展に行ってきました。半世紀以上にわたり金属彫刻家として第一線で活躍してるアーチストです。田園調布のお洒落な邸宅を改装した「みぞえ画廊」。画廊自体が作品と言っても過言でない素敵な佇まいでした。全国に130か所以上のパブリック作品を手掛けてる望月君、こんなことを話してました。

ある日、大木の下でぼんやり空を見ていると、大木の若葉からこぼれる日の光の淡い緑色の諧調のある透過光が目茶苦茶にきれいで「自然は素晴らしい!」この自然をモチーフにして何かを作ろうとしたり再現しても絶対にかなわないと思ったそうだ。自然のものは自然に任せよう。では自分はどうしたら良いかと考えた時に、人間が人間のために創り出した素材で人間が生み出した技術でものを作り表現することに辿り着く。それは工業製品のようなもので金属やプラスチックを素材にして技術を加えて作品を作る、それも具象ではなく抽象で表現することがよりベスト。そして何かを創るという行為は叩く、曲げる、穴を開ける、削る、溶かすという破壊行為。破壊行為の集積が、ものを創るということであり破壊が創造の原点である...以上が望月君の哲学でございました。

おいらと同級生なんだが、顔の色艶はいいし、東京藝術大学出のエリート臭も全然ないし、良い歳の取り方をしてるなと思いました。高校時代はタモリさんと同じクラスで大の仲良しだったそうだ...トムの芝居にも来てくれる望月君、春になったら一杯やる約束をして別れました。

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望月ワールド

2023/01/25
【第1709回】

10年に一度の寒波が日本列島を襲来し、各地でトラブルが発生しているのだが、今のところ東京は難を逃れている状態です。程よい雪は風情がありますがドカ雪はえらいことになっちゃいますね。特に東京は雪に弱い街なので、大雪と聞いただけでブルッちゃいます。

それにしてもこちらもブルブルどころか嘆き節になっちゃいます...100万円で強盗、殺人の募集をかけ集まった若者が90歳のおばあちゃんを殺してしまう。こりゃ、もはや人間ではありません、獣ですね。いや獣の方がまだ秩序があるような気がします。捕まった若者の一人は生活保護を受けながら過ごしていたそうな。こんな人間を生み出した責任、この国のすべての人にあるような気もします。夢も希望も持てない国にしてしまった責任をもういちど考える必要があります。年老いたおばあちゃんを殴る蹴る拘束して死に至らしめる。しかも金品を奪うだけの理由で...狂ってるとしか言いようがないのだが、彼らにしてみれば命よりも物欲が勝っているんでしょう。

会社の隣に子どもたちの予備校があるのだが、夕方になると迎えにきたママ友が集まり四方山話をしております。名門小中学の受験は熾烈を極め、出来るだけ早い内から予備校に通わないと入学出来ないそうです。遊び盛りの子どもたちの疲れた顔を見る度に、この国も狂ってるとしか思えない。どうみても狂ってるとしか思えないことが、当たりまえに感じる人種が多数を占めると、おいらはますます肩身が狭くなっちゃいます。

時折、街中で年老いた人の手助けをしてる若者を発見すると嬉しくなっちゃいます。こんな人たちにこの国を任せたいな...

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新宿サザンテラス

2023/01/23
【第1708回】

今週は大寒波が日本列島を襲来するらしい...なのにお相撲さんの艶々した肌を見てると、何だかこちらまでポカポカとしてくるから不思議なもんだ。おいらの家の近くにも芝田山部屋があるのだが、時折見かけるお相撲さんのその凛として勇ましい姿とは裏腹に、力士の近くに寄ると、どこか懐かしい甘い香りがする。その香りの正体は、鬢付け(びんつけ)油。力士の象徴ともいえる髷(まげ)を結うためには、かかせない存在なんです。

昨日の大相撲初場所の千秋楽、テレビ観戦しました。横綱不在、大関一人と言う寂しい場所でしたが、ここ最近ユニークな関取が出現し大いに楽しませていただきました。力士らしい力士、若隆景。憎たらしい顔つきだが根性丸出しのモンゴルの星、豊昇龍。変幻自在で忍者相撲で魅了満点の翔猿。その他、阿武咲、大栄翔、宇良なんかも面白い存在。それに反して先場所まで大関だった正代、多くのファンが嘆いておりますぞ。昨日の結びの一番、貴景勝なかなかでございました。連日、鼻血を出しながらの大健闘。あの体つき、ちょいと無理があるなとは思っていたのですが昨日の投げ技で新しい境地を磨いていけば横綱も無理ではありません。優勝インタビューがとっても良かったな。家族への感謝、自分を支えてくれた人達への感謝、すべてに感謝の気持ちが前面に出ていました。

これからの時代、感謝の気持ちがある人が生き残っていくことは間違いありません。この感謝の気持ちが無くなった時に人も国も世界も滅びていきます。今ここに立つ己は如何にして立てているのか...すべからく、生きとし生けるものに感謝でございます。

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ブルブル週間の初日

2023/01/20
【第1707回】

音楽を聴きながら読書する人、静かな環境で本に没頭する人...おいらは半々かな?本のジャンルによっても違ってきますね。今読んでる星野博美さんのエッセイなんかは先日紹介した新進気鋭のピアニスト、ヴァイキングル・オラフソンのCD聴きながら読んでると星野さんの怒りが、オラフソンの軽快にして幻想的なタッチでほどよくブレンドされテンポ良く次のページへと転調していく。

星野さんの怒りは、安さに定評がある「サイゼリア」に行ったときのことである。雨に濡れ冷えたからだで入店し温かいコーヒーを飲みたくてコーヒーマシンにカップを置きボタンを押しても冷たいコーヒーしか出てこないので男性の店員を呼んだところ、「コーヒーマシンが壊れているので冷たいドリンクをお飲み下さい」との返答。すかさず彼女「昨日も壊れていましたよ」と返すのだが、「修理がまだ終わっていませんので」とサイゼリアの男は、まるで星野さんを責めるような苛立ちの顔を浮かべ、安い値段で飲んでるのだから、つべこべ言わずにあるものを飲めよ、とでもいいたそうな顔で立ち去ったそうだ。機械が壊れるのは仕方がない。それを責めてるのではなく、謝ってもらえば気が済む話でもない。ただ、会話が会話にならないことに空しさを感じたそうだ。そりゃそうだ、たった180円のコーヒー、だからこの程度の誠意を示せば事足りる。この店員のそんな無意識の計算があまりにも悲しすぎる。

こんな体験、おいらも何度か経験したことがある。値段を安くしてくれることは客側からすると大変ありがたいことなのだが、価格の破壊が人間の大切な魂までも破壊しかねないことになっちまったら、それこそ主客転倒だ。

ピュア―な魂を保持するためにも、週末も心地よい音楽と読書を程よくブレンドして至福のひとときを堅持したいものでございます。

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遊び心満載のオラフソン

2023/01/18
【第1706回】

この国のセメント副総裁は困ったもんでございます...原発関係で日本の死者は一人も出てないとか、少子化問題では晩婚が原因とか、とにかく何年政治家やってんの?と開いた口が塞がらない。あんたらの未来への無策がすべてツケとなって今があるのに、何の反省もなく愚痴ってるんじゃないよと怒りを覚えるばかりだ。とにかく無能な政治家があまりにも多いのでまずは一刻も早く議員数を減らしてくださいな。辞任続きの大臣に税金払ってる身にもなってくださいなと言いたい。物価はじゃんじゃん上がってるのに給料は上がんないなんていう悲痛な叫びに政治はどう応える?なんて絶叫、連呼してもこの国の政治家のツラ見るかぎり、こりゃ無理ですわ!と、ほぼ諦め状態でございます。

博多の舞鶴にあった名店「さきと」が閉店してました。博多に帰れば、この店の美味しい魚とお酒が楽しみでした。魚と酒の目利きである大将が集めた食材はどれも絶品の味でした。カウンターだけの13席の店は予約を入れないと入れないほどの人気で、もちろん一見さんの入店は無理でした。お客さんとの距離感も絶妙で、お互いに気を遣うことなく酒と魚に集中することが出来ました。博多には美味しい店は数々あれど、この空気感の中で頂く料理は、なるほど西日本の居酒屋番付で横綱と称される価値はあったと思います。

大将は現在入院中とのこと、一日も早く元気になって又、大将が捌いた魚を食したいもんでございます。

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今日の空

2023/01/16
【第1705回】

昨日の15日は、3年前に中国帰りの人からコロナ感染者が日本で初めて出た日でもありました。その日から3年、日本のみならず世界はコロナで振り回される日々でした。それまで当り前のように友人と連絡し、美味しい酒を飲みながら馬鹿話してた時間が吹っ飛んでしまいました。人とのつながりをストップされたのですが、自分を見つめなおす良い機会でもありました。人とはいつだって気楽に逢えるもんじゃないということを痛いほど味わい家で過ごす時間が増え、風来坊気質を持つおいらにとっては、ようやく地に足が着いた生活が出来るようになったのかなとも思えた3年間でありました。

それにしても、この年になるとやはり会えない友人の近況が気になります。若い頃に芝居した仲間も3人亡くなったり、ゴールデン街で痛飲した男たちも何人かは消えてしまいました。今年の年賀状に半世紀通ったゴールデン街「ガルガンチュア」での飲み仲間であったH先輩から「いい時代思う存分楽しくともに生きてきましたね...今年で年賀状はおしまいです」夜毎、酒を飲みながら政治、芸術談義をした熱い日々が本当に懐かしゅうございます。

最近の若者は他人との距離を置き、酒もあまり飲まないそうです。これも時代の流れとは思いますが、この空気感が日本をつまらなくしてるのかもしれませんね。

ロシアの狂気、中国の不気味な動き...この国ほんまに大丈夫かな?なんとも覇気を感じないこの国トップの海外訪問での表情観ながら心配になってきました。

それと、籠池夫妻に実刑判決が決まったのは理解できたとしても、文書改ざんをした政治家、役人が何のお咎めを受けないなんて、これだけでこの国バッテンマークでございます。

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久し振りの曇天

2023/01/12
【第1704回】

今年に入ってよく耳にするピアニスト、ヴァイキング・オラソン、1984年アイスランドで生まれた新進気鋭のピアニストである。作曲もする建築家の父とピアノ教師の母を持ち、ニューヨークの名門ジュリアード音楽院でピアノを学ぶ。普通ならこの後、著名な国際ピアノ・コンクールに出場し、コンクールでの受賞歴を引っ提げて華々しくデビューを飾るところだが、ヴィキングルはそういう道を歩まない。いつ受賞できるかわからない国際コンクールなどに目もくれず、自分の音楽を届けるためにレーベルを立ち上げ、さらにフェスまで作ってしまうというのが、ヴィキングルのスタイル。ポップスならともかく、クラシックでこういうキャリアを歩んでいるアーティストは、ほとんど前例がないらしい。

まあ、出自、経歴などはどうでも良い。おいらが耳にして感じたことは、このピアニストには、自分自身の音楽に対する確信的なモノを信じて、先人の創った様々な曲にリスペクトしながら新しい音を生み出そうとする姿勢。表現者として生涯持ち続けなければいけない最重要なことでもある。おいらが音楽を聴く基準に、使い古された言葉かもしれないかもしれないけれど、やはりその人の魂を感じることが出来るかどうかがポイントになる。得てしていい音楽とは、静謐と躍動のふり幅を縦横無尽に駆使して聴き手の想像力を否応なしに掻き立ててくれる。

とにかく、彼の最新アルバム「フロム・アファー」を聴いてくださいませ。こんなピアノソロもあるんだなと...何事も新しい年の初めに、新しいモノに触れ刺激されると、今年もやらんとあかんぜよ!という気持ちになるだけでもありがたいもんでございます。

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冬のメタセコイア

2023/01/10
【第1703回】

おいらの冬の楽しみ二つのラグビー選手権が無事終わりました。最初は高校ラグビー。東福岡高校が報徳学園を破り6年振りの優勝。攻撃のチームから守備にチカラを入れたことに成功しました。ラグビー競技の醍醐味であるタックル、なんだか命懸けのプレーに手に汗を握る思いがいたします。己が犠牲となりチームに貢献する姿がとっても潔く胸を打つ。オレ我オレ我の世の中で、身を捨てる精神を持ち得る人が何と少なくなったことか...泥まみれになってぶつかり合う男たちの姿に酔いしれる至福の時間でございました。

8日に国立競技場で行われた大学選手権。帝京大学が圧倒的なチカラで早稲田を下し、2年連続の王者に輝きました。帝京大学の選手たちのフィジカルの強さだけが目立った試合でした。鍛え抜かれた筋肉の美しさに惚れ惚れしながら、このチームの選手の日頃の惜しみない努力が目に見えるようでもありました。指導者の適格な指導に素直に応える選手たちの資質の素晴らしさに頭が下がる思いです。

ラグビーのオールドファンたちは伝統校である早稲田、明治、慶應、同志社が強くないと面白くないなんてほざいておりますが、今はそんな時代じゃございません。真摯に物事に向かう姿勢を持つ者だけが生き残る時代であることを忘れてはなりません。過去の栄光忘れましょう!初心に帰って一から始めないとすべてのことが駄目になることに気付かないと世界はえらいことになっちまいますがな...そんなことを考えながら先週末のラグビーを楽しませていただきました。

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冬の薄暮

2023/01/06
【第1702回】

世の中ほんまに便利になったもんでございます。音好きなおいらとしては、今やスマホからあらゆるジャンルの曲が聴けるんですから贅沢極まりない。しかもワイヤレスイヤホンを耳に装着すれば面倒くさいコードも気にすることなく快適な音の世界が拡がっていく...

おいらもその恩恵を受けてはいるのだが、我が家に帰り、自分の聴きたいレコード、CDを取り出し音に向かう、このなんとも言えない高揚感は実に捨てがたい。幾多のミュージシャンが心血を注いだ作品には、それを享受する側も襟を正して向かいたい。なんて言ってると、この古臭い頑固おやじと思われそうだが、一事が万事、人が創り出したものに真摯な態度で接することが、この時代だからこそ大切な気がします。受け手の心音が亡くなった偉大な音楽家にも伝わり、音を通じて様々なコミュニケーションが楽しめます。レコード、CDには曲の解説、エッセイ、演者のプロフィールが掲載されておりそれらを読みながらの過ごし方も曲をより味わい深いものにしてくれます。そして何といっても様々な工夫を凝らしたであろうジャケット。特にレコードのジャケットはたまりません...まるで絵画を観てるかのような秀逸なものに接すると忘我の境地までいっちゃいます。

最近、レコード回帰の動きが出ています。歴史は繰り返す、ハイテクからアナログ、この世界も商売ですから流行に惑わされることなく、しっかりと心で捉えたいものですね。

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正月は明けましたよ

2023/01/04
【第1701回】

明けましておめでとうございます。

 

今日が仕事始めです。年末年始は我が家でゆっくり過ごしました。たまにテレビを見ると、なんだか人の死に触れた番組に多く遭遇しました。愛した妻が若くしてガンで亡くなり彼女と交わした手紙のやりとりを読み返し「もっと優しくしてやればよかったと...」つぶやく85歳の男性。同じく50歳でガン闘病の末に亡くなったロックシンガーの壮絶な生き方、その彼の日記には「自ら命を絶つ奴の命、俺にくれ!」そうなんです、こんな時代だからこそ命の重み、大切さが問われます。ウクライナ侵攻によるロシア、ウクライナの人たちの理不尽な死を始め、世界には人類の叡智で充分に防げる死があまりにも拡散してることには唖然とするばかりです。

昨日も、仕事でお付き合いしてる方のご子息が33歳の若さで亡くなったことを知らされました。考えてみれば生と死は背中合わせ、生を授かった瞬間から死も約束されてます。長く細く生きるのか、太く短く生きるかは己の生き方次第です。出来れば太く長く生きることが出来れば、ある程度生きててよかったなんて充実感を味わえるんじゃないのかな...

1週間振りの新宿、いつものように街は賑やか人達で溢れかえっていました。こんな当たり前な平和がいつまでも続いて欲しいと思う反面、いつ日本が戦争に巻き込まれてもおかしくないという危機感も抱きました...平和と戦争も背中あわせなんです。

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年始に唄う、吟遊詩人

2022/12/26
【第1700回】

今年も残すところ6日となりました。日本は、いや世界は大変な時代に直面しています。これらすべて、この状況を招いたのは、すべてこの地球上に住むひとりひとりに責任があると思います。国のトップを選択したのも、温暖化に突き進まざるをえなかった人間の欲望も...

この背景には、人間の奢りに原因があると思います。人の優しさが希薄になった時に、世の中はものの見事に凋落の道を進み始めます。それに歯止めをかけるのには、常に弱者の立場で想像、創造していく視点が大切だと思います。

そのよいお手本が、2019年12月にアフガニスタンで亡くなった中村哲さんの「一隅を照らす」という発想です。あまり光の当たらないところ、目立たない場所に「光をあてて明るくする」「だれもそこに行かないから、私たちが行くのです。だれもしないことだから、私たちがするのです。」哲さんはシンプルに思考しシンプルに行動しました...自分が今いる場所で、自分ができることを一生懸命やりましょう。

当たり前のことを、あまりにもこねくり回し思考し行動した結果が今の世界の現状です。

そろそろ気づかないと、世界はますますえらいことになっちゃいます。

トム・プロジェクトはなんとか今年も芝居をやることが出来ました。これもひとえに劇場に来ていただいた観客の皆様、コロナと日々戦いながらやり遂げたキャスト、スタッフの努力の賜物だと思っています。

この厳しい状況だからこそ、来るべき新しい年も良質な作品を創り、哲さんがいう「一隅を照らす」光にしたいものです。

明日は大掃除です。新年の仕事始めは1月4日です。今年一年「夢吐き通信」に目を通して頂き本当にありがとうございました。

皆さんも良い新年をお迎えくださいね!

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2022年ありがとう!

2022/12/23
【第1699回】

人はいとも簡単に忘れてしまうのだろうか...昨日、政府が原発の新規建設や60年を超える運転を認めることを盛り込んだ基本方針を発表した。この国の首相は何なんだろう?「聞く耳」どころか「聞かない耳に」方針転換したとしか思えない。防衛費しかり、たいした議論もせず勝手にお金だけ決めちゃうなんてあってはならないことだ。そして昨日の発言。いまだ避難民がいるのに、ウクライナ、電力不足にかこつけて余りにも拙速な判断じゃありませんか?あの事故からまだ12年弱、あの恐怖を思えば、この国が原発に依存するに値しない国土であることは一目瞭然。太陽光、風力、地熱などなど、まだまだ自然のエネルギーを活かす方策を探るべきではないかと思う。

もういい加減気付いて欲しいな...地道に自然と共に生活する手立てを考えないとこの国の未来はないと思います。農業然り、教育然り、この国の指導者の未来へのビジョンがことごとく貧困なためこの国は疲弊に突き進んでいます。

昨日も、新宿の南口でストリートミュージシャンのDariが白いTシャツ1枚で汗をかきながらライブをやってました。おいらが声を掛けると「この前はありがとうございました」ちゃんと覚えているんだなと感心し「CD聴いたよ...YouTubeも良かったよ」というと、「どんどん元気与えますから、持っててください!」なんて屈託のない満面の笑みをたたえて返してきました。

残念ながら、政治家なんかよりDariのほうがよっぽど説得力がありますがな。

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新宿サザンタワー

2022/12/21
【第1698回】

劇団桟敷童子の「老いた蛙は海を目指す」を観劇...コロナ、寒さに負けず演劇は粛々と行われております。この時期一番応えるのがキャスト、スタッフにコロナ感染者が出ることだ。舞台上での激しい台詞のやりとりなんかを観てるとハラハラドキドキいたします。かといって手加減するわけにもいかず、ここはケセラセラの心境でございます。

今回の芝居は、あのマキシム・ゴーリキの名作「どん底」を下敷きにした作品。作・演出の東憲司が青春時代にあこがれていた作品でもある。おいらも若い頃(1975年)俳優座劇場で観た公演での松本克平、滝田裕介、永井智雄、仲代達矢の豪華キャストで堪能いたしました。まさしく劇団俳優座の全盛時代。そして何と言っても今でも記憶に残る名演技を観させていただいたのが劇団民藝での滝沢修。この名優の「どん底」「セールスマンの死」「夜明け前」は絶品である。彼の一挙手一投足の残像はいまでも鮮明に覚えている。

そして桟敷童子版「どん底」、ここまで一貫して底辺に蠢く民衆を描いてきた東憲司ならではの作品である。暗闇で生きる人間の苦悩、情熱、ロマンを登場人物の各世代に振り分け、客演の役者を上手く使いこなしテンポよくラストまで進行していく。そしてラストの大掛かりなセットで、それまでの人間の葛藤を一気に浄化させる手法こそ、この劇団の真骨頂でございます。

劇場を後にしながら明りがついたスカイツリーを観ながら、今年も稽古場で無事作品を創り上げ何度も目にしたスカイツリーに思わずありがとうと言っちゃいました。もしや、スカイツリーは演劇の神様の分身かもしれませんな?

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今年もありがとう

2022/12/19
【第1697回】

今日は何故か眠くありません...昨日のサッカーワールドカップ決勝戦、ついつい見てしまいました。おいらサッカーでこんな時間使ったの初めてでございます。日本チームの活躍でここまで引っ張られた感じです。まさかのドイツ、スペインとの勝利、そりゃ盛り上がりますがな。今でも、ハッキリクッキリ覚えています。スペインに暮らしている時に日々テレビで観ていたスぺインサッカーのスピード感に圧倒され、こりゃ日本のサッカーは相手になりませんとお手上げ状態でございました。勿論、スペイン人の友人からも日本サッカーの現状について聞かれたこともありませんでした。スペインのサッカー熱は半端じゃありません。バルで一杯飲みながらまるで喧嘩してるが如く喧々諤々の大討論会になっちゃいます。おいらが飼ってたネコちゃんもサッカーが始まるや否や、のんべんだらりんとしてた身体が一瞬にして戦闘態勢になり、なんとテレビに映るサッカーボールに手を出す始末。この姿を見た時はおいらもびっくり!スペイン猫サッカーリーグがあるんじゃないかしら?と思った次第。

それにしても、深夜3時まで見続けたのはアルゼンチンに勝ってほしかったからでございます。判官びいきといいますか、南米大陸の小さな国がヨーロッパを代表する国を倒すなんて小気味いいじゃありませんか。文化でいえばシャンソンとタンゴの対決かな...シャンソンの粋とタンゴのパッション、どちらも捨てがたいが今回はタンゴの方につきました。

それにしても新旧のスーパープレイヤーのプレーも見ごたえがありました。アルゼンチンのメッシ、フランスのエムバぺ...いやいや日本も負けてませんよ。今回の堂安と浅野、いつの日か決勝の舞台に日本が残ってるなんてことも夢物語じゃありませんことよ。

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新宿マインズタワーのツリー

2022/12/16
【第1696回】

新国立劇場で「夜明けの寄り鯨」を観劇。若い頃、この近くに住んだことがあり、こんなところにこんな立派な劇場が出来るなんて想像もできなかった。まして国が作るなんてことも含めて。おいらもこの劇場(小劇場、中劇場)で数多くの芝居を見させていただきましたが、さすが国と民間企業が一体となって運営しているので羨ましい限りの設備です。海外では国の文化の程度が、その国の価値の基準になると言われているので、この劇場の建設はむしろ遅すぎたともいえる。

さて今回の芝居、客席に座った瞬間、舞台美術のシンプルかつ美しさに目を見張った次第である。開演までの15分間、そのセットを眺めながらいったいどんなドラマが展開されるんだろうか?ワクワクドキドキしてました。そして芝居が始まり、静かな口調の会話から一転、激しい議論の応酬を通じてそれぞれの登場人物の背景にある偏見、誤解、苦悩があぶりだされドラマが進行していく。そのリアルなやり取りと異彩を放つ舞台セットに違和感を感じるのはおいらだけなのか...深刻且つリアルなドラマツルギーだからこそアンバランスなセットで程よく中和させ、もう一つ異次元の世界に誘なうようにしているのか?そこは演出家の腕の見せ所だとは思うのだが、おいらにはもう一つ届きませんでした。

今回の芝居にトム所属の森川由樹が出演していました。由樹ちゃんとっても良かったです!「芸人と兵隊」「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」に続く今回の芝居、まさしくホップ、ステップ、ジャンプでございます。2013年トムの作品「百枚めの写真~一銭五厘たちの横丁~」でデビューして9年。由樹ちゃん、これからが真価を問われます。大丈夫です!自信を持って貴女の魅力を存分に発揮して、お客様を楽しませてくださいな。

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ナンテンと枯葉

2022/12/14
【第1695回】

我が街、新宿にも岡林信康がいました...最近、新宿南口の駅前でTシャツにギターを抱え野太い声で歌いまくる男を見かけ気になってました。名前はDari、なんと路上で100万枚のCDを売ると公言し都内に出没しているらしい。このストリートミュージシャン、プロダクション、事務所のお誘いは一切お断りという自信満々の若者。おいら気になって、程よいところで声を掛ける。「CDに何曲入っているの?」「1曲だけです」「千円高いんじゃないの?」「いやいや、自信の1曲です」いとも簡単に、笑みを浮かべての受け答え。面構えも少年の面影を残しつつ逞しさを兼ね備えている。この強気に、おいらも粋に感じ購入。すると本当に嬉しそうに「ほんとですか!」満面笑みを浮かべ嬉しそうな顔がこれまた可愛い。

と、甲州街道からパトカーが現れ「連絡が入ってます...すぐに撤収してください」なんとも無機質な声が流れてきた。路上でパフォーマンスする若者が気に食わないのか?おのれのストレスを通報することで発散させているのか?いずれにしても、こんな人はどこにいてもいるもんや...おいらも45年ほど前スペインで大道芸やっていたのだが、毎日が天国でした。1週間1時間の労働で1週間飲み食いの旅に味をしめ、すっかり甘い誘惑に誘われスペインに住んでしまいました。

それに比べて、いまだ路上の大道芸にお咎めするこの国は、どこか閉じてますな。

早速、CD聴いてみました。心赴くままに歌っていますね...1枚のカードに手書きでNO13057と書いてありました。残すところ986943枚かな?

自分の思いを即行動に移し未開の道を突く進んでいく人間、おいら大好きです。

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幻想庭園

2022/12/12
【第1694回】

久しぶりに岡林信康の歌聞きました...今時の人は誰?って答えが返ってきそうですね。この歌い手はフォークの神様と上げ奉られ1970年前後に高田渡、加川良、五つの赤い風船などと共に、プロテスト・フォーク、反戦フォークとして若者の間でブームとなった。おいらも、新宿西口広場で夜毎繰り広げられていた集会で反戦の歌声を耳にしてました。立ち止まって聴いていると若いお巡りさんが「ここは広場ではありません。通路ですから歩いてください...」なんて注意勧告を受けていたのを無視すると、いきなり暗がりに連行されました。

不当な扱いを受けたので、おいら抵抗するとボコボコにされました。あやうく新宿署に連行されそうになったのを心優しい年輩のお巡りさんに解放された次第です。この時代の機動隊と若者の対立は激しいものがありました。おいらの友人も何人かは留置所に入れられましたが、そんな光景を見ながらおいらの頭を過ぎったのは、親から仕送りを受けながら大学生活を送る若者と、田舎から出てきた若き機動隊隊員のなんともいえない剥き出しの感情の対立にも見えました。確かに既存の体制、価値観の変化を求めようとする若者の行動は尊いし支持もしたいのだが、卒業するやいなやいとも簡単に体制に繰り込まれいく姿を見るにつけ納得しがたいものを感じた次第です。

 

私たちの望むものは 生きる苦しみではなく
私たちの望むものは 生きる喜びなのだ

私たちの望むものは 社会のための 私ではなく
私たちの望むものは 私たちのための 社会なのだ

私たちの望むものは 与えられることではなく
私たちの望むものは 奪いとることなのだ

私たちの望むものは あなたを殺すことではなく
私たちの望むものは あなたと生きることなのだ

今ある不幸に とどまってはならない
まだ見ぬ幸せに 今跳び立つのだ

私たちの望むものは くりかえすことではなく
私たちの望むものは たえず変わってゆく ことなのだ

私たちの望むものは 決して私たちではなく
私たちの望むものは 私でありつづける ことなのだ

今ある不幸に とどまってはならない
まだ見ぬ幸せに 今跳び立つのだ

私たちの望むものは 生きる喜びではなく
私たちの望むものは 生きる苦しみなのだ

私たちの望むものは あなたと 生きることではなく
私たちの望むものは あなたを殺すことなのだ

今ある不幸に とどまってはならない
まだ見ぬ幸せに 今跳び立つのだ

私たちの望むものは
私たちの望むものは...


彼の歌う「私たちの望むものは」は今聴いても新鮮でございます。

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師走の晴天

2022/12/07
【第1693回】

やっぱり、果報は寝て待て!に徹すべきだったんだね。ついつい誘惑(初のベスト8になる歴史的瞬間)に負けて観てしまい、試合も負けてしまいました。それにしても今回のワールドサッカー2022でのジャパンあっぱれでございます。コロナ、不景気、ウクライナ侵攻、どれをとっても意気上がらない現状において、唯一の希望がジャパンサッカーではなかったかと言うのがこの国の大方の見方です。スペイン戦、クロアチア戦、深夜に関わらずテレビの視聴率も高いし、日本全国のあらゆる会場に多くの人が集まってることが証明しています。それにしてもクロアチア強い。バルカン半島に位置する410万ほどの国で、圧倒的人気があるのがサッカーです。今回の勝敗のカギを握ったPK戦でのクロアチアのゴールキーパーの身体見ただけでこりゃあかんですばい?と思った次第。案の定3本止められゲームセット。そりゃそうだ、サッカーに命を懸けてる国と戦えば仕方のないことですが、やはりサッカーの強豪国が集まっているところで揉まれてるチームはなかなかあなどれないしぶとさとしっかりとした戦略を持っているような気がします。それにしても、スペインもモロッコとの試合でPK戦で3本ミスしての敗戦。今回のワールドサッカー番狂わせの連続です。だからスポーツは面白いんですね...まさしく筋書きのないドラマでございます。

一段と寒くなったなか、しっかりと自己主張しながら咲いてる椿を見てるとなんだか燃えてきますな...負けちゃいられんですばい!

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寒椿

2022/12/05
【第1692回】

先週の週末は、新宿シアタートップスで、劇団ONEOR8「千一夜」を観てきました。この劇場1985年にオープンし2009年まで結構面白い芝居を上演していました。初期の頃の大人計画、東京サンシャインボーイズ、劇団☆新感線などなど、客席150ほどのキャパに新宿の街が醸し出すカオスが程よくマッチしていました。トム・プロジェクトも22年続いている風間杜夫ひとり芝居もここから始まりました。蟹江敬三ひとり芝居、戸川純ひとり芝居もこの劇場でした。唐十郎作・演出の佐野史郎ひとり芝居では、このクラスの劇場では珍しい廻り舞台を作りこみ摩訶不思議な芝居を上演しました。

そんな歴史を持つシアタートップスが2021年5月に下北沢に多くの劇場を運営する本多グループが引継ぎ再開することとなりました。

久しぶりにこの劇場に入った瞬間、まるで走馬灯のようにこの客席で観た数々の芝居が甦ってきました。何といっても舞台と客席の距離をほとんど感じさせない臨場感が素晴らしい。生の芝居で役者の表情が見えないなんてことは本来あってはならないことなのだが、制作側からすると、この程度のキャパでは採算を取れないのでなかなか難しい。そんなことを考えれば、この規模の芝居は大変贅沢な出し物であり、その反面役者の技量も白日の下に晒されるので演者にとっては戦々恐々の劇場でもある。

さて、この日の芝居は?この劇団の主宰者である田村孝裕の独特の世界感が行ったり来たり、まるで観客の感情をもてあそんでる感じがいたしました。

これから先、新宿シアタートップスを足場にして新たな演劇の歴史を作り上げる集団が出て来てくださいな...街を、人を、煽情のるつぼに巻き込むくらいの出し物を期待してまっせ!

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黄絨毯

2022/12/02
【第1691回】

おいらが月曜日に書いた通りになりました...果報は寝て待て!

一杯やっていつもの通り床に就き、今朝7時に起床。なんとカタール・ワールドカップの第3戦でスペイン代表と対戦し、2-1の逆転勝利。前回のコスタリカ戦の戦いぶりを見る限り、無敵艦隊スペインにどう考えても勝ち目はないと思った人が大半を占める中、奇跡が起きました。同点ゴールを決めた堂安選手「これで一戦目が奇跡じゃなくて勝ったと思ってもらえたと思います...」24歳の若武者の言葉、久しぶりに頼りになる日本青年が世界に発してくれた清々しいインタービューでの発言でした。こうなってくると、もしや優勝なんて夢を抱く人達も居るとは思いますが、まあまあ、ここまでやってくれたならばあとは純粋にサッカーを楽しみましょう。

11月30日には両国シアターXでポーランド国立民族合唱舞踊団「シロンスク」を観劇してきました。「シロンスク」は1953年創立され、5大陸44カ国で、9000回を超える公演を行ってきたポーランドを代表する舞踊団です。ポーランドの歴史と文化の伝統を電子音楽やコンテンポラリーダンスを交えて「伝統」と「今」を結び付けようとする試みでした。

鍛え抜かれた身体と、民族衣装の鮮やかさが印象的。世界がコロナによるパンデミック状況下、よく来てくれました!今回のような文化交流さえしてれば戦争なんかは起きないのにね。

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遠路はるばる ありがとう!

2022/11/30
【第1690回】

こまつ座の「吾輩は漱石である」を観劇。この作品1982年にしゃぼん玉座で木村光一の演出、小沢昭一の出演で初演されたものである。この年は東京・永田町のホテルニュージャパンで火災、東北新幹線開業なんかの記憶他、演劇の世界では転位21を主宰していた山崎哲氏が「漂流家族」「うお伝説」で岸田國士戯曲賞を受賞したことが印象に残っています。そんな折、俳優小沢昭一さんも自分がやりたい芝居をやりたくてしゃぼん玉座を立ち上げ井上ひさしさんに台本を依頼したんだと思います。

そんな経緯で書かれた戯曲、井上さんには珍しく最後まで試行錯誤で頭を抱えながら書いたであろうという悪戦苦闘の跡が随所に見られました。おいらも最近、夏目漱石の作品を読み返しているんですが、やはり文豪に相応しい作品ばかりです。すっと読み進むにはもったいないくらいの語彙の選択、人間の心理に奥深く立ち入り暫し熟考せざるを得ない展開、それに加えエンターテインメント性もあるんですから永遠のベストセラーであることは間違いないと思います。

さて芝居なんですが、この難攻不落というよりも、あちらこちらにとっ散らかっている戯曲を何とかしようとする演出家、それに応えようとする役者の奮闘する様を観せられた感がしました。そのなかでも漱石の妻・鏡子さんと、「坊っちゃん」のマドンナなど複数の役を演じた賀来千香子さんの芝居は十分楽しめました。そうなんです、難しい芝居程あまり考えすぎず心身解放して楽しめばいいのでございます。

でも、こうやって過去の作品に新しい命を吹き込んで創造しようとする姿勢は大切なことだと改めて感じた観劇日でした。

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明日から師走

2022/11/28
【第1689回】

昨日は大変な一日でしたね...大相撲九州場所では、千秋楽は本割で幕内高安に土をつけ、ともえ戦となった優勝決定戦で高安、大関貴景勝を撃破した平幕の阿炎が優勝。この力士、一昨年7月場所でコロナ対策の規則違反が発覚。3場所出場停止などの処分を受けて、一時は幕下まで転落した経歴をもつやんちゃな人。相変わらず、モンゴル勢におされがちな相撲界、これぐらいやんちゃじゃないとダメでごわす。それにしても貴景勝の体型と汗みてるとちょいと心配だな、見てる方が息苦しくなっちゃいますがな。

夜のゴールデンタイムのサッカー...歓喜に溢れていた日本列島、一瞬にしてしゅんとなっちゃいました。コスタリカ戦勝って当たり前?とんでもございません、中南米の小さな国ですがサッカーに命を懸けてる国でございます。日本の先発メンバーみて、ちょいとナメてるんじゃないかと思いました。次のスペイン戦なんてこと考える余裕なんてあるわけじゃないと思うのだが、前半のちんたら攻撃も含めて良くて引き分けだなとおいらは思いました。

どんな勝負事でも下駄を履くまで分からない...このグループ、なんとコスタリカと日本が二次リーグに進出なんてこともありえます。特に得点するのがなかなか難しいこのゲーム、まだまだ日本にもチャンスはありますが、次のスペイン戦のめりこむことなく楽しみながら観ましょうね?なんて言っても日本時間12月2日(金)午前4時キックオフとなりますと、おいら寝てますがな。

ちなみに「果報は寝て待て」なんてことわざもあるじゃありませんか皆の衆。

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秋の日はつるべ落とし

2022/11/24
【第1688回】

今日はサッカーでしょう!おいらも試合開始からテレビ観戦してたのですが、前半ほとんどドイツの猛攻を見せられ、こりゃ予想通りドイツの勝利で決まりだと寝る体制に入ったのだが、おいらの感ピューターがなぜかピコピコしてきたので後半戦の最初だけ見ることになりました。芋焼酎のお湯割り片手にほぼ諦め状態で観てると、前半とは打って変わってジャパンの動きが良くなっているではないか...もしやと思いきや30分にMF堂安律が同点ゴール、38分にはFW浅野琢磨が決勝ゴール。アディショナルタイム7分の表示が出た瞬間、1993年10月28日にカタールの首都・ドーハで行われたワールドサッカーアジア最終予選、試合終了間際まで2-1でリードしていながら、ロスタイムにイラク代表に同点ゴールを入れられ、一転して予選敗退する結末となったことが頭をよぎりました。メンタル面で弱い日本選手のことだからまたしてもと最後までヒヤヒヤもんでしたが何とか守り切りました。ゴールを決めた二人の選手のインタビューが、昔の代表選手と違っていかしてる(もはや死語かな?)じゃありませんか「俺が絶対決めてやる...そのために出てきたんだから。」頼もしい若者です。これはやはり二人とも海外でプレーしていることが大きいと思います。異国の地で多種多様な人種と混じりながら生活することがいかに大切なことか...おいらがいまこうやって仕事出来てるのも30代に海外を見聞したことが大きな財産になっています。思考、行動の幅が果てしなく拡がっていくこと間違いなし。スマホピコピコで明け暮れてちゃおもろい人生送れませんがな...今からでも遅くはありません、何でも見てやろう精神で海外ふらりと出かけてみませんか?

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今日のメタセコイア

2022/11/21
【第1687回】

米澤 穂信の作品「黒牢城」を読了。結論から言えば面白かった...というよりなかなか仕組まれた読み物、話の展開がミステリアスでついつい読まずにはいられない欲求をかきたてられる。歴史小説でありながらミステリ小説なんて贅沢な設定はなかなか成功しづらいなか、これは作家の才能以外なにものでもない。牢に拉致される黒田官兵衛の使いかたが絶妙である。この本の主役である村重と官兵衛の戦国時代を生き抜く武士としての人生観や世界観が丁寧に描き込まれていると同時に、ふたりの心理戦を交えたやりとりが、まるでその場に立ち会っているかのような緊張感がたまらない。

いい小説を読むと、おいらの頭のなかにあった言語化されていないなにかが、いまここに文章として再現されていることにとても感銘を受ける。それは、映像や音楽などと違って読んでいるおいらと分かちがたく結びついている。「美しい樹木」とあれば、それはおいらが見たもっとも「美しい樹木」と響き合い、「やわらかな肌」とあれば、それはおいらが知っている、もっとも「やわらかな肌」とほとんど同じなのである。それはリアリティというのとは違い、言葉という回路を通して、いつでもおいらに引き寄せてくれるより強い知覚力を感じる次第である。又、これまで経験したことや思考したことを、新しい言葉によってふたたび明りを灯され、未だ見ぬ新たな道標を示してくれるワクワク感がたまらない。

読書の秋である。色鮮やかな紅葉を見た後は心穏やかに本を開く...自然が織りなす色とは違う彩を味わうに違いない。

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燃える秋

2022/11/15
【第1686回】

トメちゃんのアニメと歌声がYouTubeで流れ始めました。タイトルは「らりるれロンドン」本名は留守晃(とめもりあきら)、シンガーソングライターであり俳優でもあります。初期のミュージカル「レ・ミゼラブル」では主要な役で出演しておりました。トメちゃんなかなかシャイで人付き合いも上手くなく、しかも自分の世界には拘りがあるっていうんですからおいらもとても心配していました。これだけの才能が溢れているのにじつにもったいないと常日頃思ってもおりました。そのうえここ3年コロナでライブはできないとなりゃ死活問題でございます。トメちゃんの歌がNHKの「みんなのうた」に日々流れて当然と思ってたおいらにとってはまさしく朗報。早速、拝見しましたがトメちゃんのセンスが画面いっぱいに拡がっておりました。テーマとしてもこの時代にぴったり、そしてトメちゃんの優しさがテンコ盛り...嬉しくなって何回も聴いちゃいました。

過去のライブで聴いた曲の中で、まだまだ珠玉の名曲が沢山あります。今回ほど完成度の高い画像を創るのには大変な労力だとは思いますが、第二弾、第三弾、待ちわびてる人は沢山いるはずです。そして、いつの日か全国ライブツアーなんかをやれるといいですね!

先ずは皆さん聴いて見てくださいな...きっと癖になりますよ。そしてお気に召したら両親、兄弟、友人、親戚、職場の仲間などなどに拡散してくれたら嬉しゅうございます。

トメちゃんのバラッド

2022/11/14
【第1685回】

先週の週末は村井國夫さんの歌を堪能してきました。場所は渋谷にあるセルリアンタワー東急ホテル2F( JZBrat SOUND OF TOKYO)なんともお洒落な空間です。

ダンディーな村井さんにぴったりでした。登場するやいなや愛の歌を連発、本人曰く暗い唄ばかりで...なんておっしゃっていましたが、あの渋くて甘い声で歌われると一瞬にしてロマンティックな世界に誘ってくれました。

近年、心筋梗塞、コロナで舞台を降板されるアクシデントがありましたが、紀伊國屋演劇賞個人賞、読売演劇賞優秀男優賞などを受賞され村井さんの役者としての魅力、実力をいかんなく発揮された3年間でもありました。勿論、トムの芝居にも立て続けに出演していただき芝居の質そのものをアップすることに大いに貢献、そして共演した若い俳優さんにも計り知れない刺激を与えてくれました。

村井さんの愛の歌を聴きながら思ったことは、このステージ本人の78年間に体験し感じた愛のメモリーだと思いました。様々な歌に思いを託し人前で歌うなんてなんと幸せなこと。そしてこの日集まったお客さんも、村井さんの歌を通してそれぞれの愛の思い出を今一度甦らせる一日となったことでしょう。

この日も奥様である音無美紀子さん、娘さんの村井麻友美さんが一生懸命にお手伝いなさっていました。國夫さんがこうやって元気でいられるのも家族の愛があってのことですね。

こんな愛に包まれ守られてる國夫さん、貴男が一番の幸せもんですたい。

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愛を歌う

2022/11/11
【第1684回】

今日も穏やかな一日になりそうです。都内の木々も秋色に染まりつつありますが本番はまだ先になりそうです。しかし、この時期の楽しみは日々変化していく木々の移ろいに、自然と目を奪われる時間を持てる喜びです。なんだかんだ言っても、今日も朝ご飯を頂き、清々しい音をバックに珈琲を味わい平穏な日常を持ち得ることに唯々感謝です。今この時にもウクライナでは、ロシアによる無法な侵略によって多くの命が失われています。世界の各地では自然災害も含め飢饉、飢餓の情報が流れない日がないくらいの危機的状態。

なのに、日本ではなんとも能天気な政治状況が続いています。瀬戸際大臣の更迭がなんとか済んだと思いきや、今度は法務大臣のアホとか言いようのない発言「朝、死刑のはんこを押して、昼のニュースのトップになるのはそういう時だけという地味な役職だ」おいおい葉梨じゃなくノウナシだろうといいたい。東大卒の元警察官僚、こんなのばっかりが大臣やってるんだから日本が良くなるわけがありませんがな...瀬戸際大臣辞めたと思ったら今度はコロナ担当大臣に就任なんてニュースも流れこれまた開いた口が塞がりませんがな。これからコロナの第8波が予想され危ぶまれてるのにこんな人に任せてたらまたもや瀬戸際に追い込まれそうな気がしませんか皆の衆?

先日の皆既日食ショー、多くの人が空を見上げる光景がなんと美しいのだろう...なんだかこのご時世、なんとなく気持ちも落ち込みうつむき加減な人を多く見かけていただけに嬉しくなっちゃいました。次の皆既日食は2035年の9月、おいらもなんとか生き延びて椅子に腰かけてじっくり鑑賞したいもんでございます。

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染まりゆく木々

2022/11/09
【第1683回】

これもちょいといい話かな...先日、京王線新宿駅改札口から出ると数人の人が通路に散らばった硬貨を拾い集めていました。誰ぞやの財布から硬貨が散らばったのであろう...それにしてもあんなに多くの人が必死に集めてる姿を見るにつけこの社会も捨てたもんじゃないとほっこりいたしました。と、おいらの足元にもなんと1円玉が転がっているではないか。早速拾って傍の女性に渡すと「私ではありません。落とした方...あれ、もう行っちゃいましたね。」あちゃ!手に取った1円玉どうすりゃいいんだと思案くれてたすぐ隣には、いつものホームレスのおっちゃんが投げ銭の器を置いて座っているではないか。その日はなんと立派なヘッドホンを耳にして身体を揺らしながらの待ち受け体制。おいらが手にした1円を器にチャリンと入れたいところだが、このおっちゃんなかなか威厳のある顔立ちしてるのでチャリンと同時に「こら、俺のこと馬鹿にしてるんか...1円で何買えるん?」と言わないまでも、そんな顔されそうなので止めました。仕方なく行き場を失った1円玉はとりあえずおいらのポッケに入れました。こんなことも考えました...交番に届けたらおまわりさんどんな対処をしてくれるんだろう?対面では失礼な言葉は返ってこないにしても内心「この人、少し頭変ちゃう...」と思われること間違いないでしょうね。

一番ちっちゃい1円玉からもいろんなドラマが生まれるんですね。まさしく街は激情、いつどこで何が起きるか分かりませんがな。ちなみにこの1円玉はコンビニで買い物した時、寄付金箱にチャリンと言いたいところだが、軽いので「お邪魔します」なんて感じで落ちていきました。1円玉のちょいとした旅日記でございました。

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皆既月食2022

2022/11/07
【第1682回】

先週は2本の芝居を観劇。1本目は文学座の「欲望という名の電車」、随分と昔に杉村春子、北村和夫、出演の芝居を観た記憶があります。この作品は文学座の財産ともいうべき芝居です。今回は出演者もがらりと変え今の劇団を支える人たちが奮闘していました。主人公のブランチが登場と共に口にする台詞「欲望と言う名の電車に乗って、墓場と言う名の電車に乗り換えて、六つ目の角で降りるように言われたのだけど...極楽というところで!」ニューオリンズの多人種が暮らす街の匂いがこの芝居の大きなポイントだと思います。1951年にエリア・カザン監督、ヴィヴィアン・リー、マーロンブランド主演で観た映画の印象があまりにも強力すぎて...なんともいえない色気と暴力性、そして滅び行く美学、こんな空気をどこまで出せるか?日本人が手がけるときの大きな課題だと思います。

2本目は小松台東という劇団が上演した「左手と右手」、主宰者が宮崎の出身ということもあり宮崎のある町を舞台にした物語です。どこにでもある物静かな日常が描かれる中に、言葉にならない感情が渦巻いて終末に暴発してしまう...何気ない日常を描くことほど難しいものはありません。普通に感じさせる表現ができた時が役者の芸としての到達点と言えるかもしれません。この劇団が目指しているところはそのあたりなのかな...

この息苦しい、なかなか出口が見えない世界、演劇の世界もこれに同調してる気配も感じます。そんな気分変えさせてくれるのがお祭りですね。今年も新宿恒例の花園神社の酉の市、商売繁盛、家内安全の熊手が飛ぶように売れてました。「福をかっこむ」といわれる縁起熊手の商いが成立すると、威勢の良い手締めの掛け声と拍手が境内に響き、なんだかおいらもおすそ分けしてもらった気分になっちゃいました。

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御手を拝借

2022/11/04
【第1681回】

昨日、文化の日はグラシアス小林の作品を池袋東京芸術劇場シアターウエストで観てきました。タイトルは「CARONTE」カロンテとは、ギリシャ神話に登場する冥界の渡し守のこと。作品の冒頭から千手観音らしき手の表現でたっぷりと見せながらフラメンコの踊りに持っていく前半。後半は地獄の亡者を登場させトスカ、女神ペルセポーナの舞を中心にバッハの受難曲の生演奏と共に、人間の持つ悲しみや痛み、欲望、希望そして愛を展開。

彼と会って45年、事あるたびにいろんな話をしたつもりであったのだが、こんなことを思考し表現したかったとは、ちょいとふいをつかれた感じがしました。しかし考えてみれば30年ものスペインに滞在し、自分のアイデンティティは日本人であり東北山形で育ったことから発する表現に拘ってたことは確かです。彼にとってフラメンコとは表現することのひとつの手段であって、彼が74年間生きて感じたことをアートにしたかったのでは...

それにしても74歳でフラメンコを踊るってことは大変なことでございます。いくつもの大病を乗り越え、こうやって舞台の立ち姿を観てるだけで感慨深いものがありました。

昨年はトム・プロジェクトの作品に俳優として出演してなかなかの評判でした。45年前スペインの地で二人して日々シナリオ創りに四苦八苦して「今日はこれでおしまい!」と投げ出しワインを浴びるほど飲んだあの日が懐かしい...夢であった映画は実現しなかったけど、こうやってともに舞台を創ってるんですから幸せもんですばい。

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都内も色づいてきました

2022/11/02
【第1680回】

ちょいといい話...先日無事公演を終えた「風を打つ」の出演者の一人いわいのふ健君から丁寧でお洒落な封筒で手紙が届きました。長い旅公演の感想とお礼の手紙でした。最後に追伸として、実は2日前に手紙を書いておりポケットに入れて郵便局へと向かう途中に落としてしまいこの手紙は2回目に書いた手紙であるとのこと。もし心優しい方が拾って下さり送ってくれたら手紙が重複してしまうかも...と記されていました。

なんとなんと心優しい方からその手紙が届きました。封筒の裏にこんなことが書いてありました。

 

こんにちは。通りがかりの者です。10月24日品川区後地に通りがかったときにかなり離れた私の前の自転車に乗った方のポケットから、この封筒が落ちました。懸命に追いかけたのですが、猛スピードについて行けず見失ってしまいました。切手は貼られていませんが多分、岡田様に届けられるはずのお手紙じゃないかと思いますので投函します。

 

なんと、この方が自腹で切手を貼っておいらのところに無事届きました。封筒だったので21円不足の通知の葉書も添付されてました。(勿論、この方の善意のバトンタッチを受け継ぎ21円切手を貼って投函しました)鉛筆で丁寧に書かれた文字と、62円と1円の切手を貼ったこの方がどんな方か?おいらいろいろと想像しちゃいました...男性?女性?年齢は?そんな思いを抱きながらおいらの心はポッカポッカになってきました。いやいや、久しぶりに人が人を思いやる温かい交流を手にした一日でございました。

こんな思いを誰しもが持って抱いていれば世界で争いなんか起こらないのにね...

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秋の薄暮

2022/10/31
【第1679回】

今年のプロ野球、セパ両リーグの息詰まる大熱戦で無事終了いたしました。昨日の試合も勢いに乗るオリックスのワンサイドで終わると思いきや、なんと8回の裏にヤクルトが1点差まで詰め寄る試合展開。こんな試合をされると今まで野球に興味が無かった人まで野球ファンになっちゃうんじゃないかしら...この両チーム、監督そしてコーチ陣が素晴らしい。この一、二年で今まで見なかった若手の選手を登場させ活躍させるんですから、指導だけではなく人としての教育もきっちりやってるんだろうなと思います。特にオリックスの中嶋監督、地味だけど地に足がついた采配が光ります。試合の後半に出てくるリリーフ投手陣の投げっぷりが観ていて気持ちがいい。しかもイケメンと来てるから、女性ファンが増えるに違いない。それに反してヤクルトのリリーフ陣は、吉本のお笑い芸人さんとか庶民的な演歌歌手のそっくりさんが出てくるのでなんともほんわかしちゃいます。今回の日本シリーズはいろんな楽しさ満載の7試合でした。

この7連戦でおいらが印象に残った選手は、オリックスの宇田川優希投手、2020年のドラフト育成3位で入団、今年7月に支配下選手となり9月の西武戦でデビューしたばかりの選手である。今回の選手権、ヤクルト選手を完璧に抑えあっぱれである。しかも年棒は450万円ときたもんだからたいしたもんでございます

一方、ヤクルトでは丸山和郁外野手、2021年ドラフト2位で入団した新人選手、巧みなバッティングコントロールで広角に安打を放ち50メートル5.8秒の俊足。青木選手の後釜が出て来たなと思った次第です。

この両チームを観ながら、我がライオンズ来シーズンは大丈夫かいなと正直不安が過りました。松井監督以下コーチ陣に期待するしかありませんな...それにしても来年こそ日本シリーズで戦う獅子を観たいもんでございます。燕と牛ちゃんに負けちゃいられませんぞ!

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先週末のスカイツリー

2022/10/28
【第1678回】

おいらが大好きな作家のひとり安西水丸さんの本が久しぶりに出版されたので早速購入しました。「一本の水平線」、本の帯には...いずれにしても、ぼくの心の中にはいつも絵がある。それが心の支えだなどというのもちょっと気恥ずかしいけれど、口に出しては言えないけれど、きっとそれが支えだろう。

決してうまい絵だとは思わないけど、水丸さんの優しい感性が鮮やかな色づかいとともに遊び心で満たされている。何気なく心の印象風景を構えずに自由なタッチで描かれているので、こちらの気持ちも思わずなごんでしまう。疲れた時に手を伸ばし眺めるにはもってこいの本である。亡くなる2年ほど前に、渋谷のシアターコクーンで見かけたのだが飄々とした佇まいは水丸さんの絵と文章そのものでありました。

この本の中の文と絵をふたつ

 

こんな風に生きたいと思っていることがある。

絶景ではなく、車窓の風景のような人間でいたいということだ。

 

人間は、どのように生きるかよりも、これだけはしたくない

というものを持って生きる方が格好いいですね。

 

さりげなく生きたいと思ってはいるもののこれがなかなか難しい...このさりげなさの本質を思考させてくれるヒントがさりげなく描かれているのが安西水丸の世界。秋の夜長に静かな音でも聴きながら手にするのにはピッタリの本でございます。

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さりげなく

2022/10/26
【第1677回】

久しぶりの青空、やはり心身共々晴れ晴れとしますね。道行く人も、公園でランチしてる人の表情も、昨日の寒さで縮こまった様子とは一変しておりました。これも昨日の寒さがあるから感じられることで物事全て表裏一体でございます。

公園で飛び跳ねる子どもたちを見ながら、ふとこの子どもたちに明るい未来は訪れるのか?とても心配しちゃいます。今年のロシアのウクライナ侵略に始まり、度重なる北朝鮮のミサイル発射、そして先日に決定された中国の習近平による一党独裁、島国日本の周囲にはきな臭い匂いがプンプン。間違って核でも打ち込まれれば、この国は一瞬にしてなくなってしまいます。今国会では防衛も含めていろんな議論がなされていますが、開会そうそう瀬戸際大臣が辞職、あんな人がいけしゃあしゃあと政治家やってるんですから開いた口が塞がりません。国の発展も止まったまま、なのに何の手も打てない政治の貧弱さ、何度やっても自民党の圧勝続き。おいらほぼ政治には期待しておりまっせん!ならば、この子供たちに何を残すために何をせねばならないのか...やはり一番大切なのは自立心を育むことです。今までの日本のシステムに添ったしつけ教育ではまったくもって駄目でございます。

何をやりたいか、それには好きなことに夢中になれる環境を作ってあげることが大切ですね。夢中この言葉がすべてです。夢を持っている限り人間には無限のチカラが沸々と沸き上がってきます。生きることに己が楽しくなければ他人も楽しくさせてあげられないのは自明の理でございます。

そんなことのたまわってる貴方、政治家なりゃいいじゃん!なんてこともよく言われますが、信じられないあの烏合の衆のなかに入っていったとたんおいら死んでしまいますがな...

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My Blue Heaven

2022/10/24
【第1676回】

これぞプロ野球...今年の日本シリーズもワクワクドキドキ満載シリーズでスタートしました。さすがセリーグ、パリーグを代表するチーム、クライマックスシリーズなんかやる必要なかったんじゃないのかな。このシステム、おいらいまだに納得できません。1年間必死こいて戦った日々は一体全体何だったんだろうなと思ちゃいます。1位になったのにリーグの代表として日本選手権に出場できないなんてこともあるんですからなんとも不可解であり、プロ野球機構の金儲け主義が透けて見えてきます...でも中には二度楽しめるなんて人もいるのも確かなのでおいらが頑張っても仕方がありませんことよ。

昨日の試合、9回表までオリックスが3対0で勝っていたのに、ヤクルトは9回裏、無死1、2塁から代打・内山壮真(高卒2年目20歳)が起死回生の3ランで同点。ホンマに野球は下駄をはくまでわかりませんな。まさかですよ、ひよっこみたいな選手にレフトスタンドに高々に運ばれるなんて、ほとんどの人が思いもしないことが起こるんですからね。延長戦に入っても一進一退、5時間過ぎに及ぶ熱戦の末引き分け。選手も大変だけど観客も大変ですな。終電に間に合うかしら?なんて心配しちゃいます。でも、こんな試合をしてるんだったらどちらのファンも大満足に違いありません。

来年こそは我がライオンズ、この時期にグランドに立ってプレーしていただきたいものです。頑張れがんばれライオンズ!

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仲良しコガモ

2022/10/21
【第1675回】

昨日、東京福岡県人会の懇親会に初めて出席しました。きっかけは先月上演した「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」の公演を知った方からの一本の電話です。見ず知らずの人ながら同郷であることだけでチラシの配布の手配、福岡県出身の方々をたくさん紹介して頂きました。昨日の懇親会の会場でも「芝居良かったよ!」と数人の方々からお褒めの言葉を頂きました。中に、今回出演した藤吉久美子さんの家庭教師をやったという方も居ました。それにしても福岡県人は明るくて元気よかですばい!よく飲み、よく食べ、よく喋る、こりゃおいらが住んでたスペインアンダルシアの人達と同じじゃん。そうです、福岡県人はラテン系のジャンルに属します。一方、ノリはいいんだが冷めるのも早い。芸能人もたくさん輩出してるんだが、いまだ博多にちゃんとした芝居小屋がないのも分かるような気がします。じっくり若い人たちを育てようなんて気がないのかな?お祭り気質なんで、わっしょいわっしょいとお祭り気分で騒いだ後は、それで終わりでございます。切り替えが早いと言えば聞こえはいいのだが、やはりコツコツと地ならししながら後輩のために道筋をつくる作業も必要なことではないでしょうか...

昨日の懇親会の会場である赤坂有薫は1985年開業で37年の歴史を持つお店だ。玄界灘を中心とした魚や、熊本の馬刺し、大長なすびなど、九州料理のテンコ盛り。郷土料理と郷土の尽きない話で、ついつい酒も進んでしまいいつもより早く酩酊気分になっちゃうのでご用心。

このところ秋晴れが続いています。散歩もよし、秋の夜長の読書もよし、勿論食欲の秋、五感が喜ぶアクションを一つでも起こせば、疲れた心身も緩んで、心晴れになりまっせ!

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どんぐり会議

2022/10/19
【第1674回】

遂に完走!9月2日からスタートした東北、中部・北陸ブロック演劇鑑賞会「風を打つ」の39ステージ。昨日、富山県となみ演劇鑑賞会で無事、大千秋楽を迎えることが出来ました。キャスト、スタッフの皆さん、そして呼んで頂いた演劇鑑賞会の皆様のおかげで、コロナをはじめあらゆる困難をはね除け上演できたこと本当に嬉しいの一言です。公演中、現場から電話が掛かる度に「もしやコロナ感染者が出たのでは...」ヒヤヒヤドキドキの日々でありました。勿論、旅の途上での皆それぞれが「自分が感染したら...」なんて不安を抱えながらの道中は厳しいものがあったと思います。感染した時点で公演中止になるんですから、そりゃ相当のプレッシャー、それを乗り越えての千秋楽。この公演にかかわったすべての人が感じた感無量の千秋楽の瞬間であったに違いない。芝居の神さんはちゃんとお見通しでございます。こんな素敵な芝居は多くの人達に観てもらわんといかんですばい!実はそんな神さんの声が聞こえ無事完走できるとは信じてはいたんですが...なにが起こっても不思議ではない今の世の中そりゃ心配しますがな。

それにしても今回の「風を打つ」どの会場でも大好評でございました。キャストのチームワークの良さ、スタッフの厳しい条件の中での踏ん張りが、より密度の濃い芝居を生み出したと思います。

さて、次なるものは?芝居創りには終わりがありません。来年、そして再来年、高い頂上を目指して一歩、また一歩、困難な山道を踏みしめる登山者と同じかも知れませんね...

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彩られ色づく秋

2022/10/17
【第1673回】

今日の東京は曇り空で時折小雨が降ってます。街行く人もやがて来る冬の季節に備えての服装が目立ちます。本来であれば、秋に相応しいファッションで目の保養をしたいところですが、なんともこの気候変動で季節の楽しみが奪われつつあります。

週末の吉祥寺はちょっとしたバザールでにぎわってました。傷んだ服無料で修理しますというお店があったので覗いたらパタゴニアでした。パタゴニアの目的「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」をキャッチフレーズに展開している会社です。これからはただ利益を追求するだけの会社は消費者に受け入れられないんじゃないかしら?この不確実極まりない時代に何らかの付加価値をつけないと生き残れないと思います。

それにして諸々の値上げラッシュには悲鳴を上げています。以前までは美味しくて安くコロナ対策万全の行きつけの焼き鳥店もとうとう値上げしちゃいました。お客は敏感なんですね、開店早々席が埋まってた頃に比べて客足が鈍くなったのではと心配しちゃいます。店を出ると、すぐ近くにある破格の値段で勝負しているお店にはたくさんの客で埋まってました。給料は上がらないのに物価、外食の値段が上がるとなると、そりゃ庶民の財布の紐が堅くなるのは当然です。街にはたくさんのコーヒ店があるのだが、ここが閉店に追い込まれると世の中かなりやばい状態だと思います。昔からコーヒ店は、安らぎ、交流の場であり、淹れたてのコーヒーを味わいながら唯一緩んでいられる憩いの場であるからです。

どんなに苦境に陥いっても、心身の片隅に余裕のココロが失せないよう日々チェックしたいもんでございます。

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秋の井の頭公園

2022/10/13
【第1672回】

連日にわたるプーチンのウクライナに対する無差別ミサイル攻撃は、嘗て第二次世界大戦でナチスドイツがスペインバスク地方にあるゲルニカの村を攻撃したことを彷彿させる出来事だ。おいらも45年前にこの村を訪れたのだが、村の一角には、ピカソによる絵画『ゲルニカ』と同寸のレプリカが飾られていました。バスクでとれた新鮮な魚介を村の食堂で食した記憶があります。この静かな村にいきなり無差別に爆弾が投下された光景はピカソが描いた絵の如く阿鼻叫喚の様であったと思います。テレビで流れるウクライナの状況を見るにつけプーチンの残虐性にただただ怒りを覚えます。そして又、このあとのロシアの国が苦難の道を歩まねばならないとするならば、ロシアの民衆が反戦の大きな声をあげなければと思うのだが、これも命懸けの行為です。要するに世界の安定を保つためには、独裁者を生み出さない土壌を日頃その土地で暮らす人達が養うしかありません。

20代の頃に読んだ夏目漱石の「こころ」を再読。若い頃に読んだ印象と、この年齢この時代の読後感はさすがに違いましたね。当たり前のことですが、己の人生経験と作者が描いた世界とのバトルを堪能させていただきました。それにしても漱石はさすがです。登場人物の心理描写、話の展開、ミステリアスな味付け、文学でありながらエンターテインメントの要素を盛り込みながら今なお燦然と輝く文学者でございます。

今日も肌寒い一日、新宿にもぼちぼちながら海外からの旅行者がマスクしないで散策しておりました。これからが冬本番、インフルエンザとコロナでまたまたてんやわんやの大騒ぎにならぬことを祈るのみでございます。

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雨に濡れるアンネのバラ

2022/10/11
【第1671回】

今年のライオンズの試合終了しました。昨年の最下位から今年は3位ですからなかなかよくやったというべきでしょうね。辻監督も今年で退任、6年間でリーグ優勝2回、Aクラス5度なんですから名監督であったと思います。いろいろ言われますが、気さくで明るい自由奔放なチームを形成し皆のびのびと野球を楽しんでいました。管理野球が野球をつまらなくした過去があるんで、このスタイルこそが本来のライオンズのチームカラーです。

それにしてもパリーグ・クライマックスシリーズ・ファーストステージ、ソフトバンクとの2試合、同じ選手に決定的なホームランを2度打たれるシーンを見ながら、森捕手のリードを疑いました。前日打たれたコースと同じところに投げさすんですからあちゃ~、森の野球センスはバッターとしては認めますがキャッチャーとしてはいかがなものかと改めて感じた次第です。FAの権利を取得したので他のチームに移籍する可能性十分にあります。セカンドを守っていた外崎然り、この権利は選手として長いことプレーしてきた選手の権利ですから他人がとやかく言うものではございません。他のチームの契約条件がよければどうぞ!ライオンズはあまりお金がないので、他のチームに比べても流出が多いチームですが、次から次に若い選手が出現する楽しみなチームです。おいらはこちら方が好きだな...ぐだぐだ言うなら、お金が欲しけりゃ、他のチームで頑張ってくださいな。今でも楽天に移籍したA選手、登場するたびにむにゅむにゅしますがな。

ロシアのウクライナへの報復ミサイル攻撃。プーチンの狂気の沙汰がますますエスカレートしてるみたいで無気味でございます。なにもできないけど、ただひたすら平和を願う気持ちだけは持ち続けたい!この願いの数がこの現況を変えてくれるに違いない...

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秋バラ
(花言葉~情熱)

2022/10/07
【第1670回】

昨日は久しぶりに銀座に行きました。日比谷にあるシアタークリエでの公演「アルキメデスの大戦」を観劇。映画にもなった作品で、舞台にするのはちょいと難しいのでは?と思ったんですが、そこは歴史物、特に第二次世界大戦にまつわる作品を数多く上演してきた劇団チョコレートケーキの作・古川健、演出・日澤雄介コンビが上手くまとめておりました。舞台は台詞が命、若い役者さんたちが想像力を駆使して懸命に表現しておりました。惜しいかなヒロインの女優さんがまだまだ舞台でお金取れるレベルではございませんでした。

この手の芝居でいつも感じることは、客層の90%以上が女性であること。そのお客様のほとんどが一部の男優さんの追っかけであること。おいらは前から7列真ん中の席だったんですが、両脇の女性客二人とも、お目当ての男優が登場するとオペラグラスをしっかりと手にして観劇しとりました。そんなことしなくてもハッキリ、クッキリと男前のお顔拝顔できるのにと思うのだが、そこはファン心理でござりまする。おいらがとやかく言うべきことではございませんが...でも、追っかけさんであっても、この芝居を観終わって平和の有難さ、戦争に対する不条理を今一度考えるきっかけになればいいなと思いました。更に言うならば、芝居の面白さにはまり、小劇場も含めて様々なジャンルの芝居に足を運んでいただければいうことなしでございます。

いやいや、急にブルブル寒い季節になっちゃいました。そのうちに春と秋がなくなるんじゃないかしら...春と秋があっての夏と冬。世相の味気なさと季節の移り変わりがなんだか似通ってきた嫌な予感がいたします今日この頃。

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秋の風物詩

2022/10/05
【第1669回】

新宿西口の象徴的な存在であった小田急百貨店新宿店本館が10月2日、55年にわたる現館での営業を終了しました。おいらは22歳の頃、百貨店というよりすぐ近くの思い出横丁(その当時はしょんべん横丁)を徘徊し安酒飲んだり、地下の西口広場の反戦フォーク集会を覗いたり、百貨店前で詩集を売ってた人と仲良くなったりと、この建物を軸にして行動してました。ちょいとお金が入ると、めったに買わないお洒落な衣服を購入した記憶もございます。貧乏青年にとって百貨店なんぞは高嶺の花、でも何事も感性をアップするためには高級な品々を見て廻ることも大切なことでした。なかでも海外の家具、照明器具、日本の伝統工芸品をじっくりと眺める時間は贅沢なひとときでもありました。この雄大な建物、大規模再開発に伴って解体されることになり、2029年度をめどに地上48階建ての超高層ビルになるそうです。東京の街の変貌はすさまじいほどのスピードで進んでいます。別に昔を懐かしんでいるわけではないのだが、おしなべて無機質な街になってることは確かだし、おいらとしては寂しい気がします。あの猥雑でエネルギッシュな街の佇まいから時代を変える文化が誕生していった経緯を体験しただけに尚更です。

あのサイドと後ろを刈り上げたオッサン、ついに日本上空に長距離ロケット砲を飛ばしました。このオッサンとプーチンには困ったもんでございます。まさか核攻撃?でも一寸先は闇、日本にも召集令状なんて時代くるかも...この世紀、何が起きても不思議でなくなった様相を呈しています。ゴシゴシ自分磨きをしないと大変なことになっちまいますぜ皆の衆。

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おつかれさまでした

2022/10/03
【第1668回】

久しぶりの舞踏、堪能いたしました。10月1日に行われた「天狼星堂舞踏公演10月~つづれ織り~」中野のテルプシコール。この小屋はおいらが20代の頃、演劇群走狗の打ち合わせで通ったところです。その後、舞踏の聖地として数々のダンサーがこの地で修練を重ねてきました。この舞踏においらが出逢ったのも20代です。今は亡き土方巽の公演ですっかりはまってしまいました。これこそあらゆる踊りの中で日本人が勝負できる表現だと確信しました。蟹股、重心を低くして空間を模索していく様は、まさしく宇宙であり肉体が氾濫しながら哲学の世界に誘っていく感覚がたまらなく愛おしくなった記憶があります。

早速、当時目黒にあった土方さんが主宰するアスベスト館に遊びに行きました。類まれなる天才、土方巽の一挙手一投足をつぶさに鑑賞させていただきました。このカリスマ性は誰も真似ができないほどの一世一代の話術、肉体表現でした。でもなぜかおいらはこの門を叩こうとは思いませんでした...そりゃそうだ生来の気質、組織の群れの一員になるのが嫌だったんですね。しかし土方さんから受けた影響は、おいらがスペインでの大道芸で稼ぐ日々の大きな財産になりました。45年前、白塗りに着流しふんどし姿で舞い踊る姿を異国の人たちは驚きの表情で観ておりました。お陰で1時間の踊りで1週間充分に生活出来る投げ銭を頂きました。その後、当然の如く舞踏は世界の舞踏へと拡大していきました。

この日の天狼星堂の主宰者である大森政秀さんとも長い付き合いです。彼特有の身のこなしはなんぞや?彼の出自、生まれ育った北海道三笠市で少年期、アンモナイト採集の日々に夢中になった少年を手繰り寄せる舞でもあり、いまだ正解のないこの世の不条理に心身を投げ出し模索する佇まいにも視えました。言葉がないだけに観る側の想像力を無尽蔵に掻き立ててくれます。4人のお弟子さんもなかなか個性的で素敵でした。なかでもワタルさん、大倉摩矢子さんまた拝見したいなと思いました。

この世の中、まだまだおもろい代物がたくさんありまっせ!ぼけっとしとったら損しますがな。

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摩訶不思議な世界

2022/09/28
【第1667回】

昨日はどのメディア見ても国葬の話題で持ちきりでした。国民の意見を分断してまで実施する必要があるのだろうか?多数の人がそう思っているのでは...反対する人のデモの様子を見ながら、これがロシアであれば即拘束、拷問、挙句の果ては戦地に兵として送られる羽目になるのではと思うと、つくづく自由の有難さを感じます。政治の世界は魑魅魍魎、何かを企画し行動にすること自体何らかの戦略があってのことだと思います。どんな人の死も平等、安らかに永眠されますよう、心よりお祈り申し上げますという気持ちであれば十分だと感じます。

まだまだ暑さは残ってますが、吹く風は秋の気配を感じます。コロナもなんとか数は減ってはいるもののまだ油断はなりません。芝居を抱えながらの日々、しばしリラックスするには酒と音楽と読書かな...最近、音楽では従来のジャズに加えクラシック音楽で心身をリフレッシュしています。ここのところ気にいってるのがバイオリストのアルテュール・グリューミオ―。ベルギー生まれで1986年に65歳で亡くなっている。彼のヴァイオリンの艶やかな音色と、瑞々しいまでの抒情性が心身を癒してくれる。そしてクラシック特有の気高い品格が豊かな気分にさせてくれる。

これからの秋の夜長の過ごし方次第で、この鬱としい気分払拭することが出来ますことよ。

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フィンランドのマリメッコ

2022/09/26
【第1666回】

昨日、無事に「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」千秋楽を迎えることが出来ました。あの昔の時代の話がどう観客に映るのかプロデューサーとしては、とても気になるところですが、ニンゲンの生き方なんぞは基本的にはそうそう変わるもんじゃないし、人の琴線に触れるところは普遍的なものだと思って創ってるんで心配はしてませんでしたが。

演劇評論家の方々もこんなことを書いてくれてました。

 

貧しいがたくましくまっすぐに生きていた時代への追憶の芝居。それはノスタルジーではない。それこそが人間本来の生活ではないか。74歳のたかお鷹が少年に見えてくるのだから、舞台は想像力だ。長屋のおばちゃん役の藤吉久美子が呆れるほど上手い。清純派がこんな泥臭いおばちゃんを。それが見事にはまった演技。演技とはこれを言う。作品の要となる娼婦の森川由樹がまた素晴らしい。少年の憧れを受け止める。女の悲しみを内包する。斉藤、清水もそれぞれ役を生きている。子役の涌澤昊生も元気でいい。舞台のアンサンブルが見事。役者全部がいいという舞台はめったにあるもんじゃない。今回の舞台はまるで奇跡をみているよう。全員、底抜けに明るいのがいいのだ。明るいからこそ悲しみが際立つ。後半から涙止まらず...

 

人はいつの時代になっても、生きるうえになにが大切かを模索しながら日々を過ごしている。この芝居がすこしでもそのためのヒントになり得たら、芝居屋にとっては嬉しい限りだ。

この困難な時代だからこそ、よか芝居創らんといかんですばい!

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ホソバヒャクニチソウ
(花言葉 友への想い)

2022/09/22
【第1665回】

昨日、「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ラインズ」俳優座劇場で無事初日を迎えることが出来ました。改めてこの作品、よか芝居と思った次第です。あの時代の匂いが舞台上から観客に伝わっていくさまが良くわかります。この芝居のテーマでもある匂い、そうなんですね、いまやこの国にとどまらず先進国といわれている国々はほぼ無味無臭のつまらん国になってしまいました。人間が醸し出す匂いが感じられなくなった途端に、自己中心の思考に陥り、生きる上で一番大切な優しさそのものが疎遠になっていき、人が人を思いやる感情が希薄になっていくのは自明の理。拝金主義、物欲に走り、果ては小さなもめごとから始まり、挙句の果ては戦争へ突き進むお決まりのコースでございます。

匂い、体温、この身近な感覚を失わないことが家族、街、国家、そして地球を守る大前提であることを、この芝居が教えてくれてる気さえします。決して高邁な思想を語らなくともごく身近な市井の人達から学ぶことの方が多いのではないか...

今回の芝居、少ないステージですが、こんな時代だからこそ是非見て欲しいと強く思った昨日の初日でございました。

前回、お知らせした台風で中止になった「風を打つ」ちた半島演劇鑑賞会での公演、いろんな方の尽力で振替公演ができることになりました。

まだまだ演劇の神さん健在でございます。

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雨あがる

2022/09/20
【第1664回】

いやいや、台風には敵いませんわ...今回の台風で、風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」広島県福山市の公演が早々と中止決定。昨日は、「風を打つ」愛知県中部ブロックちた半島演劇鑑賞会での公演、劇場にセットを建てこみ、さあこれからと言うときに行政からの台風による閉館指示が出され中止。芝居もやらないままセットのバラシはつらいものがあります。俳優陣も気が抜けちゃったんじゃないかしら...でも、何事も安全第一、芝居終演後に帰宅困難なんてなったらそれこそ一大事でございます。コロナに台風、ナマものである芝居、予測できない困難との闘いでもあります。

明日からは「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」が始まります。稽古を観に行ったのですが、なかなかいい仕上がりになっていました。登場人物5人が皆、昭和30年前後に生きていた人物になりきっているところが素晴らしい。あの時代の匂いを知っているのは、今回キヨシ少年を演じるたかお鷹さんだけなのに、あの日あの時の博多・末広長屋が甦ってくる感じがするんだから不思議なもんでございます。

埼玉のライオンズの方は、昨日の敗戦で終戦でございます。よりによってライオンズの選手を4人もかっさらい、第二ライオンズとも言われている楽天イーグルスに本拠地で3連敗するんですから開いた口が塞がりません。通算7連敗じゃ今年は5位かな?おいらも途中からテレビ止めちゃいました。要するに実力不足、チームとしての層の薄さを感じます。冷静になれば当然のことかもしれません。昨日のソフトバンクとオリックスの試合なんぞはワクワク、ドキドキの展開。これぞプロの試合でございます...はや、来期のライオンズに期待したいところだが...おいらは明日からの劇場の西鉄ライオンズのことで頭一杯でございます。

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久し振りの井の頭公園

2022/09/16
【第1663回】

おいらは万年筆大好きな人の一人だ。長年愛用していたモンブランの万年筆、インク漏れが始まったので、いつものように新宿伊勢丹のモンブラン専門店に修理依頼を相談に行ったところ、最低¥13500~¥36500の修理費がかかるとのこと、しかも修理に出すと、修理しなくとも¥6500がかかるってんだからなんとも腑に落ちない感じがいたしました。早速、ネットで調べたら文京区に川窪万年筆店が見つかり早速出かけることにしました。下町風情にある民家に店を構えた古いお店でした。最初は失礼ながら大丈夫かいな?と思ったのだが、万年筆を差し出すとさすがに三代続く万年筆職人。「15分あれば直せます!」ここでおいらもホンマかいな?とまたまた不安になったんですが、言葉通りに完璧に修理してくれました。しかもお値段が¥4950なんですからありがたやありがたやでございます。そりゃそうだ、昭和元年に初代・川窪長七(現三代目:川窪克実の祖父)が早稲田界隈の小さな店で、主として学生・大学教授様向けに万年筆を製造して販売。その後小石川林町(現店舗の文京区・千石)に移転し、同じ町内の菊池寛、宇野千代、川端康成、E.サイデンステッカーの愛用品の修理・調整を手掛け、二代目:川窪一夫(パイロット大型蒔絵万年筆の開発に携わる)、そして三代目:川窪克実と確かな万年筆全般に関する技術の継承が行われ、現在に至る名店だったわけである。

大都会東京には、これに類する職人芸を伝える名店が、今尚存続してるのがとても嬉しい。

一昨日、東京亀戸文化センター・カメリアホールで公演した風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」いやいや大変な盛り上がりで充実した一日でした。演者と観客が一体になることによって、至福の時間を持ちえることを改めて実感した次第でございます。

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愛をささやいてるのかな?

2022/09/14
【第1662回】

生きていくなかで、誰しも何度か拘りについて自問自答したことがあるかと思います。先日、早稲田にあるジャズ喫茶「ジャズナッティ」に行ってきました。早稲田大学のすぐ近くにある2008年にオープンした店です。先ずは玄関先に「ミュージシャンの魂を聴きとれ!」という看板に、おいら緊張してしまいました。その看板に一礼して店内に入るとお客は誰も居ませんでした。いやいや、襟を正して、背筋をシャキッと伸ばしてジャズミュージシャンのほとばしる魂の叫びに耳を傾けないと店主に怒られないかとヒヤヒヤもんでした。しかし、注文取りに来た店主は穏やかな紳士でここはひとまず安心。店内に入った時はCDが流れていたんですが、おいらの佇まいで判断したのかどうかも分からんのだが、早速レコードを取り出しアートファーマーの名盤「ポートレイト・オブ・アート・ファーマー」に針を落としてくれました。おいら特別にアートファーマーに思い入れはないんですが、やはりジャズ喫茶に来たならばレコードを聴きたいのが本音です。CDでお茶を濁してるお店はちょいと手抜きしてるんじゃないかしら?いやいや、お店にしてみれば繁盛もしてないのに、演奏時間が短いレコードの盤面を変える手間暇はありまっせん!と叱られるのは承知の上で申しているのですが、やはりジャズ喫茶の存在意義はレコード盤を聴けるということです。目を閉じ、巨大なスピーカーから流れる音を一音一音聞き漏らすことなく聴いてるうちに、緊張のあまりおしっこ漏らしそうになりトイレに行った次第です。

一時間ほどしたら一人の客が入店。おいらもなんだかほっとして帰れる気分になりました。

この店の拘りに魅せられ14年続いているんでしょうね...おいらも20代の頃、毎日のように新宿のジャズ喫茶DIGに通っておりました。老いたらジャズ喫茶やる計画だったんだが...人生なんて所詮、ケセラセラでございます。

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マイルスも感染予防中

2022/09/12
【第1661回】

先週の土曜日の中秋の名月は見事でございました。いつの世も、生きとし生けるものたちは夜空に浮かぶ月の変化を感じながら、その日一日の出来事を月に向かってなんとなく報告している感さえします。雲に隠れた日なんぞは、なんとなくその日のケジメがつかないモヤモヤ気分が残ってしまいます。昔、スペインアンダルシアのコスタ・デ・ソル(太陽の海岸)のすぐ傍に住んでた時には、満月なると浜辺で着流しの着物を着て踊りながら月に吠えておりましたおいらでございます。スペインの月は何故か人を狂わせる不気味な表情をしていました。

現在、東北ブロックの演劇鑑賞会で上演している「風を打つ」今日の仙台公演を含め10ステージ無事終えることが出来ました。どの会場でも評判がよく嬉しい限りです。風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」も昨日、北海道公演3ステージ、山形県の川西町を含め4ステージ、こちらも、どの会場も笑いが絶えない雰囲気だったと聞いております。「風を打つ」は残り29ステージ、「帰ってきたカラオケマン」は3ステージ、なんとなくコロナの感染者は少なくなってはきてますが、油断は禁物です。ちょいとした隙間からコロナちゃんは遊びに来ますから気をつけなくちゃなりませんね

来週は21日から「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」が始まります。よりによって、こんな時になんで3本も芝居やるんかい?と思う方も居るとは思いますが、こんな時だからこそやるんでございます...

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十五夜

2022/09/09
【第1660回】

スメタナの連作交響詩「わが祖国」、いつ聴いても心に染み渡る...今回のアルバムは歴史上いつまでも語り継がれる名盤である。1990年の「プラハの春」音楽祭でのオープニング・コンサートで演奏されたライブ版。チョコスロヴァキアの民主化の初の音楽祭に、独裁政権に反旗を翻し西側に亡命していた巨匠ラファエル・クーベリックが42年ぶりに祖国に戻り、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したのである。この年第45回を迎えた「プラハの春」は美しい自然と多くの歴史的な建物に囲まれた古都で、毎年5月12日、つまりチェコ国民音楽の父であるスメタナの命日に開幕し、そのオープニング・コンサートには、チェコフィルがスメタナの代表作である連作交響詩「わが祖国」を演奏することが恒例になっている。第1回の音楽祭が開かれたのは1946年のことで、当時チェコ・フィルの主席指揮者であったクーベリックは、その記念すべき最初のコンサートを指揮しているから、音楽祭には実に44年ぶりの登場になったわけである。

この交響詩の中の第二章の「モルダウ(ヴァルタヴァ)」、これを何度聴いても涙がちょちょぎれ感極まる。南ボヘミアのシュマヴァ山脈に源を発し、北流してプラハを通ってエルベ河に合流するモルダウ河を描いた傑作である。この旋律が流れるたびに、自然に囲まれ自由のありがたさに感謝しながら生きていくことがなんと素敵なことかを改めて感じさせてくれる。

この曲を聴きながら、ふと、わが祖国(日本)を考えてみるのも意義あることだ。円安、日本の国力の低下、政治の体たらくなどなど...理想の未来が見えないのがこの国の現実である。

そして、寺山修司のこの句が浮かびました。

 

マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや

 

ちょいとオーバーかも知れませんが、祖国の存亡がかかってるくらいの理念、気概を今一度持たないとあきませんがな...

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野に咲く花

2022/09/07
【第1659回】

月曜日、携帯をオフィスに忘れたまま帰宅しました。電車に乗って気づいたのですが、こんな時もあるわいなと思いオフィスには戻りませんでした。なんとこれが幸いして、そのあとの19時間を新鮮なひとときで過ごすことが出来ました。仕事柄、しかもよりによって同時に3本の芝居を抱えながらのこの時に、困ったなと一瞬そんなことが過ったのだが、どうにかなるわいなと携帯なしの時間を逆に楽しんだ次第です。誰からも連絡がこないんですから、この日は自宅でゆっくりとお酒と食事を楽しんだ後、好きな音楽を聴きながら読書をいたしました。他者との連絡が取れないことは不便に見えますが、心身ともに解放され自由な身になった爽快な気分でした。

考えて見りゃ、昔はよほどのことがない限り公衆電話もかけず、用があれば手紙のやりとりでコミュニケーションを図ったものでございます。思いの丈をたどたどしいながらもしっかりと相手に届くように綴った時間が何ともいじらしくもあり楽しい時間でした。今でも、万年筆、筆で手紙を書くときに感じる感覚は、細胞がいつもよりいきいきしてるように感じます。身体全体の思いを筆に託し、文字を産み出し真っ白な空間を埋め尽くしていく一瞬一瞬に喜びさえ覚えます。

なんでんかんでん便利になりやがって、不便なときに自ら思考し行動した尊い時間を忘れちゃいけません!ということを想い出させてくれた昨日でございました。

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長月のアレンジメント

2022/09/05
【第1658回】

劇団チョコレートケーキの「ガマ」を観劇。この劇団2022年8月17日~9月4日まで、東京芸術劇場で「生き残った子孫たちへ 戦争六編」と銘打って公演しました。小劇場の劇団がこういう形で硬派の芝居を六作品、長期間企画するだけでもあっぱれです。このクソ暑い中、しかもコロナ感染のなか、しんどい芝居にはなかなか足が向かないと思うのだが、今だからこそ戦争に向き合って欲しいという劇団のこだわりを感じます。演劇を志すものとしてこのこだわりは必要不可欠であり、これからの劇団の改めての決意表明ではなかろうか...

今回の「ガマ」は六篇の中で唯一の新作です。沖縄の悲惨な戦争体験はたびたび舞台化されてきましたが、この作品はまさしくガマ(沖縄戦時に避難壕や病院壕として使用され、その数はおよそ2000にも及ぶ)のなかでの人間ドラマ。おいらも、数年前、ひめゆり学徒隊が居たガマの前に立った時には、ガマの中でくり広げられた悲惨な惨状が頭をよぎり、しばし黙祷するしかなかった。

劇中、皇民教育に染まった少女を演じた清水緑が吐く台詞「帝国臣民」「聖戦貫徹」「私たち沖縄県民はどうやったら日本人になれるんですか」「友達は皆日本人として立派に死んでいった」それらの言葉を受け止め、「命は宝だから」と少女を諭す現地の老人を演じた大和田獏が秀逸。これも、勿論、劇団チョコレートの役者陣が支えてのこと。

戯曲、演出、舞台美術、照明、音楽、すべてがハナマルの公演でございました。

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久し振りのゴジラ

2022/09/02
【第1657回】

8月31日、埼玉県志木市民会館で「風を打つ」の公開舞台稽古を観てきました。今回の公演、今日から演劇鑑賞会の東北、中部・北陸ブロックで10月18日まで39ステージの公演を予定しています。コロナ禍と猛暑のなかでの稽古本当に大変でした。今日、この日初めて役者さんもマスクを外しての本番だっただけに感無量の思いでした。マスクをしながらの稽古は身体的にも苦痛が伴うのは当然なのだが、なんといっても相手の表情が読み取れないのが表現者にとっては最大の苦痛です。そんな状況が3年近く続いているんですから、いい加減コロナちゃん勘弁してくださいな!と叫びたい。

この日の芝居、困難な中この日を迎えた5人の役者さんの思いの丈が会場に響き渡っていました。この日の観客から頂いた割れんばかりの拍手に背中を押され、10月18日の千秋楽まで無事に完走してくれることを願うばかりです。いつものことながら演劇の神さん頼みまっせ!

昨日、新宿の西口で、9月27日に執り行われる安倍元首相の国葬について中止や反対を求める署名活動が行われていました。国民の半数以上の人が反対しているのに内閣だけで決めて実施するのはいかがなものかと思うのが当然でしょう。しかも問題になっている旧統一教会とずぶずぶの関係であった人だけに...とにもかくにも、ここらあたりで思い切った当たり前の政治に舵を切らんと、間違いなくニッポンえらいことになっちまいますね。

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長月の空

2022/08/31
【第1656回】

先週の土曜日、日本テレビでのドラマ「無言館」観ました。戦没画学生の家族を訪ねながら絵を収集していくさまを丁寧に描くことを主にした作品になっていました。監督が劇団ひとりということもあり窪島さんと野見山さんとのやり取りは喜劇タッチに描いていた。途中CMが頻繁に流れるという制約の中で、なんとか無言館オープンまでの道のりにたどり着いたという感じでした。トムの作品は、窪島さん自身の波乱万丈の人生が枝葉として随所に織り込まれ、無言館なるものの存在を複眼的にとらえていたのではないかと思っています。

いずれにしても、こうやって無言館の存在が多くに人に知られ、無言館を訪ねてみようという人が一人でも二人でも増えていけば素晴らしいことだと思います。そして、戦没画学生が描いた珠玉の絵画を目の当たりにすることにより、平和であることのありがたさ、尊さを今一度、胸に収め、自分の出来る範囲でアクションを起こしてくれれば世の中、少しはマシになるのでは...

京セラの稲森和夫さんが亡くなりました。コロナが感染し始めた頃、京セラ財団が文化団体に巨額の助成金を助成しました。国家に先んじて民間の会社が手をあげたことに驚きました。トムも芝居が中止になり思案に暮れてる時期に、稲盛財団の支援は本当に助かりました。

芸術が育たない国に繁栄はないという理念で日本の経済を牽引した稲盛さんに次ぐリーダーが現れないとこの国も心配でなりません。

思えば、コロナ禍のなかで学ぶこともたくさんありました。このウイルス、確かに人類の数々の驕りに対しての戒めであり、地球の一生物でしかない人間にたいし「もう一度原点に戻りなさい!」という警告だと思います。

ウクライナへの兵器援助、更なるワクチンの開発、これは果たして本当に地球全体のためになっているのだろうか?表層的なものに目を奪われてると未来はえらいことになっちゃいますがな。

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花と蝶

2022/08/29
【第1655回】

風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」土曜日、日曜日、満員の観客の中で無事公演を終えることが出来ました。会場の皆さん、杜夫ちゃんの魅力に取り憑かれ食い入る様に観ていらっしゃいました。そして随所で放つ小気味いい時事ネタで大笑い、そしてラストには涙、ナマの芝居のいいとこ取り満載の運びに、重苦しい日常を忘れさせてくれる時間であったことでしょう。沢山のアンケートも集まりました。

 

同じ世代のわたしにとってはマスクをはずして一緒に歌いたかったです。熱いパワーを注いで頂いた思いです。演劇の底力を感じました。これからも心に届くお芝居を楽しみにしています。「牛山明さん」ありがとうございました。

 

平和の大切さを強く感じました。高齢者のための政党、是非実現して欲しいと願います。

 

前回も観ているのですが、その時々の話題の違いにより内容が全く変わってくると言う思い、今回は心にしみいる曲ばかりでとても良かったです。

 

などなど。

演劇が閉塞した時代になんらかのチカラになり得たことは何度もありました。改めて演劇が時代と切っても切り離されない表現であることを改めて痛感しました。いろんなスタイルがあるとは思いますが、今回の芝居の主人公の如く庶民の視点から描く芝居だからこそ、身近に感じられ懐深く入り込んでいくのでは...

今日の新宿スペースゼロでの最終公演、先程無事終えることが出来ました。今回見逃した方、9月14日に江東区亀戸文化センター( カメリアホール)での公演もありますので...見逃すと一生後悔しちゃいますよ。なんて、プロデューサーは先へ先へと思いを巡らせております。

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こちらも熱きライブ

2022/08/26
【第1654回】

昨日、明日から新宿スペースゼロで始まる、風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」の最終稽古に行って来ました。御年73歳になる杜夫ちゃんのパワーに圧倒されました。とにかく本人は大変だとは思いますが、観てる方は徹底的に楽しんでひとり遊びをしているように見えるんですから不思議な感覚におそわれます。芝居の基本、演じてる側の楽しさがそのまま観客に伝わるってことを実証してくれてるんですね。

昨年の初演はコロナの規制に引っかかり、観客を半分にしての公演で忸怩たる思いがあっただけに今年はその鬱憤をはらしたいとスタッフも含めて気合いが入っています。と言っても、稽古中の日々の緊張感も勘弁してくれと言いたくなります。感染者が出た時点で公演が中止になるニュースが流れる度に、もしやなんて不穏な気分になっちゃうのはもう嫌だ!その点、このひとり芝居、出演者がひとりなのでリスクは最小限に抑えられることが救いかな...コロナ時代にピッタリなのが今回のひとり芝居。

ウクライナの侵略、統一教会問題、そして未だ止むことのないコロナなどなど、この世の不条理に対し、この芝居の主人公牛山明は庶民の立場から怒りを爆発させます。

この閉塞しきった現況、この芝居がモヤモヤを解消してくれる劇薬になることは間違いございません。迷わず劇場に足を運んでくださいな!

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最後のひと鳴き

2022/08/24
【第1653回】

昨日、今月31日からスタートする「風を打つ」の稽古を観に行ってきました。2019年に創った水俣にかかわる作品です。初演の時に大きな評価を頂き今回の演劇鑑賞会での公演が実現しました。昨日観て感じたことは、水俣病で苦しみながら懸命に生きようとする姿が、今まさにコロナ禍のなかで、もがき苦しみながらもなんとか未来につなげようとする世界の状況と相通じるものがあることを確認しました。苦境に陥れば陥るほど大切なのが家族の存在であることもこの作品が実証してくれます。この世界の平穏は核家族の絆があってこそです。社会を構成している基本の家族が上手くいってなければ、そこから歪が生じるのは自明の理。

「風を打つ」の作・演出家である、ふたくちつよしさんはいつもそこにフォーカスをあわせて芝居を創ってきました。決して派手ではないのだが、そのぶれない創作姿勢に共感しておいらもこれまでふたくちさんに依頼して良質の芝居を創ってきました。これも、作家とプロデューサーとの信頼関係がなければ成し得ないことも事実です。

稽古場では、この時期マスクをしながらの稽古は辛いものがあると思うのだが、皆さん一つ一つの台詞を確認しながら熱のこもったやりとりをしていました。少しでも油断すると、そこからほころびが生じ観客に届かないチープな芝居になってしまうのがライブの恐いところです。そのうえにコロナの恐怖が加わるんですからたまったもんじゃございません。

本番の日は刻々と迫っています。いつものように演劇の神様が「大丈夫だよ!」と、おいらには聴こえます。

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錦糸町稽古場前から

2022/08/22
【第1652回】

いやいや、コロナなかなか収まりませんな。トム・プロジェクトでは今週末から風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」をはじめ、10月18日まで「風を打つ」「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」計3本の芝居を公演します。スタッフ、キャスト、制作の皆さんがPCRの検査をやるたびにヒヤヒヤ、ドキドキしております。すでに3年目になるのに困ったもんでございます。先日の新聞にも「演劇存亡の危機」という特集が組まれていました。勿論、演劇業界だけではございません、飲食、観光などなど打撃を受けてるところは数知れないと思います。世界の状況からみても、この国のコロナ対策は相当遅れていて一番大変なのが病院、保健所だというんですからこれまで何やってたの?と政府、行政の責任が問われてもおかしくないんじゃないかしら...

トム・プロジェクトが上演した演目がテレビ、映画で上映されます。先ずは今年の6月に上演した「無言のまにまに」、8月27日(土)28日(日)に放送される日本テレビ24時間2022のなかで、スペシャルドラマとして8月27日の午後9時から「無言館」というタイトルで放送されます。次は2005年に上演した「ダモイ」が、「ラーゲリより愛を込めて」(瀬々敬久監督、12月9日公開)。いまだ終わらない戦争を通して、名も知れずに死んでいった庶民の声を救い上げる作業は、今生きてる人たちがやらねばと思っています。それは義務、責任と言っても過言ではない...亡くなった人達の犠牲の上に今の平和があるんですから当然だし、他人任せにしてるととんでもない未来が待っておりますぞ!

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四季の花アレンジ夏

2022/08/18
【第1651回】

昨日、東京福岡県人会の理事の方から電話がありました。来月21日から俳優座劇場で上演する「エルスール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」の件で、東京在住の福岡県人会の方に是非知らせたいという応援のメッセージでした。やはり、福岡の人は熱かですばい。おいらより年上の方ですが、当然あの日あの時の西鉄ライオンズの記憶は何よりも強烈であり、もはや忘れることができない大事件であることに違いない。今や、博多の街はソフトバンクホークスで盛り上がってますが、これも西鉄ライオンズが残した功績の上で成立しているのではなかろうか。昭和30年前後の博多の街の心の拠り所であり、文化の一翼を担っていたことは紛れもない事実です。おいらにとっては西鉄ライオンズ抜きには考えられない日々でした。田舎もんのチームが、花の東京の読売ジャイアンツを日本シリーズで3年連続打ち負かしたことから博多も一気に発展していったんじゃないかしら。

今回の芝居は、西鉄ライオンズに絡めてその当時の長屋に住む人たちの哀歓を描いています。作・演出の東憲司さん、出演者のたかお鷹さん、藤吉久美子さん、そしておいら、福岡出身で固めバリカタの博多発の芝居をお届けしようと思ってます。

この芝居、唯単なるノスタルジーで上演するんじゃございませんことよ。拝金主義、科学に依存し自然破壊に繋がった今こそ、人の命を大切に生きてきた庶民の姿に学ぶべきことがあるはずだし、あの時代の心の支えであった西鉄ライオンズに変わりえるものは今の時代ではなんなのか...この芝居にはいくつかのヒントが隠されておりますぞ。

人は流行、新しいものに惹かれるのが世の常なんですが、今の時代に光があたってないものが、ふと新鮮に感じられることを大切にしたいもんでございます。

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野武士軍団

2022/08/16
【第1650回】

昨日は77回目の終戦の日...各メデイアは一斉に太平洋戦争にまつわる出来事、生き残った人達のインタビューを流していました。誰しもが「戦争だけは絶対にダメ...」口を揃えて言っておりました。連日流されるウクライナの状況を見てれば戦争を知らない世代の人だって同じ思いを抱くに違いありません。でも、なかには自国を守るには防衛力を強化せねばという人達が居るのも現実です。ロシア、北朝鮮、中国を間近に控える日本としては確かに脅威を感じるのは当然です。がしかし、軍拡を始めるとその先にある世界は絶望が見えてきます。得をするのは軍需産業で潤っている国だけですし、力で見栄張って喜ぶのは権力者だけであることは今の世界の状況からして至極当然。

だって戦争は殺人ゲームなんですよ...誰だって人の命を兵器で奪いたくないし、殺されたくもありません。だとしたら軍備の増強は止めるべきだし、あくまで粘り強い外交の力を試すべきだと思います。ロシア、北朝鮮、中国に対して会話が成立するなんて無理だと決めつけないで、唯一戦争を放棄し平和を宣言した日本だからこそ出来るんじゃないかしら。そして被爆国であることを世界にアピールすることも説得力があると思う。

毎年毎年、何十年も役人の書いた文章を棒読みするこの国のトップの人達にはとても期待は持てませんから、この国の住民一人一人が起ち上がらねばといつも思うのですが...この国の人達平和呆けしてなかなか上手くいきませんな。

ウクライナの現状を写す映像、証言から平和への希求を探る方法だってあるし、嘗ての日本がアジアの各地を侵略し、結果的に悲惨な敗戦に追い込まれた過程から学ぶことだってあると思う。

それにしても、未だ止まぬ争い...ほんまにニンゲンアホですな!

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77年目の8月15日の夏空

2022/08/10
【第1649回】

「古くてあたらしい仕事」島田潤一郎著を読んでいる。小さな声を届けたいと言うことで2009年に東京吉祥寺で出版社を立ち上げた人である。若い頃作家を目指しバイトしたり就職もしたが定まらず、31歳になったのをきっかけに50社に就職願いを出すも不採用通知が来たという。すっかり自信をなくし自殺も考えたという。そんな時の唯一の救いが本だった。

 

「サルでもわかる」とか、「一日で身につく」というのは、ぼくにとって本である意味がなかった。そんな知識は、スマートフォンでじゅうぶん事足りる。それよりも、一回読んだだけではわからないけれど、ずっと心に残る本。友人に話したくなるけど、上手く伝えられなくて、「とにかく読んでみてよ」としかいえない本。ぼくの孤独な時代を支えてくれた大切な本。ぼくが死んだあとも残る、物としての本。

 

こんな思いで一人出版社「夏葉社」を創設した。不特定多数に宣伝する方法には興味がなく「本当に必要としている人」に本を届けたいというシンプルさがとてもいい。

考えてみれば仕事の核となるものはその人の個性である。仕事の堅に合わせるのではなく自分には何が出来、何が出来ないかを考え続けて日々の試行錯誤をしながら創っていくのだが、そこにはずば抜けた能力なんて必要ない。ノウハウや特別なコネクションも関係ないはずだ。それよりも、なにをやるべきか。もっといえば、今日、誰のために、なにをするか。

仕事の原点はいかなるときにもそこにあるということを肝に銘じたい。

芝居創りも然り!

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夏のスカイツリー

2022/08/08
【第1648回】

77年目の広島原爆の日...いつものようにセレモニーが行われていました。地元の人達の切なるメーセージに比べて、なんの工夫、やる気のない歴代の首相の言葉。広島出身の岸田さんだからこそ、あんたの出番じゃないの?とハッパ懸けたいところだが役人の書いた文章を無感情で読むだけでございました。世界で唯一の被爆国だからこそやれることたくさんあるにも関わらず、アメリカの核の傘で守られてることを言い訳に核廃絶に向けて積極的な行動をしなかったことから脱却をすべきではないか...ロシアのウクライナ侵略でプーチンが核使用をほのめかす発言、中国の台湾への圧力、北朝鮮の更なる核開発などなど世界の状況は大きく変わっています。核抑止力なんて言葉も、もはや死語に等しいくらい。いざとなれば、アメリカだって日本を守ってくれるかどうかは怪しい話だと思った方がいいくらいの予測不能でバカげた軍拡競争。悲しいかな、今後世界は独裁者が支配する国が増え続け核を含め軍事力でお互いを脅しあう悲惨な地球になっちゃうんじゃないかしら...

明日は長崎に二発目の原爆が投下された日です。悲観ばかりしてもいられません。若い人たちの中から今の現状を変えようという動きも出てきています。政治に期待するよりも閉塞状況に風穴を開けようとする若い力に期待したいものです。そして何よりも、この原爆の日だけではなく常日頃から戦争の不条理、平和の大切さに繋がる回路をいつも開きながら思考、行動することが大切でございます。

ボケっとしてたら...権力者の思う壺でございますことよ。

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こちらの鉄砲はOK
(テッポウユリ)

2022/08/04
【第1647回】

昨年、最下位になった我が心のライオンズなんと今日の時点で首位でございます。今年特筆すべき点は投手力の安定感です。OBの豊田コーチのチカラが大きいと思います。昨年までは見てられない弱体投手陣、一試合平均4点~5点は覚悟しないと言う有様ですから、山賊打線なんて言われた打撃陣もそうそういつも打てるわけじゃありませんから下位に沈んでもおかしくない状態でした。一転、今年は一試合平均2、5点ですから自ずから勝率は上がるってもんでございます。中でも試合後半に出てくるリリーフ陣が素晴らしい。本田、水上、平良、増田などなどで相手チームもなかなか打ち崩すことが出来ない。三割打者が一人もいないライオンズでも3点~4点得点すれば勝てる公算は大である。

昨日のオリックスの試合でも、森の2本のホームランで十分勝てる予感がするんだからこれまでのライオンズとは様変わりしたチームに思えてしまう。それとライオンズのチームカラーも自由奔放で選手たちが楽しみながらプレーをしています。時には打てないのにニヤニヤしてる山川選手なんかにムッとするときもありますが、まあ30本のホームランと64打点をたたき出してるんですから良しとしときましょう。

それにしても、ヤクルトの村上宗隆、22歳にして5打席連続ホームランの日本新記録を達成。ロッテの佐々木投手、オリックスの山本投手ともども将来は大リーグに行くんだろうな...今日も大谷翔平選手が1918年のベーブ・ル―ス氏以来104年ぶりの「2桁勝利&2桁本塁打」を目指して出場したんですが6回途中で降板し達成ならず。いつも思うのだが、さすが大リーグ、スピードとパワーに圧倒される。ライオンズから行った秋山選手も活躍できなかったのが良くわかる。やはりイチロー選手は別格だったんですね。

コロナと共生しながらのプロ野球、なかなか大変ですがファンのために頑張って頂戴な!

トム・プロジェクトも9月から始まる「風を打つ」の稽古が始まりました。いつどこで誰がコロナ感染するか?戦々恐々たる思いで過ごす日々でございます。

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JR新宿新南口

2022/08/02
【第1646回】

これだけ暑けりゃフラメンコがお似合いだとばかり、東京芸術劇場で北原志穗フラメンコリサイタルに出かけました。スペインの灼熱の太陽の下、嗄れ声のカンテと、叩きつけるギターの音色で踊り狂うダンサーのしたたる汗を見る度に、これぞスペインという光景を何度も目にしたおいらにとってはたまらん祝祭の出来事でございました。

今回のリサイタルは、アートを重視するよりも沢山の子どもたちと一緒にスペイン的なるものを楽しもうという意図で企画されたものでした。フラメンコをどのように解釈するかは人それぞれだと思いますし、要は理屈ではなくフラメンコなるものを楽しめじゃいいじゃんとおいらは思います。アンダルシアに住んでいたおいらが知ってるフラメンコは、居酒屋で三々五々集まった酒好きなおっちゃん、おばちゃんが自然発生的に歌い出し踊り出すってなわけで人にどう思われようなんて気持はさらさらありまっせんでした。

今回も舞台に出て表現することが楽しく嬉しそうな子どもたちの身体がキラキラしてたことこそがスペインそのものだった気がいたしました。

もう随分とスペインもご無沙汰しています。先日もNHKBS「世界ふれあい街歩き」でアンダルシアをやっとりましたが、町の住民さん変わらず他人に耳を傾けず自分の主張を嫌味なく楽しく話してました。今日一日が良ければすべて良し!この心意気で生きてりゃ人生まあ捨てたもんじゃございませんことよ。

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こんな時こそ、大地にしっかり根を張って!

2022/07/29
【第1645回】

戦前の日本映画の名作「無法松の一生」を鑑賞。1943年制作、稲垣浩監督、伊丹万作脚色、宮川一夫撮影という最高のスタッフに恵まれ、主人公無法松を坂東妻三郎(バンツマ)が見事に演じている。戦後に三國連太郎、三船敏郎、勝新太郎なども演じているがバンツマの富島松五郎がぴったりだ。純粋無垢でありながら直情径行という役柄なんだが、他の三人の役者は何か一癖二癖ありそうでこの役にしっくりこない気がする。特にこの映画の軸になっている陸軍大尉吉岡家の未亡人よし子に淡い恋を抱く心情をバンツマは繊細に演じている。他の役者さんではなんだか不自然な気がしてならない...未亡人に本気になっちゃうんじゃないかしら?

この映画で目を引くのは、宮川カメラマンが人力車の車輪を何度もオーバーラップさせ主人公の切ない思いを重ね合わせている点である。この時代にしては、かなりシュールな手法ではなかろうか。戦後、『羅生門』『雨月物語』などの傑作を手掛けるのも十分うなづける。

この映画のヒロイン吉岡よし子未亡人を演じる園井恵子が清楚な美しさを魅せてくれる。1930年に宝塚少女歌劇に入団。1942年、宝塚退団後は新劇女優に転向。本作への出演は、候補になっていた女優が妊娠したためのピンチヒッターだったが、映画の大ヒットによりその名は一躍全国に知れ渡った。1945年8月6日、当時所属していた移動劇団「桜隊」の活動拠点だった広島市で原子爆弾投下に遭い、同月21日に32才で死去した。

ここにも戦争による才能豊かなアーチストの喪失を知ることが出来る。

おいらの映画少年時代の悪役スターだった月形龍之介、日活で活躍していた長門裕之なんかも出演しており、映画全盛時代を思い起こさせてくれる。

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神田川に全員集合

2022/07/27
【第1644回】

昨日はプロ野球オールスター戦があった。最後を決めたのは日本ハムファイターズの清宮幸太郎選手。この誰も思わなかったこの選手が、サヨナラホームランなんてところが野球の面白いところだ。高校通算111本塁打の史上最多記録を引っ提げて4年前にプロの世界に入ったのだが、なんとなく鳴かず飛ばずの成績で終始してたのが、新庄監督が就任し減量を言い渡され、今シーズンはやっと二けたのホームランを打つようになったばかりだ。若い選手は指導者次第でがらりと変わる。その点、中日の根尾選手は何だかかわいそうな気がするね。おいらもあまりタイプではない立浪監督に守備位置を何度も変更させられ、挙句の果てにピッチャーなんて大丈夫かしら?阪神の藤浪投手もいまだ実力発揮とはいいがたい。

どの世界も同じ、どんな環境でプレーできるかが大きなカギとなってくる。我がライオンズの選手は自前の若手が次から次へと育ってる分、いい環境にあるのでは...なんせ親会社にあまり資金がないのでこうやって維持するしかないんだが。大リーグから帰ってきた秋山選手も迎えることが出来なかった金欠球団でございます。出ていくばかりで戻りなしのなんとも寂しいチームになってしまいましたが何とかパリーグ2位につけてるところが面白い。大枚はたいて選手を集めても下位に沈んでるジャイアンツ、ライオンズの選手をかっさらてもいまいちの楽天、選手個々の給料がけた違いに高すぎるソフトバンクだってぶっちぎりに強いわけではない。

金で買えないこともある!これを見せつけてくれるプロ野球の世界がおいらの望むところだ。

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ポツンと向日葵

2022/07/25
【第1643回】

カンヌ、アカデミー賞で話題なった「ドライブ・マイ・カー」をWOWOWで昨日観ました。この作品、観る人の評価がおおきく分かれてしまうんじゃないかしら?村上春樹の短編が原作なので村上文学が苦手な人にとってはいつの間にか首がストンと落ちてしまう。一方、根強い村上文学信奉者にとっては独特な言語に加え、濱口竜介監督の映像、構成力、巧みなずらしかたで3時間の長丁場を感じさせない不思議な感覚にさせられたのではなかろうか。おいらが一番面白く感じたのは、チェーホフの「ワーニャ伯父さん」の舞台を交えながらドラマを展開させていく手法であった。しかも、日本語、韓国語、手話を交えながらの作劇は興味深いものがあった。しかも役者の感情を排除し棒読み的な表現を試みることによって表現の本質を探ることが、この映画の本質にうまくマッチしているところにこの監督のセンスを感じた。その代表格が、ドライバー役を演じた三浦透子。一貫した無表情の演技、登場してからこの子はなにかあるな?とわかってしまうのが少し残念だったかな...

それにしても、日本の映画界も若い有能な監督が世界に進出していることは嬉しい限りだ。

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百日紅

2022/07/22
【第1642回】

セミが鳴きだした、この鳴き声を聴くと夏の季節を一段と感じさせてくれる。そして儚い一生で終わってしまうセミ君に、この夏を存分に生き切って欲しいと願う。

劇団トラッシュマスターズの「出鱈目」を観劇。若者の心情をべったりと描き出す小劇場が多い中、毅然とした姿勢で社会派劇団としての36回目の公演である。今回は現実に起きた表現の不自由展で話題になった言論と表現の自由と行政との対立を素材にしたドラマである。各々の意見、論調を芝居にするのはなかなか難しいのだが、作・演出の中津留章仁はエンタメ要素も絡めながらうまく構築している。2時間半の長丁場、観客を飽きさせない劇作術にはいつも感心させられる。そして、しばらく出演していなかったこの劇団の創立メンバーである、ひわだこういちが前回に引き続き出演し、これまた久しぶりのカゴシマジローとの競演がなんとなくほっこりさせてくれる。それにしても、コロナ禍のなかで演劇活動を継続していくのはなかなか困難な作業である。すべての作業が生身の人間が直に接しないと成り立たない演劇の宿命に、現場は日々戦々恐々たる思いで過ごしているのである。

なんと東京は3万人超え、そしてプロ野球、大相撲の世界でも感染者続出。これまでのルールーで社会は回っていくであろうか?甚だ疑問に思わざるを得ない。

トムも来月から3本の芝居を予定している。どうか演劇の神さん見守ってちょうだいな!

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夏の夕焼け

2022/07/19
【第1641回】

三連休の行楽地での沢山の人出を見て、こりゃコロナ感染者増えますがな...東京でも演劇の公演中止が相次いでいます。長いこと稽古していざ本番というときにあちゃ!ってどころか制作者は踏んだり蹴ったりでございます。前にも書きましたが、日本製のワクチン、治療薬の開発に力を注ぐわけでもなく3年近く何やってたの?いつものようにこの国の政治、行政の未来に対する想像力のなさに愕然といたします。

昨日、ここんところ何年もお世話になっている理髪店に行って参りました。浜田山にある「HairSalon WAKATSUKI」、穏やかなご夫婦二人が平成19年にオープンしたこのお店は心落ち着く癒しの場でもあります。店長一人で多くの方々の髪を扱ってきたと言うことは、この人達の人間観察をしたということです。きっと占いなんかもできるんじゃないかしらと思っちゃいます。店長にもぜひ読んでもらいたいと思い、荻原浩著「海の見える理髪店」を勧めてこともあります。いろんな性格の人たちとの接客のコツもなかなか大変だろうと思いつつ、理髪店を舞台にしながら数多くの相手役と対峙して数々のドラマを生み出したのではなかろうかと想像しちゃいます。

2002年に緒形拳さん主演で創った「子供騙し」も南三陸にある理髪店での話でした。緒形さんがおいらにぽつりと囁いてくれました。「男の顔はヘアースタールで決まりだよ...」天下の名優が言うんだから間違いないんじゃないかしらと...いろんな美容院、理髪店巡りをして辿り着いたのが浜田山のこのお店でした。

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浜田山 柏の宮公園

2022/07/15
【第1640回】

前回レポートしました「豆café enjyu」を後にして、すぐ近くにある「槐多庵」に足を運びました。ここも窪島さんが建てた素敵な空間です。普段は閉館してるんですが6月4日~7月18日の期間、土・日・月曜日のみ浅埜水貴個展が開催されてました。

広島の日本画家である浅埜さんが窪島さんと出会って今回の企画が決まったとのこと。箱モノは建てたのだが、中に入れるものに四苦八苦しているところが多い中、積極的に若いアーチストに夢場所を提供しているところなんぞが窪島さんの若さの秘訣かも...

よくよく「無言館」の近辺を散策して分かったことは、信州の鎌倉と言われるくらい多くの神社仏閣が点在しています。どこも素朴な佇まいで偉そうな顔してないところがとっても気に入りました。おいらの推測ですが、そんな場所こそが戦没画学生の残した絵画を展示するに相応しいと思ったのではないかと...戦局厳しき折、明日の命も分からない画学生がキャンパスに思いを込めたパッションの鎮魂の場として...

この芝居を企画し、様々な困難を経て上演した後にも、ゆかりの地を旅することによって又いろんなドラマに出逢えるところが芝居の面白いところです。

それにしてもまたまたコロナ感染者が増え出してきました。三年目だというのにこの国のトップの方々の学習能力、なんともしっくり来ませんな。芝居も中止になったり、飲食店も嘆き節が聞こえてきたり、毎度のことながら録音したテープを再び聞かされてる感じでお手上げ状態でございます。

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浅埜水貴個展
(槐多庵にて)

2022/07/13
【第1639回】

前回に続き「無言館」の話です。2019年に、窪島さんが断腸の思いで閉館した信濃デッサン館が「KAITA EPITAPH(エピタフ=墓碑銘) 残照館」と名称を変え、2020年6月6日に開館した場所に移動、この日は館長不在で閉館でした。この「残照館」は画家村山槐多をはじめ、若くして亡くなった画家の作品を中心に80~100点を展示してあります。

この日はその隣に併設された「豆café enjyu」でゆったりとした時間を過ごさせていただきました。この店を三年前からオープンしたお二人が「無言のまにまに」東京公演を観劇されたこともあり足を延ばしたわけでございます。食育インストラクターの王鷲美穂さんと、せいろと糀&シュクルリール洋菓子店主宰の吉池梨恵さんの素敵なお二人が切り盛りなさるこの店、おいらとっても気に入りました。自然に囲まれた立地条件に加え、二人が繰り出す食のコンセプトにまいってしまいました。地元の食材をしっかりと活かしながら、お客様にいかに喜んでもらえるかの工夫が隅々までいきわたっていることに感動いたしました。

何事もセンス、いや己にどれほどに美学、審美眼を持ち得ているかが問われます。この感性を養う旅は果てしないものがあるとは思いますが、臆せず己を信じてあせらず探訪すればめちゃくちゃに楽しいものです。76年間、様々な体験したおいらが断言します。なんでも見てやろう、書を捨てよ町に出よう、ポジティブに行動する気持ちさえあれば、あとは勝手に血となり肉となり誰にもない自分だけの感性が出来るんじゃないかしら...

ゆったりとした芝生を前にした椅子に座り、特製のかき氷を食べながらそんなことを考えていました。

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至福のひととき

2022/07/11
【第1638回】

先月公演した「無言のまにまに」の報告とお礼を兼ねて、「無言館」館長窪島誠一郎さんが住む上田市に行って来ました。場所は別所温泉にある「上松や旅館」これが又、奇遇で昨年、窪島さんに会いに行ったときの宿であり、東京公演にはこの宿の会長である倉沢さんも知人と一緒にいらして頂きおいらに観劇のお礼までいただいた方でした。そのときに倉沢さんが話されたことですが、無言館を建てる前に窪島さんが画材を抱えて別所温泉をふらふらと歩いている様子を見て旅館に泊めてあげたという御縁でもありました。そんな御縁繋がりでの「上松や」での夕餉、いやいや80歳になる窪島さんのエネルギーと欲をたっぷりと堪能いたしました。変に枯れちゃいかんぜよ、満身創痍の身体でありながら今なお反省、悔恨も含めて人間が本来生きる上に大切な欲望がいかに大切かを窪島さんが身をもっておいらの前に曝け出してくれました。

昨年来の「無言館」、夏の太陽と緑に囲まれた環境の中で静かに佇んでいました。芝居をやり遂げた後での再訪、またいつになるかわからないけど、この館に宿る無言の魂を全国に伝えていかねばと強く思いました。それは窪島さんがこの荒れ地を開墾し「無言館」を立ち上げていく道程と同じです。何事もバトンタッチ、残されたものが引継ぎ伝えていくしかありません。80歳の窪島さんに負けちゃいられませんですばい!

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文月の無言館

2022/07/08
【第1637回】

ONE OR8の「連結の子」を観てきました。昨年、狸シリーズを2本書いていただいた田村孝裕さんが主宰する劇団の公演です。人間誰しもが内包している様々な問題を、緻密なセリフで巧みに書き込んだ田村戯曲は俳優さんにとっては触手を伸ばしたくなるのも当然だと思います。今回はトムの作品にも出演していただいた高橋長英、藤田弓子、小林美江さんも客演しているので楽しみにしていました。

家族、そしてその周辺の人間関係悲喜こもごも、日本のどの町にもある日常をとても丁寧に描いた作品でした。長英さん絶品でした...トムで昨年上演した「にんげん日記」に続いて長英節がきらりと光った演技。笠智衆さんを継ぐのは長英さんで決まりってな感じでした。写真を撮る場面での森進一の物まねはズルいズルい、おいらとの飲んだ時にやる物まね合戦で魅せる二人だけの秘密の芸だったはずだったのに一般公開しちゃって罰金もんですぞ!

藤田さん、美江さんもとってもチャーミングでしたよ。舞台でも人間性がそのまま出るんですね、ついついほっこりしてしまいました。

明後日は参院選の投票日です。またしても選挙人の半数の人しか投票しない選挙になりそうです。ある人がこんなこと言ってました。「選挙に出るようなやつには投票したくない」なんだか逆説的な発言なのだが、結構真理を突いてるようにもみえる。今日も新宿で候補者が立派なこと言ってるんだが、あんたらほんまに出来るんかい?そんな候補者見てると、冷めちゃいますがな...いやいや、いろんな意味でもこの国を変える手段が今のところ選挙でしかないので、何とか目を覚まして一票を投じるしか手がありませんがな...

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昨日は七夕でしたね...

2022/07/06
【第1636回】

50年来の友である石橋幸ことタンコから、コンサートの案内と共にこんな手紙が入ってました。

 

「プーチンとその一味の気狂い選択と蛮行はロシアを世界の極悪国にしてしまいました。そうではないロシアを知る人々にとっては言葉を失くす苦渋の時です。在日ロシアの若者に強く背中押されました″歌ってください″と。正念場なんてものが在るのなら今が私のそれかも...墓場は近い!」

 

タンコは何十年にもわたり、私費でロシアに埋もれたかずかずの歌を採集しロシアをはじめ日本の各地で歌ってきました。言語の大切さを重んじるためにロシア語で歌うことに拘ってきました。そのほとんどが庶民の生活史、恋歌、政治犯が獄中で創作したものなどなど、いまだ日本人が耳にしない歌ばかり。もともと役者であったタンコですから表現力を交えての歌声は聴くものに深い感銘を残してきました。

今回は第24回石橋幸コンサート「僕の叫ぶ声~ロシア・アウトカーストの唄たち~」7月4日の新宿紀伊國屋ホールにはたくさんのお客が来てました。タンコも舞台上から歌の合間にこんなメッセージを送っていました。今日はロシアのいい風を送りますから!そして、マスコミと西欧諸国アメリカが一斉にロシアを叩いていますが、ロシアにも戦争悪と戦っている人たちが居ることを忘れないで欲しいと...

確かに今回のプーチンの行為は万死に値するとは思うのだが、この戦争で利益を生み出してるアメリカの武器商人が存在していることも事実。すべて短絡的に物事を見るのではなく冷静に客観的に事の推移をみることしか本当の平和も訪れてこないと思います。

この日のコンサート、本当にいい風が吹き流れていました。アーチストのできることも限られてますが、こうやって少しずつでもいい...アクションからしか未来の展望はありまっせん!

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タンコ

2022/07/04
【第1635回】

先月、「無言のまにまに」を上演した両国シアターX(カイ)に行って来ました。第15回シアターX国際舞台芸術祭2022を開催中。

この日の演目は大阪のダンスグループCDS OSAKAによる「記憶の青―Microplastics Dance」総勢16名による紺碧の海を汚染した人間に対するメッセージを、自分の身体に問いかけ発信する女性を中心にしたコンテンポラリーダンス。おいらも若い頃は、現代舞踊、舞踏などなどつまみ食いしましたが、とにかくカラダを動かすことからしか全ては始まらないということは今でも変わりません。

二番目に登場した加世田剛さんの「light」は見応えありましたな。武術ダンスと銘打つだけあってこの方の動きひとつひとつにサムライ的なる匂いがぷんぷんといたしました。なるほどプロフィールを見ると全米武術大会で3度優勝歴を持つ御仁。世の中にはまだまだ未知のアーチスがわんさか居ることを思い知らされた次第です。

三番目に登場した宇佐美雅司さんの「Listen to He:art Where is the truth?」はジャックプレヴェール原作「おりこうでない子どもたちのための8つのおはなし」を宇佐美さんが構成・演出・出演した作品。俳優として修行してきたカラダをフル回転させお客を飽きさせない構成はなかなかと思いました。特に三脚の椅子を動物にみたてながら使いこなす術には、観客の想像力を喚起するには十分すぎる効果があったと思います。

それにしても、16日間様々のジャンルのアーチストを集め、全公演¥1000の入場料で実行するシアターXの芸術監督兼プロデューサー上田美佐子さんの行動力に頭が下がる思いです。表現したくても、お金がない場がないというアーチストに広く門戸を開いてカンパ並の入場料で公演するなんてこと上田さん以外に出来ないのでは...マスメディアに左右されることなく我が道をゆくプロデューサーに拍手。

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落陽

2022/07/01
【第1634回】

今日も、青空を気持ち良く飛び回る鳥たちが焼き鳥になって落ちてきそうな猛暑でございます。歩いているとふと夢遊病者の気持ちがわかるくらいのフラリンコ状態。

昨日、新国立劇場で上演している「M.バタフライ」観てきました。フランス外交官が性別を偽ったスパイである中国京劇役者に溺れていく様と、文化大革命という背景を絡ませ、オペラ「蝶々夫人」を劇中に取り入れ、1988年ブロードウェイで上演されトニー賞最優秀賞演劇賞を受賞した作品である。日本では1990年に上演されて以来、32年振りの上演。

率直な感想。まず休憩入れて3時間半出ずっぱりの外交官役を演ずる内野聖陽の圧倒的な演技力と存在感。戯曲を読み、この役を絶対にやりこなして見せようという役者魂を感じる。相手役の京劇役者である岡本圭人もまだまだという感もあるが大健闘しているのではないかと思う。要は戯曲が素晴らしい。激動の時代に人間の愛憎ドラマを巧みに取り入れ、この複雑怪奇な現代にも十分通用する作品に仕上げたスタッフ、キャストに拍手を送りたい。

ここで、おいらの何処までも拭いきれない異見。皆さん素晴らしい演技をしているのだが、どうしてもフランス人に見えないのである。おいらがこれまで100本近く創作劇に拘ってきたのもここにある。翻訳劇を観劇しているときに付きまとう、日本人役者が演じる違和感...と言って、翻訳劇を否定しているわけではありません。海外の劇薬に接したいという気持ちは芝居を創るものとしては常に持っていることは当然至極。

休憩中のロビーで今回の演出をしている日澤雄介さんのお父様にばったり...ここのところ日本を代表する役者さんと意義ある仕事をしている息子さんの活躍を喜んでいらっしゃる様子でした。遅くともいいではありませんか...生んでくれた御両親に親孝行してこその人生ですぞ。

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新国立劇場

2022/06/29
【第1633回】

連日の暑さの中で、道行く人達の表情がなんとなく苦悶に満ちた感じがする...暑さのせいもあるのだが、いまだ止まぬウクライナへのロシアの執拗な攻撃。武器庫破壊という名目で住居、遊園地などといった無差別攻撃の映像を見るたびに心が折れてしまう。当然のことながら、テレビでウクライナ情報ばかり流すわけにはいかず、ごく日常のたわいのない番組を見ていても、この時間ウクライナで起こっていることを想像してしまうとなんだか虚しくなってしまう。

今週の日曜日は「ポツンと一軒家」の2時間特別番組。山奥で自然に囲まれ自給自足の生活をしている家族の姿をみるにつけ、世界の国のどの地区でもこんな自然で無理のない生活が出来ればどれだけ幸せであろうかと思った...当然、こんなことはありえない世界情勢ではあるのだが、このスタイルに少しでも近づけるヒントはこの番組には仕込まれている。夢のような話だと思わず、冷静に考えれば本当の幸せが身近に感じてくるかもしれません。

もう、競争は止めましょう!行きつく先は軍拡、果ては戦争、人間の幸せなんぞは千差万別なれど、やはりのんびりと空を眺め、道行く草花を愛で、身近な人を大切にして、生きとし生けるものすべてに感謝することからしか幸せは生まれませんことよ。

世界にいろんな宗教あれどホンマに役立ってるのかな?どの宗派の経典にも愛が基本になってるはずなんだが、この世界の状況をみれば真逆の憎悪に読み違えてるんじゃないかと残念ながら思ってしまいます。

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穏やかな風景

2022/06/27
【第1632回】

いやいやこの暑さはなんだ?といっても地球に生息するニンゲンどもがもたらしたものだから文句も言えまい。利便性を追求した末の地球温暖化、ロシアの侵略戦争でまたもや火力発電に頼ろうとしている現況、そして原発依存の国が加速しそうな勢い。こりゃどうにもならんと、世界の皆さん頭を抱えている中での物価高、先ずはこの国7月10日に参院選があるので現況を変える一票を投じることにしませんか...

先週の週末は2本の演目を観劇。1本目は「氷川きよしコンサート2022in明治座」、確かに歌は上手いです。五木ひろし以降、演歌の世界を引き継ぐのは彼しかいないと思いました。あの圧倒的な声量、歌唱力は天性のものか...この日歌った中での新しい発見、ヤマザキマリ作詞「生まれてきたら愛すればいい」シャンソン風のこの曲は絶品でした。この道を進めばあの美輪明宏さんに近づけると思います。第一部は芝居だったんですが役者としてのきよしさんはまだまだという気がしました。こちらも美輪さんに教えを乞えばと勝手に思っちゃいました。きよしさんの才能十分わかってますので、今日くらいところで満足しちゃもったいないと思った次第です。

2本目は劇団桟敷童子の東憲司さんが書いた文学座公演「田園1968」タイトルにあるように1968年のある地方の家族の話である。1968年と言えば、ベトナム戦争、パリ五月革命、黒人指導者キング師暗殺、ロバートケネディ暗殺、文化大革命、チェコスロバキアソ連侵攻、そして日本では世界の激動の中、反戦運動が一気に高まり学生労働者による闘争激化。22歳のおいらもその波にのまれ騒乱状態の新宿の街を日々うろついておりました。すべてが刺激的であり生きてる実感をそのまんま享受した次第です。

この時代のカルチャーも勢いがありました、この芝居の中でも出てくる洋画「俺たちには明日はない」は格好良かったな。日本映画では「神々の深き欲望」、東映仁侠映画、音楽はビートルズにフォーク、出版界では吉本隆明「共同幻想論」つげ義春「ねじ式」、演劇ではアングラ芝居の出現などなど...

今回の芝居を観ながら、考えてたことはこの芝居東君が演出したらまた別の作品になってたんだろうなと...芝居はまさしく変幻自在、そこが面白いところです。

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梅雨明けのカシワバアジサイ

2022/06/22
【第1631回】

おいらが住んでる杉並区長選挙で初の女性区長が誕生しました。3期務めた現職になんと190票差で勝利したというんですからたいしたもんでございます。先の衆議院選挙でも長年杉並区の顔役であった自民党の石原伸晃氏を、新人の女性議員が議席を奪ったんですから、この杉並区民の政治意識は高いんじゃないかしら?保守陣営から言わせれば何も分からん奴らがただ掻き回して騒いでるだけなんてことかも知らんけど、もうそろそろおじさんたちの癒着政治からおさらばしないとえらいことになっちゃいますがな。この国の20年の歩み惨憺たるものです。給料は上がらないし物価を高くなるし、世界の先進国の中でもすべてに伸びしろが無くお先真っ暗の状態なのに、いまだに自民党に権力を握られっぱなし。勿論、対立する野党勢力のチカラのなさが大きな原因なんですがね。

と、こんなこと何度言ってもこの国の形は変わり様がありません。じゃあどうすれば?もっと選挙に行かなきゃならんのよと口酸っぱくいっても行かないこの国の駄目な成人たち。今回の杉並区長選挙もただただ普通の若い娘さん、子育て真っ最中のママ、未来の日本を憂いてるおばちゃんたちが手弁当で応援し、今回の選挙に立候補するため杉並区に転居したばかりの岸本聡子(47歳)さんを当選に導きました。これからは女性の時代です...世の中のオトコたち、しっかりせんといかんですばい!

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杉並区を流れる神田川

2022/06/20
【第1630回】

先週の週末は、劇団桟敷童子「夏至の侍」を観劇。久しぶりの青空で、錦糸町から「すみだパークシアター倉」までの徒歩15分の道程は、途中、大横川親水公園の紫陽花も色鮮やかで気持のいいものだった。墨田区の下町情緒に似合う劇団が桟敷童子である。今回も九州の小さな町の金魚屋さんの話だ。いつものような大がかりなセットの中で劇団員がのびのびと動き様はいつ見ても気持ちが良い。

今回のゲストは音無美紀子さん、若い俳優陣に混じっても違和感がないどころかなかなか馴染んでいましたよ...大病もしながらもいつも前向き、演技に対しては妥協することなく真摯に向き合う女優のお手本みたいな方である。トム・プロジェクトでも、すでに3本の作品に出演して貰っている。2014年に初演した「萩咲く頃に」は7年間上演し、2019年の作品「風を打つ」は今年9月~10月に再演が決まっている。確かな演技と清潔感、そして華やかさと庶民性を兼ね備えた存在感のある立ち姿に多くの観客は魅了される。

ベテランの俳優さんが出演したくなるのが劇団桟敷童子、代表である東憲司さんの描く世界と心底から芝居が大好きな俳優陣の魅力に惹かれてしまうのも分かる気がします。

この世の中の流れと同様、すべてがお洒落で合理的になっているなか、頑なに人間臭さをモットーに演劇活動を続けるこの劇団には、おいらとしては応援し続けたくなっちゃいますな。いくつになっても、目線はいつまでも少年でありたいから...

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大横川親水公園のアジサイ

2022/06/17
【第1629回】

先週の6月9日「無言のまにまに」に来て頂いた「無言館」館主、窪島誠一郎氏の新刊本「流木記」読了。終演後に、「今度出版した本、立ち読みで最初のページ読めば大丈夫ですよ...」なんて意味深な言葉を残し劇場を後にされました。早速購入し読み始めたところ、ああこのことかと...冒頭、2018年8月10日、ペニスをうしなった...と書かれてありました。ン百万人に一人いるかいないかという部位に発症した「陰茎ガン」により切除したという。これまでにも多くの病を抱え80年近く生きてきた窪島さんにとっての言葉で言い尽くせない喪失だったに違いない。そして若くして亡くなった、どちらかといえばマイナーな画家の絵を集め最初に建てた「信濃デッサン館」の売却の無念。

窪島さんの本はこれまでに何冊か読んだのだが、今回も実母との30数年後の再開の場面は目頭が熱くなる。自分を棄てた実母への許せない心情と、捨てた実母の慟哭、これも戦争という時代が引き起こした不条理。再開後に自死した実母の日記には母親の溢れんばかりの愛を感じて痛ましいくらいだ。

波乱万丈の生きざまを過ごした窪島さんがなぜ戦没画学生の絵を集め「無言館」を建てたのか?窪島さんはこう書かれています。

 

幼い頃から養父母や生父母に抱いていた誤解や偏見を解くこと、その確執を解くことなのではないかと考えているのです。そんなことと戦没画学生と何の関係があるのだといわれそうですが、やはり私は、あの戦争のなかを行きぬいた父や母のことをあまりに知らなすぎたのです。それは養父母に対してもいえることでした。あの戦争下に「新しい命」を産み、育てることがいかに困難で、しかし同時にそれがどんなに誇らしくかけがえのない人間の営みであったかということを、私は最近しみじみと考えるのです。そして、今自分にできる唯一の「戦後処理」といえば、そんな無限の愛情をもって産み育ててもらった命が、生きたくても生きられなかった多くの戦死者の命の上に存在していることを、あらためて想起させてくれるのが戦没画学生たちの絵であることに気づかされたのです。

 

窪島さんは何度も口にしています。「ひょっとすると、彼らの絵を探したのは、ぼくではなくて、ぼくの方が、探し出してもらえたような気がするんです...」

完璧、完全な人間なんてこの世にだれひとりとして居ません。どこかしら欠けた部分を探し求める旅そのものが生きることだと思います。

「無言のまにまに」再演できることを願っています!

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梅雨時の夕焼けはキレイ

2022/06/15
【第1628回】

おいらが住んでる杉並区の区長と区議会議員補欠選挙の投票日が今度の日曜日。12日に公示され一週間後に投票という短期で何の判断すればいいのかしらと言いたい。現区長がどんなことしてるのか、他の区とどんな違いがあるのか、今一つはっきりしない。一方、新たに立候補している人の経歴、何故今回立候補したのかも新聞、区報の記事だけでは判断しようがない。いずれにしても、この国の首長、議員の日頃の行動が見えにくい中での選挙では投票率も50パーセント前後であることも自明の理と言ったところか...以前は広報車がうるさいくらい名前を連呼して、ああ選挙だなという一応の雰囲気を醸し出してはいたのだが、コロナ禍と言うこともあってか静かな街の佇まい。これじゃ投票率も30パーセント前後に落ち着くんじゃないかしら...このところの地方選挙の投票率は大体こんなもんでございます。

東京市長などを務めた後藤新平がこんな言葉を残している。

「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すは上とす」

今の政治家さんは、この逆のケースの人が多いんじゃないかしら。人の道を外し恥ずべき行為をしても厚顔無恥。そういえばええ人相した政治家が少なくなり絵になりませんし、皆悪代官が主役の政治ドラマになっとりますがな。昔の予算委員会の与党と野党との丁々発止のやりとり、なかなか見応えがあったドラマだったのだが、今や予定調和のつまらん出来レースになっとります。

投票まであと5日、頭を悩ます選択でござりまする。と言う間もなく、先程、参院選も7月10日に決定...なんとも盛り上がりがない梅雨時に相応しい政治の季節です。

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今日の紫陽花

2022/06/13
【第1627回】

昨日、「無言のまにまに」東京公演、無事千秋楽を迎えることが出来ました。いやいや、今回もスリリングな出来事もあり一日一日が緊張する日々でありました。こうやって生モノの仕事やってると最後は神のみぞ知るなんて心境になってきます。そして仕事をやってるキャストスタッフを信じることの大切さを痛感いたしました。今回の芝居を成功するためには、日常の生活も油断なく過ごさねばとシビアな状況に追い込まれ、心身ともどもなかなか開放できずストレスが溜まっちゃうなんてことも多々あります。すべてコロナのせい!とわかっていてもどうにもならない2年6カ月...もうそろそろ、場所によってはマスク外してもよろしいんじゃございません?今日あたりの新宿、数人の若者たちは堂々とマスクをしないで街を闊歩しておりました。ちょいと横目で、嫌な顔してるおばちゃんの視線なんぞどこ吹く風、これでいいんです!いつの世も若い力で世の中は変わっていったんですからと思いたいところだが...

「無言のまにまに」東京の全ステージ観劇しました。芝居はまさしく生き物でございます。昨日より今日なんて調子でよくなってはいきました。と、同時にここはもう少し工夫の余地ありなんてシーンもいくつか見つけることも出来ました。芝居は総合芸術、役者の演技だけでは成立しません。照明、音楽の出し入れのタイミングで芝居全体の良し悪しが決まることがあるのも至極当然。すべてが上手くいった時こそがベストな芝居です。大切な時間とお金を、この芝居に投じたお客様にはベストな芝居を提供するのがプロの仕事です。

両国での9日間、梅雨入りと言うことで心配したのですがなんとか乗り切ることが出来ました。関取が小さな自転車に乗って買い物に行く姿に触れたり、劇場の隣にある回向院(えこういん)には、あの鼠小僧次郎吉の墓があったりで、この町は下町風情が残った粋な町でございました。

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両国吉良邸跡
(本所松坂町公園)

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両国と言えば相撲部屋

2022/06/10
【第1626回】

「無言のまにまに」昨日で6ステージを終えることが出来ました。そして、昨日は「無言館」の館主である窪島誠一郎氏が長野県上田市から来られました。窪島さんに会いに行き今回の芝居の許可を頂いたものの果たしてどのように感じられるか?プロデューサーとしては、はらはら、どきどきもんでございます。「この芝居は僕が生きてきた過去、そして無言館を作る意図が的外れ...」なんてことになったら以降の公演も出来なくなる可能性大ですから...終演後の窪島さんの反応は?と心配してたんですが、今回の全員野球で創りあげた渾身の舞台、窪島さんにも理解して頂いた様子でほっといたしました。終演後に出演者と和やかに談笑する姿に、本当にやって良かったというのが正直な気持ちです。

これまでも多くの創作劇を創ってきたのですが、実際のモデルの方が居て、しかもご存命と言うことになれば相当の神経を使います。演劇はあくまでフィクションではあるのだが、どこまで事実とフィクションを擦り合わせていくのか?戯曲を書く作家とプロデューサーとの喧々諤々も、芝居が成功すれば一件落着でございます。

東京公演も今日を入れて残すところ3ステージ。18日には唯一の地方公演が山形県大石田町で上演。芝居も種まきです...良質な芝居を少しづつ全国で公演し続けていけば、この国の形も少しはましなものになるんじゃないかと微かな期待を持ってはいるんですがね。

両国と言えば、ちゃんこ料理を出してくれる店が多数あります。そのひとつ「ちゃんこ巴潟」の店前で呼び込みをしてた人をパチリ、多分元関取だと思い声を掛けると「ごっつぁんです!僕の得意技は、見かけ倒しです。」なんてジョークを飛ばしておりました。

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ちゃんこの両国

2022/06/08
【第1625回】

北朝鮮のミサイル発射に対抗して、韓国軍合同参謀本部は6日、米韓両軍が同日に地対地ミサイル8発を日本海に向けて発射したと発表。いやはや、目には目を歯には歯をですな。核をどれだけ保有しているかが、自国を守る唯一の防御手段と言うんですから恐ろしい世界なったもんでございます。これだけの兵器に要する費用で、世界の飢餓も無くなるし、貧困層の減少も果たせるしと、いろいろ考えられるのだが...と理屈で分かっているもののそうにならないのが世の常。どんな時代にも、欲の塊が肥大し権力者が出現することで争いの火種が消えないことが大きな原因だと思います。この歴史的な事実は未来永劫なくなることがないことは悲しいかな間違いないと思います。そうと分かっていながらも、時の権力者にNOを突きつけている人たちが必ず存在していることも、人類がなんとか営みを継続してることで証明されていることが唯一の救いです。

そうなんです!諦めちゃいけません、誰かが止めなきゃ世界の人たちが武器を頼りに生活しなきゃいけない笑いのない悲しみと苦痛に満ちた世の中になっちゃいます。

6日(月)「無言のまにまに」の会場に、52人の小中学生が来てくれました。おいらも後方から観てたんですが、子供たちが食い入るように舞台を観ていたのが印象的でした。この芝居を通じて戦争のもたらす悲劇を少しでも感じて平和への希求心が芽生えてくれるのを願うばかりです。

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両国の紫陽花

2022/06/06
【第1624回】

6月4日に両国シアターカイで幕を開けた「無言のまにまに」昨日で無事2日目を終えることが出来ました。連日多くの方に来て頂き嬉しい限りです。やはりウクライナ侵略をきっかけに、戦争に対する様々な思いが演劇の現場にも顕著に表れているのではなかろうか。アンケートには「戦争は絶対に駄目!」と強い筆圧で書き込められているのが印象的でした。この芝居の中には勿論、家族をめぐるドラマも伏線として描かれています。血がつながっていなくとも、親が子を愛しく思う気持ちはどんな時代であろうとも永遠不滅なものであるという思いが語られています。

今回の芝居でとても印象的なセリフがあります。「無言館」を建てるにあたって戦没画学生の絵を集めるために立ち寄った遺族が語る言葉

「私はあなたが個人でお作りになる美術館だと聞いて兄の絵を預けようと...。兄は...お国の命令で戦地に駆り出されて死んだんですから。その兄の絵をまた国に預けるようなことはしたくありませんでしたから。」

過ちを犯した嘗ての日本の国に対する痛烈な一言だと思います。今まさにロシアで大義なき戦いで無念の死を強いられたロシア兵士の遺族も同じ思いではなかろうか...

一見穏やかな日本の現風景。両国にも太平洋戦争中の東京空襲で亡くなった方の遺骨が納められた「東京都慰霊堂」があります。「無言館」同様、こんな建物を必要としない平和な世の中にしたいものです。

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両国

2022/06/02
【第1623回】

昨日、今週の4日(土曜日)に初日を迎える「無言のまにまに」の最終稽古を観てきました。

5月28日に観た通し稽古に比べ随分と流れがよくなっていました。要するにこなれた感じですね...このこなれたってのがクセもんでございます。調子よく流れに身を任せるのは演じてる当人はとっても気持ちがいいんですが、上面だけの表現になる危険性を含んでいます。同じセリフを喋ってはいるんですが、相手役のその日の出方によって当然返しの言葉の音韻、気持ち、仕草も変わってくるはずです。慣れてはいけないんです...常に新鮮な身体で受信し発信してこそ、鮮度の高い舞台を届けることが出来ると思っています。

生の役者のザラザラ感、ゴツゴツ感が舞台の醍醐味であり、予測不能な展開で観客をいい意味で裏切る芝居こそがベストだと思っています。

水無月になりました。古くは清音。「水の月」で、水を田に注ぎ入れる月の意味です。梅雨、紫陽花、暑い夏の到来を前にして何となく昂ぶる気持ちを抑えてくれる月かもしれません。

未だにコロナも収まらず、ウクライナの情勢も一進一退...そんな状況下で演劇をやり続ける意義は?いろいろと考えますが、水の流れと同じで一旦止めてしまうとなかなか元には戻れない。生きることはアクション、動けば新たなことが視えてくるはずです。

誰も歩いていない帰路の道でマスクを外すと、夜の大気のなんと美味しいことか!当たり前のことが当たり前に感じられない異常な状態が一日も早く終息することを切に願う...

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水無月の空

2022/05/30
【第1622回】

先週の土曜日、6月4日に幕が開く「無言のまにまに」の通し稽古を観てきました。今月の2日から始まった稽古の充実振りが感じられる現場でした。ウクライナへの激しいロシアの侵略のまっただ中である今、第二次世界大戦中、大好きな絵を描きたかったにも拘わらず戦地で無念の死を遂げた画学生の絵が映し出される中、俳優陣はそれぞれの思いで各シーンを演じていました。今回の芝居も、声高に反戦を訴えてるのではなく、名もなき市井の人達の日常を通じて平和であることの大切さを伝えることが出来ればと思っています。

今回のウクライナの件、この国にも遠い国の話ではないかと思っている人が居ると思います。とんでもございません!こうやって戦争はひたひたと身近になっていく怖さを実感し想像力を働かせねば後の祭りでございます。

どんな些細なことでもよいので、戦争にまつわる情報をキャッチし己の範囲でアクションをおこすしかないのでは...本当に戦争は駄目です!この当たり前のことは誰しもが分かっていながら無くならないのが戦争と言う不条理、片や軍需産業で儲かる会社、国。

昨日もテレビでの「ポツンと一軒家」、欲を捨て自然と共に生きる人たちの笑顔、こんな集合体であれば戦争なんて起きるわけがない...そりゃそうだ!美しい空、清冽な湧き水、自分が育てた健気な花々、そして母なる大地、そんなもんに囲まれてりゃ邪心なぞ沸いてきませんがな。

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2年振りに咲きました。
(故綿引勝彦さんに13年前に頂いた花)

2022/05/27
【第1621回】

来週の土曜日に幕が開く「無言のまにまに」稽古も佳境に入って参りました。こんな世界の状況だからこそ上演せねばと強く思う作品です。

いつも思うことだが、どれだけのお客様が来てくれるだろうか?2020年の初春に始まったコロナ禍によるパンデミック、演劇の世界でも大変な影響がありました。今までは楽しみに来ていたお客様の足が遠のき、劇場で挨拶代わりにお互いの無事を確認することも出来なくなり寂しい思いをすることも度々です。コロナ感染を恐れての控えであればいいのだが、これだけ長引くことによって「もういいや...」なんて気持が芽生えてしまい面倒になるなんてことが起きてる気がします。これは芝居に限ったことではなく、この先コロナが収束し、日常が完全に戻ってきたときに、旅をしたい、外食したい、みんなで飲食してお喋りしたいという気持も戻ってくるのだろうか...そんな一抹の不安も覚えるが、同時に人類が営々と築いてきた楽しい習慣が2年半にわたる異常事態によって全く変わってしまうなんてことはないんじゃないかという期待もある。

いずれにしても今回のパンデミックで人との対し方、社会に対する考え方が大きく変化したことは紛れもない事実である。ストレスが溜まり他人、社会に対する寛容さがなくなっていくことが一番心配だ。先日、政府の発表で公園での散歩なんかのときはマスクを外してもいいとの達示があったにもかかわらず、ほとんどの人はマスクを着けたまま歩いている。そのなかで稀に外して散歩している人に対する眼差しが、なんだか正義に満ちた不寛容な様相を感じる...こんな些細なことから分断が始まり、しいては争いに発展する。おいらも含めて心しておきたい。

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朝雨の中のアネモネ

2022/05/25
【第1620回】

最近というか、このところ芸能関係者の死に触れるニュースが続いている。いや、芸能関係者ばかりではなく自殺者が増えているという。人の悩みの深さは他人がどれだけ考察してもわかり得ない。死に直面した当事者に対してどんなアドバイスをしてもお互いの意見が交わることはない...いずれにしても人の命はどんなものよりも尊いし重い。この世の中に人間として生まれて来たことが奇跡だと思っている。戦争、天災、事故で無念にも死んでいった人達のことを思えば一層、懸命に生きねばと思うのだが、人間の持つ弱みにつけ込んで死に神は突然やってくる。死に神を前にして、どれだけ「死にたい」と言う気持を持っていても、心の奥底では「生きたい」という気持が頭をもたげしばし両者が激しく綱引きをするに違いない...人生生きていると少なからず、そんな場面に遭遇することは誰しもあるに違いない。そんな時に、生きることが何故正しいのか?これは理屈ではなく先祖代々、おいらをはじめ人類が営々と生き続けてることが証明している。

生きてて良かったという事柄をどれだけ積み重ねることが出来るか、そのために何をしなければならないかと思っていれば自ずからそうは簡単に死に神が近づいてこないはずだ。

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生きていればこそ見れる夕焼け

2022/05/23
【第1619回】

我が心のライオンズ、なかなか思うようには吠えていませんな...故障者が続出していることもありますが、なにせ選手層がたまらなく薄い感じがします。他球団であれば当然2軍であろう選手が選抜メンバーに入ってるのですから試合前から白旗掲げてるようなもんでございます。投手陣は今までのライオンズと思えないほどの健闘振りなんだが、打撃陣の貧打振りには困ったちゃんです。ほとんどの選手が打率2割前後、なのにぶんぶん振り回すばかり、少しは頭を使うなり、必死こいて粘らんとどうしようもないぜよ。そんな中、素晴らしい選手が現れました。身長164cm体重65㎏はプロ野球の世界では一番の小柄、今年育成として入ったのに5月に支配下登録となり、いきなり先発メンバーとなった途端に大活躍。今年の春までまだ高校生だった18歳の滝澤夏央選手のお陰でなんとか試合を楽しめているってのが本音かな。あどけない顔して剛球をしっかりと捉え50メートル5秒8の俊足で塁を駆け巡る姿はわくわくいたします。守備のセンスもなかなかのもの、今のライオンズの攻撃陣での楽しみは、この滝澤選手と山川選手のホームランしかないんだから悲しすぎます。しかもこの滝澤選手の年棒280万というんだから何年もやって一向に1軍に定着できない先輩選手は情けないったらありゃしない。ベンチでへらへらせんとなんとかせんかい!と喝を入れたい気分でございます。

明日からセリーグとの交流戦が始まります。「グラウンドにはゼニが落ちている」20年以上南海ホークス(現ソフトバンクホークス)の監督を務めた鶴岡一人の台詞である。プロ野球選手はグラウンドで活躍してこそお金が稼げるものだ。短い野球人生、遊んでる暇ありゃしませんぜ...

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戻って来た青空、今日の新宿

2022/05/20
【第1618回】

昨日は世田谷三軒茶屋にあるシアタートラムで「青空は後悔の証し」を観劇してきました。1994年、トム・プロジェクトの第一回公演、片桐はいり一人芝居「ベンチャーズの夜」の作・演出である岩松了さんの最新作です。出演は風間杜夫さん、トムの作品にも出演して頂いた石田ひかりさん他3人の出演による濃密な作品でございました。男女の不思議な関係を覗き見しているようなスリリングな展開は岩松さんのもっとも得意とするところです。

ねじりにねじった台詞の応酬に役者がどこまでリアルに立ち向かえるか?役者の力量が試される舞台です。今年73歳になった杜夫ちゃん、さすがに百戦錬磨の舞台役者、飛翔し迷路の迷い込む言葉を見事に咀嚼し生活感溢れる元パイロットの役を演じきっていました。石田ひかりさんも人柄が滲み出る立ち姿で、新境地にチャレンジしてる姿に好感を持てました。

こうやって、舞台も少しずついつもの日常に戻りつつあるのかな?といってもまだまだマスクも手放せず、会話も控えめ、客席、ロビーが開放的な雰囲気になるにはもう少し時間がかかりそうですね。ロビーを華やかに飾っていた花々も久しく見ておりません。花屋さんも売り上げ減でへこんでいることでしょう。でも、花屋さんには申し訳ないのだが、花を贈る方、貰う方もなんだか見栄の張り合いみたいで、この際この習慣止めてもいいんじゃないのとの意見もちらほら聞こえて参ります。この世界もシンプルライフに!肝心の芝居がつまらなくてロビーの花ばっかりが見事なんてことになったら本末転倒じゃございません。

終演後、ロビーで久しぶりに岩松さんと少し話しをしました。初めて会った時は確か東京外国語大学の学生さんでした。あれから半世紀以上経つんだな...お互いにこうやって芝居やり続けていられることに唯々感謝でございます。

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平和の祈りを込めて、まだまだ咲いてます

2022/05/18
【第1617回】

今日は久しぶりの青空。やはり青い空とおてんとうさまを拝顔できますと、気分も爽やかからっと致します。人間なんて所詮単純な生き物でございます。やたら難しく理屈をこねてややこしくしてる輩が沢山いすぎて世界は混乱に陥いってるんじゃございません。シンプルに思考すれば争いは起こらないと思いますよ。

話は変わりますが、先の吉野家の役員の「若い田舎もんに牛丼の味をジャブ漬けしちゃえばこっちのもんだよ」講演会でいけしゃあしゃあとのたまうんだから大したもんでございます。まあ資本主義の社会ですからほとんどの企業の本音と言えば本音なんですが、場所をわきまえないとえらいことになっちゃいます。この世全て建て前と本音をいかに上手に使えるかどうかが勝負なんだが、この狭間であれこれと複雑に考えちゃうから世の中もおかしくなっちゃうんですな。店の現場の人は汗水垂らして一生懸命に働き、会社をフォローしてるのに少し偉くなっちゃうと勘違いしちゃうんだね。

ウクライナのマリウポリをロシアが完全掌握のニュースが流れています。連れ出されたウクライナの兵士の行く末が心配です。戦場から生み出されるのは憎悪、人が人を傷つけることによってこれから先、何十年何百年そのしこりが受け継がれ同じ争いが又繰り返されることを歴史が証明してるのにいつまでたってもあんぽんたんなニンゲン...

思考も行動もシンプルライフに戻りましょう!地球を救うのはこれしかなかですばい。

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薄暮

2022/05/16
【第1616回】

昨日は沖縄が本土に復帰して50年。様々な催しがありましたが未だ平和な沖縄は取り戻せていない感は否めません。在日米軍基地の約75%が日本の国土のわずか0.6%の沖縄に集中しているなんてことが改善されないまま今日にいたっていることが大問題。毎年毎年日本全土に平等に基地を移動なんてこと言ってるけどなかなか難しいことであります。先ず、他県で基地移転反対運動が始まるし、受け入れる自治体が果たして在るのか否や?嫌なことをすべて沖縄に押し付けることは悪いと思いながら自分の身の安全だけを考えるなんて同じ国民としていかがなものかと思いますが...沖縄で未だに忘れられないのは、40数年前に沖縄宜野湾市に住んでたアパートの前に基地があり、基地内に入っていく若いママを金網越しに泣き叫んでいた女の子の姿です。この情景は今でも生々しくおいらの瞼に焼き付いています。最近では、芝居で沖縄に行った時に乗ったタクシーの運転手さんが何度も謝っていた姿です。「こんな沖縄で...」おいらの方が恐縮してしまいました。終戦の直前に日本本土の盾となり沖縄の人たちの4人に1人が命を落とし、いまだに多くの米軍基地を置きっぱなしにしていること、本当に申し訳ありません!とこちらが謝らなければいけないことなのに...

沖縄の青い空と海、のんびりした県民性、泡盛に沖縄豆腐ようをちびりちびりつまみながら三線の音を聴いてるひとときはパラダイス沖縄でございます♪基地を忘れてこんな至福の時間が早く訪れますように...

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蜜が大好きなクロアゲハ

2022/05/13
【第1615回】

梅雨の気配を感じる金曜日...最近CD「Moment」をよく聴いています♪『雨と休日』という独自のセンスで選んだCDを販売しているショップで最初に購入したのがこのアルバムです。帯に"近くにあっても気づかないことがある。遠くにあって身近に感じられることがある。音楽が鳴り出すとそこには今まで触れたことのない独特の世界が広がっていた。"

まさしくこのアルバムの本質を捉えているコピーである。美しく透明感のあるピアノの音色を包む繊細なパーカッションと、大地に根を張ったような重厚なベース。

このアルバムを創ったミュージシャンがウクライナのキエフ・アコースティック・トリオ。破壊されたウクライナでピアニストのパヴロ・シェペタ他二人が無事であるかどうかはわからない。勿論、この状況ではCDも入手することもできません。

でも、このアルバムに収められた8曲を聴いていると、あの素朴で美しいウクライナの景色が目に浮かんできます。遠くにあっても身近に感じることが出来る音楽のチカラ...

今日もロシア軍の侵攻が続くウクライナでは、北部チェルニヒウ州で学校への攻撃があった。未来の国を育む学びの場を焼き尽くすロシアの未来に待っているのは文化不毛の国であることを自覚すべきだと思うのだが、悪霊が取り憑いているプーチンには聞く耳を持たないに違いない...

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平和なウクライナが聴こえてきます♪

2022/05/11
【第1614回】

今年もアンネのバラが咲きました...ユダヤ系のアンネ・フランクさんは第2次世界大戦中、ナチスから逃れて2年もの間、オランダ・アムステルダムの隠れ家で生活していました。しかし1945年、15歳の時にナチスに見つかり、ベルゲン・ベルゼン強制収容所で病死しました。短い生涯を終えたアンネさんが、このウクライナ情勢に対して平和への願いを込めて咲かせてるようにも見えました。5月9日の戦勝記念日のロシアの映像、その当日にも爆撃を止めないロシア軍、異常を越えて狂気の沙汰としか言いようがない。戦争犯罪人プーチンを何とかせねばこの先何が起こるかわからないほどの不安を覚える日々です。

プーチンにアンネのバラを送りたいくらいだ。がしかし、ここまで悪魔にとりつかれているプーチンは自然が生み出した美しさすら感じることが出来ない状態になっているのではないだろうか。人の価値観なんて真逆になることも十分にありうるからだ。花の美しさを愛でるどころか、真っ赤な薔薇を見つめながらより一層殺戮の感情がメラメラと沸き上がるなんてことになっちゃうかもしれないな...日々映し出される彼の表情はあのヒトラーの狂気顔を彷彿とさせる。ネオナチとの戦いなんてプロパガンダでロシア国民を煽っているあんたこそナチスその者じゃんと言いたい。早く目を覚ませロシアの人民と言いたいところだが、この国もスパイだらけで本音は隠さねば生きていけません。

「無言のまにまに」の稽古、今のところ順調に進んでますが、又もやコロナ感染者が増えています。コロナ、ウクライナ、早くスッキリ、ハッキリした日常になってもらいたいもんでございます。

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平和への願い

2022/05/09
【第1613回】

またもやモノクロ映画の素敵な作品に出逢いました。あの「ジョーカー」で圧倒的な存在感を示したホアキン・フェニックス主演映画「カモンカモン」。妹の息子を預かり共同生活を始めるのだが、大人の視点、子供の視点が錯綜しながら話は進んでいく。決して答えを見出すことなくお互いの立場を認め合い感性を大切にしながらの台詞のやり取りが絶妙である。

自由奔放な息子のキラキラした瞳を観ているだけでも心洗われる感じがしてくるってのは、もはや息子ジェーシーを演じたウディ・ノーマンの類まれなる資質ではなかろうか。

映画の中で主人公ジョニーが、アメリカ各地で9歳~14歳の子供たちにインタビューする生の声のシーンも、この映画が今の世界を生々しくパワフルに伝える効果的な画像になっている。映像もさることながら、この映画全般、一言一言の言葉のチカラがきらりと光る。

それにしても、アメリカの子供たちのインタビューの発言、きちんと社会に対応した答えをしているのには驚いた。日本の子供ちゃんこんな答えはしないだろうなと思いつつ、なんだか不安になってきた。人格なんて幼児体験でほぼ決まっちゃうなんてのたまう人もいるのだが、この映画を観てるとなんだか納得してしまう。いかにいい親、大人(人間として豊かに生きていく道標となる知恵者)に育てられるかにかかっているんでしょうな...

ラスト近くに何度も吐く台詞、「この先何があるのかわからないんだからカモンカモン"前へ前へ"」この映画のメッセージでございます。

今年一番の優しい映画だったカモンカモン!

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前へ、前へ

2022/05/06
【第1612回】

5月4日久しぶりにベルーナドーム(西武球場)に行ってきました。ロッテとの一戦ということで、話題の佐々木朗希投手を観たかったのだが、当日は登板日ではなく残念。今年のライオンズ山川、森選手などの故障、いまだ登板のない今井投手などなど不運続きながら、なんとか今日の時点で勝率五割をキープ。先ずは上出来ではなかろうか...それにしても元ライオンズの選手をお金のチカラでかっさらっていった楽天が好調で首位をキープ。ライオンズとは7ゲーム差がついておりこれ以上離されるとちょいと厳しいかなと言う気がしています。

この日の試合は初回ロッテが5点をたたき出し前途多難、3回には2点追加、この時点で試合がほぼ決まった雲行き。それにしてもこの試合を任されたライオンズの松本投手、この日を楽しみに集まった満員のファンに対してなんともふがいない姿をさらしてしまいました。

十分な休養をもらいながらこの体たらく、この投手の精神面の弱さが露呈、今日の負けはほぼ決まり、もう帰ろうかなんて気分になっちゃいました。ところが、この7点のハンディキャップを負いながら打撃陣がなんとか5点を奪い少しは意地を見せてくれたのが唯一の救いだったかな。

GWということもあって多くのちびっ子ファンが来てました。皆、楽しそうにしていましたね。食べ物が楽しみで来たはずが、何となく盛り上がる球場の雰囲気に感化され野球が好きになり、そのなかからライオンズを支えるプレーヤーが生まれたら嬉しかですばい。

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頑張れライオンズ!

2022/05/02
【第1611回】

神戸芝居カーニバルを30年やっている中島淳さんと本当に久しぶりに逢いました。今年82歳になる中島さん、歳を感じさせない容貌と頑強な身体、尊敬しちゃいます。今やすっかり俳優として有名になった田中眠さんを呼んで浜辺で踊ってもらったり、今は亡きマルセ太郎さんの「スクリーンのない映画館」を世に知らしめたり、ユニークな企画を今尚続けていることに元気を頂きました。おいらも以前、神戸に呼ばれて「中島淳のアジト談義」で話をしに行ったのだが、集まった人たちの顔ぶれになんだか楽しくなり饒舌になった記憶があります。そのあとの飲み会、その後、神戸ゆかりのJAZZライブのお店にも行きご機嫌な神戸の夜を過ごさせていただきました。押しつけでもなく、みんなでおもろいことやりましょか!という雰囲気がここまで永く人の輪を作り保ってきたんだろうなという気がします。やはりリーダーシップになる人の人間性、人を引き付ける魅力、カリスマ性がないと集まり自体は何十年も続かないと思います。ましてや3年目に入ろうとしているコロナ、これは神戸芝居カーニバルにとっても大変な時期だったと話しておられました。経済的な部分も一人で背負うんですから情熱だけではやれるってもんでございません。目の輝きから言っても、まだまだへこたりまへんで!とおいらに激を飛ばしてるようにも見えました。

今日から「無言のまにまに」の稽古が始まります。中島先輩に負けないように、行くところまでいかなあきまへんがな...

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空に躍るや鯉のぼり

2022/04/27
【第1610回】

「ベルファスト」観てきました。おいら好みの映画でしたね。1969年の北アイルランドのベルファストで起きた宗教をめぐる事件を少年(監督ケネス・ブラナー)の目を通して映し出した物語。カラーから白黒に代わる画像、そして最後にまたカラーになるところが憎いです。音楽のセンスもなかなかよろしい!なんだか「ニュー・シネマ・パラダイス」を観てるような感じもしました。子役の良し悪しが映画の成否を握っている代表的な例です。人間誰しも生まれ育った故郷に対する郷愁の念はあると思います。この映画も、生まれ育った田舎町での映画を唯一の娯楽として過ごした体験が、最終的に映画監督に導いてくれました。

家族を担う俳優陣もベスト、特におばあちゃん役を演じたジュディ・デンチが最高でした。

「恋におちたシェイクスピア」(98)でアカデミー助演女優賞を受賞した実力派の女優さんです。現在88歳になる彼女がラスト近くに語り掛けるアップの表情に彼女の人生すべてが語られているようでした。幾筋も刻み込められた皺を隠すこともなく淡々としたシーンは圧倒的な人間の存在そのものを感じました。表現者、人間が一体となって己の歩んできた道を表情一つで表すことが出来ることの奇跡に近いシーンでもありました。

おじいちゃん役のキアラン・ハインズもなかなかいい味をだしていました。彼がしみじみと吐く台詞、「答えが1つなら紛争なんて起きない」「相手が何言ってるか分からないのは、聴こうとしていないから」...ウクライナに対する侵略が今なお続く中、説得力がある言葉でした。

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子カルガモはもうすぐかな?

2022/04/25
【第1609回】

先週。ミュージカル「メリー・ポピンズ」、小劇場公演「夜長姫」を観劇。一口に演劇と言ってもいろいろありまっせという世界でございました。先ず値段がミュージカルは¥14000、小劇場は¥3500.その値段はミュージカルを観ればなるほど納得できます。セット、小道具、衣装、出演者数、そしてなんといっても生演奏。それに莫大な上演権料を考えれば当然な入場料かな。片や芝居を通して身銭を切って舞台に上がる小劇場の役者たちが繰り広げる世界。どっちがいいと問われても困ってしまいます。お金を投資するのはお客さんが判断することですから正解はありません。おいらも芝居で飯食ってる人間の一人としての感想は、ミュージカルのあのショー的雰囲気をみんなと一緒に楽しんで拍手して過ごす一体感がたまらなく幸せなんだろうなと思います。一方、50人から70人のキャパで、真に迫る役者の汗にまみれた演技に心打たれ、なんだか叱咤激励された感覚に襲われるのが心地よいっていう人がいるのも確かです。

いずれにしても、なんでもありの演劇ですから生きてるうちにいろんなもの見て損はないと思います。と勝手なこと書いちゃって、観に行ったところ、もう二度と芝居なんぞは観たくないなんて芝居に出会ったら迷惑千万でございます。実際、おいらも正直そんな芝居と鉢合わせした経験もあり、時間とお金返してくれ!と心の中で叫んだ記憶がございます。まあ、どんな世界でも当てが外れたなんてことはありますので許してちょんまげ...

平和だからこそ、芝居をやれて観てもらえることに感謝でございます。

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バラが咲いた、バラが咲いた
まっかなバラが♪

2022/04/22
【第1608回】

いまだ止むことのないロシアの侵略、プーチンの支持率も80パーセント維持しているという。このアンケートもほとんどが電話によるアンケート、スパイだらけのロシアにおいてどこで誰が盗聴しているかわからない中、まともな答えはできないに違いない。戦争反対(戦争でなく侵略)なんて答えたらどんな仕打ちにあうかわからないので、支持しますと答えるのが順当なところでしょう。このロシア、そして中国なんて国は時の権力者に都合の良いプロパガンダで国を牛耳っているに違いない。

その例として、兵庫に住む72歳の女性のもとに、嘗て日本語ボランティアとして日本に留学し親しくなった中国の若い友人からこんなメールが届いたそうだ...「欧米はウクライナをロシアへの侵攻の前哨基地にしようとしており、ロシアの特別軍事行動には相当の正当性がある。戦争が起きた原因はウクライナ側にある」...そのあとに、日本ではどのように報じられてるかとの問いに、どう返事を書こうか悩んだ末に、彼女との信頼関係を信じてメールを送ったとのこと...「隣国の領土を侵し民間人を巻き込む武力行使は、いかなる理由でも許されない。ロシアや中国には厳しい報道規制があり、国民には事実が知らされていない。自由と民主主義は日本が苦い経験を経て学んだ大切な理念であり、一人一人がその理想に向かって努力しなければならない」

中国の若い女性はどう感じたか?先日、日本からロシアに退去を命じられた外交官関係の家族が日本を飛び立つニュースが流れていた。彼らは故国に帰って何を語るのであろうか?恐怖政治で支配している国が世界を蹂躙しようとしている今、世界のすべての人は人ごとではなく自分のこととして思考し行動しなければならない。

今日のプーチンの発言、1千人の市民、500人の負傷兵が身を隠しているとされるウクライナ南東部の港湾都市マリウポリのアゾフスターリ製鉄所に「ハエ一匹も通すな!」。人の命などなんとも思わぬ冷血漢らしい発言だ。こんな男の横暴を許さざるを得ない国連ってなんなんだろうね?

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モッコウバラ
花言葉~あなたにふさわしい人~

2022/04/18
【第1607回】

先週の土曜日は、半世紀前に一緒に芝居やっていた戦友の芝居を観劇。25歳半ば演劇群「走狗」でテント担いで全国を興行していた仲間です。今回の芝居のタイトルは「命短し、恋せよ少女、赤き唇褪せぬ間に 熱き血汐の冷えぬ間に 明日の月日のないものを」あんたらのあの日あの時の心情そのままじゃん。作・演出、倉沢周平、出演者の一人に小林達雄、二人とも集団の中では過激な人達でしたな。まあ、それだけ芝居に対して命懸けだったんですね。おいらも決して手を抜いてやってたわけではないのだが...唯、他の諸々よりは食べれないけど芝居の世界が面白かったので楽しみながらやっていたというのが本当のところかな。何だか面倒くさくなったらすっぱりと芝居の世界におさらばし海外ふらふらしたと言うことだけ。

それにしても、老骨むち打って終生アングラ役者として舞台に立っている今年78歳になる達ちゃん。その姿見てるだけでなんだか嬉しいです。なんだかんだ言っても己の道を信じて己の好きなことをやってるんですから潔いのではないのかな...ほとんどの人が生活のためといいながらやりたいことを半ば放棄しながら一生を終えるんですから。作・演出の周平も満足に歩けない姿で本書いて演出して一本の芝居に仕上げているんですから大したもんでございます。「走狗」の仲間もすでに3人亡くなりました...後何年、こうやって芝居に関わっていけるのかわかりませんが、今回の芝居のタイトルのように、熱き血汐の冷えぬ間に、明日の月日のないものと、肝に銘じながら生きていくしかありませんな。

おいらも然り。

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ハナミズキ
花言葉「私の思いを受けてください」

2022/04/15
【第1606回】

この季節の楽しみは日々増えていく新緑の光景を目にすることである。冬の寒い間にじっと耐えて春の到来を夢見て潜んでいた葉っぱちゃんのなんと若々しく鮮やかなこと。コロナ、ウクライナで晴れない心身を癒してくれる大きな存在です。生まれたばかりの赤ちゃんのすべすべした肌と同じです。秋の枯れ葉の時期まで少しづつ形を変え楽しませてくれる葉っぱちゃん、そして樹木に彩りを添える花々。考えてみりゃ、これら自然の生き物は無償の行為で人様に身を挺して差し出しているのに、人間どもは何と愚かな行為をしでかしているのか...地球と言う星は人間だけのものでないはずなのに、驕り昂ぶっているとしか言いようがない。

この時期、ウクライナの人たちも春の訪れを楽しみにしながら寒い冬の季節を過ごしていたに違いない。なのに、一人の権力者の欲望のために地獄絵図を見せつけられた。今回の侵略をきっかけに世界の各国が武力の強化、そしてエネルギー問題でまたして原発に依存しようとしている。原発にミサイルを撃ち込めば地球滅亡のシナリオが進行するというのに、そして抑止力の核の開発には拍車がかかる始末。

すべてが便利になり、快適に生活できるようになったのは理解で来るのだが、なんとも世知辛い世の中になってしまいましたな...今更、こんなこと言っても仕方がないとは思うのだが、貧しかったけどキラキラした周囲の人たちの表情に囲まれた昭和が懐かしい。

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待ってました...

2022/04/13
【第1605回】

いやいや90歳からだってやれるんだ!できるんだ!「90歳セツの新聞ちぎり絵」木村セツさんの本、読ませて見させていただきました。2018年末にご主人が亡くなり、2019年元旦から長女の勧めで新聞ちぎり絵を始めたそうだ。1929年奈良に生まれ戦時中は学徒動員、戦後は銀行などに勤めながら三人の子供を育てるという典型的な市井の人。ご主人が入院中に病室に飾ってあったちぎり絵に興味を示したのがきっかけだという。それにしても、これだけの色彩感覚、構図、センス、これらはセツさんが90年間に養われた美意識から生まれたに違いない。ご主人が亡くなる前に発した言葉「いくつになっても勉強せなあかん」という遺言もセツさんの気持ちを大きく動かしたに違いない。

そうなんです!人間死ぬまで学びです。いくつになっても分からないことが次から次へと出現し未知なる旅は果てしない、でもその旅は己の好奇心をくすぐり血肉、いや知肉を湧き立たせるってわけだ。お金を掛けなくたって夢中にさせるものがある人はホンマに幸せだ。

新聞紙をちぎってピカソ顔負けのアートを創っちゃうんだから頭下がります。

ちぎり絵はこれからも続けますか?という質問に

「やめやひん。続けたいですな。これが楽しい。生きがいです。これがないとどうも仕方ないわ、寂しいて。こんなにえらい熱中するもんなかったなあ。テレビもえらい好かんし...これやったら一生懸命やりますわ。妙になあ。不思議でならんわ。これなかったら生きがいないわ。」

いや、シンプルでござりまする。こんな言葉吐きながら健康で長生き出来たら最高ですたい。

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人生まだまだこれからだ!

2022/04/11
【第1604回】

昨日も暑かったけど、週明けの今日も、はや夏日と言ったところです...先週の週末「コーダあいのうた」を観てきました。今年のアカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚色賞の3部門を受賞したということで出かけたんですが、都内の上演館も一日2回ほどの上映で受賞後の盛り上がりは感じませんでした。それとも1月下旬からの上映開始なので興味ある人はもうすでに観ちゃったのかな?おいらは吉祥寺オデオンで観たのだが客席もそんなには埋まってはいませんでした。ストーリーは家族4人のなか、唯一聴力をもつ少女が聾者の家族との確執、そして自分の夢にゆらぎながらも猛進していくというもの。確かに障害を持つ人たちの家族の必死に生きる姿に歌が絡まって感動的な映画があることは紛れもない事実です。この映画に、勿論ケチをつける気はありませんが、作品賞としては腑に落ちない気がしました。おいらだったら「ウエスト・サイド・ストーリー」を推したいな。あの名作のリメイクを感じさせない最高級の映画テクニックを駆使し、オリジナルを現在の社会状況を照らしつつ、差別、ジェンダーなどなどにメスを入れる新たなミュージカル映画を創出した巨匠スティーブン・スピルバーグ以下スタッフ、キャストに一票投じたい。今回助演女優賞だけというのも納得できませんな。でも、このアカデミー賞も最近ぶれぶれのような気もします。これも政治的な配慮や、世界の動向なんかを気にしながらの選考になっているのかもしれない。式典で受賞者が殴るなんてハプニングもありますし、どの世界でも何が起こるかわからない予測不能な状況になっています。

プロ野球の世界でもありました。昨日の千葉ロッテマリーンズ佐々木朗希投手の完全試合達成にはビックリ。28年振り史上16人目、20歳5カ月史上最年少の記録、13連続奪三振、1試合計19奪三振、日本プロ野球84年の歴史で最高の投球と言っても良いという完璧さでした。東日本大震災で亡くなったお父さんもきっと喜んでることでしょう...

こんな素晴らしいことはいくら起きても嬉しいものですが...戦争だけはやめて欲しいし、起こしてはいけません。

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競艶

2022/04/08
【第1603回】

ウクライナの惨状が日々伝えられ、コロナの収束未だ見えない。暗澹たる状況のなかなんとか明るい話題を届けたいという思いなのだろうNHKの地上波が大リーグ、エンゼルス対アストロズの開幕戦を中継してました。もちろん大谷翔平選手が先発ピッチャー、トップバッターでの出場と言うことでの特番でございます。これまでも何名かの日本人プレーヤーの活躍はあったものの、彼の二刀流は本場で大きな衝撃と感動を与えたに違いない。あどけない表情でありながら、アスリートとしての類まれなる才能と、一人の人間としての思考、行動の素晴らしさが多くの人を魅了したに違いない。彼のグッドプレーを観て頂くことで、すさんだ気持ちを少しでも和らげて下さいとの趣旨でのNHKの英断といったところか。

残念ながら試合には負けましたが、5回まで投げて1失点9奪三振の好投、ヒットも出ませんでしたが次回に十分期待を持たせる最初のプレーでした。

それに反して我ライオンズの森捕手の行動はまことにいただけませんな...チームもなかなか上昇機運に乗れず途中で交代させられ、ロッカーに戻り商売道具であるキャッチャーマスクを叩きつけ、その時に中指を骨折したという醜態。完治まで二カ月かかるという最悪の事態。自分の顔を守ってくれるマスクを投げつけるなんて言語道断、ましてやチームの中心選手がそんなことしちゃったらチームワークにも影響するのに何考えてんの?と言いたい。どんな優れた成績を残そうとも、自分の生活を支えている道具をおろそかにする選手はあきまへんな。なんだか大阪桐蔭学高校野球部出身の不祥事が続いています...監督さん強けりゃいいってもんじゃございませんことよ。球を磨くのは当然として、心を磨くことを忘れちゃいけませんことよ。

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まだまだ散ってなるものか

2022/04/06
【第1602回】

新宿西口広場では、4月10日まで「April Dream」と称して302人の写真を展示して、それぞれの夢を語っている。4月1日と言えば嘘をついていい日として知られてきたのだが、これからは夢を語ろうという日にしようとする試みだ。考えてみれば今から半世紀前には、この西口広場は社会を変えようという若者で溢れかえっていた。広場のあちらこちらで討論会が始まり、夜になるとフォーク集会で広場は異常な盛り上がりをみせた。機動隊がここは広場ではない通路と言いながら集まった人たちを解散するようにと命じると小競り合いが始まり大変な騒ぎになりました。おいらも機動隊のお兄さんに「歌ってなんでいけないの?」というと、いきなり人が居ないところに連行されぼこぼこにされました。その時、優しい機動隊のおじさんが仲裁に入らなかったら、おいらは多分新宿警察署に連行されたに違いない。

そんなことを想い出しながら展示された写真を丁寧に見て廻りました。「プロレスラーとして後楽園のリングで戦いたい」「母をハワイ旅行に連れて行く」「昆虫食を広めたい」「ラーメン屋さんになって美味しいラーメンをたくさん食べたい」「手話で踊るよろこびを伝えるUDダンサーになる」などなど。夢を抱きそれに向かっていくことは誰しもできることだ。紆余曲折があるのは当然なのだが、その過程をいかに楽しむかは人それぞれだ。例えば海だって自分の所有物ではないのだが己の想像力でいかようにも変えることが出来るってもんでございます。夢のない人と話して退屈した経験は誰しもあると思います。ホラ吹くぐらいの夢だっていいんじゃありませんか、いついつまでも夢を持ち続けて生きましょうね皆の衆。

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Dreams

2022/04/04
【第1601回】

今日は又、冬に逆戻り、冷たい雨が朝からしとしと降り続いています...と言うことで最後のサクラを愛でる日だと思い先週の土曜日に井の頭公園に行ってきました。吉祥寺と言う人気の街を支えているのがこの公園です。適度の広さと交通の便の良さが人気の要因かな。この日も多くの人達が訪れ様々な楽しみ方をしていました、コロナがなければビニールシートを拡げて大宴会の様子をおすそ分けしてもらえるのですが、なかなか感染者数が減らない現状では、静かに桜並木を眺めながら通り過ぎるか、限られたベンチに座って小声の会話で時間を過ごすしかありません。でも、おいらはこちらのスタイルが好みかもしれません。酔っぱらって大声で叫ぶ姿は、サクラちゃんだってお耳ふさいで咲き心地がよくありませんことよ。「今年も咲かせてくれてありがとう」なんて感謝の気持ちと慈愛の眼差しで見つめると、花びらも嬉しくなって一瞬濃いピンクの色になっちゃう気がします。いずれにしても今年も咲いてくれました。景気、災害、戦争などなど世の中の変化にも動じることなく礼儀正しく咲き誇ってくれるサクラは、いつまでも争いを止めないニンゲンに無言の警告を発しているようにも見えました。

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散るサクラ残るサクラも散るサクラ

2022/04/01
【第1600回】

今日から新年度のスタートです。サクラの季節と相まって晴れ晴れしい季節のはずなんですがコロナ、ウクライナ、そして諸々の値上げでなんだか皆さんの顔も今一つパッとしない表情を日々見かける日々が続いています。そんな時は、モーツァルトの曲を聴くに限ります。おいらは普段はジャズを聴く機会が多いのですが、この暗雲垂れこめる世界の情勢を見聞きするうちにどうしても晴れない気分になってしまいます。もともとポジティブシンキングで生きてはいるのですが、このウクライナはかなりきついです。そしてまたまたコロナ第7波の予報なんて聞いちゃうとガックシでござりまする。その暗澹たる気持ちを一掃させてくれるのが天才モーツアルト。ピアノソナタ、ピアノ協奏曲、セレナーデ、弦楽四重奏曲、弦楽五重奏曲、交響曲などなど...まさしく天才の名にふさわしい幅の広さです。どれを聴いても飽きることなく、もやもやした気分も一瞬にして吹き飛んでしまいます。中でも、グレン・グールドのピアノソナタこれは絶品です。クラシックの枠を飛び越え自由自在、変幻自在に演奏する音色には遊び心満載。お堅い人には、独善的で邪道なんてことも言われかねないと思いますが、一音一音に緊張感と次なるジャンプ力を感じさせる悪魔的な魅力に溢れている点、彼も又天才かもしれない。彼の演奏によるバッハも、研ぎ澄まされた日本刀の切れ味を感じさせる凄みを感じます。

とにかくこの時期は、よりよい音を耳にすることによって心身のバランスを整えるしかありませんね。それにしても、多くの芸術を生み出したロシアに住みながらもプーチンは良き音楽に接する機会が無かったのかもしれませんな...今からでも遅くない!側近のイエスマンの方々、プーチンにモーツアルト全集を至急支給してくださいませ。

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井の頭線のサクラ

2022/03/30
【第1599回】

長いこと生きてるといろんなことがあるのは当然だ...その中でも、あまり居心地が良くないこととして自慢話を聞かされること。人生を振り返って苦労したのは分かるけど、あれをやったこれをやったと聞かされても、おいらはフンフンと聞くしかない。自慢話なんていうのは、所詮自分を誇らしくみせるための方便でしかないのではないか...たしかに何かをやり遂げた功績は認めるにしても、その逆、何をしなかったということにもっと意義を感じてもいいんではないかと思う。人を傷つけなかった、差別しなかった、欲に溺れなかった、争いに参加しなかった、人の上に立とうとしなかったなどなど、これは世の中を平穏にするための人として基本的な所作かもしれない。このことをわきまえていれば戦争なんてものは起こらないはずだ。世界を悲嘆に陥れたプーチンに聞かせてあげたいもんでございます。

今日も満開の桜がそれぞれの風景に溶け込み様々な景観を生み出しています。中でも河岸の桜並木は全国のあちらこちらで春の風物詩になっています。おいらが住む杉並区にも善福寺川、神田川なんかで毎年楽しませて貰ってはいるのですが、なんと今年は、神田川に気持ちよさそうにしなだれかかる枝を切り落としたもんだから間抜けな光景になってしまいました。勿論、樹木は頃合いをみて剪定しなきゃならんのは理解しているのだが切り落とされる様を見るたびにおいら自身が切り刻まれてる気がして痛々しい気分になっちゃいます。もしや、おいらの前身は樹木だったかもしれませんな...何百年も生き続けた大木に出会うと思わずハグしちゃいますことよ。

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菜の花とサクラ

2022/03/28
【第1598回】

全国のあちらこちらでサクラ満開の知らせが届いています。サクラの開花を見るにつけ春の到来と新学期、新社会人の新たな人生の門出を祝いたい気分になっちゃいますね。それなのにコロナはいまだに収束せず3年目に突入。そしてウクライナ、いつものように突き抜けた解放感でサクラを眺めることが出来ないのがとても残念です。サクラも一年待ちわびてやっとこさこの日を迎えてご対面というのに世界はとんでもないことになっていて戸惑っているんではないかと心痛みます。

この国も戦時中にサクラは戦争推進者に都合よく利用されていた過去がある。お国のために、サクラが散る姿を殉死ともてはやし、潔く散るなんてことを良しとする雰囲気を作り上げていました。美しい花を眺めていりゃ人を殺めるなんて発想は出てこない筈なんだが、日々流されるウクライナ戦地の映像は破壊されつくした灰色の光景。こんな風景が日常化した兵士には優しさなんて感情は皆無に違いない。心身とも疲弊し無慈悲かつ暴力的な思考が支配し殺戮さえいとわないロボット状態になってしまう恐怖集団と化してしまう。

サクラとともにプロ野球も開幕しました。我がライオンズ幸先良いスタートを飾りました。昨年のリーグ覇者オリックスに勝ち越し。昨日なんぞ三回まで6点先行され、こりゃあかんと思いきや逆転勝ち...最下位からの優勝も夢でないと思いたくなります。

ウクライナの人たちも春の訪れとともに、いつものように精一杯野原を駆け巡りたかったに違いない...そんな日常をいとも簡単に崩壊させるプーチン、一刻も早く冷静さを取り戻して欲しい!

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新宿に咲くサクラ

2022/03/25
【第1597回】

このご時世、若き女性のパワーは目を見張る勢いだ...演劇の世界も然り、男性の力を借りず女性だけの劇団があちらこちらで誕生している。昨日も演劇科という学部がない東京芸術大学の卒業生だけで結成された「理性的な変人たち」という集団の芝居を観てきました。既成の演劇という枠に収まることなく幅広いジャンルで活動している表現者が楽しく躍動感あふれる舞台を創っていました。今回のテーマは性暴力、今までは人前で言えず声を出すことをはばかれていた幼少時の性の屈辱的な事件を家族にからめてのストーリー。この集団のネーミングにふさわしく感情に溺れることなく理性的に展開してた気がします。

何事も諦めずに継続していくことが一番です。経済的にも大変でしょうが若さと表現に対する飽くなき情熱があれば怖いものなんかございませんことよ。いまだ人が観たことがない表現が一つでもあればやる意味があるってもんでございます。今回はコロナで二度中止になりやっと実現できた第二回目の公演。今日あらためて感じたことは女性のデリケートな諸問題、やはり女性だけで演じると実に説得力がございます。

性暴力といえばあの文春砲であげられた脇役男優、これが真実であれば「ぶらり途中下車の旅」でちょい不気味だがいい味だしていたのにOUTだね。出会ったお店の人もがっかりだし、なによりも苦労してなんとか役者として認められ始められたのに...人間ちょいとした気の緩みから又一から出直し。それにしてもおいらが一番嫌いなこと、立場を利用して弱い立場の人を私利私欲に走り傷つける行為。これやっちゃたら人間おしまいですばい!

プーチン、もはや遅いけど目を覚ませ!

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少しづつ...

2022/03/22
【第1596回】

演劇に関わる人間にとって、いやアートを愛する市民にとって悲しい出来事だ。ウクライナ南東部マウリポリで避難所として使われていた劇場が破壊された。続いてリビウ中心部にある劇場「レスクルバス」、1910年ごろに設計され、映画館、芸術劇場、大衆劇場として変遷を重ね普段は約100ある客席の多くが集まる人気の劇場でもあった。侵攻直前の2月23日までは現代劇を公演していたそうだ。3月も約20公演が予定されていた。侵略国ロシアも数々の芸術を生み出した国の一つであるはずだ。劇場にはありとあらゆるジャンルのアーチストの汗と涙と魂が棲みついている。その貴重な建物を意味なく破壊してしまうロシア兵、プーチンはもはや人間ではなく悪霊が宿り阿修羅と化してしまったに違いない。

昨日までは春を待ちわびて公演を散歩する老夫婦、子供連れの家族、若いカップルの姿があったのに、一瞬の間に地獄の戦場となり悲嘆にくれるウクライナの人達。今日と同じ明日が訪れるものと誰しもが思い描いて一日を生きる人々に思いが至らない権力者に鉄槌を下したい。人々の尊い日常をいとも簡単に奪う戦争の無慮さを気にとめない鈍感かつ無神経な権力者を持つと自国ばかりか隣国にも悲劇をもたらすいい例だ。

押しつぶされ踏みにじられた人達の思いを拾い上げ身近な人達に伝えていく。いくつになってもどんな境遇であっても、そんなデリケートな神経はいつまでも保っていたい。いつか戦争が終結し、今再び当たり前の日常が戻ったときに何よりも求められることであるに違いないからだ。

一昨日、東京は桜開花宣言。春を告げる桜、このときめき、今年もウクライナの人達と共有したかった...一刻も早い停戦を願う。

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サクラサク

2022/03/18
【第1595回】

コロナ、ウクライナ、そして地震...世界は混迷を深めるばかりだ。ウクライナの今の状態が同じように日本で発生すればという仮定の話のなかで、自分であれば武器を手に侵略に立ち向かっていくのか?命優先で積極的逃避を選択するのか?日本人誰しもが突きつけられる問題なのかも知れない。今の日米安保条約にしたって、米軍関係者が日本国内で事件や事故を起こしても、日本側が十分に捜査できないなどさまざまな問題を抱えた地位協定がある限り有事の際果たしてアメリカは日本を守ってくれるのかどうか?はなはだ懐疑的と言わざるをえない。

それにしてもロシアの国営テレビ「チャンネル1」の夜のニュース番組の生放送中、原稿を読むアナウンサーの後ろで、女性が「戦争反対。戦争止めろ。プロパガンダを信じないで。ここの人たちは皆さんにうそをついている」と書かれたプラカードを掲げた「チャンネル1」の編集者、マリナ・オフシャニコワさんの勇気...二人の子供がいるのだが亡命せず国内で戦争反対を訴え続けるという...あなたにこのような勇気ある行動が出来だろうか?今回のウクライナの出来事、世界の人たちがこれからの国の在り方、幸せの意義、争いのない世界の施策などなど多くの難題を提示しているに違いない。

コロナも来週の21日をもって全都道府県、蔓延防止法が解除される。この2年間いろいろあったのだが今一つ決め手がない様に感じる。これからはウィズコロナで行くしかないのではなかろうか...

一昨日の地震はさすがに目が覚めた。東日本大震災から11年目に又、同じ東北で発生するのだから油断できないということだ。いつだって地震に備えておく必要性を強く感じた。水、食料、電源などなど...そして、やはり地震大国日本での原発は命取りになりかねないことを確信した次第だ。

ささやかでもいい、地道に質素にいまあるすべてに感謝して過ごすことの大切さを教えられる今日この頃である。

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春が来た2

2022/03/16
【第1594回】

♪吹けば飛ぶよな将棋の駒に~「王将」昨日、下北沢の劇場で観劇。「王将」と言えば舞台では新国劇の辰已柳太郎、緒形拳、映画では坂東妻三郎、勝新太郎、三國連太郎がそれぞれ主人公坂田三吉を演じた。おいらの記憶では舞台では辰已柳太郎、映画では坂東妻三郎の坂田三吉が一番印象に残っている。この舞台設定、ストーリーは庶民の町大阪の匂いがたっぷりと盛り込まれ、「王将」=「大阪」というイメージでもある。おいらは大阪に行くと必ずと言っていいほど通天閣地域を散策する。今でもジャンジャン横丁では、坂田三吉の夢を追う将棋指しが集まる将棋クラブが存在する。老若男女が入り乱れる中、若者はもちろん藤井聡太を目指しているんだろう...でも、三吉の指した将棋は今でもこの場に息づいている。

昨日観劇した「王将」は星屑の会による公演である。でんでん、ラサール石井、小宮孝泰、渡辺哲さんなどなど、一癖も二癖もある役者さんが小さなセットでいぶし銀の演技で3時間ほどの舞台を見事に演じ切った。北條秀司さんの3部作戯曲6時間の作品を演出の水谷龍二さんがうまくまとめていた。

勿論、この「王将」トム・プロジェクトでも2000年に松尾スズキ演出、板尾創路、片桐はいり、宮藤官九郎、荒川良々さんらの出演で上演している。名作は時代を超えいつまでも朽ちることが無いと同時に、時代の空気にあわせながらこれから先も幾度となく上演されるに違いない。♪うまれ難波の八百八橋~月も知ってるおいらの意気地~

このご時世、芝居屋も意気地でやっとります!

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春が来た

2022/03/14
【第1593回】

この週末もウクライナの情報で各メディアは多忙を極めていたようだ。片や相変わらずたわいもないバラエティ番組を能天気に垂れ流しつづける平和惚けしたテレビ各社。たしかにわからないでもない。このたるんだご時世に、パラオリンピック開催中に、まるで戦争映画を観るような光景が突如現れたらどう対処したらいいのか戸惑ってしまう。そのうちにこれがまさしく現実だと理解し出すと、とても正視できない状態になりお笑い放送への逃避行がはじまったというわけ...しかし、想像力を働かせれば、この日本だって他山の石ではないはずだ。ロシア海軍の軍艦10隻が津軽海峡を通過し、方領土に配備された地対空ミサイルシステム「S300」の訓練を行ったと発表。こりゃ分からんぜよ、第三次世界大戦になると間違いなく北方領土を起点として日本に攻め込んでくるだろう。それに乗じて中国は台湾を侵略し、近くにある沖縄米軍基地を巻き込み、北から南から日本は包囲され日本沈没というシナリオを突き進むことは間違いない。

いまあるこの平和なんていうものも、ひとりのとんでもない権力者によってかくも容易に吹き飛んでしまうってわけだ。天災は防ぎようもないこともあるのだが、戦争と言う人災は人間の叡智で何とかなるとは思うのだが、核と言う恐ろしいものを手にした瞬間、その叡智そのものが砂上楼閣と化してしまうのだから皮肉としか言いようがない。

週末の公園、東京での親子の幸せな寛ぎと、ウクライナの母子の悲嘆にくれる姿、世界は引き裂かれた現状を我々に突きつけている。今やれることは何か?己が出来ることを発信するしかない...それにしても今日の東京は夏が来たくらいの異常な暑さだ。

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穏やかな公園

2022/03/11
【第1592回】

今日は東日本大震災が発生してから11年目になる日である。コロナ、ウクライナと目まぐるしく世界は混迷の度を深めているのだが、この震災はいつまでも忘れてならない出来事である。未だに行方不明者2523人、避難者38139人、原子炉の処理もこれからいつまで続くのかわからない現状のなか、まだまだ復興途上であることに間違いない。この時期になると、各メディアがその後の被災者の記事を掲載するのだが、この傷跡は生きてる限り癒されることがないことを痛感するばかり...復興された風景を見るにつけ、あの地元で生活した匂いらしきものは当然の如く感じられないし、無機質なコンクリートの塊を見せられると胸が痛む。街は人の体温が作り出すものであり、いかに立派な建物を作ってもそれはただの箱でしかない。津波を防ぐ要塞のような防波堤は勿論津波を防げても、海と人を遮断し海と共に暮らした人間にとっては目隠しをされたも当然。沿岸の人達が海を友として生きてきた歴史にも微妙な変化が見られる。

今回のウクライナ侵略によって、原発の再稼働の動きが世界の各国で見受けられるのも無気味である。原発がまさしく諸刃の剣となり、時の権力者が都合よく支配するなんてことになるとますます厄介である。世界で唯一の被爆国であるこの国ですら核保有の意見が出る始末、そしてロシアも北方領土に軍備拡大、なんだか一気にきな臭くなった世界。青い地球が戦禍で真っ赤になるなんてまっぴらごめんだと誰もが思ってるのに雲行きは怪しい。

ユニクロさん、やっぱり営業停止しましたね...それにしても、ユニクロがロシアで営業継続の報が入ったことを受けてメディアが何のコメントもしなかったこと、あれだけテレビでCM流してるんだから、そりゃ無理だよね。

それにしても、一刻も早いロシアの侵略が止むことを切に願う!

