トムプロジェクト

2024/12/02
【第1970回】

先週の土曜日には久しぶりに浅草に行って来ました。いや大変な賑わいでございました。中でも外国からの観光客がレンタルの着物を身につけあちらこちらで記念写真を撮っていました。浅草寺、昔からの演芸館、そしてディープな飲み屋街には道路にまではみ出したテーブルでワイワイガヤガヤ、モダンな所よりも人の体温が直に感じられる所での一杯がなんだかホッとしていいんでしょうかね...コロナの時期に閑古鳥が鳴いていたときがまるで嘘であるかのような光景でした。

この日の目的は、トムでもお馴染みのふたくちつよしさんの作、演出による浅草九劇での芝居。老舗劇団青年座の有志が集まり「時計屋のある町で」を上演。昭和60年、東京下町にある時計店で繰り広げられる家族のドラマ。正確で安価なクオーツ時計の波にさらされ閑古鳥が鳴くなかで、頑なに機械式時計に拘る店主をこのカンパニーの主宰者である津嘉山正種さんが淡々と演じている姿が印象的でした。作家然り、80歳になる津嘉山さん然り、この便利になりすぎた時代への警鐘、抵抗を、昭和という時代を通して人間らしさを失うことなく生きてきた庶民を描きたかったと思います。

おいらにとっても昭和という時代はインパクトがありました。戦争という暗い時代をくぐり抜け、貧しいながらももがき苦しみ平和を目指した庶民のすさまじいエネルギーのなかから目を見張るようなアートが生まれ、新しい産業を創出し、生活に潤いをもたらしてくれました。何事もそうですが、過ぎたるは猶及ばざるが如し、ここまですべてが先鋭化し利便性を追求すると簡単に後戻りできないのが資本主義社会の宿命。

終演後、ふたくちさんご夫婦とお疲れ会をとお店を探したのですが、どの店も満員喧噪状態、こんな時はちょいと横道に逸れるとこじゃれた居酒屋が見つかるもんでございます。しっかりと煮込んだおでんで一杯、久しぶりの浅草での一日でした。

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久し振りの浅草

2024/11/29
【第1969回】

先日、ギャラリー桜の木銀座にて、スペインを拠点に活躍する抽象画家・小林海来による6年ぶり3回目となる個展に行ってきました。ミライ君との出会いは44年前です。スペインを放浪しているときに、当時マドリッドに住んでいたグラシアス小林家を訪ねた時です。まだ確か3歳だったと思います。おいらがマドリッドのマヨール広場でインチキ大道芸を踊っている時には、投げ銭集めにも協力してもらいました。父親であるグラシアスさんとしては、愛するわが息子に何てことをしてくれるんだ!と怒りにも近い感情を持ったそうだ...弁解がましい言い方になりますが、おいらが頼んだのではありません。おいらの命懸けの踊りに少しでも力になりたいという優しさがそうさせたに違いありません。お客の投げ銭を集める姿がより観客の同情を呼び、思わぬお金を手にしてその後の旅を豊かにしてくれました。ほんまにグラシアス!

その後、ミライ君はスペインの風土に上手く溶け込みながらも、日本人としてのアイデンティティを忘れずにプロの絵描きとして活躍しています。今回はイタリアの彼女と一緒に来日したそうな...今回の個展も小品から大作まで、不思議な感覚に誘ってくれる絵画が展示されて嬉しくなりました。お父さんのグラシアスさん共々、スペインの自由奔放、遊び心満載の人生を過ごしていくという実に羨ましい生き方を体現しているのではないでしょうか。

久しぶりの銀座、この街のメイン通りも外国資本のブランドの店ばかり。昔の落ち着きのあるお洒落な銀座が懐かしゅうございます。

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思索の旅

2024/11/27
【第1968回】

昨日は、トム・プロジェクト30周年記念パーティを新宿で開催しました。トムトム倶楽部会員の皆様とトム所属の俳優、そして数名のゲスト俳優さんと共に楽しい時間を過ごすことが出来ました。思えば30年前に、岩松了作・演出、片桐はいり一人芝居「ベンチャーズの夜」を何となく池袋の50人ほどの小さな映画館で、上映後21時から開演したことから30年経ってしまいました。ここまで継続できたのも、おいらが出会った俳優、作家、演出家、スタッフ、会社を支えてくれた社員、そして何よりもトムの芝居を観に来ていただいた多くのお客様のお陰だと思っています。

演劇では飯が喰えないという当時の常識を、何としても覆してみたいというチャレンジ精神と、無から有を生み出すとてつもない夢とロマンと冒険心にほだされ船出したのかな...いや、何度か危機もありましたが乗り越えられたのは生来のケセラセラ的生き方が功を奏したのかもしれませんね。

この日は、長年の友人であるグラシアス小林夫妻によるフラメンコからスタートしました。御年75歳になるスペイン仕込みの踊り、枯れた味も出てきて冒頭から楽しませてくれました。次は30年の歩みを、おいらをはじめとしてトム関係の人たちのインタビューを交えての作品紹介を含めての映像を35分。そしてトムトム俱楽部の人たちへのプレゼント抽選会。役者の挨拶、そして村井國夫さんによる「ラマンチャの男」の熱唱などなど、あっという間に2時間が過ぎてしまいました。

さて、これから先は若い人たちの出番です。30年間の財産を上手く活かしながら40年、50年とトムがより刺激的な舞台を生み出して欲しいと願っています。

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祝30周年

2024/11/25
【第1967回】

先週の土曜日は上野ストアハウスにてトラッシュマスターズ公演「ガラクタ」を観劇。この芝居は、原子力発電所で使い終わった燃料から出る、リサイクルできない放射能レベルの高い廃棄物(核のゴミ)をどこに持っていくかを巡る物語です。確かにこの厄介なシロモノ、長期間強い放射線を出し続けるので、放射線のチカラが十分に弱くなるまで、できるだけ生活環境から離れたところに処分必要があります。しかも地下深くの安定した地層(岩盤)に埋めなきゃならない難しさ...原発を作った時同様に、過疎地で税収に苦しんでいる自治体に狙いを定め右往左往しているのが今の現状です。2011年の東日本大震災を教訓にすれば、原発廃止に向かうのが自明の理だと思うのですが、新たに原発を作る計画も進んでいます。この国のエネルーギー政策が未だ迷走しているのも、何度も言いますが無能な政治家を選んで来たこの国の民ですからね。

政治が出来なきゃ芝居で喚起せねばと、トラッシュマスターズは毅然として態度で舞台に提示しています。この国の演劇も多種多様、何でもありの世界です。なんでまたお金と時間をかけて難儀なテーマの芝居を観なきゃならんのよ...その言い分も分かりますが、こうまでしつこくアクションを起こさない限り、忘却の民は気付いてくれないんじゃないかと未来に対しての不安を抱いているのでございます。主宰者の中津留章仁は徹底して現実に起きている不条理な出来事に対して向き合ってきました。この骨太な人種の数が少なくなったときはこの国もかなり危ないと思います。

 

プレミアム12、日本破れましたね。台湾の強さ、執念を感じました。投打にわたり日本を圧倒していました。これを機に侍ジャパン、明日から緻密な練習あるのみ!

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この国はどこかおかしい

2024/11/22
【第1966回】

今日は小春日和がピッタリの気持ちの良い日になりました。新宿の街を歩いている人たちの表情も皆緩んでいて、なんだかハッピーな気分になっちゃいますね。

それにしても今年は個性的な人達が次から次へと旅立って行きました。唐十郎、楳図かずお、北の富士、西田敏行、火野正平などなど...人の人生それぞれなんですが、太く短く、細く長く、どっちがいいんでしょうか?おいらとしては時間の問題ではなく、あくまで過ごした中身、濃さではないかと思います。他人との比較ではなく己自身の充足感が一番大切だと思います。愚痴の数を出来るだけ少なく、いつも感謝の気持ちで満ち溢れていればそれなりに実りある人生ではなかろうか...肝心なことは屈託のない生き方がベストでございます。

今朝嬉しいニュースが飛び込んできました。大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手がリーグで最も活躍した選手に贈られる最優秀選手に選ばれました。愛犬と奥様と一緒に受賞のインタビューを受けていましたが、いつもながら謙虚に同僚に対する感謝の気持ちを忘れずに答えていました。今年、日本を唯一明るくしてくれたのが大谷選手だと思います。米国から連日中継されるゲームを観ながら、よしゃ!大谷選手に負けないよう頑張らなくちゃなんて高揚感を抱いた人たちは数限りなく居ると思います。考えてみれば、おいらも西鉄ライオンズに無我夢中になって以来の新鮮な野球への向かい方だったかもしれません。

週末に優勝が決まる「世界野球プレミアム12」でも侍ジャパンいまだ負け知らず。この中から第二の大谷翔平が生まれて欲しいとは思いますが...どう考えても大谷翔平選手は桁外れですからちょいと無理ではないでしょうか?

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今日のメタセコイア

2024/11/20
【第1965回】

詩人の谷川俊太郎さんが92歳で亡くなりました。彼のデビュー作である「二十億年の孤独」を読んだ時には異次元の世界にさらわれていく感覚がしました。定型詩なんぞをぶっ飛ばし感性の赴くままに書き綴った文字の反乱に戸惑い驚き、あらたなる詩の世界への期待を持たせてくれました。その後、翻訳、言葉遊びに徹した詩、映画テレビドラマのシナリオなどなど、あらゆる分野に挑戦しながら自ら朗読し読者の前でのパフォーマンスも意欲的に活動されていました。何と言っても谷川さんの詩の良さは、難しいことばで難しいことを言うのは簡単だと思いますが、やさしいことばで難しいこと、深いことを伝えることができた点だと思います。以下の詩は谷川さん最後の言霊です。

 

感謝

 

目が覚める

庭の紅葉が見える

昨日を思い出す

まだ生きてるんだ

 

今日は昨日のつづき

だけでいいと思う

何かをする気はない

 

どこも痛くない

痒くもないのに感謝

いったい誰に?

 

神に?

世界に?宇宙に?

分からないが

感謝の念だけは残る

 

谷川俊太郎さんの遺言詩ではなかろうか...

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ツワブキ
花言葉~先を見通す能力~

2024/11/18
【第1964回】

ようやく秋らしいというのか急に寒くなったりで、はや晩秋かなという週明け月曜日でございます。この季節は昔から読書の秋というフレーズが鉄板ですね。おいらもこのフレーズを裏切らないように乱読してますよ。山本周五郎から最近の若手気鋭の小説家が書いた不思議且つシュール物語まで、出来るだけ収納庫をしなやかに幅広く余裕を持たせながら過ごしたいという思いから日頃から心掛けている読書でございます。

その中で、昨日読み終えた吉本ばなな著「下町キック」、ほんわかな気持にさせてくれました。少し特殊な能力を持つ少女が主人公で、彼女たちを温かく緩やかに健やかに見守る下町の人々のお話。今世の中に氾濫している絆とか多様性をとかを堅苦しくとらえるのではなく、もっと余裕、余白のある関係性でもいいじゃないの?と清々しを感じさせてくれる作品。

 

他の全てが何もかも違っているのに、話が分かるその一点だけは完璧に共有している。これって未来のコミュニケーションではないだろうか、と私は思った。人はそれぞれ全く違う。それでも何か真ん中に大切にしていることがあり、それが同じ人たち同士はそんなコミュニケーションができるのではないだろうか。

このどうしようもない、戦争ばっかりしている人類にとって、もしかしたらこれは希望なのではないだろうか。

 

こんな文章を解かりやすくさらりと書ける作家と読書を通じて、暫し時を共に過ごせるのも幸せでございます。

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定点観測
~今日の紅葉~

2024/11/15
【第1963回】

一昨日、「エル・スールを映画にするったい」の会が銀座でありましたので出席しました。映画化を熱望されている武正晴監督を始め10人の方々が思い思いに映画化に対する思いを語ってくれました。あの懐かしい平和台球場での数々のエピソードはいつ聞いても面白い。おいらも、外野席後方の木々に昇り無料で試合を観たり、バイトで球場が満杯になり外野席の立ち見席客がより良く観戦するために、当時5円で仕入れたリンゴ箱(この箱の乗らないと後方の立ち見客は試合を観れませんでした)を放り投げ100円頂いた話なんぞは盛り上がっていました。70年前の平和台球場はボロボロでした。外野席を囲う石垣には場内からの落下防止のための鉄線ネットが張り巡らされていました。子供のおいらも力の限り木のリンゴ箱を放り投げるとネットに引っかかり場内のお客が手にすると百円札を丸めて落としてくれました。中には、箱だけ受け取って未払いの輩も居ましたね。いつの世もこすっからい生き方を平気にする者が存在することを子供心に学ばさせて頂きました。

皆さんの話を聞いていると、今の日本映画界は惨憺たるものだと再確認した次第です。企画書を持参しても「うちはアニメ中心に考えている...」「今ヒットしているコミックか小説の原作ものだったら...」なんて話ばかりそうです。これじゃどれだけ優秀且つ映画に情熱を傾けている映画屋さんもさっぱりでございます。

映画が映画として自信を持って届けられる映画版「エル・スール」実現に向けて歩き出しています。どんな些細なことでも協力、協賛情報があれば知らせてくださいな。

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これば映画にするったい!

2024/11/13
【第1962回】

今週の月曜日、いつものように新宿西口「思い出横丁」辺りを散歩していると人だかりが出来ているので側に行くと、年老いた男性が路上に倒れているではないか。男性に駆け寄り起こしながら手助けしているのが全員東南アジアの人ばかり。おいらも何とか力になろうとしたのだが、日本語も流暢なこの人たちがてきぱきと事に当たっていたので一安心。それにしても、この場にひとりとして日本人が居ないことに何となくショックを受けた次第である。

この国の未来を考えたとき、人口減少による働き手不足への不安が一瞬頭を過ぎった次第である。外国人労働者の必要性、そして働ける意欲がある人は年齢、男女を問わず仕事をしていかないとこの国は立ちいかなくなるに違いない。

そしてもう一つの危惧。人が倒れていようが無関心、無視する日本人の行動形態。こんな社会状況の中、他人のことなんか構っていられません、自分のことで精一杯ですという個人主義の蔓延。ホンマに世知辛い世の中になりました、昔こんな歌が流行りましたね。「東京砂漠」コンクリートに囲まれた環境の中で人の情けが次第に薄くなっていくのは必然、でもまだ昭和の時代には情はまだまだ熱く濃かった気がします。

今日の電車の中でも、年老いた女性がつらそうに立っているのに平然と優先シートに座りイヤホンで音楽聴きながら能天気に座っている若者を見かけました。おいらも注意しようと思いましたが、昨今の若者のキレ具合、闇バイトに何の疑いもなく参入する新人類のことを思うとなかなか恐ろしゅうございます。残念ながら命を落とすことも想定内の時代になりました...

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あと少しガンバレ!

2024/11/11
【第1961回】

先週の週末は、劇団チョコレート公演「つきかげ」を観劇。この作品は、6月に上演した歌人斎藤茂吉の5年後の物語です。歌人の老いと死に対して家族がどう向き合って生きていくのか、このテーマはいつの世も普遍性があると思います。劇団員3人と客演3人とのやりとり、この劇団の特徴としていつも思うのは、自分たちにやりたいことを客演の人達にも理解して貰うために相当な努力をしているのではなかろうか...芝居の一番難しいところは、役者個々人の表現をいかに活かしながら作品に収束させていくか...演出の仕方、役者の我、稽古を通じてどこまで上手く融合させて行くかが舞台の成果に繋がっていきます。

この日の舞台、客演のひとり音無美紀子さんが芝居の流れの中に程よくアクセントを付けていた気がしました。さすがベテラン女優ですね...

さて、今日から国会が再スタート。少数与党に、いきなり時の人になった玉木さん、昨日までの自信たっぷりの出で立ちから、今日は一転しょぼい顔。出る杭は打たれるじゃないですが、いつの世も話題になった人間に対してのあら捜しに躍起になる輩がうじゃうじゃしとりますのでご用心。5枚の座布団、残り0.5枚ですね。

それにしても、国会登庁前、インタビューを受ける裏金問題で話題になった和歌山選出の議員のなんと晴れ晴れしい顔。やはり国会議員という生き物、厚顔無恥でないと務まらないんですね。

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少しづつ

2024/11/08
【第1960回】

劇団俳優座公演「慟哭のリア」を俳優座劇場で観劇。あのシェークスピアの「リア王」を劇団桟敷童子の東憲司さんが大胆に翻案、演出。物語の設定を東さんの故郷でもある筑豊炭田にするあたりはさすが東憲司。桟敷童子の芝居をそのまま俳優座に持ってきた感があるにもかかわらず、80年の歴史を持つ座員を見事なタクトで活かしている。なかでも御年92歳になる岩崎加根子さんの演技に対して、リスペクトも含めてかなり繊細に演出したであろう工夫が随所に見られた。それにしても92歳で舞台に立つ勇気と気概にはあっぱれでございます。同じ俳優座出身の仲代達矢さん然り、戦前から戦後まもなく日本の演劇シーンをリードしてきた矜持が脈々と受け継がれている気がしてならない。

来年4月に取り壊される六本木の俳優座劇場、なんとも残念でなりません。上京した時に千田是也、東野英治郎、小沢栄太郎、東山千栄子、そして若手の仲代達矢、平幹二郎、市原悦子、栗原小巻などなど綺羅星の如く輝いていた人たちをワクワクした感情で観た記憶が今でも鮮明です。渋いところでは中谷一郎、杉山とく子さんなんかが絶品でした。

昭和がだんだん遠くなる...時代の移り変わりがあまりにも早く、後期高齢者はとてもついて行けません。懐かしがってばかりでは進歩もありませんし、なんでんかんでんとりあえず吸収しようとは思ってはいるんですが、やはり限界はあります。まあマイペースで基本的に心身ともに負担にならないように楽しい日々を過ごすに限りますね。

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昼下がりの公園

2024/11/05
【第1959回】

11月2日(土)宮野ひろみ舞踊40周年記念公演「絆」を内幸町ホールで観てきました。きっかけは今年、高円寺でのグラシアス小林氏のフラメンコ公演の時、偶然に宮野さんと30年ぶりの再会。トム・プロジェクトがまだ芝居の制作を始める前、おいらがスペインの田舎に滞在中、日々アンダルシアの小さなバルで聞いたカンテの響きが鳴り止まず池袋の小さな映画館で「ドラマチックフラメンコ」と銘打ち若手フラメンコダンサーの公演を10本ばかり興行しました。その中の一人がまだ高校生だった宮野さんでした。若いだけではありません、表現に対する情熱と意志を強く感じました。

30年ぶりに彼女の踊りに圧倒されました。おいらも日本に帰ってきてからたまにフラメンコ公演を観てはいるんですが、どうしても本場のフラメンコを目にしているだけに、何故日本人がフラメンコを踊らなければいけないのか?異国の文化に対峙する表現者にとっては、やはり己のしっかりした生き方が伴っていないとなかなか難しいものがあると思います。

この日、彼女がタイトルにした「絆」の意味が踊りを通して明確に伝わってきました。人として体験した孤独や葛藤、愛する人との出会い別れ、家族、そして何よりも踊りを通して人のために何ができるかという謙虚な佇まい...舞台に立ち観客に何が届けられるか?

