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過去の作品 演劇

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挽歌


【作】古川健 【演出】日澤雄介
【出演】安田成美 鳥山昌克 岡本篤 浅井伸治 大鶴美仁音 高橋長英

2016年11月30日~12月4日
東京芸術劇場 シアターイースト

 

原発を受け入れ 原発と共に生き そして原発に故郷を追われた人々
その故郷を悼む、悲しき挽歌


福島第一原発の地元、大熊町からの避難民が多く住む会津若松市。
そこには避難民を中心とした小さな短歌サークルがあった。
サークルメンバーはお互いの短歌を通して心を寄せ合い、寄る辺ない気持ちを慰め合っていた。
ある日、届いた一通のはがきには、原発を詠んだ数首の短歌が刻まれていた。
差出人は「ホームレス」。
会員たちは驚きとともに、謎の歌人の正体に興味を持つ。

東日本大震災から5年。
戻りたくても戻れない故郷。見通しの立たない不安。「原発」への複雑な思い。
復興への長い道のりを覚悟しながらも、必死に立ち上がり、前を向いて力強く歩き出す人々の物語。


【あらすじ】
2016年秋、会津若松市の路上で、一人の男がちびた鉛筆を手に古びた手帳をめくっていた。
そろそろ冬の足音も近く、外で寝るのには危ない。
短歌サークル「梨の花」は、主宰の高山佳織を中心に今日も歌会が開かれていた。
広報に呼びかけていた短歌募集に初めての投書が届いた。
待ちに待った投書の差出人は"ホームレス"。刻むように書かれた6首はどれも辛辣な反原発歌。
佳織を含め「梨の花」メンバー3人は福島第一原発の地元、大熊町の出身であり、
みな故郷から逃れ会津若松市で、人に言えない思いを抱えて生活している。
故郷への「挽歌」に動かされたメンバーはそれぞれがそれぞれの理由で"ホームレス歌人"に会いたいと願うが―


― 出演者コメント ―

安田成美

今回、私が演じる高山佳織は、"短歌"を通して日常に、そして自分の現状にしっかりと目を向けている女性です。
現実に起きた「東日本大震災」という大きな出来事に、どのように向かい合い、そこからどう歩き出すのか。
「挽歌」は、一歩でも前に進もうとする人々の物語です。
これまで出演していた舞台作品では非日常の役を演じることが多く、今回のように、現実的な"日常"を演じるのは初めてです。
震災のような大きな問題でなくとも、私たちの日々の暮らしの中にも、いろいろな困難はつきものです。
息切れしたり、立ち止まったりしたときに、この作品をふと思い出していただけたら、そして背中を押すことができたらと思って演じます。
今回の舞台でも、一人でも多くの人の心に触れることができたら嬉しいです。劇場でお待ちしております。

高橋長英
去年の「スィートホーム」に続いて劇団チョコレートケーキの古川健、日澤雄介コンビの作品に出演させていただき、感謝すると共に身の引きしまる思いです。
素晴らしい戯曲と適確で深く人の心を読み解く演出、何処迄その劇世界に入って行けるか、悪戦苦闘の稽古場での毎日です。
福島の原発事故も収束どころではない状態、避難所でつらい日常を送っていられる多くの人々、それに対してその援助を早く打ち切り、未だ未だ安全ではない所に帰そうと画策している権力者、原発再稼働を民意に反して強引に押し進め、海外に原発を売り込もうとするなど、もはや正気の沙汰とは思えません。
日本は何処に行こうとしているのでしょう。
でもこの芝居も最後は或る希望を観客の皆さんに託して終わっています。
とにかく平凡な当り前の日々を懸命に生きようとしている人たちの物語です。
皆さんの心に少しでも「灯」がともる様な舞台になればと、切に願っています。