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しだれ梅

2022/03/09
【第1591回】

今おいらに課してる一日の数十分...筑摩書房が去年9月に出版した岸政彦編「東京の生活史」、聞き手を募集し、その後150人に聞き手それぞれが自ら選んだ語り手の話を聞き取り、合計150の生活史を集めるというプロジェクト。2段組み1200ページという分厚い本なので一気に読むわけにもいかないというより、1日ひとりの人生をじっくり味わうというおいらのプロジェクトを立てたという訳だ。まだまだ読み始めたばかりだが、どの話も面白く語り口からその時代の風景、背景が甦って来るってんだからたまらんですばい。ただ漠然と俯瞰しながら東京と言う街を眺めていれば気付くことがなかった人間に、しっかりと耳を傾ければはっきりとその人間の生き方が見えてくる。そんな人たちがこの東京という街を支えていることに改めて気づかせてくれる。

日常会話でよく聞くフレーズ「語るに足らぬ人生」、いやいや「語るに足る人生」テンコ盛りで芝居にも出来る話が満載。小難しい言葉を羅列するより、人間の生身の言葉のほうがざらざらとした感覚で心地よく身体に入ってくることを立証した本である。

ウクライナから隣国に逃れる女性、子供、老人、すべてを捨てて命を選択する人達。逃げたくとも小児がんに罹り逃げ場を失った子供たちと病院関係者。これらの映像を見ればプーチン政権も自壊するのだが情報統制してる現状ではなかなか難しい。世界が知恵を出し合い何とかしようとしてるのに、あのユニクロさん、ロシアから撤退しないなんてあり?

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桜を待つ梅

2022/03/07
【第1590回】

「ザ・ユナイテッド・ステイツVS.ビリー・ホリディ」鑑賞。おいらも長いこと聴き続けているビリー・ホリデイの名曲を圧巻の歌唱と熱演で2時間釘付けにしたアンドラ・デイに拍手を送りたい。特に彼女の代表作である「奇妙な果実」(歌詞が黒人へのリンチを歌った内容で、暴行されて木に吊るされた黒人の遺体を、"果実"にたとえた)をホリデイが憑依したかのようなステージでの姿は圧巻である。とても演技未経験な歌手だとは思えない。

この映画は伝記映画と言うよりも、アメリカの暗部をえぐった映画であり、今なおその差別も含めてアメリカの抱える病が継続していることで締めくくった事も意義深い。この映画を観ることで、アンドラが人間としてアーティストとして、ビリーと深くつながっていく変遷が堪らなく愛おしい。

早速、家に帰りビリー・ホリディのレコードとCDを聴き続けた。本人の歌声は優しく語りかけるように心地よく、今までとは違う形でストーンと身体に落とし込めた。アンドラの表現力がビリー本人との橋渡しをしてくれたに違いない。悲惨な人生だっただけに歌うことによって魂を昇華させようとする姿に、こちらが心洗われる思いだ。

こうやって映画を観たり、音楽を聴けるのも平和あってのこそ。ロシアのアーチストたちも心痛めているに違いない。一日も早くウクライナの侵略を止めて欲しい。爆撃で一歳半の子供を亡くし悲嘆にくれる若い母親の姿、逃げるところが無いと泣き崩れる老婆の諦めの表情、なんとか停戦を願う。

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憑依

2022/03/04
【第1589回】

キエフが危ない...35年前にシベリア鉄道でソ連に行ったことを想い出す。広大な大地を8日間かけての鉄道旅、停車した駅のソ連の人達の素朴な顔、乗り合わせた旅人も様々な人種、時には助け合い談笑しあったあの日あの時の光景、風景が懐かしい。モスクワボリショイ劇場で観たキエフバレー団の「白鳥の湖」の感動も未だに記憶している。東ヨーロッパ最古の都市で芸術に彩られた美しい街を気が狂ったとしか言いようのない権力者の一声で破壊されようとしている。日々流される映像を見ながらなんだか歴史が逆流し、なんとか少しでも死者が出ぬようにと願うしかない。ここまでくるとロシア人が反戦を訴えプーチン政権を打倒すればと思うのだが、声を上げただけで拘束されちゃうんだから話にならない。

訓練だと思って集結した若きロシア兵も、まさかの侵攻で戸惑い心中穏やかではない。そりゃそうだ、同じ民族を理不尽に殺めるなんて相当の葛藤があったに違いない。理性ある軍の指揮者が撤退を命じるなんてことを期待したいのだが、これも今のロシアの体制では反逆罪での死に繋がりかねないのでなかなか難しいのではないか...

こんな状況のなか、コロナもなかなか収束しないのだが、コロナどころではない不安と心配が世界を覆っている。確かにこの時期、酒を飲んでいても食事をしていてもなんともすっきりしない...世界の平和あってもこその日常の至福の時間を早く取り戻さねばならない。

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寄り添う

2022/03/02
【第1588回】

「芸人と兵隊」昨日、松戸演劇鑑賞会で無事千秋楽を迎えることが出来ました。昨年12月中旬に稽古を開始した時点は東京も一日25人程度のコロナ感染者だったのが、年が明けるとまたたくまに1万、2万と増えだし今回の公演も難しいのではと思っていました。がしかし、スタッフ、キャストの皆さんの並々ならぬ努力により昨日までの20ステージを完走しました。昨日、開演前と終演後に役者さんの楽屋に行きましたが皆、感無量、よくぞやりきれた奇跡だ!と口をそろえて言ってました。勿論、スタッフの皆さんの日々の暮らし方も大変だったと思います。こんな時こそ、何とか演劇の側から未来につながるヒントを発信したいという思いが一つになった結果だと思っています。一昨年の9月から今日まで10本の作品をコロナ禍のなかで無事上演できたことにおいら自身も驚いている次第です。芝居を待つお客様があっての演劇です。全国の演劇鑑賞会の皆さん、そして東京はじめ地方のホールに足を運んでいただいている皆さん、本当に感謝です!まして、こんな時期に周囲の反対を押し切って来ていただいているのですから普通の三倍四倍の感謝印です。

昨日もラスト近く、桂銀作役の村井國夫さんが一段と声を張り上げ「戦争なんぞする国のお偉方は馬鹿揃いだ...」この時期にこのセリフ、平和を願う人達の思いが込められていました。

無益な戦争で死んでいく人たちが出ないように...世界の知恵者が何とかウクライナ停戦に持ち込むようにアクションを起こすことを願う...

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平和な時を告げる

2022/02/28
【第1587回】

21世紀は地球上の生き物に難問を次から次へとぶつけているような気がします...その一番登場してならない独裁者を誕生させ新たな戦争の世紀を生み出そうとしています。いまウクライナで起こっていることはその序章かもしれませんね。不安定な時に必ず怪物が現れ、一瞬にして世界を混乱に陥れてしまうこの現状を止めるには、世界の良識ある人たちが声をあげるしかありません。あのプーチン、金正恩、習近平などなど独裁で支配してる人相はどうみたって悪相、こんな人物をトップに据えなきゃならん国民も可哀そうだが選ばざるをえなかったのも国民。日頃、為政者に対して監視の目を緩めるといつだってどこだって同じようなことが起きるってことです。

日々、ウクライナの現地から流れる映像を見るにつけ居たたまれない気持ちになってきます。無益な戦いで死んでいく人達の思いもいかばかりか...

今まさにこの時、トム・プロジェクトで上演中の「芸人と兵隊」のなかで戦地の慰問団の団長(村井國夫さん演じる桂銀作)が慰問中に、相方、妻(柴田理恵さん演じる花畑良子)を戦地で亡くした後に語る台詞。 

「戦争なんぞする国のお偉方は馬鹿揃いだ。少し考えりゃ分かることなんだ。銃を持って殺しあうより、笑いあうことの方がずっと素晴らしい。そんなこともわからない奴は大馬鹿だ。そんなことも分からずに戦場に兵隊さんを送り出す奴は救いようのねえ馬鹿だ...俺はな、戦争が憎い。俺から良子を奪った、美津子から母親を奪った戦争が憎い。」

この芝居、あのあんぽんたんな独裁者たちに観せたいもんでございます。

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平和な一日のおわり

2022/02/24
【第1586回】

島本理生「2020年の恋人たち」、森あゆみ「聖子」を読了。どちらも女流作家である。この二冊に登場する主人公に相通じるものは、好きになった男にはけっして従順にならず一人の人間として己を貫き通す点ではなかろうか...いろんなタイプの男性が次から次に登場するので自分はどのタイプかな?なんて読み方もできちゃいます。この時代男女平等、好きになれば犯罪を起こさない限りとことん愛し合い、嫌いになれば別れて当然。女性目線の展開なんですが、男性が取り残されることもなく引っ張っていく筆力は大したもんでございます。「2020年の恋人たち」の主人公が恋に陥る最後の男性とスペインバルセロナに旅するシーンは、スペイン大好き人間のおいらにとっては懐かしかったな。あのラテンの国に行くと愛のチカラが倍増し、ますます非日常の世界に陥ってしまうんですね。

「聖子」、新宿の花園神社近くに存在した文壇BARを経営し、太宰治の「メリイクリスマス」のヒロインのモデルになったといわれるママ林聖子さんの話。残念ながら2018年に90歳になった時点で閉店となりました。檀一雄、吉村昭、田村隆一などなどなど昭和の文壇を飾った作家の名前が嫌味なく登場します。このママさんも当然嫌味なく名だたる小説家と対等、そして可愛く接するところがとても心地よい。

ロシア、ウクライナに侵攻の報...世界はいよいよ覇権主義と自由主義の戦いに突入いたしました。独裁者が権力を握れば好戦的になるのは必然、そしてあれほど戦争の不条理を何度も味わっている筈なのに...歴史に学ばないアホな権力者にはほとほと呆れてしまいますばい。

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新宿花園神社の梅

2022/02/21
【第1585回】

あのタモリが、なんで街のチンピラがあれほど足上がるの?で当時話題になった1961年に上映された「ウエストサイド物語」が名匠スティーブン・スピルバーグ監督によってふたたび映画化されました。正直、大変気に入りました。何故この時期に制作されたのか?

その意図は十分に盛り込められていました。アメリカが抱える分断、世界が再び戦禍に晒されようとしているときに何が大切か、映画の基本であるエンターテインメント性を失わず157分飽きさせることなく魅せてくれるんですから、さすがスピルーバーグでございます。

TV映画「激突!」、「ジョーズ」(75)、「未知との遭遇」(77)、「レイダース 失われたアーク」(81)、「E.T.」(82)、「ジュラシック・パーク」(93)、そして「シンドラーのリスト」(94)でアカデミー作品賞と監督賞を受賞。この「シンドラーのリスト」のテーマ曲いつ聴いても心に染み入ります。この監督の少年のような遊び心と平和への希求、そしてどの映画にも共通する愛の大切さ、そりゃ娯楽性に満ちた良質な映画が出来ますわ。

ほとんどが無名に近い役者を起用したのも監督の映画に対する未来へのメッセージではなかろうか...むしろ無名の若手を起用したところに新しい「ウエスト・サイド・ストーリー」が誕生したとおもいます。この映画の見どころである「トゥナイト」「クール」「アメリカ」「サムウェア」など数々の名曲とダンスシーン、監督の映像マジックで大満足。おいらはシニア料金¥1200で何だか申し訳なくなるくらいの満足度でございました。

特に印象深かったシーンは、前作にアニタ役で出演していたリタ・モレノが歌う祈りの歌 Somewhereそして様々な争いに対し「話し合えばわかるはず...」と淡々と語る台詞。御年90歳になる老優の佇まいは監督の期待に十分応えておりました。

こんな映画はやはり大きなスクリーンと迫力ある音響設備を備えた映画館で観るべし!

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スピルバーグの挑戦

2022/02/18
【第1584回】

虚と実...遅まきながら「MINAMATA」観てきました。先ずは日本国内でもドキュメンタリーで水俣を扱ったものはあるものの、テレビ、映画でのドラマはなかったジャンルを異国の人の企画で実現に漕ぎつけたことに拍手を送りたい。ジョニー・デップの強固な意志を感じる。企業が生み出す公害に対して何となく腰が引けてるこの国のありように一石を投じたことは間違いない。がしかし、映画の随所で事実と異なる点がいくつか見受けられたのが残念でならない。水俣病が発症してから66年、この長い間には企業、住民との間には言葉に尽くせない軋轢があり当事者ではないと理解できないことが今なお山積している。映画はある意味フィクションでありドラマチックに仕上げるにはいくつかの嘘を盛り込むのもわかる気がするが、この重いテーマを考えるといかがなものかとも思う。しかし、この水俣も然り、時代と共に風化していく中で問題提起したこと自体が大切なことだ。

昨日の北京オリンピックの女子フィギアスケート、ドーピング問題のなか最後にプレイしたロシアのカミラ・ワリエワ選手の演技、彼女の実力からして考えられない度重なる転倒。

彼女が3位以内に入賞すれば表彰式もなし、前に演技したロシアの二選手は3位以内入賞は決まってる中、様々な憶測が生まれる。国家がらみのシナリオなのか、彼女の心理的な動揺から起きたミスなのか...なんとも後味が悪い大会になったことは間違いない。15歳の少女の日常は家とスケートリンクの往復のみ。今回彼女を指導したエテリコーチが、クラブを「工場」、選手を「原材料」と表現したことがある。この言葉から想像するに、選手は使い捨て商品として生産される非人間的な指導の中で進行しているさまが見えてくる。

ホンマに可哀そ過ぎるワリエワちゃん。独裁国家に帰国した彼女のこれからの人生に幸あれと願いたいのだが、虚と実に塗れたこの国に対する不信感は根強いものがあるのですごく心配しちゃいます。

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ウソかマコトか

2022/02/16
【第1583回】

寒風の中お疲れさんでございます...コロナなんかどこ吹く風、路上パフォーマーは生活がかかっております。いや、のし上がって我ここにあり!と叫びたい。新宿の南口で二組が演じておりました、パントマイムのお兄さんは少し切れが悪い感じがしましたが、この寒さのなか精一杯笑顔を見せておりました。一方、福岡から出てきた二人のお兄さん、甘い声で娘さんのハートをしっかりと捉え、ライブ中継をどこぞに送っていました。自家製のCDもそこそこ売れて少しは生活の足しになったかな。今は無名かも知れないが、いつの日か全国区になるに違いないという確信を持ちながら見つめる娘さん達の眼差しが何よりも強い味方でございます。

それにしても今年の北京オリンピック、なんだかしらけちゃいますね。おかしな判定、ドーピングなどなど中国、ロシア、バッハの暗い闇からのおかしな声が漏れてきそうな感じです。

なんども言いますが、オリンピックなんかは止めちまえ!各競技、世界選手権が設定されてるんだからそこで競いあえば充分だと思うんだが...金に塗れたオリンピックいつまでやるんでしょうかね。

「芸人と兵隊」先週、ねりま演劇を観る会の公演に行ってきました。芝居の中身は一段と進化していました。この状況がこのチームの結束をさらに強固にしている風にも見えました。この日は東京23区にも大雪警戒注意報が流され開催を危惧されてたんですが、ここでも演劇の神さんは芝居を守ってくれました。終演後に待ってましたとばかり大量の雪が降りだしましたが、お客様が口々に「今日はたくさんいいもの頂いた」なんて声を聞くにつけ、あらためて芝居創ってきてよかったと思った次第でございます。

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寄ってらっしゃい、見てらっしゃい

2022/02/14
【第1582回】

もう我慢ならない...そんな気持の人達が雪解けの街に繰り出していました。久しぶりの井の頭公園も犬の散歩、若いカップル、シニア世代の人達が「コロナも収束し、今年こそはほんまもんの春来ておくれ...」なんて願いを込めぶらついておりました。いつ終わるとも知れぬコロナちゃんにはほとほと疲れ果てましたなんて顔もありました。吉祥寺の街に唯一残っていた銭湯「弁天湯」も遂に閉業してしまいました。この地で80年近く営業してたんですから地元の方に愛されていたんでしょうね。土地柄、銭湯内でロックの生演奏もやっていたとのこと、役者、絵描き、ミュージシャンがたくさん住んでいる街なので当然かもしれません。それにしても日本から銭湯が次から次に消えていきます。

おいらも少年時代、博多の末広長屋での一番の楽しみはガラの広っぱでの野球、宝劇場では三本立ての映画、そして一日の最後の楽しみは銭湯でした。湯船の中で遊んだり、親父の背中を流したり、くりからもんもんを背負ったお兄さんにびくびくしたり、裸同士の生身のニンゲンの会話に何故かそそられたものでした。好きだった女の子と鉢合わせした時は、それはまあなんだかそわそわしながら、あれこれ想像しながら湯船に浸かっておりました。男湯と女湯の区切りはあったのだが湯船の下部は20センチぐらい空いて繋がっていたので余計に湯の温度と相まってのぼせていたのかもしれません。

トム・プロジェクトでも昨年10月に銭湯を舞台にした「にんげん日記」を上演したばかりです。3人の老親友が休業していた銭湯を復活するために悪戦苦闘する話でした。生身と言う言葉が疎遠になる昨今、この言葉が一番似つかわしい銭湯が無くなっていく様を見るにつけ、昭和が霧の彼方に消えていくようでもございます。

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銭湯すたれば、人情もすたる

2022/02/09
【第1581回】

新宿の街は相変わらず雑多な街である...昔ながらの古い建物が立ち並ぶ新宿ゴールデン街、思い出横丁(随分前まではしょんべん横丁と呼ばれてました)、新宿二、三丁目辺りなんぞは野良猫にとっては居心地が良い場所である。居並ぶ飲食店からのおこぼれ、ノラちゃんをこよなく愛する心優しきおばちゃんなんかが結構面倒を見ている。この寒い日が続く昼間なんかは、お日さまの暖かいぬくもりを求め警戒することもなく顔を出す。久しぶりに拝顔するノラちゃんの表情は様々である。このコロナ禍の中、野良猫社会も生存を懸けての仁義なき戦いが繰り広げられているのではないかという痕跡を見るにつけ痛々しい。傷だらけの顔に、きつい眼差し、食料難なのか毛並みも悪い。おいらが近づくと少し警戒する様子も窺える。平和な時代には向こうから甘えるようにすり寄ってくるノラちゃんも沢山いたのだが、やはり時代環境の影響は末端の生き物にも及んでいるに違いない。

昨日、岩合光昭の世界ネコ歩きを観たのだが、フランス・ブルゴーニュ地方を呑気に散歩するネコの背景がなんとも美しい。ブドウ畑、古い小さなお城、ワインの貯蔵庫を何気なく回遊するネコの佇まいに、なんと幸せなネコちゃんたちだろうと思った次第だ。人間も同じ、どこで生まれどこで育つかによって運を左右するってわけだ。

でも、新宿のノラちゃんの必死に生きる姿にも十分学ぶものがありました。ある日の新宿ゴールデン街、千鳥足で歩くおいらに厳しい眼差しを向けるノラちゃんが「しっかり生きんかい!」思わず背筋がしゃきっといたしました。

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居眠り運転はいかんニャー

2022/02/07
【第1580回】

北京冬季オリンピックが開幕しました。選手の皆さんは、この日のために錬磨したすべてを曝け出し気持ちの良いプレーを連日見せてくれている。なのに釈然としないのは習近平、バッハの動きである。ともに権力の座をさらに延長すべく、この大会を政治利用してる気がしてならない。北京中心部にぼったくりバッハ会長の銅像まで作っちゃうんだから笑っちゃうね。台湾が入場した時の習近平の苦々しい表情、ウクライナが入場した時のプーチンの居眠り顔。あまりにも露骨じゃありませんこと。なにが平和の祭典だい!もう、オリンピックなんか止めちまえ、世界各地で現在進行形の紛争をどうにかしてからのオリンピックじゃありませんかと言いたい。ぼったくり男爵が未来永劫計画している、お金によるお金のためのオリンピックにいつまですり寄ってくるのかな...先程のニュースで中国共産党の元高官と性的関係があったと告白した女子テニス選手が告発を否定したとのこと。これもバッハが仲介し習近平にゴマすってるんじゃないかしらとの疑惑ぷんぷんでございます。

先日、新宿でうら若き女性に声を掛けられました。なんじゃろかいな?と耳を傾けると、その娘さんポケットから一枚の紙を取り出しおいらに見せつけました。「お金が無く、ドーナツもミルクも買えません。どうかお金を恵んでください。」手書きではなく印刷されてました。あらためて顔を見ると東南アジアの20歳前後の女性でした。たぶん怪しい組織に動かされてるに違いない。おいらも長年、新宿ぶらり散歩の達人をしておりますので、それくらいの見分けはできますことよ。

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梅は百花のさきがけ

2022/02/04
【第1579回】

昨日、第63回毎日芸術賞の授賞式がホテル椿山荘東京で行われました。昨年9月に上演した「帰ってきたカラオケマン」で風間杜夫さんが受賞しました。昨年の菊田一夫演劇大賞に続いての受賞。本当におめでたいことでございます。この賞の63年間の受賞者には滝沢修、宇野重吉、市川猿之助、中村吉右衛門、仲代達矢、蜷川幸雄などなどそうそうたるメンバーが名を連ねています。その中の一人になったのだからたいしたたまげた役者さんです。

人生よく運がいいとか悪いとかいいますが、間違いなく杜夫ちゃん運気を呼び込む気運を持っているんでしょうね...おいらも彼とは半世紀近くの付き合いになるのだが、酒と麻雀に明け暮れてる日々だと思っていたのだが天才はきっちりと人目につかないところで努力してたんですね。そうじゃなきゃあんな振り子の幅が広い芝居はできませんことよ。台本の読みが深いし、相手とのやり取りの間がいいし、もちろん声もよし、要望があればミュージカルだって挑戦しちゃうんだから恐るべし72歳。トムで25年間演じ続けたひとり芝居、まだまだ新作に挑戦する気概十分、多分ライフワークとして一生やっていく気でいると思います。と言うことはおいらも伴走者として走り続けなきゃいかんのですかね...

授賞式の後、いつもは盛大なパーティが開催されるのですがコロナちゃんのお陰で中止。受賞者を囲みながらの団欒がなんとも微笑ましく、賞の重さを改めて感じさせてくれる貴重な場になるのだが誠に残念...いつまで旅を続けるつもりなのかなコロナちゃん、もう十分に世界旅行を満喫したんではないかと思うんですがね。

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よっ!千両役者

2022/02/02
【第1578回】

昨日、無事に「芸人と兵隊」首都圏ブロックふなばし演劇鑑賞会で初日を迎えることが出来ました。オミクロンの爆発的な感染の中、開催にこぎつけた会員さんたちの獅子奮迅の活動には只々感謝です。役者なんぞは板の上に立ってなんぼの世界。それを支えるスタッフの皆さんも滞りなく閉幕してこその充足感でございます。まだまだスタートしたばかり、油断してはなりません...3月1日の松戸演劇鑑賞会まで一気にいきまっせ!

最近、ある演劇祭の企画概要の一部がWEBサイトに流れ話題になっています。その一文とは...「演劇が浸透していない」「人生において不必要なものにカテゴライズされてしまう」その理由のひとつとして、その要素の1つがかつて反権力が演劇や芸術の要であるかのような謂れを受け、今も根強くそのような言動が蔓延ることであるが、演劇が一般社会においてそのような印象を持たれることはその分野の未来的な展望を阻害することに他ならない。本来であればその権力というものにさえ左右されずに羽ばたけるものが、自身の構築した鎖によって自由と世界の広がりを失い、結果として今の演劇は公共、大衆というものから大きくかけ離れている...この演劇祭のスポンサーの一社が、テレビなんかにひょいひょい出演しカレーの宣伝してはるおばはん経営のホテル。おいらもこのホテルに宿泊して驚いた記憶があります。なんと客室内に南京大虐殺や従軍慰安婦問題を否定する書籍が置いてありました。いろんな考え方があるにしろここまで露骨に不特定多数人たちが宿泊する全部屋に配布することには明らかな政治的意図を感じさせずにはいられませんでした。よくは分かりませんが、今回の演劇祭このスポンサーの圧力があったのかな...

演劇にはいろんな考え方があって当然なのだが、何らかの圧力に屈しては断じていけませんことよ。

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冬の森

2022/01/31
【第1577回】

先週の週末は完全なる巣ごもり状態。明日からの「芸人と兵隊」首都圏演劇鑑賞会に備えオミクロンに感染するわけにはまいりません。家の近くを散歩するか、読書、音楽、テレビでの映画鑑賞で時を過ごすしかありません。昨日は、今年1月23日に亡くなったアメリカのジャズシンガー、ビージー・アデールを追悼する日でもありました。地味ながら年輪を重ねた音色は酒の相棒にはぴったりです。日本の曲も見事に彼女のものにして惚れ惚れいたします。2009年8月に77歳で亡くなったエディ・ヒギンズと彼女は対をなすカクテルジャズと言ったところかな...ジャズ愛好家の方々癖のある人達も随分いるので困ったもんでございます。セロニアス・モンク、ビル・エバンス、ジョン・コルトレーン、マイルス・デイヴィスなどなど名だたる奏者とこの二人を同等に扱うなんてけしからん!とのたまう権威主義者、教養主義者、教条主義者の人達はおいらに言わせれば、ホンマのジャズの真髄をわかってらっしゃらないと思いますよ。何が一流で何が三流か?学問じゃございませんことよ、聴く人の感性がより深くより広ければ心地よく身体に溶け込んでいくもんでございます。この二人に共通していることは、己の生き方が鍵盤を通して上品かつリリカルであること。おいらの歳くらいになると、この音色は至極のプレゼント、少しばかりオーバーかもしれませんが生きててよかったとさえ感じ、酒が一段と美味しくなるんでございます。

キャスト、スタッフも事前のPCR検査、全員陰性が先程判明。明日から3月1日までの公演無事終えることを願うだけ...演劇の神さん頼みまっせ!よしゃ!任せといてや...との声が聞こえてまいりました。

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酒を片手に♪

2022/01/28
【第1576回】

昨日、東京芸術劇場シアターウエストで公演している青年座の「ある王妃の死」を観劇。今から130年前に、日本の軍隊が朝鮮の王宮の壁を乗り越え王妃を引きずり出し殺害するという事件をシライケイタ氏が戯曲した作品である。韓国内ではほとんどの人が知っているのに日本人はほとんど知らない。こんな事柄があちらこちらに残っているのが未だ日本と韓国がしっくりしない要因であることは間違いない。演劇が歴史の闇に光を当て白日の下にさらけ出すことの役割は大切なことである。劇団青年座とシライケイタ氏の今回の上演に拍手を送りたい。

今回の芝居で、冒頭から最後まで生演奏でドラマを盛り上げた大藤桂子のチェロが素敵だった。奏でる音色で場面に登場する人物の心模様、葛藤を表現するチェロという楽器の素晴らしさを改めて思い知らされた次第だ。我が家に帰り早速、おいらの愛聴盤に聴き入った。

ラトビア(旧ソビエト連邦)出身のミシャ・マイスキー、姉がイスラエルに亡命したことにより強制労働収容所で18か月間の生活を強いられる波乱万丈の人生を送ったチェロ奏者である。今から35年ほど前、新宿ゴールデン街「ガルガンチュア」で耳にし即購入した「夢のあとに」は何度聴いたであろうか...J.S.バッハ: 無伴奏チェロ組曲もなかなかです。

もう一枚、おいらが愛するパブロ・カザルスの「鳥の歌 カザルス・ホワイトハウス・コンサート」スペインフランコ独裁政治に最後まで抵抗した20世紀最高のチェリストです。

鳥の歌を演奏するカザルスの息使い、声まできこえてくる演奏に何度も涙がちょちょぎれました。

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人の声に一番近い音域を持つ弦楽器

2022/01/26
【第1575回】

いやいや、オミクロンの感染のスピードがあまりにも速すぎ、到る所で困惑しております。舞台の世界でも役者、スタッフに感染者が見つかり公演中止の報が流れています。昨日の新宿の街ではマスクもしないで大声で叫んでいるオッちゃんがいました。注意したいのだが、逆襲に合いとんでもない事態に陥った事件が連発している昨今、そうはたやすく声は掛けれません。当人もコロナ禍の中、情緒不安定、錯乱状態に陥っているのでは...

カズオ・イシグロ「クララとお日さま」読了。ノーベル文学賞受賞後の作品、内容は人間と対等に付き合える程に進化したアンドロイドの視線からの物語。現世の人間の様々な視線、表情、見ている対象物、発言内容などを観察して、登場する人物の感情を読み取れる高度の能力を備えているロボットに着眼点をおき文学にしたのが素晴らしい。この主人公クララが人間以上のレベルで思考し感情を吐露する姿を通して、生身の人間に問いを発しているのでは...いや、近未来このロボット達が世界を支配する世界が来るかもね。

道の側の花壇に葉ボタンが咲いていました。この葉ボタンに「可愛いね、綺麗だね...」なんて声を掛けてる2,3歳の女の子には若い父親が連れ添っていました。コロナで保育園が休園になりパパが休みを取り世話をしているんじゃないかしら...オミクロンの包囲網に包まれつつある日本列島でございます。

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葉牡丹
(花言葉~愛を包む)

2022/01/24
【第1574回】

今日の東京は少し寒さが緩んだ感じです。「芸人と兵隊」東京公演無事に終えることが出来ました。東京の感染者1万人を突破したというのにキャンセルもせず劇場に足を運んでいただいたお客様に只々感謝です。単なる風邪と言う人もいるし、もっと厳しくとメディアを通じて吠える人もいるし、いずれにしても制作する側にとっては日々綱渡りの連続です。

2月1日からスタートする首都圏演劇鑑賞会17ステージも、3月1日のラストまで何事もなく上演できることを信じています。芝居を愛する鑑賞会の皆さんも万全の態勢で準備していることだし、あとはこちらが感染しないこと。マスクしないで飲食しているところは、この時期は絶対にアウトですね。このウイルスの恐いところは、自分が感染すると多くの人達の生活を奪うという危うさを抱えている点だと思います。おいらも今日はいつものお店のランチは控え弁当を買って感染に備えました。それにしてもこの国の感染症対策いつまでたってもスピード感が欠如してますな...政治と各省庁のパイプが詰まってるんじゃありませんか?

沖縄の名護市長選挙、沖縄の苦悩が視えてきます。誰も助けてくれない一人ぽっちの島に対して何のチカラにもなれないこの国、そして国民のひとりとして本当に恥ずかしいです。日本に返還されて今年で50年...今の体制がまたこれから50年続く予感さえします。あの青い空と海の美しい風景と等しい生活環境はいつ訪れるんでしょうか...何度か訪れた沖縄の人たちの、何かを訴えるような眼差しが目に焼き付いて離れません。

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おつかれさまでした。

2022/01/21
【第1573回】

19日に初日を迎えた「芸人と兵隊」も今日で一応、東京公演を終えます。

今日から蔓延防止が施行され現場はなお一層の緊張を強いられています。こんな状況の中劇場に足を運んで頂いてる皆さんが神様に見えてきます。家族には、こんな時にわざわざ芝居観なくても良いのにとの制止を振り切っての観劇。こちらもそんな気持ちに応えるべき芝居をしないとの思いを背負いながらの日々です。昨日の芝居はそんな声に十分に見合う芝居でございました。一寸したことから芝居を大いなる変貌をいたします。コロナが変異するんだったら芝居だって変異しないと割が合いませんことよ。こちらの変異は害ありません、思いきり変幻自在に変異しまくってお客さんに喜んでいただければ本望でございます。

芝居が終わってのカーテンコールの拍手が芝居の出来不出来を証明してくれます。拍手にも様々な表情があります。その微妙なニュアンスを感じ取るのもプロデューサーの仕事です。満足のいく拍手の質量を頂いた時はほんまにプロデューサー冥利につきまっせ...

昨日、読売演劇大賞の発表がありました。今回の芝居に関係している二人が受賞してました。村井國夫さんが優秀男優賞、つい最近上演したトム・プロジェクトプロデュース公演「にんげん日記」の演技に対しての受賞は嬉しい限りです。そして今回の演出を担当している日澤雄介さんも主催する劇団チョコレートケーキの作品賞、優秀演出家賞の受賞。なにも賞を貰いたいために芝居やってるんじゃないのだが、これもこれからの励みだと思ってのご褒美だと思えばよろしゅうございますことよ...

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今日千秋楽の亀戸

2022/01/19
【第1572回】

おいらが暮らす街のいつもの書店が突然閉店しました。40数年間地元の愛された素敵な本屋さんでした。大型書店と違って、この店のセンスで並べられた本を眺めているだけで幸せな気持ちになれました。おいらもできるだけこの店で本を購入しようと努力はしたんですが世の中の流れには勝てなかったんですね。だって、若い人あまり本読まなくなったもんね。電車に乗っても9割以上の人がスマホに一心不乱状態、そんなに情報欲しがってどうするの?ゲームの暇つぶし面白いのかな?誰かと連絡とってないと不安なのかな?スマホから何か新しいもの生まれるのかな...とにかく、この世界を息苦しくしているひとつの要因がスマホであることは紛れもない事実だと思います。そんな新兵器に追いやられたのが出版業界、この豊かな世界を築き上げた役割に本が果たした役割は多大なるものがあると思います。そして、悩み苦しんだ時に救いの手を差し伸べてくれたのも本に記された数々の言霊、その本を扱う書店が無くなったときは世界の滅亡といっても過言ではないと思います。

新しい本と出会い、趣向凝らした装丁を手に取りページをめくる感覚はまだ見ぬ世界に誘ってくれるワクワク感満載です。アマゾンで買えるじゃんなんて利便性もわかりますが本屋さんに行って書棚に並べられた書物を眺めるあの時間こそ読書の第一歩であると思います。今日も車内で、古びた文庫本を手に貪るように読書する女学生を見つけたときはおいらも何だか嬉しくなりました...まだまだこの国にも未来はあるのかもしれないななんてふと思っちゃいました。

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冬景色

2022/01/17
【第1571回】

寒い日が続いていますが今日はいくらか寒さも緩みました。昨日「芸人と兵隊」の最終稽古でした。さあ今年こそはと思っていた矢先のオミクロンちゃん、困ったもんでございます。芝居はまるで新作のような仕上がりでした。2019年の初演の時に比べキャストの皆さんの再演に対する心構え、そして一部キャストが変わり化学反応が起きたのかメリハリのついた芝居になっていました。改めて芝居ってものはまさしく生き物であり違う角度から異質の風、命を吹き込むと変異しちゃうもんだと思った次第です。コロナと同じやん、そっちが変わるんだったら芝居だって変わってみせるわい!それにしても現場の皆さんの気持ちはいかばかりか、気を付けてもかかっちゃうこのオミクロンに怯えながらの日々はつらいもんでございます。明後日の本番から又もやマンボウ、お客さんだってひいちゃいますがな...でも、来てくれるお客様が居る限り公演をやりきるのが我々の責務。このご時世、普段はマスクをしながらの稽古で相手の表情が今一つ見えずなかなかとやりにくいものだが、昨日は最終稽古と言うことでマスクなしでの一発勝負...気合十分でした。どこに行ってもマスク顔、これは異常な世界ですね。「目は口程に物を言う」ということわざがありますが、口の表情だって意味深なものがあります。目と口があってこその人様の表情、一日も早くマスクを外せる日が来ますように...

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冬空の裸木

2022/01/13
【第1570回】

不穏な日々が続く時には、こんなご時世ですから家で音楽、読書、映画なんぞで過ごすのが何よりです。昨日は久しぶりにスペイン映画の鬼才ペドロ・アルモドバル監督とペネロペ・クルスが、4度目のコンビを組んだミステリー仕立ての恋愛ドラマ「抱擁のかけら」を鑑賞。この監督ちょいと変態気味なんだが、色彩感覚、既成のモラルをぶち壊すエネルギーが心地よい。そして何よりも女優ペネロペ・クルスの美しさと大胆さにしびれてしまいます。1992年作「ハモン・ハモン」で鮮烈なデビュー、そして2007年の作品「ボルベール 帰郷」ではスペイン女性の生活感もたっぷりと魅せてくれました。いい意味でも悪しき意味でも最もスペイン的な女性ではなかろうか...それにしてもアルモドバル監督、女性を描くのがとても上手です。女性と言う生き物はこうなんですよと能書き垂れてるインテリよりも、彼が発する映像言語で理屈を超えてビシビシ伝わってくるところが奇才たる所以です。

スペイン映画でおいらが大好きな監督ビクトル・エリセ、81歳になるのだがなんと3本しか創っていない。1973年「ミツバチのささやき」、1982年「エル・スール」この2作品はおいらにとっては宝物みたいな映画である。スペインの風土、人物像、歴史的な背景を深く掘り下げ、まるで絵画を観てる感覚にさせ想像力を喚起させる貴重な作品。

スペインサロブレーニャに住んでる時に、アンダルシアの白い村アルプハラでエリセ監督を見かけた時に声をかけたことが懐かしいです。

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雪積もるシエラネバダの手前がアルプハラ村

2022/01/11
【第1569回】

3連休の明けの今日は雨がしとしと降る寒い日になりました...先週の週末は高校、大学ラグビーの日本一をかけた試合がありました。いつも思うのですが、あの大きな体でがっつんこしてもなかなか痛まない彼らの屈強な身体能力にただただ感服する次第です。コロナ禍のなかでのストイックな日々を過ごしての戦い、あっぱれでございます。15人が一体となって前に進む姿を観るにつけラグビーファンはたまらんですばい。
来週には「芸人と兵隊」の本番を控える中、オミクロン株の拡大に気をもんでおります。今年こそはと思ってた矢先こんなに早く感染者が増えるなんて困ったもんでございます。沖縄なんぞはひどいもんで、未だこの国はアメリカの属国なんだと思い知らされました。そしていつも真っ先に被害を被るのは沖縄。この島の人たちの苦渋はいかばかりか...今年は沖縄が本土に復帰して50年を迎えますがこのシステムはいつまで継続されるのか?北朝鮮、中国、ロシアの挑発が激しさを増す中、なかなか解決策が見つからない現状、こんな時こそ戦後非戦を貫いてきた日本が外交力を通じて力を発揮すべきだと思うのだが、この国の軟弱な政治家さんには悲しいかな期待が持てません。
神保町にある岩波ホールがコロナによって54年の歴史に幕を下ろすことになりました。本屋街にできたこのホールで名画を随分観させていただきました。「旅芸人の記録」「大樹のうた」「家族の肖像」「惑星ソラリス」「バベットの晩餐会」などなど...儲け主義のシネコンと違って質の良い映画を選りすぐって、いつも観客に何かを突きつける作品を上映してきました。時には、ちょいと芸術至上主義が鼻につく時期もありましたが、このミニシアターが果たした役割は大きかったと思います。

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先週の雪の日

2022/01/06
【第1568回】

裸木の季節がやってきた...枯れ葉が舞い散り、木々に宿っていた命も役目を終え凛々しく空に向かって屹立する樹木が美しい。贅肉をそぎ落とし寒風に対峙する武士のようでもあり、気ままに姿形を変えた枝たちは舞踏を楽しんでる風にも見える。何時間眺めていても飽きないこの季節の風物詩でもある。
この裸木を眺めながら2005年に上演した「ダモイ」を想い出した。シベリアに抑留された山本幡男さんが帰国の願いも叶わず病床から綴った一編の詩。

雄々しくも孤独なるかな 裸木
堅忍の大志 痩躯にあふれ
梢は勇ましくも千手を伸ばし
いとはるかなる虚空を撫する

極寒のシベリアで、葉を落としきって野に立つ樹木を見ながら書いた詩の一部である。そして自分は帰国できない覚悟で自分の思いを友に託す。
「今のぼくの考えをね、来るべき次の時代の...なんて言ったらいいんだ、右でも左でもない、赤でも黒でも...全体主義でも個人主義でもない新しい...第三の思想に繋げたいんですよ。どうしても...出来るかどうかは分かりませんが...。どうしても...。」
山本幡男さんの残した言霊を駆使しながら戯曲にした作・演出家ふたくちつよしさんの筆力も素晴らしかった。こんな時代だからこそ、この作品は上演せねばと今でも思っている。
こんなことを書いてるうちに外は雪景色、雪にめっぽう弱い大都会、そしてひたひたと迫ってくるオミクロン、今年もどうやら波乱含みの年になりそうですな。

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会社のベランダから

2022/01/04
【第1567回】

明けましておめでとうございます。

トムも今日から仕事始めです。新年早々、嬉しいニュースが飛び込んできました。風間杜夫さんが昨年上演した一人芝居「帰ってきたカラオケマン」で第63回毎日芸術賞(毎日新聞社主催)を受賞しました。72歳を感じさせないパワーで会場を沸かせたこの芝居、今年の9月に再演が決まっています。昨年は緊急事態宣言のなかでの公演で観客制限があり、相当のお客様を断らざるを得なかったこともあり見逃した方には是非観ていただきたい作品です。

それにしてもオミクロン株少しずつ増え始めていますね。年末年始の街中も人で溢れ大丈夫かな?という気がしていますが、もう以前みたいなスタイルに戻ることはないのではと思っています。とにかく油断しないで無茶しないことです。何事も気配に敏感であれということを肝に銘じて行動するしかありませんね。

おいらの正月は杉並大宮八幡神宮初詣でスタートしました。元旦の15時に行ったのだが長蛇の列、1時間半後にやっと初詣が出来ました。寒さの備え完全防備で向かったのですがさすがに身体が冷えちゃいました。もう若くないんだから、なにも元日に行かなくてもと思ってしまいました。焦らずに大地をしっかりと踏みしめて、今年も何とか素敵な芝居を届けることを念頭にスタートいたします。

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初詣2022

2021/12/27
【第1566回】

トム・プロジェクトは今日が仕事納めです。今年もコロナで戦々恐々の日々でした。その中、なんと7本の芝居を上演できたこと本当に驚いています。制作、キャスト、スタッフがひとつになって、こんな時だからこそ芝居を届けることによって世の中を少しでも前に進めようと言う気持の現れだったと思っています。いつ中止になるか、それは制作会社の危機でもありました。1994年に芝居を創り続けて27年、確かにいくつかの危機はありましたが、このコロナには本当に参りました。昨年から2年間、日常の生活から含めて目に見えないウイルスを相手に心身ともに疲労困憊、そのことが全ての分野に連鎖していく様はまさしく戦時中に等しい日々ではなかったかと...でも、考えてみればこのウイルスも人類が引き起こしたものであり、いまだ争いを繰り返し、環境を破壊し、果てしない欲望に突き進む地球住民に対する抗議でもあると思います。

さて、来年こそは平穏無事な年になるかどうかは今の時点ではなんとも言いようがないのは確かです。でも、生きてるから活かされているからこそ叡智を振り絞って前に進めねばなりません。愚痴ってる暇なんてございません、命ある限り生きとし生けるもの全てに感謝の気持ちをこめて、来年も健全なる心身で素敵な芝居をお届けしたいと思っています。

2022年の仕事はじめは1月4日です。ほんとに今年もありがとうございました。寒さも本格的になりましたので気を付けて年末年始をお過ごしください。

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師走の南新宿

2021/12/23
【第1565回】

やはり小劇場の手作り感はたまりません...昨日、すみだパークシアター倉で温泉ドラゴン第16回公演「続・五稜郭残党伝」を観てきました。芝居が始まる前にシライケイタ座長が昨年の劇団創立10周年記念公演がコロナ禍の中、中止になり、劇団の存亡の危機に見舞われた件を話されていました。トムも含め創造団体の誰もが感じたことだと思います。でも、観客を含め応援してくれる人達が居たからこそなんとか上演できたことへの感謝の言葉を述べられていました。温泉ドラゴンは座長を含め男4人の集団です。今回の芝居も女優1人以外、18人の男優が繰り広げる群像劇です。シライさんの軽快且つ重厚な演出で2時間5分あっという間に駆け抜ける展開でございました。今回の芝居も、理想の国家を求める男達の果てしないロマンと、現実を受け止めながら少しでも前に進もうという男の葛藤を丁寧に描いていました。ラストはともに理想の共和国を夢見た同志が闘うシーン、二人の俳優の息遣いがビシビシ伝わり見事なものでございました。繊細に舞い散る雪の中、二人の男の心情が錯綜し、殺陣だけで役者の思いを伝えてくれる貴重なシーンでありました。これも小劇場だからこそ味わえる贅沢感ではないかと...おいらの世代であれば、高倉健、鶴田浩二なんかが出演した「昭和残侠伝」「日本侠客伝」のラスト近くの殺陣シーンを彷彿させる美しさでございました。

なにわともあれ、いつの世も理想と現実の落差は埋められず、散っていった人たちの熱き思いは報われることなく忘却の彼方へ...でも、そんな人たちが居たからこそ今があるってことを演劇、映画、小説などで改めて知らされることに感謝。

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手作りのクリスマス

2021/12/20
【第1564回】

シアターコクーンにて唐十郎作、金守珍演出「泥人魚」観てきました。おいらは初演を18年前に唐組のテントで観ているのでどのように変わっているのか楽しみでした。なんと言っても宮沢りえさんの出演は大きな力になっています。大変失礼なんですが...決して芝居が上手だとは思わないのですが、あの美しさ、そしてオーラは半端じゃございません。そうなんだよね、上手くて鼻につく役者よりも思わず見とれて釘付けにしてしまう役者が千両役者、銭が取れる役者ってことですね。舞台上で生身の一挙手一投足を間近で観たい!これが観客の正直な気持ちです。風間杜夫さんは初演時に唐十郎さんが演じた役をやっています。72歳と思えぬ躍動感で舞台をきりりと締めていました。それにしても立て続けに舞台に立ち続ける杜夫ちゃんのエネルギーには圧倒されます。今回の芝居は水槽に潜るシーンもあり荒行にも挑戦しているんだなと改めて感心した次第でございます。この難解な芝居をエンターテイメントな舞台に仕上げた演出家・金守珍さんも蜷川幸雄さん亡き後の舞台は俺に任せろ!なんて意気込みを感じました。

それにしても師走というのに悲しいニュースが報道されています。大阪の火災、未来ある女優の事故、アメリカの竜巻、この時代本当になにが起こるか、なにがあるか、まったくもって予測不可能な時代です。ウイルス然り、そして不安定な社会で人の心は病んで当たり前、でもなんとか生きねばなりません...その困難な状況の中、演劇も生きるためへの手助けになれればと思っています。

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今年最後の満月(12月19日)
コールドムーン

2021/12/17
【第1563回】

いくつになっても絵本は人生の伴侶だ...最近も堀川理万子さんの「海のアトリエ」を読んでほっこりいたしました。女の子が、海辺のアトリエに住む絵描きさんと過ごした一週間を絵本にしてあります。絵のタッチと言い、短い文章の中にとてつもない豊かな時空間が流れています。こんな時間を過ごした子供はきっと素敵な大人になっているだろうな...塾なんか行ってる現代の子供たちがかわいそうに思えちゃいます。ただ海を眺め、潮風に吹かれ、移りゆく時間に身をさらすだけでいいんです。なにもしなくてただいるだけでいいんだよと教えてくれる。

世界に名立たる絵本も数あれど、リアルタイムに描き続けている日本の絵本作家もなかなかのもんですよ。「みなまたの木」を画いた三枝三七子さんの最新作「さいごの朝ごはん」もいいですよ。日本社会の負の部分を優しい絵筆で描いています。難しい表現ではないので学校の教科書として是非採用して欲しいなと思っちゃいます。そろそろ日本の学びも一から出直さんとえらいことになっちゃいます。

「仁義なき戦い 菅原文太伝」松田美智子著も一気に読み終えました。よくまあこれだけ調べて書いたもんだと、そのエネルギーに感心しちゃいました。おいらも文太さんの映画ほとんど見てるんだけど、その裏話としては実に面白いというより、映画の世界、それもよりによってヤクザ映画とくりゃごちゃごちゃになりますがな。孤独と虚無を、躰全体で物語ることが出来る稀有なる俳優といえば文太さん。スクリーンを飛び出し、亡き中村哲さんを応援する文太さんも格好良かったな...

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焼き芋の季節

2021/12/15
【第1562回】

昨日は真冬並みの寒さでしたが今日は一転の好天気、やはりぽかぽか太陽はいつの世も偉大です。今年最後の稽古が始まりました。2019年に上演した「芸人と兵隊」の再演です。太平洋戦争当時、戦禍にある兵士に笑いを届ける一座の物語です。初演時と大きく変わっているのが今のコロナ感染状況のなかでの公演。世界に蔓延したコロナウイルスは、ある意味では戦争に等しい環境かもしれません。その逼迫した閉塞状況の中、よりクオリティーの高い芝居を届けることの意味は、今年公演した7本の芝居の公演地でのお客様の喜びは大変意義深いものがあると思います。「こんな大変な時によく来てくれましたね...」「家に閉じこもり発散できないもやもやが吹き飛びました...」観る側と演ずる側が同じ思いでコロナを忘れ感情を巡らすなんて、とっても素敵なことじゃありませんか。この当たり前のことも、こんな厳しい状況があって改めて感じ入った次第でございます。

それにしても今年7本も公演できたことが奇跡です。ここ最近少しは酒を飲めるようになりましたが芝居屋さんからお酒奪っちゃったら意気消沈すること間違いありません。お酒はカンフル剤であり、座組の融和剤であり、酒の場で思わぬ発想が持ち上がり停滞した流れが一気に解消しいい芝居に仕上がったなんて話はよくあることでございます。といいながら、ちょいと軽く呑みに行ってコロナに感染しちゃったらと考えると慎重にならざるを得ません。オミクロンなんてものも出現し、まだまだ安心できる段階ではないのだが、なんとか2022年1月19日~3月1日までの公演、無事に乗り切りたいものでございます。

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まだまだ魅せてます

2021/12/13
【第1561回】

週末の井の頭公園、吉祥寺に活気が戻ってきました。新しいウイルスが出現したのだが感染者数も少ないとあって老若男女問わず多くの人が解放感に浸っていました。井の頭公園には出店も再開しいつものような風景が戻ってきました。この日の目玉は、この寒さをもろともせず身を挺してのパフォーマンスをしていたアーチスト。円盤投げ、金のしゃちほこ、風神雷神の図、考える人、ヴィーナスの誕生などなどのポーズを次々に演ずる姿に思わずカンパしちゃいました。お礼に腰巻きちょいと開けオリーブの葉っぱを御開帳してくれました。多分、舞踏家ではなかろか?金のしゃちほこなんぞは両手で身体を支えてのエビぞり状態、これは相当厳しい態勢、苦しい顔せず淡々とした佇まいにアーチストの心意気を感じた次第。

吉祥寺の街の人気がわかる気がします。お洒落な部分とレトロな街並みが程よく調和して、普段着の気分で街ぶらりができるってことかな。しかし、中には人気に便乗して質を落とす老舗の店にはがっかりしちゃいます。JAZZ好きなおいらがこよなく愛する名店である「ファンキー」は1960年に野口伊織さんがオープンして数々の伝説を打ち立ててきたのにオーナーが亡くなって20年、さぞかし嘆いているのではと思うくらいのショボい商い。見るからにわかるくらいの料理の量、値段は同じで半分の量はそりゃないぜといいたいくらいでございました。心意気ってもんは大切なんです。ワインにいかした音楽、そして美味なる料理があっての三位一体。このバランス取れた店がどれだけあるかが街の価値を高めてくれるんでございます。お客さんをいい気分にさせてこその名店、勿論芝居も然り。

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活気が戻ってきた井の頭公園

2021/12/09
【第1560回】

やっぱり太陽の日差しに勝るものはない。昨日が冷たい雨降る一日だっただけにその感慨もひとしおである。昨日の雨で紅葉の葉も随分と落ちたのだが、過ぎゆく年の瀬を惜しむかのようにキラキラと日を浴びた残り葉がなんとも愛おしい。こうやって日々変化する樹々を眺めていると、樹々に羽休めしている鳥も含めて、なんだかこちらが見つめられてる感覚に陥る時がある。樹々は何も喋らないし、鳥も見て見ぬ振りかもしれないけど、何かに見られている感覚は、こちらが見るという能動的な感覚より敏感に感じてしまう。その場にいる時間が長ければ長いほど、時には人との関係性を超えるくらいの想像力をも喚起させてくれる贅沢な時間かもしれない。見ることは見えないものとの限りない対話であり探りあいではなかろうか...お金がかかるわけでもなし、眼をそして全身全霊を目の前に晒しさえすれば新しいものが立ち上がってくるという訳さ...

最近、テレビで「ポツンと一軒家」なるものを観ています。大自然に囲まれ自給自足に近い生活をしている人たちの表情が実によい。そりゃそうだ、田畑を耕し、樹木を愛で薪をくべ五右衛門風呂で汗を流すなんて、日々にストレスが溜まるわけがない。面倒くさい人間関係で命をすり減らしている都会の人たちにとってはなんとも羨ましい光景ではなかろうか...

でも、いざやるとなるとそうは簡単なものでもない。大自然の脅威、限られた食材、人恋しくなる孤独との闘いなどなど...要は、この番組も貴方は今本当に幸せなんですか?と視聴者に投げかけてるんでしょうね。

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まだまだ楽しんで下さいな

2021/12/07
【第1559回】

明日は太平洋戦争に突入した真珠湾攻撃から80年目にあたります。おいらも丁度、牧久作「特務機関長許斐氏利―風淅瀝として流水寒し」を読了。大東亜戦争の陰に隠れて今まで表に現れなかった歴史の謎を丹念に解きほぐした著者の力作。この時代の話は若い人は皆知らないに違いない、というより誰も教えてこなかった闇の話。満州国に向けての野望、裏取引、片やこの戦争に勝ち目がないと反対する理性的な軍人、政治家などなど登場人物が個性豊かで面白い。昔読んだ檀一雄の「夕日と拳銃」の主人公のモデルである実在の日本人馬賊、伊達 順之助の件は懐かしかった。この時代の島国日本は己の器以上の妄想に駆られとんでもない間違いを起してしまったと思う。夢とロマンと冒険も一歩間違えてしまえば取り返しがつかないことどころか、多くの悲劇が生まれるということだ。真珠湾攻撃で亡くなった若き兵士も軍神として崇められ戦争推進派の広告塔として利用される始末。

今の世界情勢も決して油断できるものではない。コロナも恐ろしいけど、より怖いのは世界全体がポピュリズムの拡大により世界の民主主義国・地域が87カ国であるのに対し、非民主主義国は92カ国となり、18年ぶりに非民主主義国が多数派になったという事実。独裁者が権力を握り反対するものを抹殺していく構図が世界の主流になる時代が来ないとも限らない。おいらなんかはあと少しの人生なのだが未来永劫自由で平和な世界を希求する者として、悪魔が支配する世の中は御免こうむりたいと切に思う。そのためにも過去の歴史に学びしっかりとした思考に基づいた行動を起こすべきだと思う。その手掛かりとして様々なジャンルの本を読むことを是非お勧めしたいのでございます。

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まだまだ燃えてます

2021/12/02
【第1558回】

昨日、劇団桟敷童子「飛ぶ太陽」すみだパークシアター倉で観劇してきました。先月の半ばまで上演していたトムの「にんげん日記」が終わったと思ったら自分の劇団の公演。東憲司さん獅子奮迅の活躍ぶりはいいのだが身体を心配しちゃいます。とても50歳を超えたとは思えない永遠の東少年、この少年が思い描いた世界が1999年から22年間創作されてきました。おいらも同じ福岡県人として共感するもの多々ありトムの公演も9本、作・演出を依頼しました。この劇団の公演を観るたびに演劇の原点を忘れるな!と舞台上から熱いメッセージが伝わってきます。今回も終戦から三カ月、福岡で起きた爆発事故を題材にした人間ドラマ、劇団員全員で創り上げた装置、衣装と共に歴史の闇の葬られた民衆の声が役者の身体を通してびんびん伝わってきます。

その熱も冷めやらぬうちにと、ついにスカイツリーに行ってきました。稽古場も錦糸町にあるのでスカイツリーはいつも目の前に存在しているのだが一度も行ったことがありませんでした。これじゃツリーちゃんにも申し訳ないと思い訪ねてまいりました。いやいや、一大観光スポットでございます。2012年2月に完成した634m世界一のタワーに相応しい建物でございました。この日は雨上がりで視界もよく富士山近くに落ちる太陽の一部始終を堪能させていただきました。つい先ほどまで観ていた芝居も太陽、なんだか二度太陽を拝見した一日となりました。

中村吉右衛門さんが亡くなりました。吉右衛門さんとは人気番組「鬼平犯科帳」1993年2月24日放送. 第4シリーズ第10話「密偵」(いぬ)で共演しました。監督をしていた貞永方久さんに呼ばれ京都太秦で貴重な時間を過ごしました。ラストは吉右衛門さんとおいら(縄抜けの源七)とでの一騎打ち、吉右衛門さんに見事に切られ撮影終了。終了後、吉右衛門さんから「お疲れ様」と声を掛けられ手を差し伸べてくれました。どんな人にも普通に接する姿が印象に残っています。

合掌

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スカイツリー初見参

2021/11/29
【第1557回】

先週の週末、アル☆カンパニーの「ポーピー」観てきました。このカンパニーは俳優、平田満、井上加奈子さんご夫婦が15年前に結成したものです。二人ともつかこうへい事務所で知り合い、約半世紀近く一緒に芝居し結婚し新たなカンパニーを創り船を漕ぎだしたんですから、その情熱と気力に拍手を送りたい。一緒に生活しながら劇中でも口角泡を飛ばすシーンなんぞをみてると、生活することと創造することがタッグを組みながら時を経ていく様が目に浮かびます。ともに好きなことを生涯できるなんて何と素晴らしいことではないでしょうか...勿論、楽しいことばかりではありません。でも信頼し愛し合ってる二人が織りなす芝居を観ながら誰もが羨ましいと思ってるんじゃないのかな...

球史に残る日本シリーズ決着がつきました。延長12回表ツーアウトからの決勝点をあげたヤクルトが20年ぶりの日本一になりました。オリックスの若きエース山本由伸の魂の141球が凄かった。打てない打線に腐ることなく一球一球全身全霊キャッチャーミットをめがけて投げ込む姿に野球の素晴らしさが凝縮されてた気がしました。今年の野球界を盛り上げたのは、間違いなく大谷翔平、山本由伸ではなかろうか。

その大谷翔平に国民栄誉賞、この国のトップ何考えてるんだろうね?あなた達より己を良く知りわきまえている翔平さん断るに決まってるじゃん。

明日で11月も終わりっていうのに、又もや新型コロナの新たな変異ウイルス「オミクロン株」が出現、いやいや何が起こっても不思議じゃない世界でございます。

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善福寺川緑地公園

2021/11/26
【第1556回】

今日も変わりゆく樹々のアートに見惚れています...動かぬものを観ていると、観察している方の心身がえも言われぬ動きを引き起こす。時には心震わせたり、凍りつくこともある、その時の己の状況と相まって思わぬドラマが生まれたりもする。そういえば一度書かれた文字だってそのまま動くことはありません。文字を受け取った人の感性でその文字は自由自在に動き出していきます。この世の中、どちらかというと動き(刺激)あるものに興味をそそられ、その動きに乗っかって楽しんでいるような気がします。想像力を養うものの対象は動かないものをしっかりと時間を掛けて観察することから生まれるのではないかと...道にどんと居座っている石なんぞじっと眺めていると、向こうの方から語り掛けてくるような気がします。長い旅を終えた海岸の石ころなんて人生そのものですね。手のひらに乗せると嬉しくなって波瀾万丈の物語を饒舌に語ってくれたりします。

昨日の日本シリーズ第五戦、いやはや凄い試合を見せつけられました。ここ何年で記憶に残る日本シリーズになりましたね。僅少差の投手戦が続いたと思ったら昨日のホームランの応酬、ヤクルトで決まりかなと思いきやオリックスの助っ人の一発で勝ち越し、決着は神戸に持ち越しとなりました。

スポーツの魅力である動きは瞬時にして喜怒哀楽を発散する魅力があります...世界は静と動で成り立っているんですね。

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燃える樹々

2021/11/24
【第1555回】

昨日、トラッシュマスターズの「ガラクタ」を観劇...思えば2011年東日本大震災発生した年に「背水の孤島」を上演し演劇界を震撼させてから10年、今回は原発の産業廃棄物を扱った作品である。この劇団の、現在をテーマに正解を差し出すのではなく様々な意見を提出し観客に思考を促す演劇手法が面白い。しかも人間臭く、時にはドロドロにもなりながらもエンタメとしても成立させる強引さも気持ちがいい。社会派なんてカテゴリーからはみ出しとことんやってやろうじゃないかという心意気がないと演劇なんぞはやってられませんことよ...いつもながらの3時間近くの芝居を平然とやってのける中津留章仁は、あの大きな身体と目ん玉はだてに付けてるんじゃありませんことよ。そして彼の作、演出を信じ台詞を叩きつける役者も相当の覚悟で舞台に立っているんじゃないかしら...

一段と紅葉が進んでいます。日毎に変化するときめきの色の世界に酔いしれることが出来るなんて、やっぱり健康があってのことでございます。色鮮やかな紅葉を車椅子から眺めている老人を見つけました。その表情から、舞い落ちる枯れ葉を浴びながら、これまでの人生を振り返ってるようにも見えました。老いようとも、半身不随になろうとも生きていりゃこそ美しいものに接し喜びに浸ることが出来ってもんでございます。

そして、生きてることに感謝の気持ちがあれば少しでも長生きできますよ皆の衆。

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自然のアート

2021/11/22
【第1554回】

先週の週末はスポーツ三昧でした。勿論テレビでの観戦ですが...土曜日は関東対抗戦ラグビー、明治対帝京の一戦は両チームの力が拮抗していて手に汗を握る激しいゲームでした。大学日本一を9年間続けてきた新興帝京が、古豪明治から3年振りに対抗戦リーグ優勝を奪還しようとする気迫の違いが出たような試合でした、スコアは14対7ではあったがそれ以上の力の差を感じた帝京圧勝の試合でした。野球が終わればいつものようにおいらのシフトはすんなりとラグビーに移行するのだが、今年はオリンピックの関係でまだ野球をやっとります。

土曜日から始まった日本シリーズ、ヤクルトとオリックス、なんと昨年最下位だったこの両チームも力が拮抗していて2日間最後までハラハラ、ドキドキの展開で目が離せなかったな。打撃戦の野球も面白いのだが息詰まる投手戦も見応えがあります。しかも両チーム初戦はオリックス山本由伸(23歳)ヤクルト奥川恭伸(20歳)、これからのプロ野球界を支える二人の投球はしびれました。奥川選手なんてプロまだ2年目ながら、投げる姿の初々しさと度胸の良さにあっぱれをあげたくなりました。山本選手は今やプロナンバーワンの投手ですね。あの自信に溢れた投球術はベテランの域でございます。

昨日の試合のオリックス宮城大弥投手も2年目の20歳、つくづく選手の持って生まれた才能もさることながら、入団したチームの監督、コーチの指導、雰囲気によって開花できるどうかが決まると思いました。これも運ですかね...それにしても、一勝一敗に持ち込んだ昨日のヤクルト高橋奎二投手(24歳)の完封勝利もすごかったな。完投経験ない投手がシリーズでの初完投は55年ぶりというんのだから、何があってもおかしくないのが野球の面白いところでございます。

明日から東京ドームに場所を移して戦い、ここ2年間のソフトバンク対巨人の試合(ともにソフトバンクのストレート勝ちで、巨人は1勝もできない有様でした)に比べ大変楽しみな日本シリーズになったことは確かです。おいらの予想、4勝2敗でオリックスかな?

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昨日の井の頭公園

2021/11/19
【第1553回】

一日の日当100万円。連日メディアに報道されてます国会議員の別給料、通信費などの項目で領収書も提出義務がなく、余れば自分の懐になんてことが長年行われたことに今更騒いでます。維新の議員が正面切って言ったことで慌てて寄付とか、法改正なんてことを言い出す始末。与党も野党も同じ穴のムジナ、呆れ果て開いた口がふさがりません状態。ほんまにこの国の人達はいい加減な政治屋になめられ放題、維新が口火を切ったお手柄政党みたいに言われているけどあんたたちも今まで甘い汁を吸ってたじゃんといいたいんでござんすよ。普通の会社は税務調査で厳しく領収証の提示を求められるし、きっちりと税金を徴収されるのが当たり前です。なのにこの政治屋さんたち、庶民から吸い上げた税金でおまんま食ってるのに上級国民面して非常識な振る舞いを平気で行なってるんでございます。これじゃ、与党も野党もまったくもって信用なりませんわ。ということは、この国には任せられる政治家がいないと同然、一体全体どうしていいやら困ったちゃん状態...深まる紅葉を眺めながら日本の美しさに酔いしれながらも、この国の未来に大いなる不安を感じる今日この頃でございます。

そんな折、今朝アメリカ大リーグより大谷翔平選手の満票でのアメリカンリーグMVP決定のニュースが飛び込んできました。コロナ、政治不信などなど暗いニュースが続いているなかで唯一明るくしてくれたのが大谷選手です。人間性も非の打ちどころなく、この人にこの国を任せる総理になってもらいたいぐらいです。

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より一段と...

2021/11/17
【第1552回】

東京は日一日と冬に向かっている気がします。日毎変化する紅葉の様は飽きることがありませんが、上を向いて歩いてばかりいるとすっ転びそうになるのでご用心。

李琴峰「彼岸花の咲く島」読了。台湾の作家による芥川賞受賞作品です。母国語ではなく、ひらがな、カタカナ、漢字の三種類の文字がある日本語で書き綴り、国そして共同体の在り方を視覚的かつ想像力を喚起させる文体が画期的である。なんだかおとぎ話でも読んでるような感覚にさせるところが面白い。確かに、文学は新しい地平を切り開くにふさわしいジャンルであること確かである。そして先日読み終えた、安西水丸「左上の海」、タイトルだけでもなかなかシュールである。

 

夢の中でとってもきれいな海を見つけたの。わたしのいる、ずっとずっと左上の方にあるの。いつかわたしが酔って言った時の夢の海よりも、もっとずっと上、それも左の方。そこにすごくきれいな海岸を見つけたの。天国なんて言葉恥ずかしいけれど、もしかしたらあの海は天国じゃないかとおもって

 

アルチュール・ランボーの詩、ルネ・マグリットの絵画を連想させる文体である。秋の夜長、ページをめくり作家が生み出した言葉に酔いしれ眠りにつく瞬間はたまらんですばい...

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新宿西口の夕暮

2021/11/15
【第1551回】

先週の週末は「萩咲く頃に」を志木市で、「にんげん日記」を白河市に観に行ってきました。

この二本の芝居に村井國夫さん、音無美紀子さんがそれぞれ出演されてるんですから村井家に感謝です。村井さんは4本、音無さんには3本、これまでトムの作品に出演作があります。この仕事してるとほんとにひょんなことから思わぬ出会いがあるもんですね。村井國夫と言えばミュージカルか翻訳劇、おいらのところは日本人による日本人の芝居以外はやるつもりがなかったので縁がない役者さんだと思っていました。ところが、2009年に上演した「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ~」を観劇した村井さんがいたく感激されたとの情報を得て、2012年の新作、東憲司作・演出「満月の人よ」に声掛けしました。なんとこれが村井さん初めての日本人役での舞台であったことにビックリしました。そしてこの舞台で九州の田舎のダメ親父を脱力しきった演技で飄々と表現する村井さんに二度ビックリしました。腕のいい役者は翻訳劇だろうが日本の芝居だろうが関係ないんですね、そりゃそうだ演技には国境はありまっせん。

村井さんからのご縁で、奥様である音無さんもトムの芝居に出演することになりました。東日本大震災から3年目、2014年に創った「萩咲く頃に」は今年で8度目のステージになりました。長年培った音無さんの繊細かつ思い切りのいい演技は芝居を引き締めてくれます。そして何よりも人柄の良さ、あの天性の明るさはドツボに嵌った現場を救う観音様でもあります。

と言うことで、ご夫婦には本当にお世話になっております。村井さんは休む間もなく来月から「芸人と兵隊」の稽古が始まります。そして、いつまでも芝居を愛する人たちに夢とロマンをプレゼントしてくださいね。

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明日のスターを目指して
~新宿南口にて~

2021/11/12
【第1550回】

樹木が色づく秋の佇まいは何となく人生の熟成を思わせます...朝陽を浴び、より一層鮮やかな光彩を放つ葉はまるで舞台に立ちスポットライトを一身に受ける千両役者のようでもあります。自然が織り成す見事な光景を目の当たりにして、おいらは今日も人として恥ずかしくないような立ち振る舞いをしなきゃと思う次第でございます。

瀬戸内寂聴さん99歳で亡くなられました。波瀾万丈の人生でしたが、女性がまだ自由に生きられない時代に己の情と信念を貫き奔放に過ごされた一生は素敵だと思います。中には、エゴを通した淫らで勝手な人生だと批判する方もいるとは思いますが、四角四面で常識にとらわれた思考の中でしか生きていけないなんて、なんてつまらないでしょうとおいらは思います。生きてること自体いろんな矛盾が生じるし、そこは人間でしか持ち得ない想像力を駆使して存分に視界を拡げ何事もチャレンジしないともったいない!何でもありの世界ですから、犯罪と他人への迷惑以外は...あの一本の樹木さえ、一年間で様々な姿を見せてくれているんですから、ましてや移動も可能、思考も自由な人間であるならば変幻自在に人生楽しまなきゃ損しちゃいますよ。

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より一段と...

2021/11/10
【第1549回】

昨日、「萩咲く頃に」の最終稽古に行ってきました。今回は12日の埼玉県志木市民会館パルシティの公開稽古を皮切りに、17日から12月1日まで静岡県の演劇鑑賞会で上演します。昨日の稽古、役者さんの喜怒哀楽が鮮明に表現され、この芝居を公演する意義がより高まったような気がしました。東日本大震災から節目の10年、この時代のスピード感はあの大事故さえ風化の波にさらされています。戦争然り、いつまでも伝えていかなければならないことは、どんな時代になろうとも必要不可欠なことだと思います。この芝居に登場する澤田家の家族5人がそれぞれに抱えてる悲喜こもごもを、役者自身が身の丈に合った表現してる様に感動しました。これが芝居の醍醐味なんですね...震災から10年、そしてこの芝居に関わって7年、一人の人間、そして表現者として過ごした時間が見事に凝縮され、震災に伴う原発の危うさ、葛藤の末にたどり着いた家族の大切さを観客の皆様に届けるんだという強いメッセージを感じました。

この日は、事前に受けたコロナPCRの結果が全員陰性であることが判明し、やっとマスクを外しての最終稽古でした。マスクを外せるという解放感もあってのベストな表現だったかも...マスクをしながらの稽古程辛いことはありません。相手の表情も昨日までの半分からすべて感じ取れるんですから、こんな嬉しいことはありません。変な話ですが、これコロナが教えてくれたことかもしれませんね。いつの世も、自然界からこうやって驕り高ぶる人間に注意勧告を促しているんですね...

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稽古帰りのスカイツリー

2021/11/08
【第1548回】

あちこちで紅葉が始まり、街行く人も冬の訪れの前、暫しの秋の風情を楽しんでいる週末でございました。プロ野球はクライマックスシリーズファーストシリーズがセリーグ、パリーグで行われました。いつも思うのだが、何のために一年間戦ってきたのか?シーズンで1位になったチーム同士が日本一をかけての試合を行えばいいのに、商売優先でこんな制度が出来ちゃいました。まあ、おまけでプレーを観れる楽しみはあるにしても、なんともしっくりこないのも確かである。今年は我がライオンズは42年ぶりの最下位で、勿論出場資格はありません。その代わりというのも変ですが第二ラインズの楽天がロッテと戦いました。昨日の試合なんぞは岸投手と炭谷捕手、そして主力打者浅村が元ライオンズの選手、そして監督も石井、ライオンズの試合を観戦してる感じがしました。お金に糸目をつけずにライオンズの選手を奪っていったこの監督はどうも好きになりません。と言うことで、パリーグのクライマックスはロッテを応援していました。2試合とも接戦でしたが、ロッテの助っ人が見事なホームランでロッテがファイナルステージに進出しました。片やセリーグは巨人が阪神に連勝しました。なんやろね阪神、いいとこまで行くんだけどなかなか優勝できないチームになってしまいました。阪神ファンと言えば熱狂するあまりチームが委縮してるんじゃないかしら?贔屓の引き倒しってことですかね...今年はオリンピックのため、なんと11月までプロ野球を楽しめるのですが、如何せんライオンズは蚊帳の外なので、まあ面白い試合に心がけ、少しでも野球ファンを増やしてくださいませとしか言えないのが残念です。来年の日本ハムの新庄監督も楽しみです、既成のプロ野球をどう変えてくれるのか?それともただ単なるパフォーマンスで終わってしまうのか...そして来年は最下位から優勝と言うシナリオをどう実現するのか、ライオンズ頼みまっせ!

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色づき始めました

2021/11/04
【第1547回】

秋空が続いています...コロナ感染者も少なくなり、多くの人が外出し開放感を味わっている今日この頃です。マスクはワクチンという定義が定着し、いまだに顔の全貌が視えずやはり普通の日常にはまだまだ時間がかかる感は否めません。新宿の居酒屋もそれなりに盛り返してはいるのだが、おいらの年代になると若者が大声で飲食してるところはさすがにひいちゃいますな。懐かしの新宿ゴールデン街も随分ご無沙汰してるのだが、再開してるんだろうね。営業できないことが幸いして懐が温かくなったなんて噂を聞いたりしますがどうなんでしょう?ここまで長引けば、家飲みが定着して客が戻らないのではと心配もしてしまいます。

「にんげん日記」の東京公演が終わると同時に「萩咲く頃に」の稽古が始まりました。この演目は2014年に初演して以来、今回で5回目になります。いい芝居を創れば、あちらこちらから声が掛かり何年もの間上演が出来るということの証明です。そして何よりも同じメンバーが、再演ごとに新作を創り上げる意気込みで作品に新しい命を吹き込んだ賜物ではなかろうか...芝居は生モノで一回限りの表現ですから二度と同じことはできないことは明らかです。その一回性にどれだけ新鮮に向き合えるかが役者の力量、能力だと思います。一行の台詞にどれだけ奥行き、魅力を付加できるか?貪欲な役者こそが生き残っていける世界です。切磋琢磨し、日々発見を試みてる役者の姿に魅せられ今日もお客は劇場に足を運ぶんでございます。

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雲ひとつない秋晴れ

2021/11/01
【第1546回】

「にんげん日記」昨日無事に東京公演の千秋楽を迎えることが出来ました。大丈夫だとは思っていても何が起こるかわからない舞台、ハラハラドキドキの日々ではありましたが見事な芝居を魅せてくれました。笑いあり涙あり、市井の人たちの人生の哀歓が劇場に漂いお客様は十分に堪能した顔で劇場を後にしていました。勿論、全員が納得したなんては思っていませんよ...芝居の受け止め方は人それぞれです。己の生きてきた環境、いまある姿に鑑みて内容を吟味して良し悪しを判断するもので、その評価は千差万別であるのは当然のことです。その辺のあたりが又、芝居の面白いところです。過去の痛いところに触られたり、思想信条に違和感を感じると芝居の中身そのものに疑義が生じたりします。でも、それぐらいの刺激、衝撃があってこその表現です。どの世界にも正解なんぞは存在しません、既成の価値観を脅かしてこそのアートだと思っています。

昨日、選挙の結果が出ました。いつものように半分弱の人が棄権、そしてあまり変わり映えしない人が選ばれ、この国の政治は何年たっても変わらないことをまたも思い知らされた次第です。衆参併せて710人も要るんかい?与野党ともども議員数減らすなんて何十年前から言ってるのに実行しないところから政治不信になっちゃいますがな...かと言って監視の手を緩めると厚かましき政治屋さん、とんでもないことやり放題ですからご用心。いい加減国民が安心して暮らせる政治やらんかい!

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マスキャット

2021/10/28
【第1545回】

昨日、無事「にんげん日記」の初日を迎えることができました。終演後のお客様の拍手の熱量が今回の芝居の出来を物語っていました...3人のベテラン役者というより、80年近く生きてきた人間の香りが、今回の設定である銭湯の湯船から湧きたつようでもありました。改めて役者という稼業とは、その人の生き方がすべてさらけ出される生業だと感じた次第です。豊かさ、厭らしさ、可愛さ、憎たらしさなどなど己が経験、体験したものが知らず知らずに身体に蓄積し、役柄に反応していくさまはとても面白いものがあります。

今回出演して頂いた賀来千香子さんは、舞台出身者ではない魅力があります。何故かというと芝居には、はっきりとした定義がありません。上手くなりすぎてもいけないし、かといって下手では成立しません。芸の世界でよく言われる虚実皮膜論、過度に芝居臭くなると嘘っぽくなるし、そのままだと演劇そのものが不要になるし、その虚と実の間に横たわる膜の部分で観客を魅了するのが演劇なんでございます。下手に場数を踏んで芝居漬けになり鮮度をなくす役者さんより、感覚で切り込んでくる役者さんに観客が新鮮に感じるのもよくわかります。

もう一人の女優大手忍さん。今回の作・演出、東憲司さん率いる劇団桟敷童子の劇団員で、作・演出家の意図は一番わかっていることから言っても、この舞台の展開を若さと身体能力で弾みをつけてる感がします。いつもながらピュアな表現力で好感が持てます。

いずれにしても始まったばかりです。31日までの短い公演ですが、こんな貴重な公演見逃すと悔いが残りますよ皆の衆。

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秋の空

2021/10/25
【第1544回】

昨日、27日に初日を迎える「にんげん日記」の最終稽古が行われました。もうすぐ80歳に手が届く小野、高橋、村井の御三方のパワーには恐れ入ります。さすがに半世紀以上にわたって役者稼業をやられた蓄積が、心身にきっちり行き渡っているんだなと感心する演技でございました。そこにいるだけで存在感を示す役者もそうそういない中、本当に貴重な存在です。そのなかに、華やかさの中にも芯が通った芝居をする賀来さんの魅力もなかなかのものです。そして稽古場でのひたむきな姿勢に心打たれます。もう一人の女優、大手さんもけなげで可愛く、なんだか応援したくなっちゃう雰囲気を醸し出してくれてます。

作・演出、東憲司さんが産み出した役を、5人の役者がそれぞれに自分に引き寄せ吟味しながら役作りした結果が見事に結実した最終稽古でありました。稽古の過程で何度も疑いながら本質に近づこうとする姿勢は、さすが俳優座養成所で名だたる演出家、名優に鍛えられたその当時の姿が目に浮かびます。その当時の名立たる演出家は千田是也、俳優は仲代達矢、平幹二朗、東野英治郎、小沢栄太郎など多士済々...その影響を受け俳優座花の15期生(1963年に養成所に入所)が学んでいました。原田芳雄、林隆三、夏八木勲、秋野太作、前田吟、河原崎次郎、地井武男、浜畑賢吉、竜崎勝、栗原小巻、太地喜和子、赤座美代子、三田和代......そして今回の3人とそうそうたるスターを輩出した次第でございます。

亡くなった方も随分いますので、その亡き戦友のために捧げる舞台でもありますね。

個性あふれる5人が繰り広げる「にんげん日記」明後日の初日がとても楽しみです。

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秋のアンネのバラ

2021/10/22
【第1543回】

いきなり冬が来ちゃいました...この時代、ほんとに何がやって来るか予測不能の今日この頃です。今日の新聞に、映画の正しい観かたなんて本の広告が掲載されていました。この不穏な世相を生き延びるには、すべてマニュアルに沿って過ごせば間違いないなんて本が多く出版されてます。映画を含めアートなんてもんは、人それぞれの受け取り方も違うし他人の教示を受けながら観たり読んだりするもんじゃないでしょう。しかし悲しいかなこの島国の人たちは、他の価値観を情報では知りながらも実感を体験する機会がないものですから、ついつい杓子定規な思考を持つ輩に洗脳されちゃうんでしょうね...生まれながらにしてオモシロ感性バラバラなのに、くだらん教育制度の下に個性を削がれおしなべて規格内に収まる人になっちゃうのがホンマに残念でたまりません。時折、自分の意見を持った若者に接すると嬉しくなっちゃいます。「こうでなければいけない」なんて方程式をこの世の中にひとつとしてないんだというところからもう一度始めるべきだとおいら思っちゃいます。

25日から居酒屋も時短営業が解除されるとのこと、これまで我慢してきた飲んべえが一気に飲み屋に殺到し第6波が来るのか?なんとなくウイズコロナの時代に歩調を合わせて進んでいくのか?いずれにしても芝居を創ってるおいらとしては、心休まる日はございませんことよ。

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セイヨウヒイラギ
~花言葉「将来の見通し」~

2021/10/19
【第1542回】

今日の東京はとても寒いです。寒空のなか衆議院選挙を戦う党首が声を荒げて政策を訴えています。わずか12日間の選挙戦、どの政党も調子のいいこと言っているんだが大丈夫なんでしょうかね?だって国の借金なんと国民一人当たり約983万円というんだから驚いてしまいます。なんだかピンとこなくて誰もが知らん顔状態でございます。おいらなんぞの年代はいいとして、若者の将来に大きなツケを回すことは間違いないでしょう。先ずは国会議員減らします、議員の給料下げます、なんて公約を掲げてる人に一票投じたい。

おいらの選挙区である東京8区は話題になってます。太郎のおっさんと立憲に誤解が生じたものの何とか野党統一候補で一件落着。この選挙区には慎太郎さんの息子が長いこと当選しています。今日も早速地元で第一声を発したところ、女性から「何もやってないんじゃない!」というヤジが飛んだそうな...そういえばこの人コロナ騒ぎの初期の頃、一般人がなかなか入院できないのに、上級国民と言うことで即入院し非難を浴びました。この一件が話題になったくらいで他になんら目立った仕事はしてませんな...

新宿の街にも、早速いつものスタイルで車中から立候補者の名前の連呼、やかましいったらありゃしない。街中に立ててる立候補者の看板も税金の無駄遣いだよね、あんなもん立ち止まって観てる人ほとんどおりまっせんことよ。

でも、この国の舵取りをしてくれる人を選ぶのは選挙しかありません。残念ながら相応しい人は少数ですが吟味しながら投票するしかありませんね。

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案山子

2021/10/15
【第1541回】

長野県上田市にある無言館に行ってきました。太平洋戦争などで志半ばで戦死した画学生の遺作、遺品を展示した美術館です。生きて帰って絵を描きたいと願いつつも戦場で散っていった若き画学生の絵は、戦地で希望を失わず、表現することの楽しさをキャンバスに塗り込められた情熱がほとばしっていました。その名も知れぬ画学生の遺作、遺品を集めるために日本全国を奔走し無言館を建てた窪島誠一郎さんに会い話を伺いました。とても人間臭く魅力的な人でした。館内の絵を眺めながら、若くして亡くなった画学生は、語る言葉は無くとも、まさかこんな形で人の目に触れる機会に恵まれるなんてという思いでいっぱいではなかろうか...もうすぐ80歳になる窪島さんの波乱万丈な人生と、己の中で葛藤する感情は、まさしく戦争という不条理の中で日々を過ごした画学生と相通じるものがあるに違いない。

傍から見ると窪島さんが成しえた事業は素晴らしいと思えども、当の本人がいまだに納得しきれない己の闇に対する拘りに決着がつかず、老いてなお自分探しの旅を続行してる姿に驚愕した次第です。

無言館を取り巻く美しい風景は先の大戦で亡くなった人たちの犠牲の上に成り立っていることを改めて実感しました。平和な土地に咲くコスモス、澄み切った空に実る柿、ふと無言館に収められた絵画たちの平和への祈りが聞こえるようでもありました。

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無言館にて

2021/10/13
【第1540回】

東京は今日もぐずついた天気で、少々肌寒くなんとなく一気に冬の到来を予感させます。秋という四季の中で一番愁いに満ちた季節が懐かしくなる時代が近未来に来るのかな...この季節は読書にも最適な季節でもある。ワイン片手に、JAZZなんぞを流しながら文字中毒患者に溺れつつ快楽の世界に溺れてしまいたいなんて思っちゃいます。昨日で宇佐美まことさんの「羊は安らかに草を食み」を読み終えました。この作家は初めてだったのだが一言でいえばエンターテインメント作家かな、今回の作品も認知症になり始めた老婦人の現在と、戦時中に満洲に住みながら敗戦と同時に始まる苦難の歳月を11歳の少女二人が乗り越えていく様をスリリング且つ感動的に描く筆力はなかなかのものである。この小説を読みながら6年前に97歳で亡くなった母のことを想い出しました。同じ大陸からの引き揚げ時の逃避行の地獄の日々を何度も聞かされたからだ...昭和20年8月9日にソ連軍が満洲、韓国に侵入し暴行、虐待の限りを目撃体験しながらやっとの思いで引き揚げた話は衝撃でした。そりゃそうでございます、その逃避行の時においらは母のお腹にいたんですからね...この世においらが存在してること自体が奇跡だと今でも思っています。

この本には、エンタメでありながら戦争の不条理を織り込みながら平和の有難さを伝える作家の矜持を感じます。タイトルはJ.S.バッハのカンタータ「楽しき狩こそ我が悦び」の中の「羊は安らかに草を食み」からとったものです。領主は、羊(領民)が安らかに草をはむのを見守る太陽のごとくあれという意味が込められたアリアです。

今月末は選挙です、領主を決めるのは投票権のある領民であることを忘れちゃなりませんぞ皆の衆。

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横道入ればレトロな風景

2021/10/11
【第1539回】

週初めの今日の東京の暑さは異常です、10月の中旬と言うのに30°完全に狂っています。災害が多発しても当然の成り行き、人が狂えば地球も狂う、昨日から「日本沈没」のTVドラマも始まりました。小説、映画の世界では早くから警告を発しているのだが、目先の利益を優先するのが資主義の定め、もはや地球は悲鳴をあげておりますぞ。

先週の週末は映画「ファーザー」「ミナリ」を観劇しました。両作品ともアカデミー賞を受賞しました。「ファーザー」は主演のアンソニー・ホプキンスが主演男優賞を獲得。この映画は彼の滋味あふれた名演技に尽きると思います。認知症がテーマである作品、これまでは介護する側にスポットを当てがちだったのだが、この映画は認知症に陥った主人公の認知力、記憶力をさ迷い歩く様を心理劇に仕立て上げてるところがなんとも素晴らしい。サスペンス映画としても一級品ではなかろうか。脚本賞を受賞したのも納得できる。これほどの演技力を兼ね備えた俳優が外国には山ほどいるのがなんとも羨ましい。

「ミナリ」は1980年代のアメリカ南部を舞台に、韓国から移住した一家が農業で成功するという、まさにアメリカン・ドリームをテーマにしつつ、丁寧にその家族の様が描かれている。祖母役のユン・ヨジョンが助演女優賞を受賞しています。前回の「パラサイト」といい今回の作品もそうなんだが、おいらとしては今一つと言うところかな。そんなに目新しい題材でもないし、俳優の演技も表層的な感じがして、アカデミー賞で話題になるのが不思議な気がします。アメリカにおいてのアジア人に対する差別を意識しているのかな?それとも裏金が動いているのかな?いずれにしても芸能の世界も魑魅魍魎が跋扈してますからね...ほんとのことは神のみぞ知るってとこですかね。

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新宿武蔵野通り

2021/10/08
【第1538回】

昨日の夜の地震はやはり来たなという感じでした...2011年3月11日以来の震度5の地震、東京に住んで以降、地震は日常茶飯事の感覚ではあるのだが、いつ大地震がくるのかという恐れは常に覚悟しています。いざとなったときの防災グッズも揃えていなければ東京では住めないのでは...それだけ何事にも肥大化した大都会では災害が起こればパニック状態に陥るということです。

そんな都会暮らしでの清涼剤が野に何気なく咲いている草花であり、大空のキャンパスに様々な顔を見せてくれる雲の動きです。そして風雪に耐えながらも大地に根を生やし屹立している樹木たちです。おいらはベランダの植物に水をやりながら「おはよう!」と声を掛けます。不思議なもんで、その声に呼応するようにすくすくと育つんですから可愛い我が子のようなもんですね。野の花だって声を掛けたいところだが、いろんな人にいろんな勘違いをさせちゃいますので、そこはアイコンタクトでの励ましと感謝。気持ちが良いもんですよ!これこそがポジティブシンキングの生き方の第一歩でございます。何百年も生き続けている大きな年輪の樹木なんかには「お疲れ様、そしてありがとう!」なんて言葉を掛け手を当てるなり、抱きしめてあげると、そりゃもう樹木の控えめの歓喜の声が伝わってきますから是非お試し下さいな。

ここ一週間は地震に気をつけなきゃならんとのこと、これも自然界からの人間に対する警告だと重く受け止めて過ごしたいものですね。

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ホトトギス
花言葉~永遠にあなたのもの~

2021/10/06
【第1537回】

あちゃ!昨日のライオンズとロッテの試合、ライオンズのヒットは1本のみ、これじゃ勝てませんわ。なんだか勝負へのこだわりもなく淡々と消化試合をこなしているだけのチームに成り下がってしまいました。ファンは負け試合にも拘わらずお金払って熱い声援を送ってるんですから意地を見せてくださいなと言いたい。おいらと同年代の博多在住のライオンズファンの方のブログをいつも楽しみに読んでいたのですが、8月に入り「さすがに書く意欲が無くなってしまいました...駄目な選手の愚痴をこぼす自分が嫌になりました」西鉄ライオンズ時代から一貫してライオンズ一筋、この点はおいらと一緒です。よくわかります、昨日の試合もテレビで観ていたのだが、途中で消してしまいました。監督、コーチ、選手がバラバラなのが手に取るように分かります...なんでこうなるの?と思っていたら、今日、辻監督の退任がニュースになっていました。だったら、ここまで駄目なチームを2度もリーグ優勝させた監督のために優勝はできなくとも有終の美で終わらせたい!と発奮せんかいなコーチ、選手の皆さん。そんな気持ちがない選手はどこにいっても駄目でしょうね。ファンあってのプロ野球、愛されない選手はことごとく落ちて行っていることが、これまでにも証明されています。今や大リーグで一流の選手どころか、アメリカ社会でも話題もちきりの大谷翔平選手、野球の才能以前に人間としての思考行動の在り方に称賛の声が上がっています。注目されればされるほど人は更にその人物の本質を見届けようとします。

グランドでてれっとした姿見せた途端にファンは離れちゃいますぞ...ラスト15ゲーム、ライオンズファン、辻監督のためにも悔いのないゲームを頼みまっせベンチの皆様。

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新宿サザンタワーからの眺め

2021/10/04
【第1536回】

緊急事態宣言が解除された最初の週末、久しぶりに井の頭公園に行ってきました。公園名物の独自カラー満載の手作り品を展示販売している「井の頭公園アートマーケッツ」のお店はまだ解禁にはなっていませんでした。シニアのおじさんが作った立体ハガキ、思わず笑っちゃう「ちょんまげ課長」シリーズのイラストなどなど、飽きることのない作品が展示販売されつい買っちゃいます。年間12000円払えば土、日、祝日に出店できるのだが、独創性がないとダメってところがミソかな...吉祥寺という人気スポットに相応しい公園に違いない。親子連れもよし、恋人同士もよし、犬の散歩にはもってこい、老若男女が入り乱れての様はなんとも微笑ましい光景だ。それにしても犬の散歩連れグループの交流は、いつみてもお互いの犬の褒め殺し場である。ワンちゃん自体はどう思ってるんだろうかな?この日は、大道芸の人たちも姿を消していた。人が集まることで生計を立てる職種にとってはまさしく冬の時代に違いない。吉祥寺の街中に入ると、待ってましたとばかりに多くの人が居酒屋にたむろしておりました...第6波の予感かな?いや、もう我慢の限界、コロナも取り込んでの生活設計を考えないとどうにもならん時期に来ているに違いない。

10月と言うのに真夏のような日が続いています。暑い日差しの中にわずかに冷気を含んだ風に秋の匂いを感じながら、都会の空を仰ぎゆっくりと移動する雲の流れを楽しんでいる今日この頃でございます。

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夕暮れ時の井の頭公園

2021/10/01
【第1535回】

今日10月1日、緊急事態宣言解除に併せて台風もやってきています。波乱の幕開けの前兆かな?飲み屋でわんさか、今まで耐えたものが一気に爆発、それに伴ってコロナ感染第6波がやってきます。誰しもが言ってることだけど、いまだPCR検査をいつでも無料で実施するところは開設されてません...と、思いきや新宿西口広場で不定期にモニタリング検査と銘打ってやっていたのでおいらも2回受けました。もっと早くできたのにとにかく遅い緑のおばさん、この人の常套句「気をつけてお過ごしください」当たり前のことじゃん!ワクチン頼りもいいけれどいつも無料検査できる仕組みを作ってくださいな。お酒解禁初日というのに台風で首都圏はさっぱりな一日になりそうですな。

新総理の役員人事、予想通りの展開になりましたね。陰で暗躍する3Aに忖度しながらの人事、これじゃ今までと変化なし。驚いたのは似合わないマフィア帽子を愛用する方を副総理にしたことは開いた口が塞がりません。誰かが言っとりましたよ、新総理の貴方「湿気たおせんべえ」に映るとのこと。船出早々、あまりいい評判が聞かれませんが、対する野党だって支持率が上がらずいまひとつ。とにかく誰しもが納得する政治をしてくださいな。

今日からいろんなものが値上がりに庶民は悲鳴を上げております。なんとなく100円で買ってきたキュウリ、ナス、トマトが順調に育っております。世知辛い世の中、この成長する姿を見るにつけなんとなくほっこりしてしまいます。

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オモテナス

2021/09/29
【第1534回】

自民党総裁が先程決まった...結論から言えば、誰がなっても国のシステムは変わらないだろう。だって、相変わらずキングメーカーが院政を敷き総理は操り人形の役割しかできないから...先日、例の「桜を見る会」の収支に関して告発する団体が質問書を各候補に送ったところ、岸田、高市氏は無回答、野田氏は解明すべきとの回答、驚いたのは質問書さえも受け取り拒否した河野氏。自民党員のなかでは一番人気があった人なのだが、こんな人がトップになったら大変なことになっちまうんじゃないかしら...自分が気に入らないものは排除の思想、この一点でアウトの気がするのだが。今回の4人の論争も、今一番必要なコロナに対する反省、そしてこれからの対策なんぞはあまり聞かれなかった。要するにメディアを通じて面白おかしく権力闘争を演じていただけの気がする。おいらはもともと政治には何も期待していないのだが、なんど同じことを延々と繰り返しているのだろう。この国の多くの人は大きな変化を求めず、石橋を何度もたたいて確かめながら歩を進めるタイプなのでしょう。それがこの国のスタイルなら仕方がないにしても、不正、不平等などは許しちゃならんでしょうと言いたい。

11月は選挙だ、少しでもこの国を良くしたいならば投票にいって自分の気持ちを託すしかない。半分近くの人が投票しない現状を見るにつけ、政治に対し無関心、諦めに似た心境なのではなかろうか...信頼できる政治家どこにいる?それも重々承知いたしております。でも、いずれ自分の首を絞める結果になるんですから、先ずは一票入れてみませんか。

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キュウリの花
~花言葉「洒落」~

2021/09/27
【第1533回】

9月25日(土曜日)東憲司作・演出「にんげん日記」の稽古が始まりました。俳優座養成所15期で学んだ小野武彦、高橋長英、村井國夫の御三方に、賀来千香子さん大出忍さんという豪華なメンバー、本読みから抱腹絶倒、役者として友として60年近く過ごした歳月そのものがもはやドラマそのものである。表情といい声の渋みといい、噛めば噛むほど味がする絶品スルメみたいなもので貴重な現場になりそうだ。この三人に相対する賀来千香子さん、美しく優しさに満ち溢れているのですが芯は強い女優さんだと思いました。大手忍さんは劇団桟敷童子で花開いた可愛く愛しい若手の女優さんです。稽古場の雰囲気は芝居創りの上で一番大切な要素です。俳優同士のコミュニケーションの良し悪しが芝居の出来に即繋がるのでございます。役者さんは実に繊細な方々が多く、一旦ヘソを曲げちゃいますとなかなか修復不可能で、チームワークが一挙に崩れてしまいます。一見、仲良く見えても役者はいったん舞台に上がれば真剣勝負、喰うか喰われるか、その丁々発止のやり取りこそが観客の見所なんでございますよ。

それにしても、もうすぐ80歳に手が届くという三人、いや元気ですね。やはり人間好きなことをやっていれば年は関係ないってことですな。嫌なことだらだらいつまでもやってると身も心もボロボロになっちゃいますぞ...何度も言いますけど、一度きりの人生やりたいことを徹底的にやるしかないですな。

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9月26日の空

2021/09/24
【第1532回】

久しぶりに飯田橋ギンレイホールに行ってきました...やはり映画は映画館で観るものですね。昨日観たのは山田洋次監督の「キネマの神様」、この名画座に最もふさわしい作品でした。映画をこよなく愛する人達の話で題材(原作は原田マハさんの小説)としては良いのだがキャスティングが違っている気がしてならない。ハマっているのは北川景子、永野芽郁、野田洋次郎くらいかな。おいらにキャスティング任せてくれるならドンピシャの役者さんがいたのだが、ここは松竹そして御大山田洋次監督ですから当然口出しなんぞはできませんがな。でも映画って、スクリーンを前にしてキャスティングもさることながらいろんな空想、妄想も含めての楽しみ方があって楽しいですね。これは暗闇の中でこそできることであって、我が家ではいつもの日常がすぐそこにあり想像の羽根を伸ばすまでにはいたりません。今回の映画を観ながらピーンときたのは、あの名作「ニュー・シネマ・パラダイス」、映画を愛する人たちがテンコ盛りの作品、日本だって映画の全盛期には映画に命を懸けた活動屋がごまんといたのでございます。カメラ、照明、衣装、小道具などなど職人風情のスタッフそれぞれが映画愛に満ち溢れていました。最近の日本映画がつまらないのは、こういった人たちが少なくなり現場の雰囲気もドライになったからではなかろうか...何事も溢れんばかりの愛がなくちゃいいものは出来るはずがないし、単なる現世の消耗品に終わってしまうのではないかしら。

なんだか、また夏が戻ってきた感じがしますが、でも確かに風の匂いが秋を感じます。春、秋の感覚が希薄になった今日この頃、秋という季節感が懐かしくもあり尊い気がしてなりません。

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名画座の灯消さないで

2021/09/21
【第1531回】

青年劇場公演「ファクトチェック」観劇...現役一線のジャーナリストと現政府との丁々発止のやり取りをリアルに描いた中津留章仁作・演出の芝居、面白く観劇した。トラッシュマスターズという集団を率いて硬派な芝居を創り続けている劇作家なのだがエンタメ風に仕上げていくのが彼の持ち味かもしれない。青年劇場に書き下ろしたのが今回で4本目、長い歴史を持つこの劇団との相性の良さを感じる。何故かというと登場人物の多さ、劇団には20歳前後から80歳まで幅広い役者さんが在籍している。作者はそれだけ役の設定に多様性を持たせることが出来、描く世界を立体的に組み立てることが出来る。この劇団の役者さんスタンドプレイもなく等身大の人物を自然に演じているので安心して舞台に集中できるって訳だ。これも中津留演出の徹底したリアル追求の成果だと思う。

劇作家にも得手不得手があるのは当然のことだが、自分の描く世界とマッチした集団、俳優、スタッフと出会い、クオリティーの高い作品を創るための果てしない旅なのかも知れない。芝居に限らず、人生なんて誰と出会うかが全てかも...その誰かも所詮、己が選択しているのだから、つまるところ自分自身の感性、行動力、そして日頃の研鑽以外の何物でもない。振り返ってみれば、おいらも日本のみならず世界のあっちゃこっちゃの人達と多くの出会いを重ねてきた。数が多ければいいって訳でも無いのだが、やはり数が多ければより良き出会いのチャンスもそれだけ増えるってことだ。要するに人の好き嫌いは出来るだけ無くし、なんでんかんでん、取り敢えずどんな人にも興味を持ちじっくり観察し味会うことだ。こんな生き方してりゃ、結構楽しく、人生満更でもございませんことよ。

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中秋の名月 前夜

2021/09/17
【第1530回】

第164回直木賞受賞作、西條奈加作「心淋しき川」読了...掃きだめのような場所で、普通の人が、当たり前の感覚でひっそりと生活している様子を、時折揺れる感情で人間関係を描いているところが、しみじみとさせてくれる。山本周五郎を彷彿とさせ、映画で言うならば小栗康平監督の傑作「泥の河」といったところか、寄席に行くとこの手の話はよく出てきますな。貧乏長屋の市井の人たちの人情噺に思わず泣かされほっこりしてしまう。すべてが利に走り情が希薄になった昨今、こんな世界に惹かれ丹念に描いてみようとするその志が素敵だな...こんな小説を読んでいると、思わず終戦間もない頃、貧しくとも激情が飛び交った博多の長屋の生活を想い出す。この小説には塵芥にまみれたどんよりした一本の川が流れているのだが、おいらの住んでた長屋は天候に左右される泥道が一本、100メートルの長さ貫いておりました。昔は川、道が住民にとっての命のライフラインだったんですね...

久しぶりに新宿中央公園に行ってきました。いやいや立派に整備されどんな人でも憩えるお洒落な広場になってましたね。そりゃそうだ、都庁のそばで汚いところは見せられないもんね。昔なんぞはホームレスの人たちの住居であり、不埒な覗きがゴロゴロしており安心してデートできる公園ではありませんでした。

こんな新宿中央公園の光景を見るにつけ、改めてこの国は平和だなと思いつつも、平和ボケして思考停止にならんようにとネジをしっかりと巻いたひとときでもありました。

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新宿中央公園

2021/09/15
【第1529回】

自民党の権力闘争が日増しに顕著になっている。所詮、サル山のボス争いなのだが、長年牛耳ってきた年寄りザルと少々若いサルとの戦いの構図になってきた。そう言えば国民に人気がある河野さんはサル顔だね、この人以前は脱原発なんて張り切っていたのだがトーンダウン。まあ、総裁にならなきゃ政策も実現できないので当選するための作戦だとは思いたいのだが、そうは問屋が卸さないのが魑魅魍魎の政治の世界でございます。舌の根が乾かないうちにペロッと真逆の方向転換なんていうのは当たり前のこと。それにしてもTVはことごとく総裁選一色、まだ決まってもいないのに人事を予想したり、ホントにTVの世界は面白おかしく構成し視聴率さえとれれば万歳三唱、この軽佻浮薄の電気紙芝居のおかげで、この国のものの見方、考え方のレベルをどれほど下げまくったことか...片や、野党にしてもなんだか自民党総裁選祭りの騒ぎに目を奪われパッとしませんな。ガースーさんだと勝機も芽生えたのだが、とんだ展開になったもんだと困り果ててる現状です。

総裁選に目を奪われているうちに、コロナちゃんもチャンスとばかりにまたまた次の波に乗っかって押し寄せてきますがな。新宿の西口広場では連日ワクチンのもたらす弊害を訴える集団がマイクを手にして叫んでおりました。いやいや、何がほんとで何が嘘なのか、やっぱりいつものことでございます、自分の身は自分で守るしかありませんな皆の衆。

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ナスの花
花言葉(つつましい幸福)

2021/09/13
【第1528回】

風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」昨日、無事千秋楽を迎えることが出来ました。緊急事態宣言が発令されるなか、多くの人達が駆けつけてくれました。ほんとに感謝です。10日間、コロナの恐怖で閉じていたもやもやが一気に解放され笑いに転じる様を見るにつけ、この芝居を上演する意義を改めて感じた次第です。もしや関係者の中からコロナ感染者が出やしないかとヒヤヒヤドキドキの日々でもございました。こうやって無事何事もなく終えることが出来たのも、この芝居に関わった人達の思いがひとつになったのでは...この芝居の中でも、心の連帯の大切さを訴えるシーンがあります。心という文字は、まさしく変幻自在どうにもまとまりそうもなくあちこちに散らばっています。この心に楔を入れると必ずという文字になります。この危機的状況を乗り越えるには有効な楔(連帯、絆)が不可欠だと思います。

終演後の池袋東京芸術劇場前の広場では、おおくの人達がソーシャルディスタンスを遵守しながらそれぞれの時間を楽しんでいました。広場真ん中に位置する噴水に戯れる子供は、今先程、全ステージを終えた風間杜夫の幼き日を彷彿とさせる姿でした。まさしくひとり芝居、ひとり遊び、与えられた環境で誰の眼を気にすることもなく全身で楽しむ、あの日あの時間は誰しもが持っているはずです。邪心なき遊び心、いくつになってもなくしてはならない必需心でございます。

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ひとり芝居&遊び

2021/09/10
【第1527回】

今日は久しぶりの青空を見ることが出来ました。青空と笑顔は気分を変えてくれますね...「帰ってきたカラオケマン」もいよいよ今日を入れて残すところ3ステージとなりました。おいらも連日観劇しているのですが、お客様の笑い声を聞いていると何だか救われる気がします。コロナ禍の中で、人は思い切り笑える場を欲していたのかも知れませんね。今回の主人公である牛山明の人生そのもので、我々の実人生を垣間見ることが出来、身につまされるのではなかろうか...風間杜夫の天性の役者振りで思わず笑っちゃうシーンの連続。そしてラストは、この芝居のテーマである歌へと帰結していくドラマツルギーは普遍的ではあるがよくできていると思う。

ラストに流れる、この10年の主たる出来事のスライドも主人公の歌と共鳴し、私たちの歩んできた10年をしみじみと振り返させてくれる。このスライドの最後の2枚はおいらが決めさせていただいた。先ずは、今まさに振出しに戻ったアフガニスタンの地に立つ中村哲氏の写真、最後は野球発祥の地で驚異的な活躍をしている大谷翔平選手のバッティング姿。世代、地域、時代を越え、この二人の、活動、活躍はこれからの世界への希望を暗示させるに違いない。

それにしても、この緊急事態宣言にも関わらず多くの人達が劇場に足を運んで頂いてること自体が、この国の未来に、くたばってたまるか!とエールを送ってくれてる気がしてほんまに嬉しゅうございます。

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ルリマツリ

花言葉「ひそかな情熱」

2021/09/08
【第1526回】

現在公演中の芝居、順調に快調に飛ばしています...府中を入れて5ステージ終わったところです。72歳を感じさせない杜夫ちゃんも、さすがに疲れているのではと思うのですが舞台に上がれば水を得た魚のごとく飛び跳ねています。昨日芝居を観たO氏から速達の葉書が劇場に届いていました。

 拝啓

「帰ってきたカラオケマン」が上演されるまでにどれ程の打ち合わせと稽古が重ねられたのか、厚いその繰り返しが舞台の上の風間杜夫を包み込んでひとり芝居が出来上がっているんだと熱情たちが伝わってくるひとときでした。なんだか芝居の席にいるのではなく、話を作り上げる集団の中に巻き込まれているような錯覚を起こしました。舞台の上で語りかける台詞が、まるでこの芝居にかかわった人それぞれに発せられている言葉のように聞こえる。そんな不思議な空間でした。長い間演劇を観てきましたが、こんな連帯感に満ちた空気の中で観劇する気分を味わったのは初めてです。昨今の事情の中敢えて公演に踏み切ったこの作品の生命を肌で感じたからだと思います。相変わらず飄々とそれでいて芯は通った主演者の存在そのものが芝居を上演することの意義を自ら体現している素晴らしいとしか言いようのない時間、空間を構成していました。それにしても歌の持つ力の凄いこと!観る者をあっという間に、その時、その場につれて行くのですから。郷ひろみ「よろしく哀愁」をこんなにも意味を持って聞いたのは今日が初めてです。今カラオケで歌いたくて仕方ありません。                                 敬具

 


ひとりひとり己の生き方を通して芝居を観劇されてることが伝わってきます。芝居には、まだまだ無限の可能性を感じます。生身の人間が手作りで創って、生身の人間が観る。この情報過多でものの本質が視えなくなっている今こそ、このシンプルさが貴重でございます。

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今日の空

2021/09/06
【第1525回】

4日にスタートした「帰ってきたカラオケマン」も今日で3日目。昨日までパラリンピックの関係で、都の管轄である東京芸術劇場は入り口で荷物検査、体温、消毒と厳しい警戒態勢が敷かれていました。お巡りさんも駅の要所に随分と見かけものものしい期間でした。オリンピック、パラリンピックも無事最後までやり終え関係者はホッとしているのでは...昨日の視覚障害女子マラソンで金メダルを獲得した道下選手の笑顔がとっても素敵でした。改めて笑顔が持つ魅力を感じさせてくれました。笑顔があればどんな些細な苦難も乗り越え、その先にはハッピーな出来事が待ってそうな気がします。誰だって苦渋に満ちた顔なんぞみたくありませんよね...笑顔はどんな薬もかなわない一番の特効薬でございます。

それにしても、パラリンピック閉会式に出席していた首相、なんだか可哀想に思っちゃいました。隣にいた都知事のおばさんとも口を聞いてもらえずポツン座っている姿は政治の世界の非情さを見せつけられた思いです。都知事のおばさんは衣装も替え、次期パラリンピック開催地であるパリ市長に堂々とバトンタッチしておりました。パリ市長の衣装が地味だっただけに、やっぱりこの人、自分を際立たせる演技力は大したもんでございます。

方やコロナ、権力争いどころじゃございませんよと言いたい。演劇関係者も日々緊張の日々、飲食店もほぼ休業、街に活気がないのも当然です。実際、今上演中の芝居も8月21日から会場の50%に達しているところはチケット販売中止と言うことで被害甚大、そして観たいお客さんに断っている有様で、涙ちょちょぎれますわ...

でも、昨日のカーテンコールで風間さん言っておりました「大変なこの時期に足を運んで頂き本当にありがとうございました。そして、こうやって舞台に立てることとても嬉しいです...」そうですね、舞台をやれることに感謝です。

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池袋東京芸術劇場前広場

2021/09/03
【第1524回】

昨日、府中の森芸術劇場にて風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」スタートしました。雨の中、沢山のお客様に来て頂きました。観客を前にしての初めての芝居はどんなベテラン俳優でも緊張するものでございます。この日も出番の前、袖で手の中に指で人という文字を書き込み口に当てぐっと飲み込んで舞台に上がったことでしょう...舞台に上がれば千両役者、お客の反応を素早くものにし、あっという間の一時間半でした。最初と最後にお客さんからの掛け声もあり見事な初日でございました。

そして久しぶりの府中、大きな街に変貌してました。わざわざ新宿まで行かなくても、普段の生活には十分過ぎる賑やかな店舗の数々、改めて東京という都市の大きさを感じた次第です。府中の発展には府中競馬場が大いに貢献していることは間違いないと思います。財政が苦しい地域がカジノを誘致するのもよく分かります。おいらも若い頃、府中競馬場でバイトをした経験があります。当時のレースの判定はビデオではなく写真で行なっていて、コーナーの四隅の高台に建てられたところで撮った写真を手渡しで回収車に渡す仕事です。春うららの陽気についついグースカピーの鼻提灯で寝てしまい写真を渡し損ねクビになった苦い思い出があります。暇な時間には馬券も買って適当に遊んでました。それにしても馬場を疾走する名馬を眺めながら、人生も勝負する時にはしなきゃいけないのかなとふと思っちゃいました...

明日からは「帰ってきたカラオケマン」東京芸術劇場でスタートします。まだまだ油断できないコロナ、12日の千秋楽まで無事に終えることを祈念!

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府中の森芸術劇場の近くにて

2021/09/01
【第1523回】

今日から9月1日、今年も残すところ四か月となりました。最後までコロナで悩まされる年になりそうですが何とか乗り切りたいものです。

星野道夫さんの「旅をする木」読了。アラスカに住み1996年にロシアカムチャッカ半島に設営していたテントでヒグマに襲われ43歳で死亡。子供のころから見知らぬ土地に憧れ念願のアラスカに住み、アラスカの自然を写真、文章で紹介してくれた旅人でした。彼の時間に対する思考がとても素敵でした。自分が今過ごしているその時に、過去に出会った人がどうしているのだろうか?まだ見ぬ土地の人達は何を考えているだろうか?彼の時間軸が世界と共振していく想像力がとても壮大でありロマンティックでした。

おいらも30歳になったとき、己がどれほどのものか?とまずはスペイン一人旅を始めました。確かにいろんな国に行くと想像を絶することばかりでした。他国の文化、生活、思考、本で知識として理解していてもホンマモンを目のあたりにすると知識なんぞは何の役にもたちません。おいら今でも若い人達には旅を勧めます...生身でぶち当たってこその人生です。スマホでこちょこちょ器用に過ごしてる時間が実にもったいないのでございます。

評論家であることよりも実践者であれ!この世に生まれたからには、どんな小さなことでも良いから何か生み出さないといかんですばい。

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ひとはみな旅人

2021/08/30
【第1522回】

アフガニスタンが大変なことになっている。何度繰り返しているのだろうか...ベトナム然り、イラク、そしてアフガニスタン、世界の警察官アメリカの力(武力)による支配が無力であることをまたも思い知らされた次第だ。真の平和は2019年12月に亡くなった中村哲さんの地道な活動などからしか得られない。アフガニスタンにアメリカ軍が駐留した際、哲さんは今ある姿を予想していたに違いない。武器を差し出すのではなく、いまある現状に自ら身体を張って現地の人達と一緒になって汗を流しながら灌漑用水を作り、貧困に喘ぐ地域に診療所を設け自ら診療にあたった哲さんの信念「誰もそこへ行かぬから我々がゆく。誰もしないから我々がする」が真っ当ではなかろうか...

 

「信頼」は一朝にして築かれるものではない。利害を超え、忍耐を重ね、裏切られても裏切り返さない誠実さこそが、人々の心に触れる。それは武力以上に強固な安全を提供してくれ、人々を動かすことが出来る。私たちにとって、平和とは理念ではなく現実の力なのだ。私たちはいとも安易に戦争と平和を語りすぎる。武力行使によって守られるものとは何か、そして本当に守るべきものとは何か、静かにおもいをいたすべきかと思われる。

 

哲さんの言葉には説得力がある。そして哲さんが現地の人達と一緒に創りあげた心の結晶、思いが一隅の灯りとして、静かにコツコツと積み上げられることを願う。

 

おいらのデスクには友人である書家・井上龍一郎さんのカレンダーが置かれている。今年は中村哲医師のことばが書かれている。7月8月の書は「御託はもう結構 ただ実行あるのみ」

続いて「どこまで行くのかと尋ねられた 啠 行けるところまでと答えた」「せめて自分たちだけでも日本の良心の証となろうと願っている」

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暑いニャン

2021/08/27
【第1521回】

昨日、風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」初めての通し稽古に行って来ました。

前回顔を出して以来の稽古場だったのだが、さすが杜夫ちゃん見事な1時間半でございました。あんなに沢山の歌に台詞、どうやったらあんなに上手く出来るんでしょうかね?いや、彼だからこその芸だとつくづく思い知らされた次第です。先ずは自分が楽しんで居る姿がすなわちお客に楽しんで貰うことだと言うことを把握してるんですね。でも、このわかりきったことも腕がなければ唯のマスターべーションに陥ってしまう現場を過去に何度も目撃してきました。この芸の回路を何の抵抗もなく違和感なく心地よく通過させていく者は生まれ持っての才能以外には考えられません。この世界ばかりは、いくら努力しても埒が明かないことが多々あります...おいらも長くこの世界に携わっているけれど残念ながら向いていないなと思う人も随分と居ました。でも、正直言ってやめろなんて簡単に口出しできないんですね。だって、好きなことはやめられないし、好きなことに夢中になれるなんてことは素晴らしいことですから...この混迷した時代に、熱中すること自体が冷ややかな視線に晒されてる現実があります。一度きりの人生なのに寂しい気がします。挫折しても結構です、無我夢中になった体験は必ずや人生に活かされることは間違いありません...

稽古場を後にして稽古場から両国駅まで歩いていたら九重部屋がありました。玄関前には今は亡き昭和最後の大横綱千代の富士の胸像がありました。現役時代はウルフの愛称で小兵ながら上手投げと速攻相撲でおいらも好きな関取でした。あの時代に比べて今の相撲界随分と変わったもんでございます。強いのはわかるのだが、土俵上の態度に品がないのがよろしくありません。時代のせいにするのは簡単だが、やはり品格、清々しさはどの世界も同じだと思いますがね。

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出を待つ千代の富士

2021/08/25
【第1520回】

依然として収束の見込みがない中、パラリンピックも開幕しちゃいました...障害がある人達の競技は、おいらとしては先のオリンピックより意義深いとは思いますが、何せ毎日入院もできず自宅で亡くなっている人が居る現状の中ではやはり異常だと思います。昨日のセレモニーも単純に楽しめない気分で途中観るのを止めちゃいました。オリンピックと同様、出し物が稚拙でありセンスのかけらすら感じられない演出でもありました...日本のアートのレベルを問われかねないお金の無駄遣いであったと思います。そんなお金、この非常事態のなかコロナで困窮しているところにまわして欲しいと感じた人が多くいたのでは...

そういう訳で、昨日は野球を観ちゃいました。なんと最下位争いをしているライオンズでございます。なにが悪いのか?勿論、いい選手があっての戦いだとは思いますが、やはり監督の采配とコーチのアドバイスの良し悪しが勝利の方程式かな...この方程式が今年のライオンズには欠けています。昨日は勝っていたのに、過去に何度も失敗している投手を起用して案の定逆転されちゃいました。何度同じ間違いするんじゃボケ!とおいらも腹立たしく思ったのですが、最終回若手の活躍でなんとか引き分けに持ち込みました。今年のライオンズ、優勝は無理なので若手の活躍が唯一の楽しみです。特に育成から這い上がり活躍する選手には拍手を送りたい...それにしても日本ハムから巨人に移籍した選手、暴力事件を犯しながら9日の謹慎期間のみで早速プレーするなんて、思わず空白の一日なんて無茶なことして巨人に不法入団した昔の江川事件を思い出しちゃいました。未だに球界のドンのやることには何も言えないんでございますね...どこの世界も同じ穴のムジナってことかな。

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ウワサの新宿3D巨大猫

2021/08/23
【第1519回】

昨日の20時に早くも横浜市長選の当確が決まりました。まあ、良識のある人たちの妥当な判断ではあったと思います。連日4000人から5000人のコロナ感染者が出ているのに何ら手を打たない現実を知れば少々反応が遅い人でも危機感を持ちますよね。コロナ感染による自宅待機なんて戦々恐々、うっすらと死が頭に浮かび、日が経つにつれネガティブになっていくのが想像できます。この非常時にリーダー不在のこの国の不幸が際立ってきています。先ずは言葉ありきだと思います。言葉の翼に説得力、力強さ、想像力が抜け落ちていると言葉は大きく広く羽ばたいていきまっせん。昨今、SNS全盛時代、誰しもが気軽に言葉を発し好き勝手に巷に氾濫しまくってる言葉。言葉は疲弊しイージーになり下品なやり取りに終始する場をよく目にします。言葉の使い方ひとつで人は目覚め生き方を変える武器にもなるし、その逆、尊い命までをも奪いかねません。「沈黙は金」なんて言葉がありますが、黙っていた方が説得力あるなんてことは、豊かなきらりと光る言葉を有してる人が沈黙した時に有効性があるってもんじゃないでしょうか...

おいらが大好きな詩人、茨木のり子さんの詩

 

言葉が多すぎる

というより

言葉らしきものが多すぎる

というより

言葉と言えるほどのものが無い

 

そうなんですね。心底からふかい喜悦をもたらしてくれる言葉、渇いた心を芯から潤わしてくれる言葉に出逢うことがめっきり少なくなってきたんですね...

寂しい時代になったもんでございます。

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「花束を持っている少年」新宿東口

2021/08/20
【第1518回】

新宿の街でロマンスグレーの60代半ばの紳士が花を抱えて歩いていました。様になっているというか、なかなか日本社会では見かけない風景です。誰のために買ったのか?それとも自分の部屋に飾るため?どちらにしても花を愛でるその心意気、いや男気、艶っぽさについつい見とれてしまいました。そういえばおいらが昔住んでたスペインでは、普段は朝からワインを飲みだらしない男が、なぜか花を手にすると背筋が伸び、きりりとした伊達男に変貌する姿をよく見かけました...おいらも花を手にする姿がとっても似合う紳士になりたいと改めて思った次第です。

今や、男のくせに女のくせにの言葉は死語です。男女を問わず、誰しもが認める心身含めてエレガントな姿、生き方を目指したいものです。どんな人生を生きてきたかは、その言葉遣い、仕草、表情にすべて表れてくるので恐ろしゅうございます。まさしくその人の姿、形は履歴書でございます。履歴書を背負って街中を歩いてると思ってくださいな...

まだまだ収束しそうもないコロナ、この週末も己の身は己で守るしかない現実をしかと自覚して過ごすしかないですね。

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野に咲くゼフィランサス

2021/08/18
【第1517回】

久しぶりに青空を見させていただきました。雲の間に拡がる青空を見るだけで、何だかほっとし今日も生きられるなんて思う気がしてしまいます。人間なんて身近にある幸せを当たり前のように享受してるのだが、自然が織りなす気候の微妙な変化でその有難みを改めて気づかさせてくれてるんですね...

小池真理子さんの新作「神よ憐れみたまえ」570ページの長編一気に読んじゃいました。10年かけて書き上げたこの作品、作者の人生観が見事に織り込まれている。主人公は決して普通の人ではないのだが、主人公を取り巻くひとたちとの出会い、別れを通して普遍的な人生の形が浮かび上がってくる展開が見事だ。ミステリー小説と思わせながら登場人物ひとりひとりのキャラクターに魅了されていく人間ドラマ。

2020年1月に最愛の夫であり同じ直木賞作家である藤田宜永さんを亡くし、その悲しみの中で書き上げたこの作品は夫へのレクイエムともいえる作品。生と死、そして老い、夫婦で長年住んでいた軽井沢での二人で過ごした日々も含めて作者渾身の作ではなかろうか。

この作品、多分映像化されるのは間違いないと思うのだが正直言って勘弁してほしいな。未だに小説を凌駕する映像作品は「砂の器」(原作・松本清張、監督・野村芳太郎)以外、おいらのなかでは見当たりません。言葉が持つチカラを改めて考えさせてくれる文学に出会ったときの喜びはそりゃ天にも昇る心地でございます。

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久し振りの青空

2021/08/16
【第1516回】

いやいやよく降りました雨、雨、雨...コロナ感染には人出を減らす恵みの雨にはなったけど、全国各地に甚大な被害をもたらしてしまいました。何十年度に一度なんて言葉は死語になるくらい毎年恒例の災害になっちゃいました。環境破壊がもたらす要因はわかるにしても、ここもきちんと手を打たないと人災と言われても仕方ないかもしれません。お盆の時期にこれだけ降り続けるのも珍しいことではなかろうか...戦地で虚しく散っていった人たちが「あんたら少しは俺たちの無念さを考えておくんなさいな」叩きつけるような雨音が、そう聞こえる8月15日でもありました。満州の地で敗戦と同時に真っ先に逃げていった日本の上級軍人、残された平民は悲惨な境遇に晒され棄民にならざるを得なかった状況は、今まさにコロナに感染し自宅療養せざるを得ない人達に通じるものがある。自宅療養なんて言葉もおかしくありません?療養を受ける術もないんですから...面倒みきれませんからと棄てられたコロナ棄民といっても過言ではないと思います。

週明けの今日の新宿は雨もほどほどなんですが街ゆく人の表情は何となく疲れた感じがします。そりゃそうだ、流れてくる情報は水害とコロナいい加減心が萎えちゃいます。ここはぱっと気晴らしに外に出て一杯引っ掛けながら憂さ晴らしと言いたいところだが酒禁止なんですから家で飲むしかありません。酒はただ飲めばいいってもんではございません。主は、人とのコミュニケーションであって、酒はその手助けの従でしかありません。家での酒はついつい飲み過ぎ身体を壊してしまう危険性を孕んでいるのでご用心。

ぼやいていてもしょうがなか...なんとかいつもの日常を取り戻す流れをつくらんといきませんばい。

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今日も走る新宿タイガー

2021/08/13
【第1515回】

風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」いよいよ稽古が始まりました...でも状況は非常に厳しいですよね。連日5000人近くのコロナ感染者が出ている中、稽古も厳戒態勢の中でやるしかありません。PCR検査に、マスク、検温、消毒、換気などなど、やれることはなんでもやっています。幸いにして昨年からトムの周辺からは感染者も出ず何とか公演を継続できているので、今回も上演出来ることを信じてやるしかありません。

稽古初日から風間さん気合い十分です。本番並みの本読み初日でございました。今年72歳、髪もふさふさ、顔の色艶も良く、まさしく絶好調といった感じです。今年も今回の芝居で3本目、役者風間杜夫の表現力に深みが増し見応えがあるひとり芝居になると思います。

それにしても、この感染状況の中、国会も開かずなんの手も打てない為政者ってなんなんでしょうかね...東京のコロナに感染して自宅で療養している人がなんと2万人、入院したくても出来ないんですから、これは非常いや異常事態ですよ。昨日の東京の入院者がたった一人、都知事もなんとかせんかい!もうここまで来れば自己防衛しかありませんね。

昨日から雨が降り出し、ここしばらく続くらしい...この雨が人出の減少に繋がり恵みの雨になることを願いたいものです。

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稽古初日のスカイツリー

2021/08/10
【第1514回】

やれやれ、オリンピックも終え、又もや猛暑の東京の週明けでございます。ぼったくり男爵ほっとしたんでしょうかね、銀ブラを楽しみ街行く人と写真に応じたとのこと。気楽なもんですな...オリンピックの間にあっという間に感染者が増えた東京、身の回りにも自宅療養で高熱に苦しんでいる人が居ます。アスリートの人は本当に良くプレーしたし、彼らを責める人は誰もいないと思います。IOC貴族、これを承認した為政者なんとか言わんかい!いやなんとか手を打たんかい!オリンピックと感染者の増加は関係ないなんてしらじらとのたまうあなたたちはどこまでも上目線ですな...ほんま呆れてしまいますわ。

8月9日の長崎原爆の日に被爆者代表として語られた92歳の岡信子さんの言葉は胸を打つものがありました。当時16歳、日本赤十字の看護学生であった岡さんが目の前で見た地獄の惨状をしっかりと言葉にする姿は、どんな優れた学者よりも原爆の恐ろしさを伝えるまさしく肉声でありました。体験からきた言葉に適うものはありません...原爆の脅威を知らない人たちには是非とも聴いて感じてもらいたいものです。武力を優先する核保有国のトップにもと言いたいところだが、彼らは武器商人の先棒を担ぐ輩なんで見て見ぬふりをするでしょうね...それにしても、こんな当たり前で理不尽なことすら世界で共有出来ないなんてニンゲンアホですな!

そのアホなニンゲンにならないためにも、自分磨きゴシゴシやらんといかんですばい...

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窓ガラスに映る夕日

2021/08/06
【第1513回】

76年前の今日8時15分に忌まわしい出来事がありました...おいらもこの時間に、原爆で亡くなった人達に哀悼の気持を込めて黙祷しました。先日も画家丸木位里夫妻の「原爆の図」を見たのだが、一瞬にして地獄絵の世界に晒された人たちの苦しみはいかばかりかと...眼球は飛び出し、肉は焼けただれ、水を求めて川に飛び込む人達。この惨状を唯一体験せざるを得なかった国なのに、今年国連で発効された核兵器禁止条約に日本が加盟してない事実、そして今回のオリンピックのさなかに黙祷の提案すらできないこの国の為政者の不誠実には怒りを通り越しあきれ果てております。

最初は東日本大震災復興のためのオリンピック、次がコロナウイルスを乗り越えるためのオリンピック、立派なお題目ばかり立ててなんら努力もせずただ時が過ぎていく日々。はっきり言って、この国の姿に明るい未来を感じることはありません...と、おいらは残り少ない人生だから良しとしても、子供の屈託のない笑顔を見るにつけなんとかせんばいかんですばい!とも思います。日々の安逸な生活もいいけれど少しは意識のフィールドを拡げてみると、生きてることの楽しみが増えてくると同時に、人として生まれてきたことへの責任と義務の大切さを思い知らされるはずです。

8月9日は長崎に2発目の原子爆弾が落とされた日です。午前11時02分、多くの人達が今ある平和に感謝し、未来永劫二度と戦争を起こさないことを誓い黙祷することを願います。先ずはすぐにもできることから始めるしかありません...

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一服の清涼花

2021/08/04
【第1512回】

みーん♪みーん♪みーん♪今日も朝からセミが元気よく鳴いております。改めて今は夏の真っ盛りであることを思い知らされます。このセミ君、雨が降る前にピタリと一斉に鳴くのを中止します...なんでもこのセミ君、雨が降る前からもうすぐ雨が降ることがわかっているんですね。蒸し暑くなったり、生暖かい風が吹いたり、セミはさらに正確に雨を予測しています。だってセミは雨が嫌いなんです、先ず外敵にあっても飛ぶことが出来ず身の安全が保障されません。木にしがみついたり凹みに身を隠し雨が止むのをひたすら待つしかありません。雨で羽が濡れるだけではなく変温動物であるため体温の調整ができないんですね。

子孫を残すために相手を探すために命を懸けて泣き続けるオスセミ君の何とけなげなことか...そして今日も、命尽きお腹を曝け出してるセミ君の姿を見て、お疲れさまの声を掛けてあげました。

長くて10年土の中にいて、地上で7日の命なんて悲しくありません。長雨が続き一度も鳴くことなく果てるセミ君だっているかもしれません。猛暑でたまらんなんて言う人が居るかもしれませんが、どうかセミ君のためにも晴れの日が少しでも続いておくれなんて気にもなってしまいます。7日の命と決められたらおいらはどうするかな?なんて考えちゃいますが、ここは一日一生の気持ちで日々を悔いなく生き切ればいいんじゃないかしら...

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夏の風物詩

2021/08/02
【第1511回】

今週もコロナとオリンピックで8月の幕が開きました...先週の金曜日、久しぶりに芝居を観てきました。日々3000人を超す感染者が出る中での芝居、やる側も観る側もきついものがありますね。しかも30人ほどしか入らない小劇場、新宿三丁目にある雑遊というホールです。居酒屋さんを経営しながらも芝居をこよなく愛するオーナーが若き演劇人を応援するために提供した夢場所です。今回観た芝居は別役実作「受付」演出は唐組の久保井研さん。男と女の二人芝居でしたがなかなか見応えがありました。別役さんと言えば不条理劇の代名詞みたいに言われてますが、今回の芝居、久保井さんの演出力によりとても分かりやすく面白く仕上げられていました。言葉を頭で考えず、日常のありのままに形に置き換えたものを役者の身体にストンと落とし込んだことが成功の秘訣だったのではと思っています。

おいらは唐十郎さんの芝居が好きで、状況劇場、唐組と半世紀ばかり観てきてはいますが、最近の唐組の演出をしている久保井さんのチカラにより今までとは違った唐さんの魅力を引き出していると思います。観客を見知らぬ世界に誘い込み、猥雑とロマンとポエムで狂乱の際まで追い込み感動の極地まで持って行く唐ワールド...久保井さんの演出はその絡み合いもつれた世界の糸をほどく作業を丁寧にしてる気がします。嘗ての世代とは異なる若い役者には適格な指導演出ではなかろうか。

この「受付」を企画した石渡紫晶さんにも拍手です。いくつになっても、やりたいものをやらねばと実行に移す心意気と志、これを持ち続けてる人は幸せであると同時に、生きてる人間としてキラキラもんですばい!

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相思相愛

2021/07/30
【第1510回】

5月の連休の時、近所の花屋さんで何気に買った野菜さんたちの収穫期を迎えました。最初のきっかけはキャベツを買ったところ可愛い花を咲かせたので、こりゃいいやとばかり鑑賞用にと考えていたところなんとたわわな実をプレゼントしてくれました。

考えて見りゃ、コロナ、災害などなど何だか地球存亡の危機に瀕してる昨今、もはや自給自足の態勢に備えなければなんて考えてしまいます。人にも逢えない、飲みにも行けない巣ごもり状態では、新たな楽しみを見つけるのもひとつの方策です。日々成長する姿を見るにつけ何だか励まされてる感じさえいたします。ただの水やりで逞しくのびのびと育っていく過程にあらためて生命力の凄みをみせつけられます。又、都会のアスファルトジャングルを突き抜けて生えてくる雑草を見る度に人間のひ弱さを感じ、少々のことで弱音を吐いてる場合じゃござんせんとついつい敬意を表して雑草に頭を下げてしまいます。

無農薬で育った野菜ちゃん達の味は極上でした。ましてや我が家で育った我が子であり喜びもひとしお感謝の気持ちで一杯でございます。この何気ない方策が思いもかけない豊作と繋がりめでたしめでたし!

さていよいよ大変になった首都東京、誰も守ってくれない週末、これまで以上に気をつけて過ごさねばと思っとります。それにしても昨日食べたキュウリ何処の店のものより美味かったですばい...

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収穫祭

2021/07/28
【第1509回】

あちゃ...3000人超えました。オリンピックの日本選手金メダルラッシュで連日メディアは盛り上げています。日々しつこいくらいコロナ情報を流し、徹底討論をし続けた局も視聴率を考えるとオリンピックに傾きますわ。オリンピックで盛り上げて片や相変わらずの自粛の呼びかけ。どう考えても矛盾してることは素人でも分かりますがな。若者は緊急事態宣言慣れして、もうお上の意見なんぞに耳を傾けません。路上で集まって試合観戦しながらアルコールで勝利の乾杯をしています。なのに、この緊急事態に国会を開かずトップは「人の流れが抑えられている...」なんて能天気な発言するし、都知事のおばちゃんはいつも人ごとのような会見、あんたら1年8カ月なにやっとったんや!もう、怒る気もしませんがな。

こちらも9月、10月、11月と3本の芝居を予定しています。去年の悪夢のような体験をしている身にとって又してもなんて思いが過ります。芝居屋ばかりじゃございません、コロナで苦しめられ続けた人たちにとってこれ以上の困難を負わせないでと言いたい。

堪忍袋の緒が切れた!とアホな人たちにドスを突きつけたいくらいだが、ここは来るべき選挙でこの国のシステムを変えるしかないんだが、いつものように半分ちょいの投票率では多くは望めませんな...もうこれが最後のチャンスでございますよ!

この季節の夕焼けを眺めていると何かが起きそうな予感がします...自然も様々な景色を見せながら変革を促しているように見えるんですが...どうか感じてくださいな。

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高井戸駅ホームにて

2021/07/26
【第1508回】

4連休も終え7月最終週を迎えました...コロナに猛暑のダブルパンチだと、やはり巣ごもりになってきますね。だと、やはりオリンピックテレビ観戦も選択肢のひとつですかね。昨日の阿部一二三、詩さんの柔道は素晴らしかったですね。金メダル瞬間の妹のはしゃぎ方、一方お兄さんの冷静さ、対照的でした。妹さんは可愛かったし、お兄さんの武道家としての処し方は凛として素敵でした。おいらも柔道、空手をやっていたのでよくわかります。武道はスポーツと一線を画すところがあります。武道は生死を掛けた戦いです、負けた相手を前にして喜ぶなんてことは礼を欠きます。礼に始まり礼に終わる、この佇まいは日本の精神が受け継いだ優れた伝統のひとつだと思います。戦いの場である畳を去る時にも、正座し頭を畳にこすりつけて感謝の気持ちを表していました。前日の金メダリスト高藤選手も同じスタイルを貫いていました。

コロナ禍のなかでのオリンピック、東京を含め感染者の数は増え続けています。医療従事者の逼迫した姿を見るにつけ、改めて政治家、知事の無策に腹が立ちます。あんたら喜んでみてる場合じゃないんじゃない!飲食店も必死です、アスリートの活躍ばかり目を奪われてると、今後とんでもないことが待ち受けていることも予測、想像しなければなりませんことよ...

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夏の大宮八幡宮

2021/07/21
【第1507回】

いやいや今日も猛暑でございます。卵を割って道路に置いておけば目玉焼きが出来ちゃいますわ...そんな暑さの中、新宿を長年見続けた責任から今日も新宿の地回りを実施いたしました。オリンピック関係で新宿地区のホームレスの人達の荷物は見事に撤去され、いつものメンバーの姿もありませんでした。

IOCの総会でお偉いさんたちが歯の浮くような美辞麗句を羅列しているのには笑っちゃいました。「世界中が日本国民を称賛する」「若者や子どもたちに夢と希望と感動、勇気を与えてくれると確信している」「復興が進んだ日本の姿を力強く発信する機会になると思う」バカ言ってんじゃないよ!と多くの国民が思っているのによくまあ白々と言えるところがこの人たちの鉄面皮たる所以でございます。

こんな不安を抱える中、昨日は益田ミリさんのことを書きましたが、今日は安西水丸さんを紹介します。7年前に71歳で亡くなるまでイラスト、エッセイ、小説、絵画などたくさんの本を出しています。文壇と遠いところで、淡々と日常に零れ落ちる機微を描く作風は益田ミリさんと共通するところもあります。水丸さんは海外暮らしの経験もあり、そのぶんよりワイルドな感じがします。イラストもペンネームに相応しく流れる水の佇まいの如くサラッとしています。このサラッとがなかなか難しいんですね...いろんな体験、知識、美意識がないと、この境地に達することができません。軽妙洒脱って言葉がありますよね、これも我欲に執着している限り無理でございます。

さて、明日から4連休、そしてオリンピック、じりじりと照り付ける太陽のもと、それこそ一寸先は闇でございますぞ皆の衆。

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今日の新宿東口アルタ前

2021/07/19
【第1506回】

いやいや週明けの今日の暑さは半端じゃありません...新宿の街をちょいと歩いただけで汗が滴り落ちるんで、新宿を網の目のように張り巡らしている地下道に逃げこもうとも思ったんだが、キンキㇻキンの太陽と青空キャンパスに描き出された雲の表情も捨てがたく地上歩行を選択しちゃいました。やっぱり旬の夏を感じてこその日本でございますね...

コロナ、オリンピックなんたらかんたら、なんともすっきりしない日々が続いていますが、こんな時に益田ミリさんの本なんか読むとほっこりとして嫌なことも忘れてしまいますよ。

大阪出身の52歳の女性作家のイラストと文章が実に心に染みるんですね。感動ではなく日々のしみじみとした哀歓がじわりじわりと疲れた神経を程よくマッサージしてくれる感覚かな。街のあちらこちらに見かける怪しいマッサージ屋さんよりも疲れたツボをやんわりとほぐしてくれますよ...あくまで女性の視点から観たエッセイであるのだが、男性のおいらも「そうそう...良くわかる」なんて思っちゃうんですから人間観察においては男も女も関係ありません。彼女の文章に連れ添っているイラストが又いいんだな...シンプルな線で描かれたヘタウマなイラストからも日常の情感が精一杯零れ落ちています。

嫌なことが、腹立つことが多い日々が続いてますが、何卒ほどほどのバランスを維持してくださいませ...血管ブチ切れたら終わりですからね。

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週明けの空

2021/07/16
【第1505回】

今日、関東でも梅雨が明けました...梅雨って何となくジメジメして鬱陶しい季節のイメージがありますが、おいらはそんなに嫌いじゃありません。といって大好きということでもないのですが、あのシトシトと降る雨の感覚は好きです。すべてを水に流すって言葉があるじゃないですか。いらいら、もやもやとした感情をあの雨音と流れに任せて洗い流す感じがいいですね。若い頃、悶々としていた時に大雨に身をさらし一瞬にして気持ちの切り替えができた経験もあります...雨にもいろんな表情があります。ぽつりぽつりと落ちてくる水滴を眺めていることで時間というものを考え直したり、霧雨に自然が織りなすアートを感じたり、梅雨の季節にしか味わえない思索の旅へと誘ってくれる魅力が満載って感じかな。

その梅雨が明け、来週にはオリンピックが始まります。東京のコロナ感染者1300人を超えました。医療関係者が予測していたシナリオ通りでございます。なのにいつものように危機感がない政府、都知事、安心安全をアホみたいに繰り返す映像を観る度に、もう言葉がでませんわ。自粛しろなんて言われても誰も聞きませんがな...マスコミも、もう諦めたのか中止なんぞも言わなくなったどころか、どうやってテレビ観戦を楽しむかなんて報道になってます。そりゃそうだよね、メディアもオリンピック中継で懐が潤うのでございます。

世の中の仕組みしかり、この世は全て表と裏があって、情報にうかうかと乗っかっているとえらい目にあっちゃいますぞ皆の衆。

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梅雨明けの新宿の空

2021/07/14
【第1504回】

コロナ、災害、楽しめないオリンピックなどなど、スッキリ、ハッキリ、まして梅雨空で蒸し蒸しした晴れない気分のなか唯一希望の星になっているのがアメリカ大リーグで話題になっている大谷翔平選手ではなかろうか...今日のオールスター、ワクワクしながら観てました。第一打席ヒット性のセカンドゴロ、投げては先発、三者凡退で抑えました。そしてなんとこの日の試合の勝利投手にまでなりました。この翔平君なにが凄いかというと成績は勿論のことだが、野球を楽しんでる姿が何とも素晴らしい!イチローという偉大な選手も優れたプレーヤーだと思うのだが野球道に邁進する修行僧的な感じがするのに比べて、この翔平君いつもニコニコ、少年の笑顔を大人になっても保ち続けている。やはり笑顔は人を幸せにしてくれる人間最良の表現であることを証明してくれてますね。おいらもどちらかというとアウトロー的な人生を歩んできたせいか、あまり真面目なプロ野球選手というのは魅力に欠けると思っていたのだが、この翔平君の真面目さは世の中の常識を覆すスケールの大きさを感じさせる希有なる真面目さに違いない。グランドに落ちたゴミをさりげなく拾いポケットに入れる姿、自分に不利なことがあっても嫌な顔せず笑顔を絶やさない翔平君。子供の頃からいくつもの目標設定をしていつもチェックしていたそうだ。やはり己に厳しい人は他人に優しいんですね...ようやく前半戦が終わったばかり、どうか怪我せず初の日本人ホームラン王を獲得してくださいね。ショウータイムはまだ始まったばかりです。

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梅雨の晴れ間の狛犬さん

2021/07/12
【第1503回】

今日から4回目の緊急事態宣言が発令されました。新宿の街は相変わらず多くの人が行き交っていますし、通勤電車も普段通りの混み合いです。もう誰も政府の言うことなんか信じてないし、何の緊張感もない週が又も始まったという印象です。こんななか、来週にはオリンピックが開催されますが、ぼったくり男爵の来日、無観客での開催不満、そして見え見えの広島訪問、もうしらけてオリンピックなんてどうでもいい!という人達が随分出てきました。なんとも盛り上がらない大会になっちゃったもんでございます。アスリートのみなさんも複雑な気持ちだと思います。片や、ずれずれの大臣がとんちんかんな発言も飛び出し全くもって呆れたもんでございますね...飲食店も聞く耳を持ちません「このままじゃ潰れてしまうし12日からは平常通り酒も出し営業します」なんて張り切っていました。

すべてがオリンピックありきで進められた結果がこの有様では到底国民は納得できません。オリンピック関係者であろう人物がマスクもしないで新宿の街を歩いていました。大きな声で会話してるので皆避けるようにしていたのだが、実際のところこの外人さんの方が危ないのじゃないかしら?だって、日本人のワクチン接種率はまだまだなんですからね。

おもてなしを宣言したことで、大会関係者をはとバス東京観光コースに連れてってくれるとのこと。修学旅行も運動会も中止してるのにこんな計画理解されるのでしょうかね?

ともあれ、時は暑さと共に確実に進んでいます。行きつくところは所詮、自分の身は自分で守らないかんということですな...コロナに感染しなかった人、そして医療の最前線にいる人こそメダルをあげて欲しいでごわす。

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あんトーストで一服
(西荻窪JUHAにて)

2021/07/09
【第1502回】

昨日、今年10月に公演する東憲司作・演出「にんげん日記」チラシ・ポスターの撮影を行いました。午前中は能嶋三智枝役の賀来千香子さん、トムの芝居には初めての出演です。いや、本当に綺麗な方ですね。若い頃からモデルの仕事もされただけあってスタイルも見事です。人の前に立つことを生業としていることを意識されたプロ中のプロですね。柔らかい物腰からその人柄の良さも十分伝わってきました。三人のベテラン俳優をいかに翻弄していくか稽古場のバトルが今から楽しみです。

午後からは、能嶋桜役の大手忍さん、劇団桟敷童子の女優さんです。可愛い顔した年齢不詳の素敵な方です。東憲司さんの世界を表現していく重要な役を見事にこなし多くのファンを獲得しています。今回も忍さんの魅力全快の役柄なので期待しています。

続いては村井國夫さん、トムの芝居には4回目の出演になります。いつみてもダンディ、トムの芝居では剛と柔を織り交ぜ、作品に様々な彩りを施して頂きました。そして今回トム初登場の小野武彦さん。映像、舞台で小野さんの的確な演技と存在感は皆が納得済みです。最後に高橋長英さん、トムの芝居はなんと6本目、長英さんの飾らない人柄がそのまま舞台にも反映され、まさしくいぶし銀の味ですな。長英さんとは良く酒を飲み、物まね合戦をしてきました。

それにしても、俳優座花の15期である小野、高橋、村井さんが長い芸能の世界で初めての共演となる今回の芝居。しかも三人が大好きな東憲司さんの作・演出ときたもんで、おいらも大いに楽しみにしている芝居でございます。

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神様ハグロトンボ

2021/07/06
【第1501回】

昨日、福岡県小郡市文化会館で「狸の里帰り」の千秋楽を無事に終えることが出来ました。5月21日東京で幕を開けたものの、コロナ禍のなかでの公演は艱難辛苦の連続でした。キャスト、スタッフの努力の賜物だと思っています。そして何よりも、この困難な状況下でありながら劇場に駆けつけてくれたお客様には感謝の気持ちで一杯です。昨日のカーテンコールで柴田理恵さんが言ってました。「俳優なんぞはお客様の前で芝居できなかったら何の存在もありません...こんな時にこそ来ていただいたお客様は一生忘れません。」カーテンコールに並んだ6人の俳優の表情は全ステージをやり終えた達成感と、事故もなく千秋楽を迎えることが出来た安堵感で満ち溢れていました。福岡出身の岡本麗さんの九州弁が笑いを誘っていました。芝居はまたスタッフの力なくしては成しえません。朝早く仕込み、芝居の間は転換、終わればバラシ、休むことなく舞台を支えてくれるスタッフの皆さんがあってこその舞台です。

2021年が始まりこの日まで不安を抱えながら4本の芝居を何とか上演できました。緊急事態宣言で無観客なら許可するなんて理不尽な達示で「Sing a Song」の東京公演はやむなく中止をしましたが、ここまで数多くの公演ができたことは奇跡に近いと思います。コロナで多くのことを学んだのも確かだし、演劇が世の中の大切なピースであることも確認できました。まだまだすべて道半ばですが、芝居を観たいという人がいる限り演劇が滅びることはないということを確信した半年でもありました。

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野に咲く花

2021/06/30
【第1500回】

昨日、「Sing a Song」のラストステージを神奈川県相模原演劇鑑賞会主催の公演に行ってきました。4月の稽古から3カ月、なんとか千秋楽を迎えることが出来たことに感無量。緊急事態宣言下のなかでの旅公演、スタッフ・キャストの強い意志と結束で乗り越えることが出来ました。そして何度も言いますが演劇を生活の一部としてとらえ呼んでくださった演劇鑑賞会の皆さんには本当に感謝です。こんな時に芝居なんぞやりやがってではなく、こんな時こそ演劇をやることによってコロナの閉塞感を打破していこうとする鑑賞会の方々に意義ある演劇を届けることが出来たことはとても嬉しいです。今回の公演の評判すこぶるよろしいとの報告を受け、当然ながら次なる芝居に向けての励みにもなることは間違いありません。カーテンコールの時に、相模原演劇鑑賞会の皆さんが作ってくれた手作りの「千秋楽おめでとう!」の飾り、プラカード、ラストステージを大いに盛り上げてくれました。

この3カ月、おいらも含めて関係者すべて安眠できる日はなかったのではなかろうか...誰か一人でもコロナ感染者が出ればその場で芝居は中止になってしまうのだから、まさしく戦々恐々たる日々であったに違いない。電話が鳴るとドキッ、メールを開く時にもハラハラ、こんな体験、これまでの人生でもそう体験できることではありません。いや、こんなこと体験したくありませんです...なのにオリンピック開催で又再びなんてことになっちゃう不安が残されています。開幕まで、あと24日だというのに未だてんやわんやしとります...どこが安心安全や!差別じゃないけれどこの時期、海外から来た人たちが都内ぶらぶらしたり飲食したりする姿に接近するのはやはり躊躇しまいますがな。中止という選択はどこにいったやら?

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新宿新南口

2021/06/28
【第1499回】

昨日、「Sing a Song」富山演劇鑑賞会の公演無事終えキャスト・スタッフの皆さん東京に戻ってきました。4月27日の愛知県豊橋演劇鑑賞会で初日を迎え、途中、緊急事態宣言が発令され東京公演は残念ながら中止になりましたが何とかやり切りました、明日、神奈川県相模原演劇鑑賞会がラストステージになります。今回の旅公演、毎日ドキドキハラハラの日々でした。まるでコロナの戦いに細心の注意を払いながら挑む戦士のようでもありました。各地の演劇鑑賞会の人たちの懸命な姿も本当に感謝しかありません。こんな状況の中でこそ伝えることが出来る演劇のチカラ改めて再認識した次第です。演劇の神様がちゃんと見守ってくれたんですね!それは、間違いなく演劇がこの世界に必要だからこそだと思います。

コロナちゃんのせいで、人と会う機会がめっきり少なくなってきたというより会わないのが当たり前の日常になってきました。おいらはあまり過去に拘りを持たない主義で生きてきましたが、さすがに人の出会いが少なくなってくると、最近彼岸に旅立った友を想いだしてしまいます。アングラ芝居時代の同志、島、田島、伊深、皆コロナ騒ぎを経験せず逝っちゃいました。酒が大好きだった田島くんなんぞは「ざまぁみろ...こちらはコロナなんかは関係ねえから朝から飲んでるぜ!」なんて声が聞こえてきます。そして、酒が入れば陽気になり過ぎ、最後は道路にへたり込み、おいらも痛い目にあった日々が懐かしゅうございます。早く、気にせず飲める日が来ればと思うのだが、おそらくオリンピックのお陰でこれも儘ならない気がしてなりません...今日もほろ酔い加減の田島くん、おいらはまだそっちには行きませんことよ。

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梅雨に咲くバラ

2021/06/25
【第1498回】

今日の東京は梅雨の晴れ間、新宿の街を歩いているとジワリ汗ばんできます。今日もいつものように定番の位置にいるホームレスのおじさんがうつろな目でおいらを見つめていました。かれこれ1年になりますかね...最初はまだ眼付も力があったのですが、日毎に諦めの境地の視線に変化するのが手に取るように分かります。まあいろいろ事情はあるとは思いますが、ここはひとつ再スタートする気持ちになってもらいたいなと願います。生きているんだから、人のため世のためによしゃ!と踏み出さんかい...同じ人間として生まれながら自らのチカラではどうすることもできない人たちが世界にワンサカ居る中、この国は己の気持ち次第でいかようにもできる可能性がまだ残されているんだから実にもったいない...

東京のコロナ感染者、又じわりと増え始めています。オリンピックが開催されれば一番怖い街が東京になりそうです。入国管理の甘さ、相変わらずの有事の際に対するシュミレーションのなさ、科学的な根拠も示さずやみくもにオリンピック開催に突き進む姿は、あの第二次大戦に竹槍で敵に突っ込んでいく姿を彷彿とさせてしまいます。でも悲しいかな、そんな政治を選択したのもこの国の人達なんですね...都議会選挙がきょう告示されました。秋には国政選挙、いい加減まともな投票をしてくれといいたいです。と言っても半分の人は棄権するんですから、文句言うんだったら投票所に足運ばんかい!と言いたいのでございます。まあ、おいらも無党派層の一人で頼りになる人物もなかなか居ないのだが、消去法でもいいので、せめてもの弱者の側に立った人に一票投じねばと思っとります。

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事務所ベランダから

2021/06/23
【第1497回】

犬に纏わる2冊の本を読了...一冊目は第163回直木賞受賞作、馳星周作「少年と犬」さすが何年もエンタメ文学を世に出してきた作家だけに、簡潔に書かれた文章なのだが情景が浮かんで、まるで映画を見ている感覚にさせてくれる。6編に登場する人物は誰もが不幸を背負っているのだが、どんな言葉よりも優しい肌触りと温もりで寄り添ってくれるワンちゃん。犬好きな人にとっては涙がちょちょぎれるんではなかろうか...6編の中でおいらは『泥棒と犬』が最も印象に残った。発展途上国出身の犯罪者が示す愛情が切なく胸に迫る思いだ。人間不信に陥った者にとっては、犬は唯一の裏切らない友達だったに違いない。

もう一冊は2019年第17回 開高健ノンフィクション賞受賞作、濱野ちひろ作『聖なるズー』犬や馬をパートナーとする動物性愛者「ズー」の話である。この本では著者がドイツの動物性愛の人々の家で何日も一緒に暮らし、自ら胸襟を開き相手と深く観察し会話をしている。今、社会でも問われてるLGBTしかり愛の形は様々であり、真の愛とはなんぞや?生き物の在り方に一石を投じる本であるに違いない。

今日6月23日は沖縄戦で旧日本軍の組織的な戦闘が終わったとされる日から76年にあたる「慰霊の日」である。この日のことを知らない人が全国に75%居るという。確かに戦争そのものが風化しつつあることは間違いない。沖縄戦で人口の4人に1人が戦死した事実、そして今なおアメリカ軍基地が存在し沖縄の人たちに負担を強いていることを忘れてはならない。沖縄の透き通るような空と海、そして朴訥で飾らない人たち、沖縄が他県と同等の幸せな暮らしができることを強く願う。

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燃える夕景

2021/06/21
【第1496回】

先週の週末、久しぶりに新宿花園神社でテント芝居を観てきました。演目は新宿梁山泊「ベンガルの虎」唐十郎の作品の中でも大好きな作品の一つです。なんとこの芝居に今年御年72歳になり、第46回菊田一夫演劇大賞を受賞したばかりの風間杜夫ちゃんが出演しているんでございます。思えば1973年の状況劇場の強烈な初演が甦ってきます...当時のアングラ演劇を牽引していた唐十郎、寺山修司、鈴木忠志、佐藤信などのなかでもおいらは何といっても特権的肉体論を旗印に、日本のみならず海外にまで紅テントを繰り広げていった状況劇場が大好きでした...この芝居の内容はビルマ(現在のミャンマー)、ベンガル(今ではインドとバングラデシュに分断された地域)、バッタンバン(カンボジアの州)、そして日本の下町を縦横無尽に駆け巡る壮大なロマンに満ち溢れているドラマです。芝居の冒頭に風間杜夫扮する隊長、兵士が口ずさむ埴生の宿からビルマの竪琴の主人公水島を想起させる着眼点が素晴らしい。初演には観られなかった新しい試みを仕掛ける演出家・金守珍の唐作品の愛おしいほどの愛情が随所に感じられる。名作は何年経っても名作であり、その名作に新しい息吹を吹き込み新たな作品に仕立て上げる新宿梁山泊の意欲と志に拍手を送りたい。

杜夫ちゃん、貴男のいくつになってもチャレンジしていく役者魂にも勿論拍手を送りたい。ラストにテントが開けられ、ステージ奥から本物のショベルカーが登場しそのバケットにずぶ濡れになりながら乗り込むヒロイン...これがテント芝居の醍醐味、テントなかで繰り広げられた虚構の劇が一瞬にして現実の世界に晒される。唐十郎がテントに拘り続けたことを知らされるときめきの瞬間でもある...だから芝居はやめられませんことよ。

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テントが似合う新宿花園神社

2021/06/18
【第1495回】

昨日、渋谷東急文化村オーチャードホールに島田歌穂さんのコンサートに行ってきました。会場に行く前に、まず渋谷の人の多さにビックリ、しかも若い人がマスクもしないで路上でワイワイガヤガヤしておりました。コンサートの帰り21時過ぎの渋谷の街は一段とヒートアップ、アルコールを出している店には若い人達の大声が外にまで響き渡っておりましたし、なかには早々と満席の張り紙が入り口に...これじゃ間違いなく又もやコロナの大きな波が来る予感がしました。ましてやオリンピックの開催、ああ恐ろしや首都東京!一体全体誰が責任取るんじゃ!責任の所在を明らかにしないまま突き進んでいくこの有様は、まさしく日本が戦争に突入していった過去の苦い経緯と相通じるものがあります。当時との違いは、今は言論の自由があるので約7割の人がオリンピック反対・再延期を表明しているにもかかわらず突き進もうとしている輩にはただただ驚くばかりです。こんな状態のなか出場する選手の気持ちを考えると何だかいたたまれない気持ちにもなってしまいます。国民には散々自粛を強いていながら何故オリンピックだけ特別扱いにするのか?その仕組みと開催しようとする上級国民の魂胆がわかるだけにみんな呆れ怒っているんでございます。

さて、島田歌穂さんのコンサート、誠実な歌穂さんの人柄がよく出ていたライブでした。超満員の聴衆を前に数々のミュージカルの名曲を披露する歌穂さんは、まさしく歌姫でした。ゲスト出演の山崎育三郎さんとのデュエットは絶品でした。さすが、長年日本のミュージカル界で活躍されたプロのステージでありました。

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まだまだ頑張ってます!

2021/06/16
【第1494回】

なんだかオリンピックが既成事実として開幕に向けて着々と進行している状況が恐ろしい気がします。感染者が爆発的に増えても誰一人として責任の所在を明らかにしていないのには呆れてしまう。これまでの経緯から言ってもとても信用できない人たちが、兎に角オリンピックをやりたいがために突き進んでいる。なのに、国会は明日から9月まで閉会、今月末には減給もなく予定通りボーナスまでもらって解散総選挙後の運動に奔走する始末。コロナで困ってる人たちを置いてきぼりするこの輩を徹底的に糾弾しないお人好しなニッポン人。上級国民は庶民を完全に見下しなめてかかっているんでございます。新宿の街でも、阿保らしいと昼間から酒を飲ませている店があります。緊急事態宣言もまん延防止も、ただの言葉遊びにしか感じられないくらいの体たらくな対策にしびれを切らして楽しそうにお酒を飲んでる人達...あちゃ!

「Sing a Song」は昨日から北陸地方に入りました。いよいよラストスパートです。「狸の里帰り」は北海道の2公演を終え今日は網走湖のすぐ側の大空町公演。この季節の北海道は梅雨もなく快適極まりない環境です。北の大地の方々もそうそう芝居を観る機会はないと思いますが、この芝居を観て頂いて少しでもコロナによる閉塞感を晴らして頂ければと思っています。20代前半リュックを背負って道内一周した日々が懐かしい...知床の浜辺でドラム缶の風呂に入り地元の漁師の番屋の泊めて貰ったこと、駒ヶ岳の麓で野宿しているときにオオカミに襲われそうになったこと、礼文島の民宿に住み込み毎日ウニ漁に出かけその場で食べた事などなど...おいら昔から風来坊でありました。

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カルガモさんも考えています

2021/06/14
【第1493回】

ここ10年で最も遅い梅雨入りした今日の東京、ここ数日に比べ涼しい感じがします...昨日、南青山にあるブルーノート東京で桑原あいさんのライブを聴いてきました。1991年生まれのピアニスト、今年出したCD「Opera」の彼女に感性に惹かれ生で聴きたくなった次第です。初めの3曲はソロ、そのあとはベース、ドラムが加わったトリオの演奏でした。次々と繰り出される変拍子リズムに対し、これを心地よく受け止めながら躍動する彼女のピアノは、緩急を織り交ぜ、時には抑制を効かせたプレイで、なおかつエレガントな魅力をひきだしてくれる素敵な演奏の連続でした。ジャズのジャンルを超え、音楽そのものの魅力を伝える若き音の伝道師ではなかろうか...エンニオ・モリコーネの名曲「ニュー・シネマ・パラダイス」のベース、ドラムに見事に絡んでくる彼女のピアノを弾く、いや叩く音色は、あの名画のシーンを想起させおいらの感情を狂おしく揺さぶってくれました。彼女があの曲、あの映画に思いを寄せたそのパッションの強度を強く感じました。演劇然り、やはりライブはなにものにも代え難い魅力をもっているんでございますね。

G7の会議、海辺近くの写真撮影後にひとり取り残され最後尾を寂しく歩く我が国のトップの姿を見るにつけ、なんだか可哀想になりました。人には身分相応と言う言葉があります。番頭さんで終わっていれば良かったのに...うつろな眼差しで安心安全を呪文のように言い続けている貴方、国民のだれにも信用されてないのも又、哀れです。東京トップのおばちゃんのふてぶさしさも怪しいもんでございますがね。

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Blue ♪ Note TOKYO

2021/06/11
【第1492回】

先日TVで渡辺麻恵さんのことが紹介されていました。麻恵さんは過去にトムの作品に3公演参加された方です。結婚する前は大塚麻恵という名前で活動してました。明るく前向きで好感が持てる女優さんでしたが、世界一周旅行を経験しバングラデシュに移住を決意。今は素敵な旦那さんとバングラデシュの貧困にあえぐ子供、女性たちが自立できる手助けをされています。先日アフガニスタンで亡くなった中村哲さんもそうですが、こんな人たちが存在してこその日本だと思います。ひとのために尽くすことが生きてることの証明、いやそのために命を授かったという感謝の気持ちがある人は尊敬します。3年前に帰国した時に麻恵さんからもらったバングラデシュの人たちが作ったキラキラペンはとっても素敵なペンでした。手作りのキラキラ輝いたデザインと書き心地の良い逸品です。TVで観る麻恵さんは一段と美しくキラキラペンのように輝いていました。この世に奇跡的に命を頂いたならばいつまでも輝いていないとバチがあたりますね!バングラデシュ、アフガニスタンに比べりゃなんでんかんでん出来る日本じゃありませんか、愚痴なんてこぼしている場合じゃありませんことよ。人生はアクションでございます、ごちゃごちゃ考えないでまずは行動に移すことです。動いて初めて見えてくるものが沢山あるはずです...おいらも75年間ハチャメチャ生々流転の人生でしたが、がむしゃらに動いたからこそ失うものより得るものの方がはるかに多かったと断言できます。

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何のお願いごとかな?

2021/06/09
【第1491回】

先日、地方の片隅で新宿ゴールデン街の小型版みたいな店が集まった飲み屋街のドキュメントをTV放映していた。店を経営しているママさんも訳ありの人生、集まるお客もそれに輪をかけたような波瀾万丈の生き方を経験してきた強者ども揃い。時には罵倒し、時にはいたわり合いながら今ある生を懸命に生きている。下手な芝居も顔負けの壮絶なドラマを見せつけられる思いだ。人間やっぱり苦労せないかんのかな?いや苦労しなくともすいすいと楽しく過ごしている輩もいるやんけ...なるほど人の人生人さまざまでございますが、なんだか訳あり人生を過ごした人達って、根が純粋で正直のあまり不器用にしか生きられないのかなと思います。調子のいい奴ほど出世もし、ほどほどの生活をしてるのだが、果たして本当に満足しているのかどうかは他人には判断できないのは当たり前でございます。

今読んでいる桜木紫乃「俺と師匠とブルーボーイとストリッパー」も社会の底辺で愛おしく生きている人たちの話です。人の道から外れた人生に何故か惹かれるのは、普通に過ごしている人たちに比べて、はぐれ者のストレートで愚直ではあるのだが、情がてんこ盛りされているからではなかろうか。時代はクールが主流の時代だからこそ情に懐かしさを覚える。しかし情は大切なもんでございます。昭和に生きたニンゲンの戯言ではございませんことよ。

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ガクアジサイ

2021/06/07
【第1490回】

6月もあっという間に2週目を迎えることになりました...この時期、井の頭線にはたくさんの紫陽花が咲き誇っています。車窓から眺める紫陽花は、しばしコロナのことを忘れさせてくれます。ふと、近未来、ウイルス、戦争などにより花々すら見られない世界が訪れたら?なんて考えちゃいます。先日まで続いていたイスラエルとパレスチナの小競り合いで廃墟と化したガザ地区には緑の痕跡すらありませんでした。ガザ地区に住む画家が破壊されたアトリエで画材がなくなりカレー粉などを使って絵を描いていました。権力者、武器産業が一体となって無意味な争いによって無毛な光景を生み出しているのに、いまだストップをかけられないニンゲンの愚かさを日々知らされる世界ってなんなんでしょうかね...

「狸の里帰り」東京公演を終え地方公演がスタートしました。昨日、千葉県市川市行徳文化ホールI&Iで無事公演を終えることが出来ました。12日から北海道をはじめ全国各地で公演します。「Sing a Song」は昨日まで愛知県を終え明日から三重、岐阜を巡演します。どちらも感染予防対策をしっかりと心掛けての公演です。

それにしても東京五輪開催を巡る政府対策分科会の尾身会長の発言について、田村厚生労働相が「自主的な研究の成果の発表」などと発言。この方、眼を充血させながら他の閣僚に比べてよくやってるんじゃないかしらと思っていたのだが、やはり権力のチカラには頭を下げざるをえなかったんですね。政治家になりゃ誰だって総理の座に着きたいのは当たり前。何が国民のため?所詮、政治家なんぞは権力亡者の烏合の衆でございます。

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井の頭のアジサイは地味に都内No1

2021/06/04
【第1489回】

昨日、スカイツリー近くにあるすみだパークシアター倉で劇団桟敷童子「獣唄」を観劇しました。昨年上演された作品なんですが、出演していた村井國夫さんが心筋梗塞で倒れ途中降板となりました。この年の紀伊國屋演劇賞団体賞を劇団桟敷童子、個人賞を村井さんが受賞した作品だけに再度上演するに相応しい作品だったと思います。おいらは初演も観てるんですが村井さんが完全復活し、より密度の濃い舞台に仕上がっていました。何度も書いてきましたが、この劇団の演劇に対する志の高さ、純粋さに頭が下がる思いです。ハイテクとは真逆の人間の体温に一番近いところを信じての芝居作りは演劇の原点でもあると思います。

少年の時に見聞きし心震えた現象を見事な人間ドラマにしていく東憲司さんの変わらぬスタイルは多くの観客の心を鷲掴みして当然ではなかろうか...

さて、オリンピック本当にやるんでしょうかね?宙に浮いたオリンピックをどう調理したらよいのか、コロナも含めて、更には政治がらみときたもんで右往左往しているんでございますね。上級国民のやることは今やほとんどの国民が疑心暗鬼になったおりますんで、どちらに転ぼうが諦めの境地でございます。ただ言えることは、開催されれば他国からのコロナが拡散されることは間違いないし、収束は不可能ではないかということは覚悟せねばならないのでは...この国のトップの眼がますますうつろになり哀れに思う今日この頃でございます。

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下町の太陽

2021/06/02
【第1488回】

1964年にオープンした紀伊國屋ホールの改修竣工記念式典に昨日出席しました。本屋さんの中に劇場があるのは世界でも珍しいそうです。パリから来た芝居関係者もびっくり、しかも演劇賞まで設けて新宿文化を牽引していった功績は大だと思います。小劇場の人達には憧れの劇場で「新劇の甲子園」とまで言われました。双六の上りみたいなもんですね。おいらも役者で一度だけ立ったことはありますが、劇場に漂う雰囲気が文化そのものという感じがしました。トム・プロジェクトを立ち上げたあとも公演で何度か使わせていただいてはいるんですが、観客の方々の劇場に向かう気持ちの高まりが尋常でない感じがします。確かに多くの書物をすり抜けて行くだけで、すでに言葉のシャワーを浴び、いやが上にも想像力を喚起せてくれる気がしてしまうんですから稀有なる劇場かもしれません。

式典はいろんな方々の祝辞の言葉がありましたが、最後にゲストで演奏されたジャズピアニスト小曽根真さんのステージが最高でした。1曲目は「リボーン」、彼の自作であるこの美しい旋律は、新しく出発する紀伊國屋ホールへのエールとなって優しく語り掛けているかのようでした。2曲目は「誰かのために」この曲は昨年アフガニスタンで亡くなった医師中村哲さんに捧げる新作でした。この2曲を聴きながら、小曽根さんがアーテイスト以前に一人の人間としてとっても魅力のある方だと思いました。改めて、人は人を幸せにするために生まれてきたんでございますね。

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水無月

2021/05/31
【第1487回】

「狸の里帰り」昨日東京公演無事千秋楽を迎えることが出来ました...この大変な時期、劇場に足を運んでいただいた皆様に本当に感謝です。カーテンコールの温かい拍手が出演者にとっては何よりの励みです。スタッフの皆さんも良く頑張ってくれました。勿論、こんな非常時になにもわざわざ芝居なんかをやらなくてもとか、観たいけど恐いから行けないとか、そんなひとたちの気持ちも当然のことながら良く分かります。でも、だからこそ芝居を上演する意義があると思います。コロナごときに負けてたまるか!いや、芝居なんぞは有事の時こそきらりと光る存在だと思います。劇場を後にするお客様の顔がほんわかと見えるのも、コロナ金縛り状態から暫し解放されたからではなかろうか...しかも今回の芝居の内容がコロナがらみだったから余計にそう思えたのかもしれません。

そして、こんな時期は詩集なんかを読むと言葉のチカラで一筋の光明が見出せるかも...おいらも最近、1981年生まれの三角みづ紀「どこにでもあるケーキ」1931年生まれの谷川俊太郎「ベージュ」を読了。50歳の年齢差があるにもかかわらず両氏とも言葉がみずみずしい。ベテラン詩人谷川氏がひらがなで綴る詩の理由として「文字ではなく言葉に内在する声、口調のようなものが自然にひらがな表記となって生まれてくると言えばいいのか、意識してひらがなを選んでいるのではなく、文字にして書く以前にひらがなの持つ調べが私を捉えてしまう」という発言が興味深い。何事もシンプルに思考し行動すれば意外と身軽になれるのではないか...こんな時こそ余計なものは脱ぎ捨てて身軽に生きましょうね。

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ことばのちから

2021/05/28
【第1486回】

昨日の雨も上がり今日は穏やかな一日になりそうです。朝起きてベランダから見る樹々の変化に時の経過を感じます。新緑がしっかりと落ち着いた葉を形成し、野鳥のカップルが恋のさえずりを交わしながら飛び回る様がなんとも微笑ましい。昨日の雨に打たれ垂れ下がっていた枝も今日は何か言いたげな感じがする。生きとし生けるすべてが愚直ながらも己の主張をしていることに耳を傾けると、あらためて人間の浅はかなさに気づかされてしまう。

そんな折、またしても緊急事態宣言延長の知らせ...飲食店をはじめ窮地に陥ってる人たちの思いはいかがなものか...発信する人達は自らの給料を下げもせず、いつものように自粛の念仏を唱えるだけ、オリンピックの責任者は開催した方が経済効果があるなんてことを平然とのたまうありさま。暴動が起きてもおかしくない状況なのに、なんともおとなしい国民性。この国はいつまでこのあいまい性を貫き通していくんでしょうかね...

演劇の世界も相変わらず過酷な状況なんですが、芝居を支えてくれる人たちのおかげで何とかやっております。「Sing a Song」今日の和歌山演劇鑑賞会を終え一端東京に戻ります。

「狸の里帰り」は今日が8ステージ目を迎えます。落ち込んでばかりでは何事も前には進みません。こんな時に有効な言葉があります...ケセラセラ♪「物事は勝手にうまい具合に進むもの」「だからあれこれと気を揉んでも仕方がない」生きてるだけで丸儲けでございます。

今日も張り切って活きましょう!

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しっかり活きてます 

2021/05/26
【第1485回】

オリンピックのための緊急事態宣言の延長が為されようとしています。こんな恐ろしいことが7月23日の開幕に合わせて錬られてるなんて...この一年半有効な手立ても打たず、ここにきて慌ててワクチンを打ち出してますが時既に遅し、コロナ禍で苦しんでいる人達に大した手当もせず、オリンピック関係者には手厚い対策を講じるなんて本末転倒もいいところでございます。金にまみれた近代オリンピックにごますり、利権にあやかろうとする政治家、企業、マスコミにうんざりです。命をすり減らして医療現場を支えている人達にどの面さげてオリンピックに協力してくださいなんて言えるんでしょうかね。外国から大勢の人達が来れば感染が拡がるのは今までの杜撰な検疫からも分かる筈なんだが、もうとにかくオリンピック開催に向けての狂気の沙汰が繰り広げられています。代々木公園には東京オリンピック・パラリンピックのパブリックビューイング会場のために、公園の木の枝を切る作業が始まりました。人の流れ、三密を日々懇願している都の言い分とは異なるのではないか...それにしても、IOCのトップが緊急事態宣言下でもオリンピックを開催するなんて発言、とんでもない!なんてこと国のトップが抗議できないなんて本当に政治は腐りきっています。仮に開催した後の日本の状況を考えただけでもぞっとします。

「狸の里帰り」6ステージ目、「Sing a Song」は今日、奈良演劇鑑賞会が無事終了しました。

コロナ禍のなか、演劇はしっかりと発信し続けています。

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ふくろうの街で「狸の里帰り」やってます

2021/05/24
【第1484回】

昨日で「狸の里帰り」3ステージ目を無事終えることができました。昨日のステージ初日が出たという出来栄えでした。まさしく芝居は生き物ですね、初日はやはり硬さが出ますし、2目目は安心感で少し緩みが出てましたし、いつかどこかでぴたりと当たる出来になるもんですが早くも昨日がその日でありました。演者と観客の呼吸もぴたりとはまり冒頭から芝居の軽快なリズムを創りだしラストまでお客のハートを鷲掴みという良質な芝居に仕上がった次第です。役者という生き物はお客の乗りには一気呵成に乗りまくり、普段表現できないものまでものにしてしまうんですから恐ろしいもんでございます。これからどこまで成長していくか本当に楽しみな舞台になってきました。

「Sing a Song」は姫路市民劇場の公演を昨日無事終えることができました。これで兵庫県の4ステージ何事もなく好評の中終えることができました。公演前は兵庫のコロナの感染も拡大し公演が危ぶまれていたのですが演劇鑑賞会の皆さんのおかげで上演できたのは嬉しい限りです。でも、まだまだ油断禁物、いま公演中の2作品これからも上演が続きます。

一日として安心して眠れない日が続くのはおいらも含めて皆同じですが、お客様が喜んで劇場を後にする姿を見るたびに「必要なものがなくなるはずはない...」お天道様はちゃんと見守ってくれるから大丈夫!と言い聞かせている日々でございます。

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「狸の里帰り」只今上演中!

2021/05/21
【第1483回】

「Sing a Song」神戸演劇鑑賞会の3ステージ無事終わりました。神戸もコロナ禍のなか大変な状況だったのですがキャスト、スタッフ、そして鑑賞会の皆さんに感謝です。1年お待たせしての公演だっただけに感慨もひとしおではなかったかと思います。ステイホームばかりじゃそれこそ心身のバランスおかしくなっちゃいます。家飲みの酒の量も増え家庭内の不穏な噂も時々耳にします。そうならないためにも、たまには劇場に足を運び疲弊した心身に清々しい風を送り込むのもよろしいかと思います。勿論、映画館、美術館、コンサートも同様です。未だに映画館、美術館が閉館されているのもどうですかね?国民には延々と自粛を要請しながらもオリンピック開催に向けては必死豆炭なのはどう見てもおかしいんじゃありません。お金塗れの大会にうんざりしながら国民の命をないがしろにしている人たちに血税払いたくない!庶民の正直な気持ちです。

今日は「狸の里帰り」東京芸術劇場シアターウエストでの公演初日です。個性溢れる俳優陣の演技が見物です。3月に公演した「たぬきと狸とタヌキ」の続編ですが、この時代に即した内容で、しばし生の舞台に身を任せコロナを忘れる良い機会の舞台になると思います。

大相撲の世界では大関朝乃山が昨日から休場。これもコロナによる出来事、平常であればたまには、ぱっと派手に遊びたいのでしょうがここは自分自身に張り手をかまして我慢して欲しかったですね。出身地富山の人たちもがっかりしてることでしょう...こんな状況だからこそ油断禁物、心引き締めて過ごしましょう皆の衆。

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あら!ふえちゃったカルガモちゃん

2021/05/19
【第1482回】

昨日、西荻窪のスタジオで今年9月に上演する新作・風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」のチラシポスターの写真撮りをやってきました。72歳になる杜夫ちゃんコロナもどこ吹く風、4月20日に第46回菊田一夫演劇大賞を受賞しました。いやいや、元気溌剌、歴史ある賞の大賞ですからたいしたたまげたもんでございます。常に役者として第一線を走り続け、ことに演劇人としての業績が評価されたんだと思います。昨日の撮影時もカメラに向かう表情がおちゃめで、色気があり、そして風格も自然に醸し出す余裕なんて様を見せられると、ほんまにこの人役者になるためにこの世に生まれてきたんやなと改めて思った次第でございます。1997年に始まった風間杜夫ひとり芝居、今年の新作で9本目となります。こりゃ世界演劇史上ギネスブックに登録されてもおかしくない快挙です。しかもアジア、ヨーロッパ、アメリカと世界を巡演し異国の人たちにも十分喜んでいただきました。

今回の新作は題名の通りカラオケマンこと牛山明が11年ぶりに帰ってくるんです。この11年間何があったのやら、またまたこのコロナ禍のなかで牛山明はどこをさ迷っているやら...興味津々、楽しみな舞台になりそうです。

西荻窪の写真スタジオは東京女子大通りに面しています。通りを歩く学生さんはおしなべて地味な感じがいたします。お嬢様学校で派手な格好は禁じられているのかな...会社の近くにある文化服装学院の人たちの奇抜な服装を見慣れているためからか余計にそう感じました。でも、どんな格好しようが肝心なことは中身ですからね...

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華やかな女子大通り

2021/05/17
【第1481回】

今年は全国的に梅雨入りが早いみたいですね。いつものような豪雨災害がないことを祈りたいですね。コロナが収束していない現状、ダブルパンチになりかねない危機的状況だけは避けたいものです。21日からの東京公演「狸の里帰り」は今日が最終稽古、「Sing a Song」は明日から近畿地方の演劇鑑賞会の公演が始まります。二つの公演を緊急事態宣言下のなかで実施するトム・プロジェクトもまさに正念場です。幸いにして、キャスト、スタッフも細心の注意を払いながらなんとか日々稽古に邁進していますが、このコロナはちょいと油断すると瞬く間に襲ってくる恐怖があるので戦々恐々たる思いです。

週末は相変わらずのスティホームで人との接触を断っていました。変異株の感染力は今までの予防では太刀打ちできないことは明らかです。家でやることは、いつもの通り映画、読書、音楽そして近場の公園散歩です。先週のトップリーグラグビー準決勝2試合は見ごたえがありました、パナソニックの福岡賢樹選手のプレーが素晴らしい。28歳にして医師の道を選択しての最後のシーズンなのだが途中出血しながらも守備、攻撃ともども卓越したものを感じました、まさに文武両道、神は二物を与えてしまいました。笑顔も素敵、ラグビーの良さを日本に知らしめ新たな世界に踏み出す彼の生き方に拍手を送りたい。野球はライオンズなんとかやっとります。今年は投手が良くなったと思ったら山賊打線が今一つといった日々が続いています。主力が不在の中、若手がいいプレーしていたんですがホームラン狙いの山川どすこいが帰ってきた途端に打線のつながりが無くなった気がします。ブンブン振り回すだけが野球じゃありませんことよ、状況判断してチームプレしてくださいな。でも、なかなかうまくいかないところも野球の面白いところでございます。

家を出て、風にそよぐ樹々を眺めているだけで気持ちが豊潤になってきます。木々が大地から水を汲み上げると同様に、緑の美しさから疲弊した心身に潤いをもたらしてくれます。コロナなんかに負けていられるか!なんて気分にさせてくれます...感謝。

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自然のアートに感謝

2021/05/14
【第1480回】

今日は、夏日でございます。東京公演は無念にも公演中止になった「Sing a Song」地方の演劇鑑賞会の公演がスタートしました。昨日、横浜演劇鑑賞会の公演を観に行ってきました。一年間待っていた人たちの熱い思いが会場を埋め尽くしていました。あの忌まわしい戦争と今のコロナ禍が重なる思いで舞台を凝視されていたのではないかと思います。あの苦しい戦禍のなかで、しばし人の気持ちを潤沢にしてくれたのも歌であり、今コロナで閉塞している社会を解放してくれる一つに生の舞台であることは間違いないと思います。観劇後に会場を後にする人達の言葉が印象的でした。「一年間待った甲斐があったね...やっぱり生の舞台は最高だね!」こんな言葉を耳にすると、苦境を乗り越えなんとか実現に向けてきた労苦が吹っ飛んでしまいます。勿論、この状況のなかで頑張ってくれたキャスト、スタッフも同じ思いだと思います。そして、何とか公演を実現したいと粉骨砕身日々奮闘してこられた鑑賞会の方々には感謝感謝です。芝居を日常の生活の一部としてくれる人達があってこその演劇です。アートを愛する人がいる限り国が滅びること無いと思います。大変な日々が続いてますが、こんなホットになれる日が持てるだけでも幸せです。改めて生きてるって捨てたもんじゃございませんことよ...

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今日も元気に咲いてます
アンネのバラ

2021/05/12
【第1479回】

今日から緊急事態宣言の延長です...新宿のデパートも部分的に営業開始しています。昨日は都庁前で映画関係者の人達がプラカードを持って無言の抗議をしていました。劇場は50%で営業出来るのに何故映画館は除外されたのか?という素朴な疑問です。話もしないスクリーンを眺めているだけなのにおかしな話です。方や、五輪担当大臣の「コロナ禍で分断された人々の間に絆を取り戻す大きな意義がある。この東京大会は世界中の人々が新たな光を見出すきっかけになる」なんて言葉。なんとも白々しい、復興オリンピックはどこにいったのやら、とにもかくにも議員の先生方コロナの病にかかって頭がおかしくなったんじゃないかしらと思ってしまいます。街の声もほとんどの人が「いつまで緊急事態宣言連発してるのかしら...今更有効性はないんじゃない?」と言っております。もうほとんどなめられた状態であることをわかっているのに無能無策の有様。

新宿の飲食店閉店の張り紙も目立つようになってきました。失業者も増え、コロナ後の社会も一筋縄ではいかないのでは...今回のコロナ禍のなかであらたな生き方を模索している人たちが沢山いるのも事実です。ピンチはチャンスの裏返し、こんな機会もそうそう訪れるわけでもなし、しっかりとものにしたいものです。それにしてもいつまで続くのコロナちゃん...そろそろ勘弁してちょうだいな!

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コロナに気を付けてネ

2021/05/10
【第1478回】

初夏のような日が続いています。「Sing a Song」東京公演に続き5月21日からの「狸の里帰り」も公演中止かと思いきや、何とかやれることになりました。何の対策もしないで緊急事態宣言の乱発で振り回される日々、暴動が起きても不思議ではないのにお行儀が良いこの国の人達。国民はこの一年以上マスク、手洗い、外出自粛をして参りました。収入も減り厳しい現実に耐えてきました。どうすりゃいいのさこの国は?とりあえずは次の選挙で役に立たない議員に鉄槌を下すしか手立てはないのかな...かといって、野党の皆さんも今一つ歯切れがよくないしと困ったもんでございます。

片や、いまだにオリンピック開催の有無に関しての発言がはっきりと聞こえてこないのもなんとも情けない気がします。誰もが悪者になりたくないんでしょうね。この状況を見て誰もがオリンピック開催は難しいと思っているのに何故口チャックしてるんでしょうかね?いろんなところに差し障りがあるので言えないんでしょう...政治家は勿論、メディアに関する人たちはオリンピックに協賛している企業にも忖度してる気がしてなりません。周りの様子を伺って態度を決めていくのも処世術の基本だとは存じてますが、一度きりの人生じゃないか!筋が通ったことを成し遂げてこそ、この世に生まれてきた意義があるんじゃございません。

この閉塞した状況の中、自然界は新緑と美しい花と虫たちの春の宴でキラキラしています。

こんな景色見させていただきありがとうでござんす...それに比してニンゲンいつまでたってもまだまだですな。

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甘いかな?

2021/05/06
【第1477回】

GWも終わり今日から仕事再開です。本来であれば「Sing a Song」の東京公演中なんですが生憎の緊急事態宣言、無観客での劇場公演OKなんて理不尽なお上の御達しで公演中止と相成りました。今日の情報では更なる緊急事態宣言の延長がささやかれており、全く踏んだり蹴ったりお手上げ状態でございます。多くの人のご意見、この1年以上政治家、行政に携わる人達何やってたんだろうか?呆れて怒る気にもなれませんわという気持ちではないかと思います。

おいらはGWの間は変異株の異常な感染力ということもありホームステイに徹していました。映画、読書、音楽、散歩という4本立てで過ごしました。それぞれの分野のベスト1は次の通りです。映画は中国映画「活きる」チャン・イーモウ監督が描く1940年代から1970年代の中国人影絵師の生き様を描く作品。今消えゆく懐かしい中国人民の姿、家並み、食べ物などなどがきめ細やかに映し出される。共産主義批判が間接的に表現されており、本国では放映禁止。一党独裁のなかで映像を武器にして闘う映画人に拍手を送りたい。音楽部門は新進ジャズピアニストの桑原あいの新作ソロ・ピアノ・アルバム「Opera」1曲目のニュー・シネマ・パラダイスから透明感溢れるピアノの音が心地よい。5曲目のビル・エヴァンスの名曲ワルツ・フォー・デビイを挟んで終曲デイドリーム・ビリーヴァーまで鍵盤の上を心地よくステップさせてくれる気分にさせてくれる満足のCDです。書物は亡き車谷長吉さんの全集三巻をじっくり読ませていただきました。著者の独特の人間観察が鋭くもあり愛おしい。散歩は杉並大宮八幡宮の空を気持ちよく泳ぐ鯉のぼりの姿でした...ふと目の前に友人の書家である井上龍一郎氏のカレンダーに書かれた中村哲氏の言葉「飢えや渇きもなく十分に食えて家族が共に居れる、それだけで幸せだと思えないのか」その通りでございます。

昨夜、長崎の友人原さんから博多六本松「ヒロ」のママである田和玲子さんが亡くなったとの連絡がありました。おいらにとっての青春であり、風来坊のおいらを温かく迎えてくれたお店とそこに集まる心友との日々は生涯忘れることはないだろう...自由奔放でありながら繊細な優しさを備えた玲子さん、本当にお疲れさまでした。ゆっくり休んでくださいね...

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楽しくおもしろそうに泳いでる

2021/04/30
【第1476回】

4月23日(金)『スマイル!岡江フェスティバル~音楽とともに~』を観ました。

岡江久美子さんが亡くなって一年。家族である大和田獏さんと美帆さんの企画で12時からライブ中継でした。岡江さんと関わった人たちの共通する言葉は「太陽」。気さくで朗らかで天衣無縫の人だったんですね。岡江さんが残した太陽の温かさは、多くの人達に今なお生き続けているに違いありません。誰しもいずれ遅かれ早かれ死を迎えます...だとすれば、残された人たちに一つでもいいから素敵なプレゼントを残して逝きたいものですね。こうやって何とか人類が永らえているのも、そのプレゼントが受け継がれているからだと思っています。何もことさら無理してプレゼントを探す必要はないと思います。ちょいと周りを見渡して身近な生き物に優しくなれるだけでも、その小さな波が大きなうねりになることだってあるんじゃないかと思います。

新緑鮮やかなGWですが2年続けてコロナに泣かされています。こちらも2年続けての芝居中止で涙がちょちょぎれますわ。こんな時期にオリンピックの観客どうしようなんてナンセンスなことを話しあってる人達の神経どうなってるんでしょうかね。ここはオリンピック中止!と、いの一番に言った人が次期総理大臣になれるかもしれませんぞ...まあ政治家なんぞはコロナさえも政争の具にするぐらいの図太さがないと務まりませんことよ。

明日から5日まで散歩と家飲み読書、映画館もやってないのでアマゾンビデオで埋もれた映画を見つけて鑑賞などなど...コロナ禍のなかでの過ごし方もなかなかオツなもんでございます。

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今年もアンネのバラ咲きました

2021/04/28
【第1475回】

「Sing a Song」東京公演は中止になりましたが、昨日、愛知県豊橋演劇鑑賞会の主催で穂の国とよはし芸術劇場で初日を迎えることが出来ました。この大変な時期に呼んで頂いて感謝しています。スタッフから、完璧なコロナ対策の中で実施されてる映像が送られてきました。正直なところ、劇場から感染者が出たなんてことは今のところ聞いていません。客席で大きな会話をすることもなく静かに芝居を観てるんですから大丈夫な筈なんですが...東京の四カ所の寄席の席亭が大衆娯楽の寄席は「社会生活の維持に必要なもの」との判断に基づき感染対象をしながら営業を続けると言う姿勢に多くの共感の声が寄せられているのもよく分かる。それに対して、大臣が閉めてくれと言ったそうだが、あんたら一年間ほとんど学び無しでここまできた経緯を考えると説得力がないのも当然でございます。

今日も新宿西口の居酒屋では白昼堂々と昼飲み出来ます!と看板掲げて営業してる店を見かけました。あてにならないお上の意見なんて聞いちゃ居られない!ごもっともでございますが、でもここは何とかしないといつまで経っても終わりませんぜ...おいらにも、とうとうワクチン接種の案内が来ました。おいらはごめんなさいしちゃいますね。欲しい方におゆづりいたします、コロナも怖いけどワクチンも恐くありません?もともと化学物質で構成されてる薬は余程のことがない限り飲まない習慣なので、この新ワクチンもまだ手を付けたくはありませんね...何とか、自然な形でコロナとお別れできればと考える次第でございます。

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いつか来た道

2021/04/26
【第1474回】

「Sing a Song」東京公演中止になりました...観劇を楽しみにしていただいた皆様には本当に申し訳ありません。なにせ国、東京都のやることが思いつきに等しい措置なんでこちらも困ってしまいます。要請の中身にただただ呆然としてしまいます、劇場に対し無観客なら許可しますなんて文言どこから出てくるんでしょうかね?演劇は観客が存在してこその生業です。子供でも分かりそうなことを、国そして東京都のトップが平然と当たり前のように発するんですから何をか言わんや...リスクを背負いながら稽古をしてきたキャスト、スタッフ、お客様に来ていただくためにあらゆる手を尽くしてきた制作者、劇場の労力が一瞬にして無になる現実を痛いとも痒いとも思わぬ政治家、行政トップに怒りを感じます。そして今日東京五輪・パラリンピック組織委員会が日本看護協会に対し、大会期間中の医療人員として看護師500人の確保を依頼したことが分かりました。やる順序が違うんじゃありません?そんなことする時間があるんだったら今困ってる人たちに手を差し伸べるのが普通じゃございません...何度も言います!あんたらの無為無策の政策で困っている人たちに頭を下げ、あんたらの血税からいただいている給与を返納せんかい!そうでもしないとほとんどの国民は納得しないと思いますがね。

連日、良い天気につられて人出も相変わらず多いような気がします。三度目の緊急事態宣言あまり効き目がないのかな...連日、檄を飛ばす都知事のおばちゃんと、うつろな目で覇気のない言葉を吐くガースーちゃん、なんだかリピーターおばちゃん、おじちゃん人形に見えますがな。

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錦糸町稽古場近くから

2021/04/23
【第1473回】

又もや緊急事態宣言...もうあきれて怒る気もなれませんわ。この一年間何してたんでしょうか?政治家、行政の長、まったくもって国民のことなんぞ考えていないことを国民の方々が認識すべきです。他人任せというか、思考停止しているととんでもない嘗ての悪しき日本になっちまうことに危機感を持たないといけませんがな。今回もオリンピックIOCバッハ会長の来日に合わせての期限としか言えない見え見えの策。ほんまにオリンピックをなお実施しようとする政府、東京都知事の頭狂っているとしか思えませんが...中止を進言できない事情は、すべてお金が動いていて躊躇しているのがよくわかります。コロナ対策も十分にできない連中がオリンピックなんぞできるわけがない。こんな分かり切ったことなのにストップできないこの国のシステムにうんざりしてるんですが、もういい加減お人好しのこの国の納税者は自ら己の首を絞めてることにもういい加減気づいて欲しいですな。

今日から「狸の里帰り」の稽古始めです。コロナの戦場の中、コロナの網を潜り抜けても公演日が決まっている以上走り続けるしかありません。一年前には、今年は安心して公演できると思っていたのにまさかまさかの事態でございます。とにかく万全の態勢で稽古をスタートさせたいと思っています。

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剪定されても新緑はニョキニョキと

2021/04/21
【第1472回】

昨日、日本経済新聞に神戸芝居カーニバルを30年継続している中島淳さんの記事が掲載されていました。おいらも親しくさせてもらってる大先輩です。マルセ太郎「スクリーンのない映画館・泥の河」、狂言師茂山千之丞「一人狂言」、小沢昭一「唐来参和」今や俳優として活躍してる田中眠さんの場踊りなどなど幾多のきらりと光る表現者とともに神戸を拠点に数十人から300人ほどのキャパで公演されてきました。中島さんのポリシーである観客と演者が濃密なキャッチボールの場にしたいという拘りがあったのだと思います。大きな赤字さえ出さねば持続したいという姿勢も只々頭が下がります。

大阪で初めてご一緒して飲んだ場所も、いかにも中島さんらしい飲み屋でありました。梅田の庶民的の一杯飲み屋ですが出てくる食べ物が安くてうまい。気取りもなく凛とした武士の雰囲気においらもすっかり魅せられてしまいました。人間見栄っ張りで銭儲けに走る輩が多い中、己のスタイルを貫き通しながらも楽しんでいるさまはまさしく痛快そのものです。

今年81歳になっても5月8日から11月まで、80代半ばで一人語りに挑戦している木津川計さんの口演を神戸市立灘区民ホールでやるってんですから、そのエネルギーには恐れ入谷の鬼子母神でございます。コロナが収まったら又ゆっくり中島さんと杯をかわしたいな...あのサミュエル・ウルマンの言葉を思い出します「歳を重ねただけで人は老いない。理想を失うときに初めて老いがくる。」あせらず遊び心満載で生きてる中島さんにぴったりの言葉です。

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誕生日のないマツバウンラン
(花言葉は輝き)

2021/04/19
【第1471回】

昨日、埼玉県志木市民会館パルシティホールで「Sing a Song」の公開舞台稽古を上演してきました。建前上稽古を公開するということになってはいるんですが、実質上本公演と同じです。役者さんもマスクを外しての芝居となりました。このご時世、稽古中はずっとマスクをしたままの稽古でした。少しでもリスクを避けるための仕方のない対応でしたが役者さん良く頑張ってくれました。ようやくこうして再演できたのに、まさかのコロナの再延、またしても苦難を強いるのかコロナ野郎と苦々しく思うのですが、なんとかコロナ網を潜り抜け公演を成就させねばなりません。この日も万全の態勢で無事公演を終えることが出来ました。お客様の温かい声援が何よりも強い励みであり後押しでした。アンコールの拍手もいつもよりヒートアップしてた感じがしました。終演後、楽屋に行き、少しでも会話を少なく時間も短くとプロデューサーのおいらも随分と気を遣いながらの対応してまいりました。いつもだと帰りに一杯やりながら当日の芝居の仕上がりなど含め歓談するのも芝居屋さんの楽しみの一つなんですが、もしや感染すれば今までの苦労も一瞬にしておじゃんになってしまうんですからここは自粛するしかありません。

27日から愛知県、東京公演、そして関西、中部北陸と6月一杯46ステージを予定してるのですが、このコロナのまん延でどうなることやら?安心して眠れませんがな...と言ってもおいらには芝居の神様が付いておりますけん大丈夫じゃないかしら...とポジティブに思っとります。

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キャベツの花

2021/04/16
【第1470回】

昨日、「Sing a Song」錦糸町稽古場での最終稽古を観てきました。マスク着用での稽古、俳優さんも大変だと思いますが芝居は完璧に仕上がっていました。戸田恵子さん演じる歌手三上あいこの台詞「早く戦争が終わって、みんなが好き勝手に歌を楽しめるようになればいいのにね。」この言葉がそのまま、今回の芝居をコロナ禍のなか駆けつけてくれたお客様に対する希望のメッセージになればと思いました。コロナもまさしく戦争です、この非常時に人はなにがしかの救いを求めていると思います。芝居がその一助になれればとキャスト、スタッフ一丸となって感染対策も含めて稽古してきました。日々増え続ける感染者、そして新たな変異株の問題、はっきり言ってアチャ~と悲鳴をあげたいところですが、ここで引き下がるわけにはまいりません。どんなに警戒しても、眼に見えないコロナちゃんだけに困ったもんでございます。

もうそろそろ堪忍してや!全世界の人たちが戦争は止めにします、環境を大切にします、もう金品に対する欲望もいいかげん止めにしますなんてことを頭下げてコロナちゃんに申し立てすれば許してくれるかもしれませんな...

政治家、行政の人たちの自粛要請の掛け声にも関わらず、人は相変わらず飲食し不要不急の外出をしています。片やオリンピックもやるのかやらないのか?いつになってもおかしなニッポン...どうすりゃいいんでございましょう?うん、つまるところは自己防衛しかありませんな。

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スカイツリーさん
見守ってちょうだいな!

