トムプロジェクト

2026/06/12
【第2192回】

朝井リョウ著「イン・ザ・メガチャーチ」読了。「Amazonベストセラー1位」「2026年本屋大賞受賞」「50万部突破」「書店の目立つところに山積み」「センセーショナルな宣伝文句の表紙帯」「SNSで話題沸騰」等々いかにも買って読まなきゃ時代に乗り遅れるなんて気分になって購入しました。正直申しましておいらの肌に合いませんでしたね。

チンタラチンタラと破滅に向かっていく過程が並行して描写されるだけ。問題提起はいいとして読者はそれでなんなのと放り出され虚しい感覚が残る気持ち悪さ。流行りの推し活と何かと問題視される信仰を重ねたテーマ性の着眼点は良しとしても、ただそれだけ。それでも救いになると作者は拘るのだけども、作家の真髄が問われるのはそのあとどう締めるのかだと思います。そしてそれが崩壊に繋がると分かっているのならそこから先を描くのが小説家たる所以ではなかろうかと思ってしまいました。

この本屋大賞なるもの過去にも何冊か読んだ体験があるのだが、おいらにとっては大賞以外の本に心揺さぶられる著作が多々あり、この賞を選ぶ方々が新刊書の書店で働く書店員の投票で決まることを知り、何か裏があるんじゃないかしらと思ってしまいました。2025年度末の全国の書店数は9,993店になってしまいました。1990年代には2.4万店あったのが半分以下。確かに時代の流れはあるにしても、出版社、書店の洞察力があってこその有能ある作家の誕生につながるものだと思っています。

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今日は曇天

2026/06/10
【第2191回】

昨日は、杉並区にある座・高円寺で上演されている劇団温泉ドラゴン×劇団58ROUTE日韓共同制作「長正炭鉱―生きたかった」を観劇。このドラマは、1942年2月3日、山口県宇部市の長正炭鉱で水没事故が発生し、183人が犠牲になった事実に基づいて創作。事故直後、坑道はコンクリートで閉鎖され、多くの犠牲者が出たということは80年以上語られることがなかった。浸水しはじめた坑内のエアポケットで生き延びるために息をひそめる坑夫達。そして、海底に沈む坑道の前で遺骨収集と真相究明を求め続けた今を生きる人達。舞台は、過去と現在を行き来しながら進行していきます。

日本と韓国との歴史の間に今尚、隠された出来事が沢山あります。日本と一番近くにありながら喧々諤々、闇の歴史をなかったこととする人があり、一方今回のような事実を郷土史家が記録し世に問う人も居ます。要は、隣国とよりよい関係を持つことが重要なこと。政治のレベルでなかなか解決できない諸問題を演劇という手段を通じて両国の信頼関係を少しでも取り戻せないかという演劇人の心意気を感じました。

今回は韓国の俳優さんも5人参加していました。同じ痛みの前で、言葉も文化も異なる表現者のぶつかり合いはスリリングなものがありました。まさしく舞台は国境を超える。

今尚、争いが続く国々の人たちも、こうした文化交流を通じてなんとか和平への道をこじ開けて欲しいのだが、大国のあの顔ぶれだと残念ながら難しそうですね。

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威風堂々

2026/06/08
【第2190回】

歌手の菅原洋一さんが先日92歳で亡くなりました。1967年「知りたくないの」♪あなたの過去など 知りたくないの
済んでしまったことは
仕方ないじゃないの♪。1970年「今日でお別れは」♪あなたの過去など 知りたくないの
済んでしまったことは
仕方ないじゃないの♪この2曲は当時大ヒットしましたね。おいらが上京して21歳から24歳の多感な時期でもありびんびん響いてきましたね。タンゴ歌手としてスタートした彼の低音を巧みに生かした味わい深い歌唱はいつまでも耳に残りました。ふと思い出し、昨日90歳に残したピアノ演奏だけの歌は枯淡の香りがしました。なんと今年の4月6日には上野のライブ会場で11曲を力強く歌い上げていました。まさしく生涯現役を全うした人生でした。

