トムプロジェクト

2024/07/26
【第1921回】

夏の祭は子供のころから楽しみの一つでした。おいらが幼少期に過ごした博多では、近くのガラの広っぱが盆踊りの会場になったり、屋外映画館になったり、そんな日を心待ちにしながらワクワクしたものでございます。そして博多の最大の催事「山笠」7月1日~15日の間、街には男衆がきりりと長法被姿で15日の追い山に向けて準備する姿は子供心をくすぐるものでした。俺もいっちょまえの男にならんといかんばい!

そしてもう一つ、夏のイベントに欠かせないのは花火大会、中洲、大濠公園で行われていました。この時期はおいらにとっては花火を鑑賞することよりも稼ぎ時でありました。早くからラムネを売る場所を確保し、声を嗄らして売りさばいていました。といっても、子供にとっては大空に打ち上げられる花火の美しさに気をとられラムネを盗まれ親方にこっぴどく叱られた苦い思い出も記憶に残っています。

昨日、おいらが住む地区で行われていたちびっこ盆踊り、多くの家族連れでにぎわっていました。踊りを楽しんでいる子供たちより、この日出店していた綿菓子、焼き鳥などなどの店に長蛇の列。どこの祭も一緒ですね、食い気が勝るのは当たり前。

日本における子供の少子化問題、お祭りシーズンに老いたる人たちしか居ないなんて寂寥感漂うシーンなんて想像すると...これは違うお祭りかもしれませんね。

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夏の定番

2024/07/24
【第1920回】

いきなり強風、豪雨、今日の一日の始まりでした。何が起こるかわからない日々。

今日は川柳コンクールで選ばれた10句を紹介しますので、ニヤニヤ、爆笑なりくつろいでくださいませ。

 

①    増えるのは 税と贅肉 減る贅沢

②    物価高 見ざる買わざる 店行かず

③    マスクなし 2年目社員の 笑顔知る

④    50代 給与も肩も 上がらない

⑤    paypayを 覚えた父の 無駄遣い 

⑥    ダイエット 動画だけ見て 痩せた気に

⑦    パスワード チャンス3回 震える手

⑧    盗み食い ペットカメラに 映る父

⑨    アレとソレ 用事済むのが 日本流

⑩    2度聞くな! 言った上司が 3度聞く

(番外) 「どう生きる」 AIに聞く 我が老後

 

世相を上手くとらえてますね。

笑う門には福来る!

笑顔と感謝の気持ちで、この猛暑も乗り越えていきましょう皆の衆。

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準備万端!

2024/07/22
【第1919回】

この猛暑、後期高齢者にはとても応えます。暑さだけではなく湿気によるダメージが半端じゃありません。でも、ウクライナ、ガザ、そして世界各地での干ばつによる飢餓などのことを思えばなんのこれしきのことでぶーたれてるんじゃない!とおしかりを受けそうです。

冗談ではなく、世界の人達が本気にならないと紛争、環境破壊も含めて地球は滅亡のシナリオ通りに進行していくと思います。

今日も炎天下の中、サルスベリの花が青空に向かって咲き誇っていました。炎暑だろうが極寒だろうが、大地にしっかりと根付いている生きものは、しっかりと生きています。他とは決して争うこともなく天然の養分をしっかりと頂きながら凛とした姿で立っています。

今日は、バイデン大統領の大統領選挙不出馬もニュースも流れていました。トランプ氏の銃撃写真もなんだか無理矢理歴史を塗り替えようとしている意図がプンプンと臭ってきます。

そんななか、この日本国はどんな道筋を歩んでいくのか?この国の体質として、あの裏金問題、森友・加計問題、統一教会などなども霧の彼方に忘れ去られてしまうに違いありません。

そして、今週末から開催されるパリオリンピック、世界が混迷を極めているこの時期にやることに複雑な気がしてなりません。でも、おいらも含めて皆さんTVで観戦するんでしょうね...連日放映されている大リーグの大谷選手の活躍を楽しんでるように。

どこかで気分を変えていかないと、心身やられてしまいますからね。バランス感覚はとっても大切だと思っています。生きてこそなんぼの世界ですから!

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百日紅

2024/07/19
【第1918回】

今回で4度目となる「風を打つ」東京公演、今日が千秋楽となりました。3日間という短い公演でしたが、初日からキャストの熱量と比例するかのようにお客様の反応もなかなかのものでした。終演後の拍手の質が半端じゃありません。いまだ未解決の公害の原点である水俣病に対する問題意識もさることながら、困難に立ち向かう家族の在り方に深い共感を覚えたに違いありません。苦境に陥ったとき、如何に前を向かって生きていけるか?そのヒントになることがこの芝居には描かれています。様々な価値観を抱えながら、人はどこを切り取りながら家族という共同体を円滑に回していけるのか...最近、家族崩壊のニュースが頻繁に報道されています。親子でありながら、兄弟でありながら何故?血のつながりがあるほど憎悪の感情がより濃く現れるんでしょうか...

昨日、長年に渡って水俣病患者の方々の救済に関わっている方が終演後おいらのところに駆け寄り、「現地の患者の皆さんの苦しみを見た人間として、何とかしなければという気持ちが今なお救済運動へと駆り立てられてるんですよ。」と、そしてこの芝居を観てより背中を押されたとおっしゃっていました。あの中村哲さんも同じようなことを述べられましたね...見て見ぬふりする輩が増えるほど国は滅びていくに違いありません。

声を上げ、アクションを起こす、何事もここからしか変革はありません。

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劇場前の公園

2024/07/16
【第1917回】

先週の週末、いつも独自の視点で作品を選び上映し続けているミニシアター東中野ポレポレで「方舟にのって~イエスの方舟45年の真実~」を鑑賞。1980年に東京国分寺市から10人の女性が突如消え去り、「イエスの方舟」の主宰者である千石剛賢氏が若い美しい女性を連れ去り、カルト集団、ハーレムなどと世間を騒がせた事件。今尚、福岡県古賀市で昔そのままの共同生活をしている集団を取材したドキュメンタリー映画である。

おいらも、当時このニュースが報道されるたびに何とも不思議な感じがしていた。メディアは面白おかしく何とか事件にしようと躍起になっていたのだが、娘さんたちの家族の訴えも空しく結局は不起訴という形で幕を閉じた。要するに、千石イエスことオッちゃんの人間性に魅かれ日本全国逃避行を重ねながらも、この45年間この方舟は航海し続けられたと思う。

この目で確かめようと、2002年に当時博多の中洲のど真ん中で、この集団が営業していたスナック「シオンの娘」に出かけてみた。カウンターに囲まれた店は清潔で落ち着く居心地の良い雰囲気に満ちていた。見事なくらい美しく清楚な感じがする女性ばかりで、お酒は一滴も飲まず、媚びることもなく知的でリラックスできる会話で美味しいお酒を飲むことが出来た。そして何よりも驚いたのが40分にわたるショータイム、シャンソンあり、演歌、フラメンコ、太鼓、日本舞踊などなど盛りだくさんの芸が次から次へと展開される。それもアマチュアの粋をはるかに通り超えプロの技である。

今回、このドキュメンタリー映画を観終わった後も謎は残る...家族とは?宗教とは?社会とは?でも一番の謎は、千石イエスことオッちゃんである。

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イエスの方舟、今尚航海中

2024/07/12
【第1916回】

ライオンズの凋落振りが顕著でございます。10日の日ハム戦でなんと今シーズン今期5度目の5連敗。年間100敗ペースを着々と突き進んでいます。先発投手はまあまあ頑張ってはいるのですが、なんせ打者が他のチームに行けば二軍、三軍レベル。バントは出来ないし、チャンスにはことごとくポップフライか平凡なゴロ。これじゃ勝てませんがな。監督もゼネラルマネージャーが代行しているのだが、なにせへボ選手ばかりで機能しません。それもそのはず、前監督とゼネラルマネジャーが一体となって選手を甘やかした結果がそのまま今の成績に繋がっています。代行監督は「皆、一生懸命にやっているのだが今一つ気持の問題なのかな...」なにを今更と言いたい。そこを上手く導いてあげるのが、監督、コーチの仕事なのに、TVに映る首脳陣の呑気な顔を見る度にこりゃあかんですわ!という有様。

全盛期のライオンズと比べて親会社がじり貧状態で、育てた有能な選手は他球団に移籍、助っ人外人選手も皆ガラクタだらけ、そこで昨日、嘗てライオンズで大活躍したデストラーデ氏のスペシャルアドバイザー就任ニュースが飛び込んできました。もしや、初の外人監督が誕生するのかしら?でも、これくらい思い切った手を打たないと、この先数年間暗黒時代が続く予感さえしてしまいます。

今日は新人ながら5連勝、負け無しの武内投手の先発。福岡の出身で子供の頃からソフトバンクのファンクラブに入っていたのに、なんとも運命の悪戯、ドラフト会議でライオンズがくじを当て入団しました。ソフトバンクに入団していたら9勝~10勝してもおかしくない逸材。なんとかライオンズの救世主になって貰いたいものです。

どんなに弱くても、おいらは寝返ったりはしませんよ...頑張れ!頑張れ!ライオンズ!

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お客様(ファン)は神様です!

2024/07/10
【第1915回】

連日の暑さ、若い頃旅したインド、モロッコ、スペインの暑さを想い出します。先ずはインドの暑さは半端じゃありません。すべてがインドの暑さに持っていかれる感覚です。生きていることがやっとの思いです。だって暑さで行倒れになり干からびた死体が街に転がっているんですから。混雑したバスに揺られ握り棒を握りしめぬるりとした異常さは今でも忘れられません。案の定、帰国後には同じ飛行機の乗り合わせた乗客から赤痢患者が出たということで、おいらも伝染病棟に15日間隔離されました。おいらのお腹は、何故か頑丈なのか鈍いのか?3種類の赤痢菌が侵入していたにもかかわらず何の異常もなくピンピンしており退屈極まりない入院生活でした。

モロッコの暑さは、アフリカ独特の熱を感じました。熱さというよりも虫との闘いの日々でした。一度刺されるとなかなか元に戻らず、寝ていても虫の存在を無視することが出来ず睡眠不足に陥ってしまいました。異国の地でマラリアなんかに感染して死んでしまうんじゃないかしら...まあ、そんなことも覚悟してのさすらい旅ですがね。

スペインの暑さは快適でした。勿論、湿気がないことが一番ですが、おいらの肌に一番合っているなと思いました。土地、人間に共感することもあって暑さも十分に共有することが出来ました。情熱の国スペインと良く言われますが、この国には多様性が有りひとくくりにすることは出来ません。そのなかでも、アンダルシア地方の人達のいい加減ななかにも逞しく日々生活をエンジョイする生き方に圧倒されました。彼らの根底に、生きていること、生かされていることに感謝の気持ちが根付いているに違いないと感じた次第です。

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アンダルシア サロブレーニャ村

2024/07/08
【第1914回】

都知事選挙終わりました。今回の選挙はイメージ選挙に終始したのではないかと思っています。要は立候補者もある意味で演じて見せないと伝わらないと思います。その点、当選した小池のオバサンはさすがの役者振りでした。無駄なことは一切喋らず、相手の挑発にも乗らずクールな笑顔で通しました。裏ではしっかりと自民、公明、国民民主党などと連携しながら表面に出さない戦術。次点の石丸デンキさんは、今時のSNSを最大限に駆使し政治不信に陥っている人達にフレッシュさをアピール、彼の役者振りもなかなかしたたかなものでした。いろんなステージを踏み台にしながら目指すところは権力の座ではなかろうか?一番下手な演者だったのがレンホーさん、国会で権力者を追及する恐いイメージをそのまま引き継ぎ、野党政治家と一緒に街頭演説したことで投票者は引いたのではなかろうか?

既存の政治は皆うんざりしているんですから、今回は政党色を出さない方が良かったのにと思います。

当選したオバサンも浮かれることなくしっかりと素敵な東京にしてくださいね。だって、全体の43%の信任なんですから...小池にぽちゃんと落ちないよう呉々も気をつけて都政の舵取りをやって貰いたいものです。

それにしても暑い!一歩外に出ればお風呂に浸かってる状態でございます。利便性を追求したツケが確実に地球滅亡への道に突き進んでいるような気がしてなりません。

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猛暑の中のバラ

2024/07/05
【第1913回】

このお二人はどんな関係なんだろう?京王新宿新線の改札口を出て左に進むと、定期券売り場とコインロッカーの間に挟まれた大きな柱が二人の愛のささやき場である。一週間に2度は見かける光景である。45歳前後のお二人、いつも手をしっかりと握り合い柱に寄りかかり見つめ合い恋する表情でべたついています。死角と言えば死角なのだが、同じ職場の人が通りかかることだってありそうなもん...なにもこんな公衆の面前で、いい年こいた男女が堂々といちゃつかなくともと思うのだが...それは日本人の保守的な思考かも知れませんな...好きであればどんなところであろうとも、堂々と愛の行為はするべし!しかし、この二人不倫の匂いプンプン匂ってきますね。普通だったら喫茶店、レストラン、ラブホテルなんてところが常識的な所だが、何故に柱の陰なのか?好きで好きでしょうがない!って所を他人に見せつけることによってより燃え上がる恋のランデブーなんでしょうか?片や、高校生の男女がすぐそばで別れ話をしていたり、新宿地下通りにはいくつものドラマが生まれています。やはり炎天下の元では様になりません。地下のほの暗い明るさの中がベストなんでしょう。

いよいよ、明後日が東京都知事七夕選挙。終盤になってあれやこれやとブラック情報も飛び交っています。この世の中、キツネとタヌキの化かし合いでございます。何が真実なのか見抜くチカラを日頃から磨いておかないととんでもない国になっちゃうこと間違いありません。表層的なことに左右されることなく、己が培った志、思考を信じ、深く冷静なる一票を投じて欲しいものでございます。

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ユリ
花言葉~純粋・甘美~

2024/07/03
【第1912回】

老害はあきまへん...先日、改札をPASMOで出ようとすると、おいらの前方に70歳前後のおじさんが立ちふさがったので、「こちらからは入れませんよ。」と言ったところ、「いや、こちらからしか入れないんだ!」と怖い顔で怒鳴ってきました。よく見るとカードではなく券売機で購入したチケットを何度も機械に入れようとしていたので、「隣の方から入れれば大丈夫ですよ。」と親切に教えてあげたのに「いや、ここからしか入れない!なに言っているんだ...」とまるで喧嘩を売るような又もや怒鳴り声で突っかかってきました。身なりもきちんとして一見常識がある人のようには見えたのですが、これ以上関わるととんでもないことにもなりかねないと思い、やんわりと立ち去りました。

いやいや、最近こんなみっともない年寄りが増えましたね。まず笑顔がない、いつも何だか知らないけど不満を貯金しているのか、ことあればそれを見ず知らずの人に吐き出すなんて、これまで歩んできた人生を台無しにしかねないことに良く遭遇します。

新宿も異国の旅行者で溢れかえっています。共通して言えることは皆、笑顔が美しい。目が合うとにっこり、こんなフレンドリーな人たちに会うとこちらまで嬉しくなっちゃいます。この点は日本人も見習ってほしいなと思います。日本人はシャイだからなんて言っていたらいつまでも国際社会から取り残されちゃいますよ...事実、日本の国力すべてにおいて下り坂。折角いろんな国の人達のいろんな顔、行動を観察できるんですからいいチャンスかもしれませんね。

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神田川

2024/07/01
【第1911回】

早や今年も半年過ぎてしまいました。今日から文月、むしむしジメジメから猛暑の季節となります。今年の元旦の能登半島地震は衝撃でした。この国の不安な未来を象徴するような出来事だったと思います。なのに、未だ復興ままならない状況が続いています。中でも断水が続いている地域、公費による家屋解体も申請の3%などなど、メディアで流される映像をみていても半年間何やっていたんだろうという惨状。人口の少ない能登半島にかこつけてやる気ない政権、裏金問題で一杯一杯の野党側を含めて言語道断と言いたい。

台湾の地震ではすでに解体も終了しているのに、この体たらく、能登半島の住民を棄民扱いにしていると言っても過言ではない。大阪万博なんかやっている場合じゃないでしょう。ここにかかる費用を能登半島の一日も早い復興費用に充てて欲しい。いまだ不評の大阪万博、所詮、大企業の利益に加担し強行しようとする姿勢が腹立たしい。

 来週の7日は東京都知事選挙。新宿をいつものようにぶらぶらしているんですが街頭演説に遭遇したことがございません。56人もの人が立候補しているのに何だか変ですね?勿論、多くの泡沫候補が居るのも関係しているのかもしれませんね。今回の選挙で、おいらが納得できないことが2つあります。まず現知事、今年実施された衆議院補欠選挙には乙武さん支援のため連日街頭に立っていたのに公務優先ということでほとんど街頭に出ないどころか、対立候補とのTV討論すべて拒否。政治家は自分の意見を喋ってなんぼの世界じゃないかしら。次は広島県安芸高田市の前市長だった方、一期務めただけで辞めてしまい市民の気持ちはいかがなものかと?そして彼は原発推進派であるという発言に大いに引っ掛かります。若い、勢いムードで判断するのも危険な気がします。

都民の皆さん、投票場に行き賢明な判断よろしくお願いしますね!

