トムプロジェクト

2025/04/21
【第2025回】

昨日は長年の友人である大森政秀さんの舞踏公演を観てきました。今年1月に76歳になった大森さん、舞踏の聖地ともいわれている中野テルプシコールの空間を自由自在に遊行していました。おいらも半世紀前に土方巽の舞踏公演を観た時はすべてがぶっ飛んだ感覚に襲われました。この世にこんな表現があるなんてことを思考しながら、おいらも好きなことを徹底的に実践することを確信した次第です。

大森さんの舞踏何度か観させて頂きましたが、今回の公演さすがに76年間の人としての生き方がいろんな貌で、時にはおかしく、時には憂いを帯びて伝わってきました。彼の踊りをみて土方巽は「ラブホテルのキリスト」といったそうだ...この歳になると表現のテクニックとかはほとんど気にならないというか、そんなものを客席からは観ていません。踊り手の一挙手一投足に大森政秀の摩訶不思議な人生に想いを馳せる時間だと感じました。

当日配られた彼のメッセージにも「自分から一番遠い場所に住んでいる、自分という他者こそは、肉体の中で、一番近いところに潜んでいます。私も皆様と共に目撃し体験したい、この一点に尽きます」と書かれていました。

この日会場に集った人達との一期一会、意味を追求する場ではなく、一人の表現者の肉体を通して己が何者であるかということを今一度問い直す貴重な瞬間でもあるのでは...

この会場のオーナーであり、音響家である秦宜子さんとも久しぶりに会えて嬉しかった。彼女はおいらが20代の頃在籍した演劇群走狗の仲間です。大森さんと夫唱婦随、いろいろ苦労はあるとは思いますが共に好きな道をまっしぐら、まさしく人生悔いなし!

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心と身体が
ゆや~ん  ゆよ~ん  ゆやゆよ~ん

2025/04/18
【第2024回】

大阪・関西万博が13日に開幕し、開幕前はどちらかと言えばあまり関心がないという意見が多数であったのだが、昨日あたりは入場者が急増したらしい。おいらは昔から大勢の人が群がるところには行きたがらないタチなんです。勿論、最初の万博、日本人に人気のあるハワイ、ディズニーランドなどなど...別にひねくれもんではないですよ(笑)

だって、科学技術の進歩を謳ってますが、その結果がAIなるものの暴走、ドローンなどの最新技術の戦争利用によってロシアによるウクライナ侵攻は終わらず、ガザでの犠牲は日々増加の一途。こんな科学の進歩は必要ありませんし、こんな万博に罹る莫大な費用は平和のため、そして多くの被災者につぎ込むべきではないか!という理由で万博には行きません。ましてや、オリンピック誘致の失敗とのつじつま合わせでカジノを含む統合型リゾート誘致を絡ませるなど、あんたらどっちに顔向いているんやと言いたい。

大阪と言えば、昔から反権力が似合っている土地柄なのにどないしたん?権力が押し付ける野暮なツッコミにボケで応じる庶民の笑いの天国が浪速の良さでございます。

それなのに若い知事さん、中央のこざかしい権力に接近し、経済効果を狙ったかどうかは知らんけど浪速が築いたおっちゃん、おばちゃんの身体感覚の遠いところで手を打ったのがとんでもない間違いでございますよ。

それにしても昨日の大臣、トランプのオッサンと会ったのが余程嬉しかったのか自分のことを格下の格下とえらい謙遜しとりました。対等に向き合わんかい!と檄を飛ばしたいところだが、このお方もしや結構な役者ぶりでひと芝居打ってるのかな...この先どうなるかことやら?相手がひとり芝居の大好きなトランプですからね...