2021/04/14
【第1469回】

今日の東京久しぶりに雨が降りました。若葉に降り注ぐ様がとても美しい!コロナのことも暫し忘れさせてくれます...つい最近も親類の訃報が届きました。こんな時期ですからお線香をあげにも行けず、唯、懐かしい日々を想い出しながら手を合わせました。もうかれこれ7年前に古都奈良から上京され、共に飲食しながら楽しく歓談していたのですが、おいらのサプライズで新宿ゴールデン街に誘い出すことにしました。世界に誇るディープな世界にビックリしながらもキラキラした表情は強く記憶に残っています。まるで子供に戻った如く無垢な魂も垣間見た瞬間でもありました。

生者必滅、会者定離...生まれてくるものは滅び、出会っても別れる定め。その通りではあるが、死しても、かかわった人、あらゆるものに生きた証は歴然として残ります。その記憶が記録として、残された人をサポートし、共に歩む力になることは間違いない事実です。おいらの世代、これからも沢山の別れがあると思います。勿論覚悟はしてますが、おいらに蓄積された想い出の財産はいつも生き続けおいらを励ましてくれてます。

福島第一原発汚染水、海洋放出...きれいな海、そこに住む魚、そして漁業に携わってる人達、なんとも納得しづらい決定だと思います。天災然り、コロナ然り、場当たり的な対応しかできないこの国の現状あまりにも悲しすぎて涙も出ませんばい。

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萌える新緑

2021/04/12
【第1468回】

今日から東京もまん延防止が始まりました。でも、街は緊張感もなくコロナ慣れした人たちが何事もなく行き交う光景がなんとも不気味な気がしました。

先週の土曜日、映画「ノマドランド」観てきました。画面から漲る圧倒的な人間の存在感に恐れ入りました。アメリカの社会から零れ落ち、自ら選択したノマド(遊牧民)の淡々とした生き方のなかに孤独と、過去と、自立と、自由とどのように折り合いをつけていくか...アメリカの荒涼とした大自然の中でくり広げられる時空間は、まさしくこれからの世界をどう舵取りしていくのか観客の想像力を問う作品だと思います。安っぽい連帯、ヒューマニズムなんかより、この孤独からこそしか、もう一度世界を立て直し構築するしかないのではないかと思える作品でした。

何といっても主演のフランシス・マクドーマンドが素晴らしい。2017年にアカデミー主演女優賞を受賞した「スリー・ビルボード」を観た時にも凄い女優さんだと思ったのだが、今回もノーメイクで居るだけの存在感で勝負できるなんて、さすが映画の国アメリカだ。日本でも生きてきたそのすべてを飾ることなく勝負できる俳優さんが出現して欲しいなと思うのだが、今のテレビ、映画産業の状況下では無理でしょうな...この映画も想い出も、モノも捨てていくことがテーマなのだが、役者の演技だって同じことだと思う。余計なものをそぎ落とし何もしないことが究極の演技だと思うのでございます。

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稽古場近くの横綱公園

2021/04/08
【第1467回】

あちゃ~東京もまん延防止要請決定。緊急事態宣言とどう違うのかな?国も行政も打つ手がなく新語を作って目先を変えるしかないのかな...なのに、満面の笑みで聖火リレーを実施し、沿道を埋め尽くす観客から声援が飛び出す始末。これはもはやマンガですな...あまり好みでないあの楽天の親分もさすがにオリンピックは中止すべきと言っておりますし、早く結論を出さないといけないんじゃないかしらと思うんですがね。

こんな状態でありながら春のお花は次から次へと花を咲かせています。なんだかきれいなお花さんから頑張れよ!とエールをいただいているみたいです。木々に芽吹く新緑の美しさを見る度に命のありがたみをつくづく感じます。ここ何年かで亡くなった6人の親友との楽しい日々が何故か想い出されます。かれらも、コロナの感染にはさぞかしびっくりしているでしょうね。でも、あっちの世界にも違ったウイルスが蔓延しているかも知れませんな。

いずれにしても、いつまでも美しいものを見続けて死んでいきたいもんでございます。

 

美は訓練である。金が万能という刷り込みの世で長年戦って疲れ果てた皆さんの前にいきなり美を持ち出しても、戸惑うばかりはわかっている。だから、少しづつ皆さんに訓練を施したい。皆さんが金と生活に苦しんでいる間、ぼくは貧に苦しみ、美によろこんできた。

美とは、殉ずるに値する、唯一の地上の宝である。

 

と、画家の亡き堀越千秋さんもおっしゃっております。美しいものにどれだけ接し日常に活用していけるか?これこそが楽しんで生きる極意かもしれませんな。

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地上の宝

2021/04/06
【第1466回】

東京は桜も散りましたが、又、少し寒さが戻ってきました今日この頃でございます...先週の土曜日から「Sing a Song」の稽古が始まりました。昨年のコロナ感染を受け旅途中で公演を中止せざるを得なかった作品です。初演で戸田恵子さんが第43回菊田一夫演劇賞を受賞し、大和田獏さんはじめ他の役者さんの個性的な演技も高い評価を得たなかなかの芝居でございます。まさか!一年後はコロナも収束し思い切り芝居が出来ると思っていただけに、この現状には正直言ってまたもや苦難を強いられてるなと思います。でも、昨年の9月以降4本の舞台を東京、地方で何とか乗り切ってきたので、ここはネガティブに考えないでポジティブシンキングでコロナの波をかわしていきたいと思っています。これまでの4公演で感じたことは、コロナが及ぼす閉塞感を芝居の持つ魅力で随分と開放できたとの意見を多数いただいたことです。こんな状況でのなかでもアクティブな発想が何かを動かすことは自明の理です。だから芝居をやり続ける!お客様もリスクを承知で劇場に駆けつける。舞台と客席との空間を、舞台人と観客が共有して創り上げる時空間の素晴らしさは体験したものしかわからないと思います。この時空間が芸を生み、客席の呼吸で芸が工夫された芝居の歴史をコロナごときで中断するわけにはいきません。

漆黒の闇に灯りが入り、セットが建てられ、客席に観客が埋まっていく過程を眺めながらワクワク、ドキドキしながら過ごしてきたこの夢の時空間がいつまでも継続できますように...ここは演劇の神さんにお願いするしかありませんな。

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今年もありがとう!又来年待ってます...

2021/04/02
【第1465回】

散る桜 残る桜も 散る桜...ひらひらと舞い散る桜の最後の舞は本当に美しい。咲かせてくれた自然に対して感謝の気持ちを込めて落ちていく。どんな生き物も誕生したからにはやがて死が訪れる。自然界の掟を、こんな情景であらためて教えてくれるこの季節の桜のなんと潔いことか...これを見せられて、人はどう生きた方が幸せなのか?よーく考えてくださいませ。そんな桜とは違う、大きな幹にこれでもかという執念で咲いている桜を見て、おいらはなんとでも咲いて見せる!という執念と、ひっそりと可愛げに咲かせていただきますというけなげさを同時に思い致す次第でございます。森羅万象、生き物はいろんな姿形を変えて他の生き物にクエスチョンを投げかける。これを受け止める感性、思考、行動がその人の人生を決めるといっても過言ではないと思いますよ。

いやまた、マンボウなる言葉が世の中を騒がせています...おいらなんてこの言葉からマラカスを手にして愉快に踊るマンボチャチャチャ♪を連想しますな。コロナに合わせて一同楽しく踊りましょうなんてことになったら一大事でございます。せいぜい省略しても、まん延防止でしょう。それにしても、次から次言葉を変えて世の中の空気を換えようとしても大衆はもううんざりでございます...それにしても連日にこにこしながら聖火リレーしている画像を見るにつけ何か変だと思わない?これこそが不条理演劇じゃないかしら...

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なにがなんでも...
いや、ひっそりと。

2021/03/31
【第1464回】

いやいやまいりました...プロ野球開幕したばかりというのにソフトバンクの強さというより層の厚さに、今年もぶっちぎりのリーグ制覇、日本一になっちゃうんじゃないかしらと不安になりました。とてもライオンズのいっぱいいっぱいの戦力と比較すると心配しますがな。逆転されても、いぶし銀みたいな選手が代打で出て試合をひっくり返すんですから余裕すら感じます。我がライオンズも何とか3勝1敗でいいスタートを切りました。ブランドン、若林という新人を積極的に使う辻監督いいですね。金満チームに選手を盗られても若い獅子達が育ってくるライオンズのチームカラーが好きですね。野球は金じゃないんだぞ!というところを見せてくれるだけでも応援し甲斐があるってもんでございます。

いやいやまいりました...厚生省、更生しろ!と叫んでもいまや馬耳東風でしょうな。あきれて言葉が出ませんがな。ほんまに危機感、使命感のない人達がこの国を司っている悲劇です。コロナ感染第四波が来るっていうのにただ単なる傍観者集団。本当に納税者は怒らんといけませんぞ!こんな自然に恵まれた国の春爛漫の季節におっかなびっくり状態で過ごさないといけないなんて情けない話です。

でも、樹木、草花は、怒りを諫めてくれるがごとく美しい光景を繰り広げてくれます。感謝感謝です...

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春の恵み

2021/03/29
【第1463回】

先週土曜日、杉並区善福寺緑地公園に行ってきました。さすがにいつものシーズンに比べて花見客も少ない気がしました。シートを敷いての飲み会禁止の看板が掲げられてるのにも関わらず無視している若いグループも何組か見かけました。こんな輩から感染していくんだろうね。コロナ慣れ、そして何の手を打つことなく一方的に自粛の連呼を呼び掛けるだけの政治、行政に対する諦めからきた行為なのかな...でも、どんなことがあってもひとりひとりの自覚行為がなければコロナの収束はあり得ないということを徹底しなくちゃコロナエンドレス状況は続くに違いありません。

それにしても、現在進行中の聖火リレー、なんとも珍奇な光景にしか映りませんがな...復興の証としてスタートした福島なんぞは笑っちゃいます。走るところだけ整備して、いまだ倒壊し、ままならない町を走りもしないし絵も写さない。おいおい、誤魔化してんじゃないぞ!と言いたい。汚辱に塗れた今回の東京オリンピックを象徴してるようでございます。外国から選手が派遣される情報もなく、日本選手権大会でもやろうとしてるんじゃないかしら?さすがに国も都も気勢が上がらないどころか口数少なくなってきましたね。

開幕したプロ野球の観客の数も驚きました。まあ、声をあげないから少しは大丈夫とは思いますが、あれだけ多くの人達が移動し集まってるんですから危ないなとは思いますが...いずれにしてもコロナとうまく付き合っていくしかこの国の方策はないんでしょうね。こちらも来月から2本の芝居の稽古が始まるのでしっかりと準備してかかりたいと思っています。

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善福寺川緑地公園

2021/03/26
【第1462回】

今日から待望のプロ野球が始まります。昨年よりコロナ感染者が圧倒的に多いのに(昨年の3月25日96人、昨日は1917人)開幕なんて言うのもなんだか複雑な心境なんですが、ここはコロナで閉塞感に陥っている現状にパット明るい灯をともして欲しいもんでございます。おいらのライオンズ愛も70年になります。寝ても覚めてもライオンズ...おまえ仕事よりも家族よりも友人よりもライオンズの方が大切なのか?なんて聞かれたことも多々ありました...でも、おいらの生活のリズムに不可欠なひとつであることは確かです。少年の頃、西鉄ライオンズの選手になることは大きな夢でした。

その夢を未だ追い求めているわけではないのだが、人生の節目節目にライオンズがひょっこり顔を出してきたのも事実です。やはり、西鉄がクラウンライターズ、太平洋クラブに身売りされたときはショックでした。そして、所沢に来たときは涙がチョチョ切れましたでございます。でもライオンズの名前が継続されたので西武ライオンズも応援することが出来ました。この野球シーズンに応援するチームがないなんて、とても寂しゅうございます。野球は本当に奧が深いスポーツです。一投一打のなかにドラマがあり、人生のヒントになるものがたくさん詰まっています。今年はコロナ感染予防の中での開催で鳴り物、声出しも禁止されるのでじっくり野球そのものを堪能できるのがとても嬉しい。昨年は一度も球場に行くこともなかったのですが、今年は改装なったメットライフ球場(西武ドーム)に行ってみようと思っています。ビール飲みながら若獅子の活躍を、そして今年20年目栗山巧選手の2000本安打達成をこの目で確かめることが出来れば言うこと無しですね。今年は優勝しますぜ...頑張れ!頑張れ!ライオンズ!

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ピンクと黄の競演

2021/03/24
【第1461回】

桜も満開で、気分も高揚し、飲めや、歌えや、踊れやの大騒ぎしたいところだが、コロナが立ちはだかり、ましてやこの時期は花粉症でハクション大魔王。鼻はクシュクシュ、目はカユカユ、なんともさえない2021年の春である。新宿で見かける卒業生の晴れ着が何かモノ申したげにも見える。飲食店も営業時間が一時間延長したにもかかわらず、まだまだ普段の日常には程遠いようだ...新宿西口には都庁勤務帰りの人たちに必死の呼び込みをしているのだが、なかなか応じる気配はないようだ。しかも、呼び込みしてる娘さんがマスクもしないで声掛けしてるんだからヤバイ。この娘さんの神経どうなってるんでしょうね?新宿にはホントに世にも不思議な人たちがウロチョロしております。奇人変人も数多く見かけますが、これが新宿の魅力でもありますが、コロナ拡散の時期はやはり浮いちゃうような危うさを感じます。

新宿には花屋さんもたくさんあります。普段であれば、お付き合いのある役者さんが出演している舞台にお祝い花を出すのが通例なのだが、これもコロナ禍のなかではままなりません。付き合いのある花屋さんも苦戦してるのではと心痛めております。飲食店ばかり助けやがって!と怒りの声を方々から聞きますが、為政者はなんら打つ手は考えてないみたいです。何とも憂鬱なこの時期、ちょいと花屋さんに立ち寄り花一輪買い込んで自宅で眺めていると少しは心豊かさを取り戻せるのかも知れませんよ...

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今日の神田川

2021/03/22
【第1460回】

昨日は一日雨で一歩も外出せず...土曜日は桜の開花と共に一斉に街、公園に人が繰り出しました。昨日で緊急事態宣言解除、これまでの状況をみてもなにが緊急なのか今一つはっきりしませんが...あのセメント大臣「マスクなんて暑くなって口の周りがかゆくなって最近えらい皮膚科がはやっているそうだけど。いつまでやるの?」アホ抜かさんでちょうだいな!こっちが聞きたい質問ですがな。旧態依然セメントでガチガチに凝り固まった悪しき政治が幅をきかせてる現状ではやはり自分の身は自分で守るしかありませんな。

雨の休日もなかなかオツなもんでございます。「雨の日には雨の音楽を」というキャッチフレーズでCDを販売している店(雨と休日)で購入した曲はなかなかのもんでございます。寝る前に聴くと、これまたぐっすりと眠れるんですよ。しとしとと降り注ぐ雨垂れとピアノが見事に調和して心身を心地よくほぐしてくれます。昨日は、2020年下半期に芥川賞を受賞した宇佐美りんさんの「かか」を読みました。弱冠21歳、現役の大学生、鮮烈な文体がまるで矢のように綴られていく。中上健次の傑作「十九歳の地図」を彷彿とさせる。

 

降りる駅になって、夕日に焼けた冷やこい風がさあっとうなじのあたりを抜けました。縮毛矯正でまっすぐにしたはずの髪も、こうして汗に濡れるとおくれ毛のあたりには癖がでます。くるりと巻いた髪を指に巻きつっけて、ぐいぐい伸ばしながら乗り換え時間を過ごしました。雲がはやく流れ、唐突に光が散らばったり、また翳ったりします。

 

多感な感性がちりばめられた文章が次から次に繰り出されてきます。時代、人は確実に変化しています。なのに変わらない旧態依然のオヤジたちの政治...どうにもならんですばい!

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六分咲きかな?今日の神田川

2021/03/19
【第1459回】

「たぬきと狸とタヌキ」昨日、越前市いまだて芸術館で無事終えることが出来ました。昨年9月の再開以来4本すべて何事もなく公演することが出来ました。何度も言いますけど、キャスト、スタッフの並々ならぬ努力のたまものだと思います。旅先でも美味しい酒と食べ物を口にしながらその日の芝居の出来なんぞを話しながら寛ぎたいところをぐっと耐え忍んで芝居に集中した結果だと思います。演劇の楽しみの一つに、見知らぬ土地の人たちと触れ合い交流を深めることにあります。大都会ではなく地方の小さな町でキラキラした眼で芝居を楽しんでくれる人たちにどれだけ勇気づけられたことでしょう...東京のお客様の厳しい目に晒されて落ち込んだ役者が、地方の温かい声援で立ち直った話もよく耳にします。地方のお客様の芝居をとことん楽しもうとするおおらかな受け止めが、神経戦で疲れ切った役者の心身を程よくほぐしてくれたんでしょうね。芝居は都会だけの見世物ではございません。全国各地を駆け巡り時間かけての旅芝居こそ芝居の醍醐味でございます。

多和田葉子『ヒナギクのお茶の場合』読了。ドイツ在住の作家だが、なんとも不思議な文体を持った作家である。主人公が哺乳瓶の乳首になったり、平凡な日常がまるで宙を舞い特有な世界に誘ってくれる感覚はハマる人にはたまらんだろうなと思います。知の冒険はコロナ疲れの心身にとてもよろしい旅でもございます。

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おいらも、もうすぐ...

2021/03/17
【第1458回】

桜が咲き始めましたね...この時期いつもだとウキウキするんですが、コロナの影がウロチョロしてて今一つスッキリしないのが正直なところですね。緊急事態宣言21日には解除するみたいですが、またもや新しいコロナ株が拡がっている情報を耳にするとアチャという気分になっちゃいます。こちらも5月に「Sing a Song」「狸の里帰り」2本の公演を控えているだけに、来月から始まる稽古にもピリピリしています。幸いにして、これまでの公演はなんとかみんなの努力とお客様の心温まる支援で乗り切ってきましたが、一寸先は闇なので気を緩めることは出来ません。

まあ、心配ばかりしても折角咲いてくれてる桜にも悪いですから「今年もありがとう!」という気持ちで愛でたいと思います。ウイルスにも災害にも負けず毎年決まって咲き誇る樹木の生命力にニンゲンも学ばなきゃいけませんな...科学の力に頼って進歩の名のもとに突き進む人類に対する愛のある表現だと思います。これから新緑も、あっという間に芽生えてきます。どんな薬よりも、この困難な時期、樹木が織りなす絢爛な世界は我々にとっては最適な特効薬に違いありません。

ただ、満開の桜のもとでの多数の集まりは今年に限って桜に対しても迷惑なことになりますのでくれぐれもお控えくださいませ。

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咲きました!

2021/03/15
【第1457回】

「たぬきと狸とタヌキ」先週金曜日、両国シアターX(カイ)で無事東京公演千秋楽を迎えることが出来ました。昨日は広島県福山市神辺文化会館でも上演しました。怖いくらいに順調に芝居を上演できてることに感謝です。何でもそうですが、一人では何も出来ません。上手く事が運ぶには様々な要素が絡み合っているのが常ですが、この演劇の世界でも同じです。1994年に第一作を創って27年こうやって芝居をやり続けてこられたのも、つくづく人との縁を感じます。誰と出会うかでその人の人生は決まってしまうと言っても過言ではないと思います。夫婦、友人、会社、そして芝居の世界でも同じです。ことに一癖二癖もある人種が集う演劇の世界、一歩間違えば奈落の底に突き落とされる社会です。おいらも感度の良いアンテナをおったてて、時には大胆に、時には細心の注意を払いながらお付き合いしてきたのですが、最終的には信頼関係を築かねば何事も上手くいきません。おいらだって仏様じゃありませんから時には「この野郎...おめえなんて他人様の前に立てる人間じゃありまっせん!」と怒り心頭に達したこともままありますが、ここは心が広いキヨシ君を登場させることによって事なきを得たなんてこともございました。プロデューサーもうまい役者でないと務まりませんことよ...昔取った杵柄で危機を避けられるなんて、何事も体験は無駄にならないということですな。あまりうまい演技だとあざとくなるので、ここはヘタウマ演技の方が効果があるのかもしれませんね。

この芝居、残すは兵庫と福井の2ステージとなりました。無事に終えることを祈るのみです。

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両国にある吉良邸跡

2021/03/11
【第1456回】

今日は東日本大震災から10年...メディアはここぞとばかり連日特集してますが、10年前の3月11日の出来事は、1945年8月15日の敗戦同様、今生きてる人すべてが心して日々忘れてはならないことだと思います。ついつい調子に乗りすぎて上の空になりがちな日常の歯止めにしなければならない啓示だと言うことを肝に銘じたい。自然はことあるごとに人間に懲らしめとして黄信号を提示しているのに、今ある太平楽に安易に妥協してしまう体たらく。こんな大惨事にあいながらも未だ原発に依存しようとしている政治、行政の人達の気が知れない。福島の原子炉、汚染水などなんら解決の道筋は見つかっていません。この事故で故郷を失った人達の思いは如何ばかりか...なにが復興のためのオリンピックか!先ずは未だ先が見えない避難民のためにお金を投資するべきだし、悩み苦しんでる被災者に最善の環境を提供することを最優先にして貰いたい。この10年被災者皆さんの過ごした時間は、想像を絶する葛藤の日々であったに違いない。この気持ちを人として共有できる人がひとりでも多いことを願いたい...そして、その想いが必ず困難な未来にある道筋を与えてくれることを信じたい。

「たぬきと狸とタヌキ」の東京公演も明日の一日を残すのみとなりました。客席50%ながら日々満席状態です。皆さんほぼ満足して劇場を後にしていく姿を見るにつけ、こんな状況のなか芝居をやれることに唯々感謝です。

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公演地の両国界隈

2021/03/09
【第1455回】

昨日「たぬきと狸とタヌキ」の東京公演初日を無事終えることが出来ました。緊急事態宣言が又もや延長されてのなかでの公演だけに関係者全員ピリピリしています。でも、皆さん本当に頑張っています。頑張るってフレーズあまり好きではないんだが、ことコロナに関しては耐えて頑張る以外は打つ手もない状態です。政治、行政はまったくあてにならない処かコロナを政治の駆け引きに使うぐらいの人達だから呆れてしまいます。手洗い、うがい、マスク、必要のない飲食などなど生活者は守ることはきっちりとこなしていますよ...

昨日の芝居も、テンポ良く今の状況をしっかりと見つめた演劇として成立していました。客席を50パーセントにしなきゃならないことは、制作側としてはなかなか辛いところなんですがお客様が喜んで頂ければ嬉しい限りです...緊急事態制限下でも劇場に足を運んでくれるんですから頭が下がります。世の中には、この非常時に「演劇なんてやりくさって...」なんて、芝居屋を悪人扱いにする人達も居るんですから涙チョチョ切れてしまいますがな。

乾いた心身に潤いをもたらすからこそ、無くしてはならないアートでございます。今すぐ効く特効薬でないかもしれないけどジワリジワリ効果を発揮する漢方薬ってところかな。

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春を待つメタセコイヤ

2021/03/05
【第1454回】

またまた緊急事態再延長、政府も知事も耐えに耐えてる人たちに要請してばっかりではございません?たいした対策もしないでお願いばかりでは頭に来ますわ。昨日も税務署に行ったのだが、わずかな年金生活者にも容赦なく税金を取り立てるんですから言っちゃいましたよ。「年金は長年せっせっと貯金したお金じゃないの...それにしても不埒な政治家、官僚なんかに、汗水たらして一生懸命に働いて納めた税金を気持ちよく納めたくないのが本音だよ。」おそらく大半の人が同じ思いだと思います。コロナ対策にしたって、なんでPCR検査を未だに渋っているのか?オリンピックありきで感染者が増えるのを恐れているのは分かるのだが、オリンピックと人の命どちらを最優先させるか子供だって分かります。コロナが発生して1年、あんたら何やってたの?一番大変なときには、むにゃむにゃ幹事長の肝いりでGoToトラベルで感染拡大させ、あんたらは国会閉会なんて体たらく。商売やってる人達は資金繰りで右往左往してるのに、あんたら自ら給与返金なんてしおらしいことする人一人もいませんでしたね。いい加減怒るで!と言っても変わらんでしょうなこの国の体質はと諦めの心境です。ミャンマーよりはましなんて呑気な気持で居たら、いつの間にか同じような国家体制になりますぞ...今年一月に亡くなった昭和史に光をあてた作家でジャーナリストの半藤一利さんも遺言として言っとりました。「日本人は歴史から学ばない」あの戦争だって一部の権力者に惑わされ地獄を味わった。要は一人一人が自立しなきゃいかんと言うことです。ぼけっとしてると悪巧みしてる輩の思いのままになりますがな...気持ちよく税金を納められる未来がこないと浮かばれませんでございます。

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役所の前に立つ像

2021/03/03
【第1453回】

今日も快晴、又、寒さが戻りましたが気持ちの良い一日になりそうです...著名な哲学者の本を2冊ばかり読んでましたが、途中何だか嫌になり中断しました。何が嫌になったかといいますと、この方の文章がすべて頭の中で構築されていて、言葉を巧みに操ることに徹底し万事、屁理屈にしか感じられなくなり、なんだか言葉遊びにつき合ってること自体が馬鹿馬鹿しくなったと言う訳でございます。こんな方に、いくつもの賞を与えるこの国のアカデミック第一主義にあらためてうんざり、がっかり、ごめんなさい。でも、文学の世界では言葉を軽快に操り観念だけで見事なドラマを成立させる世界があるのも確かです。やはり書き手がしっかりと大地に立ち、今まさに生きてる人間の息遣いを肌で感じ言葉にしていく。そうでないと、読者の心には響いてこないのではなかろうか...

と言う訳で、言葉から絵画に目を転じました。スペインをこよなく愛した堀越千秋さんの画集『堀越千秋画集 千秋千万』を眺めながらにんまりしております。彼は2016年10月に67歳で亡くなりました。スペインで一度、日本で二度ほど会いました。彼のカンテも聴かせてもらいました。カンテと言うより浪花節を聴いてる感じがしましたな(ほとんどスペイン人なんですが根っこはやはり日本人)20代後半からスペインに住み始め、スペインの庶民の中に裸一貫で飛び込み、画壇とは無関係に画きまくった無頼のアーチストでありました。文も絵も精細さと奔放さを持ち合わせた、おいらが好きな放浪の画家の一人です。

それにしても、この画集を出版した大原哲夫さんも大したもんです。赤字覚悟で576ページ、厚さ5センチ、重さ2500グラムの本を出版するんですから、ほんまもんの出版者です。この世の中に絶対に残したいと言う信念で成し得た仕事です...確かに二人の熱量がおいらの魂を今一度熱くさせてくれてます...一度きりの人生、悔いのない生き方、仕事せんといかんですばい皆の衆。

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千秋千万

2021/03/01
【第1452回】

週明けの今日は3月1日に相応しい春日和です...梅が咲き誇り、各地の河津桜も満開のようです。弥生という響きも何とも柔らかい匂いがしますね。昨今は花粉症という厄介な代物が出現し、弥生という季語も煙たがられていますが、やはり身に纏った服を一枚一枚と脱ぎさっていく爽快感はこの季節特有のものです。まさしく、軽くなる感覚は心身を解放していき何かが始まる予感さえしてきます。進学、就職、栄転なんて事柄が目に浮かんできますが、昨年今年と、このコロナが立ちふさがり行く手を阻む悪魔のようにも見えてきますが...これも又、自然界の法則をぶち壊したニンゲンの所業なんですから仕方がありませんね。

そして、いよいよプロ野球も始まりますね。昨年はなんと7月からのオープンだったことを考えれば、今年は球春にぴったり、昨日も練習試合をニコ生で見てましたが、なんとコメントの文字が次から次に出てきて肝心の試合の様子がよく分かりませんがな...これもSNSの産物なのかな?一億総批評家の時代ですな。試合は静かに観てくださいなといっても熱狂的なファンはそうはいきません。発散することが観客の定義なんて考えてる人達が居て成立していることも事実ですが、そろそろ鳴り物の応援は止めてくれないかな。敵も味方もいいプレーが出たら拍手、ゲームそのものを楽しむなんて球場になったらいいなとおいらは考えています。昨年は一度も球場に行けなかったので今年は是非行ってみたいと思っています...勿論、改装して観客目線を大切にしたメットライフドームです。

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春薄暮

2021/02/26
【第1451回】

昨日、埼玉県志木市民会館パルシティホールで「たぬきと狸とタヌキ」の公開舞台稽古をやってきました。昨年の9月から再開した3本の芝居はジャンル的にも、どちらかと言うと硬派という印象が強かったのだが、今回の芝居はコロナ禍のなかで狐とタヌキの騙しあい風のコメディに仕上がっています。この窮屈で何とも重苦しいご時世、笑い飛ばしてすっきり劇場を後にして頂ければと思っています。さすがプロという榊原、岡本両ベテランの丁々発止の掛け合いに小林、生津、カゴシマが入り乱れ、人間関係をより複雑にしていく運びはエンタメ演劇の王道ではないだろうか...観客を入れての初めての芝居は役者さんとっても緊張するもんでございます。ここはベテランも若手も一緒です。思わぬところで笑いが起きたり、受けようと思ってたところで反応がなかったりと、役者は薄氷を踏む思いで板の上に立ってるんでござんすよ。きっと心臓がパクパクとしていることでしょう...台詞が出てこなくなったときに巧みに誤魔化し危機を乗り越えていく様を見届けるのも、プロデューサーとして別の意味での楽しみですね(ちょいと意地悪な鑑賞方かな)そして、この日は、劇場での観劇が叶わないお客様にも、作品をお届けできるようイープラスの配信サービス「Streaming+(ストリーミングプラス)」での映像配信のカメラも入っていたので余計に緊張していたのではないかと思います。

今日の東京は肌寒い曇り空、白い可愛い梅の花もチラホラと散り始めていました。

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白梅

2021/02/24
【第1450回】

祝日開けの今日、またまた如月に相応しい気温になりましたが春は確実にやってきています。梅があちこちで咲いており、それにつれて人の外出も増えだしております。ここで油断するとコロナ第四波がやってきますぞ!と各々が自覚しないとコロナエンドレスなんてことになっちゃいますね。

最近TVでよく旅番組を見るんですが、なんだかホッコリするシーンが多くて豊かな気持になってきます。昨日観たラオスのビエンチャンの庶民の表情、邪心なんぞ感じません。世界遺産もなければ高層ビルもない、なんともゆるい街です。舗装されていない道を走る乗り合いバス、バイク、信号なんぞもあまり見かけません。乗り合いバスの運転手が荷台につるしたハンモックで昼寝してる姿なんぞは笑っちゃいます。おいらが過ごした昭和30年前後の博多の街にも似た感じがありました。お金なんかよりも大切なものがあった時代です。貧しくとも身近なものに感謝し、ささやかな喜びを見いだし生きている様に、人間本来のあるべき姿を見る思いです。すべての先進国が捨て去った不便さに、もういちど光を当てれば少しは平和を取り戻せるかも知れませんね...なんでせわしく、ぎすぎす、他を気にして生きなきゃならんのよ、ほっこり、のんびり過ごせばストレスなんか寄ってきませんがな。

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都庁裏の庭

2021/02/22
【第1449回】

暖かい日が続いています...先週の週末、劇団チョコレートケーキの「帰還不能点」を観てきました。なぜ日本は敗北を予想しながら、敗戦の道を辿る対米戦に踏み切ったのか。9人の男優が、亡き同僚の三回忌に奥さんが経営する居酒屋に集まり、劇中劇形式で時に笑わせ、時には激高しながら、当時の有様を息もつかせず展開していく。人間としての良心と責任を語り合うラストは、時代を超えて今に生きる人たちへの確かなメッセージとなっている。

今や教育の現場で教えられない戦争にまつわるエピソード、若い人達に是非観てもらいたい作品でもある。年明けて観劇する作品、ことごとくクオリティーが高い作品ばかりである。

コロナで苦しめられてる演劇人の何とかせねば!という気合と志の高さが垣間見えて嬉しい限りだ。まさしくコロナごときにくたばってたまるかという創造者たちの更なる前進に拍手を送りたい。そんな刺激的な現場に、どうぞ劇場に来て下さい!なんて言うことも緊急事態宣言下の中では恐縮するのだが、そんな中でも人間の尊厳を切々と訴える役者の姿を観てるだけでどれだけ勇気を貰えるか、どうかあなたの身体で感じてくださいな...勿論、中にはつまらんものもありますからその時は許してちょんまげ。

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初夏の様な今日の空

2021/02/19
【第1448回】

オリンピック組織委員会の会長に橋本さんがなったのは仕方が無いにしても、この人もオリンピック開催ありきを口にしている。国民の多くの人、そして国際的にも疑問視されているにも拘わらずどうしてもやりたいんですな...その皺寄せが我々演劇関係者を含むアートの分野に暗い影を落としつつあるようだ。夜の公演の制約、客席を半分に制限などなど、オリンピック開催の犠牲になるなんてとんでもない話だ。アメリカの大統領も言ってるじゃありませんか「五輪開催は科学に基づいて判断」と。コロナ収束無くしての開催はあり得ない話だというのに、開催ありきの進め方にはどうしても納得できない。そして話題の女性トロイカ体制で果たして上手くいくのか?三本木のオッさんの院政はないのか?いずれにしても、オリンピックごり押しでまたまた悲鳴を挙げなきゃならないなんて、ごめん被りたいもんでございます。

春の足音が日増しに聞こえてきます...鳥の声も一段と高らかに、木々の蕾もニョッコリと、川のせせらぎも太陽の光を浴びながらキラキラと輝いています。おいらはこんな風景を感じながら夕陽を眺めるのが大好きです。今日も一日、平穏無事に暮れていく景色に唯々感謝。

夕陽に向かって「明日も頼みまっせ!」と手を振りたくなります。

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今日も一日ありがとう

2021/02/17
【第1447回】

なかなか外でお酒を飲めない昨今、何気なくテレビで観た映画が当たりだと嬉しいものだ。先日観た「127時間」なかなか面白い作品でした。登山家アーロン・ラルストンが体験した実話を監督ダニー・ボイル、ジェームズ・フランコ主演で2010年映画化したサスペンスドラマ。なんと2011年第83回アカデミー賞の作品賞、主演男優賞にノミネートされてたんですね。アメリカ ユタ州にあるブルージョン・キャニオンという名の渓谷で岩壁のロック・クライミングを楽しんでいる際に、上から転がり落ちてきた大きな石に右腕を挟まれ そのまま見動きがとれなくなるという、なんとも不運としか言いようがないアクシデントに見舞われ、それから127時間残り少ない水を飲みながら過去と妄想と苦悶を彷徨いながら、なんと中国製の安っぽいポケットナイフで挟まれた右腕を切断して脱出すると言う話なんだが、カメラワーク、音楽のセンスの良さでなかなか飽きさせない。腕を切り落とすシーンは、さすがに目を背けてしまう程の痛い!痛い!痛い!のシーンでございました。それにしても岩に挟まれたこの場面だけでここまで膨らませていく映画人の創意工夫に拍手を送りたい。

今日から国内でワクチンの接種が始まった。テレビでライブ中継してるのにも驚いた。それだけ歴史的な事件だということだ。とにかく一刻も早くコロナ禍の収束を願うばかりだ。芝居も安心して出来ないし、老舗のお店は潰れるし、もうこれ以上悲しい気持にさせんで欲しいわ!しかし、このコロナ君、確かにこれからの新しい生き方の指針を指し示したことは間違いない事実だ。当たり前のことだが何事もバランス、どっちかに偏ると異常な現象が起こるってことを忘れませんように...

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アンコ椿は恋の花

2021/02/15
【第1446回】

いやいや、10年巡って再び、13日の地震には驚きました。東京もかなり揺れましたね...天災は忘れた頃にやってくるなんて言葉がありますが、10年前のあの爪痕はまだまだ記憶にしっかりと残っているだけにショックは大きかったと思います。こうなりゃ、もういつ来てもおかしくないという心構え、準備をするしかない。

この日の昼間は、天気も良かったので久しぶりに井の頭公園に行ってきました。コロナで縮こまった心身を解放すべき多くの家族、カップルが穏やかな日差しを浴びながら平穏な時間を楽しんで居ました。平和だから、健康だから持ち得る幸せなひととき、このありがたさを享受出来ることに感謝すると共に、どうしたら継続できるかを真剣に語り考えねばならないと思います。偶然に出来た平和ではないし、先人が汗と涙と、そして時には血を流しながら獲得した平和だからこそです。池を泳ぐカモたちも、憂き世のコロナ騒ぎを知ってか知らずかスイスイと気持ちよさそうにはしゃいでおりました。

帰りの電車の中で中年のカップルがいちゃついておりましたな...といっても二人でお手々を濃厚に触りながら囁いているだけなんだが、となりのオバサン嫌だったのかな?他の席に移動しました。人間観察が好きなおいらはなんとなく観ておりましたが、これは夫婦ではないなと見ました。まあどちらでも良いのだが、電車の中は公衆の場でありまして、先ずはマナー重視といきましょう...そのちょっとした仕草で、殿方淑女の生き方全てが出ちゃうんですぞ。いくつになっても、男も女も粋じゃなきゃね...

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春を待つ井の頭公園

2021/02/12
【第1445回】

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長辞任、その本人が川淵氏を指命したのだが密室と非難され川淵氏も辞退。昨日の夕方自宅前で「人生最後の仕事だと思って、どんなことがあってもオリンピックを成功させます」と決意表明したばかりなのに...なにやってんの?何だか義理人情の古くさいドラマを見ているようであったのだが、今度は政治の介入。ほんまにこの国の体質はいつまで経っても変わりません。今度は女性じゃなきゃなんてご都合主義的な発言をする人も現れ、急に女性をクローズアップさせるなんておかしさ百倍になってる感じでございます。自民党も、都知事も風見鶏、様子を窺い、ここぞというタイミングで庶民を味方に付ける手法も見え見えでたまりませんばい...一体全体、この状況の中で本当にオリンピックが出来ると本気に考えてる人がいるのかな?世界の国のオリンピックに対する意見もいまいち伝わってこないし、第一アスリートは選出されてるのでしょうか?そんな記事みたことありませんがな。どの国もコロナでそれどころではないのに絶対やるなんてことを喋ること自体が可笑しくありません...最近のオリンピックは金塗れ、アメリカのNBCが多額の放映権を持っているのをはじめすべてが金絡み。この際、冷静にオリンピックなるものを再考するいい機会にしたいもんでございます。

オリンピックを夢見ながら試練に耐えたアスリートの方々には大変残念なことだとは思いますが、コロナが世の中の不条理に刃を突きつけている今、ここは未来を見据えてすべての人が真摯に思考し行動しなければいかんと思います。

何年経っても、同じ風景、光景をみせられて、ほんまにこの国変わるんかいな???

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梅は咲いたか~ 桜はまだかいな~

2021/02/10
【第1444回】

世界がコロナで大変な時期、おいらの第二の故郷スペインも、もちろん非常事態であるに違いない。でも、おいらの想像だが以外にものんびり明るく暮らしているのではなかろうか?あのキンキラした太陽のもとで暮らしてる人たちには何ともマスクがお似合いではなさそうだ。美味しいものを思いきり食べて、楽しい会話をたくさんして(人の話を聞かないでまずは自分が喋りたいことを優先するのが大前提だが)愛する人とこれでもかというぐらい愛し合ったならば死んじゃっても、悔いは無しなんて思ってるんじゃないかしら。いや、そうした方がコロナに勝てるに違いないなんてぶっ飛んだ発想で生きているに違いない。そんな国だから、ピカソ、ダリ、ガウディなんてとてつもないアーチストが生まれたんですな。

特においらが長年住んでたアンダルシアの人達に至っては、コロナさえも日々の祝祭として大好きなワイン、シェリー酒飲みながらバルで陽気に過ごしてるに違いない。

苦労して、悩んで、ストレス溜めながらの人生よりも楽しく人生を終わらせたい!そうは人生上手くいかないとしても、考え方としては正解ではなかろうか...

コロナ確かにやっかいですけど、あんまり煮詰まった思考ではほんまに疲れますがな皆の衆。

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スペインアンダルシア

2021/02/08
【第1443回】

週明けの東京は昨日に比べ寒い日となりました。まさしく三寒四温、春の足音が近づいていることは確かです...先週の週末、座・高円寺でトラッシュマスターズ「堕ち潮」観てきました。休憩挟んで3時間20分という大作です。この非常事態宣言下のなか、硬派の芝居を長時間上演するってことは余程自信があってのことでしょう。政治家の談合あり、差別問題あり、南京大虐殺を巡る教育など、いくつもの問題点を速射砲のごとく撃ってきます...この手強い弾を15人の役者が上手く捌いています。捌くというより自分の言葉にしているので時間を感じさせません。それぞれの役をきっちりと生きているんでしょう...この日は30分の間を置いて2ステージ目をこなすんだから頭が下がります。すべての演劇人が危機感を抱きながらステージをこなしてる様が目に浮かびます。

コロナの感染者数が下がったと言われても未だに不安感は払拭できない気がします。オリンピックに向けての数の操作かもしれないし、GoToトラベルの再スタートのための数合わせかもしれないし、とにかく不信感極まりない政治、行政のやることだし不透明としか言いようがない状況であることは間違いない事実です。救世主であるはずのワクチンだって半信半疑...この世の中、何が真実なのか?今日もメディアでピーチクパーチクいろんな分野の人たちがつぶやいております。この人たちにとって、コロナは飯のタネなんでしょうね。

コロナ特需で喜んでいる人達、逆に泣いている人達。まさしく人生いろいろでございます。

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裸木

2021/02/05
【第1442回】

今日も東京は良い天気、春が間違いなく近づいています...「モンテンルパ」が終わるやいなや、「たぬきと狸とタヌキ」の稽古もピッチが上がっています。2月25日には埼玉県志木市で公開舞台稽古をやります。俳優という職業つくづく大変な仕事だと思いますね。あんな膨大な台詞を短期間で覚えての真剣勝負なんですから心身とも休まる暇がないのでは...役を創る過程での模索の中、一度、ダメでもいいんだと覚悟したときにふっと楽になり思わぬチカラが沸く瞬間があるのではといつも思う。開き直りとも違う、これぞ余分なチカラを抜くと言うことではないかしら。心身が解放された時に無敵になるってことかな...所詮、うまくいこうが、うまくいかなかろうが己は己以上でも以下でもないありのままの姿でしかないんだから。脱力こそが人生を楽しく生きる智恵なのではないでしょうか。

それにしても三本木のおっさん、完全に耄碌してるんじゃないかしら。昨日の記者会見、全然謝罪の気持皆無。むしろ俺は被害者と言わんばかりの憮然とした表情でございました。そんな老害者に対して現内閣の閣僚一人として辞任を進言しないんですから呆れて言葉も出ませんがな。都知事のオバサンも言わんかい!まあ、両者ともオリンピックの実績を歴史に刻みたいがために、権謀術数を弄しながらの様子見をしてるんでしょうな。ジェンダー・ギャップ指数、日本は144カ国中121位、何とも恥ずかしいお国でございます。政治は世襲、老害議員が睨みをきかせ、他の議員は口出しも出来ない有様。受難のこの時期に、公僕たる議員の給与削減すら出てこない政治屋には呆れるばかり...これは野党も共犯でござりまする。特権意識ぷんぷんの輩にはアチャ、困ったもんでございます。

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新宿の夕景

2021/02/03
【第1441回】

昨日は節分、おいらも豆まきいたしました。窓を開け「鬼は外、福は内!」こんな時期ですからコロナのことを考えながら思いっきり豆を放り投げた次第です。恵方巻も南南東に向かいガブリとやりました。おいらは神頼みというやつはしたことがなく、神社仏閣に行っても手を合わせ「生かして頂いてありがとうございます」と感謝の言葉をつぶやくだけです。でも、今年は豆に託してコロナ退治も必要なのかもしれませんね...緊急事態延長なんてことになってしまいました。庶民は日々一生懸命にまじめに行動してるのだが、政治家どもはいい加減な輩ばかりです。ほとんどの人が信用してないんじゃないかしら?そして又もや、補償金のいい加減さに怒髪天。相変わらずアートの世界もほったらかし状態でございます。客席は半分、外出自粛じゃ赤字公演は自明の理。それでも劇場に足を運んでくれるお客様はほんまに神様でございます。

あの養老孟子さんも言っとります。「都市の解毒剤」としてアートが存在してきたのではないか...けだし名言、ウイルスに汚染された時の特効薬はアートだと思います。「モンテンルパ」に来ていただいたお客様にこんな言葉がありました。「芸術がないとお肌もボロボロ、心もガサガサになって早死しちゃいます!芸術は人に生きる喜びを与えてくれます。」なんと嬉しいお言葉でしょう...勇気凛々、コロナが吹き飛ぶような芝居創らんといけませんな。

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新宿のオブジェ

2021/02/01
【第1440回】

先週土曜日「モンテンルパ」無事に千秋楽を迎えることが出来ました...緊急事態宣言下の中での公演が何事もなく無事に終えることが出来たこと本当に嬉しい!何度でも書きますが、キャスト・スタッフの心労いかばかりかと胸が痛む日々でございました。そんな状況での役者は、何故か芝居の神様の魂が乗り移った感さえしました。ラストステージは見事な舞台でした。コロナにもかかわらず劇場に足を運んでくれた皆様も大したもんでございます。この鬱屈した日々の中、舞台から何かヒントをもらえるのではないか?いや、こんな時こそ舞台人を援護したい!様々な思いを抱きながら来て頂いたのではないかと思っています。

終演後、普段であればおいしいお酒と食事で打ち上げをやるのですが、この状況では無理です。ロビーで軽く三本締めで締めました。勿論、再演を願って...

おいらは初日から舞台後方で芝居を見続けていたんですが、劇場に昨年亡くなられた大和田獏さんの奥様、岡江久美子さんがいらっしゃる感じがしてなりませんでした。今回の公演が成功したのも、きっと岡江さんが見守ってくれたに違いないと思います。劇場には目に見えない多くの舞台の先人が住みついています...カーテンコールでの獏さんの挨拶が何故か岡江さんに向かって「ありがとう!」と言ってるように見えました。

コロナに負けてなるものか!次ぎの芝居に走り続けます。

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東京芸術劇場前の広場

2021/01/29
【第1439回】

「モンテンルパ」今日と明日の2ステージを残すのみとなりました...関係者皆さんの猛烈な自覚の賜物でここまで来たと思っています。いつも葉書にびっしりと感想を書いてくださるOさんから今回も届きました。

 

昨今、自粛が叫ばれ、外へ出ることも、人と会うことも少なくなった折に、劇場でこうした心に残る芝居に出会えることはまことに幸運なことです。人の生死を考えるにはまたとないきっかけですから。疫病で死者が出てもあまり動揺するでもない世間の鈍い反応を見ていると戦争に駆り立てられて行った当時の世相も、知らないうちに限られた者たちの決断によって不幸がまき散らされ、その尻ぬぐいをさせられるのは名もない人々であったのだと思いながらも、自分たちの責任を全うしないのも名もなき我々だと考えてしまいます。芝居を続けるには困難な事情が山積するなか、こうした心に訴えてくる話を世に問うご一同様の見識に頭が下がります。

 

この状況の中、しっかりと観て頂き感想を述べられる方々が居る限り我々も芝居をやり続けます。昨日は昼と夜の2回公演でしたが、役者も気合い十分、舞台で渾身の演技をしておりました。この気持こそがコロナを寄せ付けない要因かも知れません。

帰りには雪がチラホラと降っていました...厳しい冷えであったのだが、何故か暖かさを感じました。役者の熱気がそのまま、おいらの心身に残り火みたいに居留してたんですね。

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池袋西口

2021/01/27
【第1438回】

こんな時期に何で又?とお思いでしょうが、昨日から3月初旬に始まる「たぬきと狸とタヌキ」の稽古が始まりました。只今公演中の「モンテンルパ」も弾みがつき3ステージ目を迎える中、錦糸町の稽古場に...稽古前のPCR検査も無事済ませ(何とかなりませんかな...芝居やるごとに何度かやる検査、結構お金がかかって大変でございます。GoToばかりに忖度してアートの方には冷ややかな気がしてなりませんがな)キャスト、スタッフ元気な姿でほっといたしました。この作品は昨年6月に上演する予定だったんですが、コロナ禍の中、中止になった舞台です。なんとかやれないものかと奔走した末に実現しただけに皆嬉しそうでした。役者はやっぱり舞台に立ってなんぼの世界です。大御所Mさんも言っとりました。「芝居やってないと酒飲みのただのおっさんやね...」このコロナ禍で舞台に立てる喜びを一段と噛みしめた役者はたくさんいると思います。

「たぬきと狸とタヌキ」は「モンテンルパ」とは全く違う作品だけに楽しみです。え?こんな作品も創るんだ!なんてところが芝居屋の面白いところです。芝居なんて所詮、いかにお客様を裏切り騙すかってことですからね...騙し騙され、しばし日常を忘れさせてくれるなんて素敵じゃないですか!そして、この芝居自体が騙し騙されての話になってるんですから興味津々でございます。でも、下手な技では「ホンマに騙された!お金と時間を返せ...」なんてことになっちゃいますからね...とにもかくにも、3月の初日に向けてコロナに負けずに精進あるのみ。

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稽古初日

2021/01/25
【第1437回】

先週23日(土曜日)、「モンテンルパ」無事初日を迎えることが出来ました。見えない無気味なコロナに脅えながらのキャスト、スタッフの日々を思うと感無量です!そして、緊急事態宣言の中、劇場まで駆けつけたお客様には唯々感謝あるのみ!いやいや、大変だと思いますよ...初日は19時開演21時終演だったので20時過ぎの不要不急の外出自粛に触れちゃいますので、かなり躊躇されたのではなかろうかと推測いたします。それでも来てくれるんですから、まさしく応援団。そんな熱い応援に応えるべく役者の皆さんは入魂の演技で答えておりました。勿論、熱演即いい芝居ではございません...でも、前代未聞の状況の中で演じる役者の内面はただならぬものがあると思います。

初日に比べ、二日目の舞台は更にグレードアップされていました。まさしく芝居は生き物。危機を乗り越え舞台に立てる喜びが役者の身体に憑依し見違える芝居に仕上がっていました。劇場を後にするお客様から「元気もらえました!」なんて言葉を掛けられると、いや、こちらこそと言いたいところです。コロナが収束した数年後には、きっと昨年末から今年の初めの舞台は一生忘れることが出来ない貴重な財産になっていると思います。

まだまだ油断禁物、明日から30日まで舞台は続きますので気を引き締めて参りましょう。

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無事幕が開きました

2021/01/22
【第1436回】

緊急事態宣言が発令中、2本の芝居を観劇しました...1本目は神奈川芸術劇場で上演された「セールスマンの死」、2本目は下北沢ザ・スズナリの劇団ONE OR8「グレーのこと」両作品とも再演なのだが、初演と比べて数段良くなっていた。このコロナ禍のなか舞台に関わる人間にとっては、日々不安の中で如何に表現していったらいいのか?その苦悩、逡巡がより優れた舞台成果に繋がったのではないかと思う。

この状況の中、演劇は大きな矛盾を孕みつつ存在自体が厳しく問われている気がします。この時期に「どうぞ来てください!」と力を込めてお誘いできない歯がゆさが全てを物語っているのではなかろうか。劇場は会話をすることもなく観客は検温と消毒を済ませマスクをかけておとなしく観ているだけで何ら危険性はないとは思うのだが、「緊急事態宣言が出てるのに公演するのがおかしい!」「こんな時期に行くなんて信じられない」なんて仰有る人達が居るのも紛れもない事実です。

昨日の小劇場ザ・スズナリは座席の間隔を空けながらもほぼ満席だった。芝居をやる人間にとってこんな嬉しいことはない。こんな時期だからこそ演劇にエールを送りたい!芝居を観て未来に繋がるヒントを得たい!こんなアクティブな人達に支えられて芝居が成立してることを再確認した日でもありました。役者は観客の息遣いにより気づかされ成長していく生き物であり、演劇に関わる人達は全て、劇場に足を運んでくださる人達に最良のプレゼントを手渡したい!と言う一心で日々研鑽しているのでございます。

明日、「モンテンルパ」幕が開きます。

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下北沢の夕景

2021/01/20
【第1435回】

寒い日が続いています...酒飲みの老いたる輩にとっては、コロナの影響でそうそう簡単に酒場に足を運ぶことにためらう日々でございます。そんな今日この頃、家に帰り一杯やりながら旅番組を観ることは暫しの憩いのひとときです。旅好きなおいらの好きな番組にNHKBSプレミアム「世界街歩き」があります。この番組の良いところは歩き目線でカメラを移動させるところです。今まさに視聴者が街を歩き異国の見知らぬ地を散歩してる気分にさせてくれます。昨日はイギリスのヨークという町の街歩きでした。ヨーロッパの街並みは古い建築物が今なお立ち並び歴史を感じさせてくれます。まさしくいにしえの匂いがプンプンと立ち込めています。住人もその歴史に尊敬の念を抱きながらゆったりと暮らしているさまに人生の豊かさを感じます。このヨークの街にある古きパブが経営困難に陥ったときに、180人の住民が株主になり店を立て直し憩いの場として酒を飲みながら、それぞれ好きな楽器を持ち寄り演奏会を繰り広げているシーンは何とも素敵でした。

もう少しゆったり過ごしましょう...お金も大切だけど、一度きりの人生もっと大切なことがあるんじゃないかしら?団体旅行じゃなくふらりと旅してみませんか...いろんものがいろんな形をして視えてきますよ。そしてなにが自分にとって大切かということを教えてくれますよ。若い頃、世界あちこちを放浪したおいらが言うんですから間違いありませんことよ。

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春の兆し

2021/01/18
【第1434回】

今週も幕が開きました...先ほど「モンテンルパ」関係者30名ほどのPCR検査の結果が出ました。全員陰性。今週23日から始まる本番に向けてのGOが出ました。いやはや、ハラハラ、ドキドキ身体が持ちませんがな...この段階で陽性者が一人でも出たならば公演は中止。既に発注した大道具、小道具、衣装すべて無駄になり人件費も含めると大赤字になっちゃいます。そんなリスクを背負いながらの日々、ほんまにコロナちゃんいいかげんにしーやと言いたいところですが、欲塗れのニンゲンには徹底的に反省を促す勢いでございます。今日陰性が出たからといって安心は出来ません。明日以降にもメンバーの誰かが感染してしまったらアウトでございます。今日も新宿は相変わらず多くの人達が行き交っています。正直言ってどの顔にも危機感は感じられませんな。もう、政治家の意見なんて今や馬耳東風、だってあの総理のスポークスマンが辻褄合わないこと言ってるんだもん。「ランチはみんなと一緒に食べてもリスクが低いというわけではありません」どっちやねん!飲食店全店休業と言いたいところだが補償もせんといかんのですべて曖昧な言い回しでお茶を濁す始末。行ったり来たりの、ゆや~んゆよ~ん状態は今後も続くと思います。

ラグビートップリーグも延期、大相撲も横綱休場で貴景勝に期待がかかったんですが、ころころと土俵をころがっています。ちょいと太りすぎですな、なんだかロボットみてるみたい。

国民みんなが落ち込んでますんで、ここは颯爽と空気を変えるヒーローが出てきて欲しいもんでございます。

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冬の暮

2021/01/14
【第1433回】

綿引勝彦さんが亡くなりました...トムでは2009年に「逝った男の残したものは」に出演していただきました。あのこわもての顔とは裏腹に、とってもナイーブで優しい役者さんでした。舞台出身の役者さんだけあって芝居に対する厳しさも人一倍強いものがありました。今でも熊本の旅公演で、お酒を飲みながら馬刺しに舌鼓を打ってる嬉しそうな笑顔が忘れられません。悪役から優しいお父さん役までの幅広い演技は、綿引さんの一見人を寄せ付けない風貌を武器にしながら、しっかりと人間観察をしていたんだと思います。2008年にトム・プロジェクトが第43回紀伊国屋演劇賞団体賞を受賞した時に、奥様でもある樫山文枝さんも個人賞を受賞され、受賞会場で共に喜んだ日も良く覚えています。そして受賞から数日後、綿引さんから美しい花が送られてきました。デンドロビウムというラン科の花なんですが、なんとなんと毎年春の訪れとともに愛らしい花を咲かせてくれるんです。肥料も与えず水だけで11年間トムのベランダに今尚鎮座しております。その生命力、チカラ強さは綿引さんと同じだなとおいらなりに感心していました...なのに、逝ってしまったんですね。おいらと同学年であっただけに同時代の話も出来た人でした。でも、これだけ役者としての業績を残されれば悔いはなかったのではと思います。死して尚、綿引勝彦の生き方、演技は多くの人の記憶として刻まれ残ることも紛れもない事実です。

今日も綿引さんの笑顔を想い出しながら、会社のベランダのデンドロビウムに水をあげますね...本当にお疲れ様でした。

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おつかれさまでした

2021/01/12
【第1432回】

週末は不要不急の外出を控えました。こんな日は家で軽い体操をし、コーヒーを一杯。まずは新鮮なコーヒー豆を手廻しのミルでガリガリと豆が砕ける感触を味わいながら、立ち上がる芳しい香りに包まれる何とも心地よい良いひとときでスタート。この感覚を持ち得た時こそ、おいらも心のゆとりを持っているんだな~と実感するのでございます。次は抽出、ここはやはりネルドリップ、ネルフィルターを使うとコーヒー豆に含まれるオイル成分が多く抽出され、少しとろりとした滑らかな舌触りと豊かな芳香を楽しめるんですよ。挽きたての粉に湯が染み入り、コーヒー豆に含まれるガスが放出されて粉が膨張し、ふっくらと膨張する様がたまりません。こうして時間をかけて入れたコーヒーには、やはりそれに相応しいカップが必要ですね。琥珀色をしたコーヒーにはやはり白磁が似合いそうですね...あの魯山人も言っとります。「器は料理の着物」折角、心込めたコーヒーにもお似合いの器を用意してあげないと申し訳ありません。あとは、その日の気分にふさわしい音楽を聴きながらしみじみと手間暇かけたコーヒーを堪能するのでございます。

ここまで来たらアナログ世界に浸りましょう...レコードに針を落とし、知る人ぞ知るシャンソン歌手シャルル・デュモンなんていかがでしょう。エディット・ピアフとの繋がりが深い歌手なのだが、彼の深く語りかける唱を聴きながらのコーヒーは滋味深いひとときになること間違いありません。

てなことで、不要不急の有事をおいらなりに過ごしてみました。

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神さん頼みまっせ!

2021/01/08
【第1431回】

緊急事態宣言発令...どんよりと疲れ切った眼で相変わらず原稿を読みながらの頼りない姿。これがこの国の政治の現状を象徴しています。この有事に国会を閉め、当たり前のように給料、賞与をもらってるあんたら恥ずかしいと思いません?これは与党も野党も同罪です。市井の人達はコロナ禍の中、必死で生きてます。医療関係者は命懸けなんです。なのに議員は4人までの飲食にしましょうなんてルール作りに頭を悩ましています。ほんまにアホですバイ。コロナが発生してから1年間何やってたんでしょうかね...ムニャムニャ幹事長に忖度し又もや振り出しに戻りました。もはや、政治家の意見なんて聞く耳を持たず、今日も相変わらず繁華街では危機感を持たずちんたらしている人も随分見受けられます。今日から20時閉店なので昼間から密に飲んでる人達が居るのも事実です。ここまできたら一人一人の自覚に希望を持つしかありません。飲食店も大変でしょうが、おいら芝居屋も、タクシーの運転手も、介護施設も、衣料店などなどすべて必死豆炭でございます。飲食店一律1日6万円保障というのもなんだか大雑把でしっくりきません。一人で5,6人しか入らない店なんかは得したなんて言っとります。一事が万事、なにを信じていいやら?本当に情けない。でも、そんな政治にしたのも国民の政治に対する無関心から生じたことなんですよ!そのことを肝に銘じない限りこの弛んだ状況は一向に変わりません。取り敢えずは、次回の選挙で今ここにある危機に対してハッキリとした意思表示するしかありませんね。

今日も23日の初日に向けて「モンテンルパ」の稽古に励んでいます。何とか観客の皆さんが安心して芝居を観れる環境になって欲しいと願うばかりです。

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今日の新宿西口の夕景

2021/01/06
【第1430回】

年末年始、久しぶりに自宅で「男はつらいよ」を3本ばかり観ました。改めて渥美清という役者の凄さを再認識した次第です。演技は間が命です...間は魔と同義、上手い役者はおしなべて間がいいのでございます。そしてリズム感、立て板に水を流すが如くのテンポ、そしてアーティキュレーションの良さ、聴いてる人はまるで音楽を楽しんでいる心地よさを感じてしまいます。このしゃべくりに完全にはまってしまう。そして一度観たら忘れることが出来ない顔立ち、細く小さな目であるのだが実に細やかに演じているのには恐れ入りました。まさしく、目は口ほどに物を言うことを見事に体現していました。そして、彼の実人生で体験した蓄積が芝居のあちこちに見え隠れしていました。若い頃の肺結核、浅草のストリップ劇場の下積みなどなど、病と闘いながらも人間の営みをしっかりと観察し自分の身体に蓄積していったに違いありません。何度も言いますが、役者は生き方そのものがありのままに現れる恐ろしい生業でございますから心して日々の生活をなさってくださいまし。

この「男はつらいよ」ほとんど観ているのだが、話はいつもの流れ、しかしこの映画が長く継続されたのは昔の良き日本の風情をこれでもかと描いてるところかな。そして家族に対する深い愛情、分かっちゃ居るけど思わずホロリとさせちゃいます。日本人の欲する真髄を憎たらし程心得ている山田洋次監督...おいらはこの監督の作為的なとことは昔から疑ってかかってはいるのだが、まあ映画はあくまでも娯楽なんですから、ここまでヒットさせる有能な職業監督であることは認めています。この監督よりも、同時代を生き昨年亡くなった森崎東監督の方が好きです。この「男はつらいよ」最初の原案は森崎東さんだったんですよ...この監督の描く人間像が、骨太で愚鈍で正直で不器用なところが信じられるから好きなんです。

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今日の冬空

2021/01/04
【第1429回】

あけましておめでとうございます。

 

新しい年が始まりましたが、コロナ感染が収束する気配はありません。今日も頼りにならない政府は緊急事態宣言を出すかどうかの議論が続いています。トムも今日から1月23日からの公演「モンテンルパ」の稽古再開です。トムは勿論、キャスト、スタッフ、そして観劇を予定されてるお客様の不安が高まる中でのスタートになりました。トムとしては劇場が封鎖されない限り、前向きに初日に向かって全力で走り続けたいと思っています。

年末年始、おいらはどこにも行かずのんびりしていましたが、たまにテレビを観ると正月恒例の福袋に、箱根駅伝の応援にワンサカ人の波...ここまで来たら、人はコロナに、もはや諦観の域に達しているのか、それとも己の我欲に支配されての行動なのか、この国の曖昧さの特性がそのまま表現されてる気がします。以前から言われているコロナによる死と、経済による死、この狭間で国も民衆も揺れ動いている1年だった気がします。このスポンジみたいな在り方は平和な時代にはとても有効な気がしますが、非常時においては有効な手段にはなり得ないのではないか...やはり、この国には秀でたリーダーが不在なのがまたしても浮き彫りになった。でも、そんな他人様のことを論評してても埒があきません。

演劇を生業にしてるおいらとしては、今年もあらゆるリスクを背負いながらも、何とか芝居の魅力を全国各地に届けることだと思っています。昨年の年末に公演した「砦」に参加したキャスト、スタッフ、観客の胸に迫る思いこそが芝居の醍醐味だと改めて確信したからこそ、今年も張り切ってやりまっせ!何卒、よろしくお願いいたします。

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今年は良い年に!

2020/12/28
【第1428回】

昨日、無事「砦」東京公演の千秋楽を迎えることが出来ました。本当に嬉しいです!9月にやっと再開できた「百枚めの写真」以降、コロナの感染状況を見極めながら、いつ中止になるかハラハラドキドキの日々でございました。トムの社員、キャスト、スタッフも同じ心境だったと思います。もしや自分が感染してしまったら公演中止?なんて考えると自ずから日々の行動に制限が掛かってしまいます。その至難を乗り越え事故もなく全公演を成し得たことに感謝です。勿論、トムの芝居を呼んで頂いた演劇鑑賞会、市民劇場の方々のチカラがあってこその4ヶ月でした。改めて、芝居の神様が私達を見守ってくれたんだなとも思います。芝居の神様は厳しい神さんですが、ひたむきに芝居に向けて全身全霊を傾けている輩には必ず手を差し伸べてくれます。その反面、いい加減な輩には、かなり手厳しいと聞いております。

昨日のラストステージ、5人の役者の人間に対する愛しいほどの愛情が溢れていました。

今年は、コロナに尽きます。これも人間の所業から生まれたウイルスだと思います。人間ほど傲慢な生き物はいない...己がやってきたことには己で解決しかありません。もう一度、今の世界の現状に厳しいメスを入れ、人が人としてまっとうに生きられる世の中に戻さないと取り返しのつかないことになってしまうに違いない。一人一人が心してこのことに真摯に向き合い、新しい年を迎えて欲しい!自戒の念も込めてでございます。

今日が仕事納め...一年間本当にありがとうございました。

2021年は良い年にしたいですね!

では、皆さん安全で楽しい年末、年始をお過ごしください。

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2020年
ありがとう~さようなら

2020/12/25
【第1427回】

昨日、無事に「砦」東京公演の初日を迎えることが出来ました...東京で過去最高888人のコロナ感染者が出たとのニュースが流れ、あちゃ!と思ったのだがキャンセルも1人で済み、逆に当日券も出ましてほっといたしました。久しぶりに観る「砦」なかなかいい仕上がりになっていました。中国地区の市民劇場の方々の温かい激励と支援が大きな励みとなり、キャストの皆さんの演技の質が更に向上したと感じました。まさしく芝居は観客に育てられ成長するものだと再認識した次第です。高齢者である、村井さん藤田さんの年齢を感じさせない気迫に満ちた立ち姿に役者魂を見せつけられる思いです。人間歳なんて関係ありません。

あの幻の詩人サムエル・ウルマンの言葉を思い出します。

 

青春とは、人生の一時期のことではなく、心のあり方のことだ。
若くあるためには、創造力・強い意志・情熱・勇気が必要であり、
安易に就こうとする心を、叱咤する冒険への希求がなければならない。

人間は年齢を重ねた時老いるのではない。
理想をなくした時老いるのである。

 

原口、浅井、滝沢、三人の役者さんもベテランの二人を見事にサポートしています。この芝居の意図を見事に理解し、この芝居の伴奏者の役割を十分に果たしていると思います。主旋律と副旋律が見事に調和して、この芝居のテーマである気骨と優しさを生み出してる。

あと3ステージ、無事に終えることを祈るのみです。

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Merry Christmas

2020/12/22
【第1426回】

昨日、来月上演する「モンテンルパ」の稽古が始まりました...大和田獏さん、島田歌穂さん、はじめ出演者全員が元気な姿で稽古場に来ました。シライケイタさんはトムでは初めての作・演出です。膨大な資料の中からどこにフォーカスを当てるか、どのように構成し、限られた時間の中でいかに人間ドラマにしていくかなどなど、劇作家の作業は試行錯誤の中から生み出されて行きます。台詞だけで文字を埋めていく作業は、他のジャンルの作品と比べても格段に難しい分野だと思います。ただ書き込めばいいというものではなく、台詞の中に秘められたニュアンスこそが命です。あーでした、こーでしたでは説明台詞になってしまい、本読めばいいじゃん!なんてことになりますから劇作家の苦労は並大抵のものではありません。その命を削って書かれた台詞に、血肉を付けていく作業が役者の仕事です。言葉をまっさらなまな板に載せ、いかに調理していくか?ここが役者の感性、力量が問われるところであります。昨日の初めての本読みとても新鮮でした...ここからの一歩から、初日に向かう過程は、赤子が一人前の人間に成長するもう一つの物語です。

そして、今週24日から「砦」東京公演の幕が開きます。感染が止まらないコロナとの戦いでもあります。先日、キャスト、スタッフ、トムの社員で受けたPCR検査、全員陰性でした。さあやるぞ!と気勢は上がってはいるんですが、なんとかコロナちゃん収まってくんろ...と祈るばかりでございます。

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冬至

2020/12/18
【第1425回】

不要不急の外出自粛の中『1917 命をかけた伝令』を鑑賞。本年度アカデミー賞にて撮影賞など3部門で受賞した名匠サム・メンデス監督の作品。第一次世界大戦のなかドイツ軍と戦うイギリス、フランス連合軍が、陣地を撤退したドイツ軍を追撃する部隊に重要な伝令を伝えに行くイギリス兵士の話。いやはや危険な戦争地帯を兵士と一緒に歩いている緊張感がたまりませんでした。シンプルなストーリーなんだが、全場面ワンカットのような撮影が効果を発揮し、主人公の心理に同化していく展開に感服した次第。主人公の目線がそのままカメラになりきっており、しかも情景を巧みに変化させる手法は、監督サム・メンデスが優れた映画監督であると同時に、トニー賞受賞の名舞台演出家であることでわかりました。演劇的な映画であるからこそリアリティがあるんですね。芝居も嘘はすぐわかります...丁寧に一つ一つを積み重ねてこその表現であることは映画も芝居も変わりません。おいらとしては韓国映画「パラサイト」よりもこの作品の方が作品賞に相応しいと思いました。

それにしても、昨日の東京のコロナ感染者822人、全国3207人いずれも過去の感染者数を更新、なのにモグモグ幹事長、昨日も今日も忘年会を予定してたんだって...医療関係者、様々な民間業者大変な思いをしてるのに、これら政治家の皆さんはじめ、公務員の方々は給料が下がるわけでもなし、とりあえず生活基盤は保証されてるんですね。しかも国民の血税で...こんな責任感、使命感のない政治家に呆れ、怒りを通り越して絶望に近い思いを抱いている人たちが沢山いるんじゃないかしら...こんな非常識極まりない有体でも暴動が起こらない起こさない日本国民、あらためて本当に優しいですね。

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冬の青空

2020/12/16
【第1424回】

今日も寒いです...今飛び込んだニュース、東京都によると、16日に都が確認した新型コロナウイルスの感染者は678人、1日の感染者としては過去最多を更新しました。来週に「砦」の公演を控えているトムとしてはひやひやもんでございます。がしかし、劇場の観客席は安全なところです。普段の席を半分にして、検温、消毒も完璧にしてますし、マスク着用で会話をすることもないし感染率は低いと思っています。勿論、キャスト・スタッフはPCR検査で陰性を確認して舞台に臨んでいます。

様々な分野で国の援助を受けてますが、やはりアート分野への助成は非常に薄いと思っています...まずは衣食住を重視するのは当然ですが、アートがのびやかに羽を伸ばしてる社会には希望があります。こんな時こそ、コロナで疲弊した心身を癒やそうではありませんか!と提言したい。確かに不要不急の外出を控えるに越したことはありませんが、生の舞台には、困難な状況に一筋の光明を見いだすことがあります。と言っても、この状況、どうしてもと言えないところがもどかしい。

それにしても、ガースーちゃんの忘年会は驚きましたな。Go Toトラベル キャンペーン一時停止発表直後に飲み会やるんですから、大した度胸してますな...肝心なところで、その度胸を発揮せんと最後は笑いものになっちゃいますがな。

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井の頭公園

2020/12/14
【第1423回】

いよいよ寒波がやってきました...寒さはまだしも、やはりコロナが心配です。それにしても菅義偉首相が11日のインターネット番組で「ガースーです。よろしくお願い申し上げます」と自己紹介したことにはアチャー。コロナで失業した人、お店を廃業した人、医療従事者や介護従事者等感染のリスクを負いながらも懸命に働いている人達はどんな気持で聞いたんでしょう...この人、陰で上手く立ち振る舞うのは巧みなんだろうけどトップは無理だね。

今日、割烹中嶋でいつもの鰯の刺身を食べて後、隣のビルにある新宿ビームスジャパンの1階を覗くと「新宿ゴールデン街」なんて看板が掛かってるではないか...なんだろうと思って入ってみると、なんと「桂」「まえだ」のネオンがキラキラしている。このお店のオーナーは既になくなっている。ゴールデン街の名物ママとマスターの店であった。半世紀前の「まえだ」には当時名だたる作家、映画監督、俳優が夜毎来店していた。業界では先生とちやほやされていたのだが、まえだのママの前では罵声と怒号でおとなしくしていた。佐賀出身のママの「なんばえらそうにしとうとか!」の威勢のいい声が今でも耳に焼き附いている。四国出身の中島ちゃんがやっていた「桂」も美空ひばりをはじめ、大物芸能人が出入りしてた店であった。食べ物は乾きもんだけ、野球帽をちょいとずらして被ったマスターは映画、演劇をこよなく愛しているのだが毒舌のあまり客との諍いが絶えなかった。ご機嫌の時は雑然と積まれたEPレコードのなかから、石川セリ「八月の濡れた砂」を良く掛けていた。当然の如く針飛び、擦れ音も味の内、場末の飲み屋によく似合っていました。

コロナ禍で苦戦している新宿ゴールデン街、二人の先輩は心配のあまり天国でも安心して飲めない日が続いているんではなかろうかと心配しとります...

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なつかしか...

2020/12/11
【第1422回】

11月6日の相模原演劇鑑賞会から始まった「砦」の公演、今日、広島市民劇場で無事終えることが出来ました。このコロナ禍のなか25ステージ、感慨深いものがあります...連日感染者数の数が更新される度に、もしや?なんて不安がよぎり緊張を強いられる日々でございました。今回の旅「砦」に関わった人達に唯々感謝あるのみです。おいらも最後の広島公演に行く予定だったんですが中止することにしました。出来るだけリスクを避けることを考え行動することしか手が打てない状態です...ほんなごつ市井の人達は努力してるのに、あの小池のおばちゃんにはまいりましたね。「ひきしめよう」の6文字を使った標語で警戒を呼びかけ得意げに説明しとりました。言葉遊びしてる余裕なんかありませんよ!以前にも「5つの小(こ)」なんてこと言ってました。あんたこそ、ひきしめなさいよ!と言いたい。首相は相変わらず、全国旅行業協会会長(Go To キャンペーン推進者)2F幹事長に忖度してキャンペーンを止めることが出来ず、お目々が死んどりますがな。

本当に困ったもんでございます。いつの世も、国家なんぞは頼りにしちゃなりません...自分の身は自分で守るしかないということですな。

さて、今年最後の公演「砦」、12月24日~27日まで「すみだパークシアター」で上演します。コロナコロナで振り回された一年、なんとか有終の美を飾りたいものでございます。

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今年も見事なメタセコイア

2020/12/09
【第1421回】

昨日から「砦」の公演、広島に入り呉市市民劇場を無事終えることが出来ました。今日から広島市民劇場の3ステージを残すのみ...全国で感染が拡がる中、毎日ハラハラ、ドキドキ、まさしく針のむしろ状態でございます。芝居に限らず、こんな心境で皆さん過ごしているんではなかろうか...大阪、旭川なんぞは自衛隊看護師派遣を要請、えらいことになっています。策士幹事長の睨みが怖くて、日々与えられた文書を読み上げるトップで大丈夫なんでしょうかね?なんだかこの重荷から一刻も早く逃れたいなんて気持に見えますぞ。

それに比べて、一昨日の新庄剛志選手のプロ野球トライアウトは見事でございました。現役を引退して15年振りにプロ野球選手をやりたいという志にあっぱれ!トライアウトに臨んだ新庄選手の体つき表情、とても48歳には見えません。「自身自身がしっかりとした野球のスタイルを見せたいと、自然とこうなった」男やると決めたらこうじゃないといけませんな。はつらつとしてプレーもまるで高校球児みたいに見えましたし、プロで活躍しただけあって華がありました。最終打席にヒットも打ち「楽しいね。打席に立ったとき野球をやっているという気になれた。小学校の時、空き地で野球をやっている気持ちやったね」男はいつだって少年の気持ちを持ち続けたいもんでございます。

おいらも少年時代に、博多のガラの広っぱで白球を追いかけた必死豆炭なトキメキ、いまでもハッキリ、クッキリ覚えていますよ。

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まだまだ燃えとりますばい!

2020/12/07
【第1420回】

先週の週末、劇団桟敷童子の今年初めての公演に行ってきました...今回の芝居は「花トナレ」いつもながらの東ワールド満載です。スカイツリーのすぐ近くにあるこの小屋は、鈴木興産という会社が持っていた倉庫の一部を劇場にしたものです。旧劇場から場所を移し、「すみだパークシアター倉(そう)」と改め、今回はこけら落とし公演というわけです。少し小ぶりになった分、この劇団の見せ場である大仕掛けも縮小せざるをえなかったかなと思いました。でも、劇団員全員による手作りの装置、衣装、小道具からこの劇団の心意気、芝居に対する真摯な愛を感じました。会場もコロナ対策として一席をあけての対応でした。これは制作する側にとっては経済的に大きな痛手です。生活を切り詰めながらも芝居に命を掛ける!なんだか、おいらの若い頃の小劇場命みたいな生き方を彷彿とさせる姿なんですが、器用に無難に生きる若者が多数を占める現代においては、とっても貴重な気がします。人生、出世、お金には代え難い大切なことがあるんでございますよ...

昨日は、関東大学ラグビー対抗戦の優勝を決める早稲田と明治の試合をテレビ観戦しました。おいらのスポーツ年間スケジュールは、野球が終わればラグビーに移行します。このラグビーという競技はなかなか味わい深いものがあります。基本は格闘技に近いものだと思うのだが、ゲームの展開は幾何学的な面白さを感じます。コロナの現況において、これほど3密な試合が開催されてるのも興味深い。試合は明治の総合力が勝り快勝。今年で96回目の対抗戦、100年近くライバルとして切磋琢磨してきた歴史が、この早明戦を年末の楽しみなイベントにしていると思います。

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夕暮れのスカイツリー

2020/12/04
【第1419回】

長い間お疲れ様でした...ばっさり切られた桜の切り株を眺めながら桜の一生を考えてしまいました。一年に一度見事な花を咲かせ、春の喜びを感じさせるサクラ君。君のお陰で寒い冬の間、縮こまった心身を一気に解放させてくれましたね。サクラの開花を待つ期間の高揚感もたまりません...蕾を日々観察する様は、まるで子供の成長を見る思いと一緒の気持でございます。咲き始め、周りを徐々にピンク色で染め上げていく様もなかなかドラマチックで、下手な芝居なんかより見応えがございます。大見得を切るが如くの満開はまさに千両役者、よう日本一!と掛け声をかけたいくらいです。そして散りゆく姿も、ほんまに美しゅうございます。チラチラと、虚空を舞う姿は、まるで能舞台を観てるような見事な艶者を演じています。そして、その後、葉を付け緑の館を形成していきます。

おいらの大好きな絵本、シェル・シルヴァスタイン「おおきな木」リンゴの木と、成長し変わっていく少年。それでも木は、少年に惜しみない愛を与え続ける...無償の愛を描いた絵本です。

自然が黙々と無償の愛を与え続けていることにニンゲンはどれほど気がついているのかな?切られたばかりの切り株に手を置き、思わずありがとう!

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おつかれさま...ありがとう!

2020/12/02
【第1418回】

今日は1月並みの寒さ、冬は確実に訪れています。前回は乱読の話を書きましたが、音の世界でも同じ楽しみができますね。大好きなJAZZから始まり、クラシック、ボサノバ、ロック、フラメンコ、ファドと世界一周旅行がいとも簡単にできちゃいます...昨日なんぞはラストはフォークソング加川良で締めました。スタートはJAZZのビージー・アデール、大人の年輪を重ねたピアノの音色がワインにとっても合います。何でもそうなんですが奏者の人生が垣間見える音って何とも味わい深い気がします。そこに身をゆだねることの幸せを感じてしまいますね。この女性に並ぶのがエディ・ ヒギンズ、このお洒落な音を醸し出すCD数え切れないほど聴きました。思わず酒が進んじゃいます...同じピアノの音でも男性と女性では微妙に違うところも面白いところです。さて、次にスペインに行ってみるか!とフラメンコの世界に飛び立ちカマロンの渋い声を耳にした途端、おいらの気分はビバ!フラメンコ。思わず手足が動き出し、心はアンダルシア・グラナダのサクラモンテの丘(ジプシーが洞窟の中でフラメンコショーをやっているところ)でございます。

こうやって日々ステイホームを楽しんでいます。

今日は乱読ならぬ乱聴の話でございました。

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師走

2020/11/30
【第1417回】

今日で11月も終わり...明日から師走だ。まだ一年を総括するには早いと思うが、いやはやコロナに翻弄される日々であった。芝居はもちろん飲食、ファッションどれもこれも綱渡りの営み、仕事を無くし路頭に迷う人びとを新宿でもチラホラ見かける。少し前までは会社のお偉いさんだったであろうオヤジさんも、顔色も優れず道行く人達をうつろな眼差しで見つめている。もちろんマスクなんぞはしていない。新宿南口駅前では、40代くらいのホームレスの男性に20代の女性がなにやら話しかけていた。慰めているのか?激励しているのか?悩み相談なのか?分からないがなんとなく親身に会話をしている姿が微笑ましい。

公園では、暫し家族連れが子供と一緒に遊んでいる。3密を避けられる唯一の遊び場である。

不要不急の外出はしないように!と連呼しながらも今日、自民党はGoTo来年GWまで延長なんてことをのたまっております。

「医療従事者です。もう重症者のベッドがありません。緊急手術も重症の救急搬送も受け入れられません。これは医療崩壊です。この期に及んでまだGo toのことしか考えられないとは...唖然です。」

この悲痛なる叫びを無視する政治屋、開いた口が塞がりません。

こんな時こそ、知の旅をしなければといろんなジャンルの本を読みまくっています。乱読も楽し!コロナなんかも近寄ってこないかもね...

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燃ゆる秋5

2020/11/27
【第1416回】

日毎にコロナの波がひたひたと迫ってきています...先程、東京のコロナ感染者が発表されました。570人の陽性者数に重症者数が61名、どちらも過去最多。政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身会長も「人々の個人の努力に頼るステージは過ぎた」と断言しました。なのに、この国はGo Toトラベル事業のメンツに拘り止めようとしません。これじゃ目に見えて拡大するのは自明の理でございます。経済とコロナという二つの両輪を程よく回すことが出来ればいいのだが、そうは上手くいかないところがコロナの怖さです。最も疲弊している人たちは医療現場の人たちだと思います。Go To事業にも参加できず休日なしの戦いを強いられています。しかも多くのリスクを背負いながらの日々、この人達のことを第一に考えないと大変なことになっちゃいます。菅総理の生気のないうつろな眼差しがとても気になります。この非常事態に大胆な手を打てないというより、この時期には相応しくない人かなと同情さえしちゃいます。嘗ての小泉のオッサンみたいな決断力が必要なのかもしれません(この人もよう分からんところありますが...今頃、原発反対の全国行脚をやってますが、自分がトップの時にやらんかい!)いやいや、政治屋さんもいろんな企業との癒着もあるんで、残念ながらそう簡単に国民の声に耳を傾けるのも難しいとは思いますね。

そんななか今日も岡山市での「砦」の公演無事に終えることが出来ました...ほんまにしんどい日々でございます。コロナの輩はどんな顔してこの惑星を眺めているんだろう?きっと地球に存在する無数のわからずやにお灸を据えようとしてるんじゃないだろうか...この非常時に何とか新しい価値観を生み出さないと地球も燃え尽きちゃいますがな。まさしくコロナに試されてる人類でございます。

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燃ゆる秋4

2020/11/26
【第1415回】

なんだろか...今年の日本シリーズあっけなく終わりました。パリーグとセリーグまるで一軍と二軍の差がありましたね。セリーグで本塁打と打点の二冠を取った選手がまるっきりダメ、一昨日なんぞは、あわやノーヒットノーランになりそうな展開。まるで話にもなりません。これじゃパリーグだけで日本選手権やった方がまだ面白い試合になったんじゃないかな?ここまで力の差が歴然とするなんてセリーグも真剣に考えなきゃ不味いんじゃないかしらと思ってしまいます。昔から人気のセ、実力のパなんて言われ続けてきましたが、ここまでくるとあんぐりでございます。以前、読売のナベツネが画策して一リーグにしようとした事件がありましたが、こんな野球をなめた姿勢があるから今日の巨人があるんですぞ...まあ、ソフトバンクも巨人も金満まみれの球団で好きではないけれど、一昨日のソフトバンクのベテラン長谷川選手が、チャンスに間一髪でヘッドスライディングしながらもアウトになり塁上で悔しながらグランドの土を拳で叩く姿を見るにつけ、ソフトバンクの強さを見せつけられる思いがしました。何事においても全身全霊を傾ける姿勢こそ観るものを感動させるんでございます。今年の日本シリーズの秀逸なシーンでした。

来年こそ、我がライオンズ日本シリーズに出場してくださいな!と心は、はや来春の開幕を待ちわびています。

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燃ゆる秋3

2020/11/24
【第1414回】

3連休明け、日本のコロナ感染状況大変なことになっています。国のGo To Travel キャンペーンで煽りに煽ってあわててブレーキ、なんともお粗末でございます。我慢して居た人達が観光地に溢れかえっていました。これからの感染者の増大を予感させる映像がTVに流れていました。経済も勿論大事ですが、この国の政治、行政には想像力があまりにも欠如していて不安が募るばかり...新型コロナウイルスをめぐり、西村経済再生担当大臣が今後の感染者数の動向について、「神のみぞ知る」の発言、呆れてしまいますな。この発言がおおむね、この国の指導者に共通している認識ではなかろうか。

アメリカから送られた映像もショックでしたな...日々死者が増えてる中、南部テキサス州エルパソでは1100人以上が入院。9月初頭の9倍にあたり、死亡者も増え続けているなか、検視官事務所などから遺体を搬送する人手が足りず、近隣の刑務所から軽犯罪の受刑者らを募り、1時間2ドル(約208円)で作業に当たらせている。受刑者も命懸けの作業である。こんな中、トランプは連日ゴルフ三昧。アメリカも異常な状況である。

こんななか「砦」の公演、今日も無事に岡山で終えることが出来ました。日々、コロナとの戦いのなか奮闘しているキャスト・スタッフの皆さんお疲れ様です。そして万全の体制の中、公演を実施して頂いてる中国ブロックの演劇鑑賞会、市民劇場の皆さんに感謝です。

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燃ゆる秋2

2020/11/19
【第1413回】

秋の心地よい日々が続く中、又もやコロナの感染が増え始めました...なのに、先日オリンピックのバッハIOC会長が来日し、来年の東京オリンピック是非実現しましょう!なんてこと首相、知事ともども気炎を揚げておりました。オリンピックがアメリカを中心とした一部の人たちによる商業オリンピックと言われて数十年経ちます。今回も何としても実現したいという意欲の裏に胡散臭さが見え隠れします。世界でこれだけ拡散した現状からみて開催は無理というのが常識ではなかろうか。島国である我が国は、異国からのウイルスを辛うじて防いでいるのに、様々な人種が大挙押し寄せた時の恐怖を想像しただけでもぞっとします。

今の政府のコロナ対策もなんだか無責任な気がしてなりません。個人の日常生活の注意を呼びかけるだけで、国としての指針は具体性がなく丸投げ状態に等しい。確かに経済も大切なのだが、後手に回った時には取り返しがつかない状況が待っています...先週、今週と劇場に足を運んだのですが主催者、観客ともども不安の中での公演だったと思います。おいらが思うには、お店の飲食のお喋りと違い会話することなしの観劇のリスクはそう高くないとは思います。検温、消毒、間隔を取った席、最善の対策で実施している現況では、今のところ関係者の努力で上手くいっているみたいです。

「砦」中国地方の公演、昨日で無事6公演終えることが出来ました。12月27日の東京千秋楽の日までなんとか乗り切っていきたいと思っています。

今日もコロナ感染者、東京534人の報が流れています。「どこまで続くぬかるみぞ」日中戦争で、日本の兵隊さんは鉄砲かついで徒歩で中国大陸を駆けめぐって戦ったときに歌った軍歌。まさしくコロナとの闘いの日々でございます。

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燃ゆる秋

2020/11/16
【第1412回】

コロナ禍のなか、皆が考えるのが公園でのひとときです。相当の密にならなければ、青空の下家族連れでお金もかからず快適に過ごすことが出来ます。遊具器はあるし、飛び跳ね出来ストレス発散にはもってこいの場所です。周りの木々も鮮やかな彩りで歓迎ムード、しばしコロナを忘れさせてくれます。杉並区にある善福寺緑地は善福寺川に沿って幾つもの公園が点在し区民にとっての憩いの場であり、春の桜、秋の紅葉は見事です。歩いても良し、自転車で快走するも良し、老若男女がほんまに気持ちよさそうにしとります。生きてるからこそ、今年も又この風景を堪能できるんでございます...コロナなんかに負けてなるものか!川に沿って居並ぶ逞しい樹木の声援を頂きながら皆活き活きした表情。いつもながら自然の力で、ひ弱なニンゲンは助けられてますな...

中国地方の旅に出かけた「砦」チーム。昨日で無事4公演を終えることが出来ました。各地で評判も良さそうです。この全国のコロナ感染状況から言えば、中国地方の方が安全なのかも知れませんね...こちらは感染数の多い東京からの出張組なんで恐縮しちゃいます。より慎重な行動が求められますね...と言っても、ホテル缶詰状態というのもストレス溜まるし、最善の注意を計りながらの旅公演を楽しんでくださいね!

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善福寺緑地 和田堀公園

2020/11/13
【第1411回】

大竹しのぶさんが演じる「女の一生」新橋演舞場に行ってきました。勿論、風間杜夫ちゃんが出演していたので...新橋演舞場のコロナ対策完璧でした。検温、手指の消毒、チケットは自分で切る、そしてこれらの商業演劇の施設で大切な館内での飲食が一切禁止されているのにはビックリ!劇場にとっての飲食は公演中の大きな売り上げ、これが廃止されることは大変な打撃です。ましてや、席数も半分に減らし松竹さんも苦渋の選択であったと思います。もしや、自分の劇場から感染者が出たらとの強い責任感からの判断でしょう。

芝居は文学座の名女優であった杉村春子さんの当たり役を大竹さんが挑戦したという企画。

皆さんそれぞれ、明治から昭和に至る40年間の時代の役作りに苦労されたのではと感じました。その中でも新派のベテラン俳優、森本健介さんの職人役は絶品でした。少しの出番なんだが、彼が出てきただけであの時代の空気を感じさせてくれんですから、これぞまさしく芸でございます。新派という集団が長い間培ってきた明治、大正、昭和という匂いを芸として成立させるための研鑽に唯々拍手を送りたい。芸なんてもの一朝一夕で出来るもんでございません。森本さんの日々の日常の生き方まで想像できそうな見事な芝居でした。

杜夫ちゃんは余裕の演技で楽しんでいました...役者は舞台に立ってなんぼのもん!今年初めての舞台、感慨もひとしおではなかったかと思います。

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ツワブキの花言葉
(困難に負けない)

2020/11/11
【第1410回】

コロナ禍のなか、唯一楽しましてくれるのが日ごとに微妙な色合いで変化していく樹々の葉色です。毎年、紅葉の時期が違うのも気候変動のせいだと思います。新宿街中の紅葉も随分と遅くなってきてます。地球温暖化に輪をかけるような排気ガスの量が街路樹に多大な影響を与えていることも紛れもない事実です。それにしても、あれほど繊細な彩を創りだす樹木はアーチスト顔負け、いや偉大なる芸術家です。人間の創作に欠かせないのが、自然が織り成す壮大な営みであり、この自然界こそが芸術家たちの師匠です。

コロナ、確かに感染者増えてますが、マスク、手洗い、うがいの徹底、そして飲食店での大騒ぎを回避すれば何とか感性拡大は防げるんではないかと思っています。新宿の街中のほとんどのお店には消毒液が置かれています。入店するたびに手を差し出しているのだが、逆にこちらの液の方が害になるんじゃないかしら?なんて心配してしまいます。

それにしてもトランプのおっちゃん、アメリカの膨大なコロナ感染にも拘らずゴルフ三昧。敗北宣言もせず徹底抗戦、いやいやこの独裁、独善に閉塞した状況に狂喜乱舞した人が選挙人の半分居たなんて...確かに世界の歯車が狂い始めていますね。

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今日の作品

2020/11/09
【第1409回】

2回目のコロナウイルスPCR検査、キャスト・スタッフ全員陰性となり先週の金曜日、本格的に「砦」の公演をスタートしました。神奈川県相模原市にある相模原演劇鑑賞会さんに呼んで頂いた公演です。このコロナ禍のなか、会員さんも減少し全国の鑑賞会団体の皆さんも苦渋の思いをされていると思います。芝居が大好きなのに三蜜NGなんて言われたら演劇そのものが否定されてるようなもんでございます。次の土曜日にも、ふたくちつよしさんの作・演出の「霞はれたら」を東演パラータに行ったのだが、こちらは小劇場にも拘らず満杯のお客が入っており、嬉しいやら怖いやら複雑な心境でございました...こうやって少しずつ芝居の公演も増えつつあるのですが、またまた感染増加の報が出るたびに不安が過ってしまいます。こちらは万全の体制で予防に努めているのですが、お客様がより警戒し劇場に足を運ぶことに躊躇されるのが心配です。劇場でクラスター発生なんてことになったらそれこそ劇場の死に繋がりかねないかもしれません。

相模原の終演後、カーテンコールで多くの会員さんが「待ってました!」「ありがとう!」などなどお礼の手作りプラカードを掲げている様子が感動的でした。

芝居を待ってる人たちのためにも、改めてコロナごときで演劇の灯は消してはならないと思った次第でございます。

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青空と薔薇

2020/11/06
【第1408回】

アメリカ大統領選挙、えらいことになってますな...今朝のトランプのオッちゃんの会見、元気なかったです。なんだか演技してる風にも見えましたが、普段触らないドアに触れたり、いつもの力強さを極力抑えてのしょんぼり顔がなんとも微妙。もしや落選すると脱税も含め様々な罪に問われる不安を抱えながらの会見だったかも知れません。それにしても、このオッさんの出現で自由なアメリカが分裂状態に陥ったことは確かです。過去の歴史を検証してみても、世の中が不穏な情勢になったときに独裁者が出現し国民が熱狂するという構図は度々見られました。それがエスカレートして戦争が起き、不幸な出来事が重なったことを思えば、もっと冷静にならないといけないと思いますが、どうしても感情が理性を上回ってしまうんでしょうね。一方、バイデンのおじいちゃん、さすがにお歳を召しているのですが副大統領候補カマラ・ハリス上院議員(56歳)が何とも魅力的である。ハリス氏の父親はジャマイカ、母親はインドから米国に来た移民だ。両親とハリス氏自身の人生は、ある意味でアメリカンドリームの体現。アメリカ初の女性大統領の夢に向かってのステップとしてのバイデンの立候補だったのかも知れません。これからの時代、日本も含めてオヤジがリーダーになる時代じゃありません...世襲、忖度うんざりです。女性も含めて知性と行動力がある若い世代に任せるべきだと思います。今回のアメリカ大統領選挙もオッさんが争ってる場合じゃありませんことよ。日本の国会も開会しましたが、予算委員会、相変わらず役人が書いた答弁を棒読みしてばかりでうんざりです...いい加減、若い人たちに道を譲ってくださいな。

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ヤブミョウガの実

2020/11/04
【第1407回】

週明け久しぶりに下北沢の小劇場に足を運びました。厳重なチェックのもと劇場に入りましたが、客席の会話もなく少々緊張気味な開演待ちでした。今回の芝居は名取事務所制作の現代韓国演劇「少年Bが住む家」、殺人を犯した息子と、その家族の物語。この芝居にトム・プロジェクト所属の森川由樹が出演していました。新国立劇場演劇研修所を卒業しトムに入って8年、今では会社にとっても欠かせない女優の一人です。今回の芝居、由樹ちゃんピカピカに光ってました。表現って本当に難しいもんですね...最初の頃は若さを前面に出し勢いはあるのだが、その分、内面の微妙な心理が希薄な感じがしていました。その後、いろんなところから声が掛かり、他流試合を重ねて手にした蓄積の成果が今回の公演で如実に出ていたような気がします。芝居のポイントをしっかりと押さえる芝居が出来るようになればしめたものです。ラストの柿を食べるシーンは絶品でした。

終演後、プロデューサーである名取さんが「森川由樹さん一番良かったよ...」と声を掛けてくれました。俳優さんを預かり成長していく様を見続けるのもプロデューサー冥利に尽きますね。

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日一日と

2020/11/02
【第1406回】

先週の週末、横浜市歴史博物館に「俳優 緒形拳とその時代」の企画展に行ってきました。亡くなって12年になるんですね...20年前に劇作家北條秀司さんの鎌倉の自宅で、2年前に亡くなられた一人娘であった美知留さんに紹介されお会いしました。何気ない話をしていたんですが、緒形さんの芝居に対する執着を強く感じ一緒にやりましょうということになりました。水谷龍二作・演出「子供騙し」は2002年に本多劇場で初演を迎え、その後全国各地を巡演しました。緒形さんの存在感、そして役に対する飽くなき追及、日本を代表する俳優になった理由が良くわかりました。一言一言に含蓄があり、常に役者であるという強い矜持を感じました。笑顔はとっても可愛いのですが怖さも感じました。一茶を映画にしたいと言うことで、おいらに協力して欲しいと言うことで長野県白馬に同行させて頂きました。三泊四日のロケハンみたいな旅も緒形さんの人間性を垣間見ることが出来楽しい旅でした。

この企画展、新国劇時代使用の行李に始まり、舞台、テレビ、映画の台本、ポスター・パンフレット、自筆原稿、書簡、映画祭で受賞したトロフィや賞状などが展示されてました。おいらが好きなのは緒形さんの書画です。筆を手に真っ白な紙に向かう緒形さんの姿こそが、俳優という職業を精察する時間ではなかったのではなかろうか...

緒形さんが恥ずかしそうに「僕ね、この無骨な手が恥ずかしいんだよ...」おいらに、あの笑顔で話しかけた姿が今でも印象に残っています。己のコンプレックスを自覚し、無骨に努力する人にこそ豊かな人生をプレゼントしてくれるんですね。

この日は、久しぶりに緒形さんにお会いできた素敵な時間でした。

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久し振り...拳さん

2020/10/30
【第1405回】

国会も始まりましたね...それにしても、あのセメント屋のおやじどうにかならんかね。給付金貰った人、貯金出来ていいね!なんて能天気な戯言言っとります。こんな人が長々と大臣やってるんですから困ったもんでございます。あんたからお金貰ってるんじゃありませんよ。庶民が汗水たらした税金ですよ、何の苦労もなく議員になった貴方にはわからんでしょうな...そして映画「アバター」の登場人物によく似た議員さんの保釈金1500万円も税金ですよ。あの疑惑だらけの選挙中に、ライバル候補を落選させるために党から支給された1億5千万の一部に違いありません。こんなアホな議員たちに血税が注がれるなんて、何とも理不尽極まりない。国会の代表質問、質問、答弁も用意された紙を読んでるだけ、わざわざ集まって開く必要あるのかな...予算委員会のやりとりだけで十分じゃありませんかね。だって国会開くと1日3億円かかるんですよ。それに、どう考えても無駄な議員に多くの税金を支払ってます。なんともやりきれない気持ちになってしまう日本の政治の現状、なんとかしなきゃと長年思ってても変わらないのは、日本人のなあなあ思考がそうさせてるんでしょう。

一方、アメリカでは銃が売れてるそうな...大統領選後、どちらが勝ってもとんでもないことが起こりそうな気配です。まだまだ混迷が続く世界、予測できない未来に対して心して日々を過ごさないと、とんでもないことになっちゃいますぞ...

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秋の空

2020/10/28
【第1404回】

今年は何故か我が家の月下美人が咲きません...昨年はこの時期まさしく狂い咲き、何度も繰り返し咲き誇り気持が悪かったくらいでした。何かあるのかな?と思っていたら、なんとなんとコロナの襲来。月下美人とコロナの関連性は学術的に解明されてる訳ではないのだが、これは何かあると思う。他の生き物に比べたら人間なんぞはなんの予知能力も持ち得ていないのではなかろうか...イヌは人間の100万倍以上の嗅覚を持ち、聴覚は人間のおおよそ4倍で人間には聞こえない周波数を聴き取れ、またイヌ・ネコの耳は、人間には聞こえない超音波と呼ばれる領域までを聴き取ることも出来ます。イルカ、鳥なんかも然り、人間は科学の力に頼るしかない脆弱な生き物です。植物による災害の予知能力の文献もチラホラと出てきています。おいらも散歩するときは間違いなく目を皿のようにして樹木、野花、空の気配、雲の姿を観察しています。日々変化する様に刺激され、おいらの細胞はわくわくしちゃうんですね...自然が持つ予知能力を少しでもあやかりたいと思ってると同時に、常に自然に対する畏敬の念を忘れないようにと心掛けています。

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都心もそろそろ色づき始めました

2020/10/26
【第1403回】

週明けの東京はさわやかな秋晴れです...先週の土曜日、神奈川県のテアトルフォンテで「砦」の公開舞台稽古をやってきました。お客さんを入れ本番さながらの舞台です。厳重な警戒の中、芝居は無事終えることが出来ました。この状況の中、キャスト・スタッフの徹底した自己管理の中、この日を迎えられたこと唯々感謝です。なんとしても舞台の灯火を消してはならないという信念あってこそのことだと思います。特に村井國夫さんにとっては、昨年の年末に病での舞台途中降板以降、初めての舞台だったので感慨もひとしおではなかったのではなかろうか...役者さん、さすがに気合い入っていました。役者は舞台に立ってなんぼの世界です。水を得た魚のようにスイスイと舞台上で活き活きとした姿を観るにつけ、おいらも幸せな気持になった次第でございます。早速、観客の方からメールが送られてきました。

 

先日、砦を鑑賞しました。村井國夫さんの、室原役、熱演で、リアリティが伝わりました。藤田弓子さんの、妻役も、ピッタリで、けなげで慎ましく、女性の共感を集めていました。私の生家は、利根川の下流域で、上流のダム建設の恩恵を受けてきました。また、学生時代、その利根川のダム建設で生家が、水の底に、沈んだ人の話しを聞いた事があります。水利、電力、軍事防衛、公共の受益者、犠牲者、が出てしまう無限な問題を提起する作品でもあるかと思います。

全国公演のご成功を祈念致します。素晴らしい、舞台 ありがとうございました。

 

生の舞台の反響を改めて強く感じます。生身の人間が命をかけて伝えようとしている舞台芸術が無くなるはずはないし、無くしてはいけないと思います。千秋楽東京公演12月27日まで、なんとか無事に終えることを念じるのみです。

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新宿西口

2020/10/23
【第1402回】

東京は冷たい雨が降っています...今朝、トランプとバイデンの両候補の最後の討論会が行われていました。やんちゃで言いたい放題のトランプに対して、好々爺然のバイデン、タイプが全く違う両人が話しているのだが、話は全く嚙み合わない。アメリカは完全に分断されてる様子が、この二人の個性から分かる気がします。自国第一主義者の人達には精力的なトランプが大好きに違いない。強いアメリカを取り戻すにはトランプしか居ないと固く信じている。バイデンのおっとり姿じゃ頼りにならない!しかし、この時代、世界各国の協調無くしては地球は滅びるという人達にとっては、バイデンの静かな語り口に未来を共に歩もうという連帯感を覚えるのだろう...トランプの絶叫があせりに見えるのだが、アメリカ国民のカラーからして逆転勝利の予感すらするのがなんとも無気味だ。しかし、いずれかが勝利しても自由のシンボルであったアメリカが真っ二つに割れ、内戦が起こるんじゃないかしらと心配してしまう。

世界情勢は日々混沌としているなか、日本の外交の舵取りはますます難しくなっている。令和のおじさんで大丈夫かしら?ようやく国会も始まるみたいだし先ずはお手並み拝見ですかね...

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野の花

2020/10/21
【第1401回】

今週の土曜日から始動する「砦」のキャスト、スタッフのメンバーのコロナPCR検査、全員陰性でした。いやいや、ヒヤヒヤもんでございます。一人でも陽性が出ようもんなら、たちまち公演中止となります。日々、綱渡りの日々が続いていますが、皆さん、こんな時こそ芝居を届けたいという強い思いがコロナを寄せ付けないのかも知れませんね。11月の中国地方の公演前、そして12月の東京公演前にそれぞれ1回PCR検査の実施を考えてますが、この先まだまだ油断出来ない状況であることは間違いありません。芝居の稽古以前に、もしや自分が?なんて思いで稽古してるのも忍びない気がします......ここは精神論じゃないけど、強い気持ちでコロナに立ち向かうしかありません。それとしつこい限りの手洗い、うがい、そして街のあちらこちらに置いてある除菌アルコールを使用することかな。今日も沢山の人が新宿の街を歩いてました。ファッションのひとつにもなっている色とりどりのマスクを見てるのも楽しいもんでございます。今日はマスクにNOコロナと書いた人を見かけました。なるほど、これからはマスクにいろんなメーセージを書き込み世の中にアピールする人が出てくるかも知れませんな...「恋人募集」「菅政権NO」「原発反対」「禁酒中」などなど、マスクから世界が変わるかもかも知れませんな...

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今日の爽やかな秋晴れ

2020/10/19
【第1400回】

週明けの東京は冷たい雨が降っています...コロナが未だ収束しない昨今、家飲みで欠かせないひとつに照明があります。おいしい酒、料理、そして音楽、これらで十分と思いきや時空間に彩りを添えるのが照明です。いつもの見慣れた空間も照明プランで非日常の時空間に変えることが出来ます。おいらが最近気に入っているのがソネングラスです。ソネングラスは、南アフリカで社会保険を完備し中間層以上の所得を付与した条件で雇用した現地の人々の手作り作品です。失業率が40%を超えると言われる南アフリカで70人の雇用を生み出しつつ、世界に300万個を販売しているソネングラスのプロジェクトは、社会問題の解決と事業としての成功をもたらしています。ソネングラスの70%はリサイクル素材から作られており、ガラス瓶においては100%再資源化が可能。まさにエコロジーの時代にぴったりの逸品です。昼間、太陽の下に置いておけば24時間灯りを灯し続け、災害時には非常灯としても使用できます。ビンの中に様々なものを入れて、その日の気分も変えることが出来ます。日本で最も遅れているのが照明だと言われています。外国に行くとお洒落な灯りが街路、レストランで多く見受けられます。お金をかけなくても、ちょっとした工夫で身の回りが、見違える趣になること間違い無し...念のために言っときますが、おいらはソネングラスの回し者じゃございませんことよ。

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太陽の恵み

2020/10/16
【第1399回】

秋の夜長は良質な音楽と酒がベストかな...夜が更けて自宅でワイン飲みながら、心地良い音を耳にしながらのひとときは、コロナ禍のなかでは至福の時間です。勿論、ワインに限りません。辛口の日本酒、芋焼酎、ウイスキーなんかも音楽のジャンルによって選択すればよござんす。おいら最近は、jazz女性ボーカルを良く聴いてます。シャーリー・ホーン、エタ・ジョーンズ、ミリー・ヴァーノン、ダイアナ・クラールこの4人は最近の好みです。シャーリー・ホーンのシャンソンの名曲なんぞは絶品です。ちょっと鼻にかかったようなヴォーカルがスモーキーで若干ハスキーなエタ・ジョーズ、今は亡き作家向田邦子さんが"水羊羹を食べるときに一番合う"と言わしめたミリー・ヴァーノン、おいらはシェリー酒が似合う歌手だと思ってますが...なんともセクシーで大人の音楽を聴かせてくれるダイアナ・クラール、カナダ出身というところが伝統的なjazzシンガーとの違いを感じます。この魅力あふれる4人に共通してることが、歌い上げず語りかけてるところです。つい最近、日本の東宝ミュージカルの歴史を辿ってのコンサートを、日本の名だたるミュージカルスターが熱唱するシーンを観たのだが、確かにうまいです、いい声です...おいらにとっての歌は熱唱ではなく韻唱(言葉を大切にする韻を踏む歌唱法)かな...確かに歌は千差万別、人それぞれの環境によって受け取り方も様々だと思います。でも、こんな時代だからこそ言霊に寄り添った音楽を大切にしたいもんでございます。

今宵は、どのアルバムで何のお酒を飲もうかな...最近手に入れたソネングラス (ビン型 ソーラーライト)の灯りがまた一段といいんですね。ビンに詰め込んだドライフラワー、ビー玉が、昼間に溜め込んだ灯りに照らされ幻想的な時間を演出してくれます...

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酒の友

2020/10/14
【第1398回】

埼玉の劇団から60名を超すコロナ感染者が出て公演中止...こんなニュースが飛び込んできました。現在公演中の演劇、音楽関係者はどきりとしたと思います。そして只今、「砦」の稽古中にあるトム・プロジェクトはより一層身が引き締まる思いです。東京での千秋楽までに3回のPCR検査を予定しますが、もしや?なんてこと考えると心身休まる暇がありません。コロナ自体の病より、コロナという目に見えない恐怖に苛まれる精神的な負担は甚大なものがあります。と言って、何事にも疑心暗鬼に陥ってしまうのも考えもので、ここはより徹底してコロナを寄せ付けないように日常生活も含めて自己管理するしかありませんね。

最近買い物なんかして思うことは、地球環境を考えてポリ袋を有料化にしてエコバッグを推奨しているのは分かるけど、ゴミ捨ての時に使うポリ袋はお店で買う羽目になるってどういうことかしら?環境を考えてのシステムではないと思うのだが...結局、お店が今まで無料で提供していたものを有料にしてお店が得してるんじゃないかしら?と、素朴な疑問でございます。ゴミ捨て場は相変わらずポリ袋の山ですが...

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秋の野花

2020/10/12
【第1397回】

週明けの今日は雨も上がり気持ちの良い一日となりました...この季節、散歩してるとあちこちから金木犀の芳醇な香りが匂ってきます。おいらはこの匂い大好きです。じんわりと心身を包み込む何とも言えない匂いに浸っているとまるで桃源郷に誘ってくれる感じさえしてしまいます。おいらにとっても金木犀と言えば、博多の長屋に住んでた少年時代、東京から引っ越してきた色白の少女の邸宅の垣根に植えられていました。この香りと色白の少女のイメージが重なり、ついつい少女に惹かれていった想い出があります。用もないのにその少女の邸宅の前を行き来しながら、その匂いと共に少女への勝手な想いを重ねたほろ苦い記憶が蘇ってきます...匂いと人生、この関連性から一遍の物語が出来そうですね。匂いが生み出す果てしない世界、いい匂いばかりではありませんよ。どぶ川の臭いと言えば、中学時代の野球部での川に飛び込んだボール拾い。インドを放浪してた時の車の排気ガスの臭いなどなど...春を感じさせる沈丁花、夏のクチナシの匂い共に、あの日、あの時の想い出が数多く作られたはずです。


匂いなき部屋の花あり旅一夜

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雨あがる

2020/10/09
【第1396回】

台風の影響を受け東京でも朝から雨が降っています...またまた、舞台関係者のコロナ感染者が出て直前での公演中止、稽古中止のニュースが流れてきました。公演前日に1人の陽性者が出ただけで、これまで積み上げた全てがゼロになるなんて、制作側から言わせると倒産危機宣言を伝えられたようなもんです。なんとかならんもんですかね?こんなことが続くと、まさしく演劇の死に繋がりかねないと思っています。トム・プロジェクトも「砦」の稽古を連日気合い入れて稽古中。万全の対策での稽古場ですが、コロナは予想もしないところから侵入するんで困ったもんでございます。

そんな心配な時期に、海外からの渡航を緩和する情報も流れています。完全な沈静はないにしても、もう少し慎重にことを運んで欲しいと思います。アートの世界は勿論、全ての業種が息も絶え絶え状態。気分も滅入り鬱状態に陥っている人も増えてることを思うといたたまれない気持になってしまいます。

そんな今日この頃、おいらは心身ともにポジティブ・シンキングを貫いています。この時期にネガティブ思考・行動をしてる人は、コロナにとって最高のお友達になってしまいます。それにしても、マスクも付けないでにやけた顔で新宿の街をうろついてる若者は馬鹿者としか言いようがない。なんでマスクしてないの?と聞いてみたいところだが危ないですな...

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Jazzが流れる店JUHA

2020/10/07
【第1395回】

昨日から「砦」の稽古が始まりました...昨年12月、劇団桟敷童子の公演中に体調を崩された村井國夫さんもすっかり元気になられてほっといたしました。藤田弓子さんも元気一杯、そして若手の3人組も「百枚めの写真」に続いての出演。本読みも本番さながら熱気に包まれ、よしゃ!いけるってな感じでしたが、村井さんのアクセルの踏みかたがあまりにも強烈だったんで心配さえいたしました。コロナのため表現者として封印された思いが一気に溢れ出た感じです。役者は人の前で演じてなんぼの世界です。板の上に立てない悔しさ空しさは言葉にならないくらいの重さです。まだまだ終息しない現状、悶々としながらじっと耐えてるアーチストの姿を想像するといたたまれない思いです。

秋と言えば、おいらにとってはコスモスですね。秋桜という書き言葉もいいですね...博多湾に浮かぶ能古の島のコスモスは見事です。一斉に咲き乱れるコスモス畑の中を歩き回る感覚は、まさしく宇宙遊泳の気分です。この感覚に乗せられ結ばれたカップルも多々いるんじゃないかしら?

病院から退院した大統領、トランプ節炸裂と言いたいところだが、この危険なウイルスを相手に大統領としては、あまりにも稚拙な言動だと思います。自分の年を考えなきゃいけませんがなもし。

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純潔

2020/10/05
【第1394回】

2021年1月に上演する新作「モンテンルパ」のチラシ、ポスターの写真撮りを先週末に行いました。出演者の一人である大和田獏さんに半年ぶりに会いました。元気な顔を見れて嬉しかったです。愛する岡江久美子さんを亡くされ、この半年の獏さんの悲しみはいかばかりか...2021年はトム・プロジェクトの作品に3本出演します。「モンテンルパ」「Sing a Song」「萩咲く頃に」こんなことははじめてです。獏さんには4月に手紙を出しました。「獏さんが役者として舞台で輝けば、きっと岡江さんも喜んでくれますよ...」

獏さんの舞台姿とっても素敵です。己の我をぐっと退いて邪魔にならない確かな演技にキラリと光るものがあります。これなかなか出来ないものですよ、よほど自信がないと。

確かにコロナで世界は大きく変わりました。舞台芸術の存亡がかかっている危機であることには変わりはありません。一番密であらねばならないものが疎まれてるんですから始末が悪い。劇場の席の隣に人が居るだけで不安になるんですから困ったもんでございます。

そんなか、来年、獏さんと3本素敵な芝居を創るスタートが始まりました。岡江さんがしっかりと見守ってくれるに違いありません。

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秋に色づく

2020/10/02
【第1393回】

昨日、水に関する事業を行っている前澤工業株式会社より、芸術・文化活動の支援の一助という名目で金一封を頂きに本社がある埼玉県川口市に行ってまいりました。1937年創業の国および地方公共団体の上・下水道および農業用水・河川関係の各種処理施設並びに、これらに関連した単体機器および装置の設計・製作・据付を一貫して行っている上下水道用機器・水処理装置専業メーカーです。考えてみれば水は命の源であり、自然が生み出したものを人間の叡智で命の水として社会に還元し地球を守ってきました。社長はじめ社員の皆様の水に対する愛情を強く感じました。今回、数ある創造団体からトム・プロジェクトを選んでいただき唯々感謝の気持ちで一杯です。そして、それに応えるべき作品を創る責任を痛感しています。会社が発行している「みずのわ」小冊子にも素敵な言葉がありました。

 

雨の日、池の水面には無数の波模様が描きだされます。小さな輪から、やがて大きな輪へ広がり、またお互いの輪が交じりあって、果てしなく続く幻想の世界を、だれしも経験されたことでしょう。小さな水の波紋が、はじめは、ほんのささやかなものであっても、やがて、水の輪同志が集まり、水の輪は水の和となって、美しい色模様を水の面にくり広げていきます。

 

芝居と相通じる言葉であり、社会の在り方の根幹をなす文章だと思います。

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中秋の名月

2020/09/30
【第1392回】

街のあちこちで大きなビルの解体が進んでいます...渋谷の街の変貌ぶりもすごいんですが、新宿の街の見慣れたビルも一気に解体が始まっています。半世紀前に通っていた喫茶店が入っていたビルも無くなってしまいました。日替わりのサイフォンで入れたコーヒーを飲みながら様々な新聞に目を通すのが楽しみでした。スポーツ新聞でライオンズのゲームの試合の詳細を読みながら一喜一憂した日々が懐かしいです。勝った日のコーヒーの味は格別でした。思わずお替りしてし、店を出てから財布の中身を見たらあちゃー!なんて日もありました。スタバ、ドトールもいいいのだが、やはりコーヒーなんぞはゆったりしたところで飲みたいもんでございます。

そして、新宿の街でも飲食店の閉店が続出しています。いつも満員で繁盛していた店の前に「45年間、本当にありがとうございました...」なんて張り紙を見ると切なくなってきました。コロナは社会の風景さえも変えていく勢いです。人と街を蝕んでいるのか?それとも新しい社会の在り方を提示しているのか?それぞれがそれぞれな思考、行動しなければ自然の脅威に逡巡するだけではなかろうか...

明日から10月、秋の匂いがします...春とは違う秋のさわやかな風にゆれるコスモス、ススキ、コロナを忘れさせてくれる秋の劇場が始まります。

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解体する街

2020/09/28
【第1391回】

今日は久しぶり青空を見上げることが出来る東京です...「百枚めの写真」四国公演無事終えることが出来ました。四国の市民劇場の方々の温かい支援のお陰で、コロナも吹き飛ばす上々の芝居を行うことが出来嬉しい限りです。四国の人達にとっては東京から大挙押し寄せて来るなんてことは、少なからずとも戦々恐々たる思いではなかったんではなかろうか?でも、こんな時期だからこそ何か後押ししてくれるチカラが欲しいと言うことで我々を呼んでくれたと思います。「百枚めの写真」という芝居をその期待に十分応える作品。ご覧頂いた方々から嬉しい感想がたくさん来ています。改めてこの大変な状況下、四国の市民劇場の皆さん本当にありがとうございました。

おいらも先週の週末は、久しぶりに下北沢本多劇場に2日連続足を運びました。本多劇場が独自に企画した「グッドディスタンスー風吹く街の短編集第三章―」金曜日は、「島田歌穂&島健Duoコンサート」歌穂さん歌声と島健さんの見事なピアノがマッチして素敵な舞台でした。夫婦であり、共に音楽に対する厳しさと愛情に溢れた時間を感じさせてくれました。

土曜日は落語二人会、風間杜夫と柳家花緑の見事な話術を堪能しました。劇場側も完全なる体制でお客を迎えてくれたので安心して観ることが出来ました。

終演後、杜夫ちゃんと久しぶりに一杯。言っておりました「役者なんてこんな状況になると役立たず...」なんてことポツリとつぶやいてました。

ここ二カ月で4人の役者さんが自殺に追い込まれました。目に見えぬコロナの脅威をつくづく思い知らされています...なんとか人間の叡智でこの危機を乗り越えたいものです。

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久し振りの本多劇場

2020/09/25
【第1390回】

「ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)」観てきました。岩手県一関市に50年続いているジャズ喫茶のドキュメンタリー映画です。この店の経営者、菅原正二さんが何とも素敵である。この人の拘りが多くの人を惹き付け世界中から、この店に集まって来るってんだからまさしく文化遺産である。一日も休むことなく音の世界を追求し、人との関係を大事にしながら店を切り盛りした結果、伝説的な店になったのも納得できる。名だたる演奏家がこの地でライブを行い語り継いでいった歴史の重みを感じさせるのだが、嫌みがない。色気溢れる菅原正二の78年の人生は、その容貌に鮮明に現れている。そう言えば、レコードをかけながらお店をやるなんて所は、世界広しといえど日本だけらしい。おいらは今でも時間があればレコードを回してる巷のジャズ喫茶に飛び込んでいくのだが、アナログ感たっぷりの音を聴きながらの時間は実に幸せである...若い頃、今の年になったらレコード回しながら昼は珈琲、夜はウイスキーを飲みながら、小さなお店を開きのんびり生活を夢見ていたんだが...デジタルでは味わえない生に近い音を聴きながら読書するも良し、ぼんやりと音に身体を委ね心身をほぐしていくも良し、この何気ない時間を忘れるからストレス社会になっちゃうんじゃないかしらと思う次第です。

 

「ジャズというジャンルはない ジャズという人がいるだけだ」

 

「百枚めの写真」今日と明日、高知公演2ステージ残すのみです。どうやら台風も避けられ、無事上演できそうです。

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会社のベランダから見上げると...

2020/09/23
【第1389回】

4連休後の仕事始め、東京は台風の影響のためか、どんよりと曇り涼しい一日になりそうです。映画「パヴァロッティ 太陽のテノール」を観てきました。神の声を持つと言われたイタリアのオペラ歌手ルチアーノ・パバロッティの生涯を、名匠ロン・ハワードが追ったドキュメンタリー。いやはや人間の声がどんな楽器より素晴らしいものであるかと言うことを再認識させられた映画でした。数々の名曲を、あの声で歌われると、そりゃどんな女性もいちころですな...愛人問題もイタリア人らしく隠すことなく、より高みを目指すためのステップにしていました。勿論ファンの女性は怒っていましたが...彼の歌には一貫して愛があるのがよく分かります。理不尽な社会に対しても全身全霊で立ち向かいチャリティコンサートも数多くこなしてきました。とにかく聞き惚れてしまいます。そしてステージでの彼の表情には、慈愛に満ちたオーラに包まれています。ドミンゴ、カレーラスというスペインの歌手と共に世界三大テノール歌手と称されてますが、おいらはパヴァロッティが好きです。なんと言っても人間そのものの匂いがプンプンしてきます。家に帰り早速、30年前の1990年7月7日、イタリア、ローマでのサッカー・ワールドカップ決勝前夜祭で、当代最高の3人のテノール歌手(ホセ・カレーラス、プラシド・ドミンゴ、ルチアーノ・パヴァロッティ)が、ズービン・メータ指揮する200人を超える演奏者たちとともにローマのカラカラ浴場で世界で初めて競演したCDを聴きました。このCDは何度聴いても惚れ惚れいたします。

「百枚めの写真」四国公演、香川、徳島で4ステージを無事終えることが出来ました。今日から愛媛、高知での残り4ステージが始まります。なんとか最後まで無事公演が出来ることを願うばかりです。

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どんぐりころころ

2020/09/17
【第1388回】

やっと再スタートを切ることが出来ました...昨日、埼玉県志木市民会館パルシティで「百枚めの写真」の公開舞台稽古を上演しました。今年4月3日「Sing a Song」が奈良で中止になって以来の舞台です。キャスト、スタッフ全員がコロナの危機を乗り越えて、この日を迎えることが出来ました。やはり生の舞台はいいもんですね...改めて舞台芸術の持つ魅力、とてつもないチカラを感じることが出来ました。3密が叫ばれてる昨今、芝居を鑑賞することに拠って密の大切さをより強く認識させられるのもなんとも皮肉なもんです。演劇こそ、人との繋がり、他人との関わりの中から何かを発見し形にしていくものです。この営みこそが演劇そのものだと思っています。

そして「百枚めの写真」には市井の人達の強い平和への祈りが込められた作品です。舞台から発せられる言霊、写真が何気ない極当たり前の平和の大切さを声高でなく伝えてくれます...気高い理想、理詰めの論法なんかではなく、極々普通の人達が交わす言葉だからこそ説得力があります。平和ボケした日本人、現況の学校教育制度では、このボケの速度はますます加速していくこと間違いないと思います。多くの青少年にも是非観て欲しい作品のひとつです。

明日から、四国の演劇鑑賞会の皆さんにこの作品を届けることが出来ます。この作品が、全国津々浦々多くの人達に観て頂けると嬉しいです...何故ならば、この作品の中には心豊かに生きるヒントがいくつも隠されています。

今日の新宿、トンボが心地よく飛び回っていました...秋ですね。

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しあわせに

2020/09/14
【第1387回】

週明けの今日は、なんとなく秋の風情がします...災害、猛暑、そしてコロナの日々が続くと、どんなに元気な人でもダークな気分になってしまいます。そんな時に触れるジョークはしばし安息のひとときです。

新幹線の切符を買いに行きました...のぞみを注文したのですが「のぞみはありませんが、ひかりはあります」と駅員に言われました。瞬間、この言葉の深い含蓄に感動し、同じ言葉を大声で返すと、駅員は「あっ、『こだま』がかえってきた」とつぶやいたとさ。

希望をなくしても、どこかでだれかが光をあてようとしていることが、生かされているということではなかろうか...そして、生きてるだけでももうけもんですがな。

ケセラセラ、スペイン語で「なんとかなるさ」という意味です。スペインに住んでた時に何度も実感された言葉です。ラテン特有の彼らの生き方は一見いい加減に見えますが、実は人間関係といい自然環境とも程よく調和してバランスが取れてます。あたかも、お風呂に入ったときのいい湯加減の状態です。心配するにしてもどこかで折り合いをつけないと、いつのまにかストレスに転じます。じたばたしても始まらない、この世はなるようにしかならないと覚悟して生きましょう!

大坂なおみさん、やりましたね...最初から亡くなった7人の黒人の名前が入ったマスクを用意した時点でラストのシーンを思い描いていたんでしょうね...想いの強さが何事をも成し得ることを実践した見事なお手本ですね。

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花屋さんのディスプレイ

2020/09/11
【第1386回】

来週から始まる「百枚めの写真」四国公演のためにキャスト・スタッフ20人、9月9日にコロナPCR検査を受けました。その結果が今日出ました...全員陰性、先ずは第一関門をクリアしました。4月3日に「Sing a Song」が公演中止になって以来、やっと芝居が出来る喜びで感無量と言いたいところだが、ここで油断してはいけません。16日の埼玉県志木市での公開舞台稽古、18日から26日までの四国公演、どこで何が起こるかわからない予測不可能な世の中だけに、気を引き締めてかからないとえらいことになっちゃいます。東京都内の飲食店営業自粛時間も解除され、イベントも緩和された途端に、またもや感染者増大なんてシナリオも十分考えられます。そりゃ旅に行けば、地元の食材と酒で旅公演を満喫したいところですが、今回ばかりは自粛モードも致し方ありませんね...旅先での一杯は、それはそれは、たまらんくらい楽しいもんでございます。芝居やる人間にとっても、地方の人たちの人情の機微に触れ、芝居と旅のセットがより味深いものになり病みつきになってしまう例をたくさんみてきました...東京だけの公演なんてもったいない!地方の人達の芝居に対する愛を一身に頂いたときの喜びは、ほんまに芝居やってきて良かった!と思います。

再開公演が無事千秋楽を迎え、いい報告が出来ますよう...心を鬼にして(笑)

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9月の空

2020/09/09
【第1385回】

自民党の総裁選、野党新党の党首選びのことでメディアは連日報道してるんですが、どうも盛り上がりが欠けますな...どちらも勝負は決まったようなものですから。驚いたのは総理退陣と共に支持率が上がったこと。なんとも日本人の体質がもろに出た感じですね。安倍ちゃんかわいそう!あんな身体でよく頑張った!なんてもんでしょうね。考えてみれば、普通の神経をしている人であるならば、あんな訳の分からんことしているのに、よくいけしゃあしゃあとしていられるなと呆れてしまいます。心身がボロボロになるのは当たり前。でも、辞めたんで一応お疲れ様を込めての支持率上昇でしょうね。そこんところが甘いのよ日本人はと言いたいところですが、これがこの国のセールスポイントなんでしょうかね。おいらも世界のいろんなところ旅しましたが総合点をつければ、やはり日本が一番だと思いますね。一時はスペインに住みたいとも思いましたが、あの乾いた感じは湿度に慣れた日本人には、やはり違和感がありますな。何といっても食文化の素晴らしさはどの国も敵わないのではなかろうか...スペインで住んでる時の魚料理には唖然としました。なんでんかんでんフライにしちゃうんだからもったいないといったらありゃしない。市場で並んでるマグロ、赤身もトロも同じ値段。フライにしちゃえばたいして味も変わらないのでそうなっちゃうんですね。素材を如何様にも変えていく日本の食に対する探究心は目を見張るものがありますね。日本に居れば世界のすべての極上の食にありつけます。温泉に浸かりその土地の美味なるものに舌鼓を打つなんてことは他の国ではできませんがな...そんな素敵な国にする政治家が出て来て欲しんですがね。

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新宿西口

2020/09/07
【第1384回】

何とか台風も過ぎ去りました...今後も世界的に自然災害が起きうることは十分に予想できます。過去に学ぶ、歴史に学ぶことがより一層大事になってきます、今回も早めに避難する様子がテレビで映し出されていましたが、なんだか戦時中の空襲警報につられて避難する様を彷彿させます。いや、これはコロナも含めて戦争状態ではないかと思います。具体的に予測不能のウイルス、災害だけに厄介です。世界の指導者の皆さん、この手強い相手に立ち向かうには軍拡競争を止めて、この新たな脅威に対してお金をつぎ込み安心できる世界を創生しなきゃいけないのではありませんかな。

昨日も雨が降っていたのでライオンズの試合をテレビで観てました。今年のライオンズの優勝は無理ですな、ライオンズが育て活躍して選手は、いまや楽天イーグルスに移籍するルートが確立しつつあります。かたや金満ソフトバンクはお金の力で選手を掻き集め首位を驀進中なんですが、伏兵ロッテが頑張ってますな。この球団、応援も独特だし選手も個性的で面白い球団です。おいらは個人的に荻野貴司外野手が好きですな。34歳のベテランですが小柄でしぶとく食らい付いていく姿に拍手を送りたくなっちゃいます。体格に恵まれない選手が何とかしようと気迫は、この大変な社会状況の中、粉骨砕身、切磋琢磨している市井の人達に相通じるものがあります。昨日、一軍に昇格したライオンズの水口大地が3シーズン振りにヒットを打ち盗塁まで決めたシーンは嬉しかったな。2012年に育成で入団し31歳、もうあとがない選手だと思います。163㎝、70㎏での身体を張ってのグランドでのプレー、応援したくなりますよ。それに比して、立派な身体をしてるのにパットしない選手、まさしく宝の持ち腐れですな...昨日対戦した日ハム期待の清宮幸太郎選手、早稲田実業高校時代111本の本塁打(史上最多)の打ち鳴り物入りで球界入りしたのに、現状では、あの立派な身体が泣いてます...

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犬仲間集合

2020/09/04
【第1383回】

今日も東京は35度の猛暑日、昔なんぞは初秋の香り、音色が感じられたのに、今や地球は悲鳴をあげざるを得ない様相を呈しています。大型の台風10号も週末には日本列島に襲い掛かってきます。そして今朝は、福井県で1963年以来の震度5弱の地震発生。この地には原子力発電所があるので心配です。コロナと熱中症と台風そして地震、いやはや大変な時代になったもんでございます。この先、もっともっと大変な災害が起きると予想されてるんで、今のコロナ騒ぎも懐かしいな...なんてことになるかもしれませんな。

この暑さで、草木もアッチッチ状態が続いています。おいらの散歩の楽しみは道端にさりげなく咲いている草花、樹木、そして大空というキャンパスに様々な表情を見せる雲の形象、刻々と変貌する自然の生き物はとってもスリリングでございます。勿論、道行く人々の生態も面白可笑しく、拝観料無料で楽しませて頂いています。今日も、いつも新宿で見るホームレスのオッさんが見違えるような頭髪と服装をしてるんでびっくりしました。どうしたんだろう?ちょいと聞きたくなりましたが、こんな時期ですから止めときました。以前、手を差し出し「腹減った...」といわれたので、僅かですがお金を渡したオッさんです。新宿を根城にしぶとく生きとります。この困難な時代、とにかく、しぶとく粘り強く、己を信じて生きていく以外にないと思います...「生きてるうちが花なのよ、死んだらそれまでよ党宣言」先日亡くなった森崎東監督の作品です。

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涼を呼ぶ葉

2020/09/02
【第1382回】

又しても、新宿の老舗の店がコロナのために閉店になりました。店名はタブラオ・フラメンコ「ガルロチ」。1967年の開店以来49年間という長い歴史のあるタブラオ「エル・フラメンコ」が2016年7月に閉店した後、フラメンコの魂を引継ぎ良質の料理とフラメンコを提供しながら新宿で頑張ってきましたが8月末日で幕をおろしました。エル・フラメンコ以来、この店にも何度か足を運びました。おいらもスペイン滞在中には何度もフラメンコを観たのだが、本場のものよりもここのタブラオで観る方が数段優れているという印象を持っていました。だって本場の一流のダンサー、歌い手、ギタリストを招聘してるんですから当たり前なんですが...間近で観る踊りは、それはそれは迫力があるというより命懸けの舞を感じます。喜怒哀楽が混然一体となって、まさしく己の生き方を晒す姿に感動しちゃいます。今ここで、ぶっ倒れても悔いなし!という気概を感じます。フラメンコを通して自分の生き方を提示してるんだと思います。そして踊りに欠かせない歌(カンテ)これが又、しびれちゃうんでございます。しゃがれ声の中に、これまた人生を思い起こさせてくれます。おいらが大好きなスペインの歌い手にカマロンという人が居るんですが、疲れた時なんぞにカマロンのCDを聴くと、よしゃ!という元気をもらうと同時に人生って捨てたもんじゃないんだなという気にさせてくれます。ワインと生ハム片手にカマロン、至福のひとときでございます。それにしても、日本で第一級の本場のフラメンコを観れる場所が無くなってしまいました。この状況下、スペインから舞踊団招聘できず残念...あとは、おいらの記憶のなかのフラメンコを蘇生させながら、懐かしいスペインの情景を思い起こしながら...!VIVA!FLAMENCO

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¡VIVA! FLAMENCO

2020/08/31
【第1381回】

またまた権力闘争が始まりました...81歳のムニャムニャ幹事長を中心にセメント屋さんなんかが根回しする構図はいつもの通りです。いつまでたっても悪しき手口は変わらない日本の政治には慣れてますんで、そんなにびっくりはしないんですが、こんな時期だからこそ活きのいい若手が立ち上がって、旧態依然の政界をひっくり返すみたいなことをやって欲しいなと思うんですが無理でしょうな。安倍さんお疲れさんでした!と言いたいところですが、やはり長期政権の歪みは随所に出てましたね。すべてが上手くいかないにしても、理不尽なことが多すぎました。中でも、公文書改ざんなんてものは犯罪なのに誰も罰されないどころか、改ざん責任者が、その手柄で出世するんですから開いた口が塞がらない。その部下が自殺してもセメント屋は責任を取るどころかふんぞり返ってるんですから、もはや人間としての神経を疑いますな。政界というサル山に居ると心身とも図太くなり庶民の痛みなんぞに反応しているとやってられないんでしょうな...おいらも、その変貌ぶりを見せてもらった友人のひとりを知ってます。48年前の彼は実にナイーブで好青年であったのだが、その後、政治家になった途端に偉そうにしてましたな。何を勘違いしたのか、先生なんて呼ばれると己の身の丈を忘れてしまうんでしょうな。まあ、おいらの先輩だから許せますが上から目線で偉そうなこと言うんで呆れてしまいました。一度、国会の議員会館に呼ばれましたが、おいらも頭下げるのも嫌だから止めました。勿論、今も衆議院議員やってますが、数あわせの一人だと思います。そろそろ、権力と欲と金塗れの烏合の衆から脱却しないとこの国の未来はありませんぞ!と誰しもが思ってるのに一向に埒が明きませんな...

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この国の行き先は?

2020/08/28
【第1380回】

2011年から8年をかけて制作されたTVドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」全8章全73話ついに観終えることが出来ました。65時間、こんなにはまったのも長い人生で初体験かな...いやはや、1話につき製作費約1,000万ドルともいわれる巨額を投じたのが良く分かります。架空の話しながら実にリアルで、これにファンタジーが加味されているのでついつい魅入ってしまう。映像、衣装、メイク、美術は勿論、出てくる役者が全員魅力満載。現実社会に照らし合わせても、こんな人、居る!居る!なんて想像しながら観てました。そう思わせる役者の実力をまざまざと見せつけられた思いです。残念ながら、こんな作品観た後では、日本のテレビドラマは観るに堪えないという現状ではないかしら...今や、テレビはドラマに関してはNetflix、Hulu、Amazonプライムビデオを視聴するためのものになってしまっているのではなかろうか。今の心境、「ゲーム・オブ・スローンズ」ロス状態...今年は西武ライオンズもさっぱりなので、野球視聴タイムは、再度またじっくりと観ちゃおうかな?なんて思っとります。おいらもAmazonプライムビデオでいくつかの佳作に出会ったので、さらに他の掘り出し物に遭遇するかもしれないしね。

先程、安倍首相の辞任の報が流れてました...この国難の時期、果たしてベストな舵取り者は居るのかしら?後任者、セメント屋のおやじさんだけは勘弁してくださいな...

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静寂

2020/08/26
【第1379回】

いやいや、今日も猛暑でございます...この国のトップのお方も、そりゃ、公文書改ざん、モリカケ問題、サクラを観る会、大臣の不祥事などなどに続いてのコロナウイルス、心身ともボロボロになるのも当然です。今が辞め時ですぞ!このチャンスを逃すと身体は勿論、史上最長期間の総理大臣という記録もボロボロになっちゃいますぞ。それにしても次が居ないですな。野党もなんだか今一つパッとしない合流騒ぎ。この国の信頼できる舵取りが居ない状況は困ったもんでございます。小池のおばちゃんも虎視眈々と総理の座を狙ってはいるものの、所詮は風見鶏でありますので、あまり信頼はできないと思ってる人が随分いると思います。トップも含めて国会も閉会してるのに、大変なのは役所関係の人たちではなかろうか...今日も、家賃支援給付金の件で電話がありました。説明会場にも二度足を運びましたが、急遽駆り集められた人たちが慣れない手つきで作業しておりました。そして一か月後の今日に電話が掛かってきたのですが、これまたなんとも要領を得ないメッセージばかり。助成を頂くことは本当に感謝していますよ。持続化給付金、10万円の特別定額給付金、そして評判の良くないマスク、民間では稲盛財団の助成金。稲盛財団の対応はとっても早かったし、大いに助かりました。こんな経営者がもう少し増えれば日本の文化も、少しはマシになるんですがね。とにかく密が命である劇場文化が危機にあります。今日も9月公演に向けて慎重に稽古しております。

舞台の素晴らしさは新鮮な感動であり発見である。観る側と創る側が夢を持てる舞台を吐き続けたい!これがトム・プロジェクトの社訓でございます。

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8月の空3

2020/08/24
【第1378回】

コロナの影響で長年愛された老舗の居酒屋が、次々と閉店に追いやられています...新宿区役所前にある「蔵元居酒屋 清龍 歌舞伎町店」も8月21日に幕を閉じました。いや、ここにはたくさんの想い出が詰まっています。おいら貧乏演劇青年にとっては夢のような居酒屋でした。埼玉に蔵元がある升酒の日本酒が当時¥100(8月21日閉店時は¥190)こんなに安い、しかも旨い日本酒はありませんでした。料理も大体¥300前後、ここでちょいと飲み喰いし、そのあとは朝までゴールデン街で痛飲してました。演劇群走狗と状況劇場の両劇団が遭遇した時には、ちょっとしたことから喧嘩になり状況劇場の唐十郎さんが表に出ろ!ってことになり、おいらが仲裁に入り何とか収まった想い出があります。その後、唐さんと一緒に仕事することがあり当時の話をすると笑い飛ばしていました。最近も親しい友人たちとこの店を利用し楽しい時間を過ごすことが出来ました。安くて旨い、これこそが大衆居酒屋の原点だと思います。高くて旨いは当たり前。この「清瀧」には場所柄、おかまさん、詐欺師風の男、やくざ衆、アーチスト、風俗関係などなどが飾ることもなく本音の会話が飛び交っていました。気取ったりすると白い目で見られる雰囲気が充満しとりました。おいらも随分と人間観察させていただきましたな...池袋のお店は健在なので何とか一安心。この流れでいくと新宿ゴールデン街も、今ここにある危機状態ではなかろうか?ハイテクで人の触れ合いが疎遠になり、今回のコロナで3蜜が推奨され、コミュニケーションロスの弊害も出てきています。この先、この世界、そして日本はどこを目指し、どこに行くんだろう...残り少ない人生、しっかりと見させていただきますばい。

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井の頭公園での家族花火大会

2020/08/21
【第1377回】

物事が進まないときに必要なものはなんだろう?と思ったときに、過去の経験から思い起こすと、ちょっとした勇気であったと思う。人生常に、行こうか、戻ろうか、留まろうかの三択の中で、いずれかをチョイスして過ごしてきたはずだ。一寸先は闇だぞ!なんてアクションを踏みとどませる言葉をよく耳にするが、一寸先は光だぞ!なんて変えていくのも己の中から芽生える小さな勇気ではなかろうか...これも難しいもんで、大きな勇気なんて持ちすぎるとなかなか上手くいかないものである。勇ましい気持ちを自ら楽しみながらコロコロと転がしていくと、意外と自分の目的地にたどり着くもんである。道中、嫌なことに遭遇することもあるが見て見ぬふりするのが賢明である。自分が嫌なものにはなかなか仲良しにはなれないので、嫌なもんを取り込んじゃうと摩擦が生じ、コロコロがゴロゴロと不協和音が起きてしまう。出来うるならば、常に心地よい音色が心身に流れている状態がベストである。自分にとって不快だなと思うことは遠慮なく拒否する...これも、小さな勇気であり、潔い我が儘も立派な美徳ではなかろうか。

今日も暑いし、明日からの週末を控え、コロナ感染者もまた増えるんじゃないかしら...小さな勇気の小槌を手にすれば、猛暑もコロナの不安も吹っ飛んじゃいますよ皆の衆。

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プラットホームからの夕焼け

2020/08/19
【第1376回】

やっぱり芝居の稽古現場はいいもんですな...17日から始まった9月公演「百枚めの写真」久しぶりに出演者の皆さんに逢うことが出来ました。皆さんコロナの包囲網を見事に潜り抜け無事稽古場にやってきました。早速、作・演出家ふたくちつよしさんのスタートの掛け声のもと本読みが始まりました。今回は過去の4回の公演で芝居を支えて頂いた田中壮太郎さんの代わりに浅井伸治さんが加わりました。浅井さんは劇団チョコレートケーキのメンバーで、安定感とハートがある芝居に定評があります。得てして俳優という職業は、どうしても我こそはという自我を前面に押し出しがちなのですが、浅井さんは芝居の状況を実に客観的に把握しながら適格な演技をする人だなと思っていました。実はこんな人が居るからこそ芝居は成立してるんですね...第一回目の本読みを聞きながら、新しい「百枚めの写真」が誕生する予感がしました。勿論、いままでやっていただいた役者さんも気合十分、もう明日から本番が始まるくらいの気合十分、やはり役者さん表現の場に立つと、まさしく水を得た魚ぴちぴちと飛び跳ねておりました。

それにしても暑い、熱中症で亡くなる人も増えています。特に高齢者、感覚が鈍くなっているので気をつけなくちゃ...いつまでも若いと思ったら大間違い、間違いなく老いは刻々と押し寄せています。ここは素直に文明の利器クーラーを活用して生き延びなきゃと思っております。たまに、うちわでぱたぱたやっとりますと柔らかい風と共にあの懐かしい昭和が甦ってきます...夕方になると道端に長椅子を出し将棋なんかをやっとりましたな。子供はキャンデイくわえて鼻たらしておりました...夕焼け空も真っ赤っか!

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8月の空2

2020/08/17
【第1375回】

8月15日、終戦から75年が経ちました。この75年前、僕は母のお腹の中に居ました。

場所は満洲と北朝鮮の境界線。8月9日にソ連が日ソ不可侵条約を破って、シベリアの収容所にいた兵隊を繰り出し日本人の住居になだれ込んできました。7カ月の逃避行を得て博多に帰還し、おいらは生を受けました。お腹にいた記憶は母から聞いた悲惨なものでした。多くの知人が殺戮、略奪に合い、おいらが生きているのは奇跡に近いと思っています。亡き母は何度も何度も語っていました。「戦争は勝っても、負けても悲劇...戦争だけは絶対にやっちゃいけない!」なのにいまだ止まない戦火、そしてきな臭い様相。この状況では、一人一人が強い平和に対する感謝と思いを武器に立ち向かうしかありません。そして、忘れてならないのは、先の大戦において被害者であると同時に加害者であったということです。どんな理由であっても、他国を侵略し統治するなんてことはあってはなりません。それが悲劇の始まりであったということは歴史が教えてくれてるはずです。

今日から、「百枚めの写真」の稽古が始まります。トム・プロジェクトとしては「Sing a Song」4月3日の最後の公演以来、久々の公演に向けてのスタートです。この芝居は、どこにでも居るささやかな庶民の平和を願う気持が溢れんばかりの芝居です。コロナに負けず9月の四国公演が無事終えることを願うばかりです。

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いつまでもこの平和を!

2020/08/12
【第1374回】

乗客、乗員520人が亡くなった日本航空のジャンボ機墜落事故から今日で35年が経ちました。このニュースは本当に衝撃的だった。お盆の時期、東京~伊丹に向かった日航機が墜落するなんて誰が思ったであろうか...当時、人気絶頂であった歌手の坂本九さんも犠牲になった。この日テレビで流れた救出の様子も生々しいものであった。救出された少女はその後マスコミに登場することなく、静かにその後の人生を過ごしているに違いない。うるさいマスコミから逃れるのも難儀であったであろうと推察する...大変な時代になったものである。スキャンダルを求めて鼻をクンクンさせながら汗水垂らすことが生業と言え、いまいちスッキリしない。これじゃ、全ての分野において大物は育たない気がします...野人なんて言葉があります。田舎者、粗野な人、または無粋な人のことを指すようだが、昔はこんな人の中から世のリーダーが育った気がします。この窮屈な社会から未来を背負って立つ子どもたちを放牧しておくれといいたいですな。

10日に香港国家安全維持法違反の容疑で逮捕された民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏、香港紙創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏が保釈されました。まだまだ油断は出来ませんが、世界の言論弾圧の抗議の嵐に、さすがの中国も手を緩めるしかなかったのではと思います。言論の自由のない国は国ではありません。言論を封殺する国には未来はありません。

今日は、坂本九さんの「上を向いて歩こう」を歌ってみよう♪

明日から16日までお盆休みです。皆さんも有意義なお休みをお過ごしくださいね。

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8月の夕暮れ

2020/08/11
【第1373回】

休み明けの新宿の街を歩いていると、身体が溶けちゃいそうです。それにコロナの恐怖ですからたまりませんばい...特に最近は、20代、30代の感染者が増大してるので、マスクもしてない、お兄さん、お姉さんが近寄ってくると、お~怖でございます。まあ、ぺらぺら良くお喋りしてますから怖さますますヒートアップ。さすがに、街中に年配の人は少なくなりましたね。今日の暑さでは熱中症でぶっ倒れてしまいます。昨日も夕方、家の近くを散歩してたら救急車と消防車が飛んできて何事やかと思ったら、おばあちゃんが道ばたで倒れていました。意識はあるので大丈夫だと思いますが、多分熱中症でしょう。この熱中症、部屋の中でも発症するんですから気を付けなきゃね、おいらはあんまりクーラー好きではないので、ついつい扇風機で涼んでいると、気がついたときは救急車の中なんてことになっちゃいますから...

8月6日(広島)9日(長崎)、今年は原爆を投下されて75年目を迎えました。迎えたなんていい方も可笑しいかな、勝手に落としたんだから...おいらも昨年は長崎に行って来ました。あの地獄絵図を75年間、世界の人に見せつけても何ら変わらない処か、ますます核による抑止という構図は拡大しています。被爆者の高齢化による直接の訴えは減少の一途を辿っています。この唯一の被爆国からの訴えの矢は届くことなく空しく消え去っているなんて考えたくないのだが、現実は厳しいものがあります。世界をリードする指導者がトランプ、プーチン、習近平じゃ仕方がありませんな。でも、残されたものが語り継ぎ、NOを言わねばならないと思います。それが残された、そして存在しているニンゲンの責任です。

香港然り、自由と平和が無くなったときは世の終わりです。自由と平和を維持し守るのは一人一人の日頃の心の鍛錬でしかありません...対岸の火事なんて思ってると大変なことになっちゃいますぞ。

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テッポウユリ(純潔)

2020/08/07
【第1372回】

コロナと一緒に今日も又、あっちっちでございます。暑いさなかに、ふと手に思いを寄せる。生まれてこのかた一日の休みもなく、もちろん修理に出したこともなく、よくまあこき使ったものである。勿論、皺も増え汚れも目立ち、シミもあちこちに出来ている。そんな手に愚痴をこぼしちゃいけませんことよ。この手が指があってこそ何事もスムーズにいくもんでございます。手を見ると、その人の仕事が分かるくらい生活の歴史が刻まれています。工事現場の人達のゴツゴツして手も、事務仕事している人の優しい手も、アートに関わっている人の繊細な手も、どれも美しい。末端の神経が、時と場所と状況を機敏に察知して最終決断を下す、まさしく神の手である。そんな厳しい働きをさせているんですから疲弊するのは当たり前のことでござんすよ。だからこそ労り、感謝の気持ちを持ってくださいね。

そして足指も然り、手に比べ普段は被い隠され目立たない存在です。こっちだって行動の要で、これなくして生の営みはあり得ないくらいの働きでございます。おいらは毎日、風呂に入ったときにもみもみしながら「ありがとう」と呟いています。10本の指が嬉しい悲鳴を上げるのがよくわかります。外出するときも感謝の気持ちを込めて、少しお洒落な靴下を履いております。足下から「ありがとう」が聞こえてきます。

こんな時期だからこそ、己を何気なく支えてるものに思いを寄せるのもなかなかいいもんですよ皆の衆。

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8月の空

2020/08/05
【第1371回】

梅雨が明けた途端に猛暑、そしてコロナの拡大、えらい夏になってしまいましたな...こんな時は、ただひたすら我慢でございます。飲みたい酒も自宅で済ませ、なるべく人に会ってべらべらとお喋りしない。以前より自宅にいる時間が随分長くなりました。自宅のテレビで只今絶不調のライオンズの試合を苦々しく観ております。先発投手が壊滅状態、山賊打線が子猫打線になり、今年は最下位でもおかしくないという危機的状態です。そんな折、アマゾンプライムで観た「ゲーム・オブ・スローンズ」に嵌りまして大変でございます。全部観れば62時間という長丁場、おいらはまだまだ12時間くらいかな。お金をかけた大叙事詩であるのだが、人間の隠しようのない欲望がストレートに描かれているのでリアル感は半端じゃございません。これはコロナのこんな時期にはもってこいの娯楽かもしれませんな。俳優も多士済々で、おいらが関係した、あの人、この人に似てるかな?なんて楽しみ方もしております。

読書もこの時期は最適です。寝床で短編集なんかを読むと自然と眠りにつくことが出来ますね。ひとつの話を凝縮して短編にする作業は大変なことだと思います。無駄を切り落とし、すっきりした文体は読後感も気持ちがいいもんです。双葉文庫が出してる「1日10分のごほうび」なんか面白いですよ。なかでも田丸雅智さんの「梅酒/綿雲堂」ショートショートの傑作ではないかと思ってます。考えてみれば人生も短編の積み重ねでございます...これからもどれだけの素敵な短編を持てるかな?それを楽しみに、残された人生過ごしてみせまっせ!

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鳴く場所違うとちゃいまっか?

2020/08/03
【第1370回】

新宿のランチの大お勧めの「新宿割烹 中嶋」。以前は20分、30分待ちは当たり前だったのですが、外国観光客が来れなくなったのとコロナの影響で今はスイスイと入れます。ここでも何度も書きましたが¥880で新鮮な鰯料理が食べれるなんて本当に素晴らしい。刺身、フライ、煮付け、柳川鍋(¥990)どれを食べても美味なんですが、おいらはいつも刺身。丁寧に胡麻、ネギとまぶされている活きの良い鰯を生姜醤油につけ、ピカピカの白米と絶妙に絡み合い、口にした途端、ああ今日も生きてて良かったと感じる瞬間でございます。ご飯は一膳ではもったいない。勿論、ご飯もおかわり(一杯は無料)しちゃいます。一緒に附いてくるお新香がまた旨いんですわ、もちろん味噌汁も。白木のカウンターで板前さんが捌く腕前を見ながらの食事も、なかなか乙なもんでございます。先輩の板さんが、後輩に向かって発する元気な声も、嫌みではなく食に対する厳しさと礼儀を表していて、これまた気持ちがいい。こんな風景が、日毎に無くなりつつある昨今、新宿の片隅で良心的に営業してる姿に拍手を送りたい。最低でも週に一度は食べたいと思わせてくれる貴重な店でございます。

店を出ますと、目の前には最近コロナクラスターで有名になった劇場「新宿シアターモリエール」があります。入り口は固くシャッターで閉められたままです。表現者は劇場がなければ成り立ちません。コロナが終息した後には又、以前のように新宿文化の旗振りをしてくださいね!

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今日も健在

2020/07/31
【第1369回】

芝居がままならない今、芝居を始めた頃を想い出しました。今から54年前に東京で初めて観た芝居、代々木小劇場「ザ・パイロット」作・宮本研、演出・竹内敏晴、代々木にある60人入れば一杯になる倉庫みたいな空間だった。原爆を投下した飛行士の話なのだが、間近に迫る俳優の演技、見事な戯曲に、芝居って面白いだけではなく社会に訴えるチカラが半端じゃないという印象を受けた記憶がある。次に観た新宿花園神社のテント芝居、状況劇場「腰巻お仙・振袖火事の巻」は頭を金槌で殴られたくらいの衝撃があった。役者が放つ肉体の氾濫と唐十郎の詩的な台詞が相まって、まさしく1970年前後の時代背景にマッチした芝居であった気がする。そんな時代に、サラリーマンなんかやってられるかという思いと、海外放浪の旅予定が、帰りの旅費がないという理由で外務省によって拒否されたことにより芝居の世界に首を突っ込むことに相成ったという次第でございます。

芝居の持つ魅力はなんと言っても総合芸術の極致であり、生身の人間の織りなす芸ではないかと思います。そんなアートがコロナでにっちもさっちもいかない状況に陥っています。

今日も、東京の小劇場でのクラスター発生の情報が流されていました。そして遂に東京では新規感染者が463人に達しました。

なのに、国会はお休み、不思議な国です...日本はもはや国の体をなしていないことに呆れるばかりでございます。

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蜜をみっけた

2020/07/29
【第1368回】

コロナコロナの毎日でございます...正直なところ、いい加減嫌になってきましたね。一歩外に出ればすべての人がマスクを着用してるなんて誰もが予想してませんでした。たまに見かける無着用の人が普通じゃないなんて、なんだか不思議な感じがしています。目元だけしか見えないので無表情の顔がなんとも不気味でもあります。まさしく神の使いコロナは世界の既存の価値観を変えようとしています。人間の叡智が試されてるのか、驕りを気づかせようとしているのか...飲食店での団欒が無くなり消費が冷え込むと、とたんに経済が疲弊し一人一人の収入も少なくなる。考えてみれば、世の中、軽佻浮薄なご時世に乗せられ調子よく世渡りしてきた人たちに匕首突きつけたようなもんで、良かったのかもしれませんね...それだけニンゲンという生き物、鈍感で強欲な生き物ってことですね。勿論、そんなことをとっくに気づいて世のため人のために生きてる人たちも沢山います。そんな人たちに共通してる点は感謝の気持ちを常に持っているということです。そうなんです...ニンゲンの感謝の気持ちの割合が少なくなってくると、ウイルス、天災が舞い込んできます。今一度、感謝の気持ちを取り戻し「俺が俺我の我を捨てて、お陰お陰の気(ゲ)で暮らせ」なんてキャッチフレーズを思い出して欲しいもんでございます。

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サルスベリ(百日紅)

2020/07/27
【第1367回】

福岡市中央区六本松の「マッドハウスひろ」が7月24日に閉店しました...六本松の片隅で50年、ママの田和玲子さん、そして今年1月に亡くなったご主人大志さんともども時代と共に多士済々なお客に向き合いながら店を続けてきました。金儲けではなく、人との関わりから生まれる活力を自ら楽しみながら切り盛りしていたパワーに圧倒されました。おいらが初めて顔を出したのは47年前かな...貧しい演劇青年に温かい愛情をたっぷりと与えられた記憶が今でも忘れられません。あの日のママの言葉がなければ、海外を放浪し再び演劇の世界に戻ることはなかったと思います。「あなたたちのやってる演劇が世の中を変えるとよ...あんたの芝居も素晴らしい!」今思えば大した芝居もできなかったおいらに声を大にして励ましてくれたママの言葉にどれほどの勇気をもらったことか...そして、この店に来るお客の情にどれほど癒されたことか。博多に戻ることは「ひろ」に顔を出すことであり、この店のお客さんと楽しい時間を過ごすことでもありました。この店に集まるお客は誰しもママの薫陶を受けながらも、個々それぞれがユニークな個性を持っている点です。こんな人達と一献傾ける時間は、まさしく至福のひとときです。

人生は言うまでなく、何処で、誰と、どんな時間を過ごしたかによって大きく左右されます。

この「ひろ」はおいらにとって紛れもない人生の豊かさを手に入れる入り口でもありました。

50年間、お疲れ様でした...そして、ありがとう!

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おつかれさま、そしてありがとう
2020年7月15日西日本新聞にひろの閉店について記事が載りました。

2020/07/22
【第1366回】

いやいや、東京は手が付けられない状態になりつつありますな...芝居という生業も厳しくなってきました。そんななか、映像配信を頼りに様々な形でのアプローチをしている演劇界。これからの新しいスタイルの演劇を模索している姿には頭が下がります。すべての表現は人の目に触れてこそのアートです。観てもらってなんぼの世界です...おいらも何本か配信される演劇観たのですが、やはり違和感があります。勿論、色々と工夫しながらの演出も分かるのですが、今のスタイルでは映画芸術には敵いません。演劇の良さは生モノであることは紛れもない事実です。改めて、劇場で味わう役者の息遣い、演技に対しての観客の反応、一回限りのその日、その時だけに生じる生身の人間同士の交わり、なんて贅沢なことなんでしょう!と思っちゃいます。日常の生活の中で、どうしても芝居が必要であるか?なんて言われちゃうと返答に詰まってしまいますが、このアナログアートが無くなった時は、この地球かなりやばい状態だと思います。手間暇かけたものだからこそ価値があるんでございます。コロナなんかに負けてなるものか...幾多の危機を乗り越えて尚、世界に存在感を発揮し続けた舞台芸術、必ずや皆さんのもとに安心してお届けできる日が来るに違いありません。

明日から4連休、都知事も政府も自粛の掛け声ばかり...具体的なことやってくだしゃんせ!と思ってる人たくさんいると思いますが迷走国家はあてになりません。何度も言いますが自分の身は自分で守るしかありませんということですな。こんな時にしかできないことを楽しみながら明日からの連休をお過ごしください皆の衆。

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ギボウシ(花言葉・沈静)

2020/07/20
【第1365回】

おいらが大好きだった映画人が二人亡くなった。先ずは森崎東監督、「男はつらいよ」は山田洋次監督の代表作みたいに言われているのだが、実は森崎さんが考えた話である。「男はつらいよ フーテンの寅」では監督も務めたが、寅さんに立ち小便させるなど型破りな描き方が会社から嫌われ、この1作でシリーズから外された話は有名である。松竹という枠組みからはみ出した規格外の人であった。おいらが大好きだった「喜劇 女生きてます」は新宿ゴールデン街に都電が走ってた一角にある、森繁久弥と左幸子夫妻が営むいかがわしい芸能社を舞台に繰り広げられる人情重喜劇。猥雑さの中から溢れ出てくる生のエネルギー、人間の底力が全編に溢れ、愛おしくなってしまう映画だ。思えば40年前に新宿ゴールデン街「ガルガンチュア」で親しくして頂いた松竹の貞永方久監督と森崎さんとご一緒したことがある。貞永さんは大分県、森崎さんは長崎、おいらは博多、ママは佐賀、九州の話で盛り上がり楽しい飲めや歌えやの夜を過ごした日が懐かしい。山田洋次監督が松竹の天皇に昇り詰めていく姿を横目で眺めながらも、凛としてニンゲンの本質、優しさ、弱さに拘り続けた頑な生き方、おいらは好きです。先に逝った貞永監督と大好きなお酒たくさん飲んでくださいね。

もう一人はイタリア映画に欠かせなかった作曲家、エンニオ・モリコーネ。1960年代にセルジオ・レオーネ監督とのコンビで創った「マカロニ・ウエスタン」で脚光を浴び多くの名曲を世に送った。なかでも、「ニュー・シネマ・パラダイス」は何度聴いてもシーンが目に浮かんで来てしまいます。音楽がたたえる郷愁、優美、心音、すべてが物語の進行、役者の演技と相まって観客の想像力を夢幻・無限に拡げてくれることで、作品が時代を超えて永遠の命になりえることを気づかせてくれた気がします。映画が人生のより良き学校であり、師であることに大きな力を与えた作曲家でもありました。名画に名曲あり...最近は無機質な音が求められるのも時代の流れですかね。感情、心情がたっぷりと溢れた音楽でいいじゃないですか...底に流れるものが純粋であれば立派に通用しますばい。

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梅雨の晴れ間

2020/07/17
【第1364回】

はやばやと緑のオバサン、今日の東京のコロナ感染者、昨日と同じ280人程度と言ってました。なんだか発表する時間、数、操作しているという噂が随分前から出ています。この方の動きも都民目線ではありませんな。その上を行くのが、この国の政治家...Go Toキャンペーンで迷走しっぱなしでございます。そんな予算、先ずは困っている医療従事者、感染を防ぐための検査、そして水害の被災者に差し上げなさいな。先ずは東京の感染源を徹底的に検査し封じない限り雪だるま式に感染者は増加の一途を辿るでしょう。そんな当たり前のことに手を付けない政治家、行政者はまったく信用なりませんな。新宿伊勢丹からも感染者が出て、もはや新宿はコロナの代名詞みたいな街になっちゃいました。おいらがこよなく愛した新宿がこんなになっちゃうなんて悲しいもんでございます。でも、ここを徹底的にやらない限り以前の新宿には戻らないと思います。昨日の参院予算委員会で参考人の東大先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授が、総力で対策を打たないと、「来週は大変になる。来月は目を覆うようなことになる」と危機感をあらわにしておりました。なのに無能な為政者のいつもながらの答弁は「専門家の意見聞いてしっかり対応させていただきます」矛盾してませんかね...おいらも野次馬の一員にはなりたくないが、納得がいかないことばかりで言わないわけにはいきませんがな。このままだと芝居も出来ないし、飲食店、ホテル旅館、他様々なお店が潰れてしまいます。

こんな状況の日々では心も折れてしまいそう!なんて人達沢山いるはずです。人生ピンチの後はチャンスが待ってます。これも自然界の法則ですから、きっとチャンスに繋がるなにかがあるはずですから、心穏やかに次なるステップの道を模索しましょうぜ!皆の衆。

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ありゃ~ 一羽になっちゃった

2020/07/15
【第1363回】

あちゃ~とうとう新宿の劇場でコロナ集団感染が発生しました。おいらも新宿歩いて50年の新宿住民に等しい輩ですから発生した劇場には何回も行きました。アクセスが良く、ちょっとした芝居、ミニコンサート、お笑いライブにはちょうどいい小屋かもしれません。この近くには嘗て伝説の喫茶店「風月堂」がありました。亡くなった俳優、三國連太郎さんと初めて会ったのもこの喫茶店でした。唐十郎さんもここで戯曲を書いていました。麿赤児などなど、一風変わった人たちが集いコーヒー一杯で喧々諤々、芸術、政治談義をしとりました。この斜め前には名曲喫茶「らんぶる」があり、おいらも一杯のコーヒーで3時間ばかり粘りクラッシックを聴きながら本を読んどりました。鑑賞室では指揮者になった気分でタクトを振っていた名物おっさんもいました。フーテン族が大きな顔して街を闊歩してました。おいらの友人だったガンちゃんは、得意のフランス文学をまくしたて一気にフーテンの親分にのし上がりました。新宿グリーン広場(現在のアルタ前広場)に子分を引きいて日々寝転がっていました。大柄でキリストみたいな顔してたんで威厳がありましたな。おいらを見つけると投げキッスをしてました。

そんな新宿ですからライブ・芝居小屋も当然増え続けました。この劇場でクラスターが発生した演目は仕方がないにしても、応対が甘かったなという印象があります。演劇関係者がこの困難のなか必死に耐えてるのにチャライ行為はいけません。ようやく再開した劇場にお客が警戒し来なくなるのを心配してしまいます。

それにしてもGo To キャンペーン、この時期にこれなんですかいな?またもや税金使ってえらいことやりますんやな...なんだ納得できました。全国旅行協会会長が、あの何言ってんのかわからないモグモグ幹事長なんだもの。自民党の集金親分には誰も逆らえませんがな。

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う~ん (´・ω・`)

2020/07/13
【第1362回】

生きろ!カルガモ...おいらのマンションのカスケードに新しい命が誕生しました。昨日の夕方にはヒナ五羽居たんですが、今朝は四羽に減っていました。そう言えば昨日、親ガモの所に行こうと、カスケードの低いところから上方に居る親ガモ、三匹のヒナの所に行こうと階段をジャンプしようと試みる二羽のヒナを見ました。何度も何度も試みようとするのだが、なかなか駆け上がることが出来ないヒナ。親ガモも分かっているのだが助けようとはしません。来れない奴は生きる資格が無いといわんばかりの態度でした。そのうち、一羽は何とかジャンプに成功したのだが、残りの一羽は力尽きたのか...今朝は四羽しか居なかったので、おそらく命を失ったに違いありません。カスケードの周辺の草木には、蛇、ガマガエルなどなど、上を見上げればカラスが虎視眈々とヒナを狙っています。弱肉強食も含め、自然界の厳しさをあらためて感じさせてくれました。

それに比べれば、今回のウイルスなんてとも思いますが、これは又やっかいなしろものでございます。自然界の掟はシンプルなんですが、ニンゲンが作り上げたシステムは全てが複雑で解決策もこれまたややこしいものでございます。この複雑怪奇なシステムは、利便性と富を求めたニンゲン欲がもたらした結果であることは自明の理。不思議なもんで災害、ウイルスなんてニンゲンが誕生する以前に存在したもんでございます。言わば地球という惑星の大先輩。大先輩に対する畏敬の念が足りなかったのでは...いつの時代にも、登場してレッドカードを出しているのに、いつものことを繰り返すニンゲンという生き物やっぱりアホですな...今日もコロナは東京の問題と国が言い、都知事は国の問題と反論、異常事態にこうやって責任転嫁しあうトップのお二人ほんまにどちらもアホですな...カルガモ親子のシンプルな姿を見ながら改めてそう思った次第でございます。

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エサの取り方勉強中

2020/07/09
【第1361回】

Netflixでレディー・ガガのドキュメンタリーを視聴...おいらが好きな歌手の一人です。何が好きだって?すべてを曝け出す覚悟と、日々新しいものにチャレンジする表現者でありながらも、ジェンダー差別やいじめの撲滅に向けた運動を展開するなど、活発に社会貢献活動を行っている行動力。勿論、彼女の歌には、とてつもない愛がありハートがあります。そして奇抜なファッション、この大胆な衣装がわいせつであるという理由で公演中止になった国もあるくらい。既成の価値観、概念を根底から覆そうとする彼女の姿はかっこいいの一言に尽きる。がしかし、彼女の身体はボロボロなのである。ドキュメンタリーの中でも、リウマチ性の疾患である線維筋痛症に苦しみ治療する姿がたびたび出てくる。その苦痛に苛まれながらも己を曝け出し走り続けている...仕事が成功するのと引き換えに、恋にも破れながらも前に進むエネルギーは、ガガ自信の果てしない夢とロマンと冒険心があってこそだと思う。だからこそ、世界の多くの人達の共感を生むのではなかろうか。多くの人が現実に直面し日常に埋没していくなか、ここまで突っ張り駆け抜けていくアーチストは稀有な存在である。才能は勿論なこと、内面の喜怒哀楽を時には優しく、時には激しく表現できる稀代のアーチストである。一回こっきりの人生、燃え尽きるまで生きてみんしゃい!ガガはそんなメッセージを送っているんでございます。

先程、東京都がコロナ感染者最多の224人と発表。こりゃ大変、他県で厳しい関所が設けられるかもしれませんな...どこまで続くぬかるみぞ。

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梅雨の合間の夕暮れ

2020/07/06
【第1360回】

今日も梅雨空の東京...今年早くも水害の報が熊本人吉から流れてきました。おいらも昔訪ねたことがある九州の小京都と言われた人吉盆地。球磨川沿いの温泉と川下りが有名である。ひっそりとした街中で温泉に浸かり球磨焼酎を飲んだ記憶がある。いやいや、毎年のように牙をむく自然の猛威。予想は出来るのだが、こればかりは防ぎようがない。ウイルス騒ぎから、さあこれからと準備をしていた温泉旅館の女将が、泥にまみれた旅館の前で涙も出ないくらいの悲嘆顔が痛々しい。長い間生きてきてのこの惨状、神や仏もあるものかと思っても仕方がありません。昔話題になった衝撃のテレビドラマ「岸辺のアルバム」を想い出しました。1974年の多摩川水害をヒントに山田太一が書いた家庭崩壊と、水害で家を流されたのをきっかけに再生を願うドラマ。昨日も一瞬に全てを失った男性が「アルバムと子供からの手紙が戻ってこない...」二度と再生できないものを失ったときの悲しみは如何ばかりか...

昨日は、東京都知事の選挙日でもありました。予想通りの結果です(おいらは違う人に投票しましたよ)。都民は安全を願ったんですね...とにかくコロナを何とかしなきゃということです。分かっちゃいるけど経済との両立が難しいところです。おいらのお膝もと新宿、結構居酒屋でワイワイガヤガヤやってますが正直大丈夫かな?と心配しちゃいます。かといって又、自粛となるとお店潰れるし、家に閉じ籠もりゃストレス溜まるし困ったもんでございます。こうなりゃ、やはり一人一人の自覚に頼るしかありません。なのに相変わらずマスクもしないで平気な顔して歩いてる若者、おじさんがいるんですな。笛吹いてレッドカード出したいところですが、こんな人こそ何をするか分かりませんから止めときました。オバサンは間違いなくマスクをしておりました。この非常時には、おばさん特有の図々しさ、羞恥心のなさを持つ中年女性と言われたオバタリアンが、なんとも頼もしく思えてきました。

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又、咲きましたアンネのバラ

2020/07/03
【第1359回】

あちゃ...首都東京、昨日の107人、今日早くも120人前後のコロナ感染者ありとの報告。数ばっかりあげて具体的にどうするんや?格好いい字面ばかり並べて具体的に何もしてないじゃん...夜の街、新宿、池袋を日々流すんだったら一斉に検査すればいいのにのらりくらり。一体全体、どこでどれだけ検査してこの数字が出てきたのかさっぱり分かりません。なんだか政治的な意図があって情報操作してる感じがしますな。今日のこんな早い時間に100人超えを早々と発表するのもおかしな話。とにかく、7月5日の都知事選投票日まではのらりくらり作戦。国会議員は早々と夏のボーナス貰って、はやばやと夏休み、いい気なもんでございます。こちらは芝居が全て中止になり収入ゼロ、おいらも含めて社員全員給料大幅ダウン、なのにいろんな税金の請求だけは何の猶予もなく突きつけてきます。あんな酷いことを繰り返してる議員の皆さん、こんな状況の中よくまあしらっとしていられる神経が信じられません。いや、この神経の持ち主だからこそ、厚顔無恥面での国会議員なんでしょうな。

昨日の西村経済再生担当相の発言にはびっくりしました。この方、いままでは少なからず冷静な印象を受けたのだが、昨日は「もう誰も緊急事態宣言はやりたくない」と他人事のような発言で国民を脅してる感じすらしました。

いやいや、誰を信じていいのやら、この混迷の世界どうなることやら...残り少ない人生、おいらなりに楽しみまなきゃと思ってはいるんですがね。心情的には何となく昭和が懐かしいなんて思ったりするんですが、懐古趣味でジジ臭いかな...

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梅雨の空

2020/07/01
【第1358回】

かえるのうたが
きこえてくるよ。
クヮ クヮ クヮ クヮ、
ケケケケ、ケケケケ、
クヮクヮクヮ。

 

梅雨真っただ中、あのカエルが嬉しそうな顔して散歩しておりました。おいらも久しぶりに逢いました。なんだかホットいたしました。この面構え、逃げもせず自分の立ち位置を一歩も譲らないところがふてぶてしい。農薬やら化学散布剤なんかで生き物が息も絶え絶えのなか、この地球の程よいバランスをなんとか保っているのがこれらの生きものたちです。ありんこなど一日観察してても飽きないぐらいの生態でございます。ヤモリ、カマキリ、蝶、蛇、トカゲ、クモなどなどまだまだ見かけることができるところに居るだけでも感謝です。けなげに命懸けで懸命に生きてる姿は、デジタル化された人間どもに、とても大切なことを突きつけてると思います。

 

ミミズだーって
オケラだーーってー
アメンボだーーーってーー
みんな みんな、生きているんだ 友達なーんーだー

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どっこい生きてます!

2020/06/29
【第1357回】

今日は久しぶりにお日さまがキラキラと輝いている...昨日、東京都で新たに60人の新型コロナウイルス感染者が確認されたのに今までと違ってピリピリ感がありません。もうコロナは日常生活に織り込み済み、それとも7月5日の東京都知事選挙日までだんまり作戦。いずれにしても、究極は自分の身は自分で守りなさいってことですな。

外出が今までの様にいかない昨今、家にいる時間が多いと映画観たり、本を読んだり、音楽を聴いたりする日が多くなりますね。そんな時ふと知性なんてことを考えてました...教養があり、知識があるからといって、知性があるなんてことはありませんよね。いくら饒舌に知識の品評会やられても下品な人は沢山いますね。テレビのコメンターによく見かけます。やたら批判ばかりして、新しい価値観を生み出せない人は真の批評家ではないし品格を感じません。只単なる野次馬。たまに知性を感じさせる人も居ますね...そんな人に共通してることは孤独を知っているなと思わせる人...自分の道、信ずるものを貫けば孤独という壁にぶち当たります。その孤独の壁を前にして呻吟、苦闘した末に獲得した寂寥感のなかから孤独の核心に触れることが出来るんじゃないかと...おいらも若い頃、それを確かめたく異国の地に一人旅立ちました。果てしない知の深い森と、人種のルツボの中を旅し悪戦苦闘していました。その経験は、言葉では表現できないとてつもないものを得ることが出来たと思っています。

知性って、美しく、そして優しさだと思います。これを目指して今日から又、ゴシゴシ自分磨きをしてみませんか皆の衆。勿論、おいらもやりまっせ!

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梅雨に咲く花

2020/06/26
【第1356回】

1998年にユネスコの世界遺産に登録されたスペインのガリシア地方にあるサンチアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路は、フランスとスペインを貫く長いルート。この巡礼地を体験するために世界から集まった人達の様をドキュメントにした番組を観ました。1700㎞を二カ月ちょいかけて歩くんですから壮大な旅です。老若男女、様々な人生を抱えながら、ただひたすら歩く旅は、まさしく人生ドラマです。下手なドラマもぶっ飛ぶくらいの味わいがありました。おいらも40年前に、この巡礼路を訪ねました。スペインの中でも地味なガリシア、バスク、ナバーラ地方は素朴な美しさがありました。時にはインチキ大道芸で投げ銭もいただきました。北スペインの聖地サンチャゴ・デ・ コンポステーラの大聖堂にたどり着いたときは感動モノでした。勿論、おいらは歩きではなく投げ銭を頂き安宿と、鈍行列車とバスを乗り継いでの貧乏旅行でありました。でも、今回のドキュメント同様、各地でいろんな人達との交流は、今でも鮮明に覚えています。こちらは守るものもなく、あるがままの姿で接したのでより深く相手の懐に入っていけたと思っています。人生、虚飾が一番邪魔ですな、身に付けたものを惜しげもなく脱ぎ捨ててこそ得るものは大きいと思います。

こんなドキュメントを観ながら、いやいや、おいらもさすがに年をとったなと再確認した次第です。そして今年はコロナ、まだまだこれから先どんなお化けが出てくるかわかりませんが、ここまで来たらなんでも来やしゃんせ!なんでも楽しんで見せますから...

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スペインの田舎

2020/06/24
【第1355回】

昨日は、沖縄戦終結から75年、節目の日であった。沖縄の人たちの4人に1人が亡くなった悲惨な沖縄戦。沖縄タイムス社と朝日新聞社が実施した沖縄戦体験者アンケートで、沖縄戦の体験が次世代に「あまり伝わっていない」「まったく伝わっていない」と答えた人が全回答者216人の62・5%(135人)を占めた。「ある程度伝わっている」は25%、「大いに伝わっている」は7・4%にとどまった。75年の歳月は、この忌まわしい出来事すら風化の道を辿ってしまうのか...新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を秋田、山口で断念したのだから、沖縄の辺野古だって見直すべきだと思う。いつまで沖縄におんぶに抱っこしてるんだい!と言いたい。

1945年4月に米軍が上陸した読谷の海岸を訪れたのは5年前、静かで穏やかな海上に無数の米軍を目にしたときの住民の恐怖はいかばかりであったか、その後の数多くの悲劇は、あるゆる媒体で伝えられている。がしかし、今年のコロナの出現により75年前の出来事も小さく扱われている。沖縄のおばあが何度も何度も口にしていた言葉「戦争だけは絶対にしてはいけない」そして沖縄戦に何もしてくれなかった日本兵のことを思いながら「一生にひとつぐらい良いことをやろうと思っていますが、難しいです。私ができることは、基地建設を止めることぐらい。それができたら、今すぐにでも天国に行ってもいいです。思い残すことはありません。でも、この海を埋めるなら、海に入ってでも止めるよ」

沖縄は美しい海を眺めながらの観光地だけではありません。今なお日本の米軍基地の7割を占める沖縄。その厳しい現実を、いつも心に留めておかねばと思います。

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孤鳥

2020/06/22
【第1354回】

先週の週末は良い天気で、全国各地の行楽地では大変な賑わいでしたね。誰しもが長い自粛の呪縛から逃れ、嬉しそうな表情をしていたのが印象的でした。笑顔がある日常が最良であることは誰しもが望むところです...昨日も都内35人の感染者が出たのに、以前ほど騒がなくなったのも何だか不思議ですね。もうコロナと共生していかねばという覚悟が出来たのか?それとも知事選の影響なのか?専門家会議も含めて急に沈黙が始まったのもなんだか不気味ですね...仕方がないか、どの時代でも、権力は目に見えぬチカラが水面下で巧みに暗躍し、庶民をコントロールするのが世の常でありますから。

無観客でのプロ野球始まりました。キャッチャーのミットに収まる球音がたまらんですな。普段観客の声援で聞こえなかった様々な音がとても新鮮です。選手の掛け声が素晴らしい応援になっています。打てなくてションボリ、打たれてガックシなんてしないでその分声出してベンチを盛り上げんかい!ライオンズ昨日はボロ負け。まだまだ始まったばかり、今はこのプロ野球の選手たちが、この国を励ます役割だからしっかりと熱いプレーしてくださいね。

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可憐なヤマアジサイ

2020/06/19
【第1353回】

今日から待ちに待ったプロ野球開幕...なんだか世の中ぱっとしないご時世、ここはスカッと一投一打に酔いしれたいですな。我がライオンズ、今年も山賊打線(おいらこの呼び方気に入ってませんな。獅子脅し打線なんてのはどうでしょう)が話題になってます。秋山が抜けた影響なんてどこ吹く風、次から次に活きの良い選手が現れるのがライオンズの伝統です。ホームランバッターの山川の弟子である川越(丸坊主でひげを蓄えているのでこの選手こそ山賊に相応しいが)がお線香の青雲のテーマ曲をバックに登場する様は笑えます。2年前まで投手だった選手がスラッガーにまで成長するんですから、ライオンズのスカウト陣の目のつけどころ、コーチの指導の良さがあってからのことでしょう。あとは投手が順調に育ってくれれば言うこと無しなんだが、そうは上手くいかないのがこれまたおもしろいところですな。芝居もそうなんですが、ハラハラ、ドキドキがあってこその感動だと思います。

おいらが博多の少年時代のヒーローだった西鉄ライオンズから68年、いまだにライオンズが残ってるだけで嬉しい限りです。この歳まで諦めず応援してるおいらも野球馬鹿かもしれません。年間シートを買おうかななんて考えたこともあるくらい。

いよいよ芝居も再開されるみたいです。トムも9月の公演に向けて少しずつ準備を始めています。コロナコロナなんてばかりじゃ埒があきませんがな。

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間借りしてます

2020/06/17
【第1352回】

今日の東京も暑いですが、湿度が低い分少しは爽やかです...遅まきながら「全裸監督」観てます。伝説のAV映画監督、村西とおるの自伝を描いたドラマです。何年か前に書かれたドキュメンタリー小説も面白かったので、どうテレビ映画にするのか興味がありました。いやいや、完全に今のテレビの在り方をぶっ飛ばしていますね。当然、過激なSEXシーンはありなので地上波では無理なのはわかっているんだが、生き物にとってのエロスに対する志は高いんじゃありませんかな...俳優の演技は勿論、セットにもお金かけてるし、なによりも脚本、演出が素晴らしい。こんな作品を、子供と一緒に観る家庭なんてないとは思いますが、もしやあるとすれば子供の感想を聞いてみたいなとも思いました。性なるものに対する考え方様々だとは思いますが、どんな時代になろうとも基本的に変わらないのでは...唯一言えることは、この作品に満ち溢れる創り手の凄まじいエネルギーに比して、昨今のテレビドラマの何と希薄なことか。これじゃ、お茶の間の皆様、ぼけっとぼんやりと時間を過ごし、遂には物言えぬ民になっちまいますぜご用心。

それにしても、こんな非常事態なのに本日におきまして国会閉幕。こんな時こそ、時間を惜しんで国民のために働くのが国会議員じゃありません!このままだとまさしく税金泥棒、森友・加計・桜の会そして相次ぐ大臣の不祥事、こんな内閣を倒せない野党の泥弱さもつくづく情けない...いつになったら成熟し任されるお国の体制になるんでしょうか?あの世に行くまでには見てみたいと思いますが、所詮無理な話でございませんかね...

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新宿無宿

2020/06/15
【第1351回】

今日の東京は夏真っ盛り...またまた東京はコロナ感染者が増え出しています。新宿区が集団検査を実施したホストクラブの従業員から18人感染者が出たとのこと。皆、無症状というから困ったもんでございます。新宿だけじゃなく東京都内には無数のコロナ患者が徘徊してることが十分予想されます。こうなったら、もはやコロナありきで生活しないと社会も成り立ちません。マスクもファッションの一部、ソーシャルディスタンスも意識しながらの普段の行為などなど、いまでも人の体温が遠くなりつつあるのに更に拍車を掛ける人間関係になっちまいますな。悪者扱いにされてる夜の社交の場であるクラブのお姉さん達が、フェイスシールドを付けながら、間を置いて接客してる写真を見る度に、そんなことまでして行くお客居るのかなと正直心配さえしてしまいます。ものの見方、考え方が変化せざるをえない世界が見えてきました。勿論様々な価値観も含めて...敗戦、二つの震災のときにもその兆しはあったにも関わらず、このコロナはなんだか無気味です。目に見えない敵(いや、愚かなニンゲンに再考を促すために神様が遣わした使者かもしれませんぞ)を前にして世界はてんやわんやの大騒ぎ。このコロナの対応いかんで、その人となりが見えるときもあります。まさしく試されてるんですね。

今日も東京都48人の感染者...すべてにおいて相当緩くなってるので、またまた緊急事態宣言なんてことにもなりかねない週の始まりです。

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毎日すみませんです

2020/06/12
【第1350回】

いやいや、又もや給付金を巡って揉めてますな...おいらも中小企業コロナ助成金の申請会場に行ってまいりました。たくさんの搔き集めたであろう人たちが、それこそ汗を掻き掻き応対していました。急なことなので仕方がないとはいえ、なんだか頼りないなという印象を受けました。おいらにあたったおばさんは丁寧な応対だったんですが、こちらが間違いを指摘したぐらいですから、やはり付け焼き刃の印象を拭えませんな。それは仕方ないとはいえ、やはり不透明なお金のたらいまわしはいけませんことよ。しかも、血税ですから尚更のことです。このコロナ騒ぎで、どれほどの人たちが戦々恐々たる思いで過ごしているか...先日も、覚醒剤に溺れた25歳の女性が、夜間中学の存在を知り学ぶ喜びに浸ってる最中にコロナのために学校の閉鎖。絶望し、またもや覚醒剤の世界に戻り自死。日々、報道される老舗飲食店の閉店記事。自宅で飲食することに慣れた人たちを店に呼び戻すことは並大抵なことではない気がします。これから再開される劇場にしたって定員の半分のキャパ。様々な制限の中での苦心惨憺な商いは明日の展望を見通せない状況になっています。そんななか、税金に守られて生活している政治家、役人が疑惑紛れのことをしてるとしたら打ち首もんでございます。

そんなこんなのなか、都知事選は来月5日が投票日。あのおばさん、さすがに風を読むのはさすがです。本日、東京アラート解除、そして午後には出馬宣言。オリンピックが中止になった途端に感染者増大..."小池"にはまって、さあ大変!みたいなことにならないように、よくよく見極めて投票しましょうね都民の皆の衆。

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どっしりしなきぁ

2020/06/10
【第1349回】

横田滋さんが亡くなりました...妻の早紀江さんが、参列者へのあいさつの中で『天国で待っていて。私も行くから、忘れないで』と耳元で大きな声で叫んでいたとのこと...このご夫婦の思い言葉になりません。それにしても、北朝鮮の指導者の卑劣な行為断じて許すことが出来ないどころか、抹殺ものだと思います。しかしながら冷静に考えてみれば、この朝鮮半島の人たちも犠牲者なんですね。大国アメリカとソ連(ロシア)の代理戦争で国を引き裂かれ、今なお北朝鮮は、中国とロシアの間でうまく利用され泳がされてる事実。こんな理不尽な国、誰が見ても怒りを禁じえないのだが、残念ながら時代は常に時の権力者の思惑で動いていく。横田滋さんは、亡き川島なお美さんとの交友関係があり、いつもあの笑顔でトムの芝居に来ていただきました。挨拶もしたのですが、さすがに拉致されためぐみさんの話はできませんでした。13歳で拉致された恐怖、その後の北朝鮮での生活を想像しただけで胸が詰まる思いです。そして43年間、早紀江さんと帰国を願っての運動。どうにもできない世界の不条理を改めて痛感する次第です。

そんな愚かな人間が織りなす不当なゲームとは無関係に、自然はいつものように色鮮やかに魅せてくれます。日々濃さを増す紫陽花の色に、梅雨入りの予感を感じさせる今日この頃です。

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関東もそろそろ...

2020/06/08
【第1348回】

週明けの東京は初夏の感じですが、来週から本格的な梅雨入りらしいです...家にいる時間が多いとついついテレビを観てしまいますね。昨日はYouTubeを覗いてみました。いやいや感動しましたな。81歳のJazz好きのおばあちゃんが、死ぬまでにJazz発祥の地アメリカニューオーリンズに行きたいということで孫と一緒に行く事になった。街を散策中に黒人のトロンボーン奏者と出会い、自分が出演している1750年に建てられたという老舗のプリザベーションホールにぜひ来てほしいと誘われるが、孫が発熱してしまい行けなくなる。旅行も終わりに近づき、おばあちゃんはどうしても行きたいということで誘われたホールに行く事となる。演奏中にリクエストを訊かれたのをきっかけに、このおばあちゃんがライブのセッションに加わることと相成る。おばあちゃんがやっていた楽器がなんとドラム、実は戦時中に亡くなった旦那さんとバンドを組んでたそうだ...ここからのおばあちゃんのドラム捌きに加え、若々しく楽しく嬉しそうな表情が実にいいのだ。曲はデューク・エリントンの名曲「A列車で行こう」81年間生きてきたおばあちゃんの大切な宝物が、この異国のあこがれの地で一気に昇華した感がある。ドラムの側には亡くなった旦那さんの遺影が見守っていた。そして共演者である年老いた黒人プレーヤーがこれまた実にいい!

宿に戻り、おばあちゃんが孫に語る言葉「これからは、あなたたちの時代なんだよ...」

人生初めての海外の旅で、こんなことが起こるなんて...諦めちゃならんのよ。思えば叶う!いや、「しあわせは いつもじぶんのこころが きめる」が相応しいかな。

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雨が待ち遠しい

2020/06/05
【第1347回】

いよいよ6月19日、待ちに待ったプロ野球が開幕します...と思ってたら巨人の選手二人がコロナに感染、そして次の日には陰性。それにしても、コロナは人騒がせな生き物です。今のところ、この世のすべてのスケジュールはコロナ君に聞いた方がいいのかもしれませんな。このコロナの幻影がよぎるとついつい行動が鈍ってきます。昨日は久しぶりに外で食事したのですが、どのお店も閑古鳥状態でございました。しかも警戒地区の新宿ですから尚更かもしれませんね。それにしても、すべてを解除しておきながら大阪が感染者ゼロなんてのも不思議ですな。今や人気ナンバーワンの吉村マジックが効いたのかな?それとも何かあるのかな...あれやこれや考えすぎるのも良くありません。勿論、警戒しながらもポジティブに思考、行動しなければ息が詰まってしまいますがな。今日から我がライオンズもホームグランドで練習試合、公式戦がスタートします。パリーグテレビでじっくり観戦できるのがちょいとした息抜きでございます。無観客で寂しいなんて人もいるとは思いますが、ここはあのうるさい宗教まがいの応援から逃れられ、じっくりと選手のプレーを観れるいい機会と思ってプロ野球を楽しみましょう。プロ野球テレビ観戦の持ち味は、選手の表情、球筋などなど事細かに観察できるので、より一層野球の奥深さを味わえるということです。まさしくグランドは人生劇場でございます。

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水無月の野の花

2020/06/03
【第1346回】

昨日、東京アラートが発令...なんだか戦時下にある首都ってな感じですね。あのオバサン深刻な顔して新宿の飲食街を名指しで警告しておりました。中でも、ホストクラブ、ガールズバーなんかを挙げてましたが、もちろんキャバクラ、ゲイバー、新宿ゴールデン街なんかも入ってるんでしょうね。テレビに映し出される歌舞伎町のネオン。いつの時代にも、この歌舞伎町は、良妻賢母の方々には日本で最悪なデンジャラスゾーンとして忌み嫌われてました。確かに歌舞伎町、危険な匂いがプンプン匂います。おいらは学生時代に歌舞伎町のど真ん中に下宿したこともあります。いかがわしいニンゲンを観察するには最適の場所でありました。考えてみれば、この世は聖と俗で成り立ってると思います。長い人生の中で、聖なるもの俗なるものの間を、ゆやーんゆよーんと行ったり来たりするからこそ面白いんじゃございません。清く正しくなんて標語はあくまで建前でしかありません。俗なるものの中にこそ生きるヒントがびっしりと詰まっているんでございます。

この怪しい新宿の街から、おいらは半世紀にわたってたくさんのことを学んできました。若い頃にも、世界の危険で怪しい街に敢えて侵入し、危うく命を奪われそうにもなりましたが、それに比べれば歌舞伎町なんて可愛いもんでございます。この街でしか生きていけない人達が存在するのも確かだし、この街に行くことによって救われた者も数多く居たはずです。

街はまさしく劇場。目の敵にしないで、それなりにそれぞれに楽しもうではありませんか皆の衆。

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プリンセスミチコ

2020/06/01
【第1345回】

東京は朝から雨が降っています。そろそろ本格的な梅雨入りですね...小暮夕紀子著「タイガー理髪店心中」読了。2年前に芥川賞受賞した若竹千佐子著「おらおらでひとりいぐも」も面白かったのだが、こちらの作品も老夫婦が主役の高齢老境小説。まず文体が面白い。言葉がいきなりジャンプする様は痛快そのものである。一人息子を亡くした老夫婦の感情の揺れが繊細かつダイナミックに描かれる表題作の他、もう1編「残暑のゆくえ」は満州から引き揚げてくる苦渋の過去を引きずりながら、現在と過去を行き来しながら、日常の奥に潜む殺意、狂気を見事に描ききっている。この感覚こそが文学の持つ醍醐味ではなかろうか...

飲みにも行けない日々、好きなJazz聴きながら読書三昧の日々もなかなか贅沢なものである。

先日、稲盛財団がこの期にアート活動が出来なかった団体に3億5千万円を助成するというプラン今日発表されました。トム・プロジェクトも500万円頂きました。この苦しい時期、本当にありがたいです。民間企業でありながら、真っ先に手を挙げこれだけの事業を敢行する稲盛財団に敬意を表したい。頂いたお金、そっくりそのまま舞台を待ち望んでる全国の演劇愛好者のみなさんに、素敵な芝居でお返ししたいと思ってます。

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水無月

2020/05/29
【第1344回】

今日の東京は清々しい青空、いや夏の香りがいたします...演劇の本格的な再開はまだまだですが、この状況を打破すべく、すべてオンラインで演劇リーディングを作りますなんてことを始めた団体もいくつかあります。方や、今後の活動資金を集めるためにクラウドファンディングを立ち上げた劇団も増えつつあります。この国の政府もアドバルーンを色々と打ち上げては居るんですがいつになるやら?待ってたら潰れてしまうと言う危機感から様々なアクションを起こしているんですね。あのマスク先日、やっとおいらの所に届きましたが、まだ2割配布完了、全ての所帯に届くのは秋だとのこと、笑っちゃいますよね。なのにあのおっさっん堂々とマスクを付けては居ますが、心なしか最近お目々が泳いでおります。フランスでは今月、芸術分野で働く人への救済策を発表。1日50ユーロ(約5800円)来年の夏まで支給されるとのこと。ドイツ、イタリアでも同様な支援策を行うとのこと。さすが芸術が日常にしっかりと繰り込まれてる大人の国ですな。「文化的な催しは私達の生活にとってこのうえなく重要だ」とドイツのメルケル首相もはっきりと断言しています。

と言っても、居酒屋他、様々な人達が路頭の迷うなんて事態が起きている昨今、芸術だけが特別視されるのも無理があるのかも知れません。でもアートはこんな時こそ心の糧になりますよネ。

いばらの道はまだまだ続きます。そんな時には胸を張って空を見上げると何故か明るい未来が見えるような気がします。

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空はキャンパス2

2020/05/27
【第1343回】

未だ学校に行けない子どもたち...相当ストレスが溜まっているらしい。大多数の人がいらいら、不安、悲しいなんて言葉でアンケートに答えている。そんななか6%の子供が、楽しい、嬉しいと答えている。おいら思わずほっこりしました。この少数の子どもたちに日本の未来を任せたいと思ったくらいよ。よくぞ言ってくれた!正直で宜しい。今の学校教育、環境は子供いじめのなにものでもありません。新入生が大きなランドセル背負いながらやっとこさ歩いてる姿見ただけで胸が痛みます。いい学校、一流企業に行くための予備校みたいな学校には辟易してしまいますがな。子供はまずは遊ぶのが第一、鼻水垂らして、野原を駆け巡り、河原で戯れるなんてことは、遠い昔のことかも知れないけど、それに類する遊びは今の時代多種多様の筈である。その方向に導いてやるのが大人の役割の筈なんだが、このしゃちこばった社会ではなかなか上手くいかないんですな。アンケートの6%の子どもたちはその辺のところをとっくに見抜いているんでございます...いや、単に遊びたいだけかな?でも、ここが肝心、遊びたいという気持ちが心身を駆け巡ってることに意味があるんです。遊ぶ=楽しい。この法則の中から世の中の常識を打ち破り発明、発達、改革が生まれたんでございます。

あのレオナルド・ダ・ヴィンチの比類なき想像力の秘密は、異なる要素を関連付け、それを結び付けて一つの新しいパターンを作るという彼が生涯を通して行ったことにある。彼の多くの発明や設計は、自然界に存在する異なる形を想像力と遊び心で組み合わせて作ったものだとさ。

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徐々に再開

2020/05/25
【第1342回】

今日は良く晴れて気持ちの良い週明けになりました...今日の夕方にも、首都圏北海道において緊急事態宣言が解除され新しいステージへと進むみたいですね。不要不急、自粛の言葉が氾濫し全国民になかば脅しみたいな3カ月でありました。考えてみれば、不要不急なんてことは、一人一人の個人差があってお上のこの言葉に違和感を感じる人もいるに違いません。例えば悪者扱いされてるパチンコ、確かに三密には当てはまるかもしれませんが、このパチンコに店に行くことによって心身のケアをされてる人が居るに違いありません。おいらも学生時代にパチンコに嵌ったこともあります。何故か心が落ち着く心地よさを感じた記憶があります。今では、アホらしくて時間の無駄でしかない遊技場だと思っていますが、何事も年齢、環境によって不急不要なんてものは変わるもんだということを言いたいんでございます。

この世の中、SNSが大きな顔して世の中を相手に楽しんでるみたいです。これらの発言に左右され、あっちにフラフラ、こっちにフラフラなんてことになっちゃうのが怖いですな。とにかく、このコロナ君、驕り高ぶった地球人にいろんなことを試しているんですね。何が真実なのか?物事の本質を見極めるのには大変良い機会だと思いますよ皆の衆。

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空はキャンパス

2020/05/22
【第1341回】

高校球児の無念の涙が印象的です...春も夏も甲子園を目指して3年間汗水垂らした結果がこれじゃ泣くにも泣けませんですわ。でもね、野球を通じて得たものは大きいと思いますよ。おいらも今から62年前、中学に入学と同時に、その当時博多のヒーローであった西鉄ライオンズの一員を目指すべく東住吉中学校の野球部に入部。但し、野球の練習なんかさせてもらえませんでした。グランドでの声かけと、グランド外に飛んでいったボール探しの日々でありました。ボールの行き先は近くに流れていた泥河。体中泥だらけになりながら必死こいて泥をさらいながらひたすらボールを探し続けました。泥水を見ながら、おいらはほんなごつライオンズの選手になれるんだろうか...やっと二年生になり、少しは野球の練習をさせてもらうようになったのだが、当時の監督がスーパースターであった新一年生(後にプロ野球選手になりました)に恒例のボール拾いをさせなかったことにおいらは激怒し野球の道を断念しました。この頃からどうやら理不尽なことには退かない性格になっちまったのかも知れませんな...でも、おいらのなかでは、あの日々の泥河と対峙のなかで培われたものこそが計り知れない財産になったと思っとります。

今回の中止、あなたたちのこれからの人生で大きな意味を持つと思いますよ。だって、人生何事においても無意味なことはありませんからね。今回の無念の選手の中からプロ野球のスーパースターが誕生するかも知れません...ファイト!

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探しものは何ですか?