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又、来年お逢いしましょうネ

2024/06/28
【第1910回】

昨日はminiOn7公演「二十一時、宝来館」を観劇。On7(オンナナ)という集団は歴史ある新劇5団体(青年座、文学座、俳優座、演劇集団円、プロダクション・エコー)に所属している女優さん7人が2013年に結成した気鋭の集まりである。老舗大手の劇団の所属俳優の数は膨大である。俳優とは待つ仕事ではあるが、なかなか待っていてもそうそうやりたい役が来るとは限らない。そこで、面白い芝居を創りたい!新しい作家と演出家、そして仲間と体当たりで情熱ある場を創出したい!自らアクションを起こした7人の侍のごとく彼女たちに拍手を送ると同時に応援したい気持になるのはプロデューサーとしては至極当然である。

そんな彼女たちの勇気にほだされ、メンバーの中からトムの作品にも出演して頂いたこともある。この混迷した世界情勢の中、少しでもより良い世界にするには女性のチカラを借りるしかないと思っている。全ての分野において、どうしようもない思考低下に陥っている男どもが未だトップに君臨している現状を見るにつけ、そんな奴らを退場に追い込む行動力に期待しています。

ところで昨日の芝居の方はと言いますと、女性の作家(竹田モモコ)らしい作品でした。女性の心理を上手く捉えた作風を、演出・田村孝裕さんがテンポよく演出していました。日常おいらにも不可思議なオンナの恐ろしさ、切なさ、可愛らしさが随所に散りばめられていました。

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こんな時期に...

2024/06/26
【第1909回】

2019年の初演以来、今回の公演が4回目となる「風を打つ」の稽古が始まりました。

この作品は水俣病が公式に確認されてから68年過ぎても未だ苦しんでいる家族を描いた芝居です。

先日も環境省と水俣病の患者等の団体との懇談会で、被害を訴える発言中にマイクが切られるという由々しき事態が発生しました。国側が設定した3分の持ち時間を超えたと言う理由で...この国の政治、行政がすべてにおいて都合の悪いことは過去のこととして切り捨てようとする姿勢の表れです。そしてもう一つ、水俣病に限らず、環境破壊、汚染と分かりながらも社会を豊かにすることを優先し、それをしっかりと享受し繁栄に乗っかった国民のひとりひとりにも利害の当事者であることを忘れてはならないと思います。

沖縄の問題にしても然り、米軍基地のほとんどを沖縄に負担させ本土を守って貰いながら一向に沖縄米軍基地の分担を口にしない政府、都道府県。都合の悪いことは口チャックするか、もしくは無関心を装うという悪しき習性が残念ながら未だこの国に蔓延しています。

許せないこと、納得いかないこと、そして弱者を切り捨てるというもっとも卑劣なことに対しては徹底的に発言、行動していかなくては決して真の豊かな国にはなり得ないと思っています。

稽古初日の本読みも皆さん気合いが入っていました。我々は芝居という手段を通じて少しでも希望が持てる社会を形成できればと思っています。

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杉並区柏の宮公園

2024/06/24
【第1908回】

2023年、カンヌ国際映画祭コンペティション部門でグランプリ、アカデミー賞では国際長編映画賞を受賞した「関心領域」を鑑賞。冒頭から不穏な音楽が流れ黒い画面から一転し、緑に囲まれた川で水浴を楽しみ帰宅するアウシュビッツの所長ルドルフ・ヘス一家の幸せそうな様子が瀟洒な邸宅ともに映し出される。手入れが行き届いた見事な庭園に沿った壁の向こうには、灰色に覆い尽くされた建物が並び、高く聳える煙突から煙が立ち上っている。そして絶えず流れる不気味な音(収容所で日常的に行われているであろう看守の怒声、ユダヤ人の呻きなどなど)このノイズが、この映画の中で一切映し出されない収容者内部の悲惨な有様を想像させる展開になっている。

これまでにも、いくつものホロコーストに関する映画が描かれてきたが、今回の手法はなかなか手が込んでいる。この混迷する世界においても、いくつかの壁が取り除かれると共にあらゆる情報が飛び交い、それに飛びつき関心を示しているようには見えるが果たしてそうだろうか?情報過多の中で、ほとんどの人が見えない壁を作って自分に都合の悪いことに目を向けることなくシャットアウトしているのではなかろうか...

でも、新宿の映画館には意外と若い観客が詰めかけていた。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるガザへの攻撃、これらの現実に若者が自身の暮らしの外側で勃発している出来事に関心を向けている機運だと信じたい。

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まだまだ愛でてくださいね!

2024/06/21
【第1907回】

昨日は、新宿花園神社で新宿梁山泊第77回公演「おちょこの傘もつメリーポピンズ」を観劇。思えば半世紀前の状況劇場の紅テント以来、確かに紅テントから根津甚八、小林薫などを輩出してきたのだが、こうやってすでに各ジャンルで活躍している俳優がテントに一同に集まって競演するのは画期的なことではなかろうか...現代演劇、アングラ、商業演劇という垣根を取っ払っい、演劇の持つおもしろさを味わって貰う良い機会かも知れない。

中村勘九郎の明瞭な台詞回し、さすがに歌舞伎界で鍛えられた技量はなかなかのものである。劇中、花道から観客であるおいらに肩に手を掛けられ「お若いですか?」と問われたので「その通り!」と答えました。もう少し問答が続くと、おいらも昔取った杵柄、じゃあやってやろうじゃないかと思わず舞台に上がりそうでしたよ。

ニヒルを貫く豊川悦司、独白に情念を吹き込む寺島しのぶ、二幕登場いきなり颯爽とカラオケマンさながら歌いながら登場する風間杜夫、奇態ぶりを発揮する六平直政。キャスティングが上手くはまっていたのではなかろか。先日亡くなった唐十郎さんの作品がいろんな形で上演され唐さんもきっと喜んでいるに違いない。

終演後、杜夫ちゃんと軽く一杯。今年、後期高齢者になったばかりの75才もなんのその、舞台上の元気そのまま美味しそうにお酒を飲みながら話に花を咲かせておりました。

今年9月~10月に上演する新作、風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン ミッション・インポッシブル~牛山明、バンコクに死す~」が大いに楽しみである。

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新宿花園神社テント公演

2024/06/19
【第1906回】

飴屋法水著「たんぱく質」読了。この方、以前は唐十郎さんの状況劇場に在籍し、その後自ら劇団を創りアバンギャルド的作風を公演していました。おいらも何度か観に行ったのですが、なかなかおもろいことやっているなと言う印象を持っていました。なるほどこの本を読んでみてよく分かりました。

人間は水分を除けば半分近くがたんぱく質で出来ていて、この世に生息している動物、虫と成分的になんら変わることは無いのだが、死後他の生きものの栄養分にもならず焼くか埋めるしかできない生きもの。そんな生きものとして生まれた事に対する自分なりの考察を散文詩的に記した一冊だ。日常生活に現れるゴキブリ、何億年先に消滅するであろう地球や宇宙のこと、60数年生きてきて命の終わりを感じながら過去と未来を綴った84の断章。

どこの章も合理と不合理、自然と反自然、自由と不自由が交錯し、自分は一体何物なんだという思考を繰り返しながら...つまるところ、おのれは人間という動物であるたんぱく質だと位置づける。そして思考することが自分の宗教であり、果てしなく考え続けることしかないと...人間の業、悲しみ、怒りを見据えた祈りの書かも知れない。

本日、改正政治資金規正法が19日の参院本会議で可決・成立した。裏金の解明もままならず、抜け穴だらけの今回の法案、どんな顔して賛成票を投じたのか驚くばかりである。国民をなめ切った政治屋に鉄槌を下す時が来た!

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神田川

2024/06/17
【第1905回】

先週の週末は、長年博多での公演をバックアップしてくれた福岡シアタークラブの方々への御礼参りに行ってきました。大里、廣川さんを中心に立ち上げたシアタークラブ、16年間本当にありがとうございました。チケットの販売、公演当日の搬入、受付に至るまでみなさん家庭を抱えながらのボランティア。公演終了後はこちらも役者さんの相手をしなきゃいけないので、なかなかゆっくりとお話もできず申し訳ない気持ちで一杯でした。

そんなこともあり、一応の区切りということで皆さんと食事でもしながらお礼方々、想い出話に花を咲かせ、楽しい時間を過ごすことが出来ました。いつもながら芝居の終演後には、シアタークラブの皆さんには客席に残っていただき、出演者の皆さんとの交流も大変好評で次回公演の励みにもなりました。

演劇なんて余程興味が無ければ日常生活において無縁の世界かもしれません。そんななかトム・プロジェクトの芝居を観劇して「芝居って、こんなに面白いものなんだ!」なんて言ってくれる新しい観客が増えていく醍醐味も感じさせてくれました。博多は昔からお祭り大好き人間の集り、多くの芸能人を輩出するのも分かる気がします。

福岡シアタークラブの皆さんも、おいら同様歳を重ね今までみたいなフットワークで動くわけにはいかなくなりました。これからどういう形で博多公演を進めていくかまだ分かりませんが、その時は観客のひとりとして劇場にいらしてくださいね。

又、いつの日かお会いしましょう!

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福岡シアタークラブ発足時のポスター

2024/06/14
【第1904回】

七夕決戦...東京都知事選挙、風見鶏おばさんと舌鋒鋭い白スーツさんの戦いの火ぶたが切られました。風見鶏さんいつも世間受けするキャッチフレーズでラッパを吹くんですけど七つのゼロ公約も未だ実現できずにいるのに何となく言い訳言うてますな。神宮の森伐採問題もなんだか歯切れが悪い。再開発、もう止めましょうよ!大資本に寄り添うんじゃなくて弱者に寄り添ってちょうだいな。オリンピックだって終わってしまえば、見えない裏金騒動が明るみになり後味悪い結果になりましたね。最初の選挙時は反自民の旗をかざしながら勝利したのですが、当選したら風見鶏の本性が出ましたね。

一方、白スーツさん、当選した後が大変ですね。議会のほとんどが都民ファースト、自民、公明。この巨大な組織にどう対峙していくのか?至難の業でございます。それにしても50人超える立候補予定者。街に早々と設置された掲示板、急遽増設しているみたいです。おなじみの発明家ドクター中松(95歳)8度目の挑戦、あのねのねの清水国明などなど、なかでもおいらが注目しているのが広島県安芸高田市市長だった石丸伸二氏。故郷・安芸高田市の前市長が参院選広島選挙区の大規模買収事件に関わったとして辞職。しかし後任として立候補を表明したのは一人だけ。それも前市長が後を託した当時の副市長のみ。そのニュースに強い危機感を覚えた石丸さんは「世界で一番住みたいと思えるまち」を公約に出馬を決意し、なんと翌日に会社への退職願を提出。投票日の1ヶ月前に準備なく出馬を決めたにもかかわらず、多くの市民の支持を得て当選。

こんな人たちの出現が沈没しかかった日本を救ってくれるのかもしれませんね。既存の政治家の既得権死守だらけの政治は、もううんざりでございます。そして、なによりも良識ある有権者にあっぱれ!

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ガクアジサイ 
花言葉~謙虚~

2024/06/12
【第1903回】

昨日は墨田区にある、すみだパークシアター倉での公演、劇団桟敷童子「阿保ノ記」を観劇。その昔、人柱・生贄専門に育てられた子供たちを、死後は神様と共に平穏に暮らしていけると信じこまされ民衆のために死んで行けと教えられていたそうだ。そんな民話、民間信仰を題材に、いつものような手作りの装置、衣装、小道具を駆使しながら東憲司ワールード満載の芝居でした。東君の描く世界は、いつも底辺に蠢く民衆の哀歓である。芝居のスタイルも決して上目線ではなく、大地にしっかりと根を張った生活者の心からの叫びである。

テント芝居ではないが、劇場に入るなり観客も芝居に登場する民衆のひとりであることを意識させ、ドラマの進行とともにいやが上にも感情移入せざるを得なくなる。

いつもながら劇団員の真摯な演技に清さを感じる。客演である音無美紀子さんも桟敷童子のカラーに染まりながらも、彼女の持ち味を十分に発揮したさすがの芝居でした。

座長自らのぼりを持ちながら入り口でのお客の案内、創立メンバーの一人である原口健太郎君も出番があるにも関らず同様にお客様の接待。こんなところにこの劇団の志の一片を感じる。

ライオンズ先月に続いての8連敗。昨日の最終回、一打同点のシーンでキャップテンである源田選手がファーストゴロで必死のヘッドスライディングもアウトで敗戦。源田選手立ち上がれず、先発ピッチャーである今井投手が駆けより共に涙。いやいや、今のライオンズの打線では監督が代わっても無理です。フロント、監督、コーチすべて抜本的な変革がない限り強いライオンズの復活は夢のまた夢でございましょう...でも、ファンはありがたいものです最後まで熱い声援、これを感じない選手は即退場願いたいものですね。

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劇場の近くの公園から

2024/06/10
【第1902回】

先週の土曜日は下北沢駅前劇場で劇団チョコレートケーキ「白き山」を観てきました。この芝居の主人公である歌人斎藤茂吉は村井國夫さんが演じる予定でした。芝居の稽古が始まって間もなく体調不良ということで降板することになりました。

急遽、緒方晋さんが演じることになり、おいらも何とか無事に初日が開くことを願っていました。観終わって思ったことは、この緊急事態でスタッフ、キャストの結束力がより強固になりいい芝居に仕上がっていました。生の芝居の恐いところは、いつどんなことが起きるかわからない中、既に決まっている日程を動かせないことです。最悪のケースは公演中止、それに伴う経費の支出は制作者が負担することになり、勿論キャスト、スタッフの皆さんにも影響が及んでしまいます。コロナ禍での公演は日々、その恐怖に晒されながらの稽古、本番の連続でした。

劇団チョコレートは過去にも歴史に基づいた人物、事象にフォーカスをあて多くの作品を上演してきました。その成果はいくつもの演劇賞を受賞していることで実証済みです。こんな時代だからこそ、過去の歴史を踏まえ未来への希望に昇華させていくことも演劇の重要な要素だと思います。

観劇後の下北沢の街は若者で溢れていました。多くの劇場、古着屋、飲食店、どこもラッシュ状態。後期高齢者はなかなかいませんな...おいらはそんなこともへっちゃらでございます。あっちゃこっちゃ覗きながら最後はjazz喫茶「はやし」で赤ワインとハヤシライスで締めました。

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jazz喫茶はやし

2024/06/07
【第1901回】

昨日は王子にある北とぴあペガサスホールに行ってきました。この北とぴあは懐かしいです。2000年に風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン」を上演しました。あれから24年の歳月が経ったと思うだけで感慨深いものがあります。よくまあ続いたもんだと、改めてトム・プロジェクトに関わった人たちに感謝と共に、飽きっぽいと同時に、魑魅魍魎の芸能世界でおいらが良く我慢してやってこれたことに感心しております。でも、やはり決め手は芝居が好きだったんでしょうね。好きなことは少々嫌なことがあってもやれるもんです。

さて昨日の芝居、劇団印象の主宰者である鈴木アツト作・演出による「3℃の飯より君が好き」。出演者はトム所属の滝沢花野と、トムの公演にも何度か出演してもらった向井康起。

仕事から帰って来た妻、これから夜勤の交通警備に向かう夫が織りなす奇妙なやり取りが、この不穏な時代にマッチしているように思えた。不自然と思えば不自然なんだが、不条理、不自然がまかり通る現世だからこそ、妻の妊娠したお腹が凍るのも、夫の勃起したおちんちんが凍結するのもあり得ない世界として捉えることが出来てしまう。何よりも、滝沢さん、向井君の素直でリアルな演技が素敵でした。

裏金問題で端を発した政治資金規正法改正案、衆議院で賛成多数で可決されました。国民を置き去り無視した自民党、公明党、維新の政党の資質を問われる大問題だと思います。あんな姑息なこと時間が経てば忘れるだろうなんて驕り昂ぶる議員を辞めさせるには選挙でしかありません。商人に近い政治屋を選んでしまうと、今なお浮上しない沈没ニッポンが完全に沈没しちゃいますよ皆の衆。

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落日

2024/06/05
【第1900回】

劇団東京乾電池アトリエ公演、柴田鷹雄出演による「風のセールスマン」観劇。この芝居はトム・プロジェクトで2009年に柄本明ひとり芝居で上演した作品です。柄本さんとは若い頃からの知り合いで、2002年には山崎哲作・演出「また、あした」で大久保鷹さんとの二人芝居に出演していただきました。2003年にはひとり芝居「煙草の害について」でロシア公演も実現させました。

柄本さんと酒を酌み交わすたびに、「別役実さんの戯曲でひとり芝居やれたらな...」なんて話から、おいらが別役さんに頼み込み実現したのが「風のセールスマン」でした。日本の不条理演劇の第一人者である別役さんは、怪優柄本明の個性を上手くとらえ見事な作品に仕上げてくれました。紀伊國屋ホールでの公演は連日満員の客で、柄本明という俳優の魅力を十分に堪能していました。可笑しさ、哀しさ、狂気、しがないサラリーマンの哀歓を柄本流演劇スタイルで、舞台上を所狭しと躍動していました。

今回の東京乾電池の若手俳優である柴田さんも大健闘していました。この戯曲を自分のものにするなんてことは至難の業だと思います。今回は柄本さんが演出を担当し、とことん追い込みながら創り込んだのではなかろうか...終演後の座長柄本明は?「俺、もう一回やってみようかな...」改めて戯曲が持つ圧倒的な魅力に、再チャレンジの気持ちが沸々と込み上げて来たのではなかろうか?

