トムプロジェクト

2023/06/02
【第1760回】

昨日は久しぶりの晴天、毎年、新年に初詣に行っていた杉並区大宮八幡宮に今年は行けなかったので参拝してきました。やはり神社の佇まい、空気感しばし日常を忘れさせてくれますね。神が宿っているから神社です。その神社の杜を為しているのが大木です...何百年という間その土地の興亡を見続けた年輪の重さを感じます。そっと耳を添えて聞いてみたいもんですが、黙して語らず淡々とした表情で聳え立っています。それぞれがそれぞれの思いを抱きながら並んでいる様は神々しくもあります。勿論、神殿の中にはいろんな仏様が納められてるんですが、おいらはどうしても自然神のほうについつい気持を持っていかれます。

参拝するときの決まり文句は「生かして頂きありがとうございます。」その一言だけです。お願い事なんぞは一度もしたことはありません。お金ごときで神さんに頼むなんてこと甚だ失礼千万でございます。先ずは生かし活かされていることに感謝。あとは己が人のため社会のために何をなすべきかを思考し行動に移すだけ...きわめてシンプル。

一転、今日は台風の影響を受け朝から大雨、関東甲信地方も線状降水帯が発生する可能性があるとのこと。今日は長野県大町市文化会館で「風を打つ」の夜公演があります。長野地区での最後の公演でもあり無事に終えればと思っています。

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大宮八幡宮境内

2023/05/31
【第1759回】

生涯現役ええこっちゃ...昨日は20代の頃一緒に芝居やっていた仲間の芝居観てきました。

劇団ではない劇団・ぼっかめろん第33回公演「草稿 ジョバンニとカンパネルラの見果てぬ夜の夢の物語」。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」からヒントを得て創り上げた作品。作・構成・演出の倉沢周平、普段は明大和泉校舎正門のすぐそばでハンバーグ屋「ぐずぐず」を50年ほど続けています。心身ともボロボロになりながらも演劇に対する思いは今なお健在でございます。出演者の一人、小林達雄はもうすぐ80歳になるのですが、あっちこっち痛いと言いながら舞台上では相変わらず奇声を発しながら動き回っておりました。普段は地道なバイト生活を営んでおります。やはり好きなことをやっているのが健康には一番ですね。人間関係、お金を追いかける仕事で疲れ果て、いったい自分は何のために生きてるんだろう?なんて人が多数を占める中、周平、たっちゃんみたいに迷うことなく己の道をまっしぐらなんて生き方、潔いのではないかしら。

その真逆、この国のトップの息子の不祥事。汗水たらして必死で生きている庶民の生きざまも理解できず、世襲と言う悪しき伝統に胡坐をかいての今回の出来事。相も変わらずこんな人たちを選ぶ選挙区の皆様恥ずかしいことですぞ!広島サミットで点数上げたと思いきや、己の甘さからの大失態。こんな時にしっかりした野党が存在してれば緊張感あふれる政治が期待できるのだが...忘却の民は、今回の息子の件も10年、20年後には忘れてしまい、息子が国のトップに収まってたなんてことは十分あり得ますぞ...なんとか軌道修正しなきゃ皆の衆。

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明日から水無月

2023/05/29
【第1758回】

先週の土曜日、PLAY/GROUND Creation「桜川家の四兄弟」を観劇。作家と演出家ともにお母様を亡くされた実体験から生まれた芝居。このグループの芝居は初見なのだが、先ずは誠実な舞台創りに好感を持ちました。俳優陣のまっすぐな姿勢が狭い劇場にビシバシと伝わってきます。迫真の演技に若い観客も涙してました。誰しもがいずれは母との別れは必然です。おいらも数年前に尊敬する母との別れがありました。5人兄弟の中で唯一風来坊であったおいらをいつも心配しながら、でもどこかで信じていた母親の偉大さを、この芝居を観ながら考えていました。父親はおいらが17歳のときに亡くなったので、あまり感慨はありません。というのもおいら本人があまり家に居なかったので家族、家庭そのものの存在が希薄だったかも知れませんね。上京してから何年も博多に帰らなかったおいらに届く母の手紙から、初めて親の有り難さを感じた息子でした。書かれた文字の行間から母として親としての溢れんばかりの愛情が込められていました。こりゃ悪いことはできんばい!おいらに忍び寄る背徳の誘惑に楔を打ち込む一文字一文字でもありました。

