2024/12/02
【第1970回】
先週の土曜日には久しぶりに浅草に行って来ました。いや大変な賑わいでございました。中でも外国からの観光客がレンタルの着物を身につけあちらこちらで記念写真を撮っていました。浅草寺、昔からの演芸館、そしてディープな飲み屋街には道路にまではみ出したテーブルでワイワイガヤガヤ、モダンな所よりも人の体温が直に感じられる所での一杯がなんだかホッとしていいんでしょうかね...コロナの時期に閑古鳥が鳴いていたときがまるで嘘であるかのような光景でした。
この日の目的は、トムでもお馴染みのふたくちつよしさんの作、演出による浅草九劇での芝居。老舗劇団青年座の有志が集まり「時計屋のある町で」を上演。昭和60年、東京下町にある時計店で繰り広げられる家族のドラマ。正確で安価なクオーツ時計の波にさらされ閑古鳥が鳴くなかで、頑なに機械式時計に拘る店主をこのカンパニーの主宰者である津嘉山正種さんが淡々と演じている姿が印象的でした。作家然り、80歳になる津嘉山さん然り、この便利になりすぎた時代への警鐘、抵抗を、昭和という時代を通して人間らしさを失うことなく生きてきた庶民を描きたかったと思います。
おいらにとっても昭和という時代はインパクトがありました。戦争という暗い時代をくぐり抜け、貧しいながらももがき苦しみ平和を目指した庶民のすさまじいエネルギーのなかから目を見張るようなアートが生まれ、新しい産業を創出し、生活に潤いをもたらしてくれました。何事もそうですが、過ぎたるは猶及ばざるが如し、ここまですべてが先鋭化し利便性を追求すると簡単に後戻りできないのが資本主義社会の宿命。
終演後、ふたくちさんご夫婦とお疲れ会をとお店を探したのですが、どの店も満員喧噪状態、こんな時はちょいと横道に逸れるとこじゃれた居酒屋が見つかるもんでございます。しっかりと煮込んだおでんで一杯、久しぶりの浅草での一日でした。
久し振りの浅草