昨年には役者の仲代達矢さんも、菅原さんと同じ年92歳で最後まで舞台を務め亡くなりました。表現者たるものとしてあっぱれでございます!知名度が高まり楽してお金稼ぎに走る表現者を最近よく見かけますが、一番大変なライブ会場で自らの全てを曝け出し観客に問いかける人こそ真のアーチストだと思います。そのための研鑽は並々ならぬものがあると思いますが、観客として立ち会った時の感銘は、時として己の人生を決めかねない事件にさえなるかもしれません。

こつこつと歩みが遅くとも己が信じた道を切り開いた人生こそ、滋味深く他人の痛みを理解し知足に満ちた生き方ではないでしょうかね皆の衆。

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雨に濡れる紫陽花

2026/06/05
【第2189回】

最近の国会予算委員会のTV中継、緊張感もなく予定調和的に終始していますね。そりゃそうだよね、与党の圧倒的な数の力で全て決まってしまうのですから単なる儀式みたいなもんですね。そんな数の力をバックに、初の女性首相になった方が念願だった法律を次から次にごり押ししている姿に呆れてしまいます。その一つに「国旗損壊罪」、日本の国旗日の丸は実にシンプルで美しい旗だと思います。それをむやみに傷つけたり燃やしたりするのは如何なものかなと感じますが、その前提として国旗が真に愛され、誇りに思う国にすることが政治の仕事ではないかと...嘗て、日の丸を戦意高揚の道具として運用した苦い歴史もあり、人それぞれ国旗の対する感慨は違うのでは...そんな歴史認識も無視し、ただ単に法律で取り締まるなんてことは暴挙だと思います。アスリートが精魂傾けて勝利を手にしたときに上がる日の丸に、誰しもが共感できるように、法で縛るのではなく万人が心底から拍手を送ることが出来る健全な国にすることが肝要でございます。

もう一つ、「皇位継承問題」、日本の伝統から「男系男子に限ることが適切で、自分としても尊重している」と発言している。確かに日本の伝統も大切かも知れませんが世界状勢、そして諸々の価値観は大きく変容しています。自ら初の女性首相になりながら何故ここまで拘るのか理解できません。政治は個人の思いを成就する場所ではありません。より多くの意見に耳を傾け誰しもが納得できる方向に智恵を絞り切磋琢磨することが真の指導者ではなかろうか...あんまり意地になって張り切りすぎると身体に良くないないですよ。

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水が引いた神田川

2026/06/03
【第2188回】

6月になって大型台風が日本列島を直撃、おいらが住んでいる杉並区の神田川、善福寺川がいずれも警戒レベル4相当[洪水]が発令されました。いつもは緑鮮やかな散歩道なのですが、今日ばかりは勢いある濁流を見ていると改めて自然の脅威を感じます。日本のみならず世界中がこの脅威に戦々恐々たる思いです。毎年口を揃えたように気候温暖化に対する警鐘を叫んではいるものの、やはりどの国も利益優先の政策が優先し、掛け声だけの状態に陥っています。樹木は伐採され、空気は汚され、そりゃ人間に対し地球のほかの生きものは怒るのは当たり前です。今日もTVで、ロボットがコーヒー豆からドリップで落としお客に提供するまでの行程を写していました。その味の感想をロボットが聞いてくるのですからなんとも味気ない光景。何のために人間は存在しているの?世界がすべてにおいて人間味や生活感が乏しい無機的な世界に突入しています。まさしく、感情が排除され、合理・機能だけで動いているといった印象の近未来社会がすぐそこに到来しているのでは?

それと真逆の光景を魅せてくれるのが「ポツンと一軒家」という貴重なTV番組。大自然の中で沢水を飲みながら自給自足の生活をする人たちの豊かな表情がたまらない。そりゃそうだよね、欲がない顔なんだもん、自然の恵みに感謝しながら淡々と生きているとこんな顔になるんですよ!というお手本を見せてくれてますね。