役者にとって生涯を通して「この戯曲は誰にも渡したくない!」なんてことは、そうそうあるものではございません。この「風のセールスマン」こそ舞台役者としての柄本明の唯一無二の作品に違いない。

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水無月の道

2024/06/03
【第1899回】

先週の金曜日は隅田川沿いにある柳橋のルーサイトシアターで、鳥山昌克さんのひとり語り芝居「高野聖」を観劇。幻想文学の巨匠泉鏡花27歳時の代表作です。旅する修行僧が、飛騨の奥深い山中で出会った艶めかしい婦人との、奇妙な怖い体験を語った幻想小説。山中の情景描写が美しく、まるでその場にタイムスリップしたような感覚になり、日常から非日常に誘われる感覚が心地よい。しかしその一方、患部に触れると人の病が軽くなる、息を吹きかけた人を動物にしてしまう等の特殊能力をもつ婦人の不思議な力に魔性を感じる恐ろしさを感じてしまいます。

この作品を選択した鳥山さん、師匠である唐十郎さんの影響が大いに影響していると思います。理性では決して解決できない感覚、官能の世界に生き物の本質を見出さそうとする作家に魅入られてしまう役者が己の肉体で具現化しようとするさまがとてもスリリングでした。

このルーサイトシアタは昭和初期に活躍した芸者歌手、市丸さんが住んでいた場所でもありました。芝居の最中に隅田川を行き来する屋形船、その上を走る総武線の車両と音、それを取り込んで進行するドラマは、まさしく幻想と現実世界が交差するなかなか味わえない時空間でございました。鳥山さんが隅田川を眺める横顔がとっても素敵でした。

この貴重な場での次回公演、楽しみにしています。

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ルーサイトシアターからの眺望

2024/05/31
【第1898回】

我が故郷博多に帰ったときの楽しみのひとつは、海の幸山の幸に恵まれた食材をふんだんに使って提供してくれる居酒屋に顔を出す事です。その中でも飛びっきり新鮮な魚と、選び抜かれたお酒を出してくれる「さきと」の大将が亡くなった手紙が昨日届きました。令和4年4月に店を閉め1年10ヶ月の闘病生活を経ての生涯でした。12席のカウンターだけのお店で、大将が毎日市場で仕入れた活きの良い魚を捌く姿を見ながら、所狭しと並べられた銘酒を片手に舌鼓を打つなんてことが出来なくなったことが本当に寂しい。

勿論、食の良さは当然ながら店主の佇まいも大切な要素になってくる。カウンターを挟んでの微妙な距離感、無愛想でも拙いし、こちらの空気も読まないでずかずかと入り込んでのお喋りもうるさいし、そこはお店のカラーを決定づける。「さきと」の大将、松本さんはその辺のセンスは抜群でした。馴染みのお客も新しいお客も皆同等に対し、気持ちよい時間を過ごさせてくれました。トム・プロジェクト博多公演の時に出演者も何人か連れて行きましたが皆「こんなうまい魚食べたことない!」と絶賛しておりました。

この店に通う前には「たらふくまんま」に顔を出していました。ここの大将、菊池さんの食に対するこだわりは大変なものがありました。その魅力はうまいだけではなく、職人でありながらも、スタッフ教育、ホスピタリティにも長けたすばらしきプロデューサーでもありました。その菊池さんも2013年に亡くなり、今は奥さん、娘さん夫婦で「女とみそ汁」という名前で営業しています。

こんな店が東京にもあればいいなと思いながら、今日も居酒屋探訪をする日々でございます。

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五月最後の夕暮れの匂い

2024/05/29
【第1897回】

一昨日、今年9月から10月にかけて上演する新作、風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン ミション:インポッシブル」牛山明、バンコクに死す!のチラシ、ポスターの写真撮りをしました。カラオケマンシリーズ初の海外編、75歳になった牛山明がバンコクに行って何をしでかすか?大変興味あるドラマになりそう写真撮りでございました。サービス精神満点の杜夫ちゃん、いろんな姿に変身し、喜怒哀楽満載の表情をしながら奮闘してくれました。どの表情も様になりさすが千両役者、撮影現場にいたスタッフも爆笑の渦、早くも今回の芝居、始まり始まりてな感じでした。

この直後も、6月に幕が開く新宿梁山泊テント芝居のパンフレット用の写真撮影の予定が入っているとのこと。テント芝居初登場の歌舞伎役者中村勘九郎、豊川悦司、寺島しのぶとの共演も興味あるところ。今年、後期高齢者の仲間入りしたにもかかわらず精力的に舞台出演が決まっている杜夫ちゃんのエネルギーたいしたもんでございます。芝居を愛し、酒を嗜み、劇場に来てくれたお客様にベストな演技で答える愛すべき役者ですね。

いつも撮影で使わせている野澤写真館は西荻窪にあります。骨とう品屋、古書店、粋なレストランなどなど玄人好みのこじゃれた街です。おいらが好きなジャズ喫茶ユハもあります。

やはり街は小ぶりが一番ですね。何事も肥大化するとつまらなくなってしまいます。ニンゲンサイズであることの意味を忘れちゃなりません。少し小路に入れば、予期せぬお店に出逢い今日一日を幸せで心地よい時間にさせてくれます。

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タチアオイ

2024/05/27
【第1896回】

いやいやライオンズの監督変わってしまいましたね。昨日、一昨日と見事な逆転劇でベンチ内はお祭り騒ぎでございました。さあこれから行くぞ!てな感じに思えましたが、さすがにこの成績では誰かが責任とらなきゃファンは納得しませんね。先週もふらりとベルーナドームに散歩がてら覗きに行ったのですが、ライオンズのエース今井の先発なのにロッテ相手に一回の表、早々と5点先取され5回が終了した時点で球場を後にしました。それにしても打てない、作戦はちぐはぐ、これでは観る価値がないとおもってしまう試合ばかりです。

おいらも70年に渡るライオンズ一筋のファンですが、池永投手が永久追放された黒い霧事件、その後のクラウンライター、太平洋クラブという名称に変わって以来の弱小チームになってしまいました。

今回の件も松井監督ばかりのせいではありません。お金が無いのはわかりますが、フロントさん少しは気の効いた補強をしなさい!と言いたい。連れてくる外人もモノにならない選手ばかりで毎年期待はずれ。なにもかもゆるゆる、昨日、逆転打を放った蛭間選手みたいなプレーヤーが増えない限りライオンズの未来は見えてきません。いつまでたっても結果を出せない外野手の面々、レギュラーを張るにはみんなあと一歩!ってカンジのドングリーズ。もう何年こんな屈辱的な呼び名をされてるの?悔しかったら泥まみれになって練習して見返すぐらいの根性見せてくれんと野球人生終っちゃいますよ。

それにしても、スター選手もそんなに居ない日ハム、ロッテ両チームが金満ソフトバンク相手に頑張ってますね...明日からは交流戦、ライオンズは勿論、おもろい試合期待してまっせ!

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こんな季節がやって来ました

2024/05/24
【第1895回】

柚月裕子著「風に立つ」読了。補導委託(問題を起こし家裁に送られてきた少年を、一定期間預かる制度)を家族に相談せずに引き受けた父に対して、反発する息子。
しかし、委託された少年との生活が始まると共に、その委託先である父や周辺の人との関わりがきっかけとなり、父との関係を見つめ直すことになる。委託された少年も家族との関係に悩んでおり、それと重なるように委託先の息子の葛藤がリアルに描かれる。現代社会の縮図でもある家族問題をテーマにしているのだが、今ひとつかな?
新聞に連載された小説を一冊の単行本にするとこうなるのかなという良い例かもしれない。作家も全体の構想はあるものの、日々の連載だとブツ切れになってしまう可能性が強い。読み手もなんだかだらだらとページをめくって、いつドラマの核心がくるのやらとテンションが下がってくる。と言っても、きらりと光る言葉は随所に散りばめられてはいる。ミステリー大賞他、いくつかの賞を受賞している実績ある作家であることには違いない。

限られた時間の中、何を選択するか?いや何を選択したかが重要になってくる。まだまだ読みたい本は山ほどあるのだが、なにせ残された時間はそんなにあるわけではない。なにはともわれ何事もかかわった以上、何かしら琴線に触れる言葉がないか探求心だけは忘れないようにしている。作家だって命を削って創作しているに違いないし、その姿勢にはいつも真摯に向き合っていたいと思っている。
今年はマンションの中庭のカスケードにカルガモの赤ちゃんが無事誕生した。このところ度重なるカラスの飛来によりカルガモ親子も警戒していたのだが、先日の巣の撤去により一安心したに違いない。誕生したばかりの子ガモが無事成長するのを願うばかりだ。

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カルガモ親子

2024/05/22
【第1894回】

新宿は相変わらずカオスの町でございます。花園神社でのテント芝居を観劇後、久しぶりに怪しい歌舞伎町を探索したのですが、まさしくいろんな国の人が入り乱れ、ホストクラブ、ガールーズバー、ぼったくりバーの客引きが路上に溢れかえっていました。今日もほいほい乗っかって、とてつもない料金を要求され泣き泣き新宿の街を後にする人が居るに違いありません。以前にも増して黒人の客引きが多いのには驚きました。彼らのバックには恐い組織が今尚存在し抜き差しならない関係になってしまうんではないかしらと心配してしまいます。

そんななか、ヒモで土俵を作りカンパ箱をおいて相撲興行を行っている集団がいました。この光景にびっくりした外人観光客が取り囲み、次から次に飛び入りで勝負を挑むのだがなかなか勝てません。今日の主役である彼はおそらくどこかの相撲部の一員に違いありません。大きな外人相手にビクトもしない強靱な身体をしていました。

30年前にも、今は無き歌舞伎町コマ劇場前広場で殴られ役を買って出る元ボクサーが居ました。「私が歌舞伎町の殴られ屋です!一分間、千円で殴り放題!どうぞ私を殴ってストレスを解消していって下さい」何人もの男がチャレンジするのだが相手はプロですから上手にかわし、なかなか倒すことはできません。でも、時折自信たっぷりの強者も登場しボコボコにされそうになったこともありました。

そんな広場も、今では通称「トー横」。自分の居場所がないという家庭での虐待や学校でのいじめなどに悩む10代の子供たちのたまり場になっています。ここから又、いろんなドラマが生まれるに違いありません...転落の道を辿るのか、ここを足場に人として成長していくのか、とにかく欲望に塗れた街には違いありません。

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歌舞伎町のパフォーマンス

2024/05/20
【第1893回】

ワンちゃんのご主人様を待つ姿がなんとも微笑ましい。ニンゲン世界は魑魅魍魎、憎悪が拡散し争いから戦争という惨たらしい時間が今尚繰り広げられています。こんな不毛の時代で唯一癒されるのが野に咲く花であったり、悠然と聳え立つ樹木であったり、小動物だったり...中には人間に害を及ぼす生き物もいますが、地球は人間だけのものじゃありませんから当然のことながら生きる権利はあると思います。

我が家のマンションの中庭にある樹木にカラスが巣を作り、子育てのデリケートな時期と重なり住民を襲ったこともあり、懸命に作り上げた巣が撤去されました。日毎、ベランダからつがいのカラスが飛びまわる様を見ていたおいらも複雑な思いです。カラスだって種族を残すための必死な戦いだったと思います。監視のため頻繁に飛来するカラスの行動を目のあたりにして過ごした日々が何となく懐かしい。この感情も考えてみればニンゲンの勝手な思い込みに違いない。

野の花だって何もニンゲンを喜ばすために花を咲かせているとは思いません。ただ自然界の秩序に乗っかって淡々と生きているだけ。でも同じ地球上に共生しているニンゲンが感謝の気持ちを抱くだけで、この世界は平和の輪が広がるに違いありません。何事も愛しむ気持ちが大切だと思います...身のまわりにどれだけ愛しむものを見つけ感じることができるかが穏やかな日々の尺度。何事も心優しい目線で過ごしたいものです。

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まだかな?

2024/05/17
【第1892回】

城山三郎著「指揮官たちの特攻~幸福は花びらの如ごとく~」読了。城山三郎さんは気骨ある作家である。紫綬褒章の知らせを聞いた時に、「僕は、戦争で国家に裏切られたという思いがある。だから国家がくれるものを、ありがとうございます、と素直に受け取る気にはなれないんだよ」。そう言って辞退しました。

今回の本は城山さんの面目躍如たる作品である。昭和19年10月25日、最初の特攻隊としてレイテ島沖で米艦隊に突撃した関行男大尉と、翌20年8月15日夕刻、敗戦の事実を知らされないまま沖縄へと飛び立ち、そのまま還らぬ人となった中津留達雄大尉の二人の海軍兵学校卒業生を中心に、彼らが特攻機に乗ることになった経緯と、彼らの生い立ち、人となり、家族のその後などが語られる。本人も終戦直前に大日本帝国海軍に入隊し上官による理不尽な暴力と虐めにあい、戦争と軍隊に対する怒りがその後の著作に色濃く記されている。敗戦間近にもかかわらず次々と開発される安直な特攻兵器を前にして「きさまらの、代わりは一厘五銭で、いくらでも来る」とうそぶく上官、当時の海軍内部の荒廃ぶりには只々呆れるばかりだ。

作家としてだけではなく、一人の人間として晩年は言論の自由を封殺するとして「個人情報保護法」に反対を唱え、自らの戦争体験を振り返って社会の変貌に警鐘を鳴らそうとした。

自衛隊の海外派遣に対しても「日本の自衛隊は国民を守る組織であり、人を殺傷する機関ではない」と危惧を示した。

世界がまさしく第三次世界大戦を予兆させる現状において、改めて城山三郎作品の重みをひしひしと感じる。

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この時期に?

2024/05/15
【第1891回】

一昨日、唐十郎さんの通夜に行って来ました。安らかなお顔でした...唐さんにとっての演劇は己の魂を賭けた遊びでもあり、それまで劇場という空間、そして演技をするための知的、肉体的な鍛錬に異を唱えるためのアングラテント芝居だった。いつの時代でも、支配階級が底辺の民に強いる差別に対し演劇という手法を通じて抵抗する手段でもありました。布一枚で隔てるテントは非日常と日常が瞬時に入れ替わる夢とロマンの時間でもあった。

日本国内のみならず戒厳令下の韓国、難民キャンプシリア、カオスのバングラデシュ、レバノン公演を遂行したのも社会に見捨てられた人たちへの限りない愛だと思う。

東京都の命令に逆らい、新宿西口公園での公演はおいらも現場に居ました。機動隊に逮捕され連行される唐さんの不敵な面構えは今でも記憶にあります。なにせ押し付け事が大嫌いなききわけのない童心が生涯宿っていたに違いありません。

日本の国力が貧弱になりつつある今こそ、冒険者でありロマンチストである唐さんみたいな人物が出てきて欲しいと思うのだが、なかなか難しいかな?でも一度きりの人生、己が願望していた諸々、試しもせず死んでしまうなんて悲しいとは思いません...

