トムプロジェクト

2025/07/14
【第2060回】

政治家の失言があまりにも多すぎます。未だ復興が見えない能登半島、選挙前は与野党共々能登の復興を口にしていたのが選挙目当てで物価高、減税の話ししかしなくなった。その隙を突き挙げ句の果てに、「日本人ファースト」をスローガンに掲げ、日本に住む外国人排斥に近い問題を提出したりとか政治家は全く信用なりませんね。

彼らに共通して言えることは、心に響く言葉を持たない貧しさ。川べりをのんびり歩いている時に何気なくひっそりと咲いている花に、はっとしたときに身体の中に眠っていた感情が言葉と共に、昔味わった当時の音や匂いを蘇らせ新たな言葉を生み出していく...そうやって言葉を積み重ね自分の言葉を形成していく...自分の言葉を持たない人は感性も思考も制約されます。銭勘定と当選ばかりのことしか頭にない政治家が良い例ではないだろうか。

そしてやはり本を読むことが大切だと思います。そのなかでも、一時の流行に乗るのではなく、自分の文体をしっかりと持った人の作品を大切にすることですね。おいらも明治、大正、昭和、平成、令和と脈々と受け継がれてきた作品を気負わず、行ったり来たりの読者三昧を楽しんでいます。しかし、文学にしても正解がないところが実に面白い...そんな時には、音楽や絵画から思わぬ言葉を発見することもあります。

言葉は愛おしいけれど、その一言で人を殺める怖さを持っています。でも己の言葉を獲得すれば自由に多種多様な方向に道が切り開かれ新しい世界が創り出せるのではなかろうか。

そんなことを考えながら、明日にでも参議院選挙の期日前投票に行こうかな...今の状況では悲しいかな、どうしてもこの人だと思える候補者はいなくて消去法で選ぶしかありませんな。

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誰のために?何のために?

2025/07/11
【第2059回】

おいらの故郷博多では、7月15日最終日の追い山に向かって町は博多山笠で一色である。

今年で784年の歴史を持ちユネスコ無形文化遺産としても登録されている。子供の頃はこの季節になるとウキウキワクワクしたものである。おいらもふんどし締めて参加したことがある。この行事に参加して一人前の男になるとぞ!とアンちゃんオッちゃんに檄を飛ばされたことは記憶にある。追い山笠ならしの途中、沿線に待ち構えている見物人から浴びせられる水がなお一層気を引き締める。行事の終わりの博多手一本がなんとも粋である。年長者や会のリー ダーが指名され、参加者の前に立つ。全員が立ち上がり、体の前で手を打つ態勢になると、「手ば入れまっしょ!」と声を掛ける。「よーお」(シャン、シャン)、「もう一つしょ」(シャン、シャン)、「よーと三度」(シャン、シャン、シャン)と手を叩く 。

日本の祭りはどこをとっても惹かれる要素が含まれている。NHKの長寿番組「新日本風土記」を良く観るのだが、つくづくこの国の人達が営々と引き継いできた歴史の重みと名も知れぬ庶民の残した足跡に頭が下がる思いだ。異国の人たちが日本に来てワンダフルを連発するのもこんな人たちの自然と調和しながら誠実に暮らしてきた積み重ねのお陰ではなかろうか。

それにしても、昨日の夕刻の雷雨はおったまげました...自然界の神さんもこの体たらくな世相に怒っとるに違いない。

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豪雨直前の空

2025/07/09
【第2058回】

いやいや連日大変な暑さである。昨日も散歩に行こうと一歩外に出るとサウナ状態でさすがに躊躇致しました。後期高齢者にもなると感覚も鈍くなり、疲れなのかそれとも暑さのせいなのか判別しづらい困った状況です...お歳を召した方々油断してはなりませんぞ!