この日、宮野ひろみさんが30年間、様々な困難を乗り越えながらも凛として舞台に立つ姿を観客の一人として拝見できた貴重な時間でした。 

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生きることは踊ること
踊ることは生きること

2024/11/01
【第1958回】

今年、唯一日本での明るい話題を提供してくれた大谷翔平選手のシーズンが終りました。それにしてもさすがに本場のベースボール、スピード、パワー、どれをとっても一流のプレーを存分に楽しませていただきました。一席プレミア付きで30万~900万と言う値段を日本に居ながらしてTVで観れるんですから何だか贅沢な気分になってしまいます。それにしても一流の選手はみなさんいい顔していますね。ドジャースのベッツは透明な眼をした修行僧顔負けの何となく哲学的な顔。フリーマンは黒澤明映画「七人の侍」に登場する寡黙ながらここぞというときに一刀両断でたたっきる侍役を演じた宮口精二を彷彿とさせる風貌。髭面のヘルナンデスの百万ドルの笑顔は幸せ満点。一方、ヤンキースのジャッジも身体同様おおらかな思慮深い面構えをしていますね。昨日は彼のエラーから一気に勝負の勢いはドジャースに傾いたんですが、このあたりが野球の面白さ、まさかなんてことが起きるんですから...しかし、その後のヤンキース投手の怠慢なプレーが決定的な負けに繋がりました。

一方、日本シリーズの対戦も俄然面白くなってきました。お互いのホームグランドで連敗してしまい横浜が王手をかけました。セリーグで三位だったチームが金に塗れたソフトバンクを倒すなんて痛快じゃございません。ソフトバンクの個々の選手には恨みつらみは全くございませんが、ただ一人山川選手だけは未だスッキリ致しませんな。ライオンズを後ろ足で砂をかける感じで去って行った行動はアスリートとして失格です。彼の顔がTVでアップされるたびに、どうみても愛されキャラではなさそうですね。自分の生き方がそのまま正直に顔かたちを造形していきますので、くれぐれも真っ当な生き方せねばいけませんことよ皆の衆。

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月初めのアンネのバラ

2024/10/30
【第1957回】

先週の10月25日(金)東京福岡県人会懇親会に出席しました。この日はトム・プロジェクトでも過去に4度上演した「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」の映画化に向けた宣伝もしてきました。映画化のきっかけは、「百円の恋」「全裸監督」「アンダードッグ」、今月からアマゾンプライムで全世界に放映開始した「龍が如く」を監督した武正晴さんの申し出から始まりました。

 

2014年両国シアターXで盟友、清水伸さんの案内で「エル・スール〜わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」を観劇した。先の大戦からの戦後10年。昭和30年代の九州博多を舞台にした物語だ。上演後、図らずも慟哭している自分に驚いた。これ程までに身体が震えた観劇は記憶になかったからだ。幼い頃、北九州出身の母から何度となく聞かされていた、西鉄ライオンズの日本シリーズ三連覇。野球の魔術師、三原脩監督が東京の巨人軍を返り討ちにした奇跡に博多だけでなく、福岡、九州が沸いた1958年。神様仏様稲尾様、豊田、中西、大下等の野武士軍団は敗戦国日本の戦後復興の軌跡として語り継がれる要因の一つだ。貧しい少年達にとって平和台球場に向かう坂道は、まさしく夢と希望の道程であった。

そしてもう一つ、映画が敗戦に打ちひしがれた人々のエネルギーとなっていた時代。映画とは本来、弱者の糧になるものでなくてはならない。今創られている映画にその力があるのか?糧となっているのか?と自問自答してしまう。

「エル・スール」という作品から、自分が生きて来た日本の社会が失っていったエネルギーを思い知らされる。いや、自分自身がエネルギーを失っていることに気づかされた。父や母の青春時代を想う、有難い舞台を見せてもらった。これを何とか映画として多くの人に見てもらえないかと強い衝動に駆られた。その衝動から10年が過ぎてしまった。自分自身の雑事で精一杯の10年に自戒の念しかない。コロナウイルスによって、映画館で映画が上映されないという想像も出来なかった日々を体験した。生活様式の変化に拍車がかかり、日本中の街が開発という名の破壊を続け始めている。

 

以上が武監督の製作意図です。原作・岡田潔、脚本・東憲司。15年前に上演された芝居がこういう形で映画化されればおいらとしても嬉しい限りです。

肝心なことは映画製作費、膨大なお金をどうやって集めてくるのか?この日の県人会でも監督と共に熱く語ってきました。皆さんも応援しますと言っていただきましたが、まだまだこれからです。どなたでも結構です、応援、賛同していただける方がいらっしゃいましたらおいらのところまで是非知らせていただければと思っとります!

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雨あがる

2024/10/28
【第1956回】

駆け足衆議院選挙の結果が出ました。予想通りと言えばそうなんですが、投票日5日前、非公認候補にも2000万円の活動費が支払われていることが明らかになっていなかったらなんとか自公で過半数獲得したかもしれませんね...それにしても一連の裏金問題の資料を提供した共産党が議席を減らすのも皮肉なもんです。立憲、国民民主党が共に議席を伸ばしたのもこの国の国民性が良く分かります。大きく右によっても左によっても駄目、程よく中道路線を選択した結果です。裏金議員も随分と落選しましたが、あの八王子の議員の当選だけは理解できません。モリカケ、統一教会、裏金、腐敗の三冠王を当選させるなんてこの地区の人達に対して全国から非難の声が上がっているみたいですが...この人相当あくどい手を使いながら地元民になにやらをバラまいたとしか思えません。テレビに登場する形相はインテリを装った悪代官と言ったところです。早速、自民党に復党して暗躍するに違いありません。昔見た東映時代劇によく登場していましたね...権力を笠にして数々の悪事を重ねる悪代官が何と憎らしかったことか。善良なる八王子の皆さん、どうか目を凝らして彼の一挙手一投足に監視の目を緩めないようにしていただきたい!と願います。

そして、いつもながらの投票率の低さ。有権者のほぼ半数が棄権しているんですから、何をか言わんや状態。政治不信、無関心などなど、いずれにしてもそんな人達、あとで文句たらたら言っても後の祭りでございますよ。

さてこの後、政局はどうなることやら...国民民主党が権力にすり寄るかもしれませんね?

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コフキサルノコシカケ

2024/10/25
【第1955回】

一昨日、新宿シアタートップスにて「片づけたい女たち」を観劇。この作品は20年前にトム・プロジェクトが制作しました。永井愛作・演出、出演は岡本麗、松金よね子、田岡美也子さん。当時勢いがあった人たちによる舞台はその後、多くの会場で上演されました。

新年の三が日も過ぎた夜中、心配になった50代の女友達2人が、同年代の友人の家を訪ねると、そのマンションの一室はゴミだらけだった。仕事始めを直前に控え、友人のピンチを放っておけない2人は、腕、膝、首の痛みに耐えつつ、片づけを手伝うことに。そんな時に限って思い出話は尽きることなく、ちょっとの片づけだったはずが、それぞれの生き方が見えてくるという筋立て......今回はともに50代の女優、松永玲子、佐藤真弓、有森也実さんで上演されました。20年経過しても、女性特有の悲喜こもごもは変わることがありません。

男性には手が届かない可笑しみが随所に散りばめられていました。

 

昨日はプロ野球ドラフト会議がありました。多球団に指名されたにも関わらず、意中の球団でないところにくじをあてられ困惑した表情をした選手の顔が印象的でした。当たりくじを手にして大喜びしている楽天監督とは対照的でした。楽天の監督人事、チーム誕生以来いつもごたごた。東北で頑張っているだけに応援したい気持ちはあるのだが、過去に疑念プンプンのライオンズ選手の移籍、独裁オーナーのお節介などなど、なんともすっきりしない球団になってしまいました。ドラフト1位に指名されても鳴かず飛ばずで終わってしまう選手。育成上がりで大リーグまで上り詰めた選手。こればっかりは分かりませんね...環境、指導者、そして運、でもやっぱり死に物狂いの練習があってこそのプロの世界。第二の大谷選手を出現させる気概で、日本プロ野球界も切磋琢磨して欲しいもんでございます。

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甘い蜜

2024/10/23
【第1954回】

先週は青山にある銕仙会能楽研修所で「蝉丸と逆髪」を観劇。久しぶりに表参道をぶらり、いやはや外国資本の高級ブランド店がずらり並んでおりました。あんな高い品物、誰が買うんでしょうね?お金持ったアジアの観光客、見栄っ張りのお方、なかには中身も備わった紳士淑女も居ることでしょう。こんな時代、お金をかけることよりも、もっと大切なことがたくさんあると思いますがね。

そんなブランド通りを過ぎたところに会場はありました、今回の芝居も、現代語で解く能の物語と謳っていました。能「蝉丸」は美しい節付けの人気曲。延喜の聖代と言われる醍醐天皇の第四皇子蝉丸は盲目ゆえに父帝から逢坂に捨てられ、髪が逆さまに生え登り、狂乱し放浪する姉逆髪との再会と別れを描く能。戦前は皇室に不敬に当たると上演を自粛していた時代もあったとのこと。世界でも一目置かれている能なんですが、なかなか一般大衆には何となく敷居が高くめったに観ることもない芸能です。今回のような形式であれば普通の芝居を観る感覚で楽しめると思います。今回の芝居を観て本来の能への興味を示す方もいるのでは。古典芸能と現代演劇がこういう形でクロスしていくことによって、新たな表現が表出されることは大変喜ばしいことではないか...既成概念に縛られてはなりません、アーチストは常に新たな地平を目指してこそ真の表現者でございます。

3人の出演者それぞれに良い味をだしていました。とりわけトム所属の鳥山昌克さんの存在感はピカイチでございました。それにしても能舞台の美意識、世界に誇れる空間のひとつであることに間違いありません。

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もうすぐ紅葉だね!

2024/10/21
【第1953回】

昨日は、横浜演劇鑑賞協会第325観劇会に呼んでいただいて、風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~ミッション・インポッシブル~」無事大千秋楽を迎えることが出来ました。長い歴史を持つ横浜演劇鑑賞会で2005年には協会創立35年で会員が選ぶ舞台第一位になった「カラオケマン」の最新作とあって会員さんの期待も大きかったようです。最後のステージ、杜夫ちゃんノリノリでございました。ラスト近くでいつものようにポツリと喋る台詞「75歳になってやる芝居じゃないよ...命懸けだよ。」で大きな笑いと拍手で場内は最高の盛り上がり。その後に、今年発生した能登半島地震の被災地でのスライドが流れる中、語るように歌う杜夫ちゃんの姿に皆さん感動されていました。

終演後、軽くお疲れ会をやったのですが、ここでも杜夫ちゃん「これで終わるのは惜しいね...日毎に調子が上がっているのでこれから一カ月くらいはやりたいね。」と嬉しいことを言ってくれるじゃありませんか。笑いと拍手とラストの感動、芝居をやっている者にとっては贅沢すぎるほどの出し物だと思います。

今日一日だけの休みで明日からは又、12月から始まる二兎社公演の稽古が始まるそうです。いやいや今年も大劇場からテント芝居、そしてひとり芝居、まさしく芝居をやるために生まれてきたような御仁でございます。ただし長年の友人として、くれぐれも酒の飲みすぎだけは注意して頂戴ね!お互いに健全なる心身あってこその舞台ですから。

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横浜 桜木町駅前

2024/10/18
【第1952回】

昨日で風間杜夫ひとり芝居、本多劇場にての公演、無事終えることが出来ました。

おいらのもとにO氏からこんなハガキが劇場に速達で届いてました。

 

役者ひとり居れば演劇は成立するんだと痛感した。しかも怪しいバンコクの街が抽象的なセットの中に浮かび上がっていた。映像が無くても板の上にはバンコクが存在した。何故か匂いまでしてきて自分ひとりで笑ってしまった。荒唐無稽の話にみえて実は人間味のある温かさを持った実に心に染みる牛山明の真骨頂ものだった。工作員に間違われて磔にされるのはサービス精神そのもの。俵星玄蕃8分30秒やって欲しかったと観客は厚かましい願望を抱くこの芝居の見せ場だ。それにしても次から次へと歌が淀みなく出てくる。この芝居の小道具はまさに牛山明の繰り出す流行歌の数々で、それ以上のものは要らない。高齢者のスタッフが後期高齢者の主人公をよってたかって痛めつけて盛り立てて素敵な舞台に仕上げた1時間20分だった。観終わってふとまたバンコクに行きたくなった。夜の巷に足を向けたいなと思わせるお芝居に拍手喝采!

 

他にも多くの方からお褒めの言葉を頂きました。そして劇場を後にするお客様の「生きる勇気を頂きました...」「まだまだ生きてみようという気になりました...」などなど。劇場に足を運べば元気になりますよ!

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O氏からの速達便

2024/10/17
【第1951回】

昨日、本多劇場に懐かしい方が来てくれました。嘗てトムの芝居にも出演してくれた渡辺麻恵さんです。現在は2012年以降バングラデシュの路上で暮らす子どもたちを保護、教育するバングラデシュのNGOエクマットラで旦那様と活動しています。貧困層の人達の相談相手となり自立するための様々な活動をされています。そして女優さんをやっていた経験を活かし現地でのメディアに登場し、日本とバングラデシュの橋渡し役としても活躍。日本にいるときから名前同様、前向きで明るい性格で誰からでも愛されキャラだったんですが、久しぶりに逢った印象は立派な社会活動家のお顔でした。一度は女優を目指した麻恵さんが、いまだ政情不安定な国で夫、仲間と新しい国造りのために心魂を傾けてる姿に唯々頭が下がる思いです。

終演後、2007年明治座にて水谷龍二作・演出、風間杜夫主演の「うそつき弥次郎」に出演した経緯から、水谷、風間さんとのひさしぶりの再会に感慨もひとしおでありました。

人のために生きることがすなわち己のために生きる。このバランスの取り方が実は非常に至難の業ではなかろうか...自分らしく生きるということも含めて。麻恵さんのバングラデシュでの過ごし方からそんなことをふと考えてしまいました。

昨日も、多くのお客さんの温かい声援を全身に感じながら杜夫ちゃんラストまで命懸けで舞台を走り回っておりました。

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秋の夜、匂う金木犀

2024/10/15
【第1950回】

先週11日に、東京での初日を迎えた風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン ミッション・インポッシブル~牛山明、バンコクに死す~」昨日で無事4ステージを終えることが出来ました。連日、客席は笑いと拍手の渦状態、ラストは今年の元旦に起きた能登大地震への鎮魂をこめての歌で締めくくっています。それにしても75歳になる風間杜夫の身体を張った演技に唯々驚嘆する日々でございます。こんな芝居ができる俳優さん、日本いや世界に居るんでしょうかね?27年に亘って継続していることだけでもギネスものだと思っています。

カーテンコールでの挨拶で「お客様の声援があっての芝居...」確かに、観客の反応が良ければ演者は勇気百倍、その波に乗っかり持てる力をパワーアップして客席に届けることが出来ます。

この混沌とした社会状況のもと、劇場に足を運んで来て頂いた皆様には、とにかく喜んでいただき明日への励みになるものを届けないとプロデューサーとしては失格です。

芝居は何でもありの世界ですが、出来うるならば笑いは不可欠かなとも思います。そんな展開の中きっちりとしてテーマを打ち出せれば...

30年間105本の創作劇を創ってきましたが、まだまだ道半ばでございます。一昨日の終演後のトークショーでも述べたんですが、この一人芝居、風間杜夫が演じたいという思いがある限り、おいらもくたばるわけにはいきませんね。

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いよいよ17日まで!

2024/10/11
【第1949回】

10月9日(水)文京シビックホールにて島田歌穂デビュー50周年記念コンサート「プレミアムシンフォニックコンサート」を鑑賞。先ずは50年間現役で続けてきた、来れたことがあっぱれですね。この世界の浮き沈みは半端じゃございません。華やかなデビューを飾ったものの数年で消えてしまう人が多数、生き延びてもなかなか仕事がなくアルバイト生活に逆戻りなんてことも当たり前...半世紀、現役で数々の賞を受賞し、大阪芸術大学の教授として後進の指導にあたるなど今尚エネルギッシュな姿には頭が下がる思いです。あの華奢な身体からの驚くほどの声量、情感、満員の観客は大満足だったと思います。

トム・プロジェクトでも来年、再来年と「モンテンルパ」の公演が控えています。劇中での歌穂さんの絶唱「モンテンルパの夜は更けて」が今から待ち遠しいです。

10月10日(火)は有楽町マリオン・アイマショウで「The Gentlemen's」を鑑賞。橋本さとし、石井一考、他3名の若手に交じって村井國夫さんが出演ということで出かけました。

現役で活動しているバリバリのミュージカル俳優たちのなかで村井さんの渋さは際立っていました。<ラマンチャの男><マイウエイ><レ・ミゼラブル>などなどバリトンの染みいる声に、ほとんど女性客で埋まったお客様うっとりしていました。それにしても若手の3人の歌と踊りはド迫力で見応えがありました。終演後、村井さんに聞いたら「今は、歌と踊りだけでは駄目で芝居もできなきゃ使いものにならない...」とおっしゃっていました。

いやいや、どの世界も生き残っていくにはまずは日々の努力、そして出逢い、そのうえでの運も絡んでくる実に厳しい世界でございます。

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秋の雲

2024/10/09
【第1948回】

今日は11月並みの気候、体調管理に一苦労する日々です。衆議院は今日解散するとのことですね...念願の総理に成れた石破さん、初々しい姿はいいんですが党内野党で言いたい放題だった様子から一変しましたね。分かりますが、ここは信念を貫いてほしかったと言いたいところです。しかし、この方結構したたかで策士かもしれませんよ...長年冷や飯を喰わせた輩にここぞとばかりに反撃の狼煙をあげているのかもしれません。短命で終わるのか新たな戦略で石破カラーに染め上げていくのか、いずれにしても選挙結果次第で政界の地図が大幅に変わるかもしれません。それにしても、裏金議員いまだ核心部分を隠したまま厚かましい顔で選挙に出馬するなんてことが許されんですから、やはりこの国の政治は異常と言わざるを得ません。選挙という国民一人一人に選択のチャンスがあるのですから、そこは良識ある判断で尊い一票を投じて欲しいですね。

ドジャース惜しくも負けちゃって崖っぷちに立ちました。それにしてもドジャースの先発投手陣のひ弱さが目立つ試合が続きます。いくらMVPトリオの揃い組といっても序盤に大量点奪われると苦しい展開になってしまいます。大谷選手の夢の世界一、なんだか怪しくなってきました。やはり彼が投手となってチームを牽引していかないと現状ではなかなか難しいかな?相手のパドレス、なんだかガラの悪いあんちゃんたちの集団みたいです。ベンチの中でひとりきりっとしたダルビッシュの顔が映るとほっと致します。

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北の香り

2024/10/07
【第1947回】

9月30日(月)午前2時に森康次氏が亡くなりました。71歳の誕生日を迎えたばかりでした。2022年12月にトム・プロジェクトを退社し病いを抱えながらのリハビリの日々でした。最後は病院で安らかに最期を迎えたそうです。

森ちゃんとの想い出はたくさんあるし、共に会社を支えあった戦友でもありました。おいらの友人が立ち上げた劇団GMGでの出会いが50年前になるかな...劇団では、制作をやりながら15年間劇団の中心的な働きをしていました。おいらがトム・プロジェクトを立ち上げるときに声を掛けました。どうなるか先行き不安の中、森ちゃんも夢に向かって共に突っ走ってくれました...彼の持ち味である愛されキャラで相手の懐に果敢に飛び込み、酒を飲みながらの営業は得意中の得意でした。酒と煙草は生涯の友でした。海外公演も積極的にアプローチしていました。ロシア、ヨーロッパ、アメリカ、アジアなどなど、彼にとっても想い出深い旅公演だったに違いありません。