5月も中盤、朝晩と昼間の温度差がありすぎて体調不安定。そんなときは散歩に限ります。今日も5月のアンネのバラが咲き誇っていました。風雨に晒されながらも不屈の生命力で繰り返し花咲かす植物に癒され圧倒されてしまう今日この頃でございます。

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平和を願って
(アンネのバラ)

2024/05/13
【第1890回】

先週の土曜日、新宿花園神社にて唐組・第73回公演「泥人魚」を観劇。開演45分前には紅テントの前には多くの人で賑わっていた。いつみても花園神社の紅テントはこの地に一番似つかわしい。新緑映えるこの時期の公演は、何故か観劇前から心躍る気分にさせてくれる。今回の芝居は2003年度の初演以来、実に21年振りの公演である。ドラマの原型は1997年有明海諫早湾が全長7キロに及ぶ鉄板により閉鎖された事件である。映像で観たまるでギロチンさながらの光景はショッキングであった。これにより、この遠浅の干潟に生息するムツゴロウ、ウラスボなどが瀕死の状態に陥った...この一連の事件を唐さんの壮大な妄想を駆使して芝居に仕立て上げたのが「泥人魚」。

詰め詰めで満杯になったテントのなかでいよいよ開幕。看板役者が登場する度に声が掛かるのはいつもの通りだが、唐!の声が聞けないのがとても寂しい。でも唐組の座員の気持の入った演技はいつ見ても清々しい。芝居は元々、ひとりひとりの手作り、つまりローテクを駆使して創りあげるものであることを教えてくれる。どんな綺麗な照明よりも、きらびやかな衣装よりも、お金を掛けた音響装置よりも、人間の肌合いを身近に感じるすべてが心地よい。

時代はより人工的に、より利便性を追求しながら突き進んでいます。もういい加減、自然志向に戻りませんかと発言しても少数意見でしかない世の中になってしまいました。そんな時代だからこそテント芝居、これからの生きるヒントになるに違いありません。

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紅テント

2024/05/09
【第1889回】

5月5日に今年初めてベルーナドームに行ってきました。ソフトバンクとの一戦、見事に負けてしまいました。この日は子供の日ということもあって多くのチビッ子ファンが熱い声援を送っていました。子供限定でグローブも配布し、いつまでもライオンズのファンであって欲しいとの願いも虚しく無様な敗戦でした。そりゃそうだよね、ライオンズには3割バッター皆無、3番バッターがなんと1割台の打者なんですからね。相手のチームは3割バッターがゾロゾロ、そりゃ勝負になりません。監督の采配もちぐはぐ、凡打しても悔しがらない選手を見せられたんじゃ、満員のファンもガッカリです。ここ数年で最悪のシーズンになりそうだし、その後数年暗黒の時代が来そうな予感さえしてしまいます。

昔、強かったころのライオンズを知るファンにとってはなんとも寂しい限りです。ここまで来たら監督コーチを変えなきゃとんでもない借金を抱えた結果になると思います。チームのフロントも然り、もっと言えばどこかの企業に身売りなんてことも考えねばなりません。

やはりある程度お金を掛けなきゃ強いチームにはできないと思うけど、資金が無くても広島カープなんてチームは地元に愛され続けながら人気を保っています。

今の勢いでは、パリーグはソフトバンクのぶっちぎり優勝。セリーグはどのチームも優勝の可能性がある面白い展開。まだ5月というのにライオンズは白旗掲げるのもみっともないし、少しでもファンをワクワクさせる戦いをやって欲しいと思っています。

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フレ!フレ!ライオンズ

2024/05/07
【第1888回】

唐十郎さんが亡くなりました。トム・プロジェクトでも2本、作・演出して創っていただきました。稽古中、そして酒場で一緒に過ごした時間が懐かしいです。いつも少年のような瞳で語り掛けてくる言葉が、現世を見つめながらどこか見知らぬ時空間に誘ってくれる不思議な人でした。唐さんの描く世界の主人公はいつも底辺に蠢く市井の人でした。唐さんが幼少の頃、下谷万年町で出会ったいかがわしくも心根の優しい庶民の姿が戯曲を書くきっかけになったに違いありません。

おいらが上京して頭をぶん殴られたのが、1967年8月、新宿花園神社境内に紅テントを建て、『腰巻お仙 -義理人情いろはにほへと篇』を観た時だ。なんだこれは!唐さんはじめ、麿赤児、四谷シモン、大久保鷹、不破万作などなど得体のしれない役者群が紅テント内で観客をかどわかしながら縦横無尽に暴れまくっていました。まさしく特権的肉体論、役者の沸き上がる身体を通して言葉を生み出していく手法に唖然とした記憶があります。

こんな世界に身をゆだねたい...そんなこんなで演劇の世界に身を投じた次第です。

唐さんが演劇に託した想いは、その後いろんな人達が継承し演劇というフィールドをダイナミックに展開していったことは紛れもない事実です。

唐さんお疲れさまでした...ゆっくり休んでくださいね!と言いたいところですが唐さんのことですからあの世でまた暴れまくっているに違いありませんね。

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早く取りに来てネ

2024/05/02
【第1887回】

太宰治賞2022年受賞作・野々井透著「棕櫚を燃やす」読了。久しぶりに文学っていいなと素直に思いました。淡々と過ぎていく父と娘二人の会話が繰り返される小説なのだが、周りの風景と三人の心情が寂しさ、切なさ、孤独感を超越して他の何よりも温かく愛を感じさせていく言葉の選択がまさしく文学。
時折出てくる「むるむる」という擬音語。これだけ言葉を選びながら、尚表現できない言葉を身体感覚として表現したかったのだろうか...余命幾ばくもない父の姿を、まるごと自分のこととして語る主人公に深い悲しみと祈りを感じる。
小説を読みながら、バックにフランス室内楽作曲家フォーレ、ドビッシーの曲が流れてくるような不思議な読書体験でした。
「からだを洗う女のひとたちは、湯上がりのひとたちよりも、どこか寂し気で孤独に見えた。自分の髪やからだを洗う姿は、叶わないなにかを願うような姿に似ていて、湯気の中にその想いが浮いているようだった。」
日常の中に淡々と流れる命を感情に溺れることなく、慈しみながら遙か遠い宇宙から映し出しているかのようにも思えてくる文章だ。
明日から後半のGW。天気も良好、リフレッシュするには最適な時かも知れませんね。

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5月5日には泳ぎますからね...

2024/04/30
【第1886回】

GW前半終了、どこに行っても車と人だかり、こんな時は近場でのんびりしているのがベストです。日比谷シャンテで「落下の解剖学」観てきました。なんだか難しい医学的な映画かなと思いますが、人間の心理を愛情とエゴを交えて巧みに描き切ったドラマです。視覚障害の子供への愛情と悔恨、夫婦間に生ずる微妙な誤解とずれ、その描き方が実にリアル、そして緻密に描かれる。そして夫の死を巡って(落下死)のスリリングな裁判劇。判決は下されるのだが真実は観客の想像に任せられる...この映画に登場する犬の表情が、この作品のヒントにもなっているところがなんともフランス映画らしい。映画を観ているというかなんだか芝居を観てる感じがしてくるのも、ひとえに脚本のすばらしさだと思う。

主人公を演じた女優サンドラ・ヒュラーの複雑で陰のある演技がこのドラマをより一層、緊張感と繊細さを生み出している。けっして美人とは言えないのだが、この人の内面からあふれる姿を見ているうちに、ひとりの女性の健気で強靭な意志力でついつい彼女に寄り添っていくおいらもまさしくこの映画に乗せられた一人でございました。

衆議院議員補欠選挙、予想通り自民党にお灸がすえられました。一時的なお灸では、またまた権力はあの手この手を使って復活してまいります。この機会に、しっかりとお目覚めしないとこの国は間違いなく滅びの道を歩んで行ってしまいますよ。

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日比谷のゴジラ

2024/04/26
【第1885回】

東京の街は異国の人で溢れかえっています...世界一の乗降客を誇る新宿の街も相変わらず多民族の人たちでラッシュ状態です。新宿で最もディープな場所である西口の「思い出横丁」歌舞伎町の「新宿ゴールデン街」なんかはカメラを手にして、戦後闇市そのままを残した風景を我先にと撮りまくっています。勿論、お店の中も外人だらけ、埃にまみれた焼き鳥をおいしそうに食べていました。何せ円安ですから、この時ばかりと...ニューヨークではラーメン¥3000するんですから、彼らにとっては食の天国に来たようなもんです。新宿に店舗を構えるあの天然とんこつラーメン「一蘭」の前には長蛇の列。おいらはあの値段と食感がどうしても納得できず駄目ですな。「一風堂」然り、博多で生まれ育った者としては、ラーメンブームの便乗した商売のやり方に大いに不満でございます。博多に帰って食べるラーメンは「膳」に決めています。豪快でありながらも滑らかな風味、麺は小麦の美味しさを活かしたオリジナル、タレ、チャーシューは自家製。そのうえゴマはかけ放題、にんにくも丸ごと潰し放題、それでなんと¥320!物価高で悲鳴をあげている昨今、ラーメンの神様が降臨した思いです。やればできるじゃないですか...2050年には日本の人口なんと3300万人減少するそうです。その先はと考えると、この国、もしかすると異国の人たちに雇われる形態になっているかもしれません。目先のことばかり考えないで将来を見据えた商いしないととんでもないことになっちゃうかもしれませんね。

新宿南口駅前の通路は、ストリートミュージシャンで溢れかえっています。何故か外国人旅行客は立ち止まりません。そういえば、外国ではごく自然な風景ですから...

明日からGW、どこに行っても人の波。近場でのんびりするに限ります。

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明日を夢見て

2024/04/24
【第1884回】

やれ桜だ、それに便乗しての酒宴。なにかと春のこの時期は喧噪の日々である。そんななか、今日みたいにしとしとと雨降る日が訪れると心和いでしまいます。そんな日は、家に閉じこもり好きな曲を流し読書三昧なんてのがピッタリでございます。

トルド・グフタフセン、ノルウェー生まれのピアニストで、瞬時に落ち着きと満足感をもたらす効果があります。沈黙から北欧の風景を連想させる音の連続は、何もありそうもない別の空間に連れて行かれそうな時間を生み出し、読書の程よい味付けをしてくれます。

日本にもファンが多いピアニスト、キース・ジャレットにも通じるものがあるのだが、やはり生まれ育った北欧の音色を強烈に感じます。彼のタッチ、鋭い旋律センス、そして彼の惜しみない美学は、ともにプレーしている仲間にもしっかりと共有されており、ベースとドラムの刻む時間が彼の世界を一段とスケールアップさせています。

それにしても最近はアマゾン、スポティファイなんかで良質な音楽を聞いちゃうと、ついついCDを買おうかなんて良からぬ欲望が頭をもたげます。もうこの歳になると断捨離を考えなきゃいけないのに困ったもんでございます。モノを増やすな!出来るだけ捨てろ!と常日頃こんなお題目を唱えながらも、やはり手元のジャケットからCDを取り出し音を呼び込む儀式があってこそのマイソングだと頑なな心情が邪魔しちゃいます...でも、やはりほどほどにしないと後始末が大変ですから。

明日から猛暑の始まりとか、どんな未来が待ち受けていることやら全く予測不能でございます。

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どこに巣を作ろうかな?

2024/04/22
【第1883回】

先週の土曜日、中野テアトルBONBONで「明日になれば」を観劇。トムでもお馴染みの、ふたくちつよしさんの作品です。桐朋学園で同級生だった俳優、磯部勉さんの家族のためにと心温まる芝居に仕上がっていました。劇中でも磯部さん夫婦、そして一人娘さんがそのまま家族役で出演しているのですから、そのまま実生活を覗き見している感じがしました。

ふたくち作品らしく、劇中お茶を差し出すタイミングが実に微妙且つ適格、こんなところなんぞは映画界の名匠小津安二郎の世界を彷彿とさせてくれます。

芝居は前半から笑いの連続、ギャグで笑いを取るのではなく、役者同士の台詞のやり取り芝居の内容での笑いなので心地よい。芝居での笑いの質はとても大切であり、作品のクオリティーにおおいに関係してきます。笑いほど難しいジャンルはないと思います。品のないギャグ連発の芝居を観せられた苦い経験も多々あります。喜劇を演じられる役者はリアルな芝居もものの見事にこなしてくれます。今は亡き名喜劇役者伴淳三郎さんが内田吐夢監督の映画「飢餓海峡」で演じた刑事のシリアスな役は今でも記憶に残っています。笑いの中に潜む人の悲しさ苦悩を、実人生の中で獲得したに違いありません。主演の三国連太郎さんの名演技も彼の波乱万丈の生き方がそのまま白いスクリーンに映し出されているようでした。

厚生労働省は、新型コロナウイルスのワクチン約2億4000万回分を廃棄、金額にすると約6653億円。アベノマスクといいこの政府のやることだからなんとも納得できないのでは。未だ水が使えない能登半島の人達...もう4か月というのにほんまにあきまへんな。

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シャクナゲ

2024/04/19
【第1882回】

新国立劇場小劇場で「デカローグ」観劇。この作品は1988年にポーランドで放映された映像作品が基になっています。デカローグとは、旧約聖書に登場するモーゼの十戒を意味するそうです。今回の芝居に登場する人物は、この十戒を守るべき道徳ではなく、これを破ってしまう人間たちの葛藤を描いた物語でした。世界のどこにでもある団地に住む人達の、何気ない誤解や誘惑で悲劇を生み出すのだが、その背後には人としての弱さや過ちをしっかりと受け止める愛情もバランス良く描かれています。

今回観劇した作品は全10編で成り立っており、おいらが観たのは1と3、残りの8編を7月15日まで上演することができるのも新国立劇場だからだと思います。

この新国立劇場が併せて創設したのが演劇研修所。今年で第20期生を迎えるそうだが、3年間の研修を経てこの世界で生きていくのも至難の業である。トムにも修了生を今年の新人2人を加えて5人在籍。トムの芝居にも出演してもらい一日も早く役者で生計を立てられるように後押しはしていますが...いつも新国立劇場で芝居を観劇するたびに思うことは、研修所で3年間しっかりと鍛えた後に、なぜ修了生たちを大きな役に抜擢して公演をしないのか?勿論、興行的な面からも厳しい面があるのは理解できるのだが、ここは国が本腰を入れて創設した俳優養成所なんですから、何とか実現して欲しいと思います。

又もや、中東で物騒な小競り合いが勃発。石油の8割近くを中東からの輸入に依存してきた日本にとっては死活問題。そして四国、大分での地震、地球の未来が本当に危うい!こんな時こそ、地に足が着いた生き方をしましょう皆の衆。

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新緑のメタセコイア

2024/04/17
【第1881回】

プロ野球開幕したばかりなのにライオンズはや終戦...昨日のロッテ戦に負けて6連敗、最下位に転落してしまいました。延長戦11回まで戦ってライオンズ僅か2安打。これじゃ勝てません、いや先発投手が可哀想でなりません。必死こいて投げても味方が点取らなきゃ空しいものでございます。誰が悪いのか?誰の責任なのか?ハッキリ言って監督、コーチの責任でしょうね。先週のソフトバンク戦の試合前の光景を見て驚きました。ライオンズに対し、後ろ足で砂をかけるようにして出て行った山川選手とニコニコ顔で話をしている監督や、ハグしている選手を観客の前で見せつけられてガックシ...案の定、そのあとの試合で2打席連続満塁ホームランを打たれ無様な敗戦。週末多くのファンが集まったホームゲームでソフトバンクに1勝もできない有様。悔しいと思わんかい!お客は高い銭と時間をかけて遠い所沢まで来ているのに...球場を後にするファンの気持ち少しは分かって欲しいですな。

ハッキリ言って、松井監督、平石ヘッドコーチのPLコンビ、もう勘弁してくださいと言いたくなります。それに昨年から打てない打者を指導している嶋、高山打撃コーチ、自ら退陣して欲しい。そこまで大胆に刷新しないと、このままライオンズは長期間まちがいなく暗黒の時代が続くと思います。だって、テレビで試合観ていてもこんなにワクワクしないことは珍しいくらいです。昨日のロッテ戦でも、ライオンズ炭谷捕手がファールフライを取りそこねたのを見てニヤニヤ笑ってる監督、なんと緊張感のない人だろうと思ってしまいました。勝負師としては失格もんです!

と言いながら、これからもライオンズの試合は見ると思います。こればかりは少年の頃からの野球に対する熱い思いが、おいらの身体にメラメラと燃え続けているからでしょうね。

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もうちょっと楽しんでネ

2024/04/15
【第1880回】

先週の週末、高円寺にあるタブラオ・エスペランサに出かける。長年の友人であるグラシアス小林のフラメンコを堪能してきました。彼とはかれこれ45年の付き合いになります。おいらが単独でスペインに飛んで行って初めて会った日本人でもありました。おいらも気負うことなく大道芸やったりしながらスペインの空気になれようとした時でもあり、彼のアドバイスでずいぶん助けられもしました。マドリッド・マジョール広場で大道芸やったときには当時3歳であった息子、海来(みらい)君に投げ銭集めをさせてしまい迷惑もかけましたね。二人してシナリオ書いたり、キャンプに行ったりと楽しいスペイン生活を過ごすこともできたのも小林ファミリーが居たおかげかな。

彼が日本に戻ってからも交流は続きました。波乱万丈の人生を経て、最後はフラメンコに戻りスタジオを持ちながら彼独自のフラメンコ道を追求してきました...自分はどこまで行ってもスペイン人には成れないんだから、自分の生き方を通しての踊りをしたい...この日も、舞台に凛々しく立つ姿は彼の生きてきた75年が見事に凝縮されていました。表現とは己の生きざまを曝け出す場でもありウソをつくことも出来ません。普段、一緒に酒飲んでるときは難しい芸術論なんかは交わさない分、舞台上のグラシアス小林はサムライのようでもありました。そしてフラメンコには欠かせない、野卑の中にも色気と品格。この日の踊りはまさしくMaravilloso(素晴らしい!)に尽きます。

フラメンコという激しい踊りに、今尚チャレンジ精神で挑むグラシアス小林に拍手を送りたい。

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オレ!

