初演: 1998年1月22日〜25日 
下北沢「劇」小劇場

わたしが、電子親友に一目おく理由は、澤野雅樹君の以下のような文章に依る。
「主人公は、ファミコンゲームのプログラマーであり、前代未聞のキャラクター〈電子親友〉ドロンの創造者である。だが、プログラマーとしての主人公は、創造の直後に、自分の創造物を探索するユーザーに変貌し、ゲームの登場人物になってしまう。そして〈電子親友〉ドロンは、反対に創造されるや否やプログラマーを巻き込んだゲームを創造し始める。 これがゲームと小説の始まりである。
〈電子親友〉ドロンとは何か? それは作品のもうひとりの主人公であるが、作品の内部にはついに姿をあらわさない。
この小説全体が、〈電子親友〉ドロンの不在によって作りあげられているのである。このことは何を意味し、彼は誰なのか?それは本質的なバグであり、彼はそこに住む他者である。」でありながらも、ゲームソフト作家・田口は、その〈電子親友〉が、ユーザーの伴侶として、ゲームに道連れとなってくれることを願う。 それは、王子にとっての子守りの爺やのようであり、青春を分かち合うピカピカの友にも似た……。そんなものに会ったことがないから出てきた友である。
ある時は哲学者、変じて、堕落への誘い手、また、ある時は、成功への片腕、かと思うと、今ふけるゲームの破壊者、というふうに〈友〉は、ユーザーとともに生きる。あらかたのソフト作成工房で唾棄されてから、通用しなかったその〈とも〉は、田口とともに電子路地をトボトボと行かねばならない。
「ひとり芝居」の閉鎖芸を切って返して、「ひとり」の逆説(パラドックス)を、まっしぐらに、金井良信が、〈電子親友〉とスパークする!

作 唐十郎
演出 骸馬二
美術 劇団唐組
照明 稲葉能敬
音響 川田邦典
舞台監督 中袴田克秀
宣伝美術 鶴島 
プロデューサー 岡田 潔



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