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新緑

2025/04/16
【第2023回】

いつもクンクン、戌年のおいらは何かおもろいことないかいな?と路地裏をそうついています。先日も西荻窪にある個性的な喫茶店「JUHA」(ユハ)でレコード聴きながら、店主じきじきの自家焙煎のコーヒーとあんこを乗っけたトーストを頂きました。この店には、時折おもろい情報がさりげなく置いてあります。早速、手に取ったチラシにそそられました。

これは行かねばと、中野区上高田にある「スタジオ35分」に出かけました。この日展示されていた作品は1944年スウェーデン・ストックホルム生まれの写真家アンダース・ペータンソンが、ドイツ・ハンブルグにあった「カフェ・レーミッツ」に出入りする人たちをドキュメントした写真でした。場末の酒場に日毎集う売春婦、薬物常習者、アルコール中毒者などなど、社会の底辺に蠢く人々に対しあたかも自分の家族、友人に等しい視線でシャッターをきった息遣いが圧倒的に伝わってきます。こんな写真を見ていると、ふとおいらが生きてきた人生で出会ったストリッパ―、娼婦、ニコヨン労働者、ヤクザなどなどの人たちの顔が甦ってきました。アウトローの世界には何とも言えない郷愁の匂いがします。

スタジオの店主もユニークな人でした。この写真を展示したいために写真家本人に会いに行ったそうです。スタジオの一角にカウンターだけのBARがあり、早速ビールを一杯。流れている曲はトム・ウェイツ、彼のアルバムに写真家の作品を使ったこともあり、この期間はトムの曲一色だそうだ。

もうひとつ嬉しかったことは、なんと奈良の銘酒純米超辛口「春鹿」が置いてあるではないか!勿論、頂きました。今日も良か一日でしたバイ。

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時の過ぎゆくままに

2025/04/14
【第2022回】

先週の土曜日、20時40分上映開始という映画を観に池袋へ行ってきました。後期高齢者のおいらが出かける時間ではございませんが、25年前、トムアクターズスタジオに在籍していた太平(稲吉剛)君の初主演映画ということで...目黒貴之監督作品2本立て、太平は自分で企画し主演していた「トイレのかみさま」で飄々とした彼らしい演技をしていました。

出会った頃から、あまり自己主張するタイプではないのだがブレない何かを秘めている男でした。トムの芝居にも3本ばかり出演してもらいました。地道にアルバイトしながら俳優の道をあきらめずここまでやってきた彼の晴れ舞台を、しかも公開初日に行くことに決めました。池袋シネマ・ロサ劇場前で来てくれた人たちに丁寧に挨拶している姿も彼らしいし、彼の人柄だからこそ多くの方々が足を運んでくれたのでしょう。

初日ということで出演者による舞台挨拶もありました。スクリーンの前に立ち、5人の女優さんに囲まれている太平はとても嬉しそうでした。51年間の人生の中でも記念すべき日だったことでしょう...他人に何と言われようとも、頑なに己の道を突き進む人達には大いに共感します。人の一生の価値、権威、お金よりもっとも遠いところにあるのかもしれませんね...キラキラ輝きイキイキしている姿が一番かっこ良かですたい!

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幸福な一日

2025/04/11
【第2021回】

世界はなんと脆くて軟弱なのか...あの資産家トランプの一吠えであっちがグラグラ、こっちがオタオタ、考えてみればこれだけ長い人類の歴史があっても何も学ばなかったに等しいとも言えるかもね。戦争然り、それにしてもトランプのおっさん遊ぶのもいい加減にして頂戴な。あんたの一言で、どれだけ多くの人達が右往左往していることやら。まあ、お金と権力だけを趣味として生きた人には、汗水たらして働き必死豆炭に生活してる人の気持ちはわからんでしょうな。そんなおっさんを選挙で選んだアメリカ国民もそのしっぺ返しは必ず来るでしょう。

資本主義社会での象徴たる株式市場、株を所有してる人たちは仕事に身が入らんでしょうね。これだけの乱高下が続くと心臓パクパクでしょう、なかには株の下落に反して血圧が上がって危険極まりない状況に追いやられる人が出てくるかもしれません。まあ、これも致し方ないことですね。不労所得に近いお金ですから...いや、これもれっきとした労働だという意見もわかりますが、所詮他人任せの金儲けという点においては変わりません。

おいらも随分若い頃にちょいと手を出して苦い思い出がありますから...10万の投資があれよあれよという間に何百万、この世の出来事とは思えない奇跡なんて有頂天からあっという間に地獄を見る世界だと教えていただきました。何事でも勉強でございます。

人生、地道に人のために働き生きることが正解でございますよ!