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カルガモの母が見つめる愛おしさ

2026/06/01
【第2187回】

先週の土曜日は、東京芸術劇場にて劇団チョコレート「帰還不能点」を観劇。この芝居は2021年に初演して以来今回が4度目の公演である。舞台は1950年、敗戦から5年経ったある日、9人の男たちが場末の小料理屋に集うところから始まる。彼らは日米開戦前夜の1940年に首相直属機関として設立された「総力戦研究所」の1期生であり、内務省、外務省、陸海軍、日銀などの中枢にいた元若手エリートたち。この日は店の女将の夫で日銀出身者の三回忌。勝てるはずのない戦争に「なぜ戦争になったの?」と問いかける女将の言葉をきっかけに、一同が、それぞれが戦時中の指導者たちに扮しながら即興芝居で、軍部や閣僚たちの言動を再現し始める。この設定がいかにも演劇的手法でなかなか効果的である。史実をそのまま伝えるのではなくワンクッション置くことによってより劇的にしてくれた。そして何度も再演を重ねてきた成果を十分に感じとることが出来た。

この芝居の中で、戦争に突入することへの是非を熱く語ったにも関わらず止めることが出来なかった事実。そして今の現実、戦前を思わせる事態がすぐそばにまで迫っているのに、なんだか危機感のなさをどうしても感じてしまう。歴史の教訓から学べ!と何度も目に耳にするのだけど、島国ニッポンの鈍感さなのであろうか...

今日から水無月、「水の月」で、水を田に注ぎ入れる月です。雨模様のなかでひっそりと咲く紫陽花を眺めたいのだが、この異常気象、早や夏日の連続にたまの雨が豪雨ときたもんですから情緒もへったくれもございません。

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紫陽花は雨の匂いを待ちこがれ

2026/05/29
【第2186回】

昨日は劇団桟敷童子「亀と潜水艦」を観劇。終戦時、朝鮮半島、満州から引揚げて来た人達の物語である。異国の戦場で犯した罪に怯える者、帰国しても帰る場所がない男たち、異人の子を宿し祖国を前にして命を絶つ女たち。昭和20年11月に設置された博多引揚げ援護局は140万近くの引揚げ者を受け入れ様々な救済活動を行った。なかでも引揚げ時、暴力により妊娠してしまった女性を救うために、旧陸軍病院施設で秘密裏に中絶手術を行った。何の罪もない胎児たちの数は400とも500とも言われている。

そんな史実に基づいて、劇団桟敷童子の皆さんが総力戦で、闇に葬られかねない歴史を風化させまいと身体をはって演じてくれた。

今回の芝居を観ながら何故かおいらの遠い記憶が蘇る。おいらの家族も朝鮮半島からの引き揚げ者である。父と母と兄が1945年8月9日を境に、ソ連(現ロシア)の侵攻により逃避行が始まるのである。そのときおいらは母の胎内で命を育んでいたのである。その苦難の逃避行は亡き母が何度も話して聞かせてくれた。考えてみれば、異国の地に大東亜共栄圏建設の名のもとに異国に侵攻した日本国に対する逆襲ともいえるのだが...多くの人達が逃避行中に命を失った中、おいらの家族は奇跡的に博多港に辿り着いたのである。まさしく今回の舞台の場所、母の胎内でおいらはどんな思いを抱いていたであろうかと想像してしまった。もしや、この劇中にも登場する堕胎施設に送られていたならばこの世に存在しなかったなんてことも考えながら...

そしてこんな悲劇が、今もなお世界の紛争地で起こっていることに唯々呆れるばかりです。

奇跡的にこの世に生を授かった身として、命ある限り戦争反対を連呼したいと思っています。

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すみだパークシアター倉からの眺め

2026/05/27
【第2185回】

「チョークで描く夢」昨日、無事千秋楽を迎えることが出来ました。連日、多くの方々に来て頂きありがとうございました。芝居は観客が育てるモノだとつくづく思います。観客の息づかいが芝居をより濃密にし、役者の意識をよりアップする。おいらも全ステージ観たのですが、確かにどのステージを取ってみても同じ出来ではありません。その日の役者のお互いのやりとりでテンポが落ち、舞台上の緊張感が希薄になることもあります。台詞の間違いも当然あるのですが、そのときにどんな対処でその場を乗り切るのか役者の技量が問われるところです。過去にも台詞が出てこなくて長い沈黙の場を前にして頭が真っ白になった経験もあります。勿論、役者はそれ以上に真っ白になったに違いありませんね。ナマモノの一番恐いことであり、またスリリングなところでもあります。だからこそ面白い!芝居の罠にはまって劇場通いの人達が増えれば言うことなしでございます。