最近懐かしい映画を観ています。大映で製作された「悪名」、1961年~1969年まで15作品創られました。八尾の朝吉親分演じる勝新太郎と弟分役の田宮二郎のコンビが最高です。勝新太郎の風貌、芝居は勿論だが、田宮二郎のテンポとリズム感溢れた演技は絶品です。彼の代表作と言われている「白い巨塔」の下地もこの作品で培われていたのではなかろうか。停滞しそうな画面を彼の登場によって一気に活性化させる稀有なる才能を感じる。そして豪華な共演者、浪花千恵子、ミヤコ蝶々、中村雁治郎、上田吉次郎などなど癖のある役者を見事に操りB級娯楽映画の傑作に仕立てています。東映の仁侠映画も然り、勿論、高倉健あっての映画なのだが、存在感ある共演者があってこその健さんである。

一見華やかな役者稼業、実は実生活も含めて壮絶極まる人生である。田宮二郎も最後には43歳という若さで猟銃自殺。大映映画社長と喧嘩別れしたり、怪しい商売に手を出したり、心穏やかな日々はなく鬱病になったり、心乱れる心身だからこそあの名演技が出来たのかもしれない。今も昔も、親が「役者だけにはならないで...」なんてことをお願いするのも分かる気がしますね...それを振り切ってでもその道に進むこの稼業には不思議な魔物が潜んでいるのかもしれませんね。

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猛暑の中で咲く薔薇

2025/07/07
【第2057回】

今日は七夕である。もともと中国から来たものであるが日本では短冊に願い事を書き葉竹に飾ることが一般的に行われている。おいらの子供の頃は、短冊に「西鉄ライオンズが勝ちますように!」「将来、西鉄ライオンズの選手になれますように!」なんてことを書いた記憶がある。勉強ができますように!なんてことは論外、少しでも西鉄ライオンズの本拠地であった平和台球場付近でウロチョロできることが最大の幸せなひとときであった。試合も7回の裏くらいになるとタダで球場に入場することが出来、ライオンズ勝利の瞬間を味わうことが出来た。

今はどんなことを書いているんだろうか?「給料が上がりますように...」「物価が下がりますように...」とにかくこの異常な物価高で庶民は悲鳴を上げている。中には、世界での各地での紛争を嘆き悲しみ「平和な世界がきますように...」なんて短冊もあるようだ。

20日投票の参議院選挙に向けて、各党おいしい言葉ばかり並べ、なんだか皆詐欺師に見えてくる。当面の目先のことばかりで将来の展望は皆無といってもいいくらいのこの国の政治家の質の低下が露わになるばかりだ。

結局、棄権は大事な一票に対する冒涜になるので、今回も消去法で一票を投ずることになるだろう...今尚止まないトカラ列島地震、もちろん他人事ではありません。日本のどの地域でも起こりうる災害、食を含め起きた時の備えるすべてのものが不備である現実に答えを持たないこの国を憂う...短冊に記する言葉が見つからないことも寂しいことですね。

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一服の清涼剤

2025/07/04
【第2056回】

先日、児玉也一さんから一冊の本が贈られてきました。「一銭五厘たちの横丁」この原作をもとにトムでも2010年に、ふたくちつよし作・演出で「百枚めの写真~一銭五厘たちの横丁~」の芝居を創り上げ東京含め全国各地で上演しました。児玉也一さんは原作者のご子息です。戦後80年、作者没後50年ということでちくま文庫から復刊されました。戦時中、戦地に居る父、兄弟に送るため東京下町に住む家族の写真を桑原甲子雄さんが撮影した写真と、その家族を30年後に取材したルポライター児玉隆也さん渾身の一冊です。

この作品の中で取材した阿部寅松さん。彼は戦時中に毎日ように出て行った横丁の出陣を見送る際、24人編成の町の楽隊で前列から数えて3番目でラッパを吹いていた。「嘘ついて、ラッパで威勢つけちゃったんだなァ。若いもんを次から次と威勢つけちゃ兵隊気分にさせちゃったんだ...おれは」「おれがあまりうまく教えちゃったんで、あいつら軍隊に入るとすぐラッパ長になっちゃうんだよ。それで威勢がいい連中だから、ラッパ片手にまっ先に突っ込んでって...おれの教えた奴は、誰もこの町に帰ってこなかった」「海行かばもいやだ。葬送行進曲だっていやだね。必要だから演奏するってえのは、いやだ」「音楽は、ただ聴いてるものなんだよ」そして最後に老いた横丁のラッパ手はこう言い残した。「ベートーベンはいい。用のある音楽は、もうこりごりだ」

天皇から一番遠くに住んでいた庶民を自分の足で聞き取り、写真は99枚で終わっているが、写されていなかった百枚めの写真は、まぎれもなく撮影者の桑原自身であり、取材者の本人であることを暗示している。