2020/05/20
【第1340回】

またまたしつこいようですけど大日本帝国の子供用マスク未だ届かず...もういらんがな、友人から手作りのマスクが届きました。それはそれは心のこもった愛情満点のマスクでございます。こんなマスクだったら喜んで使いたいな。どんなものにも様々な思いが込められているんでございます。今回のお国のマスク、ほんまに困ってる人を助けようと思ってのことか、それとも政治家の点数稼ぎの思いつきか、もうほとんどの人は後者の視点からの発想だと気付いているんじゃないかしら。

それにしても、日々新しい生活様式が浸透しているのを感じる今日この頃でございます。電車に乗っても、今までは席が空いてれば必死こいて座ってきたのが、なかなか座ろうとしません。吊り革も寂しそうでぶらぶら宙を舞ってます。それでなくても、人と人との体温が遠のく昨今、ますます寂しくなっちゃいそうですな。若い人の間では、なるほど人間関係のわずわらしさにはうんざりしてるんでしょうが、人が居てこその自分です。確かに今回のコロナの出現、様々な価値観を生み出して来るに違いありません。試されてるんですな人間の叡智を...そんな時に、路傍で咲く花にどれだけ癒されるか...ほんまにありがとう。

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シャクナゲ

2020/05/18
【第1339回】

しつこいようですけど、まだお国の配給マスクは届いておりません。それどころか100円ショップでも売り出したとか...新宿のいろんな店でたたき売りも始まっています。方や、世間を騒がせている検察庁法の改正案を含む国家公務員法の改正案、今国会での成立見送りになりそうですな。コロナ騒ぎのどさくさに紛れて、よくまあこんなこと思いつきますな?アベちゃんの疲れたお顔、白髪交じりの伸びすぎた頭髪を見ていると、そろそろ潮時ですな...いや、よくぞここまで粘り腰で持ちこたえたなと思っちゃいます。最近は同情すらしてしまいます。ただひたすら役人が書いた文書を読んでる貴方、後は優秀な後輩議員(誰かいな?いや、居ないかな)権力の座を引き渡し天真爛漫な奥様とゆっくり温泉旅行でも行ってくださいませ。

東京のおばちゃまも、まあ横文字ばかり並べ相変わらず頑張ってますな...いま人気ナンバーワンの大阪知事に負けてなるものか、そして都知事選そして来年やるかもしれないオリンピックに向けての根回しも含めてなかなかしたたかでございます。それに比して、その対抗軸になるべく野党はなんともまだ非力ですな。つい最近まで自民をけなしていた議員が自民党入党なんて記事を見ると腹立ちますがな。議員辞職してから民意に改めて問え!と言いたい。なんとかコロナに耐えられてるのは国民、そして医療従事者の頑張りであることを再度認識して政治、行政の皆さん、この先不安を抱えている人達のために汗を流してくださいませ。

それにしても、芝居はいつになったらやれるんだろうか?マスクしながら芝居やってくださいなんてアホなこと真面目な顔して言う奴がいるのだが...いや、そんな演劇が主流になる時代が来るのかもしれませんぞなもし...や?

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やすらぎの場

2020/05/14
【第1338回】

アベノマスクいまだに届きません。不良品マスクの検品に8億かかるとか...あほくさ。それにしてもこんないい加減なお上なのに庶民はなんと忠実でまじめなことでしょう。その結果、明日から39県につき異常事態宣言解除のことらしい。おいらなんかは、どちらかというとラテン気質なので、今回の諸々そんなにまでとは思いますが、今回は一人だけの問題ではありませんからおとなしくしておりました。それにしても昨日、ラテンの人たちがヤマダ電機で好き放題やっとりましたな。たぶんイタリア人かと思いますが、カップル二人ともマスクも付けず店内を大声で喋りまくり抱きついてチュまでしとりました。イタリアのコロナ騒動の要因を見せつけられた思いでした。それにしても、店員何とか言わんかい!マスクを渡すとか注意をするとか...それに比べて、最近ようやく店をオープンしたヨドバシカメラは立派でございます。入り口を制限し、マスクをしてない人は入れないし、フェイスガードをした店員が一人一人お客の行き先を聞き、消毒スプレーをしてからの入店を徹底していました。この厳重なるチェックで店内もほとんど人が居ない状態でございました。老舗の店と成り上がりの店の違いかな...気をつけねばなりませんな。異常事態に陥った時に、会社の本性、人の本性が出るんですね。このコロナ君いろんなことを試してるんだと思います...

こんな時期は美しい花を観賞するに限ります。今年もアンネ・フランクのバラが一斉に咲き誇っています。オランダのアムステルダムにあるアンネ・フランクの一家など8人が1942年から約2年間、ナチスの迫害から逃れるため隠れ家に籠っていました。それから、78年後、世界は同じ状況を強いられています。アンネ・フランクの苦難を思えばなんのこれしきなんて思っちゃいますね。

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アンネ・フランクのバラ2

2020/05/11
【第1337回】

おーいアベちゃん、あの子供用マスクまだ届きませんよ...今日新宿歩いていたら、タピオカ店、中華料理店、ランチ食べたら1枚プレゼントなどなどマスク価格破壊が始まってますよ。もう要りませんバイ。貴男の老後に備えて差し上げますよ。テレビ付ければコロナか再放送番組、にわかコロナ評論家があーだのこーだのとしゃべくりまくっています。何がほんとやら?コロナを巡っての各局視聴率争いをやってる気がしてなりません。本心からコロナで死活問題で困ってる人達のことを心配しているのかしら?なんてこと思いながら観流しています。ほんまに、この危機は自らで守るしかありません...最近やたらと地震も起きてますし、今以上のパニックが待ち受けているのかもしれませんぞ...なんて、びくびくしながら生活するのもしゃくですからそれなりに楽しんで居ます。散歩すれば、さりげない野の花に出逢うし、幸せそうな親子連れ、深刻を絵に描いたような人などなど町はまさしく劇場です。家に戻ればおいしいワインにJAZZ、最近手に入れたアマゾンのアレクサで洋楽、邦楽何でもゴザレの聴き放題で快適な日々を過ごしています。映画館もお休みなのでテレビで映画も観ています。最近の傑作はデンマーク映画「きっと、いい日が待っている」社会の理不尽に真っ向から向き合い戦った兄弟の話です。脚本もいいしカメラワークも抜群、そして何よりもこの兄弟役の二人の自然な演技に驚嘆。世界には、まだまだ知られざる表現者が数多く居るに違いない...あまり世間的に話題にならない佳作に出逢う喜びを感じた一日でもありました。一日一生、そしてなによりも、こんな時こそ感謝の気持ちです。

感謝の日差しで花が咲く、不満の嵐で花が散る...なんて気持ちで過ごしましょうね。

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今年もアンネのバラ咲きました

2020/05/07
【第1336回】

さて、緊急事態宣言の延長も決まり、おいらも今日から仕事です。この宣言で、6月の芝居「たぬきと狸とタヌキ」も中止になりました。メディアは飲食店の情報は度々流しているのですが、舞台関係はあまり目にしません。おいらの同業者の人たちの悲痛な声は、それはそれは大変なものでございます。

文化にあまり熱心ではないこの国だからやむを得ないことだとは思ってますが、このままでは、すべてのアーティストはただただ疲弊し才能の芽を摘まれてしまうでしょう。アルバイトもできない、舞台にも立てないでは、夢も希望もありゃしない!

でも、こんな状態だからこそ、早く舞台を観たい!なんて人たちが全国津々浦々にいらっしゃることは我々にとっては本当にありがたいことです。今月、「Sing a Song」が中止になった演劇鑑賞会の方から、本日激励の手紙が来ました。

 

人と人とのつながりを大切にしながら、この運動を共に進めて来たわたしたちにとりましては、不安の多い日常でありますが、安心して再び芝居が観られる日を願いながら、待ちたいと思っております。「演劇の力」を信じています。笑顔でお会いできる日を楽しみにしながら...お体を大切に!お互いに頑張りましょう。

 

こんな人たちのためにも、ここはなんとか凌いで幕が開く日を迎えたいもんでございます。

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早くはずしたいわ

2020/04/28
【第1335回】

人類の分断か、それとも新しい価値観を生み出す予兆なのか、コロナの出現は世界に様々な課題を投げかけている...この見えないモンスターの出現は、これからの世界の規範を決めるのかも知れない。しかもその決定はニンゲンに委ねられているから始末が悪い。この世界のどの国を見ても傑出した指導者が皆無である。それどころか自国第一主義者が睨みを効かせ世界を牽引している振りをしているので、これまた始末が悪い。こんな状態だから、いくら国の指導者が自粛を強制しても聞く耳を持たず羽目を外してしまう。もしや、今後、第二第三のウイルスがやってきたら?いや、その可能性は極めて高いと言わざるをえない。

昨日家に帰ったら、コロナ君より、こんな手紙が来てました。

 

地球は囁きました。

でもあなたは耳を貸さなかった。

地球は話しました。

でもあなたは聞かなかった。

地球は叫びました。

でもあなたは耳を塞いだ。

そして、私は生まれました...。

 

私はあなたを罰するために生まれたのではありません...。

私はあなたの目を覚ますために生まれたのです...。

 

地球は助けを求めて叫びました...。

大洪水でもあなたは聞かなかった。

燃え盛る火事でもあなたは聞かなかった。

猛烈なハリケーンでもあなたは聞かなかった。

恐ろしい竜巻でもあなたは聞かなかった。

汚染した水により海の生き物が死んで行く。

警鐘を鳴らして氷山は溶けて行く。

厳しい干ばつ。

そんな時、あなたは地球の声を聞こうとはしなかった。

 

地球がどれほど悲観的な危機にさらされていてもあなたは聞こうとしなかった。

終わりのない戦争。

終わりのない貪欲さ。

あなたはただ、自分の生活を続けていた。

 

どれだけの憎しみがそこにあろうと、

毎日何人が殺されようと、

地球があなたに話そうとしていることを心配するより最新のiPhoneを持つことの方が大切だった。

 

でも今、私はここにいます。

そして、私は世界のその軌道を止めました。

ついにあなたに耳を傾けさせました。

 

私はあなたに避難を余儀なくさせました。

私はあなたに物質的な考えをやめさせました...。

今、あなたは地球のようになっています。

あなたは自分が生き残ることだけを考えています。

 

どう感じますか?

地球を燃やして...、

私はあなたに熱を与えました

汚染された地球の空気...、

私はあなたに呼吸への課題を与えました。

 

地球が毎日弱って行くように、

私はあなたに弱さを与えました。

私はあなたから快適さを取り除きました。

あなたの外出。

あなたが以前は忘れていた地球とその痛み。

そして私は世界を止めました。

 

そして今...、

中国の空気はきれいになり、

工場は汚染を地球の空気に吐き出さなくなり、

空は澄み切った青色に、

ベニスの水は透明になりイルカを見ることができます。

なぜなら水を汚していたゴンドラを使ってないから。

 

あなたには、自分の人生で大切なものは何かを考える時間が出来ました。

もう一度言います。

私はあなたを罰しているのではありません...。

私はあなたを目覚めさせるためにここにいるのです。

これが全て終わったら私は去ります...。

 

どうか、これらの瞬間を覚えておいてください。

地球の声を聞いてください。

あなたの魂の声を聞いてください。

地球を汚さないでください。

争うことをやめてください。

物質的なことに気を取られないでください。

そして、あなたの隣人を愛し始めてください。

地球とその生き物たちを大切にし始めてください。

 

何故なら、この次、

私はもっと強力になって帰って来るかもしれないから...。

       

〜コロナ・ウイルスより〜

 

明日から事務所も5月6日までお休みです。

皆さんコロナ君には油断してなりませんぞ!考えてみればこんなチャンスは2度とありません。読書するなり、名画をビデオで観るなり、勿論、自分自身を見つめ直すなり、いろいろとやることあるではありませんか...皆の衆、自分磨きのGWにしましょうね!

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新緑2

2020/04/24
【第1334回】

無念です、悔しいです...岡江久美子さんが亡くなりました。最後に見かけたのが、今年2月15日に上演された歌劇『400歳のカストラート』での、おいらの前列の客席でした。1日限りのこの公演に大和田獏さんと娘さんの美帆さんが朗読で出演されてました。マスクをされていたのですが、いつもの明るい笑顔でした。

その後、獏さんとは「Sing a Song」の公演に向けての稽古を重ねていました。この公演も中止になったのですが、その後の獏さんの心境はいかばかりであったろうか...獏さんを見てると、多くを語らずとも岡江さんとの深い信頼と愛情を感じていました。この二人の関係があってこそ、あの明るさと優しさが生まれてくるのだなと思っていました。63歳若すぎます...これから獏さんとのまだ見ぬ夢があったに違いない。共に人生の第四コーナにさしかかり、我々に届けられるプログラムが計画されたに違いない。

でも、獏さん、肉体は滅びても岡江さんのキラキラした魂はいつまでも多くの人達の心の中で輝き続けていますよ。そして、獏さんが再び舞台で輝く姿を一番望んでいるのは岡江久美子さんかもしれません。

合掌

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静かな今日の新宿

2020/04/22
【第1333回】

外で食事できない、不要不急の外出禁止となれば、普段はあまり観ないテレビも観ますがな...先日観た知床半島の老漁師とヒグマの共生ドキュメントは面白かったな。知床の番屋で4月から11月まで生活する浜辺はヒグマの生息地でもあるのだが、この老漁師はヒグマが近寄ってくると腹の底から絞り出す「こら!」の一声でヒグマは立ち去ってしまうのである。漁でとれた魚も一切分け与えない。厳しい距離感を保ちながら共存している姿に教えられるものがある。何事にも甘えず、厳しい自然環境の中で、いかに生き延びるか。ヒグマに対面したときには決して目をそらさず、相手の目を凝視しながら「こら!」の一声で察するヒグマと老漁師とのいのちの対話。青森の貧しい漁師の家から流れ流れ辿り着いた地の果て知床。とても84歳とは思えない彼の身体に宿った魂が、生きとし生けるものと共鳴し野生の動物と交流するまでになった姿に理屈も解釈もぶっ飛んでしまいました。

それに比べて、文明文化に染まっちまった便利な世の中にコロナが飛び込んで参りました。

この機会に、新しいライフスタイル、価値観を生み出さないとますます混迷の度極める社会になりますばい。

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線路は続くよどこまでも

2020/04/20
【第1332回】

コロナ関係のテレビ観てたら女優の杏ちゃんがギター片手に歌っていました。何と加川良の教訓Ⅰではないかいな。

 

♪命はひとつ 人生は1回だから 命をすてないようにネ あわてると つい フラフラと御国のためなのと 言われるとネ 青くなって しりごみなさいにげなさい かくれなさい 御国は俺達 死んだとてずっと後まで 残りますヨネ 失礼しましたで 終るだけ 命の スペアは ありませんヨ 命をすてて男になれと 言われた時には ふるえましょうヨネ そうよ私しゃ女で結構 女のくさったのでかまいませんよ 青くなって しりごみなさい にげなさい かくれなさい 死んで神様と言われるより 生きてバカだと言われましょうヨネ きれいごとならべられた時にも この命すてないようにネ 青くなって しりごみなさいにげなさい かくれなさい♪

 

この反戦歌、まさしくコロナ戦時下にピッタリということで杏ちゃんが流したんですな。世代が違うのにこの曲を選曲した貴女のセンスは素晴らしい。

加川さんとは今から30年前くらいに一度会いましていろんな話をしたんでございます。あの独特の声に、ゲバラ風の顔立ち、流行りのフォークシンガーとは一味も二味も違うとことに惚れまして、芝居の企画制作を準備してる時に一緒にやりましょうなんてことを熱く語った覚えがあります。当時、加川さんは全国の小さなライブハウスをギター一本で転々とさすらってる渡り鳥でありました。少年の心を忘れないナイスガイでした。その後は一度新宿駅前で弾き語りをしているときに会ったのが最後でした。2017年4月5日に69歳で亡くなった報にはびっくりしましたが、なんとなく彼らしい死だなと思いました。流行り廃りに惑わされることなく一貫性のある生き方をした加川良、貴男の唄は世界が危機に陥った時に、まるで不死鳥のごとく甦ってくるに違いありません。貴男と最初に会った時のにんまりとした笑顔、いまでも想い出しますよ...

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コロナに気を付けてネ

2020/04/17
【第1331回】

とうとう全国非常事態宣言になってしまいましたね...トム・プロジェクト6月公演も何だか怪しくなってきました。こんな不安な中で稽古をしていても危ないし、お客さんも安心して芝居を楽しめないのではないか。企画制作会社、劇団、照明、音響などなどイベントに関係する会社、そしてアーチストの方々大ピンチでございます。同じくコロナウイルスの脅威と戦っているドイツでは、アートに関わっているすべての人に、蓄えがなくて生活が苦しくなった場合は申請すればすぐに9千ユーロ(108万円)の補助金をもらえると言うこと。さすがに文化を大切にしている国だという印象がしました。この国のメルケル首相、一時は移民を受け入れ反発を喰らったが、今回のコロナ騒ぎで移民反対していたポピュリストたちは移民こそが国を蝕むウイルスであるかのように宣伝してきたが、ホンモノのウイルスが発生した今、ウイルスの危険性を否定するだけで現実的な対応が出来ない極右党が支持を減らしている現在、メルケル首相の冷静な対応に国民も答えようとしている。

一方、この国のトップは、もうあれこれ言っても始まらない気がする。期待なんて言葉が空しく響いてくる。ここは、持久戦、耐えるしかない...生きてりゃいろんなことがあるさ!過去を振り返っても、様々な苦難を乗り越え、まさに名も無き民衆は立ち上がり戦ってきたではないか!コロナちゃんが地球の人達に試練の場を与え、欲望のままに生きてきたニンゲンに警告を与えているんだと思いたい。

ここで気付かねば間違いなく地球という惑星は終わりを告げるなんて気持ちで対処しないといけません...折角与えてくれたチャンスなんだから無駄にせず最大限に活かしましょう皆の聚。

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新緑

2020/04/13
【第1330回】

今日の東京は冷たい雨が降っています...今日から公演中止になった「Sing a Song」の払い戻し作業が始まりました。戻すこちらと、払い戻しされるお客様とのあいだに共通する無念さを思うと堪りません。中にはこちらの事情を察して、「払い戻しはいいですよ。いい芝居を創る足しにしてください。」なんて言われると涙がちょちょぎれます。全国各地、文化は停止しています。芸術なんかより、日々の暮らしが窮地に追われ息も絶え絶えなんてことが現実に起きています。でも、この世界からアートの姿が無くなった姿を想像しただけで、世界の終わりが視えてきます。アートはスポンジみたいなものです...人の感情を吸い取り新たな感情をしなやかに生み出します...アートが存在するからこそ人は、あらゆることに精を出すことが出来るんです。そのジャンルの一つである舞台も長い歴史の中、様々な形で人類社会に貢献したに違いありません。その灯が消えようとしたときに、支える国家であるかどうか...この国の文化に対する価値観は如何なものであろうか。

今日も、人出の少ない新宿の街に一際目立ったのがホームレスの人達の多さです。コロナが収まらないと数が増えてくると思います。仕事を無くし不安げな表情をした人達に対し、昨日、能天気にツイッターを更新し、星野源が歌う「うちで踊ろう」とともに、自宅ソファで愛犬のミニチュアダックスフントのロイを抱く姿や、カップ片手にくつろぐ様子を公開した、この国のトップ。勿論、番頭さんはなかなか好評だとのたまっています。

自粛連呼する前に、議員の給料カットでも言わんかい!

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ハナミズキ

2020/04/10
【第1329回】

こんな大変な時に、行政、政治家の駆け引きがなんだか釈然としない国民が大多数ではなかろうか。居酒屋アルコール提供19時まで営業は20時まで、都の案は提供18時まで営業19時まで、なんじゃい1時間のことでトップが時間割いて話すことか。どっちにしろ居酒屋の体なしてないではないか。こんなバカげた折衷案で国民が納得するなんて思ってないのに発表する愚かな為政者しかいないこの国が改めて嘆かわしい。都内のデパートも自ら閉店に踏み切っているのに、感染が拡大しているにも関わらずオープン大丈夫ですよってなんなのよ。現場で働いている人の方がよほど賢いとしか言いようがない。税金でのうのうと暮らし、税金を無駄遣いしてる政治家さん、自ら給与削減しますよなんて気の利いた輩は居ないのかよと言いたくなりまっせ。今回の緊急事態宣言、本当に国民の生命を守るための宣言ではなく政治パフォーマンスの気がしてならない。

この国のシステム、為政者が頼りにならないなか、自明のことではあるが自分の命は自分で守るしかないといういつもの結論でございます。

樹々の新芽が芽吹く鮮やかさが唯一の救いでございます。自然は嘘をつきませんことよ...

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芽吹く樹々

2020/04/08
【第1328回】

えらいことになってきました...緊急事態宣言が都心を震撼させております。「Sing a Song」も中止になりました。いい芝居を観て頂きたかったのに本当に残念です。しかし、コロナばかりはいかんともしがたい。おいらのところだけではありません。演劇だけではなくいろんなジャンルのものが中止に追い込まれています。アートにかかわってるすべての人が危機に陥っています。この国の文化に対する意識が、他の国に比べても極端に劣ることを考えればとても心配です。アートばかりではありません。ささやかな庶民の憩いの場である居酒屋も閉店に追い込まれる状況です。こんな時に辛い目にあうのは、相変わらず社会を支えている庶民です。税金で生計をたててる人は羨ましいな~なんて言う人がたくさんいました。

こんな折、おいらのマンションの前にある樹木に、ここ最近カラスが巣作りしていたのが今朝からカラスが来なくなっちゃいました。もしや、政府からカラス組合に同じく緊急事態宣言を出したのかしら?あんたらも危ないよ、安全なところに移動しなさいと...いやいや、こんなこと空想してないとやってられませんがな。早く終息すればと思ったとたん、いきなり東京で144人の新たな感染が発表されました。都内の1日当たりの判明数で最多を更新。

今ここにある危機、乗り越えるしかありません。

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葉桜

2020/04/03
【第1327回】

昨日、滋賀県ひこね演劇鑑賞会で「Sing a Song」の初日を終えることが出来ました。なんとも複雑です。良かったという反面、大丈夫だろうかという不安。この見えない敵が、移す移されるという状況の中で公演しているんですから当然だと思います。この不透明ななか果たして公演を続けていけるのか、そして自重した方がいいのか、悩ましいところです。

こういう状況だからこそ演劇のチカラなんて言葉も、いとも簡単に吹き飛ばしそうなコロナウイルスの脅威をまざまざと見せつけられている感じです。今、何らかの決断をしないといけないと思っています。

今日の東京は爽やかな青空。今週の週末は、まだまだ咲き誇っているサクラを愛でるのに絶好な日和なのに不要不用の外出禁止令。ここはぐっと堪えてコロナ退治とまいりましょう。

コロナはニンゲン大好きな生き物ですから、くれぐれもパラサイトされないように注意してくださいね。ここが我慢のしどころかも知れませんね。

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散るサクラ 残るサクラも散るサクラ

2020/04/01
【第1326回】

昨日、今日と東京は寒い一日です。今日は雨も降っています...桜もちらほらと散り始めましたが、それに代わるように樹木から新しい緑の葉が芽吹いてきました。ほんとうによかったです。樹木ちゃんにまでコロナに感染しちまったらどうしようなんて考えちゃいます。この殺伐とした状況の中、樹々は新しい命を魅せつけ愚かなニンゲンに希望を与えてくれてます。こんなにも優しい樹々、涙が出てきますよ...今こそ目覚め、気づかないと本当に地球は滅びます。この雨でコロナを洗い流してほしいと思いますが、相当しぶといウイルスみたいですね。ここは個々人がしっかりと自覚して行動するしかありません。今やマスクは人ごみに居るときの最低のマナーだと思うのだが、マスクもしないで平気に大声で笑いながら飛沫を拡散してるバカ者もいます。少しは敏感になれや!と叱責したいのですが、このご時世予測不可能なことが起きる可能性があるので...何事もマイナスからプラス。今回のコロナ騒動から、せめてもの他人を思いやることぐらいは学んでみたらいかがですか?

散るサクラ、残るサクラも散るサクラ...そんな心境で雨中のサクラを愛でてます。

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新学期、新社会人

2020/03/30
【第1325回】

昨日はコロナ騒ぎを洗い清めるかのように雪が降って参りました。満開のサクラの花に積もっていく様はなんとも美しい光景でした。こんな自然の営みを、大切にしなかった地球人に厳しい現実が突きつけられています。大国がどんなに核を持ち、軍備を拡大したとしても、コロナウイルスを防ぐことが出来なかったではないか...この厳然たる事実と真摯に向き合い自然破壊と軍拡競争、そして原発はもう止めようではないか。ここまで追い詰められないと気付かないニンゲンは本当に愚かな生き物でございます。原発の事故が起きた当時は、世界も深刻な問題として捉えたのだが、時間の経過と共に忘れていく有様。今回のウイルスが地球滅亡の最後通告として受け止めないと本当に終末が来てしまいます。

先週の劇場型都知事が発した不要不急の外出自粛に、おいらも素直に従い自宅で映画を観てました。思いがけない映画に、おいらのコロナ騒ぎに苛まれた心にほんのりと明かりを灯してくれました。タイトルは「ブランカとギター弾き」日本人初となるベネチア・ビエンナーレ、ベネチア国際映画祭の出資で製作された長谷井宏紀監督のデビュー作。フィリピンを舞台に、孤児の少女と盲目のギター弾きの旅を描いたハートウォーミングなロードムービー。マニラのスラムでカメラをまわし、素直に演じる子役を含めた演技陣の魅力。いや、演技と言うより素の良さを引き出した監督の手腕もたいしたものだ。写真家として世界を旅し、「昔フィリピンのゴミの山を訪れたときに、子供たちにいつか映画を撮ろうと約束したんです。たくさんの国を旅したけど、僕はフィリピンの人たちがとても好きで、この人たちと映画を作れたら、とても楽しめるのではないかと思ったんです」監督のこの言葉こそ、創造者としての気概を感じる。ええとこばっかし視てると真実なんかみえなくなっちゃうよ!こんな骨がある人達が居ると、おいらももう少し創ってみようなんて気がしちゃうってもんでございます。

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ユキとサクラ

2020/03/27
【第1324回】

なんだ、なんだ、オリンピックが延期になった途端に東京のコロナ感染数が急激に上がっちゃうなんて、どうなのよ。なんとかオリンピックを実現したいために国と都が結託して、隠蔽なんていうのは得意中の得意なのでとか、勘ぐりたくなりますがな...でも、こうなったらなんとか感染押さえないとおいらの稼業も大変なことになっちゃいます。マスク不足かも知れないが、外出時のマスクの着用はマナーとして当然でございます。春の陽気でルンルン気分で歩いてる若者どうかお願いしますぜ。明日からは首都圏は外出自粛令、にもかかわらずサクラ満開につきちょいと出かけようなんて輩も居るに違いない...それにしても、スーパーは長蛇の列で買いだめ騒動。気持ちは分かりますが、ここは自重する行動も必要ですな。

いやいや、春だというのにえらいことになっちゃいました。先が読めない世界の動向、こんな時こそ落ち着いてゆっくりと沈思黙考すべき時だと思います。

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こんなサクラ好きです

2020/03/25
【第1323回】

オリンピック延期...おいらはあまり関心がなかったので(なんと言っても、お金ありきのオリンピック、従来のオリンピックの精神から年々乖離しているし、誰のためのオリンピックなのか?この際、もう一度考えてみる良い機会ではないかと思うのだが)さほど驚いていないと言うより、昨日の延期が決まり、中止でないということで総理、都知事、森のオッさんが喜びのあまりグーしたとのこと...ここは感情をぐっと堪えて、コロナで揺れる社会に真摯に向き合って欲しかったな。延期なんて言ってるけど、今後また新たなウイルスが発生したらどうするの?まさしく一寸先は闇の世界になっちまいました。

そんな騒ぎにも係わらずサクラは今日も見事に咲き誇っています。この美しいサクラを愛でることで、しばし、暗くなりがちな心身をほぐしたいものでございます。

サクラ花、命一杯に咲くからに、生命(いのち)かけて、我が眺めたり。そうなんです、生きとし生けるもの全て命懸けなんですよ。ニンゲンどもがボケッと生きとるから自然界の逆襲が始まってるような気がします。ここら辺で目覚めないと滅びます!そん声を真摯に受け止めなきゃいかんですばい皆の衆。

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サクラも命かけてます

2020/03/23
【第1322回】

コロナ騒ぎの中、先週末、吉祥寺に行って参りました。井の頭公園をはじめ吉祥寺の街は人出で溢れかえっていました。コロナストレスでもやもやしたものが、好天気にも恵まれ一気に街、そして公園に繰り出したんでしょうね。マスクしてない人も随分といたし、このまま滅入っても仕方なかんべさと開き直っているようにも感じました。その気持ち分かるけど、高年齢者に対する敬意も含めて、人に移さないという気持ちは持たんと危ない!イタリア、スペイン、そしてアメリカと予想を超えた感染、これはちょっとした油断から一気に拡散する可能性十分有りと思えます。多分、オリンピックは延期、中止間違いないでしょう...つい最近まで、誰がこんなこと予想していたでしょう。大きな原因は、やはり地球温暖化の影響があると言われています。温暖化により気温や降水量が変わることで、感染症を媒介する動物が増えたり、分布が広がったりする可能性十分ありえると思います。そして、冷たい大地に閉じ込められていた動物の死骸が温暖化によってその菌が大気に蔓延。いやいや、本気に考えないと、これから先いくらでも新型ウイルスが発生し混迷の度を深めていくでしょう。

今日の電車の中でのつり革可哀想でございました。九割の人が満員にも係わらず、つり皮を触っていませんでした。ブラブラと揺れてるつりちゃんも「何とかしてよ!」と嘆きのブラブラ節。

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井の頭公園のサクラ

2020/03/19
【第1321回】

昨日、横浜にて4月から公演予定の「Sing a Song」の舞台稽古をやってきました。まだ先が見えないコロナ騒ぎの中、こちらはいつでも出来る準備をしておかねばなりません。大きなホールに関係者20名ほどが見守る中、キャスト、スタッフは完璧な舞台を披露してくれました。本来であれば、今日、明日と上演されるはずであったのが残念無念。こればっかりは、もしや会場でコロナ患者が発生したら主催者の責任が厳しく問われることになり、致し方ないことであろう...それにしても、あちらこちらで公演が中止になり、この世界で食べてる人は収入の保障もなく大変な状況であります。勿論、トム・プロジェクトだってお金が入ってこず廃業なんて事態にもなりかねません。でもね、ネガティブをことはおいらの性にも合わないので、ここは前向きに4月からの公演で一気に世の中の憂いを吹き飛ばしたいものです。明日からプロ野球もオープンするはずだったのに、こちらも残念。観客の居ないなかでの選手のプレーどう見ても異常な光景。芝居も、野球も観客が居てこそのプレーです。サクラの開花と共にコロナちゃんも、そろそろ故郷に帰ってくれないかなと思っとります。

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今日の神田川

2020/03/16
【第1320回】

いやいや、こちらも予断を許せない状況になってきました...今週横浜で公演予定であった「Sing a Song」公演中止になってしまいました。先週、稽古場で本番さながらの稽古をやっている役者さんもさぞ残念なことでしょう。芝居は観客があってこそのものです。もしや、その観客の中からコロナが拡散したとすればと思うと、主催者側も頭を悩ますことだと思います。そんな矢先、JR東日本が3月14日に、山手線・京浜東北線の田町―品川間に高輪ゲートウェイ駅を開業したのはいいとしても、5万人の人が殺到し大混雑。行政は何考えてるの?いろんなイベントはやらない方向に指導しておきながら、ことJRに関してはお咎めなし。なんかあるんじゃないの?と勘ぐってしまいますな。先週土曜日には下北沢の小劇場に行ったのだが、主催者側の手厚い配慮で上演時間2時間40分(休憩なし)の芝居、何事もなく楽しめました。なにもかも閉鎖なんてしちゃいますと、心まで閉鎖しちゃいますがな。こうなったら長期戦、何事もバランス、コロナ対策の手は緩めず、少しずつオープンにしていきましょうよ!気持ちが晴れればコロナも吹き飛んじゃいますよ。

桜も開花したことだし、さて待望の春が来たなんて心境でいたい今日この頃でございます。

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今年もチラホラと

2020/03/13
【第1319回】

こりゃたまらんですばい...何だか地球という惑星が危うくなっています。ウイルス、自然災害、こんな危険な信号を送られているのにと思います。我が家は自給自足に備える一環としてリボベジ(リボーン・ベジタブル)再生野菜に取り組みました。リボベジは、捨てる野菜の一部と、家にあるお皿、グラスで始められるので費用も必要ないし、失敗すれば野菜そのものを変えればいいので誰にでも気軽にできます。勿論、成長を見守り、いいところで食卓へ届けることが出来るんですよ。日々、成長する様を見てるだけでワクワクしてきます。観葉植物としても十分楽しめます。

己を守ってくれるのは国家でも他人でもありません。これからの時代は、一人一人が自覚を持って生きていかないと、本当に地球は滅びてしまうと思います。すべてが飽和状態であるからこそ、日常、捨ててるものの中にこそ生きるヒントがあるんでは?なんてことを感じさせてくれるリボベジです。

アメリカも大変なことになってきてます...オリンピック?いや、おいらにとっても来週から上演する「Sing a Song」が上演できるのかどうか分からなくなってしまいました。でも、こんな時だからこそアートの出番ではないかと思ってます。

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リボベジ

2020/03/11
【第1318回】

あれから9年...もう9年、まだ9年、おいらの人生の中でも忘れられない9年前の今日に起こった東日本大震災。家族を失い、故郷を追われ、いまだに生まれ住んだ土地に帰れない人が沢山いる。この人達の哀しみ苦しみは誰にも分からない。メディアがどんな形でまとめても何か違うような気がしてならない。では、どうすればいいのか?答えは簡単だ。今まさに生きてる一人一人が、この9年前の尊い教訓をしかと受け止め、原発のない地球、そして弱者に優しい社会を創るために創意工夫しながらアクションを起こす以外にありません。その大前提として、もう過剰な競争を止めて、昔のゆったりとした生活様式に戻りませんか?競争したり、比較したりなんてこと止めて己の原点に帰り一から自分磨きの旅をしませんか?ゴシゴシ、ワタシのタワシで手垢がついたものを取り除き心身身軽にしてからの旅なんぞから見えてくるモノは世直しの武器になるかも知れませんよ。

コロナ騒ぎで落ち込んだ社会に、サクラが少しでも明るくと、今週週末に開花宣言をしそうです。そうなんです!気分が晴れないとコロナはまたまた嬉しそうに手足を伸ばしてきそうです。落ち込んでばかりじゃダメですバイ...サクラの開花と共にパッといきましょう!

なんていつもの能天気なこと言ってたら、ぞんざいなお上にお咎め受けそうですな。

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陸前高田

2020/03/09
【第1317回】

今日もコロナ、明日もコロナ...明後日あたりからコロナの故郷に帰る準備をしてもらいたいな。これだけ猛威を振るえば、少しは地球の方々もええ勉強になったことでしょう。故郷には愛する家族が待ってるんですからお帰りあそばせ。ウイルスばらまいてやるなんて不届きものも登場するようになってますんでよろしくお願いいたします。

明後日は、東日本大震災から9年、コロナのお陰で式典も中止。それはいいとしても、聖火ランナーが走る被災地のコースには驚きました。走行するところだけは奇麗にしてテレビに映し復興オリンピックを大々的にアピールしたいんでしょうね。そりゃ、あきませんぜ。立ち入り禁止地区の荒廃した風景、いまだ汚染水の処理問題、原子炉格納容器の内部にある燃料デブリをどうやって取り出すかという課題などなど難題は山積。被災にあった住民のほとんどは、復興オリンピックなんてお題目には疑問を持っています。臭いものには蓋なんてことは現政権にとってはお手のもの。むしろ、この際、オリンピックをどうしてもやりたいんだったら、まだまだ復興途上の光景を世界に発信し原発の是非を問う方が復興オリンピックに相応しいのではないかと思うのだが...

今日は春らしい陽気になってきましたね。昨日は冷たい雨で寒い一日でした。三寒四温を繰り返しながら春がやってきます。試練を乗り越え、笑顔に満ち溢れた陽気な春の訪れるよう首を長くして待っているんですがね。

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弥生の野花

2020/03/06
【第1316回】

見えない敵コロナに脅かされ、日々窮屈な生活を強いられてる世界の人々...災い転じて福となすなんてことわざがありますよね。今回のコロナちゃんは油断してはなりませんぞ!世の中には常識では計り知れない、とんでもないことが起こるってことを知らせてくれてるのかもしれませんね。自然災害然り、これから地球上で起こる出来事は全く予測がつきません。備えあれば憂いなしは当たり前のことなんですが、おいらはちょいと過剰反応では?なんて気もします。学校閉鎖、イベント中止なんかよりも通勤電車が一番怖いんじゃない。でも、この通勤を止めるってことは会社の業務を停止すること。即、すべての産業がストップし世界経済は沈没の憂き目にあっちゃいますね...だからして電車の運転停止はあり得ないことですね。そういえば、最近何故か、電車の中で寝そべってる人を多く見かけます。人目もはばからず堂々と寝ちゃってるのはなんですかね...それも若いアンちゃんが多い。仕事もしないで、いや仕事がないので昼間っから酒食らって自暴自棄になってるのかな?この時代、注意しようものなら何されるかわからないので、無視というより遠巻きに知らん顔。ところが今日、おばはんが、具合でも悪いのかと思ったのか、とんとんと身体に触れると目を覚まし、なんとおばはんに頭を下げていました。そのあとは神妙な顔しとりました。この不穏な時代、若者がしゃきっとしないとこの国の未来はありませんぞ。寝たふりした若者を奮い立たせる特効薬は?もしやコロナちゃんかも...危機意識をもたらすために違う惑星からやってきたのかもしれませんね。

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弥生新宿東南口コンサート

2020/03/04
【第1315回】

世の中、コロナ、コロナで大変でございます。今日の新宿も、心なしか人が少ない気がします。勿論、ほとんどの人がマスクをしていますが、このマスク不足の中、明らかに手作りであろうと思われるユニークなマスクを発見。色も鮮やか、こんな時期ですからほっこりするデザインに暫し癒されます。辛いときこそユーモアが不可欠です。人通りが半端でない新宿地下通りでanan発売50周年を記念して1970年からの表紙を展示していました。スマホでパチリパチリと、年配の人は1970年~90年、若い人は最近の若いグループ、やはりジャニーズ関係の写真をバックにVサインをかざしながら満面の笑みを浮かべておりました。そうです、こんな時こそ笑顔が必要なんですぞ。透明人間みたいなウイルスに脅えながら暗い気持ちになりますと、ウイルスはしめしめと、そんな不安な人達を狙い撃ちして忍び込んで参ります。何だか科学的な根拠もなく精神論みたいな論法でいい加減なこと言ってるみたいですが、ここが肝心なんでございます。笑う門には福来たるなんてことわざがあるじゃありませんか、困難な状況だからこそ心も身体もニコニコマークでコロナマークを消去しましょうよ。

それにしても、プロ野球オープン戦での無観客試合、なんだか不思議ですな。この異常な状態でコンディションを狂わす選手も出てきそう...この世の中、何が起きるか分かりません。こんな時代だからこそ柔軟な思考、行動が必要だと思いますよ。

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すべての女性の好奇心に応える雑誌...ホンマカイナ

2020/03/02
【第1314回】

いやいや、大変なことになってますね...でも、昨日の東京マラソン、多くの人達が沿道で応援してました。どんな基準でどこまでの規制なのか、まだ判然としないことが多々ありますね。おいらのところは演劇を稼業としています。これから先どうなっていくのか予断を許せない状況の中、ある演劇人がこんなメッセージを発表しました。

感染症の専門家と協議して対策を施し、観客の理解を得ることを前提とした上で、公演は実施されるべき。ひとたび劇場を閉鎖した場合、再開が困難になる恐れがあり、それは『演劇の死』を意味しかねません。困難な状況でも上演を目指している演劇人について、身勝手な芸術家たちという風評が出回ることを危惧します。公演収入で生計をたてる多くの舞台関係者にも思いをいたしてください。

おいらは基本的に賛成です。観客はマスクを着用し、入場の際は殺菌すれば何とか防げるのではないかと思います、観客が声を発するわけではなく、もし咳をすればハンカチ、腕を当てる。勿論、体調がすぐれない方は入場を遠慮してもらう。これも主催する側が万全であることが前提です。こんな時期だからみんなが疑心暗鬼になるのも分かります...とにかく一刻も早く終息に向かい、みんながいい春を迎えることが出来たらと思っています、車内で咳をした人を巡って喧嘩が勃発するなんて光景をなんとも悲しすぎます。人心が殺伐とした時から世界は滅びていきます。こんな時こそポジティブシンキングでいきませんか皆の衆。

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弥生の善福寺川緑地公園

2020/02/28
【第1313回】

とうとうこちらまで来ました...昨日、国のトップの小中高の3月2日からの臨時休校の要請を受け、本日、公演中の「男の純情」3月1日(日)岩手県花巻市の公演が中止になりました。おいらの所だけではありません。各地でイベント、コンサートの中止の報が次々と流れています。照明会社の社長が「やばいな...会社持たないかも」なんて嘆いています。確かに今回の発言、英断なんて声も聞かれますが、またしても弱者切り捨ての政治パフォーマンスに思えてしまいます。シングルマザー、共働きの家庭はどうするの?どうしても、大企業を守ろうとする姿勢が見え隠れしますね。中小企業、時間を切り詰めて働いてる人達に対する行政に温かい支援が無いことに怒りさえ覚えます。今回、コロナ対策の緊急予算が150億円、他の国は2500億円クラス。これをみても、この国の危機管理意識の無さをはっきりと証明しています。桜の会で税金垂れ流しているのに、どの面して喋ってるのかと...こんな時こそ、税金で飯食っている人達が自ら給料カット、特に無能な政治屋さん、こんな時しか政治家としての役目を果たすことが出来ませんことよ。野党も先陣切って言わんかい!

この先、どうなることやら...芝居中止なんてことになったらおいらの会社も大変なことになっちゃいます。それにしても世界は混迷を深めるばかり、何度も言いますが確実に人間という生き物が地球を混乱に貶めていることはまぎれもない事実です。

とにかく感染を防ぐこと、手洗いうがいは当然なことながら、より一層己の体調に気配りし、移ることより移さないことに心掛けるべきでしょうね。

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冬のメタセコイヤ

2020/02/25
【第1312回】

ゴジラが住んでるビルの映画館で話題の映画「パラサイト」観てきました。なんでこんなもんがアカデミー作品賞なの?というのがおいらの正直な感想でございました。なんだか劇画かコミック観てる感じ。なんであんな半地下暮らしの人が何の罪もない人を殺さなあかんのかいな、芝居もあざといし役作りが浅いし説得力がありませんことよ。あの金持ち一家が何か半地下人間に悪いことでもしたのかよと言いたい。コケ脅しみたいな映画で後味が悪うございました。映画の中でアメリカ製品のことをやけに褒めていたので、トランプへの忖度があったのかいななんて疑ってしまいました。アジア人をなんとなく差別してたんで、ここいら辺りで、アジアに謝意を込めての賞じゃないだろうね...それにしても役者の表現が上っ面をかすったような芝居にはほとほとまいりました。と、まあ、おいらとしてはとても辛口な評でしたが、こうやって世界がアジア映画に少しでも目を向けてくれるきっかけになってくれればとは思いますが。

今週も、世界はコロナ一色の話題に明け暮れるのであろうか...コロナの蓑に隠れて闇咲き桜を散らそうとする政界の輩の動きに要注意。それにしても、政府の対応遅いんとちゃうかな。今回の韓国の速攻対応作戦こそが、アカデミー賞に相応しいかもね。

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如月の薄暮

2020/02/21
【第1311回】

いよいよ花粉の季節が到来しました。おいらもマスクに花粉用メガネで防戦一方、なんとかこの季節を乗り越えようと頑張っておりますばい。新宿伊勢丹の店員さんが皆マスクしているのには驚きました。おいらも半世紀にわたって伊勢丹を覗いてますが、こんな事態は初めてでございます。今の伊勢丹の主流のお客は中国、韓国の富裕層、このマスクの姿が何となく今の伊勢丹の姿を象徴してますな。これを機に、あんまり高い品ばっかり置かないで、百貨店の原点に戻ることをお勧めします。おいらの子供の頃は、デパートは格好の遊び場であり夢が広がる場所だったんですからね。成金がうろうろしている今の現状はあまり好ましくありませんな。

それにしても腹が立ちますな。森友問題で籠池氏5年の実刑判決、一方、公文書改ざんした方にはお咎めなしどころか、あの眼鏡かけたおっさん忖度出世でめでたしめでたしあ~こりゃこりゃ暮らしをなさっております。森加計そして又しても桜で追及されたトップのお方はヤジでうっぷん晴らしたあげくに謝るわ。この国どうなっちゃうんだろうね?次の首相候補と期待された若きプリンスも調子に乗りすぎて化けの皮が剥がれてきたし、残念ながらこの国を救うお方が見当たりませんな。とすれば、消去法で仕方なく選ぶしかないという低調な状況であるこの国の政治体制、いかがなものかと憂慮しております。

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冬の空に映える梅

2020/02/19
【第1310回】

昨日、「Sing a Song」再演の顔合わせ、本読みがありました。2018年2月に上演し、大変な評判を呼び、戸田恵子さんもこの年の第43回菊田一夫演劇賞を受賞しました。この芝居が再演になった理由は、日本そして世界が負に傾きがちなポピュリズムの台頭により混迷を極めていること。一番恐れている戦争への道に進むのではないかという危機を回避するためにも、この芝居は有効な手立てであると言うこと。しかも歌という表現手段として最もわかりやすいことで観客の心情に届き、より表現の自由の大切さを再度認識して頂きたい...どんな高邁な言葉を羅列しても、3分間の歌のチカラの前には足元にも及ばないなんて事は何度も目にしたことがあります。勿論、歌い手の人間性、表現力があってのことですが...そして、台本、演出、キャストのチームワーク、スタッフの支えがあってこその今回の再演であります。再演は同じ事を繰り返しても意味がありません。2年の歳月のなかに当然のことながら社会の状況も、キャスト自身の中に流れる人生観も変化しています。その諸々を糧にしながら新作を創り出してこその再演だと思っています。

世の中、新型コロナウイルスでてんやわんやの大騒ぎ。いろんなイベントが中止になり劇場公演もどうなることやら...その前に、キャスト・スタッフさんが感染してしまったらお話しなりませんことよ。

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梅をみつけた2

2020/02/17
【第1309回】

先週土曜日、上野東京文化会館小ホールで歌劇「400歳のカストラート」を鑑賞。カウンターテナーの藤木大地さんのコンサート。女性ような声で歌うカウンターテナーと言えば米良さんの「もののけ姫」が知られたところですね。この藤木さんもなかなかのものでした。今回は創作劇、劇は17世紀から始まりカストラート(変声期前に去勢された男性歌手)として活躍するダイチは永遠の命を手にし、あらゆる出逢い、歓び、葛藤、苦悩を経ながら今に至る。その400年を音楽史を辿りながらの歴史物語。いやはや、一人で2時間、歌曲の原曲、そして日本語も交えながらの独唱。見事でございました。役者の世界も大変ですが、この歌の世界も苦難苦行の世界でございますな。声が命、ましてこの声の中に見えざる人生が写しだされるんですから怖いもんですね。まして洋楽となると姿形も見せるうえで重要な要素なってきます。日本人にとってはこれも越えなきゃならない壁ですな...そんな困難にチャレンジし、2017年4月、オペラの殿堂・ウイーン国立歌劇場のライマン「メデア」へロルド役でデビューして現地で絶賛を浴びたってんだから大したもんでございます。

あまりにも心地よい歌声に、うっとりしてしまいコックリさんに何度かなりそうになりました。(これはおいらにとっての誉め言葉ですぞ)それにしても、人間の身体ってまさしく楽器ですね。いや、楽器を超越して天まで届く歌声です。おいおい、そこらで愚痴ばっかりいって怠けている輩、この世に奇跡のように与えられた五体を磨かんと罰が当たりますよ!なんて警告を与えられてるような公演でもありました。

この日、朗読として出演された大和田獏さん、大和田美帆さんのお二人が見事に藤木さんをサポートしておりました。そして5人の演奏者も一流の音を奏でていました...会場を出ると久しぶりの上野公園が清々しく感じられたのも公演のお陰かな。

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梅をみつけた

2020/02/14
【第1308回】

昨日、令和元年度(第74回)文化庁芸術祭賞贈呈式が早稲田のリーガルロイヤルホテルでありました。昨年、トム・プロジェクトで上演した「風を打つ」に出演した音無美紀子さんが演劇部門で優秀賞を受賞しました。長い芸歴で初めての受賞、とっても喜んでおられました。作・演出のふたくちさん、共演者の太川陽介さん、村井國夫さんも駆けつけて盛大にお祝いいたしました。全身全霊で打ち込んだ演技の結果としての賞ではありますが、一人で受賞できるわけではありません。しっかりとした戯曲、適格な演出、芝居をきっちりと受け止めることが出来る共演者、もちろん円滑に舞台を進行するスタッフ、制作陣。これらがピタッとはまらないと栄冠は勝ち取ることはできないということです。それにしても「風を打つ」の音無さんの演技は絶品もんでございました。テーマが水俣ですから、それなりの覚悟で挑まないと大変なことになる...何事もそうですが、事実の重さにフィクションが勝てるわけがありません。がしかし、事実を踏まえて出来上がった創造物には違うニュアンスを醸しだすチカラがあります。今回の芝居が成功したのも、水俣病を受け入れながら生きることの意味を緊密な家族劇に仕立て上げ、出演者が一つになって表現したことに尽きるでしょう。

贈呈式の後は、共演者の高橋洋介、岸田茜さんも参加し改めて祝杯をあげました。それにしても、夫の村井國夫さんは始終満面笑みのお顔でございました。そりゃそうでしょう、先の村井さんの紀伊国屋演劇賞の受賞に続いての美紀子さんの受賞という夫婦そろってのW受賞、「こいつは春から縁起がいいわい」あの歌舞伎お嬢吉三の名セリフがぴったりの一日でございました。

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おめでとう!

2020/02/12
【第1307回】

一昨日、横浜県民共済みらいホールで「沖縄世」の最終公演をやってきました。ひとつの公演が事故もなく無事終えることがどれほど嬉しいことか...世の中が新型コロナウイルスで騒然としている中であり、生で勝負している我々にとってはホットした次第でございます。最終公演とあって、役者も万感胸迫る思いで演じていましたね。長い稽古を経て、いよいよこれが終わりとなると、そりゃ泣けてきますがな。特に終盤に差し掛かると役者も涙を堪えての演技でしたね...役者が泣いちゃったらお客は泣けませんことよ。これは役者の演技禁じ手十箇条のひとつでもありますね。ぐっとこらえて笑みのひとつでも見せれば、お客は涙でくしゃくしゃになること間違いありません。泣かせて、笑わせて、感動させればお客さん「ええ芝居やった!」と時間とお金の倍返しって訳ですな。つくづく芝居って難儀な生業でございます。

そして、いつも千秋楽に思うことは本当にこれが最後かな...再演が無い限り、再び日の目を見ることはありません。この日この時に観た人の記憶の中でしか存在しない希有なる芝居となるでしょう。勿論、駄作であれば記憶すらないモノになってしまうんだと思ったら、やっぱし気合い入れて創らねばと改めて思う次第でございます。

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落陽

2020/02/10
【第1306回】

先週の金曜日、福岡県行橋市での「沖縄世」公演に行ってきました。行橋市のお客様はいつも熱心に観ていただき、キャストも当然ながら熱が入ります。この日も満員の中、魂込めた舞台を上演することが出来ました。沖縄の置かれてる微妙な立場を少しでも理解し、沖縄の人たちに寄り添ってもらえればと思います。この日、トムの芝居でもお世話になっている松下竜一さんの長男、健一さん夫妻、松下竜一さん関連の本を書かれている新木 安利さん夫妻とも会うことが出来ました。こうやってなかなか会えない人たちとも会える機会を持たらしてくれるのも地方公演の良さです。

終演後、いつものように行橋の名店「魚やビストロ遊楽」でキャストの全員でお疲れ会。なんと、この日なかなか水揚げされない、タケノコめばるが入荷したとのことで大喜び。お店に入ったのも一年ぶり、おいらも一昨年の「Sing a Song」以来なので奇跡としかいいようがない。それにしてもこの店のオーナー外屋敷学(ほかやしきという珍しい名前)さんの魚好きには驚いてしまう。店の隣に魚屋さんもオープンしてしまうほどの勢い。テーブルに出てくる新鮮な魚さんに皆感嘆しきりでございました。こうやっておいしい店に出会うのも又、旅公演の楽しみです。

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うまか!

2020/02/07
【第1305回】

福岡県行橋市で本日上演する「沖縄世」、昨日、博多に先乗りしました。博多の上空から見る博多の街は何故かほっとします。何年経っても、やはり生まれ育った土地ですからね。この町でおいらの血と骨、そして絶えることのない好奇心を養ってくれたんだなと思います。夜は久しぶりに春吉にある「女とみそ汁」に行きました。この店の前身は「たらふくまんま」たくさんの弟子を育てた菊池さんは7年前59歳の若さで亡くなった。これから円熟の境地に入るその手前だというのに...博多には、彼の店で修行した人達が多くいてそれぞれ店をオープン。菊地さんの意思(遺伝子)を受け継いで頑張っている。この「女とみそ汁」は菊池さんの奥様とお嬢さん夫妻で、先代の大将のやり方を踏襲し、相変わらずの人気店として繁盛している。毎朝、市場で新鮮な食材を買い込み独特の味付けと、風味あふれる器で来客を歓待している。そういえば菊池さんはいつも言ってたな「料理の基本は素材ですよ...」市場に行っての目利きがすべてであると。それには食材の宝庫である博多は格好の地である。博多の人は幸せばい...安くておいしいものがいつでも手にすることができるんだから。

さあ、今日は「沖縄世」行橋公演、いい芝居して頂戴ね!

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今年初めての博多

2020/02/05
【第1304回】

今日の東京は春みたいな陽気です。このまま春に行っちゃえ!と青空に叫んでしまいました。ヤマザキマリは「テルマエ・ロマエ」の作者でありますが、彼女のお母さんのことを書いた「ヴィオラ母さん」がとっても素敵でした。昭和のシングルマザーの痛快な子育て、アートに対するひたむきさ、生き物に対する愛、人としてこんなに生きられたら申し分ありません。今の時代であれば虐待にも匹敵する行為でも、母と子の信頼、愛情があれば向かうところ敵無しといった感じですな。要は、他人の目を気にせず己の信ずる道を突き進んでいくことの正解さを証明されたと言うこと。ヤマザキマリさんも、単身イタリアに渡り、国際シングルマザーで帰国してもすんなり受け入れる母、見事です。まさしく教育とは親の背中を子に見せ、そして一対一の個性として接していくことなんだろうなと思いますね。ガミガミ怒鳴れば怒鳴るほど子供は離れちゃいますがな...こんな本を学校教育の教材に採用して欲しいな...でも、柔軟性ゼロの今の政治、行政ではまず無理でしょうな。本当に、今の日本の教育では何れ、日本沈没雪やこんこん冷え冷えとした国になっちゃうんだろうなと憂いておりますがな。

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今日の青空

2020/02/03
【第1303回】

「沖縄世」昨日、無事東京公演千秋楽を迎えることが出来ました。日毎、観客が増え続け、これは芝居の評判が良いので口コミで拡がっているんだなと思いました。いい芝居を創れば必ず観客が来てくれる!これは興行の大原則ですな。閑古鳥が鳴いている劇場では役者の気合いも入るはずがありません。役者のカンフル剤は、やっぱりお客の入り次第...勿論、芝居の出来も、それに比例して良くなるって訳ですな。昨日の千秋楽は、おいらが観た中でも最高の出来でした。

先週の金曜日には「男の純情」埼玉県の志木市で幕が開きました。登場人物の一人が朝倉伸二さんに変わっての舞台。劇場は最初から最後まで笑いの渦。この芝居、日本におけるシチュエーション・コメディの傑作だと思っています。いろんな年代、人物でいろんな形でやれる芝居も珍しいので、大切にしたい作品です。2月一杯、北海道をはじめ全国各地で上演します。お近くに来ましたら是非ご覧になってくださいな...損はさせませんぞ。

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千秋楽の東京芸術劇場

2020/01/30
【第1302回】

一昨日、第54回紀伊国屋演劇賞の授賞式が紀伊国屋ホールでありました。トム・プロジェクトでも作、演出、出演をしていただいている劇団桟敷童子が団体賞。これまでに3度、トムの舞台に出演の村井國夫さんが個人賞を受賞。おいらにとっても嬉しい一日になりました。劇団桟敷童子は創立20周年での受賞。劇団員全員で大道具、小道具、衣装を創り上げ、地道に名もなき人たちを軸に据えドラマを紡ぎ、最後の大掛かりな屋台崩し的な仕掛けで観客の心を鷲掴みする稀有な劇団。おいらはすっかりファンになりました。まさしく、演劇の原点を思わせてくれる作り方に魅せられ、応援したくなっちゃいます。主宰者の東憲司さんが「劇団員全員、歳を重ね心身とも疲労困憊...いつまでやれるかなと思ってる矢先の受賞、これを励みになんとか頑張ります!」と受賞の挨拶で述べていました。確かに劇団を維持することは困難を極めますが、この劇団の芝居はいつまでも見続けたいという多くのファンがいるのでなんとか頑張って欲しいと思います。

村井國夫さんは芝居を始めて54年、勿論、ほかの受賞はあるのですがこの歴史ある紀伊国屋演劇賞は本当に嬉しいとのこと。舞台人にとってのこの賞の重みを感じます。今回の受賞は奇しくも劇団桟敷童子「獣唄」出演での受賞。しかも心筋梗塞に襲われ途中降板での受賞だけに本人もびっくりされたのではないかと思います。大ベテランの村井さんも桟敷童子のファンであり初めての参加。ピュアな劇団員に刺激され、新たな役者魂がめらめらと沸き上がったに違いない。

何も賞を目指して芝居やってるわけじゃございませんが、何かの弾みになることは間違いないようです。振り返れば2008年に第43回紀伊国屋演劇賞団体賞を受賞したトム・プロジェクト、よしゃ!もうちょっとやってやろうじゃないか...と思い直して、12年が経ちましたとさ。

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おめでとう

2020/01/27
【第1301回】

「沖縄世」幕が開きました。水俣に続いて沖縄、社会派劇が続いています。演劇はまさしく生き物、今だからこそやらなければいけないという思いから創っています。25日の初日には、博多でペシャワールの会主催による中村哲さんのお別れ会がありました。中村哲さんがまいた種が残された人達によって実を結ぶことを誰もが願っての一日だったと思います。このあとも日本全国で、哲さんを偲ぶ会が開催される予定です。行動を起こさない限り何も変わることはありません。今回の芝居も、沖縄の先人が命を賭けて戦った不屈の精神を芝居にすることによって継承したい!こうやって粘り強く行動しても、沖縄の現状は相変わらず民意とは真逆の方向に進んでいます。この困難な時代だからこそ、粘りとしつこさでなんとかしなきゃならんでしょう。

昨日の二日目、初日の固さもほぐれ客席から随所に笑いが起きていました。お堅い芝居に笑いを誘うことによって芝居をより奥深くする。日々変化する芝居の面白いところですね。今日は東京にも夕方辺りから雪が舞い散るという予報。雪に弱い都心の交通網、終演後のお客さんに影響がなければと祈るのみです。

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新しくなった東京芸術劇場前の公園

2020/01/23
【第1300回】

明後日から始まる「沖縄世うちなーゆ」の稽古場での最終稽古を観てきました。沖縄の芝居は過去にもたくさん上演されてきましたが、今回の作品は新しい沖縄劇の誕生を予感させてくれるんではないかと...先ずは、沖縄の混乱の歴史の中で強大なアメリカと戦った不屈の男が居たこと。そして、沖縄の女性史の中で沖縄独立論を唱え続けた逞しい女達。この芝居で、人としての尊厳を失わず誇り高く生きていった人たちの群像劇が、明日の沖縄の道標になるに違いないと強く感じました。いつまでたっても変わらないことは、あの大戦で日本の楯となり住民の4人のうちの1人が亡くなった後も、沖縄には、多くの米軍基地があり、特に、米軍だけが使っている基地(米軍専用施設)は、日本にあるもののうち、その面積の約70%が沖縄に集中しているということ。なんですかこれは?この異常な状況でも他県の人たちは見て見ぬふりしています。見て見ぬふり?これほど卑劣で無責任なことはないと思います。日本に復帰して48年も経ているのに何ら変わらないというこの事実に、さして驚かないのも不思議な気がしてなりません。他人の痛みを感じない人たちが存在する国の未来はないと断言できます。今回の芝居が、今の沖縄の現状を少しでも変えてくれるきっかけになればと思います。

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明日を夢見て

2020/01/20
【第1299回】

新年始まり、はや半ば、いたって日常の感覚が板についた感じです。そんな折、博多の方から訃報が届きました。博多六本松の名物スナック「ひろ」の経営者のママの旦那さんが80歳で亡くなったとのこと。今年で開店50周年、名物ママも病に伏しどうやって50周年記念を迎えるかと店の常連客も案を練ってた矢先の出来事であった。この店においらが訪れたのは47年前、貧乏な演劇青年を優しく迎えてくれた想い出の場所である。上京して一度も帰博することなく、いきなり護国神社でテント芝居を打ち高校の同級生が連れて行ってくれた店でもある。威勢が良く辛口で江戸っ子訛りで速射砲のように客を罵倒する様が何とも小気味よかった。そんなママだがなぜかおいらには優しかった。これを機に博多に帰る機会も増え、この店には必ず寄らせて頂いた。旦那さんとはめったに顔を合わせることも無かったが、一度見て、この方がこの無頼なママを支えて居るんだなと微笑ましく思った。年下の旦那さんとの都落ちの話も聴かせて頂いた。90歳近くになるママを支え、店を切り盛りしていた旦那さんが亡くなれば、この歴史と数々のエピソードを残した「ひろ」も閉店するに違いない。又、博多の昭和が消えていく。こうやっておいらが再び演劇の世界に戻り活動しているのも、この店があったからだと思っている。ママに励まされ、常連のお客さんの応援が芝居を創る活力になってきたのも紛れもない事実だ。人の出逢いの大切さを教えてくれた「ひろ」本当にありがとうございました。パパさんゆっくりやすんでくださいね。

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睦月の夕景

2020/01/17
【第1298回】

今日は阪神大震災から25年、あの日の早朝の記憶は今でもはっきりと覚えています。まさしくこの世の出来事では無い光景がテレビの画像に流れてきました。朝の眠りの中で起きた地震に対応できるはずが無く多くの犠牲者が出てしまいました。もうそんなことが起こるはずがないと思いきや、2011年の東日本大震災、そしてここ数年続いている自然災害、そして現在も森林火災が止むことのないオーストラリア。果たして、この地球という惑星は大丈夫だろうか?おいらは正直言って危ないと思います。人間の果てしない欲望に歯止めがかからない現状、本当に環境問題に向き合ってる人達が圧倒的に少ないと言うことです。

自分さえ良ければいいと言う考え方が、じわりじわりと世界を蔓延しつつあるからです。要するに他人には無関心と言うこと、関わることが面倒で自らの殻に閉じこもって出ようとしない輩があまりにも多いことに絶望すら感じてしまいます。こんな状況なら、とことんダメになって絶滅からしかやり直せないなんて乱暴な意見もありますが、そりゃ生まれてきたばかりの人達が哀れでございます。なんとか災害を食い止める方策を皆で考え行動に移さねばえらいことになっちゃいます。戦争然り、起きた日ばかり大きく報道しないで日々地道に取り上げて、アホな番組で脳みそいかれてる人達を覚醒させてくださいなメディアの面々。芸能人のあれこれどうでもええやんか...

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いい世の中になりますように...

2020/01/14
【第1297回】

昨日から「男の純情」の稽古が始まりました。「沖縄世」の稽古も佳境に入っており他の稽古場を借りてのスタートです。最近は少子化の波を受けて廃校になる学校が増えています。廃校になった空間を稽古場にするケースが多々あります。昨日から始まった水天宮ピットもそのひとつです。稽古場に困っている創造団体も恩恵を受けています。勿論、お金は払っていますよ。アマチュア劇団なんぞは、無料で借りられる区の施設を転々としながらジプシーさながらの稽古をしてますが、おいらの所はそうはいきません。嘗ての教室での稽古も何だか懐かしさも感じられ、背筋がピーンと伸び新鮮な雰囲気。今回は、前回出演した市川猿弥さんが歌舞伎興行のため出演が不可能になり朝倉伸二さんが出演することになりました。朝倉さんは独特の顔を持つユニークな俳優さんです。トムの芝居にも過去一度出て頂いたのですが芝居の正確さに感心しました。チカラがある役者は普段の佇まいもあたふたしておりません。昨日の本読みも的確でありました。これは又、新しい「男の純情」が誕生しそうで楽しみですな。中年の男三人が繰り広げる哀感に満ちたこのドラマ、出演者の一人である山崎銀之丞さんも、最近若い俳優さんとの競演が多く、この現場に来ると何故かホッとするなんてことを言ってました。大きな強面な宇梶剛士さんは勿論、この芝居観ると何故かオヤジが好きになりますぞ!

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JAZZ&読書の空間

2020/01/10
【第1296回】

今年も多くの年賀状が来ました。この時代、年賀状よりもメールで簡単に新年の挨拶を済ます人も多い。今風といえばそうかもしれないけど、やはり葉書の手触りは捨てがたい。なかでも手書きで書いたものは、その人となりが見えてほっこりとする。手書きの絵なんぞ描いてあるとしばし見惚れてしまう。そこには相手の身体からほとばしる感情、温もりが手に取る様に伝わっておいらの頬も緩んでしまう。日頃、なかなか会えない人の家族写真も、その成長ぶりが見れて嬉しいものですね...と、おいらは思ってしまうので当然、今年も年賀状は出しました。勿論、相手が年賀状自体をやめた人には出しておりません。年々、減少状態が続く年賀はがき将来はどうなってるんでしょうかね?

今年の年賀状な中で、昔の芝居仲間の賢ちゃんからこんなことが書いてありました。昨年、演劇群「走狗」のメンバーが3人亡くなりました。義理と人情に厚い賢ちゃんの悲しみはいかばかりであっただろう...そんな賢ちゃんが「あいつらのところへ行くまで夢をみましょう...」。そうだね賢ちゃん、今年も一つでも多く、夢とロマンと冒険を追い求めましょうね!

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会社ベランダからの夕景

2020/01/08
【第1295回】

年末年始はラグビー観戦してました。大学ラグビーは早稲田と明治が勝ち残り、1月11日に新国立競技場で決勝戦。なんと23年振りと言うから盛り上がり方が半端じゃない。前の国立競技場に6万人を集客したラグビー界での人気カード。この新しい会場も満員になるに違いない。前に前にと愚直なくらいにFWに拘る縦の明治と、華麗なパスワークで横に展開する早稲田、このチームカラーも試合の展開を面白くしてくれる。昨年のラグビーワールド杯で日本中を沸かせた勢いそのままに、今年も年頭からラグビー人気の勢いが続いている。昨日の高校ラグビーの決勝戦も好試合であった。高校生の肉弾戦も初々しくあっぱれであった。年末年始、皆が浮かれている中、泥まみれになりながら楕円のボールを追いかけタックルする姿を想像しただけで青春を感じてしまいます。青春とは無垢なる心身でひとつのことに夢中になることでございます。

先ほどのニュースで、イランがアメリカの軍事施設を攻撃したしたとのこと。トランプのおっさんの頭冷やしてあげないとえらいことになっちゃいます。分断されたアメリカでそれが可能かとても心配です。2016年7月、神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人を殺害した裁判が今日始まったのですが、冒頭、被告が暴れだし被告が居ないまま裁判は進められているようだ...この被告とトランプが重ならないことを願う。

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にゃんとかして...

2020/01/06
【第1294回】

明けましておめでとうございます。

今日から仕事です。今年も4日から25日に初日を迎える「沖縄世 うちなーゆ」の稽古が始まっています。13日には「男の純情」再演の稽古が始まります。てなわけで今年も芝居漬けの日々になりそうです。これって嬉しい悲鳴っていうんですかね?確かに需要があるから公演するんですからありがたいことには違いありません。今年も待ってるお客さんの期待を裏切らないように張り切っていきまっせ!

そんな矢先に、トランプの狂気、いやはや2020年の幕開きは予断を許せない状況になってきました。ゴルフやりながら暗殺を指令する大統領って狂ってますわ。今度はワインでも飲みながら核のボタンを押しかねない...まさしく世界は混沌としています。誰しもが冷静に思考し感情を上手くコントロールしないと取り返しのつかないことになってしまいます。オリンピックイヤーなんてマスコミの煽りに乗っかってる場合じゃございません事よ。第一次世界大戦もひょんな事から始まったことを思えば不穏な感じがいたします。レバノンに逃亡したゴーンの件も不穏な空気に拍車をかけてますね...

なにはともあれ、こんなスタートをきった2020年、足下をしっかりと見つめ浮かれることなく日々大切に過ごしたいものです。

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仕事始めの空

2019/12/27
【第1293回】

今日で仕事納め...今年も怒濤の一年でした。7本の芝居を東京はじめ全国で上演しました。そして昨日、嬉しいニュースが飛び込んできました。11月に公演した「風を打つ」に出演した音無美紀子さんが第74回文化庁芸術祭賞演劇部門で優秀賞を受賞しました。下記が受賞理由です。

 

実在の水俣病の家族をモデルにした作品で、世間の差別にもひるむことなく果敢に挑む強い女性、子供にあふれる愛情を注ぐ母親、夫に寄り添い引っ張る妻である杉坂栄美子をきめ細かく演じた。ドラマ、舞台の第一線で50年以上も活躍し、女優として積み重ねた経験が、見事に花開いた。泣き笑いに満ちた、圧巻の演技だった。

 

昨日は音無さんの誕生日(古希)でもあり二重の喜びでした。先に発表された紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した村井國夫さんともども村井家にとっては最高の一年でしたね。こうやって苦労しながら創った作品が評価されることは励みにもなります。この困難な時代、なんとしてもどんな形にしろ、一人一人が楔を打ち込み悪い流れを変えていかないと大変なことになってしまいます。戦後74年戦争に遭遇しなかった日本、憲法九条があったからだと思います。油断してはなりません、ちょっとしたことから忌まわしい悲劇が始まります。

今年一年、トム・プロジェクトを支えてくれた皆さん本当にありがとうございました。勿論、2020年もやりまっせ!皆さんも良い年を迎えてくださいね。

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2019年、おつかれさまでした。
そしてありがとう!

2019/12/25
【第1292回】

昨日はイブ、今日はクリスマス...街ゆく人の顔もなんとなく弛んでいる。この時代、本当に幸せな時代なんだろうか?幸せなんて人それぞれで基準なんて無いに等しいのだが、おいらなんかは本当に息苦しい社会だと思ってしまう。スマホに、耳だれとしか思えないワイヤレスイヤホン、他人なんか関係ないや!なんて空気感がとっても寂しい。すぐ側に人がいるのにその気配さえ感じようとしない人間の未来ほど恐ろしいものはない。そんな人間には弱者の存在なんて無自覚に近い感受性しか持ち合わせていないのではなかろうか...昨日も寒風吹きすさぶなか、ホームレスの人達が薄い毛布にくるまって眠りについていた。勿論、ほとんどの通りすがりの人達は見向きもしない。おいらだってどうすることも出来ない、がしかし、どうか寒さに打ち克って生きて欲しい!という思いをホームレスの人達に抱き無言のメッセージを伝えるだけでもいいのではないか...

株価が上がっていい気になってるんじゃないよ!アベカワモチおじさん。中小企業の皆さん悲鳴を上げてますよ。街の商店街は、老齢化の店主が先行き不安から次から次に店仕舞いしてます。商店街こそ街の声を吸い上げ絶好のコミュニケーションの場であったはずです。人の感情を分断し、一部の強欲亡者だけが徳をする流れが世界に蔓延しつつあります。そんなやつらの企てに与しないためにもしっかりせねばなりませんことよ皆の衆。

今日のクリスマスの日が、全世界の人達に平等に幸せをもたらせる日でありますように!

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2019 X'mas

2019/12/23
【第1291回】

先週、ペシャワールの会から会報が送られてきました。中村哲さんが会報に寄せた最後の言葉です。

川とにらめっこしているうちに寒くなり、河川工事の季節が再び巡ってきました。みなさん、お元気でしょうか...最近の降雨は予測が不可能で、大丈夫と思っていた箇所が鉄砲水で決壊したり、通過水量が予想をはるかに超えたりで、その都度マメに補修しながら守る以外にないのです。普通の国なら行政が責任をもって保全するのでしょうが、まだまだ途上のようです。ここでは安全とはテロ対策のことばかりで、人々の生活の安全が考慮されてきたとは思えません。今は地元民と協力しながら、将来の河川行政の確立を持つ他はないようです。猛烈な勢いの砂漠化に抗して、今はとにかくこの希望を守り育てるべきだと考えています...水の仕事を始めてから十九年、干ばつは動揺しながら確実に進行しているように思われます...温暖化の影響はここアフガニスタンでも凄まじく、急速に国土を破壊しています。それでも依然として、「テロとの戦い」と拳を振り上げ、「経済力さえつけば」と札束が舞う世界は、砂漠以上に危険で面妖なものに映ります。こうして温暖化も進み、世界がゴミの山になり、人の心も荒れていくでしょう。ひとつの時代が終わりました。ともあれ、この仕事が新たな世界に通ずることを祈り、真っ白に砕け散るクナール河の、はつらつたる清流を胸に、来る年も力を尽くしたいと思います。良いクリスマスとお正月をお迎えください。

二〇十九年十二月 ジャララバードにて

12月4日、福岡市にあるペシャワール会も事務局で、この会報の発送作業をしてる最中に中村哲さん死亡の報が届いたそうです。おいらも哲さんの遺志を受け継ぎペシャワールの会を今後とも支援していきたいと思ってます。人の噂も七十五日、この世の記憶もデジタルの波に押され一瞬のうちに忘却の彼方へ...しかし哲さんの弱者に対する思いと行動は、何時までも忘れてはいけないと思ってます。

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今日の空

2019/12/19
【第1290回】

昨日から「沖縄世うちなーゆ」の稽古が始まりました。先月の水俣に続いて来年の初っ端の公演は沖縄です。人間生きてきて、忘れてならないことがいくつかあるはずです。水俣、そして沖縄の問題もその事例だと思います。この世の中、常に刺激的なニュースを流すメディアに踊らされ大切なことを忘却の彼方に葬り去ることがあまりにも多い気がしてなりません。それに輪をかけて、時の権力者による横暴な記録の改ざん廃棄。それに対し諦めにも近い絶望感に見舞われ無抵抗状態に陥ってるこの国の在りよう。ここはなんとしても声をあげねばこの国の未来はありませんぞ!というわけでおいらも芝居やっとります。

今回の沖縄をテーマにした芝居、なかなか手ごわいです。沖縄のどの視点に狙いを定めて進めていくか...今回はアメリカが最も恐れた不屈の人、瀬長亀次郎、そして沖縄独立を唱え女海賊と称された照屋敏子にスポットを当て、今置かれた沖縄の現状にアタックできればと思っています。三十数年前、宜野湾の米軍基地での光景が未だに忘れることが出来ません。基地内に仕事に出かけるお母さんを追っかけ、フェンスを揺すりながら泣き叫ぶ少女...今尚、沖縄には無数のフェンスが存在します。人の往来を断ち切るこのフェンスこそが分断の象徴です。このフェンスを排除したときこそ、真の沖縄の解放があるのではないか...限りなくゼロに近い希望かもしれないけど歩みを止めることは出来ないし、ましてや本土の人間こそ声をあげる責任があると思います。沖縄は決して他人事ではありませんことよ。

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メタセコイヤ兄弟

2019/12/16
【第1289回】

先週の土曜日、トム☆トム倶楽部の会員さんトム・プロジェクト所属の俳優、そして社員と忘年会を新宿で開催しました。今年も12月現在、計7本の芝居を上演しました。強烈な台風時期の地方公演はハラハラドキドキもんでした。公演中止ほど残念なことはありません。一年に一度、ましてや三年に一度なんてところで中止になったら泣くに泣けませんことよ。

今年は、あの前代未聞な台風にも負けず見事に全公演をやりきることが出来ました。なにもかも、スタッフ、キャスト、社員のお陰でございます。ほんとに公演中は生きた心地がしませんことよ。そんなこと思いながらの忘年会。今年は年明け早々に公演する「沖縄世~うちなーゆ」に出演する沖縄出身の女優さん、きゃんひとみさんと三線奏者・迎里計さんによる沖縄の唄が会場を大いに盛り立ててくれました。いつ聴いても沖縄の唄は心に染み入ります...あの透き通るような青い空と海で、住民の四分の一の人たちが亡くなったという沖縄の激戦。そして今なお日本にある基地のうち、その面積の約70%が沖縄に集中しています。いつまでも沖縄の犠牲に甘えている他県の人達なんとかせいや!オスプレイを分散しようとしても反対するばかり、おいらの知人であるNさんは「そりゃおかしいよ...痛みは分かち合わないと」と言ってました。こんな方が少しでも増えれば日本も少しはましになるんですがね。住民の意見を無視して今日も辺野古の埋め立ては進められています。見て見ぬふりはあきまへん!来年年明けに上演する「沖縄世~うちなーゆ」が、そんな沖縄問題に一石投じる芝居になればと思っています。

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師走の公園3

2019/12/13
【第1288回】

村井國夫さんの降板により休演していた劇団桟敷童子「獣唄」が昨日より上演されました。代役は劇団員の原口健太郎さん、トムの芝居でも2度ほど出演している俳優さんです。主宰者である東憲司さんとは清水邦夫さんが女優の松本典子とともに主宰していた演劇企画集団「木冬社」で出逢い、共に劇団桟敷童子を立ち上げた盟友です。厳つい顔に似合わず心根の優しい男です。村井さんが急病で降板された時の劇団員の心境は如何ばかりであったであろうか...素早く対応し、村井さんの分までと3日間で仕上げていった出演者、スタッフの頑張りにただただ頭が下がる思いです。芝居は生ものですから誰一人として欠かせません。中止なんぞになったときのマイナスは計り知れないものがあります。リスクと背中合わせで日々、戦々恐々とした思いで過ごしているのがプロデュサーの心境、ヒヤヒヤもんでございます。下手すれば会社は倒産しちゃいますね...そんな因果な仕事を何故やっているのか?それは無から有を生み出し、成果を出しお客さんの喜ぶ姿を見たいからでしょうね。リスクがあればあるほど燃えるもんでございます。亡くなった中村哲さんの足元にも及ばないですけど、生かされてるんですから、世のため人のためなんかやらんと男じゃなかですばい。いい芝居観たときの感慨は、今でもおいらの身体のポケットに、まるでホッカイロのように温かくホカホカとしています。

「獣唄」明後日の千秋楽まで、師走の寒い日に観に来てくれた人達を温かい気持ちにさせてくれるでしょう...劇団桟敷童子はそんなことが出来る希有な集団です。

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師走のスカイツリー

2019/12/11
【第1287回】

ペシャワールの会の中村哲さんの遺体が故郷福岡に戻ってきました...「困った人を見て、手を貸してあげるのが人として当たり前のことでしょうが...」この当たり前のことがなかなか出来ないのが人間なんです。寝食を忘れ、無償の行為を生涯アフガニスタンで全うした哲さん、本当に貴男は高大です。国民栄誉賞、ノーベル平和賞などなどと取りざたされてますが、哲さんはそんなもんはちっとも欲しくないと思います。世界のあちこちで中村さんを偲んでごく普通の人達が蝋燭を掲げている姿が一番嬉しいと思います。彼は生前、人が出来ないことに挑戦し行動に移し弱者が救われ、大地が生き返る行為が営々と引き継ぐ人間がいる限り地球も健康ですよ...なんてことを屈託の無い笑顔で語っていました。

それに比して、この国の政治家の無様な姿は呆れてしまいます。都合の悪いことは全て改ざん、廃棄、削除などなど、犯罪に等しい行為であるにも関わらず堂々と世間をあざ笑うかのようにまかり通ってしまうんだから怒髪天。しかも、まだ内閣支持率が45%あるんですから、この国一体全体どなんなってんのと物申したい。

師走というのに晩秋なのか初冬なのか、何ともはっきりしない天気が続いています。街ゆく人の服装もばらばら、今日びっくりしたのは新宿の街を短パン、Tシャツ1枚で颯爽と歩いている外人...彼にしてみれば季節は晩夏辺りではなかろうか。きっと食べてるもんが違うんだろうな。ついつい、わらじみたいな肉を平らげてる姿を想像しちゃいました。

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師走の公園2

2019/12/09
【第1286回】

先週土曜日、劇団桟敷童子「獣唄」観劇...75歳になる村井國夫さんが、すみだパークスタジオに大掛かりなセットを立て込んだ劇団桟敷童子に客演ということで話題になっている芝居だ。トム・プロジェクトでもお馴染みの東憲司さんの新作だ。先ずは、商業演劇とは違ってすべて劇団員による手作りの芝居に出演する村井さんの役者魂が素晴らしい...まだまだ枯れてたまるもんか!若い人たちに自ら身を投じ、新しいエネルギーを吸収しようとする姿勢に拍手。日頃は、ダジャレを飛ばしながらリラックススタイルの村井さんも、舞台に上がれば息子、孫にもあたる役者さんと火花を散らしておりました。複雑に組み込まれたセットの中を這いずり回り、時には罵声を飛ばし村井さんの心身は躍動しとりました。若い役者さんも村井さんに学ぶ点多々あると思います。村井さんに立ち向かう姿に鬼気迫るものがありました。と言っても、村井さん、どこの劇団にも出演するってことはありません。この劇団桟敷童子の芝居に対する姿勢、そしてこの劇団の主宰者・東憲司さんの描く世界に惚れ込んでの出演だと思います。2時間の芝居、圧倒的な村井さんの存在感、桟敷童子の役者さんの真摯な演技が相まって期待通りの作品に仕上がっていました。

今朝、村井國夫さんが軽い心筋梗塞で舞台降板のニュースが入ってきました。終演後もあんなに元気だったのに...信じられませんでした。役者さんは観客の前でいい芝居するために、命をすり減らしているんだなと改めて思った次第です。そして明日まで休演して11日から原口健太郎さんを代役に立て公演再開するそうです。村井さんのためにも更なるレベルアップの芝居を期待してます。そして村井さん、しばし身体を休めてください。村井さんが学んだ俳優座養成所15期生の方々才気溢れた方ばかりでしたが、早くして亡くなっていますので、是非とも彼らの分までいつまでも舞台に立って欲しい!というのが、おいらの切なる願いです。

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師走の公園

2019/12/05
【第1285回】

中村哲さんが亡くなりました...おいらは中村さんの活動に賛同し十数年ペシャワールの会の会員でもありました。アフガニスタンで医師として、又、干ばつに苦しむ住民のために潅漑を造り、自らショベルカーを運転し現地の人たちとアフガニスタンの人たちと国づくりに奮闘した日本が誇る人物の一人です。世界の警察官?を自負するアメリカから医薬品の提供があっても、政治的に中立でありたいという立場から断った方です。ペシャワール会から送られてくる会報にも哲さんが元気に地元の人たちと汗を流している写真を見るたびに、おいらも世の中人のために汗を流さねばと背中を押されたことも度々でした。

こんな人がノーベル平和賞を受賞すべきだし、彼こそが桜を見る会に呼ばれるべき...いや呼ばれても哲さんは行かないと思いますが。こんな時こそ、この腐りきった政府が己の負の部分も含めて何らかの発言でもすればいいものの何も喋りません。

哲さんの出身校である福岡高校でも今朝全校で黙祷がありました。在校生が一様に、哲さんの生き方に深い感銘を覚えた談話が報じられていました。こんな若者が哲さんの志を引き継ぎ少しでも日本、世界のために何かをしてくれれば、きっと哲さんも喜んでくれるでしょう。荒れ果てた大地と疲れ果てた人たちを前にして、緑豊かな大地、そしてアフガニスタン人の笑顔を夢見て、朝早くから夜遅くまで走り回った哲さんこそ夢とロマンと冒険心に満ち溢れたほんまもんの九州男児であったばい!

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まっきっき

2019/12/03
【第1284回】

先週は俳優・鳥山昌克さんが主宰する芝居を観てきました。鳥山さんは唐十郎さんの劇団唐組に20年ほど在籍した根っからの演劇人です。唐十郎の文脈を具現化することは演劇の世界では至難の業です。まず言葉に対するイメージにどれほど身体が拮抗できるか?唐さんの言葉は万華鏡のようであり、台詞の手がかりを捕まえようとしてもままならないものがあります。唐十郎と寝起きを共にし、彼の見知らぬ闇を、こっそりとのぞき込み、聖と俗の谷間に暫し身を横たえるなんてことをしない限り埒があかないのではないか...

11月27日~12月1日まで池袋のシアターグリーンで上演された「唐十郎 楼閣興信所通信」には、まさしく唐ワールドが展開されていました。今や商業演劇的な興行にも唐さんの芝居は人気があるのですが、原点は何といってもテントです。テントの中に息づく特権的な役者の肉体、そして舞台上に散りばめられた数々の大道具、小道具...そのどれもが街のあちこちに捨てられた廃材であったり日常の小物、そして衣装...これらが放つ生活感たっぷりの懐かしい匂い...これらが見事に絡み合いながら果てしないロマンの世界に突き進むジャンプ力こそ唐芝居の魅力だと思います。

鳥山昌克さんの芝居には、確かに唐十郎が描きたかった世界が存在していました。すべてがデジタル化された昨今、芝居こそがアナログ継承芸能ではなかろうか...そんなことをふと思った一夜でもありました。

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窓越しの紅葉

2019/11/28
【第1283回】

秋の余韻を楽しみたいのだが、ここ数年、春と秋という一年で一番気持ちがよい季節が消えつつあります。数十年後には、暑いか寒いかのなんとも味気ないシーズンになってしまいますね。そして、予想を超える災害が世界を襲い人類はあたふたとするのみなんてことになっちゃいそう...それを少しでも防ごうと、環境問題に取り組んでいる人たちが日本にも居ることが少しは救いです。新宿の街にも毎週月曜日の朝、会社あげての街の清掃に励んでいる集団を見るにつけ頭が下がる思いです。道路に捨てられたたばこの吸い殻を、草の根をかきわけながら拾う若者の姿に希望を感じます。最初はたぶん社長の指示で仕方なくやっていたのが、次第に喜びを感じながらの姿勢においらも嬉しくなってしまいます。思わず「ごくろうさん!」と声をかけると何とも言えない笑顔で頭を下げていました。

今の若者は?なんて批判するオッサンがたくさんいるのだが、そんな世の中にしたのもこのオッサンたちです。団塊の世代、確かに面白い時代であったのだが、青春が瞬く間に去っていった瞬間に、現実社会に飲み込まれお金の亡者になった多くの人達。その代償として学歴、利益優先、排除などなど格差社会を増長していくシステムを生み出していった結果、その綻びが随所に露呈していった事実。オッサンたち、その反省を踏まえ残り少ない人生、若者たちに人生で一番大切なものは何かを教えてあげねばなりません...人それぞれ、できることからやりましょう!おいらは、とりあえず芝居を通じて、平和・家族・環境という三本柱を軸に据え創作していくことで、なんとか少しでも喜びを持てる社会にならんかと精を出してやっとります。しかも、教条的にならずエンタメ要素もプラスしておもろい芝居にしてまっせ!

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燃えてます!

2019/11/25
【第1282回】

「ジョーカー」観てきました...おいらが今年観た映画のベストワンかな。なんたって主演のホアキン・フェニックスが素晴らしい。登場するなりおいらの心を鷲づかみ、あとは彼の表情、アクションに瞬きする暇がないくらい魅了されてしまいました。改めて、異国の俳優の演技すなわち生き方に厚みを感じます...役になりきると言うより憑依の仕方が尋常ではない。時折踊る姿は、暗黒舞踏の土方巽を彷彿とさせてくれる。歩く姿、静止したときの表情には果てしない想像力を喚起させてくれる。社会の底辺に蠢く人物の、格差社会への鬱憤晴らしの映画とも受け取られないかも知れない映画なのだが、そんな図式を大胆にぶち壊し深く思考せざるを得ない人間ドラマに仕立てる監督トッド・フィリップスの手腕もたいしたものだ。この殺人者に次第に感情移入していく自分が怖いなんて人も随分居るだろうな。

おいらが最近読んだ大正時代のアナキストに通じるものがある。「難波大介・虎ノ門事件」金子文子を扱った「何が私をこうさせたかー獄中記」「久さん伝」に登場する和田久之助、「パンとペン」の堺利彦、社会の不正に憤りを感じ、テロに走る過程に相通じるものがある。

この映画が何故生まれたのか?自国でポピュリズムを標榜するトランプの登場、そして世界の社会不安がこの映画誕生の背景にあることは間違いない。いや、そんな分析を必要としないホアキン・フェニックスの存在そのものに圧倒された幸せな一日でありました。

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今年も魅せます

2019/11/22
【第1281回】

今日は寒い!一気に冬将軍が参上いたしました...雨の中、道行く人達も身を固くして歩いておりました。新宿のホームレスの人たちもこれからが厳しい季節です。少しでも暖かい場所取り争いが始まります。でも、春になるといつものメンバーが元気な姿で現れるので、彼らなりの身の守り方があるんでしょうな。むしろ、一般の人たちの方がひ弱な感じではなかろうか?ここまでくれば捨てるものなんかあるもんか!開き直った生き方で颯爽と生きてる人たちも見受けられます。まあ、いずれにしても誰のせいでもありゃしない...今ある姿は、これまで生きてきた結果のなにものでもないのですから自分で引き受けるしかありませんな。

それにしても、桜を見る会、サクラばっかり集めて何やってるんでしょうね。モリカケ問題に引き続き、すべてシュレッダーで消去、時間がたって忘れ去ることを待つ政府の常套手段。これに慣れ諦めてる国民。おいら今、大正時代のアナキスト関連の本を何冊も読んでいるのだが、時代の閉塞感に死を恐れず立ち上がった若者の純粋さに心打たれます。テロ行為に対しては賛同しかねますが、差別、不正に対してわがことのように思う彼らの気持ち、今の若者はどう感じるのでしょうか?これからの時代は、その若者が背負って立たなきゃならんのに、ひたすら内向き志向で思考し行動する多くの若者になんだか歯がゆい思いです。いや、若者だけではありません。夢も希望もロマンも無くなり、安酒場で愚痴ってるオッサンたちも情けない。一度きりの人生じゃないか!キラキラした生き方せんともったいなかですばい。

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雨にも負けず...

2019/11/20
【第1280回】

昨日横浜、県民共済みらいホールで「風を打つ」最終公演をやってきました。このホールには毎年トムの作品を呼んで頂いているのですが、今回の作品、支配人のS氏に大変ありがたい言葉を頂きました。「この作品こそ、今の時代、多くの人が観るべきである...」日頃は手厳しいコメントを出されるS氏も、今回ばかりはひとつのダメ出しもなく諸手を挙げての讃辞。俳優座劇場の公演でも多くの方の素晴らしい評価を頂きましたが、嘗て俳優座の演出部にも所属されたこともある辛口S氏の言葉はおいらもとても嬉しかった。来年も3本呼んで頂いているので今回以上の作品を創らねばと今から気が引き締まる思いです...今年ラストの公演、事故もなく見事に責務を果たしたキャスト、スタッフ、そしてトムの制作の皆さん本当にありがとう。感謝感謝!

芝居を観る前に久しぶりに野毛にあるJAZZ喫茶「ちぐさ」に足を運びました。相変わらず半ばボランティアに近い従業員の方が、店内に置いてある名盤レコードを取り出しターンテーブルに置き丁寧に針を落としていました。このアナログな一連の動作がたまらなく愛おしいのでございます。今やなかなか手に入らないレコードばかりで、貴重なレコード鑑賞タイムです。こんな喫茶店が無くなるときこそが、いよいよ日本の終わりかな?なんて思わせてくれるお店です。JAZZの曲に酔いしれ読書するのが、おいらの至福に時間でございます。疲れた心身に心地よい風が吹き抜けていきます...

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みなとみらい・野毛

2019/11/18
【第1279回】

昨日で「風を打つ」無事に東京公演千秋楽を迎えることが出来ました。大いに笑い、泣き、感動してくださったお客様本当にありがとうございました。そして、5人のキャストと多くのスタッフよくやりました。まさしく「ONE TEAM」、家族の芝居だからこそ、この言葉は重みがあります。家族の再生はもちろん、国の再生、教育の再生などなど全てが問われてる昨今、この芝居が問いかけるテーマは果てしなく拡がっていく感じです。ラストに男聚3人が打ち鳴らす太鼓、そして魚の気持ちを代弁して語り掛ける音無さんの方言こそが、時代に翻弄され国から捨てられた人達に届ける痛切な叫びと哀悼に通じます。おいらは、弱者の視線で芝居を創りたいと常々思っています。市井の息遣いが感じられる芝居創りこそが、今一番必要なのではなかろうか...勿論、そんなことにお構いなく創ったとしても、血の通わない芝居なんぞは観客に伝わらないと思いますがね。

日毎、街中にも秋の気配が、いや、もはや冬の到来かも?なんて季節になりました。この季節の青空、移りゆく雲の表情、木々の紅葉、愚かなニンゲンを優しく包んでくれる自然界の大きさを改めて感じます。飽きることなく傲慢な手法で世の中を蹂躙しようとする権力者の皆さん、他人の目ばかり気にせんで、深く深呼吸しながら、自然の織りなす大パノラマに暫し目を向けてちょうだいな...心眼なるものに少しは近づけるかもしれません事よ。

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また一段と色づいて...

2019/11/14
【第1278回】

今日また大嘗祭、先日に続き国費が費やされます。全国の被災地、その他もろもろ救済しなければならないお金が必要なのに、陛下も心苦しく思ってるんではないでしょうか?秋篠宮様が質素にやればといった発言も完全無視。そして今度は、能天気な花見に税金を私的に使う政治屋さんたち。少しは国民の皆様怒ってくださいませ!日本伝統の文化はわからないでもないが、こんな体たらくなこの国のシステムでは納得できませんがな。そして先日の式場でも「天皇陛下万歳!」の大合唱、先の大戦で300万人の戦死者は、どんな思いで聞いたのであろうか?少しの想像力を持てる人であっても、あの万歳三唱はやはり無神経な叫びと聞こえるのではなかろうか...おいらは左翼でも右翼でもありませんぞ。

「風を打つ」今日入れて残すところ4ステージ。またまた、演劇関係のページにこんな書き込みがありました。

 

俳優座劇場にてトム・プロジェクト『風を打つ』を観劇。
1993年の熊本・水俣を舞台とした家族のお話。3年前に拝見した同団体の『静かな海へ―MINAMATA―』で、それまであまり詳しい知識を持ち合わせていなかった水俣病という公害問題について様々な学びを得られた中で、今回はそんな水俣に住むとある家族の物語ということもあり、個人的にとても興味のあるテーマの作品でした。
水俣病は高度経済成長期にあった1956年に熊本県と新潟県において発生・発見が認められた公害ですが、今回の作品はその公害発見から37年後の1993年を舞台としたもの。その間に公害自体は改善が図れたものの、40年近い月日が流れているのにも関わらず、尚様々な問題を抱え、水俣地区の人々にのし掛かっている様子が随所に垣間見れて、やはりこの手の大きな公害問題は一度起きるとその完全解決にはとてつもない年月、そこに暮らす人々の苦悩・努力などが伴うという何とも言えない重みのようなものを痛感させられました。しかし、この作品はそのような社会派の内容であると同時に、決してその悲観的・マイナス的な要素だけでなく、むしろ水俣公害を乗り越え、バラバラになりかけていた家族の希望溢れる再生の物語であったようにも感じます。家族の愛情、家族の素晴らしさを感じました。
トム・プロジェクトさんの作品は今年2月の『芸人と兵隊』以来9ヶ月ぶりでしたが、毎度のことながら自分自身の知識アップになるとともに、心地よい笑いシーンも盛り込みながらテーマに沿って丁寧に描かれている印象を受けるので見応えがあるし、とにかく色々と考えさせられます。『萩咲く頃に』『にっぽん男女騒乱記』で拝見した音無美紀子さんは今回は肝っ玉母さんのような役。相変わらず好演が印象的だと感じました。また、個人的にテレビの旅番組のイメージが強い太川陽介さんのお芝居は初めて拝見させて頂きましたが、何となく普段から印象の強い笑顔の中に、九州男児の役らしい強さのようなものも感じました。他の3名の演者さん含め熊本弁も違和感なく使いこなされていたと思います。やはり今回もトム・プロジェクトさんの作品は"当たり"でした。

トム・プロジェクトの作品が"当たり"てのが嬉しいですね。貴重なお金と時間を敢えてトム・プロジェクトに割いてくれたんだもん、きっちりとお返ししないと罰があたるってもんでございます。この芝居、今週の17日が俳優座千秋楽です。この芝居観ずして今年の芝居のこと語れませんことよ皆の衆。

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少しづつ...

2019/11/11
【第1277回】

「風を打つ」昨日で4ステージを終えました。終演後、何人かの人が今年のベストワンとか言ってくれてます。芝居が観客にきちんと届いてることが一番嬉しいです。先日水俣に長年関わってきた水俣フォーラムの方が観に来て、こんなメールが送られてきました。

 

水俣病患者・杉本栄子さん一家をモデルにした舞台「風を打つ」の初日公演を昨晩見てきました。正直、予想外に素晴らしかった。みんな泣きました。一緒に行った4人以外に見覚えのある人に会いませんでしたから、客席は水俣病についてよく知らない人がほとんどだったと思われますが、あちこちからすすり泣きが、時には笑い声が聞こえていたのは、この舞台のメッセージがそんな人にも届いていた証拠でしょう。

杉本さんのお宅を模した舞台には、栄子さん、雄さん、肇さん夫妻、実さんを演じる5人以外は登場しませんし、時代も1990年初頭のある2ヶ月ですから大変シンプルです。悪役もいなければ、思わせぶりな映像も使いません。もちろん、栄子さん役の音無美紀子や雄さん役の太川陽介が水俣病の患者さんに見えたわけではありません。こんなに早くしゃべり動くことは、患者さんにはできないことですから。それでも、あの人たちが言いたかったことを甦らせている。そしてそれは、私たちの日々の喜怒哀楽と同水面でつながっている。だから終演後、拍手が鳴り止まなかったのでしょう。

 水俣病を題材にした近代演劇は10本以上作らていますし、そのほとんどを私は見ました。例えば砂田明の1人芝居「天の魚」があります。それは確かに多くの人の胸を打つものでした。しかし、この作品から原作「苦海浄土」の力と支援者としての砂田さんの存在感を引いてしまえば、オリジナルな舞台表現としての力はどれほどあったかと考えてしまうのです。しかし、今回の舞台は劇作家ふたくちつよしの書き下ろしで自身による演出です。しかもこの脚本のほぼ9割は事実で、構成上付加されたフィクションはまことに僅かなのです。でありながら、これほど私たちの心を揺さぶるのは、見事です。もしかしたら、私がこれまでに見た「水俣病を描いた近代演劇」としてはベストと言い得るかもしれないのです。

しかし大変残念なことに、この舞台は今月17日(日曜日)で終演ですし、今後の公演予定もありません。水俣病の患者たちの訴えに耳を傾けたいと思っていらっしゃる方はもとより、一般の方もこの舞台なら仕事を休んでも六本木・俳優座に駆け付ける価値はあります。そうして特別な地位や学歴、権力金力から遠いところにあって、己が肉体を用いて自然に働きかけ暮らしを紡いできた人びとの悲しみと勇気に触れてもらいたいと願わずにはいられませんでした。

​騙された思って見に行って下さい。よろしくお願いいたします。​


​おいらが語るより、この方の思いがそのものズバリです。本当に騙されたと思って劇場に来てくださいな。家族の、そして日本、世界の、もちろん人間一人一人の再生の物語です。

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ホトトギス
(秘めた意思)

 

2019/11/08
【第1276回】

東京は連日の秋晴れ、気持ちのいい日が続いています。こんな日々であればいいのですが、自然界の神様は、驕れるニンゲンに警鐘を鳴らすかのように災いを引きおこします。早く気付かないと更なる天災が年を追う事にやってくることを覚悟せねばなりません。

昨日、六本木俳優座劇場で「風を打つ」、初日を迎えることが出来ました。3年前に上演した「静かな海へ~MINAMATA」を踏まえ、再度、水俣に挑戦しました。水俣は、まさしく経済優先社会のなかで犯した人災です。人間関係が崩壊し街が荒んでいく様は、東日本大震災の構図と同じです。水俣もわれわれが決して忘れてならない言葉です。さて、今回の芝居、作・演出のふたくちさん、キャストの皆さん、そして舞台を支えるスタッフの総力戦で素敵な芝居が仕上がったと思います。水俣を全面に押し出すのではなく、家族の再生、町の復興に苦悩し尽力する姿を描いた結果として、水俣病なるものが、まるで透かし絵のように浮かび上がってくる戯曲、演出、俳優の演技が功を奏したと言えるのではなかろうか...芝居は生き物です。劇場に溢れる熱を感じたときにこそ、プロデューサー冥利に尽きます。

まだ始まったばかり、この生まれた我が子が順調に育ち、日本各地を旅していろんな人達と出会い、格差無き街や村になれば芝居も捨てたもんじゃございません。

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そろそろ色づき始めました

2019/11/05
【第1275回】

沖縄首里城が炎に包まれ崩れ落ちる姿を見ながら涙が流れてきました...35年前くらいに沖縄に3カ月ばかり滞在し首里城の前に立った時に、琉球王国の歴史を直に感じました。沖縄戦で米軍に焼き尽くされ再建した首里城はキラキラした朱の色が印象的でした。そして今回の火災、辺野古の問題も含めて何故か歴史の節目に沖縄で何かが起こります。今回の火災でいちはやく1億円ものカンパが集まったのは嬉しい限りです。常に日本の犠牲になった沖縄に対する、せめてもの優しさの表れだと思います。沖縄を見捨てるな!何もできない本土の人たちの意思表示にまだまだ、日本人の良心を信じたいと思います。そして、この連休の間に被災地に駆けつける老若男女のボランティアの人たちの姿にも、なんだか未来の明るさを見つけた次第です。この小さな国で、困った人が居たら手を差し伸べようぜ!いつ立場が逆転するか分かりません...だってこの国の政治、行政に頼ってなんとかなりませんこと分かってます。だとすれば、ひとりひとりの善意しかありませんことよ。

まだまだラグビー熱が冷めない日本の繁華街...道行く異国の人たちは皆笑顔、笑顔があれば争いもなし。苦虫を噛み潰したような顔じゃいけませんぜ!どうも笑顔作りが苦手な日本人、こんな時こそ笑顔をじっくり味わってくださいませ。

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今年も我が家に参上

2019/10/31
【第1274回】

昨日、東京亀戸カメリアホールで「風間杜夫ひとり芝居平和三部作」無事に千秋楽を迎えることが出来ました。9月に始まって二ヶ月にわたる公演でした。おいらも冒頭でヒーローを歌う70歳の杜夫ちゃんを観ながら「よくぞやった!」と声を掛けたくなりました。だって、この日本でいや世界で、誰がこの歳になって3時間もの一人芝居をやれますか?この役者魂に先ずは敬意を表したい。昨日も絶好調、観客の反応を巧みに取り入れ瞬時にギアを入れるところなんぞ天才役者でございます。22年間、彼と一人芝居をやり続けたプロデューサーとして感慨深いものがあります。時には止めたくなったときもあるでしょう、でもこうやって継続できたことは彼との信頼関係があったからだと思っています。役者という生き物、尋常な精神ではやれるものではありません。その微妙な心理、身体を日頃から観察してないとなかなか役者とつき合いきれないのも事実です。特に一人芝居ともなると、一対一のサシの勝負です。逃げも隠れも出来ません、全てをさらけ出すしかありません。この仕事をしてて思うことは、下手な駆け引きは通用しないと言うこと...かといって、こちらのカードを総べてみせるということも違うような気がします...でも、最終的には己が培った人間力に賭けるしかないと言うことですね。

一人芝居を支えるスタッフのチカラも相当のものでした。まさしく、今年の日本ラグビーチームの「ONE TEAM」そのものでした。打ち上げの席でスタッフの一人が作ってくれたくす玉を割ると「祝 千穐楽」の垂れ幕が落ちてきました。こんな所にもスタッフの愛を感じます。スタッフ、観客に愛される杜夫ちゃん幸せもんですな。そして本当にお疲れ様でした!

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おつかれさまでした!

2019/10/28
【第1273回】

先週の週末、金沢に行って来ました...全国演鑑中部・北陸ブロックの例会が金沢であり出席。全国に12ブロックの演劇鑑賞会があり、皆さん演劇を通して民主的な社会創りに邁進している人達ばかりです。土曜日は4時間にわたり様々な苦労話も交えながら真剣な討議が為されていました。最後の方に発言された女性の言葉には身が引き締まる思いがしました。

「私達は、演劇がこの世の中に何故必要なのか...そして演劇の楽しさを伝えることが、仲間が増えることに繋がっていくことだと思います。」しょうもない芝居創ったらいかんですばい!そういわれた感じです。会議の後は懇親会、おいらのテーブルに同席した、いなざわ演劇鑑賞会、岡崎演劇鑑賞会の方々と和気あいあいの中、かなり飲んでしまいましたかな。おいらが芋焼酎好きと分かると、矢継ぎ早に持って来てくれる親切な方々でした。

酔いを醒ますため、ふらりと歩きながらちょいと入った喫茶店が地元でも歴史ある「茶房 犀せい」でした。経営者の方は記者出身で、地元で精神衛生のためと称しライブや舞台などもプロデュースしてるとのこと。東京渋谷にあったサブカルの聖地でもあった「渋谷ジャンジャン」を受け「金沢ジャンジャン」の主宰者でもあった女性である。おいらも我ながらよくぞクンクンと嗅ぎわけながら、こんな店に辿り着いたものである。なにせイヌ歳生まれの習性でござりまする...ホテルに帰りばったんきゅう、金沢の素敵な一日でした。

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2019金沢

2019/10/23
【第1272回】

昨日は、日本全国メディアも含めて皇位継承式典の話題で持ちきりでした。日本古来の儀式でありながらも、とても簡素でよかったと思います。台風の被災者のことも考えパレードを中止したのも賢明でした。経費は160億円だからひとり160円のお祝い金といったところですね。この式典でただ一つ気になったのが、首相の音頭取りで「天皇陛下万歳」を唱和した場面。ふと、戦時中にこの言葉を発して戦死した300万の兵士のことが頭をかすめました。どんな気持ちで、この言葉を発したのであろうか?おいらは個人的にはあまりいい感じがしませんでした...象徴天皇、そして市井の人たちに寄り添うように行動されてる天皇に対して似つかわしくないのではないか...いまだに、この国の天皇制も含めて各界物議を醸しているのだが、要は天皇を政治的に利用してはいけないということだけは間違いない事実だ。

そんななか、又しても演劇群「走狗」の戦友であった伊深宣一の訃報が入ってきました。今年は田島君、島君に続いて3人目。伊深君は、ささくれだったテント芝居の状況の中、いつもヤギのような髭をなでながら「まあまあ...諸君」てな具合で神様みたいな人でした。得意な楽器で疲れた役者の心身を癒してもくれました。劇団解散後は優しい姉さん女房とジーンズ店などをやってました。おいらも、とっておきの一枚を買った覚えがあります。最近は埼玉県富士見市民文化会館キラリふじみのコンサートに参加しながら楽しく過ごしていたのに...71歳まだ若いな。でも好きに生きてきたんだから悔いはなかでしょう宣ちゃん。今日、これからお通夜に行って最後の別れをしてきます。

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いつか来た道

2019/10/21
【第1271回】

今日はやはりラグビーでしょう...日本チーム負けましたがよくぞやりましたね!誰もが夢を見させてもらったという感じです。最初は、異国の人がなんで日本チームの一員なのという疑問も抱いていたと思いますが、これぞ人類皆兄弟!政治の世界では不可能なことをいとも簡単に成就したという感じです。試合前に国歌が流れ「君が代」を共に口ずさむ姿に胸打たれるものがありました。日本選手の中には、対戦チームである南アフリカ出身の選手もいました。あんな激しい戦いをしながら、試合後に共に相手をたたえ合うノーサイドこそラグビーの本質です。おいらも高校の時ラグビーを少しかじり、そこからラグビーファンになりました。大学ラグビーの早明戦、そして日本選手権での釜石、神戸製鋼の強さ、野球のシーズンが終えるとラグビーに夢中になっていました。ラグビーの聖地秩父宮ラクビー場にも良く足を運びました。雨中の中、泥んこになりながら男たちが闘う姿に人生を感じたこともあります。15人が一つになって80分の時間、まさしく「ONE TEAM」。下手なドラマよりいろんなものが見えてくる面白さがありました。

30年前、新宿ゴールデン街の仲間から誘われラグーチームに参加し、久しぶりに楕円形のボールを手にして多摩川のグランドに立ちました。目まぐるしい試合展開の中、おいらにボールが回ってきました。チャンスとばかりおいらはトライを狙いゴールポストの下を狙い猛ダッシュ、あと少しというところでタックルされノーサイド。おいらの後ろの人にパスすればトライに結び付いたのに...この時、おいらはひとつの啓示を受けました。「俺がオレガノ我を捨てて、お蔭オカゲの下で暮らせ」この時の教訓が、今でもおいらの生きる指針になっとります。

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秋の気配

2019/10/18
【第1270回】

昨日は、トム・プロジェクトの芝居でもお馴染みの村井國夫さんのコンサートに行って来ました。75歳になるダンディな村井さんの歌声に痺れました。前半は昭和の懐かしい歌、フォークも交えて語りかけるような唄は村井さん人生そのものの様でもありました。表現はすなわち生き方であることを証明していることを実感した次第でございます。トークも、村井さん特有のユーモアで会場は爆笑の渦。この辺りは百戦錬磨の役者でございます。後半はミュージカル「レ・ミゼラブル」の初演から900ステージ近くをこなしたジャヴェール警部の持ち歌をはじめ、映画の数々の名曲を重厚かつ軽やかに歌いこなすところなんぞはまさしく和製フランク・シナトラ、いやイヴ・モンタンといったところか...考えてみれば、村井さんみたいな役者さん、この日本でもなかなか見あたらない気がします。おいらが先ず驚いたのは、トムの芝居に初めて出演してもらった「満月の人よ」でのだらしない親父さんの役でした。ミュージカルの俳優さんだと思っていたのだが、見事に田舎のダメ親父を肩の力を目一杯抜きながら演じてくれました。村井國夫という役者の底チカラをまざまざと見せつけられた次第です。

来年もトム・プロジェクトの「砦」の再演が決まっています。村井國夫さんが放つ人間臭さと同時に、表現に対する飽くなき探求心にまだまだ目が離せませんですばい。

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東京原宿にて

2019/10/15
【第1269回】

日本沈没を予測させる自然の猛威。年毎にひどくなる自然災害に為すすべもないニッポン。これも、何年も前から言われている地球温暖化による海中の温度の上昇。この問題に対してアメリカ日本は何となく消極的。これじゃ、ちっぽけなこの国は、近い将来間違いなく沈んでしまいます。なのに手早い対策を打ち出せない政治、オリンピックなんてやってる場合じゃないでしょう!と大きな声を上げないこの国の呑気な人たちにはホトホト呆れてしまいます。どうみたって、来年再来年と甚大な被害が持ち受けているのは明らかなのに...もうそろそろ、利便性の追求止めませんか地球の人たち!と一部の人は声を大にしてるのですが、たいして危機感を感じさせないのは、利益に奔走している企業家の巧みな戦術。豊かになりますよ!なんて夢を持たせて時間稼ぎしてるのが見え見えなのに、目の前にニンジンぶら下げられると為す術もなし...

クライマックスシリーズ、ライオンズお疲れさまでした。これはもう諦めるしかありません。だって、4試合で失点が32。1試合で8点取られちゃライオンズの強力打線もどうしようもなかですばい。観てて思うにメンタルが弱すぎ、へっぴり腰弱気の投球じゃ打たれます。

若い投手が多いので、ここは優秀なコーチで鍛えなおしてほしいですな。今年は野球は終わりです。巨人とソフトバンクの金満チームの日本選手権はどうでもよかですばい。それよりも、今は日本チームのラグビーに注目。地湧き肉躍る!これぞ男のスポーツですたい。おいらが野球の次に好きなスポーツが注目されて嬉しゅうございます。

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台風一過、今日の新宿

2019/10/10
【第1268回】

「風間杜夫ひとり芝居平和三部作」九州公演を終え戻ってきました。博多の公演の盛り上がりは大変なものでした。650人の博多の観客の笑いと拍手は、杜夫ちゃんのテンションギアをトップまで上げさせ異常ともいえる状態でした。最後の落語「芝浜」も絶品でした。博多はやっぱりラテンの血が流れているんですね。どんたく山笠、サッカーもいいけど、こんなに芝居を喜んでいらっしゃるんだから、芝居小屋ひとつでも作りなさいって話です。歴代の市長にそんな考えがなかったんでしょう。いや、おいしい食材と温暖な気候、そして災害が少ない土地柄が文化をそれほど必要としなかったかも...博多に来ると、何故かふらりと散策したくなります。おいらを育ててくれた街の変貌に驚くと共に、昔そのままに残った風景を見つけると、思わずタイムマシンに乗っかって昭和の世界を旅してる気分になっちゃいます。中洲、川端、祇園、春吉あたりは基本的に昔の佇まいを残しています。65年前に亡くなった親父が、ふと路上で店を構え商いをしている光景が幻のように現れる気がします。それは何年経っても街の匂いが残っているからだと思います。

東京の家に戻ると、なんとおいらの帰京を待っていたかのように月下美人が三輪も咲き出しました。これは奇跡です!今年はまさしく狂い咲き。一晩の短い時間しか咲かないものがよりによって...残り少ない今年、なにか良いことでもあるのかな?

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miracle

2019/10/08
【第1267回】

「風間杜夫ひとり芝居平和三部作」地方公演スタートです。10月6日長崎公演に行ってきました。おいらも長崎は久しぶりです。20代の頃テント芝居で、テントを担ぎながら神社の長い急坂の階段を息も絶え絶え登った記憶が鮮明です。今回の公演もそうなんですが、今やどこに行っても立派なホールがあり、素敵な環境の中で公演できるのは本当にありがたいことです。この日も杜夫ちゃん絶好調、観客の笑いを芝居のテンポに取り入れながら無事公演を終えることができました。終演後は、博多にある1970年開店のレトロバー『MAD HOUSE ひろ』で出会った原さんに思案橋の小料理屋でご馳走になりました。45年後にこうやって杯を傾けることができることに感謝です。そのあとはスタッフも交えて旅初日のお疲れ会となりました。

昨日は、原さんにいただいた長崎くんち奉納踊りの会場である中央公園に行き、くんちを満喫しました。アンコールを求めて「もってこい!」の掛け声を連発するさまが面白かったですばい。会場を後にして向かったのは平和公園と原爆資料館。改めて、原爆の理不尽さとやり切れなさに唯々立ち尽くすのみ...アメリカとロシアの圧倒的な核の数を見るにつけ、なんと愚かなニンゲンの姿。原爆投下地点から上空を見上げると青い空と夏の名残を残す雲が広がってました。1945年8月9日午前11時02分、あの日あの時空を見上げた人たちのことを思うと涙が出てきました。この亡くなった人たちのためにも、残された人生、平和について思考し行動せねばと思いました。

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2019長崎

2019/10/04
【第1266回】

「風間杜夫ひとり芝居平和三部作」昨日、無事千秋楽を迎えることが出来ました。風間さんはじめスタッフの皆さんの総力戦でいい舞台に仕上がったと思います。稽古中にもいろいろありましたが、さすが千両役者の杜夫ちゃん、多くの観客の声援に後押しされ日毎に舞台の精度が上がっていきました。3時間、演者も観客も充実したひとときではあったと思います。誰があんなことできますか?改めて役者風間杜夫の凄さを感じた次第です。

10月6日から長崎からスタートして地方公演が始まります。10月30日に東京亀戸で最後のステージがあります。東京で見逃した人は最後のチャンスです。三部作一挙上演なんてことはもうないと思いますので是非いらしてくださいな。

10月というのに、今日は猛暑日。いよいよ地球は不完全な様相を呈しています。災害も含め、自分の身は自分で守るしかありません。勿論、生き方も含めて、今問題になっている関西電力然り、何を信じていいのやら?今回の芝居にもこんなセリフがあります。

「この広い宇宙で、青く輝くこの星だけだよ、人が生きてるのは。それなのに、どうして争い、憎しみあうんだ。」

生き物としての自覚と尊厳を持たなきゃ、他の生き物に笑われますよ...

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学園祭

2019/10/02
【第1265回】

昨日から消費税が10%になりました。この影響で街の商店が次々と閉店しています。年金暮らしが多い常連客を思うと値段を上げるのが忍びない、新しいレジの器械を購入するのが困難、そして度重なる災害などなど、街の交流の場であり年配者にとっての憩いの場が消えていく...考えてみれば街の商店街こそが、その街のへそであった気がします。身近な人の情報もお店に来ることによって知らされ、孤独死なんてことも考えられなかった。スーパーは確かに便利ではあるけどすべてが機械的、物を配給されてる感じがしてなりません。商店街に貼りだされた「9月30日にて閉店いたします。長い間の御贔屓ありがとうございました。」こんな告知を見るたびに寂しくなってしまいます。そんな庶民の気持ちも何処吹く風、苦渋の決断どころか簡単に消費税を上げてしまいました。ほんまに将来の社会福祉のためなら理解できるけど、これまでの政治手法ではその恩恵を感じられないのが正直なところです。こんな政治を選択したのも庶民なんだけど...そろそろ気付かないとあきまへんで。

「風間杜夫ひとり芝居平和三部作」東京公演、残り2ステージ。70歳の杜夫ちゃん張り切って演じてます...今一つ覇気がない人、元気になりますから是非劇場へいらしてくださいな。

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硝子越しの秋

2019/09/30
【第1264回】

「風間杜夫ひとり芝居平和三部作」今日で5ステージを迎えます...いやいや、一人で3時間喋り動き回るんですから、今年4月に古希になった杜夫ちゃん大変です。持ち前のエキセントリックハイテンションを駆使しながら、舞台を所狭しと演ずる姿に唯々感心するばかりです。この年になって、こんなことできる役者どこにも居ないんじゃないかしら?お客が楽しんでくれる姿、そしてそれを成し遂げた後に褒められることのために命を懸ける姿に役者魂を感じます。演者も観客も一つになって、二度と戻らない時間と空間を共有できるなんて、なんて素敵なことでしょう...今回の芝居、普段の芝居より男性客が多いのが嬉しいですね。芝居なんぞより、飲み屋で一杯を選択するオッサンたちが劇場に足を運んでくれるなんて嬉しいじゃありませんか。そして70歳になっても、あんなにエネルギッシュに立ち振る舞ってる杜夫ちゃん観て、こりゃいかんですばい!俺ももうひと踏ん張り社会のために平和のために、そして愛する家族のために生きねばと思ってくれればと思ってます。

おいらの好きなスポーツの一つラグビー、大金星を挙げて盛り上がっています。泥臭く戦う男たちの姿にもドラマを感じます。何事も、いい汗かいての酒の方が、美味いに決まってますよ皆の衆。

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曼珠沙華

2019/09/26
【第1263回】

いや、ライオンズ勝ちましたね...今年は優勝無理だと思ってました。投手の失点、毎試合5点~6点じゃ勝てるわけないというのが常識。その常識を覆す山賊打線が凄いですな。打率、打点、本塁打、そして盗塁まですべてライオンズの選手がトップなんですから、観る方にすれば面白くてしようがないという訳。こんなチームは本当に稀かもしれませんね。打って走ってダイアモンドを駆け巡り、次から次へと点が入るシーンを観るたびに、そりゃ楽しいに違いありません。24日の優勝が決まる日、ライオンズが勝つだけでは駄目なので、同タイムに試合をやっていた楽天対ソフトバンクの試合も同時にテレビで観ていました。この日ばかりは楽天を応援しました。昨年までライオンズに居た浅村がこの日はいい仕事をしてくれました。この浅村、何故かライオンズ戦になると狂ったように打ちやがって、この野郎なんて思ってましたが、やっとこの日、お世話になったライオンズに恩返しができたんじゃなかろうか。短い選手生命、お金のために移籍するのも分かりますがなにか寂しいものがあります。特にライオンズのエース、主力打者として活躍した選手たちが、ここ最近去っていくので複雑な思いです。でも、このライオンズは移籍した選手たちに代わる若手が出てくる伝統があるのも確か。無名の溌溂とした若手のプレーはとても気持ちいい!今年こそクライマックスシリーズを勝ち抜き11年ぶりの日本一を掴んでくださいな。

そんなことよりも、今日は「風間杜夫ひとり芝居平和三部作」の初日でございます。秋晴れの東京、これから下北沢の本多劇場に向かいます。

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今日の新宿

2019/09/24
【第1262回】

涼しくなったり、暑くなったり、こんな事繰り返しながら秋になるんですね...先週、11月に公演する「風を打つ」の本読みをしました。題材は水俣です。
2016年にも「静かな海へ~MINAMATA~」を創ったんですが、再度の水俣へのチャレンジです。水俣のあの歴史、姿をどう伝えればいいのか?なかなか難しい課題ですが、自然を破壊し、利益追求のための犠牲を強いられた庶民の思いを語り継いで行かねば、この国の未来は無いと思っています。今回も、ふたくちつよしさんに作・演出を依頼しました。彼の作風は家族の在り方を戯曲にしています。水銀を垂れ流した会社、この事実に手ぬるい対応をし続けた国を弾劾するのではなく、水俣病を引き受けざるを得なかった漁師一家の再生の物語です。

昨日は、いよいよ今週26日から始まる「風間杜夫ひとり芝居平和三部作」の最終稽古でした。一人で3時間喋りっぱなし、いったい全体、彼の頭脳は如何様に組織されているのか?いつも感心を通り越え、ただただ驚嘆するのみ。今年、古希を迎えながら、この無謀なる挑戦に挑む風間杜夫の役者魂炸裂といったところかな。こんなことできる、いや、やろうなんて言う俳優、世界探してもいやしませんがな。この世紀の大一番、見逃す手はないと思うのだが...3時間辛い?そんなこと忘れさせてくれる中身でございます。

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秋の日は釣瓶落とし

2019/09/20
【第1261回】

東京電力前役員全員無罪...文書改ざんの件も含めて、なんだか司法の世界も忖度塗れの気がしてならない。世界のジャーナリストも驚いているそうだ。今回の千葉の停電然り、何の反省もないのではと疑ってしまう。あれだけの事故を起こしておきながら何の罪も問われないなんてありうるのだろうか...来月から消費税もアップ、この国の未来がホンマに心配だ。

新宿の路上で、久しぶりに素敵な音楽に出会った。ディジュリドゥ奏者Chapa。 ディジュリドゥとはオーストラリアの先住民アボリジニの楽器で世界最古の金管楽器と言われている。 その不思議な音色と共に、リズムマシンを駆使して即興のダンスミュージックを奏でていた。これは受けますな。新宿南口はストリートミュージシャンにとっては格好のエリアだ。広々とした歩道に開放感溢れた空間、誰もが夢見ながら音を奏でている。おいらも、時には立ち止まり聴いてはいるのだが様々ですな。この世界も、何か一つ惹きつけるものがないと見向きもしてくれない。そんななか、Chapaの世界は今まで体験したことない音だった。早速、路上で販売していたCDを購入し、我が家で聴いたのだが自然に身体が動き出し、おいらの舞踏まがいの踊りに顔面踊りも加わり、どうにも止まらない事態になっちゃいました。これ、日々の肉錬にいいかもね...

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イカした音

2019/09/17
【第1260回】

千葉の停電の現状を見るにつけ、この国の災害に対する対策があまりにも杜撰な気がしてならない。原発事故での教訓がいかされてないのではないのかと思わずにはいられない東京電力、そして台風直撃だというのに、大した効果がみられない内閣改造を呑気にやっちゃう政府、国も電力会社もどなんなってるの?これじゃ、アメリカから武器をいくら買い込んでも、北朝鮮からミサイル打ち込まれたら一瞬にして日本沈没ありゃりゃんりゃんの世界は現実のものとなってしまうんじゃないかしら...よく分からんことが、現実に起こっていることをしかと受け止めないと、ほんまにえらいことになっちゃいますよ。

9月中旬だというのにまだまだ暑い日が続いています。そんな日に、オリンピックのマラソン選手の代表を決めるレースがありました。東京の名所巡りのコースはなかなかいいのだが、来年の8月にほんとにやるの?というくらい暑さとの戦い大丈夫かなと心配してしまいます。今回のレース、本命では無い選手が優勝しました。マスコミに騒がれることなく、地道にコツコツと練習した人が報われる事例が増えれば社会もきっと良くなるんでしょうね。

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平和なひととき

2019/09/13
【第1259回】

今年も咲きました...去年10年振りに咲いた月下美人、我が家のベランダにて見事に9月11日午後9時半にぱっくりと姿を見せました。初期に垂れ下がっている蕾が開花直前になると自然に上を向いて膨らみ、夕方に芳香を漂わせはじめ、じっくり時間を掛けて一気に咲く。その様は官能的な感じさえしてしまう。もともとサボテン科・クジャクサボテン属に分類される着生サボテンの1種。咲いたときの匂いはジャスミンに似たやわらかい香りで、くらくらと目眩がしてしまい悩殺されちゃいそう(笑)一夜限りってのがいいじゃないですか潔くって...翌朝、閉じてうなだれてる姿を見るにつけ、あの美しい瞬間は幻ではなかったのではなかろうかと思ってしまう。今度はいつ、この不思議な瞬間に出会えるんだろうか?自然が生み出すファンタジー、おいらにもわからない。

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美人薄命

2019/09/11
【第1258回】

「皆さん、自由を謳歌してますか。幸せを当たり前のように感じていませんか。」香港から来た留学生が、ある大学でスピーチしたそうな...香港でいま行われているデモは深刻です。30年後に迫った中国の権力支配化に対する自由民権の戦い。今なお言論統制下に置かれた中国の現状を見るにつけ、自由のありがたさを満喫してきた若者たちが危機感を感じるのは当たり前のことです。30年前に中国の若者たちが立ち上がった天安門事件も権力者によって圧殺されました。それほど怖い中国の権力機構、香港若者の悲痛なる叫びだと思います。さて、これに比して日本の若者の呑気な事といったらありゃしない。選挙にも行かず、アジアの緊張状態にも大した興味も持たず、大企業の就活に勤しみ、唯々スマホに熱中し世界に目を向けようとしません。いやいや、若者ばかりではありませんな。人生をあきらめたオッちゃんたちも酒喰らって愚痴こぼしゲームに興じております。そんな呑気な人たちは権力者にとっては好都合な味方です。そうなんです!自由なる権利、あっという間に不自由なるものに取って代わってしまいますぞ...日本、そして世界の戦争に至る過程が証明しています。

今日、改造内閣がスタートするそうな...相変わらずの論功行賞人事、まさしく忖度国家。大切な文書書き換えても罰せられず、それに対して大規模な抗議デモも起きない国じゃ権力者も枕を高くして寝てられるってなもんですな。

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秋の予感

2019/09/09
【第1257回】

先週の土曜日、横浜演劇鑑賞会での「百枚めの写真」観てきました。いい芝居は何度観てもいい芝居ですな。役者のテンションもかなり高く、そして内に秘めたるものが切々と伝わってくる。回を重ねる事に、キャストの思いが観客に伝わる様を感じられるなんて幸せです。そして、改めて平和の大切さを次の世代に継承しなければいかんなと改めて思う次第でございます。この芝居、このあと長野県で8ステージやって今年は終わりです。こんな芝居こそ毎年やらねばと、芝居に関わった一人として責任を感じます。今回、会場には戦時中に撮られた横浜演劇鑑賞会関係の家族の写真が掲示されていました。あの忌まわしき戦争の記憶を忘れてはならないという決意表明と受け取りました。

終演後の、みなとみらい地区はいつものように穏やかで潮の香りがほんわかと匂っていました。こんな平和な光景が何時までも続きますように...いい芝居と、潮の香り、そしてお酒、戦争が起こればこんな至福の時間も持てませんがな。

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横浜みなとみらい21

2019/09/06
【第1256回】

又、暑さが戻ってきましたね...地球の環境も大きく変わり、災害も含めニンゲンはあたふたとしています。これもニンゲンが招いた人災なんですがね。今年の蝉の声、例年比べ力強さもなくしょぼい感じがしました。炎天下の中、命の限り鳴き続ける蝉があってこその夏でございます。この夏、家族に見守られ笑顔いっぱいの子供もいれば、親の虐待を受け命をなくす子供もいます。この世に奇跡的にニンゲンとして生を受けた尊い命を親が殺めるなんてことが、実際起こるんですから、まさしくこの世の中、今までと違う人種が育ち、親になってるんですね。生き物もモノの一部であり、究極は記号程度にしか考えられなくする、この国の取り巻く環境の諸々に問題があるんでしょうね...文書を改ざんしても罰せられない理不尽、自国の主張を通せない外交、一部の富裕層にのみ優遇される制度...などなど庶民は諦めに転じ、刹那的な思考が蔓延していった結果かな。

でも、生きねばなりません!なんとしても...おいらもここんところ随分と友を見送り、少しばかり弱気になっていますが、残された人生、少しでも充実した時間を過ごしたいものです。今日も青い空のもと、絞るような最後のメッセージを届け地上に舞い降りた蝉を見ながら「あんたの分まで、おいら今日も元気に生きまっせ...」と声をかけました。

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お疲れ様でした!

2019/09/04
【第1255回】

先週、今週と芝居を2本観たのですが...改めて演劇というジャンルの難しさを感じました。先ず演技そのものが日常と相容れないモノになっていないかどうか?もともと芝居が好きな人にとっては既に演劇そのものが、その人の身体にインプットされているので、そのパイのなかで処理出来る。がしかし、この趣味の多様性の現世において、この芝居自体がある特殊性を帯びているのではないかと思うことがある。観客の日々の生活史を余程凌駕することが無い限り、観客に時間とお金を強要するには限界があるのではないか...といっても、ミュージカル、今流行の2.5次元芝居、旬の役者が出演している芝居、いわゆる商業演劇に類するジャンルには相変わらずの集客力。そこなんですね...演劇が娯楽なのか、それとも社会との関わりの中で創られていくモノであるべきなのか...両者が上手く絡み合えば一番いいのだが、そうは簡単にいかないのが世の常。でも、考えてみれば表現自体そのものが千差万別。要は己のやりたいことをやればいいじゃん!と言う答えに落ち着いてしまう。確か昔、劇団のある主宰者が野球場に集まる多くの観客を眺めながら「芝居にも、この何分の一でもお客が来てくれれば嬉しいな...」と呟いたとさ。野球と芝居、所詮、似て非なるものかもしれませんな。

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今日の空

2019/09/02
【第1254回】

いやいや、今年はライオンズ、ダメかなと思いきや盛り返してきましたな...7月にソフトバンクと8.5ゲームあったゲーム差が、昨日の時点で1となりました。こりゃわかりませんぜ。なにせライオンズの打力が凄い、山川、中村、外崎、森、秋山のホームラン。それに加えて金子、源田、木村、外崎、秋山の俊足、こんなチームは両リーグ通じて皆無。試合見ててワクワクしますがな...これに投手のチカラが充実すればダントツ1位のチームなんですが、今年は防御率最悪。1試合平均5点以上は失うんですから打撃陣の負担は半端じゃありません。点を取ったらすぐ取られるゲームを何度目にしたことか。しかも、ピッチングコーチがマウンドにアドバイスした途端に打たれてしまう悲惨な光景に、腹が立つどころか諦めに近い心境でありました。コーチの指導が悪いのか、それに応えられない投手の甘さなのか、とにかくおんぼろ投手の無様な姿にファンのみなさんも呆れかえったことでしょうね。ところが、最近、投手が大崩れしなくなった途端、ゲーム差が縮まった次第でございます。

なにせおいらは、ライオンズ一筋67年に渡るファンであるのは勿論だが、金に糸目をつけず他球団の選手をかっさらうチームが嫌いです。鷹、鷲、巨人、なんてチームが野球界の盟主なんてことになったらベースボールも終わりですたい。なんでんかんでん、この世の中、金でどげんでもなると思ったら大間違いでございます。夢とロマンと冒険は、お金で買えるもんじゃなかとよ...と、少年キヨシは西鉄ライオンズに教えて頂きました。

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9月の空

2019/08/30
【第1253回】

アマゾンが燃えている...みんながよく利用してるあのアマゾンじゃありませんよ。世界最大の熱帯雨林を有するブラジルのアマゾンです。世界の熱帯雨林の60%がブラジルに存在します。しかも、世界の酸素の20%はアマゾンの森林でつくられると言われています。ブラジルのトップは、トランプと結託しなにかと金勘定に思考を巡らし、自国の大切な資源をないがしろにしてます。燃え続ける樹木を見ながら、何故か書物が燃え尽くされてる感じさえしてしまいます。樹木が無くなることはすなわち、この世界から本なるものが消滅してしまうことです。一時、電子ブックなるものが流行駆けたのだが、最近車内でもあまり見かけません。そりゃそうでしょう!書物は自然界で長い時間育まれた樹木から派生し人間の知恵で生まれた貴重な文化資産なんです。ページをめくるあの喜び、しっとりとした紙に印刷された文字に喚起される夢とロマンと冒険心。読書することで、世界のあらゆる人達が、人間形成の一助になったことは紛れもない事実です。

その樹木が燃えていく姿は何とも忍びがたい。でも、世界のトップの連中は、そんなことよりも兵器産業で成立しているアメリカ、そして中国、ソ連の兵器を買い漁ることに夢中になっています。自然環境より武器、なんとも嘆かわしい状況でございます。

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読書の伴侶は美味なる珈琲

2019/08/28
【第1252回】

えらいこっちゃ...「百枚めの写真」の東京公演が終わったと思ったらすぐさま旅公演。「A列車に乗っていこう」も現在旅公演の終盤。そして、月曜日からは「風間杜夫ひとり芝居平和三部作」の稽古が始まりました。今年70歳の古希を迎えた杜夫ちゃん、満を持しての公演でございます。稽古初日、一気に読み合わせをいたしました。予定通り、休憩15分を挟んで3時間。いやいや、この膨大なセリフを今から覚えていく役者の凄さを今更ながら感じます。なにも、こんなつらいことしなくてもとお思いでしょうが、役者風間杜夫は並みの役者ではございません...子役から始まり、全共闘運動にも遭遇し、アルバイトの日々を乗り越え今の立場を得て、みなさんご存じの一級品の俳優になったのでございます。芝居に対する執着は飲めば飲むほど熱く語りかけてきます。役者さんが良く発する言葉「舞台の上で死ねれば本望...」杜夫ちゃんはどう思ってるか知らんけど、この心情を絶えず持ち続けながら舞台に上がってると思います。

韓国と日本大丈夫かな?なんだか、日本はアジアで孤立してしまうんじゃないかしら。トランプ一辺倒の外交姿勢を改めたいととんでもない事態が起こりますぞ。平和だからこそ芝居もできるってこと、一人一人がもっと政治、行政に目を向けんとえらいことになっちゃいます。

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晴れたり曇ったり

2019/08/26
【第1251回】

先週の週末「百枚めの写真~一銭五厘たちの横丁」の東京公演、両国のシアターXで無事終えることが出来ました。2010年の初演以来4回目の上演です。この芝居が、この時代に必要不可欠な作品である事の証でもあります。赤紙によって戦地に赴いた兵士に届けるために撮られた99枚の写真(戦意高揚のため)と、名もない東京下町の一家族のドラマが観客の心に深く突き刺さる作品です。おいらが原作者である児玉隆也さんの自宅に伺ったのが12年前です。この作品を書き上げ38歳で亡くなった児玉さんの自宅で、奥様とご子息夫婦に熱くこの作品を舞台化したいと語った記憶があります。松下竜一さんの時もそうであったのですが、原作と突然の舞台化の話が遺族の人達には唐突であり、おいらは唯々粘り強く説き伏せるしかありませんでした。芝居なんぞの世界に馴染みのない人達にとっては、おいらなんかインチキ興行師では?なんて思われたかもしれません。でも、おいらの心意は伝わり舞台に上げることが出来ました。そして今年も意義ある8月に上演することが出来感慨深いものがあります。児玉さんが写真を頼りに、留守家族のその後を訪ね歩いた様に、プロデューサーも舞台にしたいという執念から、コツコツとその心を伝える地道な仕事からしか始めるしかありません。そして、こうやって何年も上演できる事で報われた気がします。こんなアナログな作業だからこそ、観客に確かなものを届けられると思っています。

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両国駅前

2019/08/21
【第1250回】

昨日は、10月8日(火曜日)「風間杜夫ひとり芝居平和三部作」博多ももちパレスで公演に向けての宣伝も兼ねて風間杜夫トークショーをやってきました。おいらの故郷でもある博多、自然に恵まれおいしい食べ物と飾り気のない人柄で人気ある街なんだが、アートに関しては行政機関の方々ちょいと無関心かな...だって、これだけの街で芝居に適した劇場がありまっせん。たくさんのアーティストを輩出してるのに、はなはだ恥ずかしい限りであります。そんななか、ここ「ももちパレス」が何とか演劇人口を増やしていこうとする今回の企画に拍手を送りたい。杜夫ちゃんも、この日朝早くから地元のテレビに生出演し少々お疲れ気味にもかかわらず、ジョークも含めて笑いに包まれた和やかなトークショーでありました。

久しぶりの博多、昔よくふらついた中洲近辺を散策したのだが、おいらが日々通っていた映画館も無くなり、昔の面影は影も形もありませんでした。博多の庶民の味でもあった豚骨ラーメン屋が巨大なビルを構え商売するような時代です。しかも高い値段でのラーメン、こんな豚骨に反骨し、おいらは今でも¥320の豚骨ラーメンを食べに行きます。博多が気取ってどげんするとね!博多はいつまでも庶民が真ん中にある街であってほしいですね。

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昨日の博多

2019/08/19
【第1249回】

こんな暑い日は、映画館で過ごすのも一案でしょう...というわけで「ライオンキング」観てきました。長生きしてみるもんですね、技術の進歩に唯々驚くばかりです。これ、本物のライオンじゃん!これだけで感動しちゃいます。話自体は、どこにでもある勧善懲悪、因果応報てきな話なんだが、とにかく引き込まれます。喪失、友情、愛、てんこ盛り、そして過去に向き合わないと幸せな未来はないなんてこともきっちりと描かれています。こんな映画創られると、俳優要らないんじゃないのかななんて、役者にとっては死活問題になっちゃう危機感さえ感じます。アフリカの壮大なサバンナを彷彿とさせる音楽もいいですね。これ、日本語吹き替え版も上映されてるけど、やはり字幕じゃないとこの映画の雰囲気は味わえない気がします。

高校野球はいよいよ、明日準決勝、星稜の奥川投手いいですね。実力もさることながら笑顔が素敵です。笑う門には福来る!こんな猛暑でも笑顔があれば救われますね。

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熱帯夜に咲く花

2019/08/09
【第1248回】

猛暑なんてどこ吹く風...家の近くの広場で、ちびっこ盆踊り大会が催されてました。夜になってもこの暑さ収まりそうもありません。広場もコンクリートで固められ、上から下からの照り返しで、少々の夜風で温度が下がるものでもないのだが、ちびっ子は元気です。汗を拭き拭き、くたびれた表情をしているのは連れ添う親達。可愛い浴衣をはだけながら見よう見まねで踊る姿を見ていると、おいらもほっこりしてしまいます。

おいらの時代は、ガラの広っぱ(石炭のガラを捨てて出来た広場)で毎年盆踊りしてました。おいらの興味は、踊りよりも水飴を舐めること。そして、お目当ての女の子の踊る姿をこっそり眺めること。お目当ての子はお金持ちのお嬢さんで、おいら貧乏人のガキにとっては高嶺の花でありました。きれいな浴衣着て上品に踊ってる様を見ながら、キヨシ少年は何を思ったことでしょう...このガラの広っぱではいろんな催しが開催されました。仮説のスクリーン(白い布きれ)を立てての映画上映会、野球大会などなど。子供にとっては格好の夢場所でもありました。広場があれば何かが起こり、そこから子供の夢は大きく羽ばたいていきました。それは今も昔も変わりません...今尚、世界の各所で内戦が起き広場さえも、がれきで埋まり遊ぶ空間を失ない路頭に迷う子どもたちの報道を見るにつけ、改めて平和の有り難さを思わずには居られません。今日は74回目の長崎原爆忌...今日もこの国のトップの口から核兵器禁止条約に関する言葉はありませんでした。

明日からお盆休み、16日まで夢吐き通信お休みです。

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夢の広場

2019/08/07
【第1247回】

昨日は、広島に原爆が投下されて74年目。74年間この悲劇を伝えようとしても世界は応えてくれません。核を保有している国が、開発途上国に核を持たないように脅しを掛けるのも変な話じゃございません。この正論が世界で通用しないこと自体、おかしな人達のおかしな話です。その点、世界の中でも堂々と正論を展開し核廃棄に向けての行動を出来るのが唯一の被爆国である日本なんです。が、しかし大国に遠慮して口先だけの論調に終始しているのが我が国の現状。今日も確かに暑い、でも1945年8月6日原爆投下時刻の午前8時15分に遭遇した人達の暑さは地獄絵を呈する熱さ。これまでに映画、写真、舞台、絵画で何度も目にしました。こんな酷いことをした米国、その状況を作り出した日本の軍部、更に拡げればこの戦争を生み出した世界の愚か者。なのに、いまだ核を含む軍拡、そしてこれからは宇宙の領域まで拡大しての領土争い...ほんまにアホですな!

昨日、電車の中で二人の幼い兄弟がスマホを見ながら「捕まえた!」なん狂喜の声をあげておりました。何捕まえたが知らんけど、バーチャルの世界でしか体験できないこの子どもたちの環境ほんまに悲しゅうございます。おいらの子供の頃なんか、この夏休み野原を駆けずりまわり、バッタ、ザリガニを捕まえながら生き物の生態から命の在り方を学んだもんでございます。大人はと言えば、だんまりこんでスマホとにらめっこ。こりゃあかんわ...日本未来は、世界の行く末は?おいらはもう死んどりますわ。

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ふたくちつよし作品集

2019/08/05
【第1246回】

いやいや、この暑さ半端じゃございません...そんな中、今年も「百枚めの写真」の稽古が始まりました。この芝居の初演は2010年で、今回が4度目の上演になります。いい作品は、いつどこでも上演される!のいいお手本です。この8月は広島、長崎の原爆、そして8月15日の終戦記念日。戦争を考えさせてくれる月でもあります。おいらは敗戦後、中国朝鮮半島の混乱の中、帰国途上で危機的状況にあった母のおなかにいた時期でもあります。いつも思います...この世に生まれてこなかったことも十分考えられる。生まれ来たからには、戦争のない世界にする一助にならないと、無駄な戦争のために死んでいった人たちに申し訳ない気持ちで一杯です。この芝居もその一つです...稽古初日の本読みでも、なんども、胸迫る台詞がありました。戦地にいる名も無き兵士は家族を思い、どんな気持ちで死んでいったんだろう...天皇陛下万歳なんて思って死んだ人は居るわけ無いでしょう。皆、故国の家族のことを案じながらに決まっています。「百枚めの写真」の芝居には、このことが切実に描かれています。

そして、この作品の作・演出家である、ふたくちつよしさんの作品集が出版されました。彼の代表作が2冊の本に凝縮されています。家族の在り方、平和の尊さ有り難さを今更ながら感じさせてくれます。興味がある方は是非読んでみてくださいね。

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新宿の避暑地

2019/08/02
【第1245回】

猛暑が続いています...熱帯夜で寝苦しい夜もなかなか大変です。おいらは寝る前に読書しながら、ウトウトタイムを待ってます。便利な時代になったもので、枕元に置くライト、ブックスタンドともに安価な値段で売ってます。静かなピアノの音色も眠気を誘います。いやいや大変な時代になったもんでございます。おいらの子供時代は蚊帳を吊り、ぐーすか鼻提灯で、ほんわか気分で寝とりました。でも、あの蚊帳の中から観る風景はなんとも摩訶不思議な世界でした。人の気配、吊るされた蚊帳の形、蚊帳越しに見る人影はまるで幽霊のようでもあり怖かった。蚊帳に入るときは何回か蚊帳を振って入らないと良く叱られたものだ。同じ部屋が異形の空間になり、異次元の世界に居るなんて子供にとっては面白可笑しい世界でした。

今や、クーラーがないと過ごせない時代になっちまいました。そのクーラーの排気と車両の排気、そして照り付ける太陽がアスファルトに反射して街路は地獄の熱さ。道行く人の表情は、寝不足と疲労から、明らかに苦悶に満ちています。そんななか、大道芸人は暫し休息をとばかりに涼風代わりの音色を届けていますが、この暑さでさすがに立ち止まって聴く人は皆無...でも、この心意気がいいじゃありませんか。淡々と流れるアンデスの曲に、あのマチュピチュを想像しました。と、想像した瞬間、アンデスの風がおいらの身体を吹き抜ける感覚に襲われました。

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アンデスの風

2019/07/31
【第1244回】

久しぶりにLPレコードに針を落としました...いいですね!このアナログ感はたまらんですばい。ジャズ、シャンソンそれぞれのジャンルの歌姫の歌声が、まるでその場に居るみたいで幸せな感じです。ビリー・ホリディ、エディット・ピアフと言えば半端じゃない生き方をしてきた歌手。目の前でクルクル回るレコード盤に刻み込まれる針の動きが、まるで彼女たちの壮絶な人生を想像させてくれます。両レコードとも半世紀以上前に吹き込まれたライブ盤。ピアフはパリのオランピア劇場、ビリー・ホリディはカーネギー・ホール、その熱気がレトロな雰囲気で味わうことが出来るのがレコードのいいところです。この感触を知ってしまうと、又再びレコードの世界に回帰してしまいそう...断捨離の世界に差し掛かったおいらとしては、これは苦渋の決断をせざるを得ないですな。今ある貴重なレコードで我慢し、あとはコンパクトなCDで音の世界を楽しむしかありませんな。幸いにして都内にはレコードを掛けているJAZZ喫茶がありますので、ふらりと出かけ珈琲飲みながら読書を兼ねての喫茶店巡りをすれば良し。レコードの素敵なジャケット、レコードを取り出し盤に乗せ、針を落とす、この一連の流れが至福の時間です...なんでんかんでん便利になればいいってことじゃありません。ひとつひとつ手間暇掛けてこそ、そのさきに至上の喜びが待っているってことですな。

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至上の歌声

2019/07/29
【第1243回】

「A列車に乗っていこう」東京公演、昨日無事千秋楽を迎えることが出来ました。この不思議な台本を舞台化してくれたキャスト、スタッフの皆さんに感謝です。勿論、この芝居を観た人たちの感想は様々だと思います。芝居の楽しみ方も又、十人十色。おいらはこの手の作品正直言って好きです。わからないものに対して、とことんのめりこんでいくチャレンジ精神がなくなったらモノを創る人間として失格だと思います。この芝居で好きなセリフがあります。登場人物のそらさんが幕切れ近くに言うこの言葉こそがこの芝居のすべてを語っているのでは...

 

ええ、彼がこんなことをいったんです。自分は星占いは信じないけれど、よく、占星術を否定する人の中に、地球から観ると星座だが、あの星々の一つ一つは、何千光年も離れているんだから、何の結びつきもナイって、そういうひとがいる。でも、ボクは、その意見には反対だ。むしろ、何千光年も離れている星々が、地球から観ると星座になるという、神秘性でではなく、人間の想像力が好きだ。

 

そうなんです。想像力を刺激、喚起させるものに触れた時の喜びはなにものにも代えることが出来ません。知的冒険、感性の錬磨、心身が踊りだす瞬間こそ、極上の快楽ではなかろうか。

この芝居、今日の横浜から始まって9月1日の三重公演まで15ステージの公演があります。地方の皆様、この夏の想い出に是非、A列車に乗ってみませんか?まさしく銀河鉄道の世界が拡がって行くことでしょう...

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夏だ!

2019/07/25
【第1242回】

選挙終わりました...投票率は50%を切り、相変わらず自公政権安泰、既成の政治に嫌気がさすのも分かる気がします。何年経っても変わらない政治屋さんのパフォーマンスに辟易してるのに、一石投じたのがれいわ新撰組の山本太郎。比例区で10%取ったんだから大したもんでございます。ひも付きなし、身体張って辻説法してる姿に庶民は飛びつきますがな。こんなやり方でしかこの国の政治に風穴を開けられないなんて、何とも寂しい限りです。おいらも彼の話を聴き納得できる部分多々あります。しかしながら、政治も数の世界、この現状においてひっくり返すのは並大抵の事じゃございません。でも、本気になってる人間を国会に送り込み、腐敗と馴れ合いに満ち溢れた仕組みをぶっこわすことでしかこの国の未来はないのかもしれませんな...世間の人、山本太郎はただのパフォーマンスだとせせら笑いしてる人が居るのも事実です。でもね、笑ってるうちに、いつのまにかとんでもない国になってるかもしれませんぞ。

今日、新宿の伊勢丹前でイタリア人旅行者家族が大喧嘩していました。母親らしいおばはんに、若い夫婦が泣きながら叫んでおりました。嫁さんが大声でゼスチャーたっぷり振る舞ってるんで、通行人は芝居でもやってるのかと立ち止まり観てました。それにしてもお国柄、ラテンの人は所かまわず己の主張を貫き通すんですね。政治を変えるのもこのエネルギーが必要なんだなと思った次第です。

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梅雨明け

2019/07/22
【第1241回】

「A列車に乗っていこう」先週の土曜日から始まりました...初日は、作家の北村想さんも名古屋から来ていただきました。自分が頭の中で空想した世界がどんな形になるんだろう?書いた人間でしかその気持ちはわかりません。しかし、自分が思い描いたものと違っていても、これは仕方がないことであります。この難攻不落の想作劇、どこから手を付けていったらいいのか本当に至難の業であったと思います。演出の日澤君以下スタッフの総力戦で素敵な舞台に仕上がったと思います。勿論、言葉を舞台で表現する二人の女優さんも大変だったと思います。おいらも久しぶりにドキドキいたしました...そういえば、芝居をやり始めた時は、すべてがアバンギャルドの精神で立ち向かい腹をくくってやったもんでございます。誰しもが経験したことがない、感じたことがない領域を模索しながら、やみくもに突っ走る...なんだか、久しぶりに、こんなことを体験させてくれた今回の芝居でした。

初日の舞台を観ながら、半世紀前に観た唐十郎の状況劇場、早稲田小劇場、ベケット、イヨネスコなんて芝居を思い出してしまいました。モノを創るものはとどまってはいけない!創っては壊し、そしてより新しい刺激的なモノを創る。心身ともに少しは老いを感じ、バタバタと鬼畜に入っていく芝居の戦友を見送っているおいらに「まだまだくたばるわけにはいかんぞなもし...」なんてはっぱをかけられた今回の芝居。

自分の道は、自分しか歩けないし、この果てしない宇宙を、如何様に生きていくのか、そして何が心理なのか...ほんまに芝居は奥が深かくておもろいもんでございます。

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今日もどんより

2019/07/19
【第1240回】

いや、今日は久しぶりに青空を拝むことが出来ましたな...そんな新宿西口歩いていると、向こうから元F1ドライバーという参議院候補者がおいらの顔見てニコニコしながらやって来るではないか。こりゃ困りましたな、おいらこの人、別に応援してるわけじゃないし逃げようと思ったんですが、無理やり握手をしようとするもんですから、またまた困り果ててしまいました。おいら握手したくなかったんで、丁重に断り難を逃れました。一難去ってまた一難。今度は、あの小池東京都知事に反旗を翻し都議会議員を辞し、東京北区の区長選に立候補するも落選、今度は維新から参議院東京地方区から今回立候補したとっちゃん坊やみたいな人が、選挙カーからおいらに向かって猛烈に手を振るではないか...おいら興味ないから無視すると、隣に座ったウグイス嬢がカン高い声で「頑張ってます!温かい応援励みになります!」おいら何も応援した仕草してないのに勝手に言ってんじゃないよ...とほほです。困ったんもんですな。こんな人たちが立候補してるんですから政治良くなるわけないじゃん!と久しぶりの青空の下での心地良さに水を差された気持ちになりました。

それにしても昨日の京都の無差別殺人...世界全体がささくれた感情を生み出す流れになっているのがなんとも絶望的です。何かに急き立てられ心身が歪になるシステムが問題だとわかりながら、人は富を名誉を求め只ひた走る...青空眺めながら、何が本当の幸せなのか?

もう一度考えてほしいなと思います。

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久し振り!

2019/07/17
【第1239回】

小雨続く連休、久しぶりに、ちあきなおみの最後の一曲「紅い花」を聴きました。いや、いいですな...あの独特の声に、語りかけるような歌唱スタイル。まさしくシャンソンですな。本物の歌手は決して歌い上げません。自然な姿で言葉を大切に優しく伝えてくれます。昨今、歌の世界はメロディ中心で進んでいるので、言葉を聴かせてくれる歌は貴重です。

 

紅い花 想いを込めて ささげた恋唄

あの日あの頃は 今どこに いつか消えた 夢ひとつ

 

なんてことのない歌詞なんですが、ちあきなおみが歌いだすと人生、時間が視えてくるんですね。歌はまさしく3分間のドラマ。芝居なんぞは、2時間かけてドラマを創り上げるんだから3分間というのは凄い。歌い手本人の中にも聴き手の人生を凌駕するものがなければ商いになりません。いずれにしても壮絶な人生です...要は、生半可な生き方では人の前には立てないということですな。

 

今日も曇天。東京では7月の日照時間が5.4時間と記録的に少なく、一昨日の海の日も海岸、プールともども閑古鳥状態。この後、一気に猛暑なんてのもたまらんですな...年々、体力落ちてるおいらにとっては体内調整が難しい地球になってしまいました。

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曇天の中での連呼

2019/07/12
【第1238回】

いやいや、お天道様なかなか顔出してくれないな...これは深刻ですぞ!まず野菜類が高騰しています。せんべい屋さんも天日干し出来なくて困っていますし、魚の干物屋さんも大変です。そして、ニンゲンたちもどことなく憂鬱でさえない表情で街を歩いています。サマーセールで盛り上がるはずの衣料品売り場も閑散としています。やはり夏と言えば太陽、キラキラ輝く太陽が主役でございます。去年の異常な暑さもまいりますが、汗が出てこない夏なんて夏じゃございません。青い空、青い海、蝉の声、蚊取り線香の煙と匂い...年々、季節の風物詩がこの国から消えていってる気がします。生き物は人間だけじゃないんだぞ!自然界の生き物の抗議の声が聞こえてきます。昨日もカラスが会議しとりました「人間どもの残飯あさって食べたんだけど、なんだか薬品ぽい味がして腹の調子がおかしくなりやした。ならば虫の方がまだましなんて思ったんだが、虫も栄養失調なんだか、あんまりうまくないな...」てなこと、ぶつぶつかかあかあ囁いておりました。トカゲなんか見つけると頑張れよ!と声を掛けたくなっちゃいます。この地球に生きるすべての生き物に思いを馳せ、四季折々の恵まれた環境の中、すべての生物が平穏無事に過ごせたらいいな...その主役がお天道様です。早く顔出してちょうだいな。

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恋しい太陽

2019/07/10
【第1237回】

昨日、「A列車に乗っていこう」の稽古場を覗いてきました...石田さんと松風さんの自然体の演技が印象的でした。今回の北村想さんの戯曲、とっても不思議です。この不思議な世界を舞台化するには、俳優の透明感が必要であると思いました。手垢が付いた演技術ではとても適わない、いや想さんの世界がどんどん遠くなる...その心配は、昨日の稽古場で完全に払拭されました。透明感なんて、月並みな言葉ではあるんですが表現に携わる者にとっては、この言葉を体現することは至難の業でございます。場数を踏めば踏むほど、思考すればするほど手垢演技の泥沼に陥ってしまうのが俳優業の恐ろしいところ。素人の芝居に、目から鱗なんてことも耳にします。身に付けたものをいかにそぎ落としていくか?と言って下手じゃしょうもないし、とっても難しい修行の過程かもしれませんね。

ハンセン病提訴断念。当たり前のことです...誤ったことをやったんだからできる限りのことを国がするのは当然ですが、お金で今までの虐げられた時間が戻るわけがありません。冤罪も含めて間違った判断でどれだけの人たちが苦難を強いられたか、過去の歴史を紐解けば闇に葬られた案件が多々あります。新聞の片隅の情報から知らされることも多々あります。これらを見逃さず、地道に記事にする記者こそ本物のジャーナリスト。新聞が消える時こそ世界の終わりだ!決してオーバーじゃありませんことよ。

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又、咲きましたアンネのバラ

2019/07/08
【第1236回】

先週の週末は、成瀬己喜男監督の映画を2本鑑賞...1本目は1962年制作の「放浪記」は作家、林芙美子の物語である。菊田一夫の舞台で有名になったが、こちらは高峰秀子が見事な目線演技でドラマを盛り立てている。上目遣いの視線一つで主人公の感情がすべてわかるくらいの演技である。仲谷昇も宝田明も若々しくいい男。そして相変わらずきっちりと脇を固めている加東大介が素晴らしい。この俳優にはずれがない。どんな役をやらしてもハマる。芸人一家で育った血筋と彼の人生観が役者として見事にマッチしているとしか言いようがない。2本目は1943年制作の「歌行燈」泉鏡花の原作である。戦時中、国家総動員体制により、映画界においても当局による統制が図られる中、制作されたものである。芸道ものが国威高揚になったかどうかは定かではないが、国の狙いはわかるような気がする。親から勘当を受ける能楽師を演じる新派の名優、花柳章太郎は色っぽい。そして相手役の山田五十鈴がこれまた奇麗でございます。早朝、松林の中で章太郎が五十鈴に舞を伝授するシーは、これこそ成瀬巳喜男が映像作家と言わしめた名シーンではなかろうか。屋外シーンの光線の美しさ、役者の表情と衣裳に映る木漏れ日の影などは絶品。カラー映画では決して体験できない、まさしく光と影の芸術。
嗚呼、やはり映画が娯楽の王者であった時代の映画は素晴らしい!時間をかけじっくりと創り上げ、役者に余計な演技をさせない演出。映画にかける時間と情熱が湯水のようにあったのだ。残された時間、日本の名作をまだまだ観なきゃと思った週末でした。

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京王線高井戸駅ホームから

2019/07/05
【第1235回】

またまた選挙...この選挙だけでいくらお金がかかると思います?大体600億近いお金が吹っ飛んでしまいます。名前を連呼するだけの選挙カー、党が掻き集めた聴衆の前で絶叫する弁者、おいしい文を並べ街路に張られたポスター、昔ながらの選挙お祭りが今月から17日間繰り広げられます。いいかげんにしなさい!と怒ってる人、もはや諦めに近い心境で傍観してる人、誰に入れても変われへんと棄権を決め込んでる人、昔ながら利益誘導に執心する人などなど、この国の選挙の在り方はこの国に似つかわしい構図で何年もの続いています。香港のような激しいデモなんて、もはや日本では懐かしい昔話です。間違ったことがあれば、若者は声を大にして起ち上がり命を賭けて戦ったもんですが、今の若もんにそんなこと言っちゃったら、なにとち狂ってんこのオッさんなんて嘲笑もんでございます。でも、この国を維持し変革するにも選挙という手段しかないんですから1票を投じなきゃなりません事よ。でも、投票すればいいってもんじゃございませんよ...政治家は嘘つきが多いから、よくよく人相、言動、立ち振る舞いを観察し、己の想像力を駆使しながら選ばなければなりません...と言っても、おいら政治の世界に関してはほぼ絶望の境地だから、結局は消去法でしか選ぶことが出来ませんな。身を捨ててお国のために、弱者のために奉仕しようなんて人が少しでもいればなんて希望的観測ではいるんですがね...

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新宿のウツボ

2019/07/03
【第1234回】

いやいや、今週やっと今日会社に来れました...元気一杯なんて能天気なこと言い続けながらも、やはり体力は確実に落ちていますな。特にこの時期、季節が梅雨と重なり、湿気と何処に行っても容赦なく吹き付けるクーラーの冷気で、おいらのナイーブな身体を痛めつけてしまいます。ことに居酒屋のクーラーはいけませんな。みるからに古そうで汚そうで、出てくる冷気も汚染されてんじゃないかと戦々恐々でございます。電車に乗ると、西瓜冷やしてんじゃないぞ!と怒りたくなるような冷房車。抵抗力がなくなりつつある高齢者にとっては、とっても生きづらい環境になってしまいました。

最近、次々と友人が黄泉の国に旅立ってますんで、おいらも体調崩してしまいますと、ついつい弱気になってしまいます。ついつい、黄泉の国からお使いが来るんじゃないかしらなんて...正直、好きなことやってきた人生だから未練はないんだが、折角この世に貴重な生を受けたんだから少しでも健康で長生きしながら残り少ない人生楽しまなきゃと思います。そして、少しでも社会に恩返ししないと罰が当たりますがな...

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自然に優るものなし

2019/06/26
【第1233回】

新宿の街も随分とおとなしくなったもんだ...カオスが売り物である街がソフィスティケートされたんじゃ話になりまっせんがな。怖いオッさん、無国籍らしき人物、ハイテンションで練り歩く若者などなど、こんな人達が見かけなくなった街は新宿ではありませんな。この季節、新宿花園神社では劇団唐組、新宿梁山泊、椿組といった集団がテント芝居を興行してます。舞台に登場する人物のほとんどがアウトロー、社会からこぼれ落ちた人間の心情をロマンの世界に飛翔させ、観客を魔界の世界に誘ってくれます...昔なんぞは、舞台に登場していた奇人変人がそのまま新宿の街を闊歩していた気がします。そんな彼らを見ながら、決して世の中のお偉いさんが作ろうとしている既存の社会に染まっちゃいかんぞなもし...なんて思っとりました。破壊と創造を繰り返すことによって、新しいアートを生み出すエネルギーが新宿の街には充満していましたね。今は若者のデモもなく、異国の観光客が、かろうじて残っている新宿のディープな場所を物珍しそうに冷やかしてる街に成り下がったのかな?いや、行政側からすれば安全で安心な街になったと宣伝しとります。これも時代の流れ、しかたんなかですばい...変革の意識が薄れ、事なかれ主義の世の中じゃやっぱりおもろくありませんがな。

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あら、お久しぶり!

2019/06/24
【第1232回】

先週の週末も2本の芝居を観てきました...1本目は劇団文化座の「アニマの海」。石牟礼道子さんの「苦海浄土」を基に水俣に暮らす人達を描いた作品です。トムでも水俣の作品を創ったのですがなかなか難しいものがありますね。患者、チッソ工場、自然豊かな水俣の海、そして時代の変遷、これらが絡み合った水俣をどう描くか?説明だけでは物足りないし、公害に晒された人達の苦しみはそう簡単に表現できないし、演劇がどう向き合っていくのか?その難儀なことから逃げるのではなく、この水俣の世界を語り継ぐためにも演劇が果たすべく役割はあると思います。トムでも10月に水俣に再チャレンジ、ふたくしつよし作・演出で「風を打つ」を上演します。

2本目は温泉ドラゴン「渡りきらぬ橋」。大正から昭和初期に掛けて女性の人権向上に奔走した女流作家、長谷川時雨を柱に据え、その当時の樋口一葉、林芙美子などが登場する。この芝居の見所は、なんといっても登場人物全て男優陣でやりきったことではなかろうか。最初は、どうしても違和感があるのは否めないのだが、観ているうちに過去から現代に渡る性の問題、最近急速に叫ばれてるジェンダーなどなど様々なことが浮き彫りにされてくる不思議な感覚に襲われる...これは、例えば歌舞伎なんかの様式美に拘ることではなく、俳優個々の感性を信じ創りあげた演出、シライケイタのチカラに拠るところが大きいと思う。演劇だからこそ出来るもの、敢えて挑戦、冒険、これ無くなっちゃたら演劇も過去の遺産で終わっちゃいますぜよ。

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絶滅危惧種

2019/06/19
【第1231回】

又しても、セメント大臣が連日口をゆがめながらいい訳と言うより、いつものように臭い物には蓋をしての手法で、年金問題をスルーしようとしている。しかし、何年掛けて年金問題やってるの?与野党含めて、この大切な年金問題を政争の具にしているのが許せませんな。この切実な問題はお互いにベストな案を出し合って協議すればいいだけの話じゃないのかしら...ほんまに日本には政治家が存在しない情けない国でございます。

昨日、夜遅く新潟、山形に地震発生。原発は?地震が起きる度に頭を過ぎります。誰しもが、近未来に必ずや大地震が起き、原発の放射能が日本全土を被う様を想像しているのではなかろうか?年金問題一つさえ解決できない政治屋さんが、この非常事態に思いを馳せるなんてことは難しいことかもしれませんな。地元の選挙区のサービスばっかりで、日本の国全体を俯瞰できない人ばかり。来月の参議院選挙、国民の関心も今一つ、いや諦めに近い心情じゃないだろうか...何年か前、新宿西口の街頭を手渡しで己の政治信念を訴えた元俳優、参議員であった中村敦夫氏が、政治の世界に見切りをつけ、自ら福島原発、チェルノブイリに赴き原発廃止に向けた脚本を書き朗読劇を各地で実施している。もはや、この方法しかないのではなかろうか。要は頼りになるものは己しかない...自ら己に出来る範囲でアクションを起こし己を守るしかない。ほんまにあてになりません事よ、この国のお偉いさん方々。

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梅雨に咲く花

2019/06/17
【第1230回】

ライオンズの秋山選手、昨日、ひとり親家庭の親子の前でホームラン...ライオンズの選手の中で一番好きな選手です。この日は父の日、小学6年時に父(享年40)を胃がんで亡くしている秋山は、14組35人のひとり親家庭の親子を招待。この活動を2015年から定期的に続けている。小さい頃から父とキャッチボールをしながら野球選手を夢見ていたそうだ。まじめな性格と、野球に対する謙虚な姿勢、そして俊足、強肩、好打、しかもホームランも打てる選手となるということなし!ウナギフェイスで愛嬌もあるし好感度は抜群である。まじめな選手であるだけに打撃不振になると、ちょいと考えすぎ、ましてや今年からキャップテンも任され責任感が強いのも、彼を悩ませる一因となる。でも、今日の時点で打率.322を維持しているからさすがというしかありません。こんないいお手本がいるのに、木村、金子の両外野手頑張らんかい!レギュラーで我慢して起用されているにもかかわらず打率.200から.215じゃ話になりまっせんばい。二人ともそんなに若くもないしここで結果を残さないと後がありません。そして、相変わらずのライオンズの投手陣、一試合5~6点取られるのは当たり前なんですから打者はたまりません。何度も言いますが補強しないフロントの怠慢ですな。

残すところ交流戦も6試合。現状から3勝3敗がいいところかな?今年はリーグ優勝は難しいと思います。でも、少しずつ若手も育っているのが救いです...筋書きのないドラマ、そして駆け引き、選手個々の個性、多種多様なものが詰まっているベースボール、やっぱり観ちゃいますな。

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梅雨空

2019/06/14
【第1229回】

昨日は、トム・プロジェクトでお馴染みの風間杜夫、村井國夫さん出演の「黒白珠」をシアターコクーンで観てきました。先ず入場料¥10000、芝居を観るのも大変な時代になってきました。勿論、人件費その他諸々お金がかかる時代であることは重々わかっちゃいるけれど、一日働いた賃金そのまま頂くなんて事、おいらは心苦しゅうございます。7、8千は当たり前。トムの入場料¥5000は一杯一杯でございます。税理士さんからも消費税分ぐらいはあげても当然と再三にわたり警告を受けては居るんですが...当然、今のままでの入場料では役者さんのギャラにも影響し、役者さんにも申し訳ない気になってしまいます。なんてこと考えてると憂鬱になっちゃいますので、ケセラセラ精神でやれるとこまでやりまっせ!みたいなことでやるしかないんじゃありません。

芝居は九州長崎が舞台。ベテランのご両人のやりとりが大変面白しゅうございました。共に長い間、舞台をこよなく愛し己に厳しく芸の道を歩まれた二人。達者な二人の応酬に、ドラマの本筋から離れた人間の持つ面白可笑しいものが垣間見れました。ここが、生の芝居の持つ魅力の一つです。この日この時間の瞬間に流れる命の交流、とっても見応えがありました。

街には色とりどりの紫陽花が咲き乱れています。なかでも何故か白い紫陽花に目が惹かれます。白い紫陽花の花言葉は「寛容」、この時代に一番必要な言葉かも知れませんね。

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寛容

2019/06/12
【第1228回】

6月10日、錦糸町すみだパークスタジオで今年の2月27日に73歳で亡くなったベニサン・ピットの支配人であった瀬戸雅壽さんのお別れ会があった。ベニサン・ピットは戦前染色工場を営んでいた株式会社紅三が、1985年に染色工場のボイラー室を改装し江東区にオープンした下町の劇場である。紅三の経理部長であった瀬戸さんが蜷川幸雄さん演出の「タンゴ・冬の終わりに」を観劇し芝居の世界にのめりこむことになる。採算を度外視して自分が気に入った劇団、集団に場所を提供する男気で生きた人であった。蜷川スタジオ、二兎社、TPT、そして亡くなるまでとことん面倒をみた劇団桟敷童子。桟敷童子の人たち全員が、衣装、大道具、小道具をすべて手作りし、役者として演じる姿に瀬戸さんが思いを注ぎ込むのも良くわかる。ひたむきに生きる演劇人に、これだけ愛情を注いだ人は居ないのではないか。トム・プロジェクトも2本の作品を上演。2009年にはベニサン・ピット最後の公演「かもめ来るころ」でフィナーレを飾らせていただいた。公演中に豪華な鮨を何気なく差し入れしてくれた瀬戸さんの笑顔が今でも印象に残っている。

この日に集まった人たちの言葉の端々に、怖い中にも一本筋が通った優しさと気っぷの良さで演劇人を虜にしたことが良く分かった。一人暮らしであることから、死後の始末もすべて指示し迷惑が掛からないようにしていたそうだ...瀬戸さんの人生はあっぱれ!

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京王あじさい電車

2019/06/10
【第1227回】

先週の土曜日、恒例の新宿花園神社、唐組テント芝居観てきました。唐十郎率いる状況劇場のテント初見参から50年になるんだなと、感慨深く薄暮の紅テントを眺めておりました。

半世紀ものテント芝居に拘っている唐十郎の演劇哲学、大したものでございます。演劇双六から言うと、精算性を考えてみても、あるところで資本の波に乗っかってテントはたたんでしまいます。紅テントが持つ計り知れない意味...テントの薄い布切れ一枚で、虚構と現実の狭間で遊べる仕掛けこそがテント芝居の魅力であり、風雨の音に晒されながらも表現しなければならない役者の強靭さ。まさしく、特権的肉体だからこそ人の心を打つのであります。

猥雑さの中にも、果てしないロマンと冒険心をくすぐる唐十郎の台詞。観るものを困惑させあらぬ世界へ誘惑してくれます...いつもの手口だと思いながら癖になる芝居でございます。

今回の「ジャガーの眼」は1985年に花園神社で上演された作品だ。唐十郎のライバルであった寺山修司へのオマージュから創作された作品だそうだ。芝居の冒頭に寺山修司が愛用したサンダルの登場から芝居は始まる...移植された眼の果てしない旅であると同時に、肉体の一部の眼が、脳の束縛から逃れ奇想天外、予測不可能な展開に導いてくれる。いやはや、こんな芝居創ってくれる人は唐十郎以外に居ないのではないか。おいらも生きてる限り唐十郎の世界を満喫したいと再確認した一夜でもありました。

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魅惑の紅テント

2019/06/07
【第1226回】

一昨日、横浜演劇鑑賞会で9月に公演する「百枚めの写真」の説明会に行ってきました。演劇好きの人たちとお話するのは大好きです。この演劇鑑賞会を長いこと支えてきたNさんとは、阿吽の呼吸で楽しくなっちゃいます。だって観てきた演劇体験が、ともに共通した歴史であり、会話しているうちに、あの時代に引き戻される感覚は郷愁に通じるものがあります。様々なジャンルの演劇が乱立し、政治の季節と相まってほんまに楽しい時代でございました。さらりとしていて、猥雑さがほとんど無くなった昨今の演劇事情とはかなり違います。

ところで、今回の「百枚めの写真」の楽しみ方として、芝居で映し出される99枚の写真に役者の表現がどこまで拮抗できるか?ここは本当に見どころです。だって戦時中に写し出される東京下町の家族の写真は真に迫るものがあります。ある者は不安を抱え、ある者は戦地に居る夫、息子を安心させるために精一杯の笑顔をつくる、そして無邪気な子供の表情。はっきり言って、この99枚の写真には観る者の想像力を喚起するチカラがあり過ぎ。それを背負込みながら、なお一層、戦争の虚しさを届けるのが演劇の底力でございます。2010年の初演以来4回目の公演自体が、この芝居に脈々と流れる生命の尊さを感じさせてくれるんです。

昨日は、本多劇場でKAKUTAの芝居を観てきました。この劇団の作・演出家である桑原裕子さんとは2013年に上演した「熱風」を作・演出して頂きました。女性劇作家のなかでも、独特の感性と社会の切り口で演劇界を盛り立てている一人です。女優としてもなかなかいけますな...書いて、演出して、お客を沸かす演技をして、まさに才女ですな。

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この季節になりました

2019/06/05
【第1225回】

いやはや日々、辛いニュースが流れています...東大卒業してエリート官僚まで勤め上げながら、人生の第4コーナーの終盤を歩み続けている最中に、我が息子を殺さなければならないなんて、こんな辛いことありません。40代のひきこもりが多いとのこと...1982年にパーソナルコンピュータが発売されたころに生まれた世代である。と言うことは、あらゆる情報が心身を蝕み始めた時代の子である。ある意味では被害者であるのかもしれない。お金のためならなんでもありの資本主義社会の行くつく先が、心身の破壊であるのは自明の理であるにもかかわらず人は目先の物量の欲に走り心を失ってしまう。

こんな事件が多発しているにもかかわらず、死ぬんだったら一人で死ね...なんて乱暴な言葉が飛び交い、この社会の闇を解明しようとしない刹那的な輩が居るのも嘆かわしい限りだ。殺された息子がゲームにしか拠り所を見いだせなかったことも、川崎で無差別殺人を犯した男の孤独感も、現代社会が生み出した病であることは間違いない。自然界の他の生き物のシンプルな親子の姿を見るにつけ、ニンゲンのなんともあさましい姿か。虐待、いじめ、ひきこもり、無差別殺人などなど...ニンゲンで生まれてきて良かったのかどうか?もっと他の生き物、自然に対し興味を持ち、思いを寄せないと癌が体中(地球)におよび、間違いなく死にいたる。ピコピコしてる場合じゃありませんことよ...

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政治で変わるのかしら?

2019/06/03
【第1224回】

3度目の「海辺のカフカ」観てきました...いや、改めて、蜷川幸雄さんの演劇的才能を再確認できました。演劇でしかできないことを実現するだけでも、大変な労力とお金がかかるのは自明の理。やりたいけどやれないのも事実...美術、音楽、小道具、衣裳、どれをとっても絵描きになりたかった蜷川さんのセンスが光る。おいらが知ってる昔の蜷川さんはアングラ演劇を裏切り資本に魂を売った演劇人というイメージがあった。がしかし、理想の演劇を実現するために資本家を巻き込み次々と斬新な舞台を創っていった彼はまさしくアーチスト。売れっ子タレントにも徹底的にダメをだし、一人前の舞台役者に仕立て上げる手腕もたいしたものだ。これなら少々、お金出しても納得。だって高いお金出してガッカリなんて芝居が多いのにうんざりしているなかで救われる思いだ。ヒロイン役の寺島しのぶさんは健闘してますな。初演は田中裕子、再演は宮沢りえ、今回の寺島さんが一番あってるかな。歌舞伎の血を受け継ぎながらも、映像の世界でも大胆な表現力で観る者を巻き込んでいく女優魂がキラリと光る。様式美を持ちながらも、自分をさらけだしていく表現者の葛藤がこの芝居の資質にも合ってる気がしました。昔からの友人、木場克己も今年古希を迎える年齢ながら若々しくも的確な演技を魅せてくれました。狂気を演じる新川将人も一段とヒートアップ。そしてトム所属の鳥山昌克はカーネル・サンダースを愛嬌たっぷりに演じておりました。蜷川さん描く万華鏡の世界を心地よく遊べる役者と、窮屈に見える役者、舞台に立つ役者は皆横一線。アップなんてありません。役者の演技一つ一つを観客がフォーカスしていくのでございます。舞台の上は、まさしく役者にとって残酷な場所でもあり、脚光を浴びることが出来る絶好のチャンスでもあるのです。

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さてどうしよう...

2019/05/29
【第1223回】

10年ほど前、気になっていたフランスの歌手ZAZ(ザーズ)のコンサートに行ってまいりました...日本では、まだまだオーチャードホールを埋め尽くすまでの人気ではないんですね。でも、モンマルトルの街頭でストリートミュージシャンを始めながら、今やフランスを代表する歌手の一人となりました。オープニングから観客を煽りながらのステージ、観客はスタンディング、おいらの目の前は総立ちした隙間から垣間見るZAZの姿...あちゃ!これが最後まで続くと思っただけで意欲が失せてしまった。じゃあ、みんなと一緒に立ち上がり身体をくねらせ手拍子すればいいじゃんとお思いでしょうが、おいらは音楽なるものじっくりと味わい鑑賞したいのでございます。確かに演者と共に一体化して心地よい時間を過ごす音楽体験もありだとは分かっていますが、お歳を召したおいらは着席し歌い手の表情と、演奏者の音のセンスなどなどをしっかりと楽しみたい!これじゃ野球場に行って、選手の一挙手一投足を観察しながらゲームを楽しむのではなく、鳴り物を交えてジャンプしたり横移動したりして応援しているスタイルと同じじゃありません。さすが、バラード調の曲になると皆さん着席し、しっとりとした雰囲気に浸っていました。やっぱり、おいらはJAZZのライブが好きなんだと改めて思いました...でも、音楽全般好きなんだから、これぞと思ったミュージシャンのコンサートは覗いてみたいとは思っています。その時は、スタンディングしても意欲が失せない席を確保せねばと!一考の余地ありのステージでした。

勿論、ZAZは期待を裏切らない歌い手でありました。何といってもハスキーボイスがたまらんですばい。

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ZAZ

2019/05/27
【第1222回】

メットライフ球場(西武ドーム)今年、初見参...今年のライオンズ相変わらずの投手陣崩壊状態にありながら何となく首位に近づいております。なにせ6点以上取らないと勝利できない体たらく。何年も前から指摘されているのに改善しようとしないフロントの責任かもね。今年のピッチングコーチも昔ながらの精神論をぶちかます能なし軍曹みたいな人だから始末が悪い。鬼瓦せんべいの焼き損ない見たいな面下げて、火事場状態のピッチャーに向かう姿はもう勘弁してくださいな。キャンプ中に何教えとったんや!といいたい。こんなコーチしか呼べないフロントの罪は重うございます。それにアメリカから連れてくるピッチャーがことごとく使いものにならない。金使ってまともな選手連れてこんかいな!全く改善されないのはやはりお金そして肝心要な頭脳がないのかしらと思いたくなりまっせ。打っても打っても、次ぎに点取られてしまうと強力打線もやる気なくしますぜ...所沢という遠方まで出かけて応援してるファンの皆さんの声に耳を傾けるどころか、そのうち何とかしてくれるだろうなんて呑気な事考えてるようじゃ早くしっかりした所に身売りなさいませ。なんて事考えながら観てたんですが、この日は勝ちました。生ビールが半額だった日でもあり売り子の娘さん達は大忙し、勿論、ビールの旨さも勝てば言うこと無し。

帰りの電車の中に、嘗てのおいらを見つけました...この子のためにも、いつまでも魅力溢れるライオンズであって欲しいと願わずにはおられませんでした。フレ!フレ!西鉄ライオンズ!いや、今は西武ライオンズでございました。

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ライオンズ愛66年

2019/05/24
【第1221回】

前反りヘアー大統領とアベカワモチが逢うんだって...いやいや交通規制も大変ですな。ゴルフと大相撲鑑賞、要するに遊びに来るんですな。そしてアベちゃんも見事に令和元年をショータイムにしたいんでしょうな。そしてきな臭いのが、いずも型護衛艦「かが」への乗艦も予定しています。これは明らかに「かが」を空母にしたいという両者の意向が働いていますな。東シナ海、朝鮮半島の有事の際に日本がどれだけアメリカの手助けが出来るか?という相談をアメリカに行ったときに恫喝されたんでしょうね。勿論、空母に搭載される戦闘機も買わないといけませんよ!なんてね。嗚呼、悲しいかな日本はいまだアメリカの属国であります。羽田に発着する飛行機が横田基地の上空を飛んじゃいけないなんて、戦後何年経ってるんやといいたい。確かにアメリカの戦力を盾にして日本が守られてるの事実だが、戦後一貫してアメリカに物言えない政治の貧困が、沖縄も含めて腹立たしい状況を作り出している。そんななか20代から30代の人達は今の安倍政権の支持者が多いという...野党のだらしなさもその一因なのだが、やはり経済の不安が第一らしい。そりゃそうだ、生まれたときから物が溢れ何不自由なく育った世代にとって信じられるのはお金と物。要するに現実主義に基づいた思考...でもね、この先の日本の未来は決して平坦ではありませんがな。現実を見据え、未来社会に想いを馳せるビジョンがないとジ・エンド。おいらはいいとしても、今日も車内で見た赤児のつぶらな瞳を眺めながら、どげんかせんといかんばいとついつい思ってしまいました。

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新宿の夕焼け

2019/05/22
【第1220回】

昨日は大変な雨風でしたね...家のベランダに咲き乱れていた花が無残にも吹き飛ばされ痛々しい感じでございました。その一方、樹木は新緑の葉を揺らしながらも久しぶりの雨シャワーを浴びながら嬉々としておりました。風の音、水の音を聴くと何だか心和らぐのは何なんでしょうね...羊水の中にいた時の胎児の記憶、胎内から世界に初めて触れた風の記憶、長いこと生きていると、ふと胎内回帰なんて郷愁めいたことを考えてしまう。

こんな日は、雨と休日という「穏やかな音楽を集める」というコンセプトのCDショップから購入した音楽に耳を傾ける。これが又、自然が織りなす情景を見事な旋律にした曲ばかりで至福のひとときにしてくれる。人の思いと自然との理想のコラボレーション...これは、これからの地球を防衛するための最大のポイントだと思います。これが叶えば、紛争も戦争も減少していくと思ってます。雨の音、風のささやき、そんなもん聴いてる暇なんかありませんがな...なんて思ってる人はもはや不幸せな旅路を歩き始めてるんじゃありませんかな?世界は、刻一刻テクノロジーの波に飲み込まれ、ナチュラル的なるものを排除しようとしています。そんな鈍感な現代人に警告を発するかのように、自然は猛威を振るい災害を引き起こします。最近、頻繁に起きる悲惨な自動車事故。これも便利社会に対する厳しいお叱りかもしれません...このままだとチコちゃんに叱られますよ!

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雨にも負けず

2019/05/20
【第1219回】

今年も咲きました...紀伊國屋演劇賞団体賞を受賞して10年。そのときに頂いたお祝い花、今年は駄目かな?なんて思ってたら見事に咲きました。会社のベランダ、おいらの席の後ろにぽつんと置いて、たまに水をあげるだけなのに10年も咲き続けるってことは...まだまだ芝居創り続けなさい!ってことなのかなあ。いやいや四半世紀やっとりますがな!大変ですがな!仕事嫌いなおいらがこんなに一生懸命やれたのも、これ皆、共に創ってきた社員、スタッフ、キャストのお陰でございます。そして何よりも、創った作品を観に来てくれる観客の皆さんが喜んでくれる姿でございます。昨日もこんな便りがありました。

 

日常ではついいい加減に走る私に、常に「誠実に生きること」と正しい方向に導いてくれる舞台があります。
それは「ダモイ」です。四谷の劇場で観た記憶があります。
どんな状況に、または内心は乱れることがあっても、人としての品位を失わず、声高に叫ばずとも、尊いことは何か、羅針盤の狂うことのない生き方を教えていただきました。 平田さん、阿南さん、新納さんもこの作品に心打たれて演じていらっしゃるように感じました。丁度私が観た日に、山本さんのご家族がご覧になっていて、最後にご挨拶なさいました。舞台のお父さんに対面なさった息子さんの発言も、お父さんの意志を継いでいらっしゃる素敵な温かい言葉でした。共有した時間は少なくとも、生き方は脈々と引き継がれる。でもそうなるに当たっては、どれ程の苦労があったのだろう。でもお父さん、息子さんもご立派に生きていらっしゃった!抑留中の山本さんに呼び掛けたい気持ちになりました。その時、平田さんは涙をこらえ、阿南さん、特に新納さんは流れる涙を手でぬぐっていらっしゃった姿が忘れられません。いい方なんだなあと、とても感じ入りました。演劇とは、こんな風に静かに、それだからこそ力強い主張があるべき!生意気ながらそう思いました。そんな場と時間を共有できて、うれしかったです。いつかお伝えしようと思いながら、十数年が過ぎました。しかし、私の心を常に灯し続けてきましたし、これからも忘れないでしょう。  そんなことを今日は強く伝えたくなりました。自分が今萎えているので、カツをいれたいのかもしれません。長々お付き合いいただき、すみません。この舞台の関係者にお礼を言いたいです。ありがとうございました。

 

こんな便りが来ますと、止めるわけにはいきませんがな...生の芝居の持つチカラ。それはそれは計り知れないチカラです。こうやって手作りの作品を、手作りのかたちでお客様に届けられれば舞台に関わる人間は本望でございます。
咲いてくれた花びらのひとつひとつが、感動したお客様の顔の様でもあります...。

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今年もありがとう!

2019/05/17
【第1218回】

「モンテンルパの夜明け」新井恵美子著を読了...太平洋戦争が終わった後もフィリピンの牢獄で生きなければならなかったBC級戦犯日本兵たちの苦難の日々を描いたノンフィクション。加害者である日本兵、そして取り残され戦犯として扱われた不条理のなかで戦争の持つ数々の残虐性が明らかになっていく。14名の戦犯が絞首刑になり、日々次は己というう恐怖心の中、戦後、異国の地で過ごした心境はいかばかりであろうか...戦争は勝者、敗者ともども得るものがないどころか、こんなバカげたことをいまだ無くせない人間を改めて愚かだと思う。アジアの島で追いやられた兵士の心情を思うと、こうやって何事もなく平穏無事に過ごすことのできる戦後生まれのおいらを含めての輩は、ただただ手を合わせるしかない。本の中にも出てくるのだが、食べるものがなく同胞の肉を食するシーンは正誤を判断しがたいほどの極限状態だとしか言えない。

今日も夏を思わせる空。その空に向かって新緑、花々が咲き乱れています...この素晴らしい光景が一日でも長く続きますようにと願わずにはおられません。美しいと思える感情が己のなかにある限り、争いの感情は芽生えません。生きとし生けるものすべて美しいなんてことは理想かもしれないけど、こちらに寄り添うほうが断然いいに決まってますよね皆の衆。

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新緑と花

2019/05/15
【第1217回】

参議院選挙が近づく中、京王線明大前駅前で山本太郎さんが公開討論してました...この人に対する評価は様々だとは思いますが、こうやってラフな姿で政治を語ってるのがいいじゃないですか。古臭いオッサンたちがタスキをかけて口から出まかせ言ってるより身近に感じますな。質問も様々、例えば50過ぎのオッサンがゆとり教育なんてとんでもないとの質問に「ゆとり大いに結構、勉強ばかりしてゆったりと過ごさないからおかしな国になるんですよ...」こんな意見はおいらも大賛成。太郎さん、最初に選挙に立った時は緊張のあまり殺気立った光景を目のあたりにしたとき、頭に目立つ円形脱毛症が彼の状態をものの見事に表していました。でも、一人決然と政治の世界に殴り込みを掛けんばかりのエネルギーは、人の心を鷲掴みにして見事に当選しました。その後の動きは、国会中継なんぞでたまに拝見はしてたのだが、所詮少数派、質問時間が短すぎてほとんどスルー状態。そんな政治家としての経験の中から新党を立ち上げました。その名が「令和新撰組」。なんじゃらほいあまりピンときませんな...新撰組って徳川幕府の用心棒じゃありません?もっと今の時代に即したネーミングあったんじゃございませんかな?

いずれにしても、もう少しみんなが政治に関心寄せなきゃ一部のオッサンのやりたい放題の国になっちまいますぜ皆の衆。ビール箱に立ってみんなと話し合いをしている太郎さん行けるとこまでやっておくんなさい。

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やる気満々太郎ちゃん

2019/05/13
【第1216回】

5月11日(土曜日)新宿で田島恒さんのお別れ会無事終えることが出来ました...40数名が集まり田島さんの思い出を語り合いました。黄泉の国に旅立って40日、まだまだ現世に未練があるんじゃございませんでしょうかね?こっそり会場を覗き見してる感じもしましたね。異論反論もあるかもしれませんが、皆、貴男に対する愛情があってこその発言。許してちょうだいな。この日流した45分のビデオを見ながら、あの日あの時を懐かしく想い出しました。考えてみれば半世紀近くの付き合いだもんね...でも、最後まで好きなことして人生終えることが出きたんだから悔いをないでしょう?いや、一度だけ結婚生活送りたかったんでしょうな...でも、貴男のようにたくさん恋した方が幸せだったかも知れませんよ。フーテンの寅さんじゃないけど愛嬌あって寂しさもあって、皆、貴男の佇まいには一目置いていました。

この日は、おいらも酒に酔いしれ田島恒状態になっておりました...危ない危ない!貴男だったらするりと逃れることが出来るかも知れないけど、呑んでもしゃきっとしているおいらは未知なるゾーン。田島君、おいらを道連れにしないでちょうだいな(笑)おいら、もう少し生きたいですから。まあ、遅かれ早かれそちらにも伺うかとは思いますが、そのときは又、わいわいがやがや酒飲んで、いつものように田島君の理想の女性像の話を聞かせて頂きますから、待っててちょうだいな。いや、あの世で理想の女性が見つかって結婚してるかも...それはそれで、めでたしめでたしですがな。

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田島君に依る自画像
(この日流したDVD)

2019/05/10
【第1215回】

今年もアンネの薔薇が咲き誇っていました...杉並区高井戸中学校の生徒が、第二次世界大戦時にナチスの強制収容所で15歳の若さで命を落としたユダヤ人の少女、アンネ・フランクの「アンネの日記」を読み感動し、アンネの父オットー氏から寄贈された薔薇である。おいらは毎年、この薔薇を見る度にオランダで見たアンネがナチスから逃れるために隠れていた家を想い出します。どんな気持ちで日々を過ごしたであろうか?想像しただけで胸が痛みます。というか、こんな悲劇が起きたのに未だ憎悪の連鎖で戦争、殺戮が継続している世界の現状に呆れるばかりです。歴史に学ばない為政者を、放逐できないニンゲンの怠慢さにただただ呆れかえるばかりです。この薔薇の美しさのなかに、アンネが抱いていたであろう夢と希望を感じ取り、絶対に戦争への道を歩んではいけないことを誓って欲しいと思います。世界はネオナチズムの思想が台頭し、排斥することが正義とばかり一部の指導者が民衆を扇動しています。歴史は繰り返す...日本でも同様な動きがあります。世界で唯一の被爆国であるからこそ、核のない平和を声高々に唱えても良さそうなのにトランプのおっさんの顔色伺いながら外交している今の政府はあきまへんがな...アンネの薔薇見ても想像の翼を持ってませんから何も感じないんじゃないのかな...でも、この薔薇見ながら平和を願っている人も居るから大丈夫ですよアンネちゃん。

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平和を願うバラ

2019/05/07
【第1214回】

GWも終わり、又、日常が戻ってきましたね...10連休の是否が問われてますが、働き過ぎの日本人にはいいことではないでしょうかね。おいらも近くに住む妹家族に誘われて三浦半島に行って来ました。昼のランチはマグロのかぶと焼きに始まってマグロづくしのご馳走でした。沢山の人が三崎港のマグロを目指して名店に集まってました。この店の名物店長がマグロに向かってお祈りしホラ貝吹いて供養しておりました。捌いてくれたマグロのかぶと我々7人が束にかかっても食べ尽くすことが出来ずお持ち帰りになりました。地元の採りたての野菜も新鮮でした。お腹ぱんぷくりんの後はイチゴ狩り。おいらの人生にとっても初めての体験。30分ちぎり食べ放題、といってもそんなに食べられるもんじゃございませんことよ。子どもたちは喜びはしゃいでおりました...平和だからこそ出来ることですね。3日の憲法記念日、5日の子供の日、この二つの意義をしっかりと噛みしめながら楽しみたいものです。マイカーに乗って休日を過ごすなんて、おいらの子供の頃は夢の又夢。当たり前の便利さに甘えることなく、世界を俯瞰し今ある幸せに感謝し、世界の平和に奔走する子どもたちが沢山増えると嬉しいな!なんて事考えながら無邪気に遊ぶ子どもたちの表情を眺めておりました。子供は未来の宝ですからね...ゴミにするのも大人そして社会。頼みますよ皆の衆。

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マグロ供養

2019/04/25
【第1213回】

平成も今日入れてあと6日となりました...色々ありましたね。なんと言っても東日本大震災が脳裏から消えそうもありません。この教訓を生かさずして、これからの日本の国の未来はありません。終戦後、戦争の負の遺産を背負いながら戦後の平和が維持されたように...先ずは、原発の全面廃止。これがやれないようじゃ、この国の世界に対する信用はないでしょうね。次は、オウム真理教事件でしょうね...高学歴の人達がいとも簡単に、あんな男に洗脳されてしまう怖さ、明らかに物質文明の弊害でしょう。人の心はいつ何時にも、思わぬ方向に向かってしまうんです。己の心身をより強固に、そしてしなやかにしておかなければ、これまた思いもよらない人生を歩んでしまいます。

一週間後は令和の始まりです...どんな時代が待ち受けてるんでしょうかね?おいらはそんなに長くは令和タイムを楽しめないけど、未来ある子どもたちのためにも、今生きてる大人達がしっかりとした環境を造って欲しいですね。てめえのことばかり考えてんじゃねえよ!政治家、役人、企業家の皆さん。この世に生まれたことは、この世に恩返しすることなんです皆の衆。

夢吐き通信も5月6日までお休みです。ではでは、皆さん素敵なGWをお過ごしくださいませ。

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平成ありがとう

2019/04/24
【第1212回】

野良猫からお叱りを受けました。

「なんだい!あのお惚け大臣。復興より議員の選挙が大事なんて本当のこと言っちゃってるニャン」

「警視庁の天下り先の運転免許教習所の管理能力の低下で、未来ある子供たちが相次いで亡くなってるニャン」

「AAAのリーダー、いい歳こいて笑って謝罪している場合じゃないニャン」

「辺野古、沖縄の人NOと言ってるのにアメリカに何も言えないこの国トップの人たちどうしようもないニャン」

「愚かなニンゲン、目には目を歯には歯をなんて復讐の連鎖で罪のない人達の命を奪うなんてあんぽんたんニャン」

スマホも、新聞も、テレビも見ないニャンだからこそわかるのでございます。

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お叱りニャン

2019/04/22
【第1211回】

戦士の休息...今年は1月~3月まで三本の芝居が続きバタバタしていました。この4月なんとか一息ついたので温泉地に向かいました。関東近辺での名湯の一つ四万温泉に行ってきました。その中でも室町創業500年の老舗宿「四万たむら」は、まさしく温泉三昧。七つの湯を存分に堪能できます。温泉と言えば、やはり源泉かけ流しに尽きますな。源泉からこんこんとあふれ出すお湯を見ているだけで幸せを感じてしまいます。ふと、この貴重なお湯が出なくなってしまったらと想像しただけでゾッとはしますがな。四万の多くの人たちが生活の場を失い路頭に迷ってしまいます。そんなことを思いながら思わず湧き出る泉に手を合わせてしまいます。この旅館の売りは何といっても蒸風呂、地下から出る源泉からの蒸気を直に浴び汗がたらたらと落ち、鼻の粘膜、喉を心地よく潤してくれるんですから花粉の時期には最高の良薬。サウナと違って肌をしっとりと包んでくれる柔らかさがなんとも言えません。この後のビールがたまらんですばい...生きててよかった!こんなことあと何回繰り返しながらおいらは死んでいくんでしょうかね...世界あちこち周って、行きつくところは、やはり温泉大国ニッポンが最高だということです。地震と温泉は背中合わせですが、これも自然界もたらす掟です。優しさと厳しさ、この定めのなかでひとはどう生きていくか?なんだか温泉談義も哲学的になってしまいましたがな...さてと、週末から10連休、そして令和...どんな時代になるんでしょうかね?

