唐組・鳥山昌克さんからメッセージをいただきました。

戦後65周年記念― 幾度か振り返るべき時がある。たった一枚の赤紙に翻弄された人々の姿を。





Introduction



2010年は終戦から65年目に当たる。この不透明な時代に、今尚、戦争の文字が日常から消えることはない。日本にとっても永遠の課題である。戦争が引き起こした悲劇をテーマに様々な表現を通じて反戦の運動が繰り返されてきた。演劇も然り。

今回の「一銭五厘たちの横丁」は、1975年に児玉隆也著、桑原甲子雄写真で出版され話題になった本である。因みに、タイトルの「一銭五厘」とは、当時召集令状の葉書が一千五厘だったことに拠る。たった一銭五厘の薄っぺらな葉書一枚で、東京の人情豊かな下町から夫や息子が戦場に消えていき、残された家族の生活が変貌していく姿を写真とルポタージュで克明に記された本のなかに、平凡な生活の中に庶民のかけがえのない家族の絆、体温を感じさせられる。
声高に戦争の罪などを問うわけでもなく、ただ真摯に生きる家族の姿を淡々と描くこの書の中に、これからの生きるヒントがいくつも隠されている。

この作・演出する、ふたくち つよしは1974年桐朋学園大学演劇専攻科を卒業後、自ら劇団を結成し、これまでに数多い作品を作・演出してきた。大学時代の同期に、次々に話題作を作り出している話題の劇作家永井愛がいる。永井愛しかり、この年代の作家がじっくりと時間をかけて熟成した言葉は、このハイテクの時代に、より有効な劇的効果を与えてくれる。人間の温かさ、物質文化に対するアンチテーゼ等、芝居の持っている魅力を充分に感じさせてくれる。今回の原作をアレンジするに相応しい作家である。

人間の営みを凝視し続けてきた、ふたくち つよしが戦後65年の節目に贈る平和の願いを込めての物語。


 
大西多摩恵
鳥山昌克(劇団唐組)
岸田茜
向井康起

 冨樫真プロフィール  田中壮太郎プロフィール

宮城県出身。蜷川幸雄「十二夜」で主演ヴァイオラ役を演じる。舞台「リア王の悲劇」「子供騙し」「骨唄」など他多数。また映画では98年「犬、走る」(崔洋一監督)で高崎映画祭最優秀新人女優賞受賞。
「閉じる日」(行定勲監督)で主演、「マブイの旅」(出馬康成監督)、「凍える鏡」(大嶋拓監督)でヒロインを演じている。

東京都出身。劇団俳優座所属。俳優座公演以外にも外部出演、テレビなどでも精力的に活動している。
主な舞台作品は「野火」('06)「不寝番」('06演出:田中壮太郎)「僕の東京日記」外部出演「小林一茶」「ビルマの竪琴」「東京原子核クラブ」「流星に捧げる」、10年春上演の映画「おとうと」など多数。

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