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ひっそりと

2025/04/09
【第2020回】

一昨日、久しぶりに金沢に行ってきました。現在旅公演中「モンテンルパ」、金沢市民劇場に呼んで頂いての公演を観に...東京公演を終え中部・北陸ブロック演劇鑑賞会での公演が3月18日から始まり、この日が17ステージ目でした。キャスト、スタッフ共々、疲れのピークだったと思いますが、この日金沢文化ホールに来ていただいた会員さんの温かい眼差し拍手に後押しされ密度の濃い芝居になったと思います。年間6本の芝居を観劇されている鑑賞会の皆さんの鑑賞眼はなかなか手強いものがあります。つまらん芝居には勿論手厳しいし、良質な芝居には心底から評価してくれます。そんな会員さんを前にしての芝居ですから少しでも気を抜くと見破られてしまいます。この日は、おいらにとっても東京公演から久しぶりの舞台、どう変わっているか、慣れていないか、眼を皿のようにして舞台を注視していました。芝居は生き物ですから、相手とのやり取りで微妙な違いが出てきたり、もっと極端に言えば良い意味、悪い意味でも別物の作品になったりするものです。そんな中、日々進化していけばベストです。終演後、役者さんには気になったところは率直な意見を述べました。この後の5ステージへのより良いヒントになればと思っています。

それにしても金沢、江戸時代加賀百万石の城下町として栄えた街だけのことがありますね。第二次世界大戦中にアメリカの空襲を受けなかったこともあり、昔ながらの古い家並みも随所に残りなかなか風情があります。この季節、どこに行ってもサクラが咲き乱れ、東京では味わえない歴史ある建造物とサクラの見事な調和に酔いしれた次第です...勿論、芝居も良かったので幸せな2日間でした。

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金沢の桜

2025/04/07
【第2019回】

先週の土曜日は絶好の桜見物日和。早速、杉並区の善福寺川沿いの満開の桜を楽しんできました。例年より桜が何となく元気がなかったような気がしますし、集まった人たちもなぜか明るさに乏しく活気がありませんでした。天候不順と4月からの物価、特に食料品の値上げ攻勢に意気消沈の影響かなとも思いました。おいらもたまに行くとんかつ屋の値段にびっくりしました。100円、200円の値上げならまだしも700円の値上げなんですから、あちゃ!てな戸惑いを覚えてしまいました。確かにお米、キャベツの値上げが相当きつかったのでは...大体において、とんかつ屋さんはご飯とキャベツはお代わり自由、若い連中なんかは遠慮することなくご飯3杯、キャベツも同じくらいお代わりするんですから、この値上げ時期は店の人もなんとなく笑顔で対応しているのですが心中穏やかではなかったと思いますよ。

それにしてもこの物価高、勿論、世界の混乱から来ているんでしょうが、この国の農業政策の無能振りがますます浮き彫りになっています。時給10円の米作りの農業なんてやっていられない!なんて農家の人達が街に繰り出しデモをしていました。そりゃそうだ、自分の懐ばかり気にしながらの政治屋ばかりですからね。おまけに大臣は派閥支配下における年功序列、農業なんてわかっていないのに指示できるわけがありまっせん。

温かいふっくらしたご飯に、塩昆布、梅干し、納豆、たまにはたら子、こんなシンプルではあるけれど贅沢な時間もそのうち無くなってしまうのかもしれませんね...