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桃、桜、鯉のぼり

2019/04/18
【第1210回】

新緑のこの時期はおいらが大好きな季節です...新芽が出て瑞々しい葉っぱを見てるだけでおいらは幸せ一杯です。今日も新しい葉っぱが太陽の光を浴びキラキラと輝いていました。誰に指示されることもなく、決まったように芽吹き始める樹木の律儀さと逞しさに唯々感嘆するおいらでございます。こんな当たり前な事も出来ないニンゲンどもはなんと愚かな無様な生き物でしょう...今こそ愚かなニンゲンは、身近な自然な成り立ちから生きるという根源的かつ初歩的なことを学習してちょうだいな!と言いたい。スマホなんて便利なものに寄りかかり思考を停止せざるを得ない不幸せな時代であるからこそ、時には樹木に寄りかかり新しい命の誕生と、移りゆく雲の動きを眺めながら生き物にとっての本当の幸福を思考したらいかがでしょうか...心地よい風に揺れ動く葉っぱが、なんとなくメロディを奏でているようでもあり、軽やかなダンスを舞ってるように見えれば、その日一日が極上な日となること間違い無し。

今週の週末も、芽吹き、目にも鮮やかな新緑を探す小旅行を計画しています。自然が織りなす壮大なドラマから明日の活力を頂いてきます。

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新緑

2019/04/15
【第1209回】

昨日、「走狗」の一員であったTちゃんから電話があった。御年74歳になる彼は新劇の劇団をスタートし、その後「走狗」に入団、解散後もアングラ演劇一筋で役者をやり続けている強者だ。Tちゃんの電話は「今朝、神宮外苑散歩してたら可愛い野花があったので、来月11日の田島のお別れ会には行けそうにもないので、彼が住んでたアパートに花を手向けたい...」とのことであった。田島君と激しい演劇論を闘わせ、到底仲がよいとはいえない二人であったが、Tちゃんの田島君に対する深い愛情を感じた。愛すればこそあんなにきつい言葉を突きつけていたのか...亡き人の思いは、葬儀、お墓に行けばいいというのではない。そんなところに顔を出さなくとも、亡き人をいつも想い続けることが故人にとっての最上の喜びではないだろうか...何人かの故人が「死後、葬式も別れの会も不必要」なんて遺言を残しこの世に別れを告げた心境、おいらはよく分かる。現世の諸々のしきたり、何故かお金がまつわることばかり。お金での戒名のランク付けなんてものなんてその最たるものではないか...人は死んでしまえば皆同じ。

一昨日、沢山の人に見送られ舞台美術家・島次郎、黄泉の国へ旅立ちました。

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春の花

2019/04/12
【第1208回】

こんな残りサクラ好きだな...この異常な寒さでサクラ延命しとります。そんな中、樹木の幹からひっそりと咲いてるやつらおいらとても愛おしくなっちゃいます。豪華絢爛に咲き誇る群れに入るのではなく、我が道を往くなんて心意気が、なんとなくアウトローサクラ野郎みたいでええじゃん!おいら昔から群れるのが大嫌いで、名もなく貧しくとも一匹狼で生きてきたつもりです。勿論、現世において一人では生きられませんがな。いろんな人のお陰でおいらも生活できてるのはわかっちゃいるけど、なるだけ「寄らば大樹の陰」「赤信号みんなで渡れば怖くない」なんてことからは、なるべく遠いところで生きとうございます。孔子の言葉に「中庸の徳たるや、それ至れるかな」なんて言葉がありますが、どちらにも偏らないことは確かに理に適う言葉かもしれないが、この世に生を受けたんだから己しかできないことを七転八倒しながら探し実現に近づけようとすることこそが人生じゃないかしら?この人生も残り少ないが貫き通しまっせ!

明日は島次郎の葬儀、来月は田島恒のお別れの会。ひらひらと優雅に散りゆくサクラを眺めながら二人の懐かしい顔が浮かんできます...

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生きてまっせ!

2019/04/10
【第1207回】

桜散る頃に、またも訃報が...先月、嘗て共にアングラ劇団演劇群「走狗」を共にした田島恒の骨を拾ったばかりだというのに昨日、同じく「走狗」の戦友、島次郎の死を知ることになる。ほんの3日前に次郎ちゃんから送られた「舞台美術1986-2018」の本のお祝いとお礼を兼ねて電話したばかりであった。入院中ではあったが、しっかりとした話しぶりであった。「走狗の写真使わせて頂いて...」なんて恐縮してたので「退院したら出版祝いをやろうよ」と言うと「ケッちゃんいつもありがとう...」それが最後の会話であった。次郎ちゃんは演劇の世界では知らぬ人がいないくらいの大家ではあるが、決して偉ぶることなくどんな人にも優しい男であった。

思えば、今から半世紀近く前に「走狗」で出逢った次郎ちゃん。共に演劇でなんかで飯喰えるわけないんだから多種多様のアルバイトで日々の飲み代を稼いでいた。その頃、次郎ちゃんは古新聞の回収をしていた。回収業者から軽トラックを借りスピーカで回収のお知らせを流しながら古新聞を集めるのである。おいらは見習いとして次郎ちゃんの助手として団地を駆け巡った。次郎ちゃんの人柄であるのか随分と集まり、この日二人で早速居酒屋でご馳走と相成る。これはいいバイトかな?と数日おいらも独立してやったのだが、飽き性のおいら早々と止めちまった。コツコツ、じっくり事を構える次郎ちゃんとはえらい違いである。

アングラ劇団「走狗」の日々はまさに戦いの連続であった。テントを担いで全国の河原、空き地、大学構内、神社と放浪の旅芝居。お金無し、そのため食事もままならず、そして表現を巡っての葛藤、対立。こんな過酷な状況の中でも次郎ちゃんは美術スタッフとして淡々と自分の仕事をこなしていた。役者が足りないときはイヌの役で狂気と愛嬌を振りまいていた。走狗解散後は、才気が見事に開花し舞台美術家として名実共に演劇界でなくてはならない人となる。

次郎ちゃん、まだまだ創りたい舞台あったと思うが、こんなに数多くの作品を提供し関係者に喜んで頂いたんだから悔いは無いはず。ゆっくり、先月逝った田島君と美味しい酒でも飲んでくださいね!

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桜の樹の下には...

2019/04/08
【第1206回】

土曜日、南青山にある銕仙会能楽堂で三島由紀夫の「綾の鼓」「卒塔婆小町」を観劇...観ているうちに1970年11月のことが甦ってきました。今から49年前、おいら池袋の小劇場で「卒塔婆小町」に詩人の役で出演していたんでございます。三島由紀夫が自決した直後の上演のため、一時は中止も考えていました。だって、間接侵略に備えるための民間防衛組織(民兵)として、三島由紀夫が結成した軍隊的な集団「楯の会」の人たちが公演中止を訴え殴りこみに来るなんて噂がたっていたもんでビビりまくりの状態でした。おいらは、こんな時こそやってやろうじゃないか!とスタッフ出演者に檄を飛ばしました。この緊張感があって芝居は無事千秋楽を迎えることが出来ました。その頃は、アングラ演劇が世の中にデビューして脚光を浴びた時期でもあり、楯の会との一悶着があったにしても、この事件が芝居になるような時代でありました。事件を起こすことによって、注目を浴びるなんて理不尽なことが堂々とまかり通るけったいなことがたくさんありました。既成の価値観を打ち砕き新しい価値観を生み出そうとする輩がうじゃうじゃと徘徊していた面白おかしい頃の話です...そんなことを思い出しながら観た芝居なんて初めてでございます。

日曜日は善福寺緑地公園にサクラを観に行ってきました。いつものように、サクラの樹の下に思い思いに集まり宴をやっとりました。このところ、友人たちが次々と亡くなっているので、おいらもこのサクラあと何回観れるんやろか...散りゆくサクラの花びらが川に舞い落ちてゆく様を眺めながら思った次第でございます。

散るサクラ 残るサクラも 散るサクラ こんな心境の昨日でした。

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善福寺緑地公園

2019/04/03
【第1205回】

令和なんですね...響きはいいですね。万葉集もいいですね。この日、この国の首相はいかにも自慢げに各局のテレビに出て話してました...自国を強調するあまり、またもや国際社会からいちゃもんも付いとりました。元号なんか、さりげなく決めてさりげなく新しいスタートをしてもらいたいものです。この国は誰のものでもありません。当たり前のことですが、この国に住んでる人たちのものです...この肝心のことを忘れ、あたかも自分のものと勘違いする人たちがあまりにも多いため、もううんざりしている人たちがたくさんいるはずです。これから地方選挙があちこちで始まります。先日駅に立ち、既成政党に所属せず市民派として演説している女性がいました。おいら、めったに声なんか掛けないんだが、その真摯さに思わず声掛けちゃいました。34歳の市民派女性杉並区会議員が誕生するかどうかはわかりませんが、もはや既成政党には本当にうんざりです。

プロ野球も始まりました...ライオンズいきなり3連敗。ソフトバンクの強さを再認識した次第です。やはりお金のチカラには勝てない!なんて当たり前の壁をどう打ち破っていくかが野球の面白いところです。今年も弱体投手陣、でも打って打って点取りゃ勝てまっせ。これからまた一喜一憂の季節が始まります...思えば子供のころから野球も人生の一部になっちゃいました。宿命として受け入れるしかないんでしょうかね...これも人生あれも人生あ~こりゃこりゃ♪なんといっても今や満開桜の季節でございます。

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饗宴

2019/04/01
【第1204回】

先週の金曜日、土曜日、大阪中之島にある国の重要文化財「大阪市中央公会堂」で「黄色い叫び」を公演してきました...いやいや、立派な公会堂でした。中に入った瞬間、嘗てヨーロッパで観た歴史と伝統を感じさせる劇場を想い出しました。周りの風景ともども、こんなところで芝居をやれる喜びを感じた次第です。メトロ淀屋橋駅を降り、右手に土佐堀川を眺めながら公会堂に向かう道すがらの、何となくワクワク感がいいですね。すでにドラマは始まっているのでございます。さて、肝心の芝居なんですが出演者の一人が風邪で高熱を発しチームに緊張感が走り、スタッフ、出演者が一丸となって気合いの入った2ステージでした。東京公演と違うところは、さすがに笑いの本場でございます。東京では笑いがこなかったところで笑いが来たと言うことは、関西の人のほうが人間の機微に長けてるってことですかね...でも、笑いもなかなか深いものでして声に出さない笑い、内面で笑いを吟味したりと、一概に何を良しと捉えていいのか不可解の部分があるのも確かです。でも、今回はシビアな芝居であるだけに笑いが起こると何だかホッとするのが正直なところかな。笑いは世界を救う!そうですな、笑いが絶えないところには争いがありませんものですね。笑いあり、涙ありなんて演し物は、やはり芝居の王道です。

土曜日に梅田で打ち上げをやりました。食い倒れの街だから呑まなきゃ損、食べなきゃ損、皆さん結構呑んで食べて話し倒れていたようでございます。今回の公演も無事に千秋楽を迎えめでたしめでたし。1月「萩咲く頃に」2月「芸人と兵隊」3月「黄色い叫び」怒濤の三ヶ月、我が愛するトムの社員の皆さんも本当にお疲れ様でした。

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大阪市中央公会堂

2019/03/27
【第1203回】

「黄色い叫び」東京公演、昨日無事千秋楽を迎えることが出来ました。10人の役者さん最後まで気を緩めることなく演じていました。芝居の流れからいってもついつい熱が入ってしまうのだが、おいらはこの熱なんてものあまり信用してません。要するに熱演することによって役を担っているという大きな勘違いが好きでありません。勿論、熱に至る導線がしっかりしていれば熱の持つ意味が理解できるのだが、果たして人は、あんなに熱っぽく語るのであろうか?なんていう素朴な疑問を持つのであります。てなことを考えながら連日芝居を観てました。観客にどう映ったかはわかりませんが?

昨日の東京中日スポーツに劇評が掲載されました。劇評の最後に「これは何も被災地限定の物語ではない。人間の弱さを認め、生きるということ、命があるということの意味を問い直す直球勝負のドラマだ。被災の現場をつぶさにすくいとった異色の作品は、これからも上演されていい。」「生きる」意味を問い直す舞台という見出しに始まるこの劇評家の方には、この時期になんでこの芝居をやらねばならないかという意義を痛感されたに違いない。全てが時流に流され、あらゆるものを風化しようとするチカラを何とか食い止めなければこの国の未来はありません。そのための熱は勿論不可欠です...明後日から大阪公演2ステージ公演してきます。関西の人達に、この直球勝負のドラマがどう映るのか?楽しみでございます。

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22日の桜が今日、こんなに

2019/03/25
【第1202回】

半世紀近くの友人である田島恒さんあの世に逝っちゃいました...あの人のことだから、ありゃどなんなってんの?と未だにあの世とこの世を行ったり来たりしちゃってるんじゃないかしら...いやいや、たくさんお酒飲みました。20代の頃、新宿近くに住んでたおいらのアパートに夜中転がるように入ってきて宿代わりにしてる時期もありました。女性にも惚れっぽくてつき合うと少年のようにウブでした。酔っぱらって何度か死にかけました...生涯、結婚もすることなくマイペースの人生でしたね。でも、気配りは最高で日頃蓄えた知識を偉ぶることなくジョークを交えながら同席した人達を笑いの場に誘い込んでいくテクニックはさすがでしたね。このテクニックを惚れた女性に活かせなかったのが返す返すも残念でなりません。悪戦苦闘のテント芝居の時期も、今にしては懐かしい想い出ですね。貴男とTちゃんが殴り合いの喧嘩寸前までいきながら、いつも止めるのがおいらの役割でした。しかし貴男のテント芝居で演じた昭和天皇役はアングラ演劇史にも残る絶品の演技でした。芸に対する執着は人一倍厳しいものがありました。出来ない役者に対する批判も痛烈でした...へたくそなおいらになんで言わなかったの?...温泉も大好きで那須の北温泉にはよく行きましたね。お湯に浸かって酒飲んでるときが、貴男にとっての至福の時間ではなかったのでは...貴男との想い出は数限りなくあります。最後にあったのが先月の「芸人と兵隊」観劇後での池袋清瀧での飲み会。帰り道、「田島君気楽でいいね...」と声掛けると「俺だって寂しいときもあるよ...」その一瞬の表情は哀感そのものでした。その寂しさを振り払うように彼はポジティブに振る舞っていたんですね。ありがとう!貴男が居るだけで場は盛り上がり、楽しい時間を過ごすことが出来ました...人は何れ死ぬんです。早いか遅いかだけの話です。みんなそのうちそっちに行きますから又、いつものように馬鹿話でもしながら一杯やりましょう!

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本日、新宿駅東南口前

2019/03/22
【第1201回】

「黄色い叫び」20日に幕を開け今日が3日目です...若い人たちが真剣に舞台に向き合う姿がいいですね。おいらも遙か昔、ぶきっちょな身体をさらけ出し、あーでもないこーでもないと悪戦苦闘した日々を想い出します。芝居という麻薬に取り憑かれ青春を捧げた思いと時間、ものになるならないを超越して貴重な体験でございました。おいらなんかがやれなかったことを、ひょいと飛び越え簡単にクリアしていく若き演技者にただただ感心するばかり。震災がテーマだけにいい加減な芝居できないという覚悟に、なんとなくひりひりしてしまいます。芝居観た人の感想にこんな言葉がありました。「日本のおエライさんを招待して無理やりにでも見せた方がいい。見せても分かんないかもですが。」その通りですな!被災地の現状、被災者の気持ち、日本の天災に関する事前予防などなど、芝居の中で問題提起してはいるのですが今の政治、行政の中ではなんだか鈍感にしか感じていないような気がしてなりません。そして期待しても無駄なような気がしてならないのが現状。要するに個々人が意識改革をして己自身で身を守るしかないと言うこと...またまたチコちゃんに「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱られないようにいたしましょうね皆の衆。

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桜開花

2019/03/18
【第1200回】

先週の週末もバタバタしてました...土曜、日曜は今年の夏の公演する「A列車に乗っていこう」のチラシポスターに向けての撮影。今回、トムの芝居初登場の石田ひかりさん、今春高校を卒業し大学に進学した松風理咲さん。この二人が北村想さんのシュールで幻想的な世界を演じてくれます。いやいや、手強い戯曲です。想さんとは1997年に、戸川純ひとり芝居「マリィヴォロン」を依頼してから22年振りの新作です。今でも戸川純さんの魅惑的なステージが目に浮かぶくらいの素敵な作品でした。この人以外にこの作品は書けないなんてものを持ってる作家はそうそういるもんじゃございません。今回の作品を渡されたときも、正直言ってキャスティング迷っちゃいました。この世界を演じる女優さんは果たしているんだろうか?いろいろと熟考したうえでの二人です。今からわくわくしちゃいます。

撮影が終わった後、西荻窪にあるロマンスミュージックカフェ・JUHA(ユハ)に行きました。ここもおいらが愛するjazz喫茶のひとつです。お店の拘り、センスなどに満ち溢れた空間に居るだけで幸せになっちゃいます。だって若い頃考えていたことは、おいらがこの歳になったときは、jazzを聴きながら昼は珈琲、夜は酒なんて飲みながらの店をやろうなんて思ってたもんだから、こんな店についつい足が向いちゃうんですね。アナログのレコードを聴きながらもの思いに耽ったり読書したり、なんと贅沢な時間でしょう。ここのトーストに粒あんのあんこがのっかってるのは、今は無き下北沢のjazz喫茶「マサコ」の名物メニューの継承。昔バイトしていた人達が夢の空間を再び立ち上げていく姿においらも応援したくなります。音と空間を味あえるお店探しも楽しいものでございます。

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JUHAの人気メニュー

2019/03/15
【第1199回】

昨日、来週20日から上演する「黄色い叫び」の通し稽古を観に行きました...この芝居2011年に起きた東日本大震災の年に上演した作品です。トラッシュマスターズの主宰者である中津留章仁が、稽古中であった作品を書き改めて、果敢に攻めの姿勢で震災に向き合った画期的な作品です。あの震災を前にして、ほとんどの人が茫然自失の状態に陥ったのは確かです...芝居なんて、この大惨事の前ではクソの役にもたたないじゃないか?芝居だけではなく、表現そのものが絵空事にしか見えないくらい自然が繰り出す強烈なパンチでございました...こんな時に中津留章仁は、この作品も含め2011年に震災に関する作品を2本書き上げ公演したんですから大した男です。この事だけで世界の演劇史に名を残してもおかしくないと思います。表現者は何時如何なるときでも、時代に対峙しなければならないと思います。震災後も日本のみならず世界各地で数々の災害が頻繁に起きてます。この作品は、まさにその後の世界情勢を予見させる物語であり、人の在り方を地方の青年団という設定で描いたものだと思います。

ところで、4度目の今回の芝居の仕上がり具合は?昨日観た範囲では、又新しいドラマが進行してるなと言う感想かな...トム・プロジェクトでは珍しい10人の群像劇。皆、中津留君の厳しいダメ出しを浴びながらいい汗かいていました。若者が真摯に芝居に向き合ってる姿、おいら好きです。しらけないで、内向しないで、ましてや人騙しなんかの稼業に足踏み入れないで、いい汗かいておくんなせい!と若者に言いたいのでございます。

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稽古場に行く途中

2019/03/13
【第1198回】

来ました待ってました?...杉並区の職員を名乗り、過去5年分の医療費の還付金がもらえるので手続きをして欲しいとの電話。おいらもこんな話は千載一隅のチャンス?とばかりに年金老人暇人を装い偽職員に真面目に対応していました。この詐欺請負人もなかなかの役者じゃのう...田舎から出てきた素朴な青年を演じていました。半分ボケ風に受け答えしていると、相手もこりゃいけると思ったんでしょうな、銀行口座の話をしだしました。ここでおいらも、なんのこっちゃと不安な素振りを見せると、この偽職員、またもや丁寧に説明を始めました。おいらその後は、間を置きながら「はい」を繰り返すのみだったので相手は、こりゃ手ごわい年寄りと感じたのか慌てて電話を切りました。おいらの感想、こりゃ、暇なお年寄りは騙されるなと思いました。事務的ではなく、優し気な語り口で語られると、ついつい聞いちゃいますがな...お年寄りは寂しいんです。若い素朴な青年であればあるほど愛おしくなり、その深い闇に飲み込まれて行ってしまうんですな。それにしても、こんな仕事を請け負い飯のタネにしてるなんて、この青年の心の深い闇はいかほどのものか...想像しただけでもいたたまれない気持ちになってしまいます。なんて考えるおいらは旧い人間でしょうかね?以外と割り切って楽しくやってるのかもしれないのが当世流なのかも...嗚呼おそるべし!当世風流儀に活路を見出す新人類。

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沈丁花

2019/03/11
【第1197回】

8年前と同じ時間、北品川で芝居を観劇中に起きた地震を思い出しながら書いています。まさかです...災害が起きる瞬間の前まで、さりげなく日常が続いていたのに...この時期になると、いつものようにメディアが一斉に東日本大震災のことを取り上げます。取り上げないよりはましなんでしょうが、なにせ健忘症大国日本ですから必要不可欠なことでしょう。メルトダウンした核デブリはどうするんでしょうか?核廃棄物は廃村になった地に置いたまま永久に住めない土地になるんでしょうか?再度、地震が起きた時は完全にアウトです。そして、いつまでも消えることのない心の傷。昨日もテレビでやるせない気持ちで訴えていました。二階建ての家で一階部分が全壊した人は最高200万円の保障しかないとのこと。朽ち果てた部屋を見ながら「死んだ方がまし...」と諦め顔。禁止地区が解除になり我が家に帰っても、以前は畑があったところに除染した土の山。窓からの眺めがこれじゃいたたまれない気持ちになってしまいます。来年のくそ暑いオリンピック何ぞ中止にして、これらの人たちを救え!って話だろうにと思いますが...景色ぶち壊しの防波堤、本当に役に立つんだろうか?なんだかこの国の政治、行政の過去の在り方みてると、ゼネコン含め大企業を潤わせるための手立てとしかみえません。そうやって疑いたくなることの連続でしか見れないこの国の貧困なシステム。と、ボヤいていても前には進みません。ここは心ある人たちが、無償の行為で被災地に出向き心のケアをしています。そして、忘れてならないことは、この震災の記憶をいつも留め置き、次なる災難に備える想像力を働かせることが肝心なことだと思います。こんなことを体験していながら、いまだに原発再稼働なんてこと言ってるやつはホンマにアホですな!

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2019年3月11日 穏やかな新宿

2019/03/07
【第1196回】

一昨日、「芸人と兵隊」兵庫県立芸術文化センターでの公演に行ってきました。この劇場は指揮者で有名な佐渡裕芸術監督のもと「劇場はみんなの広場」という言葉を合言葉に素敵な演目を並べ、年間、主催・貸館事業あわせて600公演を実施し、毎年約50万人の観客を集め、我々舞台人にとっても頼りになる劇場です。トムの公演も数多く呼んでいただいています。おいらも久しぶりに芝居観たのだが、この劇場に集まる質の良いお客様にも後押しされ上々の出来でございました。村井さんが冒頭の漫才シーンで飛び上がったり、髙橋洋介が乗りの良い観客についつい台詞が止まったりと、相変わらず生の芝居だからこそ起きるハプニングはありましたが、お客様の終演後の拍手の熱さが十分に芝居の出来を証明していました。

終演後は北新地にある隠れ家的なイタリアレストランでお疲れ会をしました。ワインも上々、料理もとても手が込んだもので、役者の皆さんにはとても喜んでいただいておいらもほっこり。

翌日は、大阪でおいらが一番好きなディープな街新世界に行ってまいりました。大阪からこの地が無くなるときは大阪らしさが消える時だとは思っているのですが、この地も明らかに中国、韓国観光客に占領されつつありますな...じゃんじゃん横丁に数軒あった将棋会館も今では一軒だけ。ちょいと覗いてみましたが坂田三吉らしきおっちゃんは居ませんでした。でも、昔ながらゆったりと一日将棋に興じる姿はほっとしますな...ここ来て串カツ、どて焼き、お好み焼き食べへんかったら、ええ加減にしぃや!と言われること間違いなし...勿論、食べて帰京しましたがな。

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ディープな街

2019/03/04
【第1195回】

先週の週末にはトラッシュマスターズ「オルタリティ」を観劇...この劇団も来年で20周年目を迎えるとのこと。主宰者である中津留章仁君と出会ったのが1998年だから21年になるんだな。感慨深いものがあります。スタジオで勉強してないで演劇界に殴り込みを掛けるくらいの気概で打って出なさい!と中津留君にけしかけたことをよく覚えています。その言葉通りに若き演劇人を代表する劇団、作・演出家になりました。がしかし、この芝居の世界ここからが大変なのであります。一度認知されると、周囲はより以上の成果を求めるし、劇団内でもマンネリにならないようにあらゆる手立てをしながら創作活動に勤しまなければなりません。加齢と共に周辺にも様々な変化がおこり、なかなか事はスムーズには運びません事よ...今回のトラッシュマスターズの公演、今までで一番少ない6名の出演者でした。この日も2時間半の芝居を2ステージこなし飲み会では、さすがにお疲れのようでした。でも、芝居が好きだからやるんです!意地でも自分たちのスタイルの演劇を公演し続けるんです!歳喰ったといっても、まだまだ40歳代じゃございませんか...おいらなんかは40歳前半まではふらふらしてたんですから、人生も演劇もこれからでございますよ。

仕事もプライベートもちょいとした変化で気分が変わります。この気分って奴がネガをポジに変えちゃうんですな。おいらはJAZZが流れる喫茶店で、深煎りの珈琲を飲みながらぼんやりしたり本読んだり過ごすことで、気分のチェンジを図ってます。この日も下北沢の素敵なJAZZ喫茶で囃子ライスと珈琲を頂きました。

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Jazzと喫茶 囃子

2019/03/01
【第1194回】

昨日は第26回読売演劇大賞の授賞式に、投票委員の一人として会場である帝国ホテルに行って来ました...今回の優秀作品賞の中に劇団チョコレートケーキ「遺産」が受賞したことは大変喜ばしいことでありました。いつものように作、演出家、出演者が顔をそろえ宴席に設けられた出前寿司なんぞを飲食する姿が微笑ましい。寝食を忘れ経済的にも決して恵まれない中、芝居に命を注いだ青春を思うと、おいらも何とかしてあげたいと思いますがな。芝居やるなんて親に話したら「そんな河原乞食みたいなもん許せん!」と鬼のような顔をして怒られたもんでございます。ましてや、親がせっせっと働いて大学まで入れてあげたのに、なんで見世物芸人になるんやなんて話です。おいらは子供のころから風来坊ですからそんな経験はありませんがね。普通の家庭のシステムであれば当たり前の話、昨日の受賞者の一人岡本健一さんが話してました。初めて芝居の世界に入った時に周囲の役者が皆キチガイに見えたとのことでした。そして、今回、芸術栄誉賞受賞者である87歳の演出家・木村光一さんも、唯々貧乏の連続でした。演劇に関わる人達がお金持ちになれれば嬉しいな~なんて本音の話をしていました。そんな世界の人達が表彰される会、この世知辛い世の中で26年も続けてる讀賣グループも粋じゃありませんか...あのなんとかツネさんはなんとかなりませんかなとは思っていますがね。

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おめでとう!劇団チョコレートケーキ

2019/02/27
【第1193回】

この国に民意なんてあるのかしら...沖縄で辺野古移設に関しての県民投票が実施され72パーセントの人達が反対と言ってるのに、政府は耳を貸さず辺野古の海に土砂を放り続ける始末。アメリカに対して対等にもの申せない人達に、この国を統治させていいものだろううか?多くの国民がそう思ってるはずなのに、口ごもってしまう日米の防衛問題はすべてアメリカ任せ、敗戦後アメリカがこの国を占領して以来、この構図は変わることがない。今日は米朝の会談、韓国との関係も悪化、ロシアとの北方領土問題も進展なし...一体全体、この国の外交はどうなっとるんじゃ!もしロシアが2島返還に応じたとしても、この基地にアメリカ軍が駐留するなんてことになったらてんやわんやの大騒ぎ。あっちもこっちも八方ふさがりのお手上げ状態が長いこと続いているのに手の打ちようがないニッポン。

そうなんです...この国は選挙しても民意が正確に伝わらない不条理な国と思えば納得がいくのかな?建前の民主主義クソ喰らえ!と言い放ちアナキストになりたい気分ですな。アナキズムなんて言うとテロリストみたいに勘違いされがちなんだが、アナキズムは、語源的にはギリシア語のアナルコス、つまり支配者がいないということばに由来し、権力的支配や国家、政府のような権力機関の存在を極端に嫌い、人間の自由に最高の価値を置く思想として位置づけられているんですよ。今の政治屋さんの集まりで、日毎税金無駄遣いの議会なんぞであれば要らんですバイ!と、愚痴零していてもしよんなかですばい...芝居創って形にして、この国に真の民意を届けねばと思っとります。

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如月の公園

2019/02/25
【第1192回】

「芸人と兵隊」東京公演無事終了しました...土曜日のマチネーの回、芝居が始まるやいなや照明のトラブルで舞台監督が登場し「トラブル発生、申し訳ありません、しばらくお待ちください。」との挨拶がありました。おいらとしては最悪のケースも考え、その後の対応におつむが回転し始めたときに、村井、柴田の夫婦漫才コンビが登場し即興の漫才を始めました。さすがベテランのお二人、この緊急事態にお客の不安を解消するどころか、このピンチをお笑いに変え拍手喝采。この日の観客は、夫婦漫才をプラスワン楽しめて大満足ではなかったかと思います。これが、まさしくライブですね...なにが起こるか分からないのが面白く怖いところです。本番中に役者が倒れ、そのまま救急車に運ばれ亡くなったこともあり、今回みたいに舞台機構の不備により中止になったことも当然あります。生身の人間が織りなす舞台であるからして、いろんなことを予測し想像しながら日々創っているのでございます。

東京公演が終わる間もなく、今日は横浜で公演し3月10日まで地方公演が続きます。何事もないようにと芝居の神さんに祈るのみ。

そして、今日から、3月20日から上演する「黄色い叫び」の稽古が始まります。今日の会社でのミーティング、皆さすがに疲れは見えるのだが元気でありました。こうやって日々演劇に夢中になれることに感謝です...そして、公演を楽しみにしているお客様の顔が見えるからこそのことですな。

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東京芸術劇場前の広場

2019/02/21
【第1191回】

「芸人と兵隊」の休演中に2本の芝居を観てきました...1本目は、こまつ座「イーハトーボの劇列車」井上ひさしさんの名作です。松田龍平の初舞台ということもあって満員の盛況。休憩入れて3時間半の大作。「世界ぜんたいが幸福にならないうちは、個人の幸福はありえない」と述べた宮沢賢治に対する作家の傾倒ぶりが良くわかる作品です。賢治のいろんな作品に登場する人物を配し、いろんな手を駆使しながら飽きさせないように創り上げた作品でした。トムの作品に何本も出演した宇梶剛士さんとってもぴったりの役で存在感ありました。

2本目はシアターコクーンで上演している「唐版 風の又三郎」奇しくも、こちらも宮沢賢治に関わる作品。唐十郎さんの世界、何年たっても何回観ても飽きませんね。溢れ出るポエムを振り絞る熱情を込めて語られると、そこはまさしく幻想の世界...テントで何度感動したことか。今は亡き蜷川幸雄さんが大きな劇場で上演してからも唐十郎がいかに演劇を変革したか、その意義を改めて確認した次第です。今回も宝塚出身の柚希礼音、若手人気俳優の窪田正孝をキャスティングし、リピーターらしき観客で盛り上がっていました。アングラ芝居に無縁であった人たちを劇場に集める功績は大だと思います。ましてや唐ワールド、この芝居観て今なお紅テントで上演し続けている本家唐組の芝居も観て頂戴な!と願いたいですな。この芝居、杜夫ちゃんの菊の御紋をつけながら奮闘しとりました...6月WOWOWで舞台中継放映が決定しているのだが大丈夫かいな?

「芸人と兵隊」は今週24日(日)まで東京芸術劇場シアターウエストで上演中です。日々進化しとります。お見逃し無きように!

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絶賛上演中

2019/02/18
【第1190回】

こだま著「ここは、おしまいの地」読了...作者の故郷の暗い話を諧謔調で綴った文章。なかなか上手いと言うより、故郷に住む人達の行動を客観的に捉えてる視点が面白い。しかもおしまいの地が、文章の中からより鮮明にイメージされてくるのが作家の筆力。こんな恥部さらけ出したくないのが普通の感覚なのだが、このSNS流行の時代出版会社は目を皿のようにして売れそうな作家を捜している昨今、売れると思ったんでしょう...読者の好みも様々、触れたくない、隠したい、そんなことは誰しもが抱えている秘所であり、そこにスポットを当てれば共感するだろうなんてことは当然。この作家の最初のヒット作が「夫のちんぽが入らない」なんですかいな?このタイトル付けるのも勇気があるというのか、人目を惹くのに付けたんじゃないのと勘ぐりたくなりますね。おいらはこの本は未読なんだが、今回の本で大体の予想はつきますな。私小説は誰しもが一作、二作目までは書けるとは思いますが、プロの作家になれるかどうかは私小説から距離を置いたときが勝負だと思います。

「芸人と兵隊」東京のステージも5ステージを終えました。日々、芝居が弾んできましたね。観客の笑いが、ギャグではなく役者の関係性の中から生まれてきてるのが何よりの証拠。芝居は本当に難しいし奥が深いですな...何年やっても闇は深まるばかりでございます。

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東京の梅

2019/02/15
【第1189回】

えらいこっちゃ!忙しすぎて...一昨日なんぞは「萩咲く頃に」の今季最終公演を神奈川県海老名市で、「芸人と兵隊」の東京公演を池袋芸術劇場で初日を迎えました。少数精鋭部隊であるトムの皆々はあちこちを飛び回り大変でございました。芝居は呼ばれてなんぼの世界でございます。需要がなきゃただのマスターベーションに終わってしまいます。一日に異なる芝居を同時にやれる喜びをしみじみと感じております。「芸人と兵隊」東京初日、確かに地方のお客様に比べると、東京の観客の目は厳しいものがございます...なかには、ただただあら捜しを見つけるのが楽しみで来る天の邪鬼も居てござる。まあ、お金払って来て頂いているんだから見方は人それぞれ、こちらがあれこれと言える立場ではございませんが、おいらにしてみれば素直に観ればもっともっと楽しめるのにもったいないという気持ちが正直なところかな...そんな観客の中で演じる役者さんも大変でしょうが、ある面鍛えられますな。今回も村井國夫さん、柴田理恵さんというベテランに混じって若手4人が奮闘しています。あれこれと壁にぶち当たりながら、飯がノドに通らないなんて日々を過ごしながら舞台に立っている姿を見るにつけ、幸せな人達だと思います。だってこの世の中、なんとなく霞がかかった手応えのない現状です。成すべきことが目の前にある喜びをしかと感じながらこれからの舞台楽しんでほしいな若手衆。

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曇天の新宿

2019/02/12
【第1188回】

昨日、「萩咲く頃に」を観に仙台に行って来ました...東京よりも暖かい杜の都でした。仙台演劇鑑賞会の皆さんが呼んでくれた公演です。この芝居は、東日本大震災が起きて3年半後に創られた作品です。あの震災後は、全ての人達が思考停止状態に陥り何事も手に付かなかった記憶があります...そして創られた今回の作品、いつの日か被災地に届けたいという思いが常にありました。被災された人達にどんな形で舞台を捉えて頂けるのだろうか?昨日の舞台は、そんな諸々の思いを抱きながら観劇しました。それは、舞台に立つ役者さんも同じ、まさしく魂が込められた素晴らしい芝居でした。昨日で95ステージになるこの芝居、なんだか新作を観ているような時間でした。終演後の拍手が、この日のステージの質の高さを実証していました。

終演後、鑑賞会の皆さんと交流会。未だ行方不明の家族を捜しながらも笑顔でお話しされる老婦人。その方に「いい芝居だったよ!」なんて言葉を掛けられおいらもホロリです。そうなんです...生き残った人間が、何とかしようとアクションを起こさない限り何も変わりません。漫然と生きてると「ボーっと生きてんじゃねーよ!」とチコちゃんに喝を入れられますぞ皆の衆。

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仙台のこの酒はうまかった!

2019/02/08
【第1187回】

宿野かほるの「ルビンの壺が割れた」読了...いやはや、SNS時代にぴったりの読み物ですな。結婚するはずだった男女のメールのやり取りを羅列したものが果たして小説と言えるかどうかは分かりませんが、1時間ほどで読めるミステリー、しかも結末のビックリマークで売れてるんでしょう。なんだか、今の世相を反映したような、この軽さが感覚を言葉を安っぽくしてる気がしてなりません。でも、活字離れしている若者に、本に対する興味を持たせるのには絶好の読み物かも知れません。日本あちこちで古本市なるものを開催してるのだが、物色している年齢を見るにつけ先々の出版業界の将来に不安を感じます。今回、芥川賞を受賞した作家もスマホで執筆してるそうな(執筆ではなく打筆がぴったりかな?)新聞不要は若年層に定着し、次なるターゲットが紙の本。電子ブックに出版業界が次なる手を打ったのだが思うようには伸びていないらしい...そりゃそうだよね。あの本を手にした感覚こそが、人の想像という羽翼を羽ばたかせながら未知なる世界に誘ってくれる第一歩ではなかろうか。本なるものがなくなったときは世界の終わりですぞ皆の衆。

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一昨日、機内から

2019/02/06
【第1186回】

2月4日(月)九州博多で「芸人と兵隊」地方公演スタートしました。ここ、ももちパレスで上演するのは久しぶりです。以前は中心街天神にあるエルガーラホール、西鉄ホールで公演できたのですが、何故かおいらの故郷博多はアートに優しくない街のようです。全国の市で5番目の人口(158万人)でありながら行政管轄の芝居向けの小屋がないのでございます。他の市に行けば500人規模の、芝居にはうってつけのホールが必ず存在してるのに、我が故郷には皆無です。山笠、どんたく、そして海の幸山の幸に恵まれた食材は豊富なんですが、心の食材であるアートにはなかなか理解してもらえないようですな...以前、物申すつもりで市長室の乗り込んだこともありますが、のらりくらりの応対でござりました。

そんな博多での公演。来ていただいてるお客様は、さすが芸どころの土地柄でございます。出だしから反応も良く、今回の芝居の勘所をしっかりと把握して最後までしっかりと観てていただきました。その空気を感じ取り役者も気を引き締め演じてくれました。

終演後は、博多の食材と美酒に酔いしれ歓談...いいスタートがきれました!

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博多の梅

2019/02/04
【第1185回】

先週の土曜日、埼玉県志木市民会館パルシティで「芸人と兵隊」公開舞台稽古をやってきました...地方公演に出る前に、本番通りに上演し最終チェックを兼ねる意味もあります。自由席ということもあって、3時間前からお客様が並ぶ大盛況。600人の観客が入り当日券はなし。こりゃ気合入りますな。本番前は、さすが初めてお客様の前で芝居するんで、役者さん緊張感漂ってました。スタッフも同じく何度もチェックしていました。勿論、おいらも果たして上手くいくかどうか緊張しますがな...出だしのお客の笑いから、これはいける!少々の硬さがありましたが、満員のお客様のハートを鷲掴み、食い入る様に役者の演技に魅入っていました。終演後の拍手の質で、その日の芝居の出来がわかるんですが、この日の拍手は上々でした。会館を後にするお客様の表情は皆、「貴重な土曜日の昼間、本当に来て良かった...」そんな顔を見させて頂くたびに、苦労が報われるおいらでございます。終演後は、反省会も含めて志木駅の近くで一杯。上々の滑り出しでお酒もぐいぐいいけました。
さて、今日から地方公演スタートです。最初の公演地は、おいらの故郷博多でございます。博多の皆さんに、よか芝居魅せますばい!

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満員御礼

2019/02/01
【第1184回】

葉室鱗「曙光を旅する」読了...一昨年12月に66歳で亡くなったおいらが好きだった作家の一人である。歴史の大きな部分ではなく、小さな部分を見つめることで、日本と日本人を知りたい。そんな思いに突き動かされ、九州から京都を中心にした旅エッセイ本である。この本の中に登場する松下竜一さん、上野英信さんなど、九州の片隅で名も無き民衆の息遣いを語り継いできた人達も登場する。上野英信さんの絶筆「筑豊よ 日本を根底から 変革するエネルギーの ルツボであれ 火床であれ」。松下竜一さんが生涯唱え続けた「誰かの健康を害してしか成り立たぬような文化生活であるのならば、その文化生活こそ問い直さねばならぬと。」彼らの生き方に共鳴し、葉室さんも多くの小説を書いてきた。歴史小説は、自分に似た人を歴史の中に探して書きますと本人が吐露している。直木賞を受賞した「蜩ノ記」は、まさしく上野英信さんがモデルである。

歴史上に燦然と輝く武将ではなく、路地裏でひっそりと暮らす庶民に光をあて人間を見つめ直してきた葉室鱗さんには、まだまだ書きたいものがあったに違いない。この作家の目線が限りなく低く、温かい感覚が読後にいつまでも残るのが読書の喜びでもある。

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暗闇の思想

2019/01/30
【第1183回】

元民主党細野豪志衆議院議員が、あの自民党の夜明けのガス灯みたいな幹事長のところに行くんだって...この人、頭おかしくなったんじゃないかしら?男前で頭がきれきれで結構人気があり期待された政治家だったのに、何だか哀れですな。今思えば、民主党を解散させ、あの何だか策士みたいな緑のおばさんと希望の党を作り、排除の論理で結局は与党を助ける結果になったということは...ありゃ、自民党のスパイじゃなかったんじゃないかしら。正常な神経してるならば、今後人前で政治信条なんぞ話せないはずですがね。いやいや、政治の世界は、まともな理想と希望に満ち溢れた人間を異常な世界へと誘う魔界の世界です。

森友、加計問題いまだ未解決。今度は厚労省不適切検査、なんなんでしょうね?韓国、ロシアとの外交問題もさっぱり、なのに与党内からも声が上がらず。野党もばらばら、今年も相も変わらず税金の無駄遣い国会でございます。

そんな折、東北巡演を開始した「萩咲く頃に」のチームからいい知らせが舞い込みました。福島公演、被災地の方々に大変喜んでいただいたとのこと。震災から8年を迎える人たちに、少しでもチカラになれればプロデューサーとして嬉しい限りでございます。国がやれないならば、誰かがやらねばこの国の未来はありませんことよ。

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静寂

2019/01/28
【第1182回】

いやいや、まいりました...週末の午後2時~3時頃になると、吉祥寺のあの「いぶきうどん」の麵とだし汁といりこ揚げが、ちらほらと目の前に浮かんでくるのでございます。こりゃ完全にいぶき中毒に違いありません。矢も盾もたまらず3週間続けて「いぶきうどん」の発券売り場に立っているおいらに呆然としました。でも、昨日は無料配布の揚げいりこが終了。やばいやばい、これは口コミの猛威で確実に全国のあちらこちらからいぶき参りが始まっているかも知れません。大阪十三にあったお店が、東京出店第1号店に選んだのが吉祥寺。なかなか目の付け所がよろしゅうおますな。うどんを食べた後、散策してると、なんとなんとパリ10区のサンマルタン運河近くにある人気パン屋が日本1号店として出店した「リベルテ」にも多くの人だかり。早速、食パンを購入したのだがモチモチ感満載、花の都のパリの香りがしましたことよ。吉祥寺人気止まるところがありません...

先週の週末は、テニスで大坂なおみ。マラソンでは小原さん福士さんが頑張ってましたな。

福士さん転んじゃって、膝と口から出血してしまい途中棄権。いやいや、スポーツは何が起こるか分かりません。只ひたすら走り続けることの苦悩と快感、おいらにはわかりませんが、多くの人を惹き付けるこの競技には、人生と相通じるものがあるんでしょうな。

夕方には、嵐ニュースがあちこちに駆け巡っていましたな。そりゃそうでしょう、人間40歳近くなったら考えますがな...人は何のために生まれ、何のために生きるのか?

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夕暮れの井の頭公園

2019/01/25
【第1181回】

マスクの季節である...インフルエンザに対する予防が一番だが、これってたいした効果はないらしい。自分がかかっていて人に移さないための効果が一番。それとマスクしてると防寒対策にもなるし、乾燥してるときなんぞはノドを潤すにはもってこいの小道具だ。しかし、皆が皆マスクをしてこちらに向かって来る様は何とも異様だ。秘密警察の一団か、もっと言えば環境汚染で地球滅亡のシナリオが着々と進んでる気さえする。最近は白いマスクではなく黒いマスク集団をよく見かける。これは不気味ですな...おそらく中国から来た観光客だと思うが、北京辺りの汚染された塵芥を吸い込み、そのまま持ってきてるんじゃないかしら?なんて思うくらい、見た目あまり清潔な感じがしませんな。いや、単なるファッションかもしれません。こうなったらカラフルに色とりどりなマスクが闊歩すれば、これはこれで面白いかもね。白マスク集団の威圧感から少しは解放されるかも...おいらもマスクをしたときはなんだかスパイもどきの気分でワクワクします。他人を観察するにはなくてはならない必需品です。これにサングラス、帽子があれば完璧。徹底的に人物ウオッチングを楽しめますよ。電車の中で、前の席に座ってる人達のアナザーストーリーを想起し書き上げることも可能です。街のあちらこちらには、思いもよらないドラマが転がってますんで楽しんでくださいませ...お金もかからんことだしね。

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今日の新宿アルタ前の空

2019/01/23
【第1180回】

戻ってきました...南米ペルーのケーナが復活しました。もう何年経つだろうか?新宿の街からペルーの音楽集団が消えてから。4,5人のチームが民族衣裳に身を固め、新宿のあちこちの路上で「コンドルは飛んでいく」などなど哀愁たっぷりの音色を聴かせて道行く人達のオアシスの場になっていたのだが、さすがに取り締まりが厳しくなったんでしょうな。不法滞在、路上での演舞禁止、やたらとこの国のお上は厳しいのでなかなか異国の人達の音色は聴けなくなってしまいました。昨日は一人で演奏していました。あまり立ち止まる人も居なかったのだが、この竹で作られた素朴な楽器はアンデスの風景を呼び覚ましてくれます(おいら南米大陸だけは行っておりません)だからこそ余計に想像が膨らみます。多くの謎に包まれた空中都市マチュピチュ。チリの本土から太平洋へ西に約3700km沖に浮かぶ、孤島イースター島に並ぶモアイの像、ナスカの地上絵などなどアンデスの曲が流れる度に、この地に行った気になるんでございます。

新宿は昔から自由人が往来した街。だからこそ、日本のアートをリードし続けてきたんです。この街から吟遊詩人が消えちまったときは、新宿が新宿でなくなるときでしょうね...

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待ってました!

2019/01/21
【第1179回】

住みたい街ナンバーワンである吉祥寺には週末によく行きます...井の頭恩賜公園有り、こじゃれた店数々、美味しいレストランあちこち、老若男女誰しもが楽しめるところがミソなんですね。先ずは井の頭公園駅を降り、公園に居並ぶ手作りアート品を眺めながらちょいと冷やかすのが楽しいですね。勿論、気にいれば購入しますよ...手書きの立体パノラマ葉書、ユーモアたっぷりの「ちょんまげ課長」の葉書なんぞは嬉々として手に入れました。ちょんまげ課長の作者、さぞかし有名になったんでしょう?このところ見かけませんがいいことじゃないですか。この寒さの中、終日突っ立てるのも辛いもんがあると思います。売れりゃ懐が暖かくなり自ずから体温も上昇するとは思いますが、おいらが見てもこりゃ厳しいなと思うお店もありますな。その中で思い切りボランティアに徹しているおじちゃんおばちゃんコンビの「顔面紙芝居」。子どもたちを筵に座らせて、おじさんが仮面を被っていろんなクイズを出し、当てた子供に手作りのお土産をあげるんだから、たいしたもんでございます。資金はどうしてるんだろう?年金切り崩しながらやってるんだったら...ふたりに想像絶する何かがあり、それをきっかけに子供への奉仕に人生を賭けたんじゃないかしら...とか、想像をいろいろと膨らませて見ておりました。池にはスワンのボートが行き交い若いカップルが甘い恋のひとときを楽しんで居るんでしょう。

街中も色とりどりのショップが並び、飽きることなく散策できます。最近のお気に入りは、立ち食い「いぶきうどん」。こちらは伊吹いりこ出汁で頂く讃岐うどん。出汁に香川県伊吹島で水揚げされたいりこを使用しており、うどんにかける揚げいりこも無料。こりゃ、いけますばい!¥300のかけうどんで十分満足。ほんまにいろんな店がごちゃ混ぜになったおもちゃ箱の街ですな。

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憩いの場

2019/01/18
【第1178回】

「萩咲く頃に」東京公演2ステージ無事終えることが出来ました...場所は両国、大相撲初場所開催中で、大銀杏に付けるびん付け油の匂いがなんとも色っぽい。この地には多くの相撲部屋があり、関取の歩く姿だけでレトロな町に一変しちゃいます。あのゆったりとした存在感も、この世知辛い世の中を和らげてくれる感じがしてホッとしちゃいます。稀勢の里の引退もあり、寂しいかなと思いきや、多くの人達が国技館の周辺集っています。このスポーツ、いや国技はモンゴルだろうがどこだろうが関係ありませんな。あの小さな丸い土俵上での肉弾戦は、他のどんな競技より特殊性を秘めており、飽きさせない魅力を持っているんでしょう。力士の鍛えられた肉体と大銀杏、まわし、異国の人が初めて目にしたときはなんじゃこれ?なんて思ったことでしょう。おいらが初めて子供の頃に博多で見た力士は、巨人の国から来た異人さんに見えました。12月の寒い季節なのに裸であることも驚きでした。新聞配達の後、櫛田神社近くの万行寺で見学した二所一門の激しいぶつかり稽古には身震いしまともに凝視することが出来ませんでした。そして改めて、こりゃやっぱり異人さんに間違いないと確信した次第です。

ところで、芝居は上々の出来でキャストの皆さんと、ちゃんこを食べに行きました。両国に来てちゃんこを食べないで帰るなんて失礼な気がします。これからの東北の旅の無事を祈ってちゃんこちゃんこした次第でございます。

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睦月の空

2019/01/15
【第1177回】

昨日の昼間は、明日から始まる「萩咲く頃に」の最終稽古に行ってきました。稽古を観て感心したのは、キャストの皆さんがシーン毎、時には繊細に、時には大胆に過去の表現とは違う方法で役に対する新たな挑戦をしていたこと。これは、新たな芝居を創ろうという意欲が並々ならないものだと嬉しくなっちゃいました。役者はこうじゃなきゃいけませんな!同じ事なぞってやるなんてもはや死に体でございます。なんとか役に新たな命を吹き込み、相手役に刺激を与え、より高いレベルで競い合う。プロデューサーにとっては願ったり叶ったりであります。今回は8年目を迎える東日本大震災の被災地で公演することも俳優陣も期するものがあると思います。12日、93歳で亡くなった哲学者梅原猛さんもおっしゃっていましたよ。東日本大震災については「文明災の面もある」と持論を展開、脱原発の文明論を掲げていました。脱原発社会の実現を主張し、「技術が進歩すれば自然は奴隷のごとく利用できるという近代哲学が問われている」「和の文明、利他の文明に変わらなければならない」と訴えておられました。誰かが言い続けねば、すんなりと風化してしまいこの時代。だからこそ、この芝居もやり続けます!

夜は錦糸町に「芸人と兵隊」の稽古場を覗いてみました。こちらも来月、博多での初日に向けて熱が入っていました。稽古終了後、この日誕生日でもあり還暦を迎えた柴田理恵さんのお祝いを近くのイタリアレストランでやりました。60歳とは思えない柴田さんのパワーに圧倒されながらキャスト、スタッフの和気あいあいの祝福に柴田さん本当に嬉しそうでした。

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昨日のスカイツリー

2019/01/10
【第1176回】

新しい年も始まったばかりというのに、今日、井の頭線で不満爆発のおばちゃんに遭遇しちゃいました。「若い娘に偉そうに言いやがって...あの親父」「ネチネチしてるんじゃないよ...言いたいことあったらはっきり言えよ」「孫にでれっとして...そんな気持ちあったら私にも優しくして」いやいや、ブツブツおいらの隣で喋っておりました。前の席、隣の席の人も席を移動したので仕方なくおいらは聞き役になっちゃいました。おいらも席替えすると、このおばちゃん喋るのやめるのかしら?いや、きっと寂しいんだね。おいらが受け止めてあげないと、このおばちゃん発狂しちゃうんじゃないかしらと思ってしまいました。ふと、おいらがなだめたり質問ぶつけたら、このおばちゃんどんな反応するのかしら?なんてこと考えながら7、8分は聞いていたかな。この時代、老若男女、年齢に関係なく悩み苦しんでいるんですな。おいらなんて経済的にも物質的にも決して豊かではなかったけれど、昭和平成と心豊かに活かさせていただきました。ことに戦後の昭和は面白おかしく過ごしました。そうなんですね、ものを持たない、ものがないからこそ、人は想像力をバネにして自分なりの創造物を創り出すんじゃないかしら。悩んでる暇なんてございませんことよ...その貴重な体験があったからこそ、今なお好奇心キンキラしながら日々楽しく生きてます。時代が勝手に向かって来ようと、要は己の思索に基づいて、己の心身に揺るぎ無いなにものかを持ち得ないと、この時代を乗り越えていくのは厳しいかなと思う次第でございます。

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寒い今日の空

2019/01/08
【第1175回】

「芸人と兵隊」も本格的に始動...年初から事務所フル回転でございます。稽古場は一つしかないので他の稽古場を借りて二か所での稽古。どちらもベストな芝居を創ろう!と気合十分です。まさしく人力に拠る細かく積み上げていく手法なので、役者の心身の強靭さが頼り。貰った役に如何に憑依していくか?この憑依こそが役者のレベルそのものだと思います。

ということで、「アリー/スター誕生」に続いて、「ボヘミアン・ラプソディ」を鑑賞。クイーンのボーカルだったフレディ・マーキュリーにどこまで肉薄できるか...演じたラミ・マレック見事でした。エジプト系の顔つきと目の表情が伝説のフレディを彷彿とさせてくれました。IMAXという画像、音響をアップした劇場システムで観てるとライブのシーンでは、さながら会場にいる気分にさせてくれます。これは映画館に誘い込む大きな武器になりますな。家のテレビでは味わえない臨場感は、お金を払うに十分な満足感を得ることができます。

椅子も立派だし、昔の小便臭い映画館も懐かしいけど、今の時代は残念だが付加価値を感じさせてくれないと映画館、劇場には来てくれないのかもね...それにしてもハリウッドの役者の裾野は計り知れない。探せばいくらでも居るんでしょうな実力、魅力兼ね備えた憑依者どもが...それに比べるとこの国はいかがなものかと、つい考えてしまう。でも、嘆いている場合じゃございませんことよ。おいらが信じた役者が魂込めた芝居やってくれると期待してまっせ!

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初春の新宿

2019/01/04
【第1174回】

あけましておめでとうございます。

 

今日から仕事始めです...早速、今日から「萩咲く頃に」の稽古が始まり、明日は「芸人と兵隊」の稽古が開始されます。新年早々、大忙しのトム・プロジェクトでございます。それだけ多くのお客様が期待して待ってると言うことだから、年明け早々嬉しい悲鳴でございます。とにかく3月まで3本立て続けに公演を控えているので、キャスト、スタッフ何事もなく乗り切って欲しいと願うのみです。

おいらは、年末年始のんびりと過ごしました、大晦日には近場の高井戸天然温泉(井の頭線高井戸駅にある美しの湯)でのんびり、酒を飲みながらサスケと格闘技観てました。紅白はもういいでしょう?なぜって?おいらに響く唄がないってことかな...元日は大宮八幡宮にご挨拶、2日は近くに住む妹夫婦の家でご馳走になりました。3日は「アリー/スター誕生」鑑賞。レディ・ガガの存在感に圧倒されました。話はよくある話でどうってことないのだが、ガガの魂込めた歌と演技に唯々スクリーンに釘付け状態。おいらこの映画観て確信しました。現在の世界の歌手のナンバーワンであることを...表現者としてではなく一人の人間として社会に対峙している姿、そして行動、その哲学・美学が彼女の身体を通して感じられる凄さは半端じゃありません。全てが過酷な状況の中で、彼女が手にしたものと思えます...やはり表現は生き方そのものです。新年早々、ガガの凄さに魅せられ、改めて気を引き締めて芝居創らんといかんなと思った次第でございます。

 

今年も何卒よろしくお願いいたします。

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元旦の夕暮れ

2018/12/27
【第1173回】

今日でトム・プロジェクトも仕事納めです...今年も怒涛のような一年でした。芝居に関わったすべての方々に感謝です。このハイテクに時代に、ローテクな芝居をこつこつと創り上げ観客に届けることの意義を改めて考えさせてくれる年でもありました。少数精鋭のトムの社員が何とか頑張れたのも、楽しみに待ってる全国の観客の顔が日々立ち顕れたからこそだと思っています。芝居から人の体温、匂いが感じられなくなったらアウトです。この感覚こそが、芝居がこの社会で果たす使命であり生き残っていく根幹だと肝に銘じています。

今年も大切な友を何人か見送りました...さぞかし無念であったろうと思う反面、己の責務を果たし旅立ったのかも知れません。人の命なんて所詮限られたものだし、あれこれと詮索しても仕方がありませんね。おいらも含めてこうやって生きてる者が、少しでも社会が弱者にとっても生きやすい世の中、自然環境に優しく出来る思いなどなど負の遺産を増やさないことに邁進せねばと思う次第でございます。いつものように今年も残り僅かになりましたが、こうやって何事もなく無事に終えていく何気ない日常に改めて感謝です。

おいらのコラムも年明けの4日までお休みです。皆さんも2019年が素敵な年でありますように!

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12月27日の空

2018/12/25
【第1172回】

いやいやお寒うなりました...先週の金曜から「芸人と兵隊」の稽古が始まりました。芸人と兵隊なにやら意味深なタイトルですな。ここは観てからの楽しみです...笑いを追求してきた柴田理恵さんと、ミュージカルから現代劇までなんでもござれのベテラン村井國夫さん、そして小劇場で活躍している3人の若手俳優が乱入し予想外の展開になるんじゃないかしらと思っとります。芝居は稽古を重ねるごとに変化してきますし、台本も削除、追加などの書き直しもございます。同じことはありませんことよ...日々新鮮、日々発見を経て進化していきます。これもすべて貴重な時間とお金をかけて来ていただくお客様に最高のプレーを観て頂くための産みの苦しみでございますよ。昨日も今年亡くなった劇団四季の浅利慶太さんの特集をTVでやってました。おいらとは方向性は違ってはいますが、お客に喜んでいただける芝居創り、俳優が芝居で食べていけるシステムの確立などなど確かに演劇のイメージを変えた人であることは間違いありませんね。先人が成しえなかったことに挑戦する人はどんな人であろうと敬意を表しますな...生ある限り、驕ることなく精進したいもんですな。

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今日はクリスマス

2018/12/20
【第1171回】

昨日、東日本大震災を題材にした「萩咲く頃に」の本読みをしました...来年の1月~2月にかけて東北の演劇鑑賞会で公演します。その前に東京で2ステージ。来年で東日本大震災が発生して8年、未だ避難生活を強いられてる人たちが7万5千人。様々な補償も2020年に打ち切りが検討されている。国が力を入れてるのがオリンピック、そのための工事の人員、工具などなどが東京に奪われ復興も遅れているらしい...なんと弱者に冷たい国なんだろう!辺野古然り、数のチカラでなんでんかんでん国会の論議無しで決めてしまう政治ってなんなんだろう?世論はどことなく見て見ぬ振り、メディアも政治の話はスポンサーの圧力でどことなく及び腰になり、どうでもいいことをだらだらと垂れ流してる。それをちんたら観させられてる能天気な人たち。おいらホンマにこの国の未来悲観してまっせ。どうにもならんです!アクションを起こしてるのは老人部隊、新宿駅で寒風に晒されながら悪法反対のゼッケンを身に付け抗議しとります。孫の時代が暗黒の世にならないように体張ってやっとります。

今回の4度目の公演になる「萩咲く頃に」が、東北の人たちに優しく届くことを願って稽古に入ります。悲観はしているが諦めてはいけませんね...どんな戦略、戦術であろうが弱者を労る社会でなければと思います。街に流れるジングルベルがどんな人にも楽しく温かく聞こえる国であればいいな...

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街はクリスマス一色

2018/12/17
【第1170回】

先週土曜日、毎年恒例のトム☆トム倶楽部会員さんとの交流会を開催しました...今年は2018忘年会。多くの会員さんと所属俳優そしてトムの社員と3時間楽しい時間を過ごすことが出来ました。今年も6本の作品を事故もなく、全国各地で上演することが出来ました。これは奇跡に近いことでございます。地方に行けば朝舞台を仕込み、終演後にはバラシを終え次の公演地に向かう。舞台の設営は危険を伴う仕事であり、役者にしても健康を損なえば公演中止に繋がることになりかねない状況のなか何事もなく全ステージを完遂、ほんまに芝居の神さんに守られてますな...今年も残すところ約2週間やれやれと、ホッと一息ついているところでございます。

それにしてもトムの芝居を毎回欠かさず観劇してくれる会員さんには唯々感謝です。娯楽情報氾濫のなか、これは大正解でございますよ。だって、おいらも仕事柄舞台はよく行きますけど、トムの芝居は品質良好、価格破壊などなど損してお客を帰しませんことよ。土曜日の会員さんの意見もほとんど異議なし!中には、入場料を上げてもいいんじゃないか?とプロの税理士さんに強く意見された次第でございます。消費税にも屈することなく、未だにこの業界の中では良心のトムで通ってます。5000円以上の入場料は忍びない...来年10月には消費税がアップ、さてどうなることやらどころか、トム・プロジェクト2019年は8本もの公演が待ち受けてます...なんでそうなるの?観たいお客様が居る限り、どこまでも続きますがな。皆さん期待して待っておくんなせい!

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師走の空

2018/12/12
【第1169回】

劇団桟敷童子公演「その恋、覚え無し」を観劇...作・演出の東憲司さんの少年時代に過ごした福岡の神隠しの話だ。チラシのコピーにこんなことが書かれていた。

朦朧とした意識の中でわらべうたが聞こえてきた。

幼い頃に遊んだあの子を想い出す。

名前も知らない女の子だ。顔も思い出せない。

死ぬ間際にその子の顔を思い出そうと苦笑する。

 

曇天の向こうに、彼岸花が揺れている。

そして遠くに赤く燃える紅葉の群れ...。

凍てついた身体がぎくしゃくと動き出す。

あそこに行けば、あの子の顔が思い出せそうな気がした。

あの子の名前が思い出せそうな気がした。

 

いや、もしかしたらあの子は、

年をとらずそのままで、

あの紅葉の中で笑っているかもしれない。

きっと全裸で眩しくて、

秘めたる輝きに満ち...。

 

東君はいつも少年の面影を残しつつ、見事な劇空間を創り出してくれる才気溢れた演劇人だ。おいらは大好きだ...だからこそ何本もの作品を依頼してきた。一本の作品を世に出すために命を削りながら机に向かっている。この劇団の演劇に向かう姿も謙虚で大好きだ。

この日の芝居の最後に魅せてくれる見事な紅葉の一群...いつの日か、東君が大劇場で思い描く東ワールドを観たいものだ。

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そろそろ魅せじまい...

2018/12/10
【第1168回】

先週の金曜日、渋谷のライブハウスサラヴァ東京で、きゃんひとみさんの「琉球歌人三姉妹2018」に行って来ました。きゃんさんは沖縄出身のラジオパーソナリティ・フリーアナウンサー、歌手、女優と、幾つもの顔を持つ素敵な女性です。この日も沖縄の歌を聴かせてもらいましたが、あの三線の音色に乗って歌い語られる唄には痺れますな...こればかりは日本のどの地方にもない独自の文化、伝統に根付いたものです。沖縄の青い空と海が蘇ってきます。なのに、今日も沖縄の民意を無視して辺野古埋め立てを実行している権力者の横暴には無茶苦茶に腹立ちますがな。きゃんさんの願いを込めた歌声は、戦中戦後、日本の盾になりながら苦難を強いられた沖縄の人達の叫びにも聞こえました...でもさ、きゃんさんの明るさが会場の重苦しさを解き放ち楽しい会に盛り上げてくれました。それはきゃんさんの話芸のチカラ。さすが長年パーソナリティをやっている経験値によるものと人柄ですね。この日三線を演奏したオキリサさんも良かったさ~来年、三線の良さを広めるために英国に留学するとか。24歳の期待の琉球歌人とみましたよ...ピアノの平家章子さん、ドラムの坂本清高さんとのバランスもとても良く三時間近くの素敵な沖縄の宴を満喫させて頂きました。特別に沖縄料理が出されたのも粋な計らいでしたな。おいらが大好きな豆腐ようも早速注文、ほんの少しの量を舌の上にのせて、ゆっくりと味わいながらノドチンコを通過するあの快感は、いっぺーまーさん!

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紅葉と冬空

2018/12/07
【第1167回】

人生は祝祭である...この言葉はおいらが日々大切にしているフレーズだ。その祭りは型にはまったものではなく、むしろ型から外れたところに意義があるような気がする。音に合わせるよりも音から外れたところに音自体が活かされるような...おいらが大好きなjazzなんかがいい例だ。本筋からどんどん外れ、新しい世界が展開されこれまでに聞いたことのない表現が誕生する瞬間でもある。型にはまった窮屈な儀式から外れ、己の無謀な思考、肉体、精神で己のレールを造り、果てしない人生を切り開いて行くことこそがお祭りだ。そうなんです、人生は楽しい筈なんです。外れることを恐れたら祭りはやってきません。祭りのない人生なんてなんと無味乾燥な生き様でしょう...あの賑やかしい音も響くことなく、細胞は何の刺激を感ずることなく荒廃の道を辿るのみ、命を授かることは己にいろんな音を発する楽器を与えられたみたいなもんです。その楽器を打ち鳴らすことなく終える人生なんて、タワーレコードのキャッチコピーじゃないけれど"NO MUSIC,NO LIFE."でござんすよ。

そんなコピーに踊らされ、数多くのCDを買わされたのも事実でござりまする。なんでんかんでん楽しいお祭りの日々であれば、愛でたし!目出度し!ですたい。

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お空もお祭りだ!

2018/12/05
【第1166回】

昨日は、今年の春上演した「Sing a Song」の役者さんたちと、渋谷のスペインレストラン「ラ・プラーヤ」(スペイン語で浜辺、海岸)で食事会をしました。この店のオーナーの徹さんとは35年前スペインで知り合いました。おいらが住んでたアンダルシア地方のサロブレーニャという小さな村に旅人徹さんが現れました。観光地ではないこの村には日本人なんかは来るはずがありませんが、来たんですから、おいらと同じ変人奇人だったのかもしれませんな。この村を大変気に入り、住みたいというのでアパートと仕事場紹介しました。岬に立つレストランでスペイン料理の腕を磨き、もちろん恋の味付けもなかなかのものでして...充実したスペイン生活を満喫したのち、東京に戻り新宿三丁目にスペインレストランをオープンしました。個性が強い彼のスペイン料理は、違いが判るお客のハートをたちまち鷲掴みにし、いま在る渋谷に移転して25年目を迎えるそうです。レトロな雰囲気の中、様々な書物を散りばめ隠れ家的なレストランに、これまた個性あふれる人たちが集まるそうです。天井が高いのが何よりも居心地を良くしてくれます。自作のオーディオを駆使しながらの音もなかなかよござんす。おいらも久しぶりだったので、徹ちゃんと懐かしいスペイン話で盛り上がりました。美味なるワインと生ハム、オムレツ、カジョス、パエリアなどなど、今宵も素敵な一夜でございました。

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パエリア鍋底のコゲがうまか!

2018/12/03
【第1165回】

枯れ葉よ♪はらはらとひらひらと舞い落ちる枯れ葉のなかに一輪、鮮やかに自己主張しています。その横には大きな木がすくすくと成長している。大きな木を一本成長させるためには、少し小ぶりな木をまわりに植えなくちゃならないそうだ。人間社会と同じなんですな。勝手に大きくなるなんてことは有り得ない。周りのチカラを借りながら影響を受けながら一人前になるんですね。だのに、ニンゲンに限って俺のチカラで私の才能で、なんて勘違いして天狗になっちゃう愚か者が現れます。そしてキラキラとしたものを身に付けて自慢げに見せつける。そんな時には視線をずらし、自然の佇まいを凝視すれば邪悪なことから逃れられるってもんでござんすよ...今日も、電車の中で大きな荷物を抱えたでっぷり中年男がおいらの横に座り、いきなり新聞を拡げ遠慮会釈なしで腕をおいらの腕に乗せてきた。しばくぞ!おんどれ何してけつかる...と、おいらのボルテージ一気に上昇しつつあったのだが、ふと窓外に映る見事な紅葉が、おいらの高揚した感情をほどよく諫めてくれやした。そうなんです、こうやっておいらは何度も下品な感情から品格ある姿に戻してくれたんですね自然界の有り様で...不思議なもんでござんすよ。おいらの気持ちが穏やかになった途端に、隣の男おいらの心をまるで読んだかのように、腕を引っ込め身体も縮ませたのでございます。参りました!おいら試されたんですな...日常にはいろんな罠が仕掛けられてます。それが生きる、活かされてるってことですかね皆の衆。

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枯葉の中に花一輪

2018/11/30
【第1164回】

このところ紅葉の見事な色つけに魅せられている...「うらを見せおもてを見せてちるもみじ」江戸時代後期の僧侶、良寛の辞世の句だ。死ぬときに人生なんてストリッパーみたいな心境になるんですかね。生きてる間はニンゲン表と裏を上手に使い分けながら行かざるを得ないのだが、逝くときは裏も表もありゃしない...なるほどおいらも、今日の紅葉のひらひらと散る様を眺めながら、拘りを捨て慾を捨て残りの生を全うしなきゃと思うんだが、果たして出来ますことやら...ほんまに朽ち果てるまで同じ場所に立ち尽くし、風雨に晒されながらも、こんなに美しい姿を魅せてくれる樹木達。ニンゲンなんか太刀打ちできませんがな。舞い落ちる落ち葉が土壌を形成し、あらたなる作品を創り続ける自然の営みにあらためて感謝。所詮、人が創りあげるものなんて自然界が織りなす世界に敵わないとは思ってますが、自然への敬意を込めながら創ることによって、なんとか共生出来るんじゃないかしらと思う次第でございます。

ついでに良寛の「散る桜、残る桜も、散る桜」この句も見事...生きてると自然界はいろんなものを見せてくれる。ただぼーっと生きてたんじゃいけませんことよ。良寛まではいかなくとも少しは感性を研ぎ澄まし、眼ん玉ひん剥いてよく見、耳の穴かっぽじってよく聞けば、ちーとばかりいい句が浮かぶかも知れませんよ。よっしゃ!おいらもやってみよう...

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美の競演

2018/11/28
【第1163回】

先週の金曜日、勤労感謝の祝日に、劇団チョコレートケーキの主宰者である日澤雄介さんの結婚式ということで築地治作に行ってまいりました...昭和6年創業ですから87年、老舗に相応しく隅田川沿いに建つ日本家屋は実に風情があるものでございます。おいら結婚式やったことがないので式に行くたびに、こんなおいらに連れ添った方に申し訳ない思いで、いつも後ろめたいものがありますな。古今東西、芝居をやってる輩は河原乞食と蔑まれ結婚する相手の両親が苦虫を潰した顔をされたものです。芝居=貧乏この方程式は残念ながら今なお引き継がれているみたい...そう思われたらここは開き直ってアウトローで行こうじゃないか!犯罪そして人様に迷惑かけなきゃ何やっても構いませんことよ...嫌なことシコシコやりながら死んじゃうよりも好きなこと悔いなくやりまくってあの世に行った方がよござんしょ。というわけで、今回も芝居をやってた今日子さんとのめでたい席。日澤君は今や劇団の主宰者、演出家として演劇界で数々の賞も受賞している時の人。再来年にはイギリス演劇界からも招聘を依頼され、今後の日本現代演劇の若きリーダー。しかし、男はどんな状況であろうとも、常に将来の不安と日々の葛藤の中で生きてるしがない動物です。ましてや芝居稼業、こんな時にささえてくれるのが愛しき女房でございます。晴れて夫婦になった今日子さん、おいらと同郷福岡、愛情深く気っ風の良い九州おなご。日澤君いい人を伴侶しましたな...勝負はこれからです。いいことばかりではありません、躓きそうになったら、相手に感謝の気持ちを抱きすれば、たちまちピンチはチャンスへと変わること間違いなし!

いつまでもお幸せに...

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天然のアートⅡ

2018/11/26
【第1162回】

先週の週末もスケジュールびっしりバタバタしておりました...木曜日は劇団東演「屋根裏の仏さま」観劇。創立60年、老舗の新劇劇団です。女優11人、さすがに歴史ある劇団だけに年齢層も様々、いろんな形で観せてくれました。今から100年前、たった1枚の写真を頼りに新天地を求め、何週間も船酔いにあいながらアメリカにたどり着いた写真花嫁を劇化した作品。いやいや、大変な時代を生き抜いただけで充分ドラマチックでございます。こんな体たらくな時代を考えると、生き切ることを身をもって体験したんでしょうね。状況が過酷になればなるほど人は強くなれるんです...でも、この安穏とした支柱のないこの国の人達は心の疲弊で別な意味で大変な思いをしてますね。そうなると、時代、環境はあてにせず己の内なる宇宙を探索しながらの自分探しが一番全うな生き方なのかも知れませんな。

土曜日は「バルバラ セーヌの黒いバラ」を鑑賞。伝説的なシャンソン歌手バルバラを描いた作品なんだが、ちょいと凝りすぎてませんかな?という印象。実在の人物を描くにもいろんな工夫が必要だと思うのだが、どこにフォーカスを置いてるのか今一つはっきりしませんな。しかし、東急文化村の映画館、今回もそうなんだが文化の匂いを前面に出して芸術やってます感が強すぎてちょいと引きますな。アートの押し付けは得てして外してしまいます。この日も土曜日のいい時間なのにガラガラ、東急資本のチカラで屁でもないんでしょうが、やはりお客さんは正直だってこと理解しないと痛い目に遭いまっせ...

ようやく、紅葉も空の色とマッチできるようになりました。所詮、自然が織りなすものには敵いませんことよ。

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天然のアート

2018/11/22
【第1161回】

横浜みなとみらいに「男の純情」観に行ってきました...今回も神奈川県民共済の主催で呼んでいただきました。このホールの責任者Sさんは、嘗て歴史ある新劇劇団で演出部に在籍した方で芝居を観る目は確かなものがあります。時には厳しい意見も遠慮なく言ってくれるので頼もしく思ってます。この方が、何故かいつもトムの芝居を呼んでくれるのでおいらとしては嬉しい限りです。この気持ちに応えるべく今回の「男の純情」お客様の心の琴線を大いにくすぐったんではないかと思っています。満員のお客様、笑いの渦に飲み込まれ溺れちゃうんじゃないかしらと心配しちゃいました。まさしく笑いは健康の源でございます。笑う門には福来るという言葉がありますね。この国の人、なんだか遠慮してるのか笑いを押し殺した笑いが美徳なんて考えてる人が居るらしいが、おもろいときは思いっきり大笑いした方がええがな...身体の毒素は出るし顔の筋肉体操にはなるし、観劇後のお酒も一段と美味しいに違いない...ということで、終演後、こちらもお世話になっている横浜演劇鑑賞協会の方々と、みなとみらいの美しい夜景をバックに楽しい一夜を過ごすことが出来ました。さすがに芝居好きな人に悪い人はいませんな...窓の向こうの観覧車を眺めながら、人生もぐるぐる廻る観覧車みたいなもんやと思った次第でございます。

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みなとみらい

2018/11/19
【第1160回】

横浜KAAT横浜芸術劇場に「セールスマンの死」を観劇...風間杜夫がアーサーミラーの名作に挑戦。いやいや原作完全ノーカットということで休憩入れて3時間20分の芝居でした。アメリカンドリームのなれの果ての一人の男の話。無駄に自信満々に夢を見続け、大事な言葉を受け止めようともせず、現実を直視するのを避け家族ともうまくいかない男の狂喜寸前の極限状態を杜夫ちゃんが演じてました。彼の一人芝居「カラオケマン」に相通じるものもあるのだが、アーサーミラーの世界はアメリカの戦後すぐに書かれた戯曲なのでより深刻さが際立つ。「カラオケマン」は人情喜劇を書かせればこの人、水谷龍二さんの作だけに笑いたっぷりの作品なのだが、今回は重い空気が一貫している。

終演後、劇場の近くで一杯。ほとんど出ずっぱりの芝居だったはずの杜夫ちゃん開口一番「いや、もう一回やれまっせ!」何ちゅうこと言うのかいなこの人...誰でもそうなんだが、好きなことやってると身体も心も疲れ知らずでいられるんですな...そうですな、おいらも好きなことして活きまっせ!と言っても、一本の芝居創るのにも、あれやこれやと大変ですし人間関係もいろいろと難しいものがありまして、この大海の渦の中で悪戦苦闘する「プロデュサーの死」なんて芝居もありかもね...いやいや、おいらは芝居で死ぬなんて嫌ですがな。人生なにごともケセラセラ♪

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休日

2018/11/14
【第1159回】

劇団チョコレートケーキ第30回公演「遺産」を観劇...第二次世界大戦のさなか、中国の満洲に傀儡国家満州国を建国し、1940年から1945年の間、細菌兵器を作るために中国人を実験台として残虐行為を行った悪名高き731部隊の話である。国という集団と、その中にいる個人の葛藤劇ではあるが、今なお世界で頻発に起きている出来事と相通じるものがあり極めて現代的なテーマである。現代と過去を交互に見せながら、個人の尊厳に加えて、医学者の倫理と言う国を越えた普遍的なテーマを見事な構成で綴ってくれる。舞台上ガラスで作られた試験管を散りばめ、まさしく一触即発状態での役者の演技はスリリングであった。終演後、演出家に聞いたのだが、ガラスが割れた時点でいったん公演は中止するとのことだった。こうやって役者に対して緊張感を強いるのも演出家の狙いだったのかもしれない。それにしても、この劇団、歴史上とても触れない題材を敢えて選び果敢に挑戦していく姿勢に拍手を送りたい。これこそが現代演劇である。多くの賞を受賞した大正天皇を題材にした「治天ノ君」ナチス政権時代を扱った「熱狂」「あの記憶の記録」どれもが現代演劇のトップランナーとしてのポジションンを維持し続けている。

今年の紅葉、なんだかぱっとしない感じだな...色褪せた感じ、これも地球がやせ細った所為なのかな。今日もニュースで流れてました。北京ではマスク無しでは外出できない危険な状態。いくら経済大国になったとしても、これは頂けません。人間ほんとにアホですな...

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カマちゃんも生きてます

2018/11/12
【第1158回】

先週の土曜日、トム・プロジェクトがお世話になっているアルファ税務会計20周年感謝祭に行って来ました...150人ほど集まった会場は熱気に包まれていました。おいらもアルファ税務会計さんには随分とお世話になっています。会社を経営してる人達にとって憂鬱なのは税務調査。細々とやってる中小企業に厳しくしないでちょうだいな!悪の権化の企業たくさんあるんだから、そちらにチカラをいれてちょうだいな!と言いたい。24年ほどで3回入りました。税務調査官は、何を根拠にしているのか嬉々としてやってきます。なにかしら確信があるんでしょうな...おいらのところは不正なんかしてないのに、そりゃ少々のミスはありますがな。その鬼のような税務官に敢然と立ち向かってくれるのが正義の味方アルファ税務会計の皆さんです。あれを出せ、これを見せろなんて高飛車に出てくる税務官にピシャリ苦言を呈します。その表情は、まさしく今年の流行語大賞候補の「ボーっと生きてんじゃねえよ!」のチコちゃんに迫るものがありました。いやいや頼もしい限りです。

何故なのか?おいらが乾杯の挨拶をし、2時間半、楽しいアトラクションも含めて大盛会でございました。世の中本当に厳しい情勢であることに変わりはありません...皆、一様に来年10月からの消費税アップの話で持ちきりでした。すんなり社会保障費に使われるのなら理解できるのだが、これまでの政治家が行ったことを考えると、どうしても納得できないものが多々あるんでございますな。議員の縮小もやらず、不正しっぱなしの政権に誰もが不信感を抱くのは至極当然のことでありんすよ。

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日本のいい塩梅と出会う

2018/11/09
【第1157回】

今日の東京は雨がしとしと降っています...アメリカの中間選挙、アメリカは分断の道を突き進んでいます。世界はポピュリズムが蔓延しつつあります。自国主義第一、これは嘗ての世界が苦い体験をした世界第一次、第二次大戦の再来を予感させるくらいの負のイメージを抱いてしまいます。人は何故歴史に学べないのか、我欲をコントロールできないのか、愚かとしか言えません。連日報道されるアメリカを目指す移民キャラバン、貧しさと暴力から逃れる人たちの表情から希望は見えません。アフリカからヨーロッパに移動する難民も然り、こうやって豊かさと貧しさを日々見せられることによって人は何を考え、行動するのか、何故かほとんどの人が無力感に駆られているのではなかろうか...おいらの人生は残り少ないのだが、死後の世界も何度も何度もこの繰り返しをしながら地球という星は死滅してしまうんではなかろうかという悲観的な観測...ホンマにもったいないことでございます。こんな素敵な星は宇宙のなかで皆無でございます。多様な命が様々な形で共存し助け合いながら生きる星、これにストップをかけてるのがなんと人間、しかも同種の人間が殺し合う滑稽さを何千年行ってきています。

今日、久しぶりに新宿の街を散歩しました。新宿駅の通路を堂々と、しかも誇らしげに自慢のおっぱいを、これみよがしに見せつけるゲイの姿を見ながら、ここ日本国新宿解放区はまだまだ大丈夫かなと思った次第です。

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にゃんこも生きてます

2018/11/07
【第1156回】

月曜日の行橋市での「男の純情」一時間半笑いが絶えない公演でした...今年の3月にも「Sing a Song」で訪れたばかりのコスメイト行橋。お客様が演劇を楽しみにしていることが良くわかります。こうやって良質な作品を持っていけば、確実に芝居好きな観客を増やすことができるのではなかろうか。終演後、地元福岡出身の山崎銀之丞さんが挨拶で話した「お客さんの温かい声援のおかげで背中を押され、最後まで無事務めることが出来ました」

そりゃそうでしょう、あれだけのお客の反応がドッカンドッカン来れば乗りやすい役者さん天まで上るでしょうな。まさしく芝居は生き物です。演者と観客のキャッチボールで場内は幸せな雰囲気に包まれめでたしめでたし。ホールを後にする40歳前後の女性に「いつも素敵な作品ありがとうございます」と声を掛けられ、おいらほんまに嬉しゅうございました。

この日で、今回の九州公演は終わりということで役者、作家と共に「魚やビストロ遊楽」で打ち上げ。この店の大将は魚大好きの料理人、旬の魚を地元漁師と提携してリーズナブルな価格で提供しお客さんに喜んで頂くことが生き甲斐という、お客にとっては神様みたいな経営者。この日は、プロの芝居屋とプロの料理人が相対しての素敵な打ち上げになりました。無事に芝居を務め上げた役者と作家が旨い!を連発しながらの食する顔は、舞台で見せる顔とは一味違う表情でございました。

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お疲れさまでした!

2018/11/05
【第1155回】

昨日は福岡県小郡市での「男の純情」公演に行ってきました。小さな町に500人の人達が来てくれました。ほんなごつありがたいことでございます...芝居創ってるおいらとしては、改めてよか芝居を持ってこんといかんですばいと思った次第でございます。つまらん芝居を観た人は二度と芝居を観ることがありません。時間とお金を奪われた人の悲しみは計り知れないものがあります。そして芝居が悪の権化として語り継がれると思うとぞっとします...昨日のお客さまの笑いと、劇場を後にしていく人たちの満足気な表情を見るにつけプロデューサー冥利に尽きます。

公演終了後、作家の水谷龍二さん、市川猿弥さんと一緒に博多の名店「さきと」でおいしいお酒と魚を食しました。ここはカウンターだけの店でありながら予約なしでは入ることができません。その日の選りすぐった魚と、銘酒が一日に疲れを癒してくれます。博多はどこに行っても美味しいものを安く頂けるというものの、やはりより吟味されたものを出してくれる店が名店と言われる所以です。高くておいしいのは当たり前、ほどほどのお金で鮮度抜群の魚を出してこそ心ある名店ではなかろうか...そして店主の凛とした立ち姿、これがあってこそ画竜点晴ってもんでございます。締めは、やはり中洲屋台のラーメン、夜風に吹かれて今日も一日無事過ごせたことに感謝!

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博多の夜

2018/11/02
【第1154回】

昨日、無事に「男の純情」東京公演千秋楽を迎えることが出来ました...キャスト、スタッフの皆さん事故もなく本当に感謝です。おいらも1ステージを除き日々楽しませて頂きました。jazz好きなおいらはjazzに見立てての観劇。今日はピアノトリオ、さしずめ山崎銀之丞はピアノ、市川猿弥はベース、宇梶剛士はもちろんドラムなんて想像しながら三人の丁々発止のやりとりの1時間半ライブを満喫。ある時は管楽器のトリオ、ある時は弦楽器という具合にjazzと演劇が融合しあう様においら自身新たな発見をした次第でございます。

それにしても、改めて芝居はアンサンブルの良さにかかってます。今回の出演者の三人とも稽古期間も含めて良くお酒を飲んだのだが、芝居は勿論、酒宴の席でも三人の掛け合いが芝居同様面白く、別物の芝居を観ているようでありました。特に宇梶さん、猿弥さんのやりとりは漫才レベルの面白さ。つっこみの宇梶さんに、ぼけの猿弥さん、このコンビの漫才いけまっせ!こうやって無駄な酒は飲んでませんことよ。稽古以外の時間にも次なる戦略を錬ることを怠らないのがプロの役者でございます。

昨日は、新宿花園神社の一の酉の日でもありました。商売繁盛を祈っての熊手を求め沢山の人が集まり賑やかな日々の始まりです。おいらは随分昔から顔を出してるのですが、最近、熊手の売り手の人達の顔が優しくなったのが物足りないですかね?昔は小指を落とした強面の兄さん、オッさんがゴロゴロ居てまして、修羅場を潜った人達から買ってこそ御利益がありそうな気がしてたんですが...こんな見方って変でございましょうかね。

さて、「男の純情」11月4日から旅公演です。こんなご時世ですから、ここは劇場に足を運んで思いっきり笑い転げて明日の糧にしてくださいな皆の衆。

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笑売繁盛

2018/10/29
【第1153回】

先週土曜日、中部・北陸ブロック演劇鑑賞会第28回総会出席のため三重県津市に行って来ました。演劇が大好きだけではなく、人との繋がりを大切により良い社会を目指すことを主旨とする会です。おいらも久しぶりに参加させて頂きました。演劇は観客が居なければ成立しません。1年に6本の作品を観ている演劇通の人達なので、こちらもよりクオリティの高い作品を持って行かないと二度と呼んでもらえない緊張感があります。午後2時~6時まで真剣な討論が続いたあとの交流会。おいらのテーブルには富山、金沢、いなざわ、豊橋、岡崎、尾北、津の事務局の方々と一緒に話をすることが出来ました。会員を維持し増やしていくことがいかに大変かということをじっくりと聞くことが出来ました。ここで又、身が引き締まる思い...二次会は劇団1980の代表であり俳優である柴田氏と談笑。同じ福岡の出身でなにかと話が合うので、ついついお酒飲みすぎたかなと思ったのだが、柴田氏はおいら以上に呑んどりました、戸畑の出身で川筋気質、言いたいことはズバリと言うので人気もんじゃないかしら...この日は全国の各ブロックの総会が重なりトム・プロジェクトのスタッフも各地を飛び回っていました。東京では「男の純情」の本番中、いやいや多忙なことはいいことです。暇でどこからも呼ばれず、芝居もしてないんじゃ、とっくにトムも吐無になってますからね...改めて、気合い入れ直してよか芝居創らんといかんですばい!

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津のホテルからの眺め

2018/10/26
【第1152回】

昨日、「男の純情」無事初日を迎えることが出来ました...冒頭からラストまで笑いが絶えない舞台に仕上がりました。こんな舞台もなかなか珍しいんじゃないかしら?とにかく本が良くできてます。アメリカ、フランスにはこんな喜劇がたくさんあるんですが、こちら島国、湿度が高い日本ではなかなか生れにくい。勤勉、義理人情、とかくべたついた心情がお好きな国に育つと遊び心が無くなってくるのかしら...抱腹絶倒劇でありながら男の哀感がじんわりと滲み出てくるんですから堪りませんな。演劇も多種多様、こんなシチュエーションコメディーを書ける作家はほんまに希少価値です。長年、一緒にやってきた水谷龍二さんにはまだまだ頑張ってもらいたいですね。来年も風間杜夫ひとり芝居の新作を依頼してるんですが、やはり魅力ある役者をイメージするといい本が書けるそうです。

今回も三人三様の魅力ある役者が揃ったこその出来です。まるで当て書きしたかのような設定。芝居を観ながら、そうそうこんな人周りにいるなんて想像を膨らませながら観れるところも楽しみの一つ。笑いってあらためて難しいもんだと思います...ギャグで笑いを取るのではなく、人間の関係性、内面から零れ落ちる笑いこそ観客の心を鷲掴みするんじゃないのかな。おいらがやってるのは演劇ですからね...劇場を出て、男っていくつになっても可愛いね!なんて思ってくれると嬉しいな...なんて感じた初日でした。

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秋の空

2018/10/24
【第1151回】

先日、練馬にあるブレヒトの芝居小屋に行ってきました...ここは1977年に東京練馬区・武蔵関の辺境に on the corner をこころざして劇場を建設し、演出家・広渡常敏を中心とした約70名の劇団員が、常にアクチュアルな演劇を求めつづけた東京演劇アンサンブルの拠点であったが、来年の春には諸事情で閉めるという。芝居創りには拠点なるものがどうしても必要になってくる。じっくりと想を練り、何日もかけて形にしていく作業場に相応しい場を持ちえることは理想だ。しかし、東京の地で維持していくには相当の負担になるので、おのずから辺境の地に構えざるを得ない。でも、共に汗をかき良質なる作品を完成させるためにも、このブレヒトの芝居小屋はベストなのかもしれない。

今回は、温泉ドラゴンの「THE DARK CITY」を観てきました。天井が高い自由な空間を作品に合わせて作り上げた舞台、客席がとても心地良い。芝居の内容とこの空間がなくなることも含めての想いを込めての作・演出のシライケイタの着眼点が素晴らしい。ここ数日報道されてるジャーナリストの怪死、解放など、現代に繋がるジャーナリズムの問いに十分答えうる作品に仕上がっていた。

終演後、今一度芝居小屋を見上げると、都心ではなく辺境の地に掲げられてる演目看板と秋の空が見事に調和していた。こころざしさえあれば芝居はどこだって出来るのだ...

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こころざし

2018/10/22
【第1150回】

今年のライオンズ終わりました...よくやりました辻監督。お金のない球団に、能なしフロントを相手に辻監督の人柄、センスが選手に浸透し、のびのびプレーで開幕から一度も首位を明け渡すことなくリーグ優勝に導きました。源田、山川、秋山、浅村など若い選手が躍動する姿に何度感動したことか。今年程、数多く所沢の球場に足を運んだことはありませんことよ。都心から遠いのによくまあ、あれほどの観客が集まるのかと不思議に思ったこともありましたが、魅力溢れるプレーを魅せてくれれば観に行きたくなるのは当然ですね。おいらが好きな秋山選手のファインプレーを観る度に、これがプロ、銭が取れる選手だと思いました。

反面、今年の投手陣はほんまに情けなかったですバイ・クライマックスでのホークースとの試合、5試合で失点44点なんて、そりゃ勝てませんがな。ペナントレースでも打力で勝てたようなもの...なかでも菊池、これじゃ大リーグに行っても通用しませんよ。メンタルが弱いし、あんな球じゃあきまへん。十亀もひどかったね、この人同じ過ちを何回も繰り返す子供みたいな人ですね。守りは野球の要、ここを補強しないと来年の日本一も無理ですな。残すところ、野球も日本シリーズのみ。ここは、地道に球団を経営し育ててきた広島カープに日本一になってもらいたいですね。いまだにドーム無しの青空球場、広島市民と共に歩んできた姿、どこかの金満球団と違い好感持てますがな...嘗ての西鉄ライオンズみたいです。

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おつかれさまライオンズ

2018/10/19
【第1149回】

「音無美紀子の歌声喫茶」行って来ました...2011年の東日本大震災の一日も早い復興を願い、復興支援活動として、また、人と人との触れ合いが減っていくこの時代、コミュニケーションの場を広げ、もっと日本を元気にしたいという願いを込めて、2011年12月に仲間と立ち上げた音無さん。それ以来100回以上開催、皆さん勿論ボランティア、収益金で被災地を訪問、なんと素敵な人達でしょう。しかも夫である村井國夫さん、長女の麻友美さん、長男の健太郎さん、家族みんなでやってることがいいですね。おいら、昔から歌声喫茶には抵抗感があったのだが、この日ばかりは気持ちよく歌わせて頂きました。これも会場の雰囲気がなせる業でしょうね。本当に温かい会でした...ゲストで来ていた尾藤イサオさん、中尾ミエさんも活き活き歌い語っていました。これも無償の行為だからこそ無心になれるのではないかと思いました。誰かが誰かを思い、アクションを起こす人達が居る限り地球はまだまだ大丈夫じゃないかしら。

次回は12月18日(火)昼開演13時30分、夜開演19時、料金3500円(1ドリンク付き)恵比寿駅西口より徒歩1分、アート・カフェ・フレンズにて。予約・問い合わせ070―5549―1094です。7周年&クリスマスという催しです。

おいらがこんな告知をするのは珍しいことでございます。一緒に舞台を創ってきた、村井國夫さん、音無美紀子さんご家族の息の長い活動に大いに共感したからです。生きていれば嫌なこともたくさんありますが、こんな会に接するとほんまにほっこりいたします。

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継続はチカラなり

2018/10/17
【第1148回】

会社の近くに、ちょいと風変わりなファッションをした若者が実に楽しそうに闊歩しております。そうなんです、すぐ近くにあの有名なデザイナー、コシノ姉妹、山本耀司、高田賢三を輩出した文化服装学院があるんです。いやいや、随分とお目目を楽しまさせてもらってますがな。こんな光景、日本広しといえども新宿JR南口から学校がある約1㎞の区間だけです。まさか、おいらはあんなスタイルは無理としても、ヒントにはなりますな。常に既成の概念を打ち破り新しいものを産み出そうとする精神と行動力に拍手を送りたいですな。

その学院でショーの準備をしてたので、ちょいと覗いてました。多くの若者が集まり、試行錯誤を繰り返している様を見ていてとっても刺激になりました。芝居も同じですね、現状に甘んじていては停滞してしまいますね。それにしても、日本人の体型も随分と変わってきました。手足は長いし、顔はちっちゃいし、西洋人に見劣りしなくなってきてますね。でも、ポッコリ小柄の日本人も可愛いですよ...何から何まで、西洋崇拝、コンプレックスなんて思考はやめにしましょう。日本、そして日本人の魅力はまだまだ捨てたもんじゃございませんことよ。

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前を向いて歩こう!

2018/10/15
【第1147回】

ふとした時間、何の予定もない空白のひととき...そんな不意をつかれた脳に暫しの刺激を与えるのも楽しいものだ。現代ブラジル作家、ジョアン・ギマランイス・ホーザ著「最初の物語」を読む。南米大陸からは、あの奇才ガルシアマルケスを輩出している。我々、東洋の人間にとって計り知れない人々、出来事が日々跋扈しているに違いない。おいらにとっても南米大陸はいまだ摩訶不思議な世界である。この本に出てくる登場人物も、ずば抜けた才能をもつ子供や青年、聖人、ならず者、吸血鬼などなど多種多様だ。なんだか日本昔話を聞かされてる文体も面白い。まるで地を這う人達が、地の底から掘り起こした蠢きを天に差し出してるようでもある。まさしく、文学は面白すぎまっせ!

そんな本を読んだ後の散歩時の空も、日毎、様々な顔を魅せてくれる。なんだか空に、こちらの気分を見透かされてるなと感じるときもある。空の色、雲の形、動き、一瞬で変わる空の表情にドラマを見ているようでもある。健康な頭脳、心身あってこそのひとときだ...そんなおいらを産んでくれた亡き両親に、こんな時間を持たせてくれる周囲の人達に感謝。

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ソラミタカ

2018/10/11
【第1146回】

昨今の若者の、ある志向を反映したお店が増えてますな...先日も、ぶらり散歩してたらおもろそうなお店があったので入ってみました。店の名前が「珈琲杖」素朴な看板がいいじゃありませんか。アパートの入り口を開けるとヤギみたいな髭をはやした兄さんが仏頂面で出てきまして「席は二階です...」急な階段を上がるとレトロな空間があり8席ある席に4人の先客が座っていました。うち一組のアベックは申し訳なさそうなか細い声で会話をしとりました。わざわざ、こんな窮屈なところに来なくてもとも思ったんですが、このヒソヒソ話がまたスペシャルな快感なのかも知れませんな...残りの二人の女性は、心地よく流れるjazzを聴きながらの読書。ここは、まさしく日常から逃れひとり静かに過ごす時空間なんですね。

先日にも紹介しました井の頭公園にある「トムネコゴ」と発想は一緒なんです。自分の拘りを徹底しお客を選んでるんですね。それは良しとしても、おいらが心配したのは、こんなやり方で商売なるのかしら?少ない客席に一杯¥520の珈琲、どう計算しても儲けまでは到達しないんじゃありませんがな...そうなんです!彼らは商売でやってるんじゃありません!彼らの生きる哲学から始めた店なんです。その哲学に共鳴した人達が来るだけで、生きてる実感を確かめたいんです。まあ、それだけ人とのコミュニケーションが難儀になったってことですかね...この時代、一体何を心の糧にしていいのか分からない心の難民が漂流してる気がします。その意味では、こんな主張の仕方での表現、おいらは歓迎しますのことよ。

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独立独行

2018/10/09
【第1145回】

連休も終え季節は秋に向かっています...渥美清さんの俳句を集めた「風天 渥美清のうた」読了。若い頃、寅さん映画は盆と正月と2本観てました。おいらも風天みたいな生き方してたんで、大いに共感し同志愛みたいなものを感じてました。多くの観客も、高度成長経済の真っただ中にいて、寅さん的な生き方に憧れを感じながら観てたんでしょうね。その寅さんが、こんなにたくさんの俳句を作ってたなんて正直びっくりしました。この俳句の中から見えてくるのは、映画に出てくる車寅次郎、俳優・渥美清、本名である田所康夫、そして俳号である風天。言葉の端々、情景、心情からこの四者が見え隠れする...あの厳しい芸能の世界で、あれほどの芸を披瀝しながら心中は自然界、人間界の細やかな形象に心していたんでしょうね。力なき小動物、弱者に対する眼差しは句にくっきりと刻まれています。

僕の好きな俳句は以下の句です。

 

だーれもいない虫籠のなかの胡瓜

ゆうべの台風どこに居たちょうちょ

好きだからつよくぶつけた雪合戦

赤とんぼじつとしたまま明日どうする

お遍路が一列に行く虹の中

ひぐらしは坊さんの生まれかわりか

貸ぶとん運ぶ踊り子悲しい

おふくろ見にきてるビリになりたくない白い靴

 

おいらも一句

風天の思いの丈は無常かな

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そろそろ色づき始めました

2018/10/04
【第1144回】

我が家の月下美人10年振りに咲きました...そりゃそうだ。水だけ与えて他は知らん顔、そうは簡単に咲きませんがな。この月下美人とは、サボテン科・クジャクサボテン属に分類される着生サボテンの1種です。自生地のジャングルでは、老樹の幹や朽ちた木、腐葉土の上などに根を張り育ちます。数日前から、蕾が現れいつなのか?今年も駄目なのか?とやきもきしたんですが、時間は8時、一瞬の間で開きました。この時間はまさしくドラマ、感動もんでございます。なんと言っても一晩限りのご開帳、なんともったいぶった植物でございましょう。しかも香りが良いときたもんで幸せな気分にさせてくれます。月下美人の花は、強い香りを放つことで知られています。「甘く気持ちのよい香り」「上品な香り」「優雅で心地良い香り」と表現される、ジャスミンに似たやわらかい香りで、香水のように鼻をさすような刺激がないことが特徴です。ここでjazzなんぞを聴きながらワインなんぞのシュチュエーションならば、我が家は天国でございます。

ベランダの前の木々も秋の気配を感じます...こうやって周りの自然と共に時の移ろいを堪能できる環境に感謝です。世界から樹木がなくなり、青い空が見えなくなったら...日々、目にする何気ない風景こそ人間にとってかけがえのないものですぞ。

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やっとだね...

2018/10/01
【第1143回】

いやいや、10年ぶりに我がライオンズが優勝しました。毎年毎年、寂しい思いをしたのでとっても嬉しいです。今年は所沢の球場にも良く通いました、終盤にホームランで逆転するたびに狂喜乱舞いたしました。周りのファンとともにおいらには珍しくハイタッチ、こんなことするおいらに驚くほどの喜びようでございました。この神がかった奇跡の逆転劇で手を叩きすぎ腫れちゃいました。なんだか昭和30年前後、西鉄ライオンズに夢中になったキヨシ少年が舞い戻った感じです。なんでこんなに、たかが野球に舞い上がってしまうんだろう...ライオンズが勝利したからって何か得があるのかしら?そうなんです、少年は損得で生きてるんじゃございません。憧れのチーム、選手が活躍するだけでウキウキしちゃうんです。大人になると、このウキウキ感が減少し夢を見なくなっちゃうんですね。野球少年だったおいらは大人になっても、ライオンズを忘れることなく心の宝物としていつもピカピカと磨き続けました。ライオンズと共に生きてきたといっても過言ではないでしょう...こんなものを持ち続けた幸せを痛感いたします。

今年の優勝は辻監督の功績が大です。西武ライオンズ時代に名二塁手であり地味な選手であったのだが、このチームを率いて2年、個性あふれる選手を見事に使いこなす頭脳、人柄があったからこそだと思ってます。監督が目立つチームはいずれ駄目になります...いまはそんな時代ではありません。多種多様な選手をいかに活かすか!それがピタリとあたりました。暫くは辻監督で行きましょう...と、おいらが思ってもフロント次第、あまりお金がない親会社西武だから、あまり期待はしておりませんが、選手がのびのびと楽しくやってる限りファンは応援しますから大丈夫でございます。出来るなら日本一になってくださいね!フレフレライオンズ!

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やった!ライオンズ

2018/09/28
【第1142回】

「男の純情」の稽古が始まりました...稽古初日顔合わせの後、早速初めての本読みをしました。おいら最初から最後まで笑いの連続でした。水谷龍二さんが書いたこの台本はシュチュエーションコメディの傑作のひとつだと思ってます。最初に上演したのが、2002年「乙女の祈り」出演者は、片桐はいり、光浦靖子、山田花子。この組み合わせ観ただけでおもろいなと思いますでしょう。いやはや、抱腹絶倒劇で皆さんお腹抱えて観てましたな。次は2014年「淑女のロマンス」前田美波里、柴田理恵、キムラ緑子という人気、実力とも申し分のない熟女が素敵な芝居を創ってくれました。勿論、笑い満載でありながら熟女の魅力を客席に十分に伝えてました...そして今回、出自の異なる異色キャストが勢揃いしました。シュチュエーションコメディの成否は、やはり出演者の微妙な掛け合いにかかってますね。お互いの腹の探り合いの様が、観客の想像力を掻き立て、その波動が役者に伝わりより演技に拍車がかかるって訳ですね。舞台と観客が織りなす場内のうねりの様をびんびん感じることが出来ればプロデューサー冥利に尽きますがな。

稽古初日という言うことで、稽古場の近くにある韓国料理「ハンラサン」で一杯やりました。

オモニの手作り料理がとっても美味しいお店です。マッコリ飲みながらの談笑が、これまた芝居を観てるようでした...役者という生き物、どんなシュチュエーションであろうとも駆け引きが始まってるんですね。今から本番が楽しみな芝居です。

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昨晩の月

2018/09/26
【第1141回】

長年の友人から、共通の友人が亡くなった知らせが入りました...毎月のように送られてくる散歩中に撮影したであろう鳥の写真付き葉書。ここ三ヶ月ばかり来ないので、どうしたんだろうと思ってました。誰にも知らせず彼岸の世界に旅立ったのもあいつらしいな...頑固な奴でした。青春の真っ盛り、いろんなとこを旅しました。降り積もる雪の中を転げまわったり、山中の露天風呂で酒を酌み交わしたり、そのうち大口論になりお互いに罵倒したりと、お互いにストレートな気持ちを素直にぶつけ合える友でした。どちらかというと体育会系の奴だったんだけど、おいらと付き合うようになると映画、写真などにのめりこむ様になり、映画館から出てくる様は、まるで高倉健のようでもありました。出版系の会社にいたこともあり、おいらが出した2冊の本にはいろいろとアドバイスしてくれました。

今年になって二人の友の死...おいらもあと何年だろうか?なんて、ふと思わざるをえません。人はいずれ死に至る、とりあえず肉体という借りものを借りているだけと思いつつも現生との別れとなると万感胸迫るものがあるのだろうか、それとも意外と淡々としたものであろうか...終活の準備なんて記事をよく目にするが、この年になればそろそろそんなことも考えねばとも思いますが...でも、おいらはとことん人生最後まで楽しみまっせ!楽しみ方も少しずつ変化はしてますが、生きて活かされている以上、人生は祝祭でござんす。

先に逝った奴の分も含めて、まだまだ楽しく、おもろく、可笑しく、人生しますがな。

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黄昏時の井の頭公園

2018/09/20
【第1140回】

「にっぽん男女騒乱記」18日横浜で千秋楽を無事終えました。最後のステージも役者さん気合十分で見ごたえありました。消えゆく紙芝居への郷愁、母と子の絆、遊郭を舞台に逞しく生きる庶民の哀感が色濃く表現された舞台でありました。作者が描く人物は皆、貧しくともぴかぴか輝いてます...博多に住んでたおいらの少年時代には、似たような人達が沢山いました。金はなくとも心は錦、心意気で生きてる人の姿にいろんなことを教わりました。そして、人はどんな立場に立とうとも心優しき男であれということを心身に刻み込まれました。遊郭のお姉さん、土方のあんちゃん、博打打ちのおっさん...どれもこれもドラマになりますバイ。今回の芝居を観ながら60年前の博多を想い出しました。

それにしても、芝居は、やはりチームワークですね。5人しか登場しない芝居でありながら、その当時の空気を存分に描き出す役者のチカラに改めて胸に迫るものがありました。5人の気持ちがひとつにならないと出来るものではありません。得てして役者という生き物自己中になりがちの人も多々居ますが、作品良ければおのずと我を捨て本の持つチカラ惹き寄せられるんですね。何度も言いますけど、芝居の出来は本で決まります...命を削って書いた本には、当然のことながら血が通っています。創作劇ばかりやってること自体が博打なんですが、いい作品に仕上がると、その喜びもたまりませんことよ。

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みなとみらい

2018/09/18
【第1139回】

ヤン・ラングレンピアノトリオの演奏を聴きに行ってきました...北欧スウェーデンの音楽世界、端正にも、美しく織り上げられる音楽は、ノスタルジックであり、優しさに満ちたサウンドでありました。おいらも10年前に「BLUE LIGHTS」のCDを購入し、疲れた時に耳にすると妙に落ち着きます。その後、4枚ほどのCDを手に入れ、彼が育った北の大地の厳しさを共有しながら至福のひとときを暫し楽しませて頂いております。スカンジナビアに位置し、数多くのアメリカ人ジャズ・アーティストを迎え、伝統を育んできたスウェーデンには、独特の安定感と、穏やかさ、緩やかな抒情が漂います。ジャンルから言えば、ビル・エヴァンスに近いかな...でも、jazzの世界では、まだまだマイナーなのかな。この日の杉並公会堂(客席1100)も半分の入り。でもイケメンのラングレンさん、心を込めて2時間半もの間演奏してくださいました。音響効果が優れた会館に響き渡るトリオの演奏は、それはそれは言葉で表すことが出来ない時空間でございました。常日頃、演劇を観劇し言葉に追われ熟考せざるを得ないおいらにとっては、心地よい珠玉のサウンドのシャワーを浴び心身を解き放たれる時間でもありました。瞼を閉じ、透明感溢れるピアノの音色を聴きながら...ホンマにjazzは極楽浄土の世界でございます。

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新宿の秋祭り

2018/09/13
【第1138回】

川口俊和著「コーヒーが冷めないうちに」読了、いや半了...なんですかいなこの物語。ホンマにチープですわ。ここ最近読んだ中でもワーストもんです。こんな安っぽいストーリーで荒波に揉まれ人生を生きてきた人間が泣きませんがな。でも、世間では多くの人が4度泣いたとか、涙がちょちょぎれたとか、そんな商魂に乗って9月21日から映画が公開されるそうな...今の世の中の流れを象徴してますな。軽佻浮薄なものを乱作し、おつむを軽石にしようという戦略が着々と進行してます。なんでんかんでんコミックでヒットさせテレビ映画化して安易に大金を手にする商業資本の手の内が見えてきますな。おっとどっこい、おいらはその手にゃ乗りませんぜ。この本を早々と手放し、今は先日、芥川賞を受賞した高橋弘希著「送り火」を読んどります。あまりにも青臭い文章の後だけに、やはり文学の匂いは感じます。といっても、最近の賞レースも本が売れなくなっているので、なんとなく売らんがための受賞が多い気がしますね。うっかり購入して古本屋なんてことも多々あるそうな。でも、古本屋も店仕舞いしてるところが多いので、この循環コースは必要かもね。先日、古書店の聖地神保町に行ったのだが寂しくなりましたね。店の前に並べてある掘り出し物の本を物色してる人の年齢層があまりにも高すぎる。昔は貧乏学生が、目の色変えて少しでも安く良書をと鵜の目鷹の目で群がっておりました。本を読まんと人生豊かに送れませんことよ...新聞も読まない、本も読まない人が多数を占めてくる国に未来はありませんぜ。

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久し振りのパエリア

2018/09/10
【第1137回】

連日、災害の報道ばかり...地球滅亡のシナリオは確実に進行してるんでしょうか?北海道の地震に遭遇し16歳で土砂に埋もれて命を落とした高校生の記事を読みながら、人の運命の惨さを思い知らされました。生と死を分けるその境界はなんなんだろうか?歩道を歩いてる時、乗り物に乗っている時、安らかに眠りについているときさえ、生と死の選択が絶えず迫られている。幸いにして、おいらはここ迄生きることへの選択を授けられた。感謝感謝でございます。残された人生、世のため人のために生きねばバチが飛んできますね...昨日も芝居の終演後、役者の皆さんと呑んでるときに2020年のオリンピックの話題で盛り上がりました。全員、猛暑の中でのオリンピック反対、そのお金で地震、台風など自然災害で被害にあった人、地域を救うべきであるということで一致しました。

今回の芝居の中で、音無美紀子さん演じる遊郭の女将が、幼くして亡くなった我が子に対しての思いを吐露する台詞「あの子が生きとったら、あんくらいの年やな...一才で亡うなって、もっと生かしてやりたかったな...戦争中よう思いよった、うちはあの子が生きとったら絶対に戦争なんかに行かさんち...非国民と罵られても、ウチはあの子を守っちゃるっち...生きとったらどげな男になったんやろな」

この台詞だけで、母と子の情愛、平和への祈りが込められている。芝居が限られた観客の中でリアルに問いかける言葉が、いつしか世界に蔓延し少しでもましな世の中になる一助になればと願う。芝居観たことない人この指止まれ...なかなかのもんですバイ。

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逞しき野花

2018/09/07
【第1136回】

5日に幕を開けた「にっぽん男女騒乱記」も順調に今日3日目を迎えます。とてもいい芝居に仕上がりお客様も満足気に劇場を後にしています。観客を前にすると役者のギアも一気に上がるもんだと...いや、芝居は観客と一緒に創っていくものだと改めて思い知らされた次第です。

それよりも、今回の北海道地震が心配です。つい一週間前まで風間杜夫一芝居「ピース」でお世話になったところを直撃し、いまだにインフラがままならない状態が続いています。活断層がない所で起こった想定外の地震。日本には2000の活断層が確認されてるんですが、隠れ活断層が4000あるといわれています。世界でもこれだけ地震多発な国はないそうです。今回も北海道に唯一存在する泊原発所が危なかったらしいです。冷却する電源が途切れる状態があり、緊迫したことがあまり報道されなかったところに、なんだか国と電力会社の今なお原発を継続しようとする意図が見え隠れしてる気がします。真剣に、日本のエネルギーについての対策がなされてないところに一番の問題があるんじゃないかと思います。

水害、地震、猛暑、今年の夏は大変な年になりました。いやいや、安心してはなりません...来年、再来年、更なる天災が予想されてます。オリンピック?今から中止にしても遅くありませんことよ。自然の神様の警告が度重なる災害です。どう考えてみても更なる猛暑、台風、地震の恐怖の中で競技どころではないでしょう...そう思ってる人、かなり居ると思うんですがね。思い切って手を挙げ声に出しましょう皆の衆。

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北海道庁旧本庁舎は大丈夫かな?

2018/09/05
【第1135回】

そうだ!北海道と言えば札幌ラーメンですね...おいらは博多の人間やけん豚骨が一番だと思っとります。でも、北海道に来るとなぜか札幌味噌ラーメンが食べとうなります。それもここ最近にやっとその気になりました。というのも東京はじめ全国津々浦々、豚骨ラーメンブーム。しかも高い値段付けやがってなんばしようとか!と怒り心頭、¥700以上する豚骨はおいらの中ではストライキ状態でございました。たかが豚骨分際で¥900~¥1000なんて有り得ない。焼酎も然り、己をわきまえてのそれ相当の値段設定が当たり前でしょう。そんなわけで、北海道に来ると、何故かラーメンブームを巻き起こした元祖である札幌ラーメンに敬意を払って食するようになりました。麺のおいしさ、味噌の味、昭和30年代から8年かけて創意工夫された結果誕生した逸品です。半世紀前、初めての北海道での旅で食べた味噌ラーメン、博多育ちのおいらは、なんがおいしいと?と一蹴したもんです。東京に住むようになっても食べませんでした。昭和43年、新宿三丁目に出店した豚骨「桂花ラーメン」ができるや否や喜び勇んで出かけたもんです。おいらの四国出身の友人なんか一日三杯食べてました。それがたちまち豚骨ブームになって荒れ放題、余程のことがない限り食べませんがな...と、3日前に食べた札幌ラーメンのことを思い出しましたとさ。

今日は「にっぽん男女騒乱記」の初日です。さてさて、どんな仕上がりになっているのか?とても楽しみです。それにしても「ピース」の公演、そして今回、台風の影響もなく公演が出来てるってことは、おいらも含めて関わってる面々の日頃の行いがいいんでしょうな...

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機内からの景色

2018/09/03
【第1134回】

7月28日沖縄からスタートした風間杜夫ひとり芝居「ピース」、昨日、北海道稚内で無事千秋楽を迎えることが出来ました。それにしても沖縄から北海道なかなかワイルドな旅でございました。風間杜夫という俳優のとてつもないエネルギーとサービス精神、そして何よりも役者としての飽くなき挑戦、探求心にはただただ感嘆しきりでございます。

おいらも北海道に行って参りました。満員のお客様の満足した表情がすべてを物語っていましたね。地元ネタも入れながらのアドリブに客席は大爆笑。これぞライブです!一人しか出演していないのに、何人もの登場人物が見えてくるのがひとり芝居の醍醐味ですな。来年の秋には、新作を加えての平和三部作一挙上演を敢行いたします。一人で三時間半、70歳の風間杜夫が舞台で古希祝いを兼ねて躍動いたします。プロデューサーのおいらが一番楽しみにしているのかもね。

3年ぶりの札幌...いつ来ても北海道はでっかい道ですな。道は広いな大きいな、空も青いな無限大、身も心も開放され、いつまでも歩いていられます。北海道庁旧本庁舎前のれんが通りでイベントをやってました。シンガーソングライターの歌声も大空に響き渡り、ええ歌に聞こえますがな。沖縄然り、北海道然り、東京から遠く離れたところは、やっぱりよかですばい。

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貴重な絵画きの時計台(工事中)

2018/08/31
【第1133回】

帝国劇場にて「騎士物語」観劇...堂本光一、井上芳雄という若手人気実力者の初共演ということもあり劇場は女性ファンが大挙来場。女子トイレには大行列、いやいやウーマンパワーに圧倒されちゃいます。ガラガラの男子トイレに申し訳ない感じで入るありさまでございます。何といってもお客様があっての演劇です...ライブの持つチカラ、魅力を十分に感じ取っていただいて、じゃあストレ―トプレイも観てみるか!なんて観客が増えれば言うことありませんな。今回の芝居、脚本・演出ジョン・ケアードのしなやかな演出によっていい作品に仕上がっていると思います。音楽に和楽器を取り入れ、ダンスのシーンでも画期的な振り付けを施し日本とヨーロッパのスタイルを融合させようという演出意図が明確に表現され観客を飽きさせません。それを支える島田歌穂さんほかベテラン実力俳優の安定した芝居が、より上質な芝居にしています。

今日で8月も終わりです。夏休み明けの児童の自殺が多いそうです...又、勉強かと憂鬱になる気持ちよくわかります。学力至上主義の社会のシステムなんとかせんとなりませんな。勉強がいくらできてもロクでもない政治家、役人生み出すばかりじゃありませんか!遊び心のない教育からは不毛の社会が蔓延るのは至極当然。芝居には遊び心満載、必死科目で楽しい教育現場にしてみませんか...夏休み返上で早く学校に行きたい!なんて子供が増えます倍。

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秋の予感

2018/08/29
【第1132回】

新宿の街も暑さのために、異常な人たちがあちらこちらで活躍しとります...今日も新宿海水浴場と勘違いしたであろう男がうろうろしてました。広場のポールに写真機を置きポーズを取ったり、一人リズムを取りながら小刻みに踊ったり...道行く人もそんなに関心を示さないのでちょいとがっかりしてた感じです。もっと耳目を集めたかったんでしょうかね、いや甘すぎですぞ!ここは世界に冠たる奇人変人を数多く輩出した新宿です。少々の奇抜さでは振り向きも驚きもしませんがな。彼のパフォーマンスもどことなくどん臭く今一つ目を引きません。あまりの反応なさに引き上げてしまいました。次なる場所に移動したのか、トイレに入り普段着に着替え日常に戻ったのか知りませんが...ゲイでもスターになれますよ!なんて宣伝車が派手に走っている脇には、国籍不明なホームレスの人たちが投げ銭缶を前にしてうつろな表情をしていました。もしや、富裕層の旅行者ばかりではなくホームレスの出稼ぎかもしれませんな。それにしても中国、韓国、台湾のひとたちがわんさか動き回っています。時には日本人であることで肩身が狭いなんて感じることもあります。間違いなく100年後の日本の大都市は様変わりしてるに違いない。街の表示板の順序も日本語は3番目か4番目、いやいや、そんな街には住みたくありませんな...大企業でも、社内では英語優先で語られ日本語の会話禁止なんてことが進行中です。この馬鹿垂れが!と言いたい。世界にこれほど美しく深淵な言語は日本語しかありません...この言語の国に生まれたことに至上の喜びと幸せを自覚しないと後悔しますよ皆の衆。

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新宿奇人変人列伝

2018/08/27
【第1131回】

箱根、彫刻の森美術館に行ってきました...おいら昔から観光については、ちょいとへそ曲がりなところがありまして、誰しもが行く定番の人気スポットには足が遠のく性癖がありましてね。要するに写真、動画、雑誌で華々しく紹介され物見遊山的な人たちがあるところが苦手なんでございます。旅とは自分の感性を信じ、己でその土地と生活者の生の姿を五感で感じることだと思ってます。おいらの旅の記録はそうやってコツコツと蓄積され、人間形成の一助になっていると勝手に考えています。

今回の彫刻の森美術館はおいらの想像を超える素敵な場所でありました。自然の中に自己主張している作品が生き生きしているさまに爽快さを感じさせてくれました。ある意味では、箱根の自然の中であるからこそ作品としての存在感を示し得ているのではないか...この作品群を観ながら、改めて自然との調和こそがこれからの地球の未来の可能性が残されてるんではないか...少々、オーバーかも知れないが、そんなことをふと考えさせてくれる貴重な場所かも知れませんね。夏休みと言うこともあって子どもたちもたくさん来館し、抽象彫刻を不思議な顔をしながら眺めてました。室内でなく風の音、鳥の声、雲の流れ、箱根の山脈を眺めながら作品に対峙できることがなんと言っても素晴らしい。ほどほど歩いたところにピカソ館があるのもいいですな。冷房の効いたところでピカソの生涯変わらない愛、情熱、挑戦、遊び心の変遷を再認識。子供の想像力を喚起させる所かも知れませんね...

へそ曲がりも損することもありますよ...そんなことを気づかせてくれた一日でした。

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自然があってこそ...

2018/08/24
【第1130回】

蝉が最後のチカラを振絞って鳴いております...精一杯泣き続けた後の姿がなんとも愛おしい。おなかを天に向けて道のあちこちに転がっています。3年から17年幼虫として土の中で暮らし長くても一か月で命を終える。ミンミンと鳴いてるのは雌に合図を送ってる雄のみです。雌はこの短い一生のうちに一度しか交尾できません。蝉の世界では男女ほぼ同数というわけだから、人間社会と同じでモテモテ男は複数の愛を与えられ、持てない雄蝉は一度の交尾をすることなく一生を終えることとなる。長い苦闘の末、世の中に出てきたのになんとも不憫ではありませんか...そんなことを考えながら、台風の余波を受けた首都圏での蝉の命の叫びを聴いております。おいらにも愛をくれ!まだまだ愛が足りない!双方の声が入り乱れ愛の戦場になっとります。と、蝉が突如ゼロ戦の如く飛翔し壁にぶち当たり短い一生を終えました。何だか神風特攻隊を思わせる一瞬の出来事...こんなことを連想させるのも8月という季節だからでしょう。愛の戦いは良しとしても、武器を手にしての戦いは許されるものではありません。残り少ない8月、もう一度平和の大切さを噛みしめたいものですね。

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百日紅

2018/08/22
【第1129回】

盛り上がった甲子園も終わりましたね...秋田地元出身だけの県立高校、誰しも判官贔屓しますがな。今や高校野球も、名門校は全国から少年野球のスター選手を集めてプロ並みの管理の下の野球漬け。そんななか農業の勉強してプロ級の優勝候補のチームをなぎ倒して決勝戦まで駒を進めたんですから大騒ぎになりますな。エースの吉田君が予選から全試合完投なんてどんな身体しとるんやろか?プロに行った途端、鉄腕がぼろぼろ腕なんてことも考えちゃいます。でもこの金足農業高校の選手達、ほんとうに野球を楽しんでプレーしてるんだなという姿がひしひしと伝わってきます。アマチュア野球の魅力を存分に感じさせるスタイルはあらためて野球はいいなと思いました。おいらも甲子園、いや西鉄ライオンズの選手になりたかった...でも、おいらの性格からしてやっぱり団体競技に向いてないなと思います。中学時代監督に物申し喧嘩して野球を断念しました...言わずにおれない気性がさすらいの人生の始まりました。でもね、そんな経験を経てこそいまのおいらがあるとは思ってますんがな。

昨日は、東京ドームに行って来ました。ロッテ主催のライオンズ戦...地鳴りがするようなロッテの応援団の凄まじさ。おいらは苦手ですな、サンフランシスコにあるドジャースの本拠地で観た野球場の風景が懐かしい...敵味方関係なく好プレーが出れば老若男女誰しもが拍手、鳴り物は一切無し、観客が本当に野球を楽しんでいる姿に感動。軍国主義みたいな応援おいらは好きでありまっせん。野球も芝居も同じ、人によって受け取り方も千差万別、大切な時間とお金を費やして来てるんですから強制しないでちょうだいな!と言いたい。プロ野球も終盤、果たしてライオンズは10年振りの優勝なりますかな?まだまだはらはらどきどきの日々でございます。

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ロッテファンで真っ白け

2018/08/20
【第1128回】

吉祥寺は住みたい街のトップになる地域らしい...おいらも近いので良く出かけるのであるが、公園有り、昔ながらの闇市がそのまま残った飲み屋街有り、jazz喫茶有りなどなど老若男女誰しもが楽しめる佇まいが受けてる要因ではなかろうか。井の頭恩賜公園では土曜日、日曜日はたくさんの出店が色とりどりの手作りアクセサリー、オモチャを並べ散歩してる人達を楽しませてくれる。勿論、様々な大道芸人が競って芸を御披露して子どもたちも大喜び。このお手頃な広さの中で自由に選択出来るところがミソですな...新宿、渋谷、銀座、六本木、青山どこにもあてはまらないエリアである。昨日もブラリ散歩してると気になる喫茶店を見つけ珈琲を一杯。店内にはjazzのレコードが優しく流れ日常を忘れさせてくれる...ここのオーナー、カップルで来るお客にわざわざ「ここは会話するところでないですが、よろしいでしょうか?」なんて言葉を掛けていた。なるほど店内に入るとjazzをBGM代わりに読書したり、ぼんやりしたり、思考・思索に耽るところなんですね。このオーナーの拘りもたいしたもんでございます。商売より信念に近い生き方を貫いて行きたいんでしょうな...なのに喫煙は許されてる...てなとこがまたおもろいやんけ。店内のインテリアがまたまた個性的。まとめようとしていながらまとまっていないのだが主張は理解できる。このがたくら精神こそがこの店の真骨頂ではなかろうか。まあお客を選んでるんですね...同じ価値観を持った人と時間と空気を共有したい。窓から見えるベランダには鳥寄せ餌付け箱もありましたな。このオーナーまさか鳥たちにも同じ価値観を求めてるんでしょうかね?いやいや、いろんな思いを巡らせてくれるお店でございました。

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ふらり立ち寄ってみたら...

2018/08/17
【第1127回】

終戦記念日、お盆の時期に合わせた今回の風間杜夫一人芝居「ピース」東京公演、池袋あうるすぽっとで無事終えることが出来ました。劇中で杜夫ちゃんが唱える般若心経が、戦場、災害で、そして身近の亡くなった人たちに届くようでございました。まさしくタイムリーな企画であったと思います。笑いの中に平和の大切さ、家族への愛が込められた一人芝居。連日大入り満員のお客様も満足気に劇場を後にしていました。この東京公演に限り、今年4月に67歳で亡くなったおいらと杜夫ちゃん長年の友、歌手紀藤ひろしのアルバムジャケットを拡大し居酒屋のシーンで飾りました。勿論彼の曲も流しました。このお盆の時期、彼も会場のどこかに居るような気がしました。亡き人を偲ぶ形も様々でございます...肉体が滅んでも、魂は生者の思いでいくらでも呼び戻すことができ対話し続けることができるんですね。今回の芝居の出色な点は、彼岸の世界がこんなにも楽しいところなのかと思わせるシーンではなかろうか...この芝居を観て、この悩み苦しい此岸の世界を一刻も離れて、早く彼岸の世界に行きたいわ!なんて気分にさせてしまうくらいの楽しさ面白さ満載でございました。これもひとえに風間杜夫の圧倒的な表現力の為す技ではなかろうか。勿論、水谷龍二という作・演出家と長年築いてきた信頼感があってこそのことではあるが...やっぱり芝居はいいもんだ。手作りでつくったものを、時間とお金をかけて劇場に足を運んでいただいたお客さんと素敵な時間を共有できるんだもん...こんな場に居れることだけで感謝!またいい芝居創らなければとの思いを強くした次第でございます。

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池袋の空

2018/08/13
【第1126回】

世間は盆休み、電車に乗るとキャリーバッグを手にして帰郷かな、旅行かな、働きに行く顔と違い嬉々とした表情をしています。ええこっちゃ!こんな時にこそ、思いきり心身を思いきり開放し新しい風を吹き込まないと...おいらは、週末2本の芝居を観てきました。まずは新劇の女優さん7人で結成したOn7の芝居「その頬、熱線に焼かれ」広島で被爆した原爆乙女の話です。25人の被爆女性が原爆投下国アメリカに治療に行った話です。この地で過ごした乙女の心情は如何許かりであったろうか...その苦渋を7人の女優が真摯に演じてました。戦争も知らない彼女たちが、こうやって演劇を通して戦争、原爆のことを伝えていく地道な活動に拍手を送りたい。あと数年で戦争体験者も皆無になってしまいます。誰かがバトンタッチをしないと間違いなく歴史は繰り返されます。

昨日は、ベテラン俳優の芝居を観劇。八千草薫さん村井國夫さんが共演した「黄昏」。37年前にヘンリーフォンダとジェーン・フォンダという実の親子が実生活を投影したような関係を描きながら、その二人にキャサリン・ヘップバーンが絡む映画がありましたな。それを87歳になる八千草さんと村井さんが淡々と演じてました。村井さんの硬軟併せ持つしなやかな演技が光ります。トム・プロジェクトの作品にも2度出演して頂いたんですけど、実に惚れ惚れする演技に魅了されます。今回も、間違いなく村井國夫さんがしっかりと舞台を締めていました。老い、家族、これからの人生の過ごし方のヒントになる作品かも知れませんね。

少し暑さも一段落したかなと思いきや、今日も熱中症注意報が出ています。こんな時、野に咲く花に出会うと一服の清涼剤になりますね。一句「ひっそりと活きて生きたい夏の花」。

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夏の花

2018/08/10
【第1125回】

昨日も11時2分、長崎に原爆が投下されて73年目、長崎に向かって1分間黙祷しました。それにしても長崎市長の田上さん、いつもの粛然たる姿を見るたびに、この市長のもとで長崎市民が平和について地道な活動をしていることを心強く思いました。今回の平和宣言で長崎の核兵器廃絶運動を長年牽引し、昨年亡くなった二人の被爆者の言葉が印象的でした。その一人の土山秀夫さんは、核兵器に頼ろうとする国々のリーダーに対し、こう述べています。「あなた方が核兵器を所有し、またこれから保有しようとすることは、何の自慢にもならない。それどころか恥ずべき人道に対する犯罪の加担者となりかねないことを知るべきである」。もう一人の被爆者、谷口稜曄さんはこう述べました。「核兵器と人類は共存できないのです。こんな苦しみは、もう私たちだけでたくさんです。人間が人間として生きていくためには、地球上に一発たりとも核兵器を残してはなりません」。

そんな思いも届くことなくこの国の首相は、唯一の戦争被爆国として「核兵器のない世界」の実現に向けての核禁条約には参加しないとする立場を維持している。昨日も苦々しい顔もせず、この問題に触れることない形式だけの演説をしていました。

沖縄の翁長知事もなくなりました。この方はもともと自民党員でありながら、政府の沖縄に対する上目線の姿勢に怒りを覚え政府と対決するようになりました。おいらも先月沖縄に行ってきました。一等地はすべて米軍基地、タクシー運転手さんも諦めに近い溜息をついていました。いつまでこの状態が続くのだろうか...沖縄の明るさの裏には深い悲しみが宿ってる気がします。この日本の今ある平和は数多くの先人の犠牲の上に成り立っていること、そして核兵器然り、沖縄然り、他人事としてではなく自分の問題としてもう一度何をなすべきか沈思黙考するに値する8月だと思います。

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しっかりせんと...

2018/08/08
【第1124回】

夏祭り真っ盛り、その主役は花火じゃなかろうか...華やかに打ち上げられ消えていく様を見てると人生そのものだ。シュルシュルと上がって、夜空の広大な闇に広がる光のショーは思わず掛け声を掛けたくなる。そして、あの消えていく瞬間がたまりませんですな。人生の喜怒哀楽も瞬間で次なるステップを余儀なくされる。その余韻を感じる間がなんとも愛おしい...おいらが子供の頃の役割は花火大会の場所取りでありました。博多の街では中洲、大濠公園が花火大会の会場でした。繁華街であった中洲の場所取りは怖かったな。ゴザの上に陣取ったおいらを睨みつけ「誰の許可でおるとや?」明らかに中洲を牛耳ってるやくざのチンピラのあんちゃんが凄味を利かしてくる。みかじめ料でもあるまいし、ここは市の土地であるにもかかわらず脅してくる。ここですごすごと立ち退くようでは男じゃない!ちっこい身体を張ってがんとして動かないおいらに業を煮やしながらも立ち去るあんちゃんの背を見ながら、おいらやくざに勝ったばい!と勝利の余韻に浸っておりました。大濠公園では場所取りとラムネ売りを兼ねていて大変でした。思えば花火を鑑賞するよりも、小遣い銭稼ぎの方が重要案件であり、唯ひたすらにラムネ売りに没頭してた記憶があります。場所取りしてたことも忘れラムネが売れる度においらの頭はそろばんになっとりました。

昨今の花火大会、会場に向かう娘さん達のカラフルな簡易浴衣に身を包み嬉々とした表情を見る度に、ほんなごついい時代になったと改めて平和に感謝。

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たまや~かぎや~

2018/08/06
【第1123回】

73年前の今日8時15分に広島に原爆が投下されました。広島に向かって1分間黙祷しました。その日の地獄絵図が脳裏を駆け巡ります...熱かっただろうね、痛かっただろうね、水が欲しかったんだろうね、こんな事実があったにもかかわらず2018年になった今でも残念ながら...この地球の上には14205~14955発もの核弾頭が存在しているのが現状なのです。ほんまにあんぽんたんな人間でございます。昨年ノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が提案し122カ国が国連の核廃絶条約に賛成したのに米英など、核保有が知られている9カ国はいずれも賛成しなかった。そして日本も。こんなことあるんかいな...唯一の被爆国なのにトランプの顔色うかがっての判断。こんなこと断じて許してならんです。原爆そして無益な戦争、こんなことで無念にも死んでいった人たちの心情を思うと涙が出てきます。

先週の土曜日、メットライフドーム(西武球場)に行ってきました。いやいや蒸し風呂ですたい。すり鉢状の観客席は皆、団扇を扇いでの観戦。この日は残念ながらライオンはハムを食べつくすことが出来ませんでした。ぺろりと食べてほしかったんですがね...この日、感心したのは、前日の敗戦の因を作った選手をスターティングメンバーに起用した日本ハムファイターズ栗山監督。決定的なエラーをした選手にチャンスを与えた監督に感動しました。結果は出せなかったのだが、おいらも敵ながら思わずヒットを打ってくれと願わずにはいられなかった...あのエラーがなかったら間違いなく勝利したに違いないくらいの致命的なエラーで、青ざめた顔でベンチに引き上げ茫然自失な表情が辛かった。人生も同じ、失敗もするさ!そんな時にそっと救いの手を伸ばしてくれる家族、上司、友人がいれば間違いなく再起できるに違いない。この日はゲームよりも、この選手の守備、打撃が気になってライオンズの負けもそんなに気になりませんでした。野球っていろんなドラマを魅せてくれるんですね...

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10年振りの優勝なるかな?

2018/08/03
【第1122回】

夏のお祭り真っ盛り...家の近くの広場で昨日もちびっ子盆踊りやってました。このクソ暑いのに子供はピチピチキラキラと元気よく踊ってました。浴衣姿が可愛いですな...おいらも子供の頃、ガラの広っぱ(石炭カスを捨てられ、後広場になったところ)で盆踊りがありました。戦後間もない頃で、それはそれは裸電球がチラホラと吊られ質素なお祭りでしたが、炭坑節が流れると老若男女入り乱れ、博多もん特有のぼせもんエネルギーが爆発し一気に盛り上がりました。綿飴、水飴しゃぶりながらおいらは憧れのお嬢さんの一挙手一投足に眼が点になっとりました。その子は、当時の地域では珍しく貿易の仕事をしてる家庭で育ってるんで、なんとも異国の匂いがプンプンと漂い、洟垂れ小僧仲間にとっては垂涎の的でございました。あんたんこと好いとう...なんて言おうもんなら、なんて馬鹿なこと言いよっと...なんて言葉が返ってきそうで強気のおいらもついつい思いとどまってしまいましたばい。広場ってとっても大切な空間だと思います。見知らぬ人が出逢い、そこで開催されるお祭り事で喜び楽しみを共有し、人生の想い出として己の心の隙間に宝物としてそっとしまい込まれる...そんな日常の積み重ねが人としての人格を形成していくんじゃないかしら。

博多山笠も終わり、今は東北三大祭り「青森ねぶた祭」「秋田竿燈祭」「仙台七夕祭」の時期でございます。こんなお祭りも平和だからこそ出来るもんでございます。来週は広島、長崎に原爆が投下された日が来ます。平和であることについて真摯に向き合う週にしたいものですね。

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ちびっ子盆踊り

2018/08/02
【第1121回】

9月に上演する「にっぽん男女騒乱記」の稽古が猛暑の中始まりました。トム・プロジェクトでもお馴染みの東憲司さんの新作です。チラシ、ポスター見ただけでなんだか騒乱しちゃいますね...戦後間もない九州のある地域が舞台で面白く、可笑しく、逞しく生き抜いた人たちの物語です。世の中すべからくスマートになった昨今、武骨に必死に生きてる人間は懐かしい気がします。まさしく、おいらの少年時代の話です。少年時代、立ち入り禁止地域である鉄道線路に侵入し鉄くず拾ってアイスキャンデーを買った時代です。鉄くずを集める元締めは在日の人たちでした。おいらはすばしっこいガキでした。よそのガキが鼻水たらし拭ってる隙にちゃかり鉄くずを拾い集め換金するのも早かった。のんびりしてると生き残っていけない時代だったんですね...最初の本読みを耳にしながら、そんなことを思い出しました。今回の登場人物のなかにも似たようなインチキ親父、娼婦のねえさん、ちょいと頭の足りないあんちゃん...居ましたな。インテリを装ってよその嫁さんにちょっかい出す親父いたな。色白なハンサムやせ型、一応女性に持てそうな容貌をしてたんだが所詮はヒモ男。彼の辞書には働くという語彙が皆無でした。子供のおいらにも稼いだお金で買ったキャンデーをせびるんですから困ったもんでございます。この親父はおいらの人生の中でも立派な反面教師になっとります「自分の人生は自力で生きる」と。

猛暑も中ではありますが、キャスト・スタッフのみなさん9月5日の初日に向けておもしろか芝居創りましょうね!

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夏祭りのあと

2018/07/31
【第1120回】

沖縄より只今戻ってまいりました...2018国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ「りっかりっかフェスティバル」に風間杜夫一人芝居「ピース」が招聘され行ってまいりました。沖縄に真の平和をと言ったところでしょうか...28日29日の2ステージだったんですが、早々にチケット完売、29日は追加公演までやってきました。沖縄の皆さんの芝居の反応もよく大成功、鳴り止まぬ拍手でおいらも感動しちゃいました。それに急遽決まった「銘苅シャイニングキッズ」の13名のダンサーが応援に駆け付け踊ってくれました。まさしく一人芝居に華を添えてくれましたね。沖縄の人達は本当に優しくのんびりしてます...思わずおいらもほっこりして嬉しくなっちゃいます。タクシーに乗っても、飲んでいても、心身ともにほぐれ「なんくるないさ」と思わず言葉が出てきてしまいそう...そうなると、ついつい夜の宴会で泡盛を飲みすぎちゃいます。この泡盛がアルコール度数が高いにもかかわらず翌日に残らないから困ったもんでございます。首里の古民家を居酒屋にした「あしびうなぁ」とってもよござんした。料理は良し、沖縄に来て飲んでる雰囲気がたまらんですばい。ついついこちらに住み日々来たくなるお店です...というのも、沖縄もすっかり都会の佇まいに近くなり、沖縄らしさを探すのも一苦労。そんな時に、こんな店を見つけると飲んべい共は嬉々とした顔になります。それにしても3日間、よく飲みましたな。杜夫ちゃん、スタッフの皆さん本当にお疲れさまでした。でも、このツアーやっとスタートしたばかりです。東京公演も含めて9月1日の北海道稚内公演まで猛暑が続く中、どうか無事に千秋楽を迎えることができますようにとプロデューサーのおいらは祈るのみです。

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沖縄2018

2018/07/27
【第1119回】

オルゴールの想い出...少年時代、オルゴールを貰い毎日聴いてました。「エリーゼのために」
あの手巻きの瞬間がなんとも夢の世界に誘ってくれるようであり音楽の目覚めだったのかもしれません。手動でネジを巻くなんてこと自体が、己の身体を通して器械に音色を送り込んでるみたいでワクワク、ドキドキ...このアナログ感やはり正しいのかもしれません。身の回りの物を見るとほとんどがデジタル、便利なのはいいのかもしれないが何とも味気ない。何かを生み出すのにはそれなりの労力が必要だし、生み出す過程を楽しむこと自体に価値がある時代が来る予感さえします。まさしく歴史は繰り返される...ゴールデン街の「ポニー」という店では、今時珍しい手巻き蓄音機が置いてあります。手動で立ち上げ針をレコード盤に落とすそのときめき感はたまりません。そして何よりも流れる音が肉声に近い。目の前で歌手がマイクを握り歌ってる感じがするんですから唯々感動しちゃいます。こんな風に日常の生活の中から、アナログ、ローテク感あふれるイロイロを見つけると和みます。デジタル世界は人をストレスの世界に誘導してるんじゃないかしら?
今年2月に上演した「Sing a Song」。この芝居で主演した戸田恵子さんが菊田一夫演劇賞を受賞し、そのお礼として戸田さんがキャスト・スタッフ全員にオルゴールを贈ってくれました。我が家にも置いてあります。時々、少年の頃を想い出し一巻き二巻き...あの芝居のラストで戸田さんが歌った「リリー・マルレーン」が心地よく流れてきます

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椅子まで付いてます♪

2018/07/25
【第1118回】

今週の28日~29日、沖縄の演劇フェスティバルで風間杜夫ひとり芝居「ピース」公演のための最終稽古を錦糸町の稽古場でやってます。いやこの暑さ、稽古場に行くだけで汗だらだらでございます。稽古場に向かう途中に聳え立つスカイツリーももう勘弁してください!という声が聞こえてきます。稽古場は、もちろんクーラーで癒されますが、いざ稽古が始まると杜夫ちゃんのテンションが一気に上昇し冷気も熱気にチェンジしてしまいます。それにしても、よくぞ台詞が流暢に出てくるもんだと感心しきり。居ない相手役が見えてくるんですから大したたまげた芸の虫。それも、ひとりで楽しんですから、どんなに気持ちがいいもんだか...と、見えるところがプロ中のプロ。実は天才は隠れたところで必死の努力をしてるんでございますよ。先日も大竹しのぶさんとの初めてのミュージカル共演の際、ミュージカル流の発声で血の滲むような自主稽古をしたそうな...お客さんからお金を頂いているからには、それに見合うものをお見せしないとプロとしては失格。己に厳しくなれない人は生涯陽の目を見ることが出来ないのが芸の世界。しかも浮き沈みの激しいこの世界で仕事が切れない役者なんぞはほんの一握り。来年、古希を迎える杜夫ちゃんが、未だこの立ち位置で俳優業を維持していること自体が押しも押されぬ実力人気俳優の証拠。沖縄公演、東京公演のチケットも完売。興行主としても嬉しい限りでございます。

稽古終わりの飲み会が凄まじい...稽古時間より長く盛り上がりも半端じゃございません。お客様が楽しんでくれるいい芝居に仕上がればすべて良しの世界でございます。

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熱中スカイツリー

2018/07/23
【第1117回】

フラメンコダンサー、グラシアス小林さんが古希を迎えた...彼が死にそうになったのを2,3度見守ったおいらとしては感慨深いものがあります。彼と出会ったのは42年前かな、おいらが単身スペインに渡り、いきなりマドリードのマヨール広場でインチキ大道芸やったり、蚤の市で物売りしたりと大胆なことやったので迷惑掛けたんじゃないかしら...こんなへんてこりんな日本人と知り合いになるんじゃなかったと...でも、彼とは同じデラシネの血が流れていることをお互いが共感し、その後は楽しいスペイン生活を過ごすことが出来ました。映画を創ろうと二人でシナリオ書いたり、キャンプに行ったり、彼は何処に行っても異国の人に負けない身体と面構えをしていました。30年に及ぶスペイン生活を終え日本に戻ってきました。その第一声が「俺は総理大臣になる!」この人、スペイン熱に冒され頭おかしくなったんじゃないかしら?と正直思いましたでございますよ。でも本気でしたね、衆議院選挙に茨城から出馬し、次点ながら4万票を集める大健闘。おいらも選挙戦初日の演説を見学したんだが、それはそれは今の政治家よりも立派なもんでございましたよ。その後、トム・プロジェクトの若者の俳優訓練にチカラを貸してもらったりと、日本での友情関係は繋がっていました。そして、満を期してのフラメンコスタジオ創設。自らダンサーとして舞台に立ちながらも、若いフラメンコダンサーを育てながらの古希を迎えた今日、美しいお弟子さんに囲まれとっても眩しかった。グラシアス小林が常々吐く言葉「フラメンコは生き方そのものである」まさしく貴方はそれを実践している中の一人です。これからも艶っぽく、そして男らしく舞ってくださいね...人生70なんてまだまだです。共に命ある限り過去を封印し未来に向かって突っ走ろうではありませんか!と言いながらも、この猛暑はたまりませんばい。

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前の人も眩しい

2018/07/19
【第1116回】

東急シアターオーブでミュージカル「エビーター」を観てきました...おいらミュージカルあまり観ないんです。何故?それは異国で作曲されたメロディに日本語が上手く乗っからないんですな。どうしても無理無理感が残り気持ち悪い。その無理が生じて演者の役の掘り下げが薄くなる。それをカバーするために自己陶酔型の演者が出てくるという始末。でも、音楽、踊りは、何といってもエンターテインメントの王道でございます。多くの人達を魅了する演目であることは間違いない。今回の「エビータ」はそのことをまさしく実証させてくれました。何といってもアンドリュー・ロイド=ウェバーの作曲が素晴らしい。彼は「オペラ座の怪人」「キャッツ」も手掛けてる才人。筋書きも、貧しい庶民から女優になり、大統領夫人の座まで上り詰めるが子宮癌で33歳で死を迎える波乱万丈の人生自体がドラマティックなんだ。このドラマをより立体的にしているのが革命家ゲバラの登場。ゲバラを狂言回し役として起用してのバランス感覚が絶妙。この役を演じたブロードウェイで絶大な支持を集めるミュージカル界のトップスター、ラミン・カリムルーの演技、歌唱力が絶品。勿論、主役エビーターを演じたエマ・キングトン嬢もよろしゅうございましたよ。この手のものはやはり生演奏、英語版のミュージカルに限ります。これだったら、おいらあまり好きでないスタンディングオベーションも理解できますな。おいらも立ちましたがな...だって全員総立ちで前のデッカイお尻見てどうすんね...5回ものカーテンコール、いやいやよろしゅうございました。

ミュージカルと言えば、劇団四季の創始者、浅利慶太さんが亡くなりました。創立当時のフランス演劇や寺山修司、加藤道夫を上演した時代がとても懐かしい。おいらも含めて、あれこれと言いたいことはありますが、学生演劇から始めて全員が芝居で食べていける劇団にしたこと、演劇の観客の裾野を拡げたことの功績は大だと思います。おいらは会ったことはないんだけどきっと寂しがり屋で可愛い人だったんだろうな...長い演劇人生ほんとうにお疲れさまでした。

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ブロードウェイに行かなくても観れますよ!

2018/07/17
【第1115回】

「石牟礼道子と出逢うpart2」に出かけてきました...今年2月に90歳で亡くなった石牟礼さんを偲ぶ会です。会場には沢山の人が集まっていました。彼女の生き方に共感した人、著作の愛読者、関係者などなど...5時半に始まり終わったのが9時。お別れの言葉を6人の方が述べ、作家・赤坂真理さんの講演と言うより楽器も参加しての公演。第二部の米良美一さんのコンサートは本当に良かった。米良さんもどことなくシャーマン的要素を持ってる方で、この日のイベントで石牟礼さんと魂の交流を最もしていたと思いました。彼が詠う「ヨイトマケの唄」絶品でした。実のところ本家本元美輪さんより良かった!美輪さんの臭さが無く、米良さんの小さな身体から絞り出される歌声が天空まで届きそうな感じがしました。この日、いろんな方が石牟礼さんに対する思いの丈を届けようとしていたのだが、おいらにとっての石牟礼さんは神格化された石牟礼さんではなく、水俣の渚にぽつねんと佇む農民、漁民、主婦であるからこそ、あれだけの言霊が産み出されたと思っています。観念から生み出された言葉ではなく、生活者の発する言葉を己の心魂に蓄積し醗酵し発せられた言葉だからこそ、読む者の奥底に沈潜し心動かせるチカラがあるんだと思います。

発展、進化の果てにうち捨てられた棄民、自然のうねりが石牟礼さんの数々の著作から聞こえてきます...怨念ではなく無垢なる言霊として。

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宵待ちコンサート

2018/07/13
【第1114回】

暑い日が続いています...西日本豪雨の惨状が日々拡がる様を知るたびに胸が張り裂けんばかりの思いです。おいらもボランティア活動したい思いがありますが、この暑さの中で熱中症にでもなって迷惑がかかりそうなので止めときます。こんな時に、参議院の定数を6議席増やすなんて頭に来ちゃいますな。こんな不要なお金、少しでも被災した人たちに回せってことだろう...出鱈目、嘘つき国会にどれだけのお金が注ぎ込まれてるんだろうか...ほんまに素直に抗議しない、怒らないこの国の人たち外国の人たちが驚いています。新宿の西口広場で抗議文を掲げ意思表示している人たちのほとんどが60歳以上のお年寄りです。残念ながら、若者の姿は見ませんがな。諦めてるんですね、どうせ誰がやっても同じだろう。余計なこと言ってエネルギーを消耗するんだったら、快楽の方に費やしたいのが楽しいに決まってんじゃん。こんな国はいずれ滅びますよ!なんて脅かしても上の空。今日も朝のテレビで居ない筈の場所に熊が出没。森林を伐採し野生の住処を侵された生き物は海を渡り別天地に行きますがな。この地球、人間だけのモノじゃないという自明の理を理解できない人たちも困ったもんです。この大宇宙のなかの小さな惑星地球でいろんな生き物が共生できる哲学を持ってる人たちが多数を占めれば、こんな災害も少なくなるんじゃないかしらと思う週末でした。

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お空にスケッチ

2018/07/11
【第1113回】

遅まきながら第158回芥川賞(2017年下半期)受賞作、若竹千佐子氏(64)の「おらおらでひとりいぐも」を読了...史上2番目の年長者受賞らしい。いやいや圧倒的な東北弁(岩手)の語りが読む側のリズムを鷲掴み。石牟礼道子さんの口承文学を感じさせる見事な文体だ。子供のころから小説家になりたいと思いながら家庭の主婦、子育てに追われ、なかなかチャンスがなかったのだが55歳の時、夫に死なれ、日々の悲しみの中から書いてみよう!という気持ちが生まれたそうだ。夫の死から沸々とこみ上げたものは、これまでの人生、自分の本来の欲望を見失って人の期待に生きて、自分を苦しくしてしまっているんじゃないか?旦那を支えるのが人生の第一主義であり、愛に通じるものと考えたものに疑問を抱き、その総決算として己の一番信ずる方言を駆使して書き上げた小説に見える。この小説の快テンポリズムは、作者の父が浪曲師・広沢虎造「石松三十石船道中」が好きで良く唸ってたのだが、子供の頃はよくわからず、YouTubeで聴き衝撃を受け、これを小説の文体にしようと決めたそうだ。すべての表現に一番大切なものはテンポ、リズム。これを兼ね備えていれば読者・観客は飽きることなく魅入られるってことだ。若竹さんの書こうとする意欲は、とことん生きようとする姿勢だ。諦めたらいけまっせん!この小説に「おらだば、おめだ」

「おめだば、おらだ」のリフレインが何度も出てきます。同じようにおいらの周辺に居るたくさんの人達、それぞれがおいらであり、友であり、母であり、父であり...ってことは、人なんて良くも悪くもそれぞれにいろんなもの抱えてるんだから、気にしないで思い切り好きに生きないともったいないってことだよね。

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覗いてみようかな...

2018/07/09
【第1112回】

いやはや大変な豪雨災害ですね...今回の被害の状況を見るたびに年々地球が悲鳴を上げているのがよく分かります。もうこれ以上、森林を伐採したり、地球温暖化がもたらす1番の原因といわれる、自動車や飛行機を動かしたり、電気を作ったり、ゴミを燃やしたりすることで、たくさん発生している二酸化炭素の抑制。そして、地球温暖化の2番目の原因といわれる、牛や豚などの家畜のゲップや天然ガスを掘り出すときなどに出てくるメタン。世界の政治家、科学者が何十年も会議を重ねて対策を練ってはいるものの、時の権力者の人気どり政策でままならないのが実情だ...こんな恐ろしいことが起きてるのに、この国では原発廃止の声が盛り上がらないのがいい例だ。アメリカ、ロシア、中国の頭のオッサンたちも己の権力を維持するのに躍起になっているレベル。地球の未来、そして子供たちの将来を熟慮できる創造力と想像力を兼ね備えたリーダーが出現しない限りアウトですばい。

6日には、オウム真理教の教祖・麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚と6人の元教団幹部の死刑が執行された。7人が一日で処刑されるのも前代未聞である。確かに極刑に値する人たちであり人道的にも許されない人達であるが、その主たる要因も解明されないまま執行していいものだろうか?この事件から教訓を得ずして、この種の事件は必ずや起きるであろう。裁判官が麻原死刑囚は演技していると断定したことにも疑問が残る。何とか彼の口からこの事件に至る経緯を喋らせるべきではなかったか...それにしても、執行前日、上川法相は「赤坂自民亭」で女将役を務め、安倍首相をもてなし酒宴を開催...なんだか不気味ですね。どんな人間であれ死を前にしての作法があるんだろうとは思うんですがね。

今日の雲間に除く青空がいついつまでも見れますように!という願いは不可能だろうか?

残り少ない人生のおいらだって切に願ってますがな...

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この空が被災地に届きますように...

2018/07/06
【第1111回】

昨日、劇団唐組の辻孝彦さんが亡くなりました...52歳はまだ早いですね。唐十郎さんの世界を支える個性溢れる俳優さんの一人でした。強面の俳優さんが多い中、ひとりニコニコした表情が印象的でした。細身の体でありながらいったん舞台に登場するや否や、狂気すら感じる演技は観客の心を十分にとらえて離さなかったと思います。唐ワールドを会得するには、ただ単に演技の修練を積めば成立するものではありません。少々オーバーかもしれないが、唐十郎と寝食を共にしてかろうじてその世界を覗き見する程度かな...後は、己の特権的肉体と眼前に展開する唐ワールドの旅人としての一員としての覚悟があるかどうか...そんな厳しい状況の中、辻さん最後まで唐組を支えてきましたね。唐さんが病に倒れた後は厳しい日々があったと思いますが、先日に紅テント芝居を観ながら感じたことは、確実に若い人達にバトンタッチできてることを確認出来とても嬉しかった。その最後の仕事を辻さんが担っていたんですね。最後に会ったのが、今年2月下旬に帝国ホテルでの読売演劇大賞の授賞式でした。唐組の藤井由紀さんが優秀女優賞を受賞し唐組の皆さんと出席してました。おいらが声を掛けると「元気になって、またやりますよ...」とても元気だっただけに...でも、辻さん、貴方が演じ魅せてくれた芝居に、人間の不気味さの中に垣間見る優しや、弱さ、おいらの記憶の中にいつまでも残ってますよ。お疲れさまでした...ゆっくり休んでくださいね。

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聳え立つ紅テント

2018/07/04
【第1110回】

この世の中、すべてがマニュアル化してしまうんだろうか...コンビニにお酒を買いに行くと必ず年齢承認のパネルが出てきます。おいおい、見りゃわかるだろう?と思いつつ、つい承認押さざる得ないのが実情だ。あるタレントがハンバーガーと飲み物をスタッフに差し入れしようと50個近く注文したところ、「店内でお召し上がりですか、お持ち帰りですか?」と聞かれたので頭に来て「こんなに一人で喰えないだろう!」と怒ったそうだ。そりゃそうだよね...なんでんかんでんマニュアル通りの教育をし、肝心かなめのお客とのコミュニケーションが疎かになる。ここから人は個に埋没し、ジレンマに陥り、病に、そして挙句の果てに犯罪さえ起してしまう。考えてみれば、アジアの労働者が増え、そうしなければならない実情もわからないではないが、お店は人と人との触れ合いで品物を手にし喜びを感じるのではござませんか。子供のころ駄菓子屋さんのおばちゃんと四方山話をしたころが懐かしかですばい。親の言うことは一切聞かず、おばちゃんのアドバイスは何故か説得力がありました。ついつい悩み事を聞いてくれ、いつの間にか子供人生相談所も兼ねるようになっちゃいました。ある意味、出先が世迷い人にとっての良き相談相手だった豊かな時代だったかもしれませんね...すべてが便利、合理性を求めていった至極当然なマニュアルシステム。もっと感情を出さんかい!と、おいらは思うのだが、若い人にすれば鬱陶しいでしょうな。でもなんだかスマホピコピコ静まり返った車内も不気味なもんございます。果たして人類はロボット化した生態系へと向かっていくんでしょうかね...最後のアナログ人類の一人として、おいらはぼちぼち楽しみながら生きていく所存でござりまするがな。

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梅雨明けと夏のはざま

2018/07/02
【第1109回】

いやいや、早や猛暑の日々が連日続いています...「ファントム・スレッド」鑑賞。音楽、衣装、名優の演技どれをとっても、こんな創造物を¥1100(ごめんなさいシニア料金です)で観れるなんてなんて幸せでしょう...不思議な映画です。SM的な愛なのか、究極の愛なのか、観る人によって愛の形が幾様にも変貌していく様が面白い。というより愛の迷路に嵌ってしまう。あんな田舎の娘に、立場あるアーチストがコロリとまいっちゃうのがなんだか滑稽にも思えてしまうのだが、徹底した映像美で最後までぐいぐい魅入ってしまうところがみそですな。史上初となるアカデミー賞主演男優賞3度受賞したダニエル・デイ=ルイスの、いかにもイギリス仕立ての演技も、おいらはあまり好きではないが計算しつくした知的演技はさすがです。田舎娘を演じたヴィッキー・クリープスはルクセンブルグ出身の34歳の女優。美人ではないのだが、あの手の顔は見る側の想像力を喚起させてくれる...したたかにも、純情にも、淫乱にも...なかなか掴みどころのない女性の不可思議さを十分に表現してるから相当の演技者と見た。目立たないけど気になるってところが役者としても最大の武器なのかもしれない。映画館に行くたびに思うのだが、あちらさんの俳優さんは皆惚れ惚れしますがな...それに比してこちらの俳優さんは、やっぱり残念ながら劣りますね。おいらだってこちらの映画頑張って頂戴なと念じてるんだが、どうしても旬なタレントさん重視の営業第一、コミック頼りの映画創りになっちゃうんで出来上がりがチップみたいな薄さ。あちらはビフテキ、こちらは魚、いやいや食べ物のせいではありませんことよ。もっと分厚い文化を根付かせなきゃならんのですが、この国の現状からして無理なんかな...と悲観的な思いを吹き飛ばすようなカンカン照り。いよいよ本格的な夏の到来、汗流しながらもなんとか生き延びなきゃ...

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梅雨明けの街路樹

2018/06/29
【第1108回】

そんなに興味ないサッカー、昨日はつい観ちゃいました...W杯、ポーランドに負けたのに決勝トーナメントの出場だって、最後の10分近くの球回し、なんじゃらほい。こんなの初めて見たが、これも勝つための戦術であり、セネガル対コロンビアの経過を見ながらの作戦。観客からのブーイングはすさまじかった。スポーツマンシップにあるまじき行為として映ったのだろう。しかし、おいらが思うに、今大会出場チームの中で世界ランキング下から三番目、コロンビアに勝ったこと自体が奇跡に違いない。いまだ世界のスピードにほど遠く、じっくりとチームプレーで胡麻化しながら進めていくのが持ち味の日本チーム。勝つために仕方がありませんがな...まさしく日本らしい試合の進め方でしたね。まあ、ベスト16に残り、次の試合も観れるんでいいんじゃないかしら。でも、渋谷地区の人達は迷惑してるんじゃないかしら...朝まで大騒ぎ、あんなエネルーギーあるんだったら無様な政治、不均衡な社会、環境、原発問題なんかに目を向けて欲しいなんて思っちゃいます。そして、いつも思うんだが点を入れるたびに狂喜乱舞しながら抱き合う選手たち...素直、正直でいいんでしょうが、おいらは粛々とプレーしながら、肉弾戦を戦い抜く男のスポーツラクビーの方が好きだな。喜びをぐっと押し殺して前に進むラガーマン格好ええやんか。それにしても、スポーツが古今東西、未来永劫、愛される所以は筋書きのないドラマ。これに拮抗できる芝居をどうやって創るか?そんなことも考えながらスポーツ楽しんでる今日この頃でございます。

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梅雨明け

2018/06/27
【第1107回】

米本浩二著「評伝 石牟礼道子 渚に立つひと」読了...いやいや、石牟礼さんが若い頃3度の自殺未遂をやってたなんて初めて知りました。幼少の頃、水俣の娼婦のおねえさんと遊び可愛がられたこと、社会的に地位の低い労働者と身近に接したことが、その後の彼女の生き方を決めたのかもしれません。この本のタイトルにもなっているように少女時代から海辺の渚に立ち、波の波動に宇宙のすべてを感じ見ていたに違いありません。近くの子供たちと一緒に磯篭で貝を採り、潮の満ち引きで地球が生きてることを実感する。『かすかな渚の音、わきいづるトロイメライ。天草の島めぐりめぐり遂の果は不知火の火にならむとおもふ』14歳の時に記した「不知火」の書き出しである。不知火のほとりに住む14歳の乙女の少年へ寄せる思い思春期の心の揺れが、寄せては返す波を思わせる自然なリズムで描かれている。そしてこう続く「ああ人間はこの世で一体幾辺、望みを絶つのを繰り返すのでございましょう。限りない絶望の果て、一つを捨てる為に人間は美しくなると申します。その度に悲しみが何とはなしに絹糸の様に、その細い故に切れることなく続き、その絹糸が何時しかに一つの調べを持ち、その調べを孤独の底で奏でる時に、人間は、美しいものへ近づくかもしれません」穏やかな言葉の裏に、彼女の中に激しく渦巻く情愛を読み取ることもできます。

今年亡くなった石牟礼道子さんの著作から、これから人が人として生きるヒントがたくさん散りばめられている気がしてなりません。文学を超え、生きとし生けるものが共生できる地球にならなければという遺言の数々...おいらが敬愛する松下竜一さんと等しく、時折ページをめくりたくなるバイブル書です。

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本日事務所ベランダからの景色

2018/06/25
【第1106回】

先週の土曜日は芝居のダブル観劇...昼間は新宿紀伊国屋ホールでの、てがみ座「海越えの花たち」。敗戦時に朝鮮半島に百万を超える日本人が存在し、徐々に引き上げが始まったのだが、日本に戸籍がなく身元引受人に確認されず在韓日本人妻として収容された「慶州ナザレ園」の話、資料を基に丁寧に仕上げた舞台でした。トムにも関係した3人の役者さんが元気そうで何よりでした。

夜は上野に場所を移し、トラッシュマスターズ「奇行遊戯」。8年ぶりの再演である。あのトラッシュマスターズが帰ってきた!という乗りで大変楽しかったです。最近、主宰者である中津留章仁がなんだかんだと言われてるのでこの日は嬉しかったな...芝居の原点は人間ドラマです。ドラマがない芝居はただの描写でしかありませんことよ。ぐだぐだと、どこかで見聞きしたことを喋られても退屈するだけですし、なんの生活感もない役者がそれらしく演じてもこっちにはなんにも伝わりませんがな。その点、この日の役者は妙にリアリティがあってついつい引き込まれちゃいました。中津留作品の魅力はこの生活感と荒唐無稽な話の展開。話は多岐にわたりなんじゃらほいと思いがちなのだが、不思議なエンターテインメント性を感じさせる劇のチカラを持ち合わせている。チマチマした芝居が多い中、このスケールの大きさは今の演劇界で貴重な存在である。芝居も長いことやってるとマンネリに陥ることは世の常、ここを開き直って我が道を往くスタイルで乗り切って欲しいもんですな。

それにしても、てがみ座2時間20分、トラッシュマスターズ2時間40分、午後12時40分に家を出て帰宅したのが24時40分。芝居を観るのも命懸けですがな...ちょいとオーバーかな。

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そろそろかな?梅雨明け

2018/06/22
【第1105回】

梅雨の晴れ間にもう一枚...このCDは西荻窪にあるjazz喫茶juhaで見つけました。この店は新宿名曲喫茶「らんぶる」に勤務してたマスターと、下北沢にあった名店jazz喫茶「まさこ」でバイトをしていた奥さんが結婚して始められた温かい店です。素朴さの中におしゃれ感覚が盛り込まれています。レコード演奏のみってところが粋ですな...だって片面だいたい平均25分だから調理しながらの盤の交換も大変だと思います。でもこのアナログ音を味わっていただきたいという姿勢に拍手を送りたい。この店のキーマカレーもなかなかのものです、そのあとの手間暇かけたコーヒーも居心地を良くしてくれます。というわけで、この店にあった小冊子に「Moment」が紹介されてました。曲も聴いてないのに、早速注文するところがおいらの直感と言いますか迅速な行動力ですな...一時はなかなか入手困難なCDだったらしく検索して即注文しました。針を落とすと...と言いたいところだが残念ながら小さな円盤です。1曲目から心を諫めるようなタッチのピアノ音。ウクライナのピアノ・トリオ「キエフ・アコースティク・トリオ」が残した唯一の1枚です。静謐な中にも、人生の様々な記憶を思い起こさせてくれる至極の8曲が心豊かな気分にさせてくれます。ジャケットも霧が立ち込める雨のハイウェイの写真、この季節にお似合いです。前回紹介したアルバムと共に梅雨時最強の2枚となりました。交互に聞きながら、グアテマラフレンチの豆を挽きながらのコーヒーの味も格別です。この至福の時間こそ、おいらの最高の贅沢です。

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静謐

2018/06/20
【第1104回】

雨がしとしと降る日にはこんな曲をお勧めします...おいらが良くJazz喫茶に行くのは、あの大音響の中に身を沈め好きな本を読む時間の過ごし方が好きなのは勿論ですが、見知らぬプレイヤー、曲との出会いです。先日も雨降る中、新宿DUGでしばし休息、雨降る新宿を駆け抜けこの店に入るとなんとこのタイミングで心地よい音楽が店内に響いておりました。誰だろう?と早速CDを手に取ると「sadao plays bach」なんと渡辺貞夫がalto saxでバッハを奏でているではないか...心地よく身体に染み込んできます。さすが世界のナベサダ、どんなジャンルだろうが一流の演奏者はその人の人となりを感じさせながら聴く者を圧倒するチカラがあるんですな...このCDは17年前2000年に行ったサントリーホールでのコンサートライブと個人録音2曲との構成。伴奏を務めるピアニスト小林道夫さんも良くハモってます。こんなCDに遭遇すると改めてjazzの神様に感謝です。岩手県一関市にある伝説のジャズ 喫茶であるオーナー菅原正二さんがこんな事を言ってます。

 

「しあわせ」を手にした方々に、より「しあわせ」になる方法を教えます。それはこのアルバム、何時間でもかけ放しにしておくことです。太陽のまわりを回る惑星軌道のように円を描き、終わりのない「しあわせ」が持続するからであります。ちなみに僕は12時間というのが今のところの最長記録、いずれ記録を更新したい。

 

おいらも試してみました...2時間「しあわせ」がぐるんぐるんと回っておりました。いやいや騙されたと思って購入してご覧なさい。あなたの生活にもうひとつ「しあわせ」が寄り添ってきますことよ。

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雨の日にほっこり

2018/06/18
【第1103回】

「ワンダー 君は太陽」鑑賞...お子様ランチの映画じゃないかしらと思ったのだが、脚本がしっかりしていて、子供が生きていくのに困難な状況のなか一筋の光が差し込んでくるような清涼感がありました。遺伝子の疾患で顔の骨が変形し何度もの手術を乗り越えながらも明るく生きる10歳のオギー少年と、それを巡る家族、子供たちとの群像劇。原作はアメリカの作家R・J・パラシオの小説「ワンダー」。実際パラシオがオギー少年のような顔を持つ子と出会った経験から物語にしたようだ。学校が安全な場所であると言う神話が崩壊しつつある現況、いろんな子供たちの個性、それぞれの悩み等々子供の側に寄り添って進行していくストーリーが巧みだ。映画の中では親切にすることの大切さが何度も繰り返し伝えられる。親切?なんども語りつくされたワードである。親切とは一方的なものでなく、きちんとしたキャッチボールが成立してこそ活きてくる言葉だ...また、そうして生まれた親切が伝播されてこそ親切が肉付けされ威力を発揮するのではなかろうか...この映画で感じることは親切のスタートは先ず笑顔。そうですね!笑顔の波が蔓延すれば、そうそう争いは起こらないのではなかろうか。そういえば日本人は笑顔が苦手ですな...海外に住めば、先ずは笑顔からスタート。人種に関わらず気楽に笑顔を交わす習慣は気持ちがいいもんだ。暗い顔は誰も幸せにしませんことよ...スマイル人生を今日から始めましょう!それにしても、この映画でオギー少年の母親役を演じたジュリアロバーツ、リチャードギアと共演した『プリティ・ウーマン』で華麗に変身するコールガールを演じたのが1990年。あれから28年、さすがに老けましたが相変わらず美人でしたな...

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そんなに見つめないで...

2018/06/15
【第1102回】

今日は本格的な梅雨ですね。残り紫陽花も、まるでシャワー浴びたみたいに雨垂れを心地よさそうに楽しんでます。それにしても今年の紫陽花の色合い今一つのような気がしてなりません。これも年々言われてる天候不順のせいなんでしょうね...自然界の佇まいを見てれば、ニンゲンの欲望が透けて見えてきます。確実に地球滅亡のシナリオは進行してますな。と悲観的なことばかり考えていると滅入っちゃいますから、こんな時は地球防衛軍の歌なんぞを聴きに行きましょう!なんてことで留守晃さんのライブに行ってきました。赤坂あるノヴェンバー・イレブンスは宇崎竜童・阿木燿子さんが経営しているライブハウスです。小さなフラメンコタブラオといったところかな。ここでトメちゃんがピアノ、ベースを携えて1時間半ほど歌い語りました。若い伴奏者をリードしながら結婚後、おいらが初めて観るステージだったんですが、やはり家庭を持った余裕というか温かさを感じました。奥さんも女優さんですれ違いもあるそうなんだが、トメちゃんの我が道を行く感を残しつつも歌の端々に新妻に対する愛を感じたのは思いすぎかな...いやいや、結婚前、後の違いは歴然としてましたよ。最後に歌ったトメちゃんのオリジナル曲「休日」おいら涙が止まりませんでした。この曲、本当にいろんな人に聴いてもらいたい名曲です。生きることの大切さが歌詞、メロデイに込められてます...トメちゃんが歌ってこその心曲です。

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梅雨時の夕暮れ

2018/06/13
【第1101回】

先週の土曜日、4月に67歳で亡くなった歌手・紀藤ヒロシのお別れの会があった...紀藤ちゃんとは42年ほど前に三國連太郎座長の芝居で出会った。そして同じくまだ無名だった風間杜夫ちゃんとの出会いもこの時である...この芝居の最中、旅先でも一番仲が良かったというより、ちょいと浮いてた紀藤ちゃんを杜夫ちゃんが優しく包み込んでくれていた気がする。この日、杜夫ちゃんは最初から泣いていた。最後の締めの挨拶では号泣。そういえばそうだ、20年前に再会し、紀藤ちゃんから再三飲み会の連絡があり3人に数人プラスしてよく飲みに行ったもんだ。杜夫ちゃんは紀藤ちゃんに手荒いダメを出しながらも実に嬉しそうな顔をしていた。早口でおっちょこちょいでちっこい彼を弟のように可愛がっていた。杜夫ちゃんにはたくさんの後輩がいるはずだが、紀藤ちゃんほどの親密な関係がある人は居ないのではなかろうか...そうさせる魅力が紀藤ちゃんにはあったような気がする。実にまめなひとではあったが、嫌みがなく愛嬌のある男だった。そんな彼のお別れ会で号泣する杜夫ちゃんも心優しき男である...男の友情は男の純情...そして男の涙は何故か万感胸迫るものがある。おいらもついついもらい泣きしちゃった素敵な会でした。紀藤ちゃんおいらはまだそちらには行かないけど、あんたが大好きだったビール飲みながら、あんたの残したCDたまには聴きまっせ...67年間お疲れさまでした。

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紀藤ヒロシお別れ会

2018/06/11
【第1100回】

この季節恒例の花園神社紅テント公演を観てきました...唐十郎がこの地にテントを建て51年になるんだな。おいらは、その時から立ち会ってるわけでございまして感慨深いものがあります。最初に見た時は金槌で頭ぶん殴られたくらいの衝撃がありました。おいらも入団してテントと共に世界をさすらいたいと一瞬思ったのだがなぜか止めました。なにせその当時の役者群が、人間離れした特権的肉体を誇示した人ばかりで観る分は良いのだが、結構我が道を行くおいらは入団してもすぐ止めちゃうんじゃないかと思いました。それにしても唐さんの宇宙規模の戯曲、繊細で大胆な演出、予測できない役者の演技、まさしく演劇に革命を起こした事件そのものでありました。今回の公演は唐さんの息子・大鶴佐助、娘・大鶴美仁音の二人が重要な役に付き新しい唐組のスタートを感じさせました。驚いたのは、この二人の芝居が唐さんの演技と瓜二つであったこと。台詞の言い回し身のこなし、唐さんのトリッキーでありながら透明感のある表現を満員の観客に見せつけていました。観客も老若男女入り乱れ立ち見客が出るほどの大人気。ニュー唐組の誕生です。綺羅星のごとき唐十郎戯曲をかかえている劇団としては、この財産を多くの人たちにプレゼントして欲しいですな。大劇場でもいいでしょうが、やはり唐さんの芝居はテントが良く似合います。もしくは銭湯、古びたアパート、歴史のある料亭、工場跡などなど人が残した匂いを未だ感じさせる場所でこそ唐ワールード百花繚乱といったところでございます。

テントを出た後の花園神社の樹々も、なぜかしら興奮したのかざわざわと揺れておりました...この樹木たちも51年見続けた根強い観客樹です。

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不滅の紅テント

2018/06/08
【第1099回】

今年の10月に公演します「男の純情」チラシ、ポスター写真撮り西荻窪のスタジオで2日間やりました...最初の日は山崎銀之丞さん。トムの芝居には過去「藤島土建」「満月の人よ」に出演してもらってます。「満月の人よ」では、なんとバッカーズ アワード演劇奨励賞を受賞しました。50歳半ばに差し掛かろうというのに、男の色気満載、まだまだ青春というのはちょいと言い過ぎかもしれませんが、とにかく若い。彼と会ったのは40年前近くかな?博多のラジオ局でパーソナリティをやっていて、何故かおいらがスペインからふらり帰った時にゲストで出させていただきました。銀之丞さんにぺらぺらといい頃加減で能天気な話をしたんじゃないかしら。博多で人気劇団を主宰して人気者でした。その後、つかこうへいに見いだされつか芝居の常連として心情溢れる舞台を勤め上げました...あれから40年、感慨深いものがありますね。もちろん、おいらも歳喰っちゃいましたけど、今回こうやって一緒に仕事できるなんて嬉しい限りです。カメラに向かっていろんな表情をする銀之丞さんいかしてますよ。

昨日は宇梶剛士さん、トムの芝居は「「あとは野となれ山となれ」「南阿佐ヶ谷の母」に出演。あのでかい身体に彫りの深い顔、言わずと知れた伝説の暴走族ブラックエンペラー7代目の総長。とにかく優しい人である...これだけのいろんな経験があったからこそ人に優しくできるんだろうなと思ってしまいます。でも、厳しさ、人としての礼儀にかんすることは何度か稽古中、旅先で見させていただきました。そのしぐさがなんともかっこいいんだな...表現者はいろんな引き出しを持っているんだが、やはり究極は生き方じゃないのかな。己の身体と五感を限りなく開放し吸収し、そこから人間とは何ぞや?これが表現者の為すべきことではございませんかね...この二人と市川猿弥の三人芝居「男の純情」面白い芝居になりまっせ!

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西荻窪のJAZZ喫茶JUHA

2018/06/06
【第1098回】

ぐらぐらこいた腹かいた...ほんなごつ頭に来て怒髪天!何ですかいな財務省の処分発表、あんなもんで許されるんなら税金払いませんことよ。それにしてもこの国の真面目な人々はおとなしすぎですばい、お隣の国ではデモ隊で溢れかえり内閣総辞職もんですたい。そのあとのテレビも、何だか自主規制してるのかされてるのか、あまりこの問題をしつこく報道しなくなった。その代替えといっては変だが、日大問題とか、ここ頻繁に登場するのが和歌山のドンファン怪死事件。こちらに目を向かせておいて逃げ切ろうとする戦術かもしれんですが、おいら許しません。あのセメント大臣の発言「「それがわかりゃ苦労せんのです。どうしてスタートしたのか」事態がなぜ起きたか、省内調査では全容を把握できていないことを認めながらなんじゃこりゃ!それを佐川のおっちゃんから聞き出すのがお前さんの仕事じゃございませんか...ほんまに、こんな人が権力の中枢ででかい顔してのさばり臣民を小馬鹿にしているなんて情けないお国でございます。あべかわ餅、そしてその連れ添いに忖度してるのは子供だってわかりきってるのに、未だにシラをきるこの人達は一体全体なんだろかいなアホクサ。1年間に渉り、嘘に基づいて国会審議を継続したその責任は犯罪に等しい事件ながら、この処分。セメント大臣170万の返却、嘘付いて出世した長官は513万の返却で済ませるなんて、汗水垂らしてせっせっと労働してる人はたまりませんことよ。

おいらほんまに失望してます...今回のことが、時間が経ちあまり話題にもならず何事もないようになったときに、この国は確実に日本沈没雪やこんこん...寒々とした国になりますばい。

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水無月のたそがれ

2018/06/04
【第1097回】

あの小さな倉庫を劇場にした場所で屋台崩しとは...やりますね!劇団桟敷童子の皆さん。コアなファンを持つこの劇団の新作「翼の卵」を観てきました。今回の公演もチケット完売。嬉しい限り...舞台一面を覆いつくす緑、古めかしい館などなどすべて劇団員の手作り、もちろん衣装もです。セット、衣装すべてが身体にフィットして、まるで九州地元の人たちに見えますばい。九州弁もすっかり板につき、博多出身のおいらもご機嫌です。それにしてもこの劇団の主宰者・東憲司さんは徹底的に九州に拘ります。観客に飽きられようが、憲司少年がかつての福岡で夢見た人間の温かさ愚かさ冷酷さをドラマに仕立て上げていきます。彼の芝居を観ているといつも思います。おいらが住んでた博多の末広長屋にも同じような人たちがたくさん住んでました。まともに生きられない反社会的なワル、いつも騙される心優しき人、貧しくとも夢見る少年少女、頑固おやじに浮気おばさん...などなど、ドラマになる登場人物オールスター勢ぞろいでございました。それだけに人間関係がうるさいほど濃密であり、現代のSNS時代とは真逆の環境の中、皆必死豆炭で命を燃焼しながらも楽しく生きてた気がします。そんな時代を彷彿とさせる劇団桟敷童子の芝居おいらは好きです。

もっとお洒落で、軽くて笑えて面白い芝居もいいでしょう...でも、こんな芝居が上演されなくなった時代こそ無味乾燥、殺伐な時代では無いかと思います...そんな時代にならぬようにと、なんとかブレーキをかけてる気がしてなりません。いつまでも上演し続けて欲しい劇団のひとつです。

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休日の公園

2018/06/01
【第1096回】

森友学園問題、全員不起訴...文書改ざん、虚偽公文書作成や、国有地を不当に安く売却したとする背任など6容疑がありながら38名全員が不起訴なんてありえません!なんて思うのが一般庶民の共通の思いではありませんでしょうかね。汗水たらしてせっせっと税金払ってる身はたまりませんばい...何年かに一度、税務調査に来る税務官の厳しい態度も何度か体験してるので、おいおいこんな小さな会社を責めないで巨悪の巣をきっちりやってくださいなと言いたくもなりますね。それにしても酷い、一年間も国会で嘘を付いた人が罰っせられることもなく、ましてやその長も責任を取らずしらを切る。この国、一体どうなってるんでしょうかね。この構図は、今話題になっている日大も全く同じだ。思えば 1968年、日大で約20億円の使途不明金が発覚し、学生らは5月27日に日大全共闘を結成。6月11日に機動隊が導入されたことに反発し、各学部校舎をバリケードで封鎖した。その時にバリケードを打破するために体育会系の学生を動員、その時の相撲部にいたのが現日大理事長。この時から力でねじ伏せる権力組織が形成されたわけだ。全共闘の議長だった秋田明大とは新宿ゴールデン街で何度かあったことがある。若者の純粋な思いはいつも潰される...中には、お坊ちゃんの頭でっかち、世間知らずのあまちゃん学生も多々いましたけどね。おいらはセクトに入ることなく一人闘ってましたね...不届き者には声を上げないと、いつまでも横暴な振る舞いを許すことになりますからね。この国の人は、あまりにもおとなし過ぎ、無関心の衆が過多...またまた嘆き節が出てきますばい...ホンマにこの国に未来はないのかいな。

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わたしも旬の花

2018/05/30
【第1095回】

街のあちこちに紫陽花が咲き始めている...梅雨の花なんだが、何とも言えない色でパステルで描いた感じがとても素敵だ。それにしても自然界は粋な計らいをするもんだ。じめじめした季節に鮮やかな色を目にすると、よしゃ!という気にさせてくれる。誰が決めたわけでもないのに程よい順序で咲き、季節感を盛り上げ、ささくれだった人の気持ちを和らげてくれる。今や多くの葉を持った樹々たちが、この情けない社会の現状に「君たちは、しっかりとした根を持ちえないから、豊かな花や葉を咲かせることができないのではないか...なのに欲張りですべてを得ようとしている」そうなんです。もういちど、大地にしっかりと根を張ることから始めないと、とんでもない世界が待ってるような気がします...おいらのマンションの玄関前には樹齢300年くらいの大木が大空に向かって聳えています。いつも声をかけています。そうするとこの大木はなんだか嬉しそうな表情をします...身の回りの生き物の声を聴く習慣を大切にしています。そうすると、あらゆる生き物がおいらに対して何らかの声をかけてくれます。人の言葉よりも新鮮でシンプルで、おいらの五感を奮い立たせて、その日一日が気持ちよく過ごせることが多いのも事実です...嗚呼もったいない!こんな環境が身の回りに備わっているにも拘らず、見もせず感じようともせずピコピコとスマホに翻弄されてる現代人...そりゃ社会が良くなるなんてことはありませんがな。誰も責任を取らない無法国家、寂しい限りでございます。

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さあ出番です!

2018/05/28
【第1094回】

今日は朝から今年の10月に公演する、おじさん3人組のシチュエーション・コメディ「男の純情」のチラシ、ポスターの写真撮りをしました。この日は市川猿弥さん、歌舞伎界の中では一目をおかれている方です。おいらも歌舞伎は勿論、他の作品でも拝見してるんですが実力、演者としての個性も秀でたものがあります。映像、現代劇でも活躍して頂きたい役者の一人です。先日観劇したシス・カンパニー公演 「近松心中物語」のなかでも一人、あの時代の人物描写を見事に表現していました。俳優の身体に時代に生きる匂いがあるかないかは不可欠なものだと思っています。これだけは努力して出せるものではありませんね...生まれながらにして、そこを嗅ぎつける事の出来る嗅覚を持っているかどうかにかかっています。その優れたアンテナに様々な情報をキャッチし咀嚼する能力、そして頭ではなく五感で処理するチカラがあるかどうか、ここにかかっています。今日の写真撮りで見せる猿弥さんの表情には表現者としての潤沢なものが多々ありました。昨日、名古屋公演を終え今日は朝から撮影、その足で午後のフライトで博多入り、夕方から博多座で6月2日~26日まで始まる歌舞伎公演の稽古があるそうです。一年に休めるのは一ヶ月程度らしい...一年中、芝居やってる人にはそりゃかないませんがな...総身役者、そんな彼が出演する「男の純情」とっても楽しみです。共演者は宇梶剛士、山崎銀之丞のふたり。この二人も個性むんむん、この三人のバトルはいかに...今から興味津々、楽しみな舞台になりそうです。

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一足お先に...

2018/05/25
【第1093回】

先日、一通のハガキが舞い込んだ...絵画個展の案内なのだが、遺作展と小さく記されていた。差出人のお姉さんから「顕子の作品是非観てほしい...」と添えられていた。長谷山顕子さんは繊細と大胆さを兼ね備えた素敵な女性でした。おいらも2、3年に1度くらいしか会えなかったのだが、最初の個展を拝見した時、彼女が如何様に精神世界をさ迷っているかという過程が少しは理解できたような気がした。何かを表現するときに人は錯乱し混迷を極めるのであるが、その先に夢の世界が訪れるのを心待ちしているからこそ悪戦苦闘の時間も耐えられるのである。彼女と最初にあったのは14年前くらいではなかったろうか?二十歳前後の創作意欲旺盛な女性であった。当時通っていたデザイン学校の教育方針にも異議を唱えていたような気がした。ある時、イタリアで勉強したいので相談したいといわれたので海外放浪推薦者のおいらとしては大いに勧めた記憶がある。個展会場に行くとお姉様が昨年の夏に亡くなった状況を説明してくれた。死の直前まで創作意欲は旺盛だったようだ。作品群の中に顕子さんが綴った文章も記されていた。

 

「毎日を生きる中で、私たちはこの地上にたくさんの足跡をつけている。

 あなたはどんな足跡をつけているだろうか。

 あなたの最後の一歩、そのあと、

 あなたがいなくなったそこにはどんなものが残るだろうか。

 私やあなたが通る道=足跡に、たくさんの小さな花、悦びが咲きますように。

 生きている間に、たくさんの種を蒔いていく。

 そんな風に生きていくこと、命を輝かせることができますように。

 そんな祈りを込めて...」

 長谷山顕子≪足跡≫より

 

33歳で逝った長谷山顕子さん、貴女の残した作品、言葉は残された者の記憶にしっかりと刻まれていますので...ゆっくりやすんでくださいね。

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長谷山顕子展<還る>

2018/05/23
【第1092回】

若者が正直に話し、世俗に塗れ権謀術数ばかりを学習し平気で嘘をつくオヤジ達...昨日の日大アメフト部の部員のインタビューを聞きながら情けなくなっちゃいました。大人になるってこといけないことを証明してるもんですな。純粋無垢な魂を持って生まれた人間を、敢えて正義と反対のベクトルに向かわせるこの国のシステムに問題があるんですね...20歳の若者を矢面に立たせて巨大マンモス大学の幹部は何しとるんですかね。この構図は、今のモリカケ問題と相通じるものがあります。権力のしもべとして遣える者が、罪を背負い込み死に至った大阪財務局の公務員の件なんか、もっと問題視しなきゃならんのではなかろうか...無名の庶民の死にすら無情でいられるこの国のエリート軍団。そりゃそうだよね、トップがセメント大臣だもんね。またまた言っちゃいましたね...米朝会談で刈り上げ君が乗るであろう北朝鮮の専用機に対して「途中で落っこちちゃったら」という発言。この国際感覚の無さ、世界のセクハラ問題に対する意識の無さと通じるものがあるレベル。これに何の意見も言えないあべかわ餅。本当に困ったもんでございます...この国は、ますます真実を言ったら呼吸困難に陥る窮屈な国になっちまいました。おいらは左翼でも右翼でもありませんことよ...自由に翼を拡げて大空を軽快に飛翔する自由翼ってところかな。あの世に逝くまで、まだまだ面白可笑しく旋回しますがな。

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新宿サザンタワー2

2018/05/21
【第1091回】

久しぶりに中国映画を鑑賞...「山河ノスタルジア」冒頭から、なんじゃこりゃ嘗ての日活青春映画じゃありませんかいな。ヒロインは浅丘ルリ子と笹森礼子を足して二で割った女優、男優は浜田光夫クラスではなく脇役レベルの地味系の俳優。あくまでもヒロインを立てる設定。1999年から2025年にわたる大河ドラマなのだが、何とも大味の感じ。その点も、あの日活青春映画に共通する点があるのだが、日活の荒唐無稽さがない分面白味に欠ける。
要するに全てが中途半端で、どこ観りゃいいんじゃいみたいな映画でした。おいらの記憶に残る中国映画は「ラストエンペラー」「さらば、わが愛/覇王別姫」「山の郵便配達」「芙蓉鎮」特に印象に残っている作品が「芙蓉鎮」1966年から1976年まで続いた文化大革命の時間軸で翻弄される民衆の苦悩、愛憎を描いた謝晋監督の傑作。文革が終えてまだ10年しか経ていないなか、よくぞ製作したなという思いだ。一歩間違えば拘束、思想犯として獄中に入れられる運命だったかもしれない。若い人にぜひ観てもらいたいな...今や世界に大国として君臨している中国の歴史を「ラストエンペラー」と共に鑑賞すると中国の闇を垣間見ることが出来るかもしれないな...それにしてもだ、こんな体験をしているにもかかわらず、南シナ海で国際法を無視して、人工島を建造し、空母艦を造り軍拡に邁進する中国。中国に限らず世界の指導者、歴史に学びませんな...身の保身、権力亡者ほんまにあんぽんたん揃いでござりまする。またしても、時の権力者によって民衆は右往左往させられるんでしょうかね...しっかり監視しないとあきません皆の衆。

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お空にスケッチ

2018/05/18
【第1090回】

東日本大震災から7年...岩手県大槌町に、18歳になる高校生男子を同じ18歳の女優さんが訪ねる番組があった。当時11歳だった彼の家族で生き残ったのはお父さんと彼のみ。母親、弟、祖父、祖母の4人が車で避難途中に津波にのみ込まれる...7年間の記録の中で、男親として彼を育てるお父さんは常に泣いていた。その涙は、もちろん悔しさ、深甚さを含め様々な感情を感じさせ、見る側に迫るものがあった。慣れない手つきで野菜を切り刻む仕草、食卓での二人の気配りしながらの会話。この7年間の親子の葛藤が手に取るように描かれていた...高校の卒業式で父親がカメラを回しながら、とても嬉しそうな表情が印象的であった。故郷を離れ、東京のデザイン専門学校に進学する息子の旅立ちに嬉しさと寂しさが入り交じり又しても大粒の涙が流れだす。この涙の一粒一粒に、あの震災の惨さを感じる。この親子の他にも様々なドラマが存在するに違いない...なのに、原発を強引に再稼働しようとする国の姿勢が不可解でならない。日立製作所が計画している英国での原子力発電所の建設事業を巡り、日立と英国政府の協議が週内にも決着し、早ければ月内に合意する見通しとなったことも解せない。企業も利益を生み出すのが使命なのは理解できるが、7年前のあの事故が、こんなにも早く風化していくこの国の在り方に心寂しいどころか、薄気味悪さを禁じ得ない。この火山に囲まれた小さな地震国...何を大切にしなければいけないのか?その本当の意味、価値をもういちど考えてみようじゃありませんか皆の衆。

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新宿サザンタワー

2018/05/16
【第1089回】

毎日新聞社特別編集委員でニュース番組のコメンテーターなどを務めた岸井成格さんが15日、肺腺がんのため自宅で亡くなった...熱いものを感じるジャーナリストであった。随分前、時の佐藤首相が記者団を前にして「新聞は嫌いだ」と発言した時に、真っ先に他の記者に声をかけ退室したそうだ。常に権力に対する監視役として購読者、視聴者に対してわかりやすく語り掛けた最後の真のジャーナリストではなかったかと思う。右寄りの人には左翼と映るかもしれないけど、おいらには常に庶民の視点から社会、政治を論じた人だと思う。彼のジャーナリストとしての覚悟を決めたのが水俣病の事件。虐げられた人の声を救い上げるのがジャーナリストの使命だ。民放でのテレビの発言、いやNHKも然り、この世界で飯を食ってるキャスターの発言は実に神経を労してコメントしているのがよくわかる。岸井さんも民放のコメンテーターのアンカーを務めていたのだが、あまりの安倍政権の横暴に堪らず激論を吐き外された経緯がある。権力、財界にたいして如何に立ち振る舞うか?この術に長けてないとこの立場を死守することは難しい。今や長老になった田原総一朗なんかはもはや役者の粋ではなかろうか...それにしても、これぞと思うジャーナリストが数少くなってきているのも確かだ。おいらの岸井さんの思い出は、夜遅くどこかで飲んできて赤ら顔で照れることもなく、正論をいけしゃあしゃあとテレビの前で陽気に語っていたいたずら岸井少年。少年の面影を感じさせない男は男じゃありまっせん!73歳でまだまだやり残したことはあるかとは思いますが、貴方の歯切れ良い言葉は万人の記憶に歴然と記されている筈です...お疲れさまでした。

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今年も咲いたよ!
(2008年紀伊國屋演劇賞団体賞の時に頂いた花)

2018/05/14
【第1088回】

先週の土曜日、吉祥寺で食事した帰りの井の頭線での一コマ...おいらの隣に、小学5年生くらいの男の子がライオンズの帽子を被っていたので、思わず「ライオンズのファンなの?」と聞くと「はい!」40歳前後のご夫婦と弟、妹も一緒でした。先週メットライフ球場でライオンズの試合を観戦したとのこと。誰が好きなの?と聞くと山川という答えが返ってきました。昨年後半からブレークした沖縄出身の内野手、愛くるしい顔でバットをブルンブルンと振り回すホームランバッターです。西鉄ライオンズ時代の怪童中西太を彷彿させる豪快な選手のニューヒーロの出現で子供に大受けといったところかな。なにせ空振りした時にヘルメットがぶっ飛んでしまうくらいの迫力ですから子供は大喜び。三振した時のやっちゃった表情もマンガになりますな...プロ野球もショーですから魅せてくれんと銭払えませんがな。真面目一筋は高校野球で十分ですからね...この少年、守備はライトで打順は8番の少年野球チームで頑張っているらしい。お父さんも熊本の出身でライオンズのファンだとのこと。同じ熊本出身の秋山幸二選手が大好きで、子供に伝説のホームベース上でのバク転を嬉しそうに説明していました。弟も野球、妹はサッカー、三人の子供皆ほんまにええ顔しとりました。勉強なんかせんでよか!スポーツと遊びに夢中になりなさい...といいたいところでしたが、両親に渋い顔されそうなので止めときました。子供から子供らしい顔が消えつつある勉強第一主義の昨今、スポーツ好きでこんがりと焼けた少年少女を見ると何だかほっとします。昨日は母の日、土曜日の野球少年の顔を想い出しながら、おいらも小学生の時に夜鍋をして布のグローブを作ってくれた母を想い出しました。高価な革のグローブがが買えずシュンとしていたおいらのために作ってくれた布のグローブは今でもおいらの心の宝物です...3年前に97歳で亡くなったかあちゃんありがとう!

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托鉢僧 何を見る?

2018/05/11
【第1087回】

朝鮮情勢が慌ただしい中、この国は未だにモリカケでちんたらしとります。昨日の参考人招致でも官僚がするりするりと答弁して知らぬ存ぜぬ答弁。セメント大臣は相変わらずセクハラが当たり前のような談話を連発...この国に未来がないのがはっきりしましたな。こんな政治家に税金払ってると思うと腹立ちますな。諸問題が山積してるというのに一向に前に進まない国の姿に若者はしらけてしまい夜の巷を彷徨っています。昨日の新宿の夜も遅くまで多くの若者、外人がふらついていました。久しぶりにゴールデン街に立ち寄るも、異国の地に来た感覚に襲われます。だって6割~7割外人なんですから、おいらが長年通ってる老舗の店「ガルガンチュア」なんぞは、英語で「外国の観光客お断り」と張り紙してありました。お店に入り、一杯のドリンクで長居された挙げ句の果てに、会計の段になるとお通し代で一悶着。そう言えば、外国にはお通しなんてないもんな...でも、ここは日本です。郷に入れば郷に従えってわけでござんす。もう一ついえば、ゴールデン街を古く知っているおいらに言わせれば、この地は観光地ではございません。新宿の数々の文化を輩出した聖地でございます。この狭いカウンターの席が外人観光客に占拠されちゃ、もはやゴールデン街ではございません事よ。新宿西口の想い出横丁も今や国際通りになっちゃいましたが、ここは飲み食いするところでありますから問題ないと思いますが...それにしても50年近くゴールデン街フラフラしとりますが、この佇まいが観られなくなったときには、もはや新宿は新宿では無いんでしょうな...おいらが先に逝くかゴールデン街が消滅するか、どげんなるんでしょうかね?

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揺るぎない姿

2018/05/09
【第1086回】

GWの間、絶好調のライオンズの試合をパリーグテレビで見ていたのだが、嫌なシーンを何度も見ちゃいました。仙台での楽天3連戦、楽天はあえなく3連敗したのだが、球場には連日満員御礼の大盛況。連休中でもあり多くのチビッ子野球ファンが詰めかけ楽天選手に大声援を送っていました。そんな盛り上がりの中、楽天の助っ人外人のはしたない光景を目にしたとき、野球への愛がないプレーヤーに見えちゃいました。三振した後、バットを真っ二つに折っちゃうんですから、こんなシーン前代未聞。そのバットを投げ捨て憮然とした表情でベンチに向かう姿...チビッ子ファンは悲しい顔をしたに違いない。おんどりゃ!何のおかげで飯食えてんの?バットのお陰でしょうが...こんなことわからん奴が野球やっちゃいけません。又、それを咎めない監督、コーチ、選手、最下位に低迷する楽天を象徴しとりますがな。もう一人の外人選手も、三振した悔しさからヘルメットをベンチの壁にぶっつけてました。己のせいやんか、頭を守ってくれてるヘルメットに失礼しちゃいますがな...この外人助っ人たち、まさしく害人です、即刻母国に帰っておくんさいと言いたい。今後、どんなに活躍しようが、こんな選手には二度と拍手は送りたくありませんね。その点、我がライオンズの選手は皆マナーは上々です。おいらも少年時代は野球選手に憧れ、夢は西鉄ライオンズの一員になるのが夢でした...平和台球場で観るライオンズの選手の胸躍るプレーを観ながら、どれだけの夢と希望とロマンを頂いたことか...そんな子どもたちが球場に足を運んでることを忘れちゃいけませんぞなもし。

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アンネ・フランクのバラ

2018/05/07
【第1085回】

長いGWも終わり今日からまた仕事が始まりました...おいらはのんびりと杉並の新緑を楽しみながら近場を散策してました。毎度のことながらこの季節のピカピカ葉っぱちゃんには心が洗われ、勇気を貰います。良いことも悪いこともちゃらにしてしまうとてつもなく大きなものを感じます。今年亡くなった石牟礼道子さんも言ってました。東京に出てくるとアスファルトに封じ込まれた土が呼吸不全に陥り、自分自身も呼吸困難になってしまうと...だからこそ、このアスファルトジャングルの中、逞しく壮大に春の訪れを告知する樹木たちに感動するんですね。よくやった!大気汚染と僅かな大地の隙間から今年も、自然破壊の第一人者ニンゲンを恨むことなくプレゼントしてくれるんだから大したもんでございます。そんなことを思いながらも、5月2日にF氏と気持ちよく痛飲した帰り、バス停近くで立ち止まっていると40代半ばの男が「邪魔くせい!」と吐き捨てながら立ち去るので、温厚なおいらも思わずかっとなり「なんだよ...言い方ってものがあるだろう」と怒っちゃいました。その男、ニヤニヤ嫌味な顔してへらへらしとりました。最近、国会を騒がせてる森友問題のS氏、加計問題のY氏の人相に似てましたな...後で反省しました。そんなレベルの人間に対等にブチ切れるおいらが情けなくなりました。まだまだ人間修業が足りませんな...人からも自然界からもいろんなこと教えて頂いてる今日この頃です。

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GW最後の日の公園

2018/04/27
【第1084回】

昨日、第43回菊田一夫演劇賞の授賞式がありました。今年の2月に上演した「Sing a Song」に出演した戸田恵子さんが見事受賞しました。この日、和服で登場した戸田さん、とっても素敵でした。素敵な女優さんは何着ても様になるんですね...受賞の挨拶で「この賞は、この芝居に関わったすべての人で頂いた賞です...」芝居に長年関わった人から発する言葉だと思いました。この日は、キャスト、スタッフも当然のことながら出席しました、皆、我がことのように嬉しそうな笑顔が印象的でした。どんな分野であろうと、その一つ一つの行為が芝居の精度を極めクオリティの高い作品に仕立て上げるのが演劇です...少しの綻びが芝居の流れを狂わせ結果的に悔いが残る結果になることが多々あります。技術はもちろんですが、一番大切なのは作品を良くしよう!という気持ちです。心無き人が作った作品が観客に届くはずがありません...授賞式会場の隣が、なんと一ツ橋講堂でした。想い出しました。50年前、建て替え前のこの講堂で、おいら初舞台踏みました。演目は清水邦夫さんの作品「あの日たち」不器用なおいら、大声張り上げながら芝居の冒頭に棒立ちしてた気がします。あの日から50年経て、この日プロデューサーとしてこの地に居るのも何だか不思議な気がします。一時は芝居からも遠のきながらも、こうやって演劇に関わってることに感謝。やっぱ好きやねん芝居が人間がね...どなんなるかわからん筋書きのない人生ドラマが性に合うんでしょうな。
明日から世の中GWに突入いたします。このコラムもお休みです...みなさんもご機嫌なGWでありますように...