2024/04/12
【第1879回】

昨日、今年アカデミー賞作品賞や監督賞など7部門を受賞した「オッペンハイマー」を鑑賞。第二次世界大戦当時、ヒトラー率いるナチス・ドイツは原発の開発を進めており、それを恐れたアメリカのルーズベルト大統領は、原爆開発に着手しマンハッタン計画を設立。その化学部門リーダーとして開発チームを主導し、のちに原爆の父として呼ばれたオッペンハイマーのお話でした。世界では昨年7月に公開され大ヒットしたのに、被爆国の日本での公開は、さすがに慎重に検討したうえアカデミー賞受賞ということもあって3月29日上映に踏み切りました。

いや3時間の尺の中を、3つの時間軸が行ったり来たり、それを追うだけで動体視力が相当疲れてきます。この映画自体はアメリカ人の視点で描かれており、折に触れた会話としては出てきますが、広島、長崎での原爆投下のシーンは全く出てこない。被災国日本人の心情としては複雑極まりない。しかし原爆投下がなければ、この国は焦土と化し戦勝国の占領地になり今の日本国ではない気もしてくる...でも、広島、長崎で被爆した当事者の方々は果たしてどんな気持ちで対することが出来るのか?いまだ無くならないどころか、核の脅威は以前にも増している現状を考えると、巨悪の根源としてのオッペンハイマーに違いない。

この映画が長時間何とか緊張を強いられながらも耐えられるのは、監督の理念、俳優の演技に拠るところが大きいと思う。特に主役を務めた舞台俳優出身キリアン・マーフィーの繊細な演技は秀逸。

よりによって、アメリカ訪問中の日本の失速寸前トップが、又してもアメリカのおじいちゃんに武器を買わされ、軍縮どころか軍拡に突き進む姿がなんともおかしくもあり悲しくなる現実でもございます。

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早くも新緑

2024/04/10
【第1878回】

昨日の雨と強風で満開の桜もヒラヒラと舞い散っていました。いつの世も、サクラは春の季節と相まって人の感情を異常に掻き立てソワソワさせます。中でも京都の人出は半端じゃありません。外国からの観光客、そして日本全国から集まっての騒乱状態。京都市民は迷惑千万でしょうが、観光で生活している人たちも居るので仕方がないところもありますね。おいらが大好きな、東山の麓を流れる琵琶湖疏水分線のうち、若王子橋から白川通りの浄土寺橋に至る疏水両岸の小道「哲学の道」も「騒がしい道」に変貌していました。やはり、こんな時期を避けて行きたいなと思っていても、そんな時期もなかなか見つけにくい京都になってしまったのかな...

それにしても、又しても国会議員、そして知事の横暴な立ち振る舞いがニュースになっていますね。吉幾三さんの動画サイトニュースから拡散していった北海道選出の自民党議員、航空機内ばかりではなく道庁の職員にも偉そうな態度で接していたそうな...来年の大阪万博開催に疑問を投げかけたコメンテーターに、万博出入り禁止を言い放った大阪知事。そういえば、どちらも横柄なツラしてますな。なんか勘違いしているというか自分の立場を理解していないですね...議員も市長も公僕であることを忘れ、特権階級丸出しのダメな人だと思います。税金、物価ばかり上がって冗談じゃありません...裏金も未だ不明、一刻も早く国会議員削減に踏み切って欲しいものです!

もう少し、春の微妙な季節感を楽しみたいのですが、明後日あたりから気温上昇で一気に夏の装いになるみたい...なんとも身体が付いていけなくなった地球環境になっちまいましたね。

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散る桜 残る桜も 散る桜

2024/04/08
【第1877回】

昨日、新宿歌舞伎町に昨年オープンしたシアターミラノ座で「ハザカイキ」を観劇。作・演出の三浦大輔の作品は久しぶりに拝見。この作家との出逢いは衝撃でした。17年前くらいかな、新宿シアタートップスで当時主宰していたポツドール公演「愛の渦」。台詞なしはいいとしても、男優は全員下半身丸出しで女優とSEXシーンのオンパレード。観客の誰かが通報すれば一発でわいせつ罪に問われ公演中止。この大胆な演劇公演でありながら、退屈させないどころか文学の匂いを醸し出す演出力に脱帽した次第。その後、映画の世界にも進出し演劇・映画界の鬼才と呼ばれるようになりました。

さて今回の芝居、芸能界、マスコミを舞台に時代に振り回されながらもがき続ける群像劇。終局は謝罪の連続、人が人に謝り、人が人を赦すことの物語。タイトルの意味が、ドラマの進行とともに理解できました。昭和の古い価値観とこれからの新しい価値観が交代しつつある、まだ中途半端な「端境期」だという事を言いたかったわけですね。

元関ジャニのメンバーが主役ということもあり、会場は相変わらずの旧ジャニーズの女性ファンで満席。そんな雰囲気の中でただ一人堂々たる演技をしていたのが風間杜夫さん。いや、表情、声、佇まいが他を圧倒してましたね。若い俳優さんは勉強になったことだと思います。この芝居のラストに作家の主張が凝縮されてました...26人のエキストラが場内から出現してのヒロインの記者会見、そして雨を降らしての抒情的なシーン。終わりよければすべて良し!魅せることを理解しての演出でございました。

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今日のサクラ

2024/04/05
【第1876回】

やっと出ましたホームラン!日本のみならず、世界の野球ファンが待ちに待った大谷さん。

精神的なプレッシャーは相当あったに違いない。ベンチに居るときの表情も何故か寂しそう、いつもは一平さんと一緒にニコニコしていたシーンが懐かしい。人生、魔が差すときは誰しもあるし、一刻も早く全てをさらけ出し残りの人生を再スタートして欲しいものですね一平さん。

そして裏金問題の処分、裁く方も裁かれる方も共に茶番ですね。肝心な裏金の実態はなんら解明されず一体全体なにを基準にして処分したのかさっぱり分からない。国民のほとんどの人が呆れているのに、感覚がずれている人にはなんら響いていないに違いない。なんとかちんたらちんたら動き回っている内閣総理大臣、ここは身を棄てるくらいの気持で解散に踏み切れば少しは見直しますがね...所詮、自民党猿山での権力闘争。国民なんかに顔を向けて発言してないのは相変わらず。自民若手もだらしないに尽きる。

昨日、知人が入院している病院にお見舞いに行きました。おいら78年の人生で入院したのは3度あります。最初の入院は21歳の時、劇団養成所の卒業公演終演後に急性盲腸炎で救急車に運ばれ即手術、そして入院。破裂寸前、間一髪で救われました。2度目は35歳の時、インドの旅から帰国後に急遽保健所の方が訪れ、そのまま車に乗せられ板橋の伝染病病院へ、検査の結果赤痢、2週間なんの痛みの症状もないのに強制的に入院させられました。検査した医者が驚いていました。悪質な赤痢菌が3種見つかったのに、このけろっとした健康体はなんじゃろかいなと...そして直近は61歳の時、右膝が痛くなり手術した方が良いと言われ入院。これも大したことないのに何故かしら?思えば、この医者ギラギラした目ん玉で切りたくて仕方ないという風貌についつい便乗してしまいました。

てなわけで、病院とはあまり縁なく過ごしてきました。改めて健康であることに感謝でございます。

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今日の神田川

2024/04/03
【第1875回】

おいらが芝居の世界に入るきっかけになった俳優さんが先月亡くなった。坂本長利さん、94歳の人生でした。おいらが20歳の時、大学に入学したものの例の学生運動が激しく大学も閉鎖状態。何か面白いものないかな?なんて気持ちでふらりと覗いたのが、代々木にあった代々木小劇場。山本安英さんを中心に活動していた「ぶどうの会」解散後に結成した小劇場運動の先駆け集団でした。ここで観た宮本研作「ザ・パイロット」観劇後、こんな面白い世界があったのかと大いに刺激を受けました。その後、この集団に所属していた坂本さんが演じたひとり芝居「土佐源氏」にもビックリ。民俗学者宮本常一の「忘れられた日本人」に登場する元馬喰(牛馬売買人)の一代記をロウソクの灯りだけで演じる坂本さんの姿に役者魂を感じた。最後の台詞「男という男は、わしにもようわからん。けんど男が皆、おなごを粗末にするからじゃろ。わしはな、人は随分だましはしたが、牛だけはウソつけんかった。おなごも同じで、かまいはしたが、だましはしなかった。」盲目の乞食が語る純粋な心の風景を見事に演じる俳優とはいったい何者か...しかも2,3メートルの至近距離で。

その後、坂本さんと同郷(島根県出雲市)の友達と同席し語り合ったことがある。坂本さんのゆったりした語り口と、おいらの酔いも加わって居眠りしてしまう失態を犯してしまう。

目が覚めた時に、にっこりと笑顔で返した坂本さんの佇まいが今でも忘れられない。

1967年~2023年まで海外も含めて1223ステージを重ねた「土佐源氏」。まさしく芸能の原点を感じさせる見事なひとり芝居でございました。        

                                     合掌

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七分咲き

2024/04/01
【第1874回】

2024年いよいよプロ野球開幕...いつもはワクワク感で一杯なんですが、ウクライナ、ガザなどの紛争、能登半島地震、そして政界の裏金問題、大リーグ大谷選手の通訳の不祥事なんかでスッキリしない感じでのスタート。せめてものスポーツの世界でモヤモヤを雲散霧消したいところなんですが、なんだかこの状況ではとシックリきませんな。

今年の我が心のライオンズ、なんとか楽天との試合2勝1敗でスタートすることが出来ました。投手力は両リーグ通じてナンバーワンと言われていますが、問題の打撃陣、相変わらず若手の伸び悩みというか、このシーンでどんなバッティングをすればいいのか?ということが理解されてないと思います。コーチがボンクラなのか選手そのものに能力がないのか、ここ数年同じ状況が又しても見せつけられるのが残念です。特に際立ったのが今年4年目の若林外野手、オープン3試合すべて選抜メンバーに選ばれながら13打数ノーヒット、数字はたまたまかもしれないが内容が良くない。少しは考えて打席に立てよ!とがっかりするバッティング、監督もそろそろ他の選手に替えるのかなと思いきやそのまま打席に送り出す始末。今年も松井監督続投ですが、おいらとしてはこの監督、選手時代はスタープレーヤーとしては認めるのだが指導者としては決断力のない監督だと思います。

一方、ライオンズに後ろ足で砂かけて出て行ったホークスの山川選手の動向が気になりますね。早速1号ホームンを放った後、いつものどすこいポーズ。少しは反省してるんですかね...人気商売の選手はやはりお手本になってなんぼの世界だと思います。数字残せば文句ないでしょう!なんて気持ちでプレーしていたらとんでもない人生になっちゃいますよ...

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週末満開かな...

2024/03/29
【第1873回】

昨日、下北沢ザ・スズナリで水谷龍二作・演出「お目出たい人」観劇。この芝居、今は亡きコメディアンたこ八郎さんのお通夜の時、皆笑顔で酒を酌み交わした光景を想い出して芝居にしたそうです。おいらも生前、新宿ゴールデン街でたこちゃんと何度か酒を酌み交わしたことがあります。ボクシング元日本フライ級王者から喜劇俳優由利徹の弟子になり、数々の伝説を作った怪優でもありました。右耳の三分の一が欠けていて「犬と喧嘩して噛み千切られた...」なんて言ってましたけど、実は居酒屋で客と喧嘩して噛み千切られたそうです。

いつも愛されキャラで酒場での人気者でした。そのたこちゃんも最後は水死の事故にあいました。海水浴場に行く寸前までゴールデン街で泥酔、海の家に着いても焼酎飲み続け海に帰っていったそうです。今から実に39年前の出来事でした。

今回の芝居をプロデュースした川手淳平君。以前、トムの新人公演にも出演したこともある役者なんですが、今回で3本目のプロデュース。プロデュース稼業を30年やってきたおいらも、彼の芝居に対する情熱、愛情、大したもんだと思いますよ。何といってもお金の問題、限られた入場者の中で如何に赤字を出さないか...借金抱えたらそれこそ一家離散なんてこともありえるんですから...そんなリスクを背負いながら役者である川手君がどうしてもやりたいという覚悟で臨んだ今回の芝居。プロデューサーとしても勿論、役者としてもなかなかのもんでしたよ。力の抜け具合、自分の立ち位置、素敵な役者ぶりでした。

人生、何事も夢中になれることがすべてです...どんなにお金、地位があっても燃焼できる対象を持ちえない人は寂しい時間の垂れ流しに違いないと思います。

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春の、ファンファーレ

2024/03/27
【第1872回】

冴えないこの国の唯一の希望の星であった大谷さん。連日メディアで推理合戦が報道されています。ほくそ笑んでいるのは裏金問題で困り果てていた悪相議員の方々でしょうね。それにしても先日、次期選挙に出ないと言うことで記者会見したあのおっさん、この国の幹事長を何年も勤めて居たのですから、驚き桃の木山椒の木でございます。質問した記者にふてくされた表情で答える姿がなんと醜いことか...同じ日本人としてとっても恥ずかしい。集金力が優れているだけで党の要職に就けること自体がおかしな話です。

所で大谷さんの記者会見。ほんとに怒りの感情を抑えての発言でしたね。長年、信頼し合って兄貴的な存在の一平さんに対する思いは確かに簡単な言葉で表現出来ないでしょう。スポーツの世界でほぼ頂点を上り詰めたら何かがあってもおかしくないと思います。好事魔多しって言葉がありますよね、調子がいいとき幸運が巡った時に、何故か水を差すサタンが登場するんですね...そりゃ人生ですから山あり谷あり、底に行ったときにどれだけ踏ん張り這い上がってこれるのかが勝負です。おいらも世界あちらこちら見させてもらいましたが、西欧人はどうしても有色人種に対しての優越感、もっと言えば差別意識はありますね。大谷選手に対しても快く思っていない人たちが居てもおかしくないと思います。こんな時こそ、良き伴侶になった方と二人三脚で乗り越えて欲しいと思います。

今日は春らしい陽気ですね。近くのサクラが一足早く挨拶してました。金曜日からは日本のプロ野球もいよいよ開幕、すべての人にとって喜ばしい心ときめく春であって欲しいのですがね...

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一足先に

2024/03/25
【第1871回】

先週、南青山にあるBAROOMにて上演された、村井國夫さんと沼尾みゆきさんによる歌と朗読による芝居を観てきました。題材は「「星の王子さま」、作者のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリが、むかし子どもだったひとりのおとな、親友のレオン・ヴェルトにささげた物語です。1943年にニューヨークで出版されて以来、世界のあらゆる国の人達に読み継がれた名作です。おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)という冒頭の一文から始まり数々の哲学的な言葉も含め、近代文明に毒された人類に語られる言葉が今なお突き刺さってきます。

とても簡単なことだ。ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない...こんな言葉を発しながら自然界の生き物を登場させながら意味深に語り掛けてくる構成が実に巧みで幻想的である。

村井、沼尾さんの息の合った歌声と朗読で心地よいひとときでありました。今年80歳になる村井さん本当に精力的に活動されています。老いなんて関係ないのかな...まだまだマグマのように吹き上がる感情の方が勝っているに違いない。これから、今年なんと3本の新作の芝居を抱えているのですからくれぐれもお体を大切にしてくださいね!

昨日の大相撲春場所千秋楽、新入幕での優勝は1914年以来110年ぶりという快挙を成し遂げた尊富士の優勝インタビューがなかなか。「記録より記憶に残る土俵を務めたい。」青森県五所川原出身の24歳の青年、なかなかいいこと言うじゃありませんか。共に健闘した石川県出身23歳の大の里と共に新しい相撲の世界を作り上げて欲しいと思いました。

そして、大谷さん...明日自ら会見に臨むそうです。まさしく人生万事塞翁が馬、一寸先は闇、何が起こるかわからないカオスの世界でございます。

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もうじきだネ

2024/03/21
【第1870回】

一昨日、東京スカイツリー近くにある「すみだパークシアター倉」で、劇団温泉ドラゴン第18回公演「キラー・ジョー」を観劇。アメリカ、テキサス州のダラス郊外のトレーラーハウスに住む一家の話。数千ドルの借金返済のために実母の殺害計画を、表の顔は警官だが裏の顔は殺し屋であるジョーに依頼し一家はとんでもない方向に崩壊してしまいます。いやはや、すさまじい芝居でした。公園のチラシに【トリガーアラート】本作は次の表現含みます。暴力描写 性暴力描写 セクハラ描写 流血描写 火薬による銃の発砲...さすがに子供さんは観客席には存在していませんでした。舞台上でこれほど生々しい行為があると、観る人によっては嫌悪感を抱く人も居るかもしれませんね。そんな予見を感じながら何故上演に至ったのか...主宰者は、演劇において舞台上が世界のすべてだとするなら、この一家の崩壊は世界の崩壊のメタファーです。資本主義、新自由主義を追求した果ての、つまり一部の人間が富を独占した結果としての世界の崩壊です...と述べています。

表現はある意味無限です。その無限の中から何を切り取り作品にするかが勝負です。当たり障りのないものを創って観客が退屈するよりも、より一歩、いや近未来に向けてのメッセージを届けようとするアーティストが待機しているのも事実です。より魅力的、刺激的な作品で生ぬるい我がニッポン豆腐列島に一撃を!