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善福寺川緑地公園

2025/04/04
【第2018回】

昨日は懐かしいスペイン語に浸れる一日でした。映画「エミリア・ペレス」を鑑賞。冒頭からスペインの鬼才アルモドバル監督の作品じゃないかしら?と思いきや、フランスの名匠オーディヤール監督でした。メキシコを舞台に予測不能な展開、そこにミュージカルが入り込み一体全体この作品どう見て良いのか観客の脳は激しい揺れを催す。人間の持つ本性欲望を原色に近い形で表現していく監督の手腕は並々ならぬものがある。これまでのミュージカルでは、突然歌い出すとか不自然な感じがしたものだが、この作品をそんなことがない。台詞と感情がそのまま歌として流れ、より役の感情に添える展開となっている。

起用した俳優の一癖二癖ある二人がストーリーを引っ張っていく。実際のトランスジェンダー俳優カルラ・ソフィア・ガスコン、今回のアカデミー賞で助演女優賞を受賞したゾーイ・サルダナ、二人の表情を至近距離で追うカメラワークが秀逸である。しかも二人が静と動、役者の力量はもちろん、監督の役者に対するリスペクトを感じる。

この映画を観ながら思ったことは、今の世の中すんなりとことが運ぶこともなければ、なにが正解なのか判断、予測不可能。カオスそのままを提起し、あとは観客がそれぞれに未来社会をどうすれば良いのかを思考、行動するしかない!と言っても、計画通りに進まないのが人生でございます...となれば一度きりの人生、好きなことを見つけて悔いのないように生きるしかございませんね。

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久し振りの青空と雲

2025/04/03
【第2017回】

サクラは満開なんですが、肝心のお天気がいまひとつでサクラちゃんも寂しそうですね。

こんな日は、ピアノ曲を聴きながらゆったりと過ごしたいものです。最近はまっているのが角野隼人さんのCD、最初に聴いたのが街角ピアノ。クラッシックを演奏しているのだがなんとなくジャズっぽい感じもするし、自由気ままにピアノに向き合ってる姿に惚れ惚れしました。彼自身もクリエーターとして新しいものを追求して行くにつれ次第にクラッシックの世界から離れていくという感覚に襲われたそうだ。そんなときに19世紀の作曲家、ショパン、リストが過去の曲を演奏すると共に、有名な曲の編曲、即興そして作曲をする姿に勇気を貰い、クラッシックが現代に生きる音を創る道を歩み始めたそうだ。

エリートでありながら、アカデミックな世界にどっぷりでもなく日常性を楽しみながら今を感じさせる音を繰り出すことに思いを馳せている。彼がクラッシックという概念を取り外し音楽そのものの素晴らしさを伝えようとする様がCDを通じて十分伝わってきます。

 

トランプの関税騒ぎのなか、今日もドジャースの大谷翔平選手9回裏サヨナラホームランをかっ飛ばし開幕からチーム8連勝をプレゼントしました。暗い世相の中、明るい話題を提供してくれる貴重な方でございます。

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推しのピアニスト

2025/03/31
【第2016回】

桜が満開になった途端、季節は冬に逆戻り。今日も慌てて冬のコートを取り出し花冷えの寒さに備えています。それにしても桜の淡いピンクは何となく幸せな気分にしてくれます。実はこの色の秘密は、桜の木全体が懸命になってピンクの色になろうと日々研鑽している結果だそうです。しかも開花に合わせてのタイミングを計りながらの必死の作業というのですから...染織家の志村ふくみさんが、上気したような桜色の着物を仕上げていく過程の中で一番重要なことは桜のごつごつした樹皮から取り出した液だそうだ。しかもこの液は開花直前でないとベストの色が出せないそうだ。自然が織りなす現象に人がどう向き合って創造していくか...なんともスリルであり、ワクワク感、満載である。

人間だって似たようなモノである。不遇の時代を冬の季節なんてたとえがあるように、そんな時期にこそ只ひたすらに、がむしゃらに森羅万象、目にする、感じるもの悉く蓄える。そして春が来て見事な自分しか出せない花を咲かせる!

 

桜見物に酔いしれているこの日も、ガザ、ウクライナで多くの不条理な死。そしてミャンマーの地震。大国のリーダーの一刻も早い目覚めを期待したいのだが...己の欲望にしか興味がない彼らの幹なるモノには血なまぐさい液が流れているに違いない。

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今日の神田川

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