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Sing a Song

2018/04/25
【第1083回】

長年の友人、紀藤ヒロシが4月19日に68歳で亡くなりました...1976年の真夏、新宿花園神社の社務所の一室で彼と出会った。三国連太郎さんを座長とした芝居「からふとの詩・血に咽ぶ霧の伝説」の出演者のひとりとして貴方は芸能人面した生意気そうな顔してましたね...おいらはアングラ俳優の一人として参加してました。同じくまだ無名だった風間杜夫もここで出会いました。何が芸能人かよ!といきがってたアングラ一派は貴方を無視してました。ただ一人杜夫ちゃんが貴方に優しかった...それから数年後、貴方は世に出た杜夫ちゃんと、その後も切れることなく長い付き合いをしていることを知りました。おいらも杜夫ちゃんをひとり芝居に引きずり込み、貴方と再会することとなりました。貴方は演歌歌手としてカラオケ教室の先生として頑張ってましたね...おいらが貴方を尊敬するようになったのは、あの小さな身体のハンディを背負いながらも、いつも明るく優しくあらゆる人たちに接していた姿です。思うに、昨年亡くなった貴方のお母様の愛情あふれる育て方が良かったんですね。お母様から受けた愛情をそのまま世間に恩返してたんだと納得しました。芝居にもたくさんのお客を連れて来てくれてありがとう!毎年恒例の紀藤ヒロシを囲む会にも呼んでくれてありがとう!なにやっても憎めない紀藤ちゃん、貴方の早口過ぎて聞き取れない声が、もう聞けないなんて寂しすぎるよ...でも、よく頑張った!6月9日の偲ぶ会で、みんなが貴方の人柄を称えると思うよ...お疲れさまでした。

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野に咲くシャクナゲ

2018/04/23
【第1082回】

戦士の休息...4月20日~22日、社員研修旅行で四万温泉に行ってまいりました。何の研修や?と聞かれそうなんですが、それは企業秘密ですがな...トムの皆さん本当によく働いていただいております。今年も正月明けから稽古が始まって「Sing a Song」「砦」の2本無事に終えることができました。少数精鋭部隊の見事な活躍で今年も順調な滑り出し、ここらで暫し温泉でも浸かって心身のメンテナンスというわけでございます。関東にもいろんな温泉ありますけど、この四万温泉湯量豊富な源泉かけ流しがとってもよござんす。2日連泊しての温泉三昧はこの世の天国。眺め良しの半露天風呂、汗が滴れ落ちてくる源泉サウナ、河原の清流を聞きながらの大浴場などなど七つの浴場があるんでございます。夜は美味しい日本酒でわいわいがやがや、冗談トーク連発で大盛り上がり...あまりの料理の美味しさと笑いの渦で、研修のテーマがぶっ飛んでしまいました。改めてトム・プロジェクトの社員の質の良さを再確認した次第です...なにも考えず、ぼんやりと青空を眺めながら湯に身を任す幸せな時間を持てる幸せをつくづくと感じた3日間でした。来年も、再来年も、いや未来永劫こんな至福のひとときを持てる会社の環境、人との繋がりを大切にしたいな...さてさて、今日から今後上演する芝居の準備。前半の勢いをそのままに後半戦に備えたいと思っとります。あっ!忘れてました。この四万温泉に美味しいうな重を食べさせる店があるんですよ。お店の名前は「くれない」温泉水の蒸気で蒸しあげていて、柔らかくふっくらとした食感のうな重。かりっとした焼き具合も上々、温泉とうな重、その組み合わせも今一つしっくりこないのだが、美味けりゃ馴染んでくるってわけさ...今でもあの極上の鰻の食感が甦ってきますがな。

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四万温泉

2018/04/20
【第1081回】

ミュージカル「リトル・ナイト・ミュージック」を観劇...風間杜夫初めてのミュージカル出演ということで大変話題になっていました。彼の師匠つかこうへいさんからも「風間、間違ってもミュージカルだけには出るな...」言われていた禁断の劇に出ちゃったんです。70歳を前にしての大変な決断だったそうな。いやいや、杜夫ちゃん頑張ってましたよ。周りのほとんどがミュージカルの常連、大竹しのぶと風間杜夫の役者組がミュージカルをドラマにしてたような気がしました。おいら、どちらかというとあんまりミュージカル好きではありませんことよ。だって異国のメロディを日本語に訳して歌うことに大変な違和感を感じます。そしてやたら美声で歌ってますなんて佇まいが大仰な気がしてなりません。そのスタイルが劇的な部分を弱め、なんだか美声の品評会のように見えてしまうんですな...その点、今回の役者二人のやり取りは歌の中に人間味が程よく刷り込まれ芝居としても成立していました。終演後、例によって宴の席で褒めてやりましたよ...いくつになっても挑戦を厭わない役者魂に乾杯!どんな名声を得ようとも、更なる上を目指す俳優こそ真の表現者です。今年も一人芝居「ピース」演じます。来年は古希を記念して一人芝居の8本目の新作を加えての「平和三部作」一挙上演も企画中です。ますます元気な杜夫ちゃん、貴方の才能あふれる一人芝居を楽しみにしている人が全国津々浦々いますけん、くれぐれもご自愛くださいませ。

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街の小さな喫茶店

2018/04/18
【第1080回】

なんだかまだまだ肌寒い日が続いていますね...最近は新宿に限らず都内のあちらこちらに立ち飲みの居酒屋が増えてきてますね。外国に行くと、その飲み姿がなんとも粋に感じるんですが、この国はまだまだ慣れてないのか、まだまだやぼったい感じがしますな。ただ安いからこの店で飲んでるという佇まいが寂しいな...なにも気取ったポーズで飲めなんて言ってませんよ。お酒を余裕持って飲んで欲しいなと思います。昨日も新宿思い出横丁のごみごみしたところに、外人観光客がひしめき合うように飲み食いしてるんですが、なんだか無邪気な子供のようでもありました。すべからく何事も遊び心が大切ですね...酒飲むにしても楽しんで飲みなはれ!愚痴を言ったり、他人の悪口言ったりの酒なんてまずいに決まってるじゃありませんか。酒をよき潤滑剤として人のつながりを円滑にして、また明日も頑張ろうなんて月並みなんですが一番よろしゅうございます。おいらの好きなスペインのバル、ちょいと飲んでつまんで又、次の店に出かけるはしご酒。これがスペインの粋な飲み方なんですよ...アンダルシアの田舎のバルに行くと、暇な年寄りが朝からワイン片手に、道行く若い娘さんのお尻ぷりぷり闊歩する姿を、穴があくように見つめる姿がなんとも微笑ましく感じるのもお国柄のせいですかな...なにはともあれ快適な季節に溶け合う酒でありたいものですな...昨日も駅のホームで新入社員らしき者がゲロってましたよ。これも社会人一年生の儀式かもしれませんが、スマートではありませんことよ。何事も、一度は許してくれはりますけど、二度目はあきまへんで...

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日本古来の花

2018/04/16
【第1079回】

昨日、「砦」の東京公演、無事両国シアターカイで千秋楽を迎えることができました...日々進化するこの芝居、言葉の持つチカラと、今の時代に即したテーマ性、その大切さを十分に把握した俳優の意識の高さが相まって見事な再演になりました。70歳を超えた2人の名優はさることながら、様々な役をこなした3人の役者の演技に心打つものがありました。地道にサポートできる共演者がいると心強いものがあります。この仕事、どうしても己が目立ちたいという役者の業が頭をもたげがちなのだが、今回の3人は、唯々いい芝居にしたいという一心で取り組んできました。この3人で30人分の仕事をしている感じすらしました。よくぞやったあっぱれ三人衆!芝居もいいんだが人柄が更にいいときたもんだから文句のつけようがございません。長い旅公演が続くと人間関係がうまくいかなくなり、なんとなく気まずいツアーになりまして、早く公演終わらないかな...なんてことになれば、当然のことながら芝居の中身がひび割れ状態になっちまうんですね。こうなると、何のために無駄な労力を費やしてなにやってるんだろう?なんて虚しい感情がむらむらと立ち上り、徒労の旅芝居になっちまうんでござんす。いままでにこんなことがあったかって?いやいや、そのためにキャストもスタッフも十分に人間性を吟味して選出しているんでございますよ...でも、そんな素振り身振りを感じた時は向こうを上回る演技も必要ですね...製作者も役者の素養がないと務まりませんことよ。

終演後、役者さんと両国国技館を眺めながらちゃんこ料理に舌鼓をうちました。元大関霧島が経営しているお店です。さすがちゃんこ、刺身にしてもけた外れのある厚みと量、こんなもん毎日食べてたらどすこいになっちますばい。ちゃんこ鍋の具も然り、暫し関取気分を楽しませていただきました。「砦」に関わったキャスト、スタッフの皆さん事故もなく怪我もなく無事公演を成功させてくれてありがとう...そして、この公演に足を運んでくれた多くの皆さん本当にありがとうございました。2020年に再々演が実現できればなと思いつつ両国を後にしました。

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両国

2018/04/13
【第1078回】

一昨日、おめでたい席に出席いたしました...本多劇場グループの主宰者、本多一夫さんが第52回吉川英治文化賞を受賞しました。あの下北沢の街を演劇の街にしたんですから、その功績は大だと思ってました。おいらは以前から、なんで本多さんが演劇に関する賞を授与されないんだろうと長年不思議に思ってきました。読売演劇大賞の投票委員になってからは毎年特別賞に本多さんに尊い一票を投じてきました。芝居は小屋がなければ出番はありません。その小屋を、下北沢の街に財産を注ぎ込んで七つも作ったんですから、まさしく表彰状もんでございます。表舞台の役者ばかりに光を当てないで、それこそ縁の下の力持ちである本多さんみたいな人に感謝の気持ちを形にしないといかんと常々思っていたので、本当に嬉しい授賞式でした。受賞の挨拶で「こんな賞いただいたので、これを記念してもうひとつ劇場を作りたいと思ってます。劇場の名前は吉川の吉と私の本の一字ずつを頂いて、吉本劇場にしようと思ったんですが、これはさすがにまずいですよね...」こんな冗談を喋る本多さんは本当にチャーミングです。御年84歳、北海道から出てきて新東宝のニューフェイスに合格し俳優の道を志した夢を、若き演劇人が芝居をやれる場へと発展させ、多くの演劇人を育ててきた志、とっても素敵です。おいらも本多劇場グループの小屋で随分と芝居をやらせていただきました。芝居が終わった後の一杯がまた楽しいもんでございます。演劇で多くの若者が集い多種多様な飲み屋が誕生しました...終演後の芝居談義もまた更なる進化への一歩です。街から若者の声が聞こえなくなったときに街の灯は消えてしまいます。劇場が街の往来に弾みをつけ活性化していく様を見続けた本多一夫さん、帝国ホテルの授賞式で最年長ながら一番若々しく見えましたよ...本当におめでとうございました。

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春薄暮

2018/04/11
【第1077回】

昨日「砦」の東京公演の初日を迎えることが出来ました。先月より北海道、四国を巡演してからの公演です。この国では現在、公共事業を含め様々な問題をめぐり大変な騒ぎになっており、今回の上演はタイムリーな作品になっているのではなかろうか...それにしても主人公である実在の人物室原知幸さんのダム建設に対し、徹底的反対する様は尋常ではない。今の政治、行政、司法の歪みに対し敢然と闘う市井の人たちと何故か重なる。そしてその夫に従順に寄り添った奥さんの心情が、夫婦の深い情愛へと繋がっていく。二人だけの旗を作っていく過程に中に、夫婦の得もいえぬ葛藤が観客の心を捉えて放さない。

僅か5人の登場人物でこの壮大なドラマを創りあげた東憲司さんの筆力、演出力はただものではない。東さんの描く世界には、常に弱者に対する慈しみが満ちあふれている。演劇も様々なジャンルがあって当然なのだが、おいらにとっての芝居は常に名も無き市井の人たちの目線で創りたいと願っている。なにもプロパガンダ劇を創ろうとは思っていないし、警鐘劇なんて考えても居ない。唯々、ささやかながら懸命に生きている人たちの貴重な汗に通じるドラマを産み出していきたいと思っているだけだ...

4月15日(日)までの公演です。今この時期、観て損はさせない芝居ですぞ!

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ビルの春

2018/04/09
【第1076回】

「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 」を鑑賞...エンターテインメントの巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が描く社会派作品。40年前のベトナム戦争に関わる最高機密文章をワシントン・ポスト社が 報道すべきかどうかを巡る顛末を描いた作品。この監督のホロコーストを描いた「シンドラーのリスト」は、いまでもおいらの記憶に残る傑作のひとつです。 ジョン・ウィリアムズ作曲のテーマ曲が流れる度に、数々のシーンが浮かび上がってくるんですからたまりません。今回の作品は叙情性を極力排除し事の顛末をリアルに積み重ねたドキュメンタリータッチの作品ながら、メリル・ストリープとトム・ハンクスが共演し、さすがに実在の人物像を的確に表現し人間ドラマとしても立派に成立させています。この映画の制作が決まったのは、トランプ政権が発足してわずか25日だったというから、製作側も相当の覚悟で踏み切ったんでは無かろうか...今尚、トランプ大統領がワシントン・ポスト紙に対し再三フェイクニュースと喚き叫んでいるだけに、タイムリーな作品だと思います...アメリカだけではございません。この日本国においても公文書改竄、自衛隊日報隠蔽などなど問題になってます。そう言う意味でもスピルバーグ監督の現代を切り取る臭覚はただものではございません。演劇、映画は時代とともにあるものですからね...この映画の中でも言ってるんですが「報道が仕えているのは国民であり、統治者(政府)ではない」。その通りでございます。権力者が都合の悪いジャーナリストを排除し、公務員が庶民に顔を背け、権力者にすり寄る構図が出来つつある日本国、よそ事ではございませんことよ。一昨日も、映画の帰りに新宿西口広場で一般市民がプラカードを掲げ現政権を糾弾していました。ほとんどが初老の男女、未来の子供のために体を張っての行動頭が下がります...知らんぷりはいけませんことよ皆の衆。

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ハナミズキ

2018/04/06
【第1075回】

春から演技がよござんす...つい先月下旬に旅公演を終えたばかりの「Sing a Song」で三上あい子役を演じた戸田恵子さんが第43回菊田一夫演劇賞を受賞しました。東京で初日を開けてから、いろんなところでいい評判を聞いてはいたのだが嬉しい限りです。戸田さん自ら言っていたのだが「この賞は、この芝居に関わったキャスト・スタッフ全員で受賞したものです。」さすが戸田さんも良く分かっていらっしゃいます。主人公を支える共演者の演技の密度が大変濃く、三上あい子の人間像を見事に浮かび上がらせていると思いました。これはなかなか簡単なようで難しい作業なんです。それをコントロールした演出家、その演出を信じた作家、日々ミスを恐れず細心の注意を怠らず舞台を進行させたスタッフのチカラが上手く嚙み合ったからこその結果です。いい舞台を創るために、持てるチカラを惜しみなく注ぎながら進行していく舞台のありかたに改めて乾杯!誰一人としてアクシデントもなく31ステージをこなせたのも舞台に対する限りない愛情と責任感があったからこそだと思います。そして今回の受賞、その苦労が報われたってわけだ...なにも賞を取るために芝居やってるんじゃございませんよ。おいらが一番嬉しいのは、お客さんが喜んでくれることでございます。特に、なかなか芝居を観れない地方のお客さんが満面の笑みを浮かべて劇場を後にする姿を見たときなんぞは、おいらの方が涙チョチョきれますばい...

この作品、秋から暮れにかけての賞レースにも出場しそうな気がします。その勢いで再来年辺り再演できればと思ってます。まだ観ぬ多くの人達にお届けしたい作品です。なんといっても三上あい子のこの台詞が気にいってます。「人を死に追いやるような歌は歌じゃない。だから私は絶対に軍歌は歌わない。」改めて申します...戦争は絶対やってはいけません!

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まだまだしぶとく

2018/04/04
【第1074回】

いつものことながら、樹々に芽吹く新しい葉には生きててよかったという喜びを感じさせてくれます。誰に頼まれたわけではなく、いつものようにサクラが散った頃から、さりげなく芽吹く姿は愛おしくもあり、おいらも「待ってたよ...」なんて言葉を掛けたくなります。こんな不透明な時代だからこそ、自然の持つチカラに改めて救われ、失意に落ち込んでいるときなんぞは、もう一度やってみよう!なんて気持ちにさせてくれます。なんといっても色鮮やかなピカピカの葉色に心洗われます...邪悪な心であればあるほど、あの色でお掃除してくれそうな気がしますね。そんな神さんにも匹敵する樹々を伐採し地球を汚し続けているニンゲンという生き物はなんなんでしょうね...自然界の復讐は、すでに世界のあちこちで起きており、このままいけば地球滅亡のシナリオが現実化しそうな勢いです...聖なる自然界の掟は厳然と存在します。空を見なさい!樹々の変化を捉えなさい!空気を感じなさい!これらの当たり前の作動を出来なくなったときに生き物は死に絶えるでしょう...おいらは、どんなことがあっても、この動作を習慣化してます。そうすれば、少々上手く事が運ばなくてもドンマイドンマイという声が聞こえてきます。身の回りに、こんな助っ人がうじゃうじゃ蠢いているのに、気付かず感じずにいる人達が、それこそうじゃうじゃいるんでございます。自然はいつも助太刀したがっているんですから、もったいない話でございます。あのキラキラ葉っぱちゃん見てると、今日もルンルンしちゃうおいらです。

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今年も出会えたネ

2018/04/02
【第1073回】

待ってました!いよいよプロ野球開幕...ライオンズはむしゃむしゃとハムを喰いちぎっての3連勝でのスタート。10年ぶりの優勝も夢ではなくなったと思いますが、何せ始まったばかり、こればかりは正直この時期では皆目見当がつきません。がしかし、走攻守がぴったしカンカン、まさしく野球の魅力満載の3連戦でした。特筆すべきは外崎、金子の盗塁、そして2年目源田の好打。派手な一発ホームランより、機に敏なるプレーの積み重ねこそ勝利の方程式なんでございます。地味ながら勝つための方法論を熟知した辻監督のライオンズ入団が、大味なライオンズの選手の意識改革に繋がりました。今年こそ、辻監督の胴上げを観たいものです。そして昨日、センバツ高校野球の準々決勝4試合行われました。高校野球で一番見ごたえあるのが準々決勝なんです。勝ち残った8チームがしのぎを削る必死の戦いは実に見ごたえがあります。第2試合の智辯和歌山(和歌山)と創成館(長崎)の試合は壮絶な打撃戦、最後の最後まで読めない試合でした。甲子園球場には魔物が棲んでいることを証明したような展開、下手なドラマ見てるよりも面白い筋書きのないドラマで魅了されてしまいます。逆転されても諦めないあの選手の精神構造はどうなってるんじゃろか?いろんなスポーツあるのだが、この高校野球でしか見ることができない不思議な現象です。チームが一塊の球になって球場に球魂を産み出すんですね。画面に映し出される球児たちの表情からそのことが十分に伝わってきます。この瞬間のために寝食を共にした、いがぐり頭の青春のキラキラした時間が視えてきます。おいらだって中学1年生の夏まではそうだったんだから...良くわかります。なんでも良かばい、人生一度でも無我夢中になれた時を体験できれば、それだけで生きてきた価値があるというもんでごわす。

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3月31日 満月と桜

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4月1日 最後の桜 善福寺川緑地公園

2018/03/30
【第1072回】

「スリー・ビルボード」鑑賞...いやいや、冒頭からラストまでスクリーンに釘付け状態でございました。今年のアカデミー主演女優賞を獲得したフランシス・マクドーマンドの演技が凄すぎます。これは演技を超越した生身の人間の表情、一貫して一つの顔で全編を貫き通しています。しかもノーメークに近い普通のオバサンってところがたまりません。だからこそ観客の想像力をどこまでも掻き立ててくれるどころか、彼女と一体化してしまいます。同じく助演男優賞を受賞したウディ・ハレルソンの芝居もこの映画の程良いアクセントを付けてくれてますね。カメラワークが実によい...ここまで俳優の表情をアップして持たせられたのも、俳優の芝居を信じ余計なテクニックを必要としなかったからではなかろうか。そして、いつもながら名作には素敵な音楽が必然...感情を露わにしない主人公の感情に寄り添うように流れる曲のテンポ、リズム、メロディが抜群である。嗚呼なんで日本では創れないの?そりゃ無理でしょう...今の日本の映画を創るスタンスが、原作は漫画、コミックが主流であり、主演俳優もモデル上がりの人気タレントを使わねば興行的にリスクを負う状態。なるほど上質、重厚な作品は創れませんがな...最近映画観まくってますが、映画館の前に立ち日本映画のポスターには目がいきません。なんだかお子様ランチのメニューを見てる感じがしてなりませんし、これではテレビで十分なんて気がします。でもこれじゃいけませんことよ...映画を心から愛し身を粉にして映画創りにいそしんでいる方々が沢山いると思います。そんな人達が日の目を見るような映画界であって欲しいですな...ガキの頃から西鉄ライオンズと映画を愛するおいらとしては切に願っとります。

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まだまだ愛でてくださいませ

2018/03/28
【第1071回】

サクラ満開、全快です...皆、心地よく浮かれとります。この時ばかりと、いやこの時を待ってましたとバカ騒ぎする輩には困ったもんでございます。昨日も花見の飲んだ勢いを車内まで持ち込んで周りに多大なる迷惑をまき散らしてる若者が居ました。注意しても、こんな状態では火に油を注ぐようなもんですから、いや逆襲され死に至る危険性もはらんでいるので止めときました。いくら空手の使い手といってもお歳も召してますし、刃物にはかないませんがな。おいらの若い頃の武勇伝が懐かしゅうございます。新宿の路上でチンピラ相手に極真ケンカ空手を何度も実践したあの日あの時...確かに、あのサクラの咲き方は人の感情を裂く狂気性を持ってますね、裂くらといっていいかもしれません。しばし、日頃のストレスを忘れサクラに身を預けたい気持ちもわからないわけではありませんが、サクラの美しさと潔さに相応しい姿で愛でたいもんですな。今年も例年のように新宿御苑に出かけようと思ったのだが、あの行列、そして外国の観光客の多さに少々辟易しとりますのでやめました。苑内に響く≷↔Å∫∽∝∬♪♩㏋⧺ℏ♭様々な言語が飛び交って頭がんがんしますがな...もはや日本ではありません。なんだかサクラも異国の花に見えてきます。情緒なんてもんは皆無、そんな御苑はもはやおいらにとっての御苑ではありません。狂乱の時期が去ったあと、ゆっくりと散策したいものです。身近な所にも素敵なサクラが咲き乱れてます...おのれの気持ちに添ったサクラの季節にしたいものですね。

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神田川のサクラ

2018/03/26
【第1070回】

昨日、東京亀有リリオホールで「Sing a Song」全31ステージ無事終えることが出来ました。1月5日の稽古初日から、ほぼ三ヶ月、事故もなく誰一人としてインフルエンザに感染することもなく完全達成。いやいや、奇跡でございます...いつものながら芝居の神様が見守ってくれてるんやなと感謝しとります。東京公演での高評価の勢いをそのまま地方に持って行くキャスト、スタッフの体力気力には、ほとほと感心いたします。これもいい芝居だからこそ、これだけのモチベーションを持てるんでしょう。昨日、終演後、役者さんと話をしたんですが地方公演のお客さんの反応にいたく感動したそうです。日頃はめったに観ることがない芝居に、新鮮な感性で観てくれる人達の熱い気持ちが舞台上の役者さんに伝わってくるんでしょうね。舞台に立った経験があるおいらにはよく分かります。この肌に突き刺さる感覚が生の舞台に立つ役者の財産になるんです。テレビ、映画では決して味わうことが出来ない醍醐味です。今まさに「生きてる...!」てな臨場感は、何事にも変えることができない貴重な瞬間です。今回の芝居は、少人数ながら6人の役者さんが個性的な役作りをしたことがドラマの展開に弾みを付け、ラストに至るまで観客を釘付けにしたのでは...これってなかなか難しいことなんですよ。ほとんどの芝居、どこかしら落ち零れがあり、今一つなんてことが多々あるのだが、今回の芝居も見事に6人の役者が皆活きてる!てな手応えがありましたね。

「舞台の素晴らしさは新鮮な感動であり発見です!観る側と創る側が夢を持てる舞台を創りたい!これが私達のメッセージです。」

これはトム・プロジェクトの社是です。これに叶った芝居が誕生し、全国津々浦々巡演できれば嬉しい限りです。今日からは「砦」の四国公演が始まります。待っててちょうだいね!吐夢は、読んで字の如く夢を吐き続けるチームですからね...

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こっちもあっちも満開

2018/03/22
【第1069回】

スペイン在住の画家、小林海来個展にギャラリー桜の木銀座まで行って来ました。4年振りの作品展です。彼はなんと3歳の頃から知ってます。おいらが初めてスペインに渡りマドリードのマヨール広場でインチキ大道芸やってる時に、見物人の投げ銭を拾って、おいらに渡してくれました。みーくんこの恩は一生忘れないと思い続け40年が経っちゃいました...月日が流れるのは早いもんでございます。おいらは芝居を創る羽目になり、みーくんは画家になっちゃいました。スペインと言えばアーチストの宝庫でございます。ピカソ、ダリ、ミロ、ガウディなどなど天才、奇才がごろごろしとります。あの太陽と海、そして乾いた大地、そんな中で育ってると遊び心が沸々と沸いてくるんですな...イスラム文化の影響も強いと思います。そこが同じヨーロッパの他の国との決定的な違いだと思います。そこにハポネスみーくんの和がプラスされるんですから、みーくんの絵は独自性を発揮しています。抽象画の面白いところは、こちらもあれこれ想像しながら遊び心を掻き立ててくれるところです。みーくんが何を見、何を食べ、どんな女性遍歴を経てきたか...ここんところが肝心とおいらみーくんに聞いてみました。4年前に比べて明らかに色使いが変わってきたので「女でしょう?」するとみーくん、にやにやしながらスペイン人になっとりました。ええこっちゃ、折角異国の地に居るんだから、腹一杯恋しなくちゃ。ここんところは素直に、偉大なる先輩ピカソを見習ってちょうだいな...みーくん¡Hasta luego!

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海来

2018/03/19
【第1068回】

先週の週末は映画観賞を堪能しました...金曜日は「グレイテスト・ショーマン」レ・ミゼラブルで圧倒的な演技、歌唱力を魅せつけたヒュージャックマン主演のミュージカル。こんな映画は、残念ながら日本映画界が逆立ちしたって作れっこないだろうなと思いながら観てました。出演しているどの俳優も個性があり、表現力も確かなものを持っている。ハリウッドには実力派俳優がゴロゴロしてるんだろうな...映画の評価は、まあ楽しめるんだけど浅いって感じ。特にサーカスグループに対しての扱いが雑であり、人間関係が希薄、歌と踊りで強引に押し切ったという印象を持ちました。昨日は「シェイプ・オブ・ウォーター 」を鑑賞。今年のアカデミー賞作品賞・監督賞・美術賞、作曲賞、を受賞したのも納得できる仕上がり。映像、音楽、演技どれもがバランスよく進行しラストの美しい映像で幕を閉じ、観客の心地良い余韻を残す。作品の良し悪しは、観客をどこまで想像力の羽根を拡げ伸ばしてくれるかの一点に尽きる。この作品を観ながら人種差別、男尊女卑、階級差別、性的マイノリティ、国家間の駆け引きなどなど、いくつもの問題点が交錯し愛の本質に迫る手法はなかなかのものである。監督はメキシコ出身のギレルモ・デル・トロ。なるほど土着、ファンタジアが程よく交流しながらセンスのいい作品に仕上がった。アスファルトジャングルでの思考から生まれてこない創造力、すべてが進歩、発展という名のもとに進行してきた現代社会の大きな課題、壁をぶち壊し、新しい価値観を生み出すのは、経済的にも恵まれず土着の中に潜む原色の鮮やかさのなかで育った人たちかもしれませんな...便利さから身を引き、不便の世界に身を置くことがもっとも幸せな道かもしれませんよ。

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今日の新宿駅東南口

2018/03/16
【第1067回】

連日、森友問題でマスコミは大騒ぎ...そんな折、東北学院大学名誉教授・岩本由輝さんがこんなことを書いていた。国が歴史的にも東北を利用し続けたことへの批判である。

2年後の「復興五輪」を掲げた東京五輪。誘致活動を始めたときは想定外だったのに、震災と原発事故が起きたからって利用するのは安直というか、無責任な感じがする。行政側は、景気づけに利用しようと思ってるかもしれません。被災者の人間としては、人の不幸をキャッチフレーズにしないで欲しい。東京五輪は東京五輪としてやればいい。政治家や官僚達は世間への体裁を取り繕っているだけで。本心では「まぁ、東北だからいいや」という考えがどこかにある。復興相も7年の安倍政権で7人変わり、前の復興相は、震災は「東北で良かった」などと言い更迭されたが、あれは失言ではなく本音でしょう。一人歩きしている絆という言葉には、なにか上から目線を感じてしまう。自分のところで心配のない人々が、哀れみを持って絆を強調しているのが見え見えで。そんなお仕着せなら願い下げだと思います。被災地の現実は、「絆でつながっている」とか、そんなもんじゃないんです...日本は一つと言いながら、絆が強調されるのは、現実には分断が進んでいるからこそ、なのかもしれません。

東日本大震災から7年、この反省から何も学ばず、政府・行政、今回の問題も含めてどこを向いて仕事をしているのか?全てが身の保全、多くの人達の汗水垂らした結果としての税金での生業の人達に猛省を促したい...防戦一方の政府、官僚。あんたらに最初にして最後になるかもしれない人間としての尊厳を示して欲しい。それやっとかないと、ご臨終のとき後悔しまっせ!

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もう少し待ってちょうだいな

2018/03/14
【第1066回】

なんじゃい!あの苦虫を噛み潰したような表情で、セメントをバックにして偉そうな顔で権力を牛耳ってるふりしてるおっさん、はよ退場せんかい。あんたが最高責任者だろ、頭もさげんで部下に押しつけて、ほんまに戦後最低の政治家ですばい。福岡に行くとあちこちにグループの名前を見かけるが県民の恥ですな...財界がらみ、お金と財閥の潤沢な資金を投じての当選回数でしょうな。黒ハット似合ってると思ってるんでしょうね...ちんちくりんですよ!なんて言おうなら即刻クビが飛ぶんで誰も言わんでしょうな。まさしく可哀想な裸の王様でござんす。と、ここまで書きたくなるような連日の報道。いつになったら、この国まともになるんでしょう...こんな政治屋を選んだのも残念ながら、この国の人達。いつになったらまともな選択出来るんでしょうか?おいらが生きてるうちは無理でしょう、いや未来永劫無理でしょうなんて思いで一杯でございます。

そんななか、公共事業とはなんぞや?ということに一石を投じた「砦」先ずは北海道の地方公演からスタートします。口を開かんことには、手足を動かさんことには何も始まりません。他人事みたいな顔してるあなた!後悔しますぞ...このコラム読んでる方には、そんなあんぽんたんなひとはいないと思っとります。

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新宿御苑の春

2018/03/12
【第1065回】

先週の土曜日、「砦」の最終稽古に行ってきました。ダムの底に沈む故郷に異議を唱え反対し、最後は敗れ去った室原友幸さん夫婦をベースにした芝居です。奇しくも事故から7年、未だに故郷に戻れない東日本大震災の被災者の人たちのことが重なりました。生まれ育った土地は、その人の人格、品格を育んでいきます。その土地でしか生まれないエキスを存分に吸い込み、たくさんの思い出を身体に染み込ませます。どこに行っても、その思い出は終生忘れることがありません。そんな故郷が見るも無惨な形になるなんて、ましてや帰還困難なんて状態になったときの衝撃は計り知ることができません。いつものことながら、こんなことも急速な時代の流れと共に風化し、過去のこととして忘れられるのが世の常です。

今回の「砦」の実話も、どれだけの人が知ってるんでしょうね...そんな無念の人達の気持ちを掬い上げ、利便性、発展、金儲けに邁進してきたこの時代に一石を投じていくことが、今まさに生きてる人達の責任だと思いますよ。ぼけっとしてたら、今日も話題になってる行政のごまかし、政治家の横暴、司法の権力への癒着みたいな体たらくに、気づくこともなくただただ日常のくだらないテレビのおちゃらけ番組を見ながらの垂れ流し人生になっちゃいますぞなもし...そんな人間をより多くつくり出し、時の権力者、経済優先の企業家の下部にしようとする企みに疑問を抱き、人が人として生きていける社会にせにゃなりませんがな。

と、言うわけで今回の「砦」ご覧になるとその辺のところがよく分かると思いますので、是非ご覧になってくださいませ。

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暮れそうで暮れぬ

2018/03/09
【第1064回】

旅の見知らぬ街でついふらりと入る素敵な店...これはもう直感としかいいようがない。入店して、しまった!と言うこともあり、おいらの勘ピューターがずばり当たれば、あぁこりゃこりゃと至福の時間を過ごすことが出来るというわけだ。入った瞬間の五感を揺るがす(ちょいオーバーかな?)店内の空気が大事です。棚に並べられた酒瓶の配置、中に立つ主人の立ち姿、カウンターの幅、長さ、質感、これもとっても重要でございます。椅子に座りグラスにアルコールを注ぐ振る舞いで、その店の佇まいが決まってしまいます。なんてえらそうなことをのたまわってますが、この一瞬一瞬の空気感が、このあとの心豊かな時間を期待させてくれるんですな...他のお客さんが誰もいないと、自ずからオーナーと話をしないとなんとなく気まずいので四方山話をするのだが、お互いの共通する話題が見つかるとしめしめ。あとは時間を忘れ会話とお酒で、瞬く間に時間が経過していきます...こんな時に店内に流れているBGMも、貴重な時空間をサポートしてくれる要素です。おいらなんかjazzが流れてるだけでご機嫌なんですが、レゲエ、ラテン、ボサノヴァなんて粋な曲が流れてくると踊り出したくなりますんね...ほんとにお調子もんで困ったもんでございます。トイレタイムに入ったトイレのインテリア、これは店のポリシーを決める決定的なものかもしれませんね。おしっこしながら壁に飾られたお洒落な絵なんぞ見たら、よしゃ!もう一杯なんて気分になりまっせ...そうやって微に入り細に入り戦略考えんと、お店は生き残ることはできませんがなもし。

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トイレに飾られた絵

2018/03/06
【第1063回】

昨日は福岡県行橋市での「Sing a Song」の公演に行ってきました。満員の中、俳優陣、スタッフも連日の公演にも拘わらず全力投球。戸田さんが登場すると拍手、大和田さんが登場すると更なる拍手。お客様も終始のりのりの環境の中で、最高の舞台でした。地方のお客さんに気づかされることがたくさんあります。まず第一に、何の予備知識なしに素直に芝居を観てくれること。第二に劇場を出てきた時の輝くような表情に、おいらも心が洗われる思いがします。まさしく一期一会、もう二度と会えることがないであろう土地に来て、芝居で出会えるなんてなんと素敵なことではなかろうか...良い芝居であれば、あの街、この町で語り継がれることは間違いないと思います。そして、この町、あの街から俳優、作家、演出家、美術家等々が輩出することがあれば、なんと夢がある仕事ではございませんか...この日、以前松下竜一さんの芝居でお世話になった方々が中津から9名来てくれました。皆さんの元気そうな顔を見ただけでうるうるしちゃいました。松下竜一さんと共に社会の歪みに敢然と闘ってきた梶原さんご夫婦、新木さんご家族、そして竜一さんのご子息健一さんご夫婦。めったに会えないけど、おいらは固い絆で繋がってますよ。今月中旬から松下竜一さん原作の「砦」の公演も始まります。今こそ、松下竜一さんの暗闇の思想が伝播することを願わずにはおられません。

終演後、俳優陣と共に食事に出かけました。魚も肉も安くて旨い「遊楽」で極楽の時間を過ごしました。一年に数回しか出回ってこない魚タケノコメバルの煮付けがめちゃ美味しかった。これは奇跡ですばい...そう言った店長が自ら店を空けラーメン店、行橋で歴史あるバーにまで案内してくれました。こんな親切な人はおらんですばい。ホテルに戻ったのが午前1時...ほんごつ今夜は最高!の行橋でした。

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行橋駅

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月曜日水揚げされたタコ

2018/03/02
【第1062回】

第25回読売演劇大賞の受賞式、この賞の投票委員として帝国ホテルに行って来ました...大賞を受賞された宮沢りえさん、それはそれはお美しゅうございました。先日も堤真一さんとの共演「近松心中物語」観に行ったのだが、あの細さで折れ尽きんばかりの演技でしたが、ちょい心配しますね。美しさを維持するための体調管理はわかりますが、これが芸能界でごわす...この授賞式で嬉しかったのは三つ。トム所属の劇団チョコレートケーキの演出家、日澤雄介さんが優秀演出家受賞。トムお馴染みの作・演出家、東憲司さんの優秀スタッフ賞。そして、劇団唐組の藤井由紀さんが優秀女優賞をもらったのは本当に嬉しかったな。テント芝居という過酷な状況の中、長年ヒロインを演じ続けてきた由紀ちゃん、唐十郎さんも涙して喜んでおられることでしょう。

なにも、賞が頂きたくて芝居やってるんじゃないけれど、やっぱり嬉しいんじゃないかしら...それにしても、観客100人程度の小劇場から1000人規模の大劇場まで足を運んで、日々観劇してる審査員の方々も大変でしょう。おいらも、審査員の方々と劇場で隣り合わせでご一緒したりするのだが、首が落ちてる方よく見ますな。芝居がつまらんのでお休みしてるのか、それとも昼夜の観劇でお疲れになってるのか知りませんけど、このお役目も大変でございます。先日も、「Sing a Song」にいらした年配の評論家の方がおっしゃっていました。「役者は動きまわって気持ちいいかもしれんけど、こちらは一度着席したら身動きできんし地獄やな...」まさしく本音でなかろうか。首が落ちない舞台にせにゃならんですばい...

草木が萌え動く弥生、明日は満月、ひな祭り。四季を楽しめる日本に生まれてほんまに幸せですたい。

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弥生初日の夢見月

2018/02/28
【第1061回】

待ってました!花粉の季節です...、喜んでるのは耳鼻咽喉科のお医者さん、薬屋さん、この季節を一日千秋の思いで待っておりました。新聞、車内の広告に新手の薬があちこちに見かけます。目ん球じゃぶじゃぶ洗いたい方には是非!なんて書いてると、ついつい買いたくなりますがな。おいらも、ほんまに目ん球取り出して綺麗に洗濯したい日々です。家を出るときには花粉症対策用のメガネとマスクは欠かせません。しかしながら、このふたつを使用してるだけで世界が変わります。どう変わるって?何か、変装して世の中の動向を窺ってる気がして面白いですな。いつもと違う自分が、いつもと違う風景を楽しんでるおいらが不思議です...ものは考えよう、なんでも楽しめばいいんじゃないの。花粉の季節、嗚呼憂鬱と思うか、こんな時こそ忍者の姿になって春の季節を縦横無尽に駆け巡る!そんな気持ちになっただけでも楽しいじゃございません。

桜のつぼみもちらほらと膨らんできてますし、梅はあちこちで咲いています。まだまだ寒さと暖かさが繰り返す三寒四温の時期ですが、明日から弥生「弥生のついたちより、しのびに人にものら言ひてのちに」なんて、古今和歌集の恋の歌がありますように、なんだか3月の声を聴きますと浮き足だって気もそぞろ、キョロ松ちゃんのおいらも、よりキョロキョロと道行く麗人に目を奪われないかと心配しとります...でもね、人間好奇心が無くなったら終わりでございます...弥生を存分に満喫するつもりですばい。

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梅は咲いたか、桜はまだかいな...

2018/02/26
【第1060回】

冬期オリンピック、終盤に日本の活躍もあり大変盛り上がりましたね。それにしてもチームプレーになると、さすがに日本は強い。パシュートのワンラインはその最たるもの、このチーム年間300日もの日々を一緒に過ごすんだから勝って当然かもね。でも、ここまで勝利に対する執念よりも、己との記録との戦いに勝ったということに感じるものがありました。勝負事なんだが、国のためとか言われると、なんだか自国第一主義のトランプと同じ。こんなところから戦争への道に繋がっていくのでは...それにしても、オリンピックを舞台にアメリカ、北朝鮮の駆け引き、まさしく世紀の祭典が政治の駆け引きの場になってます。所詮、オリンピック自体が商業主義に傾いているのだから当然のことかもね。国の戦いではなく、アスリートの個との戦いとしてみると、どの種目もアートに通じるものがあります。

蝉の抜け殻を発見!自然との共生を大切にしながら生を全うしている生き物の真摯な一生を考えちゃいました。奢りもなく己の定められた命に忠実に、愚かな人間に季節の喜びを教示してくれる自然界の生き物に唯々感謝です。三寒四温を繰り返しながら春に向かっています、桜の蕾もほんの少しだが膨らみ始めました。ほんまに自然界は、何事もなく無理することもなく、おばかちゃんの人間に様々な恵みをもたらしてくれくれますがな...それに比して、いつまでも欲深く争いが絶えないことを繰り返すあんぽんたんの川流れな人類ですたい。

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おつかれさま...

2018/02/23
【第1059回】

漣ちゃん死んじゃった...早すぎるな。漣ちゃんと逢ったのは40数年前だな、赤坂の古アパートの1階のアトリエで転形劇場の芝居を観たのがきっかけだった。この頃のアングラ俳優は皆喰えなくても、芝居になると狂気じみた形相で観客に対峙していましたな。先輩の俳優に混じって、痩せこけた漣ちゃん負けじと自分の思いを激白...今は無き新宿昭和館の映画館前で偶然に会ったときは、ピンク映画でなんとか喰ってるよ!なんて言ってたな。映画館の掲示板のポスター見ると出演者に大杉漣と書かれておりました。何とかしなきゃ!ピンクだろうが何だろうが家族を喰わすために男優も裸になりまっせ。いくらか売れたときに、舞台に立つのだが、なかなか上手くいかなくて、俺やっぱり下手なんだなとおいらに呟いておりました。漣ちゃん、その上手くやれないところが漣ちゃんの魅力だよと、おいら励ましの言葉をかけました。その後は、あの人柄の良さと、表現者としての飽くなき奮励でバイプレーヤーとして確固たる地位を築き上げました。まだまだ、これからいろんな顔を魅せてくれる筈だったのに...本人が一番残念がってるに違いありません。でも、漣ちゃんが遺した作品たくさんあるし、貴男の魂は貴男が好きだった人たちに引き継がれていきますから大丈夫ですよ。ゆっくり好きなギターでも弾きながら休んで下さいね...合掌

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冬の公園

2018/02/21
【第1058回】

下北沢で芝居公演中に素敵な店を見つけました...Jazzと喫茶・囃子「はやし」。下北沢には56年間にわたって営業を続けてきた「ジャズ喫茶マサコ」が存在していたのだが、2009年9月24日に閉店してしまいました。おいらも、下北沢を訪れる度に寂しい気持ちが8年間続いておりました。空いた時間に、こっそりとjazzを耳にすると疲れた心身が息を吹き返す...これは、おいらの健康のありかたのひとつでもあります。ましてやLPレコードで聴けるなんて贅沢じゃございませんか。オーナーは「マサコ」でアルバイトしていた女性です。まず、店内に入り、そのセンスの良さにうっとり。出された珈琲、お酒、つまみもとっても美味しいのですからたまりません。おいらもまだ食していないのだがハヤシライスがとっても美味しいらしい。今度チャレンジしてみます...こんな店が、いつまでも続いて欲しいのだが、再開発で街の形が大きく変貌しつつある昨今、家賃が高騰している。小さな店で単価が安い飲食物で大丈夫かしら?珈琲一杯で何時間も居られちゃたまらんですばい。でも、心優しいオーナーはそんなこととは無縁で、自分の納得いく店というより、生き方も含めてのオープンであると思う。全国的にJazz喫茶が減少している今、おいらは残り少なくなったjazz喫茶行脚をしているのだが、残念ながら微力でしかない。かといって、趣味は人それぞれ「頼む!存亡の危機にあるjazz喫茶に行ってくれ...」なんてことは言えまっせんことよ。でもでも、お試しに行ってご覧なさい...いい音が疲れた身体を癒してくれますよ。又、明日から頑張ろう!なんて気分になったら、めでたしめでたし...

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はやし

2018/02/19
【第1057回】

「Sing a Song」16日に東京公演を終え18日から地方公演に突入しました。最初の公演地は四国の高松市、3月25日まで21ステージを巡演します。今回の芝居の劇評が日本経済新聞、朝日新聞、赤旗新聞に掲載されました。

 

「涙や哀しみの先の透明な情感を宿す歌そのものの力が激しく胸を打つ。戦争を知らない世代の心と過去の声との交感が感じられる」「戦争の暴力を、流行歌手のささやかな抵抗からあばけないか。近代史をアクチュアルな人間ドラマにしてきた作者の古川健と演出家日澤雄介のコンビが、間奏曲のように軟派な大衆歌謡を素材に、硬質な試みをした。コミカルでいてシリアスな芸質と、感情を繊細に届かせる歌唱力を持つ戸田恵子を得て、胸に迫る。批評する力は強い。軍部は歌を兵器とみなす。あいこ(戸田恵子)は平和と命の尊厳を願う心と思う。同じ言葉で違う意味が衝突し、批評する。戸田がささやくように歌う『リリー・マルレーン』もそうだ。戦線で兵士に愛唱された恋の悲歌。のびやかに澄んだ高音で、戦争と平和の二重の意味を帯びる」「~歌はね、人の心に生きることの喜びを与えるもの。人に死ぬことを奨める軍歌は、あれは歌でありません~インパクトのあるせりふが強烈に響く。奥行きのあるドラマを6人の人物によって展開する筆力のすごさ。そして、それぞれの役柄を見事に体現した俳優陣によって緊張感みなぎる舞台を創りあげていた」

 

なかなかの劇評でございました。少数精鋭で創りあげた舞台であるが、スタッフと俳優陣が総力を結集した実りある力業でした。まだご覧になってない方は、トム・プロジェクトのホームページでスケジュールを確認し、是非とも劇場に足を運んでくださいませ。損はさせませんぞ...間違いなく。

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ほんのりと春の匂い

2018/02/15
【第1056回】

「Sing a Song」東京公演明日が千秋楽です...芝居をきっちりと観てくださるOさんから観劇後の感想を速達ハガキで送られて来ました。

 

話の内容は予想がつきました。ポスターにも戦時中の色が染みついていましたから。ただ芝居はその浅はかな想像をはるかに越えていました。気合いの入った完成された舞台に正直感動しました。こんなひとたちが居たんだ。こんな奴も存在していたんだと。芝居の中の現実感に引き込まれてしまったのです。良く練り上げた脚本を理解して演じた役者各位の迫力のなせる業です。そして、その役者に正面から向き合った演出家の世界観が作りあげた世界です。この芝居を成立させたプロデューサーの熱意が全編を通じて感じられます。知覧なのか出水なのか、飛び立つ少年兵の姿を思い浮かべ、会場にはすすり泣きが満ちて、この芝居のリアリティを実感せずにはいられませんでした。こうした芝居が上演される今を大切に守らねばと肝に銘じた次第です。しかし、この芝居の成功の要因は戸田恵子さん演じる三上あい子の実在感でしょう。ひとがいきるということを歌に託した主人公の痛々しいまでの生き様が話に引き込ませるのです。その美しい歌声とあいまって、観客を70年以上前の緊迫した時代に運び込むのですから。それに対峙する各役者の真剣な表情にささえられ、この芝居の成功があるのだと納得させられます。本当はみんな優しく穏やかな人生を生きたかったに違いないわれわれの先人に思いをはせたひとときでした。拍手!

 

一枚のはがきにびっしりと思いの丈を綴られた言葉を眺めながら、いや本当に芝居はいいもんだと改めて感じた次第です...手造りで皆のチカラを結集して作品を生み出し、お客様に喜んでいただく。プロデューサー冥利につきますばい...

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春がひたひたと...

2018/02/13
【第1055回】

石牟礼道子さんが亡くなりました...水俣と共に歩まれ、常に弱者の側に寄り添い生きてきた生涯はキラキラと輝くものでした。長男が結核にかかり、その入院先で当時「奇病」と呼ばれ症状に苦しむ人たちを目にしたのがきっかけで物語を紡ぎ出す。言葉を失った患者の魂の叫びを過激な言葉としてではなく、優しい言霊として表現する石牟礼さんの著作は、この世の巫女的な存在でもあった。彼女は物書きとしてではなく、患者のチッソ本社に対する抗議活動にも同行し、東京本社で患者、家族共々座り込み、会社の責任追求に日々を費やした...そのときの彼女の言葉が印象的である。「東京にゆけば、国の在るち思うとったが、東京にゃ、国はなかったなあ」今も、この構図は変わらない。権力者は常に真相を隠蔽し、都合が悪くなるとうやむやにし切り捨て、弱者を棄民扱いにする。その後の東日本大震災、熊本地震等々...石牟礼さんが住む不知火の美しい海を見続けたからこそ、綴られた言葉は何度読み返しても心の琴線に響いてくる。

トム・プロジェクトでも2016年に水俣を題材にした芝居「静かな海へ~MINAMATA~」を上演した。どこまで水俣に迫っていけたか分からないけど、生きてる人間が声を上げ続けていかない限り水俣も過去のものとして忘れられてしまうに違いない。明治150年、近代化を唱え経済は確かに潤い利便な世の中になったかも知れないが、その影でうち捨てられた民、自然、もの、そして人間性いや魂。地の底に落ちようとも人は明日を思い、他者を思いやる気持ちが大切であることを教えてくれた石牟礼道子さん...貴女の残した言葉いつまでも読み続けます。

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苦海浄土

2018/02/09
【第1054回】

「Sing a Song」今日で3日目を迎えます...初日の緊張感は全員が、心臓ぱくぱくもんでございます。稽古場でどんなにいけると思っていても、お客が入り幕が開くと稽古場とは全く違う空気が流れ、役者の一挙手一投足で微妙な動きが劇場内を包みます。観客のハートをどこまで鷲づかみできるかどうか?しかも早い段階でつかまないと、あれ終わっちゃいましたなんてことになってしまいます。今回の芝居の見所は、もちろん戸田恵子さんの歌、信念を貫く表現、大和田獏さんの人生を感じさせる味わい深い佇まい、地味ながらきっちりと支える藤澤志帆さん...そして、今回際立つのが3人の憲兵、大佐、軍曹。これまでは日本の軍隊の役を演じる場合はパターン化したケースが多いのだが、今回の鳥山昌克さん、高橋洋介さん、岡本篤さん、もちろんキャラクターの違いは当然として、それぞれに人間性を程よく役に刷り込み、三者三様の軍人像を創りあげている。その変化、違いをストーリーとともに追っていくと、また芝居の楽しみ方がより深みを帯びてくるというものだ...芝居の面白いところは、テレビ、映画とは違って舞台上の人物をすべからく俯瞰出来るところにある。映像の場合は監督の意図により、又、主役優先ということもありアップで注視するところを決められてしまう。ところが舞台の場合は、台詞のないただ突っ立っているだけの役者が全身で思いの丈を表現している...この瞬間に出会えたときこそ、演劇に立ち会えた喜びを享受出来る。どんなに台詞が多くても、駄目なもんは駄目!これが芝居の厳しさでござんすよ...この芝居、来週の16日(金)までやっとります。いろんな角度から、芝居の奥深さを楽しんで観るのもよござんすよ。

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つかれちゃいますがな...

2018/02/07
【第1053回】

先日の沖縄の名護市長選挙、心が痛いです...地元のほとんどの人が辺野古への移設に反対し続けているにも拘わらず、国策を止められず諦めの気持ちが出てきている。現に現地の人たちから「辺野古が止まる可能性があるなら現職に投票する。でも、無理でしょう...」だとすれば、国が移設に反対する県と市に見せしめ行為?として頂けなかった国からの交付金を頂いて、医療福祉、子育て支援、商業の活性化に当てた方がまだましだと考えたのであろう。それにしても、この沖縄いつまでこの難題を押しつけられるのであろうか...アメリカは核軍縮どころか拡大の方針を打ち出し、世界は果てし無き軍拡の道を突き進む。アメリカの核の下での保護を沖縄だけに負担させ、他県の人は見ぬふりしてる日本人も姑息だと思う。日本全国で均等割すべきではないか?こんな意見言ったら、選挙で落選するから与野党含めて議員の誰ひとりとして口にしない。そして、反対ばかりするのも理が通らない気がしますがな...

今日から「Sing a Song」が始まります。この芝居も反戦に繋がる芝居です。もうすぐ、母の三回忌です。大陸から、おいらを腹に抱えて引き揚げてきた母が何度も何度も口にしていました。「戦争は勝っても負けても地獄、絶対しちゃいかんとよ!」まずは、身近なところから、出来るところから始めましょう...いつまでも見上げてられる青い空がありますように...今日からの芝居もその一つです。

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見上げる空であって欲しい...

2018/02/05
【第1052回】

昨日、7日から始まる「Sing a  Song」の最終稽古で錦糸町の稽古場に行ってきました。長い稽古の総決算である最後の通し、俳優さんにとっても最終確認作業である。役作りは俳優の創造力が問われる最も重要な評価のひとつである。その人の日頃の生き方、つまり感性の錬磨、観察力、美学などなど、どのように日々を過ごしているかが一目瞭然に判るから怖い...今回も、6人の役者さんのそれぞれが役を通して見えてくる。その人しか出せない味、又、見る人の思いを裏切る一面を見せつけられたときの驚きなど、稽古場でしか感じられない面白さがあるから、稽古場見学はやめられないのかもしれませんな...明後日からは、いよいよ本番だ。舞台上で照明、音響が加わり、観客を前にしたときには次なるステップが待ち受けている。一回性の演劇が持つライブ感は、何物にも代え難い貴重な体験である。が、しかし、そのたった一回の体験が、つまらんものであった時は観客が二度と劇場に足を運ぶことがない危うさも同時に兼ね備えている。プロデューサーからすれば、それこそ博打でございます。こんな恐ろしいこと、よく24年間もやってるな!とおいらも驚き桃の木山椒の木。お陰で命が縮まったのか?と言われると、そうでもないので結構楽しんでやってるのかな...いやいやラテン気質ですので芝居稼業もケセラセラでござんす。まあ、やるだけのことはやったんだから後はお客様にお任せします。金返せ!なんて言う人が出ないようにしっかりと勤めますんでよろしくお願いいたします。中には、これは?なんて小言をいう御仁も居るでしょう...そんな時は許してちょ!

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稽古場へのいつもの道

2018/02/02
【第1051回】

今日も大雪かと思いきや、なんとか平穏な降りで済みました...テレビを見てると首都圏の雪情報がトップで、まるで大事件並みの扱いであるが、雪国の人たちからすれば「なんじゃい...これくらい当たり前でごぜえます。」なんて気持ちで見てるんでしょうな。すべてが東京中心で物事が進行しているこの国ってなんなんだろうね...国会も始まりました。予算委員会で相変わらずモリカケ問題で今まで同様の質疑応答をして、いまだ五里霧中の状態であるのだが...当事者である籠池泰典夫妻は8月に逮捕され未だ拘置所生活、あべちゃんの奥さんは旦那と一緒に外遊三昧、認可された加計獣医学部の学長は雲隠れ、なんじゃろかいな?出てきて喋らんかい!と皆思ってるんだが、なにせあべ一強政治、なんともなりませんがな。それよりも、これまでの与野党含めての質疑応答で、誰一人としていまだ困窮生活を強いられてる東日本大震災、熊本地震、九州北部豪雨、各被害者に対するやりとりがありません。おいら何度も言ってるんだが、2020年のオリンピックなんか中止して、この費用でこの人たちを普通の生活に戻してやることが先決ではなかろうか?猛暑の中でのオリンピック普通の感覚じゃありませんがな...そして、福島第一原子力発電所2号機で先日行われた格納容器の内部の調査で、東京電力は原子炉の真下で最大で1時間当たり8シーベルトの放射線が測定されたとのこと。この値は人が近くにとどまると1時間ほどで死に至るレベルの被ばくをするとされ、事故から7年ほどたっても格納容器の内部は極めて強い放射線が出続けていて廃炉の難しさを示しているんでござんす。

この先、なにが起こるか分かりません...皆の衆、眼を開けて本質を視なきゃあかんぜよ!

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今日の寒い新宿

2018/01/31
【第1050回】

長年の友人であった斎藤暁さんが亡くなったことを昨日息子さんから連絡がありました...斎藤さんはNHKのテレビ界で長く、演出家・プロデューサーとして活躍され、NHKエンタープライズ21代表取締役社長、NHK専務理事、放送総局長と大役を歴任されました。大河ドラマをはじめ数多くの傑作を世に送り出した方です。そんなことよりも男としてダンディで気品があって、とっても優しい方でした。偉ぶることなく年下のおいらと対等に付き合ってくれました。おいらがまだ風来坊の時代から、気さくにゴールデン街で酌み交わし、いろんなことも教えてくれました。「けっちゃんみたいに自由に生きるだけで、僕は尊敬するよ...」なんて煽ててもくれました。何事も媚びることなく大人の仕事を凛としてこなされていく姿に、大人として歩む道を背中で教えてもらった気もします。年末に今は亡き母と弟が上京したことを知ると、紅白歌合戦のチケットを特別に頂き、母がとっても喜んだことも良い想い出のひとつです。男の品格、とっても大切だと思います...ボロは着てても、心は錦。

どんな境遇にあろうとも精神が屹立し心がピュアでありたいでござんす。おいらは、まだまだ修行中の身でござんす...昨日は斎藤さんの83年間の生涯に対してワインで献杯しました。

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はや梅でございます...

2018/01/29
【第1049回】

トム・プロジェクトでは芝居以外にも「ありがとうの手紙」というステージをやっています。先日も四国中央市土居町文化会館でやってきました。地元の人達から「ありがとうの手紙」を募集し、その手紙を下條アトムさんの温かい語りで読み上げ、沢田知可子さんの歌声を交えながら進行する舞台です。先日の公演で読み上げた方の娘さんから、当日は遠方(福岡)なので参加は出来なかったのだが、お母様から「本当に素敵な想い出が出来た...」とうれし涙の電話がかかってきたとのことで感謝の手紙が送られてきました。取り上げられたお母様の手紙は次の一文です。


                  あなた、ありがとう

そちらの天国は、どうですか。この世とあの世、どこに境があるのでしょうね。あなたが私の側にいなくなって、はや三年。朝、「いってらっしゃい」と見送ってそのまま。あなたの死の知らせ。もうパニックになって頭真っ白に。苦しかった、痛かった、心細かったね、一人で寂しかったね。もう、たまらなくて、いとおしくて、いとおしくて...。心の底が、哀しみにまみれた時は不思議と涙出なくて。会いたい、会いたい、声聞きたいよ。あなたとは、大学入学時に、知り合い、その時、ピッピッピッと電流が走り、このね。沢山笑わせてあげてね。沢山の人に幸せをあげてね。みんなをあたたかくしてあげてね。あなたの隣で、あなたの笑顔に包まれて、すごした全ての時間、本当に幸せでした。ずっとずっと一緒にいると思っていたのに。私の心のフィルムに焼き付いているよ、十年後も、二十年後も、いつまでも。私いい奥さんだったかな。今を大切にいきていくね。この星であなたと出会えたこと、あの星でもあなたと会いましょう。言い尽くせない、沢山の思いを、この言葉で「ありがとう」。わたしがそちらに行ったら、一番先に見つけるから、必ず見つけるからね。胸に飛び込んで行くからね。抱きしめてね...

 


そして、お母様が公演当日と次の日も嬉しくて、そして亡き夫を思い出してなかなか眠れなかったほどに喜ばれていたとのこと...母に最高のプレゼントを本当にありがとうございました。そして、空の上の父への想いを届けてくださって、本当にありがとうございました。と娘さんからのありがとうの手紙。
感謝の気持ちが、ありがとうになって、世界のあちこちに羽ばたいていけば戦争なんぞは無くなる筈なんですがね...日々、己の心に「ありがとう」の文字を刻み込み生きていきたいものです。

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ありがとうの手紙

2018/01/26
【第1048回】

東京芸術劇場で和製ミュージカルと銘打った「写楽」を観劇...あの浮世絵師写楽の絵、実は影武者の女性が描いていたという設定で進んでいくドラマ。この芝居で版元、蔦屋重三郎を演じる村井國夫さんがとっても素敵でした。御年74歳、色気もあり、重厚な演技にしびれる歌声。若い俳優にとって、こんな魅力あるベテランが居るだけで、とてつもない勉強になると思います。トム・プロジェクトでは2012年に上演した「満月の人よ」での、だらしなく飄々とした佇まいで演技する村井さんには本当にびっくりしました。それまでの村井さんのイメージは、ニヒルで威風堂々としたミュージカル俳優という認識でしかありませんでした。ところがどっこい、田舎の駄目親父を何の違和感もなく自然体で表現していく姿に唯々感動。それだけではとどまりません...2016年での「砦」の芝居では、権力に対峙する老人を、まさしく骨太で心情溢れる表現力で演じて頂きました。舞台に立つ役者の姿には、その人の過ごしてきた人生が重なります。試行錯誤の中、己の感性で何を掴み取ってきたのか?どのような人間関係を培ってきたのか?役者の一挙手一投足ですべてが視えてきます。そこが生の舞台の面白いところです。普段は、物静かで淡々と話される村井さん。舞台に上がると、74年間生きてきたエッセンスを要所要所に散りばめていく演技力は、これぞ役者。

その「砦」、今年の春、再演します。これを見逃しちゃ、芝居の話は語れませんぞなもし...

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まだまだ雪国です

2018/01/24
【第1047回】

稲垣えみ子著「寂しい生活」読了...2011年東日本大震災をきっかけに、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、エアコンなどなどほとんどの電化製品を破棄し、まるで江戸時代の生活に戻った稲垣さん。しかも、長年勤めた朝日新聞社も辞めちまった...今ある家電は、電灯、ラジオ、パソコン、携帯だけという、まさしくシンプルライフ。その環境の中で次々と新しい発見を見いだし心豊かな生活を過ごしている様が活き活きと語られている。挙げ句の果てにガスもやめちゃい新たな食生活のチャレンジしている。現世が欲望をひねり出す時代を産み出すために、有名企業が戦略十訓として掲げている。

 

もっと使わせろ

捨てさせろ

無駄使いさせろ

季節を忘れさせろ

贈り物をさせろ

組み合わせで買わせろ

きっかけを投じろ

流行遅れにさせろ

気安く買わせろ

混乱をつくり出せ

 

この戦略に踊らされ、人は終わりのない欲望ゲームに否応もなく参加させられ疲弊してしまう。そろそろこの果てしない欲望ゲームから脱せよ!という訓戒が原発事故ではなかったのか...なのに、いまだ原発を他国に売り込むこの国って一体なんだろうね!所有することの貧しさ、所有しないことによって生ずる豊かさ、そんなことを考えさせてくれる書物である。

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まだまだ溶けませんぞ...

2018/01/22
【第1046回】

名画の灯を守り続けている飯田橋ギンレイホールに行ってまいりました...この日、上映の映画はフランス映画「エル ELLE」とイランフランス合作映画「セールスマン」。いやはや「エル ELLE」の変態?人物オンパレードには楽しませていただきました。さすがおふらんす、日本人の道徳観からすれば変態に映るんでしょね。しかし、変態男に犯される主役を演じるイサベル・ユペールには圧倒されました。63歳の熟女女優がすべてを曝け出しながら、生い立ちの不孝から始まり男遍歴女遍歴、そして駄目息子を含めてなんら愚痴をこぼさず平然と仕事と私生活をこなしていくタフさに女性の底チカラを感じました。日本の女優でここまで演じ切れる人はいないでしょうね...女優は奇麗じゃなきゃ、憧れのスターじゃなきゃ、というのが定番でございます。日本だけじゃございません、この映画の主役をハリウッドの名だたる女優も全員断ったそうな。これぞ役者魂!を魅せつけられた映画でございました。あっぱれ!賞をあげたいです。

「セールスマン」は89回アカデミー賞外国映画賞受賞、第69回カンヌ国際映画祭脚本賞、男優賞受賞ということで期待して、こちらをメインに劇場に足を運んだのですが...まあ、しっかりと創られてはいるんですが、新劇を観ている感じ。設定もアーサー・ミラーの代表作「セールスマンの死」の舞台を交えながらの展開、主役を演じる俳優さんがもろ新劇の役者さん。端正な顔立ちは老舗劇団俳優座の若かりし頃の加藤剛さんを彷彿とさせましたな。ほかの俳優さんもしっかりとした演技で非の打ちどころがないのだが、破綻してるストーリーなのに破綻のない演技が、おいらにとっては食い足りない。

今日は、都心も雪が降るそうな...雪に弱い東京の交通網、週明けの飲み屋さんがっくり。こんな日は、どなたもゆっくり家で暖かい鍋でもつつきなさいな...

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どなたかな!?

2018/01/19
【第1045回】

一昨日、第158回芥川賞を受賞した若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」。これから読みますが、63歳での受賞は賞の歴史上二番目の高齢者。岩手県遠野市出身で子ども2人を育てた専業主婦。55歳のとき夫が亡くなったことをきっかけに小説講座に通うようになり、執筆活動を始めたとのこと。いやいや、人間その気になればなんだってやれることを証明しましたな。専業主婦をやりながらのもやもやした気持ちと、連れ合いの死により残された人生の尊さを改めて思い起こし行動に踏み切ったんでしょうね...おいらも、しみじみと残された人生(少ないかもしれないけど、まだまだという気もします。あくまでも本人の自覚次第だと思いますが)ほんまに考えちゃうけど、今日を生きる!ってことは、いや生きてることを実感出来るのは、やはり世のため人のためになってるかどうかがバロメーターじゃなかろうか?自己満足じゃただのマスターベーションでございます。日々新鮮!日々発見!なにか生み出さなきゃ生きてる意味がありまっせん...といって、張り切り頑張りすぎるのも良くありませんな。おいらはもともとラテンの血が流れてる性分、血気盛んではあるのだが、まあどうでもいいやなんて気質も持ってます。その幅をのらりくらりと楽しみながら生きてきた気がします。でも、勘ピューターだけは、いつもピカピカに磨いております。これが錆ついたら最期、全てがガラガラと音を立てて崩れ落ちてしまいます。今日も不可思議な街新宿ををふらりんちょんしながら次なるアイディアを探し求めております。

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今日も新宿燃えてます

2018/01/17
【第1044回】

阪神・淡路大震災から今日で23年が経つ...新宿のマンションの部屋にあるテレビを見ながら、これがこの世の出来事か!と呆然としているおいらが居た。あのときに原発の危険性を察知、予知していれば、東日本大震災で今なお廃墟となったしまった村、街はあり得なかったはずだ。自然は何度も警告をしているにも拘わらず、愚かな人間はいつの世も己の欲望に邁進するばかり...昨日も、車内で狂ったようにゲームに熱中している青年を見るにつけ未来の希望が失せるばかりだ。その顔は鬼のようであり、穏やかさ、優しさとはとうてい無縁の形相である。隣の母親も息子の負けじとゲームに興じている...こんな光景に異を唱えるわけではないが、おいらは静かに本のページをめくり続ける。生きてることは想像力を楽しむゲームではなかろうか...大きく羽ばたく想像力を駆使しながら、この世に不可欠な創造物を生み出す人たちが増えれば、自然が時折人間にお叱りをする災害も最小限に食い止めることが出来るに違いない...歴史に学ばない人類はいつか滅びるに違いない。

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冬枯れの樹

2018/01/15
【第1043回】

先週の土曜日はトムトム倶楽部の会員さん、トムの社員、所属俳優が一堂に集い新宿で新年会をやりました...芝居は観客があってこそ成り立つものです。その中でも、トムトム倶楽部の会員さんはトムの芝居が大好きでどんなものが仕上がるか判らないのに、年間会費を先払いしてくださる応援団みたいな方々ですから、まさしくお客様は神様!にぴったりの皆さんです。だからこそ、この日は華やかに楽しくをモットーに3時間プログラムを組みました。飲んで食べて一言コメント、社員と役者のコント、ジャンケン大会による景品の争奪戦などなど素敵な時間であったに違いありません...と、おいらは理解しておりますが。
そして、今日から又、仕事がいつものように始まりました。今日のランチは伊勢丹会館にあるフラメンコレストラン「ガルロチ」勿論、昼間はフラメンコショーはやっておりません。12時半に入ったのだが、広い客席においらを除いてお客は一組。なんじゃろかいな?早速、パエリアランチを頼むのであるが、こんなにお客が少ないと何だか緊張しますがな...el gordo(太った)女性が流暢な日本語で料理を運び丁寧に説明をしてくれる。さて頂きだしたのはいいとして、その女性と年配のメガネをかけた男性が、おいらの食べ姿を凝視して居るではないかいな...何だか緊張しますがな。そんなに見らんといてと思うのだが、これもお客が居ないので観察される宿命なのかな?でも、メインのパエリアは大変美味しゅうございました。注文してから調理するので25分はかかったかな。スープ、前菜、パエリア、珈琲で¥1600なのでまあまなのかなと思うのだが、どうしてお客来ないんだろう?この店の前身は「エル・フラメンコ」。新宿で45年ばかりスペインの一流フラメンコダンサーを招聘して見事なショーをやっていました。おいらがスペインで鑑賞したダンサーより格上の踊り手が観れると言うことで何度か通ったもんです。そんな馴染みの愛する店ですからエールを送りたいのだが、あの観察スタイルをやられるとちょいと引いちゃうかな?年配のおじさんはエル・フラメンコ時代から居る方で昔話をすると嬉々として話し出しました。これもまたちょいとうるさいのかな...お店の在り方は本当に難しいもんでございます。

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まあまあの味ですばい。

2018/01/11
【第1042回】

寒風吹きすさぶ新宿のビルで、まるで曲芸師の如く立ち振る舞うガラス磨きの職人。数年前にデビューしたバスタ新宿の大きな窓を、ひらりひらりと渡る姿に信号待ちのお客も驚きの表情で見とれていました。おいらも大昔にやったことがあるので、それはそれは冷や汗もんでございましたよ。生きた心地がいたしません...落下してひしゃげた蛙みたいになるのも嫌なんで、ただただ窓ばかりを見つめて磨いていました。一度、スクイジー(ガラスを磨く道具)が手元を離れ道行く人に当たりそうになったときは肝を冷やしましたな...それを機にこのバイトはやめました。一昨日も、その当時一緒にバイトしていた芝居仲間のたっちゃんとでの宴席で、この当時の話で盛り上がりました。草刈り、清掃、公衆便所のパトロール清掃などなど日銭を稼ぐために人が嫌がる仕事も厭わず黙々とこなしましたものでございます。好きな生き方をやるには、仕事に関しては選別出来る立場ではないのは至極当然。アウトローの視点から凝視する社会だからこそ見えてくるもんがあるんですな...誰に気を遣うわけでもなくおのれの感性で、それぞれの価値を見いだす絶好の機会であったかもしれません。あの日あの時の、嘗てのおいらの姿を眺めつつ、思えば遠く来たもんだ...

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街中の忍者

2018/01/09
【第1041回】

今年の第一作「Sing a Song」の稽古が始まりました...戸田恵子さんをお迎えして平和の尊さを訴えたドラマです。心温まる戸田さんの歌と演技、しっかりと支える円熟した芝居を魅せてくれる大和田獏さん、唐組で重厚な演技で人気があった鳥山昌克さん、トラッシュマスターズで個性あふれる演技で注目された高橋洋介さん、劇団チョコレートケーキで人間味あふれた表現で観客を虜にした岡本篤さん、トムプロジェクトの数々の芝居でおなじみの芯のある女優藤澤志帆さん...いやいや、いいメンバーが集まりました。2月7日の初日が楽しみです。

春の陽気で一杯の新宿では、憲法九条を守る集会が行われていました。

今年こそ、いや未来永劫、穏やかで平和な世界であってほしいものですね!何度も言います!戦争は勝者も敗者も得るものは何もありません。世界に誇る憲法九条、まさしくノーベル平和賞を受賞して当然だと思います。こんな素晴らしいものを世界に誇らしげにするどころか変えようっていう輩がいるのがおいらには信じられません。日本のお宝をもっと大切に、右も左も関係なく、もっと知らしめる働きをせねば宝の持ち腐れになっちゃいますぞなもし皆の衆。

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未来永劫の平和を

2018/01/04
【第1040回】

新しい年が始まりましたね...今日から又、エンヤコラ仕事です。おいらは仕事ってやつ生まれて以来、あんまり好きではないんですが、仕事としてではなく何かに出会いたいという好奇心から働いたのではないかと思ってます。端を楽にさせたいから働く。端とは中央や中心からいちばん離れた部分、そうです、あまり光の当たらない生き物、場所、物のために身を粉にする。これが本来の正しい仕事の定義ではなかろうか...おいらは、それはそれは子供の頃からよく働きましたよ。正月なんぞは、新聞配達、郵便配達の掛け持ちでお雑煮なんかの記憶はありまっせん。でも、一度だって嫌だとか苦しいとか思ったことはありませんでしたね...世の中の出来事をいの一番に知りたい人のために届ける新聞、待ちに待った年賀状を手にする人達の笑顔を思うと、一刻も早く届けたい。そりゃ韋駄天小僧になりますわね。

まあ、そんなわけで今年もぼちぼちやりますのでよろしくお願いいたします。

それにしても年頭から、刈り上げクンと、ややこしヘアーのおっさんが机の上の核のボタンの大きさ自慢をしてるニュースが流れるとこの時代の不幸を感じます。おいらも、この先そんなに長くない人生なんで、勝手にしてくれや!なんて思いますが、この美しい地球防衛隊の一員として微力ながらワン、ワンと吠え続けたいですね...おいら年男でもありますから。

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元旦、東京の空

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2日、スーパームーン

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3日、新宿の空

2017/12/27
【第1039回】

会社は今日が仕事納めでございます...今年もいろいろありました。芝居は5本上演しました。その中でも「萩咲く頃に」は春と秋の2シーズン、たくさんのお客さんの前で上演することが出来ました。こうやって東日本大震災のことを忘れないためにも、演劇はなくてはならないものと改めて思います。風間杜夫一人芝居新作「ピース」の旅公演で、大分県津久見市での公演が台風のために中止になったことがとても残念でした。自然災害、世界状況の不穏、勿論国内のいびつな形などなど、未来に対する展望は決して明るいものではないと思ってます...が、生きて居る限りなんとかせねば生かされてる意味がありません。先日、パーキンソン病で入院中の石牟礼道子さんの凛とした姿に勇気を頂きました。「土と水と緑を自らの手で殺し続けて来て日本人はその罪にまだ気づかない。水の地獄がすぐ目の前にやって来ようとしているのに...」肉体が衰えようと強靱な精神力と、利便主義が蔓延る世界に楔を打ち込む信念を持続している人が存在する限り、この世界はまだまだ捨てたもんじゃございません。

今年もなんとか微力ながら、芝居を続け多くの人たちとの繋がりを持たせて頂きました。感謝感謝です...憎しみを感謝に変えれば世界はもっと平穏になるのにと思いつつも、そうならないのが人間の愚かなところです。生かされてることに感謝しながら、来年も良い芝居創ることは勿論、きな臭くなるこの国に苦言を呈しながら元気溌剌なおいらでありたい思っとります。皆さんも、良い新年をお迎え下さいね!

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師走の風物詩

2017/12/25
【第1038回】

週末は年賀状を書いていました...こんなご時世、メールで新年の挨拶してる人たちも沢山居るとは思いますが、やはり一年に一度、何年も何十年も逢ってない人を想い出しながら筆を進めていると、あの日、あの時の情景がつい昨日のことのように蘇ってくるのが不思議ですね。年賀ハガキ52円の持つ意味はとてつもない価値がありますね。普段、思いもしなかったことがこの年賀状をしたためる一瞬にドラマを再現してくれるんですから、まさしく魔法のハガキです。そんな貴重な機会を頂いてるんですから、なるだけアナログに近い手作りの年賀状にしたいのがおいらの遊び心です。クレパスで、あーでもないこーでもないと落書きしながら来年の干支であるワンちゃんを書きあげました。なんとおいらの年なんです...自画像みたいなワンちゃんになっちゃいました。まるでおいらを見てるみたいなんて、なんだか自分で書きながら嬉しくなっちゃいました。ほんまにおいらは幸せな人でございます...そりゃそうでしょう、義理で出す年賀状だったら、おいら出しませんことよ。何事も楽しみながらわくわくしながら書いてこそ、相手にその心が伝わるもんってことですよ...ましてや新しい年、もらって笑顔になるお便りにしないとね!

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今日はクリスマス

2017/12/22
【第1037回】

連日、大相撲の話題で持ちきりでございます...こうなったら白鵬以下、モンゴル一派に賛同する人たちは別組織で興行相撲を立ち上げたらどうだろうか?八百長もあり、プロレスみたいなショーでいいんじゃないかしら...モンゴルの人たちに日本の相撲道を押し付けても無理があるでしょう。それにしても、力士になる日本人が少なくなり、異国の人たちに力を借りなければ成立しなくなっちゃった相撲界も哀れですな。そんな危機を救ってくれたのもモンゴル力士。水と油じゃ、こういう流れになるのもいたしかたありませんな。公益社団法人という優遇された立場でありながら知恵者がいないということが最大の悩み。それにしても貴乃花親方のだんまりも異様な感じもしますね。確かに弟子が傷つけられ、傷害事件であることが一番の問題であるのだが、そろそろ喋るなり、己の相撲界の改革の指針を示さねばならんのではなかろうか?それにしても根っこが深いというより、やはり特殊な世界ですよね。あんな身体にすること自体が普通じゃありません...普通の世界じゃないのに世間常識を当てはめようってのが所詮無理な話。おいらも少年時代に新聞配達の帰りに、九州場所中、博多万行寺に居を構えていた二所ノ関部屋の稽古場を覗きに行ったのですが、それはそれは恐ろしい光景でした。下っ端の力士を竹刀でミミズばれができるくらい先輩力士が殴ってました。いたいけなキヨシ少年は思わず「やめんしゃい!」と声が出そうになったのだが、ノドちんこが縮み上がり発することが出来ませんでした。その稽古場にすらりとした力士、後の名横綱大鵬がいました。ひとりキラキラと輝いていました...そんな時代から何も変わっていないんだから、しょうがなかんべさ。

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ホントかな?

2017/12/20
【第1036回】

今村朝子の「あひる」読了...平易な文章の中に人の思いがずっしりと感じられる小説だ。読みやすいので1時間ぐらいで読めるかな?でも、行間に詰められている想像せざるを得ない空白が、文学の深さを思い知らせてくれる。日常会話で綴られる文体で、不思議な寓話を生み出す作家の人間を凝視する優しさ、怖さがなんとも心地よい。

新宿も師走の足音とともに賑やかしい...この時期になると、道のあちこちにお恵みを乞う人達が出現する。40代の働き盛りの男性が「助けてください!」という紙を持って立っている。思わず、おいらも「何を助ければいいのかな?」なんて声をかけようと思ったのだがやめときました。一方、80代のおじいちゃんがカンカンを前において手を合わせている。百円でも入れようかなと思ったのだが、こちらもやめときました。この人たち喜捨した人たちの気持ちを正しく理解し感謝し、今ある状態からプラスに転化できるかどうかは、誰にも分らない...一方、喜捨することに自己満足している人も確かだ。師走に見る風景は、その言葉のごとくせわしさに溢れている。

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師走・新宿の空

2017/12/18
【第1035回】

先週土曜日は錦糸町に劇団桟敷童子「標」を観劇...いつもながら劇団員全員の手作り舞台を堪能させて頂きました。丸太で組まれたセット、ラスト壁一面に飾られた千本を越える赤い風車、セット、小道具、衣裳など全てが共演者に見えるところが感動しますね。再来年で劇団旗揚げから20年になるそうです。芝居が好きで好きで青春を芝居に賭ける人達の熱い思いがストレートに客席に伝わってきます。時代と共にお洒落になっていきがちな演劇の世界で、人間の一番確かなアナログの感覚を忘れずに芝居を生み出してるこの劇団、おいらはいつまでも応援したくなりますな。

昨日は、昭和56年12月にオリエントレコードより「死ぬまでだまして」で歌手デビューした紀藤ヒロシのファンの集いに行って参りました。彼とは今から42年前に三國連太郎さん主演の舞台、戦後30年記念作品「カラフトの詩」で一緒になり全国を巡演しました。そのときに、まだ無名だった風間杜夫とも知り合いました。芝居そのものよりも、旅先で夜毎地元の居酒屋で飲みまくった記憶が鮮烈です。北海道での破天荒な夜遊びは、それはそれは想い出してもわっはっはでござんす。そのときの紀藤君、背丈と相反して随分と背伸びしたあんちゃんでした...そんな彼が歌手として活動を続けて居られるのも、彼のマメさと人間としての優しさではなかろうか。長年の付き合いになった杜夫ちゃんも、この日彼のために3曲絶唱してました。どんな職業であれ、人に好かれるのは最大の武器ですな...

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タワービュー通り

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そりの足音が聞こえてきます...

2017/12/14
【第1034回】

一昨日、久しぶりに名古屋に行ってきました...名古屋在住の劇作家北村想さんと会うのが目的です。想さんには、1997年に戸川純ひとり芝居「マリィヴォロン」で作・演出をして頂きました。それは、それは、本当に素敵な芝居でした。純ちゃんの魅力を存分に引き出した夢のような純文学作品ではなかったかと今でも思ってます。想さん、最近も精力的に新作を世に送り出しています。体調も良く、食事とお茶しながら昔話も含めて楽しい時間を過ごす事が出来ました。帰京するまで少し時間があったので、懐かしい大須観音に向かいました。名古屋の中でもレトロ感溢れるおいらが好きなところです。まず向かったのは七ツ寺共同スタジオ、ここは若かりし頃「走狗」「燐光群」で芝居をやったところです。宿泊も兼ね備えたところで、芝居がはねると飲み会が始まり、ほろ酔い加減ですぐさま寝れるのがよかところです。今は地元の劇団が常時公演をしてるみたい。商店街を歩いて感じたことは、昔のようにがらくた市をやってる店が少なくなり、若者向けの古着屋が多くなっていました。この街の魅力は、メインストリートからひょいと小路に入れば、粋な店が見付けられると言うこと。ありました!文殊小路を入ったところに11時~21時まで営業している日本酒バーがありました。その名は「木花咲耶」京都出身の24歳の爽やかな青年が店長、お客は2日前に結婚したばかりの24歳の女性と、友人である20歳の女性。ついつい話が弾み店長おすすめの辛口日本酒2杯飲んじゃいました。暫し、新宿ゴールデン街で飲んでる錯覚に陥ってしまいました...見知らぬ街で、見知らぬ店と、見知らぬ人と出会うのが旅の楽しみであり醍醐味であります。この日も、その思い出をおいらの引き出しに仕舞い、夕刻の新幹線に飛び乗った次第でございます。

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大須観音

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七ツ寺共同スタジオ

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文殊小路

2017/12/12
【第1033回】

先週の金曜日から昨日までなんと5本の芝居を観ました...金曜日は風琴工房「ちゅらと修羅」沖縄の苦難の歴史を、あの手この手で表現しているのであるが今ひとつこちらに上手く伝わらなかったのでは?土曜日は劇団チョコレートケーキ「熱狂」「あの記憶の記録」の2本立て、5年前に上演された作品で、今回が再々演。この2本の作品は、ヒトラー率いるナチスとユダヤの民との対をなす作品なのだが、何度見ても観客の心に十分訴えかける内容を持っている。異国のことであり過去のことであるのだが、今の日本の状況に呼応しているところが演劇的である。芝居の魅力は今まさにリアルに、生身の人間が演じるところに魅力がある。若い役者がひるまず精神と肉体をぎりぎりまで追い込んで表現する様は実に清々しい。日曜日は、水戸芸術館ACM劇場プロデュース「斜光」戦後最大の誘拐事件と言われる「吉展ちゃん誘拐事件」(昭和38年発生)を題材に刑事と犯人との取調室でのやりとりを緊迫感溢れる手法で描いた作品。作家は劇団チョコレートケーキの古川健...いやいや今年はたくさん書きました。と言うより執筆依頼が山のようにきて大変な年だったと思います。もはや人気劇作家。多忙で作品が荒れないかと心配さえしてしまいます。昨日は青年座の「断罪」中津留章仁が老舗の新劇団に書き下ろした作品。芸能事務所を舞台にしているのだが、そこは中津留作品、日本の闇の部分を織り交ぜながら社会派作品に仕上げています。

4日間でこれだけの作品見ると、さすがに疲れますな。お尻を何回もずらしながらも、何とか堪え忍び怒濤の観劇会を終えることが出来ました。それにしても東京は凄い!日々、あらゆるジャンルの芝居が果てしなく上演されてるんです、が、くれぐれも嗚呼来るんじゃなかった!時間とお金返して欲しい!なんて事だけは避けてくださいな。衰えていく心身が加速度的にガタガタになりますばい...怨劇だけは許してくんろ。

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師走の公園

2017/12/08
【第1032回】

久しぶりに浅草に行って来ました...観光じゃありませんことよ。先日、「東おんなと京おんな」の演出をした田村孝裕さんが主宰しているONEOR8の新作「グレーのこと」を観に行ったんでございます。おきまりの雷門の門をくぐり仲見世通りを歩いたのだが、18時半ともなるとほとんどの店が店仕舞いでお客もまばらでございました。そのほとんどが中国、韓国の人達でした。この商店街今、大変な騒ぎになってるそうな。来年1月から家賃が16倍、仲見世通りにある89店の家賃の平均は月2万3000円それがいきなり16倍の約37万円となれば、ほとんどの店はやっていけませんがな。東京都と浅草寺の揉め事が商店街の人達に波及したというわけだ。小池のおばさんしっかりしてよ!それにしても、浅草すっかり変わってしまいました。古き良き浅草の香りがほとんどなくなってしまったという感じ。新しいビルが建ち並びどこにでもあるようなお店が入った浅草は浅草じゃないでしょう...おいらも40年前、まだかろうじて浅草がまだ健在の頃、テントを張って芝居をしました。芝居が終わりテント内で打ち上げをしているとき、突然テントが燃えだし、おいら咄嗟に火の手が上がったテントの最上部に上がり火を消した途端、落下してしまいました。運良く怪我もなく一件落着。火元は、当時この広場に住んでたホームレスのおっちゃんが、自分の居場所を奪われた腹いせに火をつけたそうな...そんな昔話もあったとさ。

芝居は田村孝裕さんの環境の変化を思わせる内容でした。結婚し子供も授かったことにより作風も変化したような気がします。もともと才能のある作・演出家ですから今後の芝居も期待したいものです。ちょいと一杯ひっかけて帰りたいところでしたが、なにせ開演19時半、終演21時半、おいらの家は杉並区。なんとなくそんな気にはなりませんことよ。やはり歳とっちまったのかな...良いのか悪いのかわかりませんがね。

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夜の浅草

2017/12/06
【第1031回】

昨日、久しぶりにニーナシモンのCDを聴いた...14年前に70歳で亡くなったアメリカを代表するジャズシンガーである。「ソウルフル・アンソロジーRCAイヤーズ」の中のwhy?(キング牧師は死んでしまった)はたまりません...この曲を聴く度に当時学生運動に傾倒し挫折していった友人のことを想い出します。新宿のデモの帰りに倒れ込むようにおいらのアパートにきた彼に、僅かな食事と安ウイスキーを提供し慰め励ました記憶があります。その当時、おいらはLPレコードの蒐集をし始めJAZZのLPも数枚持っていました。心身ともに困憊状態である彼に癒しの一曲と言うことで、このwhy?に針を落とした次第です。その当時、人気と実力の絶頂期に、マーティン・ルーサー・キング・Jr.を中心とする黒人公民権運動、さらにより過激なマルコムXやストークリー・カーマイケルらの運動に傾倒していくと同時に、メインストリームの音楽シーンから忌避されていったニーナシモン。彼女の心境と運動に疲れ壊れていく彼の姿が重なったかもしれません...

曲と人生がオーバーラップするほど、一枚のLP、CDは人生の伴走・伴奏者でもあります。数あるなかから、ふと手にしたアルバムから、過去の記憶がまるで走馬燈のように蘇ってくる音楽のチカラは半端じゃありません。確かに、音楽はいつだって世界のあらゆる人々の心に訴える、最も強力な言語かもしれませんね。

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街はクリスマス一色

2017/12/04
【第1030回】

いやいや、インフルエンザワクチン騒動も収まり週末は久しぶりに劇場に足を運びました。

トム・プロジェクトでもお馴染みの作・演出家ふたくちつよしさんの作品「あした天気になぁれ」。設定は4台のベッドが並ぶ病室でのお話し。患者さんのそれぞれの人生模様を、ふたくちワールドで描いた心温まる作品。確かに病んだ人達が入院している場所はドラマの宝庫。そこにどんなメスを入れるかは作家の腕の見せ所なんだが、ここは常に家族というキーワードを基に、人間に対する心情溢れる愛情を描き続けてきたふたくちさんの真骨頂が溢れんばかりの芝居でした...それだけに演じる役者の抑制力が大切なんですが、何人かは声優を主にしているせいか、声に頼っちゃうんですね...でも、全体的に気持ちの良い芝居でございました。

昨日は、大学ラグビー伝統の一戦、早稲田対明治の一戦をテレビ観戦。今や大学ラグビーは帝京大学が一人勝ちの時代になっちゃいました。嘗ては、この時期の伝統の一戦は旧国立競技場のスタンドを超満員にしてラグビーファンを魅了したものでした。1987年の雪の早明戦は壮絶な試合でした。雪の中どろんこになりながらぶつかりあう30人の肉弾戦は、まさしく鍛え抜かれた男たちのドラマでした。おいらは、野球と共に、このがちんこで闘う男の競技ラクビーが大好きです。サッカーみたいに一喜一憂しない姿も好感を持ちますね。命を賭けた男の荒ぶる姿は感動します!今の大相撲は残念ながら見せ物ですね...それにしても、あれだけ身体をぶつけながら、よくまあぴんぴんしとりますな。ただただ驚くばかりでございます。

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本日、新宿の紅葉

2017/12/01
【第1029回】

この歳で初めてインフルエンザワクチンなるモノに挑戦しました...ところがどっこい水曜日の夜中から吐き気を催し、食欲全くなし2日間寝込んでしまいました。普段、薬を飲まないおいらの純潔な身体に異物が侵入し異変をおこしたんじゃないかしら?とおいらは勝手に想像してるんですが、調べてみると、そんな例は確かにあるそうな。そう言えば、この国は薬漬けでなんとか健康を維持している気がしてなりません。病院はいつも満杯、それに付随してお薬は山ほど出してくれるし病院、薬品会社はほくほくもんですわ。これでは国も医療費対策に頭を抱える状態。こんな社会にしたのも人間様の過剰な欲望が生み出したものでございます。そんな過酷なばい菌だらけの環境の中、おいらはささやかながら自主防衛として心身を鍛えたお陰で薬とは無縁の中で過ごしてきました...そんな身体が、今回はびっくりしたんでしょうね。でも、おいらはここでプラス思考に転じます。2日間もゆっくり寝込んだ日を与えてくれたことに感謝です。酒も飲まず、食事もせず身体を浄化させるいい日だったに違いありません。こんな日は何も考えず、日頃あまり見ることのないテレビを見ますと、大相撲の暴行問題やら国会の予算委員会。どちらもなんだかどーたら、あーたら、いろんな人が出てきて勝手なことを喋っとりました。それにしても予算委員会でのアベカワモチのモチッとした顔、アソウセメントのセメントで固めたニガリ顔、どうみても喰えませんがな。何とかしてちょうだいな横綱と政治家の品格。

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今年も仲良く

2017/11/28
【第1028回】

このところの気候の変化には身体がついていけません...人間ばかりではなく地球上のあらゆる生物が戸惑い驚き、その対処に困っているのではないかと思います。この季節、紅葉の美しさに目を奪われ、暫し樹々を見上げそのバックに映る空の表情とともに自然が織りなすショーに魅入る日々が多いのだが、この天候不順で肩すかしを喰らう日も多い。黙して語らぬ木々達も、人間どもの文明、発達の名のもとに飽きることなく繰り返す環境破壊に呆れていることでしょう...関西電力大飯原発3、4号機について福井県の西川一誠知事が27日に再稼働に同意。こんなことが堂々と平気に報道され、既成事実として世間にまかり通るなんて、この国なんてなんなんでしょうね。アメリカの顔を伺いながら国を治めるこの国の為政者に身を任せている姿が、今、連日報道されてる相撲界に良く似てません?国技なんて銘打って税の免除を頂いてる公益財団法人日本相撲協会も、すっかりモンゴル軍団に牛耳られる情けない姿をさらけだしています。そりゃそうだわ、モンゴルの人達のお陰で相撲界は成り立っているんですから...親方もモンゴル横綱には強いことは言えませんがな。この国の容姿が、この季節の紅葉の美しさと同様に凛としてもらいたいのだが、他国の傲慢なチカラで様変わりしている気がしてなりません...よしゃ、おいらがひとつ乗り込んで土俵で大暴れしたいところだが、なにせ20代の頃の屈強な肉体ではありませんことよ。気力は衰えてはいないんですがね...威勢のいい若もんおらんのかいな?

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美しい国

2017/11/24
【第1027回】

今日は女性の方には不可解な話...男性トイレに行っていつも緊張することがあります。さてオシッコをしようとするときに目の前に現れるのが、矢を放つときに前方に見える標的。真っ白な便器にその標的が刻み込まれているんですよ...これは緊張しまっせ!この極小の標的に向かって発射しようにも、その日の勢い、角度によって情けなく的を外してしまい、なんだか今日は外れの日に当たった気分になっちゃうんでございます。そりゃ分かりますよ、取りこぼしがないように清潔に使って貰いたいという気持ちは十分に...でも、あの標的は、折角の戦士の休息タイムにいささかプレッシャーを与えてる気がしてなりません。
それにしても、最近のトイレの進化は目覚ましいものがありますな。しばし、トイレの便座に座ってあれこれと考え事もできる安らぎの場所でもあります。ウオシュレットが出始めたときなんぞ、便座に靴で上がり込み用を足した人も居たそうな。
スペインなんぞは公衆トイレなんてありません。もようしたらレストラン、バーに駆け込むしかしかありません。中には、ペーパーなんぞのサービスなし、そんなときはどうするんでしょうな?こちらの方がより深い思索の場所なのかもしれませんな...便利は想像力を鈍化させるのかもね。

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11月の黄昏

2017/11/22
【第1026回】

寒い都会の夜空をバックに一人のシンガー...なんだか、ふと立ち止まりしばし耳を傾ける群衆。疲れた心身に何故かひとときの安らぎを与えてくれるのも確かだ。新宿はストリートミュジシャンが多い場所だ。それは、ある種の開放地区である証でもある。昔から様々なカルチャーが生まれ消えていく流動的で雑多な街。50年地回りしているおいらも、その変わらぬエネルギーに魅了され今日もふらふらと散策し続けている。先日、中村屋のカレーを久しぶりに食べたのだが、少々味が落ちてますな...それになんでや、自前のビルを建て替えたのにも拘わらず本家本元は地下2階に潜り、1階はブランド店、元にあった素敵なレストランの場所はすべて家賃稼ぎのお店になっちゃったというお粗末。中村屋の誇りも伝統も投げ捨て、そろばんはじいてる今時の経営者にがっかりもんでございます。その隣にあったTSUTAYAも、そろそろ新装開店するのだが、何だか漫画喫茶みたいな店に衣替えしそうな気配だ。CD、DVDを低価で提供するお店に価値があったのになんて嘆いてしまいます。まあ、これも時代の流れでしょうね...あのゴールデン街もすっかり世界のゴールデン街になって、6割は外人がうろちょろしてますな。店によっては日本文化の見本、お通し代で一悶着する場面もちらほら聞こえてきます。まあ、そのゴチャゴチャ感が新宿の真骨頂なんでしょうがね...おいらは死ぬまでこのおもろい新宿の地回りせんとあかんのですかね。誰からも頼まれてへんでえ~

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新宿の歌姫

2017/11/20
【第1025回】

野球シーズンが終わって寂しい日々をおくっていたのだが、アジアプロ野球チャンピオンシップ2017なんてものが登場し、週末久しぶりに楽しませて貰った。おいらも少々疲れ気味の身体であったので、TVの前で日本チームの活躍を満喫、その中でもライオンズの選手の目を見張るようなプレーに思わず嬉しくなっちゃいました。沖縄出身の山川選手の笑顔、地味ながら今大会のMVPに輝いた外崎選手、韋駄天の走りを魅せた源田選手...こりゃ、来年はライオンズの久しぶりの優勝を見れる!なんて気の早いおいらは有頂天になってしまいました。いやいや、来年も大変ですぞ!安定感と力のある投手が定まらないと優勝は無理でしょうな...なんて心配も頭を過ぎりました。
日馬富士事件、相変わらずおもしろおかしく連日のように報道合戦。テレビなんてもんは節操がないんだろうね...これだと思ったらピンポイント攻撃、生活に直結する政治、経済なんてものは隅に追いやられる始末。こうやってマスコミは巧妙に情報操作をしてるんだろう。それにしても、悲しいかな相撲界はモンゴル力士あっての繁栄。昨日、稀勢の里がモンゴル力士逸ノ城に完膚無き敗戦を見るにつけこりゃあかんですわ...裸のぶつかり合いの格闘技、これは死ぬ気でやらんとてっぺんは取れんですバイ。このふぬけたこの国から、そんなガッツある若者が出てくるなんて到底考えられない...こんな徒弟制度の古い慣習の所なんかに集まるわけがない。得てして今の若者は、いかにして効率よく楽に報酬を得ることしか考えておりませんがな。たまにピュアな若者に出会うと感動しちゃいます...そう考えれば、ひたむきに苦しい生活を覚悟しながら演劇に準じてる演劇人はまだまだましの方かな。一度きりの人生、身を粉にして投げ出してこそ、何かを掴むんでござんすよ。

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コントラスト

2017/11/17
【第1024回】

益田ミリさんの「今日の人生」読了...1969年大阪生まれのイラストレーター。日常の何気ない市井の人達の有り様を見つめる視線が何とも言えない味わいがある。絵も奇を衒うことなく、自分のボブヘアースタイルの顔の他はシンプルに描き(シンプルと言うより人なんぞは棒と丸、手抜きと言えば手抜きだが、この徹底的に削ぎ落としたところに、読者の想像力を喚起させてくれるのではなかろうか)ミリさんがキュンと感じ、思ったことを素直に表現してる。この細やかな情感は女性ならではと思わせる...おいらだって日々人間観察を趣味としてるんだが、おいらの観察は、ついついその人のドラマを創作してしまう。ミリさんは観察している人の毛穴からこぼれ落ちる微妙な匂い、感覚を優しくすくい取っている気がしますな...この繊細、微妙でおかしな情動を描かせたら女性にかなわないとおいらいつも思っとります。なんと言っても子供を育て産み落とすエネルギーを持ち合わせている生き物に男なんぞは歯が立ちません...所詮、男は頭脳でしか何物かを生み出せない悲しい存在。女は子宮で思考するのではなく感じているんでございます。これは致命的、かつ決定的な何物にも換えられない事実。この当たり前のことを判らず生きてるととんでもないことになっちゃいますぞ...と、言うことでおいらはいつも女性に尊敬の念を抱きながら生きとりますよ。女性を見下したり、利用しようなんて思ってる輩は必ずや落ちていきますぞ...

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枯葉よ♪

2017/11/15
【第1023回】

昨晩は渋谷シアターコクーンにて「24番地の桜の園」を観劇...高橋克典、小林聡美、風間杜夫出演によるチェーホフの最後の戯曲「桜の園」を遊び心満載の演出家、串田和美が賑やかしく創りあげた舞台。この舞台の主役は休憩を挟んで幕があがると同時に、後方で乾し草を黙々と食べている一匹の本物の山羊ではなかったのではないだろうか。時には演じる役者の姿をしげしげと観察し、あたかももう一人の演出家のようでもあり、まさしく哲学者の佇まいでありました。役者の演技よりも山羊は山羊でしかない山羊のほうがどれほどリアルであったことか...なんだか演技の本質をつかれたような後半80分の舞台でした。幕間に「途中で入るときはかがんで入って来いよ!」と怒鳴ったお客の表情もリアルでしたな...品の良い観客で埋め尽くされた会場で、突如繰り広げられ茶番劇も何故かリアルでありましたな。公衆の面前でなかなか吐けない台詞です。二幕の幕が開くとどつかれた客は別の席に移動してましたな。そのどついた怖そうな男が、何故かオペラグラスで必死の形相で舞台に見入っていたのには笑っちゃいましたがな...終演後、杜夫ちゃんと一杯。今、日テレで杜夫ちゃんが出演している『先に生まれただけの僕』の監督、プロデューサーも一緒で盛り上がり危うく終電に間に合わないかと急いで帰宅...今宵もお疲れさんでした。

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こんな季節になりました...

2017/11/13
【第1022回】

「東おんなに京おんな」の東京公演、昨日無事に池袋東京芸術劇場シアターウエストで終えることができました...短い公演でしたが岡本麗さん、鶴田真由さんの二人のバトルとっても見ごたえがありました。1時間40分喋りっぱなしの舞台なので、おいらもハラハラドキドキ、台詞忘れて頭が真っ白状態に陥った経験はおいらにもあるので尚更のことでございます。共演者が他に居れば助け船もできようが、何せ二人きり。しばしお見合いシーンになりお客もぽっかりと穴が開いた空間が劇場にでき上ってしまう恐怖に付きまとわれながら客席にいるおいらは心臓がどっきんどっきん...身体にとっても悪いですが、舞台という戦場で台詞を速射砲のようにたたきつけながら奮闘している女優さんのことを思えば...それにしても二人の女優さん、とってもチャーミングでございます。なにも女優さんだけではありませんことよ、女性はチャーミングじゃないと、この世の中うまく回っていかないような気がします。特に最近の殺伐とした世の中を救えるのは笑顔であり、人の心を惹きつける心のありよう...そんな魅力を満載した二人の登場人物を台本に仕上げた作家・ひょうたさんは本当に不思議で素朴な人です。初日には奈良県吉野郡から来ていただきました。結婚経験もなく演劇体験もなく、ただただひょうたさんの想像、空想から生み出されたドラマ、下手に経験してる人よりもはるかに女性の心理、心情を細やかに描いております。初日終演後に一杯やりながら話をしても偉ぶることなく、いつものように飄々としておりました。

劇場を出ると、公園で何人かの大道芸人が道行く人達を楽しませていました。子供連れの親子、若いカップルなどなど笑顔で満ち溢れた景色がある限り未来はまだまだ大丈夫かな...

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芸あるところに笑顔あり

2017/11/10
【第1021回】

折りたたみヘアーの武器商人がアジアで商売しまっくっています...なんと言っても一番利益がいいのが武器、消耗品であり単価が高い。このおっさんツイッターで危機を煽り、ちゃっかり自国の戦闘機やら武器を斡旋しアメリカの軍需産業に多大な利益をもたらしています。アベちゃんなんかは、娘のイバンカ氏基金に57億円を拠出...この国に未だ復興できず希望の見えない日々を送っている人達が居るのに、アメリカにただただ米つきバッタ。韓国なんぞは、デモまで繰り出してるのに歓迎一色。いつまでたっても、米国に対しては盲従を続けるこの国の姿に、殆どの人が諦めに近い心境であることに違いない...言わなきゃならないことは言わんといかんでしょうが!おいらの一番の怒りは、世界で唯一の被爆国でありながら、アメリカのご機嫌を伺いながら平和の大切さ必要性を説かないことでございます。人殺しの武器をセールスするオッさんに平和の大切さも進言できない宰相なんて要らんですバイ!がしかし、選んでいるのもこの国のお方。米国と中国で世界を支配し、紛争地帯の火種を消さず殺戮を繰り返しながら財を成していく未来の姿が見え隠れする米中会談でございました...なんとも希望が見えない弱者切り捨ての世界の未来に、おいら暗澹たる思いですが、生きてるんだから、いや生かされてるんだから、命ある限り微かな明かりを求めて今日もプラス思考で生きますばい!

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秋の日はつるべ落とし

2017/11/08
【第1020回】

表参道も随分様変わりしました...嘗ては日本の典型的な長屋を思わせる、日本初期の近代的な鉄筋コンクリート造の耐火アパートとして、関東大震災後に復興住宅として建設された同潤会アパートが参道の一角を占め、お洒落な街並みと程よくマッチした風景を醸し出していました。ところが、11年前に安藤忠雄設計による表参道ヒルズが完成すると一気に世界のブランド館が建ち並び、アジアを含めたお上りさんが散策する街に変貌いたしました。でも、あのケヤキ並木は、時代の流れをものともせず道行く人達を和ませてくれます。おいらのスペイン時代の友人は、この通りを根城にして指輪、ネックレスなんぞをタイから仕入れて一財産を築きました。今はのんびり南の島で優雅に好きな絵を画いて暮らしてます。昨年、八重洲の画廊で個展を開いたので久しぶりに会ったんだが、少しもぶれることなくスペイン人を貫いておりました。この参道は夜になると大人の街にチェンジします...それを見越して異国の楽士がロマンチックな音色を奏でてくれてます。おいらもしばし耳を傾け、前に置かれたカンパ箱に気持ちをチャリン。さあ帰ろうと、地下鉄表参道の駅に向かおうとしたときに、なんと財布が落ちてるではないかいな。かなり膨らんでいる中身、側に交番があったので即届け、立ち去ろうとすると若いお巡りさん「すみません、書類にサインお願いします」おいら一瞬いろんなことが頭を巡りました。一番イヤだなと思ったのは、お金だけ抜いて届けたんじゃないか?なんてこと思いました。これは、良くあるケースですな、おいらも経験があります。見事に現金だけ抜かれカードだけ戻ってきました...落とし主からの連絡も要りまっせん!ということでなんとか交番から逃れることが出来ました。それにしても親切心と疑心が背中合わせになってるなんて、なんともおかしな話しですな。

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今宵もロマンチックな夜を...

2017/11/06
【第1019回】

秋も本格的になりましたね...井の頭公園も大分色づいてきました。土曜、日曜日には、いろんな人達が手作りの作品を展示販売しています。この日は76歳のおじさんがガラスビンをリサイクルして、花瓶やら物置やらの作品に設えていました。54歳の時に印刷業界から足を洗い、気ままに生きている姿が清々しく思えました。後何年?そう思ったときにすっぱりと過去の生き方にけじめをつけ、あとは野となれ山となれ!それがほんまによかですばいとおいらはいつも思ってるんだが、人生先が見えてくるとますます不安が募りアクションを起こせないのが当たり前...まあ、幸せなんぞ人それぞれ価値観は違うし他人が口出しするもんじゃないのだが、ここはひとつ男気をだして社会の枠組みをはみ出してはいかがかな?なんて背中を押しちゃいたくなりますな...なんて無責任なことをのたまってるおいらです。
土曜日には、雑司ヶ谷の鬼子母神に紅テントが聳え立つ唐組の芝居に行って参りました。最近、若いお客が増えてますな。ハイテク遊びに疲れた若者が、アナログの最たる芝居に新鮮さを感じたんでしょう。神社の中に荒々しくテントを打ち立て、ゴザの上に座って、手作りのゴツゴツ感満載のセットの舞台で、唐十郎が紡ぎ出した壮大なロマンとイメージで構成された台詞をエネルギッシュに語る役者の姿に思わず身震いしてしまうんでしょうね。役者陣も世代交代でしょうか?これから伝説の紅テントを背負って立つ若手が奮闘しておりました。テントを出て空を見上げると満月が色鮮やかに紅テントを照らしていました...

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井の頭公園

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紅テント

2017/11/02
【第1018回】

昨日は昼夜、大変忙しい一日でございました...午後2時よりGINNZA SIXで長年の友人である高橋美智子が経営する、2005年ギネスブック認定の豊富なシェリーの品揃えを誇るシェリー専門店銀座しぇりークラブが5年かけて制作した「Sherry 樽の中の劇場」の出版記念パーティに出席しました。入り口で樽から汲みだしたシェリーをいただきながら、シェリーにぴったりの食べ物を堪能。おいらも、世界のいろんなお酒を飲み比べしましたが、最後に残るのはシェリーと日本酒かな。シェリー酒が舌の上をころころと転がりながら喉元を過ぎていく感触は堪らんですばい...この日、女医さんがシェリー酒が身体にとってもいいという研究結果も大変興味深かったです。でも、飲みすぎはいけませんことよ。
夜は横浜で「明日がある、かな」の最後のステージに行ってきました。この日も9人の出演者、最後の力を振り絞って自分の役を活きていましたね。おいら、もうこれだけで感動しちゃいます。誰が何と言おうが、一つの世界を創り上げるために身を粉にして立ち向かう精神と肉体を見せつけてくれれば、必ずや次に次に繋がります。みなとみらいの観覧車を眺めながら9人の役者との酒は美味しかったです。

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昼 銀座

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夜 みなとみらい

2017/10/30
【第1017回】

おいらが3年ばかり滞在した第二の故郷スペインでは大変なことになっとります。スペインで一番お金持ちのカタルーニャ州が独立を宣言。スペイン政府は猛反対で激しく対立、昨日なんかは独立反対派が大規模な集会を開き大混乱に陥ってます。おいらが長く住んでたアンダルシアは、実際働き者はあまり居ません。豊かな自然のあるものを食し、楽しい会話と恋に明け暮れ日々を祝祭のように過ごしています。生きていくことに一番大切なことを満喫し、家族を大切にしながら心豊かに生きている姿に、おいらは深く感動しました。そんなアンダルシアが、当然ながら大きな利益を生み出す下地があるわけがございません。そんな州に、カタルーニャの人達が汗水垂らしたお金を垂れ流されちゃたまりません!と怒り出したのでございます。おいらハポネスは両方の言い分よく分かりますが、何事も表があって裏があるのが自然界の法則です。富あるものが貧するところを助け合っていくのが国だと思うんですがね...それでなくとも世界は分断と差別が蔓延しつつあります。このままで進行していけば自ずから世界は滅亡の道を辿るでしょう...バルセロナに代表されるガウディの建築物はスペイン人の遊び心が満載、アンダルシアにはフラメンコに象徴される情熱と燦々と降り注ぐ太陽があります。どちらも、まさしくスペインです。おいらはなんとかうまく融合しながら、これまで同様スペインの魅力を世界に発信し続けて欲しいと願っとります!

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アンダルシア サロブレーニャ

2017/10/27
【第1016回】

絵本作家の五味太郎さんの「勉強しなければだいじょうぶ」読んでます。今の日本の教育システム、学校のあり方に大いに疑問を持つおいらには大いに共感するところが多々あります。学校で行われている勉強が人を選別するため、国を統制するための国家に都合の良い役人作りのため、企業の良き歯車の一員となるべき企業戦士の育成のため...人間としてキラキラと生まれてきた心身をボロボロにしてしまう今の学校に痛烈なパンチを浴びせています。そこのところに順応してしまう親にも苦言を呈しています。

子どもを生物的にゆっくり見るという習慣がついてない社会なんだよ。社会の中でしかその子を見ていないのね、恐ろしいことに。それはたぶん、社会の中でしか、あるいは学校という中でしか個人個人を見ない教育を受けてきた人なんだと思う。家に帰ってきても「勉強したの」「宿題できたの」って学校基準でしか物を喋れない、そういう暮らしをしてきた親の歴史なんだと思う。そんなことはさておいて、もっと大事なことがあるだろう、ということについてもうわからない人たち。
学校の査定がすべてだと思い込み、社会の目に怯えている人々、自分は怯えているとははっきりとは自覚してないけれど、完全に社会に怯え切ってしまっている個人というのが生まれたんだと思う。それ、学校教育システムの大きな罪です。

おいらも振り返れば、学校の勉強で役に立っていることは数の数え方、漢字くらいかな。これだけあれば十分でございます。あとは天真爛漫に目にする物、感じる物と己の感性の交信を楽しみながら活きていくことが一番大切だなと思って生きてきました。何度も言いますが一度きりの人生ですぞ...心して生きておくんなさいな。

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色付き始めました...

2017/10/25
【第1015回】

「明日がある、かな」昨日、初日を迎えることが出来ました...総勢9名、トム・プロジェクとしては久しぶりの出演者多数の芝居になりました。これくらいの数からが群像劇になるのかな?なにせ、23年前には究極のひとり芝居からスタートしたんですから...理由は、魅力のない役者さんを数あわせのために出演させ、お客さんに迷惑をかけたくない。だって、折角盛り上がったところに芝居を壊しちゃう役者さんが出てきたらどん引きですもんね...となると、旬の作・演出家の書き下ろした作品を、魅力溢れる個性的な役者さんで存分に満喫して頂きたいということで、しばらくはひとり芝居のトムさんということで演劇界にデビューしました。でも、これも限りがあります。時を経て、個性のある舞台役者も少なくなってきました...その後は複数の出演者の芝居をたくさん創ってきましたが、ひとり芝居の経験を生かして、役者は十分に吟味してキャスティングしているつもりです。

さて、昨日の初日を見終わって感じたことは「劇団トム・プロジェクト」が誕生した瞬間に立ち会った思いがしました。23歳から56歳の俳優さんが、芝居のテーマに沿って一丸となって演じる姿は劇団という集団が存在をかけて観客に対峙している様に見えました。芝居で一番大切なのは座組です。俳優さんは仕事柄個性の強い人が多いのですが、その個性を失うことなく自分の役割をきっちりとこなす状態を生み出すのがなかなか難しいが、今回は息もピッタリ二時間の芝居を見事に演じきっていました。

今日、雨なので新宿の地下街を歩いていると今回の芝居のテーマ曲が流れてくるではありませんか...よく見ると、地下街の通路を掃除する自動掃除機から聞こえてくる曲でした。「明日がある♪明日がある♪」ほんまに、明日がある世の中になりゃいいんだが...

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久し振りだネ

2017/10/23
【第1014回】

でたらめな政治によるでたらめな選挙終わりました...大義なき解散に始まって、一人の権力亡者のかき回しで、野党第一党があっという間に姿を消すという前代未聞のことが起き、結局はアベ川モチが大量生産されましたが、こんな期限切れのモチ食えませんがな...小さなイケを大きなイケにして満杯にしようとしたオバハンは、自らの言葉に溺れ異国の地で殊勝にも反省しとりました。片や、信念を曲げず小さな木を植えた福耳おじさんの枝には沢山の葉っぱが付きました。日本昔話に出てくるような情けない選挙になりました...国民の半数の人しか参加せず、小選挙区制というマジックのお陰で選挙前と全く変わらない有様。

800億円かかるという選挙費用、被災地に回せよっていう話です。こんな茶番劇に、こんな人達に税金が無駄遣いされてることに怒らない国民も情けないことですな...選挙中にも東日本大震災、熊本震災、今年の水害のことなんぞ選挙の争点にならず、ただただ当選するためだけの空虚な言葉を羅列する政治屋にはほんとうにうんざりです。戦後、何度も見た光景が今回も無残な形で見せつけられました...じゃあどうすりゃいいの?答えは簡単、なんでここまで戦後72年間戦争もなくここまで来れたのか!そこを見れば一目瞭然だと思うんですがね...なにがあっても、戦争のない世の中が一番です!

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こんなのイヤですわ...

2017/10/20
【第1013回】

一昨日、18日「萩咲く頃に」の最終公演、埼玉県本庄市に行ってきました...本庄虹の演劇鑑賞会さんに呼んでいただいた公演です。今年の1月~3月、9月~10月、計61ステージを事故もなく無事に終えることができました。生の舞台ですからキャスト、スタッフの体調管理はもちろん、移動中の事故、トラブルで公演中止なんてことも当然起こりうる厳しい状況の中、何事もなく大千秋楽を迎えることができたのも奇跡に近いことです。あらためてキャスト、スタッフ、そして観に来ていただいたお客様に感謝です。そして、いつもながら演劇の神様がトム・プロジェクトを温かく見守ってくれてることにありがとさん!この日の舞台を観て感じたことは、役者が日々慣れることなく、発見を求めて様々なチャレンジをしている姿に感動しました。芝居は間の芸術です。台詞がない無言の中に実は多くの意味深な言葉が生まれているんです。登場人物の言葉にできない思いが舞台上で火花が飛び交うように入り乱れてる様は観客の想像力をいやが上にも掻き立ててくれます。これがたまらんのです...この日の芝居は、その間が落語のようでもあり、小津安二郎の名場面を彷彿させるようでもあり、千秋楽に相応しい舞台でありました。
終演後、キャスト、スタッフ、鑑賞会の役員さんと大打ち上げ大会を開催。夜が更けるまで皆、大仕事をやり遂げた充実感と、これで終わりという寂しさも交えながら、とことん飲み明かしました。この作品、再来年もお声が掛かっています。よか芝居は何回観てもよかですばい!

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ビルの中のハロウィン

2017/10/18
【第1012回】

こんな人が、こんなコスチュームで白昼堂々と新宿の街を歩けるんですから、日本はまだまだ大丈夫ですね...北朝鮮はもちろん中国、ロシア辺りではすぐ拘束、多分強制労働収容所送りではなかろうか。このおっさん以前にも見かけましたので「久しぶりだね...」なんて声かけると「写真撮ってもいいよ!」なんて言うもんだから断るのも悪いと思い準備をすると、なんとなんとポーズをとるじゃありませんか...仕方なくシャッターを押すと「もっと撮ってもいいわよ!」なんて要求してきたので、こりゃ大変と「寒くなったから風邪引かないようにね...」と言いながら危ない雰囲気が立ち籠める現場から早々と退散。新宿の街は怪しい来客簿で満載でございます。それを許す寛容さがおいらは好きだな...排除の論理を振りかざす、あのおばはんとはえらい違いでありますな。しかもお城は新宿にあるのに、たまにはおいらみたいに新宿の街の隅々まで地回りしてみてはいかがかな?街に蠢く大衆の焼け付くような匂いを感じ取って初めて政治なんて言葉が生まれてくるんじゃございません。何だか聞いたことのない言葉を羅列し、私はインテリ、文化人よなんてポーズを見せてもいずれ化けの皮が剥がれてしまいますよ...案の定、ホープなんて抽象的な名前を旗印に威勢良く立ち上げたグループもじり貧状態になっちゃいました。野党を解体させたおばはん良くやった!とアベちゃんほくそ笑んでることでしょう。
選挙まであと5日、またまた自公で過半数でございます。いや、維新、希望も自民党の補完勢力だから解散前と変わらないどころか、ますます危ない国になっていくんでしょうね...
ピンクの白鳥おじさんが見れなくなったときが日本沈没のときでございます。

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新宿奇人列伝
(正面写真は貴方がイメージしてね)

2017/10/16
【第1011回

先週の金曜日には「萩咲く頃に」、大宮演劇鑑賞会に行って参りました。終演後、会場にお二人の品の良いご婦人が「シルバー人材派遣会社からきましたコンパニオンです...」なんてお迎えの挨拶をされ飲み会の会場に誘導されました。それから5時間近く、鑑賞会の方々と楽しい時間を過ごすことが出来ました。芝居をとことん愛する最強軍団、こんな人達のお陰で我々も、よしゃ!よか芝居を創らんといかんばい!と背筋がシャキッとする次第でございます。それにしても、大宮も大都会、この街にプロのサッカーチームが2つあるのも判る気がします...
土曜日には、朝早くから映画鑑賞。新進気鋭の監督・外山文治短編作品集を渋谷のユーロスペースでアンコール上映。トム・プロジェクト所属の下條アトム、藤澤志帆、辻井彰太が出演してることもあり足を運びました。限られた予算の中で、監督自ら営業し上映先を見つけ出し公開するという、まさしく映画をこよなく愛する人が創った、「わさび」「春なれや」「此の岸のこと」3本の作品。37歳の監督が描く世界は、老年、若者を主人公にしながら基本的に市井の人達の日常に流れる機微をすくい取り何気なく描いてる...何故短編にしたのか?長編映画が多い中、饒舌を避け究極の所、俳句みたいな映画にしたかったのではなかろうか...若い監督が困難に立ち向かい、自分の世界を形にしてゆく姿に拍手を送りたい。

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冬を待つ

2017/10/13
【第1010回】

「明日がある、かな」の稽古場に顔を出す...今回は出自が異なるベテランから若手まで総勢9人の出演者による芝居である。劇団ではないので、演技に対する体験、考え方も当然のように違ってくる。それぞれの異質なものをどう纏めていくか演出家の手腕が問われるところである。この日も、作・演出家の中津留章仁が粘り強く丁寧に役者にダメ出しをしていた。
言葉では理解できないとみると、自らがやってみせるのだが、さすがに自分自身が思考して書いた台詞、なかなか堂に入っている。これをやられると役者も参っちゃいますな...役者自身が役作りしていることの正誤が問いただされているようなものだからだ。演出家がやったことをそのままやるのも情けないことだし、ダメ出された役者はそこを乗り越え新たな表現を生み出さねば屈辱的なことになってしまう。当然ながらお客さんは本番しか観れないのだが、芝居を創る当事者は稽古の過程を観れる楽しみがある。作・演出家と俳優との身を削る修羅場があってこそ質の高い作品が生まれるのも至極当然なことである。初日まで、すべての時間を芝居のために捧げる創造者たちの苦闘の日々が報われるようにするのもプロデューサーの仕事です...初日乾杯のときに美味しい酒が飲みたいですな!

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錦糸町の稽古場からの帰り

2017/10/10
【第1009回】

秋の日の夕焼けは、おいらの心身をほどよくほぐしてくれる...上田敏による訳で、日本で最も有名なフランス詩の一つとなったポール・ヴェルレーヌの「秋の歌」。秋と言えばなんとなく憂いを感じる季節「秋の日の ヴィオロンの ためいきの 身にしみて ひたぶるに うら悲し」そんな日の暮れなずむ空を眺めると、今日一日無事過ごせたことに対する感謝の気持ちと、人生の黄昏をしみじみと感じ入ってしまうのだ...なにか行き詰まったり、悩み事があったら空を眺めるに限る。時の移ろいとともに微妙に、時には大胆に、様々な表情を見せてくれる雲、その雲に鮮やかなタッチでペインティングしてくれる時間が夕暮れ時である。大地に寝っ転がって半日空を眺めた日なんぞ、思考することの空しさを覚えたくらいだ...この自然に素直に身を任せることを忘れた、人間の計り知れない欲の悪行の数々が大空に吸いこまれるさまは実に爽快である。この果てしない空の広さ、大きさは半端じゃない。
この空に向かって虚言を放つ政治屋の戦いが今日から始まった...空さんよ!そんな輩には何倍ものおしかりの返答を...

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暮れなずむ街

2017/10/06
【第1008回】

西武ライオンズのペナントレースも昨日で無事終了しました...結果は2位。ようやくBクラスを脱出、よくやったライオンズ。何といっても辻監督の粘り強い指導と、西武ライオンズの黄金期に培った勝負勘によるものが大きい気がする。とりわけ長年の課題であったショートのポジションを新人源田壮亮がフル出場し活躍したことと、シーズン後半、山川穂高が堂々の4番でホームランを連発したことも勢いに弾みを付けた。10月3日に楽天との最終試合でのライオンズの気迫は、今年のシーズンを象徴するような試合であった、逆転された後の山川の逆転ホームラン...おいら、思わず涙ぐんでしまいました。沖縄出身の人なっこい笑顔が魅力の山川が思いを込めての一発。そうそうできるもんでございません...そんな野手の頑張りに、この日先発の菊池雄星が答えないわけにはまいりません。8回の表無死満塁のピンチを無失点で切り抜けた時にもホロリ。そして、その裏、源田があの長嶋茂雄を超え、シーズン154安打で新人安打数歴代3位を達成。こりゃ凄すぎますバイ!結局、この日10対3で楽天を下し、シーズン2位をほぼ手中に収めた次第だ。

ライオンズを応援して66年...西鉄ライオンズが身売りされてから、もういいだろうなんて気持ちになったことも何度もあるのだが、何故か、あの少年時代に野武士軍団からもらった夢とロマンと勇気が、おいらの体の一部に棲みついてしまい、なかなか出ていかなかった...おいらの人生の中で、あの日あの時の記憶がいつからか生きていくうえで必要不可欠なものになってしまったのではなかろうか...たかが野球、されど野球、野球に翻弄される人生もまた素敵なものではなかろうか。

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我が心のライオンズ

2017/10/04
【第1007回】

新宿は、日替わりで奇人変人が路上で怪しげなパフォーマンスをやっとります...この日も新宿西口小田急前の階段付近で、おっさんがなにやら難しい顔してメモをとっていました。その周辺をみると「駐輪代が自販機でドリンク求めるとチャリ預かり...」「拾得物、鍵、マント、傘...」「社員募集、秘密厳守...」などなど、なんのこっちゃ意味不明のメモ書きが散乱しておりました。勿論、こんなものを真面目に見る人なんぞ一人もおりませんがな。でも、好奇心旺盛なおいらは、しばし観察しておりました。すると、おっさんおいらの顔をしげしげと眺めながら、おいらが話しかけてくるのを熱望してる感じがしてきたので、こりゃやばいと退散してしまいました。会話が成立すりゃおもろい体験だったのだが、どう考えても宇宙人規模の対話で道行く人も、おいらもちょいとイッテしまった人種だと思われるのも何だか嫌な感じがしたもんで...いやいや世の中は不条理なことばかりです。このおっさんのこと笑っておられませんがな。昨日、発表された希望の党の公認候補の名前を見て、驚き桃の木山椒の木!民進党時代に反対していた安保法案、憲法改正を覆して泥池に飛びこんじゃうんですから、いつもテレビで息巻いてたあの人もこの人も...こんな輩が有象無象、救いがない国でございます。たとえ落選しようとも、己の志しの旗を掲げ散っていく方がどれだけ潔いことか...人間としての矜持、生きていくことで決して忘れてはならないことでございます。

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新宿奇人列伝

2017/10/02
【第1006回】

爽やかな秋の風が吹き始めたというのに、なんですかいな!お馴染み政治屋さんの離散集合。小池のおばはんに引っかき回され、小池にはまった弱気な野党の皆さんの溺れ振りぶりには呆れてしまいます。前原のおっさんも、まんまと騙され民進党は真っ二つに割れてしまいました。この経緯をみると、なにやら裏でアベカワモチとコイケマンジュウがこねくり回しながら甘い話をしたんじゃないかしら...二大保守党を出現させ、何れは小池首相誕生を夢見てるんでしょうね。それにしても民進党のみなさん情けなか!政治家から志を無くしたら終わりでしょうが...小池のおばはんの排除の姿勢には恐怖すら覚えます。次第に化けの皮が剥がれつつありますな。次から次に、時の権力者に接近し政界を渡り歩く様だけでおいらなんか、この人のお腹の中なんじゃろかいな?と思ってました。都知事になったのはいいが、豊洲移転問題、オリンピックなどなど何も解決してないのに何が国政といいたい。それにしても日本の皆様もほんとうにしっかりせんといかんですばい!国会議員ひとりあたり1億円のコスト(庶民が汗水垂らした税金)がかかってるのに、国のためになにをやってくれてるんですかね?身の保全のためにしか動いていないのではという輩が多数を占めてる気がしてなりませんな。正直のところ、将来も政治の世界は悲観的です。忖度と馴れ合いでなんとなく時代が通り過ぎていくニッポン。だとすれば、おいらは世のため人のために身を投げ出す志ある人に清い一票を投じたい。所詮、政治家なんか存在しない国ですから...終局は、己の中に理想の国家を想像・創造するしかないのかな...

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秋の佳き日に

2017/09/29
【第1005回】

27日、盛岡での「風間杜夫ひとり芝居~ピース」千秋楽行って参りました...盛岡は久しぶりです。東北新幹線が出来、2時間半で行けるんですから便利になったもんでございます。昔は、えっちらこっちら長い時間をかけて東北を漫遊したんだが、新幹線のスピードは旅の余韻を感じさせてくれませんがな。四季折々の風景を堪能するなんてことはとても無理。全てが効率的に動き回る現代社会、おいらは好きではありませんな...ちょいとは、ゆったりほっこりのんびりせんかいな!と進言したいところだが、この慌ただしい効率主義主流の流れに抗うことは出来んでしょうな...公演した場所は昔の花街、おいらは何故か嘗ての花街を見つけると胸騒ぎがするんでございます。勿論、劇場周辺をブラ散歩いたしました。遊郭があったであろう建物もありましたし、遊びの色香がどこからか匂ってきます。この日公演した盛岡劇場には宮沢賢治も足を運んで演劇、音楽を楽しんだそうです。

芝居も、もちろん杜夫ちゃん絶好調の演技で、万雷の拍手のもと無事最終公演を終えることが出来ました。終演後はスタッフ共々、大打ち上げ大会。地元の魚、肉大変美味しゅうございました。締めに食べた盛岡冷麺が美味しかったな。早速、来年の再演、そして新作の話やら話題になり盛岡の夜は大いに杜、盛り上がりました。

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盛岡劇場

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南部大鉄瓶

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フォーク酒場

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かつての......

2017/09/27
【第1004回】

10月に公演する「明日がある、かな」の稽古が始まりました...いやいや3本同時に芝居の本番、稽古やっとります。新入社員も含めて事務所は大忙しですが、それだけ需要があるってことですからありがたいことです。いくらこちらが芝居したいな!なんて声をあげても、やって欲しいところがない限り赤字公演になっちゃいますからね。要は良質な作品を創ることに限ります。さてさて、「明日がある、かな」、気鋭の作・演出家、中津留章仁のもとに9人の俳優が集まりました。出自が異なる年齢も21歳から56歳まで幅広い人達が集まりました。トム・プロジェクトとしては久しぶりの大人数の芝居です。少数精鋭の芝居もいいんですが、いろんなタイプの登場人物が入れ替わり立ち替わり出てくると、なんとなく活気づいて楽しいものです。気をつけにゃならんのは、そのなかに芝居をぶち壊す役者が出てくると、やはり出さなきゃ良かったってことになりますね。その点はご安心くださいませ、おいらが吟味して個性溢れる達者な役者さんを揃えました...稽古初日の本読みもなかなかのテンションでいい雰囲気でした。

政界もえらいこっちゃ!大義なき解散、当選狙いの離党、都知事と新政党の代表、北朝鮮の脅威のこの時になんでやろ?政治家はトップをはじめとして皆、自分ファーストの輩ばかりだから当然のことか...こんな人達にこの芝居見せたいがな「明日がある、かな」

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秋、到来...

2017/09/26
【第1003回】

先週の土曜日は所沢にライオンズの応援に行ってきました。最下位ロッテに3連敗、なんばしよるとか!と気合い入れるために球場に行ったんですが、同じ思いの人がたくさんいるんですな。立ち見もいるくらいの大入り満員でございます。こんな遠方まで都心から来てくれるんですから西武のフロントもしっかりせんといかんですばい!外国から連れてくる助っ人ほとんどが外れ状態、普通の会社だったら配置転換かクビですたい...でも、今年は辻監督、新人の源田、平井、後半から新4番バッターで活躍中の山川なんかの踏ん張りでなかなか面白いゲームをしてくれるんで、久しぶりに楽しみなシーズンになりましたですばい。この日はなんと期待もしてなかった野上投手が9年目にして初完封勝利。福岡の出身ながら、にやけ顔で締まらんピッチングする野上には、しゃきっとせんかいな!と、思っとりました。
今年の春には、アイドルグループ「モーニング娘」の元メンバーでタレントの石川梨華さんと結婚したし男にならんと思っていたもののぴりっとしない試合が続いていたので、この日の男ぶりは見事でした。可愛い奥さんも喜んでくれたことでしょう...
一昨日の日曜日は、浜田山でお祭りの御輿が街を練り歩いていました。秋祭りの行事があちこちで執り行われるのを見るにつけ、春に種をまき、秋に刈り取る。春に蕾をつけ、秋に実を結ぶ。秋は収穫の季節、まさしく食欲の秋に食卓を彩る食物に感謝のためのお祭りですたい。こうやって、日々健康に生きてこられてることに唯々感謝です...秋の味覚を噛みしめながら、今週も生き活きと過ごしますばい。

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2位死守の必死の戦い

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祭りだワッショイ

2017/09/21
【第1002回】

関西、九州から戻って久しぶりの新宿...何故かほっとしまんすんねん。関西、九州、観光地は何処に行っても韓国、台湾、中国の人達で溢れかえっています。嘗て日本一人気があった湯布院温泉も今や7割が外国人観光客らしいです。特に多いのが韓国の人達...日本の経済も他国の観光客のお陰で潤っているのかもしれませんな。それはそれとして致し方ないことなんだが、どうも情緒が希薄になっているのが至極残念な気がします。日本人が昔から持ち続けている情緒と、他国の人達の旅する心情が文化の違いからずれを生じてる気がします。温泉地でのマナー、買い物時の気遣い、車中での会話などなど、あらまあ!なんてことがあります。おいらもいろんな国を放浪し、見知らぬ人達との交流は最優先してきたつもりだが、最近旅して感じることは、何故か接点を持ちづらいことが多々あるということですね。人間そのものが文明の利器に浸食され肌と肌との触れ合いを面倒に感じているのかも...その点、西洋人の方がフランクなコミュニケーションをしてますね。笑顔で挨拶し旅をより積極的に楽しんでる...まあ、昔から東洋人は日本も含めて控えめな民族なんだが、それにしても重い。こんな人混みを歩いていると、周りの風景も違って見えてくるのが恐い気がします。風景と人とがうまくマッチしてこそ風光明媚と言うんでしょうな。
その点、ここ新宿は昔からカオスの街。時代の流れに逆らうかのような変な人達が闊歩してるんで本当に落ち着きます。ふらふら歩きながら、何故か心身共々ふわふわとしますんや...

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トリオ

2017/09/19
【第1001回】

9月16日(土)福岡県小郡市での公演「風間杜夫ひとり芝居~ピース」に行ってきました。
博多からも近いことがあり600人の席は満員でした。芝居は杜夫ちゃんエンジン全開で、客席は暗転になる度に拍手で大いに盛り上がる。台風が迫り来る緊張感も、しばし笑いで吹き飛ばしてくれたようです。会館の方も「こんなに喜んでくれたのも久しぶりです...」なんて言われると、遠路はるばる我が故郷に又一つ作品を送り届けることが出来たことに、おいら嬉しさで一杯でございます。ところがどっこい、翌日公演予定の大分県津久見市での公演は台風のために中止になりました。スタッフは小郡公演の終了後、津久見に向かい夜に舞台設営を終え万全の体勢で居たのですが、大型台風の威力には勝てませんでした。翌日の報道によると津久見の街は濁流に飲まれる惨状。公演中止どころか、一日も早くいつもの穏やかな街の戻るのを祈るのみです。
久しぶりの博多の街は台風の影響もそれほどでは無く、いつものように綺麗な女の子が色とりどりなファッションに身を包み散策しとりました。行きつけの六本松の名店「ひろ」のメンバー10人ばかりと久しぶりの再会。盛り上がったところに杜夫ちゃんも合流。翌日が公演だというのに遅くまで飲んでました。嬉しかったのは病気入院中だったママに逢えたこと...27歳のときに出逢い、貧しい演劇青年を励ましてくれたママにはたくさんの想い出があります。開店50周年記念まで是非元気であって欲しいな!年齢不詳なママ。

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博多の刺身

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五島うどん

2017/09/15
【第1000回】

夢吐き通信、今回で1000回になりました。能天気なおいらが良く続いたもんだと感心しております。最初は気が向いたときに書いていたのだが、芝居を観に来たお客さん数人から「最近書いてないね...楽しみにしてるのに!」なんて言われると、調子こいて、いや責任を感じて日常のあれこれを綴ってきた次第です。拙いコラムを読んで頂いて感謝です。
13日に兵庫県立芸術文化センターでの「風間杜夫ひとり芝居~ピース」公演に行ってきました。杜夫ちゃん人気はたいしたもんです...満員のお客さんを前にして自由自在に演じる姿に場内は爆笑の連続。さすがは笑いの王国関西でございます。楽しんで笑わんと損しますわ...最後はスタンディングオベーション。いやはや、風間杜夫オンステージでお客は大満足、笑顔で家路に急ぐ人達の表情を見るにつけプロデューサー冥利に尽きます。終演後は公演の成功を祝して、神戸芝居カーニバルを主宰している中島さん、四国から駆けつけた青木さんと一緒に宗右衛門町の小料理屋で乾杯。この日のお酒はとりわけ美味しゅうございました。
翌日、少々時間があったので久しぶりに大阪新世界に行きました。昔の大阪が残ってる懐かしい繁華街です。串カツの店が乱立、どこに入ったらいいのやら迷ってしまいますがな...囲碁、将棋の店も健在で安心しました。庶民の生活感が色濃く残る街が無くなったときは昭和の終わりかな。隣の釜ヶ崎もぶらりとしたかったのだが、次の公演地福岡に行かねばならないので諦めました。それにしても、ここ大阪も中国、台湾、韓国の観光客がわんさか溢れておりました。近い将来、中華人民共和国日本県なんてことになるんじゃないかしら?

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新世界

2017/09/13
【第999回】

京王線明大前においらが推奨する素敵な店が二軒あります。先ずはそば屋の「近江家」。明大前すずらん通りにあるお蕎麦屋さん。店内の石臼で毎日製粉している自家製の石臼そば粉を使用した二八そばで、うどんも自家製麺で注文後に釜茹でしたあげたてのうどんを提供してます。おつゆも自家製で高級本枯れ鰹節、昆布を使用し、毎朝出汁をとり厳選した醤油・みりん等を合わせて仕上げております。どれを食べてもおいしゅうございます...季節によっては石川県から取り寄せた鮮魚も日本酒ちびりちびり飲みながら食しますと、もうたまりません。経営者がお年を召されて開店時間が短いのが残念です。先日も9時閉店間際に行ったのだが、そばは売り切れ、かろうじてうどんにありつけました。そばを食べたら少し歩いたところに、1960年に開店した由緒正しきジャズの名店「マイルス」。おいらも久しぶりに行ったのだがママは元気にせっせとLPレコードに次から次へと針を落としていました。なにせ3000枚の名盤が揃ってるんですから狭いながらも贅沢な空間です。恋も仕事も全て捨て?57年間ジャズに惚れ込んだ女の一生、見事じゃありませんか...一時間ほど滞在して帰ろうとすると、急な階段を下り玄関まで見送りしてくれました。優しい粋なママさん、いつまでも元気でいてくださいね!

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近江家

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マイルス

2017/09/11
【第998回】

「風間杜夫ひとり芝居~ピース」昨日、無事東京公演の千秋楽を迎えることが出来ました。
いやいや、たった一人で連日満員にしてしまう杜夫ちゃんの芸の確かなチカラたいしたもんでございます。前日に打ち上げしてお客さんと談笑すること五時間、翌日にはけろっと楽しく演じてしまうんですから人間業じゃございませんことよ...同業者の役者さんも、完璧です!何も言うことございません、ただただ恐れ入るばかりでございますと仰有って居ました。こうなったら次は3年前に創った「正義の味方」を併せて平和三部作なんて構想が浮かび上がってくるんですが、こればかりは杜夫ちゃんの気力、体力があってのこと。おいらが勝手に夢想しても仕方がありませんな...お客様が嬉しそうに満足げな表情で劇場を後にする姿を見るにつけ、粘って諦めないで一本の芝居を創りあげたことに喜びを感じます。
何もないところから形にし、観客に満足して頂くまでの過程には、それこそスタッフをはじめ多くの人達の血の滲むよう創意工夫があってこそのことです。ただただ感謝、感謝...
今日から横浜を皮切りに地方公演も始まります。おいらも明後日から、関西九州に行って参ります。一方、「萩咲く頃に」も現在首都圏演劇鑑賞会を巡演中です。まさしく芸術の秋がやって参りました...強敵、食欲の秋に勝てるかな?

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午後の一杯

2017/09/08
【第997回】

「風間杜夫ひとり芝居~ピース」も昨日で5ステージを終えたところだ。連日超満員のお客様に見守れながら杜夫ちゃん絶好調でございます。社会性を盛り込みながらこれだけの笑いに包まれるのも、ひとえに愛されキャラ、チャーミングな役者の証ではなかろうか...
今回もOさんから一枚の葉書が劇場に送られてきましたので紹介します。

拝啓「風間杜夫ひとり芝居ピースPEASE」拝見。葬儀で故人を偲ぶ冒頭、いきなり何が始まるのかと期待が膨らむ客席です。葬儀屋の父娘の会話に繋がり、なるほど人情話かと納得して話を追っていくと、その家族の光景まで目にしているような展開になり、ひとり芝居の台詞の世界に引き込まれてゆきます。やがてその小さな幸せを覗き見た客席は酒に勢いを借りて社会風刺する主人公に少し違和感を覚えながらも、いつもの社会ネタの幕開けかとその口舌を楽しみ出すと、このオヤジの荒れ具合の陰に潜む家庭を失ってしまった不幸を垣間見ることになる。実に見事な展開。しかもこの流れが、まるでそれぞれの配役が登場しているかのような奥行きを、たった一人の役者が、登場しているかのような奥行きをたった一人の役者が語りだけで構成していく醍醐味に、客席は笑いながらもすっかり話の世界に引きずり込まれてゆきます。この時間、場面を共有したいがために、今ここに観客というよりも、ドラマの一員となって同じ空気に触れているわけです。立派な生き様に圧倒されるのではなく市井の一市民の哀しみをともにしている。その設定が社会を切る彼の言葉に素直に頷かせる現実感を生み出していることに、見終わって気付く帰り道です。待った甲斐、そして見た甲斐のあるひとときでした。楽しい芝居に出会えて満足です。ありがとうございました。敬具

一枚の葉書に、びっしりと書き込まれた感想文に、いつも心打たれます。きちんと芝居を観られ、芝居に対する愛情をひしひしと感じます。こんな人達が劇場に足を運んでくれるのだから、つまらん芝居を創るわけにはいきません。
いよいよ東京公演も残すところ3ステージ、観なきゃ後悔いたしますぞ!

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Oさんからのハガキ

2017/09/06
【第996回】

昨日も「風間杜夫ひとり芝居~ピース」を観ながら思いました...ラスト近くに流れるスライドには世界各地の避難民、激戦地、悲嘆にくれる子どもたちの写真に混じって、北朝鮮のミサイル実験のシーンがありました。ありゃ、観劇中にあのミサイルが飛んできたら?いやいや、バーチャルではなくなってきました。あの刈り上げクンの頭は相当に狂ってますし、その相手が金髪滑り台ヘアーの男ですから、狂った同志のやりとりに日の丸君も危うくなってきました。衝突が起こればアメリカの核の傘のしたにあるわが国の米軍基地を狙ってくるのは当然のことです。今尚、アメリカ、フランスに続いて、「54基」(世界第3位)もの原発を持つ日の丸君は完全にアウトでしょうな...ニッポン沈没放射能こんこん、かつてあの四季折々に恵まれた大和の国がありました!なんて、幻の国になっちまうことだってあり得ないことではありませんことよ。おいらは、もう十分すぎるくらい楽しい人生を過ごすことが出来たのでいつあの世の往っても悔いはありませんが、これからの人生、夢とロマンと冒険心を抱きながら前を向きながら生きてる人達のことを思うと、なにがなんでも戦争は避けねばなりません。アントニオ猪木参議院議員が北朝鮮に今日出発したとのことだが、あの人でなにか進展はするんでしょうかね?例の赤いマフラーは確かに共産党のシンボルではあるんだが...力道山の娘さんが北朝鮮に居るということで交流が始まったそうだが、何だかプロレス同様、なあなあ勝負の気がしてなりませんな...今日か、明日か、明後日か、そんな気持ちで居ないとあきませんがな皆の衆。今日吐いた言葉が遺言になるかもしれません...

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いのち

2017/09/04
【第995回】

先週の週末は怒濤の日々でした...9月1日は「萩咲く頃に」の再々演、横浜演劇鑑賞協会でスタートしました。首都圏の演劇鑑賞会を含めて計31ステージの公演です。この日の芝居を観て感じたことは、まさしく演劇は時代の流れの中で日々変化しているということ。役者の思考、感受性の有り様がすぐさま舞台上で表現されれば作品も厚みを増すのも至極当然。震災と家族の再生がテーマであるだけに、個々の俳優の思いが強くなればなるほど家族間の絆も繊細かつ強力になるというものだ。内容的にはしんどい芝居であるはずなんだが、笑いがあるのも人間ドラマとして成功しているのではなかろうか...
9月3日は「風間杜夫ひとり芝居~ピース」の初日。彼のひとり芝居を創り続けて20年。今回は7作目の新作。いやいや、このエネルギーどこからくるのかしら?てなぐらい68歳になる杜夫ちゃんエンジン全開でございます。たった一人で、膨大な台詞を喋りながらこの芝居の全貌を演じきるんですから役者の鏡ですな...居ない相手が見えてくるシーンに、一人のチカラというより表現力で世界を表出する凄さを感じます。ハイテク化が進む中、生身の人間の持つ果てしないロマンを頂けます...でも、誰しもが出来るってことではないことも確か。他の方が勘違いしてやられてもたまりませんな...言うなれば、役者の生業は選ばれし者がやる仕事。初日乾杯での彼の表情は、ほっとした顔と、まだまだやりきれてない顔、これがあるからこそ役者稼業はやめられないんでしょうな。

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年に一度のカレタナのカレー
昨日、食べました。

2017/09/01
【第994回】

今村夏子著「星の子」「こちらあみ子」二冊読了...「星の子」は先ほどの芥川賞の候補になった作品だ。この手の小説を書かせると、なるほど女性なるものの感覚、それも日常に潜む繊細に揺れ動く観察力に驚異さえ覚える。しかも平易な文体で綴られてるだけに、その奥底に秘められた喜び悲しみが増幅される。表現者たるもの誰しもがそうだと思うのだが、普通の目線から少しずらしたところから見た風景、人の有り様から独自のアートが生まれると思う。その点、この作家はいつも常識を踏まえつつ、その常識のまやかしを少しずつ剥がし、真実、真理に迫ろうとしているのだが、決して回答を出さないところがプロの作家たる所以ではなかろうか...勿論、自分の伸びしろも残しながら、又、次なる探索の旅に乗り出していくのが作家の使命であるからに違いない。
最近、頻繁に目にした電子ブック、あまり見なくなった気がする。やはり、読書は「紙の本を読みなよ」と言いたい。一枚、一枚ページをめくるワクワク感は電子ブックでは味わうことが出来ません。全国の本屋さんが次々と潰れています...街から本屋さんが無くなったときは、世界が終わりを告げるときだと言っても過言ではありません。疲れたな、しんどいな、と感じたときは、ふらり本屋さんに立ち寄り書棚に並んだ知の宝庫に触れてみてはいかがですか?明日からの良きビタミン剤になりますぞ...

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秋の予感

2017/08/30
【第993回】

足下をお洒落に...日々、生きてることを支えてくれてるおいらの足さんにご感謝を込めてHappy Socks (ハッピーソックス)をプレゼント。「自身とまわりの友人たちをハッピーにする」というシンプルな目的で立ち上げられた Happy Socks 。ミニマルなデザインと荒涼とした気候で知られるスウェーデンから発信されているこのブランドは、4年前に設立されたカラフルでポップなソックスです。だって、大地を支え仕事に遊びにおいらが行きたいところにいけるのも、この足があってこそ。疲労と汗に塗れた足さんに、このソックスをプレゼントした日はどことなく嬉しそうな足顔をしておりました。それを感じたおいらの気分も爽快になり足取りも軽くなっちゃいます...あまり人目に触れることがないところに、さりげなく遊び心を取り入れてるところが男のおしゃれじゃございません...それでなくても、日本のサラリーマンの服装感覚なんと画一的なことか!もっと、着るものから遊び心を取り入れて気分を変えなさいと言いたいですな...なにもブランド品、高額なもの購入しなくても、ちょい遊びの精神があれば、いくらでも楽しく過ごせますがな。身につけるものを少し変えるだけで随分と日々の生活が楽しくなるってわけさ...言っておきますが、おいらHappy Socksの回し者ではございませんことよ。日々の生活に楽しむ精神が蔓延すれば、この世知辛い世の中も、少しはましになるんではないかしら?なんて気持ちで記しただけでございます。

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遊び心は足下から

2017/08/28
【第992回】

先週の土曜日に演劇群「走狗」の同窓会をやりました...11名集まったのですが、さすがに皆さんあっちが悪い、こっちが痛いと、寄る年波には勝てませんがな。でも、まだまだ口は達者だし酒もいけるし、そう簡単にはくたばりそうもありません。がしかし、参加する予定だったジローちゃんは残念ながら病のため急遽入院。舞台美術家として演劇界で数多くの賞を受賞し、トップランナーとして活躍してきたジローちゃんに襲った病、なんとか克服して再び素敵な舞台美術を創ってもらいたいものです。彼の回復を願ってビデオレターの収録、色紙への一言をみんなに頼みました。44年前に集まった演劇仲間、こうやって逢えるだけでも幸せです。みんな貧しかったのだが芝居が大好きで、粉骨砕身なりふり構わず舞台創りに邁進した青春の日々は片時も忘れたことはありません。あの苦楽の日々があったこそ、おいらも今なお芝居を創り続けているのかも知れませんね...テントを担いでの旅公演、芝居して酒を飲み、演劇論を闘わせたあげくの末の大喧嘩。二次会はゴールデン街「ガルガンチュア」へ向かう。この店でも喧々諤々、カウンターを拳で叩きながら良く議論をしたな...たまりかねてママのタンコが「もう店に来ないで!」と追い出された奴も居ましたな。
それにしてもゴールデン街、飲み代も高くなったし、外人観光客の名所になり、すっかり様変わりしました。なので、今ではたまにしか顔を出しません...懐かしい友に逢うと、ついつい酒が進みすぎ帰りは千鳥足。お年なんだから気をつけんといかんがな...この日、おいらの隣に座っていたT君も道で転んで救急車で運ばれ、気がついたら慶応病院だったらしい。酒で命落とすなんてことになったら何のためにここまで生きてきたのよ!なんて事になっちゃいますがな...

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演劇群「走狗」の仲間達

2017/08/25
【第991回】

家の近くにライオンズファンのオーナーがやってる店だとは知らなんだ...たまにちょいと行く高井戸の居酒屋「虎屋」、手作り感満載の昭和を感じさせるお店。どれも安くて美味しい品物揃いで、気楽にちょいと一杯にはぴったり。先日トイレに入ったら、西武ライオンズのカレンダーが飾ってたもんだからマスターに聞いてみたら、なんと久留米の出身で子供の頃からのライオンズファン。おいらより年下で、平和台球場に行った頃は、西鉄がクラウンライター、太平洋クラブに身売りして弱いライオンズに時代だったとのこと。嗚呼それなのに一途にライオンズを愛してくれるなんて、おいらも感激しましたばい。いや、いや、その日は大いに盛り上がりました。丁度13連勝していたときでもあり、お酒もぐいぐい進みました...ところがどっこい、そうそううまくはいかないのが野球でございます。ソフトバンクに3連敗、おまけに菊池雄星投手が2段モーションによる反則投球を繰り返し宣告され、今年も優勝はほぼ無理な状況になっちまいました。でも、今年は辻監督になって夢を随分と見させて頂きました。残り試合、せめてもの2位になりクライマックスシリーズであわやなんてことになったら上々でないかしら...それにしても、こんな時期に菊池に制裁をくわえるなんて、どこかの金満球団が裏金使って審判を引っ張り込んでるんじゃないかしら?なんて勘ぐりたくなりますばい...今日から又、気を取り直して残り一月半ライオンズを応援しますけん選手の皆さんも頑張ってちょうだいな。

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夏が戻って来ました

2017/08/23
【第990回】

昨日「萩咲く頃に」の稽古も始まりました...今年の春に再演したばかりですが9月1日~10月18日までの31ステージ、首都圏の演劇鑑賞会で公演します。東日本大震災を舞台にした芝居なんですが、昨日の本読みを聞きながら、この話は現在進行形であることを確認することが出来ました。その後の熊本地震、広島土砂災害、先月の九州北部豪雨、そして家庭内殺人、ひきこもりなどなど、この芝居の内容そのものが現実社会を投影されたものであり、この芝居を直視することから問題解決のヒントになりうるのではないかと...芝居はまさしくリアルタイムであるこそライブである意味があると思っています。演じる俳優も、日々目まぐるしく起こる災害、事件に目を凝らし前回表現したものにプラスアルファすることによって、より芝居の厚みが増してくるのでは...表現者たるもの己の五感をフル回転して、世界を全身で感じ取り、その蓄積をお客様の前でお見せしてこそお金を取れる役者でございません?おいらも仕事柄劇場に足を運ぶんだが、思わせぶり型、自己満足ハイテンション型&ナルシスト型なんぞの芝居観せられた日にゃ、金返せ!時間返せ!なんて言いたくもなりますがな...その点、今回の「萩咲く頃に」の役者さん5人、役者である前に人間であれ、
なんて当たり前のことを熟知している素敵な方ばかりですから今回の再々演もきっと素晴らしい舞台になるでしょう...

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久し振りに見せた青い空

2017/08/21
【第989回】

天候不順の土曜日、新橋演舞場に行く...大竹しのぶ主演の「にんじん」。彼女が22歳で演じた伝説のミュージカルを38年振りに再演した作品。といっても、おいらはトム・プロジェクトの作品に出演して貰った宇梶剛士さん、キムラ緑子さんが出演しているので観に行ったんですがね...今年還暦になった大竹さんが少年を演じるんですから舞台は何でもありの世界です。これ、彼女を知らない人達が観ても違和感ないんじゃないかしら?てな見事な少年振り、なんにでも憑依しちゃう不思議な女優さんなんですね。それにしても入場料¥13000、おいら何度も書いてきたんですが、芝居のチケット高くありません?いや、お客がそれでも観たいと言うんだったらそりゃそれでいいんでしょうがね...休憩中に何気なく周囲の会話聞いてたら今日のお客、宝塚・ジャニーズの追っかけが随分と居る様子。勿論、純粋にこの作品を観たくて来てる人も居るとは思います。所詮、興行なるもの人気商売、お客が入ればいいんじゃないの!もっともでございます。¥5000以上のチケットを頂いたことのないトム・プロジェクトは、この先やっていけるのかしら?なんて心配してくださる方も随分といるんですが、果たして何処まで頑張れるか...
雷と激しい風雨が去った後の銀座をぶらり。銀座もすっかり変わりましたね...ブランドの店がびっしりとひしめいていました。そんなご時世に、昔ながらのいなせな古居酒屋を見つけるとほっとします。銀座の小路に、今尚ひっそりと佇んだ飲み屋がおいら好きだな...

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歩く姿は...

2017/08/18
【第988回】

今年の芥川賞受賞作である沼田真佑さんの「影裏(えいり)」を読了...審査員賛否両論の作品。おいらは思ったさ、アート全般に言えることだが、表現の原点は、この世界に向かって何が言いたいか!と言う一点に尽きる。言葉はまさしく言霊、言葉を弄んでテクニックに走るのが一番アカンと思います。要するに奇を衒うってやつですね...作者は震災とLGBTというテーマを使っているのだが、必然性も感じられず、巧みな語彙の構成に自己陶酔しているのでは?なんて見方もされかねない作品かも知れない。でも、まだまだ若い作家でもあり、時折光るフレーズの新鮮さ、そして最初の作品で文学界新人賞も受賞した逸材ですから今後に期待したいものです。
風間杜夫ひとり芝居「ピース」の稽古も始まりました。来年のNHK大河ドラマ、10月から始まる日テレ新番組の収録、そして映画、その合間を縫いながらの稽古。いやいや、ひとり芝居ですから当然のことながら台詞は全てひとりで覚えねばなりません、1時間20分の膨大なる台詞、おいらなんて考えただけでぞっとしますがな...ところが役者になるべくしてなった杜夫ちゃんは違うんですな。台詞を読み込みながら自分のリズムを上手く取り込み形にしてしまうんですね。落語も一流、ひとり遊びはお手のものかも知れませんね、稽古の過程を観てるだけでも一本の芝居を鑑賞してるぐらいの面白さです。来月9月3日、俳優座劇場の初日が待ち遠しいです。残りチケットも僅かになりました...これ見逃すと後悔してしまいますぞなもし。

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あの夏はどこに行ったんでしょうか...

2017/08/16
【第987回】

昨日は終戦から72年、メディアはたくさんのことを取り上げてましたね...その中でも、旧満州で中国人を人体実験に使った731部隊の話はやりきれない気持ちでした。その当時関わった医者達は、戦後何の罪を問われることなく大学の学長になったり裕福な暮らしをしたとのこと。この手の話は、戦犯でありながら首相までなった者までいるんですからあきれたもんでございます。戦争は、いずれにしても誰も喜ぶ者が居ない馬鹿げたゲーム。武器商人と権力者がおりなすチキンレースの犠牲者になるのはいつもの通り名も無き庶民。戦地から送られた兵士からの手紙を、72年振りに関係者に届ける番組も胸撃つものがありました。何故届かなかったのか?アメリカの検閲の印もありました。いつもながら上層部の意図が見え隠れします。72年振りに戦地からの兄の葉書「お国のために闘います...」の滲んだ書を見て涙すら出ない表情に戦争の惨さを感じます。爆心地長崎の浦上町で被災した被差別部落の人達の話も痛切...被爆と差別、二重の苦しみを背負いながら戦後72年生きてきた人達のことを思うと言葉になりません。長崎市長も怒ってましたね「核兵器のない世界を目指してリーダーシップをとり、核兵器を持つ国々と持たない国々の橋渡し役を務めると明言しているにも関わらず、核兵器禁止条約の交渉会議にさえ参加しない姿勢を、被爆地は到底理解できません。」その通りでございます。アベちゃん地元に帰って人騒がせな奥さんと盆踊りしてる場合でございませんことよ。
それにしてもだ...8月15日、街の若者にインタビューしても「戦争?実感ないですね...」
そりゃそうだ、何処の国と戦争したのか判らない輩らゴロゴロしてるんだから...いけませんことよ!いつだって戦争は起こります、いや起こってます。自分の至近距離ばかり注意を払わないで、遙か彼方に想像力を駆使して少しでも戦争がない世界にしてちょうだいな!

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8月の新宿御苑

2017/08/09
【第986回】

「夫・車谷長吉」を読了...おいらが大好きだった作家・車谷さんの奥さんであり詩人である高橋順子さんが、2015年に亡くなった長吉さんとの生活を綴った一冊。いやいや奥さんも大変な人と結婚したもんだと思いました。男48歳、女49歳の初婚同士、まだまだペンでは食べていけない旦那が強迫神経症を患い、日々の生活は想像を絶する困難のなか遂に「赤目四十八瀧心中未遂」で直木賞を受賞。おいらは受賞直後に、この作品を読んだときには、一文字いや、人文字の中に人間の悲喜こもごもの全てが盛り込まれている最近まれに見る傑作だと思い、周囲の人達に宣伝しくまったことをよく覚えている。まさしく長吉さんそのものが人間修行の旅に出て、その過程の中で出会った様々な人間模様の描き方が、キラリと光る刀のようでもあった。登場人物それぞれの、闇に覆われ見えにくい人間の業の鉱脈をより深く探っていく作家としての作業に感嘆しきり...この人の、もう一つの傑作は、朝日新聞に掲載されていた「車谷長吉の人生相談 人生に救い」これはおもろかったな。40歳の高校教師が教え子の女子生徒を好きになり「情動を抑えられません。どうしたらいいのでしょうか」という深刻な悩みに「破綻して、職業も名誉も家庭も失った時、はじめて人間とはなにかということが見えるのです。あなたは高校の教師だそうですが、好きになった女生徒と出来てしまえばよいのです」と突き放し、最後に「そうすると、はじめて人間の生とはなにかとういことが見え、この世の本当の姿が見えるのです」と回答。世の中の常識にそっぽを向き我が道を突き進み69歳で死んじゃた長吉さん...貴方が残した全作品、「車谷長吉全集 全三冊」二年前に購入し、ちょびちょび読んでますよ...

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長吉さんが画いた絵ハガキ

2017/08/07
【第985回】

広島に原爆が投下されて72年...昨日がその日でした。一年のこの日だけが、熱視線が注がれるのも何となく違和感を感じます。おいらの原爆の原点は、小学生の頃に博多で新聞配達していたときに目にしたケロイドの傷跡が残った女性の姿です。大浜の遊郭地帯で朝早く玄関前を掃除していた20代後半の女性は、人の目を避けながらいつものように道路を掃いていました。おいらは子供で、その傷が原爆によるものとは知らずにいたのですが、ある日娼婦のおねいさんが「あの人はね、広島で原爆にあってあんな顔しとるとよ...放射能浴びとるけん、気をつけんしゃい。」今にして思えば、このおねいさんも随分失礼なことを言ったもんだと思います。でも、まだまだ戦後間もない頃で仕方なかったかも...
あれから72年、世界で唯一の被爆国でありながら世界の非核化に対する運動に対して、あまりにも腰が引けてる現状に腹が立ちます。4月下旬からニューヨークの国連本部で開催された核拡散防止条約(NPT)再検討会議では、核兵器の非人道性が中心議題の一つとなり、107の国々がオーストリアの提唱した核兵器禁止文書に賛同したにも関わらず、アメリカの核の傘の下にある日本は、アメリカに配慮して賛成しなかったという事実。世界の笑いものでございます...昨日の広島の式典でもアベちゃんよく挨拶できるなと疑ってしまいました。
それにしても、この世界、軍需産業がお盛んなところが潤い、一方では平和を唱え、核を持つ国が、持たざる国が開発すれば阻止する...なんとも不条理、無茶苦茶でござりまするがな!でも、諦めないで、戦争のない平和な世界を目指す旗は死守したいもんでございます。

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暑さにも負けず

2017/08/04
【第984回】

今日、前にも書いた浜田山の名理髪店に行って参りました...北海道出身の店長と四方山話しをするのも楽しみのひとつです。おいら今までは、カットして頂いてるときは理容師さんの気が散り、技量に支障を来すと思い、無念無想流の流儀に従い目を閉じて、店内を流れる音楽に耳を澄まし、仕上がるヘアーの具合を楽しむスタイルを貫いてきました。でも、この店長そんなことは一切関係なし、話のリズムに合わせて鋏のリズムもチョキチョキ弾むようないい調子。これが一流の腕を持つ理容師の所以ですね...今日もいろんなことを話したんですが、一番の話題は頭髪の寂しい方の処し方でございます。お客さんは寂しいところを少しでも隠したい!でも、あまり無理すると不自然な感じがしてフサわしくない...そんな時、名理髪師はいかように対応するかが問題でございます。あれこれと話したんですが、一番のアドバイスはナチュラルが一番ですよ!ということに落ち着きました。要するに、あからさまな隠蔽は宜しくないと言うことです。
政治と整髪どちらも同じですな!ということで目出度く今日のおいらのおつむの調整も自然性を重要視して終えることが出来ました。第三次アベちゃん内閣も無事組閣を終えたようですが、肝心要の隠蔽親分が変わらない内閣なんて支持率良くならないんじゃござんせん...又、選挙?こちらも肝心要の受け皿がございません。困ったもんでございます。

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オイラも刈って欲しいニャ~

2017/08/02
【第983回】

昨日に続いて、苦手な街渋谷にも大人の空間があるのですってな話...おいらが若い頃、新宿のジャズ喫茶DIGに日々通っていたときに、たまには遠征もしなきゃと言うわけで渋谷まで足を伸ばしました。その当時渋谷界隈には、「渋谷Swing」、「ありんこ」「オスカー」「渋谷Dig」、「デュエット」などなど、ジャズ喫茶が賑やかに立ち並んでいました。おいらもはしごで各店を探索しました。この地に名曲喫茶「らいおん」があり、クラッシックを重々しく流していました(ほとんどのジャズ喫茶が店を閉めたのに、この名曲喫茶だけは風雪に耐え堂々とした佇まいを誇示しながら今尚生き延びています)。おいらも懐かしく、しばし古色蒼然とした椅子に腰掛け、ありがたく姿勢を正しショパンの名曲を拝聴いたしました。それこそ地震が来たならば?なんて不穏な思いを抱きながらの鑑賞会、緊張感もあってなかなかの時間でした...そうやって何日か過ごした渋谷ジャズ店巡りも、やはり新宿が醸し出すカオスの匂いには勝てず新宿に戻ってきました。
久しぶりのジャズ喫茶「渋谷 Swing」、前にも来たことがあるのだが、つい寄りたくなる大人の店です。もとあったお店をトロンボーン奏者でもあるマスターが名前を譲り受けたそうです。この日のお客はおいら一人、珈琲を注文するとディカプリオ似のマスターが丁寧の入れてくれました。1時間ほど居たのだがお客は来ず、なんだか心配になってきました...店内のスピーカーは文句なし、4000枚のレコードも見事、昔の蓄音機もありSPレコードも聴ける完璧の店内。こんな大人の空間を持ったお店はいつまでも存続して欲しいな...こんな店があると、がきんちょの街渋谷にも又、来たくなりますがな。

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人生もSwingしなきゃ♪

2017/08/01
【第982回】

渋谷はがきんちょの街だと思っています...センター街の子供の行列、アイドルの写真を首からぶら下げて道行く高校生に売りつけるオッさん、なにをすることもなく女の子を物色する精気のない若者、お店のありかたもてんでんばらばら、おいらも大体は興味津々、目を皿のようにして見ているのだが、どうも引っかからないというより、はやく通りすぎたい思いで足早になってしまいます。街と、そこの集まる人種は大いに関連性があるんだなと...

そんな渋谷のパルコの前で、イタリア人旅行者がギターを弾いていました。流れるJAZZギターが心地よく、ついつい聞き惚れてしまいました、イタリア人特有のラテンの乗りで織りなす路上ライブは、久しぶりに昔のシブヤ文化の香りがいたしました。パルコが出来たときに観た土方巽の舞踏、唐十郎と蜷川幸雄のタッグで創る唐十郎の新しい世界。教会の地下にジャン・ジャンという小劇場があり、長嶺ヤス子の裸足のフラメンコ、美輪明宏の迫力満点の臭い芝居、泉谷しげる・井上陽水なんかのフォークもここで聴いたな...そんな文化の香りが新宿に負けじという時代もありました。

街の匂い骨格は、人が創り出すものであるのだが、もともと持っている街の歴史が、その土地から醸し出す必然も見逃すことができません。その土地で暮らして人達の無数の声が、どんなに文明が進化しようとも地の底から蠢めいているのかもしれませんな...おいらも、ふと足を止め、アスファルトで固められてる地の底に耳をそばたてることがありますよ...聞こえます!聴こえます!民衆の怒りの声が...

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惚れ惚れしますわ♡

2017/07/28
【第981回】

街を歩きながらふらっと画廊に入ることが多々ある...新宿、銀座、日本橋、はたまた知らない土地でお洒落な画廊を見つけると嬉しくなる。知名度がある絵描きさんではなく、名も知れぬ作家の佳作を見つけるとその出会いに、素敵なプレゼントをされた気分になる。絵のチカラは他のジャンルと又違った喜びを与えてくれる。動かぬ絵のなかに込められた情念、哀愁、希望、諦念などなど作家の人生がおいらの想像力を掻き立ててくれる...絵解きとはまさしく描かれた作品の内容の説明なのだが、おいらは作品の前に佇んで作者の人生の絵解きをするのが楽しいのだ...池永 康晟、おいらはこの画家の存在を知らなかった。同じ色調でずらりと並ぶ現代美人画の作品。先ずは色の拘りを感じました。この色を作り出すまでには相当の時間、試行錯誤を重ねたであろう...色っぽさのなかにも清楚な香りを醸し出す不思議な世界を創りだしている。おいらも日々、新宿の街を散策しているのだが、残念ながらこの作品に登場する女性を彷彿とさせるウーマンにはなかなかお目にかかれない。今や理想の女性なんて現れないのではないか?それは女性の所為ではありませんことよ...素敵な男が居ないから、いかした女も登場しないのよ!お互い様ですな...

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耽美な憂鬱と上品な色気

2017/07/26
【第980回】

24日、25日に国会の閉会中審査は、まるで芝居を観ているようでした...政治家、役人との狐と狸の化かし合いでございますね。こりゃ、どう見てもアベちゃんに分がないのに、記憶がない、記録がない、会ってないのないないづくし。ますます疑惑は深まるばかり、こんなことに時間を費やす暇がないくらい、この国には難題が山積してるってのに困ったもんでございます。この2日間で一番印象に残ったのは副総理・財務大臣であるアソウのおっちゃん。アベちゃんの必死の防戦に、終始目を閉じ薄笑いを浮かべる表情から、いくつかの想像がつきますな...少数野党がいくら追求しても大丈夫じゃないかな?というふてぶてしさ。一方、こりゃアベちゃんも時間の問題、次は誰を担ぎ出しておのれはどのような院政を強いていくか?丁々発止のやりとりなんか知ったことじゃありまっせん!てな態度に恐怖すら感じました。あの黒いハットはお似合いだと思ってらっしゃるのかしら?それにしても政治は非情な世界です...国民の税金でおまんまを食べてる人達がおりなす茶番劇に、そろそろ納税者も気づかなきゃなりませんね...あの鯖江めがねのおばさんも鈍感ですね。アベちゃんが選任した大臣揃いも揃って鈍感クラス。8月に内閣改造して再起を図りたいところでしょうが、このままじゃいくら甘ちゃん国民も納得しないんじゃないかしら...と言って、現政権に変わる受け皿が無いんですから、これも困ったもんでございます。又、小池さんが欲かいて大きな池をつくって新党なるものが出来るんでしょうかね。
おいらが生きてる間に、理想の政治の世界を見せて欲しいですが、これも又残念ながら夢物語でしょう...

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ひまわりの花言葉
<あこがれ>

2017/07/24
【第979回】

今年二度目の西武ドーム(メットライフ)に土曜日行って参りました...この日はライオンズの炎獅子ユニフォームをもらえるというわけでチケット完売、超満員の一日でした。オールスター明けの試合でソフトバンクに3連敗、その負けっぷりがあまりにもだらしないので、今年も頑張っても3位だろうという諦めに近い思いで球場に足を運びました。あんな情けない負け方にも関わらず、こんなに応援してくれるなんて、ほんまにファンはありがたいことでございます。その声に応えんかい!その中でも一年で5億円近いギャラをもらってる中村、メヒア両選手、やる気ださんかい!特におかわりくん(中村)かなり劣化してますな...空振りの仕方に覇気がございません。三振してバットぶらぶら下げながらベンチに戻る姿を見る度に給料泥棒なんて声がかかってもおかしくない光景です。そろそろ彼の後継者を育てなきゃなりませんな...メヒアはまだ若いんだから研究しんしゃい!だいたいベース前の落ちる球を投げれば、バットが空を切るなんてことは事前に分かっちゃいるんだけど学習能力が無いんでしょうな...その点、今年の新人源田壮亮、この日も素晴らしい守備と渋いバッティングを魅せてくれました、こんなプレーだとお金払っても文句の付けようがございません。ここは芝居も同じですな、下手な芝居観せられたんじゃ金返せ!てなことになっちゃいます。ヒーローインタビューに応える表情も初々しい、今年から監督に就任した辻監督の目指す野球の良き牽引者になって欲しいもんでございます。いや、すでになっておりますな...この日は多和田投手の好投もあって日本ハムに4対0の完封勝利。昨日の試合にも勝って同一チーム3連勝。それにしても今年のライオンズ、弱い者いじめばかりじゃございません...強者のソフトバンクホークス、楽天イーグルスに勝ってこそ誇り高き獅子じゃございません...空高く舞い上がる鷹と鷲に高みの見物状態でなめられた獅子ではいかんぜよ!やられたら、やりかえさんかいライオンズ...

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炎の色の獅子を見ろ!!

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頂いたユニフォーム

2017/07/21
【第978回】

激しき雪 最後の国士・野村秋介(山平重樹・著)読了...平成5(1993)年10月20日、朝日新聞東京本社役員応接室で2丁拳銃の銃弾3発で心臓を貫き自決した野村秋介の生涯を描いたノンフィクション。野村さんとは新宿ゴールデン街の「ガルガンチュア」で良くお会いしました。戦後の民族派の代表的な論客として知られ、新右翼のリーダーとして数々の身体を張っての行動で政財界においては恐れられた人でしたが、店内では穏やかでインテリジェンスを感じさせてくれる素敵な紳士でした。静かにグラスを傾けながらの笑顔ではあったが、眼光鋭い眼差しには熱いものが流れているんだなと...そりゃそうでしょう、若い頃は横浜の愚連隊、河野一郎邸焼き討ち事件で懲役12年、経団連襲撃事件で懲役6年。様々な経歴を重ねながらも一貫して流れているのは弱者に対する愛しいまでの愛。こんな逸話がある...千葉刑務者に服役中、獄中左翼で在日韓国人が真面目な服役態度にも関わらず看守に虐待されているのを見かねて、管理部長に彼の勤勉さ、良識ある行動を報告すると1ヶ月もしないうちに仮釈放面接が下った。彼が野村にお礼を言ったところ、野村は「僕の力ではない。君自身の生きざまというか姿勢が、僕を感動させて、管理部長も感動させたんだ」と答えたそうだ...野村さんの生き方全てを肯定し美化するつもりはないんですが、一人の男の生き様としては筋が通っているとは思います。

自決する1年前、おいらの隣で、野村さんがぽつりと呟いた言葉「男の美学ってなんだろうね...」野村さんの憂い溢れた表情で発せられた言葉が印象的でした...存命であれば、今の政治家の驕りからくる不祥事に、憂国の士として2丁拳銃ひっさげて国会に殴り込みかけてるかも知れませんね。

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枝葉の舞

2017/07/18
【第977回】

トラッシュマスターズ「不埒」を観劇...芝居もいろんなジャンルがあるのだが、この集団は一貫して社会を撃ち、近未来にメッーセージを送り続けている希有なる劇団である。芝居で政治、経済、行政を絡めてドラマを創り出すのは極めて難しい。何故ならば、情報過多の時代に安っぽい批評めいた台詞では陳腐になってしまうし、お金を払い時間まで奪われる貴重な時間に時事談義なんぞに付き合っていられませんがな...てな具合になってしまう。そのことを自明の理として果敢にチャレンジするトラッシュマスターズに、ついつい肩入れしてしまうのも、演劇がなんとなく商業化している傾向があるためか...芝居の始まりは無頼漢の戯れ事から始まり、権力を監視する役割を果たしてきた経緯があったはず。なんでんかんでんお金をかけて派手派手舞台にすればいいってことじゃございません。大多数の国民のオモチャと化してるテレビの世界が劣化している昨今、ここはひとつ芝居が砦となってエンヤコ~ラと声をあげねば、この国は白痴列島になっちゃうんじゃないかしら。
さてさて「不埒」はどうだったか...この集団のメインキャストだった二人が久々に共演して見応えのある芝居になっていました。中津留章仁の戯曲も、人間の内部にぐさりとメスを入れ、時代が抱える諸問題と程よくリンクして2時間半の長丁場を乗り切った感じ。出来るならば2時間以内にまとめてくれれば、いつもながら思うのだが、現代を調理する作家としては言わずにはおれない!といったところか。
このクソ暑いさなか、緊張感溢れる芝居でも観て暑気払いしてはいかがかな...

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ふらちな人は誰かしら?

2017/07/14
【第976回】

昨日は昼夜芝居を鑑賞...マチネは70人ほどしか収容できないSpace早稲田での公演。文化庁委託事業「平成29年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」と銘打った「SCRAP」舞台は大阪砲兵工廠跡地、ここの鉄くずを掘り起こし生活の糧にしていた朝鮮人集団を描いた芝居。目と鼻の先で12人の役者が演技する様は、はじめて芝居を観劇する人はおっかなびっくりするでしょうな。大きな声で罵倒しあうシーンなんか迫力を越え恐怖すら感じますがな...台本を書いたシライケイタさん、おそらく開高健の「日本三文オペラ」を基にして書いたんじゃないかしら...この群像劇を演出家の日澤雄介さん巧みにこなしていました。勢いのある演出家であることを再認識しました。国の予算もこういった若手の表現者を育てるお金にじゃんじゃん使って欲しいですな。
終演後、早稲田から高田馬場駅まで久しぶりに歩きました。嘗て多くあった古本屋さんも少なくなり寂しい感じがしましたが、名画座早稲田松竹は健在でした。2本立ての名画座は都内では飯田橋ギンレイホールとここだけになってしまったのではないかしら...名画座はおいらの青春そのものでした。
ソワレは、マチネと真逆の渋谷のシアターコクーン。音楽劇「魔都夜曲」豪華なキャストと生演奏のJAZZで賑やかな舞台を繰り広げていました。それにしても入場料¥15000~¥5000、一日働いたお金を一夜で使ってしまうなんとも贅沢な観劇です。村井國夫さんが劇中で歌った「夜のタンゴ」が、とっても素敵でした。さすがベテラン、渋い、格好いい...芝居は豪華になればなるほどお金がかかるのは仕方がありません...でもでも、なんとか入場料を安く抑えて良質な芝居を創り出すのも、なかなか愉しいもんでござんすよ。

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名画座健在!

2017/07/12
【第975回】

こまつ座「イヌの仇討」を観劇...井上ひさしさんが29年前に書いた戯曲である。演出は劇団桟敷童子の東憲司さん。あの松の廊下の刀傷事件以来300年間、悪者にされた吉良上野介にスポットを当てた作品である。作者はこの人物の行く末に、何とも言えない憐憫の情を抱き赤穂浪士が討ち入りしてからの二時間、逃げ隠れた物置で過ごす上野介の側に立った立場でこの時代背景に生きる心情を吐露させる。戯作者井上ひさしの独壇場である...彼の描く登場人物は名もない庶民、歴史の闇に蠢く脇役などなど、決して語られなかった人物に命を吹き込み権力者を痛烈に批判する。彼が亡くなった今尚、何度も再演を繰り返すことが出来るのも、いつの時代も権力を監視してる視点を持っているからである。今回の都知事選然り、名も無き庶民は時の為政者の驕りに対してはとても敏感なんです...考えてみれば、日本人好みの忠臣蔵の話にしたって、時代と共に時の権力者が少しずつ話を捏造し美談にしたに違いありません。だって仇討ちしたあげく全員切腹なんて悲劇じゃございません。映画にしろTVにしろ討ち入り後の晴れやかな行進に拍手喝采...主君(会社)のために命を賭けることがどんなに美しいことか!忠誠心を煽るにはもってこいの素材です。
この点、今回の芝居は既成事実にメスをいれ人間ドラマにしてる点が、さすが井上ひさしさん。芝居は歴史さえ書き換えることが出来る代物なんですね!

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7月の夕焼け

2017/07/10
【第974回】

JR山手線新大久保駅近くに野外劇場があるなんて知らなんだ...先週の土曜日に、演劇群「走狗」時代の仲間であった小林達雄氏が出演してる芝居を、暑さもいくらか弛んだ夕刻に観に出かけました。東京グローブ座を少し歩いたところに野外劇場がありました。程よい広さでなかなかの劇場ではありませんか...前回も野球はやはり野外に限ると書きましたが、演劇も然り、日没していく自然の営みの中で、ドラマも漆黒の暗闇に向かって疾走していくなんてことがベストなのかも知れませんな...スペインに住んでいるときに良く闘牛を観に行きました。これも野外です。開始時間のグランドは丸い円形の半分は陰、残り半分は燦々と輝く焼けつく太陽の光で輝いています。闘牛と闘牛士との戦いが終わる頃にはグランドには太陽の光はありません。まさしく生と死を鮮やかに演出した儀式なんですね...芝居なんてものも、元を正せば河原で芸人が演舞歌曲をやったのが始まりでございます、いまや芸能人は特別な目で見られておるんですが、所詮、河原乞食なんでございますよ。ちょいと勘違いしてる芸能者はこのことを肝に銘じて芸に励んで欲しいな!なんて思っちゃいます。

さてさて、肝心の芝居は14年前に亡くなった劇作家・岸田理生さんが、寺山修司さん率いる天井桟敷で共作した伝説の舞台「盲人書簡」を改作した作品。作品に通底してるものは岸田理生に対するオマージュ...岸田さんを知らない人に、このメッセージが伝わるかどうか?頻繁に聞こえてくるJRの電車の音が妙な効果音に思えてきて、この生の音に創りものの演劇が拮抗できるのか...そんなことを考えながら一時間半、夜空の美しい満月にも目をやりながら観劇いたしました。

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開演前の西戸山野外円形劇場

2017/07/07
【第973回】

今週久しぶりに東京ドームに行って来ました...ジャイアンツではありませんことよ。日本ハムファイターズ主催でライオンズを相手にした試合です。前日に、やっとこさ6連敗を免れる勝利の余勢を駆ってドームに乗り込んだ次第です。おいら、何度も書きましたが野球は野外スポーツだと今でも頑なに思っています。青空に、夜空に向かって白球が弧を描いてスタンドに飛び込むホームランを、少年時代博多の平和台球場で何度も目にしたあの光景を忘れることはありまっせん。それなのになんですか、この東京ドーム完全密閉状態で空調設備万全の人工ドームでございます、入り口も一人一人回転扉をくぐり外気を一切シャットアウトしております。試合終了後は渋滞していて、勝ったから気分良いものの、試合に負けてたら暴動起きるんじゃないかしら?なんて心配しちゃいました。こんな球場を本拠地にしている讀賣巨人軍可哀想になっちゃいました。広島カープを見てみんさい!暑い日差しの中、汗を掻きながらプレーしてきた結果が今の強さに繋がっているんじゃないかしら...
我がライオンズの本拠地は、かろうじてドームとスタンドの間をオープンにして緑を目にすることが出来るので、まだましかなってところです。なんでんかんでん科学の力を借りて便利にすればいいってことじゃありませんよ。そんな時代にマッチするプロ野球選手が増えてるのも確かです。全体的に小ぶりになっちゃいましたね、線が細いってことですね...あの野武士軍団西鉄ライオンズの荒法師を彷彿とさせる選手が少なくなってきたことは事実です。野球も興行のひとつです...見る者の想像を超え、日常を忘れさせてくれる夢を与えてくれる選手の出現を待っているのがファンの願いではなかろうか...その点、この日登場した日ハムの大谷翔平選手は久々に現れた夢のプロ野球選手の一人です。まだ23歳、とてつもない可能性と、何かをやってくれるのではないかという期待を感じさせる、まさしくスターです。表情も爽やかで敵味方なく好感度ナンバーワンの若者ですよね。
さてさて、この日の試合は勝ちました。でもまだまだ、辻新監督になった今年のライオンズ試行錯誤の日々だと思います。何せ昨年までは、何が起ころうとも微動だに動かないお地蔵監督でしたからね...何とか3位までにはなってちょうだいな。

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東京ドーム三塁内野席より

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大谷翔平

2017/07/05
【第972回】

「だいだいの空」今年の最終公演、神奈川県にある桐蔭学園で無事終えることが出来ました。この学校には素晴らしい劇場があるんです。2000人弱収容できる見事な環境です。この学校は文武両道、野球、ラグビーも全国大会に出場する常連校。文化的な事業にもチカラを入れる理想の学園かも知れません...今回の公演は1200名の中学生が鑑賞しました。最初の歌のシーンから盛り上がり、異常な反応をしていました。主人公の少年と女の子のほのぼのとしたシーンになると女子中学生から怒濤のようなキャーが館内を包む有様。笑いのシーンも多々あり、ほんまに良くできた作品です。トム・プロジェクトの社員でもある橋本君が、利便性を突っ走る現代社会に意義を唱え、自然回帰を願って書き上げた作品です。一昨年に続いて今年も11校で上演しました。芝居が難しいのは、作者の意図は理解出来るのだがストレートすぎて窮屈になる点です。この「だいだいの空」はユーモラスな部分を随所に盛り込んでいて子供だけではなく大人も楽しめる作品になっています。子どもたちが、いや大人も含めて、こんな作品を共に鑑賞して家の食卓で芝居の感想を語りながら、どうすれば、よりよい社会になるのか...そんなきっかけになればと思っとります。

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清流に住む魚

2017/07/03
【第971回】

保守的であり、批判的でありながらも肝心の所では体制維持に振り子が振れちゃう東京都民が、今回はさすがに頭に来ちゃったんですな...そりゃそうだよね!なんじゃらほいのすっからかん、特に女性政治家に活躍の場を与えられた二人の議員には参りましたな。一人は表と裏の顔を使い分け、弱いものにはでかい面して上のお偉いさんにはペコペコする人として最も恥ずべき人間。あの赤ちゃん言葉、何度聞いても笑えるどころか失笑ものでございます。もう一人の鯖江メガネ、ありゃなんですか!あれでよく司法試験受かりましたね?裏金かコネ使ったんじゃないの...そんな人が防衛大臣なんて恐ろしゅうございます。そんなひとを選任した人も、もりとかけで窮地に追い込まれながら知らぬ存ぜぬの一点張り。選挙期間中最初にして最後の秋葉原の応援演説中に、抗議の声を浴びせられると、反省するどころか逆ギレ。なんと聴衆を指差しながら「演説を邪魔するような行為」「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と叫ぶ始末。庶民は疑惑から逃げようとしてる貴男に怒っているんですぞ!「こんな人たち...」の声に耳を傾け世の中を少しでも平和に平等にしていくのが政治家の役目だと思うんですがね。隣に立つ認知症を装った前知事の息子も、こんなひとたちをなじるようなことを叫んでおりました。平家物語の冒頭にあるでしょう驕れる者久しからず ...歴史に学ばない人達が政治の世界には仰山居るんですな。
さてさて、今週も始まりました。梅雨の間の青空を眺めながらふと思いました。眺める青空がなくなったらどこを眺めればいいのかな?なんて...

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空は広いな大きいな

2017/06/30
【第970回】

新宿西口から5分の所に「武道学館空手教室」があります。数年前ひょいと覗いてみたら、おいらが若いときに通っていた極真会館本部道場の方々が開いてる道場と言うことが分かりました。理事長の三宅さん、館長の松尾さんと共に汗を流した仲です。このお二人が開設した理由は、「本当の強さはやさしさです」という理念のもと、きつい、痛い、上下関係が厳しいなど、これまでの空手道場にありがちな指導や雰囲気をなくし、誰でも楽しく空手を続けられる空手教室を目指すとのことでした。いかにも、このお二人の生き方、理念に相応しいと思います。おいらも極真会館の地獄の日々(そりゃ、喧嘩空手で名声を轟かせた道場ですから直接打撃制で歯は折れるわ、骨折するわ、道場の板には血痕が付かない日がないくらいの光景でした)を体験してますから、現代の風潮から言っても無理があるとは思います。それはさておき、おいらが思うに武道とは己との戦いであり、敵と戦い倒すのではないと思っとります。体育会系独特の雰囲気もおいら苦手だし、空手にしてもその強さは弱者を守るための修練ではないかしら...老若男女が共に、礼に始まり礼に終わる稽古風景は清々しいものがあります。先日、館長の松尾さんから手紙を頂きました。「一緒に汗を流しませんか...」いやいや、ありがたいことでございます。おいらも、もう一度、あの純白の道着に身を包み、全てを忘れ一心不乱に空手道に身を置きたい気持ちはあるんですが...やり始めたらとことんやるタイプなので、それがちょいと恐いかな...なんて思ってる週末でした。

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梅雨の晴れ間

2017/06/28
【第969回】

「ローカルブックストアである福岡ブックスキューブリック」を読了...1961年生まれの著者である福岡出身の大井実さんが39歳の時に福岡で本屋さんを開き、15年間にわたる奮闘記を記したもの。街の本屋さんが全国的になくなっているこの時期に、よくぞ決心したなと思う。彼の拘りは書店とは街の不可欠なインフラだと言うこと。今の時代はインターネットがあれば事足りる時代と思われがちだが、本は単純に情報を得るだけの道具ではないと言うことだ。大自然の樹木から幾つもの過程を経てつくられた紙の本は、装丁や文字組みから写真、紙質やインクの匂いなどを含めて、人の五感を刺激する官能的な要素を備えていて、まさしく神様からのプレゼント...福岡市の素敵な通りのひとつであるけやき通りに手作りの店をオープンし、毎年「ブックオカ」を開催し、全国各地にブックイベントを立ちあげる先駆けにもなる情熱は本好きなものには心強い味方である。

精神的に一番大変だった高校時代を過ごした時に、自分を救ってくれた本や諸々のアートの魅力を、再び福岡に戻り伝えたいと語る彼の行動に拍手を送りたい。一度きりの人生、己がやりたい!と思ったことは正解だと思う。あとはやるか諦めるかの選択しかない。そのときに人は他人との比較、未来への不安が頭を過ぎる...それぞれの人にとっての人生は個別であり生きる意味も又個別である。その個別性に真摯に向きあい自分なりのアクションを起こせば何かが興きるんじゃないかしら...今からでも遅くはありませんことよ!

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雨垂れの朝顔

2017/06/26
【第968回】

今年も、沖縄戦終結の日6月23日に現地で慰霊祭が行われました...今年で72年目です。式場に参加した安倍首相に「何しに来たんだ!返れ...」沖縄の老人、老婆の人達の罵声が飛び交っていました。沖縄の人達の悲痛の叫びに、おいらは断腸の思いです。終戦になるまでになんと沖縄の人口の四分の一の人達が犠牲になり、その後米軍だけが使っている基地(米軍専用施設)は、日本にあるもののうち、その面積の約74%があの小さな島沖縄に集中してっるってんだから異常を通り過ぎて唖然。しかも米軍基地の多くは、街の真ん中や近くにどんと居直り住民は遠慮しながらささやかに暮らしているのが実情。犯罪が起きても治外法権、飛行機やヘリコプターの騒音などで学校の授業に支障を来し睡眠もままならず...こんな状態を72年放置されたんじゃ声も出ませんがな...日本から独立して新しい国を創設した方が良いのでは?なんて意見が出てくるのも至極当然。沖縄だけに重い荷物を背負わせ、いまだ他の都道府県は口をつむいだまま、こりゃいかんぜよ!国が滅びるときも皆平等であるのが日本国憲法じゃございません...見て見ぬ振りも立派な犯罪ですぞ。
杉並に店を構える小さな沖縄料理店「ちゃんぷる亭」この時期に、いつも手書きのちゃんぷる通信を出してます。東京在住の沖縄の人達の声が聞こえてきます。国の最高機関で決められる決定事項に毎年うんざりしながらも、こうやって発言し続ける人達の声に耳を傾け、なんとかしなきゃいかんですばい。街では都議選の選挙カーが候補者の名前を連呼しながら騒音を撒き散らしています。上手いことばかり言って、当選した途端にお上にゴマするものばかり...騙されちゃいかんぜよ皆の衆。

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沖縄の声

2017/06/23
【第967回】

なんじゃろかいな...空いた口が塞がりませんがな。東大出て、ハーバードに留学して、高級官僚そして国会議員。何のための勉強なんだろう?おいら、今の教育システムほぼ絶望してます。幼稚園から大学まで、受験戦争に追いまくられ先生も、父兄も疲弊しています。勉強できなくっていいじゃん!子供はおおらかにのびのびと天真爛漫でなきゃなりません。夜遅く塾帰りの子どもたちの暗い顔見る度に、この国の行く末を案じる次第でございます。おいらが小さい頃は朝から晩まで遊んでおりました。だって、勉強の記憶はほとんどなく、野原を駆け巡り、線路の鉄くず集めでの小遣い稼ぎ、三本立て映画館浸り、平和台球場での西鉄ライオンズでの明け暮れなどなど、遊びの想い出しかありません。勉強なんて社会に生きるための最低限の知識でいいんじゃないのかな...なのに、受験というお題目のためにあえて難しい設問をもうけ子供の心身を蝕んでいるのが実情じゃございません。毎日宿題を出すなんて事もやめて欲しいな...どろんこになって遊ばなきゃ、といっても都会では難しいかな...いや、どろんこになるくらいの気持ちで自然に触れ、人と交流しなさいってことですがな。これが社会に生きるためのほんまの勉強です。ピコピコと小さな画面と睨めっこしてるようじゃ先が思いやられます。昨日から今日、テレビでがなりまくってたおばさんみたいになっちゃうよ...このエリートコースを歩んで来た人の、人となりから教育なんてものを考え直す機会にしませんか?と、提案しても少数意見として却下されるのは分かっちゃ言るけど、おいらは発言し続けたい...子供のあの天使のようなしなやかな心身を、学歴偏重主義社会がいかに蝕んでいるか!油断してると、又、あんな人が国政を司り世界の笑いものになちゃいますぞなもし...いい加減気付いてちょうだいな!

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最後のひと咲き

2017/06/21
【第966回】

新宿高野もやってくれるじゃないの...最近の新宿、儲け主義が蔓延し、商売を度外視しておもろいことを企画するところが少なくなりました。おいら早速覗いてきましたがな。唐十郎の状況劇場トラック公演写真、早稲田小劇場の公演チラシ・パンフじっとみつめていると出演者のほとんどが亡くなっておりました。中にはおいらも一緒にやり、昨年なくなったKさんの名前もありました。まさしく昭和は遠くになりにけり...展示場に並べられた写真を眺めていると、あの日あの時の熱気が蘇ってきます。夜毎ふらふらと彷徨っていた新宿の街こそが、おいらを育ててくれていたんだなという思いに駆られます。アングラ×ストリート×ジャズ、この言葉こそ新宿に与えられたベストなフレーズではなかろうか...アングラが日本の演劇を解体し更なる劇空間を創出し、網の目のように拡がるストリートが様々なファッション、パフォーマンスを生み出し、そのBGMとしてアバンギャルドなジャズが街を盛り立てていた。あの東口アルタの前に昼間から寝そべっていたヒッピー達は、再開発される以前の新宿東南口にいつも佇んでいたストリッパーの姐さんは、おばあちゃんばかりでやっていたおでんやの人達は...カオスの街に自分の人生を重ね合わせ、ドラマチックに生きてきた人達が居たからこそ、新宿はいつもおいらの血を騒がせたに違いない。あゝ新宿...今日も雨にも負けず風にも負けずぶらついておりますがな。

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カオスの街

2017/06/19
【第965回】

先週の国会会期末を狙い定めての共謀罪成立...なんじゃろかいな?こんな政治屋に汗水垂らした税金でおまんま食べさせていると思うと腹立ちますな...もりそば、かけそばで十分お腹下してるのに、国会の閉幕はあのなんとも無能な大臣のレイする姿を見せられておしまい。あの弱者を救ったヤンキー先生も、いまやどす黒い政治の世界に染まって爛れた顔になっとりました。内部告発者を処罰?顔どっちに向いてんの?国民のために議員やってんのんと違うんちゃう...まったくもって酷い有様。文科省も書類は存在しましたなんて、馬鹿言ってるんじゃないよ!都合の悪いことは隠蔽し、怪文書だの、なんのと、いけしゃあしゃあと会見する、あのおっさんも哀れですわ。おじいちゃんが成し得なかったことを、なんとしてでも為し遂げたいと願ってる親分にどこまでも忠誠をつかいますのやろ...それにしても、こんな大事な法案が通過してるときに、相変わらずバラエティ番組を脳天気に垂れ流してるテレビってなんなんだろうね。
と、怒り心頭に発したときにベランダの花に一羽のクロアゲハ、朱系の色を好むクロアゲハ甘い蜜をたっぷりと時間を掛けて吸っとりました。こんな光景はほほえましく良いのだが、政治家、官僚が寄ってたかって美味しいもの求めて行く姿は浅ましい。しかしだ、こんな状況を作り出したのも選挙の結果...がしかし、選びたい人本当に居ないんだもんね。消去法で仕方なく投票してる有様でござりますがな...いつまで続く体たらく、おいらほんまになんも期待してないのが本音です。期待疲れでございます...そんなアホなことありますかいな!
なんて、嘆いてばかりいられませんがな...今週も張り切って参りましょう!