10月4日の通夜、5日の葬儀にもたくさんの人達がお別れに来ていました。今にしては少し早い死だったかのしれませんが、十分に生ききった人生だったと思います。

本当にお疲れでした!あちらの世界でも貴方の愛されキャラは貴重ですよ。

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遺影

2024/10/04
【第1946回】

昨日は神奈川県平塚市にある、ひらしん平塚芸術ホールで風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~ミッション・インポッシブル~」2ステージ目の公演に行ってきました。まずビックリしたのはJR平塚駅のホームに降り立つと目の前に、あのポスターが飛び込んできました。これはなかなかインパクトがあります。映画かな?とも思わせますが、ひとり芝居と銘打ってますから大丈夫でしょう...駅から8分歩いたところにモダンなホールがありました。やはりあのポスターの宣伝は十分な効き目があったようです。会場は満員、苫小牧から5日の間があったのですが、お客様の熱気で杜夫ちゃんもノリノリで演じてました。カーテンコールで「こんな年で...」と挨拶した途端、客席から「若い!」という大きなかけ声がホール一杯に響き渡っていました。演じる者にとってはこれほど嬉しい後押しはないと思います。

おいらも平塚に降り立ったのは始めてでした。何処の街にもある風景ですけど、再開発した場所と昔ながらの飲み屋街が混然としていて味わいがある街でした。中でも今ではめっきり少なくなった昔懐かしいキャバレーがありました。昭和のキャバレーは、生の楽団の演奏をバックに馴染みのお客とホステスさんがしっとりとチークダンスを楽しみながらの古き懐かしい昭和の香りがしていました。お金欲しさの若い娘さん集めて商売してる平成以降のキャバクラなんかより良いんじゃないかしらと思ってしまいます。

10月というのにまだまだ暑い日が居残っています。生き物すべて調子狂ってしまいますね。

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平塚駅ホームから

2024/10/02
【第1945回】

昨日は、新宿・紀伊國屋サザンシアターで劇団民藝公演「ミツバチとさくら」を観劇。トムでもお馴染みの、ふたくちつよしさんの作で築50年以上の古い家で繰り広げられる夫を亡くした母親と4人の娘の間で繰り広げられるドラマです。今年5月、ふたくちさんのお母様が104歳で亡くなり、今回のドラマにも亡き母へのオマージュらしきシーンがありました。おいらも、まだご本人が元気だったころ劇場でお会いしましたが、それはそれは明るく元気でその場を一瞬にして解放区にさせてくれるパワフルな方でした。

そして、昨日のお客様のパワーにもビックリ!まさしく創立73年の歴史を感じました。おいらも上京してから、宇野重吉、滝沢修、米倉斉加年、北林谷栄、佐々木すみ江、奈良岡朋子さんが演じる芝居を随分と観させていただきました。宇野さんのカラーが、地味ながらもしっかりと日本の風土を大切にしながら庶民の哀歓を醸し出す劇団というイメージを持っていました。その良さをいつまでも共に感じていたいというシニアのお客様が、まるで遠足にでも来ている感じで芝居を楽しんでおられました。おいらの後ろのお客さん、開演前からお互いの近況を語り合い、開演してからもまるで子供のように小声であれやこれやとお喋りしながらの観劇でございました。勿論、芝居を観に来ているのですが、劇場が普段なかなか会えない知人、友人の社交場になっているような光景でした。

芝居というフィクション、そして実人生、これらがクロスする場でもあるシアター。大切で守っていかなきゃいけない場だと思います。

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初秋のひまわり

2024/09/30
【第1944回】

先週27日(金)、北海道苫小牧で風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~ミッション・インポッシブル」無事初日を迎えることが出来ました。苫小牧は作・演出家である水谷龍二さんの出身地です。公演があるたびに友人知人が一致団結してチケットを捌き、いつも満員のなか上演できるので大変ありがたいと思っています。北の大地から上京し、この業界で名を成した水谷さんにとっても嬉しい限りです。苫小牧と言えば王子製紙の城下町、この街で文化の華を咲かせることを願って日々奮闘している人たちにも大きな刺激になる公演だったと思います。幕開けからラストまで温かい拍手と笑い、どんなに場数を踏んだ役者でも、初めてお客に接する初日公演は戦々恐々たる思いです。しかもひとり芝居ですから誰も手助けしてくれる人は居ません。終演後、アンコールでの風間さんの言葉「本当に今日は皆さんの背中を押してくれる声援があってこそ無事に終えることが出来ました...」この初日の感触を大切にしながら、これからの本番になお一層己を奮い立たせること間違いなし!

自民党の総裁選びもドラマがありました。もしやの石破さんラストチャンスをものにしましたね。あの怖いおばさんにならなくてほっとしている人たくさん居るんじゃないかしら?あのおばさんになったら日本沈没間違いなし、隣国とバチバチのバトルになるどころかアメリカとの関係もぎくしゃくしてしまいます。しかし、石破さんだって不安定な基盤でいつまで持つかしら?かといって野党もバラバラ、この国のかじ取りはいまだ不安定。来月の選挙、沈思黙考のもと間違いない選択を頼んまっせ皆の衆。

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苫小牧のホテルからの一望

2024/09/26
【第1943回】

ようやく秋らしくなってきました。この時期は着る服も難しくなってきますね。昔みたいにじわりじわりと秋が忍び寄るわけでもでもなく一気に寒くなったり、思い出したように真夏日になったり、全く読めない季節の変わり目になってしまいました。世界情勢と気候変動がなんだか寄り添って世界を混乱に落とし込めています...でも、このすべてはいつまで経っても欲にまみれた人間が自ら招いた結果なんですがね。

そんな折、久しぶりにつげ義春の本を手に取りました。1970年代、全共闘世代に多大な影響を及ぼした漫画家です。「ねじ式」、日常をテーマにしながらシュールな技法で夢幻の世界に誘う作風はとっても刺激的であり魅惑的でありました。彼は日頃から、TV、新聞類を一切シャットアウトし「自分にとってのリアリズムは家庭にしかないんですから......淡々と生きていれば、それでいい」「もっと寂しい所で誰にも看とられずにすっと消えたいね。都会じゃ未練が残るじゃない......」なんて言葉を一貫して吐いてます。

ここまで極端でなくとも、己の人としての佇まいを凛とし誠実に生きる人たちが少しでも増えれば少しはマシな社会になるはずです。

それにしても兵庫県の知事の醜態にはほとほと呆れてしまいます。日本社会の縮図が見えてきます。東大卒→官僚→政治家、このお決まりのパターンが今の日本の体たらくぶりを露呈しています。選挙民がしっかりしなきゃこの図式は永遠に続くこと間違いなし。

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なんとなく秋の空

2024/09/24
【第1942回】

9月22日に留守晃(とめもりあきら)さんの6年振りのコンサートに行って来ました。場所は玉川上水にある小ホール。立川からモノレールに揺られ自然が残る素敵な場所でした。トメちゃん元気そうでした...冒頭から何故今のスタイルになったのかの語りがありました。若い頃から、歌、芝居の道を歩み始めたのですが、ふと人が創ったものをコピーし表現することに疑問を感じ自ら作詞、作曲しコンサートを始めたとのこと。イラストを画いてもなかなかのもので多彩なアーチストであることは間違いありません。なんと言ってもあの伝説のミュージカル・レミゼラブルで1994年~1998年までアンジェルラス役を演じた実力者。上手く時流に乗れば今や売れっ子のアーチストになったはずなんですが、頑なに己の生き方に拘り現在のスタンスを維持しながら、のんびりと気ままなシンガーソングライター人生をつらぬいている次第でございます。

この日もお酒をちびちび飲みながら素敵な歌を聴かせていただきました。なかでもおいらが大好きな「休日」は何度聴いても泣けてきます。普通の日常の有様が市井の人たちの暮らしとマッチして情景が浮かんでくるのです...何事もなく穏やかに生きてることの有難さがしみじみと伝わってきます。

昨年YouTubeで公開された「らりるれロンドン」今一度、聴いて見てくださいませ!

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玉川上水

2024/09/19
【第1941回】

いろんな芝居創ってきましたが、終わった後、沸々と思い返す作品もそうは多くはないと思います。2週間経ってもいまだ不思議な感覚が甦る「かヘり花」、こんなハガキが舞い込んできました。

 

「かヘり花」は演劇の楽しさを広げる作風です。以前フランスで観たコントを想い出しました。所謂、日本の軽演劇とは違い、物語あるいは寸劇の類ですが、ユーモアはもちろん人生を語る機知に富んだものでした。その時を何十年も経って思い起こさせる洒落た舞台の展開に時を忘れて引き込まれました。周りの観客の笑い声も共感を漂よわせる笑いで、各々人生に振り返りあるいは登場人物の一挙手一投足を一緒に楽しんでいた風情でした。鍋で爆弾の材料を煮込んでる様は、当時観たフランスコントの中の魔女が秘薬を煎じる姿と重なり思わず何が出来るんだろう?と成り行きを見守ってしまいました。結果花火のような爆薬に化けたとはまさにウィットそのものです。実在したのか、あるいはすでに影の存在になってしまったのか観る者の解釈に委ねられた三人の主人公と、その反対に今を示している若い二人の対比も話の展開を興味深くしました。2時間ほどパリの芝居小屋に居る気分でした。拍手!

 

この日本の風土では、なかなか生まれにくい作品の登場でした。改めて日向十三の描く世界をこれからも観てみたいと感じた次第です。

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キノコと脱け殻

2024/09/17
【第1940回】

一昨日、北千住BUoYで理性的な変人達たちによる「寿歌二曲」を観てきました。このグループは演劇科がない東京藝術大学出身にも関わらず、なぜか演劇の道を志した30代女性を中心とした団体です。女性目線を大切にしながらこれまで3本の作品を発表してきました。前回の「海戦2023」が大変面白く、今回も期待しながら会場に向かいました。会場といっても昔お風呂屋さんだった廃墟を思わせる空間です。この空間に入った途端に芝居は始まってます。昔、石橋蓮司さん、緑魔子さんが立ち上げた劇団第七病棟がそうでした。

閉鎖した映画館、廃校など、主に廃墟になった建物を芝居小屋に仕立て上げ唐十郎、山崎哲の作品を上演していました。嘗て行き来したであろう多種多様な人の息遣いが建物内から匂ってくる感覚と、フィクションである物語がクロスしてとても刺激的な舞台でした。

今回も、朽ち果てた湯船、天井、壁、洗い場のなかを縦横無尽に動き回る役者の汗と埃は、核戦争前後を背景とした物語にはぴったりでした。まずは、この場所選びのセンスが理性的変人のネーミングにドンピシャ。座長を務める女優滝沢花野のエネルギッシュな芝居ぶりに拍手。トム所属の女優さんですが、この集団での花野ちゃんはなぜか解放され伸びやかに演じてます。場所を見つけたなと思いました。

それにしても、北千住の「飲み屋横丁」は相変わらずディープですな。昼間から飲んべいな連中がうろうろしています。せんべろ(千円でべろべろに酔える店)の看板があちこちに並んでの客引き合戦。こんなところで飲んでいると後期高齢者は家に辿り着けなくなるという危機感から駅に直行しました。

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せんべろ天国

2024/09/13
【第1939回】

昨日は「かへり花」、相模原演劇鑑賞会で大千秋楽を迎えることが出来ました。鑑賞会の人達の芝居を楽しもうとする姿勢がより芝居を盛り上げてくれた感じがします。もともと芝居が好きで集まった団体だから当然のことなんですが、創造団体からすれば強い味方です。役者と言う生きものはどんなに誉められても、いつも不安を抱えながら舞台に立っています。そんな時、一番嬉しいことはお客様の温かい視線です。面白い、おかしいと思ったら真から笑う。心の琴線に触れれば鼻をすすりながら涙を流す。この素直な反応が、どれほど役者にとって励みになることか...東京の観客の中には、少なからず重箱の隅をつつくかのような視線で芝居鑑賞をする人が居るのも事実です。勿論、厳しい評価があってこそ芝居の質が高まるのも理解できますが、たまには己の既成概念を捨て受信機を真っ白にして芝居に接するのも新鮮なのでは無いでしょうか...

昨日上演した会館も近い将来閉館の運びとなるそうです。こんな話、全国の会館で囁かれています。奈良県橿原市にある橿原文化会館も閉館が決定されたそうです。おいらも行ったことがありますが古都奈良に相応しい素敵な会館です。どんな小さな町でも文化会館があればそこに人が集まり、モノ創りに励み、音楽、演劇、古典芸能などなどを楽しむことが出来るんです。アートの成熟度は国の未来のバロメーターでございます...その辺のところを理解してる政治家、役人が少しでも増えればと、ずいぶん昔から願ってはいましたが残念ながら未だ道半ば、いやこの国は無理かな?

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大千秋楽

2024/09/10
【第1938回】

「かへり花」9月8日(日)に無事東京公演を終えることが出来ました。トム・プロジェクトでは30年間様々な芝居を創ってきたのですが、今回の芝居はトムが芝居創りを始めたころ、従来の演劇を変えて見せようという意欲を彷彿とさせる舞台でした。起承転結がはっきりした芝居を見慣れた人にとっては戸惑う方も多かったと思います。でも、演劇だけにしかできないことが随所に散りばめられ観客の想像力をおおいに喚起させる作品であったと思います。日常生活の中では、あまりにも凡庸で刺激に満ちたものが少ないが故、常識を超えたシーンに遭遇すると身体が混乱に陥ってしまう...そんな時は常識を疑い、己を無にすると同時に童心にかえって今あるものに素直に反応する...そうすることによって新しい感性を獲得することが出来ると思います。

あらゆる生き物のなかで神様が唯一人間に与えたものが想像力です。この素晴らしい特権を使わずして死んでいくなんて、なんと勿体ないことでしょう。芝居だけではありません、己の想像力の羽を伸ばし羽ばたくチャンスはどこにでも転がっていますよ。ウロウロ、キョロキョロしさえすればキャッチすること間違い無し。

この作品、12日の相模原演劇鑑賞会での公演がラストです。まだまだ見どころがある芝居だと思っています。

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鏡に映った夕焼雲

2024/09/06
【第1937回】

プロデューサーは、本番中、毎日劇場に行き日々変化する芝居を観ることも大切な仕事のひとつです。役者さんも自分の体調も含めて、毎回同じことの繰り返しでは新鮮な演技はできないと思います。昨日よりも今日、そして明日につなげる芝居をしていたいという強い気持ちで舞台に立ってます。その微妙な演技の機微を楽しみ、終演後に役者さんにアドバイスできればと思っています。芝居には正解はありませんので、あくまでプロデューサー、そして一観客としての意見です。アドバイスを良しとしない演者がいても当然です。おいらも舞台に立った経験者、己が演じてることが観客に上手く伝わっているのか?そんな不安の中で役者は戦々恐々たる心境で芝居に取り組んでいます。そんな時、少しのアドバイスで救われ、新たな発見に導かれたこともありました。

そしてもう一つ、観客の反応をしっかりと受け止めることも大切な仕事です。本番前、本番中、終演後、芝居の中身次第でお客さんの表情は一変します。気に入ったときの顔、お気に召さなかった時の表情、これがなかなか面白くて長年この仕事やってるのかもしれませんね。

それにしても俳優座劇場がある六本木の街、随分と様変わりしました。昔は防衛庁があり繁華街には六本木族なるものが街を闊歩してました。新宿なんかと違って大企業のボンボンなんかが派手な遊びをしていました。そんななかカルチャーのシンボル的な存在が俳優座劇場でした。新劇の老舗である劇団俳優座の拠点でもあり、この劇団から東野英治朗、仲代達矢、平幹二朗、市原悦子、栗原小巻などなどそうそうたる役者を輩出しました。

今の六本木にはいくつもの高層ビルが居並び、この街での遊び方も大きな変貌を遂げています。俳優座劇場の閉館も時代の流れには逆らうことが出来なかったんですね。

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文化遺産

2024/09/04
【第1936回】

心配してた雨風にも免れ一昨日無事「かへり花」初日を迎えることが出来ました。いつものことながらお客様が入っての反応が気になります。芝居は最終的にお客様が優劣を決めるものです。勿論、肌に合わない作品だとNOを突き付けてきます。まあ、6,7割の人達が喜んでくれれば成功と言えるのではないでしょうか...特に今回の作品は従来のトム・プロジェクトのラインアップのなかでも異色の出し物だっただけに、今までトムの舞台を観慣れた人達にとっては戸惑う人もいるでしょう。一方、新鮮に感じ取ってくれる人の意見も励みになります。演劇そのものがフィクションの世界ですから、無限に広がる時空間の中で想像力を駆使して楽しんでいただければプロデューサーとしては嬉しい限りです。

初日は、勿論キャストの皆さんも緊張するのは当然です。少し硬かったかな?二日目の昨日は、観客の手ごたえも少しずつ感じ取ることが出来、随分リラックスしながらの芝居でなかなかの出来だったと思います。

終演後はトークショーということで、作家、演出家、プロデューサーで今回の作品についての話をしました。そして、やはり歴史ある俳優座劇場が来年の4月で閉じてしまうことに、この劇場に深い縁と思い入れがある日向さん、小笠原さんが悔しい思いを語っていました。

300人キャパの劇場は創造団体にとっては夢の空間です。しかし、劇場主からしたらすべてが経済至上主義に邁進してる現況を鑑み断念せざるを得なかったのではと思います。

いずれにしても、演劇はいつの世も厳しい状況下の下で日々闘っています。演劇が消滅するときは地球の滅亡...ちょいとオーバーかな?いや、なかなかしつこく粘り強く楽しみながらしこしことやってるのが芝居屋さんですから大丈夫ですよ!