それにしても母ものの芝居、映画はずるいと言えばずるい。誰だって泣きますよ。でも、こうやって何らの形で提示しないと、この忘却の時代、母親の有難さがわからなくなっちゃうんですね。

週明けの今日は梅雨入りみたいな一日です。こうやって季節を感じられる国、母親みたいに尊敬できる国になって欲しいもんですね。

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何か見つけたかな?

2023/05/26
【第1757回】

昨日は喜昇倶楽部公演「其の女」を下北沢にて観劇。劇団チョコレートの脚本・古川健、演出・日澤雄介コンビによる、渋谷はるかさんの一人芝居。広島で被爆しケロイドを負い、10年後、その治療のために渡米した25人の女性の一人、弘子さんにスポットをあてた芝居です。当時日本のマスコミは彼女たちを原爆乙女と呼び、原爆を落とした国に行ったと言うことで話題になりました。

先日も、サミットでの各国首脳が原爆資料館に入館したことで様々な記事が出ていました。おいらも広島、長崎での原爆資料館の記憶は今でも鮮明に刻み込まれています。あの惨状を体験すれば誰しもが核廃絶に気持が動くのは必然なのだが、ロシアのウクライナ侵攻から一気に核保有の必要性を論じる世界となりました。一部の頭が狂ったとしか思えない権力者のためにいとも簡単に世界の秩序が乱されるなんてこと何度繰り返せば済むんでしょうかね。

さて今回の芝居、文学座に所属する実力ある女優、渋谷はるかさんの初めての一人芝居への挑戦。数多くの一人芝居を手がけたおいらとしては若い俳優さんの一人芝居大いに歓迎。一人芝居の成否は、舞台上に居ない相手役の存在が見えてくるかがポイントだと思います。見えない登場人物を想像する楽しみが一人芝居にはあるんです。それは観る一人一人それぞれに違うのが更に面白い。渋谷さんの舞台も回を重ねる事に違った風景になるんでは...大いに楽しみです。

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出稼ぎバンド

2023/05/24
【第1756回】

わが心の西鉄ライオンズ、レギュラー選手で唯ひとり御存命であった中西太さんが90歳で亡くなりました。平和台球場での大きなお尻ふりふりしながらのでっかいホームランはおいら少年たちのスターでございました。1962年に選手兼任で西鉄ライオンズの監督を引き受け優勝したのが1963年、この年は南海(現ソフトバンクホークス)との最大14.5ゲーム差を逆転し、5年ぶり5度目のリーグ優勝を果たしたシーズンでもありました。おいらも勿論、平和台球場で喜びに浸っておりました。あの大きな体を胴上げしている選手の苦心惨憺ぶりがとても印象的でした。現役時代は"怪童"と称されたスラッガーで、本塁打王5回、首位打者2回、打点王3回のタイトルを獲得。監督としては一流にはなれなかったんですが、その後計8球団を渡り歩き、指導者として若松勉、イチローら名選手を育てた名伯楽でもありました。

最後にお会いしたのは2012年トム・プロジェクト「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」の博多公演でした。公演前にライオンズOBが集まっての座談会があり声をかけたところ嬉しそうな顔をされていました。この座談会には豊田、高倉、西村さんも同席し、お互いに遠慮することなく言いっぱなしの豪放磊落な楽しい会でもありました。