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こちらの蜜はよござんすヨ

2017/06/14
【第964回】

宮下奈都著「羊と鋼の森」読了...これが昨年の本屋大賞か?書店員が選ぶ大賞、本好きな人だから良い本を選ぶとは限らないし、芝居、映画、絵だって所詮好みは千差万別。この賞も本屋さんの商いの一環、映画会社が毎年開催している日本アカデミー賞みたいなもんでございません...紙を扱ってる本、新聞、雑誌などなど大変な時代です。スマホ、パソコンで全て事足りるなんて感覚が世間に行き渡ってるもんだから、他人様はなかなか財布からお金を出そうとはしません。本を手にしたときの紙の匂い、感触、一枚一枚手動でページをめくる喜び、カバーのデザイン、帯のキャッチコピー、どれをとっても一冊の本に込められた作り手の心を感じます。この世から本が無くなる時代が到来したときは、世界が滅亡する時だと言っても過言ではありません...と、おいらは思います。
ところで、「羊と鋼の森」ひとりの青年がピアノの調律師としていく成長の物語...音を言語を通して読者にいかに伝えるか?作者の工夫を感じますね。主人公が暮らした北海道の田舎の風景を随所に入れながら、音楽そのものが自然のなかから誕生していく様を描いている小説。タイトルも羊(pianoに使われるハンマーの素材)鋼(ピアノの、中の音を出す、弦)森、音の森、音楽の森。からきているんですな。この本を読んで分かったことは、音楽は、音と音の連なりですけど、調律師が扱っているのは音そのものだということ。音そのもの自体が幅広く深いものだから、調律師に問われる課題はなかなかと難しい。
この本に出てくる原民喜の言葉が、この本に対する作者のメーセッージではなかろうか...

明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体。

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六月の花

2017/06/12
【第963回】

おいらもファンの一人であるシンガーソングライター&俳優である留守晃さんの結婚パーティに行ってきました...京王多摩センターの近くにある大自然が残った素敵な会場でした。トメちゃんはとにかく頑固で拘りが強く、間違っても忖度なんぞは無縁の男です。いい歳なんで結婚しないと思っていたら女優さんと結婚しちゃいました...随分と歳が離れている伴侶なんですが、とっても幸せそうでした。トメちゃんの孤独のランナー的な生き方、おいらにもどこか共通する処があって同志的な思いに駆られます...彼の唄を聴く度に、彼が過ごした時間の広がり、人に対する優しさ、ロマンを感じます。トメちゃんごめんね!お祝いのスピーチで「貴男の唄のバックグランドには、沢山の女性の匂いがする...」なんて事言っちゃって...でも、これは誉め言葉ですぞ。表現者たるもの、いろんな恋してなんぼの世界ですからね。もうひとつ、トメちゃんの表現にはお母さんの愛情が一杯詰まってますね。昨日、初めて知ったのですが四人兄弟の末っ子だったんですね。末っ子の甘えん坊で母親の愛情を独り占めしたんじゃないの...男は母の愛情が一番です。所詮、男は女性を越えることが出来ません...貴男の処にきてくれた杏さんを大切に、いつまでも幸せでいてくださいな。そして、それに甘んじることなく、素敵な唄を期待してますぞなもし...まずはおめでとう!

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トメちゃんが画いた芝居
「だいだいの空」只今、公演中!

2017/06/09
【第962回】

東中野にある映画館ポレポレ中野は志のある数少ない映画館だね...飯田橋ギンレイホールもいいんだが、こちらは世の中でヒットした佳作を集めての安定路線。それに比べてポレポレは採算度外視で作品を選択し、世に問うてる姿勢に拍手を送りたい。誰が見ても興行的に成功しないんじゃない?と思う作品を時間を掛けてじっくりと上映し続ける粘り強いスタッフの精神は半端じゃないと思う。
「人生フルーツ」かつて日本住宅公団のエリートだった建築家が、日本の高度成長時代に建てたニュータウンに異を唱え、自然と共有出来る家を建て、雑木林を育てながら自給自足に近い生活を描いたドキュメンタリー映画。自分で育てた果物や野菜を食べながら四季折々の季節を堪能しながら、土と戯れ、ものを大切に扱う日々が美しい。ありふれた日常がこの夫婦の一挙手一投足によって新鮮に感じられるのも感動的である。壊れたものも自らの手で修理し、普段会えない人達に絵手紙なんぞを送る姿が微笑ましい。
この映画のラストに述べられるこの言葉がこの映画の全てを表しているのではないか...

家は生活の宝石箱でなくてはならない(ル・コルビュジエ)
長く生きるほど、人生はより美しくなる(フランク・ロイド・ライト)
全ては、自然が書いた偉大な書物を学ぶことから生まれる、人間が造る物は、既にその偉大な書物の中に書かれている(アントニ・ガウディ)

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生きてることは素晴らしい!

2017/06/07
【第961回】

鰻食べたか~...とは言っても、今や鰻丼、鰻重、鰻の白焼きなどなど簡単に手を出せる食べ物ではなくなってしまいました。お店では無理だから、スーパー行って家で食しようにもやせ衰えた鰻一枚¥1500から¥2000しますがな。大家族だったら¥10000の買い物にもなってしまいます...こりゃ安い!よくよく見ると中国、台湾産。こりゃ、恐いですがな...養殖の生け簀のなかの稚魚の発育を促すために、大量の薬を投入する映像見てびっくり仰天いたしました。売らんがために食品管理が徹底していない大国中国の食文化の危うさを目の当たりにした次第です。でも、スーパーで大量に出回ってるのは、そんな危険性よりも、なんとしても鰻を食べたい!という日本人の切なる願いなんでしょうな...

おいら子供の頃、博多の築港でバケツ一杯になるくらい鰻を良く捕りにいったもんです。それこそ、うじゃうじゃ、にょろにょろ泳いでおりました。家に持って帰ると、父ちゃんが上手く捌いて七輪で焼いて思い残すことなく食べたもんでございます。そのときだけは、一家何事の不満を漏らすことなく平和なひとときでありました。博多の繁華街中洲の屋台の側では、鰻釣りの店もあり夕涼みがてら遊び半分で、釣り竿の先の糸に付けた針と鰻との格闘で釣り上げ、その場でおばちゃんが調理しきらめく夜景を見ながら蒲焼きを食べた事もありました。

鰻といえば、日本プロ野球におけるシーズン歴代最多安打記録の保持者でもある西武ライオンズの秋山祥吾選手。ウナギ顔で愛称になってます。幼い頃父親を亡くし母子家庭で育ったため、毎年、母子家庭の子どもたちを球場に招待している人間味溢れたプレーヤーです。

絶滅種に指定されたウナギちゃん...大切に感謝しながら味わいましょうね皆の衆。

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博多名代吉塚うなぎの鰻重

2017/06/05
【第960回】

至福の時間...そうですな。おいらにとってはワイン片手にjazz聴きながらの読書ですかね。この何でもない無私のひとときをどれだけ持てるかが、ある幸せのバロメーターかも知れませんな。仕事、お金、地位、権力なんぞに明け暮れて命を削るなんてまっぴらごめんですな...人のためなんてたいそう立派な建前を掲げながら、実は己の我欲に邁進してる輩を見るたびに、おいらはなんて可哀そうな人なんやろかと思ってしまいます。そんな人が他人を幸せにしてくれるはずもないし、人に優しくしてくれるはずがありませんがな...まずは己がどれだけ多くの至福に至る時間を貯蓄できるか...自分がいっぱいいっぱいでは他人に施しなんかできません。と言っても、経済も大切なことはわかってますがな。そのへんのところをうまくバランスを取りながら、いかに生かされてることに感謝しながら心豊かな瞬間をどれだけ感じられるか...それと、ときめきですね!なんでんかんでんときめいてるのもあほとちゃうんかと思われますので、持続できるときめきをどれだけ手にすることできるか?これも生きることに弾みをつける大きな要素だと思います。
今週も始まりました...いつもながら日々新鮮、日々発見の気持ちで張り切っていきましょう!

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至福のひととき

2017/06/02
【第959回】

明治神宮前で湯たんぽの大きいやつをぽこぽこ叩いておりました...暑いけど風が爽やかで、その風に乗って彼が叩く音色が風に紛れて踊っていました...いいですね!こんな風景がある限り、まだまだ日本も大丈夫かなと思えて大変嬉しいです。明治神宮は外国観光客にとっては外せないコース。なんたって大きな鳥居をくぐり抜けると森の中、神殿で手を合わせしばし日本人になった気分を味あわせてくれる貴重な場所です。そんなところですから旅行者もついつい気を許して、ぽこぽこ芸人にチップをはずみます。この日も家族連れの外国人旅行者の父親が3,4歳の子供にお金を渡しザルの中に放り込んでいました。いい習慣ですな!幼い頃から、大道芸人に感謝の気持ちを込めて相応のお金を渡す。おいらも40年前スペインでお世話になりました。街路、広場に大道芸人が溢れ様々な音が空を舞う♪なんと素晴らしく微笑ましい光景ではありませんか...と、新宿に戻ってきたら新宿南口の前でギター抱えて熱唱してた青年が、見廻りのポリスに事情調書を書かせられていました。こんな人取り締まるよりも、もっと居るでしょうに...森友学園、加計学園問題などなど、全てを闇に葬ろうとしている人達を取り締まって欲しいと思っていますがな...

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ポコポコ芸人

2017/05/31
【第958回】

この絵画を見て何を想像するだろうか...これは草間彌生さんが2016年に描いた「原爆の足跡」である。おいらは、この絵の前に佇みいろんな事を考えたさ...全体的に見れば戦時中の大日本帝国陸軍の陸軍 御国旗(旭日旗)に見えます。旭日旗は日の丸に太陽光を表す赤い腺が複数描かれていますが、この絵には途中から白に変わり真ん中の赤い丸が四角い白に変わっています。バックはすべて黒です。これをどう読み取るか?まあ、素直に解釈すれば平和な大地が闇の世界に反転した事を意味するとともに、原子爆弾投下後に降る、原子爆弾炸裂時の泥やほこり、すすなどを含んだ重油のような粘り気のある大粒の黒い雨を表現してるんでしょうね。真ん中の四角い白は国家、全てを失った国に何を描いていくか...これは今生きてる人達が思考し行動を起こして書き込んでくださいと言う草間さんのメッセージに感じました。白と赤の半々になっている腺は、未だ道半ばである世界の様相を示しているのではなかろうか...とまあ、おいらが想像した範囲であるが、草間さんの脳はもっと複雑怪奇であるに違いない。
絵画の面白さは、観てる人の環境、過去・現在・未来を通して様々な観点から想いを巡らし、見果てぬ夢の世界に誘ってくれるところにあるのではなかろうか...たまには美術館に出かけるのもよござんすよ。

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絵は語る

2017/05/29
【第957回】

「全裸監督村西とおる伝」本橋信宏著を読了...アダルトビデオ界を狂気とともに疾走した村西とおるの破天荒の人生を707ページにわたる長編にまとめた稀書。1948年福島県いわき市で生を、いや性を受け、子供の頃は家計を助けるために新聞配達、牛乳配達のアルバイトを始めるが18歳で両親が離婚、19歳で上京。池袋のバーのボーイとなり、セックスコンテストで1週間に12人の女性客を相手にする...英会話教材・百科事典のトップセールスマンから、ビニ本業界の寵児になり20億の財を成す。その後は法の網をかいくぐり逮捕されながらも何とかくぐり抜ける。しかし、ハワイでFBIに逮捕され懲役370年を求刑されるも司法取引などで1億円を費やしハワイから帰国。その後アダルトビデオをヒットさせ最盛期には年商100億円を稼ぎ出す。その後バブル崩壊とともに倒産、負債総額50億円、地獄の借金生活に陥る...これにもめげずに借金返済のため海外用薄消しビデオを手がけ2年間で700本制作する精神的、肉体的タフさがたまりませんばい...
いやはや、この男が性産業に狂う程にエネルーギーを費やしたものはなんだったのか?村西とおるの闇、彼自身がその闇に向かって猪突猛進していく様が実に清々しい。人間ここまで恥も外聞もなく裸に慣れない筈なんだが、彼は愚直なくらい体現していく。監督でもあり本番俳優でもあるところに村西とおるの真骨頂を感じますな。
今なお混迷を極め、意気消チンするニッポンの活性剤になる書かもしれませんな...

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清流

2017/05/26
【第956回】

渋谷は嘗て多くのジャズ喫茶が存在し活気を呈していました。その中でも1972年開業の「メアリージェーン」は老舗でもあり、今なお渋い存在です。久しぶりに訪れました...二代目店主が淡々と店内で動き回っており、何故かアフリカ系の民族音楽がかかっていました。CD4000枚、LP4000枚を誇るジャズの殿堂なのに何故かしら?と思いつつ本読んでると、この時点で客一人のおいらの年代からいっても、こりゃまずいかなと思ったのかタイミング良く懐かしきジャズが流れてきました。1950年代の名ピアニスト、ウィントン・ケリーのアルバム「ケリー・ブルー」。彼のピアノは、とても耳に馴染みやすく、他の共演者とのコミュニケーションが実に巧みで、聴き手の気分を心地よくさせてくれる。ジャズを聴きながらの読書は、おいらの至福の時間の一つである。活字も思わず自由奔放なジャズの音曲に乗せられ踊り出す...なんて感じの読書体験でございます。
この店も、2027年まで続く渋谷再開発のためビル自体が壊され来年の8月には閉店だそうだ...下北沢にあった名店「ジャズ喫茶マサコ」。56年間の営業も、下北沢再開発の名の下で閉店に追い込まれた。どこもかしこも資本のチカラで再開発、東京は2020年のオリンピックに向けての整備とやらの土掘り返し、町が街になり最終的に無味乾燥なCITYになっちまうお決まりのコース。人の匂いがしない場所なんて、ほんまにおもろうなくてあきまへんがな...

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レジェンド

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店内・黒田征太郎が画いた猫

2017/05/24
【第955回】

2008年に第43回紀伊國屋演劇賞団体賞を頂いたときに、お祝いで贈ってくれた花が今年も事務所のベランダで咲いています。何の栄養分を与えず、よくぞ9年間も咲いてくれてるなと、ただただ感謝とともに植物の生命力を改めて感心しているところでございます。何かあれば、たちまち文句、愚痴なんぞで萎れてしまう人間と違って、とにかくしぶとい、逞しい、図々しい程の命を持ってます。

アスファルトジャングルの都会のアスファルトの固さもなんのその、雑草がにょきにょきと顔を出してるのを見ると、おいらも何故か励まされます。嘗て土と共存し自然のリズムとともに生きてきた名も知れぬ雑草は、文明、発展という名のもとに、ほとんどの道がアスファルトとともに覆い尽くされてしまいました。学校のグランドも然り...アスファルトグランドの中で怪我を恐れながら遊ぶ子どもたちを見る度に哀れでなりません。どろんこになって思い切り遊び回ってこそ、身体が何かを知覚し自然のもたらす恩恵と恐れを学ぶんではないでしょうかね...こんな事言ってると時代遅れのおっさっんだと思われるかも知れませんが、ここが大切なんでございます。世の中の仕組みも然り、どんなに事を隠蔽しようとも、自然の持つチカラはしぶとくにょきにょきと顔を出し痛烈なパンチを繰り出し抵抗を繰り返します。なんじゃい、昨日の共謀罪の採決...そしていけしゃあしゃあと語る法務大臣。あんたの顔こそ凶暴罪ですたい...

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ありがとう

2017/05/22
【第954回】

比叡山に千日回峰行を二回成し遂げた超人的な僧侶、酒井雄哉(さかいゆうさい)師が書いた「一日一生」「続・一日一生」を読了。わかりやすい言葉で淡々と生きる事の意味、意義を語りかけるように話してくれる。様々の人生の辛酸をなめながら39歳で出家、これをきっかけに己の存在に何度も問いかけを発し、87歳で大往生。師の言葉で好きなのが...一日一日、新しい人生を生きていけばいいんだよ。無理せず、急がず、はみださず、力まず、ひがまず、いばらない...穏やかな気持ちでもってな。

何冊もの名著を読むよりも、高尚な学者の言葉を聞くよりも、おのれの身体を張って見聞きしたことから語る言葉がなんと軽やかで、そして重いことか...おいらも、いろんな体験、経験を積みながら今日まで生きてきました。もちろん多種多様な本も読み、映画、音楽、美術も嗜んできました。そんなことを経ながら、この本を読む(いや、感じると言った方が適切かな)とすんなりと身体に染み込み、おいらもまだまだ一生勉強、修行やなと思ってしまいます。頭でっかちが書いた人生書なんぞはクソ食らえなんだが、酒井さんが語った言葉は日々ポケットに詰め込み、時々取り出して眺めてもよござんすよ...

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暑くて座れませんがな...

2017/05/19
【第953回】

二本の芝居を観てきました...一本目は天王洲銀河劇場での「リトル・ヴォイス」。話題の劇団チョコレートケーキの演出家が初めて挑む大劇場でのミュージカル。小劇場で評価されたものが果たして通用するのか?いやいや大健闘してました。演劇は空間をいかに活すかが勝負の分かれ目。小空間に慣れ親しんだ人が大空間を前にするとびびりまくり、思うようにチカラが発揮できないケースも多々あるのだが、演出家・日澤雄介は自分の感覚を信じ、先ずは俳優の演技に細かく指示することを最優先に考えた事が成功した要因ではなかろうか...なんといっても主演の大原櫻子の歌が素晴らしい。ジュディ・ガーランド、マリリン・モンロー、シャーリー・バッシー、エデット・ピアフ、ビリー・ホリディなどの珠玉の名曲の数々を情感を込めて熱唱。まだ21歳という若さ、とてつもない可能性を感じる。

二本目は、80人入れば満杯になる新宿雑遊での公演。トム・プロジェクトにも出演してもらった田中壮太郎が主宰する演劇企画体ツツガムシ公演「17(seventeen )」高校生を中心に家族との軋轢を描いた真摯な作品。それにしても、目と鼻の先に居る観客を前にして真顔で演技する俳優という生き物、まさしくストリッパーの心境ですな...すべてを見透かされる酷な稼業でございます。

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立てば芍薬...

2017/05/17
【第952回】

先週の金曜日、夜遅く荻窪の駅の改札を出たところに70歳代後半のおばちゃんが二人リュックを担ぎよっこらしょと出てきました。背中のリュックには、現代俳句の巨人、金子兜太さん筆による「アベ政治を許さない」の布きれをぶら下げていました。おいら早速声を掛けました。「こんな遅くどこに行ってきたんですか?」おばちゃん元気よく声を返してきました。「国会議事堂前に抗議に行ってきたんだよ...毎週、金曜日は私のお勤めです。」顔はしわごんちゃくだが、瞳はキラキラと輝いていました。「戦争は絶対にいけません!命ある限り戦争反対!」張りのある声で、道行く人目も憚らず、どちらかというと他人に聞こえるように宣言いたしました。いやいや、万国の労働者諸君、この歳になっても自分の意志を貫き未来の地球のために身体を張って行動しているんですぞなもし...一強安倍政権にお手上げ、ほぼ諦め状態で政治不信に陥り指を咥えている人達に喝ですな...今の法務大臣なんですか?とても人の上に立つ面ではございませんですよ...その上に無知、無教養、そんな人を大臣に任命し共謀罪を強行に成立させようとする現政権は恐ろしゅうございます。

元気なおばちゃんと肩を組み、戦前のきな臭い時代に逆行する流れに歯止めを掛ける責任があるんじゃございませんこと皆の衆。

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5月の空

2017/05/15
【第951回】

1967年、唐十郎が新宿花園神社で紅テント芝居をやり始めて今年で50年。演劇の革命児、唐さんの描く世界は燦然と輝く偉業だと思う。おいらも半世紀前に紅テント興行を観て演劇の価値観が根底から覆され、新しい表現の可能性を思い知らされたものだ。詩人唐十郎の台詞、それを操る特権的肉体を擁した麿赤児、大久保鷹、四谷シモンなどなど社会の規範からこぼれ落ち縦横無尽にテントの中を暴れ回るその様は危険でもあり、世界がいかに自由で何物にも変えられる普遍的なものであることを確信した瞬間でもあった。

あれから50年...おいらの人生の中に、唐さんのロマンといかがわしさは、いつもどこかで彷徨い歩いておりました。あの思考の回路、そしてジャンプ力は、おいらにはないものでありと知りつつ憧れでもありました。状況劇場が解散し、唐組になっても一貫してテントに拘って芝居創りに固執した彼の夢は、やはり子供の頃に夢想した数々の出来事の再現ではなかったか...いくつになっても少年の志を持ち続けテント芝居を継続してきた唐さんに乾杯!

先週土曜日に観てきた劇団唐組第59回春公演「ビンローの封印」久保井研さんの演出のもと、若手俳優が唐十郎のトリックを十分に汲み取り、唐ワールドを具現化しようとする意欲を感じ嬉しゅうございました。勿論、久保井さん、辻さん、藤井さん、赤松さんも素敵でした。花園神社と言えば紅テント...テントがなくなった跡地に時折佇むときがあるのだが、何故か風に乗せられテントがひゅーと現れ、おいらの眼前で大立ち回りを演じてくれるんです...いつの時代になっても、紅テントはまだ見ぬ世界に誘ってくれる、さすらいの人さらい集団であって欲しいものです。

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雨ニモマケズ風ニモマケズ

2017/05/12
【第950回】

GWの終盤、今年初めての西武球場(今年からメットライフドーム、お金ないんだね西武グループ情けなか...)に行って参りました。この季節の球場はドームの大きな隙間から見える若葉が本当に美しゅうございます。GWということで子供連れのお客さんも沢山駆けつけ、ライオンズの勝利を信じて、試合が始まる前から声を枯らしての大応援...なのになのに、首位楽天に20安打を打たれ10対2の大負けでございました。ライオンズの甘ちゃんフェイスピッチャー野上が初回に5点を奪われる醜態。この野上、今年は家庭を持ち心機一転締まった顔でやるのではなんて期待も初回で打ち破られました。ライオンズの打者も、なんとも淡泊な攻撃で外崎の2本のホームランの2点のみ...この外崎何を勘違いしたのか、その後の試合では大振りばかりしやがって三振の山を築く...今年のライオンズは4月の間はおぬし今年はやるな!なんて期待を持たせたのだが、やはり金欠球団の選手層の薄さと怪我人の続出でまたまた定位置の4位に落ちちゃいました。今年入団したショートを守る源田だけがセンスがある野球を魅せてくれました。先輩さんたちよ、この新人から学びなさい!と言いたくなりました。この球団のフロントがライオンズの低迷に拍車をかけてる感じがしますな...やる気なきゃ身売りしなさいよ!かつての強いライオンズを切望している人達のためにも...改めて、野球はやっぱり球場で観るもんだと思いましたな。ビール飲みながらグランドを駆け巡る様を見てると、勝負なんてのは二の次でございます。観客を感動させるプレーが出りゃ思わず拍手を送りたくなる...ライブの魅力は枝葉末節なことを忘れ、目の前で起きてる筋書きのないドラマに身を委ね夢とロマンの世界に誘ってくれるパワーがあります。球場を後にしながら、何故か又来たくなる...おいらにとって野球は永遠の友なんですな。

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嗚呼愛しのライオンズ

2017/05/10
【第949回】

GW中に観た芝居の白眉は劇団桟敷童子「蝉の詩」でしょう...おいら号泣してしまいました。この劇団の主宰者であり作、演出、美術、音の選曲の全てをこなす東憲司さんは無類の演劇小僧(年はとってもこの言葉がピッタリです)。トム・プロジェクトでも、これまで7本の芝居を依頼しました。同じ福岡の出身であり、芝居に対する姿勢に共感するものがあり毎回楽しみに観ている劇団の芝居...今回の「蝉の詩」はこれまでの劇団の集大成ではなかろうかという程の仕上がりでございました。東さんが育った遠賀川で運送業を営む父親と、その確執から争いが絶えない四姉妹の話を軸に、昭和30年代の光と陰を見事な美術、照明、音楽、そしていつもながらの役者陣が繰り出す丁々発止の演技で描き出しました。これがまたテンポが良く小気味が良いくらいの展開。笑いあり、涙ありの、まさしく演劇のエッセンスがてんこ盛りでござんした。江東区にある倉庫を劇団員が一体となって手作りで見事な劇場に創りあげるんですから涙がちょちょぎれます。芝居作りの原点はここにあり!芝居の中で、西鉄ライオンズが出てきたのもよござんした。姉妹の一人が西鉄ライオンズの帽子を被り「稲尾投手好いとう...」なんて台詞を喋ると、おいらもついついにやけてしまいますばい。そして、この芝居のテーマ曲である「アルハンブラの思い出」がとても効果的でした。スペインと福岡が見えない糸で繋がってるんじゃないかしら?いや、おいらの中では40年前から繋がってるんで、これまた東さんのドラマツルギーはおいらと一緒やないかと嬉しくなった次第です。こんな芝居観ると、芝居稼業からなかなか抜け出すことができませんがな...困った困った。

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久し振りに男泣き

2017/05/08
【第948回】

さあ、今日からまた仕事が始まりました...GWの間おいらは展覧会に行ったり、100年続いた築地の鶏屋さん鶏由宙さよなら会に出席したり、芝居を観に行ったり、そして西武ライオンズの負けっぷりを楽しんだり?と大忙しの日々でした。それにしても、連休中の東京は遠出を控えて地元で楽しむ人、地方から遊びに来た人達で溢れかえっていました。そして、人が遊んでるときにせっせっと労働に励んでる人...刈り上げクンの発狂もなくなんとか平和なニッポンでありました。おいらの遊び場、新宿はアジア、青い目の外人さんなどなどでかなりの賑わいでお店もほくほく顔でございました。いずれは消費する人達の半分以上はアジアなんていう日も現実味を帯びてきてますぞ...負けじとアベちゃん2020年のオリンピックまでに憲法いじくりまわしたいなんて、子供みたいな事言っちゃって...憲法とオリンピックどんな関係があるんじゃい!と、おいら呆れかえっています。

その点、草間彌生展「わが永遠の魂」2017は日本が世界に誇るアートでしたな。アーチストは狂気のすれすれまでの境地に立たないと人の魂を振るわせることが出来ないことを実践したお人です。88歳になる現役でありながら、今尚、いかなるものを生み出すか日々悶々としてる姿勢に圧倒されたしだいでございます。こんな人が存在してるだけで、おいらも、まだまだシャキッせんばいかんばい!と...その反面、のんびり生きる事も立派なアートじゃありませんなんて声も聞こえてきますな...

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水玉かぼちゃ

2017/04/28
【第947回】

昨日は西荻窪にあるライブハウス「音や金時」で、俳句・書、ベース、ダンスが三位一体となったパフォーマンスを観てきました...と、言うより感じてきましたかな?80年代より山下洋輔さんらジャズの先鋭的な人達と共演してきたベース奏者、吉野弘志さんの地を這うようなベース音を身体で感じながら踊る遠藤栄江さんの即興表現も素敵でした。おいらも20代の頃モダンダンスの公演に飛び入り参加したり、暗黒舞踏の創始者、土方巽氏の稽古場アスベスト館に良く出入りした経験があり、この手のパフォーマンスは得意の分野でございます。今や渋くて重厚な俳優として活躍している田中珉さんが、40数年前に中野の小さなスタジオでおちんちんに包帯巻いて(見せちゃうと公然猥褻罪になりますから)全裸で床を寝転びながらの踊りなんかよく観てましたから...舞踏なるもの、日本人の身体の特性をしっかりと見極め、外国人の体型に負けない踊りを独創的に考案したものです。足の短い日本人が腰を落とし大地を踏みしめながら内面の葛藤を表現する手法は、瞬く間に世界に拡がりました。そんなことを思いながら、昨日の公演を楽しませて頂きました。

この日、もう一人の主役は、音と踊りを身体で受け止め即興で句を創り壁面の白紙に書をしたためたMama-kinさんかもしれませんね...絶妙な間でしたためた毛筆は、このパフォーマンスに確かな彩りを添えていました。そして、スタジオ内に立ち籠める墨の匂いがなんともエロチックでございました。

さてさて、明日からGWでございます。夢吐き通信も5月7日までお休みでございます。皆さんも有意義なGMを楽しんでくださいね...

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新緑3

2017/04/26
【第946回】

今、藤原新也さんの新作「大鮃」を読んでいる...この作家はおいらより2歳年上で福岡県門司の出身である。彼の著作は「印度放浪」を皮切りに随分と読んでいる。旅が好きで写真と独特の文体で、その土地の体臭をプンプンさせながら綴られるドキュメント風小説は、鋭い文明批評にもなっている。おいらが最も好きな一冊は「鉄輪」である。彼の両親が門司で経営していた旅館が破綻し別府の鉄輪温泉に逃げたときの自伝小説でもある。写真家でもある彼の捉えた風景が、まるでその場にいるようなタッチで浮かび上がり、生と死、そしてエロスを匂わせてくれる。おいらが同じく少年時代に過ごした博多の長屋、遊郭、場末が見事にダブってくることに親しみを感じるのかも知れない...彼の著作「全東洋街道」「東京漂流」「メメント・モリ」どれもが、人が決して目に触れることのない事象をとことん凝視し続けることによって、物事の本質を突き詰めていく手法は変わることがない。

「大鮃」の中にこんな件がある

これまで太古(主人公の少年)が暮らしてきた日本のような国は、普通の日常でもテレビの中でもゲームのように人を飽きさせないようにめまぐるしく変化し、人々は数秒ごとにそれを忘れ、また次の興奮を求めて情報の渦に巻き込まれ、ついには疲れ果て、時にはひきこもりになったりする...「マークさん(太古が異国の旅先で出会った老人)。現実の世界というものはゲームの中やテレビや映画の中のように目の前が目まぐるしく変化したり、どんでん返しがあったりするような世界ではないのですね」

ハイテクに塗れ疲弊していく国家、人民の行く末に警鐘を鳴らすと同時に、己の眼、感性で現実に蠢いている自然の現象を感じ取り身体に焼き付けていくことがいかに大切なことかを書き続けてる作家の一人である。

年功序列、派閥均衡などなどで造られたアホな大臣がまたまた辞任。北朝鮮の刈り上げクンとアメリカのわざとらしい髪型クンとが一触即発だというのに、この日本の危機意識の無さ...しょんがなかんべさ!国民が選んだ政治屋さんばかりだもん...

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新緑2

2017/04/24
【第945回】

今年の獅子はいけますな...ライオンズ昨日も勝ちました。この3連戦ハムをむしゃむしゃと食いちぎり飲み込んでしまいました。あの巨大な昨年のハムは見る影もありません。それにしても監督が替わるだけでこれだけ違うんですね。昨年までは気の良いおっちゃん監督、人が良いだけでは試合には勝てませんがな。今年の監督は、西武ライオンズの黄金時代を守備と野球センスで支えた辻発彦。さすがに守りをキャンプでしっかりと鍛えました。打撃はもともと良いものを持った選手が存在していたので、投手を初め守備がしっかりさえすれば、Aクラスに位置するチームであることは間違いない事は分かっていました。その手始めに起用したのがショートを守る新人の源田。社会人から来た新人なんだがなかなかの逸材、昨年さんざん泣かされたエラーも改善され希望が見えてきました...と、思ってたら昨日、一昨日で4エラーしちゃいました。でも、それがあまり目立たないくらいの働きをしているので、まだまだ伸びしろ十分な選手です。辻監督のきめ細かい野球と、若い選手を育てようとしているビジョンがおいらにとってはとても楽しみなところです。GWには今年初めての西武球場に出かけてみようと思っとります。

と、楽しみにはしてるんですが北朝鮮...ほんまにどうなることやら?いやいや、世界は時計の針を逆回りにしてますな。まさしく歴史は繰り返す、歴史に学ぶなんて言葉を忘れちゃって、おれがおれがの我の世界に溺れていきそうな様相を呈しています。好きな野球を心置きなく楽しめる平和な世の中で居て欲しい!他人任せではなく、一人一人が真摯な気持ちとアクションを起こさないとほんまに地球滅亡もありまっせ...

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新緑

2017/04/21
【第944回】

先日、思い出横丁(ションベン横丁)にある「やぶ天」に焼き鯖定食を食べに行ったのだが、なんと閉店してるではないか...この店には半世紀通っていました。最初は大学時代、夜毎、新宿を徘徊する腹ごしらえとしてよく利用しました。戦後の闇市をそのまま残したションベン臭いこの横丁に立ち寄ると何故かほっとしました。狭い店内で肩寄せ合いながら飲食しているうちに見知らぬ人達と言葉を交わし、本来の人間性を取り戻せる場所だったんですね。その中でも「やぶ店」はアルコールを一切出さない食事に拘った店でした。築地で仕入れてきた魚はどれも新鮮でした。おいらが大好きだった焼き鯖、店内で年季が入った網でじっくりと焼いてる様をカウンター越しに見てるのがなんとも微笑ましい光景でした。それは子供の頃、おふくろが七輪に練炭で火をおこし頼りない網で鯖を焼いている姿を想い出させてくれました。最初の頃は、東北から出稼ぎに来たおばさんが10人入れば一杯になる店内を明るさで大いに盛り上げていました。おいらが帰るときはいつも「元気でね!」と声を掛けてくれました。貧乏学生におばさんなりにエールを送っていたんですね...しばらく行かなくなると、おばさんも居なくなり、大柄の男性が店を取り仕切ることになりました。一度、おいらが大切な時計を忘れ、翌日お店に行くとちゃんと保管してありました。この店の誠実さを改めて知らされた思いでした...その後も、何故か惹かれるように立ち寄り焼き鯖定食を食べていると、いつもあの日あの頃のおいらの姿が蘇ってきます...年を重ね、どんな立場、境遇になろうとも、いつも夢とロマンと冒険を追い続けたおいらの原点を忘れちゃいかんよ!ボロは着てても心は錦...三つ星かなんかしらんけど、格好付けたどんな店よりも、おいらにとっては満点星のような店でした。ありがとう!そしてお疲れ様でした。

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新宿の原点

2017/04/19
【第943回】

早速、温泉効果が出てますぞ...みんなの顔はピカピカ、声もすっきり、大変よろしゅうございます。本当に日本人に生まれて良かったと実感できる一つです。おいらは九州の出なので、九州の名湯は大体行ってます。一番人気の大分湯布院温泉、あまりにも有名になりすぎて昔の情緒風情が壊されつつありますが、田舎の佇まいを残しながら頑張ってますね。お湯もさることながら、おいらのお気に入りは金鱗湖の側にある喫茶店「天井桟敷」でございます。由布院の「御三家」と言われる亀の井別荘が経営しているお店です。江戸末期の造り酒屋の屋根裏を活かし、梁が組まれている店内はとても良い雰囲気です。BGMはグレゴリア聖歌、清らかな声を聴きながらの一杯の珈琲はたまりませんばい。熊本の黒川温泉もいいですね。標高700mのところに位置し、筑後川の支流である田の原川沿いに、懐かしさあふれる宿が立ち並び、湯治場の雰囲気を残している。このなんでもない普通の田舎に、ちょいとアイディアを活かしながら名温泉にした村の人達に拍手です...その他長崎県の雲仙、鹿児島の霧島、佐賀の嬉野などなど、九州はよかとこですたい。

トランプ、プーチン、金正恩、アサド、イスラム過激派、ヨーロッパ右翼の皆さん一堂に会して九州温泉サミットでも開いたら如何かな...争いがいかに馬鹿げたことか、心地よいお湯が理屈無しに教えてくれますがな。

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名店「天井桟敷」

2017/04/17
【第942回】

週末、久しぶりに二泊三日で社員研修旅行に行って参りました。何処に行ったの?新年度にあたりこの時期に相応しいところといえば、そりゃ温泉でしょう。新緑近いひっそりと佇む群馬四万温泉で研修して参りました。あくまで研修ですから、源泉掛け流しでゆったりとしたところでないと良いアイディアは浮かばないので...創業1563年の老舗旅館、大浴場や露天風呂が合計8つあり、その全ては敷地内の自家源泉から沸く天然温泉を完全なるかけ流しで営業し続けている「四万たむら」...に決定。何度も湯に浸かり古くなった記憶を洗い流し、新しい斬新な構想を身体に記憶させました。テーブルを前にして、しかめ面で頭を捻ってもいい考えは浮かびません事よ。裸になって、自然の恵みの恩恵を十分に享受しながら頭を空っぽすると、自ずから智恵が飛び込んでくるもんでございます。風呂上がりのビールがこれまた極上の喉越しの飲み物。こんな時間を過ごした全員が集まる夕食時にはお湯で癒された心身は、まさしく日常のストレスが見事に払拭され爽やかスッキリのお顔でございました...で、どんな話をしたのか?これからのトム・プロジェクトの仕事ぶりをご覧になれば分かると思いますよ...皆さん期待しててちょうだいね!

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マイナスイオンたっぷり温泉

2017/04/12
【第941回】

50歳を機に朝日新聞の記者を退社した稲垣えみ子さんの「魂の退社」読んでます。小さい頃から優等生で、優秀な学校を卒業し朝日新聞に入社、まあそれなりにいい立場まで行ったのだが、このままでいいのか?と疑問を持ち退社。まあまあの給料で衣服、化粧品など買いまくり、それなりに満足していたのだが、香川県に赴任し安い讃岐うどんを食べながら暮らす人達を見てはたと気づいたそうな...「お金が欲しい」と思う人の処にはお金は集まらず、「別にお金なんていいや」と思った瞬間に、お金の方から近づいてきて、しかもなかなか離れていかない。そうなんです!男女の恋愛にも通じるところがあるんですね...人の欲望なんて果てしなく、そんな資本主義社会のシステムに乗っかって物欲、出世欲に取り憑かれた亡者になっちゃいけませんって事よ...会社は一生面倒みてくれるわけでもないし、定年後の第二に人生をいかに有意義に過ごすことを念頭に置いて早めの退社をしたそうな...その手始めに、今まで世界にはあらゆるものが「ある」世界を追求した彼女は、「ない」ということの中に実は無限の可能性があるのではないかということを実践したんですね。先ずは電子レンジ、扇風機、こたつ、ホットカーペット、電気毛布など電化製品を捨て始めたんです。どれもあったら便利と思い込んでたものが、なきゃないで済ますことが出来たんですね。電子レンジの代わりに蒸し器、ホットカーペットの代わりに湯たんぽ...少し工夫すれば快適であったり面白かったりするわけです。冷蔵庫がないと無駄な買い物もしなくなり日々新鮮なものを食べてたそうです。

彼女の生き方が全てではないですが、このなんでも「あり」の世の中に疑問を抱き、「ない」ことから想像する事から始まった時代に回帰することも必要ではないかしら...

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新宿御苑

2017/04/10
【第940回】

4月6日に加川良が亡くなった...フォーク全盛時代に、一人気になる存在だった。独特の声と風刺が効いていながら、何故か純粋な魂を彷彿させる歌詞に惹かれるものがあった。おいらが芝居を創り始めたときに、ふと気になって話したこともない彼と連絡を取り、一杯飲みながらいろんな事を話したのが22年前だったかな...おいらが想像してたそのままの加川良だった。一見ゲバラにも似た顔から少年のような風情を見せる表情に、おいらもついつい心を許してしまい、4時間ばかりの有意義なひとときを過ごしたことを、つい昨日のことのように覚えている。結局、彼との共同作業は実現しなかったのだが、その後も新宿の駅前で小コンサートを、こっそり拝見し、良さんしぶとくやってますなとエールを送った。その後は、彼に会いたくなったときはCDを聴きながら加川節を堪能させてもらっていた。今年、母の一周忌で博多に帰ったときに、弟が昨年12月6日博多で行った加川良のライブに行き購入したアルバムを聴かせて貰った。タイトルは「みらい」青空から始まる6曲は、いつまでも変わらぬ良さんだった。この博多でのライブが彼の最後の舞台であった。彼の代表作である「教訓1」こそ、今のきな臭い時代に対する遺言かも知れない...

 

 命はひとつ 人生は1回
 だから 命をすてないようにネ
 あわてると つい フラフラと
 御国のためなのと 言われるとネ
 青くなって しりごみなさい
 にげなさい かくれなさい

 御国は俺達 死んだとて
 ずっと後まで 残りますヨネ
 失礼しましたで 終るだけ
 命の スペアは ありませんヨ
 青くなって しりごみなさい
 にげなさい かくれなさい

 命をすてて 男になれと
 言われた時には ふるえましょうヨネ
 そうよ 私しゃ 私しゃ 女で結構
 女のくさったので かまいませんよ
 青くなって しりごみなさい
 にげなさい かくれなさい

 死んで神様と 言われるよりも
 生きてバカだと いわれましょうヨネ
 きれいごと ならべられた時も
 この命を すてないようにネ
 青くなって しりごみなさい
 にげなさい かくれなさい

 青くなって しりごみなさい
 にげなさい かくれなさい

 青くなって しりごみなさい
 にげなさい かくれなさい

 

良さん!貴男の69年間の心情はCDにすべて歌い込められてますよ...昨日の夜も、貴男の天衣無縫な笑顔を想い出しながら最後のCD「みらい」を聴きましたよ...

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善福寺川緑地公園

2017/04/07
【第939回】

昨日は詩人、映画監督の福間健二夫妻と国立で桜見物と飲み会をやりました...大学教授を定年退職され、今は詩を書くことと映画を創ることに集中。夫妻とは40年来の友人で、ともにスペイン、ポルトガルを愛する仲間です。お互いにいくつになっても変わらんな!と思っていることでしょう...そうなんです、変わってたまるか!と言う志で生きてきました。最初に出した本も「変わるな!スペイン」初めての異国の地スペイン人の生き方に共鳴、便利さと利益に奔走する世界に背を向けて、日々の何気ない幸せを大切にする二つの国にメッセージを送ったという次第です。EUのお荷物?結構じゃありませんか!利潤を求め、挙げ句の果ては又もや戦争ごっこ、懲りない先進国の面々より人間として上等な気がします。そんなこんなで国立のメイン通り1㎞に連なる桜並木を眺めた後、健二さん行きつけの居酒屋で談笑、楽しい話だと酒も料理も数段美味しくなるものです。連れ合いの恵子さんもとてもチャーミングな方なんですが、映画のプロデュサーとなるとなかなか厳しいお方です。今年も新作を構想中で、健二さんと丁々発止のやりとりを聞かせて頂きました。おいらもそうなんだが、新しいものを創出するときのエネルギーは半端じゃありませんことよ...お金が絡み、人間関係の難しさを乗り越え誕生させる苦労たるや...時折、もうこんな面倒なことやめちゃえ!なんて思うこともあるんですがね...それにしても、健二さんよく飲みますな。ビール飲んで日本酒飲んで焼酎、これで終わりかなと思いきや「けっちゃんウイスキー飲まない...」飲んじゃいましたよ。国立から我が家までほろ酔い加減で帰宅しました...健二さん、あまり飲み過ぎないようにね!だって、お互いに語り合えることによって、いつまでも少年であることを確かめ合える仲間で居たいですからね...

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国立の桜並木

2017/04/04
【第938回】

東京の桜、満開宣言が出たのだが、まだまだ至る所でちらつきがあり、今週週末が見所かな...桜はいつ見てもいいもんですな。ピーカンの桜、薄曇りの桜、小雨降る桜、もちろん夜桜も風情があります...この桜を見る度に、今年もこうやって春を迎えることが出来たことに感謝です。あと何年、こうやって桜を眺めることが出来るんだろう?なんて感傷的な気分になってきたのも年の所為かなと思いつつも、良寛和尚が詠った「散る桜、残る桜も、散る桜」のごとく桜を眺めてると、生死を忘れしなやかに穏やかに自然に身を任せ生きることを指南してくれますな...

今年のアカデミー作品賞を意外な形で受賞した「ムーンライト」観てきました。これと言ったストーリーもなく淡々と時間が流れていくのだが、黒人俳優の素に見える演技力に脱帽。演技とはなんぞや?と思わせる表現と、その表情を決め細かくえぐり取った監督の思いに拍手を送りたい。こんな低予算で地味な作品に賞を贈るアメリカの良心もいいですな。明らかにトランプ大統領を意識してるのは分かるのだが、こうやって全世界に訴えるだけの求心力がまだまだ残っている多民族国家の良さを改めて感じます...それに比して、なんじゃらほいの我が日本。日本アカデミー賞の選定基準の甘さったらありゃしませんがな...何もかもがお上のお顔を伺いながら物事を進めていく日本システムにうんざりしながら手を打てないこのニッポン。教育勅語が教科書に掲載されるなんてまさか!いやまさかじゃありませんことよ...

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神田川の桜

2017/03/31
【第937回】

今日は床屋さんの話です...おいらが最近行き始めた浜田山の小さな理髪店。鎌倉街道を通ったときにふと見つけたお店です。おいらは、それまでずっと美容院に通っていました。もともと、あまりヘアースタイルのことは気にする方ではなかったのですが、ある方から一髪、二化粧、三衣裳って言葉があるでしょう...なんて言われたもんで、美容室に行く事に相成りました。モダンでスマートで流行をいち早く取り入れ競うように若き美容師達が張り切ってる姿は良く分かるのだが、何となくしっとりとした床屋さんがないものかと思ってた時に見つけました。直木賞を受賞した荻原浩さんの「海辺の理髪店」をふと想い出してしまいました。海辺の一本道を古いバスが走り、昔ながらの青々とした田畑に田舎でよく見かける境内まで長々と続く神社の階段、何十年前に描かれた色褪せた文字の看板がかかる商店街・・・おいらが過した少年時代の心象風景を彷彿とさせる土地で、淡々と語る理髪師の言葉がココロに染み渡る佳作の逸品です。トム・プロジェクトでも15年前に上演した「子供騙し」も似たような話でした。東北南三陸で床屋を営む緒形拳演じる老理容師が、己の身の上を語り人生の哀歓を見事に表現した舞台でした。床屋さんには様々な人生を背負い込んだ人達が集まってきます...そんな人達を椅子に座らせ、鋏と手を動かしながらも、じっくりと観察する日々を営みにしている理容師は、人生の酸いも甘いも知って いる人生の達人かも知れません。調子に乗って、ちゃらちゃらお喋りしていると、お髪同様、魂まで刈り取られますぞ...ご用心。

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浜田山の名理髪店

2017/03/29
【第936回】

明後日から、いよいよプロ野球が始まります...おいらにとっては野球に時間をとられ、その他の仕事、趣味の時間が失われる時期でもあります。あんな棒きれで球を打って、やれヒットだアウトなんぞで一喜一憂してる戯れ事ににうつつを抜かしてること自体が馬鹿馬鹿しいとは思いますが...でも、これがなかなかお去らばできないんですから困ったもんでございます。これはキヨシ少年が博多で目にした西鉄ライオンズの記憶が未だに鮮明に刻まれているからです。あの日あの時のライオンズはおいらにとっての生き甲斐でもありました。上京してからもライオンズを追っかけてるんですから、こんな熱烈愛は、ほとほと飽きっぽいおいらも不思議でなりません。もうそろそろライオンズから手を引こうとしても、獅子の魔力についつい吸い寄せられて日々勝敗の行方が気になって仕方がないんですな...最近のチームのだらしなさに呆れかえり、もうどうでもいいやとやけのやんぱちになる時もあるんですが、ついつい期待しちゃうんですね。キヨシ少年、未だに野球選手になりたかった事への未練があるのかな?どちらかというと、すっぱりと過去のことは忘れちゃう方なんですが...でもね、人生ひとつぐらいは命尽きるまで拘り続けるものがあってもよござんしょ!いまだに、少年のような夢見心地でいられるのもライオンズのお陰かなとも思っています。夢とロマンが希薄になったこの時代に、こんなに夢中になれるものがあるだけでも幸せかもしれませんな...ところで今年のライオンズの優勝はあるのかな?

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お待たせ!

2017/03/27
【第935回】

なんだか昨日今日と寒が戻ってきた感じですね...昨日で無事「萩咲く頃に」千秋楽を迎えることが出来ました。1月12日からスタートした公演で計38ステージの長丁場でした。キャスト、スタッフ事故もなく、この時期一番の恐れインフルエンザも免れ、なんとか最後までステージを勤めることが出来ました。これは、やはりこの芝居に賭ける気持ちの張りが弛むことがなかったんでなかろうかと思います。今尚、厳しい環境にある人達、前に向かって奮闘してる人達のことを思うと心身ともにしゃっきっとしますばい...おいらなんか風邪引いてしまい肩身が狭かですばい...いやいや、おいらが皆さんの厄を引き受けて何事もなかったんですぞ!と相変わらずのポジティブシンキングで納得しております。

先週の土曜日は本番中にも拘わらず、大宮演劇鑑賞会第11回通常総会の記念講演に行って参りました。首都圏演劇鑑賞会の中でも活発な活動をされてる団体なので、おいらも緊張しながら会場に向かいました。大宮駅前にある大宮ソニックシティには沢山の会員さん達が集まり、活発な意見が交わされていました。いよいよ、おいらの持ち時間1時間の講演。大体の内容は決めては居たんですが、なにせおいらの波瀾万丈の人生エピソードが多すぎて、ついつい横道に入り込み、こりゃまずいと演劇の魅力を語るのだが、又もやおもろい話で笑いが起こるとついつい引っ張られ...でも、考えてみれば、おいらの生き方そのものが演劇的なるものであって、堅苦しい演劇論を語るよりも、おいら自身の等身大をさらけ出す事の方がより説得力があるのではと思う次第でございます。

総会を終え、近くのフランス料理店で美味しい食事をご馳走になりました。15名の大宮演劇鑑賞会の理事さんに囲まれ、おいらはハーレム状態でございました。今年の10月には「萩咲く頃に」大宮演劇鑑賞会の上演が決まっています。又、皆さんに会えることを楽しみに、おいらもボチボチ楽しみながらいきまっせ...

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大宮演劇鑑賞会 理事の皆さん

2017/03/24
【第934回】

東京も桜開花が発表され、JR新宿駅前の桜も嬉しそうに咲き誇ってます...6年経過した被災地の桜も見所沢山な名所がありました。震災後、訪れることのない桜並木が映像に映し出される度に、桜はいつの日か、再び住民の笑顔と談笑で、満開の桜の木の下で春の訪れを喜ぶ日を待ちわびているだろう...そんなことを思いました。何十年、何百年と市井の人達の営みを見続けた桜の木々にとって、こんなに辛い6年間は無かったと思います。風雨に晒され、暑い日も寒い日も何一つ不平を漏らさず、この時期に間違いなく柔らかく温かく優しいピンクの花びらを惜しげもなく魅せてくれる桜の木は、厳しい環境下にある被災者に桜を咲かせることで被災者の人達にエールを送ってるんですね...

「萩咲く頃に」今日の公演を入れて残すところ3ステージとなりました。芝居は生き物ですから日々変化、成長します。この芝居を観劇した人達が、被災者に寄り添って、今この困難な時代に何を考え、どのような行動を起こせば良いのか...そんなヒントになればと思いながら残りの舞台を相務めます。

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本日、新宿駅前で咲いてます!

2017/03/21
【第933回】

連休明け、本日「萩咲く頃に」の初日です...東日本大震災から6年。あの日に故郷を、肉親兄弟を、知人を失った人達の6年間は、言葉では表すことが出来ない喪失感です。この人達の深い悲しみに比べると、巷で騒がれてる出来事なんぞ被災者にとってはどうでもいいことなのかも知れません。唯一の救いは先日の判決、東日本大震災は東京電力、国にも責任があるという当たり前の裁決。今、問われてる森友学園の国有地払い下げ問題、豊洲土地売却の経緯の不透明、南スーダンPKO陸自の日報、廃棄などなど、この国の政治家、官僚、行政に関わる人間のなんといい加減なことか!庶民の血税を、いとも簡単に己の身の保身のために、利益誘導、隠蔽をこなしていく、又、それを許していく体質に唯々呆れるばかりです...昨日の石原前都知事の答弁、こんな人に長年都の行政を任せていたことに、そろそろ都民も気づいて欲しいな...自宅に出る前に記者に言葉を掛けられ、日露戦争・日本海海戦直前の連合艦隊出動時に秋山真之中佐が大本営へ打電した文面の一節「天気晴朗なれど波高し」を発した後、記者に対し「君たち教養のない者にはわからんだろうな...」この一言、態度こそが、彼の人格を物語っている。全てが上目線、大衆を小馬鹿にしている態度はおいらは到底許せませんな。昨日の証人喚問終了後に笑顔すら見せる余裕...

とにかく、時代は決して明るく希望に満ちてる状況ではありません。そんな時に、どれほどのチカラになるか分からないけど、被災者、弱者の側に立って表現を通じアクションを起こすことしかありません...多くの人達に観て頂いて、既成の悪慣習をぶち壊す契機にして欲しいですな。何事も諦めちゃいけませんことよ...

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3月の山

2017/03/16
【第932回】

いやいや第4回ワールド・ベースボール・クラシックの侍ジャパンの戦い痺れました...大会前の試合ではセリーグ、パリーグのチームにも負け、なんて弱い侍達だと思ってたんですが、幕を開けると鞘に収めぱなしだったバットをぶんぶん振り回し大量得点。少々不安が残る投手陣の心配も何処吹く風と言わんばかりの大活躍。25歳の筒香、27歳の中田の二人のホームランがなんとも試合の彩りを添える見事なものでした。それにセカンドを守る広島カープの菊池の忍者を感じさせる守備、芸術に値するプレーが何度もありました。意外だったのが、キャッチャーを任された巨人の小林、おいらなんぞは特にセリーグの試合はあんまり観ないので、この人大丈夫?なんて失礼な先入観持っててごめんちゃい...この小林が今回のラッキーボーイになるなんて、ほんまに野球はわからんもんですたい。わがライオンズでは秋山、牧田がそれぞれいい働きをしてますんで嬉しい限りです。それにしても小久保監督なんて期待も何もしてなかったのに全勝で準決勝に導いたので、何かしらの運を持ってるんでしょうね...外国のがっしりした選手を相手に、小粒な日本の侍よくぞ闘いましたな。バズーカ砲相手に、キラリと光る切れ味のいい刀でなぎ倒す今回の試合、多くの人達に野球の素晴らしさを伝えてくれた気がします。今月末から始まるプロ野球に弾みが付きまっせ...

それに比べて、政治家のお粗末が連日マスコミを賑わせてます。こんな政治家しか日本に居ないのも悲しいけれど、そのお粗末な政治家を選んだのも日本の国民ですからね...こんなこと何年続いてる?いや、これからも...しっかりせんと遺憾ですバイ皆の衆。

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今日の新宿

2017/03/14
【第931回】

先週の火曜日に39度近くの熱を出し、久しぶりに病院に行きました。幸いにしてインフルエンザではなく風邪との診断。早速、薬を貰い飲むのだが一向に良くならないので、こりゃ花粉症から来てるのでは?と思い耳鼻咽喉科へ。ここでも抗生物質の薬を含め5種類ほどもらい飲み続けているのだが、今日に至るまで今一つ元気なおいらの身体に戻りません。一週間、薬を飲み続けるなんて事は、おいらの人生の中でそうありません。人間には自然治癒能力を備えており、おいらはそのチカラを信じてあらゆる病を退治してきました。薬の有り難さは十分に理解をしてるのだが、自然体の身体に化学薬品を投入することによって身体の根本的な仕組みを変えることには大いに抵抗があるのでございます。普段薬を飲まないおいらだから、普段は2,3日化学の力を借りれば治癒しちゃうんだが、今回はなんと一週間、すっきりはっきりしない日々が続いています...なんだか、おいらの身体が化学体に変質してるみたいで気持ち悪いですな...喉チンコが腫れ、お目々がウサギ目になり、満身創痍はひとまず脱出できたのだが、今日なんぞは熱こそないものの先週の火曜日状態に近いかな...こんな時に、いつも思うのが終戦後、ソ連が日本の兵士を極寒の地シベリアに連行し最長10年、強制労働を課し5万人が死亡した出来事。寒さと飢えと不安のなかで過ごした人達のことを思えば、こんな風邪なんぞ病に値しないと思います。病は気からなんて言葉がありますよね...現代人は安直に化学、科学に依存しがちです。ここはひとつ、おいらの気力を信じ何とかいつもの壮健な身体に舞い戻りたいもんでございます。

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母子像

2017/03/10
【第930回】

1971年11月14日の沖縄返還協定の国会批准を巡る強行採決に反対するデモ隊と機動隊との衝突で、機動隊員1名負傷し翌日死亡しました...その後、政府はデモ参加者を無差別に逮捕し、その中の一人星野文昭さんが実行犯としてでっちあげられ無期懲役刑が確定し42年間獄中生活を強いられています。おいらの家の近くで、星野さんが獄中で描いた絵画展と、獄中結婚をした暁子さんのお話があるというので出かけました。先ずは、素直で明るさに満ちた水彩画を観ながら42年間どんな思いで絵筆を握ったのであろうか...あまりにも長い時間、おいらと同じ年の生まれだけに、おいらがこれだけ思いの丈に見合う人生を過ごさせて貰ったことを思うと、星野文昭さんの無念の思いは如何ばかりか...せめてもの表現が丹念に絵画に込められていたと思う。

獄中結婚された暁子さんの話が又、辛いけど夫を信じ、いつの日か必ずや無罪釈放される日が来ることの強固な意志を感じ感銘を受けた。肌に触れることも、手を握ることも出来ず毎月30分間だけの面会時間だけを楽しみに徳島刑務所に通い続ける暁子さん。悲痛に満ちた顔どころか、愛する文昭さんと共に冤罪に立ち向かっていく凛とした表情に、一縷の望みというより人を愛する強さ、世界の不平等をなくす決意を感じた。

42年、あまりにも長い...釈放して欲しい!もっともっと極悪非道の人間がのうのうと巷を闊歩してるというのに、まさしく不条理の現世ですたい...

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沖縄から命をもらうフクシマの子

2017/03/06
【第929回】

土曜日は世田谷パブリックシアターで開催された、グラシアス小林さんの『Swan Lake ~闇のロッドバルト~』を観劇...彼とは40年来の友人である。スペイン滞在中は家族ぐるみで付き合い、その当時3歳の息子、海来君はスペインで画家として活躍している。グラシアス小林さんは何度もの死線を乗り越え68歳になる現役ダンサーである。フラメンコダンサーは60歳を越えると現役ダンサーとしては、かなり厳しい職業である。にもかかわらず新しいジャンルにチャレンジする彼の表現者としての勇気に拍手を送りたい。今回の公演は白鳥の湖を彼なりに解釈し、スペインから踊り手、歌い手を招聘し企画、演出、振り付け、出演をこなさなければならない大仕事である。おいらも幕があると同時に、彼との長年の想い出が交錯し、作品の良し悪しと言うよりも、彼が繰り出す繊細な手足の動き、そして異国の地で生きてこそ味わった喜怒哀楽から滲み出る表情を見逃さず観ることに集中した。彼と過ごしたスペインでの濃密な時間が、まさしく彼の一挙手一投足に集約されていた気がした。それにしても休憩を挟んでの2時間、脳と心臓に病を抱えた満身創痍の肉体が鬼気迫る威力で観客を魅了したに違いない...終演後、楽屋を訪れるといつものような穏やかな顔でケッちゃんありがとう!この顔と踊るときの顔の落差こそ、彼の表現者として蓄積した独自の原動力なのである。

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グラシアス小林

2017/03/03
【第928回】

「サクロモンテの丘」を観ました...おいらにとっても懐かしいグラナダの洞窟でのフラメンコ。友人が何人もグラナダに住んでおり、夜が更けるとふらりふらりと出かけたものです。山のあちこちに洞窟がありジプシーたちが住居もかねてフラメンコショーを繰り広げておりました...その歴史あるサクロモンテの年老いたアーチストをインタビューしながら芸をご披露するだけの映画なんですが、学校にも満足に行けず差別されながらもプライドを持って生きてきたジプシーの人たちの存在感に唯々驚嘆するばかり...改めて、フラメンコとは生き方そのものだということを、この映画で確認することができた次第でございます。でぶっちょのおじいさんおばあさんのなんと可愛くて素敵なことか!手を動かし、足を踏んだだけで身体から表情から人生が滲み出てきます。おいらも思わず『OLE!(オレ)』(いいぞ!っていう意味)と叫びたくなりました。
芝居の芸も同じだと思います...どんな人生を経てきたか、すべて舞台に画面に正直に出てきます。どんな嘘をついても、その人が体験、経験したことは身体が記憶してるもんです...
だからして、日々自分の心身が汚辱に塗れないように生きねばなりませんな皆の衆。

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Viva Flamenco !

2017/03/01
【第927回】

今日から弥生でございます...梅から桜へ移行し、万物が眠りから覚め動き出す季節でもある。おいらもさてと思うのだが、考えてみればこの年まで、眠りなんぞの期間は皆無だったんじゃないかしら...かといって、せかせかと動いた記憶もなく、あくまでもマイペースでおもろい人生楽しんできたなって感じかな。ほんなごつ幸せもんでございます。この幸せのコツは人との距離の取り方につきますな。この世の中には、善人と悪人と人畜無害なる人達が程よく混在しながら生きとります。そんな人達のその場その場の感情に付き合っていたら心も身体も持ちませんがな...己の身体に皺寄せが来ない距離で、感情に翻弄されてる様子をじっくりと考察するのがベストです。「人のふり見て我がふり直せ」ってことわざがあるでしょう。自分では気がつかなかったことが、まるで目から鱗が落ちるってことになるんでございますな。この世の中、すべて必要だからこそ諸々存在しとるんです。それこそ見逃したら損しまっせ...

なんだい民進党!党名変えなさい...なんら民のため進んでないじゃありませんか。原発30年後の廃止宣言、労働組合絡みの議員の反対で風前の灯火。これじゃ現政権に立ち向かう野党としては失格もいいところ...今、国会でアベちゃんに異見をしても迫力ありませんな。自民党、こんな野党であれば盤石の体制。一歩一歩、時代の針は逆戻りしてますが、こんなクソ野党のために現政権の支持は上がりっぱなし...無茶苦茶でござりますが、でも残念ながら手がありませんがな。

「ラ・ラ・ランド」のサウンドトラック盤、早速購入し聴いとりますがな...アカデミー賞の作曲賞、主題歌賞獲るだけのことはありますな。ワイン片手に「シティ・オブ・スターズ」聴いてると、この世の憂さも吹っ飛びますな...

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もうすぐだね

2017/02/27
【第926回】

「ラ・ラ・ランド」先週の土曜日観てきました...なんと言ってもジャズへの愛を狂わしく映像化した「セッション」でアカデミー賞3部門に輝いた若き天才監督デミアン・チャゼルの作品なら間違いないだろうと言うことで...最初のシーンでこりゃいけると思いきや、中途中だるみ、ありゃ前宣伝に騙されたかなと思いきや後半、ジャズピアニストを演じるライアン・ゴスリング(本編中の全てを本人が弾きこなしたのはお見事)と、女優志望役のエマ・ストーン(ソロも本人が心情溢れる歌声で素晴らしい)が意見の対立で激しく論争するところから一気に盛り上がる。終盤、おいら不覚にも涙流してしまいました。だって、だって青春のほろ苦さと切なさとパッションが、まさしくおいらの少年から青春へと向かうドラマと重なり合うシーンみたい...いや、そうだったかも知れない?青春なんてのはきれい事でもないし夢幻の世界に近いのかも知れない。青春なんて青臭い言葉を、この映画は記憶から呼び戻してくれる映像力がありましたな...この監督のジャズに対する敬意が、この映画の文脈をオリジナリティ溢れる新たなミュージカル映画の傑作に仕立て上げたと思う。エンディングに流れるジャズとソロの歌声が、この映画の余韻をたっぷりと感じさせてくれる...なのに、さっさと席を立ち家路に向かう輩がチラホラ。この種の人達に映画の感想聞いてみたいな...おいらは映画館出た途端ぴあのアンケート係に感想をせがまれました。おいらの世代の客が少ない所為だったからかな...

先ほど発表された今年のアカデミー賞で「ラ・ラ・ランド」、監督賞と主演女優賞を受賞したそうな...

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青春

2017/02/24
【第925回】

新宿の街から、いかがわしく淫靡な匂いが無くなってきました...銀座、青山、六本木、渋谷なんかに比べて新宿はカオスが売りです。得体の知れない輩が徘徊し一歩間違えば、身ぐるみを剥がされる危険な街です。だからして女性の人気はいまいちですが、おいらのような好奇心がひと以上に強い人間にとっては、飽きが来ない街です。ほんまもんの文化は、人間の奥深く潜む欲望を嗅ぎつけないと生み出せんがな...当たり障りのない口当たりの良いお洒落な街も嫌いではないが、その表層をぺろりと舐めても文化そのものの本質には辿り着くことが出来ません。しばし、戦士の休息場としての街でしかありません。クンクンと日々嗅ぎ廻る戌年のおいらも、たまには流行たるものに接し身支度を調えるぐらいのエチケットはわきまえていますがな...さっき、新宿のアルタの自販機前でホームレスのおっちゃんが自販機前のブロック石を持ち上げ自販機の下を必死の形相で覗いていました。釣り銭が落っこちて普通では取れない諦めていった小銭がないものか探しているんですね。この平和な日本で生死を彷徨いながら捨て身で生きてるこの姿を見て何を感じるか?ここんところが勝負の分かれ目かもしれませんな...命果てるまで生きることの意味、心想する日々でがんす。

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半世紀前アルタ前での唐十郎

2017/02/22
【第924回】

前回は母のことを書いたので、父が「俺のことも少しは書いてくれよ...」なんて声が聞こえてきたので記さなあきまへんな...おいらの父は、54年前に亡くなりました。広島県呉市の出身で岡田家は裕福だったそうです。その当時男3人兄弟すべて大学に行かせるぐらいですから...しかし、明治末期に生まれた父敏雄は、東京の医学予備校に行ってはいたんですが、どうやら遊びの方が好きで父だけが大学を諦め、親が経営する旅館の跡継ぎをまかされ大陸に渡ったそうです。そこで母と見合いし結婚(母が言ってましたよ...この人がどうこうと言うより岡田の家であれば子どもたちを幸せに出来そう...とうちゃん可哀想)そして終戦、苦難の末引き揚げ船で博多港に帰国を果たす。戦後の闇市で、高級野菜の商売に成功するも、生まれ持っての人の良さから騙され一家はどん底を味わう。しっかりもんの母のお陰で、5人の子沢山でも乗りきることが出来た。父も母に煽られいろんな仕事にチャレンジしましたな...焼き芋や、ラムネ売り、ボンボン釣り、いやいや少年キヨシ君も手伝いましたがな。父がふらりと出かけたあとおいらも欲しいもの(西鉄ライオンズ選手のメンコ)があったので売り上げを拝借したこともありました(とうちゃんごめんちゃい...)平和台球場でのラムネ売り、リンゴ箱売りでの手伝いは、西鉄ライオンズと共に過ごすことが出来たので燃えましたな(とうちゃんありがとう...)

でも、こんな父も子供には優しかったですね。良くお土産を買ってきて子どもたちの喜ぶ顔に満足していました。おいらは、ある時、兄と大喧嘩をしたときに、おいらを一方的に責める父に我慢できず、家を飛び出しちゃったので父のその後の優しさには触れずじまいでした。父が一番嬉しかったのが、兄が九州大学に入学したときでしたね...嬉しさのあまり大好きだった酒を断ったのが命取りになり、脳梗塞であの世に逝っちゃいました。気丈な母が亡くなった父に添い寝している姿を見ながら、おいらも止めどなく流れる涙を拭うことなく早朝、新聞配達に出かけたのを今でも鮮明に記憶しています。

今頃、父と母は、あの世で半世紀ぶりに再開を果たし思い出話に花を咲かせていることでしょう...とうちゃん、かあちゃん、奇跡的においらをこの世に送り出し、育ててくれてありがとう!まだまだ、おいらは浮き世で楽しみますからね...

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おいらが画いた父

2017/02/20
【第923回】

昨年の今日、母は97歳で旅立った。今日は一周忌である...97年の生涯は、まさしく波瀾万丈である。佐賀で生まれ、東京で少女時代を過ごし、佐賀武雄高女を卒業し教師になるが、朝鮮半島に渡り岡田旅館を経営していた長男敏雄と結婚。旅館の女将跡継ぎ修行中に敗戦、8月9日にソ連軍が侵入し地獄図を見る日々の中、1946年2月に奇跡的に帰国。この月においらを産んだわけである。おいらは十月十日、お腹の中でソ連軍の野蛮な行為、侵略された怒りを晴らす朝鮮、中国の人達の復讐。人間のあさましさを感じ続けていたわけである...この経験から母がおいらに何度も言い続けた言葉が「戦争は勝っても、負けても惨めである...戦争だけはどんなことがあってもしたらいかん!」終戦後も母の戦いは始まる...父が早く亡くなり、5人の子供を一人育て上げたのである。今でも覚えてるな...学校を終え新聞配達中、母が荒くれ男たちに混じって道路工事をしていた姿。ほうかむりした母の顔は日焼けしており垂れる汗を拭う暇なく砂利を黙々と運んでいた。おいらが上京し、美輪明宏の「ヨイトマケの唄」を耳にしたときには、おいらは母の姿と重なり号泣した記憶がある。昼間の仕事を終えた後も家事を済ませ、夜は遅くまで筆耕(ガリ版印刷、原稿を金属のヤスリの様な板を下敷きにして、蝋のようなものが塗ってある紙に鉄筆でガリガリ書いていた。)おいらの枕元で、明け方近くまでガリガリとした音がして寝れんかったのだが、母が子を思う辛苦にただただ涙した。そこで、おいらは母の負担を少しでも減らしてあげたい一心で、いくつものバイトをやり自立の道を選択したのである。上京したときも、おいらのわがままを許してくれた母に感謝...大学出ても風来坊人生を彷徨ってるおいらに小言も言わず、時折来る母の達筆な手紙には「身体だけは気をつけて、美味しいもん食べないかんよ...」幾つになっても、おいらにとっては逞しく知的で優しい母であった。子どもたちが成人した途端、これまで出来なかった絵画、短歌、手芸などなど多種にわたり趣味に没頭する日々を取り戻し活き活きしていた。おいらも何とか親孝行に間に合い、温泉に連れて行くと嬉しそうな顔をしていました。85歳に脳梗塞で倒れ、身体は不自由であったが向上心は枯れることなく最後まで凛とした姿で生涯を終えることが出来ました。

おふくろ!おいらももうすぐ71歳になります。70代のおふくろは少女の様に活き活きしていたね...おいらも負けずに少年のような気持ちで日々過ごしています。おふくろの年齢まで生きられるかどうかは分からんけど、おふくろの子であることを誇りに思い、最後まで愚痴を零さず、己磨きを怠ることなく、世のため人のために生ききりますばい...

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母の作品

2017/02/16
【第922回】

デヴィッド・ボウイ大回顧展に行ってきました...天王洲アイルの倉庫でやるってのもどんなもんだか興味がありました。とにかくかっこいい男でしたね。音楽に留まることなく、役者、絵描きなどなど自分の生き方も含めて、表現に貪欲に戦い続けた真のアーチストであったと思います。貴重な資料、衣裳、映像が各コーナーに陳列されてたのだが、おいらの目を惹き付けたのはパントマイムの映像と三島由紀夫を描いた油絵。イギリスの舞踏家リンゼイ・ケンプ氏の下でダンスとマイムを学んだ彼の奇想天外なパントマイムは、彼にとってのアートが、先ずは己の肉体の可能性をひとつひとつ検証しながら進めていったことを証明してます。これがなかなか上手いんです、才能ある人はなにをやっても様になります。三島由紀夫の絵には驚きました。キュビスムの旗手ピカソを思わせる絵は、まさしく三島由紀夫の本質を捉えている傑作。この絵を描いていた時期は、彼が覚醒剤を断つためにドイツに滞在中での作品。彼は日本的なるものに興味を持ち、あの独特のメイクは歌舞伎の手法を取り入れてのことらしい。入り口で渡されたヘッドホンからは、コーナーごとに彼の声、歌が流れ、彼の全貌を全身で感じ取れる工夫がなされている。
おいらの1歳下だけに、世代的に連帯を感じます。おいらが見た世界と、彼が見聞きした世界のどこかに共通点があるのではないか...そんなこと考えながら2時間があっという間に過ぎてしまいました。

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出火吐暴威

2017/02/13
【第921回】

トム・プロジェクトにも作、演出してもらってる2人の作品を観劇...先ずは、中津留章仁作・演出のトラッシュマスターズ「たわけ者の血潮」。社会の歪みを果敢に暴き出してきた作家が今回も偽りの民主主義に刃を突きつける。意気込みは分かるのだが、延々と続くディスカッションドラマに観客は耐えることが出来るのか?だってお客の芝居の楽しみ方は多種多様、好き嫌いで決められると、この手の芝居は拒否する人が居るだろなというジャンルでございます。芝居小屋にまで来て、社会のこと考えたくない、いや社会から人間関係から逃れたい人達にとっては、なんとも不向きな作品です。芝居は娯楽か啓蒙か?おいらはその両者がうまくブレンドして面白いけど考えさせられたみたいな作品が理想だと思いますよ。でも、そんな優れた作品はそうそう出来上がるもんじゃございません。中津留章仁も悪戦苦闘しながら頂上を目指しながら一歩一歩険しい道を歩んでるのかも知れませんね...

次は、ふたくしつよし作の劇団民芸「野の花ものがたり」鳥取市でホスピス「野の花診療所」を開いている徳永進さんを中心に、この診療所で死を待つ患者と家族の物語。ふたくちさんの人柄がそのまま出た芝居に仕上がっていました。死とは生きる事...誰しもが避けることの出来ない死に向かって生きる事の意義を考えさせてくれる芝居でした。笑いも交えて歴史ある劇団員の生活感溢れる演技が印象的でした。

考えてみりゃ、この東京って街、凄くありません?一年通して様々なジャンルの芝居・音楽が途切れることなく上演されてるんですから...でも、やりゃいいってもんじゃございませんよね。おもろくないもの最初に見ちゃったら一生、芝居なんぞ見ない人生になっちゃうんですから。おいらも肝に銘じて創らなあきまへんがな。

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たわけ者の血潮

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野の花ものがたり

2017/02/10
【第920回】

久しぶりに富山に行って参りました...北陸新幹線が運行され、北陸が脚光を浴び金沢への観光客が随分と増えたらしい。おいらは金沢の手前、新高岡で下車し、一時間に一本しか走っていない城端線に乗り換え砺波に行ってきたのです。市章、市旗に描かれてるチューリップで有名なところです。おいらはチューリップを見に行ったのではございませんよ...となみ演劇鑑賞会が呼んでくださった「萩咲く頃に」を観に行ったんです。鑑賞会の事務局長の上田さんによると、5万人弱の町で1200人の会員さんがいるんですからたいしたたまげたでございます。しかも15年間会員さんを増やし続けているのですから驚き桃の木山椒の木(さすが昭和世代の言葉がついつい出ちまうんですな)。全国の演劇鑑賞会が会員を減らしている昨今、ここの鑑賞会はしっかりと芝居が何故、今の世の中になくてはならないものかを確認しながら会の運営をしてるんですね。おいら創る側からするとなんとも力強い応援団でありますが、一方、こんな方々にいい加減な芝居は観せられないという責任も感じます。この日、1月10日の横浜公演以来久しぶりの観劇だったのだが、さすがベテランの音無美紀子さん、大和田獏さんが織りなす夫婦のシーンは、まるで夫婦漫才を見ているかのような厚みのある芝居に変貌しておりました。深刻なテーマの芝居であるだけに客席からの笑いは芝居に立体感を持たせてくれます。藤澤志帆、森川由樹、西尾友樹、三人の若手俳優も24ステージをこなしてきた自信に溢れる演技を魅せてくれて一安心です。

終演後、キャスト、スタッフ全員で地元の美味しい料理と酒を飲みながら、この日の芝居のチェックも含め楽しい夜を過ごすことが出来ました。日本全国各地に、様々な人達が楽しみに芝居を待っているなんていう素敵な国がいつまでも続きますように...

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車窓からの風景

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手作りの掲示板

2017/02/08
【第919回】

昨日、NHKで阿久悠特集の歌番組やってました。この昭和の類い希なる作詞家は国民栄誉賞を貰わなかったのが不思議なくらいです。いや、こんな国家の肩書きばかりの賞なんて糞食らえて思ってるのが阿久悠らしくていいのかもね...それにしても、彼の描く世界が、まるで万華鏡みたいで見事の一言に尽きる。アニメから演歌、ポップス様々なジャンルを遊び心満載で書き綴った言葉の山脈の大きさと世界に驚嘆するばかりでございました。この歌番組で存在感を示したのが北原ミレイの「ざんげの値打ちもない」の絶唱。14歳の女性が愛というものでない感情で男に抱かれ、15歳の誕生日に安い指輪と一輪の花を贈られ愛という名に相応しくない心と身体を捧げ、19歳になると男との関係が上手くいかなくなり細いナイフを光らせて憎い男を待ち伏せして...と、ここまではおいらも良く聴いた歌詞だったんだが、昨日はカットされた幻の4番の歌詞を初めて聴きました。

あれは何月 風の夜  とうに二十歳も過ぎた頃
鉄の格子の空を見て  月の姿がさみしくて
愛というのじゃないけれど  私は誰かがほしかった

この主人公の女性、男を殺したのか傷つけたのか分からないけれど犯罪者になって刑を終え、その心境を5番の歌詞に託したんですな。

そしてこうして 暗い夜  年も忘れた 今日のこと
街にゆらゆら 灯りつき   みんな祈りを するときに
ざんげの値打ちも ないけれど  私は話して みたかった

男と女の激しくも切ない心情を、これまた同じような人生をさすらった北原ミレイが歌うと、この日出演した歌手の皆さん申し訳ないけど、もう一度人生なるものをいかに歌として人前で表現するかを熟慮なさったほうがよろしいんじゃございませんか?と生意気ながら感じましたでござんす...たかが歌されど歌。

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2月の夕陽

2017/02/06
【第918回】

昨日、家の近くを3時間ほど遊歩しました。携帯のウォーキングカウンター見ると13000歩歩いていましたな...庭のあちこちに梅がちらほら顔を覗かせていました。途中、ドラッグ店に入りトイレに入ろうとしたのだが、男女兼用のトイレなかなか先客が出てきません。入り口に、おばあさんらしき人が待ってました。ようやく30代半ばの母親と2,3歳くらいの女の子が出てきました。おいらが「もういいんですか?」と聞いたのだが、無言のまま立ち去ろうとするので、おいらは返事を待たずトイレに入りました。ところが便器の中にはウンコ塗れのおむつが入っており水で流しても、勿論流れません。おいら、すかさず出て行ったおばあちゃん含めた3人組を追いかけ「駄目じゃないですか!トイレットペーパー以外は流さないでと書いてありますよ...」と問い詰めたのであるが、この3人組逃げるように店を出て行きました。何故か子供だけが、母親が強引に引っ張る手を振り払うように、おいらに向かってつぶらな瞳で「ごめんちゃい...」と訴えかけているようにも見えました。おいらは、それ以上追いかけることもせず、店の人に事情を話して今すぐ処理しないと水浸し状態になる事を告げました。いやまあ、こんな母親に育てられる子供が不憫に思えてきました。最近、日本各地でも中国観光客のマナーがいろいろと取りざたされてますが、日本人も随分とマナーの質が落ちてきていますな...車内、街中、レストラン、美しい佇まいの中に至福の時間が生まれるもんです。他者を意識しない感覚から人は、そして国は滅びていきますぞ...

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母ちゃんしっかり育ててよ!

2017/02/03
【第917回】

立花隆著「武満徹・音楽創造への旅」を読了...知の巨人、立花隆が20年前にインタビューしたものを中心に書き綴った700ページを越える大作である。しかも二段組みと来てるからなかなか前には進みませんでしたが、あまりの面白さについつい読んじゃいました。先ずは稀代の前衛音楽家である武満徹の極貧時代から始まり、監督黒沢明との確執がありながらも映画音楽を作曲し日本映画の最盛期に新たな映画音楽を確立した世界の武満徹の人間性、人生を細部にわたるまで取材し加筆した立花隆の底力に拍手を送りたい。立花隆の書庫を何度か写真で見たのだが、この人の知に対する貪欲な生き方に圧倒される。政治から文学、美術、医学、宇宙にいたるまで果てしなく続く知の旅は読者を魅了してしまう。雑誌記者時代にゴールデン街に「ガルガンチュア立花」という店を出し、幾多の人脈を形成していった。今は立花の名を外しながらも存続する、この店においらも44年くらい通ってます。

この本を読みながら感じたことは、昭和という時代で日本の文化も衰弱していったのではないかということ...お金は無くとも筋金入りの精神が巷に溢れ、より新しい刺激的な作品を競う様に創り出す土壌が昭和という時代に確かにあったということ。この昭和という、文化というものが比類なき輝きを放っていた時代においらも立ち会えたことに唯々感謝でございます。しかも戦後であることに更なる感謝です。そして、一年前に97歳で亡くなった母に、引き揚げの中、困難の中、流産することもなく無事産んでくれた奇跡に、これまた感謝です。残り少ない人生、世のため人のために生きんとおっかさんに怒られますばい...

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赤く染まる富士

2017/02/01
【第916回】

新宿でランチをした後、ちょいと珈琲でもという時に立ち寄るのがDUGである。日毎少なくなっていくJAZZ喫茶の中でも老舗のお店である。心地よい音が流れるなか、歴史を感じさせるアンティークな椅子、テーブル、そして調度品に囲まれながらの一杯は、まさしく至福のひとときである。オーナの中平穂積氏は写真家でもあり、店内にはマイルス・デイビス、ジョン・コルトレーン、セロニアス・モンクなどそうそうたるメンバーを撮影した写真が飾ってあります。思えば、おいらが50年前に通い出したのがDUGの前身DIG、アルタの裏にあるロールキャベツの店「アカシア」のビルの3階に頻繁に出没してました。私語禁止、唯ひたすらLPレコードから流れてくる情念音に耳を傾け、読書に耽る日々でした。オーナーの拘りで珈琲もなかなかの味でした。あの時代とJAZZがマッチしたスリリングな場所でもありました。おいらも将来はJAZZ喫茶をやるんだと勝手に思い込み、なけなしのお金を捻出しながら、せっせとLPレコードを買い集めていました。
あれから半世紀も経っちゃいました...おいらもいろんなこと体験してきたが、変わらないのは今日もこうやってJAZZ喫茶店をこよなく愛していることです。何事にも拘ることが刻々と減少している昨今、JAZZというジャンルを溺愛するおっさんたちが商売を度外視してやり続けてることに男の美学を感じますな...

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新宿JAZZ老舗 DUG

2017/01/30
【第915回】

運転免許の更新、本日無事、新宿都庁の運転免許更新センターで済ませてきました...昨年、高齢者講習会の案内が来ました。おいらもとうとう高齢者(何度も言いますけど、おいらは肉体も精神も感性も20代だと自負しておりまして、甚だ遺憾でございます)になっちまっただ...よく読んでみると、車の運転実習もあると書いてある。おいら、考えてみれば20年以上車のハンドル握っておりません。しかもAT車なんぞは慣れておりません...いやはや、海外で逆走したことや、一時間運転してると眠くなることなんぞが頭を過ぎります。横の教習所のおっさんに手厳しく「もう一度、教習所で実習してからでないと駄目ですね...」なんて言われるのも癪だし、この際、世間では高齢者による事故の多発が報じられてるし、免許証返上しようかな?なんて考えたのであるが、おいらの性分としては、こんな時にしか車を運転する機会がないんだし、どんなもんだか楽しんでみましょう!なんてポジティブシンキングになっちゃうんですな...武蔵境の教習所に行くと12人の講習者が集まってました。まずは1時間の講義、やたら高齢者の事故が増えてることを強調しまして、なんだか免許証返上を暗に臭わせてる感じがいたしました。2時間目は適性検査、模擬の運転台に座って画面に出てくる歩行者、自転車に対してブレーキ踏んだり、アクセルを操作したり、俊敏性のテスト。おいらは間違い無しのパーフェクト、お隣の2人の画面をちらと見ますと3個、4個のバッテンが付いとりました。ほらほら、おいらは20代と言いましたでしょう...さて、いよいよ3時間目は車の運転、3人が同時に乗り、おいらは2番目。これが良かったんですな...最初のおっちゃんが教習員に聞かれました「どのくらいの頻度で乗ってますか?」「1年くらい乗ってません。」おいらも、この答えで行こうと決めました。「20数年乗ってません...」なんて言おうものなら教習所通いで何万円ものお金を提供しなければなりません事よ。いよいよ、おいらが運転することになりました。車庫入れが?なんて不安が過ぎりましたが、機に敏なるおいらのこと、信号の見落としが1個ありましたがなんなくパスいたしました。
でも、調子こいてハンドル手にすると、おいらのスピード狂が昂じて抜きつ抜かれてのレースとなり、穏やかなおいらの顔も般若の形相になった経験もあることだし、今日頂いた免許証も引き出しにしまっておきますがな...そして、又いつの日かハンドルを手にして、スペインのコスタ・デル・ソルの海岸を疾走する姿を夢見ながら...

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一月の空

2017/01/27
【第914回】

連日寒い日が続いています...この時期、家から眺める裸木、散歩中に目にする裸木がとっても好きです。無駄なモノを削ぎ落とし屹立した姿に感動すら覚えます...春夏秋、様々な人生を過ごしている人達に、いろんな彩りを添えながら、しばしの安息を与えるが如く何気なく咲かせてる花、葉にどれだけ助けられてることか...この世の中に樹木が皆無になった地球を想像しただけで、空恐ろしい気がします。野に咲く何気ない草、小花から何百年も生き続けている大木に至るまで、おいらはこれらの植物と共に共生していることに間違いはありません...裸木の微妙な枝振りを観ながら、情念を押し殺し舞い踊る暗黒舞踏を想像したり、小枝が春に備えて蕾が微かに膨らむ様を見て生命の不思議を感じたり、身繕いしないで勝負している姿に古武士と対峙し、ふと緊張したり、裸木はいろんな表情でおいらに語りかけてきます。
おいおいトランプさん、カードを出すのが早すぎませんか...ちょいと一息ついて、ホワイトハウスの黙して語らない自然体で立ち続ける裸木を静かに観ておくれ...お金のことしか考えていない人種は困ったもんでございます。

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踊る裸木

2017/01/25
【第913回】

山下澄人著「しんせかい」を読み終えた夜に芥川賞が決まった...19歳の作者が、あの倉本聰さんが主宰する、北海道の富良野塾で2年間過ごした30年前の出来事を冷徹な目で捉えた作品である。倉本聰さんのことを「先生」と呼び、住んでた町を「谷」と何度も復唱しながら、自分探しを小説という形で表現した不思議な物語である。作者は目の前にする事実をフィクションに立ち上げたいのだが、上手く言葉にすることが出来ない。その微妙な息遣いがまるで戯曲を読んでるように、こちらの想像力を喚起させてくれる...そこで、作者は過去の自分を思い出そうとするのだが、その過去もどこか曖昧で不確かで答えを出すことが出来ない。それをまるで、その場にいる空気感で言葉にしているところが新鮮だ。作者は22年前の阪神淡路大震災に遭遇し、東日本大震災の事実を目の当たりにして人の生き死にある感慨を抱きつつ、こんな小説を書きたかったのではなかろうか...「先生」と「谷」との間に過ごした時間と居住まいが淡々としながらも内なるマグマがメラメラと感じさせる新しい小説の誕生かも知れない。
なんと言っても、おいらが気にいったのは良くある青春ドラマでも無く、上昇志向皆無の佇まいがほんまによかですばい!己の中にしか「先生」神は存在しないのです...

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裸木と夕陽

2017/01/19
【第912回】

いよいよ明日トランプ登場...これからの世界は何となく第二次世界大戦前の状況に似てはいないだろうか?この期に及んで、世界のあちこちでポピュリズムが台頭し不穏な様相を呈している。トランプには政治的理想、理念が皆無で、集団的熱狂を煽り立て、理性的な議論よりも情念や感情を重視する演説に終始している。あのヒトラーに相通ずるモノがある。アメリカだけではなく、この傾向が世界に蔓延しているのが恐いですな。壁を造り、自国の利益のみを志向する指導者が増えていけば第三次世界大戦も起こりかねない情勢です...そんななか、アメリカの名女優メルリストリープのスピーチは、さすがだと思いました。

この国で最も敬われる地位に就こうとしている人が、障害を持つ記者の物真似をした時のことです。その人物は、真似された記者よりも遥かに強い特権と権力を持っています。それを見たとき、私の心は折れそうになりました。今でも頭から払いのけることができません。なぜならそれは映画の中ではなく、現実の出来事だったからです。
権力を持つ公人がこのような侮辱的パフォーマンスをすることは、人々の生活に影響を及ぼし、また、人々に「自分も同じことをしていいのだ」という認識を植え付けてしまいます。軽蔑は軽蔑を招き、暴力は暴力を煽ります。権力ある者がその力を弱い者イジメのために使ったなら、私たちは皆負けてしまいます。
これはメディアにおいても言えることです

仕事が無くなるかも知れないのに、ここまでトランプ批判発言を堂々とやってのけるアメリカはさすがです。おいらが好きなレディー・ガガも公然とトランプ批判をしています。その点、日本の芸人さんはなんとなく事なかれ主義のところに安住しとりますな。ほんなごつぼけっーとしてたら、この国の若者も戦場に行かねばならない状況がひたひたと押し寄せて来てるのに、今日もあんちゃんねえちゃん呑気にスマホぴこぴこやっとりますし、おっちゃんたちは焼き鳥食べながらたわいもない話で盛り上がってますがな...

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裸木2

2017/01/18
【第911回】

昨日、渋谷に芝居を観に行ったのだが入場料¥10000...芝居の内容はさておいて、おいらの感覚からするとちょいと高くありませんか?この世の中、庶民の皆様が一生懸命働いて一日¥10000なんて言う数字が平均ではなかろうか...一日働いて得たお金が二時間の観劇と等価かどうかは個人差があるにしても、こうやって芝居を創ってるおいらとしては、とてもじゃないけど心苦しく思いますな。こんな高いお金取ってまで芝居創らないかんのかいな...トム・プロジェクトは23年間90本ほどの作品を企画制作してきましたが¥5000以上のお金を頂いたことはありません。消費税が上がったときも、税理士さんに言われました。「上がった分、チケット代に加算していかないと大変なことになりますよ...」そりゃそうだ!経済原理からしても至極当然なことであるし、経営者として当然やるべきだと思うのだが、そんなお金掛けてまで芝居を創る必要があるのか?と、思ってしまいます。限られたお金の中で創意工夫しながら良質な作品が創れるはずだし、それを成し得るのが優れた企画制作者ではなかろうか...人間の叡智は果てしない無限の可能性を秘めているし、それを信じたいと思います。高いチケット代を設定しないと演劇やれなくなったら、おいら足を洗います。観る側も創る側も、無理なく劇場に足を運べる環境で継続できることをモットーに今日もあれこれ思いを馳せておりますばい...

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裸木

2017/01/16
【第910回】

先週の土曜日、下北沢の本多劇場に木の実ナナさんのコンサートに行ってきました。一昨年のトム・プロジェクト「南阿佐ヶ谷の母」の沖縄公演で、大腿部を骨折しながら車椅子で公演を続けたナナさん、その後を心配していたんですが見事な公演でした。2時間休憩無しで歌い弾み、骨折の後遺症を感じさせない復活振りでした。70歳になるのに美脚と笑顔はまさしくショーガールそのもの、55年のキャリアをまざまざと魅せつけてくれました。芸人のしたたかさ、ど根性は半端じゃございませんな...そして、なによりも歌が大好きなことが身体全身から溢れ出ています。美空ひばり、石原裕次郎、越路吹雪さんたちの歌を尊敬しながら愛をこめて歌う姿に、聴き手も思わずうっとりとしてしまう立ち姿に拍手。様々な環境の中から身につけた庶民の哀感を、己の懐にしっかりとしまい込み熟成させ肉体を駆使しながらお客に伝える芸人は、やはり選ばれし民だと思いますな。努力したから出来るモノではございません。人生の諸々を享受する受信器と、人に伝える発信器が優れてないと駄目なんです。だからして、この世の中の若者に言いたい!舞台に立って台詞喋ったり、騒音まがいの歌を歌ったり、汗かきながら狂喜乱舞したから役者じゃありませんことよ...己の限界を早期に気づき、違った人生に軌道修正することも、勿論有りですよ。だって、生きる楽しみ、それこそ十人十色、自分探しにも繋がる大冒険の旅ですぞなもし...

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元気になったナナさん

2017/01/13
【第909回】

今年のトム・プロジェクト最初の作品「萩咲く頃に」がスタートしました。2014年に創った作品です。東日本大震災から3年目、この事実に向き合えるにはそれなりの時間がかかり、なんとか舞台に出来たと言うのが正直なところです。水俣、震災、戦争などなどテーマは重いけど、誰かが声をあげないとなし崩し的社会の流れで人の記憶から薄れていくのが、おいらはどうしても容認できまっせん。芝居も興行ですから、楽しく面白く日々の辛さから逃れられる作品が好まれるのも重々承知の上のことでございます。そんなおいらの思いに共感してくれるスタッフ、キャストの皆さんには本当に感謝しています。志を共有できる芝居仲間がいる限り、まだまだ芝居創ってみようかなと思っていま...本音を言うと、この日本のあらゆるシステムについて呆れ絶望してます。そんな社会に見切りを付けて、おいら歳も歳だし晴耕雨読なんて生活もいいんだが、心身ともに青年だもんで(と勝手に粋がって勘違いしてるかもしれませんことよ)ついつい内なるカルマが頭をもたげ、このまま傍観者でいてたまるか!なんてことになっちゃうんですな...

「萩咲く頃に」1月10日に横浜でスタートしました。5人のキャストのチームワークがすこぶるよく初演に比べてレベルアップしていました。終演後、音無美紀子さんの旦那様、村井國夫さん共々初日の乾杯を、みなとみらいの夜景を眺めながら乾杯しました。2月一杯、中部、北陸を巡業し、3月の下旬に東京公演。今年も、こうやって無事にスタートできたことに唯々感謝です。まだまだ芝居の神さんトム・プロジェクトを見捨てておらんですな...ありがたいことでございます。

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みなとみらいの観覧車

2017/01/10
【第908回】

辺見庸「1☆9☆3☆7」、佐野眞一「唐牛伝」、鳥居歌集「キリンの子」を読了...先ずは辺見庸の圧倒的かつ濃厚な380ページにわたる文体に、彼の遺書めいたものを感じる。1937年に起きた南京大虐殺を軸に、当時戦地にいた父が中国人を殺めたに違いないと言う思いから、当時軍に協力した作家、映画人を次から次にぶった切り。辺見庸の意図は、この国の民がいつも時流に身を任せ狡く立ち回る姿に寛容になれないし、これを今尚引きずっていくこの国の姿に楔を打ち込みたかったに違いない。

「唐牛伝」大阪前市長橋下徹の件で3年ばかり休筆を余儀なくされた筆者の最新作。60年安保当時、全学連委員長だった唐牛健太郎の足跡を地道に取材して、この時代の匂いを醸し出している。おいらは、70年代の全共闘世代であるのだが、共通して言えることは学生運動が持つ純粋性と組織が持たざるを得ない矛盾。結局は巨大なる権力の壁はあまりにも厚く敗北を余儀なくされるのだが、この本に登場する学生運動の闘志の中にも、その後組織に属さず自らの信念を貫き生きた人達を、いろんな人の証言に基づいて丹念に描き出している。その中でも唐牛健太郎は、居酒屋店主、漁師など様ざまな職業を経験しながら、日本列島を北から南へと漂流したデラシネ人生。おいらも似たような人生なので共感できますな...妾の子として生まれた唐牛の女性に対する接し方が愛おしい。

「キリンの子」の著者は母が小学5年の時に目の前で自殺、 養護施設で虐待、中学の同級生の自殺にも遭遇。壮絶な人生のなかで31文字の短歌に目覚め、類い希なる感性で多くの作品を生み出した。頭でっかちで創られた言葉の遊びがぶっ飛んでしまう真に迫るモノがあります。改めて言葉の持つチカラ、魔力、魅力、精霊を感じます。己の言葉を見いだせば人は蘇生し他者にも生きる事の意義を伝えることを出来るお手本みたいな歌集です。

おいらは今年も、あらゆるジャンルの本を読みながら、己の言葉探しの旅を続けたいと思ってます...自宅では好きなジャズを聴き、ちょいとシェリーで喉の渇きを潤いさせながらの読書タイムは至福の時間でございます。

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新春のスカイツリー

2017/01/04
【第907回】

あけましておめでとうございます。

今年も始まりましたな...でも、最近は正月気分も元旦ぐらいで2日からは社会も動きだし、日常感覚に染まってしまいます。普段と違うところは青い空に空気が綺麗なこと。これは大切なことと言うより、普段の汚染した風景はお金と欲望を追い求めすぎて自然の恵みを忘れてしまった代償ですな。もうええやんか...原発も含め利便性の追求をお休みして、のんびり散歩しながら近場の生き物の気配を楽しむ生活ににチェンジしませんか?といっても、日本も含め世界の政治家、企業家は声高にやれ行け!それ行け!と民衆を煽り、不安にさせとります。そこでだ...今年から己の思考、行動手法を見直し自立の道筋を考えてみませんか?ほんまに、政治も行政も企業も市井の人達のことなんかこれっぽっちも考えておりませんことよ。そこに気づかん限り世界はアウトですわ...とまあ、年頭から背筋シャキッとしながらもボチボチいきますわ。

今年もよろしくお願いします。


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大宮八幡宮 元旦

2016/12/26
【第906回】

先週の23日、トム・プロジェクトスタッフと、トム☆トム倶楽部の会員の皆さんと忘年会をやりました。会場は新宿の中華レストランの3階を貸し切っての3時間の大宴会。芝居の興行は、お客様あっての生業でございます。貴重な時間とお金を払って、どんな出し物か分からないのに来て頂くんですからほんまにお客様は神様でございます。ましてや、年間会員になって一年に最低3本は見て貰ってるんですから神神様ですな...一人一言の挨拶の中でもトムの芝居に対する愛情がひしひしと伝わって嬉しい限りです。今年は「砦」「風間杜夫ひとり芝居~正義の味方」「百枚めの写真」「静かな海へ~MINAMATA」「挽歌」5本上演しました。振り返ってみれば5作品に共通してることは、この混迷の時代に世界が喘ぎ呻吟している、平和、環境、家族に関する諸々のテーマが盛り込まれてることである。何も、演劇で世の中を変えるなんて大それたことを考えてる訳じゃないんだが、この垂れ流し見て見ぬ振り状態の国に微力ながら楔を打ちこみたい...己が出来る範囲で声あげんとえらいことになりまっせ!とまあ、一年を総括しながら来年に向けて更なる展開を考えては居るんですが、なかなか読めない世界のとっちらかりにはどんな術策を労すればいいのか?ほんまに心身休まる暇がありませんことよ。そんなことをちらちら考えながらの忘年会、所属俳優のお笑い漫才対決があったり、じゃんけんによる景品獲得ゲームがあったりで無事楽しく終えることが出来ました。今年も残すところ、あと5日でございます。皆さん穏やかな年末、年始をお過ごしくださいね...一年間、おいらの戯れ言にお付き合いくださってありがとうございます。新年は、心新たに4日から夢を吐き続けたいと思っています。

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年の瀬、新宿の夜景

2016/12/21
【第905回】

昨日、神奈川県「杜のホールはしもと」で満員のお客の中で「挽歌」最後の公演を観てきました。11月18日の茅野市民会館の初日から一ヶ月ちょいの長丁場、24ステージ目でした。いつも思うのだが、全国をハードなスケジュールで駆け巡り、事故もなく無事終えることが出来るのは、当たり前に見えながら、実は本当に奇跡に近いことなのです。キャスト・スタッフが病に伏したら、移動中、本番での事故が起きれば即公演中止になることだって十分に考えられるのだが、何事もなく千秋楽を迎えることが出来たことは、この芝居に関わったすべての人に唯々感謝です。おいらは、いつも己の驕りを捨て、森羅万象全てのものに己が生かされてることに感謝しながら日々過ごそうと心掛けています。感謝の気持ちがあれば、いろんな人達、モノが自ずから手を差し伸べて物事が円滑にいくように手助けしてくれます。非難されても、罵倒されても、どつかれても、感謝?そりゃ、おいらだって普通の人間でございます...くそ、この野郎何様だと思ってんだ!と、怒り心頭に発することもございます。ここが勝負の分かれ目なんです、喉元から飛び出しそうな怒りの情念をぐいっと引き戻しおへその下にある丹田に収めるんでございます。丹田とは、気を集めて練る事により、内丹を作り出すための体の部位で気が集まる場所です。丹とは、気エネルギーが蓄積され赤く輝く状態を指し、田とは、その エネルギーを貯める器を指します。おいら、これを知ったのは若い頃、極真空手をやってるときでした。疲れたときの息吹という呼気運動があり、邪気を思い切り吐ききり新しい気を丹田に収めると瞬時にして疲れた身体を蘇生させてくれるんでござんすよ。これを知ってからのおいらは、マイナスの感情(怒り、嫉妬、恨み、怨嗟、憎悪、自棄、破壊衝動など)が噴出しそうになったら丹田に収め、平常心を保つようにしておるんでござんす。そして、いろんな人がいるんだなとお勉強の見本にさせて頂いています。いろんなお人がいるんでこの世の中バランスがとれ面白いんじゃありませんかな...とまあ、能書きはさておいて今年の全公演無事終えることが出来ました。おいらにもご褒美せなあかんと思い夜遅く好きなジャズ聴きながら大好きなスペインワインで乾杯しましたことよ。¡Salud!

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オフィスビルでもクリスマス

2016/12/19
【第904回】

土曜日の京王線の車内での出来事は...おいらはかなり空いてた車両の優先席に座っていました。隣には品のいいおばあちゃん、年季の入った文庫本を読んでいました。おばあちゃんの横のドア付近で30歳前後の若いお母さんが、なにやらごそごそしています。そばには3、4歳ぐらいの男の子がぐずっています。おばあちゃんめざとくその様子を感じ取りながら、バッグの中からポリ袋を取りだし、若いお母さんに渡しました。そして自ら立ち上がり他の乗客に見えないように子供を囲みながら「大丈夫...大丈夫...」と声を掛けていました。おいらも、覗き込むわけにもいかず、どうしたんだろうと思っていたんですが、新宿の駅に着き判明しました。どうやら子供がおしっこを我慢できずに出してしまったんですね。品のいいおばあちゃんの優しさ溢れた手助けに若いママは本当に感謝しとりました。こんな光景を見るたびに、人の優しさがどれほど周りを温かくし、人間って手を差しのばせばいろんな事にまだまだ希望が見えるんだなと思いました。

日本とロシアの領土交渉...プーチンが一枚も二枚も上手ですわ。秘密警察出身の経済マフィアの男とアベちゃんでは格が違いますな。あの何を考えてるか分からない鉄面皮顔で睨み付けられたら領土返して下さいな!なんて言えまっせん。お金だけ湯水のごとく出させて、「ありがとさんアベちゃん、あんたはほんまにええ男や...」なんてあべこべにならんといてや...あの鈴木宗男のおっさんもなんだか嬉しそうな顔してアベちゃんをヨイショしてるんだが、おめでたいおっさんやな...一時は泣きながら国を憂う政治家として己の無罪を主張してたおっさんの出番なんだが、あまり調子こいてると又、どつかれますからほどほどにしときや...世界は混沌、一寸先は闇でございます。

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街はクリスマス一色

2016/12/16
【第903回】

「挽歌」旅公演中ながら、来年1月10日から始まる「萩咲く頃に」の稽古が始まりました。この公演は2014年に創った作品です。「挽歌」と同じく、東日本大震災に関わる作品です。作・演出のふたくちつよしさんは日常を淡々と描く、さしずめ演劇界の小津安二郎というべき作家ではなかろうか...おいらは、地味ながら人間の機微を細かく優しく語りかけてくれるふたくち節は好きですね。そして何よりも音無美紀子さん、大和田獏さんはじめ若手3人のチームワークが抜群です。この芝居は、地震を通じて壊れかけた家族が再生する話ですからキャストの信頼感は、すなわち芝居の仕上がりにも影響してきます。稽古始めの本読み、おいらも初演よりも更にグレードアップした作品になることを確信しました。

それにしてもだ!沖縄本島沖の海上で12月13日夜、アメリカ軍海兵隊の輸送機オスプレイが海上に墜落、不時着した事故を受け、在沖縄海兵隊トップが「感謝されるべきだ」と発言したと報じられた。住民に被害が出なかったから...なんじゃい!これがアメリカの常識だ。沖縄からアメリカ基地がなくなることはないだろうし、政府も儀礼上の抗議アピールをしたに過ぎない。この沖縄の置かれた立場どうすりゃいいんだ...結論から言えば、おいらも含めて日本の国民はみな狡いとしかいいようがない。残念ながらどうにも出来ないんだから...翻って言えば先の大戦も、東日本大震災の原発事故も、政治が停滞しているのも、この国の人達の怠慢と諦めと保全、すなわち狡さの結果だと思う。やはり、この国に住んでいる以上声をあげなきゃ駄目だと思う。今の国会の惨状目に余るものがある。なんでんかんでん多数の力を借りての強行採決の日々...これも国民が選挙で選んだ結果、しかも半数近くの人達が棄権。にんまりほくそ笑むのは政治家、大企業の資産家ですぞ...どうにかせんと、どげんもならんですばい!

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新宿南口イルミネーション

2016/12/14
【第902回】

今日もシリアの虐殺、世界各国のテロの報道、世界の平和はいつになったら来るんだろうか...おいらは、いつになっても来ることは無いだろうと思っています。人間のあくなき欲望は尽きることがありません。お金、権力を手にしたものはそれを守ろうとします。それに対する人達が必ず出現し争いになります。それにしても殺戮までにいたる人の心の崩壊に心が痛みます。おいらも沢山の芝居を創ってきましたが、この過程の中でも小さな争いはつきものです。そんな時は、争いをこちらが降りれば全面戦争には至らないはずです。こんな大変な世界の状況のなか、日本での生き方は、単なる比較では判断できない面もありますが、随分恵まれてる環境だと思います。がしかし、感謝の気持ちも持てず、自分の正義?もしくは感情で我を貫き通す人がいるのも事実です。そんな時、おいらはいつも思います。相手に指さし責めるのではなく、己に指を向け、おいらまだまだ勉強せねばと...悪しき感情に留まってると悪魔がすり寄ってきますぞ!くわばらくわばら...

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もうすぐ新年だにゃ~

2016/12/12
【第901回】

この季節「枯葉」をよく聴きます...「枯葉」と言えばシャンソンなんですが、おいらはジャズで聴きます。キャノンボール・アダレイのサックス、ビル・エヴァンスのピアノ、若いところでニッキー・パロット。この名曲をこれらの名手が様々なアレンジをしながら演奏してるのがたまらんですばい。先日も枯葉で広場の一面を、まるでクレーが描く作品にしてしまった公園を散歩しながら、思わず枯葉を口ずさんでしまいました。そのときそのときの気分でピアノ風になったりサックス風になったり、その瞬間は枯葉を舞台にしたおいらのひとり芝居です。自然がお膳立てしてくれた至福に時間に感謝です。

今日12月12日は漢字の日らしいです。「1(いい)2(じ)1(いち)2(じ)」=「いい字1字」の語呂合わせです。漢字は、おいら大好きです。この歴史と意義深い文字は本当に深いです。筆で遊んでいるうちに漢字が絵になっちゃう面白さをいつの頃からか味をしめ、いまでもひとり遊びをしています。ちょいとした遊び心で、世界は果てしなく広がっていきます。お金もかからんし、今時高いお金払ってスマホいじってる人達に教えてあげたいですな。遊び心と想像力、これが創造の両翼ですぞ皆の衆。

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枯葉

2016/12/09
【第900回】

昨日、亀戸文化センターに「挽歌」を観に行ってきました...芝居は見違えるほど進化しています。役者の情動が激しく交錯し、よりドラマチックになっていました。俳優の貪欲な表現への拘りが芝居を立体的に構築していくことを改めて感じた次第です。

終演後、楽屋に行こうとして劇場の通路を歩いていると、一人のご婦人がハンカチで顔を覆い咽び泣きをしていたので、おいら声を掛けました。すると65歳くらいのご婦人一言「帰りたい...」おいらすかさず「福島の方ですか?」と問いかけると「浪江町...」ぽつり答えてくれました。おいら、もうそれ以上話しかけることが出来ませんでした。江東区は福島からの避難民を沢山引き受けています。多分、区の広報を通じ今回の芝居を観劇したに違いありません。この芝居は、大熊町から同じ福島県の会津若松に避難してきた人達の、故郷に対する愛着を描いたものです。このご婦人が、大熊町と浪江町がダブったのは至極当然だったと思います。平成28年11月10日現在、全国の避難者等の数は、約13万4千人、全国47都道府県、1,102の市区町村に避難生活を余儀なくされています。

おいらは又しても声を大にして言いたい。オリンピック処じゃないだろう!今年起きた熊本地震後の被災地もままならないことも含めて、もっとメディアは現状を把握し報道しろってわけだ。韓国の大統領のスキャンダルばかりおもしろおかしく報道し、肝心の被災者のことは過去だと言わんばかりの、この国の在り方に異議申し立てをしたい。

そして、鹿児島の川内原発の再稼働、原発再稼働反対で当選した三反園知事あんたはなんじゃい!人は権力を手にすると簡単に寝返る良い見本です。原発の輸出、再稼働の動き、カジノ、この国は知らぬうちに汚染に塗れたしまりのない列島になりますぞ...

今も、昨日の劇場のご婦人の悲しみ、悔しさをこらえながら涙する顔を忘れることが出来ません。

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夜空と紅葉

 

2016/12/07
【第899回】

本日、所用でふらり上野に行きました...上野は東北の人達の心の故郷です。東北からの集団就職、出稼ぎに上京したときの終着駅です。夢破れ故郷に帰るときの出発駅でもあります。おいらは九州博多の出身だから、あまり上野は馴染みが薄かったのだが、美術館、アメ横なんかに来たときに、上野独特の雰囲気になんだかほっとした気分にさせられました。どこがって?そりゃ、とっても田舎くさくて気取りがないので、安心して心身を解放されます。この地で気取ってると、浮いてしまっておのずからはじき飛ばされてしまいます。この地でお洒落してる人達は、お洒落を通り越して奇抜奇天烈なファッションが多いですな...昔、映画でもあったな、俺は田舎のプレスリーみたいな感じかな。なかなか個性溢れて面白い人達を見ることが出来る...あと、上野動物園にもよく来ましたな。若い頃、芝居やってるときに役作りに悩んでるときにヒントになるのが動物たちの一挙手一投足でございました。それはそれは、動物たちの表情は見事なものでした。暫し見つめ合っているうちに表現がなんたるものか?俳優養成所の小難しい理論をぶつ先生よりも、遙かに優れた教師でございました。

東京の都市も大きく変貌はしているものの、ここ上野はそれほどの変質もなく、昔の良き下町の拠点としての佇まいを残し続けて欲しいもんだと思った次第です。

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上野の西郷さん

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不忍池

2016/12/05
【第898回】

昨日で「挽歌」東京公演無事終了しました...今回の6ステージのうち5ステージを観たのだが、全て違うところが、さすがライブでございます。同じ事は決して出来ません。舞台の上は表現者にとって戦場であり、宝を探し出す宝庫でもあり、時には己の貧しさを指摘され奈落の底に突き落とされる非情の場でもあります...そんなこんなを思いながら、日々見続けることは大変スリリングなひとときです。

先日、著名な評論家A氏から芝居の感想文が送られてきました。

 

昨日(12月1日マチネー)の「挽歌」は素晴らしい作品でした。私は夢幻能を連想しました。林四郎(高橋長英)がシテ、他の人々はワキです。夢幻能ではシテは死者なので、事件の証人として最後の語り部になりますが、同時に現在の時間には決して関わってくることがありません。ところが「挽歌」ではシテは死者と生者の両方の役割を担って、この矛盾を鮮やかに解決しています。まことに驚嘆いたしました。

 

いやはや、演劇は見る人の視点でいろんな思いを想像させるんですね。これが芝居の面白いところです。軽佻浮薄な作りもんに夢中にならないで、たまには劇場に足を運び、己の想像力が錆び付いていないかどうか点検してみてはいかがかな...

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新手の宣伝(本日新宿にて)

2016/12/02
【第897回】

「挽歌」東京公演2ステージが終了しました...おいらが最初に観劇した長野県茅野市での公演から格段に良くなっていることは確かだ。まさしく芝居は生き物である、誕生した作品が観客の目に晒されることにより、俳優を多くのことに気づき新たな発見をする。だから役者は止められないのである。観客の声に出さない息遣いを微かに感じながら、表現の奥深さにわななき震え、さらなる表現の高見を目指す。俺は今、舞台で生きてるんだ!こりゃたまりませんばい...こうやって魔物の世界に魅せられ人生を棒に振る人も出る恐ろしい世界でございます。その修羅の世界を見たくてお金と時間を労してお客様はやってくる...

今回の芝居は、東日本大震災に被災した福島県大熊町の人達の物語。あの大変な状況にあった人達の悲しみ、思い、希望、不安、絶望をフィクションの世界でどれだけ現実に肉薄し、現況を変えうるエネルギーを生み出し得るか、そこが作品の正否を決める。

芝居がはね、出口に向かうお客の表情を見るのもプロデューサーの大切な仕事。芝居の温度がそのままお客の温度として、こちらに手に取るように分かるのが面白い。さてさて、明日はどうなることやら...芝居はまさしく博打でございます。

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今年もこれが見納めの彩り

2016/11/30
【第896回】

韓国の大統領が遂に辞意を表明しました...先週の土曜日新宿の東口アルタ前の広場で在日韓国の大学生が辞任を求めて集会を開いていました。鳴り物入りの激しい抗議風景に、なんだか熱いものを感じました。あの全共闘世代が日々抗議活動をしていた新宿騒乱が頭を過ぎりました。広場に集まり喧々諤々、右翼も左翼も口角泡を飛ばし時間を忘れ、時の政治の功罪を熱く語り合っていました。ほんまや、一人一人が声を挙げ行動せんとえらいことになっちゃいますがな。国会では多数を占めた政党が、なんやらこんやら強行採決して法案を通しています。つい最近は高齢者にかかる医療費の負担増、年金生活者にも問答無用でございます。おいら前から思ってるんだけど、年金って老後のために積み立てたお金じゃないの?それを収入とみなす考え方自体がおかしくありません?アベちゃん堪忍してや、アベノミクスなんてとっくに崩壊してるのに、日銀のクロちゃんともどもほら吹き大賞あげたいくらいですぞ。鹿児島の川内原発も再稼働に歯止めを掛けられず、オリンピックの会場問題もあのモリちゃんの顔見る度に胡散臭さが拭えませんですな...

傍観者でいると、既得権だけで右往左往してるオッちゃんたちに思うようにされちゃいますがな...新宿東口広場で朴槿恵大統領の写真をパネルにしたボードに、NOのシールを貼ってくれませんかと頼まれたので、朴さんのおでこ辺りにぺったんこしてきました。

896.jpg起て飢えたる者よ...

2016/11/28
【第895回】

我が故郷博多でまたもや陥没...ありゃ、ここは嘗て少年時代過ごしたとこじゃなかですか。新聞に載っとりました。末広通り、明治町通り、人参通り、懐かしか...つい最近までは、博多区博多駅前3丁目なんとかかんとかって味も素っ気もない町名だったんですが、いつの間にか昔の町名が通り名として復活しとりました。その途端に陥没騒ぎが発生し、あちゃ昔の末広町の住民が異議申し立てをしとるんじゃなかろうかと心配しとります。何の異議申し立てじゃろうか?おいらが思うには、あまりにも進化し発展する都市の狂躁に「もうちょつと静かにしてくれんね...」って言うとる気がしますばい。おいらも先日、この辺りをブラキヨシしたんだが、そりゃ昔の面影がないどころか、全く別物の新開地になっとりました。地元の人間と旅行者が楽しそうに博多駅周辺を楽しそうに散策し、それはそれでいいんだが...物も金もない時代で肌擦り合わせて必死に生きてた人間にとっては、肌擦り合わせて生じる人として熱さ、温かさが無くなってきてることに地底から苦言を呈したのではなかろうかと思っとりますばい。戦後の厳しいご時世と現在を比較するのも時代錯誤だとは思いますが、どうか地の底に眠っている有象無象の魂の叫びにも少しは耳を傾けてくれてもよかろうもん...と思います。無視すると、又、腹かいて地底から突き上げくらいますけん、よーく考えてくださいな博多の皆の衆。

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博多駅前陥没現場

2016/11/24
【第894回】

紅葉と初雪...自然の神さんも粋な計らいでございますね。しかも54年振りというもんですから、これは何かありますぞ...脅かしではなく、つい先日の地震も含めて、忘却の民に対する重大な警告です。トランプの出現も含めて、この時代の大きな転換点を肝に銘じて考えを変えないとえらいことになっちゃいます。

今日も、真っ赤に染め上げた一葉一葉に、薄化粧のごとく降り積もる小雪を眺めながら、風雨に晒されながら、この秋の終わりに、そっと枝から離れる少しの時間の身支度に思えました。華やかな彩りで目を奪い、盛りと共に日々の風の訪れとともにひらひらと散っていく様に、改めて日本の国の民で在ることの喜びと感謝の気持ちが溢れてきました。

何度も、生きてる限り発言し続けたいと思います。利に走り自然を破壊する輩には徹底して闘う所存でございます。

 

うらを見せおもてを見せて散るもみぢ  

               良寛

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紅葉と初雪

2016/11/21
【第893回】

長野県茅野市に行ってきました...いよいよ「挽歌」の幕開きです。初日を迎えた茅野市民会館の建物にまず感動いたしました。茅野駅からの直結で途中に図書館があり、美術館も併設してあり、外観のモダンな中にも温かさがある会館です。信州の山々との風景にも無理なく溶け込み、いっぺんで気にいっちゃいました。聞いてみると、この建物を設計した古谷誠章氏が業績を称えられ、2010年度日本藝術院賞を受賞されたとのこと。劇場内の機構も素晴らしく、芝居が始まる前から期待感高まる雰囲気でございました。

さて、芝居でございます...芝居をプロデューサーの立場で観てるといろんな複雑な心境に駆られるんですよ。先ずは、芝居の出来不出来が全てなんですが、芝居もチームワークが大切、初日を迎えるまでの稽古場での人間関係、スタッフとの相性など、これらがスムーズにいかないと長期にわたる公演に破綻が生じます。この点をしっかりと見極めアドバイスしないと、緻密に創りあげたものがガラガラと崩れ落ちてしまいます。ここんところがプロデューサーの腕の見せ所でございます。簡単に言えば、アメとムチでしょうな...終演後の飲み会での発言も大切です。芝居がはね気持ちよく一杯飲んでるのに、他人の家に土足で上がるような発言はいけませんことよ。そんなかんなで、一見、能天気にも見えがちなおいらも結構神経使ってるんでござんすよ...

まあ、とにかく幕が開きました。12月20日までの千秋楽まで事故もなく無事終えることを祈るのみです。

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あずさ21号車窓からの夕景

2016/11/18
【第892回】

おっと!久しぶりに、おこりんぼう熊嵐おやじが登場しました、いつもは井の頭線高井戸駅ホームで暴れまくっているんだが、今日は浜田山から乗り込んできました。座席に座り、ぼんやりと車窓を流れる紅葉を堪能してたのに...いきなり噛ましました。

「俺、税金払ってるのに...くそ!」と怒鳴りながら1発目のどすん(巨体を振るわせながら四股を踏むんでございます。次ぎに「この野郎、あの野郎...ちくしょう!」2発目のどすん、車内の底板に穴が開くぐらいの剣幕...おいらの足下には、まるで地震が発生したごとく伝わって参ります。思わずにやりと熊嵐の顔を見ると、すかさず「この野郎、何がおかしいんだ!」とおいらを睨みつけました。いやいや、車内で乱闘騒ぎになっちゃ困っちゃう...殴ってきたら伝家の宝刀、極真空手の手刀受けで捌き、すかさず前蹴りで熊嵐のキンタマめがけて一発で倒さねばなりません。おいら変わらず平然とニコニコしてると、熊嵐なにを察知したかは分かりませんが、おいらから視線を外し若い娘さんに矛先を向け「どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって...」馬鹿にしとりませんがな。あんたが勝手に騒いで、他人様に迷惑掛けてるだけでしょうが...娘さん、さすがに恐ろしく隣の車両に移りましたですよ。

それにしても、最近はおかしな人が街に溢れています。このストレス社会のなかで平常心を保ちながら生きていくことが困難になってきています。こんな時代こそ、遊び心を失わず呑気に楽しく過ごさんといけませんばい...

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お見事でございます

2016/11/16
【第891回】

おいらが先に真っ赤っか...私も黄色になっちゃうわ...紅葉戦線ただいま競うように先を急いでいる状況です。その年々の気象条件により微妙な彩りを見せてくれる木々に、唯々感謝し驚いています。特に大都会の排気ガス、エアコンの外気など汚染まみれの中で、よくぞ耐えながら色づく街路樹には頭が下がります。そんな樹木に、おいらは手を添えありがとう!本当は抱きしめてあげたいけれど、そんな姿道行く人が見たならば、間違いなく変態だと思いますがな...新宿御苑では人目を盗んでおいらはやりまっせ!大木はお手々がまわらず妙な気分になっちゃいます。皆さんもやってごらんなさいな...なんでんかんでんチャレンジしなはれ!今まで固定概念でがちがちになっていた心と身体が解放され、ハートに羽が生え心軽やかに大空を飛翔し、見えなかったもの、感じにくかったものが手に入るんでございます...しなやかな精神でいると、向こうから勝手に自由な時間と空間が飛び込んでくること間違いなし!度が過ぎると、しなやかどころか、しなびてきますから要注意...

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紅葉進行中

2016/11/14
【第890回】

伊勢に行って参りました...太陽を神格化した天照大御神を祀る内宮と、衣食住の守り神である豊受大神宮を祀る外宮を要する神さんが宿る聖地。いやいや鬱蒼と茂る木々は皆神木でございます。一歩足を踏み入れると、精霊なる空気が支配し、なよっとした心身が一瞬にしてしゃきっとしますがな...おいらも世界のあっちゃこっちゃ宗教に纏わる聖地に行きましたけど、こんなにしゃきっとしたのはお伊勢さんだけですがな。さすがに日本の神さんは違いますな!キリスト、イスラムいろいろ神さんありますけんど、この伊勢はまさしく自然と共生しながら神さんがいるんだなということを実感させてくれはるところどっせ!要は世界が開かれ解放されたところに神さんが宿るってことを証明しとります...巨大な神木はおいらにいろんな事を語りかけてきます。おいらもそれを受け取り一晩酒を飲みながら思考し甘受いたします。そのときのアルコールは清浄剤としての役割を果たしているんじゃないかしら?と思うくらいの酔い心地なんですな。昔の人が生きてる間に一度でいいからお伊勢参りをして死にたい!なんて気持ちがよく分かります。それも何日も歩いてやってきたんですから、そりゃ大変なことでございました。それに比べると東京から約3時間で来れるんですからありがたや!
でも、この内宮、外宮以外はなんだか静かなというより活気が無い街ですな...外宮の近くに古い民家を改築したライブハウスがあったので、ちょいとふらりと入り素敵なママさんと話をしたんですが、この伊勢市の役所の方々頭が固くて文化的なところにあまり興味を示さないそうな...どこも同じやな。生きてるうちにどげんかせんと何も変わらんし、つまらん人生に終わってしまうがな...いいものは守れ!つまらんもんはぶち壊せ!己の中に革命をおこさん限りなんも変わらんのじゃ!と、伊勢の神さんが言うとりました...

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内宮 正門

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外宮

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神木

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ライブハウス

2016/11/11
【第889回】

トランプ新大統領誕生...世界は、もはや収拾のつかない状態になっとりますね。アメリカの民主主義自体が白日の下に晒された気がします。だって、平和を唱えながら核を持ち世界各国に武器を輸出し世界のお巡りさんを演じるアメリカってまさしく矛盾そのものです。平和すらアメリカ帝国主義の商品に感じてしまいます。既得権で動いている政治、行政に市井の人達がNOを示した選挙ではなかろうか...それにしても選挙後のトランプの態度、途端に優等生になっちゃってこの人おもろいな。この人ははったりかまし、三文役者と思いきやなかなかの演技力でしたな。それに騙されるアメリカ国民もたいしたことありませんな...アメリカの著名なアーチストのほとんどがクリントンの支持を表明したにも拘わらず、負けたのは余程クリントンは嫌われ者だったんですね。エリートコースまっしぐらの人生に、冷水をぶっかけたかったのでしょうね。そう、上手くいかないよ!女性初の大統領になって、既成の路線で国が変わるわけないでしょう!何か変えて欲しい...輝かしいアメリカもいまやどんづまり状態、もしやトランプで大変革が起こるかも知れない?

おいらの予測は悲観的なもので、そうは問屋が卸さない世界の状況です。打開策は、世界でいちばん貧しい大統領ホセ・ムヒカが講演で語った世界を変える4つの教訓を実行するしか手はありませんな。

1,消費主義に支配されるな

2,歩き続けよ

3,同じ志を持つ仲間を見つけて闘争せよ

4,自分の利己主義を抑えよ

世界の皆の衆、はたして実行できるかな?

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紅葉中半

2016/11/09
【第888回】

今日は寒いわ...一日一日、秋らしくなってきました。季節も出番を今か今かと待ち構えてるもんです。昨今は天候不順で、なんだか春さんと秋くんが寂しそうな顔してますね...性別で言うと、何となく春が女性で秋が男性みたいに感じません?春の爽やかさと、秋の男の背中の寂寥感から、おいらの独断と偏見で決めました。その点、夏と冬は両性具有かな?なんだか男と女を行ったり来たりしてる感じがしますがな。そのせいか世の中もユニセックスで溢れております...それにしても、日本の四季は本当に美しい。世界で一番の豊富な季節を持ち得た贅沢な国でございます。本当に感謝せねば罰があたりますぞ...なのになのに、森林はばっさり、田畑はマンション、海は埋め立て、道路はすべてアスファルト、大気汚染などなどお金のため利便性のために破壊しまくってます...深まりゆく秋の風景を嗜みながら、あらためて自然の大切さに感謝したいものです...

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紅葉半ば

2016/11/07
【第887回】

先週の週末もバタバタの日でした...土曜日は福間健二さんの5作目の映画「秋の理由」を観てきました。福間さんとの付き合いも40年近くなるかな...今は亡き博多の中村兄弟が出版していた同人誌「鷽」(うそ)においらと同じく一文を投稿していた健二さん。中村兄弟の拘りが色濃く出ていた雑誌でありました。好きになると徹底的に掲載し、嫌いなやつはそれはそれは人間ではないくらい罵倒しとりました。おいらも福間さんも気に入って頂き好きな文章最後まで掲載して貰いました。その後、福間健二、恵子さんが発刊した「ジライヤ」にもおいらのエッセイを最後まで掲載してくれた。健二さんは現代イギリス詩の研究者でもあり、萩原朔太郎賞と藤村記念歴程賞をW受賞した詩人でもある。今回の映画も詩人らしき映像である。音楽に頼ることなく、シンプルな台詞のやりとりと、抑制した俳優の表情から観客の想像力に訴える作品である。この映画を観ながら、フランスから始まった映画運動ヌーヴェル・ヴァーグで数々の佳作を創ったジャン=リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォーの作品を想い出しました。過剰な表現が氾濫する昨今、健二さんの作品が若い人たちの心を捉えているのも分かる気がする。
昨日は、友人の歌手・紀藤ヒロシ君の歌手生活35周年記念パーティーに呼ばれ行って参りました。小さい身体でよくぞ頑張りました...風間杜夫以下7人のゲストの方達がお祝いの歌、芸を披露して2時間半濃密な時間を過ごすことが出来ました。連日連夜の飲み会でおいらの身体もパンク状態でございます。こんな無茶やってみんな死んでいくのでございますから、この年になったら自己管理しないとほんまに恐ろしゅうございます。ゴールは見えては居るんだけど、これまた、ある程度納得した幕の閉め方せんとダンディじゃありませんな...今日、明日は休肝日だぞ!強い意志で望みます...

秋の理由  福間健二

この世界には

うつくしいことがいっぱいあって

不意打ちの、美しい目から

秋がはじまる

わかってはいるが

うっかり、わたしは

いろいろな通路に自分の登場しない夢を落としてきた

※秋の理由の詩の始まり部分を抜粋

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秋の理由

2016/11/04
【第886回】

遅まきながら芥川賞受賞作「コンビニ人間」読了...この時代に相応しい小説かな?作者、村田紗耶香さんは現役のコンビニ店員。自らの実体験に基づいて執筆したであろうお話しはなかなかのものだった...いろいろな人が、同じ制服を着て、均一な「店員」という生き物に作り直されて行くのが面白かった。その日の研修が終わると、皆、制服を脱いで元の状態に戻った。他の生き物に着替えているようにも感じられた...このコンビニの中の匂いに心身ともに侵され、店内が自らの解放区になっていく様は、まさしく資本主義社会の縮図である。確かに、今の社会に蔓延るコンビニ、スタバ、ドトール、スーパーなどの画一的な店の配置、気配は個性を喪失させ、人間本来の様々な感情を無味乾燥にしてしまう装置が巧みに仕掛けられている。資本を持っている者の権謀術数は凡人の思考を幾重にも秤にかけ、おしなべて大衆を平均化していく...そんなことはへっちゃらでございます。この作者は、そのからくりを実体験の中からさらけだすために文学を選択したのかもしれない。...気が付いたんです。私は人間である以上にコンビニ店員なんです。人間としていびつでも、たとえ食べていけなくてのたれ死んでも、そのことから逃れられないんです。私の細胞全部が、コンビニのために存在しているんです...おいらも旅をしてふと、お酒やら水、カップラーメン欲しくなる時いの一番にコンビニが頭を過ぎります。おいらの細胞もコンビニ菌にじわじわと侵されてるのかも知れませんな。コンビニがないと生きていけない世界が訪れるかも知れませんな...

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会社ベランダからの夕景

2016/11/02
【第885回】

昨日、東住吉小学校の同窓会に出席してきました...皆、古希を迎えたというのに元気一杯ですばい。世話人をしている村田さんが持ってきた懐かしい写真を手にして55年前の話で盛り上がりました。この日は違うクラスとの合同同窓会、その中の二人の女性が突然おいらに語りかけてきました。「学芸会で、こぶとりじいさんで良い方のじいさんやった岡田くんでしょう...私たちは後ろの方でウサギさんやってたよ。」おいらもびっくりしましたばい。そういえば学芸会で主役に選ばれ記念写真でこぶつけて中央で写っていた写真がありましたな...何故、おいらが主役に選ばれたのか、今でもよく分かりません。そんなに目立ちたりが屋でもなかったし、お金で役を買うほどの家でもなかったし、なんでやろ?そんなこと考えてたら、一人の女性が「可愛かったもんね...」そうかな、そんなことも思ってもいませんでしたばい。それにしても、あれやこれや、よく覚えてるもんだと感心いたしました。おいらは学校のことよりも、新聞配達、おきゅうと売り、氷配達、郵便配達などなど校外活動の方がよく覚えておりますばい。学校の勉強より社会勉強のほうに興味があったんですな。そりゃそうでしょう...戦後の街には大衆のとてつもないエネルギーが充満しとりました。学校では学べない人間学があちこちに転がってるんだから拾い集めては、己の中で勝手に楽しんでました。その中でも、社会から疎外されたアウトローの人達のミステリーに惹かれていきました。そうなんです、人生なんてミステリアスだからこそ面白いんじゃございません。学校で教わるもの鵜呑みにしてるから社会のトップに立つ人達、ことごとく想像力欠如のコントロールしか出来ない世の中になっちまったのかな...夜遅く塾帰りの子供たち見るたびに可愛そうに思えてなりません...いやいや、余計なお世話かもしれませんな、いい学校に入って、一流企業で働き、子供が出来、理想の家庭で成功双六上がりとほとんどの人が思ってるんですからね...いらんこと言いしゃんな!
それにしても、博多の魚はうまかですばい...

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黒ムツの煮魚

2016/10/31
【第884回】

先週末、久しぶりに留守晃さんの歌を銀座の老舗シャンソニエ「蛙たち」で聴いてきました。
トメちゃん、歌を創りだして40年になる...トメちゃんいわく己の魂が言葉、メロディを紡ぎ出しているそうな...この日も若々しい姿で登場しました。さすが20年前、『ミス・サイゴン』日本初演のトゥイ役を務め、その後も『レ・ミゼラブル』のアンジョルラス役などで大活躍した俳優さんです。しゃべくりは上手いし、表情も豊かです。特徴ある声もしびれます。いろんな体験と人間観察から生み出した言葉には、味わい深いドラマがぎっしりと詰まっています。絵も上手いし(トム・プロジェクトの作品「風間杜夫一人芝居」のチラシ・ポスター、「だいだいの空」の劇中の絵も提供いただきました)本当にアートのために生まれた男だと思います。おいらはトメちゃんにもっと強気に積極的にいかないと!と言ったことがあるのだが、シャイなトメちゃん、あまり欲もなく淡々と好きな歌を創り気が向いたときにライブに顔を出し、気が向くままに絵筆をとり遊び心を自由に操りながら楽しんで居るような感じがするのだが...いやいや真のアーチストは創作の過程、苦悩は見せないもんでございます。トメちゃんの繰り出す言霊と音は半端じゃございません...おいらがトメちゃんの創った歌の中で一番好きな「休日」この日もうるるんと来ちゃいました。一人の男が生きてきた軌跡が、この歌の中に見事な作品として結実しています...まさしく表現とは、その人の生き方そのもんですな。

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留守晃自作のチラシ

2016/10/28
【第883回】

昨日、劇団チョコレートケーキの「治天ノ君」再演初日を観劇...3年前の公演では多くの賞を受賞し一気にブレイクした。なんたって謎に包まれた大正天皇を題材にする発想が吃驚仰天でございます。天皇を扱った作品は、この世ではタブー視された歴史がある。天皇を神と敬い、少しでも天皇に対する侮辱行為があれば、直ちにテロに走る輩が現存するからである。この話を、劇団から企画として聞かされたとき、おいらは大丈夫かいな?と心配した記憶がある...ところがどっこいである。劇作家の古川健が見事な人間ドラマとして書き上げたのである。そして気鋭、日澤雄介の統一感ある演出力で緊張感溢れる2時間20分の芝居に仕立て上げた。3人の劇団員以外の役者も皆素晴らしい。40歳前後の人達が、この時代、この世界を分析、調理し舞台劇として提出した勇気と努力に乾杯!
今回は、国内8都市、ロシア3都市、27ステージの旅公演を経てのシアタートラムでの公演。満杯の観客の中で、堂々とした立ち振る舞いでの役者陣を観ながら、場数と賞賛で人は自信を持ち大きく成長していくんだなと改めて思いました。
芝居が始まる前に、三軒茶屋にあるディープゾーンを散策。おいらは何故かこんなところを覗くのが好きなんですね...何故かって?そりゃ人の匂いがするからでござんすよ。昨日行った劇場も近代的な建物の中にあり、街はことごとく近代という名のもとに昔の人の生きた証を消滅させようとしています。無味無臭の空間から逃れ、古い建物が建ち並ぶ小路を歩くと心もほっこりしてきます。こんなところで今夜も熱燗でぐいっとやりたいものですな!

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三軒茶屋ディープゾーン

2016/10/26
【第882回】

台湾が2025年までに原発を0にする声明を出した...なのに、この日本は政府、民進党含め動きが鈍い。東日本、熊本に続き鳥取でも大きな地震が発生したにも拘わらず、原発廃止の討議さえ行われていない。こんな不思議なことがあるのが摩訶不思議...テレビ、新聞などでもあまり目立った露出がないし、国民側からの大きな働きかけがないという情けなさ。もう一度、東日本大震災なみの惨状を見せつけられないと心も身体も反応しないくらい鈍感になっちまったのかな...昔、過激な論客が言ってたな、この国は全てをぶっ壊さない限り気づかない不感症民族だ!そうなんです、危機意識がかなり低いなんて言ってるうちに日本沈没なんてことになっちゃうかもね。
そんな呑気な人達を覚醒させる意味でも、次回作「挽歌」は大切な作品になります。現在、錦糸町の稽古場で6人の精鋭が稽古中。なかでも昨年2月に古川健作、日澤雄介コンビで創ったトム・プロジェクトの作品「スィートホーム」で第50回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した高橋長英さんが演じるホームレス歌人に注目。原発が引きおこした事実の重みに演劇がどこまで拮抗できるか...
水俣に続いて、またしてもトム・プロジェクトは問題作にチャレンジしています。誰しもが避ける難題に、敢えて戦いを挑むことこそ今を活きるニンゲンの在るべき姿じゃございません。

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秋景色

2016/10/24
【第881回】

週末も多忙な日が続きました...土曜日には今回「静かな海へ」に出演して頂いた永島敏行さんの還暦と芸能生活40周年を祝う会に出席してきました。南青山の素敵な空間でとってもあたたかい会でした。会場で流された高倉健、若山富三郎さんなんかと共演している映像を観ながら、永島さんの若い頃の無骨で純粋な表情が印象的でした。おいらが印象に残っているのは映画「サード」「遠雷」かな...「遠雷」を監督した根岸吉太郎さんの祝辞が素敵でした。この映画での土着性を、その後表現者として生活者として両立継続している彼に乾杯!と述べてました
日曜日は、首都圏演劇鑑賞団体第31回定期総会に浦和まで行って参りました。演劇をこよなく愛し、演劇鑑賞運動を通じて、平和で文化的な社会を...そうなんです。おいらはこの方々に素敵な作品を提供しなければならんのです。「静かな海へ」は、その期待に答えることが出来たんじゃないかな。10月22日(土)朝日新聞の一面の名物コラム「天声人語」に芝居のことが掲載されてるんじゃありませんか!ここの記事は朝日新聞の顔みたいなものです。芝居関係の記事が掲載されることはまずありません。その一部紹介しますね。

...その細川医師をモデルにした創作劇「静かな海へMINAMATA」を東京都内で見た。主人公の医師は手足のしびれや言語障害などの症状に苦しむ患者たちを診て、究明に乗り出す。工場排水を連日与えたネコに同じ症状が現れ、衝撃を受ける▼「ネコの実験を本格化させたい」と申し出るが、チッソ幹部から「わが社の見解に合わない」と拒絶される。真相を明かせないまま、60代で引退した▼娘や若い環境学者に説得されて心が揺れる。第2の水俣病を新潟の現地で目の当たりにして、患者側に寄り添う決意をする。戦時中からずっとお世話になったチッソへの恩義と、医師としての良心のはざまで苦悩する姿には胸を打たれた...

今日が横浜での最後の公演。これで終わりではなく、再演してまだ見ぬ観客にお届けしたいな!呼んでくれれば地の果てまでも行きまっせ...といっても、アザラシちゃんシロクマちゃんじゃわからんし、あくまでも人様がいらっしゃるところですよ。

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秋の公園

2016/10/21
【第880回】

昨日で「静かな海へ~MINAMATA~」東京公演無事千秋楽を迎えることが出来ました。
この水俣をなんとか作品として舞台化できたこと本当に嬉しいです...誰かがやるだろうではなく、生きてる人が、こうやって世の中に指し示す責任があると思います。そして、今回も観てくださった人から一通の葉書が届きました。葉書にびっしりと書き込まれた文面には、この舞台が、しっかりと観客の心の襞まで届いた感がして、ひとり安堵の胸をなで下ろした次第でございます。以下、葉書の文面です。

拝啓 「静かな海へ」は重く悲しい話ですが同時に逞しい話であると思います。正しいと思うことも独りでは世間に通用させるのは至難の業です。卑怯と自分を責めながらも、長い年月をかけやはり正しく世に問うべき事象を訴えかけた心の逞しさです。胸に抱いた正義感は少しばかりの格好付けではなく、本物の力となって世の中を動かします。ある意味期待されることを主旨としない、無欲の行動が、人の心を熱くします。大変なことが起きていると子供心にも不安を覚えた水俣病の実態。何故か知らされているようで、全体を掴みきれていなかったその真実が、この演劇を通して目の前に拡げられた感があります。思いを同じくした出演者と作りあげた作品とパンフレットにも記されていますが、正面からこの時代の巨悪に向き合ったひとつの答えが、この芝居に結実しています。日頃世の中のやっかい事には腹を立てながらも見て見ぬふりをすることが多い自分自身の行動に喝を入れられたひとときでした。立派な演劇という行動に拍手。また次回。 敬具

このO氏の言葉を肝に銘じ、次回作「挽歌」は東日本大震災がテーマの芝居です。もっと楽しい面白い芝居創ってや!そんなお声も聞いておりますがな...でもでも世の中は安閑としている場合じゃございませんことよ。微力ながらも、弱者の立場になった視点からなにかを発信し続けないと、この社会ほんまにフニャフニャ、コンニャク、沈没列島になっちまいますがな...喝!

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葉書原文

2016/10/19
【第879回】

新宿西口小田急百貨店前の有名ブランド掲示板の前で今日も「アフリカの貧しい子供達のために...」いつものアフリカのお兄さんが、たどたどしい日本語を操りながら募金活動をしています。いつも思うのだが、善意で募金箱に入れられたお金が、本当に貧しい子供達に届いているのだろうか?こればかりは誰にも分かりませんがな...うがった見方をすると、この若者も新宿を仕切っている暴力団関係者がバイト感覚で雇い資金集めをしているかもしれません。以前、同じく募金活動しているアフリカ人らしき娘さんが、いかにもやくざ風の男とお茶してるところをみたことがあるので、もしや?なんて推測をしちゃいました。
この場所から少し離れたところに、犬を数匹並べ「捨てられたわんちゃんのために...」こちらもほぼ毎日募金活動に励んでおります。わんちゃんも少々お疲れ気味で、こちらも見方を変えれば虐待ではないかと思うことがあります。わんちゃんに可愛さを要求する様を見るにつけ何だかいかがわしさがプンプン臭って参ります。
いずれにしても、CHANELのお洒落なレディの前に立つ黒人男性、片やCartierのリッチな黒猫の前に並べられた犬、その横にはTIFFNYの燦然と輝くダイヤモンド、なんだか現代社会の不条理を指し示す構図じゃありませんかなもし...

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新宿西口小田急百貨店前にて

2016/10/17
【第878回】

水俣山脈の頂は...「静かな海~MINAMATA~」先週の金曜日に初日を迎え、昨日で3ステージを終えました。水俣病発症から今年で60年、今尚、新聞、テレビ、雑誌などで水俣の言葉を目にするのだが、実際の処、この水俣病のことをどれだけの人が理解しているのだろうか?そして、今後どのような推移を辿っていくのだろうか...この難問題を解き明かすには相当の辛苦が伴うのは当然である。なんとかスタッフ・キャストの総力戦で立ち向かって、ようやく初日にこぎ着けた次第である。
しかも、演劇という至難の手法を労しての作業なので一筋縄ではいかないのである。と言っても、観に来て頂く人達にいい訳は通用しない。この3日間、プロデューサーの観た感想はと言えば、今回の芝居のラストに医者の妻が発する台詞「まずひとつ...。まだ全てが終わった訳じゃないんだから...。」この言葉に尽きるかな...
新潟の知事選、原発再稼働慎重派の勝利に終わった。この原発も水俣病と連動している...
地域に生活している人達の苦悩、環境、でも過ちは繰り返してはいけないのではないだろうか...この狭い国ニッポンの存亡を考えるならば原発再稼働はあり得ないし、利益のために病人、死人を出してはいけないはずなのに、何故かこの国の思考は貧している。
ついさっき、おいらの事務所のビルに珍しく国会議員がやってきた。おいらと一緒にエレベーターに乗り議員と秘書らしきものが4階で降りるので、おいらが入り口を譲り、ドアーのオープンボタンを押しているのに一言も発することなく傲慢な表情で立ち去った。スーツには議員バッジが燦然と輝いておりました。なんぼのもんじゃい...こんな程度のおつむの人達が国を司ってるんですから、しょんなかですばい!

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共生

2016/10/13
【第877回】

明日から「静かな海へ~MINAMATA~」上演します。今回も、改めて水俣に関する本、資料、映像再見、再読しました。その中で印象的だったのが、漁師でありながら自ら穫った魚を食べ水俣病患者になった男性の話です。勿論、訴訟を起こしチッソ工場の玄関前に一人で座り込み抗議しているうちに「俺は被害者ではなく、俺もチッソ側の人間ではないのか...」人間だけが賠償金よこせと騒ぎ立てているのだが、海中の魚、のたうち廻る猫、その他生きとし生けるものすべてが、人間社会に便利なものを生み出すための犠牲になっているのではないか...人間の途方もない驕りに気づいた漁師は、早速、利便性が高いプラスチックの船を破棄し木造船を造り再び漁生活を再開しました。

そうなんです。おいらは何度も口にしているのだが、まさしく地球の癌細胞がニンゲンなんです。平気で森林を伐採し、排気ガスをまき散らし、静かな海を汚し、欲望のままに生き物を殺戮し、ああこりゃこりゃなんてだらしないない生き方をしている動物なんです。もう、ええ加減、発展、便利お休みにしたらええんと違います...

今日の朝のテレビでカヌーの選手が言っとりました。カヌーの競技場は東京じゃないと困る...何抜かしとるんじゃ!金塗れ、業者と役人・政治家の金儲けのために建設する新競技場なんて誰も喜んでおりまっせん。2020年のオリンピックは復興のための大会じゃなかったのかな?宮城県での開催異議なしでござんす。おいらは、今もオリンピック中止論者でございます。東日本、熊本の震災の後始末、復興もままならないのにオリンピックどころじゃないでしょう...いつの世も権力者は、世間の目をお祭りごとに向けさせ、都合の悪いことには蓋をするのが常套手段でござんすよ。皆の衆、しっかりせんとえらいことになっちまいますがな...

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暮れなずむ東京駅

2016/10/11
【第876回】

2011年から三菱地所と協力して実施されている「丸の内 行幸マルシェ×青空市場」に先週金曜日、東京駅前・行幸地下通路(行幸地下ギャラリー前)で「静かな海へ」の宣伝イベントやってきました。青空市場は、市場(いちば)本来の姿である生産する人々と買う人々が都市で直接交流し、新たな食文化の創造と食に関する情報の受発信ができる場所として設定されたものです。この青空市場の主催者が、今回出演する永島敏行さんであることから今回のトークショーが実現しました。今回のキャスティングも、永島さんが俳優を続けるかたわら、秋田十文字町で1993年以来20年間米作りを続けることを知り、自然・環境に強い関心を持っている一人ということで決めました。今回の芝居は、やはり表現者としての一面と社会に対する姿勢を重要視しました。表現にはその人の生き方がそのまま出ますからね...水俣にどう向き合うか?芝居が成功するか否かに大きく関わるポイントだと思います。

この日のトークショーは、全国の野菜、海産物を買いに来たお客さんに呼びかけ演出家、5人の出演者の息のあったトークで盛り上がりました。ちゃっかりチケットも販売しちゃいました。

今日が最終稽古、2時からの通し稽古が楽しみです。

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青空市場トークショー

2016/10/07
【第875回】

この兄さん、えっこらやっこらチャリンコでスピーカー積み込んで新宿南口に出稼ぎに来ておりました...おいらが以前にも書いたルミネの刺激的なコピーをバックに、スコットランド民謡をヴァイオリン片手に奏でておりました。頭の被り物とのミスマッチがよござんすね。この通りはバスタ新宿(地上バスターミナル)が出来、道幅も拡大され大変な人通りです。これと併設して新宿駅直結の複合施設、ニュウマンもオープンし新しい新宿の顔になっています。この建物に入っているレストラン・カフェ皆お洒落で粋ですぞ。なんだか異国情緒を満喫でき得した気分になります...こんな場所でのお兄さんのスコットランド民謡いかがなものかな?おいらもスペインで大道芸をやった経験上、投げ銭がどれだけ放浪の旅の手助けになったかを重々知ってるもんで、兄さんにチャリンと投げ銭置いてきました。

道幅も広くなり、多くのストリートミュージシャンが自己ピーアールのために集まっているのだが、中にはなんじゃこりゃ?みたいな人も居てまさしく玉石混淆。時折、若いお巡りさんが始末書書かせて退去を促す光景を目にするのだが、全く姿を消すこともないので、これは一応仕事上やってますポーズなんで一安心しております。街の大道芸人が居なくなったときは恐ろしい社会の前触れかもしれません...街は劇場、いろんなドラマが転がってるはずです。その旗振り役が大道芸人。温かい目で見てやってくださいな...

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音楽に頼りすぎると...いいんじゃない!

2016/10/05
【第874回】

錦糸町の駅前でおかしなことやってる兄さんがおりました...8時間連続で「あ」の一音を発声しながら声音を調整しているとのこと。おいらがカメラ構えると嬉しそうにVサインをしてくれました。でも、こんなことやって誰が喜ぶんでしょうかね?その証拠に誰も集まりませんがな。声も小さいしスーツ姿で、おいらなんかどこかの宗教活動かなと思いました。

新宿にもよく見かけるんだが、男子はスーツ姿で頭髪もスッキリ、いかにも裕福で育ちの良い女子って感じで宗教の誘いをやっとります。おいらなんか、この清廉潔白を演じてる姿がまず胡散臭いと思いますね。何かやましい魂胆があるからして、この服装に作り笑い。道行く迷える子羊ちゃんたちが言葉巧みな誘いに乗っかって洗脳されんこと願うのみ。でも、あの立ち姿を見せられたら、ついつい悩み事聞いて貰おうなんてことになっちゃうんですな。

人の弱みにつけ込んで、しこたまお金をお布施として上納し、挙げ句の果ては心も金縛りに遭い、人のため世のためと称して街頭宣伝誘惑班に駆り出される始末です...なんて負のイメージで書いたんですが、こうやって巨大な宗教集団が厳然と全世界に存在してるんだから救われ幸せに感じてる人がいることも間違いなき事実ですな。

まあ、いずれにしてもおいらは無宗教であり、森羅万象すべからく感謝の気持ちで日々過ごすことが宗教だと思っとりますから気が楽ですわ。

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アー無常

2016/10/03
【第873回】

借景でこの芝居は観客の心待ちを鷲づかみしている...そんな芝居「楽屋」を観てきました。台東区柳橋に、嘗てある芸者さんが住んでいた自宅をギャラリーにした古い一軒家の二階。階段を上がると芝居を上演する一室があった。日本家屋の窓の引き戸が開けられ、向こうに見えるのが隅田川、この川を行き交う遊覧船、その上には高速道路を走る車、上手の方には総武線を上下交互に駆け抜けるJRの黄色の車両。そして、この季節強烈な匂いを漂わせる金木犀の花がこちらに語りかけてきそうな存在感...芝居が始まる前からこの風景を魅せられちゃお手上げでございます。窓際にしつらえられた長い化粧台が、眼前に広がるリアルな風景との、彼岸と此岸という対をなしている設定から芝居は始まるのである。嘗て、この楽屋に出入りしていた亡霊女優が現実の風景を前にして(観客には背を向けている)メークをしている冒頭は、この見事な借景があって心待ちした観客のボルテージは一気に上がるって訳なのさ...時空間の魔術師、唐十郎を師とする鳥山昌克演出の見事な仕掛けを堪能させて頂き、浅草橋駅付近で引っ掛けた一本百円の焼き鳥と、ハイボールが何故か愛おしく感じました。

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会場入口

2016/09/30
【第872回】

パリーグの優勝を賭けた一戦勿論見ましたよ...いつもはライオンズを応援するのだが、この日ばかりは日本ハムファイターズを心情的に応援してました。だって、お金で選手を釣って掻き集めた球団に今年も優勝なんて嫌なんでござんすよ。この日の試合で言えば、鷹が負けて獅子が勝てばハムの優勝が決まるので、このパターンが理想なのだが、あちゃ、一回の表に鷹がガム相手に7点も取っちゃたんで急遽ハムの応援に回りました。獅子が勝ったところで、いずれにしても4位か5位、体勢に影響ありませんことよ。それにしても、この日の大谷くん惚れ惚れしました。この大一番で、あのピッチングが出来るなんて末恐ろしい22歳です。なんと言っても爽やかなルックスに抜群のスタイル、プレー中のマナーも大変よろしい。まあ、ちょいと優等生過ぎるところが、おいらとしては物足りないのだが、将来プロ野球選手を目指している少年達の憧れの見本としてはいいのではありませんかな。
この日はなんとヒット1本、15奪三振、我がライオンズまったく歯が立たず牙を抜かれた獅子でございました。試合が終り勝利監督インタビューでハムの栗山監督の言葉が良かったね。「今日はライオンズ最終戦、セレモニーがあるのですが、私たちに少しだけ時間を下さい...」何という心遣い。こんな監督だからこそ11、5ゲーム差があったペナントレースを制することが出来たんですがな。このあとライオンズのセレモニーで最後のお詫びの挨拶したお地蔵さん監督とはおつむが違いますな。でも、お地蔵さんもお疲れ様でしたね。似合わないポジションを任されさぞかし辛い日々であったに違いありません。
今年も、我が愛するライオンズの試合は終わりました。今年ほど辛い日はありませんでした。5月の中旬から、はや終戦なんですからファンとしてはやりきれない気持ちで期待もしぼんでしまいました。来年こそは、おいらの活きる糧になってちょうだいな!頼みまっせ辻新監督。

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湖面に映る雲

2016/09/28
【第871回】

新宿高島屋の前に巨大な猫が寝そべってました...おいら思わずスペインで一緒に住んでた尼庵(にあーん)を思いだしちゃいました。スペインアンダルシアの海岸に位置する片田舎サロブレーニャの畑で生まれたての猫を拾って(いや、畑の穴蔵からひょいと顔を出したところを引っこ抜いてきて略奪してきたのかな?)それはそれは可愛いお顔をしとりましたよ。おいらは我が子のように溺愛し、尼庵もおいらを親と慕い離れられない関係になっちゃいました。昼間は海岸を、サトウキビ畑を散歩し、おいらは昼間からワインを痛飲しサトウキビ畑で昼寝している間、尼庵は畑の鼠と格闘したり、虫と戯れたりまだ見ぬ世界につぶらな瞳をクルクルしとりました。おいらが大きな声で名前を呼ぶと、すぐ戻ってくるあたりがめんこいめんこい、目に入れても痛くない!ほどの猫可愛がりぶりでしたでござんしたよ。
そんな時間もそう長くは続きませんでした。この村を去ることになり、日本に連れて帰るかどうか迷ったのだが、この猫を預かってくれる人が居たので、尼庵はやっぱり生まれ育ったアンダルシアの自然の中が似つかわしいと判断し残すことに相成りました。別れの日の尼庵の瞳からの一粒の涙を見たときは、さすがのおいらも泣いちゃいました。
あれから何十年、もちろん尼庵はこの世に居ないのだが、あの世でおいらのこと想い出しながらこの写真のように悠然と寝そべり「はやくおいでよ...」と手招きしているに違いない。
尼庵よ、まだまだおいらはこの世にいるのだが、いずれは逢えるかもにゃー。

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まねきねこ

2016/09/26
【第870回】

晩夏から初秋にかけての空が美しい...まだまだ暑い日が続いているのだが、秋の気配がたまらなく嬉しい。猛暑から解放され朝の凛とした冷気に触れると、背筋がピーンと伸び、今日一日を大切にしたい気持ちにさせてくれる。おいらは、どちらかというと風が吹くまま気が向くまま場当たり人生でございまして、季節の変わり目、自然の気配で我が身のだらしなさを気付かさせてもらってる次第だ。その中でも、大きく深呼吸して空を見上げ、その日の雲の表情を観察するのは、楽しみと共に、モノを創るものにとってヒントになることがある。ある形を保って意味深に語りかけることもあり、お互いが、まるで争って一触即発状態を演出してる様相を呈してる形状もあり、まさしく大空に繰り広げられる一大パノラマである。ことに夏から秋に目まぐるしく変わるこの季節は見逃せない貴重な瞬間が多々あるのである。
人は所詮、大自然に勝てる訳がないし、むしろ自然の恵み、力を借りて活かさせて頂いている生き物でしかないのである。青空に浮かぶ雲、灰色な空に不穏な表情で佇む黒雲、まるで天の啓示でもあるかのようだ...
いやいや、ぼおっと空を眺めるだけもよござんすよ...眺めてるだけで己の邪心、モヤモヤ、ストレスが、まるで霧が晴れたようになりますぞ。その気になったら雲さんに語りかけるも良し、笑顔を返すも良し、とにかく下を向いてはあかんぜよ。

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雲さん...こんにちは

2016/09/23
【第869回】

そうだろうろうか?いやそうかもしれない...こんな看板見ながらふと思いましたがな。おいらの会社でも若き人材が欲しくて、只今求人募集をしてるんですがなかなかいい人材が集まりません。特に20代の男どもはほぼ全滅でございます。面接に来て先ず感じたことはお目々が死んどりますがな...何のために生きとるんじゃい!といいたいですな。全てを与えられ、選択肢に迷い、己の立ち位置が分からず、迷える子羊状態になっている若き男子が可哀想と言えば可哀想ですな...こんな時代にしてしまったおいら世代も含めての責任ですからね。でもね、そんな時代に刃向かって新しい価値観を見いだし、時代を創ってみせる気概を見せんかい大和男子。なんて期待する方が無理ってもんですな...その点、女子はしっかりしとります。去年、我が社に入った女子社員ばりばりやってますし、この時期面接に来る娘さん男よりしっかりしとります。

そこでだ、「言葉に頼りすぎると退屈な女になっていく」女が言葉を獲得し理論武装されると手強いな!と言う保守的な男社会を形成したい輩が警戒感を抱いて創られたコピーかしら?それとも発信元がルミネだから、賢くならないでファッションに食事にお金を使って感性、感覚の世界を重要視しながら快楽の世界に与した方が素敵な女性になりますわよ!なんてことかしら?いずれにしても意味深ですな。いつの世も、資本主義らしいコピーだなと思います。昔、一世を風靡したパルコのコピー想い出したな...糸井重里、浅葉克己の名コンビでしたがな。

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あなた、どう思う?

2016/09/20
【第868回】

雨に煙るスカイツリーを眺めながら錦糸町の稽古場に行ってきました...10月14日より公演する「静かな海へ~MINAMATA~」の稽古、気合入っています。今年は公害の原点である水俣病が発症して60年目にあたります。猫が狂い、人体を破壊した姿を映像、写真、文字で目視したときの驚きは未だに忘れることが出来ません。科学の発達に伴い、失うものが出てくるのは自明の理です。その最たるものが原子力発電でした...60年前に突きつけた警告になんの学習もせず、利便性と拝金主義に狂奔した結果が東日本大震災での人災。もうええやんか...そんなに便利でなくとも、お金持ちにならなくとも。自然の豊かさに身を委ね、まだ見ぬ世界に想像を抱き、スマホを手放して会話をしようじゃありませんか!と唱えても、ここまで来ちゃったら誰も相手にしてくれないような恐ろしさを感じますな...でもでも、おいらはこちらを優先して死んでいきますぞなもし。

今回の芝居の第1回目の本読みを拝見し、これはいけると思いました。まさしく、演劇の出番、この不条理な出来事を生の身体で表現してこそ説得力があるというもんでございます。

水俣も、原発も、まだまだ何も解決しておりません。2020年の東京オリンピックばかりに目を奪われてると、第三の煉獄が訪れること間違いなし...生き物にとって何を優先し肝要しなきゃならんのか...皆の衆良~く考え、行動してくれんですかいなもし。

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雨に煙るスカイツリー

2016/09/16
【第867回】

秋祭りの季節です...新宿のど真ん中でも熊野神社祭礼の飾り付けが行われています。この前テレビ見てたら驚くべき事実が判明し、おったまげのぎっちょんちょんでした。30人の若者に司会者が質問しました。3月3日は何の日?あちゃ、一人も知らんとですよ...こりゃ日本沈没哀れの末路でごぜいやす。日本の懐かしき風景と共に、日本の行事・暦が滅びてしまいます。

この国は、古くから移り行く四季を愛し、四季折々の歳時・年中行事を大切にしてきました。
がしかし、世の中がハイテクになり、便利に慣れ親しんでくると、ものの見事に季節感を味わうことも少なくなり、様々な行事も年々簡素化され味気ないものになってきました。それどころか何ですか!ハロウィン、クリスマス、バレンタインデーとかなんとか、他国のお祭りだけは義理堅く商戦に上手く乗せられて盛り上がってますな。
せっかくこの美しい日本に生まれたのですから、皆の衆、少しずつでも日々の暮らしに日本の祭事を取り入れて心のゆとりを感じてみたらいかがでしょうか?

この世に生を受け、日々生きてること自体が祝祭なんですから...

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秋祭り

2016/09/14
【第866回】

小池にはまって、さあ大変!なんて思ってたんだが、やるじゃありませんか小池のおばさん。

おいらなんか、当選した途端に風見鶏よろしく都議会を牛耳っている自民党に寄り添っていくんじゃないかと...ところがどっこい、やってくれました。第一弾、築地の移転問題一発かましましたな。盛り土問題。こんなのは序の口、石原、猪瀬、舛添と長きに渡った東京都は利権が横行しすっかり税金の無駄使いが続いておりました。なんたって土建屋、建築会社が一番お金が儲かりますがな。自民党都議団の親分以下、人相見てみなはれ...おしなべて悪相、お腹の中は真っ黒けの黒べえさんでございます。よくまあ、東京都民はあんな人達を選ぶもんだと呆れておりましたが、今回の選挙は大当たりでござんした。石原のおっさんも昨日言っとりました。都庁の役人は腐っとる...今言わんで長いこと知事やってたんだから在任中に言わんかいちゅう話ですがな...いつまで経っても日本の政治家、役人は学習せんですばい。

その途端、今日の週刊新潮の見出し、小池知事の金銭疑惑。週刊誌戦争も大変なことになっとります。文春の独走に待ったをかけるかのような大見出し。それにしても、この世のなかまさしく生き馬の目を抜く様相を呈しています...油断も隙もあったもんじゃありませんな。生きるうえにおいて隙は必要ですよ。隙があってこそ心地よい風が吹いてくるもんでございますよ。ぎすぎすぎっちょんちょんもいけませんばい...でも、今度こそ都議会の闇をばっさりと切り裂き、公明正大な都庁にしてくださいな、小池のおばさま。和製ジャンヌ・ダルクなんて言われてるんですからね、頑張ってちょ!

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一刀両断

2016/09/12
【第865回】

やったね鯉さん...広島カープ25年振りのリーグ優勝ほんまに嬉しゅうございますがな。なんと言っても金満チームの横綱、大巨人を負かしたのがいいね...野球をお金で何とかなる、何とかしようとしている巨人をぎゃふんと言わしたところが痛快極まりない。資本主義がまかり通る世の中で、せめてもの野球ぐらいは夢とロマンを持たせてつかわさいなもし...広島市の市民が支え続けた、まさに市民球団。これがほんまの地方創生がな!あべちゃんもこれを手本にしたらええがな、すぐお隣の県だし、この前オバちゃんと核なき世界を訴えたところですよ!忘れないでね...おいらも半世紀前に博多の田舎で九州の田舎球団、獅子を追い求め夢中になっとりました。あの時も、田舎の野武士軍団が東京の大巨人を3年連続で倒し夢のような時間をもらいましたですがな...その夢を忘れることなく、おいらも形は違えどいまだに夢追い人やっとります。そう言えば、夢は追うものでなく自ら紡ぎ出し何年もの反芻しながら吐き出すもんじゃございません。それで、おいらの会社は吐夢でござんすよ。

今度はハムちゃんが鷹を食べて欲しいですがな...今までは、お金にものを言わせて肥満鷹にむしゃくしゃと食いちぎられっぱなしのハムちゃん、今年はチャンスですがな。大谷のあんちゃんも好感度抜群だし、是非とも逆転優勝して欲しいな。そして鯉とハムとの日本シリーズを見とうございます...最後は鯉ちゃんの日本一で締めれば言うことなし。

それにしても今年の獅子は眠り獅子、最後になってやっとこさ起きだしてホームランかっ飛ばしているんだが、時すでに遅しですがな...来年、ええ監督・コーチ頼んまっせ!

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事務所ベランダからの眺め2

2016/09/09
【第864回】

9月も明日から中盤に差し掛かるというのに、まだまだ猛暑が続いています...文芸誌「群像」10月号が創刊70周年記念号として、群像短編名作選として54作品が掲載されてるのを知り早速購入し読み始めました。ここには、故人になった作家から今も第一線で活躍している文学者が網羅されているのだが、昨今もてはやされている流行作家の文体がなんと軽佻浮薄であることか!をまず気づかさせてくれました。言葉の選定の仕方が、まるで何度も漉されたあとに残った言語を、またしても懐疑を重ね、最後は覚悟を決めて飲み込み、吟味しながら吐き出す壮絶なる過程を想像してしまうのだ...文体の背後に、状況設定を思い起こさせるチカラが厳然として存在しているのである。言葉が持つ壮大な可能性をまざまざと魅せつけられ、改めて文学なるものの奥深さを考えさせられた次第である。

まだまだ読み始めであるが、ここ数日は、この800ページ(しかも二段組なのでかなりの量である)の分厚い雑誌の虜になっちゃいそうでございます。ジャズを聴きながら、美味しいコーヒーを片手に、命を削って言葉と格闘した文学に酔いしれたいもんでございます。

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事務所ベランダからの眺め

2016/09/07
【第863回】

久しぶりに高田馬場にあるジャズ喫茶「マイルストーン」に行く。和服を着たこの親父さんは拘りの人である。なんたってお客に席を選ばせない独裁者である。一度、納得できず怒鳴って帰るお客を見たことがある...なんの理由があってこの理不尽な行為をするのか聞いてみたいんだが、聞いちゃったら二度とこの店のドアに手を掛けることがないだろうと思い聞けませんがな...そんなへんてこりんな店なんだが、時折、隠れ名盤をお皿に乗っけてくれるんで行ってしまうんですな。年々ジャズ喫茶が消えていく昨今、「ジャズ喫茶の灯火を消さないで!」運動の自称会長であるおいらとしては、新宿にあるこの店が無くなると大変寂しい思いがするのです。

この日もやってくれました...小一時間経ち、そろそろ帰ろうかなと思ってたら、ぼそぼそ声で曲名を述べ、クールなタッチでピアノを弾く女性ピアニストの音が流れたんでございます...彼女の名はユタ・ヒップ。1925年生まれのドイツ出身のピアニストなんだが、まさに波瀾万丈の人生。ナチス政権下で頽廃音楽として迫害された環境の中で、秘密の集会を開きジャズを学び、戦後アフリカ系アメリカ人との恋に落ち子供を産んじゃうんですな。そんな困窮の中での音楽活動中、1955年に一人の評論家に目をつけられ晴れてジャズの本場ニューヨークの土を踏むことになるんだが、異国の地での生活に馴染めずブルーノートに3枚のレコードを残し鍵盤の蓋を自ら閉めることに...その後は35年間縫製工場でお針子の仕事をしながら、時折絵なんかを描きながら2003年にニューヨークのアパートで78年の生涯を終えたそうな...おいらは、早速ネットで調べて彼女がレコーディングした唯一のCD「ヒッコリー・ハウス」でのライブアルバム2枚買いましたがな。

おいらのささやかなオーディオルームで何回も何回も聞きました...そのたびにヒップちゃんの鍵盤を叩く様が目に浮かび思わずお目々がうるるんしちゃいましたがな...一音一音にその人の心情、生き様が記されてるんですからアートは素晴らしいもんでございます。

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ユタ・ヒップ

2016/09/05
【第862回】

ここんところ何故かしら、おいら劇場より飯田橋の名画館に足が向いとりますな...「リリーのすべて」1926年のデンマークが舞台、肖像画家の妻に女性モデルの代役を頼まれた風景画家の夫が、これを機に自分の内面に潜む女性の存在に気づき性転換までしちゃう性同一障害を扱った実在の話。夫役を演じたエディ・レッドメインが素晴らしい!この俳優は、役柄を貰った時点で役のエッセンスが降り憑依してしまう神がかり的な表現者でありますな。ひとつひとつの表情に、揺れ動く内面を見事に演じきってる姿に鳥肌が立ってしまう。しかも男と女のエロスが交互にうねり瞬きひとつ許さない緊張感を強いる連続...妻を演じた北欧美人女優アリシア・ヴィキャンデルもなかなかのもんでございます。ことし2月のアカデミー賞で初ノミネートながら、この作品で助演女優賞のオスカーを手にしとります。この二人の壮絶な愛のドラマを支えているのがデンマークコペンハーゲンの美しい風景と、街並み。カメラワークといい、美術のセンスがたまらんですばい。
2作目は「キャロル」1952年の古き良き時代のニューヨーク。デパートでアルバイトしている日々満たされない娘さんが、娘のクリスマスプレゼントを買いに来た魅力的でエレガントな婦人キャロルに激しく惹かれ、同性愛まで発展しちゃう話。まあ、話としてはどうってことないんだが、キャロルを演じるあのケイト・ブランシェットがたまりませんばい。
貫禄のある美しさに、知的なエロスを存分に演じきっている。こちらも1950年代の音楽、小物、衣裳、セットが、あの時代を呼び起こしてくれる。
この2本の映画を観て改めて感じたこと...俳優が身体で、そして表情で説明していないことが、観客にどれほどの想像する欣躍と感銘を与えてくれるかということでございます。
昨日は、演劇鑑賞会の首都圏ブロック総会に出席するために赤羽に行ってきました。首都圏の12地域の人達が集まり熱い議論がなされておりました。トム・プロジェクトも来年「萩咲く頃に」が呼ばれておりまして、おいらが作品紹介をしたってわけなのさ。幸いにしてトムの作品は好評が続いており、あちこちの会員さんから声を掛けられおいらも勇気百倍でございました。上演した作品が、皆さんに何かを残せたことが次ぎに繋がる世界でございます。総会が終わり赤羽の居酒屋で美味しいお酒を飲みながら、日頃なかなかゆっくりと話すことがない会員さんと楽しい時間を過ごすことが出来、昨日も満喫な締めでございました。

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赤羽公園

2016/09/02
【第861回】

井の頭線高井戸駅前の隠れた名店「カレタナ」で期間限定の名物カレーを明日まで提供しています...おいらも昨日やっとありつけました。今年11周年を迎える拘りマスターが命を削って創りあげた一品です。とにかく美味しい!8月30日~1日延長して明日までの限定なんだが、徹夜で創る上げたであろうカレーには、マスターが若い頃イタリアで修行し自分の店を持つまでのエッセンスが見事にたたき込まれています。一見無愛想に見えるマスターなんだが、自分が調理した料理には自信とプライドを持っていて、お客の満足げな表情を確認すると少年のような笑顔を見せてくれます。おいらが褒め称えるとシャイなのか素直に受け取ってくれませんがな...このお店はカウンターだけの8人~10人入れば満杯なので、料理を注文しないでお酒ばかり飲む人は、あまり感心しませんな。特に暇持て余したママ友連中がマスターが心骨注いだ作品を賞味することなくサラダ一品頼んで分け合い、飲み物でくちゃらくちゃら何時間も喋られたらたまりませんな...昨日、おいらが頼んだカレーにはマスター手作りのソーセージとジャガイモがのっかってました。このソーセージを目の前で創ってるところも見ているので感慨もひとしおです。

この高井戸近辺は環八が走ってることもあり、なかなか美味しい店が育ちにくい環境にあります。そんななか11年も孤軍奮闘している「カレタナ」のマスターには唯々頭が下がる思いです。おいらも、そんなに顔を出してるわけじゃなく大きいことは言えないけど、マスターの作品は世界の何処にもない、マスターの拘りの逸品でございますがな。

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カレタナの逸品

2016/08/31
【第860回】

昨日、稽古場に劇団チョコレートケーキ「治天ノ君」の最終稽古を見学。この芝居は初演した時に数々の賞を受賞した作品である。この作品の企画を聞いた時は大丈夫?と心配しました。だって、あの大正天皇を真正面から取り上げると言うんだからビックリポンですわ。おいらも昔、三島由紀夫の自決直後に三島作品を上演し楯の会に脅しを掛けられたり、昭和天皇 がハイジャックに遭遇するテント芝居を強行し右翼の殴り込みを警戒した経験があるので、ちょいと引いてしまいましたがな...所が、恐れず怯まず挑戦して行くところが勢いのある劇団なんですね。まさか、歴史の闇に葬られた天皇を白日のもとに曝すとは誰しも想像がつかないどころか感動の嵐でございました。

昨日の最終稽古で改めて思ったことは戯曲がしっかりしていること、役者の表現の規範がぶれないことが、この芝居を見事な人間ドラマに仕立てあげてるんですな...若い集団が邪魔な感情を程よく抑制しクオリティの高い舞台を創りあげている姿を見て、おいらもまだまだ芝居も捨てたもんじゃござんせんと思いましたな...無秩序に感情の赴くままに舞台で騒ぎまくってる若い劇団の人達には是非観てもらいたいですな。

明日から旅公演が始まります。それにしても劇団名チョコレートケーキと大正天皇、どう考えても結びつきませんがな。

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懐かしき美容室

 

2016/08/29
【第859回】

先週の週末は映画三昧の日々でした...最初は、おいらがこよなく愛す飯田橋ギンレイホールでございます。今や希少価値になった2本立て上映の老舗の名画座です。おいらはシニアで¥1000で入れるので1本あたり¥500、これはかなりのお得感ですね。¥10800の年間会員になれば何回でも観れる特典まであるんですから、映画ファンにとっては狂喜乱舞ですな...この日観た映画は「スポットライト~世紀のスクープ」神父の性的虐待事件をスクープし巨大権力に闘うドラマなのだが、事実の羅列で今ひとつ人間ドラマになりきれてないのが残念だったかな?続いての上映「マネー・ショート~華麗なる大逆転」金融トレーダーを取り巻くウォール街を中心としたコメディタッチの作品なのだが、もともとおいら株なんて興味ないし、リーマンショックがなんだらかんだら、勝手にやってくれとばかりに中途退場、おいらのセンス、体質に合わなかったのかな...神楽坂は今、食通が好む街なんでぶらり散策。一見拘りがありそうなスペインレストランを見つけリオハのワインとタパを食す。おいらこの手の店に行っていつも思うのだが、ボトルのワイン頼んで、目の前でコルク抜かない店は信用できませんがな...だってだって、高いワイン頼んでこりゃないぜ!ってな話です。きちんとした店でございません!と言ってるようなもんでございます。料理はまあまあだったんだけど2回目はありませんことよ。

昨日は「シン・ゴジラ」あんまり期待しなくて観たんだが、なかなか頑張って創ってました。東日本大震災、熊本地震、原発を十分意識して創ったエンターテイメント社会劇に仕上がったことを評価します。日本政府の右往左往する様子は、いつかのどこかで見たことあるような光景で相当皮肉が効いていて意義なし!ってところかな...唯一点、石原さとみさん、この映画の役者として解釈、人間としての立場わかってんのかな?てな違和感を覚えました。仕方が無いか...観客も動員しなきゃ次の映画創れんしな。それにしてもゴジラは可哀想、人間が生み出した悪魔の化学兵器が生み出した怪物でありながら、人間に攻撃されるなんて矛盾しとります。ゴジラの無言の叫び、哀切溢れる眼差しから地球の癌細胞である人間が今一度、環境、平和、虐待、などなど真剣に思い改めないとゴジラに申し訳ありませんがな...

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昼下がりの夏

2016/08/25
【第858回】

トム・プロジェクトの作品に出ていただいてる女優さん所属の社長さんが事務所に来ての話し...つい最近仕事がらみも含めて、熊本地震で最も被害が大きかった益城町に慰問に行って驚いたとのこと。4ヶ月過ぎて何等、復興復旧が進んでないどころか被災されてる人達が疲弊し希望を失ってる表情を見て愕然。救援物資で運ばれたであろうカップラーメンが山積みされてはいるが、誰も手を出す人は居ず、夕刻に炊き出しで配給される温かいものを求めてたくさんの行列が出来る始末。未だ仮設住宅で不自由な生活を余儀なくされてるにも拘わらず、熊本県の県営住宅が空室なのに入れない状態。国も地方自治体もなにやっとるんかい!と思わず怒りの声を上げました...テレビ、新聞はオリンピックのメダル選手の報道ばかり。熊本の現状もしっかり報道せんかい!政治家も夏休み返上して震災のための予算を捻出して、一刻も早く困窮してる人達のために仕事せんかい!東日本大震災、原発、これらも未だ出口が見つからないまま...4年後のオリンピック話してる場合じゃないだろうと言いたい。おいらは威信なんて言葉大嫌いでございます。ましてや国の威信なんて言葉が巷におおてを振って蔓延るようになったら要注意。オリンピックなんぞ国の威信かけてやる必要ございません。やるんだったら質素に健気にやってくださいな...そんなことより、この国ほんまに優先順位が違っておりまへんか...弱者に思いやりがない国なんて滅びればいいなんて悪たれ口もついつい出てしまいますがな...あべちゃん土管からマリオ姿で出てこんで、東日本、熊本の土管に入って現状を見てくださいな。

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夏の野花

2016/08/24
【第857回】

新宿の高層ビルのなかにも夏の風物詩が...ビルのロビーの休憩所には様々な人が、いろんな表情で、十人十色の動きをしています。待ち人もいれば、就活している娘さんは汗だくになって資料を点検しています。時折、溜息をついてるところを垣間見ると思わず「頑張って!」と声を掛けたくなります。横のおっさんも営業疲れで額を大きめの白いタオルで汗を拭き取っています。このまま社に帰れば上司に詰問されるんじゃないかしら?なんて想像しちゃいます。東京見物に来たであろう老夫婦は土産物の点検しとります。孫の土産は買ったはいいものの喜んでくれるのかどうか不安なのか、二人でぶつぶつ呟いています。ガテン系ニッカポッカの青年は、なんだかこの場に似つかわしくないところがおもろいな。周りの目も気にせずスマホに夢中になっとります。ごっつい大きな手の指で上手くピコピコできるんかしら?

外に出ると俄雨。大気が不安でここのところポケット傘は外せませんことよ。昨日、テレビ番組でスペインサラゴサでの通り雨に、闊歩するあんちゃんが降る雨を快く引き受け「muy bien!」(とってもよい!)なんて言葉を残しながら去っていく姿観て、なんて粋なんだろうと思っちゃいました。古き歴史を残す建物と狭い路地の石畳、おいらたまらず近々スペイン行くぞ!と吠えちゃいました。

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高層ビルの夏

2016/08/22
【第856回】

オリンピックも閉会しました。まさしく日本中が浮かれておりました、おいらもちょいちょいとは観ておりました。苦節4年、メダルを目指してストイックに鍛えた姿には感動するモノがありますね...でも、どうしてもお金がちらつき、この大会が果たして世界平和に繋がっているのかどうか疑念は残ります。メダル最多で4年後の東京オリンピックは期待ムンムンなんだけど、このオリンピックにつぎ込まれたお金のために苦しみ喘ぐ人達が数多くいることも確かです。この国の政治家、為政者、行政に関わる人達は、未だお上にご機嫌伺いばかりで弱者に対する心遣いが足らんのだと思います。少しは困却した人たちに本気で手をかさんかい...そんな人達が、今まさに世界に存在する現状を見るにつけオリンピックも素直に喜べないのでございます。

西鉄ライオンズの豊田泰光さんが81歳で亡くなりました。2009年に、おいらが書いた「我が心の博多、そして西鉄ライオンズ」を舞台化したときに下北沢本多劇場まで奥様と観に来てくれました。おいらの少年時代のヒーローであり憧れのハンサム豊田さんの面影は十分残っており、おいらは大感激でした。芝居が終わった後、豊田さんは号泣し「ありがとう!」とおいらの手を固く握りしめご祝儀を渡してくれました。この年になっても、西鉄ライオンズをとことん愛し本を出版し芝居まで創ったことに対する豊田さんの感謝の気持ちが十分伝わり、おいらも思わずルンルンしてしまいました。芝居の中で、エラーをしながらも耐え抜きショートのポジションを勝ち取った豊田さんの名前が何度も出てきたことも、あの日あの時の懐かしき野武士軍団西鉄ライオンズの記憶が蘇ったのではなかろうか...合掌。

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夏暮色

2016/08/15
【第854回】

不幸な戦争から71年目、今日は終戦記念日でもありお盆でもある。終戦記念日とお盆が重なっているのも、何故か大戦で亡くなった人達の魂がそうさせた不思議な縁を感じる。今のこの国の有り様を見るにつけ戦没者の魂もきっと安らかではないのではないか...

今年のお盆は、今年の2月20日に97歳で亡くなった母の初盆でもある。あと一ヶ月で98歳の誕生日を迎える朝に静かに息をひきとった。8月13日には、母の写真の前に母が大好きだったプリンと西瓜をお供えした。横のベランダに目をやると黄色の蝶が舞い込んでいるではないか...元気な頃はガーデニングが大好きだった母が「黄色い蝶々を初めて見た年はいいことがあるとよ...」なんて言ってたことを想い出した。もしや、母は蝶の姿に変えておいらに逢いに来たのかもしれない。夫を早く亡くし5人の子供を一人育ててきた母は、風来坊のおいらを一番心配していた。「おふくろ、もう大丈夫だよ!」ベランダをゆったりと舞う蝶に、そう語りかけた。

大陸からおいらをお腹の中に抱え、やっとの思いで博多に引き上げ昭和21年2月に、おいらは誕生した。80歳過ぎてから母は引き揚げ時の地獄の日々をリアルに話してくれた。日ソ不可侵条約を破り攻め込んできたソ連兵の目に余る暴行、女性は頭を丸め顔には墨を塗り夜間での逃避行...よくぞ、おいらは無事に生を授かった。奇跡の子といっても過言ではない気がする...母が口癖のように言っていた言葉が「戦争は勝っても負けても惨めである...戦争だけは絶対にしちゃいかん!」体験者であればあるほどその思いは強いと思う。いつの世も一部の権力者の暴走で始まり、犠牲になるのは子供を始め弱者...今や8割の人達が戦争を知らない世代、この人達に戦争の悲惨さを想像する力があるのだろうか?それどころか、短絡的な発想しかできないこれらの人達が隣国中国、北朝鮮の脅しに過敏に反応し再軍備やむなしなんて道に歩み始めるのではないか...多くの人の「そんなはずがない...」という油断から平和はほころんでくる。なんとかこの世に奇跡的に生を授かった者として平和の尊さ、有り難さだけは伝えていく責任があると思う。

今日から東京で公演する「百枚めの写真」もおいらのメッセージの一つ。幸いにしておいらの志と、原作者、作・演出家、出演者、スタッフの思いが舞台上に見事に結実している。まさしく終戦記念日に相応しい作品であり、若い人達に是非観てもらいたい...そして、愚行から生まれた平和憲法の大切さを改めて思念して欲しい。

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平和を願い続けた母の作品

2016/08/12
【第853回】

劇団桟敷童子の「夏に死す」をすみだパークスタジオに観に行きました。東京スカイツリーの近くの倉庫を劇場に仕立て、リアルで迫力のある装置を劇団員一同が手作りで創りあげる工程自体が劇的である。トム・プロジェクトにも沢山の作品を書いてくれた東憲司さんの筆は、いつも温かい人間の体温が伝わってくる。今回は彼自身の実体験に基づいた家族の話である。本人、妹さん、両親らしき人達が登場し東さんの心情が吐露される...お父さんを演じたベテラン山本亘(客演)さんが実に良い。台詞は一言も発しないのだが、役の内面を細かい表情で見事に演じている。山本亘さんの実人生と重なるところに大きな感銘を受けました。

観劇後、久しぶりに東京スカイツリーに行きました。夏休みなのか家族連れの人達がたくさんの土産物を物色しとりました。おいらは、勿論何も買いませんことよ...それよりも、以前知人に連れてきて貰った押上の居酒屋が気になって、そちらにそそくさと足を運びました。これぞ、下町の名店。こんなところにお洒落な居酒屋があるなんて信じられませんことよ。なにせ世界のワインが750本棚に並び、ボトルで呑みきれなければ持ち帰りも大丈夫なんですよ。料理も素材を上手く使いワインにぴったりのものばかり。ソムリエの資格を持つ店員をはじめ社員の教育も上々...こんな店での観劇後の一杯は、まさしく至福のひとときでございますよ。

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下町の名店

2016/08/10
【第852回】

この連日の暑さはなんじゃろかいあ...スペインのからっとした暑さが懐かしかです。ここ東京は、エアコンと車の排気ガスが街中の異様な暑さに拍車をかけてます。ほとほと、人間が住むとこじゃなかですばい!と故郷博多、第二の故郷スペインアンダルシアを懐かしく想い出す始末です。そんな悪環境の中、新宿のホームレスのおっちゃんたちもなんとか暑さを凌いでおります。新宿西口小田急前の喫煙コーナーに屯しているおっちゃんは、煙草買うお金はないので、喫煙コーナーから漏れてくる煙を受動喫煙しながら悦にいっております。時には足が蒸れるんでしょうな、靴を片手にお日様に当ててる様はなんともユーモラスというより、極楽原始生活を楽しんでるようにも見えましたな。バスの屋根付き停留所のベンチを図書館代わりにしているおっちゃんは、所帯道具をベンチに置き(地べたに置くと汚れるので嫌なのかな?)読書三昧。屋根があるので梅雨時なんかは最高です...あまりバスが来ない停留所だから苦情を言う人も居ないんだろうな...時折、煙草の吸い残しを探しながら運動も兼ねて散歩しています。おいらが以前カンパしたおっちゃんは、最近いろんなところに出張してますな。このおっちゃんは決して座ることがありません...いろんなポーズで立っています。立ち姿を変えることによって自ら整体治療を施しているに違いありません。ホームレスのおっちゃん達も生きるために必死こいてるんでございますことよ。

この猛暑をなんとか乗り越え、世界に名だたる歓楽街新宿の誇り高きホームレスとして生き延びてくださいな...人間、どんな人も生きる権利があり、おっちゃんたちの姿が街ゆく人達に様々な問題提起しているに違いありませんことよ。

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暑いニャ~ン

2016/08/08
【第851回】

リオオリンピックが開催され連日メディアを賑わせています...オリンピックって世界平和を願っての祭典じゃなかったっけ?なのに未だ内戦は続き、テロが横行し、世界はちっとも平和ではありません。開催地ブラジルでも政情不安に加え治安の悪化、開催反対の声を押し切ってのスタート。こんなお金があったら先ずは国内の貧困対策に大金を投資すればいいんじゃありません...おいらは思います、もうオリンピックはいいんじゃありません。昔からオリンピックを利用して財を成した政治家、資本家がごろごろしとります。4年後の東京オリンピックのごたごたをみれば、一体全体誰のために準備しているのか?想像しただけでも分かりますことよ。この国にしても同じ、こんな巨額のお金があるならば東日本大震災、熊本地震で今尚苦しんでいる人達のために使うのが人としての道じゃございません。現に昨日の、日本と中国選手の柔道の試合を観ながら、現実は尖閣諸島に何十隻の中国船が領海侵犯をやり両国が激しいやりとりをしている茶番劇。何のためのオリンピック?スポーツを通じて世界平和をなんてスローガン自体がもはや空洞化現象じゃございません。こんなものに一喜一憂してテレビにかじり付きながら、暫し猛暑から逃れストレス解消している世界の皆さん、本当に暢気なもんですな...でも、パラオリンピックは持続賛成。障害者があれほど鍛えプレーしている姿には勇気をもらえます。先ずは、世界が解決しなきゃ難題をクリアしてからのオリンピックとは言うものの、利権が動くオリンピック産業が無くなることはないだろうね。国連も然り、いつまでも国益優先、悲しいかな世界は永遠にわかり合えないエゴの集合体でございます。だからこそ日本の出番です!憲法9条を死守して戦争に加担しない数少ない国だからこそ平和の大切さを訴える価値があるんでございますことよ。

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夏の雲3

2016/08/05
【第850回】

こんな弱いライオンみたことありまっせん...それにしてもよく負けますな。鷹の餌食になって弄ばれている姿を見るにつけ悲しゅうございます。魅力ある選手が居並ぶ中、こんなに負けるのは球団フロントと監督コーチのあんぽんたんの所為に違いない。試合を見つめるベンチのあんぽんたんはまるで観客みたい。おんどりゃ作戦考えんかい!監督の田辺にいたってはアホ地蔵、アドバイスもしなきゃ抗議もしない飾りもんでごぜいやす。こんなに弱いチームでも、都心から遠く離れた所沢西武球場には多くの観客が大声援を送っているのに、この体たらく。選手も、あんぽんたん監督、コーチの無能ぶりにあきれかえってやる気無し。こんな有様じゃ、はよう何処かへ売却してしまいなさいと言いたい...ライオンズの栄光をズタズタにしちまった責任は重いのに、なんら手を打たないフロントは、あんぽんたんの川流れですたい。今年も外国人のピッチャーを何人も補強したのだが、未だに0勝14敗。スカウトもあんぽんたんですたい。外国行って遊び放題、フロントがいい加減なんでなめられとるばい。ようまあ毎年毎年、がらくた外人連れてくるね...今年1億4千万で連れてきたアンディ・バンヘッケン投手なんかは先発される度にノックアウトされ先日解雇されちゃいました。普通の会社であれば役員クビですわ...この暑いときに野球ごときにグタグタ言っちゃってごめんちゃいね。

案の定、昨日も禿鷹に襲われたライオン、とうとう最下位の谷底に落ちました...ここから這い上がらんかい!昔の野武士軍団西鉄ライオンズの切り込み隊長高倉、怪童中西太さんが泣いとらっしゃるばい。

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西鉄ライオンズ
今も健在な高倉(左)中西(右)

2016/08/03
【第849回】

この暑さの中、週末から2本の芝居観てきました。おいらも長年芝居創ってはいるんですが、芝居の持つ曖昧さに戸惑っている次第です。おいらがなんと安易に創ってんの?と思って居ても客席は結構楽しんでいたり、これぞ演劇なんていたく感心した芝居が意外に不評だったり...観る人の気持ち感覚は千差万別、そんななか何処に照準を見定めて企画制作していけばいいのか日々頭を悩ませているのでございます。ここはおいらの感ピューターを信じるしかありませんな...でも基本はひとつ。舞台に上がっている人間に血が通っているかどうかに尽きますな。戯曲が書き込まれてないと台詞が宙づり状態で客席まで届かないし、演出が未整理だと辻褄が合わないし、下手な役者の演技じゃ嘘くさいし、やはり作、演出、役者の三位一体があっての演劇でございます。そんな願ったり叶ったりなんて芝居を生涯何本創れるか?毎回そうありたいと思って創ってはいるものの、冒頭に述べましたように人の受け取り方は様々、この正解のない演劇という大海を彷徨っているのが本音でしょうかね...昨日観た芝居なんぞは別な意味で嬉しかったな。トム・プロジェクトの新人公演に出演した男が一念発起、自分でプロデュースしたんですから。一人の子供を抱え、バイトして貯めたお金を一本の芝居につぎ込むんですから見上げたもんでございます。まあ、ある意味で芝居は人の人生を狂わせてしまう魔性の産物ですな。おいらも、この芝居の劇薬に酔い痴れ紆余曲折の人生を歩んできた人をたくさん見てきましたよ...でも、いいじゃん!一度きりの人生、好きなことに没頭し夢中になれたんだから...生活のためといいながら、我慢して愚痴をこぼし後ろ向きに歩く人生よりも、とっても素敵でございますよ。

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夏の雲2

2016/08/01
【第848回】

小さな池に小ぶりながら気丈な百合が咲き、国が用意した田んぼには票田が増すこともなく、最後に飛んできた鳥も知事のハードルを越せず...東京都知事選は試合終了いたしました。それにしてもサッチャー小池は強かった。英国初の女性首相、マーガレット・サッチャー。強硬な性格から鉄の女と呼ばれたのだが、あの感情を出さず鉄面皮なところなんぞはそっくりでございません。おいらは好きな政治家ではないが、今回は彼女の作戦が見事に成功いたしました。二代続きの不祥事、そりゃひも付き(本当は、このおばさん権力とお金があるところ沢山渡り歩いたくらいですから絡みあったヒモだらけなんですがね)なしで敢然と立ち上がったところなんぞは喝采モノでござんす。増田、鳥越のオッちゃんたちは不信感盛りだくさんの政党がらみ、ほとほとうんざりしている都民は百合の花を応援しますがな...あのおばちゃんの何ら迷いのない演説聞いたら熱狂しますな。(おいらは間違っても入れませんことよ)でも、見事当選したんだから、公約通り腐りきった都議会の浄化運動をやってもらい、知事報酬の削減、舛添問題の再検閲などなど、今の勢いで断行して欲しいですな。

それにしても鳥越のおっちゃん、歯切れが悪かったですな...憲法第九条を死守、原発廃止は勿論賛成なんですが、いかんせんお歳には勝てませんな。街頭演説は少ないし、森進一呼んで自分は喋らない、文春報道の対応もいまいち...これじゃ無理ですわ。これだったら宇都宮健児さんの方がよろしかったんではと思っちゃいました。

小池のおばさん...貴女の池に都民の衆がたくさんの票を投げ込み、大きな波を起こしたんですから、今度こそいい意味でおいらを裏切ってくださいませ。果たして出来るかな?

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夏の雲

2016/07/29
【第847回】

一昨日、演劇群「走狗」の同窓会を久しぶりにやりました。集まったのは11人、うち3人が癌と闘っています。この日は今、演劇界で最も活躍してる舞台美術家の一人、島次郎ちゃんの旭日小綬章受賞も兼ねての同窓会です。いやいや、皆確実に老いへの道に突き進んでおります。血気にはやった、あの日あの頃の面影は、さすがに穏やかな顔貌になりましたな。でも話が盛り上がってくると少年、少女の愛くるしさが出るのは、やはり演劇を愛してやまない朋友だったんでしょうね...おいらの手元にあった当時の舞台写真をコピーして全員に渡すと皆一様に食い入るように見ておりました。人生、決して後には戻れないんだが、夢と希望とロマンを求め全身全霊芝居に打ち込んだその足跡は、次郎ちゃんの賞に勝るとも劣らない勲章に値するもんでございますことよ。

同窓会を終え新宿の街に出ると、いつもより多くの若者がスマホをいじってました。今はやりのポケモンGOなるものかな?そんなもん探さんで公園に行きゃ鳥も、虫も、花も居るやんけ!ありんこの動き見てるだけで一日飽きることがありませんことよ。金の亡者の手口に容易に乗っかって踊らされてるワカモンGOなる輩が不憫でなりまっせん。そのうち一億総ボケモンになりまっせ...なんて宣うとオヤジの愚痴だとお思いでしょうが、決してそんなことはないと断言できますな。今こそ人間回帰に戻らねば...感覚、感性、体温、知性、己の中に宇宙は存在するのでございます。便利、安易にかまけてると世界はロボットに支配されちゃいますぞなもし...

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若かりし頃の「走狗」軍団

2016/07/27
【第846回】

一昨日、バングラデシュで、ストリートチルドレンを集め育てている渡辺大樹さんの番組をテレビで観ました。大学時代にタイのスラムの光景を見て、この貧困の中で暮らしてる子どもたちに何が出来るか?という疑問から単身バングラデシュに来て13年。今はマンションを借り46人の子どもたちの面倒を見ています。来年には大学に受験する子も育ってきました。こんな日本人が存在することに拍手を送ると同時に、まだまだこの国も捨てたもんじゃないと言う気がしてます。おいらも30代の頃に世界放浪さなか、インド、アフリカで多くのストリートチルドレンと直に接し、食事も喉に通らなかった経験があります。同じ人間として何故?どうにも出来ない自分に苛立ちを感じたことも事実です...その思いを自らの意志で実行に移す渡辺さんの行動力には唯々頭が下がります。この渡辺さんを支えているのが、トム・プロジェクトの芝居にも出演した大塚麻恵さんです。4年前に渡辺さんと結婚し一児をもうけ、共に渡辺さんの夢実現に向けて異国の地で奮闘しています。テレビにも少し移っていましたが、ますます綺麗になったと言うより観音様みたいに見えましたな...東京で女優さんやってるときよりも、遙かに人間として大切なモノを得ていることは間違いないと思います。つい先日、テロ事件が発生し日本人が犠牲になり緊張が続く中、渡辺夫妻も多くの艱難辛苦が待ち受けてるとは思いますが、なんとかプロジェクトを為し遂げて欲しいです。

昨日発生した戦後最多19人の殺人事件、人間の心の有り様が大きく変貌しつつある現在、渡辺さんの一連の行動が、心の使い方の原点回帰のきっかけになればと願う...

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バングラデシュの子供達

2016/07/25
【第845回】

先週の土曜日、ちょいとした仕事で東急大井線尾山台に行って参りました。この近辺、おいら九州博多もんにはなかなか縁がなく、初めて駅を降り立ちました。石畳と街路樹があるハッピーロード商店街は、下町風情ではなくスマートな通りでした。その中でも、おいらのお目々がぱちくりとしたお店が八百屋ジャズ。この日は仕事場に朝8時半集合と言うことで、このお店まだシャッターが閉まっとりました。駅から、今日仕事するスタジオまでは15分。環八をを渡ると立派なお屋敷ばかり。建物も多彩、車庫には外車が並んどりました...お家から出てくるお嬢さんもお洒落でツンとしておらっしゃたですばい。この日のマル秘仕事は順調に進み、足取り軽く尾山台駅へと向かったのですが、気になる八百屋ジャズは是非見ておかねばと思い写真をパチリ。店の前には産地直送、有機野菜が所狭しと並んでいました。好奇心旺盛なおいらは、早速お店の人に尋ねました。「どうしてこの店名を付けたんですか?」優しそうな店員さんが「店主がジャズピアニストなんですよ...」中を覗くと、どうみてもガテン系に見える店主がお客の応対に追われていました。あの店主が繰り広げるジャズピアノの世界をいろいろと想像してみました。豪快な中にも繊細な音色が立ち上がってくるような気がしました。そう言えば、並んでる野菜ちゃんもいろんな音色、いや味色を持った個性溢れる音野菜に見えてきました...ちょいとした店の名前から、こんなに素敵な想像の世界に誘ってくれるなんて、何だか得した気持ちになりました。

夜は横浜に足を運び、今年の5月に風間杜夫ひとり芝居「正義の味方」でお世話になった横浜演劇鑑賞協会の人達との懇親会に出席しました。芝居好きな人達との飲み会は楽しい時間でございます。二次会に行った店のアルゼンチン赤ワインは、グラスの中でタンゴの香りを放ち、口内から喉元を過ぎ踊りながら胃袋に落ちて行く...妖艶にして華麗なる風味を感じました。

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JAZZ野菜

2016/07/21
【第844回】

昭和が消えていく...野坂昭如、永六輔、大橋巨泉、次から次へと天国に召されちゃいました。昭和ってなんだろう?戦争そして敗戦、戦後の闇市から日本のみなさん一生懸命働いて経済大国になったがいいものの、大切な日本の心を無くしちゃいました。便利さにかまけて、魂抜かれちゃったんですな。そんななか、平和と自由をベースにしながら世の中をかどわかした人達が亡くなった3人なのかな...モノの流れはすぐ停滞するもんでございます。停滞の中で、日本の人達はすぐさま安穏体制にゆるりんとしちゃいます。その流れをかき回しごちゃ混ぜにしてしまう遊び心こそが大切なんでございますよ。世の中疑いに始まり、なんら真理が見えてこないからこそ面白いんじゃありません。

今日は、昔共に芝居をやった仲間が意識のない状態で入院しているとの報を受け、お見舞いに行ってきました。管を通され眠るような状態の彼女の綺麗な顔を見ながら、嘗ての気品と知性に溢れた舞台姿を想い出しました。常に冷静で、荒くれ者の集団を菩薩のようにまとめてくれたのも彼女でした。

おいらも、そのうち死んじゃいます...だからこそ、今日も一生懸命生きてこそ悔いなく死ねると思うのだが...でも、あんまり堅苦しく考えないで、猛暑の中、今日の雨の有り難さとか、そよ吹く風に揺れる葉っぱのダンスとかを眺めながら、ケセラセラ精神で過ごしましょう。

あのね、このケセラセラの意味「なるようになる、先のことなど解らない」と解釈されてますが、原語では「自分が信じるようになっていくんだ」と言うんだそうだ。

なかなか深いですな...

