文化庁芸術祭 演劇部門大賞!!
読売演劇賞、最優秀男優賞
バッカーズアワード演劇奨励賞
 
職場もリストラや賃金カット、家庭でも居場所のない中年のおじさんには、世間の風は冷たい。そんな世間の荒波に記憶を失ったままの男は立ち向かう。自分名前も、家族も仕事も何一つ思い出せない。ただ、甦った少年時代の楽しかったこと、好きだったことを頼りに第二の人生を歩みだす。少年の心を持ち続けるおじさんは頑張るのだった……。


 1976年の真夏、新宿花園神社の社務所の一室で物静かに本を読んでいる風間杜夫。あの日、あの時の佇まいが、今でも僕の脳裏に鮮明に刻み込まれている。三国連太郎さんを座長とした芝居「からふとの詩・血に咽ぶ霧の伝説」の稽古中での一コマ…。東京公演を終えた後の北海道公演中も、芝居のことより夜毎繰り広げられた宴の日々が懐かしい。芝居はうまいし、遊びも軽快。その後の銀ちゃんを予感させるに十分であった。それだけではない。この芝居の打ち上げでの出来事は、何事にも媚びない凛とした住田知仁を見た。一人のスタッフが理不尽な発言をするや否や、突如怒り出し、あの穏やかな風間が!と皆驚きの顔。“男”風間の心意気を見せ付けられた瞬間でもあった。
 その後、僕は10年ばかり世界をフラフラと放浪し帰国。日本のメディアは風間杜夫の名前で満ち溢れていた。あの日、あの時から一段と艶っぽく、男の哀愁が漂っていた。
 帰国後、一人芝居を連続してプロデュースしていた僕にとっては、風間杜夫はどうしても演って貰いたい俳優であり、若い時代の熱い思いを共有できる友として、演劇という土俵で汗をかき,悪戦苦闘しながらもクオリティの高い作品を創りたかった。そして一人芝居の面白さを、作家、役者、観客に堪能して欲しかった。   第一弾は、水谷龍二作・演出を得る事により「旅の空」でスタート。団塊の世代として声高に訴えるのではなく、どこにもいる市井の心情をきめこまやかに吐露していく
この芝居は、試行錯誤しながらもステージを重ねるごとに風間杜夫のものになっていった。第二弾は、初日をスペインで敢行した「カラオケマン」。水を得た魚のごとく、舞台で歌い演じる姿に各地の観客は大喝采。ワールドツワーをもくろんでの中国公演も大成功。そして今回の新作を加えての三部作一挙上演と順風満帆な流れだが、僕としてはこれで満足しているわけではない。稀代まれなる俳優、風間杜夫の魅力は、まだまだこんなものではないと思っている。今後いろんな仕掛けを考えているので乞うご期待!
 舞台、酒宴の席でいろんな顔を見せてくれる風間さん。でも、僕はあなたの本質は、あの日、あの時の物静かに本を読んでいる姿だと思っているんですが、あなたも一流の役者。あの花園神社の一コマは、僕の思いを見事に裏切るドンピシャリの演技をしていたのかもしれない…。
                            
プロデューサー  岡田潔
 





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