こうして西鉄ライオンズの選手たちはいなくなっていきました...でもあの日あの時の西鉄ライオンズは、残されたファンにとってはとてつもない宝物です。

そんな折、山川選手の事件はつらいですな。先人が築き上げた歴史に傷をつけちゃいかんばい!と言いたい。いつの世も野球は夢見る少年を虜にしてくれるものであることを肝に銘じてプレーしていただきたいもんでございます。

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今日の空

2023/05/22
【第1755回】

「風を打つ」昨日無事、東京公演千秋楽を迎えることが出来ました。各ステージ満席で本当にありがたい限りです。新しいメンバーを加えての再々演、日毎に劇中での家族の結束が強くなり、まさしく芝居は生き物だなと思った次第です。

観客のお一人がこんなことを話しながら劇場を後にしました。「この芝居こそ、今の世界に訴えるチカラがあると思います。環境、戦争、家族、皆が一様に抱えている諸問題を解決させてくれるヒントを随所に織り込んだ作品だと思います。」

そしてこんなハガキも来ました。「水俣を扱っているのに公害の悲惨さや、企業のあるいは為政者の巨悪ぶりなどが強調されることのない、それでいて切々とその恐ろしさと影響力の凄さを語りかけてくる原点に家族の再生とその愛があるからだと実感した公演でした。コロナで劇場へ足を運ぶこともめっきりと減った数年でしたが、観劇への勢いがついた作品でもあります。」

嬉しい言葉です。別に芝居の世界だけではないのですが、とにかくこれだけ物価が高騰するなかでの芝居創り厳しいものがあります。でも、こんな風に作品を観て頂ききっちりと昇華していただけると制作する側もテンションが上がります。

5月26日~6月22日まで演劇鑑賞会の公演21ステージの旅公演が始まります。芝居をこよなく愛する鑑賞会の皆様に、更なるグレードアップした作品を届けることが出来ると思いますので楽しみに待っててくださいね。

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両国駅前

2023/05/19
【第1754回】

まだ5月というのに夏の暑さのなか、昨日、両国シアターカイで「風を打つ」の初日を無事迎えることが出来ました。両国前では大相撲5月場所が開催されており海外観光客も含めて多くの人出で盛り上がっていました。大銀杏を結った力士が国技館に入る度に大きな拍手が送られ、力士も「よしゃ!」という感じで大きな体をゆさゆさと揺らしながらの背を見送っておりました。両国には多くの相撲部屋もあり、なんだかタイムスリップした感覚にとらわれ心地よい場所でもあります。劇場シアターカイの隣には、第4代将軍家綱よって建てられた回向院があり、浮世絵士の山東京伝、義太夫節を創った竹本義太夫、そして鼠小僧次郎吉の墓と、江戸時代は著名人の墓がいくつもあります。この近くには忠臣蔵で知られる吉良上野介義央(きらこうずけのすけよしひさ)の江戸上屋敷跡もあります。この辺りを散策していると江戸庶民文化の匂いがなんとなく漂って、近くの蕎麦屋に入り軽く日本酒を一杯という気にさせてくれますね。

ところで初日の芝居。満席の観客の前で上々の芝居を魅せてくれました。5人の役者のコンビネーションが抜群、カーテンコールの拍手が半端じゃないくらいの熱いものでした。この困難な時代、素敵な芝居を創ることの大切さを今改めて感じた次第です。

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国技館前

2023/05/17
【第1753回】

沖縄の本土復帰から5月15日で51年になりました。先日も石垣市で進む陸上自衛隊のミサイル基地配備計画のニュースが流れていました。島の住民の人達の意見も賛否半ばです。51年経っても一向に解決されない沖縄の苦悩、いやこれは沖縄の人達の問題ではなくその他の都道府県に住む人たちの見て見ぬふり問題だと思います。沖縄にほとんどの米軍基地を押し付け、身近に基地が来ようとすると反対する構図がなんら変わらない、変えようとしない身勝手な姿勢です。知識人も含めて沖縄に寄り添うと言ってはいますが、実際のところ沖縄は本土にとって都合の良い手段としてしか考えていないような気がします。

あの終戦を前にして、沖縄の人口の4人に1人が亡くなった沖縄戦。このきな臭い今、またしても沖縄がその最前線に立たされようとしています。台湾有事、北朝鮮、日本に復帰して沖縄は本当に良かったのか?