最後に、私はふたたびこの種の「記念写真」を国家が要請する時代が来ぬことを願うのみである。古いネガから過去を追ったはずの私の追跡が、実は未来につながるとすれば・私の足は重い。ひどく重い。と、記している。

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百枚めの写真に写らないために

2025/07/02
【第2055回】

明日は7月20日投票日、参議院選挙の告示日です。この国はいったいどうなるんでしょうね?国の建物、土地が海外資本に買いとられ大国の属国に貶められる趨勢から危機感を感じ新たな政党が進出しています。「日本人ファースト」、なんだかトランプの言っていることを代弁しているような気がします。確かに既存の政党がだらしないから、そこに付け込んで陳腐な新しさを強調している感じがします。まさに歴史は繰り返す、ドイツで台頭し忌まわしい過去を創出したヒトラー。この流れは世界的にも共通しているのだが、この日本だって油断していると一気に戦前の状況に通じる時代になるかもしれません。

最近、飲み屋に行ってもいい話聞きませんね。これだけ物価が上がれば庶民の財布の紐は堅くなります。昨日行った店の店長も忙しいのは土曜日だけ、平日はさっぱりだと嘆いていました。そういえばどの店に行っても値上げのオンパレード、お店に行く回数も自ずから減ってしまいます。そんな中、薄利多売で頑張っている店もあります。養老乃瀧グループが運営する「一軒め酒場」、お通しなしで飲み物も含めて安価なメニュー、そして年配者にとってありがたいのがうるさくないことです。若者集団の客が少ないからだと思います。安いのだが量が少ないことと店の雰囲気の親父っぽいのが原因なのかな...確かに若いカップルが将来の夢とロマンを語り合うには相応しくないかもしれませんね。

おいらの若い時代には、出来得る限り安価な居酒屋に通い、どんな騒音にも負けないくらいのパッションで明け方まで過ごしたもんですが、さすがに何もかも変わってしまいました。

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甘い蜜求めて

2025/06/30
【第2054回】

先週の土曜日、今年初めてのベルーナドーム参戦。この日の試合はライオンズ対日本ハムファイターズ、今年のハムはもりもりのボリューム、ホンマに強いです。あの個性あふれる黒マスク新庄監督の勘がさえわたり首位を突っ走っています。この日も8回裏まで2対1で敗戦濃厚、ライオンズも2アウトまで追い込まれたのですが、若手の長谷川選手の逆転3塁打で何とか勝利をもぎ取りました。それにしても完売御礼!満員の観客席からの応援が半端じゃありません。グランドから地響きがするくらいの圧倒的な声援に選手が燃えないわけがありません。と言っても、所詮もともとチカラがある選手だからこそ、その声援に応えることが出来るというものでございます。この世界はすべて数字に表れます。低打率のバッターにいくら声援を送っても確率は少なく「やっぱりね...」「なんでいつまでも使ってんだろう?」と観ている側からしたらストレスが溜まる一方。今年のライオンズの西口監督、昨年の目を覆いたくなるような成績に比べれば良くやっているとは思いますが、調子が上がらない選手を我慢して使いすぎかなという疑問がありますね...それを補っているのが今年から外部招聘されたコーチ陣。昨年まではライオンズのOBコーチが、ちんたらちんたら選手と馴れ合いの関係での指導だったためなんと49勝91敗3分 勝率.350断トツの最下位。見るに忍びない惨状でございました。やはり指導者の違いでここまで善戦できるのかを目の当たりにしている今シーズン。まだまだ勝負はこれから、何とか3位以内になって優勝を狙える戦いをして欲しいもんですね。都心から所沢はやはり遠いですね...勝ちゲームの帰りの電車は気分いいんですが、負けゲームの帰りは地獄の時間でございます。