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夢の空間

2024/09/02
【第1935回】

若い頃のおいらのように、あっちにふらふらこっちにふらふら、気にいった所ではゆっくり滞在しながらも通り過ぎつつある気まぐれ台風も何とか最後の旅を終えそうな週明けとなりました。そしてこちらも、週末は台風並みの目まぐるしい時間を過ごしました。金曜日は「かへり花」の最終稽古。5人の登場人物が織りなす奇妙な人間ドラマは、まるで弦楽五重奏曲を味わっているようでした。何度観ても不思議な芝居でありながら、生きていることへの素晴らしを感じさせてくれそうな舞台になりそうです。昨日は俳優座劇場で照明も入っての舞台稽古、いよいよ今日が初日でございます。

土曜日は風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン ミッション・インポッシブル~牛山明、バンコクに死す~」の稽古初日でした。1997年から創り始めた風間杜夫ひとり芝居、今年で27年、いやはや良くやりましたね!杜夫ちゃんも今年で75歳、後期高齢者の仲間入り。

いやいや、稽古初日からの本読み気合い十分はち切れんばかりのパワーでした。たったひとりで1時間15分ばかり喋って歌って、そして今回はトムクルーズばりのアクション。なんだかプロデューサーとしても大丈夫かな?と心配しちゃいますけど、そこは天下無敵の役者魂の持ち主ですから、必ずやお客様に喜んでいただけるものを提供してくれるでしょう。

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台風一過

2024/08/30
【第1934回】

琥珀色のコーヒーを嗜むひとときはまさしく至福の時間だ。若い頃から今に至るまで変わることはない。3畳一間、家賃3000円だった貧乏時代から一丁前にイギリス製の手動式のミルを買い込みドリップコーヒーを楽しんでいました。あの豆を挽く手応えと、フィルターに収まった挽いたばかりの粉に時間をかけて湯を落とす微妙な間がたまりません。まだ見ぬ異国の地から運ばれたコーヒー豆がゴールを迎える瞬間でもあります。カップになみなみと注がれ湯気と共に醸し出す匂い、精神安定剤としての役割も申し分ありません。

最近は焙煎機も購入し、コーヒ愛は募る一方です。キリマンジャロ、コロンビア、モカ、などなどいろんな生豆を購入してるんですが、最近のお気に入りはエチオピアイルガチェフです。華やかな香りと明るい酸味と甘味のバランスがたまりません。でも、焙煎具合とミルでの挽く具合で微妙な味が出てしまいますが、そこがまたアナログ手法の楽しみの一つです。既成のありきたりのモノではなく、その時の己の体調、感情も含めてのコーヒーという生きモノに対峙する真剣勝負(ちょいとオーバーかな?)いや、アフリカ、中南米の人達が丹精込めて収穫した宝物にはそれぐらいの気持ちがあって当然でしょう。

昨日も、4種類の生豆を焙煎し即頂きました。焙煎後の部屋はまさしく「コーヒールンバ」の音色が聞こえてまいりました。

 

♪昔アラブの偉いお坊さんが
恋を忘れた あわれな男に
しびれるような香りいっぱいの
こはく色した飲みものを教えてあげました
やがて心うきうき
とっても不思議このムード
たちまち男は若い娘に恋をした♪

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我が家の焙煎機

2024/08/28
【第1933回】

おいらの会社でのデスクには毎年、書家である井上龍一郎さん制作の机上カレンダーが置かれています。ここ最近は、1989年よりアフガニスタンにて山岳部医療過疎地でハンセン病や結核など貧困層に多い疾患の診療を開始。 2000年からは旱魃が厳しくなったアフガニスタンで用水路の建設に力を注ぎながらも2019年に銃撃され亡くなった中村哲さんの言葉を龍一郎さんの書でデザインされたものが主になっています。

今月のカレンダーには「戦いというのは資源や領土の奪い合いから起こります。だから人と人との和解だけでは戦争はなくならないだろう。人と自然が和解し共存する世界にならない限り戦いはなくならない。」と書かれていました。

この言葉の持つ意味を、この奇跡の惑星である地球に住む一人一人がしっかりと認識し行動に移せばまさしく理想郷としての地球が完成することでしょうね。

この理想郷を成就することを阻んでいるのが時の権力者です。日本のみならず、世界のどの国にも間違いなく権力者はいつの世にも存在しました。この世に生を受け誰しもが抱く欲望の強さ方向性、そのバロメーターの加減によって突出した権力者が誕生してきました。

これらの権力者が、地球を支えている自然に感謝し共生する理念で社会を動かせばとは思いますが...そうはいかないのが権力という名にしがみつき溺れていく権力者の実態です。

おいらはいつも、空のキャンバスに描く雲の表情、道端に何気に咲く野花、樹々を飛び交う野鳥や虫の群れ、勿論、街中、車内ですれ違う多種多様な人たちとの出会いも含めてトキメキの感情を大切にしながら過ごしています。だから争いは嫌いですよ...

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蝶もコガネムシも鳴いてます?

2024/08/26
【第1932回】

連日猛暑が続く8月も今週で終わりとなります。日本の野球界、パリーグはソフトバンクの優勝ほぼ確定。あとはクライマックスに残る戦いが日ハム、ロッテ、楽天で繰り広げられています、我が心のライオンズは早や蚊帳の外、今シーズンの最下位が決定!何せ打てません。昨日も新人の武内投手が奮闘しているのに打撃陣は2安打、これじゃ勝てません。それにしてもライオンズのコーチ陣どんな仕事しているんでしょうね?時たまベンチの様子が映るのですが、皆さん熱中症におかされた夢遊病者のような表情でした。これじゃ選手も好き勝手にバットをブンブン振り回し凡打の山を築いてしまいますね。少しは頭使えよ!とTVを前にしていつもながら萎えてしまいます。

そんなわけで今年はメジャーリーグ、ドジャースの大谷選手の活躍ぶりを楽しみに残り少ないシーズンを楽しんでいます。それにしても凄すぎます、この時期でホームラン41本、40盗塁、そして何より素晴らしいのは己の才能に溺れることなく礼節を重んじ堂々とプレーする姿。これじゃ敵味方問わず文句のつけようがありません。こんな選手がこの島国から出現しようとは、野球小僧としては嬉しい限りです。

大谷選手みたいな政治家が出現すれば、もう少しこの国もましにはなるんですがね...総裁選の出馬予定の皆さんなんともぱっとしませんね。先ずは裏金問題でしょう、誰一人として争点にしない点でアウトですが、メディアが騒ぐ人気投票レースをまるで娯楽番組と楽しみ結局は自民政治が続くに違いありません。それに加担しているのが野党のだらしなさ、昔の名前で出ていますみたいな人達で行う立憲民主党の党首選挙ガックシです。

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今日の空

2024/08/23
【第1931回】

一昨日、TBS放送の国を背負った『SASUKE』初の団体戦...世界から完全制覇者たちが聖地・緑山に集結した番組を視聴。この番組は1997年から放送されていますがほとんど見てるかな。なにが面白いかって?普段、地道な仕事に就いている人たちが、高い壁を登ったり、3センチの突起物に指をかけ移動したり、逆流する水中を泳いだりとか...考えてみればこんなことできたからって何の役に立つの?と思うのだが、そんな役に立たないことに日々血の滲むような鍛錬を重ねている姿に感動するんですね。

この世の中すべからく、いまだ立身出世を求める輩が多数を占める中、無用なことに挑戦するこの人たちの存在は貴重だと思います。無駄なことの中に、本当は人生を豊かに生きていけるヒントがたくさんあるのに、ついつい効率が良いか悪いかで判断しがちになるのがほとんどですね...

この日、日本チームのエースでもある森本裕介(通称サスケ君)は、いつものように団体戦優勝決定戦でアメリカチームを下し優勝に導きました。普段はソフトエンジニアの仕事をしながらも、この難攻不落の競技をいとも簡単にクリアしていく姿に勇気をもらえます。32歳のどこにでもいるようなお兄さんの笑顔がまたいいんです...SASUKEに対して熱を入れる一方で、入社直後の研修中は大会を欠場するなど公私は徹底分離しており、仕事中はSASUKEのサの字も考えていないと言い切るところがたまりません。

まだまだ暑い日々が続いていますが、たまには焦らずのんびり、無用なこと無駄なことに時間を費やす週末にしてみませんか?

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涼んでいます

2024/08/21
【第1930回】

昨日、「かへり花」の初めての通し稽古を観てきました。日向十三さんの不思議な世界を老若男女5人の俳優が、自由自在に舞台の設定になっているちびっ子広場で遊んでおりました。改めて、この芝居アナーキー満載の芝居だと思いました。現世あらゆるところで制度にがんじがらめにあっている中、心身を思い切り開放してしまえばどれだけ楽しく生きていけるか?そのせめぎ合いの後にくる世界は如何様なものなのか?時空間が自在に流れる中、それぞれの人生を抱えた観客の皆様が、思い切り想像の羽根を拡げ自分なりの着地点を見出してくれればいいなと思いました。それにしても、大和田獏さん、藤吉久美子さん、有森也実さん、まるで童心にかえったみたいに広場を所狭しと立ち振る舞っていました。長野優華さんの初々しさ、中嶋ベンちゃんの人生の哀歓を感じる芝居もなかなかのものです。

考えてみれば、今までに見たことがない事象に遭遇したときの驚き、感動はその後の人生を変え得るチカラを持っています。そんな可能性を持った「かえり花」是非是非、ご覧になってくださいな...

ところでアナキストと言えば、何だか危険な思想の持ち主だと思っている人もいるかと思いますが、実は社会全体が対等な関係の中で、相手になんの見返りを求めないで、日々協力していく。そして、この協力こそが、私たちの社会の富の源泉であり、人びとを幸福にする基盤となっている、これが本来のアナーキズム、アナーキストだと思いますよ。

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夏の雲

2024/08/19
【第1929回】

週明け、今日も相変わらず暑い。外歩きキョロキョロ、ウロウロ大好き人間なのだが、この猛暑、そして後期高齢者となれば少しは躊躇してしまいます。となれば、クーラーを友にして搔き集めた様々なジャンルの音を嗜みながら読者三昧の日々となりますね。

昨日も九段理恵さんの「東京都同情塔」を読了。文学もここまで来たかという感じ。あらゆるクリエーターが戦々恐々としているAIをも駆使して書き上げた作品。

コロナ禍の東京オリンピック開催からヒトの生命について、国立競技場と相対するホモミゼラビリス(同情される人達)を収容する東京同情塔の建設に向けた建築家にフォーカスをあて、街と建築を軸に、あらゆる方向から価値観を揺さぶるやり取りの緊迫感とその中に伺える未来への希望を描きたかったのかな...それにしても、この言葉の選択、展開、ある意味読者を選んだ作品かもしれません。いや、既成の文学に対する挑戦...いずれにしてもカルチャーは何でもありの世界です。

でも、やはり従来の文学を読み返すと、その時代の風景、人間の所作、揺れ動く感情の機微がとても愛おしく感じられます。古典から近代、現代、生きてるうちになんでんかんでん貪りつくすように楽しんでこその人生ですたい。

勿論、野球好きなおいらにとっても夏の甲子園、メジャーリーグの試合もちらほらと観ています。一昨日の早実と大社の一戦は見応えがありました。延長タイブレークでの両軍の作戦、そしてあとは選手の微妙な心の動き、まさしく筋書きのないドラマに酔いしれてしまいます。

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猛暑の中のサフランモドキ
花言葉~新しい始まり~

2024/08/16
【第1928回】

オリンピックも閉幕し、お盆休みも終わり、さてという今日、関東に台風直撃。昨日は終戦記念日、オリンピックがあったせいか何となく戦争に関する情報が少なかった気がします。9月に自民党総裁選に不出馬を表明した総理が「これからは一兵卒として...」こんな時に使う言葉かな?と最後の最後までセンスを疑ってしまいます。

昨日の新聞にこんな記事が掲載されていました。名優で知られた森繁久彌さんが日本の敗色濃厚になった頃、旧満州の新京放送局に勤務した時の話です。関東軍の命令で特攻隊員の遺言を残す仕事を任されました。ポロポロと涙を落としながら、60人ほどの若者たちの勇壮な言葉を録音しました。そのなかにひとり、おそらく永久に忘れられない隊員がマイクに向かって、重い口を開いて「お父さん。いまぼくはなぜだか、お父さんと一緒にドジョウをとりに行ったときの思い出でだけで頭がいっぱいなんです。何年生だったかな。おぼえてますか。弟と3人でした。鉢山の裏の川でした。20年も生きてきて、いま最後に、こんな、ドジョウのことしか頭に浮かんでこないなんて...」ポツンと言葉がとぎれてから、若者は言った。「なんだかものすごく怖いんです」。ハット胸を刺されるような響きがその声にこもっていたそうだ。「僕は卑怯かもしれません...ね...お父さんだけに僕の気持ちを解かってもらいたいん...だ」

あの戦争で本心から「天皇陛下万歳!」なんて気持ちで死んでいった若者はいないと思います。死の間際まで家族、恋人のことを案じながら散っていったに違いありません。いまだに政治家が「お国のために...」なんて発する言葉に違和感を感じます。女も男も子供も、敵も味方も、なぜ死ななければならなかったのか。それは避けることが出来なかったのか。誰のせいか。何のためか。戦場に散っていった多くの人達は、今尚、戦争が継続されている世界の現状に嘆き悲しんでるどころか、死の恐怖に魂をおののかせている気がしてならない。

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台風にもめげずミーンミンミン

2024/08/09
【第1927回】

今日は長崎に原爆が落とされて79年、午前中に式典が行われていました。数年前、風間杜夫ひとり芝居で長崎を訪れた際、平和公園、原爆資料館、爆心地に時間をかけて周ってきました。爆心地に落下中心地標柱として立つ黒御影石の碑の前で、一人の年老いたご婦人が長い時間手を合わせている姿が今でも脳裏に刻み込まれています。

今日の式典で、長崎市はイスラム組織ハマスと戦闘を続けるイスラエルの駐日大使を招待していません。それに合わせるように、G7主要7か国のうち、日本を除くアメリカやイギリスなど6か国の駐日大使が参加見合わせました。今回の長崎市長の対応は正しかったと思います。ハマスのイスラエルへの攻撃が発端と言え、その後のガザ地区での虐殺は目に余るものがあり到底許すことが出来ません。イスラエル、ユダヤ、先進国の深い繋がりは理解できるとしても、この虐殺を止めようとしない6カ国のリーダーの平和への希求度を疑ってしまいます。核廃絶を呪文のように唱えていますが、ほんとかしら?

長崎市は、前市長で4期務めた田上富久をはじめとして気骨のあるリーダーのもと核廃絶に向けての説得力のある発言を続けています。多くの政治家の発言は、建前と本音を上手く使い分けながらの緩い平和に聞こえてしまう。外交が一筋縄でいかないのは十分承知の上だが、世界の各国のリーダーの発言と行動があまりにも現実と理想が乖離している気がしてならない。

 

昨日、またまた九州で地震が起きました。以前から危惧されていた南海トラフとの関係が気になります。そしていつも気になるのが原子力発電所、ハラハラドキドキの日本列島であることには間違いない。

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テッポウユリ
~花言葉 純潔~

2024/08/07
【第1926回】

昨日は、広島に原爆が投下されて79年目になります。残り少ない当時の被爆者の方々の声を聞くたびに、この世の出来事ではない気がいつもながらしてしまいます。昨日の広島での平和式典での相変わらずのこの国のトップの発言にはガッカリしてしまいます。自分の身うちに被爆者が居ながらも、相変わらずアメリカの核の下に守られながら未だに核兵器禁止条約の批准に応じない姿勢に怒りさえ覚えます。

被爆しながらも生き残った人たちは、罪の意識を持ちながら晩年まで当時のことを口にしなかったといわれています。しかしここ最近のロシアによるウクライナ侵攻、ガザ地区での虐殺のニュ―スを目にして「この惨劇を伝えておかないで死ぬわけにはいかない...」と心開いた人たちが増え始めています。何とか次の世代に平和のバトンタッチをして欲しいと思っています。核を持つことで相手を脅し防衛することが当たり前になった狂気の沙汰に半ば慣れてしまった人間の愚かさにつくづく呆れてしまいます。

「ちちをかえせ ははをかえせ」で始まる峠三吉の「原爆詩集」の表紙絵を描いた詩画人の四國五郎さんは子供たちが喧嘩して帰ると「戦争を起こすような本当に悪い人間に、本気で怒れ」と諭したそうだ。当時、峠や四國らの詩を使い四國が描いた反戦反核ポスターを壁に貼りまくった。警官が来るとはがして逃げ、また貼った。四國を駆り立てたのも怒りだった。シベリア抑留体験、復員後に知った弟の被爆死。それらをもたらした戦争への憎しみを2014年の死に至るまで身をもって示してくれた。

沈黙している暇はありません、平和ボケもいけません...四國五郎さんが子供たちに諭した言葉で表現するしかありません。

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核をなくせ!とないてます

2024/08/05
【第1925回】

あっちゃこっちゃパリオリンピックで盛り上がっています。特に日本発祥の柔道には喧々諤々、審判の疑惑判定、団体戦での決勝のルーレットの怪しさ。いろんな人がいろんなことをくっちゃべっています。アスリートの苦労も知っているのか、どうでもいいのか?テレビ芸人がお金稼ぎの場で好き勝手に喋っている気がしてなりません。かたやSNSでは書き込み放題。もはや無法地帯化状態、この社会に対する不平不満、ストレス解消のための手段として手っ取り早い方法なんでしょうね...どうでもいいやん!と言いたい。オリンピックの組織自体が金儲けの団体なんだから、あとはこの日のために研鑽してきたアスリートが気持ちよく参加しプレーすれば良いだけのこと。所詮、参加することに意義のある大会だと思うので。

そんななか今回、柔道の阿部一二三選手の戦い方、態度に救われた気がします。柔道もここまで拡がってくると、武道精神、礼儀などなど日本柔道が語り継がれてきた伝承もどこの国にも浸透するとは限りません。唯一、勝つことで国の英雄となり身分が保障されるとなると、どんな手を使ってでも勝ちに行くと思います。そんな国の事情も考えずに「柔の道」の薦めを講釈しても聞く耳を持たないと思います。何事もそうですが、そんな時は自らの行動で示すしかありません。今回の阿部選手の凛とした姿はアスリートとしても模範となる姿でした。

 

一方、世界の情勢はますます混沌としています。イランがイスラエルへの報復攻撃の噂、バングラデシュでも学生デモで多くの死者が出ています。この夏のセミの鳴き声は、そうしたことに対する警告の声に聞こえるのはおいらだけでしょうかね...

