初演: 2002年5月24日〜6月2日 
新宿シアタートップス
出演者: 柄本明、大久保鷹


いま、表のふたりの俳優の顔を眺めている。
ふだんはいつも近くにいるのでよくわからないのだとおもうが、こうやって改めて眺めてみると、ふたりともほんとうにいい顔をしているなあと、泣きたくなるほど感動する。テレビに映し出されるアフガニスタンの人々の表情を見たとき、わたしたち日本人はもうこうした陰影にとんだ表情は不可能だと愕然としたものだが、このふたりの俳優の顔を見ていると、もしかしたら日本人もまだ捨てたものではないのかもしれない、と錯覚したくなるほどである。

ほんとうに、いまは亡き名優・志村喬を彷彿とさせるほどの、いや、それを凌ぐ「名顔」だ。と、まあ、これくらい褒めておけば、稽古場でふたりに張り倒されることはないかもしれないと、すこし安心する。

甘いかもしれないが、こうした「名顔」は、とほうもない狂気によってしか保たれないことを経験的に知っているからだ。ましてわたしが書いた物語は、たわいないコント芸人の、じつにたわいない楽屋話なのである。やはり、いつでもふたりの狂気の洗礼を浴びるまえに逃げ出せるよう、少しずつ荷物をまとめておいたほうが利口だろうか?
山崎 哲
作・演出 山崎哲
美術 濃野壮一
照明 海藤春樹
音響 半田 充
舞台監督 武川喜俊
衣装 蟹江杏
写真 福井健二
宣伝美術 鈴木志歩
プロデューサー 岡田 潔
協力 東京乾電池オフィス、クルージン


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