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雨の南新宿

2016/07/19
【第843回】

暑いです...夏なんですから当たり前でしょう!おいらにとっての夏の思い出は、20代の頃にふらりと旅した北海道ですね...駒ケ岳の麓ではオオカミに襲われそうになったし、知床の浜辺でのドラム缶での一風呂、番屋での酒盛り、礼文島でのウニ漁、民宿での恋などなど...まさしく青春一人旅でござんす。気力、体力とも万全で挑んだ北海道三カ月の旅はキラキラと輝いていましたです。今更、青春なんて忘れたフレーズなんだけど、なぜかしらこの季節になると記憶を呼び覚まさせてくれますな。ぎんぎら太陽、晴れ渡る空、日々変化する雲、蝉の声、その環境の中に立ち尽くし、流れ出る汗に男の活力を感じたもんでございます。青臭い男は、自ら吹きこぼれる汗ににしか生きてる実感を持てまっせんでした...

随分昔のことを思い出すなんて、3分前は過去なんてうそぶいてる男にしてはちょいと感傷的じゃございません。

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清涼2

2016/07/15
【第842回】

昨日は東京都知事選の告示日、今回の候補者の顔ぶれ、何となく嘗ての懐かしい日本の風景を想い出しました...増した田んぼに、小池がぽつんとあるところを、鳥が越えていく様は、まさしく日本の原風景じゃございませんこと。目指すところはこの風景なんだよ...湯水のように税金掛け流しの伏魔殿都庁をゴシゴシ洗い流し、清廉潔白な役所に戻してくんろ。きれいな小池、増す田んぼ、颯爽と険しい嶺を越えていく鳥、三人とも真摯な気持ちでいかないかんばい!と思うのだが、昨日の記者会見で見せた三人三樣の表情には、それぞれの思惑が読み取れました。小池のおばちゃん、自信たっぷりにみえるのだが、政界渡り鳥を地でいく過去を物語るように、彼女は所詮風見鶏。増田のおっちゃんは、いかにも実務家に見えるのだが、結構世渡りがうまそうに見えますな。ダンディ鳥越は、いつもの歯切れがなく、やはり病と年齢の厳しさを感じますな。いずれにしても、腐れ切った東京都の病巣にメスを入れ、庶民が優しく暮らせる東京にしてくれればいいんだよ...と言っても、現状の都議会が問題だな。利権で動いてる都議会議員がうじゃうじゃ居るもんね...あの人たちの貌見ただけで、こりゃ駄目だと思ってしまうほどの酷さでございます。誰が当選してもこの難問をクリアしなければ、又しても道半ばなんてことになっちゃいますことよ。

とりあえず、この17日間、三人の日々変わりゆく表情と言葉をじっくりと照査してもらいますがな...おいらが投票する人は、もう決まっていますけどね。

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伏魔殿

2016/07/13
【第841回】

「百枚めの写真」いよいよ地方公演が始まりました。安保法案、憲法改正などなど、なんだか70数年前の空気に近づいている感がしますが...でも、この国の人、なんだかこの日本国がまさか戦争なんてことに巻き込まれるなんてあり得ない...戦前も、そんな状況の中じわじわと外堀を埋めながら戦争に突入しました。あり得ないことがあり得るのが権力を握っている輩の常套手段でございます。

おいら、演劇を生業としてるもんですから、何とか芝居のチカラで戦争がいかに虚しいものであるかを伝えたいと思っとります。早速、一昨日、京都の公演に行ってきました。伏見区にある呉竹文化センターには多くの観客が集まってました。京都労演の主催で、会員さんが集めた戦中の家族の写真が何枚も掲示板に貼られていました。出征時の写真、今もって行方が分からない息子の写真などなど、セピア色した写真を見ているだけで涙がちょちょ切れてきます...戦地から帰り、国のため、家族のため、生を全うしたかったに違いない...とんでもない一部の権力者のために300万の人たちが亡くなったことは決して忘れてはいけません。なのに、新たな権力者は、私利私欲のための歴史を作り後世に残すことに躍起になっとります。この悲劇を繰り返さないためにも、おいらも含め創造力を駆使して、なんとか戦争に加担しない国を形成しなきゃいけまっせん。

終演後、地元の伏見の酒を主催者、出演者と夜が更けるまで堪能しました。こうやって芝居やれるのも、美酒に酔いしれるのも平和があってのことですばい。

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七月の夕景

2016/07/11
【第840回】

参議院選挙、予測どうりの結果で試合終了...それにしても有権者の半分ちょいの投票で、国の行方が決まるなんておかしな制度だね。半分の人のほとんどが誰に入れても政治は変わらないと思ってる人、おいらの友人なんかは今の政治家、制度に頭から否定して、選挙自体にナンセンスを唱えてるやつもいまっせ。驚いたのは、今年から選挙に加わった18歳~19歳までの若者のほとんどがの投票先が自民、公明だったこと。この国の未来も決まったもんみたいなものですな。要は、大きな変化を求めず可もなく不可もないどっちに転んでもいい状態で居たいってとこかな。そりゃそうだよね...お先真っ暗じゃおー怖、不安でしょうがないもんねえ。まだまだ若いんだから、おいらみたいに世界放浪の旅してから、世の中で何をしたらいいのか思考しても遅くはないと思うんだが...そりゃ無謀なんだが、若いときは当たって砕けろチャレンジ精神が欲しいですな。まあ、おいらはそのうち死んじゃうんからいいんだが、若い諸君が戦地に行かねばならない状況を考えると悲しいな...戦争に加担しては絶対になりません!

選挙運動の最終日、新宿西口広場で落選した候補、様々なミュージシャンが演奏しながら楽しい選挙運動をしてました。絶叫して嘘ッパチほざいてる人なんかよりよほどよかですばい!

今回、ひとつだけ良いニュースがありましたな。鹿児島知事に反原発の候補者、三反園さんが当選したこと。今回の選挙で原発が争点にならないなんてあり得ないと、おいら頭にきとりましたので。

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楽しい選挙

2016/07/08
【第839回】

風間杜夫ひとり芝居が終わったと思ったら、今日から又、新しい作品の公演が始まります。

これまた再々演になる「百枚めの写真」。おいらも半世紀ばかり、いろんな反戦劇は見てきましたが、この作品は、手前みそで恐縮なんだが反戦劇ベストスリーに入る逸品です。この芝居の中に99枚の名もなき庶民の記念写真が写し出されるんですが、この写真は胸に迫ってくるものがあります。戦地にいる父、息子たちに、元気な姿を確認させるために国家が撮ったものなんだが、その表情からいろんなものを想像させてくれます。国は戦意高揚を狙った意図がみえみえなんだが、明らかに残された家族の表情には、不安と期待と願い、そして恐怖の感情が読み取れます。歴史に国家に翻弄される市井の人達の悲しみが伝わってきます。この写真に6人の俳優が立ち向かっていくさまが、まさしく演劇的です。淡々と、時には激しく俳優の生身の身体が99枚の写真と拮抗していきます。

明後日は参議院選挙です。この国は、何だか不穏な空気に支配された時代に戻りつつあります。事実、国外でも日本人がテロの対象になりました。戦争は勿論良くないのだが、その行為に絶対加担しないための憲法9条を死守するための選挙かもしれませんな...忘却の民ニッポンの皆さま、どうせ投票したって変わらないんだから...なんていつもの常套句を垂れてると、貴方も、いつの間にか百枚めの写真に撮られ、近未来の戦地にいる父、息子に送られる羽目になりますぞなもし。

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清涼

2016/07/06
【第838回】

久しぶりの北海道でございます...お上り、観光絵はがき旅行は嫌いな一人だが、宿の近くでもあり挨拶代わりに時計台には行って参りました。ビルの隙間に申し訳なさそうに建つ時計台、元気でひとまず安心でございます。この日の収穫は、すすきのの飲み屋で会った82歳の漁師。いやいやまずはその風貌に圧倒されました。田中角栄とガッツ石松を足して二で割ったいかつい顔なんだが、笑うと赤ん坊みたいな表情がたまりません。60年間船に乗り生死を彷徨ったことも幾度もあったそうな...彼の話で一番印象に残ったのは「海は生き物であるっぺ、この海をなめたらあかんぜよ...おっかちゃんであり、おとっちゃんであり、よかおなご、わるかおなご...いろんな顔した海と生きてきたっぺ...」話が絶好調になったところで歌をご披露。3曲とも津軽、道産子の海の歌でございました。荒波にもまれた喉から絞り出される歌声は、そりゃまあ人生そのものでございました。とても82歳には見えない頼もしいおとっつぁんでありました。

なんで北海道に行ってたの?昨日が、風間杜夫一人芝居の、ほんまもんの千秋楽でございました。遊びで行ったんじゃございませんことよ...ちゃんと仕事してますがな。

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お久しぶりでした

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桑名の味噌ラーメン

2016/07/04
【第837回】

昨日は、風間杜夫ひとり芝居「正義の味方」東京公演の千秋楽でした...再々演なのに連日満員。それしてもよう入りましたわ、19年間やり続けた意義、意味、拘りが実を結んだような気がします。普通であれば、一、二回観ればもういいでしょう...なんてなるんだが彼の芝居は噛めば噛むほど味が出るガム、いや、するめみたいなもんでしょうな...今回の公演のパンフレットに書いたおいらのコメントがすべてです。来年もひとり芝居の新作を創るし、昨日の飲み会では、7年前に封印した牛山明を描いた「ひとり芝居五部作」をまたやろうか!なんて言葉が出てくるんだから、たいしたたまげた役者さんですわ...

<パンフレット掲載文>
ひとり芝居を19年間続ける風間杜夫は、とてつもないエネルギーを蓄積しているに違いない...英気、鋭気、色気、覇気、志気、狂気、笑気などなど、これだけの気を持ち合わせていないと、孤立無援の舞台を一人で立てるわけがない。彼は芝居が終わると必ずと言っていいほど酒を飲むし、稽古場だって稽古時間の倍の時間酒を嗜む。唯、飲んでいるのではなく、たわいもない話の中に何かを感じ、客観的にニンゲンを観察しているに違いない。趣味の麻雀だって、その時間に凡人と違った時間の過ごし方を楽しんでいるのではなかろうか...
それにしても19年間6本のひとり芝居を携えて、日本のみならず世界を巡演している俳優はギネスブックに登録されてもおかしくないはずだ。水谷龍二の台詞を縦横無尽に遊び尽くし、多くの観客を魅了する彼こそ、もっとも相応しいひとり芝居役者ではなかろうか。
再々演になる今回の芝居、更なる進化を遂げて観客を大いに楽しませてくれるに違いない。

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今日の明治神宮

2016/07/01
【第836回】

昨日は風間杜夫ひとり芝居「正義の味方」の昼公演後、友人の芝居を観てきました。この方御年72歳、アングラ演劇一筋の素敵なオッサンです。若いときは、そりゃカッコいい個性的な役者さんでした。印象的な面構えと手足が長い痩身で新宿を歩いていると、そりゃ目を引きますわ。おいらとはアングラ劇団「走狗」で出会ったんだが、相当自信があったんでしょうな、ブイブイ言わしておりました。まあ、おいらが見てもマスコミに行けば売れるだろうなと思っていたし、年上だからしゃあないと傍観しとりました。アングラ劇団のテント芝居では暴れまくっていました...日本全国テントを持っての過酷な旅の中で、一番とんがってる存在で、終演後の飲み会は喧々諤々、最後は殴り合いの喧嘩になる始末でございました。

ほぼ半世紀、彼の人生が一貫してるところに頭が下がります。今でも、当時住んでた木造の風呂なしのアパートワンルームに愛する奥さんと二人で住んでます。生活は朝6時から百貨店店内の商品運搬係をやっとります。好きな芝居を、それもお金にならない場でこつこつと演じ続ける彼の姿に男の生きざまを見ましたな...終演後、体調どうなの?と聞いたところ前立腺肥大で大変だとのこと。しかしながら、精悍な顔つきと誇り高き姿勢はなんら変わることありまっせん...人生ってなんだろう?お金ではなく社会的な立場でもなく、己が信ずる道を真っすぐ突き進む生き方に、今やあまり見なくなった気骨なるものを感じましたがな。達ちゃんいつまでも元気でいてくださいね!

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東京暮色

2016/06/29
【第835回】

昨日は、グラシアス小林親子と一献傾けました...グラシアスさんはスペイン在住30年、現役のフラメンコダンサーです。彼と知り合ってはや40年近くになります。マドリッドで出会ったときにはまだ3歳だった息子、海来(みらい)君は立派な絵描きになっていました。今回は銀座の画廊に出品したので来日したそうな。いや、月日が経つのは早いもんでございます。おいらがマドリッドのマヨール広場で大道芸してた時に、お客の投げ銭がころころと転がっていく様を見て、海来くん転がる投げ銭追っかけて見物人の足元に紛れ込んでいきそうだったペセタ銭を捕まえて、おいらに渡してくれたんだよね...一緒に来てた親父グラシアスさんは「おいらの大切な息子を巻き添えにしてくれるなよね...」なんて顔してましたな。そりゃそうだ、異国の地に来て、やっとこさ居場所を見つけ出した家族にとって、なんだかわけのわからん無頼がおかしなことやりだしてもらったら立場ないもんでごぜえやす。それを察したおいらは、首都マドリッドをあとにしてスペインさすらいの旅に出たのでございます。40年前にフーテンの寅さんやっとりました。たまにマドリッドに戻ると、小林ファミリーと楽しい時間を過ごしました。

それにしても、あの海来くんが今やスペインでは押しも押されぬ画伯になったんですからおめでたいことでございます。昔懐かしい話に花が咲き、瞬く間に夜が更けてしまいました。

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レトロな酒場

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グラシアスさんと画伯

2016/06/27
【第834回】

何年ぶりだろう...週末、表参道、原宿を散策いたしました。表参道ヒルズには驚きました。えっ!2006年にオープンしてるのに今頃、感心するところがレトロなオッサンですな。それが良いんでございます。お上りさんみたいな田舎もんでない品のいいい紳士なのかもしれませんぞ...スカイツリーにもまだ上ったことはございませんし、ディズニーランドなんかもまだまだでございます(これは、半世紀お江戸に住んでいながらの、かなりの記録ものかも知れませんな)ちゃらちゃら、はやりもんに手を出すおっちょこいのぱーぱら品種じゃございませんことよ。こんなはやりもんより下町風情溢れた小路をちょろちょろ歩いたり、大阪のジャンジャン横丁でオッサン、おばはんの表情観てる方が楽しいですな。京都よりも奈良の素朴な畑路をゆったりととぼとぼと歩いてる方がよろしゅうございますな。

ところで表参道ヒルズ、築年数80年を経過した同潤会青山アパーを取り壊し安藤忠雄設計のもと建てられたとのこと。ま、それはお洒落なことでございますことよ。田舎のお上りさんもついつい気取った顔つきになりますがな。無理せんといて...普段着で宜しゅうございます。人間急には変われません、田舎の香りをほんのり残しながらの自然体で近未来の街を散策するミスマッチが思わぬ絵になるかもしれませんぞ。

原宿の竹下通りも久しぶり。スカウトマンらしきあんちゃんが目ん玉ぎょろつかせて若い娘さん追っかけていました。おいらも、一応この世界のプロでございます。見たところ将来スターになるような娘さんいなかったような気がしますな。いつの世も夢追い人が集う場所には危険な臭いもしますのでくれぐれもご注意あそばせ...いや、今時の娘さんの方が一枚も二枚も上手かもしれませんぞ...オッサンの方が騙されちゃいますがな。

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表参道ヒルズ

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竹下通り

2016/06/24
【第833回】

昨日、沖縄は太平洋戦争の沖縄戦の犠牲者を悼む「慰霊の日」を迎えた...おいらも昨年、戦後70年の沖縄を訪れた。青い空に、エメラルドグリーンにかがやく沖縄の海を眺めながら1945年3月にアメリカ軍が上陸した浜に立っていました。地元の住民はどんなに怖かったんだろうか...こうやって本土の人達は、美しい素朴な島に憧れて物見遊山で来るのだが、沖縄を好きといいながら現実は基地を押しつけている現状。このことに罪の意識を感じない本土の人達は、沖縄を愛しているといいながら、実のところ差別しているのではなかろうか...アメリカ軍が沖縄を植民地化している姿となんら変わることがない。沖縄の人達は、米軍基地を本土にも引き取って欲しいと言っているにも拘わらず、未だ検討の機運さえ生まれません。本土の人達が痛みを感じずにいられる構造が延々と続くこの有り様は、犯罪的かもしれませんな。おいらも含めて、沖縄の人達の心情、現状を我が身に置き換えて、どげんかせんといきません。嫌がることを他人に押しつけて、見て見ぬふりをする本土の皆さんは姑息ですぞ...世界に誇れる美しい海の数百種のサンゴと、色 あざやかな熱帯魚が群れをなして泳いでいる姿に酔いしれると同時に、島の大半を占めるアメリカ軍基地をしっかりと、この目に焼き付け、本土に帰ったら沖縄の苦しみに思いを馳せ、アクションを起こさないと犯罪の加担者になりますぞ...そうだ、本土なんて言葉自体が差別だ...沖縄も日本の県、本土です。沖縄の人達が他県の人達に対して使う本土という言葉は、戦後、何もしてこなかった日本国に対する怒りと諦めが込められた言葉ですぞ。

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アメリカ軍が上陸した浜

2016/06/22
【第832回】

先日、1978年から年頃の娘さんたちを連れ各地を転々とし、79年に福岡に拠点を構えた「イエスの方舟」を扱った芝居を観てきた。千石イエスよ、娘を返せ!と大いにマスコミを賑わせた事件だ。宗教ってなんだろう?新興宗教もたくさん出現したのだが、その要因は家族という共同体の崩壊。戦後第一の共同体である家族を捨て、第二の共同体である企業を信仰してきたのであるが、その企業の発展も個人や家族の犠牲の上に成り立ってることに人々は気付きはじめ宙吊り状態になったところを、すかさず心という抽象的なものを餌として新たな共同体を提案した次第である。新興世俗宗教の集会は派手である...代表者が壇上で檄を飛ばし、華やかな曲を流し、集まった信者を一気に取り込む、企業では物を売り込むことが拡大拡張であるのだが、宗教は形のない心を手を変え品を変え売り込むのである。この新しい手法は、企業と家族の間で宙づり状態になった市井の人達のとの都合の良い受け皿だったのかもしれませんな...大体において共同体なるものが幻想であり、権力者が権力を手にしたいがための容器であり、人の弱みに付け込んで容器に一人二人と押し込め洗脳していくのであります。その点、冒頭のイエスの方舟の教祖千石剛賢氏は、家族崩壊した女性の良き相談者として慕われ富を築くこともなく、皆で細々とアルバイトしながら共同生活した愛らしい集団でございます。九州博多中洲で営業している「シオンの娘」に、おいらは何度か行ったのだが、それはそれは素敵なお店でした。カウンターの足元にある足裏マッサージ機器には驚いたなもし...お酒を飲ましながら健康にも気を使ってる店なんぞありませんがな。

おいらの宗教観は、神羅万象すべてが神であり、行きつくところ己の中に唯一神が宿っているんじゃありません...困った時の神だのみにすがってると洗脳されちゃいますぞなもし?

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水無月の神さん

2016/06/20
【第831回】

何やってんだ!田辺監督、潮崎ヘッドコーチ、あんたらのへぼ作戦でまたもや5連敗。今シーズン沈みっぱなしのライオンズに喝を入れるため貴重な日曜日の昼間、神宮球場に参上いたしました。それにしても、昨年の13連敗という惨めな記録を作りBクラスにさせてしまったお地蔵監督(ベンチで黙って座り込んだままの指揮にはホトホト)を続投させ、毎年ガラクタ外人を連れてきては反省もしないフロント。あのかっての強いライオンズを、ここまでしちゃ長年のライオンズファンはたまらんですばい...昔のライバルチーム、ソフトバンクホークスがあまりにも強いので、そりゃ見ちゃおられんですばい。親会社にお金がなくても、今年首位を行く広島カープがうらやましかですたい。ライオンズだって魅力あふれる若き獅子がいるのに、それらの選手を上手く使いきれないお地蔵さん自らやめて頂戴な。人間には向き不向きがございます(二軍の打撃コーチなら最適)。それを知りながら無責任に押し付けたフロントのばかちんには腹が立ちますが、ここはファンあってのプロ野球ですから潔く...

そんな日々の思いを抱きながら神宮球場に...チケット少しは余裕あるのかなと思いきや、外野自由席、バックネット見キレ席しか残ってないとのこと。外野席はおいらは好きませんな...ライオンズの攻撃になると全員が立ち上がり飛び上がるわ、走るわ、合唱するわ、そりゃかないませんわ...本場アメリカみたいに、鳴りものなしで観客が自由に己の感情のままに応援している姿を見習ってほしゅうございますがな。うるさいったらありゃしない!敵も味方もいいプレーしたら拍手喝さいなんて光景をアメリカの屋根なし球場で拝見してるとなんともうらやましい。

ところで見キレ席なんぞは初めての体験。バックネット真後ろの2階席で屋根を支えるポールが4本ばかりあり、場所によってはポールが邪魔になるというわけで設定した席でございます。ちなみに料金は¥3200。おいらの席はそんなに気にならないどころか、全体を見渡せる絶好のポジションでした。隣の五十代のご夫婦が、おいらが一人なので気軽に声をかけてくれ、三人でライオンズの勝ちを信じ手のひらが痛くなるほど応援しました。この日も、昨日リリーフ失敗した野上投手が出てきて、このアホベンチ何考えてるんや?と心配したのだが、何とか塁審に助けられ(際どいジャッジをライオンズにとって有利な判定をしてくれはったんですわ)6連敗を免れましたとさ。おいらが60年ライオンズ一筋のファンだと言ったら、この二人びっくりたまげておりました。三人で勝利を祝して喜びの握手をして球場を後にしました。この日負けたら、監督の出待ちして「いい加減にしろ地蔵!」と一発過激なヤジでも飛ばしたろかと思ったのですが、幸い勝ちましたのでテロリストまがいな行動を慎むことができましたのでございます。

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おいらの席からの球場

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一塁側(ヤクルト)

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三塁側(ライオンズ)

2016/06/17
【第830回】

昨日は、おいらの昔の芝居仲間であり、今はギネスブックにも掲載されている名店「しぇりークラブ」(銀座と京都にあります)のオーナーである高橋美智子さんがスポンサーである番組のゲストということで収録に行って参りました。地下鉄京橋駅直結、3年前に建てられた24階建てのビル、東京スクエアガーデンにあるスタジオに向かったのだが、日々変貌する都市のスピード感に圧倒されました。出店しているお店も皆こじゃれた飲食店ばかりで、今度来てみようかな...なんて気になる店ばかりでした。高橋美智子さん、おいらはミーコと昔から呼んどります。出会った頃は、それはそれは可愛い娘さんでした。小柄でクルリとした瞳に、歯に衣着せぬ発言をズバズバ発する、当時アングラ人気劇団の早稲田小劇場の看板女優でした。映画の主演にも抜擢されるほんまに魅力ある女性であったんですぞ...おいらとは演劇群「走狗」で7年ばかりテント芝居をやりながら全国を巡演してました。小柄な体ながら全身リポビタンDファイト一発!で途中挫折しそうな軟弱な男にはっぱ掛けとりました。そんな気力で、しぇりークラブを切り盛りしたんでしょうね。京都にあるお店は祇園の近く石塀小路にある蔵を改装したなかなか粋な店でございます。あの薄暗い灯りと石畳の小路を歩いてるだけで、ほっこりしますがな...京都に行ったら是非あがってみんさいな。

この日は二週分の収録で、おいらのお気に入りの曲を二曲かけてもらえるというので最初の週はJAZZ。一曲目はデューク・ジョーダンの「フライト・ツゥ・デンマーク」。二曲目はマッシモ・ファラオ・トリオの「懐かしのストックホルム」。こんな曲聴きながらシェリーを飲むと気分は最高ですよ!なんてお店の宣伝に繋がる話をするところなんて友達思いですな。二週目はスペインの話ということで、スペインに住んでた時にラジオから頻繁に流れていたフラメンコの伝説的な歌い手カマロンの歌をかけてもらいました。天才ギタリスト、パコ・デ・ルシアとの歴史的共演のCDから「COMO EL AGUA」(水に流して)「GITANA TE QUIERO」(ヒターナ、おまえを愛す).ミーコちゃんからスペイン生活のあれこれを聞かれたもんで、たくさんありすぎエピソードのなかから選ぶのが難しかったですがな。進行役の岸本さんの乗せ上手もあって、何とか楽しく二週分を取り終えることが出来ました。トム・プロジェクトの芝居の宣伝もしてくれてありがとう。そして何よりも嬉しかったのは帰り際にミーコが、おいらが大好きなシェリー「フィノ・キンタ」をプレゼントしてくれたこと。おいらがスペインに住んでた時に、いつも枕元に置き寝酒に愛飲してた代物でございます。ところで、この番組いつ流れるのかしら?興味のある方は下記のところに問い合わせてくださいませ。

 

中央FMラジオ番組
  「Salud ! Jerez ようこそ!しぇりークラブへ」
毎週・月曜日 20:00~20:29(本放送)
毎週・土曜日 19:00~19:29(再放送)
出演:高橋美智子(しぇりークラブ代表)
進行:岸本美智子
↓WEBからも聴くことができます。↓
http://www.simulradio.info/#kantou

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84.0 Radio City

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ミーコと岸本さん

2016/06/15
【第829回】

家族ってなんだろう...舛添のおっさんが家族のことを持ち出して知事を辞めたくないと涙ながらに語る。こんな風に家族を遡上にあげないで欲しいな。迷惑してるのは身内の家族なのに...

家族愛、家族が一番、家族の為なら、なんて言葉が巷では良く耳にしますがほんまかいな?そのくくりが逆にプレッシャーとなって悲劇を生み出す原因にもなって居るんじゃありません...家族の為に見栄はって無理したり、追い込んだり、迷惑千万でございます。この日本って国はなんと貧しい国なんだろう...感受性が最も豊かな幼少期から塾通い、どんなにええ学校、会社に入っても、あきまへんがな。出世にはあまり役にたたんが、このシステムが人生を最も豊かにしてくれるであろう想像の世界に羽ばたく翼を持ちえないまま大人にしてしまうんですね。

おいらが住んでたスペインアンダルシアの家族は貧しいながらも家族愛にかけては、そりゃたまらんぐらいのものでした。高等ではあるが地球をないがしろにする人間よりも、むしろ動物に近い愛情かな...いろんな形の幸せ、家族のありかたあるとは思いますが、所詮つまるところ人は個体から発するもんでございます。国家、社会、家族なんて言葉を安直に都合良く使う輩は気をつけてくださいな...

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家族

2016/06/13
【第828回】

本格的な梅雨の季節になりましたな...こんな日は五十嵐一生の「サマー・オルモスト・ゴーン」なんか聴くと夏の先取りができまっせ!このアルバムも行きつけのジャズ喫茶で見つけたのだが、ほんまに日本のジャズメンも地道にいいアルバム創っとります。一曲目から少し乾いたトラッペットが流れ聞き惚れてしまいますがな...この方、北海道出身のミュージシャンでどことなく寂寥感がある夏の匂いがたまりません。三曲目のボブ・マーリーの名曲「 ノー・ウーマン・ノー・クライ」がこれまたいかした曲ですばい。鬱としい夜に何度も何度も流していると高い湿度が、瞬く間に下がること間違いなし。

おいらのジャズ熱は収まらず、CDもだいぶ増えてきて、この先不安になってきますがな...今は、断捨離の時代。モノが増えることを良しとしない時代ですから、じゃんじゃん捨てなきゃなりまっせん。ましてや、死の世界に少しづつ突き進んでる年代ですから最もな話です。

三分前は過去でございます。いいことも悪いこともどんどん忘れ捨て去って、今のおいらがピカピカしてこその人生でございます。

美味しい酒、コーヒーのお供が、ジャズであることは終生変わらない気がします。今夜もジャズ聴きながら一日を終えたいと思っていますことよ...

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ジメジメをぶっ飛ばすCD

2016/06/10
【第827回】

三枝三七子さんの個展に行ってきました。三枝さんは、おいらが2009年、西日本新聞にエッセイを連載した時に挿絵を描いてもらった絵本作家です。連載は3ケ月50回に渡って掲載されたのですが、三枝さんは毎回、楽しく懐かしいカラーの絵を描いてくれました。この挿絵のおかげでおいらの拙文も、どうにか形になりました。表参道のポイントギャラリーでの今回のテーマは平和です。丁寧に描かれた三枝さんの作品は、彼女の平和への願いがひしひしと伝わってきました。彼女はたくさんの絵本を出版しているのですが、これらの作品の中で、ひときわ目を引くのが水俣に関する絵本です。2011年に「みなまたの木」(創英社)、2013年に「よかたい先生」(学研教育出版)。絵本の世界で公害を扱うのは異例のことだと思います。でも、果敢に粘り強く出版にこぎつけた三枝さんの精神力はたいしたたまげたもんでございます。いくつかの出版社に企画を持ち込んでも「いや、売れないですね...」「暗いですね...」との回答ばかり。まさにテレビの視聴率戦争と同じです。まあ、資本主義社会ですからわからんこともないんだが、こうやって良心的な作品が闇に葬られるのが世の常...ここを突破する表現者が現れたときはまさしく拍手喝采です。

トム・プロジェクトも今年、水俣の芝居創ります。忘却の民に何度も何度も口酸っぱく伝えないと、この国の行く末は安閑としてられませんことよ...

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絵本は語る

 

2016/06/08
【第826回】

梅雨入りしたのですが、何となく爽やかな日々が続いています。なのに世の中は、舛添要一東京知事の不祥事情報一色。昨日の都議会での答弁でも、あの元気もりもり、相手を威圧する迫力するのが売り物であった彼がショボンとしとりました。連日の疲れか、途中居眠りもしてましたね...ここまできたら辞めるしかないのにね。何をここまで踏ん張ってるのか...貧しい家庭環境から成りあがった彼にとっては、ここまで上り詰めた立場、権力を失いたくない一心なんだろうね。普通だったら、この貧しい体験を世のため人のために活かそうと思うのだが、このおっさん私利私欲に転嫁しちゃったんだね。あの人相見てりゃ誰だってわかるのにね...男の顔は履歴書でございます。あのぎんぎらぎんの目ん玉ぎょろつかせて品性感じさせない話ぶりを聞いただけで、おいらはこのおっさん胡散臭くて信用できないな!と思っとりました。ほんまに日本のヒトはお人好しで他人任せでございます。来月には選挙もあるのだが、投票率はいつも50%から60%、結果は現状維持。これだけ騙されてるのに危機意識を持てない鈍感人種なんでしょうかね?おいらは、今の日本で政治家は一人もいないと思っていますよ。皆さん政治屋という商売人の集まりですね。出でよ!真の政治家!といいたのだがこの国の教育、制度などなどからして無理でしょうな...ならば、今生きてる者がしっかり己を鍛えて権力に対峙できる体力と精神と頭脳をゴシゴシと磨く以外にありませんな...

それにしても、東日本大震災、熊本震災の諸問題もいまだ未解決だというのに、舛添おっさんのことで時間使ってる場合じゃありませんことよ。はよ辞めてもらって、この困難な時代みんなでなんとかせんばならんですばい。

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出番です!   

2016/06/06
【第825回】

関西、九州と旅から帰ってきたと思ったら、見なきゃいけない芝居が2本待っとりました。1本目はトムの芝居にも出演してもらった林田麻理さんが主演している「残花」。戦時中の移動劇団さくら隊が、滞在中に広島の原爆に遭うまでの話。林田さんは劇団の主演女優であった園井恵子役を美しく誠実に演じていました。内面の演技に磨きをかける麻里ちゃんの新境地を感じさせる舞台でした。

高円寺から新宿に戻り、おなかを満たすために十年ぶりに「てんや」に行きました。昔食べた時はやたら天ぷらの衣が分厚くまずい印象で、あの値段じゃ仕方がないのかなと思っとりました。久しぶりに食べた天丼、それはそれは進化しとりました。企業努力してるんですな。道理でお客がわんさか、ガイドブックにも掲載されているのか中国の団体客が嬉しそうな顔して入ってきました。注文してレシートがくるとすかさず電卓で何度も確認しとりました。お客さん...日本のお店は大丈夫だよ!と言いたいくらい何度も電卓はじいていました。

おなかも整えたところで、鳥山昌克企画!泉鏡花×鳥山昌克シリーズ第五弾!「水中花」を雑司ヶ谷の法明寺境内にある、みみずく会館に観に行きました。鳥山さんが初めて挑む唐十郎さんの本を構成したひとり舞台。演劇の世界に独自の世界を持ち込んだ唐さんの本は、誰しもがもがき苦しみ難攻不落の作品。この難関に果敢に挑戦していく鳥山さんの姿が美しい。何のために、誰のために...表現者にとっては愚問である。自分の生きる過程の中で、己の身体にまとわりついてくる感覚に酔いしれ、果てに迷路をさまよい、瞬間的に憑依の現場を知り...演劇も旅である。鳥山さんのライフワークにしてもらいたいシリーズである。

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法明寺

2016/06/03
【第824回】

6月1日、鹿児島県霧島市での公演、風間杜夫一人芝居「正義の味方」に行ってきました。

霧島といえば、豊富な湯量と緑豊かな温泉郷、1866年(慶応2年)には坂本龍馬夫妻が訪れたとのこと。スタッフは前日に先乗り、温泉三昧でお肌がつるりんこになっとりました。今回の公演は宝くじがバックアップしてくれ、なんと前売¥2000、当日¥2500という破格の入場料でございます。めったに観ることができない芝居、多くの人達が集まりました。まして、演劇の世界でも稀有なジャンルの一人芝居、霧島のお客さん「どげなもんじゃろかい?」期待と不安が入り混じる複雑な心境で開演を待っていました。場内が暗くなると突如、甲斐バンドの、『HERO(ヒーローになる時、それは今)』が流れ、内田裕也風の杜夫ちゃんが登場。客席は一気に盛り上がり手拍子の中、ギアはトップ状態でござりまする。芝居は、やはり最初の掴みが肝心、ど頭でお客のハートを鷲掴みしておくと後は一気呵成にいくものでございます。それにしても杜夫ちゃんの腕はたいしたたまげた千両役者。

終演後は、焼酎の本場、美味しい魚とさつま揚げで、こちらの方も一気に盛り上がりました。

今日は徳之島での公演。チケットも完売、島の人達の待ちわびた顔が目に浮かびます...

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良水に、うまか焼酎

2016/06/01
【第823回】

時間があるときに、ふらりとジャズ喫茶に入るのが大好きです...先日も、お気に入りのジャズ喫茶に入り丁寧に入れられた深煎りのコーヒを飲みながら至福の時間を過ごしていました。おいらもたいがいのアルバムは知っているのだが、「おや、何だろう?」気になりジャケットを見たら日本人アーチストの曲でした。タイトルは「MY WONDERFUL LIFE~TOGASHI Masahiko BALLAD COLLECTION」1970年前後、唐十郎などともにアバンギャルドアートの先駆者として活躍し、その後下半身不随になるものの2007年67歳まで音楽活動をした鬼才ドラマー・富樫雅彦が作曲したバラードを、友人たちが2009年に演奏していた先品でした。一曲目のMy Wonderful Lifeがたまりません。サックスを偲ぶかのように吹き鳴らす渡辺貞夫の入魂のプレイに思わずほろりしそうになっちゃいました。サポートするピアノの佐藤充彦がこれまたいいんですね...その他、日野皓正、峰厚介、山下洋輔も参加してます。亡き盟友を、残された仲間が、尊敬と友情を音楽で表現した名盤の一つだと思います。早速、購入し毎晩聴いてますがな...アルコールを嗜みながら、音色の中に込められたそれぞれの人生を愛おしみ、今夜もジャズにありがとうですたい!

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泣きまっせ!

2016/05/30
【第822回】

神戸で「神戸芝居カーニバル」を長年主催している中島淳さんに呼ばれ講演してきました。中島さんはトム・プロジェクトの最初の公演、片桐はいりの一人芝居を神戸に呼んでくれた人です。おいらより年長なんだがサムライ然とした佇まいをした粋な関西人です。昨日は第15回中島淳のアジト談義ということでおいらがゲストとして招かれた次第です。おいらの肩書に、理の当然、情を立てるプロデューサーなんて書いてありました。二時間ばかり話をしたのですが皆さん喜んでくれたみたいでほっとしました。スペイン放浪の話、勿論芝居の話、おいらの波乱万丈の人生の引き出しのいくつかを、面白おかしく聞いてくれました。考えてみれば、日曜日の貴重な時間、そしてお金をおいらのために費やしてくれてるんだから、つまらん談義になってしまうと申し訳ありません。そこはおいらも元役者でございます。集まった人たちの顔をしっかりと見つめ、言葉に緩急をつけながら、居眠りさせないように話しました。

評判良かったのか、そのあとの飲み会にもたくさんの人が来てくれました。そして二次会は神戸と来たらジャズですね。中島さん推薦のジャズライブ&レストランソネに連れてってくれました。神戸の素敵な夜をおいらの大好きなジャズで締めてくれた中島さんありがとう。そして楽しい一日を過ごさせてくれた神戸の皆さん又逢いましょうね。

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ライブ中、撮影禁止のためこっそり撮ったソネ

2016/05/27
【第821回】

東京都武蔵野市の井の頭自然文化園で飼育されていたメスのアジア象はな子が亡くなりました...おいらも3年前に挨拶したのが最後でした。果物をひとつひとつ丁寧に長い鼻で取り上げてる様が、まるでお客さんにサービスしている優しい気遣いに感じられました...なんと言っても動物園の花形スターだったので、はな子も気苦労が大変だったのでなかろうか。でも、こんなに長く生きられたのは、飼育員さん達の愛情もさることながら、はな子見たさに集まってくる人達の笑顔が支えだったと思う。同じ生き物として以心伝心、相手次第で気分も良くなり体調も万全となるものだ。3年前も、もうそんなにサービスしないで早く休んだらと心配したのだが、時間延長サービスで、いつまでもいつまでも愛嬌を振りまき象舎に戻ることがなかった...

それにしても、動物園は必要なんだろうか?確かに、子どもたちに動物を知って貰う唯一の施設ではあるのだが、あの動物園にいる生き物の、まるで精気のない死んだような表情を見ていると悲しくなってしまいます。ニンゲンの勝手な欲望で捕らえられ、世界の動物園に売買され見せ物として生きざるを得ない境遇に納得できないモノを感じてしまいます。せめてものアフリカケニアの自然動物園、日本で言えば大分県の高崎山自然動物園くらいにして欲しいと思います。監獄同然の檻に入れられた動物と対面したって、何話したらいいのか戸惑ってしまう年齢になっちゃいましたおいらです。

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はな子

おつかれさまでした

2016/05/25
【第820回】

今年も咲きました...2009年に、トム・プロジェクトが第43回紀伊國屋演劇賞 団体賞を受賞した時に貰ったお祝いの花です。事務所のベランダに何気なく、肥料、栄養剤を与えることなくエアコンの室外機の上にちょこんと乗せているのだが、毎年5月に約束したように清楚で綺麗な花びらを見せてくれます。これを見るたびにまだまだガンバランバと思えてきます。この季節の新緑を含め、自然界の息吹に触れるたびに新たなエネルギーを頂きます。もう十分やってきたから、そろそろ身を引こうかなと...なんて気になったときに、目に染み入る若葉を見るにつけ、好きな仕事させていただいてるのに、申し訳ない気持ちになってきます。雨の日も風の日も、全力で命を全うしてる自然界の生き物に叱咤激励されてるのかな...おいらが住んでるマンションの庭の樹木も、あっという間に森に変貌してしまいました。3月頃に庭師が樹木の枝をバッサバッサと切り落としていくもんだから、今年は葉が少なくなるのではと心配していたのだが、なんのなんの、若くて活きのいい葉っぱちゃんがニョキニョキと顔を出してくるじゃありませんか!おいら嬉しくなって思わず「ありがとう!」なんて声かけちゃいました。木々たちも声をかけてもらうと嬉しいみたいですよ...

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今年もありがとう!

2016/05/23
【第819回】

この良い季節に、世の中は舛添疑惑と、沖縄、東京での二人の娘さんの殺人事件で沈痛な気持ちと怒りで心が晴れません...猪瀬、舛添とよくまあこんな人を選んだ東京都民のセンスの無さ、石原だって然り。人材が居ないと言っても、この三人に共通する目立ちたがり屋精神、顔見みれば判るでしょうが...男の顔は履歴書ですぞ、どう見たって庶民の味方には見えんと思うんですが、こんな世の中ですからついつい期待しちゃって一見強そうな男を選んでしまうんですね。男のほんまもんの強さはこんなもんじゃございませんことよ...それにしても舛添の税金泥棒にも匹敵する金銭感覚には呆れてしまいます。政界にいたときの風見鶏風情からして怪しいのに、すっかりまたしても東京都民騙されてしまいました。辞任した後、誰がなるんかね...橋下?蓮舫?東国原?...???にならざるを得ない日本国の政治家不在には、本当に嘆かわしい限りです。

沖縄...いつまで沖縄にアメリカ基地の負担を丸投げさせるんでしょうかね。沖縄が日本に復帰して、本土が肩代わりしようなんて議論を真剣になされたことがあるだろうか?いつもないがしろにして逃げてきた国家、国民大いに反省しなければいかんと思います。今回の事件、このままの状態では無くなることはないでしょう。日本を他国の脅威から守るために日本全土の0.6%にすぎない沖縄県に在日米軍基地の75%が集中しているという現実は、まさしく異常である。ほんなごつ日本の皆々様、沖縄の人達の身になって智恵しぼらんと、いつまでたっても変わりませんぞ!隣に基地が来ることもあります。そのときは気持ちよく受け入れましょう...他人の痛みが分からん生き物はニンゲンじゃございません。

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平穏な日々

2016/05/20
【第818回】

からっとした気持ちがよい日が続いていますね...昨日はKAKUTAの「アンコールの夜」を観てきました。工藤直子「ねこはしる」を基に桑原祐子さんが構成・演出・脚本を担当した作品です。会場にはいがぐり頭の少年20人、一歳未満の子供を抱えたお母さんたちが8組座席に座っていました。芝居が始まると、当然泣き出す赤ちゃんも居るのだが途中退席も可能。自由な雰囲気の中で芝居は進行していったのだが...おいらがどうしても気になるのは、幼児が観劇しているときの表情...舞台よりもそちらの方に、ついつい目がいってしまうんです。つぶらな瞳が真剣になったり、笑ったり、声だしたり、しかめ面になったりと百面相。勿論、言語の意味は判らないのだが、この子達の何ら手垢がついていない純真無垢なる魂は何を観、何を感じているのか...大いに興味があるところだ。この子達が受信している中身を分析すると演劇の本質に肉薄できるのではなかろうか?なんて思っちゃいました。

残念ながら、この社会では無垢なる魂も、競争社会の中で知恵をつけ、生きるために手に入れざるを得ない日々の中で手垢がつき、モノの本質が見えなくなり、苦しみ悶えながら死んでいくのでございます...とすれば、いくらかでも、あの日、あの時のピカピカの魂を取り戻す生き方を求め、少しでも綺麗な心身で死んでいきたいもんでございます。

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川面

2016/05/18
【第817回】

一昨日、埼玉県志木市で今年の風間杜夫一人芝居「正義の味方」がスタートしました。再々演になるのですが、この日の公演を観て、なるほど芝居は歳月を重ねて熟成するものであることを再認識した次第です。勿論、風間杜夫という役者が人間として過ごした時間、俳優としてこなした仕事の両者を含めての積み重ねが、舞台上に見事に結実しているさまを見るにつけ、まさしく役者の仕事は生き方そのものだと、改めて思った次第でございます。一人芝居は確かに難しいジャンルです。下手すれば退屈極まりない演目になってしまいます。つまらん役者を一時間半観せられてごらんなさい、そりゃ苦痛、拷問以外の何ものでもありませんことよ...この一人芝居の面白さは、当然のことながら登場しない相手役を観客が想像する楽しみにあると思いますね、風間杜夫の絶妙の間と、愛嬌と、色気と、エネルギーあってこそ成立する世界であることは確かなことなんですがね...

終演後、いつものように一杯やったのだが、酒がすすむ中「来年もやろうか!」という言葉が飛び出す始末。この辺の乗りの良さ、意欲、とても67歳になった人とは思えません。死するまで、芸に対する飽くなき闘志が衰えることなく舞台人として突っ走っていくんでしょうね...

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志木市にあった古い蔵

2016/05/16
【第816回】

唐組のテント芝居観てきました...蜷川さんが亡くなり、アングラなるものが昭和と共に遠くなってきている今日この頃、半世紀の長きにわたり変わらず新宿花園神社でテント芝居を興行している唐十郎さんには頭が下がります。新宿の新緑の中で聳え立つ紅テントを見ると何故かほっこりいたします。おいらにとっての演劇の原点かも知れません...テントの中で繰り広がる荒ぶる魂に何度打ち震えたことか...芸術、文化を超越してニンゲンの存在の凄さを魅せつけてくれました。亡くなった蜷川さんも、唐さんに影響され負けたくない一心で数々の傑作を創っていったに違いありません。

今回の演目は「秘密の花園」この作品は1982年に下北沢本多劇場のこけら落とし公演として、緑魔子、柄本明、清水紘治のトリオで上演され、その後劇団唐組が98年と99年に紅テントで上演している。聖と俗がクロスする唐十郎の傑作の一つだが、今回のヒロイン藤井由紀さんが素晴らしい。美人女優だけに、唐十郎の文体を身体化していく作業は並大抵のことではないのだが、唐さんとの長年の創作現場の中から遂に掴み取ったという感じがして嬉しくなりました。ラストに舞台後方の装置が取り払われ、花園神社の赤い鳥居に佇む由紀さん素敵でした。美しいスタイル、ルックスについつい魅とれてしまいましたよ...

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紅テント

2016/05/13
【第815回】

蜷川幸雄さんが亡くなった...おいらの観劇体験のなかでも、1969年新宿文化シアターで上演された現代人劇場『真情あふるる軽薄さ』は鮮烈な記憶に残る作品であった。劇団青俳を岡田英次、石橋蓮司、蟹江敬三と共に退団し新たな集団を結成し演出家としてスタートした蜷川幸雄の才気が一気に花開いた瞬間でもあった。芝居が終わり扉を開けると、機動隊が盾を手にして帰りの客を阻止する演出には一瞬恐怖さえ感じました。まさに時代の空気を演劇の中に取り込む手法は、世界のニナガワを十分に予見されるものであった。芝居をやってないときは新劇反戦なるヘルメットを被り新宿東口広場に立つ姿を度々目にすることもありました。小劇場から商業演劇への変身にはバッシングはありましたが、以降優れた作品を生み出したことは紛れもない事実です。絵描き志望だけあって、舞台美術、音響、照明、どれをとっても資本の力を余すところなく活用して自分の美学を貫き通したところはさすがです。旬の役者を起用して演劇観客の動員に弾みをつけたことも功績のひとつかな...

いずれにしても、こんな演出家はそうそう出現するものではございません。天国で、先に旅立った盟友蟹江敬三さんと共にお疲れ様会をやってくださいね。

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合掌

2016/05/11
【第814回】

昨日、錦糸町の稽古場に顔を出しました...風間杜夫ちゃん絶好調。6本目になる一人芝居「正義の味方」も今年で三年目、67歳になるのに相変わらず元気印。好きな芝居をして好物の焼酎嗜んで、隙間の時間に麻雀三昧。こりゃ丈夫なはずですわ、ストレスたまらんもんね...といっても役者という生業も複雑怪奇で他人には言えない苦労もあると思いますよ、でも仕事が途切れることなく現役で役者稼業を続けられてることが、ストレスを引き起こさない最大の要因なんでしょうね。稽古が終わるといつものように稽古場飲み会が始まります。時には稽古時間よりも飲み時間が長い時もしばしばありますよ。芝居は役者だけで出来るもんでございません、スタッフの大きな力があってこそのことでございます。そのことを一番わかってる杜夫ちゃん、自ら宴会部長をかってでて宴会を盛り上げます。こんなところも人に愛される役者さんなんでしょうね。彼と出会って43年、再会し一人芝居を渋ってた彼を口説いて始めた一人芝居も19年になります。一人芝居でたくさんの賞も頂いて、海外公演もたくさんしておいらも嬉しかですよ。勿論、一人芝居という難敵に敢然と立ち向かい挑戦していった杜夫ちゃんの役者魂に乾杯です。

いよいよ、来週の16日、埼玉県の志木市の公開舞台稽古から、再々演の一人芝居「正義の味方」が東京、地方を含めて25ステージ、7月5日まで上演されます。これが最後でございます。この芝居見逃しちゃいますと、一生後悔しますよ!皆の衆。

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シャクナゲ

2016/05/09
【第813回】

GWも終わりまたまた仕事でございます...おいらは妹の娘の結婚式で博多に行っとりました。この子、結婚するんかしら?と心配してましたが、なかなかいい旦那をゲットいたしました。おっとりしててもやるときは勝負するんやな、いや可愛い顔してるんで旦那はんが猛アタックしたのかな...博多の教会で式をあげ素敵なレストランで披露宴。おいらが乾杯の挨拶、なんで俺なんやと思いながらも心温まるメッセージを伝えましたよ。おいら正直言って結婚式あんまり好きでございません。美辞麗句を飾り立て、別れるのかもしれんのにと思うと何だかしらけてしまいますな。その点、葬式は亡くなったんだから思い切り褒め称え気持ちよく送ることができますな...

博多の街は「博多どんたく」で大賑わい。久しぶりに観ることが出来ました。子供の頃は花電車なんかが行き交い、そりゃ夢みたいな世界でした。西鉄ライオンズも強くて、平和台球場にどんたくシリーズ観に行ったな...相手チームは南海ホークス、なんと今のソフトバンクホークスでございます。世の中、ほんまに何があるかわかりませんな。

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博多どんたく港まつり

2016/04/28
【第812回】

今年はチェルノブイリ原発事故が起きて30年...このニュースを聞いたのは、スペインのアンダルシアで暮らしているときでした。白黒の安価なテレビから流れる事故の様子をスペイン語で聞くもんだからすべては理解することができませんでした。でも放射能がヨーロッパ全体を襲ってくる危険性を何度もしつこく報道していたことはよく覚えています。呑気なアンダルシアの人達もさすがに恐怖に怯えて笑顔がなくなり深刻な顔しとりました。

廃墟となったウクライナ(旧ソ連)、プリピャチの街は原子力城下町として5万人の人達が幸せに満ち溢れた生活を営んでいました。子供たちを乗せることが出来なかった観覧車、住民が住んでた建物さえ手が付けられず放置されたままの状態で伸び放題の樹木...まさしく福島の帰還困難地域とダブります。崩壊した原子炉の中には20トンの溶解した核燃料が残り、その取り出しは技術的に方法が確立しておらず、時期は未定だというのだから恐ろしい。

子供たちにも甲状腺癌の症状が出てきており、これから先の不安を隠せない様子...

なのに、今なお地震が起きてるのに川内原発を停止しないこの日本国は何なんだろう!余震が続く熊本の惨状を目のあたりにして、すぐ近くの原子力発電所が稼働してるのだから驚きである。おいらは、もうすぐ死んじゃうからいいのだが、この国を背負って立つ未来がある子供、青年のためにも頼むから停止してくれないかな...何度でも言います!少々不便でもいいから松下竜一さんが推奨する暗闇の思想の方向に舵を切ってくれんかなもし...原発を無くしエネルギー政策の見直しをはやくしてくんろ...時間がありまっせん!

 明日からGWに入ります。夢吐き通信も5月8日までお休みです。

一日も早く九州の地震が収束することを願っています。

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プリピャチの街

2016/04/25
【第811回】

先週の週末は西武ライオンズの試合をテレビで観戦...今年も終戦記念日を待たずして終戦なんて声もチラホラ。まだ開幕して一ヶ月というのに残酷な宣言でございます。その原因は先ずフロント陣、あんたらほんまにやるきあるんのかい!毎年、毎年、懲りずにポンコツ外人選手を連れてきて案の定ポイ捨ての有様。普通の企業であれば責任取らされクビなのだが、この会社コネで繋がってるのか居座り状態。ファンあってのプロ球団、これじゃ早くしっかりした会社に身売りしたほうがよっぽどましってもんでござんす。社長、編成部、スカウト皆一生懸命に頑張ってるんでしょうが結果が全ての世界、能力無いんだから自ら進退伺いなさったら如何かな...現場もフロントと息がピッタリ、監督、コーチ今ひとつどころかあんまり感心しませんな。監督は唯の気のいい親父、寮長あたりが適任といったところか。コーチ陣も昨年と比べて新しい人材を起用して期待を持たせたのだが、機能してませんがな...潮崎ヘッドコーチが次期監督?これもあまり薦めたもんでござんせんことよ。甘い顔して女性受けするかもしらんけど、勝負師の面相ではないですな...お金無しに人材不足、これじゃいつまで経っても優勝争いには加われないトホホ...

ぼやいてばかりいるのも癪だから、明るい材料も上げときますわ。昨日の楽天戦、8回にメヒアが逆転の満塁ホームランを放ったのであるが、この回の先頭打者、金子からのヒットから始まり、次の秋山も続いてヒット、ノーアウト一塁、三塁とチャンスを広げる。次の打者、渡辺がボテボテのピーチャーゴロ、普通であれば1点取られても2点差があるので併殺で2アウトとしランナー無しにするのが得策であるのだが、三塁ランナー金子が飛び出したばかりに楽天の投手釜田は金子をアウトにしようと深追い。その間、一塁にいた秋山が三塁に、打者渡辺は二塁に進塁。次のバッター栗山はしっかり選んで四球で満塁にする。勿論、大殊勲者は、冴えない監督、コーチのお陰で負け試合をひっくり返したメヒアであるのは当然なのだが、先頭で出塁し、走塁で敵方を翻弄させた金子の野球のセンスに拍手を送りたい。

金子選手は今年4年目、顔立ちが俳優の向井理似とされ、入団後には球団事務所に段ボール2箱分のファンレターが届いたり、人気選手と期待されたのであるが、2013年の秋頃から人気アナウンサーと交際。たいした成績もあげずチャラオの部類かなと思っていたのだが、今年は、昨日のプレーを見て期待できそうな気もしましたがな...なんと昨日が26歳の誕生日でもありました。冴えないチーム事情の中、やったれ金子!

今日も東京は良か天気、新宿割烹「中嶋」の鰯の刺身、並ばず食べれてご機嫌ですばい!

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私の出番ですわ...

2016/04/22
【第810回】

新緑が鮮やかな季節になりました...おいらは、柔らかな光を浴びきらきらと輝く葉を眺めるのが大好きです。忘れることなく、この時期に芽吹く木々の律儀さに唯々感謝するのみです。きつかろうに、たまにはお休みしてもいいんだよ、と言っても樹木は聞き入れてくれません。どんな風雨にも堪え忍び、ちょびちょびと葉を延ばし秋が来て葉を落とすまでニンゲンを癒してくれます。こんな木々にニンゲンはどんな恩返しをしてるんだろうか?恩返しどころか裏切りに近い行為をしているのではなかろうか...

新宿御苑も桜も散り大分落ち着いてきました。相変わらずアジアの客人が喜々として苑内を行き来しています。新宿で爆買して御苑で一服するパターンが定着しつつあります。彼らには、ここ東京の新宿は天国に近いエリアなのかも知れません。そんな中、中国の家族の団体が5,6才の子どもを激しく叱責しとりました。母親らしき婦人が子どもの頭、顔を本気で殴っとりました。子どもは大声で泣き出し、おいらにはパニック状態に見えるのだが誰も止めようとしません。周囲の目も気にせず徹底的に子どもを痛めつける様に何だか恐ろしさを感じました。日本人はここまでやらんだろうな、と思いつつ、しばし見ていたのだが、殴られた子どもは放置されたまま泣いとりました。

その近くでは、キャンパスに静かな佇まいで絵筆を手にしている男性が居ました。キャンパスを覗くと淡い水彩の絵が、この男性の性格を表すかのようなタッチで描かれていました。

どれもこれも平和だからこそ見れる風景...一日も早く九州の地震が収まってくれるのを祈るのみ。あの雄大な阿蘇山、のどかな湯布院、黒川温泉が再びニンゲンの癒しの場所として復活することを念じて...

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平穏な風景2

2016/04/20
【第809回】

九州の地震まだ収まりそうもありません...テレビの映像から映し出される疲労困憊した人たちの顔を見るにつけ、何もできない己自身の情けなさに唯々がっくりする今日この頃でございます。それにしても恐ろしや日本列島、こんな恐ろしい狭い国に何と日本は、アメリカ、フランスに続いて、「51基」(世界第3位)もの原発を持つ国なんですぞ。ドイツは賢い、5年前の東日本大震災を教訓に国内の原発を廃炉にすることをいち早く決定。頼むから日本もそうやってくれ!と、これまた日々お願いしとりますが、ちんたらちんたら迷走中。

こうなったら、おいら芝居で原発の恐ろしさ、公害の悲惨さ、環境の大切さを伝えるしかないと思っとります。芝居なんぞで世の中変わるなんて思ってませんが、なにがしのアクション起こさんと現状はこれまた時間の垂れ流し。今日も共産党の人たちが新宿西口で街頭演説していたのですが、ほとんどの人たちが通り過ぎていくのみ、この一角に喫煙できるスペースがあるのだがまるで火事の現場状態。この人たちにも否応なく演説は耳に入ってるはずですが、なんだか紫煙とともに天空に消えていくようでもありました...

そんな大変な状態の中、プロ野球は粛々と試合を続けているのですが、球場で選手たちが震災義援金のお願いをする姿はスポーツマンとして当然の行為。熊本出身のロッテ伊東監督が募金活動をしながら泣いとりました。地震が起きれば野球どころではありません...明日は我が身、東京だっていつも危険状態。家でも会社でも防災セットを用意して備えは万全にしとります。地震の神さん、どうかこれ以上は騒がんでくださいませ...

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平穏な風景

2016/04/18
【第808回】

我が故郷九州の大地で地震が発生しました...いや、まさか、こんな大規模な地震が起こるとは、まさしく想定外です。益城町は芝居でも何度かお世話になったところですし、熊本市も馴染みの場所です。そして日本でも人気がある大分の温泉地湯布院にも大変な被害が出てるみたいです。いつもゆったりとグレゴリオ聖歌が流れている素敵な喫茶店「天井桟敷」は大丈夫だろうか?テレビから流れる画面を見ながら、ただただこれ以上被害が拡大しないことを祈るだけです。
そして気になることは、これだけの惨事を伝えながら、直近で稼働中の川内原発の危機を伝えないことに疑問を感じます。あの5年前のことを思えば、即、稼働停止を検討してもおかしくないのだが、メディア、マスコミから発せられたことがない。考えてみればテレビ、新聞、雑誌も含めて皆、大企業からの広告で成り立っている産業だ...原発産業に関わっている企業のほとんどは皆、日本を代表する会社ばかりです。原発が無くなることによって損失を被るところは多々あると思います。今の政治、経済を司っている人達の米国との関係性も原発を停止できない原因であることも間違いありません。
あの東日本大震災は一体何だったのか!おいらは怒り処か、この日本の国のあり方に絶望さえ感じます。この有数の地震国でありながら、未来に対する展望さえ持ち得ない国に未来はないと断言したい...オリンピックなんかやってる場合か!5年前の後始末も出来ない体たらく、そして今回の災害。目の前の惨状を解決してからの話でしょう!と言いたい。
もうひとつ、5年前にあれだけの経験をしていながら、今回も物資がスムーズに行き届かない問題。行政は日頃何をしてるんだろう?緊急に備えての傾向と対策を本気で取り組まんかい!
ほんまに、この国滅びるぜよ、他国の属国になる可能性大いにあり、テレビに垂れ流されるアホな番組見ているうちに...しっかりせんかい皆の衆!

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茶房 天井桟敷

2016/04/15
【第807回】

明治座四月花形歌舞伎を観劇...次から次へと名優を失っていく歌舞伎界でこれからを背負っていく若手三人揃い組の公演。おいらが観たのは夜の部、井上ひさしの「手鎖心中」を43年前に東京宝塚劇場で劇化、歌舞伎版は1997年に初演された演目である。戯作の道に生きようとする若者群像の狂騒物語を、中村勘九郎がリーダシップを遺憾なく発揮し、なかなかいい芝居に仕立てあげておりました。いい芝居というより、今は亡き父、勘三郎の遺志を継ぎ歌舞伎の世界を盛り上げていこうという熱意が舞台上に色濃く表れていました。滑舌良し、テンポ抜群、遊び心も満点、在りし日の中村勘三郎を見せつけてくれてるようでもありました。相手役の尾上菊之助もチャーミングで、二人して歌舞伎の楽しみ方を観客に伝えようとする姿勢に好感を持てました。もう一つの演目は、静と動が対照的でありながらも劇的な舞踊「二人椀久」菊之助と中村七之助が幻想的な世界を創り上げておりました。七之助もまたチラチラと父親の面影を感じさせる仕草。この歌舞伎の世界の伝統、伝導の力をまざまざと魅せつけられる思いがしました。

それにしても入場料¥14000、若い人はなかなか行けませんな...でも、あの出演者の人数を含めての規模を考えれば仕方がないとは思いますが、なんとかせねば歌舞伎の世界も先細りになるのではと心配してしまいます。

芝居が持つナマモノの宿命。お金が掛かります、席数は限定されます、でも一度限りの真剣勝負、アナログ、ローテクの魅力がこんなにも満載されてる出し物はそうそうありませんことよ!

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たまには歌舞伎も良かですばい!

2016/04/13
【第806回】

昨日、新宿でランチを済ませ、いつものように新宿をふらついておりますと消防車のサイレンがけたたましく鳴り続き、上空ではヘリが旋回し黒煙が舞い上がる...どうやら新宿区役所の後方からの煙で火災が起こったらしいな...気にはなりつつ事務所に戻ってパソコンを開くと、なんとなんと新宿ゴールデン街ではありませんか!映像も流れ出し、戦後の古い木造建物が炎上中...おいらの青春が消えてなくなる!一瞬、この思いが過ぎりました。そりゃそうでしょう、あの建物は火がつけばひとたまりもありません。バブルの昔もありましたな。火事になり、地上げ屋が一斉に動き出しゴールデン街を更地にして大きなビルを建てようと企んでおりました。でも当時の店主が協力して、何とか阻止して生き残りました。

今回の火事も、先ほどの報道で無職の男が逮捕され、放火の疑い有り?当然、このレトロな一帯を商売にしようという輩も居ることは確かだし、この雑多でいかがわしい有象無象の人種が出入りしていることを面白く思ってない人達が居ることも確かだ。でも、この新宿ゴールデン街こそ、人の体温を身近に感じ忌憚なく対話が成立する場所ではなかろうか。おいらも、20代の頃何軒もの店に出入りし鍛えられました。酒を嗜むと言うより、己がなんぼのもものかを知らされる場所でもありました。だって、自分の意見を持ってないと店主に出直してこい!と出入り禁止する横暴な店がいくつもありました。最近は若い店主も増え、外人観光客も多々訪れ様変わりはしているものの、やはり魅力溢れた地域であることには変わりがない。

昨日、おいらも心配してゴールデン街に馳せ参じました。行きつけの何軒かの店は皆いつもの通り営業していました。嬉しかったな!前ほどは行かなくなったけど、人恋しくなったらちょいと顔を出し、お互いの生存を確認しあい、もう少し頑張ってみようなんて気にさせてくれる...幾つになってもおいらにとって新宿の故郷みたいなところでございますな。

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火災現場

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いつもの様に...

2016/04/11
【第805回】

先週の土曜日に懐かしいメンバー17名と久々に逢ってきました。嘗て劇団GMGで全国を飛び回っていた人達です。この劇団は、40年近く前においらの友人であったK氏が若い人たちを集めて、どうしても芝居で食っていける劇団を作りたいのでチカラを貸してくれ!てなところから始まりました...K氏は個性的な有能な役者さんでした。民芸、三十人会という劇団に所属しながら名優三國連太郎さんの弟子でもありました。自分で詩集を創り大道芸をやりながら、それはそれはユニークな人物でした。その彼が、何故かおいらを気に入り夜毎新宿の夜を二人で徘徊しとりました。時には危ない仕事もしましたな...そんな彼がおいらに泣きついてきたもんだから、おいらK氏に再三確認したことを覚えています。「本当に覚悟を決めてやるんですね!(それまでにK氏の奇行、悪行、珍癖などたくさん知っとりますんで)」大きな目ん球が、少年のような純な瞳に変化した瞬間、おいらは手伝うことにしました。東京でおんぼろレンターカーを借り九州に飛びました。それはそれは大変な営業の旅でした。芝居の演目は竹山道雄原作の「ビルマの竪琴」。学校で上演するための営業なのだが、なにせ無名の劇団なので先生に話してもぴーんときませんこと多多。そんな逆境になればなるほど面白がり燃え楽しむおいらでございます。持ち前のキャラで先生をくどき九州の二ヶ月間のスケジュールを全て埋めてしまいました。K氏の人生一度あるかないかの決意、その周りに集まってきた若者の顔が浮かぶたび「何とかしてあげたい!」おいらも久しぶりにハッスルいたしました...

そんな若者も歳月を重ね親となり、それぞれの道を歩んで今日、何十年ぶりに会った者もいました。あの日、あの時に演劇に心血を注いだことに皆、誇りに持っていました。人生やっぱりやりたいことはやっとかんと悔いが残りますばい...この日集まった17人の面がそう言っとりました。

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花筏

2016/04/08
【第804回】

富田定治・油彩個展に行ってきました...トミやんがこんな繊細な絵を描くなんてびっくりこきました。というのもトミやんとは35年前にスペインアンダルシア・グラナダで知り合いました。グラナダには当時ヒッピーまがいの日本人がごろごろしとりました。おいらもその一人かも知れませんが、群れヒッピーには入りたくなく一人距離を置いて、我が道を行く風来坊と言ったところでふらふらしてました。トミやんは元々が絵描き志望であったのだが、それでは飯が食えないので、路上で自作のアクセサリーを売りながら生計を立てていました。とってもセンスが良く商売は繁盛し、稼いだ金でスペインの安くて美味なる飲食を謳歌しとりました。女性にも受けがよくいろんな国の女性とよろしい関係も続けておったそうな...

日本に帰国して、久しぶりに会ったときには東京駅で新幹線車両の掃除人をやっとりました。おいらにこぼしてました「毎日ホームの下で待機して号令に従っておばちゃん達と仕事するなんて考えもしなかったなもし...おいどんスペインに帰りたか(彼は鹿児島出身)」

そして、次にあった時には原宿の路上でアクセサリーを売っていました。原宿路上販売の全盛時代で、機に敏なる彼はタイに素材を仕入れに行き、巧みな加工でまたたくまに人気者になりしこたまなお金を稼ぎ、さっさと鹿児島に戻り沖縄、屋久島なんかを転々して自由気ままに暮らしていました。たまに鹿児島で会った時にもにこにこにやにやするばかりで、働きもせず謎の生活をしていたのだが、突如「絵を出展したので見に来ない?」なんて言うもんだから鹿児島の美術館に行きました。そりゃ驚きましたがな、その巨大な絵は実にリアルで、まるで写真のように鮮明にして繊細な筆使いに彩られた著名な建物の油絵でした。

トミやんぼけっとしてたんじゃないんだな、ああみえてなかなかシャイなやつだったんだ。

今回、67才にしての初めての東京での個展、20点ほど展示してあったのだが、どれも見事な作品だ。聞くと鹿児島にも描き溜めた作品がたくさんあるそうな...

トミやんの自由なる精神に宿る美意識に乾杯!

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富田画伯

2016/04/06
【第803回】

明日の雨で東京の桜もだいぶ散ってしまうでしょう...全国あちらこちらで桜見物のマナー違反が問われていますな。おいらも、新宿御苑で度々注意いたしました。多いのは中国の人達ですね。おいらも嘗て、中国が外人への旅行を解放し出したときの旅で驚いたことが幾つもありました。共産主義国家でのサービース精神の無さには本当にびっくりしたな。まず売店の売り子さんがお客無視してぺちゃぺちゃとお話しし放題、そんな状態の中、商品を決め売り子のねえちゃんに注文すると迷惑そうな顔して商品をおいらの前に投げ出す始末。これにはおいらも怒りまくって、おんどりゃなにしてまんね!(残念ながら中国語話せないもんでボディランゲージで表現しました)そんなおいらの怒りなんぞ無視してねえちゃん又もやちゃらちゃら話し出す...おいらそのとき思ったな、そりゃそうだ、共産主義の思想の中では競争なんて生まれるわけないしサービスなんて必要ないんだな...ねちゃんのせいではないんだ、思想がマナーなるものを無縁にさせちゃったんだ...思想と宗教は一歩間違うとえらいことになちゃいますな。戦争の源のほとんどがこの二つです。

今日も新宿の街は、異国の人で溢れかえっています。新宿御苑では花見日和で大変な騒ぎでしょう...満開の桜と一緒に記念撮影で花を摘んだり、挙げ句の果てには枝から折っちまってポーズをとる人達が居るはずです...そんなとき優しく注意してあげると嫌な顔する人はそう居ないと思います。そのときに異国の人は、日本の人達の本当の優しさ、繊細さに気づくと思いますよ。だって、中国の教育で教えられた日本と、旅行に来て日本の姿を目にしてのあまりの違いに驚いて親日家になる人がたくさんいるそうな...冷え切った日中関係、身近なところから見直して行こうじゃありませんか皆の衆。

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新宿御苑

2016/04/04
【第802回】

昨日は偶然にも、これからの世界のあり方を指し示す2人の人物を、夜のテレビで拝見しました。最初の人はウルグアイ第40代大統領ムヒカさん。軍事政権下にあっては左翼ゲリラとして13年間の刑務所暮らし、大統領になっての月額報酬(約115万円)の9割近くを社会福祉関係に寄付、自分の個人資産は18万のおんぼろ車のみ。豪華な大統領公邸に住まず奥さん所有の農場で畑仕事と養鶏でのんびり暮らす、世界でもっとも貧しい大統領として知られています。彼が2012年にブラジルのリオジャネイロの国際会議で演説した言葉こそ、これからの世界のヒントになることは間違いないです。

私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです。人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。

お金があまりに好きな人たちには、政治の世界から出て行ってもらう必要があるのです。彼らは政治の世界では危険です。お金が大好きな人は、ビジネスや商売のために身を捧げ、富を増やそうとするものです。しかし政治とは、すべての人の幸福を求める闘いなのです

その後に見た節電女子、アフロヘアーの稲垣えみ子さんも素敵だったな。この人は朝日新聞のコラムで、おもろいおばちゃんやなと思っていました。お堅い朝日新聞で大丈夫かいなと心配してたのですが、案の定28年間勤めた新聞社をさっさと辞め、冷蔵庫無し、洗濯機無し、月額¥200ほどの電気代で暮らしている。彼女がこの生活を決心したきっかけは2011年の東日本大震災だそうだ。51才独身、自分の哲学を実践している彼女は生き活きしている...彼女が最後に発したメッセージ、皆さん本当に幸せですか?

おいらは何度でも言いたい!どうせ死んじゃう人生、悔いなく生きなきゃもったいなかですばい...皆の衆、今、本当に幸せですか?

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ムヒカさん

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稲垣えみ子さん

2016/04/01
【第801回】

今日は4月1日...新社会人のスタートでもあり、入学式も来週に控えている初々しい季節である。それをお祝いするかのように桜も満開になりつつあるお花見日和の週末。

昨日、大学時代の友人であるTより、おいらの若き日の写真を集めた小冊子「我が心の新宿、そして吐夢シアター」を送ってきてくれた。勿論、自作品である。Tは写真が大好きで、よくまあこんなところまでというくらい、おいらの野良犬青春時代ショットを撮りまくっていた。こしゃくにも、こんな帯まで付けやがって「ここまで暴いてよいのか!昭和から平成を全力で生きぬく、博多生まれの新宿育ち。その名も...関東・岡田けつ。」しかし、考えてみればありがたい話ではないか。誰がこんなことしてくれる?持つべきものは友である...若き日は罵倒の日々であったが、ありがとうT。写真もさることながら、写真に添えてる文章が又、その当時のおいらのやんちゃぶりを適格に捉えているではないか。お前がおいらを客観的に観察してた様子が良くわかるよ。さすが元名編集者だけのことはあるな...

それにしても、驚くことに入学式、卒業式のクラスメートとの集合写真に、おいらはどちらも居なかったな。一体、何をやらかしていたんだろう...おいらも記憶にないのだが、多分バイト、芝居、遊びで学校なんて頭の片隅にもなかったんだろうな...みんなが卒業証書の筒を抱えて恩師・大木直太朗教授との記念写真(勿論おいらは居ません)のコメントの中にも、こんな文章があった。卒業時に学生証を学校に返却しなければならないが、キヨシは返却せず、後の1年間学割で映画などを安く鑑賞。このとき、「貧しい人にも広く芸術を」とのトム・プロジェクトの経営哲学が芽生えたのかも。なんて書いてありました。

これも覚えておりまっせんがな...おいらの青春、まさに破れかぶれ、おっかさんが心配してたのも良くわかりますがな...

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4月1日の神田川

2016/03/30
【第800回】

新宿南口に、またもや巨大なビルとバスターミナルが出来ました...こんなに出来てどうするの?1日の乗降客が340万人以上という世界一のターミナル駅なんだが、狙いは外人観光客を狙っている感じがプンプン臭ってきますね。新商業施設「ニュウマン(NEWoMan)」が、2016年3月25日(金)、新宿駅新南口にオープンしたのだが、お店の案内がすべて英語表記でございます。なんじゃいな?日本のおじさんはさっぱり判りませんがな...田舎から出てきた老夫婦は案内板を前にして首をかしげておりました。主要な都市のホテルも取りにくくなっている現状を考えると、2020年のオリンピックなんぞは地方の人達は宿泊できないかもよ...日本は確実に外国資本の脅威のまえにして為す術もない時代がひたひたと押し寄せています。この横文字案内板が未来の日本の姿を暗示しています。日本のお客さんなんてあてにしとりませんがな、お金をどっさり抱えた異国のお人に顔は向いとりますがな...この異国の人は中国、台湾、韓国の人達を指すものと思うんだが、何故かこの国の表記はないんでございます。なんだ、インターナショナル用語である英語表記で格好つけてるんじゃないかしら...このビルの思惑がいまひとつわかりませんがな。

安保法案施行、消費税値上げ延期、原発、待機児童などなど、この国はいったい何処に行こうとしているのか...これもさっぱりわかりませんがな。

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どこさ行くの?おいらの新宿

2016/03/28
【第799回】

ライオンズ2勝1敗でスタート...3連勝出来たのにな、おいらが危惧した中継ぎ陣の失敗で3戦目は惜敗しました。でも、良しとしなきゃいけませんば い。なんと言っても長いこと優勝から遠ざかっているチームですから、今年こそと多くのファンが埼玉県所沢まで足を運んでくれました。そこは選手も奮起一 番。1戦、2戦は共に逆転勝ち、球場はお祭り騒ぎになっとりました。球団が配布したフラッグが大波小波に揺れていました。おいらは自宅でTV観戦しながら の応援、所沢まで行って負けたときの疲労感は半端じゃありませんからして、昨年の14連敗中のライオンズ何ぞを考えただけで、球場行きは早々と断念しま す。

こんな甘ちょろい考えの人物は、ほんまもんのライオンズファンとは言えんかもしれんが、60年間も応援しちょるんですから勘弁してちょ うだいな...クラウンライターライオンズ、太平洋クラブライオンズなんてときも辛かったですわ。ライター会社、ゴルフ運営会社の宣伝のために身売りされ、短 期間でまたもやポイ。拾ってくれた西武グループのお陰で何とか獅子もメンツを保つことが出来たのだが...

明日からは、カモにされてるソフトバンクホークス戦。今年はいてこましたれ!ホークスなんぞは昔の南海ホークスじゃありませんか、けったいな話やな、昔のライバルチームを博多もんが応援しとるなんて...おいらにしてみれば無茶苦茶でござります。

今 日のランチは至福のひとときでした。だってだって、以前はふらりと入れた新宿三丁目の「中嶋」の鰯の刺身ランチ(¥800)。今じゃ30分以上並んでない と入れなくなっちゃいました。噂が噂を呼び、ガイドブックにも掲載され、日本人のみならず異国の人まで来るようになったのでございます。今日ふらりと覗い たらラッキー、5分待ちで白木のカウンターに座ることが出来ました。隣の席には黒人のカップル、何の違和感もなく鰯の刺身をペロリンコと食べとりました。 スペインで刺身を食べてるおいらの姿を見て、嫌な顔していた時代は遠い昔話になってしまいました...

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暖簾をくぐると鰯の世界

2016/03/25
【第798回】

待ちに待った野球が本日始まります...桜とともに球春が、今年もずたずたになりながらもやってきました!賭博やら金出し罰則やら、常に真摯さを求められるスポーツマンは辛いですな。学生、アマチュアならわかるけど、一応プロなんだから、あんまり細かいところまでチェックされると選手も小粒になっておもろうないな...そういえば、役者の世界も然り、勝新太郎みたいな豪放磊落、遊び心満載の芸人さん少なくなりました...嘗ての西鉄ライオンズの選手なんぞは試合が終わったら飲んで騒いで遊びまくり、翌日の試合には皆二日酔い、試合の後半7回あたりに酔いも醒め、そろそろ行きまっせ!と試合をひっくり返すことが何度もあったそうな...勝負は勝ってなんぼの世界でございます。今年も相撲の世界では、白鵬が又、相撲協会から厳しい注意。横綱の品位とかなんとか...八百長騒ぎのときなんぞ一人奮闘し角界を盛り上げてきたのに、日本国籍ではないという理由で一代限りの年寄株を持てないなんて言っとります。それだったら初めから外人力士を入れるなって話でしょうが...どこの世界もご都合主義の花盛り。

そんなことよりも、今年のライオンズは久しぶりの優勝を手にすることができるや否や?

こればっかりは難しいですな...ウナギ君(昨シーズン、シーズン最多安打を達成した秋山選手)をトップバッターとしてなかなかの強力打線を持ちながら、今年も中継ぎ、クローザーに不安を抱え、出たとこ勝負ですな。田辺のおっさん(監督)の戦術もいまいちのところあるし、幕をあけないとわかりませんことよ。昨日、パリーグTVで西武とロッテのファームの試合をちらちらと観たのだが、パラパラのお客と設備不十分のところでやってる選手は必至豆炭の人と、何となくやってる人の違いが、はっきり見えますな。プロの世界は一流になって銭をもらえる厳しい世界でございます。

ふれふれライオンズ!がんばれがんばれライオンズ!こんなことやって、ライオンズ一筋もう60年以上経っちゃいました...おいらはいつまでも少年キヨシです。

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球春

2016/03/22
【第797回】

桜が咲きました...今年も又、桜の季節がやってきました。家のマンションの前にある二本の桜を四季折々見てはいるんだが、この季節になると何故かトキメキ感もヒートアップしてくる。枯れ木の枝の蕾が少しづつ膨らみ、気温の一気な上昇によって花開く薄ピンクの花びらに春の到来の喜びを感じる。何度も見ているのだが、この桜が咲く瞬間は、いつも新鮮に思えるのは何故なんだろう...この花の儚さ、潔さが、日本人の心情を強く衝き動かすことに起因していることは間違いない。あの有名な梶井基次郎の「檸檬」に出てくる一文「桜の樹の下には桜の樹の下には屍体が埋まっている...」あんなに綺麗な花を咲かせるわけは人間のエキスを肥やしにしてるに違いない...確かに夜桜は妖しい美しさと怖さがあり、学校の定番である校門の桜は、新入生への応援花のようでもあり、桜吹雪が舞い散る様は、えも言われぬ世紀末的な壮麗さである。

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今年もよろしく!

2016/03/18
【第796回】

いよいよ春がやってきました!てな陽気ですな連日。でも、花粉症にはいつものようにやられっぱなしで、日々対策本部を設置して防戦に相務めております。それにしても、この花粉症のおかげでお金儲けしているところがたくさんありますな...製薬会社、マスク製造会社、花粉対策眼鏡屋、そして耳鼻科。この耳鼻科医院たるや、花粉症が蔓延する前は、何とも地味な存在でマイナーな個人医院が多かったのだが、この流行病で一気に息を吹き返し、この時期は2、3時間待ちは当たり前。しょぼかったオジサン先生も、顔色は良くなるし、付けてるネクタイも一流ブランドに変わるほどの変貌ぶりでございます。もしや、この花粉症たるもの、製薬会社などなどが仕掛けた産物ではなかろうか?なんて推測もしちゃいます。ヘリが飛んでいるのを見たときなんぞ、スギ花粉撒いてるんじゃないかしら?なんて疑惑を持ってしまいました。この世の中、油断も隙もあったもんじゃございません。ボケっ~フラっ~としてたら、ほんまにケツの穴の毛までむしり取られますぞなもし...

まあ、そんなに疑心暗鬼になるのも春には相応しくないので、ここはそそろそろ咲く桜に思いを寄せて、気分一新ぱっといきましょう!

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仲良しこよし

2016/03/11
【第794回】

東日本大震災から5年...昨日も、テレビで家族を亡くした人たちの現在を丁寧に伝えていた。昨日まで幸せな日常を過ごしていた人たちが突如居なくなる...この現実に遭遇した人たちの悲しみは計り知れない。どんな言葉も有効性を持ちえない不条理、理不尽なことであるに違いない。改めて問いたい!便利という名のもとに、利潤と欲のセットで戦後、経済優先でがむしゃらに走り続けたツケの代償。その代償はあまりにも大きく事故直後は真摯な反省もあったのだが...今や、風化に等しい現象もみられる体たらく。と、嘆いてばかりでは復興もお題目倒れになっちまう...じゃあどうすりゃいいのさ!先ずは、この5年前の事実を日本の第2の敗戦日と認識し、謙虚に経済優先の動きを阻止すること。これは個々人の日常からの厳しいチェックがあればチカラになりえると思う。そして、ここが問題だ。人間が作りだしたものには、どんなものにもプラスとマイナスが共存している。今回の原子力発電が象徴的である。ということは、人間が作ったものではなく、本来、地球上に自然に存在するものに敬意を抱き、それらと共存する生き方に大転換する必要があると思う。何気なく立っている樹木、さりげなく流れている河、人を活かしている大地、ただみたいに吸っている空気、生態系を壊すことのない動植物...これらに謙虚に向き合うことなくして真の人間の幸せなんてない!こう自覚することしか地球の未来はないと断言したい...

今日の午後2時46分、おいらは新宿のデパートにいました。店内から東日本大震災で亡くなった人達のご冥福を祈って1分間の黙祷のアナウンスが流されました。皆、動きを止め黙祷...おいらは何故か涙が止まりませんでした。亡くなった人達の思い、残された人たちの悲しみ、この国の情けなさ、そしておいらはおいらなりに、この危機に対しせめてもの芝居などを通して答えようとしているのだが微力、今なお仮設住宅での生活を余儀なくされ孤独死する人たち...デパートを出ると、新宿通りにはいつもの旅行客、幸せそうな親子連れ、老夫婦、若いカップル、ビジネスマン...当たり前のような日常を目の当たりにして、おいらは再び涙が流れてきました。亡くなった人達も5年後にこんな日常を過ごしたかったに違いない...

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2012年9月28日 陸前高田にて

2016/03/09
【第793回】

明後日で5年になる...東日本大震災の復興費用には、国の計画では10年間で計32兆円が見込まれている。これを被災者で割ると1人あたり約6800万円に相当するのだ。でも、その多くは復興の名のもとに建設工事に充てられて、被災者の生活再建に直接支給されるのは約1%に過ぎないという現実。これは何を意味するのか?この国の戦後一貫してきた政治の姿が浮き彫りにされている気がする。どちらに顔を向けているかが如実だ...企業優先、ニンゲンが後まわしにされている行政の怠慢。この時期になって一斉に報道されるマスコミ、情報機関の権力に対する及び腰の姿勢も情けない限りだ。常日頃から必死こいて取材し、困難な日々を強いられている人たちの姿を伝えんかい!政治家なんかは期待できんのだから、真実の報道を伝えノホホン民族を目覚めさせ、選挙で国の形を少しでも変えるしか道はないんだから...ほんまに情けなかですたい!

昨日、金沢で最終公演を終えた「砦」の芝居のなかにも、故郷をダムのために追われた主人公の言葉が胸に突き刺さる。「公共事業...それは理に叶い、法に叶い、情に叶うものでなければならない。」

2020年のオリンピック止めちまえ!なんじゃい、又もや聖火台問題。あの偉そうな人たち、会議の高い日当貰ってなんの話してるんでしょうね...公共事業すなわち税金泥棒...これは立派な犯罪です。皆の衆、もっと怒らんかい!

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カエル椅子

2016/03/07
【第792回】

昨日、「砦」東京公演無事千秋楽を迎えることが出来ました。いやいやラストに向かう10分間は身体が砦の一部になった感覚とともに、目頭が熱くなって来ちゃいます。役者のほとばしる魂にほとほとやられっぱなしの6日間でした。

新宿伊勢丹ではスペイン展やっとりました。友人が経営してる銀座のしぇりークラブも堂々と出店していました。馴染みの店員がニコニコ顔で迎えてくれました。シェリーはほんまに美味しい酒やで...世界のお酒で、このシェリー酒と日本酒は東西の横綱だと思いまっせ!なかでもフィノ・キンタ、こいつは絶品でございます。3年のスペイン暮らしのなかでおいらが枕元に置き日々愛したシェリーのお姫様だと思っております。このシェリーに欠かせないのが生ハム、出店にグラン・レセルバ・ベジョータを目の前で切り落としておりましたので、即試食させて貰いました。うめえったらありゃしない、こいつとシェリーがあれば死んでもいい!てなくらいご機嫌になっちゃいます。旨いお酒とタパ(つまみ)さえあればこの世は天国なんて調子で酔っぱらいバタンキューの世界がスペインなんですよ...世知辛いことにあくせくしてる日本人なんぞは生き物としては不思議なものとしてみられますぞ。もっと楽しく生きなあかんよ!そんなに働いてお金貯めてなにが楽しいの?そんで病気までしちゃって...能天気の見本がスペインアンダルシアにたくさんいらっしゃるんで勉強かねて是非行ってらっしゃいませ...

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スペインが誇る逸品             

2016/03/04
【第791回】

昨日の「砦」の芝居には魂が光り輝いていた...東京公演が始まって3日目、芝居の感想は当然観客の目に委ねることは仕方ないとしても、この芝居を企画したおいらとしては何としてもベストな形として世に送り出し、少しでも多くの人たちに心に残る何ものかをプレゼントしたいことは至極当然のことである。でもね、人はそれぞれの見方があり、中には粗捜しを趣味として劇場に足を運ぶ演劇マニアもいることも確かだ。雑多な人たちが、それぞれの人生を抱え様々な思いを巡らし舞台を凝視しているのだから、それ相当なもん創らんとお客さんに失礼にあたります。ましてや芝居は生もの、いつも同じというわけにはいきません。

そんななか、昨日の公演は五人の役者さんの魂が会場内を生き活きと飛び回っていました。その勢いのある魂は観客の魂と呼応し、まさしくこの芝居に命の息吹を与えた感がありました。村井、藤田さんは当然のことながら、影を演じている浅井、原口、滝沢の三人が素晴らしい。本来ならば20人ばかり出なきゃいけない芝居なんだが、この三人がこの話に登場するであろう幾多の人間模様を見事に演じ切っている。身体を振り絞り名もなき民衆の声を命懸けで表現する姿に、改めて演劇の素晴らしさを実感する。

残すところ今日の公演を入れて4ステージ。こんな時代だからこそ、ほとばしる魂の演劇観なきゃなりまっせんばい!

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春の代々木公園

2016/03/02
【第790回】

昨日は、午前中から5月に公演する風間杜夫一人芝居「正義の味方」の説明会に横浜に行ってきました。場所は横浜演劇鑑賞協会の事務局。10時半には50人ほどの会員さんが集まっていました。演劇をこよなく愛する人達の集まりですから、きちんと話をしなければいけないのだが、あまりお堅い演劇の話も退屈するのではと、ここは波乱万丈のおいらの人生の引き出しから面白おかしく45分ばかり話をしてきました。50人一人一人のお顔を拝見しながらの独演会、これも一人芝居みたいなもんでございますね。笑いが起こると、ちゃんと聞いていただいているんだなと安心します。おいらの話を聞いていただいて、よし!あの人に鑑賞協会の入会を勧めよう...なんて気持ちになってくれると嬉しいな。終わりに、美しい女性にサインと写真も一緒にお願いしますなんて言われると、一瞬、役者になった気分でございました。一番前に熱心に聞いておられた、おいらと同世代の男性の方と唐十郎、寺山修司、土方巽なんかの話も出来なかなか有意義な時間でございました。

折角、横浜に来たので野毛のjazz喫茶にも足を運びたいのだが、横浜から池袋へ...昨日は「砦」の東京公演初日。14時からのゲネプロ、19時の開演。この芝居の命は、キャスト、スタッフの呼吸がすべてです。上手くいった初日だと思います。印象に残ったのが、体調万全ではなく風邪をひいてる村井國夫さんがラスト大詰めに咳をしてしまったのですが、さすが名優、その咳も演技にしちゃうんですからお見事!だから生の芝居は面白いんですね。毎日何が起こるかわかりませんことよ...

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明日はひな祭り

2016/02/29
【第789回】

先週の金曜日、「砦」横浜で幕を開けました...今回もアクシデントがありました。稽古も大詰めを迎えた2月19日、出演者のカゴシマジローが腰を痛め降板、あちゃ!本番を6日後に控えてえらいこっちゃ、急遽、劇団桟敷童子の原口健太郎を起用し総力戦となる。生ものの怖さを痛感しとります...でもでも、演劇の神様はトム・プロジェクトを見捨てません。勿論、原口君の命懸けの稽古により26日の横浜公演は無事終えることが出来ました。「南阿佐ヶ谷の母」に続いてのアクシデント、厄払いでもしなきゃならんのかいな?この日は村井國夫さんも風邪をひき満身創痍の状態での舞台であった。しかし、役者の魂は幕が開くと同時に会場に轟き響き、観客のハートを鷲摑みしてしまいました。表現者は、いついかなる状況であろうとも、かぶき者となって舞台を相務めることがすべて。そんな覚悟をもった役者さんと一緒に仕事が出来てしあわせもんでございます。

心配ばかりしてもしよんなかと、近くのjazz喫茶で一服。横浜は多くのjazzプレーヤーを育てた街。中でも1933年開店、日本最古のjazz喫茶「千草」に行きました。2007年に閉店したのだが、野毛に移って2012年に再開。往年のjazzファン只今勉強中の若輩者入り乱れて熱心に聞いていましたな...店の人がリクエストをどうぞと2冊の分厚いリクエストブックを持ってきたので、ジム・ホールの「アランフェス協奏曲」リクエストしました。ジム・ホールの哀愁感たっぷりのギター、ロン・カーターのベース、チェット・ベーカーのトランペットたまりませんばい!数年前ジム・ホールが亡くなる前に行ったサントリーホールのライブが懐かしい。Jazz喫茶であれば、いつまででも居れるのだが、夜の公演があるのでひとまず店を後にしました。

舞台とjazz,どちらも命懸けでプレーしとります。

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生きてる間はやっててネ

2016/02/26
【第788回】

再開発、誰のためにやっとるんじゃい、怒るで!...渋谷駅近くのガード下にあった「さつまや」、昭和45年から昨年9月まで、おじさん達の聖地だった居酒屋がまた消えてしまいました。渋谷と言えば、若者がわいわいがやがや騒ぎまくって、おいらは昔から好きな土地ではありませんでした。要するにガキの街ですな。そんななか、しっとりと大人の会話を楽しみながら西郷さんと呼ばれている芋焼酎「さつま小鶴」のとっくりを傾けながら、きびなご、さつまあげを頂くこの店はおいらも大好きな店でした。隣り合わせたお客とも気楽に声を掛けながら、悦楽の時間を過ごせる店なんて、そうそうありませんことよ。

それにしても、下北沢、新宿などなど再開発の名のもとに人間の街が崩壊しつつあります。オリンピックのため?土建屋さんのため?この国からニンゲンの匂いが無くなっていく危機を感じます。無味無臭の街にして、金儲けに走る鉄面皮の輩の薄気味悪い顔が浮かびますな...街はニンゲンの醸し出す人生の味から創りあげるもんであって、机上の論理で作られるものでありまっせん。次々と消えていく建物の跡に建てられるビルは唯の箱にしか見えません。更地になった空き地から聞こえてきます...ニンゲンを返せ!

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おつかれさま...ありがとう

2016/02/23
【第787回】

いよいよプロ野球オープン戦も始まりましたね...今年は始まる前から、清原覚醒剤騒ぎで明るいキャンプ情報にならず、さてと思ったら、今度はロッテの新外国人内野手、ヤマイコ・ナバーロ選手が21日、那覇空港で拳銃の実弾1発をバッグに隠し持っていたとして銃刀法違反容疑で沖縄県警に逮捕されました。なんでしょかね?あっちこっちの空港を渡り歩いているのに見つからないところが不思議。そう言えば、おいらも昨日九州から帰った来たのだが、スーツケースにパソコン入れてたのに検査に引っかかることなく出てきました。これではテロリストにとってはしめしめ、日本が世界の紛争地帯に自衛隊を派遣するようになれば大変な脅威になること間違いなし。将来は自衛隊ではなく、日本軍と名称も変わり徴兵制がひかれ大日本帝国の再現なんてのも十分考えられますぞ...

ところで、今年のライオンズはどうなんでしょうかね?この前西鉄ライオンズのDVD見たばかりなので、あの時の勢いを少しでも魅せて貰いたいんだが、なにせ選手が小粒になっちまって、夢と希望と期待もそれに歩調を合わせるようになりんしたね。まあ、最近の週刊文春の大活躍?で有名人ともなると、そうそう羽目も外せず豪放磊落な行動もしづらくなり、その分プレーもこぢんまりとしたものになりますわ。まさしく、何かを得れば何かを失う。なにごともほどほど、いい加減がよろしゅうございます。

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梅は咲いたか桜はまだかいな

2016/02/19
【第786回】

「砦」の公演の稽古も終盤にさしかかってきました...いや、役者の皆さんの気合の入りようが半端じゃございません。この日本の今の状況に鉄槌を下すかのような迫力がひしひしと伝わってきます。村井國夫さん、藤田弓子さんが繰り広げる夫婦の会話には、それぞれの人生の味がにじみ出て味わい深いものがある。カゴシマジロー、浅井伸治、滝沢花野の若手三人のエネルーギーが、この芝居のリズムを作っています。松下竜一さんの渾身の原作「砦に拠る」を作・演出、東憲司さんが見事な人間ドラマに仕立て上げている。近代なき国家の山峡地帯で、産業社会の功利主義に反旗を翻した室原知幸さんを村井さんの熟練の役者魂で見事に蘇えらせているのが見事。

原発、公共事業、環境、人のつながり...この困難な時代に何かヒントになるものがないか?

芝居を創りながらいつも考えています。今回も、東憲司さんのユーモアあふれる会話のやり取りが芝居をより膨らみを持たせている。

初日が楽しみです。

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何かいいものないかいな...

2016/02/17
【第785回】

いや懐かしかった!嬉しかった!...九州朝日放送株式会社(KBC)が発売した、DVD『栄光の西鉄ライオンズ~映像でよみがえる野武士軍団の記録~』この発売ニュースを聞き、即予約を入れ、いまかいまかと待ちわびたDVD。あの平和台球場入り口に至る坂道が何度も出てきて思わずホロリ...だってだって、小学校の頃、親父があの坂道の露天でラムネを売っており、おいらは少しでも西鉄ライオンズの近くにいたい一心でラムネ売りの手伝いをしとりました。最強のライオンズ観たさにファンがわんさかわんさか、この曲がりくねった坂道を歩いていました。ラムネもよく売れました。おいらの唯一の楽しみは、試合の終盤になると球場入り口のチケットもぎるアルバイトも居なくなり無料で入れることでした。貧しい球場でありながら、燦然と輝く我らが野武士軍団ライオンズの選手を目の前にして、キヨシ少年は目を皿のようにして見つめておりました。おいらもいつかこのグランドに立ってジャイアンツばやっつけてやるけん!

それにしても、稲尾、中西、豊田、大下、仰木...画像に写る選手を見ながら、あの日、あの時の博多の町が蘇ってきました。新聞配達、おきゅうと売り、氷配達、郵便配達、土方...よく働き遊びました。優しい娼婦のねえさんは今どこでなにしているやら...すべてが西鉄ライオンズを中心にまわっていた至福の時代でありました。

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こげな球団はもう出てこんばい...

2016/02/15
【第784回】

日が暮れるのが遅くなりました...何気なく散歩してると、梅が咲いていたり、福寿草を見つけたり、おいらの表情も思わずニッコリ。先週もジムに行って身体を絞り込んできました。初めて出たクラス、格闘技が入っているので得意分野と思い参加したのだが、おっとどっこい目まぐるしい音楽と振り付けに振り回されちゃいました。周りを見るとおいらぐらいの年の人はおりまっせん。でも、途中でやめるわけにもいかず45分間何とかバタつきながらもなんとかやり遂げました。一番後ろでこっそりやっていたのだが、トレーナーの先生にはちゃんと見えてるんですね。終了後、おいらのところにわざわざやってきて「大丈夫ですよ!慣れれば楽しくなりますから...」健康美人の先生に、顔をまじまじと見ながら叱咤激励されると次回も出なきゃ悪いなと思うのだが...しかし、このジムには、いつものようにたくさんのクラスに顔を出している人を見かけるんだが、この人たちジム中毒になってるんじゃないかしら?なんて思います。確かに健康維持には大切なことだとは思うのだが、なんか身体動かしていないと不安になり、ついつい足を運び汗を掻く...そのうちクラスの主になり、派閥までできちゃうなんてことになったら逆に不健康になりません?

何事も、ほどほどがよろしゅうことでございません。鏡見ながらウエイトリフティングで鍛えた筋肉隆々の己の姿に見惚れている輩も気持ち悪いのことよ。前に行っていた新宿のジムにたくさんいたな...ホモ牛乳倶楽部みたいでおいら行くのやめました。

昨日の初夏のような暖かさから一転、今日は雪が降りだしそうな寒さ。まだまだ油断禁物でございます。このあと恐怖の花粉がにんまり顔で来襲する準備をしとります...

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2月の薄暮

2016/02/12
【第783回】

昨日はホンマに良い天気で久しぶりに井の頭公園に行ってきました...いやいや行ってみて驚きました。井の頭弁天池の水が無くなっているではありませんか。水質浄化やブルーギルなどの外来種駆除のため、池の水を抜いて底を天日干しする「かいぼり」が28年ぶりに実施されていたんですね。いつもすいすいと泳いでいた白鳥ボートも陸に上げられ寂しそうでした。でも、公園にはいつものように多くの人たちが、数多くの露店で販売しているハンドメイドの逸品に目を凝らしていました。若いお母さんが、木工細工で作った電車を子供に買い与える様子を一部始終見ていたのだが、母親が丁寧にハンドメイドの価値を説明している様子はなんだか嬉しくなりました。おいらが見ても不格好でスマートを感じさせるモノではないのだが、木の持つ荒々しさと温かさが十分に伝わってくる逸品であることは間違いないモノでした。

広場では、いろんな大道芸人が芸を披露してました。この井の頭公園の空間はとても心地よい...演者も観客も自由きままなスタイルで佇んでいられる空気が流れているからだ。場所のあり方は、つまるところその場に集まる人たちが形作っていくものなんですね...人が集まらなくとも、演奏するバイオリンの音色は天高く青空に届かんばかりに響いていました。

あ、そうそう、前回書き忘れた女性大臣がいました。歯舞を読めなかった島尻安伊子沖縄北方担当相...こんな人が沖縄、北方?何考えて大臣選んでいるんですかね。

この大切な自然を本当に守ってくれる政治家...残念ながらいないですな。

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かいぼり

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大道芸人

2016/02/10
【第782回】

なんですか...自民党女性大臣の時代を読めない発言パフォーマンス。就任後初めて東京電力福島第1原発を視察した丸川珠代環境大臣が完全無欠の防護服姿で「風評被害の払拭が、福島復興に欠かせない」と述べた。でも写真に写る己の姿を見てみいや...こんな姿で発言する貴女の神経が理解できません。もっと現地の人たちの苦しみ悩みに入り込んで身体に覚えさせてから発言せんかいな。ホンマにコロコロ大臣変えて付け焼き刃的人事で大臣経験者を製造している日本の政治にうんざりしとります。

続いて、高市早苗総務相が、政治的な公平性を欠くと判断した場合、放送局に電波停止を命じる可能性があるとの発言。なんですか?権力を握っている立場の人が、こんな発言をしちゃなりまっせん!最近、辛口のニュースキャスターが相次いで降板。明らかに政府の意向が加味され、時代はあの暗い時代に逆行してる気がします。

そして、SPEEDの今井絵理子が今年の参議院選挙に立候補...聴覚障害の息子を持つ彼女を政治的に利用しているしか思えませんな。昔から与党、野党問わずタレント候補擁立で物議を醸した経緯が山ほどあるのにいい加減にせんかい!

毎月9日に、憲法9条にちなんで街頭演説、署名運動をしている団体があるのだが、ほとんどの人が耳を傾けることなく通り過ぎる光景を見るたびに、なんだか虚しいセレモニーを見せられる思いだ。はっきいって大半の人が政治にもはや期待を持てないレベルに来ていると思いますな...権力者にとってはしめしめ。一気にやっちまえ!無関心でいると後の祭り、取り返しのつかない国の姿に呆然と立ち尽くす自分を想像せんといかんですばい...

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新宿西口

2016/02/08
【第781回】

立春も過ぎ、春の匂いがしてきました...2月生まれのおいらとしては、この如月大好きです。この寒い時期に敗戦後、苦難の逃避行を乗り越え外地から引き揚げ奇跡に近い形でおいらを生んでくれた母に感謝です。ともすれば残留孤児、流産、母共々の死、このいずれかに該当し、今のおいらがこの世に存在しないことを思えば、一生懸命に生きねば罰が当たります。

この2月の寒さと、時折訪れる春の予感がなんだか心身をさわさわとさせてくれます...もうすぐ春が来るんだね...重い衣服を脱ぎ捨て、身も心も軽やかに春の陽光を浴びる姿を想像するだけでも嬉しくなってしまいます。軽やかで優しい音色を感じさせる春を待つこの如月、「生更ぎ」の意味で、草木の更生することだそうです。

もうすぐおいらも70才。古希ですばい...我ながらよう生きんしゃったばい...昨日、久しぶりに博多に居る母とテレビ電話しました。母も来月で98才になります。脳梗塞で倒れ車椅子生活を余儀なくされながらも必死で生きている母もそろそろかなと思いきや、あまり声は出さずともきりりとした眼差しは、父を早く亡くし5人の子どもを一人で育て上げた、逞しい「よいとまけの母」でありました。電話を切るときに又言っとりました「無理したらいかんよ...」母にとっては、いつまでも40過ぎまで風来坊であったおいらの姿が眼に焼き付いているのかな...おいらも少しはましになったけん、かあちゃんもう心配せんでよかよ...

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冬枯れの狛犬

2016/02/05
【第780回】

清原君...あなたはとてつもない才能と類い希なる才能を持ちながらルール違反をしてしまいましたね。若くして人気者になり、富と栄光と、素敵な家族に恵まれながら、お縄ちょうだいとは情けなかばい...殆どの人は食べるために嫌な仕事しながら必死こいて生きとらすのに、好きな野球をして幸せもんのはずですが...でもでも、孤独、寂しさは、地位、名誉、お金とは無縁の遠いところにぽつねんと存在してるんですね。これに打ち克つことは並大抵なことではありません。ぽっかりあいた寂しさをどうやって埋めていくのか?それは途方もない無限に近い、心身が疲弊するくらいの葛藤の連鎖を経ても埋めることは難儀な苦行に違いない。それで、貴男は四国巡礼のお遍路さんもしましたね...先ずは形から入るのも悪くはないんだが、貴男の内なるモノを錬磨しなければ元の木阿弥でございます。おいらも含めて人は誰も弱い生き物です...この弱さがあって日々、生きることの意味を考え、少しでも己を向上すべくいろんな事にチャレンジして、なんとか社会の中で生き延びているんです。でも、清原君、人は完璧な人間などおりまっせん...この過ちを糧にして、後の人生、逆転満塁ホームランまではいかなくても、二塁打ぐらいはかっ飛ばしてください。今の世の中、うるさいマスコミがうろちょろして大変な騒動に仕立て上げていますが、大丈夫です!貴男が、これまで接してきた人に対する感謝の気持ちを、もう一度取り戻すことが出来れば、あのライオンズで活躍した清原和博が戻ってきますばい...ジャイアンツに行ったのが良くなかったのかな?
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冬にそびえ立つ新宿のコクーン

2016/02/03
【第779回】

3月公演の「砦」の稽古が始まりました...おいらが敬愛する作家・松下竜一さんが書いた「砦に拠る」、これはどうしても芝居にしたかった作品だった。 おいらが信頼する作・演出家、東憲司さんに戯曲を依頼し期待通りの本が上がってきた。この話は、九州の熊本、大分にまたがる下筌ダム建設計画に対し、反対派の人々が1959年頃から抵抗した事件。1964年に最後まで砦(蜂の巣城)にたてこもっていた反対派のリーダー・室原知幸さん(当時66歳)が警官隊に引きずり出され、この騒動は収束に向かった。お役所的な権力に、最後は一人になってでも抵抗した室原さんと、ただひたすら支えてきた奥さんがメインになる芝居。稽古初日の本読みでの印象なんだが、夫婦役の村井國夫さん、藤田弓子さんが実によい。共演者で、今を時めく劇団トラッシュマスターズのカゴシマジロー、劇団チョコレートケーキの浅井伸治、今回トム・プロジェクト初登場の期待の若手女優、滝沢花野の三人が、この芝居の鍵を握っているのだが、これがまた期待に応える本読みで、よしゃ!これはいけると思いました。プロデューサーの仕事はキャスティングした時点で吉と出ることを確信しているのだが、実際生の声を聴いてみないと不安があるのも事実である。

今から41年前、この事件の資料もほとんど残っていないなか、松下竜一さんは車の運転できず、もちろん携帯電話もなく、体調不良の状態で執念の取材を重ね珠玉のノンフィクションを完成させた。自らも、地元大分県中津の自然の海を汚すであろう火力発電建設反対に命を懸けた人だけに、人間の尊厳をかけた蜂の巣城の攻防に心血を注いだのも当然である。

今日は節分。おいらも家に帰って、鬼はそと~福はうち~豆まいて恵方巻を食べますバイ!

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節分

2016/02/01
【第778回】

先週の土曜日のサッカーは痺れましたな...試合開始が23時45分、前半を終え韓国が2点先取、試合の流れを見ても韓国の方がレベル的にも試合運びからいっても一枚上、こりゃ完敗だなと思い、上の瞼と下の瞼が寄り添い、脳みその方も夢遊病者状態になったんでお休み体制に入りました。歯磨きをし、トイレもすまし、さて床に入るかなと思ったのだが、ちょいと気になりテレビをONしたとたん、いきなりゴール、も一度ちょいと洗面所に行き戻ったら同点になってるじゃありませんか!こりゃ判らんぞと、こちらも気合いを入れ直して残り少ない時間帯テレビに釘付け状態になりました。前半の韓国の勢いがジャパンの方に乗り移り、最後は3点目のゴールを決め勝ってしまいました。スポーツのライブは、これがあるので面白いんですね...まさに筋書きのないドラマ、些細なことからプレーヤーの心の変化が思わぬ展開を呼び込み奇跡を演出するんです。
心が折れそうになったらこんな詩を...

 

「こころが くだける」というのは

たとえばなしだと思っていた ゆうべまで

今朝 こころはくだけていた ほんとうに

 

ひとつひとつ かけらをひろう

涙がでるのは

かけらに日が射して まぶしいから

 

くだけても これはわたしの こころ

ていねいにひろう

 

(「こころ」工藤直子)

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如月

2016/01/27
【第776回】

昨日、第50回紀伊國屋演劇賞の授賞式に行ってまいりました...昨年の今頃に上演した「スィートホーム」に出演した高橋長英さんが個人賞を受賞したんです。今年74歳になる演劇界の至宝長英さん、何か賞はもらっていると思っていたのですが、これが初受賞だとのこと。皆さんびっくりしていました。知的な雰囲気と心に染み入る声と演技で多くの演劇ファンを魅了し続けた長英さんが遂にやりました。トム・プロジェクトの作品で受賞したことがとっても嬉しいです。俳優座養成所15期生といえば今は亡き、夏八木勲、地井武男、原田芳雄、林隆三、太地喜和子、今も現役の村井國夫、小野武彦、前田吟、栗原小巻、三田和代などそうそうたるメンバーぞろい。長英さんは受賞のことばでも述べてましたが、20代の頃はジェームスディーンに憧れ映像の世界でデビュー。お金と車、そして女性にもてるということで俳優をやっていたのだが、同期の友人がバイトをし、貧しい中にも舞台で活き活きしている姿を見るにつけ羨ましく思ったそうだ...舞台は30歳から本格的に取り組み、多くの名舞台に名前を刻んできました。

授賞式の後、新宿の居酒屋で「スィートホーム」の作家、演出家、出演者、全員が揃いお祝いをしました。永年連れ添い支えてきた奥様も同席したんですが、とっても嬉しそうでした。

役者の妻の中には、売れない時を支えた糟糠の妻がたくさんいるのだが、長英さんの奥さんはラテン系の血が流れているのかケセラセラ...酒も飲まず、飲みすぎ注意の見張り番を兼ねて、長英さんとの出会いを面白おかしく話していました。

こうして素敵な夜もあっという間に過ぎてしまいました...おいらも飲みすぎ注意かな。


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冬景色
新宿御苑

2016/01/25
【第775回】

先週の土曜日にトム・プロジェクトの新年会を新宿でやりました。所属俳優、作家、演出家、そしてトム・プロジェクトを支えて頂いてるトム☆トム倶楽部人達も集まり大盛会。社員と役者が混じってのお笑いコント決戦、恒例の景品争奪のじゃんけん大会、ひとり一言コーナー、歓談タイム、いやいやとても3時間ではこなしきれないほどの密度の濃いひとときでした。昨年は、6本の公演を打つ波乱怒濤の年でありました。その中で「スィートホーム」で高橋長英さんが紀伊國屋演劇賞個人賞。「満月の人よ」では山崎銀之丞さんがバッカーズ演劇激励賞、トムの所属である劇団チョコレートケーキの「追憶のアリラン」が読売演劇大賞優秀作品賞を受賞しました。年間膨大な作品が上演されている中の受賞だけに快挙であると思います。とにもかくにも、お客様に喜んで頂く作品を創ることが我々の使命だと思っています。秋には「南阿佐ヶ谷の母」に出演している木の実ナナさんの沖縄公演中の骨折事故も逢ったのですがキャスト、スタッフの見事なチームワークで無事最終公演まで乗り切ることが出来ました。先週、木の実さんから「無事、完治しました...」との電話がありました。一難去ってまた一難、いろんなことがありますが神さんは我々を決して見捨てません。そうなんです!トム・プロジェクトは演劇界になくてはならない存在なんです。

この後、二次会に何人かを連れて新宿ゴールデン街に繰り出しました。初めてのゴールデン街、若い女性社員はレトロな雰囲気に包まれた昭和の聖跡にお目々をぱちくりしとりました...

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冬景色
ロウバイ

2016/01/22
【第774回】

SMAP騒動...騒ぎ過ぎじゃありませんこと。こんなことよりもっと大切なことたくさんあるでしょうと言いたい。SMAPが好きだとか嫌いだとかではなく、この国の大きな転機を迎えているときにマスコミはちゃんとせんかい。憲法改正、安保法、沖縄基地問題、原発再稼働、東日本大震災被災地の復興などなど、こんな難題を抱えながらSMAPごときで日本の一大事なんて騒ぎをしていること自体が実に情けない。
と言いながら、SMAPの人達も大変だね。40才と言えばもう立派な大人であり、個人の意見を鮮明にしていく年齢なのに、なんだか5人でひとりみたいな扱いを親族会社にされ、にっちもさっちもいかない状況に追い込まれ気の毒ですな。ここはえい!とばかり己の道を選択し新たな道を突き進めば万人に拍手喝采という状況になったのでは...芸能界なんて世界は気ままなもんで、余程、己なるモノを保持してないと、あっという間にさもしき流れとともに消えるどころか、その後の人生も寂寥感漂う生き方を強いられてしまうのでございます。
冬の裸木を眺めていることが好きです。葉も実も削ぎ落とし、幹だけが屹立した姿に意志を感じ孤独を感じます。自然の厳しさの中で、まるで修行僧ごときの佇まいに感動さえ覚えます。
よしゃ!おいらもあんた負けんごと生きなきゃいかんですばい...

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冬景色

2016/01/20
【第773回】

昨日、NHKBSで長渕剛の100年インタビューを1時間半観てしまった。夜テレビを観ることが少ないおいらにとっては異例のことである。今年の9月に還暦を迎える長渕剛、おいらはほとんど関心がなかった。あんちゃんがかっこつけて絶叫してるんだろうぐらいの評価しかなかったのだが、東日本震災後2011年12月31日のNHK紅白歌合戦での中継での被災地石巻市立小学校での生中継で「ひとつ」を熱唱する長渕剛を観て不覚にも涙した。そこには被災地に何度も足を運び、積極的に支援をしている長渕剛の熱い想いが込められていた。

ひとりぼっちに させてごめんね
もう二度と
離さない 離れない 離したくない

悲しみは どこから やってきて
悲しみは どこへ 行くんだろう
いくら考えても わからないから
僕は悲しみを 抱きしめようと決めた

ひとつになって
ずっといっしょに 共に生きる
ひとつになって

グランドに亡くなった人達の霊に捧げるかのように無数のろうそくの灯火に囲まれ生ギター一本で唱う長渕の姿においらの見方が変わった次第である。このインタビューで何度も語られていたが、幾つになっても、何年経っても、自分の歌の原点は、厳格な父と優しい母と暮らした少年時代の鹿児島の生活であり、苦しい時代に博多のフォーク喫茶「照和」での日々であると言い切っていた。
このインタビューを観ながら、おいらはこう思ったさ...やはり表現する際のマグマは、多感で純粋値が高い少年時代であること。この人の一種カリスマ性を帯びた言動は引くに引けない男の強がりでもあり自分への怖さである。歌という自分の生き甲斐を見つけた男が、様々な人達の感謝の気持ちが社会に何をなすべきかを教え、行動に移した。芸能という職業が、どこか虚飾に塗れた一面があるのだが、ふとしたきっかけで人間の無垢なる魂の存在を見つけることも出来る。
東日本大震災以降、原発反対の立場を鮮明にしている長渕剛さん、貴男の男気と類い希なるエネルギーで、100年後の日本、いや世界が、人に優しく思いやりに結びつく歌を届けてくださいな...

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おいしそうだネ

2016/01/14
【第771回】

「広河隆一人間の戦場」を観る...フォトジャーナリスト広河隆一さんがイスラエル・パレスチナ、チェルノブイリ、原発被災地福島などを取材した記録映画であると同時に、広河さんがジャーナリストである前に、人間として「パレスチナの子どもの里親運動」「チェルノブイリ子ども基金」、福島原発事故後の子どもの健康回復のために設立した保養センター「沖縄・球美の里」などの活動を克明に捉えたドキュメンタリーでもある。今年71才になる広河さんは実に真摯であり誠実な人である。戦場写真家と言えば、勿論命懸けの仕事であり、ジャーナリスとしての使命感に基づいた行動であるのだが、中には一発屋的な写真家が存在する。彼が淡々と語る言葉の中に「ジャーナリストは唯、事実を伝えれば良いというモノではない。目の前にした困った人達を見捨てるわけにはいかず、かれらのフォローを含めてのジャーナリストでありたい...」この言葉を聞いたときに、亡くなった原田正純医師の言葉を思いだした。「医師として水俣病で苦しんだ人達に接した以上、この人達に一生責任を持って救済するのがひとりの人間として当然である。」こんな医師、ジャーナリストがもう少し居てくれれば、少しはましな世の中になっているんではなかろうか...

それにしても土曜日、80人収容の新宿の映画館でパラパラの観客。去年観た日本軍によって慰安婦にされた韓国の女性達を描いた土井邦敏監督『"記憶"と生きる』同様、長い時間と少ない資金で創った珠玉の作品を積極的に観ようとする人が少ないのには絶望してしまう。

いや、所詮、人間の問題意識なんぞはこんなもんじゃありませんか...クソの役にも立たないメディアの踊らされて気づいた時には後の祭り...残念ながら、こんな日本がもうすぐ訪れますことよ...皆の衆、今からでも遅くはありません、おかしな事はおかしい!と、はっきり異見してちょうだいな...

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何とかしなくちゃ

2016/01/08
【第770回】

おばさんたちの聖地京王百貨店(デパートではありませんぞ)で恒例全国うまいもの大会が始まりました。7階の催事場に行ってみると、ここにもおばさんが嬉しそうな顔で出店の店で試食しながらぶらついていました。何故おいらがそんなところに行ったかというと、大阪食い倒れの代表選手ともいえる551蓬莱の豚まんが満を持しての出店が決まったからである。この豚まんほんまに旨い。関西に旅した時のお土産には欠かせない逸品である。憎いことにこの豚まん関西以外には出店してないだけに、こうやって東京に来た時には大人気で行列ができる始末だ。今日の午前中に顔を出すと、7階から6階に繋がる階段まで並んでるじゃありませんか!係員に聞いてみると40分待ちだというではないか...でも、昨年も女性社員に買っていき好評だったので、ここは我慢の子で並ぶことにした。と、ここまではいいのだが、おいらの前に並んだ60歳前後のおばさんのお喋り付き合いにはまってしまいました。この豚まんの蘊蓄(うんちく、なかなか難しい字ですな?この字の意味に相応しい)をはじめたかと思えば、厚岸の牡蠣弁当は必ず買うのだが100円値上げして悔しいとか、大宰府の梅ヶ枝もちは美味しいから是非買ってみたらと勧められたんで、おばちゃんおいらは博多の出身だからよく知ってると答えたら、博多は美味しい食べ物たくさんあるんでしょう?と、おめめをぎんぎらぎんにして聞いてきた...優しいおいらは無視することできずおばちゃんのペースにすっかり乗せられてしまいました、30分経ったところでいよいよおばさんの番が回って来たのだが、おいらに小声で、私独り住まいだから2個しか買わないのよ...お喋りだけど可愛いおばちゃんじゃありませんか。いやこのおばちゃんを虜にする551の豚まんの圧倒的な食の力に感心いたしました。隣には昭和8年大阪たこ焼き発祥の店会津屋のたこ焼きもおいしそうだったんで、ついつい24個864円で衝動買いしちゃいました。

新年早々、社内で大阪食い倒れの逸品を口にして今年の健闘を誓いましたとさ...

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2016/01/06
【第769回】

街の風景は日々変化する...久しぶりに新宿の街をじっくり地回りすると、無くなった店のあとに華々しくオープンした店、いつものようにいつものスタイルで地下道に物憂げに立っているホームレスの男、決まった時間にマルイのオマルに通う青年、何か面白いことはないかと曰くありげな表情で新宿の街を闊歩する怪しげなおっちゃん、タイガーマスクのお面をつけながらの新聞配達35年のキャリアを誇る名物おじさんなどなど...今年も、新宿の街は相変わらずおいらのアンテナをぐらぐらと揺らしてくれるに違いない。

新宿の街の面白さのひとつに、日毎塗り替えられる広告キャンペーンがある。広告から読み取る世相、思考、思惑はとても刺激的だ。その前に向き合う瞬間、時折おのれの感性がぴりっと震えるときがある。この瞬間に次なる芝居のアイディアが生まれているのかも知れない...モノを創るということは日常の些細な風景から生まれることもある...森羅万象、全ての目にするモノ感じるモノが怒濤のごとくおいらに何とかせい!と迫ってきているのであるが、全てを受け入れちゃうと身が持ちまっせんから、その辺は適当に身をかわしながら生きております。まさしく街は激情であるのでございます。

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ビン賀状

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ビンはビジン

2016/01/04
【第768回】

あけましておめでとうございます。

今年も始まりましたね...でも、昔みたいに正月の持つ独特な雰囲気は年々薄らいでいるような気がします。年末年始の風物詩も、ただ単なる情報としか映らなくなってしまい、時間の持つ厳粛さもデジタル化され、人間が本来持っているアナログ的な感情に響いてきませんな。テレビに映る渋谷駅前スクランブル交差点での年越し騒ぎが、今の日本を象徴してるのかもしれませんね...あんな所に行く神経が信じられませんわ。

おいらは静かにjazz聴きながらの読書三昧の正月でした。世の中が騒がしく落ち着かなくなればなるほど晴耕雨読の立ち位置でいたいと思っています。あと二カ月足らずで古希になるのですが、心身ともども少年のような気概ではいるんですが、昔ほど酒も飲めなくなってきたし、残された人生に思いを巡らしたり、やはり70年の人生はそれなりの身体に刻み込まれているんだなと実感しています...でも、こんなきな臭くなった時代だからこそ、おいらはくたばってたまるもんか!少しでも人のため世のためアクションし続けねばと思っています。そして、まだまだいろんなことにチャレンジし学びの精神を継続し、少しでも前に進みたい!そんな気持ちで新年を迎えました。

今年もよろしくお願いいたします。

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あけましておめでとうございます

2015/12/28
【第767回】

今日は仕事納め...今年もいろんなことがありました。何度も危機がありまして、おいらのおめめもウサギちゃん状態になりました。こりゃ駄目だ!と思いきや無事乗り越えることができたのも本当に芝居にかかわっているすべての人たちの必死な力によるものだと思っています。この必死の力も、こちらが必死の力で何とかしようと思ったから生まれた力だと思っています。すべからく、己の思い、アクションがそのまま自分に返ってくる自然の原理だと思います。何事も最後まで諦めてはなりません...考えてみれば生きることは選択の連続です。しかも瞬時に判断しなくちゃいけないこともあります。その時の判断で可否が決まる局面が多々あると思うのだが、その根拠になるのは、やはり日々のモノの見方、考え方だと思います。この世の中のほとんどが表層だけで動いているだけに、モノの本質が見えにくくなっているのも事実です。そんな複雑怪奇、巧みに仕掛けられてる現代社会で本質を掴み取るのは至難の業かもしれませんね...そんななか、おいらは決してあきらめず今日もアンテナ百本立てながら、眼を皿にして路上を車中を公園を、はたまた他者が仕掛けたホールに闖入し、なんでだろう?どうしてだろう?の旅をしています。この旅はおいらにとってかけがえのない楽しい旅です。

なんだかんだいいながら今年も精一杯生きることができました。おいらにかかわった人たちに感謝の気持ちで一杯です。

では、みなさん良い年を!

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裸木

2015/12/25
【第766回】

昨日、風間杜夫、平田満コンビが33年ぶりに復活した、つかこうへいの名作「熱海殺人事件」を新宿紀伊國屋ホールで観劇。風間杜夫66才、平田満62才、こんな歳でも2時間速射砲のごとく吐き出す台詞にただただ圧倒されました。つかこうへい独特の文体、差別用語有り、げすな言葉に、自虐、加虐、時折放つ時代への反逆精神、まさしくつかワールドの集大成みたいな作品であった。共演者のつかさんの愛娘で元宝塚娘役トップ・愛原実花、若手のノリノリ俳優の中尾明慶も大奮闘。二人のベテラン俳優に遜色ない素晴らしい演技であった。新感線の演出家いのうえひでのりも、自らの演劇の原点である作家の作品だけにその思い入れがたっぷりに込められていたような気がした。

でも、チケット¥9000は高くありませんか?こんな高いチケットも発売と同時に23ステージ分完売しちゃうんだから、たいしたたまげたの世界でございます。

終演後、杜夫ちゃんと一杯やったんだが、さすがにあれだけの台詞を喋っただけに、いつもの饒舌さを押さえ、明日の2ステージの備えているようでもありました。

新宿東口アルタの前では、いつものようにストリートミュージシャンがイブの夜を盛り上げていました。懐かしいスペインの曲が流れてきたので、思わずカンパしました。どんな人にも素敵なイブでありますようにとの願いを込めて...

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Merry Christmas

2015/12/21
【第765回】

今年も残すところ11日になってしまいました...今年はおいらの友人、知人を含め多くの人が亡くなりました。死者とは、もう話すことができないと思いきや、おいらが今日こうして書いている言葉も亡くなった人たちにも届いていると思います。文字を考え記す行為は、おいら自身の表現であるよりも、どこからかおいらに訪れる言葉を、聞きたい感じたい人に届ける作業のような気がします。おいらが書いた文字が誰にも読まれていないという事実があれば、この言葉はかなり貧弱な言葉になるのではなかろうか...おいらと他者との言葉の通路があるからこそ、その通路で事の葉が付き、言葉として成立するのではなかろうか...おいらが発する言葉、文字は亡くなった人たちにも届いている筈だ...先週の週末に観た2本の芝居の感想を知人に聞かれ、答えた言葉が10月に亡くなった友人である演劇評論家、村井健が一瞬憑依したかのような発言をしてしまった感がある。おいらと村井が言葉の通路を往来していることがすこぶる嬉しかった。人は現前の生きてる身体に、さもすると安心してしまい真実を見逃してしまいがちだ。

すべてのみえるものは、みえないものにさわっている。

きこえるものは、きこえないものにさわっている。

感じられるものは感じられないものをさわっている。

おそらく、考えられるものは、考えられないものにさわっているだろう。

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クリスマスイルミネーション2

 

2015/12/18
【第764回】

新宿の進学予備校の近くにサンタの格好をしているホームレスのおじさんが居た。このサンタさんのところに4人ばかりの少年少女が集まっている。好奇心旺盛なおいらは近くに寄り様子を窺う。なにやらおじさんとお話しをしているのだが、終始双方にこやかな表情で打ち解けてる感じだ。すると、子どもたちが手を合わせてサンタおじさんにお願いをしている。おじさんも仕方なく頷くと、子どもたちは一斉に、おじさんの生活用品一式が入ってると思われる頭陀袋にサインをし出した。おじさんは何とも嬉しそうな表情でサインをしている子どもたちの頭をなでている。こりゃなんだ?最後は子どもたちがおじさんと握手をして立ち去っていった。この奇妙な光景においらが突撃取材をしないわけはない...おじさんの前にたちはだかると、あのにこやかだったサンタおじさんの顔色が険しくなった。「いやいや、怪しいもんじゃござんせん(当然、あんたのほうが怪しいだろうとおいらは思っとりますが)何かをやられてる方ですか?」するとおじさん、おいらの顔をまともに見ることもなく首を振る。ホームレス生活も長いのか手も顔も決して綺麗とは言えないし、サンタの衣裳も随分とくたびれている。あんまりしつこく聞くのも失礼だと思い、最後に「記念に写真一枚とらせて頂けませんか?」と断られるのを覚悟して頼んでみたのだが、なんとなんと、それまでの迷惑そうな表情から一転して喜々として要望に応えてくれたからおいらもびっくりこきました。

それにしても、このおじさんはなんなんだろう?おいらが推測するに、このおじさんの頭多袋にサインした者が難関校の受験に合格し、その験を担いで子どもたちはサンタさん参りをしているのではなかろうか...と思いながらサンタおじさんの撮影した写真を確認したのだが、なんと消えてるではありっませんか!いや、このおやじひょっとしたら神かもしれませんぞ...

764-1.jpg764-2.jpg東京オペラシティ
クリスマスイルミネーション

2015/12/16
【第763回】

今日は朝から嬉しいニュースが飛び込んできました...第50回紀伊國屋演劇賞個人賞に高橋長英さんの受賞が決定しました。今年の2月にトム・プロジェクトがプロデュースした古川健作・日澤雄介演出「スィートホーム」の演技が評価されての受賞である。長英さんとは2006年に東憲司作・演出「骨唄」に出演して頂いてからの付き合いである。この作品が4本目になるのだが、おいらも大好きな役者、いや人間長英さんが大好きなのである。一見、小難しく取っつきにくい感じがするのだが、おっとどっこい大変面白い人なのである。酒が入るとおいらと物真似合戦が始まるのである。おいらが笠智衆、美輪明宏の物真似をすると、負けじと長英さんが仲代達矢、森進一で勝負を挑んでくる。酒の場では決着がつかず帰りの電車の中でも、人目も憚らずアクションを交えながらやり出す始末。あのインテリジェンスを漂わす長英さんからは、およそ想像がつかない。長英さんは徹底した庶民派である。地方に行っても必ず名もない小さな居酒屋を好む。大分県中津市に作家・松下竜一さん夫妻を基にした芝居、ふたくちつよし作・演出「かもめ来るころ~松下竜一と洋子~」を公演に行ったときも、中津駅前の小さなカウンターだけのうどん屋さんで昼間から安い焼酎とおでんを食べながら、ぐでんぐでんに酔っぱらったことがある。しかし、こと環境問題になると厳しい顔で地球を汚す輩を徹底的に打ちのめす。権力にもお金にも媚びることなく、たんたんと役者の仕事を続けてきた長英さん、受賞して当然である。新年、授賞式の後の飲み会では長英さんの物真似新ネタあるのかな?おいらも負けじと考えなきゃならんのかな...

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スィートホーム

2015/12/14
【第762回】

「鴨居玲 死を見つめる男」を読了...独自の絵画を確立した画家を支えた、日動画廊の長谷川千恵子さんが書いた本である。今年が没後30年、1985年9月7日に自殺、享年57歳。彼の絵を見てスペインの画家ゴヤを連想した。勿論、生きた環境、時代は違えども、その根底に流れている精神構造は同じものを感じた。41歳で安井賞を受賞、いくら描いても満足できず世界あちこちにアトリエを求めていった放浪の画家でもある。繊細でなにごとにも夢中になる破滅型の人生ではあったが、お茶目な面も多々あり、周囲の人間を煙に巻く遊び心をも持ち合わせていた。彼の重厚かつ深く沈んだ絵を見ていると、彼の内部に潜むとてつもない闇を感じてしまう。一つの作品を完成しても次なる闇に向かってしまう絵描きの業。どんなにも酒を飲み尽くし、楽しい時を過ごしても孤独と苦悩が押し寄せる。他人の心に潜む暗部が気になって仕方が無かったのであろう...アートを追求していくと、その作品が己の化身となり、表現したモノを批評しだし、もう一人の自分が出現するという厄介な事態に陥ってしまう。まさしく芸術という魔性に取り憑かれた画家である。だからこそ、人を惹き付けるのである。己の心身を削るように描き続けた作品が、見る者の感性を揺さぶるのは至極当然のことであろう...そんな彼が唯一心を許し解放できたのがスペイン・バルデペーニャスでの日々であった。おいらにはよく分かる、あの燦々と輝く太陽と、日々祝祭のごとく人生を謳歌している人達の輪の中に居ると、全てのことが許され、己に巣くう闇がなんと可愛げで愛しいモノであったかを気づかさせてくれる。

この物欲文化に覆い尽くされ悲鳴をあげてる世界の諸君、是非スペインアンダルシアのひなびた田舎に行って、もう一度ニンゲンのあるべき姿を学んで欲しい!ほんとですよ...

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「ピエロ」1983年作

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「肖像」1985年作

2015/12/11
【第761回】

野坂昭如さんが亡くなった...野坂さんで想い出すのは、今から43年前くらいかな、新宿ゴールデン街の名物ママで有名な「前田」で飲んでたときに隣に座っていたのが野坂さん。ニヤついていたのだが何故かダンディな佇まいであった。前田のママは佐賀県の出身で、おいらの母の妹と同級生であったことで大変可愛がって貰った。普通だったら、とても入れて貰えない敷居の高い店であった。飲み代が高いのではなく、この店に一歩踏み込んだら知性、品性が問われ、それなりの理論武装、己の信念を抱いて酒を飲まないとママの厳しい意見が飛んでくるのである。この日も、野坂さんがニヤついた顔で女性論を語っていたのだが、すかさずママが「野坂、えらそうなこと抜かすな...」と、一刀両断。しばらく野坂さんも持論をあの早口で喋っていたのだが、最後には頭に来て帰ってしまった...この店で怒られた有名人は数知れない。世間では先生ともてはやされた著名人も、この店ではただの人である。こんな気骨のある店があったゴールデン街も、今や観光名物地になっちまっただよ。まず、おのぼり外人観光客がカメラ片手にうろちょろしとります。若い経営者が増えライト感覚になっちゃいました。まあ、無くなるよりはいいんだが、あの無骨で気骨のある店が少なくなっていくのが寂しい気がします。

昭和がどんどん遠くなっていきます...野坂さんのシャイで遊び心満点の自己演出、好きだったな。そして原点にあるのは戦争体験、死の直前まで最近の政府のきな臭い動きに警告を発していた「戦争などあり得ないと思い込んでいるうちに、気がつけば戦争に巻き込まれている。戦争とはそんなものだ」

野坂さん天国でもふざけた顔で唄ってんだろうな「マリリン・モンロー・ノー・リターン」

♪ソソソクラテスかプラトンか,ニニニーチェかサルトルか...

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今年もそろそろ終りだニャー

2015/12/09
【第760回】

日本のJAZZもいけまっせ...JAZZと言えば、やはりアメリカが本場でございます。でも、時々掘り出し物にぶつかるときがございます。今回は『BUENOS AIRES 1952』大橋祐子トリオ、いいんですな!一曲目の「黒い瞳」から、ぞくぞくしちゃいます。祐子さんのピアノもさることながら、佐藤忍のベース、守新治のドラムもなかなかのサポートと言うより、きっちりと自己主張してるんです。昨日は、日本酒に子鰯をちょろりと焼いたモノをつまみながら、たっぷりと我が家のオーディオシステムで堪能しました。

JAZZに日本酒に小鰯、これがまた合うんですな。まさしく和洋折衷、東洋の文化と西洋の文化が小さな空間で、ほどよくブレンドして、おいらの心身を心地よく解してくれます。

若い頃、年とったらJAZZ喫茶をやろうと2000枚ほどのLPレコードを、バイトで稼いだなけなしのお金を掻き集め買い漁った時代から、今尚、JAZZをこよなく愛しているのでございます。

今は少なくなったJAZZ喫茶を、全国各地追い求めているおいらの姿は、まるで少年のようでもあります。

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よかですばい!

2015/12/07
【第759回】

「東おんなと京おんな」昨日、東京公演終わりました。二人芝居は本当に難しいですね。二人だけのバトル、どちらかの波長が狂うと、なかなか取り戻すことが出来ません。岡本麗さんと鶴田真由さんの緊張感いかばかりか...でも役者にとっては、とてもやりがいがあると思います。日々の出来をリアルタイムで感じ取ることが出来るんですから...芝居の出来不出来は、お客の反応でよく分かります。お客が舞台に身を乗り出してくればしめたモノですが、背を引っ張られるような状態になると、なかなか取り戻すことができません。事実、芝居よりも重い日常を背負いながら、わざわざ劇場に足を運んでくださる人達に、それはそれは余程の作品を提供しなければ満足させることは出来ません。

東京の街も、ようやく秋らしくなってきましたね...例年よりも紅葉の時期が遅くなってる気がします。地球温暖化は一段と進み、自然の営みに大きな変化が起きてます。先日の世界会議でも、大国と発展途上国との意見がくいちがい悲観的な未来を想像するしかありません。利潤、便利、贅沢大好きな愚かな人間が確実に地球滅亡へのプログラムを遂行しようとしています。待ったをかけんといかんですばい!

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紅葉3

2015/12/03
【第758回】

えらいこっちゃ...12月1日、北海道で「南阿佐ヶ谷の母」の千秋楽。12月2日には東京で「東おんなと京おんな」の初日。「だいだいの空」も新潟で12月1日の2ステージを終え帰郷。賑やかしい師走のスタートでした。日本全国、こんなにあっちゃこっちゃで公演してるところも珍しいんじゃありません。芝居はナマモノでございますので神経が休まる暇がございません。「南阿佐ヶ谷の母」の件がありますんで、「東おんなと京おんな」の稽古中に女優さんが風邪なんかにかかっちゃうと、インフルエンザ?なんて心配してしまいます。

芝居屋さんは長生きできないかも...なんて考えてもしょんなかですばい。誰が采配してるか知らんけど、この世に起きるすべての事象はケセラセラ、自然の神さんに身を任せるしかありません。でも己のチカラで少しは軌道修正できるかもしれんとニンゲンは日々自分磨きをするんでございます。考えてみれば、今ある己の姿はこれまで自分の歩いてきた結果ですからね...怠ければ当然の今が待ってますことよ...といって、四角四面の真面目が良いってもんじゃありません。この世、遊び心を失ったら色気もくそもありませんことよ...

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紅葉

2015/11/30
【第757回】

今日は11月30日、今年も、いよいよ残すところ1カ月となりました。本当に月日が流れ去る速度が年々早くなっている気がします。残された人生なんて考える歳にもなりました。

でも、人間、特に男はいくつになってもガキですな...いい意味ではいつも少年のような夢を追いかけながら浮遊しています。子供も産めない男にとっては夢とロマンと冒険にゆだねるしかないんでしょうね。でも、これすら諦めてグダグダと時間を垂れ流している男どもがいるんですから情けなかです!ただの働き蜂で終わるのか、飲兵衛でごまかすのか...いやいや、この世に生まれたからには世の中になんかお返しせんかい!

この前、美しい白馬を見てきました。馬の目は、静かですべてを達観したような感じがします。それはあくまで人間から見た感じ方で、馬はまた違うとらえ方をしているのかもしれません。こんなわけで、この果てしない宇宙の中に生息している生き物の一種でしかない人間なんだから、もう少しは謙虚に生きないかんですばい...新聞広げると、いつものようにあちこちでドンパチの記事。いつの世も弱い者が被害にあってます...死ぬまで言い続けたい!憎悪からは何も生まれない...

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白馬

2015/11/27
【第756回】

昨日、熊本県荒尾市での「南阿佐ヶ谷の母」の公演に行ってきました。荒尾市は福岡県大牟田市三池炭鉱と並び炭鉱で繁栄した時期がありました。万田坑は平成10年に国の重要文化財にも指定され、日本政府からユネスコへ世界遺産候補として正式に推薦され、平成27年の世界文化遺産登録を目指しています。駅前には、そのモニュメントが建っていました。その駅前からタクシーで会館に行ったのですが、暗い夜道に人影もなく、果たして今日の公演の集客は大丈夫だろうか?という不安が過りました。荒尾総合文化センターに着くと、その不安を吹き飛ばすように、続々と観客が集まっているではありませんか...公演は無事、とんとん拍子で幕を下ろし、終演後キャストの皆さんと地元の馬刺しを中心においしい酒を酌み交わし、ラスト2ステージよろしくということで別れました。

九州に行くときは、97歳になる母に会うのが楽しみです。さすがにあと何年というところまでやってきました。おいらの顔を見ると嬉しそうな顔をします。一番心配していた息子が晩年親孝行したんで喜んでいるんでしょう...苦難の引き揚げから夫を亡くし5人の子供を育て上げた母は偉大です。こんな母のためにも一人前の男にならんといかんばい!という思いで生きてきました。別れるとき母の手を握ると、強く握り返し「酒飲みすぎたらいかんよ...」といつものアドバイスを返してきました。

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母が描いた仏画

2015/11/24
【第755回】

先週の土曜日、10月5日に亡くなった演劇評論家・村井健のお別れの会が、紀伊國屋ホールロビーで行われた。村井は生前、建前、権威、馴れ合いを非常に嫌っていた。その村井の意思を尊重し、お偉い人の挨拶もなし、来てくれた人が小さな紙に簡単なメッセージを書き、遺影の前に置くだけのシンプルなものだった。200人ほどの人が、村井に様々な思いを伝えた。そのあとは、希望者だけで近くの中華レストランの地下に三々五々集まり談笑。130の人たちが村井を偲んでいた。村井の娘さん夕さん、息子さん空君も嬉しかったのではなかろうか...

村井は、本当に武骨で生き方が不器用ではあったが、真の侍であった。藤沢周平の小説に出てくる登場人物を彷彿させる。おいらと一度だけ激論したことがある。それは学生運動が激しい大学時代の時である。村井は全共闘の闘士でありリーダーでもあった。おいらに再三デモへの参加を呼び掛けてきたが、おいらは断り一人で闘うと言ったところ、村井は日和るのか!と責めたので、おいらは「数の力なんて信用してないし、ゲバ棒と投石で世の中変わるわけないだろう...所詮、学生なんて親のすねかじりばっかりだろう!俺は俺の生きてきた人生を信じて闘うし、組織に組することもないから二度と誘うな!」こう激しく口論したあと暫くは会うこともなかった。その後、彼が演劇評論家としてデビューして再会を果たした。

村井の笑顔は素敵だったな...特に怒った後の笑顔、お前は本当はとっても優しい奴だったんだな...簡単に笑顔を見せると社会・ニンゲン思い上がるから、仏頂面の演技してたんだな。

村井!もう彼岸の世界に逝ったんだからいつもの素敵な可愛い笑顔でのんびりしてくれ。

村井!50年間ありがとう...おまえに出会えて嬉しかったよ!

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お前のこと忘れないよ!

2015/11/20
【第754回】

最近知人からよくこんなことを言われて困っています...「見ましたよ!驚きました...」いやいや、今BSテレビで、あの人気番組「鬼平犯科帳」が再放送され、おいらがかつら付けて盗賊役で出演しているのを見てびっくりしたみたいですな。今から22年前、おいらは役者なんかやっていないときに1本の電話が松竹からかかってきました「貞永方久監督指名であなたに出演して欲しい...」そう言えば20代の頃にやっていたアングラテント芝居を監督が観に来て誉められたことがあったっけな。でも、その時はただの風来坊、そんな人気番組を汚すことになったら監督に迷惑がかかるのではと思ったのだが、折角監督が声をかけてくれたのだからと出演を受諾。冬の京都太秦撮影所に馳せ参じた次第です。全くの無名の人物ながら監督指名の力は偉大で、床山さん、衣装さんにも虐められることなく、撮影時間待ちでドラム缶にくべられた薪で暖を取っていました。10人くらい取り囲んでいたのだが、おいらだけ黒装束のいでたちで革靴履いていたので、周囲の人から侮蔑の目で見られておりました。しまった!すべてが準備不足、履物も持って来てないし、衣装の下に着る下着もなし、ありゃらんらんの状態ながら、気持ちは十分に高揚しとりました...翌日、侮蔑の目で見てた俳優の態度ががらりと変わりました。おいらの役がゲスト主役の次ぐらいの役だったんでびっくりこいたんでしょうな。「どこの事務所に所属されてるんですか?」いやただの素人、素浪人でござんす...今にしてみれば、懐かしく楽しい時間でございました。数年前に貞永監督も亡くなり、お別れの会に出席し監督にお礼を行ってきました。
ちなみに、作品は、鬼平犯科帳 第4シリーズ 10話「密偵」でした。おいらの役は縄抜けの源七。

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紅葉2015

2015/11/18
【第753回】

世界は、大惨事世界大戦に突入しました...憎しみの連鎖は本当に怖いし、果てしない泥沼状態を生み出します。唯々、武器商人を喜ばせるだけです。イラク戦争がきっかけでした、世界はバランスで成り立っています。政治、宗教、民族の違いがあって当然だし、よそ者が勝手に手を出したばかりに平行感覚を失い、被害者が加害者に変貌し取り返しのつかない結果を招きます...悲しいかな人間は歴史を学ぶことが出来ない生き物でしょう...不便を便利に変えたばかりに失ったモノは計り知れない。そんなに金が欲しいのか!そんなに権力を手に入れたいのか!そんなに見栄をきりたいのか!本当に悲しくなります...フランスが報復、「自由・平等 ・友愛」の国旗が泣いてます。テロとの戦い?テロの増大に繋がるのでは?

所詮、核を保持している国が、世界平和を唱えても嘘くさい...核と兵器のお金で、世界の困窮した人達をどれほど救えるか...やはり、愛する地球を滅ぼすのは癌細胞ニンゲンです。こんな時代だからこそ、少数でもいいから自然を愛し、人を慈しむ心優しい人間でありたい!

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貧しくとも平和な世界

2015/11/16
【第752回】

ジャズ好きなおいらにとってたまらない映画観てきました。「セッション」ドラマーを目指す青年と熱血教師との一騎打ち。話は、実際に体験した恐怖のレッスンを基に脚本も書いた俊英デイミアン・チャゼル監督による作品。緊張感溢れるカメラワーク、効果的な音楽、何処にも居るような青年役のマイルズ・テラーのラストのドラム捌きは鳥肌モノ。日本の舞台演出家・蜷川幸雄を彷彿とさせる教師役のJ・K・シモンズが、これまたいいんですな。外国の俳優には、こんな実力、存在感を持ち合わせた俳優がうじゃうじゃ居るんでございます。役づくりしているのか、そのものなのか、虚像と実像を巧みに創造しているほんものの役者に拍手!1935年にデューク・エリントンが作曲したキャラバンが何度も流れるが、この映画を観て全く別物の音楽に聞こえてくるのも、この映画がもたらす人間ドラマの凝縮度からであろう。

それにしても、飯田橋ギンレイホールが放つ、珠玉の名画のラインアップ。敬意を表します。まさに、映画好きがある集まる聖地ですな。いい映画を見終わった後の、お酒が、これまた旨いんですな。名画と銘酒、これだから人生やめられませんな...

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新宿御苑

2015/11/13
【第751回】

今年も残すところ一ヶ月半になってしまいました...新宿のお店もこれから年末に懸けて様々なデコレーションで街を華やかにしてくれるでしょう。中でも、伊勢丹の飾りは、さすが日本一のデパートらしく夢とロマンと遊び心で、道行く人を楽しませてくれます。お金もかかることとは思いますが、ここは思いっきり魅せつけて欲しいですな...その点、京王、小田急、高島屋は遅れをとっておりますな。京王デパートは、今やおばさん達の聖地になっています。一階の店に並ぶ、靴、傘、ショールなどなど小物用品の値札につけられた¥3000に吸い寄せられるように群がり漁っております。なんだか、本当に安いのか?ちょいと疑問を持たざるを得ないのだが、ここは集団心理をうまくついた商法でよござんす。

それにしても、今日の新宿の通りから聞こえてくる会話の半分近くは中国語。日本国の中国化もホントにホントになりますがな...

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伊勢丹

2015/11/11
【第750回】

「南阿佐ヶ谷の母」昨日で無事、東京公演千秋楽を迎えることが出来ました...沖縄での、まさかの木の実ナナさんの骨折から心休まる日がありませんでした。能天気なおいらに、たまにはハラハラドキドキせんといかんばい!とのお達しがあったんでしょうな。でも今回はきつかったな...でも強力スタッフ、キャストの結束で何とか乗り越えられましたな。でも、まだまだ油断は出来ません。これから旅に出るんでございます。11月14日から12月1日まで東北、関西、九州、最期は北海道、計10ステージが残ってます。木の実さんは勿論、みんなの健康と無事を祈るのみ!

それにしても、昨日の国会予算委員会、大臣の香典問題の追求も分かるけど、もっと肝心なことがあるだろうに民主党。これじゃ、支持も増えんですばい!おいらが頭に来てること、確か今から3年前、当時民主党の野田首相と自民安倍党首で議員削減の約束したんじゃなかったの?議員一人年間3千万の税金を、どれだけ他のところにまわせることか...自民は勿論、他の野党も積極的に取り組まないから、おいらは今でも政治家信用できません。そんな人達が、えらそうな顔して国を治めてんだから、こりゃ絶望的ですな。

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つわものどもがゆめのあと

2015/11/09
【第749回】

おいらも後3ヶ月すると70歳になっちまう...今年は知人が次々と居なくなっちまう。つい最近まで話していたのに、何だか狐につままれた感じだ。ついこの前も、今やってる芝居いつ来るんだい?と思わず村井健に電話しそうになっちゃった。川島なお美さんも、ふらりと劇場に来そうな気がしてならない。劇場のロビーに立つのもプロデューサーの大切な仕事なんだが、いつも来るはずの人が来ないことで亡くなったことを改めて知らされる次第だ。劇場のロビーは、日頃逢わない友人知人の生存確認の場でもあり、この歳になると、あと何回逢えるのかな?なんて思ってしまう。先週金曜日に、芝居を観に来た風間杜夫ちゃんと終演後の飲み会で、おいらが死んだ暁には杜夫ちゃんが葬儀委員長をやるなんて言ったもんだから、おいらは100歳まで生きるから風間杜夫の葬儀はおいらが仕切ってやるとお返ししました。いやはや、こんな話をするような歳になっちまっただ...

生きてこそ生きてこそ 今ここから始まる

生きてこそ生きてこそ 広がってまたつながる

こんな歌があったな...生きてこそなんぼの世界や...

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根は一つ

2015/11/06
【第748回】

「阿佐ヶ谷の母」の心労の影響か、右目がウサギちゃん状態になっちゃいました...過去にもこれに近い苦難の日々はありんしたけど、今回はメガトン級でございます。心臓がパクパクしちゃって、お目々の血管が破裂したんでしょう。病院に行くと結膜下出血との診断、まあ10日もすれば治まるんじゃないの?考えてみりゃ、芝居の興業なんてものは博打みたいなもんで、役者のアクシデントも織り込み済みでスタートしてるみたいなもんです。大手劇団であれば稽古中もアンダーなる者を付けて、いざとなれば代役出来る按配で進行していくのですが、おいらのところは少数精鋭主義の集団であるからして、そんな余裕はありません。後は野となれ山となれの心境というか、神のみぞ知るの開き直り精神でやってきました。

日頃の行いが良いのか?芝居の神さんが守ってくれてるのか?いずれにしても21年間なんとか少々の苦難も乗り越えてやってきました。ほんまにナマモンは怖いけど、そのハラハラドキドキもスリル満点で、眠った細胞に刺激を与えていいのかもしれませんな...なにせ何事もプラス思考に持って行くおいらの習性、どんまいどんまい。

さあ、今日の公演も入れて地方含めて15公演。頼みまっせ!芝居の神さん。

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2015/11/04
【第747回】

昨日、「南阿佐ヶ谷の母」東京公演、無事に新宿紀伊國屋ホールで初日を迎えることが出来ました。いやいや、芝居の中身より幾多の波乱のドラマを抱えての初日でした。先月の沖縄公演の二日目の朝に、出演者の木の実ナナさんが大腿部を骨折。おいらが、ホテル近くの読谷の綺麗な浜辺を散策し帰ってくると、なんと木の実さんが、今まさに救急車で運ばれてる最中、タンカに横たわってるナナさんを見て、おいらは顔面蒼白。沖縄北谷公演の開演を3時間後に差し迫ったこのタイミング、そりゃ覚悟しました。公演中止!この日を楽しみにしていた沖縄の人達のことを思うと身が引き裂かれる思いがしました。500人のホールのチケットは既に完売しており、公演関係者にも多大な迷惑を掛けることになり、おいらの心中穏やかではありません...早速、演出家水谷氏と二人で病院に向かう、車中、水谷氏と中止になったときの策を考えるのだが、やはり最悪でも車椅子で公演できるナナさんの状態を願うばかり。病院に着くと開演二時間前、診断した先生に病状を聞くと大腿部骨折、車椅子でやれないことはないが、悪化すると、その後の処置が大変だとのこと。こちらはやって欲しいとの意志を伝える。あとはナナさんの判断。ナナさんは車椅子でやりたい!との意志を医師に告げる。早速、応急措置をして頂き介護タクシーを呼んで会場に向かう。開演まで1時間半前、早速、車椅子による場当たりをやり、30分開演時間を延ばして貰って上演。ナナさんの痛みを堪えながらの女優魂、共演者の見事なフォロー、スタッフの迅速な対応により公演は見事成功。ほんまに涙がちょちょぎれました。

翌日、ナナさんは帰京し手術。手術の結果次第では、またしても東京公演、地方公演の中止もあったのだが、無事成功。あとはリハビリと術後の経過を見ながらも、なんとか初日を乗り切りました。

今回の総力戦、あらためて芝居は誰ひとり欠けても出来ないし、なんとかいい芝居を創り、来て頂いたお客様に見て貰いたい!そんな気持ちがひとつになった初日でした。

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シーサーに守られました

2015/10/29
【第746回】

新宿を歩いている人の表情が険しいな...先週、沖縄で見たのんびりスマイルの表情が印象的だったので余計に感じます。貧しくとも、楽しく、気持ちのいいことが一番!華のお江戸では出世、お金、ブランド、見栄なんぞに惑わされ、眉間に皺が増え、燃え尽き症候群みたいなお顔がはびこっております。昔、沖縄に二ヶ月ほど住んでたとき、二度追突されました。しかも、おいらは赤信号で停止中の出来事で、びっくりしたさ...そのとき思ったさ、沖縄のピーカンの空、海、緊張感のない空気、そりゃぴりぴりしないさ...三年住んでたスペインアンダルシアと似たとこありますな。一度きりの人生、飲んで騒いで恋をして楽しまなきゃ損ですバイ。人生は、まさしく祝祭のためにあるのでございます。満員電車の殺伐とした状況、押されてむっとし押し返すおじさんおばさんお兄ちゃん、いい感情なんて生まれませんな。この通勤時間のスタートから、戦いの火蓋が切られている悲惨な都会。しかし、生きなきゃなりまっせん!みんなが優しい感情と、感謝の気持ちを持ちさえすれば、少しはリッチな気分になれるのにな...

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シーサー

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沖縄の花嫁

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ハブに注意

2015/10/26
【第745回】

10月24日、25日沖縄で「南阿佐ヶ谷の母」無事に公演を終えることが出来ました。沖縄のお客さんの温かい応援と、スタッフ、キャストの見事な連係プレーで、いい芝居に仕上がったと思います、それにしても沖縄の空と海は果てしなく青い。その青さの中で多くの米軍基地を持つ沖縄。読谷でタクシーに乗車したときに「こんな素敵な一等地の殆どが米軍基地で占められてますね...」思わずおいらが発した言葉に年老いた現地の運転手さんが「すみませんね...」まるで申し訳なさそうに答える言葉に、この沖縄が長年に渉る受難の歴史の重みを感じました。公演地である読谷は、米軍が攻め込んできた海岸であり、今でも反撃した日本軍の壕が残っていました。綺麗な海を眺めながらお喋りに講じているお年寄りの表情は、一見穏やかではあるのだが...この綺麗な空と海は、沖縄の人達の無垢なる霊魂の願いを表してるに違いない。

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読谷の海と空

2015/10/21
【第744回】

この平和な光景がいつまでも見れますように...柔らかな芝生の上で、幸せそうな家族、親しき友、熱々のカップル、アジア・ヨーロッパの旅行者、皆、柔和な笑顔をしとりました。その中で、ひとりホームレスらしきオッさんが不安な表情で虚空を見つめておりました。でも、オッさん、世界の国々では大変なことになっとりますよ。難民、テロ、内戦、飢餓、この事実とオッさんの内実とを比較するのも難しいところあるんだが、この一見平和な風景の中に居られるだけでも幸せじゃん!と言いたい。でも、一見というところが怪しい...この風景に、あまりにも馴染みすぎると思考が停止し、よからぬ輩が着々と、銭のため欲のために世の中を汚してしまうんでございます。今話題になってる不法建築なんぞも悪しき一例。先日手にした本に依れば、この国の殆どの食品が化学物質で汚染されております。おかしな病が蔓延る理由も頷けます。おいらもクチャクチャと噛んでたガムなんぞもえらい悪玉だそうですぞ、好きなワインだって酸化防止剤、大変悪いそうです...そんなこと言ってたら何も口に出来ません...でも、確かに売らんがために有害なモノを入れているのも事実です。疑ってかかるなんて事、おいらあんまり好きじゃないんだけど、この複雑怪奇な世の中になった以上は必要なことですな。疑心暗鬼な酷い世の中にならないためにも、監視の目を緩めてはなりませんぞ...この文章書いてるときに地震、テレビ付けると福島原発の近くじゃありませんか!ほんとに原発再稼働してる場合じゃありませんがな...

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代々木公園

2015/10/19
【第743回】

昨日は、全国演鑑連・首都圏演劇鑑賞団体の第30回定期総会に出席しました。埼玉、千葉、東京の、12の鑑賞団体の代表者100人が集まり東京・国分寺で開催されました。おいらは24の劇団、創造団体のひとりとして参加させて頂きました。戦後、民主的な運動の中から新劇を支援し経済的にも大変な時期に支えてくれた大きな組織です。1時から5時までの熱心な討議を聞きながら、演劇に期待する人達の情熱に唯々頭が下がる思いがしました。演劇は、当然のごとく観客なくして成立しません。お客なんて、こんな選択肢の多い時代に、それこそあてになりまっせん...その点、演劇鑑賞団体の人達は、年間6本の会費を払い、しっかりと見続けてくれるのです。芝居を見続けることによって、民主的な社会にすることも同時並行的に運動体として捉えているところが大きな特徴です。平均年齢も高くなるなか、パワーは衰えることもなく活動されてる姿を見るにつけ、身が引き締まる思いがしました。総会の後は懇親会、お酒と中華料理、そのあと二次会...提供する劇団・創造団体が、つまらんしょうもない作品を創ろうもんなら即刻打ち首もんでございます。芝居をこよなく愛する人達のためにも、品質の良い芝居を創ることが、おいらの使命だと再確認した一日でございました。

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国分寺の老舗ケーキ店

2015/10/15
【第742回】

今年は、おいらの演劇関係者が次々と亡くなっていく...昨日も、新宿の夕景の空をぼんやり眺めていたら、亡くなった人達の魂がふんわりと浮かんだいるように思えた。まだまだ身近にいるようで、この街を慈しみ懐かしく思っているんだろう、なかなか立ち去らない様子で、おいらも思わず「戻って、又、芝居の話でもしようぜ...」と声を掛けそうになった。だって、この面々、芝居に対する情熱は半端なもんじゃございません。神さんは無情です...なんで、そんなに早く彼岸に連れてっちゃうの。そっちの世界の演劇界は人手不足なのかな...そう言えば、おいらだって、人生の第四コーナー、いずれは、そちらの仲間入りをさせては頂くんだが、なんだか久しぶりに死と向き合った感じがしております。博多に住んでる97歳の母の姿を見たことの影響もあるんだが、人は、生き物は間違いなく死んじゃいます。肉体が滅びた後の行く末は?魂は?諸説もろもろ言われているのだが、死んでしまえば終わりです、死後の世界なんてどうでもいいんじゃない...だとすれば、生きてるときが全てです。一瞬たりとも無駄にしちゃなりません!なんて言うのも窮屈だし、のんべんだらりんも情けないし、ほどほどのいい加減(湯船に入ったときの熱くもなく寒くもない状態)な心地よい時間を過ごすことがベストかな...神さん、お頼み申します、今年はもう連れていかんでくんしゃい!

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新宿の夕景

2015/10/09
【第741回】

10月7日、博多。昨日は長崎県時津町で、風間杜夫ひとり芝居「正義の味方」公演しました。地方公演は、その土地それぞれの色合いがあり演者も観客も楽しさ満載です。今回の芝居は時事ネタが随所に盛り込まれており、その反応も楽しみの一つです。博多ではプロ野球のソフトバンクホークスに絡んだネタを仕込んだのですが不発に終わりました。今年のパリーグはソフトバンクがリーグ優勝を飾り、ロッテオリオンズは3位に終わりましたが、明日から2位の日ハムも含めクライマックスシリーズが始まります。数年前、同じく3位であったロッテがリーグ優勝したソフトバンクに勝ち、セリーグ、パリーグで日本一を争う日本シリーズの出場権を勝ち取り、まさしく下克上の状況を呈しました...今年も、その悪夢を払拭させないためのネタをカルタに託して一席もうけたんですが、場内はし~んと静まり返ったまま。博多のソフトバンクファンは本当に想い出したくなかったんですな...

この芝居、時事ネタでの爆笑が、あまりにも多いので、たまにはハズレもないと、なんだか唯のおちゃらけ芝居になっても困るし、その辺のバランスが難しいところですな。

芝居が終わり、駆けつけた地元のお客さんと一杯飲むのも地方公演の楽しみです。博多では、お決まりの六本松の「ひろ」での宴会。博多の夜は、格別ですたい!

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博多ジャズバー ブラウニー

2015/10/07
【第740回】

村井健が亡くなった...昨日羽田空港で知った。村井とは大学の同級生であり、半世紀に渡る同志である。彼が全共闘の闘士で、軟弱な輩に檄を飛ばしている姿は今でもくっきりと覚えている。おいらは徒党を組むのが嫌で一人で戦っていた。そんなおいらをセクトに誘うこともなく安酒飲みながら、政治、文学、演劇そして好きな女性の話なんかを口角泡を飛ばしながら話したな...秋田から出てきたお前と、博多から上ってきたおいらとは何故か気があったな。おいらの芝居観て、お前がいつも言ってたな「おまえな、なまりが取れないと役者なれないぞ...」田舎もんのお前が、なんだかアカデミックなこと言いやがって、おいらはクソと思ったよ。そう言えば、お前は良く本を読み勉強してたな...その後、而立書房から売れない戯曲をたくさん出版し、今の演劇界を支えている数多くの作家を育てたな。おいらが海外放浪の旅から帰り、再び演劇の世界に戻ったときに、真っ先に電話したのもお前だった。お前のアドバイスで、トム・プロジェクトも21年続いてるよ。お前の、演劇に対する情熱、啓眼力は演劇界の大きな推進力になっていたな。今、話題になっている演劇人も、お前の強力な後押しがあったからこそ頑張れたと思うよ。彼らの後見人でもあったお前の訃報を聞いての悲しみはいかばかりか...でも、彼らはお前の演劇に対する姿勢を受け継ぎ、硬派な芝居を創り続けていくと思う。そう言えば、お前は辛口演劇評論家で敵も多かったな。でも、そこがお前の真骨頂。決して妥協することなく69年の生涯を全うしたな。お前は偉い!

最後に、お前が、今まで住んでた横浜の地に引っ越すときに、おいらが運転手で手伝ったのは良かったのだが、スピード違反で捕まり罰金払わされたな...とんだ出費になり悪かったな。もう、お前の威勢の良い辛口批評は聞けなくて寂しいけど、お前の鋼の精神を少しは見習って、少しでも良い芝居創ることが、お前への最善の供養かもしれんな...ゆっくり休んでくれ村井。

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合掌

2015/10/05
【第739回】

おいらが通勤で使う井の頭線での奇妙な風景...65歳くらいの上品な叔母様です。駅に向かう途中で良く出逢うのですが、背筋もしゃんと伸び元気に歩いている左手には何故か杖を持っているんです。こんなに元気なのになんでかしら?そのわけは駅の改札口近くで解明されました。改札口近くになると杖の出番なんです。少し足をいたわるかのような仕草で改札を通過し、エレベーターに乗り駅のホームに向かいます。年齢と、杖に頼るこのポーズであれば誰しもが、お身体が少々悪いご婦人だと思いますよね。電車が到着し、当然優先席の近辺に位置します...優先席が空いていれば問題なく座ればいいんですが、そうでない場合は、勿論、座っている人はバツが悪くて座席を譲るのが至極当たり前。ところが、この日ばかりは、若年層も含めて誰もふんぞり返って譲ろうとしません。おいらは、このご婦人の顔を見ましたよ...いやいや、不満そうな表情で、まるで世の中の非情を嘆き悲しんでいる顔をしていました。「ああ無情!誰がこんな日本にしてしまったの...」叔母さん、あんたがそうしたんや...と言いたいところだが、なんとも奇妙な感覚に襲われました。この叔母さんの心意もどうやろか?その作為に何故か大きな歪を感じ、悲しい気持ちになってきました。この行為に至る叔母さんの現在の環境、生きてきた由来が、なんとも痛ましい。この世の中、いろんな意味で、悪しき創意工夫をしながらでも生きなきゃならない時代になってきたのかも知れませんね...

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レトロなマッチ

2015/10/02
【第738回】

只今、川島なお美さんの葬儀から帰ってきました。美しい遺影の周りには、沢山のワインが飾られていました。なんだか亡くなったのが嘘のような雰囲気でした...喪主の鎧塚さんが、気丈に場を持てなしてる姿を見て何だか目頭が熱くなってきました...青山葬儀場は2014年5月の蟹江敬三さんのお別れ会以来です。人は何れ死ぬと分かっていても、別れはつらいものです。特に役者が、命よりも俳優としての最期を望むのも壮絶なものを感じます。以前、トムの舞台にも出て頂いた緒形拳さん然り。表現という魔物に取り憑かれると、ノーマールな思考も何処吹く風、唯々、果てしなき表現地獄、いや表現天国の魔界に彷徨ってしまいます。そこまでリスクを抱えての命懸けの行為が、多くのファンを魅了することも確かです。今尚、世間では、子が芸能なる世界の門を叩きたいと言ったときには、反対するのが当たり前だと言われています。この魔界の世界でモノになる人はほんの一握りです...おいらも、志し中半で倒れていった仲間を随分見続けてきました。でも、彼らが歩んだ人生も立派なドラマであり、表現だと思います。

青山葬儀場を後にして、晴れ上がった空を見上げると初秋の太陽の光がキラキラと輝いていました。そう言えば、初めてトムの稽古場で本読みしていたときの、なお美さんの瞳を想い出しました...

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合掌

2015/09/30
【第737回】

今年も風間杜夫ひとり芝居「正義の味方」が始まりました。初っ端は横浜にて公開舞台稽古。

どんな名優でも初日は心臓パクパクするそうです...風間さんは舞台の袖で、手のひらに○を書き、それを飲み込んで舞台に上がるそうです。そうです!お客を飲み込んでから一気呵成に舞台で暴れちゃおうというお祈りみたいなもんですね。この日も、まるでお客を手玉に取ってる感じで、笑いをとり、お客の心を舞台に引き付けていました。こりゃ名人芸ですな!と唯々感心するのみ。お疲れさんです...楽屋に行くと杜夫ちゃん、びっしり汗を掻きもぬけの殻状態でございます。あんなに軽やかに楽しそうに見えたのですが、そこが名優の所以たるところでございます。一生懸命を見せないのがプロ、しかも一人で一時間半演じ切るんですから、たいしたたまげた俳優さんです。

この日は、横浜桜木町のジャズ喫茶「ダウンビート」にもお邪魔しました。創業1956年の老舗の店。壁に飾られたオスカーピータソン、ソニーロリンズ、マイルスデイビスなどの油絵や、切り抜きの記事が59年間の紫煙、ジャズを愛する人の思いで、茶褐色に変色していました。場所柄、開店当時は米軍基地から米兵が来店し、夜明けまで賑わっていたそうだ...時は移り変わり、ジャズ喫茶はなかなか経営が難しくなってきたのだが、こうやって頑張っているお店にはエールを送りたくなるのでございます。

公演が終わり、みなとみらいの夜空を眺めると、スーパームーンがキラキラと輝いていました。

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ダウンビート

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スーパームーン

2015/09/28
【第736回】

川島なお美さんが亡くなった...トム・プロジェクトの芝居にも4本出て頂いた。正直言って、おいら、川島さんのこと女優と言うより、テレビのタレントさんだとばかり思っていた。ところが、8年前の中津留章仁作・演出「とんでもない女」で下條アトムさん、吉田羊さん(今、とっても露出してます)相手に、女優意識むき出しの闘志を見て、こりゃ本気だなと、川島さんの見方を変えた次第です。あの美意識に支えられた意地は半端なもんじゃありません。何度も何度も、台本を読み返し、どんな些細なことも作、演出者にしつこく質問する姿を見るにつけ、この人、芯から芝居が好きなんだなと思いました。マスコミの世界で生きてきた人達にとって、あまりお金にもならない舞台に、全エネルギーを注ぎ込んでくれる人には、当然おいらにとっても強い味方であり同士です。なお美さんの天性の美しさと明るさは、とかく暗くなりがちな舞台を輝かせてくれました。大好きなワインを飲みながら食事しているときのなお美さんも、芝居の稽古で疲れている仲間を元気にさせてくれる活性剤の役割をしてました。素敵な旦那様、鎧塚さんと結婚して、これからまだまだ公私ともやりたかったことはたくさんあったはずです。

でも、なお美さん、貴女が残してくれた映像、舞台は我々の記憶にしっかりと刻まれてますよ...

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「とんでもない女」

2015/09/24
【第735回】

散歩は心のオアシスだと思っています。いつもの通りを歩いていると、いつものお店がなかったり、違う店に変わっていたり、おいらの気持ちも微かに動揺したり、何かしらの想像が頭を巡ります。昨日も、吉祥寺の人気飲み屋の看板が変わっていたので、なんでやろ?予約しないと入れないくらいの店が潰れるわけがないし、心境の変化でもあったんかしら...日本酒と魚の美味しいお店が、お好み焼き屋さんになったんですから、こちとらも色々と想像してしまいます...自分の店でもないのに考えたって仕様がないとは思いますが、ここが散歩の達人の楽しみなんです。その土地その土地には、人の歴史があり多くの人達の思いがびっちりと詰まっているのでございます。その思いが幻となってしまうんですから、そりゃ愛おしさと感傷が千々に乱れ、しばし、その場所から離れることが出来ません。その思い入れこそが己の感性を養ってきたのかも知れません。それぞれの思いの連鎖が、又、新しい歴史を創ってるといってもいいんじゃございません。そんななか、時代がどんなに変化しようとも、建物が古くなろうとも、頑なに木造の築50年以上は経ているだろう家屋も存在します。これも、ついつい歩みを止め繁々と感慨深く見てしまいますな。昔の時代を彷彿とさせると同時に、人の営みを必死に守ってきた家の存在に深く敬意を抱かざるを得ません。そり曲がった板塀、剥げ落ちた玄関の門、色褪せた瓦、よくぞ生き延びた!思わず手を合わせたくなります...まさしく温故知新でございます。

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お待ちしてました

2015/09/18
【第734回】

参院特別委員会での、安全保障関連法案の強行採決の8分間をテレビで見たのだが、なんですかあれは!といっても、日本の政治のこれまでの歴史の再現ビデオを見せられてる感じがしたのですが...この国の政治に対する意識の低さが、あのどうしようもない政治屋を生み出しているとか言いようがない。あんな人達をよくぞ投票しましたね?よくぞ投票にも行かず棄権しましたね?そのツケが昨日の茶番劇。与党も野党もだらしないのは勿論なんだが、国民の殆どが議論を尽くしていないと言ってるのに、政府はアメリカとの約束優先、そして何よりも「今は反対意見が多く、デモも見かけるけれど、時間が経てば忘れてしまうでしょう...」なんて、確かに忘れっぽい国民を見透かしたような発言を、いけしゃあしゃあと述べる政治屋を野放しにしていることに怒りを感じないと、ますます政治不感症になっちまいますぞ...

徴兵制度なんてあり得ないなんて言ってるけど、いつの世も戦争なんてものは、実に巧妙に一部の人間の功名心から準備され、いつの間にか国全体が引き返せない状況に陥るなんて構図でございます。歴史に学ばない国は必ず滅びます!子を持つ母親、若い人たちが声を上げているのに微かな光明を感じます。

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共生

2015/09/16
【第733回】

昨日、風間杜夫ひとり芝居「正義の味方」の稽古が始まりました。思い起こせば風間さんと、ひとり芝居を創り出して18年。いやいや長いですな...最初は、ひとり芝居は邪道だと頑なに断り続けていたのだが、こんな年数になっちゃいました。作品としては6本、海外公演もスペイン、韓国、中国、ハンガリー、ルーマニア、アメリカの6カ国。いろんなことがあった18年でした。この間、風間さんは日本芸術大賞、読売演劇大賞最優秀男優賞、紫綬褒章などを受賞し、名実共に、ひとり芝居なら風間杜夫、風間杜夫ならひとり芝居なんて言葉が定着してきました。このひとり芸、彼の持ち味が存分に発揮されてると思います。やんちゃで、愛嬌があり、色気があり、哀愁もたっぷり。そして生まれ持った役者としての技量。今年66歳になるのだが、全くの衰え知らず、連日の酒飲みもお休み無し、驚異の肉体の持ち主でもあります。昨日の稽古初日も、最初から立ち稽古、大声を張り上げ、たっぷり汗を掻き、その後は陽気に飲み会。

でも、しみじみと言うてはりました...昨日、昨年やったビデオ観たのだが、全然あかんかった、恥ずかしい限りだ...この謙虚というか、貪欲な表現に対する拘りがあるからこそ今でもトップランナーで居られるのでございます。

今年の「正義の味方」は見逃せませんな!
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錦糸町の稽古場から

2015/09/14
【第732回】

先週の週末は、いつものながら2本の芝居を観劇。1本目は劇団チョコレートケーキの名コンビ、古川健作・日澤雄介演出の芝居。新劇の7人の女優さんが昨年結成したOn7という集団に書き下ろした「その頬、熱戦に焼かれ」。原爆に被害にあった乙女が原爆投下国アメリカに治療に行った実話をもとに展開していく話...作の古川さんの丁寧な作劇と、日澤さんの斬新な演出で、7人の若き女優さんキラキラしてました。あらためて、役者を生かすも殺すも作・演出の手腕にかかっていることを実証してくれた芝居でした。

2本目は骨太な作品を創り続けるトラッシュマスターズの「そぞろの民」。作・演出の中津留章仁さん、これでもかというくらい、この国の諸問題をてんこもり、これをこなしていく役者さんも大変でございます。喋り言葉で無い台詞をなんとか身体に落としていく役者の七転八倒振りをひやひやもんで観ながらも、最後は腕力でお客を引っ張り込んでいく才気はさすがでございます。

芝居は見せ物でもありますが、お客への挑発、覚醒でもありんすよ...安全パイにこしたことはないのだが、たまにはキラリとドスを突きつけられると鈍った心身がシャキッとしますばい!
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久し振りの晴れ間

2015/09/11
【第731回】

新宿は眠ることを知らない魔界の街...最近歌舞伎町では、ぼったくりバーが沢山摘発され、歌舞伎町の交番も多忙極まりないとか。アルコール2、3杯で2人、20万円請求されたり、アルコールの中に睡眠剤を混ぜ、現金、カードを盗まれたり...欲望の果てだから、しょうがないと言えばそうなんだが、まあよくそんなところにのこのこと出かけますな...でも、こうやって騙されながら大人の階段を上っていくんでしょうね。そして大人になったらなったで、夢も希望も失って焼き鳥屋でぼやいてる姿も想像できますな...方や、うら若き女性はホストクラブにはまり、身を持ち崩してしまうなんて構図が多いとかききますな。おいらなんか、なんであんな野郎に引っかかるのか、今もって不思議でなりません。キムタクみたいなヘアースタイルにすりゃいいってもんじゃございません。どの面下げて真似してんのや!品性も知性も感じられない面して格好つけてんじゃないよ!でもでも、お嬢様方、ついつい最初の¥3000ぽっきりの値段にホイホイ乗っちゃうんだよね。そんなお金と暇あるんだったら、被災地にボランティアとして汗を流すとか、国会に行って戦争反対のデモに参加するとか、少しは世の中人のためになることせんかいな...
この新宿という街、おいらも、ほぼ半世紀にわたりブラブラしとりますが、人間が本来持つ欲望を巧みに引き寄せる装置を備えておりますな...ゴールデン街、思い出横町、を残しなが家電店、デパートなどなど、このゴチャゴチャ感がいいんですね。最近は、中国語、ハングル、スペイン語が飛び交って、ますます怪しくなっとりますがな...

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さあ...買ってちょうだいな!

2015/09/09
【第730回】

友人の個展で久しぶりに本郷に行ってきました。本郷と言えば、夏目漱石、二葉亭四迷、石川啄木、川端康成など多くの文人が居を構えていた場所です。中でも、樋口一葉が住んでた菊坂では、母と妹と3人で針仕事や洗い張りをするなど、苦難の日々を過ごした場所でもあります。この地に、今も威厳ある佇まいで、東京帝国大学がオッ建っている...おいらは残念ながら入学できなかったが(あたりまえやんか)、この国の中枢を担っている人達が学んだ学舎であることに間違いはない...政治家、官僚などなど、確かに国を牽引したには違いないが、おいらが思うに国家を思うに等しく庶民、人民、尚言わせて貰えば棄民にいたるまで人間なる者に思いを馳せ、そこから国家なるものの設計をして欲しかった。ならばもう少し心豊かなニッポンになったに違いない。おいらは雨降る中、赤門を眺めながら思ったさ...この重要文化財は加賀藩13代藩主前田斉泰が文政10年(1827)に11代将軍徳川家斉の娘溶姫を正室に迎えた際に建立された御守殿門...お上が庶民から吸い上げた銭っこで建てたもんでございます。だからして、今度は、お上が庶民に尽くすのが当然でしょう...この当たり前のことが未だ、この国ではなされておりません。

ところで、個展はどうだった?A・Hさんのお母さんが亡くなった時に画いた油絵≪地≫がとても印象的でした。アートは特別、特殊なことではなく、その素材は、いつもの日常の中に潜んでいます。そうなんです、生きてること自体がアートなんです。

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赤門

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2015/09/07
【第729回】

墨の世界は深いです...おいらも毛筆大好きです。人間の身体、もちろん心が一番伝わりやすいのが筆ではないでしょうか。墨を擦り、程よい濃さを作り出し、筆に乗せ、今ある気持ちを毛筆の繊細な動きに託し表現する様は躍動感に溢れています。30代の頃、世界を放浪していたときに、言語も判らないおいらを助けてくれたのも墨です。相手とのコミニュケーンをとる手段としては最良のものでした。相手の名前がわかると、漢字の当て字を使って書いてやると大喜び。例えばルイスであれば留伊須とか...これに味をしめて商いもしましたぞ。スペインの浜に白い石が沢山拾えたので、こりゃよかですばい!と、しこたま袋の詰め込んで真っ白な白に漢字の名前を画いてやると飛ぶように売れたのでございます。このお金でスペイン滞在も延長できました。
今でも、毛筆を手にすると、血湧き肉躍る感じがします。おいらの遊び心を大いに刺激し文字が絵になり、なんとも言えない書体になるのです。亡くなった映画監督・貞永方久さんがおいらの自己流に徹した墨絵、絵文字を見て「まったく、自分勝手で、わがままで、感謝知らずの気分屋で、いささかうろんなタッチなのだが、なぜかふしぎに、どこかしら魅かれる風が吹いている」これは、けなされ誉められ感想なんでしょうかね?
「字は体なり」って言葉があるじゃないですか、その顕著な表現が毛筆書体だと思ってるんですが...いずれにしても、このハイテク時代、たまには鉛筆、ペンでもよござんす、これらを駆使して己を表現してはいががですかな...


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幽玄の世界

2015/09/04
【第728回】

卒塔婆の向こうに見えるのが新宿の高層ビル群でございます。卒塔婆と現代建築の白眉である建物が、妙に重なって見えます・・・新宿の高層ビルに何度か行った経験から、どうも居心地が良くありません。だって40階、50階に座っていても何だか落ち着きませんもの。要するに、地に足がついていない宙ぶらりん状態で飲んだり食べたりしているんでございます。現代っ子にとっては見事な夜景と、見渡すぐらいの風景に、この世と思えぬ快感を感じているんでしょうが、アナログ人間であるおいらにとっては、足下を脅かされてる怪しい気配が押し寄せてくる感覚。でも、この不安定な状況を忘れさせてくれるところが一カ所だけあります。JAZZが流れる中、美味なるお酒と真珠のような夜景、どこだって?ふふふ、秘密でございます・・・
今日も、卒塔婆の下から無数の亡者がぶつぶつ言っとります。「あんたら、調子に乗って浮かれていると、ろくな死に方しませんぜ・・・」
オリンピック エンブレム問題、新国立競技場のドタバタ劇、お上のトップが責任とらない国が良くなるわけがありません。最近、新宿の卒塔婆群も頭に来てグラグラこいとりますわ・・・

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新宿の墓場

2015/09/02
【第727回】

昨日より、ホームページが10数年ぶりにリニューアルいたしました。いががですか?そんな記念すべき夢吐き通信なのに、なんてこった!新宿奇人変人列伝が登場しました。このオッさん前にも見かけたのだが、こちらもリニューアルしてこんな姿で現れました。この姿で新宿のど真ん中歩いていりゃ誰でも振り返りますな...それを見越してのオッさんのパフォーマンスでございます。「誰か声かけてくれないかな...写真撮ってくれないかな...」なんて物欲しそうな仕草を感じたおいら、「写真いいかな?」と問いかけると、「よろしゅうございますよ...」とお姉言葉でポーズをとってくれました。通りすがりの人達も、物珍しさのあまりパチリとやりたいところだが、変に絡まれるのが怖いのか唯々チラリと見ながら通り過ぎていくだけ。
こんなヘンテコな人達が、うじゃうじゃ居る新宿は、やっぱりおもしろ劇場です。

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変なおじさん

2015/08/31
【第726回】

8月も今日で終わり。子どもたち、学生さんにとっては、明日から学校やで...行きたくない人、早く友達に会いたい人、人それぞれだとは思いますが、なにやら自殺者も多い季節らしい。一生バカンスだったらどれほど幸せなことか、いや、どうやって時間費やしたらいいのか困っちゃう人もいるらしいから、この判断は難しいところですな。間違いなく言えることは、このお堅いジャパニーズシステムは、人生にとって一番美味しいところである≪遊び心≫を軽視する傾向にあり、社会と人間関係を、ややこしくしてますな...
遅まきながら、「フォックスキャッチャー」観てきました。この作品は1996年のデイブ・シュルツ殺害事件を題材としており、監督は「カポーティ」や「マネーボール」などの作品で知られるベネット・ミラー。いやいや、アメリカ映画の底力を感じました。三人の主役の役の入れ込み方が半端じゃありません。金メダリストを取った二人のレスラー役、チャニング・テイタムとマーク・ラファロは、誰が見ても本職のレスリングの選手に見えます。あのロバート・デニーロが「レイジング・ブル」で、引退後のシーンのため体重を25キロ増やしてまで破滅型の主人公を演じきったことを思い出しました。ホンマモンの役者はこれですよ。日本の役者は甘いですな...時代にあった服装、ヘアーメイクしてくださいな。戦時中に、あんな頭髪ありますか?あんなおべべありますか?もうそれだけで、観客をなめてかかってるとしか思えませんことよ。
この映画の最高の見所は、アメリカの財閥一員で、殺人を犯すジョン・デュポン役を演じたスティーブ・カレルの演技。無表情の中に人間の嫉妬、憎悪、孤独、悲しみ、喜悦、狂気がまるで万華鏡のごとく見え隠れする様は鳥肌がたつ思いであった。経歴をみると、なんとコメディアン...こりゃ、日本の役者はかないません...

726.jpg最後の夏祭り

2015/08/28
【第725回】

知人の長島晃さんから、核兵器と戦争のない平和な世界の実現を願う2015広島―長崎リレーマラソンの完走便りが送られてきました。8月6日広島原爆ドーム8時15分に黙祷し、9時にスタート。長崎まで423、4㎞を駆け抜けるピースランである。ゴールは8月9日、長崎原爆投下中心地公園に11時まで。11時2秒に黙祷。いやいや、こんな形の平和アピールもあるのでございます。途中、苦しくなったときには、あの日あの時、地獄の時間を彷徨い死んでいった人達のことを思うと、この時間、平和な国で走れる喜びを噛みしめ、自ずから疲れた身体も精気を取り戻すのではないでしょうか...このリレーには、己の身体を駆使し、共に核と戦争のない平和な世界を願う襷をバトンタッチしながら駆け抜けていく行為に、まさしく壮大なアクションを感じます。
長島さんが、このリレーマラソンに、こんな言葉をコメントしています。「走ることが好きです。走ることで少しでも世の中のためにならないかと心のどこかで考えていました。昨年、長崎の山王神社で祈り捧げている年老いた姉妹から当時の悲惨な状況を伺うことが出来ました。そして、この大会に参加してくれたお礼もいただきました。人のために走りたい。私が走ることで、誰かの希望になっているのだと思った。」なんて素晴らしいコメント。人のために走りたい!なかなか言えませんね...世のため人のため、こんな考えの人が段々少なくなった昨今、ほんなごつ貴重、希少な言葉でございます。


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夏も終わりだね...

2015/08/26
【第724回】

昨日、事務所の下にあるファミリーマートの前で、4人の男女が大きな声で話しながら飲み食いしていました。聞こえてくるのは懐かしきスペイン語、早速「どこから?」やはりスペインからの旅行者でした。おいらも3年ばかり住んでた話をすると、彼らのテンションは一気に上がり周囲の人がびっくりするほど、ほんまにスペイン人は陽気でございます。おいらが、アンダルシアの小さな村サロブレーニャに暮らしていたことで彼らは更にヒートアップ。彼らも、アンダルシアの中でも最も西にあるウエルバから15日のバカンスで日本に来たとのこと。東京、京都、大阪を観光し、今から成田空港に向かい帰国するところでした。美人のセニョリータがおいらに「なんで、又スペインで住まないの?おいでよ...」黒い大きな瞳を輝かせながら言い寄ってきました。スペイン人もお調子ものが多いのだが、日本のラテンとも言うべき博多出身のおいらを見抜いてのお誘いだろう。それにしても、スペイン人のおおらかさは得難いものでございます。国の発展なんぞは何処吹く風、その日一日が楽しく愉快であれば、それでよし。快楽天国を十分に味わい尽くそうという精神見事でございます。最後にセニョリータが、お互いの右の頬をくっつけて、口で「チュッ」と音をたてるキスの挨拶ベシートを要求してきました。いやいや、久しぶりのベシート、すっかり興奮してしまい彼らの写真を撮るのも忘れてしまいました...

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スペインアンダルシア


2015/08/24
【第723回】

新宿はゲリラ部隊の戦場です。禁止告知の看板なんかクソ食らえ!夜毎、お巡りさんの目を盗んで路上ライブを決行中。なかなかよござんす、これが許されてはじめて国際都市ってもんです。海外に行きゃ路上ライブは、街を活性化させる風物詩でございます。疲れたおっさん、日常に麻痺した兄ちゃんねえちゃん、いけいけどんどんの若者の叫びを聞きましょう、聴いて、見てれば何か感じるんじゃございません。何かに悩み、言いたいことも言えず我慢してる皆さん、彼らみたいに自己表現すりゃいいんです。そりゃ、なかには、きみきみ人前で歌うレベルじゃないでしょう...なんて若者も居るのだが、許してあげましょう。自死、犯罪の道に走るよりは、どれほど健全なことか。
この日も、可愛い娘さんが可憐な声でセンチな歌をギターの弾き語りで歌っていました。華奢な身体ながら全身を振り絞り、道行く人に程よいアピールが効いたのか、二重の輪が出来ていました。顔ぶれはというと、おっさんがほとんど...おっさんは疲れています、癒されたいんです。職場でも、家庭に帰っても居場所がないおっさんにとっては、路上の歌姫こそ憧れのエンジェルに見えるんでしょうな...エンジェルの最後の曲が終わると、3、4名のおっさんが自主制作のCDを買い、サインをねだっていました。芸能の世界を乗り越え、救済の道に踏み出したこの光景は間違いではありませんことよ...汚辱に満ちた何処ぞの世界より、どれほど美しいことか...

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新宿の歌姫

2015/08/21
【第722回】

テレビでは連日、大阪の中学生の殺人事件をワイドショー、ニュース番組で取り上げている。元刑事、心理学者、コメンテーターなどなどが様々な推理を語り事件の謎を追いかける...確かに痛ましい事件であり、多くの視聴者が真実を知りたいのは判るのだが、こんなに長時間垂れ流す必要があるのだろうか?この大切な時期、報道しなければならない大切な案件があるはずだ。安保法案、オリンピックに関する様々な疑惑、沖縄の辺野古移設、忘却の民がうじゃうじゃ存在する国民には、しつこいくらいに問題提起しないと、後の祭りみたいなことになっちまいますぜ。
新宿は相変わらず異国の人達がふらふら、ぶらぶらしとります。そんな折、珍しくポルトガルから来た10人ほどの、おばちゃん軍団に遭遇しました。なんで、おいらに聞いてきたんだろうか?おいらにイベリア半島の臭いを感じとったのであろう...ポルトガル語で話してきたので、スペイン語で答えると、そこは隣国の民、嬉しそうに話が弾みました。おいらもポルトガルにも行ったことがあり、リスボン、ポルト、コインブラ、ナザレと次から次に名所が登場、新宿地下道はすっかり国際交流の場として盛り上がりました。
国は違えど同じ人間、こんな些細なことの触れ合いから平和への道は築かれるんじゃございませんこと。

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フクロウ一家

2015/08/19
【第721回】

高校野球が盛り上がってます...グランドの温度は40度はあるでしょう、そんな環境の中ぶっ倒れる選手もなく、きびきびとしたプレー見てると人気の所以がわかります。このやり方でやれば、プロ野球も随分と試合時間を短縮出来るだろうな...審判にも異議を唱えることなく、日本人好みのスタイルだからこそ100年も愛されてるんだろうな...おいらも中学2年の中半までは、西鉄ライオンズの選手を目指していたのだが、あの軍隊みたいな理不尽な規律、絶対服従になじめず辞めちまいました。でも、高校野球も一種のショーでしょう。グランドでは清廉潔白を演じているのだが、実態はそうではないことが彼らの表情から読み取れます。中には、無垢なる精神が見え隠れする選手も居るし、まあ、そこんところを想像しながらプレーを楽しんでいます。高校野球の最大の魅力は、なんと言っても最後のどんでん返し。9回に9点リードしていても逆点されるんですから、まさしく筋書きのないドラマでございます。そんじょそこらの柔なテレビドラマなんどぶっ飛んでしまいますね。
今日は準決勝、多くの人が早稲田実業と関東一高の決勝戦を夢見ているとは思いますが、野球の神様はいじわるをしちゃいます。人生と同じですよ...そうそう、うまくはいきませんよね皆の衆。

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八月の雲

2015/08/17
【第720回】

さあ、お盆休みも終わって、今日から仕事再開です。お盆休みは、今年初めての西武ドームで、ライオンズの応援に行ったのですが、案の定、負けちゃいました。今年の初めの勢いは何だったんだろう?短い間だったけれど、いい夢見せてくれたんですね。確かに、魅力ある選手は居るんだが、監督、コーチがあきまへん。頭が固い、悪い、厳しさがありません。プロの世界なんだから、駄目だったら二軍の活きのいい選手と入れ替えしないといけないのに、ほぼ固定、これじゃ流れは作れませんがな...田辺監督、悪い人ではないんだが、所詮、コーチの器。よりによって参謀が最悪、あの悪名高き江川と法政大学時代にバッテリーを組んだ袴田。ガマみたいな顔して声を出してはいるんだが、たいした戦略もたてられず、ただ怒鳴ってるだけの醜態ぶり。来年は、このスタッフを総取っ替えして欲しいですな。といっても親会社にお金が無く、将来を見据えることが出来ないフロントも惨めでございます。いよいよ、身売りするのかな?でも、西武グループの唯一の財産ですから、悩むところでしょうね。
西鉄ライオンズから始まって63年、ライオンズ一筋応援してきたおいらにとっては、ここ数年の体たらくには歯がゆい思いをしとります。この日も負け続けるライオンズに、声を枯らして応援してるファンには頭が下がる思いです。でもね、おいら、鐘に太鼓にラッパに合わせて軍隊みたいに応援する日本の球場好きでありませんことよ。アメリカの球場で見た敵も味方も一緒になって、個人の好き勝手な応援の仕方が、本来の野球場のありかたじゃございません。プレーをしっかりと見ながら野球を楽しむ姿こそが選手のレベルアップにも繋がります。一斉に立って怒声を発する、どこぞやの応援、気色悪いな...おぞましき宗教集団、ないしは軍国主義に染まった悪しき塊にしか見えませんぞ。
あとのお休みは、芝居見物に行きました。オーチャードホールに中野の小劇場、対照的な二つの演劇。この猛暑の中、俳優さん達は稽古を積み重ねてのお披露目。野球場の観客には遠く及びませんが、野球と同じくライブは真剣勝負。キラキラした身体から放たれる激情が、クーラーで冷やされたを劇場を、程よくヒートアップしておりました。

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負けてるのに満員の西武プリンスドーム

2015/08/10
【第719回】

夏祭りの季節...花火大会、おいらは随分と行ってないね。だって花火と言うより人観大会じゃございませんか?隅田川なんぞは歩けないし、暑いし、ただただ疲れに行くようなもの。でも、祭りの輪の中にいるって感覚が嬉しく楽しんだよね。安くて紙みたいな浴衣を着て、きゃぴきゃぴして会場に向かう娘さん見てるだけで、おいらは嬉しくなっちゃうな。平和のありがたさを感じる次第でございます。でも、浴衣に靴はさすがに興ざめですな、男衆もぴしっと決めんとモテませんばい。だらしない着方でアホ面してるのがおりますばい。
おいらの住む杉並地域でも、ちびっこ盆踊り大会やっとりました。大人の盆踊りの定番、東京音頭なんぞは流れず、あんぱんまん音頭で賑わってました。親は、ここぞとばかり、写真、ビデオで我が子を追っていました。焼きそば、焼き鳥、綿菓子売り場も大盛況。こんな子が、明日から戦場へなんて世の中になってしまうかも知れませんぞ...
8月9日は長崎に原爆が投下されて70年。忘れてはいけませんぞ!なのに明日から鹿児島川内原発再稼働。新聞に掲載されてました「今年の猛暑に拘わらず、電力は十分にある」何故、原発に拘るのか...それは、アメリカに気を遣い、企業の利益のための奔走する輩、諸々、いろんな怪しい力が気持ち悪いくらいあっちゃこっちゃで蠢いています。

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ちびっ子盆踊り大会

2015/08/06
【第718回】

今日は広島に原爆が投下されて70年。8時15分に黙祷...それにしても70年前の今日、一日が始まろうとした矢先に、どれほどの驚きであったことだろうか...その3日後には長崎、人類史上2度の阿鼻叫喚の地獄を味わいながら、今月11日以降に鹿児島の川内原発が再稼働される予定。福島の人達は怒っています。こんな体験をさせておきながら、いまや事故がなかったかのような風潮が理解できないどころか、人間として情けなくなりますと...広島の被爆者の人達も、今日の式典の後、首相に、今の政治の進め方に猛抗議をしたみたいです。いつの世も為政者は、己の利益、欲のために、名も無き市井の人達を無視してきました。なんでみんな怒らんのだろう、声をあげんのだろうか...
西武ライオンズ、やっと勝ちました。球団ワーストの13連敗、よくぞ負けたもんだ。このチームのひ弱さが一気に出てしまった感がします。それに球団フロントのやる気なさも気になります。お金の無いのはわかるのだが、チームの未来像が描かれないまま、ここ数年運営したことに問題があります。やる気がなければ売却しなさいってこと...ライオンズの名前が残る限り、何処に行こうともおいらは死ぬまで応援しまっせ。だってライオンズは、おいらにとって少年時代からの永遠のヒーローだもん!

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限定20食 海鮮丼640円
これはいけまっせ!

2015/08/03
【第717回】

先週金曜日、午前10時半から3時間半観た映画「記憶と生きる」に登場した、日本国によって慰安婦にされた6人のハルモニ(おばあさん)の顔がいまだに記憶から消えません。元「慰安婦」たちが肩寄せ合って、死ぬまで暮らした「ナヌム(分かち合い)の家」での日々の暮らしは、唯々、16歳から騙され慰安婦にされた辛い記憶が身体を覆い尽くし、穏やかな時間など持てるはず無く、死を迎えるしか無かった人生に涙さえ出ない...
8月は、いつもながら戦争特集でメディアは一斉に様々な番組、情報を垂れ流す。あたかも、その行為が免罪符と思ってるふしさえある。思いれたっぷりの感情過多の音楽を流し、戦中というのに役者の頭はイマ風(他の仕事のつながりから)、イケメン俳優使っての学芸会。他のメディアも8月定番の薄っぺらな記事。どこまでも能天気な国である...そんななか「記憶と生きる」は1日1回上映、50人の椅子席に20人ほどの目撃者。これが悲しいかな日本の文化レベルであろう。でも、この映画の上映に踏み切った渋谷アップリンクには敬意を表したい。ここでの上映は8月中旬まで延長できたらしい。その後は、地方のミニシアターでも上映するらしい。是非、観て欲しい映画だ!一切の音楽を排し、ハルモニの肉声と自然の音が流れる3時間半。このハルモニと似た境遇の無数の棄民の声が聞こえてくるに違いない。

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8月の新宿御苑