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初参戦

2025/06/27
【第2053回】

昨日何となくTVをつけたら、1981年6月に行われた「美空ひばり芸能生活35周年記念リサイタル 武道館ライヴ」の模様が放送されていました。久しぶりの聴いた美空ひばりの歌声は圧倒的でした。思えば若い頃、美空ひばり即芸能界、そして山口組がバックについているなどなど、反体制、既成の概念を嫌悪し新しい価値観に目覚めようとしている者にとってはあまり興味の対象ではありませんでした。44年前に武道館でこんなことをやっていたことも、勿論知りません。人は年を重ねることによって、改めて表現の深淵なるものを覗かせてくれるんですね...「悲しい酒」「愛の讃歌」「昴」、演歌にとどまらずあらゆるジャンルの歌を、七色の声を使いこなしながら決して重くならず軽快に歌いこなす彼女は、やはり不世出の歌姫である。この日、44歳の彼女はすべてに光り輝いて見えました。なんだか8年後の死を悟っていたのではないだろうか...太く短く波乱を含めての人生だからこそ、あれだけのヒット曲を世に送り出すことが出来たともいえます。

昨日の美空ひばりさんの歌を聴きながら、改めて言葉の大切さを感じました、今はやりの音楽が曲とリズムを重要視するあまり歌詞が入ってきません。勿論、時代の流れだとは思いますが歌の言葉がないがしろにされている気がしてなりません。考えてみれば、今の時代を動かしているトップの輩が吐き出し言葉の何と軽いことか...仕方ありませんかね。

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行きつけの喫茶店

2025/06/25
【第2052回】

昨日は新橋演舞場で「東京喜劇 熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第11弾黄昏のリストランテ ~復讐はラストオーダーのあとで~」を観てきました。笑いと言えばやはり関西、それに対抗するかのように、この一座は江戸の軽演劇を広めようということで伊東四朗さんが2004年に三宅裕司さんと共に『伊東四朗一座』を立ち上げたのが始まりです。その後、伊東さんが抜け、伊東の手前が熱海、四朗の次が五郎ということでこの一座の名前になったそうだ。この軽いノリで、しつこい笑いではなくシンプルな笑いをお届けしたいという趣旨がとてもわかる興行でした。出演者の皆さんも芸達者で笑いのツボをしっかりとおさえて飽きさせない構成になっていました。このスタイルは、東京の軽演劇をリードしてきた由利徹、佐山俊二、南利明に相通じるものがあります。関西がお好み焼きのこてこて感とするならば、関東の笑いはお茶漬けの味かな...どちらが好きかはわかれるところだが、東西が競い合ったからこその笑いの文化だと思います。

今回のゲストである羽田美智子さんがお茶漬けの味をなお一層美味なるものに仕立て上げていましたね。2023年にトムで上演した「沼の中の淑女たち」でも、彼女の天然ボケを思わせる芝居にはおおいに楽しませていただきました。普段でも全くの飾りがない自然体の方です。デビュー以来末永くこの世界で活躍されている理由が良く分かります。会場を後にするお客様も、なんともすっきりしないこの世を暫し忘れさせてくれたんじゃないかしら...

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雨に打たれて

2025/06/23
【第2051回】

今日は沖縄戦が終結してから80年の節目の日である。沖縄が日本に復帰してから一体なにが変わったのであろうか?未だ地位協定のことですら言い出さないこの国のトップがこの日の追悼式で「平和で豊かな沖縄に向けて力を尽くすことは国家の責務だ」なんて喋っているけど何度聞いても虚しい。本気で交渉する気もないのに、なんと政治家の言葉が軽いのかと改めて思い知らされる。あの地獄のような沖縄戦で生き残った高齢者の言葉の重さを受け止めることの出来ない為政者の鈍感さにはただただ呆れるばかりだ。そして遅々として進まない沖縄の現状に対して、歴史を歪曲する発言をする輩が政治家としてのさばっているのだからたまげたもんである...この国もジワリジワリとポピュリズムに乗っかって右傾化する流れが進行しつつある。先の知事選で予想外の得票を重ね、何を勘違いしたのか今回の都議選で多くの立候補者を立て、賑やかし的な行動で注目を集めたかったであろう新党も当選者ゼロで終わった。今の若者はSNSで情報を取得し投票するパターン、これだけ自由気ままに乱暴な情報の垂れ流しであればフェイクニュースも当たり前。スマホ中心の生活習慣から抜け出せない人たちの想像力の退化が心配である。

そして、トランプのイランの核施設の攻撃...間違いなく世界は負の連鎖の道を辿っている。

プーチン、習近平、トランプ、金正恩、こんな輩が目立つ状況に残念ながら未来はない!

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今日の空

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