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蝉の抜け殻
~再生と復活のシンボル~

2024/08/02
【第1924回】

いよいよ夏本番、葉月が始まりました。昨日は1日ということで近くの大宮八幡宮に、お朔日参り(おついたちまいり)に行ってきました。お朔日参りは、古くから日本に伝わる美しい風習です。私たちのご祖先様は、神様に感謝とご祈念を捧げることで心の平穏を保ち、日々を健やかに暮らしていたのかもしれませんね。毎日の生活の中に節目をつくり、心身をリセットし新たな気持ちで物事に取り組むなど、日々の生活に良い影響をもたらしてくれることからこの慣習が続いてきました。人間なんぞいい加減なものでダラダラと過ごそうと思えばいつまでもだらしない生き方をしてしまいます。

おいらは無宗教なんですが、古来から大自然に守られた神社に出向き、大きく深呼吸して手を合わせると身体の中に巣くっていた邪悪なるものが逃げていくような感覚がなんとも心地よく感じます。手を合わせながら願い事なんぞ一度もしたことはありません。ただただ「生かして頂いてありがとうございます。」の一言。感謝の気持ちを伝えるだけです。

中でも年に一度は訪れる伊勢神宮の神々しさには圧倒されてしまいます。生きとし生きるものすべてに神が宿っています。この地球上にあるすべてのものが、宇宙に起源をもって生まれてきました。地球上に存在するものは、すべてが神の化身、そんなことを改めて感じさせてくれる場所が伊勢神宮なんですね。

そんな自然な神さんを利用して商売にしている団体があちこちに存在していますね。まあそれだけ現世が不安と恐怖に苛まれているということでしょう。そんな状態に陥った時はふらりと近くの神社に散歩がてら行ってくださいませ。

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大宮八幡宮

2024/07/31
【第1923回】

今年の「風を打つ」公演、29日の松山市民劇場で無事千秋楽を迎えることが出来ました。今回は、亀戸文化センター・カメリアホールと演劇鑑賞会の四国ブロックの方々には本当にお世話になりました。演劇を楽しみに待っている人たちにベストな芝居を届けたい!という思いで、猛暑の中稽古をし本番に臨んだキャスト、スタッフの意気込みが客席に伝わったと思っています。水俣と家族、そしてこの国の未来、演劇を通じて少しでもいい方向に向かうことを信じての4回目の公演でした。

そして、錦糸町の稽古場では新作「かへり花」の稽古が始まりました。トムにとっても日向十三という新しい作家を迎えての作品です。この30年間、プロデューサーとしての一番の仕事は作家探しの旅でした。芝居は戯曲が良くないと、どんな名優が束にかかっても作品としては成立しないと思っています。この国においては劇作家の環境はあまりよくありません。あらゆる書き物の世界で戯曲ほど難しいものはないと思っています。すべてが台詞のみで進行していくわけですから一語、一語、登場人物の血の通った言葉でないと成立しない厳しさがあります。そんな条件の中で、限られた観客、すべてが人的労力という限られた経済効果のなかで得られる収入もほかの物書き産業から比べると決して高いものではありません。でも戯曲家の皆さんは、演劇の可能性を信じ、志を高く掲げ日々研鑽しています。そんな人たちと一緒に仕事出来ることは望むところです...でも、同じ価値観を共有できる人なんて人もなかなか出会えないのが実情です。

そして、久しぶりにマッチしたのが日向十三さんでした。9月2日の俳優座劇場での初日が楽しみです。

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稽古場の近くから

2024/07/29
【第1922回】

パリオリンピックが開幕しました。どこのTV局も競技の放送ばかり、この期間中にもウクライナでの戦争、ガザでの虐殺が続いてることを思えば正直言って勝敗ごとに一喜一憂してもおれません。平和の祭典といいながら、この世界の現状を見ればこの合言葉が何だか白々しい気もしてきます。あの守銭奴バッハ会長の顔が映る度に、裏金の怪しい影がどうしてもちらついてきます。平和の祭典と言いながら愛国心をむき出しにしながら戦うアスリートと応援団。これもある意味ではオリンピックと称する戦争かもしれません。

あの東京オリンピックの後に、次から次へと発覚した談合による不正な金の流れもまだ記憶に新しいところです。そろそろオリンピックそのものに対する催事の在り方を真剣に考えた方が良いと思います。国と国との戦いではなく、一選手同士の競技を楽しみメダルもなし、国旗掲揚もなしでもいいと思います。アートと同様にスポーツが人生に与える影響は多大なものがあると思うだけに、何とか改善し最良の方法で開催できないかと願っています。

今回の開会式で一番良かったのが、セリーヌ・ディオンが熱唱した「愛の賛歌」、神経疾患スティッフパーソン症候群という闘病中でありながら鮮烈な歌声でした。あのエディット・ピアフもさぞかし喜んでいたに違いありません。愛さえあれば争いなんかは起こらないでしょう。

 

それにしても、今日もあまりにも暑い。朝からけたたましく鳴き続ける蝉ちゃんも大汗かきながら声を嗄らしているに違いない。

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夏の空

2024/07/26
【第1921回】

夏の祭は子供のころから楽しみの一つでした。おいらが幼少期に過ごした博多では、近くのガラの広っぱが盆踊りの会場になったり、屋外映画館になったり、そんな日を心待ちにしながらワクワクしたものでございます。そして博多の最大の催事「山笠」7月1日~15日の間、街には男衆がきりりと長法被姿で15日の追い山に向けて準備する姿は子供心をくすぐるものでした。俺もいっちょまえの男にならんといかんばい!

そしてもう一つ、夏のイベントに欠かせないのは花火大会、中洲、大濠公園で行われていました。この時期はおいらにとっては花火を鑑賞することよりも稼ぎ時でありました。早くからラムネを売る場所を確保し、声を嗄らして売りさばいていました。といっても、子供にとっては大空に打ち上げられる花火の美しさに気をとられラムネを盗まれ親方にこっぴどく叱られた苦い思い出も記憶に残っています。

昨日、おいらが住む地区で行われていたちびっこ盆踊り、多くの家族連れでにぎわっていました。踊りを楽しんでいる子供たちより、この日出店していた綿菓子、焼き鳥などなどの店に長蛇の列。どこの祭も一緒ですね、食い気が勝るのは当たり前。

日本における子供の少子化問題、お祭りシーズンに老いたる人たちしか居ないなんて寂寥感漂うシーンなんて想像すると...これは違うお祭りかもしれませんね。

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夏の定番

2024/07/24
【第1920回】

いきなり強風、豪雨、今日の一日の始まりでした。何が起こるかわからない日々。

今日は川柳コンクールで選ばれた10句を紹介しますので、ニヤニヤ、爆笑なりくつろいでくださいませ。

 

①    増えるのは 税と贅肉 減る贅沢

②    物価高 見ざる買わざる 店行かず

③    マスクなし 2年目社員の 笑顔知る

④    50代 給与も肩も 上がらない

⑤    paypayを 覚えた父の 無駄遣い 

⑥    ダイエット 動画だけ見て 痩せた気に

⑦    パスワード チャンス3回 震える手

⑧    盗み食い ペットカメラに 映る父

⑨    アレとソレ 用事済むのが 日本流

⑩    2度聞くな! 言った上司が 3度聞く

(番外) 「どう生きる」 AIに聞く 我が老後

 

世相を上手くとらえてますね。

笑う門には福来る!

笑顔と感謝の気持ちで、この猛暑も乗り越えていきましょう皆の衆。

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準備万端!

2024/07/22
【第1919回】

この猛暑、後期高齢者にはとても応えます。暑さだけではなく湿気によるダメージが半端じゃありません。でも、ウクライナ、ガザ、そして世界各地での干ばつによる飢餓などのことを思えばなんのこれしきのことでぶーたれてるんじゃない!とおしかりを受けそうです。

冗談ではなく、世界の人達が本気にならないと紛争、環境破壊も含めて地球は滅亡のシナリオ通りに進行していくと思います。

今日も炎天下の中、サルスベリの花が青空に向かって咲き誇っていました。炎暑だろうが極寒だろうが、大地にしっかりと根付いている生きものは、しっかりと生きています。他とは決して争うこともなく天然の養分をしっかりと頂きながら凛とした姿で立っています。

今日は、バイデン大統領の大統領選挙不出馬もニュースも流れていました。トランプ氏の銃撃写真もなんだか無理矢理歴史を塗り替えようとしている意図がプンプンと臭ってきます。

そんななか、この日本国はどんな道筋を歩んでいくのか?この国の体質として、あの裏金問題、森友・加計問題、統一教会などなども霧の彼方に忘れ去られてしまうに違いありません。

そして、今週末から開催されるパリオリンピック、世界が混迷を極めているこの時期にやることに複雑な気がしてなりません。でも、おいらも含めて皆さんTVで観戦するんでしょうね...連日放映されている大リーグの大谷選手の活躍を楽しんでるように。

どこかで気分を変えていかないと、心身やられてしまいますからね。バランス感覚はとっても大切だと思っています。生きてこそなんぼの世界ですから!

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百日紅

2024/07/19
【第1918回】

今回で4度目となる「風を打つ」東京公演、今日が千秋楽となりました。3日間という短い公演でしたが、初日からキャストの熱量と比例するかのようにお客様の反応もなかなかのものでした。終演後の拍手の質が半端じゃありません。いまだ未解決の公害の原点である水俣病に対する問題意識もさることながら、困難に立ち向かう家族の在り方に深い共感を覚えたに違いありません。苦境に陥ったとき、如何に前を向かって生きていけるか?そのヒントになることがこの芝居には描かれています。様々な価値観を抱えながら、人はどこを切り取りながら家族という共同体を円滑に回していけるのか...最近、家族崩壊のニュースが頻繁に報道されています。親子でありながら、兄弟でありながら何故?血のつながりがあるほど憎悪の感情がより濃く現れるんでしょうか...

昨日、長年に渡って水俣病患者の方々の救済に関わっている方が終演後おいらのところに駆け寄り、「現地の患者の皆さんの苦しみを見た人間として、何とかしなければという気持ちが今なお救済運動へと駆り立てられてるんですよ。」と、そしてこの芝居を観てより背中を押されたとおっしゃっていました。あの中村哲さんも同じようなことを述べられましたね...見て見ぬふりする輩が増えるほど国は滅びていくに違いありません。

声を上げ、アクションを起こす、何事もここからしか変革はありません。

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劇場前の公園

2024/07/16
【第1917回】

先週の週末、いつも独自の視点で作品を選び上映し続けているミニシアター東中野ポレポレで「方舟にのって~イエスの方舟45年の真実~」を鑑賞。1980年に東京国分寺市から10人の女性が突如消え去り、「イエスの方舟」の主宰者である千石剛賢氏が若い美しい女性を連れ去り、カルト集団、ハーレムなどと世間を騒がせた事件。今尚、福岡県古賀市で昔そのままの共同生活をしている集団を取材したドキュメンタリー映画である。

おいらも、当時このニュースが報道されるたびに何とも不思議な感じがしていた。メディアは面白おかしく何とか事件にしようと躍起になっていたのだが、娘さんたちの家族の訴えも空しく結局は不起訴という形で幕を閉じた。要するに、千石イエスことオッちゃんの人間性に魅かれ日本全国逃避行を重ねながらも、この45年間この方舟は航海し続けられたと思う。

この目で確かめようと、2002年に当時博多の中洲のど真ん中で、この集団が営業していたスナック「シオンの娘」に出かけてみた。カウンターに囲まれた店は清潔で落ち着く居心地の良い雰囲気に満ちていた。見事なくらい美しく清楚な感じがする女性ばかりで、お酒は一滴も飲まず、媚びることもなく知的でリラックスできる会話で美味しいお酒を飲むことが出来た。そして何よりも驚いたのが40分にわたるショータイム、シャンソンあり、演歌、フラメンコ、太鼓、日本舞踊などなど盛りだくさんの芸が次から次へと展開される。それもアマチュアの粋をはるかに通り超えプロの技である。

今回、このドキュメンタリー映画を観終わった後も謎は残る...家族とは?宗教とは?社会とは?でも一番の謎は、千石イエスことオッちゃんである。

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イエスの方舟、今尚航海中

2024/07/12
【第1916回】

ライオンズの凋落振りが顕著でございます。10日の日ハム戦でなんと今シーズン今期5度目の5連敗。年間100敗ペースを着々と突き進んでいます。先発投手はまあまあ頑張ってはいるのですが、なんせ打者が他のチームに行けば二軍、三軍レベル。バントは出来ないし、チャンスにはことごとくポップフライか平凡なゴロ。これじゃ勝てませんがな。監督もゼネラルマネージャーが代行しているのだが、なにせへボ選手ばかりで機能しません。それもそのはず、前監督とゼネラルマネジャーが一体となって選手を甘やかした結果がそのまま今の成績に繋がっています。代行監督は「皆、一生懸命にやっているのだが今一つ気持の問題なのかな...」なにを今更と言いたい。そこを上手く導いてあげるのが、監督、コーチの仕事なのに、TVに映る首脳陣の呑気な顔を見る度にこりゃあかんですわ!という有様。

全盛期のライオンズと比べて親会社がじり貧状態で、育てた有能な選手は他球団に移籍、助っ人外人選手も皆ガラクタだらけ、そこで昨日、嘗てライオンズで大活躍したデストラーデ氏のスペシャルアドバイザー就任ニュースが飛び込んできました。もしや、初の外人監督が誕生するのかしら?でも、これくらい思い切った手を打たないと、この先数年間暗黒時代が続く予感さえしてしまいます。

今日は新人ながら5連勝、負け無しの武内投手の先発。福岡の出身で子供の頃からソフトバンクのファンクラブに入っていたのに、なんとも運命の悪戯、ドラフト会議でライオンズがくじを当て入団しました。ソフトバンクに入団していたら9勝~10勝してもおかしくない逸材。なんとかライオンズの救世主になって貰いたいものです。

どんなに弱くても、おいらは寝返ったりはしませんよ...頑張れ!頑張れ!ライオンズ!

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お客様(ファン)は神様です!

2024/07/10
【第1915回】

連日の暑さ、若い頃旅したインド、モロッコ、スペインの暑さを想い出します。先ずはインドの暑さは半端じゃありません。すべてがインドの暑さに持っていかれる感覚です。生きていることがやっとの思いです。だって暑さで行倒れになり干からびた死体が街に転がっているんですから。混雑したバスに揺られ握り棒を握りしめぬるりとした異常さは今でも忘れられません。案の定、帰国後には同じ飛行機の乗り合わせた乗客から赤痢患者が出たということで、おいらも伝染病棟に15日間隔離されました。おいらのお腹は、何故か頑丈なのか鈍いのか?3種類の赤痢菌が侵入していたにもかかわらず何の異常もなくピンピンしており退屈極まりない入院生活でした。

モロッコの暑さは、アフリカ独特の熱を感じました。熱さというよりも虫との闘いの日々でした。一度刺されるとなかなか元に戻らず、寝ていても虫の存在を無視することが出来ず睡眠不足に陥ってしまいました。異国の地でマラリアなんかに感染して死んでしまうんじゃないかしら...まあ、そんなことも覚悟してのさすらい旅ですがね。

スペインの暑さは快適でした。勿論、湿気がないことが一番ですが、おいらの肌に一番合っているなと思いました。土地、人間に共感することもあって暑さも十分に共有することが出来ました。情熱の国スペインと良く言われますが、この国には多様性が有りひとくくりにすることは出来ません。そのなかでも、アンダルシア地方の人達のいい加減ななかにも逞しく日々生活をエンジョイする生き方に圧倒されました。彼らの根底に、生きていること、生かされていることに感謝の気持ちが根付いているに違いないと感じた次第です。

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アンダルシア サロブレーニャ村

2024/07/08
【第1914回】

都知事選挙終わりました。今回の選挙はイメージ選挙に終始したのではないかと思っています。要は立候補者もある意味で演じて見せないと伝わらないと思います。その点、当選した小池のオバサンはさすがの役者振りでした。無駄なことは一切喋らず、相手の挑発にも乗らずクールな笑顔で通しました。裏ではしっかりと自民、公明、国民民主党などと連携しながら表面に出さない戦術。次点の石丸デンキさんは、今時のSNSを最大限に駆使し政治不信に陥っている人達にフレッシュさをアピール、彼の役者振りもなかなかしたたかなものでした。いろんなステージを踏み台にしながら目指すところは権力の座ではなかろうか?一番下手な演者だったのがレンホーさん、国会で権力者を追及する恐いイメージをそのまま引き継ぎ、野党政治家と一緒に街頭演説したことで投票者は引いたのではなかろうか?

既存の政治は皆うんざりしているんですから、今回は政党色を出さない方が良かったのにと思います。

当選したオバサンも浮かれることなくしっかりと素敵な東京にしてくださいね。だって、全体の43%の信任なんですから...小池にぽちゃんと落ちないよう呉々も気をつけて都政の舵取りをやって貰いたいものです。

それにしても暑い!一歩外に出ればお風呂に浸かってる状態でございます。利便性を追求したツケが確実に地球滅亡への道に突き進んでいるような気がしてなりません。

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猛暑の中のバラ

2024/07/05
【第1913回】

このお二人はどんな関係なんだろう?京王新宿新線の改札口を出て左に進むと、定期券売り場とコインロッカーの間に挟まれた大きな柱が二人の愛のささやき場である。一週間に2度は見かける光景である。45歳前後のお二人、いつも手をしっかりと握り合い柱に寄りかかり見つめ合い恋する表情でべたついています。死角と言えば死角なのだが、同じ職場の人が通りかかることだってありそうなもん...なにもこんな公衆の面前で、いい年こいた男女が堂々といちゃつかなくともと思うのだが...それは日本人の保守的な思考かも知れませんな...好きであればどんなところであろうとも、堂々と愛の行為はするべし!しかし、この二人不倫の匂いプンプン匂ってきますね。普通だったら喫茶店、レストラン、ラブホテルなんてところが常識的な所だが、何故に柱の陰なのか?好きで好きでしょうがない!って所を他人に見せつけることによってより燃え上がる恋のランデブーなんでしょうか?片や、高校生の男女がすぐそばで別れ話をしていたり、新宿地下通りにはいくつものドラマが生まれています。やはり炎天下の元では様になりません。地下のほの暗い明るさの中がベストなんでしょう。

いよいよ、明後日が東京都知事七夕選挙。終盤になってあれやこれやとブラック情報も飛び交っています。この世の中、キツネとタヌキの化かし合いでございます。何が真実なのか見抜くチカラを日頃から磨いておかないととんでもない国になっちゃうこと間違いありません。表層的なことに左右されることなく、己が培った志、思考を信じ、深く冷静なる一票を投じて欲しいものでございます。

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ユリ
花言葉~純粋・甘美~

2024/07/03
【第1912回】

老害はあきまへん...先日、改札をPASMOで出ようとすると、おいらの前方に70歳前後のおじさんが立ちふさがったので、「こちらからは入れませんよ。」と言ったところ、「いや、こちらからしか入れないんだ!」と怖い顔で怒鳴ってきました。よく見るとカードではなく券売機で購入したチケットを何度も機械に入れようとしていたので、「隣の方から入れれば大丈夫ですよ。」と親切に教えてあげたのに「いや、ここからしか入れない!なに言っているんだ...」とまるで喧嘩を売るような又もや怒鳴り声で突っかかってきました。身なりもきちんとして一見常識がある人のようには見えたのですが、これ以上関わるととんでもないことにもなりかねないと思い、やんわりと立ち去りました。

いやいや、最近こんなみっともない年寄りが増えましたね。まず笑顔がない、いつも何だか知らないけど不満を貯金しているのか、ことあればそれを見ず知らずの人に吐き出すなんて、これまで歩んできた人生を台無しにしかねないことに良く遭遇します。

新宿も異国の旅行者で溢れかえっています。共通して言えることは皆、笑顔が美しい。目が合うとにっこり、こんなフレンドリーな人たちに会うとこちらまで嬉しくなっちゃいます。この点は日本人も見習ってほしいなと思います。日本人はシャイだからなんて言っていたらいつまでも国際社会から取り残されちゃいますよ...事実、日本の国力すべてにおいて下り坂。折角いろんな国の人達のいろんな顔、行動を観察できるんですからいいチャンスかもしれませんね。

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神田川

2024/07/01
【第1911回】

早や今年も半年過ぎてしまいました。今日から文月、むしむしジメジメから猛暑の季節となります。今年の元旦の能登半島地震は衝撃でした。この国の不安な未来を象徴するような出来事だったと思います。なのに、未だ復興ままならない状況が続いています。中でも断水が続いている地域、公費による家屋解体も申請の3%などなど、メディアで流される映像をみていても半年間何やっていたんだろうという惨状。人口の少ない能登半島にかこつけてやる気ない政権、裏金問題で一杯一杯の野党側を含めて言語道断と言いたい。

台湾の地震ではすでに解体も終了しているのに、この体たらく、能登半島の住民を棄民扱いにしていると言っても過言ではない。大阪万博なんかやっている場合じゃないでしょう。ここにかかる費用を能登半島の一日も早い復興費用に充てて欲しい。いまだ不評の大阪万博、所詮、大企業の利益に加担し強行しようとする姿勢が腹立たしい。

 来週の7日は東京都知事選挙。新宿をいつものようにぶらぶらしているんですが街頭演説に遭遇したことがございません。56人もの人が立候補しているのに何だか変ですね?勿論、多くの泡沫候補が居るのも関係しているのかもしれませんね。今回の選挙で、おいらが納得できないことが2つあります。まず現知事、今年実施された衆議院補欠選挙には乙武さん支援のため連日街頭に立っていたのに公務優先ということでほとんど街頭に出ないどころか、対立候補とのTV討論すべて拒否。政治家は自分の意見を喋ってなんぼの世界じゃないかしら。次は広島県安芸高田市の前市長だった方、一期務めただけで辞めてしまい市民の気持ちはいかがなものかと?そして彼は原発推進派であるという発言に大いに引っ掛かります。若い、勢いムードで判断するのも危険な気がします。

都民の皆さん、投票場に行き賢明な判断よろしくお願いしますね!