ここ数日、世の中は大谷選手の話題で満載。そんな折に今日とんでもないニュースが飛び込んできました。7年間通訳として共にしてきた水原一平さんが違法賭博に手を染めたという理由で解雇報道。いや、本当に人生何があるか何が起こるか分かりませんね...ついさっきまで幸せそうな状況が一転して不幸せに、まさしくどこかで観たことがあるドラマのように...

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寒桜とスカイツリー

2024/03/18
【第1869回】

大相撲三月場所も昨日で中日を迎えました。一時はモンゴル勢の勢いで純日本産の力士は見る影もない有様でしたが、ここのところ新鋭、大の里に新大関、琴ノ若の台頭で再び盛り上がりを取り戻しつつあります。おいらの年代は野球と同じく相撲も人気のスポーツでした。若乃花、栃錦、吉葉山なんて人気の力士が勢ぞろい。なかでもおいらは吉葉山のファンでした。よか男のうえに心優しい関取でした。のちに大横綱になった大鵬はまだやせっぽちで幕下あたりだったと思いますが、新聞配達の帰り道、宿を構えていた万行寺での早朝稽古を見学した時、既にこの力士は大物になる雰囲気を備えていました。激しい稽古で知られる二所一門の稽古、それはそれは激しいものでした。そんな稽古を見ながらキヨシ少年は、おいらはまだまだ甘いと思いながら気合を入れなおした次第です。

今、多くの優勝を積み重ね引退した白鵬親方の処遇を巡って相撲協会が揺れています。考えてみれば、ここ数年の相撲人気を支えてきたのはモンゴル力士の活躍があってからだと思っています。彼らが居なければとっくに潰れていたかもしれません。確かにモンゴル力士の品性は感心しないことも多々ありました。引退した元横綱、朝青龍なんて力士はひとり汚れ役を買って出たダーティーヒーロー。でも強かった!異国の地で一旗揚げる根性はただものではなかった気がする。日本の力士がなんとひ弱に見えたことか...日本も豊かになり、相撲の世界に入る若者が減少したのも理解はできますが、入門したからには頂点目指す気概は持って欲しいと思って観ています。スポーツ観戦で一番つまらないのは、気持ちが見えないプレー、現役生活そんなに長くはないのだからファンの皆さんの記憶に残るプレーを残して欲しいと思います。

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開花を待つ神田川

2024/03/15
【第1868回】

昨日の参院政倫審での世耕弘成議員の堂々たる態度にある意味感心した次第である。あそこまで堂々と演じきれれば千両役者である。誰が見てもそのからくりを知っていながら知らないと言い切る面の顔の厚さはただものではない。ほとんどの国民が説明されてないと声をあげているにも関わらず誰一人として一切明らかにしようとしない議員集団がこの国の権力を握ってることに只々呆れるばかりである。せめてもの若手の議員が立ち上がって異を唱える行動を起こせばまだしも、なんともへんちくりんパーティを開催し失笑を誘う有様である。誰もが我慢を重ねたコロナの時期、物価上昇でやり繰り生活を強いられた中、この厚顔無恥集団がコソコソと裏金作りに邁進していたかと思うと怒りを覚える。

一方、株価は上がり春闘での賃金アップ、なんだか景気の良い話に聞こえるのだが、この国の多数を占める中小企業の人達、年金生活者にとっては相変わらず苦境の日々が強いられているのが現状だ。世界幸福度ランキングも先進国の中では最下位。よく失われた30年なんて言葉を耳にしますが、このままだとこの先、失われっなっぱしの日本の未来が見えてきそうです。

「桜が一週間で散るのは、われら日本人が飽きっぽいからだ」なんて言われないようにますますの監視ともに、選挙には政治家の質をあげる投票をしましょう。

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弥生の月と星

2024/03/13
【第1867回】

昨日は春の嵐で一日荒れ模様の天気でしたが、今日は一転春らしい日和になりました。東京の桜開花宣言予想が3月19日と発表していました。年毎に早くなってきてますね。これも地球温暖化のせいでしょう。一年の中で、春の予感ほどウキウキするものはないでしょう。

人間生きてていつもこのワクワク感があれば人生楽しいに決まっています。その楽しみは待っていても訪れるものではありません。始終クンクンと嗅ぎつけ感じるチカラを保持してないとダメなんですね。

漫画家の東海林さだおさん、86歳になっても好奇心旺盛、生きることを楽しんでいます。

東海林さんの「おでん」に対する彼なりの見方が面白すぎて笑っちゃいます。

世界的和食ブームで、先陣を切ったのは寿司で次はおでんでは?でも、おでんはあまりにも身なりが貧しい。ほとんどが色は茶色、田舎っぽく、形もむさくるしい。たとえばチクワ、茶色いボロのようなものを全身にまとっている。おまけに体のまん中に穴が開いている。穴もボロも繕ってから人前に出るのが礼儀ではないのか。だが、聞くところによると、この穴はおでんのツユがよく染みこむようにチクワ自ら開けたのだという。チクワは我が身をなげうってまでおでんになりたかったのだ。だが、その一途は、はたして世界の人々に通じる一途なのだろうか。西洋合理主義から考えれば、商品の穴は欠陥である。だが、こういう考え方もある。チクワの穴の中には何も存在しない。無である。無は禅の教えにつながる。禅の教えを具現化したものがチクワということになる。ビートルズのジョン・レノンは禅に傾倒していた。ジョン・レノンは理論上チクワを食べていたことになる。そういうことになれば、世界中の人々はアッというまにチクワのファンになりおでんのファンになっていき、世界中におでんブームが巻き起こる...てな訳です。

どうです!この飛躍、こじつけ、いや想像する遊び心...いつどんな時にもこうやって生きてりゃ言うことありまっせん!さあ、今日から実践してみてはいかが皆の衆。

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春の公園

2024/03/11
【第1866回】

東日本大震災から13年。未だに避難者が2万6000人、そして、人が死んでしまうレベルの放射線を放つ溶け落ちた核燃料「デブリ」の取り出しは数グラムでさえ、13年たった今もできていません。そんな状況の中、岸田政権は原発の再稼働どころか新原発の建設まで打ち出しているのですから狂気の沙汰としか言いようがありません。聞くところによると、日本の原発の停止はアメリカの都合によってできないそうです。すべてがアメリカのお伺いを立てられないと事が進まない敗戦国の宿命、そして日米軍事同盟の縛りがそうさせています。今年元日に発生した能登半島地震然り、このままいけば地震大国日本は自ずから消滅してしまうに違いありません。何とかアメリカを粘り強く説得できる政権が誕生することを願うばかりです。

未だに故郷に戻ることが出来ない帰還困難区域の人たちの諦めに似た表情、我が子を津波に流された海を眺めながら「死ぬまで諦めきれない...」とつぶやく年老いた母親、この日が来るたびにあの惨状が甦ってくる人たちの悲しみを、残された人たちがどう受け止めるか?腐りきった現政権は勿論、この現状を少しでも前に動かす人材、システムが機能しないことに怒りと悲しみを覚えます。

昨日、村井國夫、音無美紀子ご夫婦による、歌と朗読で紡ぐ愛の物語「恋文」に行ってきました。その中で、お二人の知人である方の手紙に思わず涙しました。東日本大震災当日、津波に遭遇しながら奥様が必死に手を差し伸べながらも力尽き流され、一カ月後に見つかったご主人。そのご主人にあてた「恋文」、音無さんのところに送られ直筆で書かれた巻紙を朗読する音無さん、その「恋文」に沿う歌を唄う村井さん。両夫婦の思いが一つになる感動的な瞬間でした。

原発のない、そして戦争がない世界...どうすれば良いのか!今生きているニンゲンが思考し行動しなければいけないことを肝に銘じなければならない3月11日です。

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「恋文」町田まほろ座にて

2024/03/08
【第1865回】

先月亡くなった小澤征爾の芸術と銘打ったCD16枚組の壮大且つ繊細なる音すべて聴き終えました。改めて、小澤征爾なる人物の生きざまが、命を懸けてタクトを振る姿が目に浮かぶ。魂をスパークさせる指揮が、決して西洋の借り物でなく音楽そのものに国境が無いということを実践した人でもありました。25歳の時、インド洋の真ん中で貨物船のテッペンに登って、水平線をジロジロ見回した時、なるほど地球は随分でかくて、丸いものだと思ったそうだ。敗戦を経て世界に対峙しようとした心意気を感じる。N響とのトラブルにもめげず「僕はただ音楽をやりたい!」と世界に打って出た行動力も半端ではない。

どの世界においても冒険心からスタートした人ほど、とてつもないものを生み出している。

夢は追うものではなく、しがみつくもの。地位や名誉に翻弄されることなく、己の忠実なる魂にしがみつき行動する姿こそが新しい価値観を生み出すのではないか。

小澤さんはこんなことも言っていた。楽器から流れ出す音は人間の声と同じである。だからこそ、あれほど人目もはばからず情熱をもって演奏者に伝えるスタイルを維持し続けたに違いない。

お隣の韓国、中国、そして我が日本、もうそろそろ立身出世の妄想にピリオドを打ちませんか?いい学校に進学、一流企業に就職したからといって幸せな人生とは言えません。そんなことにお金と時間を投資するんだったら、己の心に真摯に向き合うことに投資し決断、行動し、自分の道を切り開いていく生き方の方が魅力のある人生だと確信します...一度きりの人生ですから!

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今朝の杉並区

2024/03/06
【第1864回】

昨日、新宿西口地下イベント広場でこんなものを見つけました...懐かしいですね。おいらが子供の頃は、こんな看板に憧れて映画への夢を育んだ気がします。手書きの看板の前に佇み、観たいのはやまやまなんですがお金が無く、入場するおっさんの傍に寄り添いあたかも親子のようになりすまし無料鑑賞をしたこともありました。

この看板を描いた人は、今は亡き久保板観さんです。中学一年生の頃から映画看板の絵の練習にのめりこみ、昭和32年、中学卒業後に東京青梅市にある映画館「青梅大映」で看板絵師の仕事をスタート。年間365枚以上の映画看板を描く生活をしたそうだ。その後、テレビの出現により映画産業も斜陽の憂き目にあい仕事がなくなり、商業看板業に転職。平成3年から地元商店街町おこしに馳せ参じ、平成6年からは青梅の商店街に昭和の映画看板が飾られるようになった。久保さんは平成30年脳梗塞により逝去、享年77歳。

そんな久保さんが精魂傾けて描いた看板を前にして、暇さえあれば映画館に通った日々が甦ってきます。高校時代は福岡市高校映画連盟を創設し毎日のように会長という権限を縦横無尽に利用、いや活用し、中洲の映画館に入り浸りでございました。そして、お嬢さん学校も巻き込み映画談義で楽しい時間を過ごさせて頂きました。決して映画を利用したのではございませんことよ、とことんおいらは映画が好きだった!映画にかかわる仕事がしたいという思いで東京行きを決めた次第です。

それにしても、何事においても利便性が問われる現世、このローテクな職人芸、そして生き方、貴重ですし大切にしたいですね。

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昭和の名画

2024/03/04
【第1863回】

先週の土曜日、座・高円寺にて、糸あやつり人形一糸座による「崩壊 白鯨ヲ追ウ夢」を観劇。この一座の前身は結城座です。江戸時代から継承された糸あやつり芸を初めてみたのは50年前です。50人ほどの小さな小屋で人形を操る結城孫三郎の見事な芸にすっかり魅了された記憶があります。今回の一糸座は結城座から独立して20年になるそうです。「劇団桟敷童子」の東憲司氏による、あの有名なハーマン・メルヴィルによって書かれた長編小説「白鯨」を下敷きに書かれた作品でした。「白鯨」と言えば思い出すのが1956年に上映されたグレコリー・ペック主演による映画。片足の船長を演じたグレコリー・ペックの真に迫る演技が今でも鮮明に記憶に残っています。おいらが若い頃在籍していた演劇群「走狗」でも上演しました。勿論、アングラ芝居ですから原作からは、はるかに逸脱してはいたのですがハチャメチャ奇想天外な展開でテントに集まったお客はそれなりに楽しんでいました。博多公演では室見川河畔にテントを建て、ラストには今は亡き美術家・島次郎が作ったブリキの鯨が百道の海で遊泳する姿が懐かしく想い出されます。

あやつり人形を操作する人形がまるで生きているかのように見えるのは、あやつる人の技術ではなく、身体から糸を通じてどれだけ魂を吹き込められるかにかかっていることを再確認しました。今回の芝居でも、血筋を引く江戸伝内さんの繊細な糸の捌きが人形・船長エイハブの一挙手一投足に哀歓と激しい闘争心が痛いほど感じられました。その活き活きした人形にいかに対峙していくか?生身の俳優陣の奮闘ぶりも見応えがありました

演劇はあらゆる可能性を秘めています。今回のラストにも舞台に置かれたごみにしか見えない物体が、一瞬にして空飛ぶ鯨として泳ぐ姿を眺めながら、人の想像するチカラと創造する楽しみがなんと素敵なことであるかを再認識させられながら劇場を後にしました。

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もうすぐだね

2024/03/01
【第1862回】

今日から弥生です。下旬には桜も満開、春の到来で身も心も軽快になってくるんでしょうね。

昨日で、「モンテンルパ」全公演、無事に終えることが出来ました。本番間近にコロナ、インフルエンザの猛威に襲われ、あわや公演中止なんてことになりかねない状況を、見事はねのけての今回の舞台。芝居の神さんは又してもトムを守ってくれました。スタッフ、キャスト皆さんの頑張りに只々感謝です。そして、呼んでいただいた演劇鑑賞会の方々の温かい心遣いがあってこその公演でした。心待ちにしてくださった皆様に満足していただける芝居の仕上がりであったことを、日々の報告で知らされる度に内心ホットした次第です。

一方、この国の政治、ほんまにふざけた状況に直面しています。昨日、今日と2日間にわたり開かれた衆院政治倫理審査会、首相はじめ安倍派の幹部、皆知らぬ存ぜぬの一点張り。ふざけるんじゃないよ!と言いたい。ここまで国民をなめ切った姿に開いた口が塞がらない。誰一人として脱税の意識もなく、会計責任者に責任を押し付ける白々しい顔を見るにつけテレビ中継も見る気がしなくなりました。早く解散して、選挙で自民党をこき下ろしたいところだが、喉元過ぎれば熱さを忘れるのが常の日本国民性を思えば悲観的になっちゃいます。そんなもやもやを吹き飛ばすかのような大谷選手の結婚ニュース。ここまで完璧に知られない彼の思考、行動、改めて感心してしまいます。すべてが万能、こんな人物が野球界だけにとどまってしまうのもなんとももったいない。

土の中からひょっこりと花開く野の花。おいらの顔も思わず緩んでしまいます。

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クロッカス

2024/02/28
【第1861回】

昨日、高崎演劇鑑賞会で久しぶりに「モンテンルパ」を観てきました。高崎は群馬県では規模的には一番大きな町である。日本一のだるまの産地でもあり芸術活動も活発である。駅前では早速ストリートミュージシャンがいい音鳴らしておりました。

そんな街で活動を続けてきた高崎演劇鑑賞会もコロナの影響で、ここ数年大変苦しい時期がありましたが、演劇の灯を消してはならないとの思いから少しずつ盛り返し元気な姿でトムの芝居を迎えてくれました。

今月7日、東北演劇鑑賞会でスタートした「モンテンルパ」もいよいよラストが近づいてきました。久しぶりに会った役者5人衆、さぞかしお疲れモードかな?と思いきや元気もりもりでございました。芝居もさすがに回を重ね安定した舞台を魅せてくれました。いわき演劇鑑賞会では終演後、スタンディングオベーションで大盛り上がり、役者さんたちも大感激。トム・プロジェクトのキャッチコピーでもある

「舞台の素晴らしさは 新鮮な感動であり発見です!観る側と創る側が夢のある舞台を創りたい!」に相応しい現場を創出していることに感謝と勇気をもらえます。

残り今日と明日の2ステージ、無事に千秋楽を迎えることを願うばかりです。

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梅林

2024/02/26
【第1860回】

31年振りにビクトル・エリセに逢えました...おいらにとってエリセ監督の「ミツバチのささやき」「エル・スール」は映画史の中でいつまでも記憶に残る作品でした。今回のスペイン映画「瞳をとじて」なんと31年振りの長編映画です。3時間近くの作品、人によっては冗長なシーンが多く居眠りしちゃいそうなんて方もいるんでしょうね。よくよく観てみんしゃい、このデジタル化が進みテンポを要求される時代に、ここまでじっくりと登場人物の表情を、粘り強く映し出し内面に迫る姿勢に、こちらまで見続け記憶してしまう映像のチカラ、説得力に驚嘆。この映画は、登場人物の監督が制作中に疾走した俳優を探すというシンプルなストーリーなのだが、その過程で出会う人物像がすべて過去と現在そして未来を想定させるシーンの連続である。エリセ監督の映像はいつもながら静謐な色合いを醸し出す。要するに浮いていないのである。どこまでもより深く内面に沈着していく説得力がある。観る側もスクリーンに落とし込められてしまう映像の魔術師だといっても過言ではない。得てして、作品を創る際には面白くするためにテクニックを多用し興ざめしてしまう映画が多々ある。

この監督にはこのあざとさが一切感じられない。ただひたすらに、淡々と生きていく間に無くした心のよりどころとなる何かを拾い集め、その断片一つひとつに思いを馳せ思い出す、あの日、あの時の肌で感じた体温と高揚感。31年振りに創ることが出来た監督自身の現在の心境を綴った今回の作品は、映画は永遠不滅、どんな過去をも一瞬にして蘇らせる心の琴線であることを再認識させてくれました。

邪魔しない音楽も素敵でした。映画「リオ・ブラボー」の挿入歌、ライフルと愛馬のまさかの替え歌、監督のチャーミングな一面を感じました。そして、「ミツバチのささやき」に5歳でデビューしたアナ・トレントが50年振りに再びアナ役を演じていました。彼女が記憶を亡くした父親と対峙し「Soy anna(私はアナよ)」と呼び掛けて目を閉じる...