数年前、沖縄に行ったときに乗り合わせたタクシーの運転手さんの言葉が忘れられません。

沖縄の米軍基地の話を持ちかけると「すみませんね...」という言葉が何度も返ってきました。いやいや、その言葉は沖縄に基地を押しつけている我々の言葉です。

沖縄、水俣、戦争、家族、差別などなど、まだまだ伝えていかなきゃならない課題山積といった所です。取り敢えず明日から「風を打つ」公演します。お陰様で金曜日を除いてチケットはすでに完売です。

今回の芝居を観てなにかを感じて頂ければ嬉しい限りです。

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あっちっち~水浴びしてます

2023/05/15
【第1752回】

先週の12日(金曜日)、「風を打つ」の追い込み稽古に行って参りました。今回が再々演になる作品です。何事もそうですが、芝居もステージを重ねていくと別物の作品になっていくものなんですね。芝居の冒頭から家族のなんともいえない温かさが伝わってきました。熊本県水俣市で患者の発生が公式認定されて、今年の5月1日で67年になりました。同じ魚を食べ、水俣病になりながら、チッソ企業城下町で差別と偏見の中で過酷な生活を強いられた実在の家族の話です。その悲惨な状況を乗り越え逞しく生き抜く上で一番大切なのが明るさです。この芝居に登場する5人のそれぞれが今回、より温かく、強く、逞しくなり、逆に水俣病に感染したことにより人として、親として、子として得るものがあったという前向きな思考と行動があってこその明るさがより増していた今回の稽古場。

貴重な時間と、お金を支払ってくださるお客様に、どんなプレゼントが出来るか?芝居を創る人間すべての人が日々苦心していることです。そのための稽古場は緊張と弛緩の振れ幅の中、新たな発見の場でもあります。

この3年間、芝居の現場はコロナ禍のなか戦々恐々の日々でした。ようやく5類ということにはなりましたが、まだまだ油断は出来ません。本番直前まで、皆マスクを付けながらの稽古です。18日の初日が無事迎えられますように...

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薔薇の館

2023/05/12
【第1751回】

京王井の頭線浜田山駅前に小さな街の本屋さんがあります。先日覗いたら、小出版社の本を並べたコーナーがありました。普通の本屋さんでは目にしないものが所狭しと並んでいました。全国的にも書店が次から次へと姿を消しています。昨年の統計で書店ゼロの市区町村が26%になったという報告。確かに、ネットでの購入は便利かもしれないが、ピンポイントで検索していると世界は極端に狭くなっていく感じがします。その点、本屋さんの書棚を眺めていると今まで未知なる分野の本がいやがおう応にも目に入ってきます。そして手に取り不可思議な世界に迷い込む体験ができるという場所が本屋さんなのです。おいらがたまに足を延ばす神保町の古書店巡りも自分の足で目で新たな読書への旅をしたいからです。

そして本屋さんも工夫しないと取り残されてしまいます。浜田山の書店のように、ただベストセラーの本を積むのではなく、なにかに特化したコーナーを常設するとか、コーヒーでも飲めるスペースを設置し心地よい音楽を流し、少しでも長く店内に居させるようにするとか...町の書店の存在は、その街の文化レベルをさえ変える大きな要素だと思います。

最近世間を騒がせている闇サイトで集められた若者による強盗事件。この若者が幼い頃から読書体験をしていれば、こんなアホな発想は生まれなかったのでは...想像と創造、至福な時間を過ごすに欠かせないこの二つを手にするには本を読むことは不可欠だと思いますよ。

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曇天

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