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又、来年お逢いしましょうネ

2024/06/28
【第1910回】

昨日はminiOn7公演「二十一時、宝来館」を観劇。On7(オンナナ)という集団は歴史ある新劇5団体(青年座、文学座、俳優座、演劇集団円、プロダクション・エコー)に所属している女優さん7人が2013年に結成した気鋭の集まりである。老舗大手の劇団の所属俳優の数は膨大である。俳優とは待つ仕事ではあるが、なかなか待っていてもそうそうやりたい役が来るとは限らない。そこで、面白い芝居を創りたい!新しい作家と演出家、そして仲間と体当たりで情熱ある場を創出したい!自らアクションを起こした7人の侍のごとく彼女たちに拍手を送ると同時に応援したい気持になるのはプロデューサーとしては至極当然である。

そんな彼女たちの勇気にほだされ、メンバーの中からトムの作品にも出演して頂いたこともある。この混迷した世界情勢の中、少しでもより良い世界にするには女性のチカラを借りるしかないと思っている。全ての分野において、どうしようもない思考低下に陥っている男どもが未だトップに君臨している現状を見るにつけ、そんな奴らを退場に追い込む行動力に期待しています。

ところで昨日の芝居の方はと言いますと、女性の作家(竹田モモコ)らしい作品でした。女性の心理を上手く捉えた作風を、演出・田村孝裕さんがテンポよく演出していました。日常おいらにも不可思議なオンナの恐ろしさ、切なさ、可愛らしさが随所に散りばめられていました。

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こんな時期に...

2024/06/26
【第1909回】

2019年の初演以来、今回の公演が4回目となる「風を打つ」の稽古が始まりました。

この作品は水俣病が公式に確認されてから68年過ぎても未だ苦しんでいる家族を描いた芝居です。

先日も環境省と水俣病の患者等の団体との懇談会で、被害を訴える発言中にマイクが切られるという由々しき事態が発生しました。国側が設定した3分の持ち時間を超えたと言う理由で...この国の政治、行政がすべてにおいて都合の悪いことは過去のこととして切り捨てようとする姿勢の表れです。そしてもう一つ、水俣病に限らず、環境破壊、汚染と分かりながらも社会を豊かにすることを優先し、それをしっかりと享受し繁栄に乗っかった国民のひとりひとりにも利害の当事者であることを忘れてはならないと思います。

沖縄の問題にしても然り、米軍基地のほとんどを沖縄に負担させ本土を守って貰いながら一向に沖縄米軍基地の分担を口にしない政府、都道府県。都合の悪いことは口チャックするか、もしくは無関心を装うという悪しき習性が残念ながら未だこの国に蔓延しています。

許せないこと、納得いかないこと、そして弱者を切り捨てるというもっとも卑劣なことに対しては徹底的に発言、行動していかなくては決して真の豊かな国にはなり得ないと思っています。

稽古初日の本読みも皆さん気合いが入っていました。我々は芝居という手段を通じて少しでも希望が持てる社会を形成できればと思っています。

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杉並区柏の宮公園

2024/06/24
【第1908回】

2023年、カンヌ国際映画祭コンペティション部門でグランプリ、アカデミー賞では国際長編映画賞を受賞した「関心領域」を鑑賞。冒頭から不穏な音楽が流れ黒い画面から一転し、緑に囲まれた川で水浴を楽しみ帰宅するアウシュビッツの所長ルドルフ・ヘス一家の幸せそうな様子が瀟洒な邸宅ともに映し出される。手入れが行き届いた見事な庭園に沿った壁の向こうには、灰色に覆い尽くされた建物が並び、高く聳える煙突から煙が立ち上っている。そして絶えず流れる不気味な音(収容所で日常的に行われているであろう看守の怒声、ユダヤ人の呻きなどなど)このノイズが、この映画の中で一切映し出されない収容者内部の悲惨な有様を想像させる展開になっている。

これまでにも、いくつものホロコーストに関する映画が描かれてきたが、今回の手法はなかなか手が込んでいる。この混迷する世界においても、いくつかの壁が取り除かれると共にあらゆる情報が飛び交い、それに飛びつき関心を示しているようには見えるが果たしてそうだろうか?情報過多の中で、ほとんどの人が見えない壁を作って自分に都合の悪いことに目を向けることなくシャットアウトしているのではなかろうか...

でも、新宿の映画館には意外と若い観客が詰めかけていた。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるガザへの攻撃、これらの現実に若者が自身の暮らしの外側で勃発している出来事に関心を向けている機運だと信じたい。

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まだまだ愛でてくださいね!

2024/06/21
【第1907回】

昨日は、新宿花園神社で新宿梁山泊第77回公演「おちょこの傘もつメリーポピンズ」を観劇。思えば半世紀前の状況劇場の紅テント以来、確かに紅テントから根津甚八、小林薫などを輩出してきたのだが、こうやってすでに各ジャンルで活躍している俳優がテントに一同に集まって競演するのは画期的なことではなかろうか...現代演劇、アングラ、商業演劇という垣根を取っ払っい、演劇の持つおもしろさを味わって貰う良い機会かも知れない。

中村勘九郎の明瞭な台詞回し、さすがに歌舞伎界で鍛えられた技量はなかなかのものである。劇中、花道から観客であるおいらに肩に手を掛けられ「お若いですか?」と問われたので「その通り!」と答えました。もう少し問答が続くと、おいらも昔取った杵柄、じゃあやってやろうじゃないかと思わず舞台に上がりそうでしたよ。

ニヒルを貫く豊川悦司、独白に情念を吹き込む寺島しのぶ、二幕登場いきなり颯爽とカラオケマンさながら歌いながら登場する風間杜夫、奇態ぶりを発揮する六平直政。キャスティングが上手くはまっていたのではなかろか。先日亡くなった唐十郎さんの作品がいろんな形で上演され唐さんもきっと喜んでいるに違いない。

終演後、杜夫ちゃんと軽く一杯。今年、後期高齢者になったばかりの75才もなんのその、舞台上の元気そのまま美味しそうにお酒を飲みながら話に花を咲かせておりました。

今年9月~10月に上演する新作、風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン ミッション・インポッシブル~牛山明、バンコクに死す~」が大いに楽しみである。

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新宿花園神社テント公演

2024/06/19
【第1906回】

飴屋法水著「たんぱく質」読了。この方、以前は唐十郎さんの状況劇場に在籍し、その後自ら劇団を創りアバンギャルド的作風を公演していました。おいらも何度か観に行ったのですが、なかなかおもろいことやっているなと言う印象を持っていました。なるほどこの本を読んでみてよく分かりました。

人間は水分を除けば半分近くがたんぱく質で出来ていて、この世に生息している動物、虫と成分的になんら変わることは無いのだが、死後他の生きものの栄養分にもならず焼くか埋めるしかできない生きもの。そんな生きものとして生まれた事に対する自分なりの考察を散文詩的に記した一冊だ。日常生活に現れるゴキブリ、何億年先に消滅するであろう地球や宇宙のこと、60数年生きてきて命の終わりを感じながら過去と未来を綴った84の断章。

どこの章も合理と不合理、自然と反自然、自由と不自由が交錯し、自分は一体何物なんだという思考を繰り返しながら...つまるところ、おのれは人間という動物であるたんぱく質だと位置づける。そして思考することが自分の宗教であり、果てしなく考え続けることしかないと...人間の業、悲しみ、怒りを見据えた祈りの書かも知れない。

本日、改正政治資金規正法が19日の参院本会議で可決・成立した。裏金の解明もままならず、抜け穴だらけの今回の法案、どんな顔して賛成票を投じたのか驚くばかりである。国民をなめ切った政治屋に鉄槌を下す時が来た!

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神田川

2024/06/17
【第1905回】

先週の週末は、長年博多での公演をバックアップしてくれた福岡シアタークラブの方々への御礼参りに行ってきました。大里、廣川さんを中心に立ち上げたシアタークラブ、16年間本当にありがとうございました。チケットの販売、公演当日の搬入、受付に至るまでみなさん家庭を抱えながらのボランティア。公演終了後はこちらも役者さんの相手をしなきゃいけないので、なかなかゆっくりとお話もできず申し訳ない気持ちで一杯でした。

そんなこともあり、一応の区切りということで皆さんと食事でもしながらお礼方々、想い出話に花を咲かせ、楽しい時間を過ごすことが出来ました。いつもながら芝居の終演後には、シアタークラブの皆さんには客席に残っていただき、出演者の皆さんとの交流も大変好評で次回公演の励みにもなりました。

演劇なんて余程興味が無ければ日常生活において無縁の世界かもしれません。そんななかトム・プロジェクトの芝居を観劇して「芝居って、こんなに面白いものなんだ!」なんて言ってくれる新しい観客が増えていく醍醐味も感じさせてくれました。博多は昔からお祭り大好き人間の集り、多くの芸能人を輩出するのも分かる気がします。

福岡シアタークラブの皆さんも、おいら同様歳を重ね今までみたいなフットワークで動くわけにはいかなくなりました。これからどういう形で博多公演を進めていくかまだ分かりませんが、その時は観客のひとりとして劇場にいらしてくださいね。

又、いつの日かお会いしましょう!

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福岡シアタークラブ発足時のポスター

2024/06/14
【第1904回】

七夕決戦...東京都知事選挙、風見鶏おばさんと舌鋒鋭い白スーツさんの戦いの火ぶたが切られました。風見鶏さんいつも世間受けするキャッチフレーズでラッパを吹くんですけど七つのゼロ公約も未だ実現できずにいるのに何となく言い訳言うてますな。神宮の森伐採問題もなんだか歯切れが悪い。再開発、もう止めましょうよ!大資本に寄り添うんじゃなくて弱者に寄り添ってちょうだいな。オリンピックだって終わってしまえば、見えない裏金騒動が明るみになり後味悪い結果になりましたね。最初の選挙時は反自民の旗をかざしながら勝利したのですが、当選したら風見鶏の本性が出ましたね。

一方、白スーツさん、当選した後が大変ですね。議会のほとんどが都民ファースト、自民、公明。この巨大な組織にどう対峙していくのか?至難の業でございます。それにしても50人超える立候補予定者。街に早々と設置された掲示板、急遽増設しているみたいです。おなじみの発明家ドクター中松(95歳)8度目の挑戦、あのねのねの清水国明などなど、なかでもおいらが注目しているのが広島県安芸高田市市長だった石丸伸二氏。故郷・安芸高田市の前市長が参院選広島選挙区の大規模買収事件に関わったとして辞職。しかし後任として立候補を表明したのは一人だけ。それも前市長が後を託した当時の副市長のみ。そのニュースに強い危機感を覚えた石丸さんは「世界で一番住みたいと思えるまち」を公約に出馬を決意し、なんと翌日に会社への退職願を提出。投票日の1ヶ月前に準備なく出馬を決めたにもかかわらず、多くの市民の支持を得て当選。

こんな人たちの出現が沈没しかかった日本を救ってくれるのかもしれませんね。既存の政治家の既得権死守だらけの政治は、もううんざりでございます。そして、なによりも良識ある有権者にあっぱれ!

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ガクアジサイ 
花言葉~謙虚~

2024/06/12
【第1903回】

昨日は墨田区にある、すみだパークシアター倉での公演、劇団桟敷童子「阿保ノ記」を観劇。その昔、人柱・生贄専門に育てられた子供たちを、死後は神様と共に平穏に暮らしていけると信じこまされ民衆のために死んで行けと教えられていたそうだ。そんな民話、民間信仰を題材に、いつものような手作りの装置、衣装、小道具を駆使しながら東憲司ワールード満載の芝居でした。東君の描く世界は、いつも底辺に蠢く民衆の哀歓である。芝居のスタイルも決して上目線ではなく、大地にしっかりと根を張った生活者の心からの叫びである。

テント芝居ではないが、劇場に入るなり観客も芝居に登場する民衆のひとりであることを意識させ、ドラマの進行とともにいやが上にも感情移入せざるを得なくなる。

いつもながら劇団員の真摯な演技に清さを感じる。客演である音無美紀子さんも桟敷童子のカラーに染まりながらも、彼女の持ち味を十分に発揮したさすがの芝居でした。

座長自らのぼりを持ちながら入り口でのお客の案内、創立メンバーの一人である原口健太郎君も出番があるにも関らず同様にお客様の接待。こんなところにこの劇団の志の一片を感じる。

ライオンズ先月に続いての8連敗。昨日の最終回、一打同点のシーンでキャップテンである源田選手がファーストゴロで必死のヘッドスライディングもアウトで敗戦。源田選手立ち上がれず、先発ピッチャーである今井投手が駆けより共に涙。いやいや、今のライオンズの打線では監督が代わっても無理です。フロント、監督、コーチすべて抜本的な変革がない限り強いライオンズの復活は夢のまた夢でございましょう...でも、ファンはありがたいものです最後まで熱い声援、これを感じない選手は即退場願いたいものですね。

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劇場の近くの公園から

2024/06/10
【第1902回】

先週の土曜日は下北沢駅前劇場で劇団チョコレートケーキ「白き山」を観てきました。この芝居の主人公である歌人斎藤茂吉は村井國夫さんが演じる予定でした。芝居の稽古が始まって間もなく体調不良ということで降板することになりました。

急遽、緒方晋さんが演じることになり、おいらも何とか無事に初日が開くことを願っていました。観終わって思ったことは、この緊急事態でスタッフ、キャストの結束力がより強固になりいい芝居に仕上がっていました。生の芝居の恐いところは、いつどんなことが起きるかわからない中、既に決まっている日程を動かせないことです。最悪のケースは公演中止、それに伴う経費の支出は制作者が負担することになり、勿論キャスト、スタッフの皆さんにも影響が及んでしまいます。コロナ禍での公演は日々、その恐怖に晒されながらの稽古、本番の連続でした。

劇団チョコレートは過去にも歴史に基づいた人物、事象にフォーカスをあて多くの作品を上演してきました。その成果はいくつもの演劇賞を受賞していることで実証済みです。こんな時代だからこそ、過去の歴史を踏まえ未来への希望に昇華させていくことも演劇の重要な要素だと思います。

観劇後の下北沢の街は若者で溢れていました。多くの劇場、古着屋、飲食店、どこもラッシュ状態。後期高齢者はなかなかいませんな...おいらはそんなこともへっちゃらでございます。あっちゃこっちゃ覗きながら最後はjazz喫茶「はやし」で赤ワインとハヤシライスで締めました。

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jazz喫茶はやし

2024/06/07
【第1901回】

昨日は王子にある北とぴあペガサスホールに行ってきました。この北とぴあは懐かしいです。2000年に風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン」を上演しました。あれから24年の歳月が経ったと思うだけで感慨深いものがあります。よくまあ続いたもんだと、改めてトム・プロジェクトに関わった人たちに感謝と共に、飽きっぽいと同時に、魑魅魍魎の芸能世界でおいらが良く我慢してやってこれたことに感心しております。でも、やはり決め手は芝居が好きだったんでしょうね。好きなことは少々嫌なことがあってもやれるもんです。

さて昨日の芝居、劇団印象の主宰者である鈴木アツト作・演出による「3℃の飯より君が好き」。出演者はトム所属の滝沢花野と、トムの公演にも何度か出演してもらった向井康起。

仕事から帰って来た妻、これから夜勤の交通警備に向かう夫が織りなす奇妙なやり取りが、この不穏な時代にマッチしているように思えた。不自然と思えば不自然なんだが、不条理、不自然がまかり通る現世だからこそ、妻の妊娠したお腹が凍るのも、夫の勃起したおちんちんが凍結するのもあり得ない世界として捉えることが出来てしまう。何よりも、滝沢さん、向井君の素直でリアルな演技が素敵でした。

裏金問題で端を発した政治資金規正法改正案、衆議院で賛成多数で可決されました。国民を置き去り無視した自民党、公明党、維新の政党の資質を問われる大問題だと思います。あんな姑息なこと時間が経てば忘れるだろうなんて驕り昂ぶる議員を辞めさせるには選挙でしかありません。商人に近い政治屋を選んでしまうと、今なお浮上しない沈没ニッポンが完全に沈没しちゃいますよ皆の衆。

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落日

2024/06/05
【第1900回】

劇団東京乾電池アトリエ公演、柴田鷹雄出演による「風のセールスマン」観劇。この芝居はトム・プロジェクトで2009年に柄本明ひとり芝居で上演した作品です。柄本さんとは若い頃からの知り合いで、2002年には山崎哲作・演出「また、あした」で大久保鷹さんとの二人芝居に出演していただきました。2003年にはひとり芝居「煙草の害について」でロシア公演も実現させました。

柄本さんと酒を酌み交わすたびに、「別役実さんの戯曲でひとり芝居やれたらな...」なんて話から、おいらが別役さんに頼み込み実現したのが「風のセールスマン」でした。日本の不条理演劇の第一人者である別役さんは、怪優柄本明の個性を上手くとらえ見事な作品に仕上げてくれました。紀伊國屋ホールでの公演は連日満員の客で、柄本明という俳優の魅力を十分に堪能していました。可笑しさ、哀しさ、狂気、しがないサラリーマンの哀歓を柄本流演劇スタイルで、舞台上を所狭しと躍動していました。

今回の東京乾電池の若手俳優である柴田さんも大健闘していました。この戯曲を自分のものにするなんてことは至難の業だと思います。今回は柄本さんが演出を担当し、とことん追い込みながら創り込んだのではなかろうか...終演後の座長柄本明は?「俺、もう一回やってみようかな...」改めて戯曲が持つ圧倒的な魅力に、再チャレンジの気持ちが沸々と込み上げて来たのではなかろうか?

