時代に翻弄されながらも、奇跡を起こそうとした逞しい女達の物語 !


 
【introduction】
戦後の時代をたくましく生きた人達をユーモアたっぷりに描く、おかしくも切ない悲喜劇。劇中、登場人物たちは繰り返す。あの戦争を進めた日本人は「愚か」で「あんぽんたん」だったと。戦争の傷跡を持つ男女4人のしたたかさが現代にどう映るのか。作・演出は劇団桟敷童子を主宰する東憲司。その作品の多くは、出身地である福岡を舞台に、自分の過去や社会に対して傷を持つ者が、その出来事に対面し、それでも生きていくという普遍的なテーマを持っている。ウェットな作風でありながら、ラストはダイナミックな大仕掛けの演出により「生」への渇望みなぎる力強い東の作品は、世代を超えて幅広い支持を受けている。今回はいつもの大仕掛けを封印し、人間の心の葛藤に焦点をあて掘り下げた。新たな新境地を開いた作品である。
【あらすじ】
戦後間もない1946年、多くの引き揚げ者であふれていた博多の街。復員してきた松尾大吉が妻・弥生の元に帰ると、そこには二人の女・番場と小梅が居候していた。弥生たちは大吉が死んだものと思い込み、既に葬式も済ませていた。さらに弥生が本当に待っていたのは戦争のどさくさで結婚してしまった大吉ではなく、番場の息子・裕介だったことが判明する。鬼灯に囲まれたその家で、大吉、弥生、番場、小梅はそれぞれの思いを抱えながら共同生活を始めるのだった…。
― 初演時劇評 ―  
 朝日新聞
 演劇評論家・村井健
4人を守るようにほおずきが揺れている。それは夜に鬼火となってさまよう。生きられなかった者の魂だ。苦しくも生きる人間に寄り添うようなほおずきの朱色がじんわりと胸に染みる作品だ。

出演者の息の合った演技、鬼灯をあしらった美術も楽しい。
が、なんといっても見事だったのは、作・演出の東の趣向だ。見る者に元気を与える舞台である。



                                                                    2008年8月撮影
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