おいらの記憶が映画を支え、映画がおいらの記憶を支える。なんとも至福な時間でございました。

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瞳をとじて

2024/02/21
【第1859回】

昨日は、トラッシュマスターズ第39回公演「掟」を下北沢駅前劇場で観てきました。ある地方都市の市長選挙を巡る顛末を描いた作品です。日本のどこかで今でも、保守的な人たちと変革しようとする人たちとの闘いは日々繰り広げられているに違いありません。国会で問題になっている裏金なんてものは、地方都市ほど日常化し未だに改められることがなく、未だに続く自民党政権の温床になっていると思われます。

今回の芝居で一番驚いたのは、なんと新劇劇団のベテラン俳優の方々が4人も出演されていること...随分昔の話になりますが、おいらが芝居を始めたころはアングラ演劇が台頭し、その新しい動きに共鳴し、新劇劇団のなかからも反新劇運動がおこりいくつものグループが誕生しました。新劇の体質が持つアカデミック的なものにNOを突きつけた俳優、演出家、作家が古典ではなく今を描く作品を上演し喝采を浴びました。状況劇場、黒テント、早稲田小劇場、天井桟敷などなど、おいらも演劇群走狗なるものに所属し7年間テント担いで全国を駆け巡りました。今まさに大衆と同じ地平に立ち生の肉体を曝け出し吠えていたんでしょうね。

新劇で長い間培われたベテラン俳優さんと若い人たちの競演は見応えがありました。中津留章仁の作品をリスペクトしながら、3時間近くの芝居を成立させようとする姿は、演劇を超えた人間の深い繋がりの感じさせてくれました。どこの世界も年齢は関係ありません。

ミュエル・ウルマンの青春に関するこんな詩があるじゃないですか。
  青春とは人生のある期間ではなく心の持ち方を云う。
  薔薇の面差し、紅の唇、しなやかな手足ではなく、
  たくましい意志、ゆたかな想像力、燃える情熱をさす。
  青春とは人生の深い泉の清新さをいう。

おいらももうすぐ78歳、そりゃ体の衰えは日々感じますよ...でも、こうやって今日も目が覚めたら生きてるんだもん...よっしゃ!今日も楽しんでやろうなんて気持ちになっちゃいますね。

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トムの支店ではございませんよ

2024/02/19
【第1858回】

おいらは、やはり詐欺師だった...先週、妻の誕生祝い(古希)で、とあるイタリアレストランに行くことになりました。初めての場所で、スマホ片手に目的地に向かうが、なかなかわからずお店に電話をしました。おいらの声がデカすぎたのか前行く二人のオッサンがおいらを振り返っていました。それにしても二人して振り返ることでもないとは思いましたが...先ずは間違えて一本目の道に迷い込み、ここではないと思い一つ先の道路に出ました。左右確認すると右手にイタリア国旗がはためいており、「この店に間違いない!」と歩き出し店のドアを開けようとした瞬間、おいらの後ろを歩いていた妻が二人のオッサンになにやら問いかけられているので、何しているのだろう?なんとこの二人のオッサン刑事だったんです。妻の話によると、先程のおいらの店探しの電話が、怪しいと感じ追跡したらしい。おいらがオレオレ詐欺の一味で、妻は騙されそうになった被害者女性と思いマークされたというわけだ...おいらが店のドアに立つ姿を指さしながら「夫です...」と答えたところ、二人の刑事はズッコケてしまいました。それにしてもこの二人、どうみても刑事には見えません、職人さんと見ましたね。その辺の服装、佇まい、見事というしかありません。まさしく演技賞もんです...妻に職務質問する前にきちんと警察手帳を見せたんですから間違いはありません。照れくさそうに立ち去る二人のデカ、疑ってスミマセンなんて顔していました。

ここで改めて、おいらはやはり詐欺師風情が拭いきれないなのかと...悲しみべきか、はたまた喜ぶべきか...でも、芝居なんてもの所詮、詐欺師の所業でございます。観に来ていただいたお客さんをいい意味で裏切り、騙すかを常日頃、思考し行動しているんですからね。

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如月の空

2024/02/15
【第1857回】

人が生きていく中で、人との出会いでその後の人生が左右されるのは当然だと思います。そして次に大切なのは、どんな本を読み、どんな映画・芝居・絵画を鑑賞し、どんな音楽を聴いてきたか?これらのことで、ほぼその人の人間形成が形創られ、豊かな人生のある程度のバロメーターになるのではないかと思っています。古典から今はやりの旬のものから何を選択するか?これも難しい判断であると同時に、やはり個々の感性が鍵となってきます。

音楽のジャンルも確かに幅広い。おいらは基本的にジャズが好きなんだが、これに拘ってるわけではない。若い頃から名曲喫茶に入り浸り(新宿にあった、らんぶる)世界のクラッシックを堪能しました。プログレッシブ・ロックの先駆者としても知られるピンクフロイドにもよく聴きました。勿論、自らギターを手にしてフォークにも熱中した20代もありました。じっくり歌詞を味わうことが出来る歌謡曲もいいですね♪旅心を唄う小林旭もなかなかよかもんです。

最近、よく聴くのがフランスのチェリスト、ゴーティエ・カプソン。今年42歳になる彼のチェロはなかなか心地よい。チェロと言えばスペイン人のカザルス、当時、独裁政権の反対しフランスに亡命しながらも、カタルーニャ人としての誇りを失わず、心を込めて格調高く演奏したカタルーニャ民謡「鳥の歌」はいつ聴いても胸に迫るものがあります。そしてもう一人、マイスキー。彼の演奏するバッハの無伴奏チェロ組曲を聴いていると、表現力豊かなバッハの世界を思う存分に描いていてエモーショナルな気分にさせてくれます。

要はチェロという楽器が「人間の声に一番近い音域」と言われているので、私たちの耳に心地よく響くのですね。

No Music No Life♪

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今宵もチェロを

2024/02/13
【第1856回】

先週の週末、久しぶりに吉祥寺井の頭公園に行ってきました。それにしても吉祥寺の街の賑わいは相変わらずです。この街の人気度、なるほどと言う点がいくつもあります。老若男女問わず楽しめるスポットが程よく点在しています。先ずは井の頭公園、池でのボート遊び、公園内のあちこちで繰り広げられる大道芸人のサービス、手作り作品が並ぶ出店、そして幼児に人気のブランコなどなど。勿論、若いカップルが愛を囁くベンチも随所に配備されています。四季折々を楽しむことが出来る樹木の種類の多さも魅力的です。

そして街中、昔ながらの戦後闇市バラック飲み屋街があると思えば、若者向きのお洒落な飲食店も変化は速いが次々とオープン。そして古着屋、安価でポップな品物があちらこちらにぶら下がっています。そして何よりも安心なのは、新宿の歌舞伎町とか渋谷、池袋に行けば必ず目にするデンジャラスゾーンがほとんどないということかな。おいらなんか、昔からクンクンと匂いを嗅ぎながら未知なる危険な地域に潜入するのが面白いと感じる人間にとっては、無味無臭な街かもしれませんね。

この日も、井の頭公園では多くの大道芸人が芸を披露していました。なかでも全身を赤銅色にコーディネートしたパントマイム芸人、前に置いた箱にお金を投げ込むと動き出しシャボン玉を飛ばしてくれました。大空に舞い上がるシャボン玉がはじけた瞬間...ウクライナ、ガザ地区で非業の死を余儀なくされている市民がオーバーラップしました。

平和は向こうから勝手に来るものではありません。平和呆けしているといつの間にか日本も徴兵制度復活なんて未来が待ち受けているかも知れません。そんなこと考えながら、この日は1万5千步歩いていました...勿論、徴兵に備えてではありませんぞ。

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平和な一日

2024/02/09
【第1855回】

昨日は久しぶりに北千住に行ってきました。もう少し足を延ばせば千葉県松戸市、そんな場所にあるシアター1010(センジュ)。この立派な劇場で「大誘拐」なる芝居を観てきました。勿論、風間杜夫、柴田理恵さんが出演しているからの観劇です。共演者は白石加代子、中山優馬。御年82歳になる白石さんの怪優ぶりは相変わらずでした。早稲田小劇場で鍛えられた声、肉体表現は世界でも十分通用すると思います。この芝居での風間、柴田さんのやり取りが観客を和ませる程よいスパイスになっていました。二人に共通しているのは遊び心です。しんどい芝居の進行のなか、ちょっとした遊びが観客の緊張をほぐして新たな緊張を呼び起こしてくれます。遊びらしく見せかけながらも、ドラマの中で成立させるのがプロの役者です。

終演後、ディープな居酒屋などが立ち並ぶ、「飲み屋横丁」を散策。この北千住も再開発が進み街の様子も一変したのですが、ここだけは戦後闇市を引き継いだ飲み屋街です。ネズミがウロチョロしているのを垣間見るだけでディープ合格。壁一面に芝居、音楽、美術のチラシを貼り、一日一組しか客を入れないと蘊蓄を語る飲み屋の親父が居ると思えば、一見の客お断りの餃子を食べさせるおかみさんの店。この横丁、変わりもんがいて歩いているだけでもおもろいところです。そんななか静かな佇まいでオープンしていた「DEVIL CURRY」に入店。店内は、カウンター席のみ、繁華街にある隠れ家のような雰囲気のお店でした。JAZZが流れる中、出てきたチキンカレー絶品でした。久々に美味なるカレーを食した喜びに浸ることが出来ました。ウロチョロ、キョロキョロ、クンクン、さすが戌年のおいら、いい店見つけることが出来ましたとさ。

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大誘拐

2024/02/07
【第1854回】

日本映画史上、傑作の一つである黒澤明監督の「七人の侍」を観ました。これまで何回も観た作品です。やはり素晴らしい!先ずはすべてがリアルだということ。衣装、メイク、かつら、小道具、セット、一分のスキがないくらい見事だ。1954年公開の映画としては、ここまで創ることが出来たのも黒澤明に対する信頼と期待の表れであろうかと思います。当時の通常作品の7倍に匹敵する2億1千万の製作費と1年を要して完成させた成果が随所に感じられます。そしてカメラワークによる実在感、黒澤映画の特徴的な撮影技法マルチカム撮影法を初めて導入している。マルチカム撮影法は1つのシーンを複数のカメラで同時撮影するという技法。その他目まぐるしく変化するシーンを8台のカメラを駆使しアングルの豊かさと臨場感を醸し出している。

この映画のテンポとリズムを生み出しているのが早坂文雄の音楽。主題曲の侍のテーマが特に素晴らしい。この曲が流れるたびに、戦国時代末期に仕事にあぶれ盗賊化した野武士軍団の襲撃に対抗する七人の侍と百姓たちに、おいらもエールを送りたくなってくる。映画を観終わってあとも、このテーマ曲を自然と口ずさみ己を奮い立たせてくれるってんだから映画音楽としての名曲であることは間違いない、

きらりと光る俳優陣の個性が堪らない。貫禄と武士の矜持を持つ志村喬、野放図さと愛嬌の三船敏郎をはじめとして、加藤大介、稲葉義男、宮口精二、千秋実、木村功の七人の侍。

百姓の藤原鎌足、土屋嘉男、左卜全、なかでも左卜全は最高でございます。意気地がなく間が抜けた役を与えたら彼にかなう役者はいないと思う。「生きる」のお通夜のシーンも絶品でございました。昔はホンマに良か役者がごろごろ居たんだなと、改めていい時代にいい映画を見せて頂いたことに感謝。

東京都心の雪騒ぎも一段落して今日は青空が広がる立春から二日目の日です。

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残り雪

2024/02/05
【第1853回】

2月2日から昨日まで、亀戸カメリアホールで上演した「モンテンルパ」無事に終えることが出来ました。今回の公演、稽古中にいろんなアクシデントがあり公演中止もありの状況の中、スタッフ、キャストの皆さんの奮闘で乗り越えることが出来ました。本当に生モノは恐いです。まさしくなにが起きるか分からないシナリオがないドラマですね。

3日間の公演全て拝見したのですが、日毎に芝居そのものが成長を遂げていました。緊張感を強いられる環境がそうさせたのかも知れません...演劇の最も難しいのは、ただやみくもに稽古をやれば良いというもではありません。やり過ぎて慣れてしまうのも良くないし、稽古不足はその稽古量の少なさがそのまま本番の舞台上にさらけ出されてしまいます。その辺りの按配をうまく調整しながら初日に照準を合わせていく難しさは、何度経験しても計算できるモノではありません。役者の精神、肉体、思考、プロデューサとしては役者を信じるしかありません...そんなことまでも熟考しながらのキャスティング。

2月7日からは、山形県鶴岡市民劇場からスタートし29日まで東北ブロック、関越ブロックの演劇鑑賞会の人たちに18ステージ観劇していただく予定です。冬の最も寒い中、この芝居で温かい気持ちになっていただければと思っています。

亀戸で70年商売している「亀戸餃子本店」に行ってまいりました。餃子と飲み物しかありません。ビールを頼むとすかさず餃子が出てきます。一皿5個食べ終わりそうになったら、すかさず絶妙なタイミングでおばちゃんが餃子再注文の催促。断ることが出来ない微妙な雰囲気なんですね...周りを見ているとビールと一皿¥300の餃子を2皿から3皿食べての会計。残された空き皿で素早く計算、まるで回転餃子といったところかな。一組の滞在時間ほぼ15分から20分。このシンプルな営業スタイル、商いの原点を見せられた感じがいたしました。

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ここにも梅が

2024/02/02
【第1852回】

戦後すぐ東京都台東区柳橋の隅田川沿いに建てられた、旧市丸邸を2001年にルーサイトギャラリーとしてオープンした古民家での朗読会を観てきました。個性的な俳優、鳥山昌克さんが数年前から企画している出し物です。今回は唐十郎「雨のふくらはぎ」泉鏡花「絵本の春」の朗読劇。二人の女優さんに囲まれて楽しそうに演じていました。唐さんの作品になるとまさしく水を得た魚、そりゃそうでしょう、20年間、唐組で唐ワールド漬けの日々だったんですから...唐作品に度々登場する鶯谷周辺の夕焼け、下谷万年町のいかがわしくも耽美な世界。これだけは身近に体験した人と心中する覚悟がないと身につけることができません。

役者にとっての存在感は大切な要因です。それをどこで獲得できるのか?勿論、まず第一は日々の生き方、何を視、何を感じ、己の中でいかように発酵させていくか。そして次に誰と出会い共同作業していくか。優れた作家、演出家と出会い、共に芝居を創ることが出来ることは千載一隅のチャンスだと思います。あとは己の努力あるのみ。

鳥山昌克さんと唐さんとの出会いも偶然ではなく必然ではなかったかと思います。これからも唐十郎の魅力を伝えていってほしい役者さんだと思いました。

それにしても、朗読中に目にする背景が素晴らしい。隅田川を行きかう屋形船、総武線を走る電車の音、高速道路の車の列、リアルタイムのなかで粛々と進行する幻想の世界は、とても贅沢なひとときでした。

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如月

2024/01/31
【第1851回】

あの似合わない黒いハットを被ったおっさん、又しても物議をかもす発言をいたしました。ほんまに情けない、こんな人をいつまでも選ぶ福岡の選挙民もこれまた情けない。この国を代表する女性外務大臣の名前は間違えるし、あまり美しくないと容貌にいちゃもん付ける人間が副総理なんて世界に対しても恥ずかしい限りだ...こんなことを言われた外務大臣も「失礼な発言です!」とお灸をすえればいいのに、聞き流す対応。なんだか女性初の首相なんて声を気にしての忖度なのかとも思ってしまいます。

連日の裏金問題の当事者の言葉もすべて虚しく聞こえてきます。一番の正直者は、議員辞職を願い出た長崎選出のオッサンかもしれませんな...悪徳5人衆なんぞは国会開幕初日、皆そろってニコニコしておりました。せめてもの芝居でもいいから「申し訳ありません!」なんて神妙な顔でもすればいいのに、あの厚顔無恥なるツラを見せられると開いた口が塞がりません。

日本の国の政治家に申したい!あなたたちは言葉に対して失礼じゃないかと思います。要するに相手(国民)の差し迫った言葉を機能として聴いているだけ。己の腹の底に染みわたる覚悟で聴いていないということだ。そしてお金のこととなると欲の皮が突っ張り、これだけは正直になるという体たらく。政治屋稼業の言葉だけが利便的にはびこっている世紀末的状況でございます。

言葉は暴力には無力でもあっても、ひとりひとりの生きるうえでの杖であったり、飢えたときの代用品になったり、身を守るシェルターにも成りうる人間のみに与えられた宝物でございます。そんな言葉をないがしろにする人達に国を任せるわけにはいきません...