隅田川を渡ったところにある両国はなかなか味わい深い地域です。相撲部屋もたくさんあり日頃から力士が買い物したり散歩したり、近くに寄るとどこか懐かしい甘い香りが鼻をくすぐります。その香りの正体は鬢付け(びんづけ)油、力士の髷(まげ)を結うためには欠かせない品です。昨日は3人の力士がチャリンコに乗ってる姿をみかけましたがなんともかわいらしい光景でした。可哀想だったのがチャリンコのタイヤ、ほぼつぶれる寸前、力士用のチャリンコも販売してはいかがかな?なんて思っちゃいました。

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終演後のトークショー

2026/05/25
【第2184回】

「チョークで描く夢」昨日で5ステージ終えることが出来ました。O氏より速達の葉書が届きました。

「チョークで描く夢」は悪人のでてこない心に染みる作品です。役者各位も善意の人々が集う世界をよく理解して登場人物を演じ観る者に暖かな風を届けてくれました。帰路心に優しさが充満している自分を感じ足も軽くなりました。人が人を思いやる大切さを再認識した観劇でしたが自分に振り返り反省点もあります。小学校に当時特殊学級と呼ばれるクラスがありました。何故か他の児童たちは恐がっていました。乱暴な振る舞いや理解しがたい言葉を耳にする毎に。そのクラスの先生は「恐いのは君たちの心にある差別だ。それが彼らを怯えさせるのだ」と常々言っていました。今日改めてその言葉の意味を噛みしめた次第です。そして自分の中にある拘りも実は同じような心の動きであることに気付きました。人への自己流の押し付けは他人を不便にさせるのだと納得しました。ワタシひとりが幸せでいるより他の人と一緒に満ち足りた時間を持つほうが豊かな気持ちになれると悟された2時間でした。劇場にこの教訓を持ち込んだ制作者に拍手!です。感謝。

尊い時間と、お金を払って劇場に足を運んでくれる人達に、なにかひとつでも感じて頂き少しでも平穏な世の中になって欲しい!そんな思いが伝わると、これまでの辛労も吹っ飛んでしまいます。昨日は両国国技館大相撲5月場所の千秋楽、若隆景(ワカタカカゲ、早口言葉に取り上げてもいい呼び名です)が優勝決定戦で大関霧島を破りおおいに盛り上がっていました。

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葛飾北斎が愛した町、両国

2026/05/22
【第2183回】

「チョークで描く夢」昨日で2ステージを無事終えることが出来ました。初日はさすがに役者さんも緊張することもあって、若干の固さも見られましたが概ね順調なスタートを切ることが出来ました。かといって、芝居は日々進化するモノであり演出家、プロデューサーも気を抜くことなく常にチェックしながら改善すべきところは意見し、昨日よりも今日、最善の舞台をお客様に提供すべく精進に相務めているのでございます。その成果が、即2日目に如実にあらわれ充実した芝居に仕上がっていました。この業界でよく言われるのが、初日の幕が開き2日目は役者の安心感からダウンしちゃうことが通例と言われています。

観劇後のお客様から「こんな素敵な芝居7ステージで終わるなんてもったいないですよ。たくさんの人達に観てもらいたい!」なんて言葉を頂くと、確かに今回の芝居、全国の老若男女の皆さんに劇場に足を運んで頂き実感して貰いたいという願いから創作した作品です。

題材的にもナーバスにならざるを得ない作品を、笑いと涙を交えながらの2時間、観客を舞台に集中させる中津留ワールド、なかなかのもんだと思います。

会場がある両国、大相撲5月場所開催中です。両国国技館前にはおおくの相撲ファンが人気力士の出待ちで賑わってました。お相撲さんの持つ独特の魅力、これも日本の歴史が培ってきた文化なんですね。

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相撲と芝居の町、両国

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