役者にとって生涯を通して「この戯曲は誰にも渡したくない!」なんてことは、そうそうあるものではございません。この「風のセールスマン」こそ舞台役者としての柄本明の唯一無二の作品に違いない。

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水無月の道

2024/06/03
【第1899回】

先週の金曜日は隅田川沿いにある柳橋のルーサイトシアターで、鳥山昌克さんのひとり語り芝居「高野聖」を観劇。幻想文学の巨匠泉鏡花27歳時の代表作です。旅する修行僧が、飛騨の奥深い山中で出会った艶めかしい婦人との、奇妙な怖い体験を語った幻想小説。山中の情景描写が美しく、まるでその場にタイムスリップしたような感覚になり、日常から非日常に誘われる感覚が心地よい。しかしその一方、患部に触れると人の病が軽くなる、息を吹きかけた人を動物にしてしまう等の特殊能力をもつ婦人の不思議な力に魔性を感じる恐ろしさを感じてしまいます。

この作品を選択した鳥山さん、師匠である唐十郎さんの影響が大いに影響していると思います。理性では決して解決できない感覚、官能の世界に生き物の本質を見出さそうとする作家に魅入られてしまう役者が己の肉体で具現化しようとするさまがとてもスリリングでした。

このルーサイトシアタは昭和初期に活躍した芸者歌手、市丸さんが住んでいた場所でもありました。芝居の最中に隅田川を行き来する屋形船、その上を走る総武線の車両と音、それを取り込んで進行するドラマは、まさしく幻想と現実世界が交差するなかなか味わえない時空間でございました。鳥山さんが隅田川を眺める横顔がとっても素敵でした。

この貴重な場での次回公演、楽しみにしています。

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ルーサイトシアターからの眺望

2024/05/31
【第1898回】

我が故郷博多に帰ったときの楽しみのひとつは、海の幸山の幸に恵まれた食材をふんだんに使って提供してくれる居酒屋に顔を出す事です。その中でも飛びっきり新鮮な魚と、選び抜かれたお酒を出してくれる「さきと」の大将が亡くなった手紙が昨日届きました。令和4年4月に店を閉め1年10ヶ月の闘病生活を経ての生涯でした。12席のカウンターだけのお店で、大将が毎日市場で仕入れた活きの良い魚を捌く姿を見ながら、所狭しと並べられた銘酒を片手に舌鼓を打つなんてことが出来なくなったことが本当に寂しい。

勿論、食の良さは当然ながら店主の佇まいも大切な要素になってくる。カウンターを挟んでの微妙な距離感、無愛想でも拙いし、こちらの空気も読まないでずかずかと入り込んでのお喋りもうるさいし、そこはお店のカラーを決定づける。「さきと」の大将、松本さんはその辺のセンスは抜群でした。馴染みのお客も新しいお客も皆同等に対し、気持ちよい時間を過ごさせてくれました。トム・プロジェクト博多公演の時に出演者も何人か連れて行きましたが皆「こんなうまい魚食べたことない!」と絶賛しておりました。

この店に通う前には「たらふくまんま」に顔を出していました。ここの大将、菊池さんの食に対するこだわりは大変なものがありました。その魅力はうまいだけではなく、職人でありながらも、スタッフ教育、ホスピタリティにも長けたすばらしきプロデューサーでもありました。その菊池さんも2013年に亡くなり、今は奥さん、娘さん夫婦で「女とみそ汁」という名前で営業しています。

こんな店が東京にもあればいいなと思いながら、今日も居酒屋探訪をする日々でございます。

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五月最後の夕暮れの匂い

2024/05/29
【第1897回】

一昨日、今年9月から10月にかけて上演する新作、風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン ミション:インポッシブル」牛山明、バンコクに死す!のチラシ、ポスターの写真撮りをしました。カラオケマンシリーズ初の海外編、75歳になった牛山明がバンコクに行って何をしでかすか?大変興味あるドラマになりそう写真撮りでございました。サービス精神満点の杜夫ちゃん、いろんな姿に変身し、喜怒哀楽満載の表情をしながら奮闘してくれました。どの表情も様になりさすが千両役者、撮影現場にいたスタッフも爆笑の渦、早くも今回の芝居、始まり始まりてな感じでした。

この直後も、6月に幕が開く新宿梁山泊テント芝居のパンフレット用の写真撮影の予定が入っているとのこと。テント芝居初登場の歌舞伎役者中村勘九郎、豊川悦司、寺島しのぶとの共演も興味あるところ。今年、後期高齢者の仲間入りしたにもかかわらず精力的に舞台出演が決まっている杜夫ちゃんのエネルギーたいしたもんでございます。芝居を愛し、酒を嗜み、劇場に来てくれたお客様にベストな演技で答える愛すべき役者ですね。

いつも撮影で使わせている野澤写真館は西荻窪にあります。骨とう品屋、古書店、粋なレストランなどなど玄人好みのこじゃれた街です。おいらが好きなジャズ喫茶ユハもあります。

やはり街は小ぶりが一番ですね。何事も肥大化するとつまらなくなってしまいます。ニンゲンサイズであることの意味を忘れちゃなりません。少し小路に入れば、予期せぬお店に出逢い今日一日を幸せで心地よい時間にさせてくれます。

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タチアオイ

2024/05/27
【第1896回】

いやいやライオンズの監督変わってしまいましたね。昨日、一昨日と見事な逆転劇でベンチ内はお祭り騒ぎでございました。さあこれから行くぞ!てな感じに思えましたが、さすがにこの成績では誰かが責任とらなきゃファンは納得しませんね。先週もふらりとベルーナドームに散歩がてら覗きに行ったのですが、ライオンズのエース今井の先発なのにロッテ相手に一回の表、早々と5点先取され5回が終了した時点で球場を後にしました。それにしても打てない、作戦はちぐはぐ、これでは観る価値がないとおもってしまう試合ばかりです。

おいらも70年に渡るライオンズ一筋のファンですが、池永投手が永久追放された黒い霧事件、その後のクラウンライター、太平洋クラブという名称に変わって以来の弱小チームになってしまいました。

今回の件も松井監督ばかりのせいではありません。お金が無いのはわかりますが、フロントさん少しは気の効いた補強をしなさい!と言いたい。連れてくる外人もモノにならない選手ばかりで毎年期待はずれ。なにもかもゆるゆる、昨日、逆転打を放った蛭間選手みたいなプレーヤーが増えない限りライオンズの未来は見えてきません。いつまでたっても結果を出せない外野手の面々、レギュラーを張るにはみんなあと一歩!ってカンジのドングリーズ。もう何年こんな屈辱的な呼び名をされてるの?悔しかったら泥まみれになって練習して見返すぐらいの根性見せてくれんと野球人生終っちゃいますよ。

それにしても、スター選手もそんなに居ない日ハム、ロッテ両チームが金満ソフトバンク相手に頑張ってますね...明日からは交流戦、ライオンズは勿論、おもろい試合期待してまっせ!

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こんな季節がやって来ました

2024/05/24
【第1895回】

柚月裕子著「風に立つ」読了。補導委託(問題を起こし家裁に送られてきた少年を、一定期間預かる制度)を家族に相談せずに引き受けた父に対して、反発する息子。
しかし、委託された少年との生活が始まると共に、その委託先である父や周辺の人との関わりがきっかけとなり、父との関係を見つめ直すことになる。委託された少年も家族との関係に悩んでおり、それと重なるように委託先の息子の葛藤がリアルに描かれる。現代社会の縮図でもある家族問題をテーマにしているのだが、今ひとつかな?
新聞に連載された小説を一冊の単行本にするとこうなるのかなという良い例かもしれない。作家も全体の構想はあるものの、日々の連載だとブツ切れになってしまう可能性が強い。読み手もなんだかだらだらとページをめくって、いつドラマの核心がくるのやらとテンションが下がってくる。と言っても、きらりと光る言葉は随所に散りばめられてはいる。ミステリー大賞他、いくつかの賞を受賞している実績ある作家であることには違いない。

限られた時間の中、何を選択するか?いや何を選択したかが重要になってくる。まだまだ読みたい本は山ほどあるのだが、なにせ残された時間はそんなにあるわけではない。なにはともわれ何事もかかわった以上、何かしら琴線に触れる言葉がないか探求心だけは忘れないようにしている。作家だって命を削って創作しているに違いないし、その姿勢にはいつも真摯に向き合っていたいと思っている。
今年はマンションの中庭のカスケードにカルガモの赤ちゃんが無事誕生した。このところ度重なるカラスの飛来によりカルガモ親子も警戒していたのだが、先日の巣の撤去により一安心したに違いない。誕生したばかりの子ガモが無事成長するのを願うばかりだ。

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カルガモ親子

2024/05/22
【第1894回】

新宿は相変わらずカオスの町でございます。花園神社でのテント芝居を観劇後、久しぶりに怪しい歌舞伎町を探索したのですが、まさしくいろんな国の人が入り乱れ、ホストクラブ、ガールーズバー、ぼったくりバーの客引きが路上に溢れかえっていました。今日もほいほい乗っかって、とてつもない料金を要求され泣き泣き新宿の街を後にする人が居るに違いありません。以前にも増して黒人の客引きが多いのには驚きました。彼らのバックには恐い組織が今尚存在し抜き差しならない関係になってしまうんではないかしらと心配してしまいます。

そんななか、ヒモで土俵を作りカンパ箱をおいて相撲興行を行っている集団がいました。この光景にびっくりした外人観光客が取り囲み、次から次に飛び入りで勝負を挑むのだがなかなか勝てません。今日の主役である彼はおそらくどこかの相撲部の一員に違いありません。大きな外人相手にビクトもしない強靱な身体をしていました。

30年前にも、今は無き歌舞伎町コマ劇場前広場で殴られ役を買って出る元ボクサーが居ました。「私が歌舞伎町の殴られ屋です!一分間、千円で殴り放題!どうぞ私を殴ってストレスを解消していって下さい」何人もの男がチャレンジするのだが相手はプロですから上手にかわし、なかなか倒すことはできません。でも、時折自信たっぷりの強者も登場しボコボコにされそうになったこともありました。

そんな広場も、今では通称「トー横」。自分の居場所がないという家庭での虐待や学校でのいじめなどに悩む10代の子供たちのたまり場になっています。ここから又、いろんなドラマが生まれるに違いありません...転落の道を辿るのか、ここを足場に人として成長していくのか、とにかく欲望に塗れた街には違いありません。

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歌舞伎町のパフォーマンス

2024/05/20
【第1893回】

ワンちゃんのご主人様を待つ姿がなんとも微笑ましい。ニンゲン世界は魑魅魍魎、憎悪が拡散し争いから戦争という惨たらしい時間が今尚繰り広げられています。こんな不毛の時代で唯一癒されるのが野に咲く花であったり、悠然と聳え立つ樹木であったり、小動物だったり...中には人間に害を及ぼす生き物もいますが、地球は人間だけのものじゃありませんから当然のことながら生きる権利はあると思います。

我が家のマンションの中庭にある樹木にカラスが巣を作り、子育てのデリケートな時期と重なり住民を襲ったこともあり、懸命に作り上げた巣が撤去されました。日毎、ベランダからつがいのカラスが飛びまわる様を見ていたおいらも複雑な思いです。カラスだって種族を残すための必死な戦いだったと思います。監視のため頻繁に飛来するカラスの行動を目のあたりにして過ごした日々が何となく懐かしい。この感情も考えてみればニンゲンの勝手な思い込みに違いない。

野の花だって何もニンゲンを喜ばすために花を咲かせているとは思いません。ただ自然界の秩序に乗っかって淡々と生きているだけ。でも同じ地球上に共生しているニンゲンが感謝の気持ちを抱くだけで、この世界は平和の輪が広がるに違いありません。何事も愛しむ気持ちが大切だと思います...身のまわりにどれだけ愛しむものを見つけ感じることができるかが穏やかな日々の尺度。何事も心優しい目線で過ごしたいものです。

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まだかな?

2024/05/17
【第1892回】

城山三郎著「指揮官たちの特攻~幸福は花びらの如ごとく~」読了。城山三郎さんは気骨ある作家である。紫綬褒章の知らせを聞いた時に、「僕は、戦争で国家に裏切られたという思いがある。だから国家がくれるものを、ありがとうございます、と素直に受け取る気にはなれないんだよ」。そう言って辞退しました。

今回の本は城山さんの面目躍如たる作品である。昭和19年10月25日、最初の特攻隊としてレイテ島沖で米艦隊に突撃した関行男大尉と、翌20年8月15日夕刻、敗戦の事実を知らされないまま沖縄へと飛び立ち、そのまま還らぬ人となった中津留達雄大尉の二人の海軍兵学校卒業生を中心に、彼らが特攻機に乗ることになった経緯と、彼らの生い立ち、人となり、家族のその後などが語られる。本人も終戦直前に大日本帝国海軍に入隊し上官による理不尽な暴力と虐めにあい、戦争と軍隊に対する怒りがその後の著作に色濃く記されている。敗戦間近にもかかわらず次々と開発される安直な特攻兵器を前にして「きさまらの、代わりは一厘五銭で、いくらでも来る」とうそぶく上官、当時の海軍内部の荒廃ぶりには只々呆れるばかりだ。

作家としてだけではなく、一人の人間として晩年は言論の自由を封殺するとして「個人情報保護法」に反対を唱え、自らの戦争体験を振り返って社会の変貌に警鐘を鳴らそうとした。

自衛隊の海外派遣に対しても「日本の自衛隊は国民を守る組織であり、人を殺傷する機関ではない」と危惧を示した。

世界がまさしく第三次世界大戦を予兆させる現状において、改めて城山三郎作品の重みをひしひしと感じる。

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この時期に?

2024/05/15
【第1891回】

一昨日、唐十郎さんの通夜に行って来ました。安らかなお顔でした...唐さんにとっての演劇は己の魂を賭けた遊びでもあり、それまで劇場という空間、そして演技をするための知的、肉体的な鍛錬に異を唱えるためのアングラテント芝居だった。いつの時代でも、支配階級が底辺の民に強いる差別に対し演劇という手法を通じて抵抗する手段でもありました。布一枚で隔てるテントは非日常と日常が瞬時に入れ替わる夢とロマンの時間でもあった。

日本国内のみならず戒厳令下の韓国、難民キャンプシリア、カオスのバングラデシュ、レバノン公演を遂行したのも社会に見捨てられた人たちへの限りない愛だと思う。

東京都の命令に逆らい、新宿西口公園での公演はおいらも現場に居ました。機動隊に逮捕され連行される唐さんの不敵な面構えは今でも記憶にあります。なにせ押し付け事が大嫌いなききわけのない童心が生涯宿っていたに違いありません。

日本の国力が貧弱になりつつある今こそ、冒険者でありロマンチストである唐さんみたいな人物が出てきて欲しいと思うのだが、なかなか難しいかな?でも一度きりの人生、己が願望していた諸々、試しもせず死んでしまうなんて悲しいとは思いません...

5月も中盤、朝晩と昼間の温度差がありすぎて体調不安定。そんなときは散歩に限ります。今日も5月のアンネのバラが咲き誇っていました。風雨に晒されながらも不屈の生命力で繰り返し花咲かす植物に癒され圧倒されてしまう今日この頃でございます。

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平和を願って
(アンネのバラ)

2024/05/13
【第1890回】

先週の土曜日、新宿花園神社にて唐組・第73回公演「泥人魚」を観劇。開演45分前には紅テントの前には多くの人で賑わっていた。いつみても花園神社の紅テントはこの地に一番似つかわしい。新緑映えるこの時期の公演は、何故か観劇前から心躍る気分にさせてくれる。今回の芝居は2003年度の初演以来、実に21年振りの公演である。ドラマの原型は1997年有明海諫早湾が全長7キロに及ぶ鉄板により閉鎖された事件である。映像で観たまるでギロチンさながらの光景はショッキングであった。これにより、この遠浅の干潟に生息するムツゴロウ、ウラスボなどが瀕死の状態に陥った...この一連の事件を唐さんの壮大な妄想を駆使して芝居に仕立て上げたのが「泥人魚」。

詰め詰めで満杯になったテントのなかでいよいよ開幕。看板役者が登場する度に声が掛かるのはいつもの通りだが、唐!の声が聞けないのがとても寂しい。でも唐組の座員の気持の入った演技はいつ見ても清々しい。芝居は元々、ひとりひとりの手作り、つまりローテクを駆使して創りあげるものであることを教えてくれる。どんな綺麗な照明よりも、きらびやかな衣装よりも、お金を掛けた音響装置よりも、人間の肌合いを身近に感じるすべてが心地よい。

時代はより人工的に、より利便性を追求しながら突き進んでいます。もういい加減、自然志向に戻りませんかと発言しても少数意見でしかない世の中になってしまいました。そんな時代だからこそテント芝居、これからの生きるヒントになるに違いありません。

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紅テント

2024/05/09
【第1889回】

5月5日に今年初めてベルーナドームに行ってきました。ソフトバンクとの一戦、見事に負けてしまいました。この日は子供の日ということもあって多くのチビッ子ファンが熱い声援を送っていました。子供限定でグローブも配布し、いつまでもライオンズのファンであって欲しいとの願いも虚しく無様な敗戦でした。そりゃそうだよね、ライオンズには3割バッター皆無、3番バッターがなんと1割台の打者なんですからね。相手のチームは3割バッターがゾロゾロ、そりゃ勝負になりません。監督の采配もちぐはぐ、凡打しても悔しがらない選手を見せられたんじゃ、満員のファンもガッカリです。ここ数年で最悪のシーズンになりそうだし、その後数年暗黒の時代が来そうな予感さえしてしまいます。

昔、強かったころのライオンズを知るファンにとってはなんとも寂しい限りです。ここまで来たら監督コーチを変えなきゃとんでもない借金を抱えた結果になると思います。チームのフロントも然り、もっと言えばどこかの企業に身売りなんてことも考えねばなりません。

やはりある程度お金を掛けなきゃ強いチームにはできないと思うけど、資金が無くても広島カープなんてチームは地元に愛され続けながら人気を保っています。

今の勢いでは、パリーグはソフトバンクのぶっちぎり優勝。セリーグはどのチームも優勝の可能性がある面白い展開。まだ5月というのにライオンズは白旗掲げるのもみっともないし、少しでもファンをワクワクさせる戦いをやって欲しいと思っています。

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フレ!フレ!ライオンズ

2024/05/07
【第1888回】

唐十郎さんが亡くなりました。トム・プロジェクトでも2本、作・演出して創っていただきました。稽古中、そして酒場で一緒に過ごした時間が懐かしいです。いつも少年のような瞳で語り掛けてくる言葉が、現世を見つめながらどこか見知らぬ時空間に誘ってくれる不思議な人でした。唐さんの描く世界の主人公はいつも底辺に蠢く市井の人でした。唐さんが幼少の頃、下谷万年町で出会ったいかがわしくも心根の優しい庶民の姿が戯曲を書くきっかけになったに違いありません。

おいらが上京して頭をぶん殴られたのが、1967年8月、新宿花園神社境内に紅テントを建て、『腰巻お仙 -義理人情いろはにほへと篇』を観た時だ。なんだこれは!唐さんはじめ、麿赤児、四谷シモン、大久保鷹、不破万作などなど得体のしれない役者群が紅テント内で観客をかどわかしながら縦横無尽に暴れまくっていました。まさしく特権的肉体論、役者の沸き上がる身体を通して言葉を生み出していく手法に唖然とした記憶があります。

こんな世界に身をゆだねたい...そんなこんなで演劇の世界に身を投じた次第です。

唐さんが演劇に託した想いは、その後いろんな人達が継承し演劇というフィールドをダイナミックに展開していったことは紛れもない事実です。

唐さんお疲れさまでした...ゆっくり休んでくださいね!と言いたいところですが唐さんのことですからあの世でまた暴れまくっているに違いありませんね。

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早く取りに来てネ

2024/05/02
【第1887回】

太宰治賞2022年受賞作・野々井透著「棕櫚を燃やす」読了。久しぶりに文学っていいなと素直に思いました。淡々と過ぎていく父と娘二人の会話が繰り返される小説なのだが、周りの風景と三人の心情が寂しさ、切なさ、孤独感を超越して他の何よりも温かく愛を感じさせていく言葉の選択がまさしく文学。
時折出てくる「むるむる」という擬音語。これだけ言葉を選びながら、尚表現できない言葉を身体感覚として表現したかったのだろうか...余命幾ばくもない父の姿を、まるごと自分のこととして語る主人公に深い悲しみと祈りを感じる。
小説を読みながら、バックにフランス室内楽作曲家フォーレ、ドビッシーの曲が流れてくるような不思議な読書体験でした。
「からだを洗う女のひとたちは、湯上がりのひとたちよりも、どこか寂し気で孤独に見えた。自分の髪やからだを洗う姿は、叶わないなにかを願うような姿に似ていて、湯気の中にその想いが浮いているようだった。」
日常の中に淡々と流れる命を感情に溺れることなく、慈しみながら遙か遠い宇宙から映し出しているかのようにも思えてくる文章だ。
明日から後半のGW。天気も良好、リフレッシュするには最適な時かも知れませんね。

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5月5日には泳ぎますからね...