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善福寺川緑地公園

2024/01/29
【第1850回】

先週の土曜日、久しぶりに刺激的な映画を堪能しました。「女王陛下のお気に入り」のヨルゴス・ランティモス監督の最新作「哀れなるものたち」。観終わった率直な感想は、若い頃よく観たゴダール、フェリーニ作品を彷彿とさせるアバンギャルドの匂いがする問題作。何が問題かというと過激な性描写に目がいき、一見エログロに見せておきながら登場人物が語る言葉の背景には現代社会に潜む社会、化学、偏見、差別、政治、制度に辛辣なメッセージが込められていること。しかも説明的ではなくユーモアを交えてのやり取りにエンタメ性を感じさせてくれること。それにしても一番驚いたことは、2016年の傑作ミュージカル「ラ・ラ・ランド」で女優志望の主人公を演じ、ベネチア国際映画祭の最優秀女優賞や、アカデミー主演女優賞など数多くの賞を受賞したエマ・ストーンの体当たり演技。これがホンマの女優魂!日本の女優さんが観たら、なんでここまでやるの?と腰を抜かしそうな過激、過剰なシーンの連発。しかも、内面の演技もしっかりしてるんだから文句のつけようがない。アップで写し出される表情には一人の女性としての揺るぎない信念と持続する強い意志を感じる。

撮影、美術、衣装、ヘアメークどれをとっても新しいものを創る野心に満ち溢れた作品であることは紛れもない事実。エンドロールの流れる不思議な図柄と音楽、これにもまいりました。エンドロール賞をあげたいくらいの終わり方。映画にとって締めのエンドロールはとっても大切なシーンだと思います。すべてを終え、観客は余韻に浸っているなか如何に幕を閉じるか...終わりよければすべて良し!って言葉がありますよね。

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問題作

2024/01/26
【第1849回】

昨日は神保町のジャズ喫茶「オリンパス」と、明治大学図書館で一冊のノンフィクション小説を読破しました。美味しい赤いチキンカレーとコーヒー、そして4000枚のレコードの中から選曲されたレコードの心地良いノリで150ページを読み終え、残りの170ページは明治大学図書館の静寂な空間で...やはり、言葉の持つ滋味、深淵の魅力は心身を虜にしちゃいます。

それにしても、改めてノンフィクション作家の凄さを感じさせる読み応えでした。何年間もの間、対象となる土地、人物に密着し体当たりで本質に迫るには相当のエネルギーを必要とします。その人の過去、現在を含め洗いざらい聞き出すんですから、それなりの人間関係を構築しないと無理な話。

おいらも芝居を創るうえでいろんなジャンルのノンフィクション小説を読んできました。中でも、九州大分県中津で多くの書を書き続けた松下竜一さんには大いなる共感を覚え、「松下竜一 その仕事全30巻」を買い込み、中津に飛び、上演許可を頂いた思い出があります。そこはノンフィクション作家と同じくらいの情熱、エネルギーを有しないと、良質な芝居なんかは創れません。

それで昨日読了した小説は?こればかりはまだまだ今の段階では秘密でございます。すべてが明らかになった時までのお楽しみ...こうやって又、新たなことにチャレンジしていくことで己を奮い立たせる日々でございます。

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冬のメタセコイア

2024/01/24
【第1848回】

今日はこの冬一番の冷え込み。故郷博多もどうやら雪が舞うらしい。それにしても能登半島の人たちにとっては厳しい日々が続いている。そんな中、新宿の街かどで若い有志が被災者に向けての募金活動を行っていた。こんな風景を目にすると、この国もまだまだ希望が持てますばい。その傍では、路上シンガーからのスターを目指す若者も居る。一度きりの人生なんだから信じたものに賭け、悔い無き人生を送れば良いのだが、この国のつまらんシステムに未だ拘り一流大学、大企業なんてコースを選択しちゃうのがほとんどかな?大好きなことに夢中になり手に職を付けて、もの創りに励む人達の目はいつもキラキラしています。おいらはこんな人種が大好きです。

永井荷風の全集を読んでいます。この作家の定まることのない生き方とマッチした文章が実に面白い。それも学問に裏付けされた書物だから説得力がある。銀座のカフェ、遊郭、ストリップ劇場をこよなく愛し、その視線はいつも弱者に注がれていた。

1952年には「温雅な詩情と高邁な文明批評と透徹した現実観照の三面が備わる多くの優れた創作を出した他江戸文学の研究、外国文学の移植に業績を上げ、わが国近代文学史上に独自の巨歩を印した」との理由で文化勲章を受章する。最後は孤独死、そして彼の遺言として遺骨は吉原の遊女の投込み寺に葬られたいと記していたらしい。

裏金疑惑の安倍派の議員たちの神経にはほとほと呆れてしまう。「安倍さんに申し訳ない...」

あほんだら!謝る相手が違うやろ...こんなセリフをいとも簡単に吐いちゃうこの人たちに政治を任した選挙民も大いに反省せにゃいかんですばい。

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冬の暮

2024/01/22
【第1847回】

黒澤明監督の傑作「生きる」を、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの脚本によりイギリスでリメイクしたヒューマンドラマ「生きる LIVINNG」鑑賞。率直な感想、やはり黒澤作品の方が圧倒的な中身の濃さで軍配が上がるかな。やはり主人公が公園を作るためにいかに命懸けで奔走したかを回想する葬式の場面が、この映画の核心のような気がします。この時代に居た役人を含めた人間像が見事な演出、演技によって主人公を際立させる手法が永遠の名作にしています。中村伸郎、藤原鎌足、千秋実などなど名脇役の丁々発止のやり取りが実に人間的だ。とりわけ印象に残るのが左卜全の面白おかしい存在感。「七人の侍」の時もピカ一だったのだが、こんな役者が居なくなったのも日本映画が今一つパッとしない一因かもしれない。

リメイクした英国映画も健闘しているというか、やはり西欧の洒脱な物語である。日本人の持つ泥臭さと対照的にイギリス紳士の佇まいを前面に押し出している。Mr.ウィリアムズを演じるビル・ナイの端正で押し付けがましくない存在感が、日本版と違うテイストを生み出している。そして、なんといっても印象に残るシーンであるブランコに乗って口ずさむ歌。日本版は志村喬の、♪いのち短し 恋せよ乙女 あかき唇 褪せぬ間に 熱き血潮の 冷えぬ間に 明日の月日は ないものを♪「ゴンドラの歌」これが絶品でした。

英国版は、スコットランド民謡の「The Rowan Tree」=「ナナカマドの木」、この歌には、今際を覚悟することで、自身の故郷や親族などに想いを馳せているという意味があるそうだ。歌詞、メロディともに乾いた感がしました。

最後に、主人公が場末の歓楽街で嬉々として遊び解放するシーンがあるのだが、日本版ではあの怪優、伊藤雄之助がアクの強い演技の連続でスクリーンを釘付けにする面白さがあったのだが、英国版はなんともあっさりした俳優さんのお陰で無味無臭のシーンになったのが残念でございました。

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昨日、見かけた早咲き梅

2024/01/19
【第1846回】

能登半島地震の今後の行方が混沌としています...二次避難を呼びかけても避難者の一割の希望者だったとか。故郷への強い拘り、ひどいのは大学生が被災した家に入り込み高級蜜柑を盗んだのを知り、我が家を守らないとの思いで劣悪な環境でありながらも留まるケース。それにしても、こんな状況でもあっても悪い奴は居るんですね。こんな奴らは普通の窃盗罪の3倍、4倍の刑を科してもらいたいもんですね。最高学府で何を学んでいることやら...

大阪万博を中止して、これから掛かる費用をそっくり被災地の復旧に充ててもらいたいもんでございます。人口の島での万博終了後、はっきりとした設計図もないまま当初の予算をはるかにオーバーした予算で強行しようとする国、大阪府のやり方に半分の人が反対してるんですから。過去の例をみても、オリンピック然り、政治屋と企業の闇の談合でこれらの催事が実施され数々の不祥事が後日談として暴露されてます。この低空飛行が続く日本、先ずは被災地に投資するのが筋だと思いますが...

「モンテンルパ」の稽古場に行ってきました。出演者5人と演出家の息もぴったり。実に活気あふれる稽古場風景でした。世の中がなんとも不穏である今こそ、芝居で元気にできればと思っています。あと二週間、体調には十分気を付けて無事初日をむかえてもらいたい!

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詐欺ではありませんよ...

2024/01/17
【第1845回】

昨日、「初春大歌舞伎」を歌舞伎座で観てきました。久しぶりの歌舞伎十分に堪能してきました。「當辰年歌舞伎賑」の賑やかしい踊りと、変化にとんだ長唄、三味線、鼓、笛の響きで幕開け。25分の休憩を挟んで「荒川十太夫」。赤穂義士四十七士のひとり堀部安兵衛が切腹する際に介添え役を務めた荒川十太夫を主役に据え、義を通そうとしたがゆえに苦悩を抱え葛藤する十太夫の役を尾上松緑が見事に演じていました。決して二枚目と言えないのですがハートがビシバシと伝わる歌舞伎役者。松平隠岐守定直役の坂東亀蔵の透き通る台詞と歯切れの良い演技もこれからの成長が楽しみです。

最後は35分の休憩(商業演劇はこの間、食事してもらったり、買い物を勧めたりでの時間でもあります。)後、「狐狸狐狸ばなし」この作品は2004年にトムでも上演しました。ケラリーノサンドロヴィッチ演出で板尾創路、篠井英介、六角精児、ラサール石井の出演での異色の芝居に仕上げた記憶があります。この芝居は通算220編余りの戯曲を書き上げた北條秀司氏の喜劇での最高傑作だと言われてきました。タイトルが示すように登場人物が織りなす狐と狸の化かし合いが目まぐるしく展開されます。その中に人間の欲、哀感がおかしみを取り混ぜながらの抱腹絶倒喜劇。松本幸四郎、尾上右近が安定した演技をする中、幸四郎の息子である市川染五郎が目を見張る芝居をしていました。将来の歌舞伎界を背負って立つ逸材であることは間違いありません。

終演は15時、歌舞伎のゆったりした時間がとても心地よかった。確かに¥18000の入場は高いと思いますが、まあこの規模で、この内容であれば納得できるかな...

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新春の歌舞伎座

2024/01/15
【第1844回】

能登半島地震の連日の報道の中、自民党のパーティ裏金疑惑、検察が一議員の逮捕で幕引きをしようという情報が流れてきました...本当にふざけるなと言いたい!まじめに働いている庶民には徹底的に厳しく税の要求をしておきながら、脱税に匹敵する犯罪行為を犯しながら国会議員というだけでこの甘い処置。この国は本当に腐りきっている...国の権力が一つの機関に集中すると濫用されるおそれがあるため、三つの権力が互いに抑制し、均衡を保つことによって権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障しようとする考え方で立法・行政・司法の三権主義があるのにこの有様。お互いが監視するどころか忖度するばかり...今からでも遅くありません。昨日の台湾での選挙での投票率71%、日本の投票率はいつも50%前後、半数の有権者が棄権している状態に危機感を持ちましょう!と言っても腰をあげようとしない体たらく状態。勿論、原因は政治不信であることははっきりしているわけだが、諦めちゃ悪徳政治屋の思う壺でございます。

そして、辺野古新基地での埋め立て強行。沖縄の人が何度も嫌だと意思表示してるのに何ら応えようとしない政府。おいら前から言ってるのだが、沖縄にある基地、日本の各地が負担するのが平等だと思います。先の大戦であれだけ沖縄に犠牲を強いながら、またしても台湾有事の際の盾にしようとするこの国の狡さに呆れてしまいます。この国がアメリカの属国であるのは理解できますが、いまだ沖縄だけにアメリカ軍基地の押しつけは勘弁してくださいな。昨日も、TV新日本風土記での沖縄のきれいな海と空に囲まれながらゆったりと時を楽しんでいる人たちを見るにつけ、この安穏な日々が永遠に続きますようにと思いました。

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睦月の空

2024/01/12
【第1843回】

この季節、すっかり葉を落とし毅然とした姿で屹立している樹木を眺めているとシベリアの収容所に8年間を過ごし、日本への帰国を果たせず病死した山本幡男さんの詩をいつも思いだします。


アムール遠く濁るところ
黑雲 空をとざして險惡
朔風は枯野をかけめぐり
萬鳥 巣にかへつて肅然

雄々しくも孤獨なるかな 裸木
堅忍の大志 瘦軀にあふれ
梢は勇ましくも 千手を伸ばし
いと遙かなる虚空を撫する


夕映 雲を破つて朱く
黄昏 將に曠野を覆はんとする
風も 寂寥に脅えて 吠ゆるを
雄々しきかな 裸木 沈默に聳え立つ

 

極まるところ 空の茜 緑と化し
日輪はいま連脈の頂きに沒したり
萬象すべて 闇に沈む韃靼の野に
あゝ 裸木ひとり 大空を撫する

 

理不尽な境遇のなか、極寒のシベリアの収容所で故郷、家族に思いを馳せながら書き綴った言葉に山本幡男さんの強靭な意思を感じる。
年頭の能登半島地震、羽田の航空事故然り、この時代、何が起こっても不思議ではない。そんな時には逆境の中で生を信じ、改めて命の尊さを感じながら過ごした人たちのことを忘れずに日々を過ごしたいと思っています。

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裸木

2024/01/09
【第1842回】

連日の能登半島地震の現地の生々しい報告を見るたびに心痛みます。コロナも落ち着き、久しぶりの一家での正月で10人の家族を亡くした男性の「何も悪いことしてないのに...なんでこんな目に合わなきゃならないのか!」涙して語る慟哭言葉が胸に迫ってきます。

13年前に輪島の朝市でふらり覗いた市中屋本店。格子窓の素敵な外観で、代々100年以上続く老舗店です。輪島塗というとなかなか敷居が高いと言われていますが、一歩店内に足を踏み入れるとなんとも懐かしい匂いと家庭的な雰囲気に魅せられついつい話し込んでしまいました。店内に展示されていたお重が気に入り半年掛かりで創っていただきました。塗っては乾かしの繰り返しでとても手間暇がかかる作業だとのことでした。

正月のおせち料理は、このお重に詰め込み新年を迎えるのが我が家の習いでした。

そんな思い出を持つ市中屋さんのご家族、親類と思われる名前が今回の地震での安否不明者のなかにありました。毎年、年賀状が来ているのですが焼失した朝市通りのお店には連絡しようがありません。今はただ無事であって欲しいと願うのみです。

焼けただれた家並みを前にして若き漆器職人が「命は助けてもらったので、残されたものがなんとか伝統を引き継ぐしかありません...」この言葉を信じるしかありません。東日本大地震然り、命ある限り残された人々がマイナスからプラスへと歩を進めてきました。

昨日、黒澤明監督「生きる」久しぶりに観ました。生きることの根源をシンプルに描いた傑作です。志村喬の鬼気迫る演技、他の共演者のキャラクターの活かし方、さすが黒澤明監督。

命ある限り、生きてさえいればなんとかなります...被災地の皆さんが一日も早く日常を取り戻し、必ずや自然の魅力に溢れた能登半島を再生してくれると思っています。

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市中屋さんのお重箱

2024/01/04
【第1841回】

明けましておめでとうございます。

 

いよいよ今年も始まり、今年こそは平穏な年であれという願いを元旦から、能登半島地震で砕かれた思いです。2日には羽田での航空事故。何とも波乱の幕開けとなりました。

ウクライナの侵攻、ガザ地区での戦闘も止むことがありません。

何としても、この不穏な流れを食い止めなきゃ未来はないと...今年も又、ひとりひとりがこの危機感をしっかりと意識して生きていかなければと強く感じています。

トム・プロジェクトも今日から「モンテンルパ」の稽古が始まります。2021年のコロナの恐怖に晒されながら、なんとか千秋楽を迎えることが出来た日のことを鮮明に覚えています。

再演である今回も、平和な日常がいかに大切であるかをこの作品を通じて伝えることが出来ればと思っています。

今年も、トムは芝居を通じて世界のいかなる人も皆平等に平穏な日々が訪れることを信じてやり抜いていきますので、皆さま何卒よろしくお願いいたします。

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謹賀新年