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初演: |
2004年
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1月28日〜2月7日
シアタートップス |
出演者:
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山田花子、柳家花録、坂本あきら、
佐藤二朗、小松和重、大出勉 |
たった1時間半でこれだけ面白ければ文句なし。笑わせながら人生の痛みと悲しみをかみしめるようなホロ苦さもある水谷龍二作・演出の人情喜劇だ。
妻に先立たれ、ほとんど寝たきりの病人のような病人でないような父親がアパートにいる。ときどき現れる遊び人ふうのぐうたら息子。しっかりしているのは一人娘だけだが、これが意外にも夜のホステス稼業で家計を支えている。奥の部屋でおめかししてすっかり変身して出てくるあたりがおかしい。この娘との結婚を認めてもらおうとやってくるのがまじめで純情な掃除屋の青年。ところが父親は気に入らない。そのうち彼女の元カレも現れて話はややこしくなる。父親がなぜ今のような状態になったのか、息子がなぜ遊び人になってしまったのか、娘がきちんとした仕事につけなかったのかは次第にあきらかになっていく。まじめだけが取りえのような青年にも人には言えない過去がある。人には長いこと生きていれば叩けば多少のホコリがでる。結局2人の関係は破談になるがそこに至る経過が実に納得できる。人情の機微をよくとらえているからだ。人間模様を描き分け、作者はダメ人間にも優しいまなざしを向けている。
スポーツニッポン 木村隆 舞台評より 2004年2月3日
水谷さんの芝居は、楽に観られるのがいい。構えず客席に座っていられる。
舞台の上には達者な役者さんたちがいて、いい「間の芝居」をみせてくれる。
凄いけれんは無いけれど、決して人をそらさない。
登場人物ひとりひとりに対する優しい眼差しがある。
「おもしろうて、やがてかなしき」とは誰が評した言葉だったか覚えていないが、水谷さんの作品を言い得て妙である。
水谷さんは笑わせて腹腔に隙間ができた次の瞬間、そこにソッと哀しみの秘薬を注ぎ込む。だから、観客たちはそうされたことに気づかない。
けれど、芝居が終わった時には、それはいつの間にか心の底に沈澱している―ワインのボトルの底にたまる酒石酸のように。その手口には押しつけがましさが微塵も無いので、お客はしっかり刷り込まれてしまうのだ。
NHK大阪 芸能部 チーフディレクター 榎戸崇泰
作・演出 水谷龍二
美術 松野潤
照明 五十嵐正夫
音響 原島正治
宣伝美術 下山史生
宣伝写真 福井健二
舞台監督 松本仁志
プロデューサー 岡田潔
協力 吉本興業
オフィスうわの空
フロム・ファーストプロダクション
オフィス・サモアリ
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