2024/04/30
【第1886回】

GW前半終了、どこに行っても車と人だかり、こんな時は近場でのんびりしているのがベストです。日比谷シャンテで「落下の解剖学」観てきました。なんだか難しい医学的な映画かなと思いますが、人間の心理を愛情とエゴを交えて巧みに描き切ったドラマです。視覚障害の子供への愛情と悔恨、夫婦間に生ずる微妙な誤解とずれ、その描き方が実にリアル、そして緻密に描かれる。そして夫の死を巡って(落下死)のスリリングな裁判劇。判決は下されるのだが真実は観客の想像に任せられる...この映画に登場する犬の表情が、この作品のヒントにもなっているところがなんともフランス映画らしい。映画を観ているというかなんだか芝居を観てる感じがしてくるのも、ひとえに脚本のすばらしさだと思う。

主人公を演じた女優サンドラ・ヒュラーの複雑で陰のある演技がこのドラマをより一層、緊張感と繊細さを生み出している。けっして美人とは言えないのだが、この人の内面からあふれる姿を見ているうちに、ひとりの女性の健気で強靭な意志力でついつい彼女に寄り添っていくおいらもまさしくこの映画に乗せられた一人でございました。

衆議院議員補欠選挙、予想通り自民党にお灸がすえられました。一時的なお灸では、またまた権力はあの手この手を使って復活してまいります。この機会に、しっかりとお目覚めしないとこの国は間違いなく滅びの道を歩んで行ってしまいますよ。

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日比谷のゴジラ

2024/04/26
【第1885回】

東京の街は異国の人で溢れかえっています...世界一の乗降客を誇る新宿の街も相変わらず多民族の人たちでラッシュ状態です。新宿で最もディープな場所である西口の「思い出横丁」歌舞伎町の「新宿ゴールデン街」なんかはカメラを手にして、戦後闇市そのままを残した風景を我先にと撮りまくっています。勿論、お店の中も外人だらけ、埃にまみれた焼き鳥をおいしそうに食べていました。何せ円安ですから、この時ばかりと...ニューヨークではラーメン¥3000するんですから、彼らにとっては食の天国に来たようなもんです。新宿に店舗を構えるあの天然とんこつラーメン「一蘭」の前には長蛇の列。おいらはあの値段と食感がどうしても納得できず駄目ですな。「一風堂」然り、博多で生まれ育った者としては、ラーメンブームの便乗した商売のやり方に大いに不満でございます。博多に帰って食べるラーメンは「膳」に決めています。豪快でありながらも滑らかな風味、麺は小麦の美味しさを活かしたオリジナル、タレ、チャーシューは自家製。そのうえゴマはかけ放題、にんにくも丸ごと潰し放題、それでなんと¥320!物価高で悲鳴をあげている昨今、ラーメンの神様が降臨した思いです。やればできるじゃないですか...2050年には日本の人口なんと3300万人減少するそうです。その先はと考えると、この国、もしかすると異国の人たちに雇われる形態になっているかもしれません。目先のことばかり考えないで将来を見据えた商いしないととんでもないことになっちゃうかもしれませんね。

新宿南口駅前の通路は、ストリートミュージシャンで溢れかえっています。何故か外国人旅行客は立ち止まりません。そういえば、外国ではごく自然な風景ですから...

明日からGW、どこに行っても人の波。近場でのんびりするに限ります。

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明日を夢見て

2024/04/24
【第1884回】

やれ桜だ、それに便乗しての酒宴。なにかと春のこの時期は喧噪の日々である。そんななか、今日みたいにしとしとと雨降る日が訪れると心和いでしまいます。そんな日は、家に閉じこもり好きな曲を流し読書三昧なんてのがピッタリでございます。

トルド・グフタフセン、ノルウェー生まれのピアニストで、瞬時に落ち着きと満足感をもたらす効果があります。沈黙から北欧の風景を連想させる音の連続は、何もありそうもない別の空間に連れて行かれそうな時間を生み出し、読書の程よい味付けをしてくれます。

日本にもファンが多いピアニスト、キース・ジャレットにも通じるものがあるのだが、やはり生まれ育った北欧の音色を強烈に感じます。彼のタッチ、鋭い旋律センス、そして彼の惜しみない美学は、ともにプレーしている仲間にもしっかりと共有されており、ベースとドラムの刻む時間が彼の世界を一段とスケールアップさせています。

それにしても最近はアマゾン、スポティファイなんかで良質な音楽を聞いちゃうと、ついついCDを買おうかなんて良からぬ欲望が頭をもたげます。もうこの歳になると断捨離を考えなきゃいけないのに困ったもんでございます。モノを増やすな!出来るだけ捨てろ!と常日頃こんなお題目を唱えながらも、やはり手元のジャケットからCDを取り出し音を呼び込む儀式があってこそのマイソングだと頑なな心情が邪魔しちゃいます...でも、やはりほどほどにしないと後始末が大変ですから。

明日から猛暑の始まりとか、どんな未来が待ち受けていることやら全く予測不能でございます。

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どこに巣を作ろうかな?

2024/04/22
【第1883回】

先週の土曜日、中野テアトルBONBONで「明日になれば」を観劇。トムでもお馴染みの、ふたくちつよしさんの作品です。桐朋学園で同級生だった俳優、磯部勉さんの家族のためにと心温まる芝居に仕上がっていました。劇中でも磯部さん夫婦、そして一人娘さんがそのまま家族役で出演しているのですから、そのまま実生活を覗き見している感じがしました。

ふたくち作品らしく、劇中お茶を差し出すタイミングが実に微妙且つ適格、こんなところなんぞは映画界の名匠小津安二郎の世界を彷彿とさせてくれます。

芝居は前半から笑いの連続、ギャグで笑いを取るのではなく、役者同士の台詞のやり取り芝居の内容での笑いなので心地よい。芝居での笑いの質はとても大切であり、作品のクオリティーにおおいに関係してきます。笑いほど難しいジャンルはないと思います。品のないギャグ連発の芝居を観せられた苦い経験も多々あります。喜劇を演じられる役者はリアルな芝居もものの見事にこなしてくれます。今は亡き名喜劇役者伴淳三郎さんが内田吐夢監督の映画「飢餓海峡」で演じた刑事のシリアスな役は今でも記憶に残っています。笑いの中に潜む人の悲しさ苦悩を、実人生の中で獲得したに違いありません。主演の三国連太郎さんの名演技も彼の波乱万丈の生き方がそのまま白いスクリーンに映し出されているようでした。

厚生労働省は、新型コロナウイルスのワクチン約2億4000万回分を廃棄、金額にすると約6653億円。アベノマスクといいこの政府のやることだからなんとも納得できないのでは。未だ水が使えない能登半島の人達...もう4か月というのにほんまにあきまへんな。

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シャクナゲ

2024/04/19
【第1882回】

新国立劇場小劇場で「デカローグ」観劇。この作品は1988年にポーランドで放映された映像作品が基になっています。デカローグとは、旧約聖書に登場するモーゼの十戒を意味するそうです。今回の芝居に登場する人物は、この十戒を守るべき道徳ではなく、これを破ってしまう人間たちの葛藤を描いた物語でした。世界のどこにでもある団地に住む人達の、何気ない誤解や誘惑で悲劇を生み出すのだが、その背後には人としての弱さや過ちをしっかりと受け止める愛情もバランス良く描かれています。

今回観劇した作品は全10編で成り立っており、おいらが観たのは1と3、残りの8編を7月15日まで上演することができるのも新国立劇場だからだと思います。

この新国立劇場が併せて創設したのが演劇研修所。今年で第20期生を迎えるそうだが、3年間の研修を経てこの世界で生きていくのも至難の業である。トムにも修了生を今年の新人2人を加えて5人在籍。トムの芝居にも出演してもらい一日も早く役者で生計を立てられるように後押しはしていますが...いつも新国立劇場で芝居を観劇するたびに思うことは、研修所で3年間しっかりと鍛えた後に、なぜ修了生たちを大きな役に抜擢して公演をしないのか?勿論、興行的な面からも厳しい面があるのは理解できるのだが、ここは国が本腰を入れて創設した俳優養成所なんですから、何とか実現して欲しいと思います。

又もや、中東で物騒な小競り合いが勃発。石油の8割近くを中東からの輸入に依存してきた日本にとっては死活問題。そして四国、大分での地震、地球の未来が本当に危うい!こんな時こそ、地に足が着いた生き方をしましょう皆の衆。

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新緑のメタセコイア

2024/04/17
【第1881回】

プロ野球開幕したばかりなのにライオンズはや終戦...昨日のロッテ戦に負けて6連敗、最下位に転落してしまいました。延長戦11回まで戦ってライオンズ僅か2安打。これじゃ勝てません、いや先発投手が可哀想でなりません。必死こいて投げても味方が点取らなきゃ空しいものでございます。誰が悪いのか?誰の責任なのか?ハッキリ言って監督、コーチの責任でしょうね。先週のソフトバンク戦の試合前の光景を見て驚きました。ライオンズに対し、後ろ足で砂をかけるようにして出て行った山川選手とニコニコ顔で話をしている監督や、ハグしている選手を観客の前で見せつけられてガックシ...案の定、そのあとの試合で2打席連続満塁ホームランを打たれ無様な敗戦。週末多くのファンが集まったホームゲームでソフトバンクに1勝もできない有様。悔しいと思わんかい!お客は高い銭と時間をかけて遠い所沢まで来ているのに...球場を後にするファンの気持ち少しは分かって欲しいですな。

ハッキリ言って、松井監督、平石ヘッドコーチのPLコンビ、もう勘弁してくださいと言いたくなります。それに昨年から打てない打者を指導している嶋、高山打撃コーチ、自ら退陣して欲しい。そこまで大胆に刷新しないと、このままライオンズは長期間まちがいなく暗黒の時代が続くと思います。だって、テレビで試合観ていてもこんなにワクワクしないことは珍しいくらいです。昨日のロッテ戦でも、ライオンズ炭谷捕手がファールフライを取りそこねたのを見てニヤニヤ笑ってる監督、なんと緊張感のない人だろうと思ってしまいました。勝負師としては失格もんです!

と言いながら、これからもライオンズの試合は見ると思います。こればかりは少年の頃からの野球に対する熱い思いが、おいらの身体にメラメラと燃え続けているからでしょうね。

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もうちょっと楽しんでネ

2024/04/15
【第1880回】

先週の週末、高円寺にあるタブラオ・エスペランサに出かける。長年の友人であるグラシアス小林のフラメンコを堪能してきました。彼とはかれこれ45年の付き合いになります。おいらが単独でスペインに飛んで行って初めて会った日本人でもありました。おいらも気負うことなく大道芸やったりしながらスペインの空気になれようとした時でもあり、彼のアドバイスでずいぶん助けられもしました。マドリッド・マジョール広場で大道芸やったときには当時3歳であった息子、海来(みらい)君に投げ銭集めをさせてしまい迷惑もかけましたね。二人してシナリオ書いたり、キャンプに行ったりと楽しいスペイン生活を過ごすこともできたのも小林ファミリーが居たおかげかな。

彼が日本に戻ってからも交流は続きました。波乱万丈の人生を経て、最後はフラメンコに戻りスタジオを持ちながら彼独自のフラメンコ道を追求してきました...自分はどこまで行ってもスペイン人には成れないんだから、自分の生き方を通しての踊りをしたい...この日も、舞台に凛々しく立つ姿は彼の生きてきた75年が見事に凝縮されていました。表現とは己の生きざまを曝け出す場でもありウソをつくことも出来ません。普段、一緒に酒飲んでるときは難しい芸術論なんかは交わさない分、舞台上のグラシアス小林はサムライのようでもありました。そしてフラメンコには欠かせない、野卑の中にも色気と品格。この日の踊りはまさしくMaravilloso(素晴らしい!)に尽きます。

フラメンコという激しい踊りに、今尚チャレンジ精神で挑むグラシアス小林に拍手を送りたい。

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オレ!

2024/04/12
【第1879回】

昨日、今年アカデミー賞作品賞や監督賞など7部門を受賞した「オッペンハイマー」を鑑賞。第二次世界大戦当時、ヒトラー率いるナチス・ドイツは原発の開発を進めており、それを恐れたアメリカのルーズベルト大統領は、原爆開発に着手しマンハッタン計画を設立。その化学部門リーダーとして開発チームを主導し、のちに原爆の父として呼ばれたオッペンハイマーのお話でした。世界では昨年7月に公開され大ヒットしたのに、被爆国の日本での公開は、さすがに慎重に検討したうえアカデミー賞受賞ということもあって3月29日上映に踏み切りました。

いや3時間の尺の中を、3つの時間軸が行ったり来たり、それを追うだけで動体視力が相当疲れてきます。この映画自体はアメリカ人の視点で描かれており、折に触れた会話としては出てきますが、広島、長崎での原爆投下のシーンは全く出てこない。被災国日本人の心情としては複雑極まりない。しかし原爆投下がなければ、この国は焦土と化し戦勝国の占領地になり今の日本国ではない気もしてくる...でも、広島、長崎で被爆した当事者の方々は果たしてどんな気持ちで対することが出来るのか?いまだ無くならないどころか、核の脅威は以前にも増している現状を考えると、巨悪の根源としてのオッペンハイマーに違いない。

この映画が長時間何とか緊張を強いられながらも耐えられるのは、監督の理念、俳優の演技に拠るところが大きいと思う。特に主役を務めた舞台俳優出身キリアン・マーフィーの繊細な演技は秀逸。

よりによって、アメリカ訪問中の日本の失速寸前トップが、又してもアメリカのおじいちゃんに武器を買わされ、軍縮どころか軍拡に突き進む姿がなんともおかしくもあり悲しくなる現実でもございます。

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早くも新緑

2024/04/10
【第1878回】

昨日の雨と強風で満開の桜もヒラヒラと舞い散っていました。いつの世も、サクラは春の季節と相まって人の感情を異常に掻き立てソワソワさせます。中でも京都の人出は半端じゃありません。外国からの観光客、そして日本全国から集まっての騒乱状態。京都市民は迷惑千万でしょうが、観光で生活している人たちも居るので仕方がないところもありますね。おいらが大好きな、東山の麓を流れる琵琶湖疏水分線のうち、若王子橋から白川通りの浄土寺橋に至る疏水両岸の小道「哲学の道」も「騒がしい道」に変貌していました。やはり、こんな時期を避けて行きたいなと思っていても、そんな時期もなかなか見つけにくい京都になってしまったのかな...

それにしても、又しても国会議員、そして知事の横暴な立ち振る舞いがニュースになっていますね。吉幾三さんの動画サイトニュースから拡散していった北海道選出の自民党議員、航空機内ばかりではなく道庁の職員にも偉そうな態度で接していたそうな...来年の大阪万博開催に疑問を投げかけたコメンテーターに、万博出入り禁止を言い放った大阪知事。そういえば、どちらも横柄なツラしてますな。なんか勘違いしているというか自分の立場を理解していないですね...議員も市長も公僕であることを忘れ、特権階級丸出しのダメな人だと思います。税金、物価ばかり上がって冗談じゃありません...裏金も未だ不明、一刻も早く国会議員削減に踏み切って欲しいものです!

もう少し、春の微妙な季節感を楽しみたいのですが、明後日あたりから気温上昇で一気に夏の装いになるみたい...なんとも身体が付いていけなくなった地球環境になっちまいましたね。

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散る桜 残る桜も 散る桜

2024/04/08
【第1877回】

昨日、新宿歌舞伎町に昨年オープンしたシアターミラノ座で「ハザカイキ」を観劇。作・演出の三浦大輔の作品は久しぶりに拝見。この作家との出逢いは衝撃でした。17年前くらいかな、新宿シアタートップスで当時主宰していたポツドール公演「愛の渦」。台詞なしはいいとしても、男優は全員下半身丸出しで女優とSEXシーンのオンパレード。観客の誰かが通報すれば一発でわいせつ罪に問われ公演中止。この大胆な演劇公演でありながら、退屈させないどころか文学の匂いを醸し出す演出力に脱帽した次第。その後、映画の世界にも進出し演劇・映画界の鬼才と呼ばれるようになりました。

さて今回の芝居、芸能界、マスコミを舞台に時代に振り回されながらもがき続ける群像劇。終局は謝罪の連続、人が人に謝り、人が人を赦すことの物語。タイトルの意味が、ドラマの進行とともに理解できました。昭和の古い価値観とこれからの新しい価値観が交代しつつある、まだ中途半端な「端境期」だという事を言いたかったわけですね。

元関ジャニのメンバーが主役ということもあり、会場は相変わらずの旧ジャニーズの女性ファンで満席。そんな雰囲気の中でただ一人堂々たる演技をしていたのが風間杜夫さん。いや、表情、声、佇まいが他を圧倒してましたね。若い俳優さんは勉強になったことだと思います。この芝居のラストに作家の主張が凝縮されてました...26人のエキストラが場内から出現してのヒロインの記者会見、そして雨を降らしての抒情的なシーン。終わりよければすべて良し!魅せることを理解しての演出でございました。

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今日のサクラ

2024/04/05
【第1876回】

やっと出ましたホームラン!日本のみならず、世界の野球ファンが待ちに待った大谷さん。

精神的なプレッシャーは相当あったに違いない。ベンチに居るときの表情も何故か寂しそう、いつもは一平さんと一緒にニコニコしていたシーンが懐かしい。人生、魔が差すときは誰しもあるし、一刻も早く全てをさらけ出し残りの人生を再スタートして欲しいものですね一平さん。

そして裏金問題の処分、裁く方も裁かれる方も共に茶番ですね。肝心な裏金の実態はなんら解明されず一体全体なにを基準にして処分したのかさっぱり分からない。国民のほとんどの人が呆れているのに、感覚がずれている人にはなんら響いていないに違いない。なんとかちんたらちんたら動き回っている内閣総理大臣、ここは身を棄てるくらいの気持で解散に踏み切れば少しは見直しますがね...所詮、自民党猿山での権力闘争。国民なんかに顔を向けて発言してないのは相変わらず。自民若手もだらしないに尽きる。

昨日、知人が入院している病院にお見舞いに行きました。おいら78年の人生で入院したのは3度あります。最初の入院は21歳の時、劇団養成所の卒業公演終演後に急性盲腸炎で救急車に運ばれ即手術、そして入院。破裂寸前、間一髪で救われました。2度目は35歳の時、インドの旅から帰国後に急遽保健所の方が訪れ、そのまま車に乗せられ板橋の伝染病病院へ、検査の結果赤痢、2週間なんの痛みの症状もないのに強制的に入院させられました。検査した医者が驚いていました。悪質な赤痢菌が3種見つかったのに、このけろっとした健康体はなんじゃろかいなと...そして直近は61歳の時、右膝が痛くなり手術した方が良いと言われ入院。これも大したことないのに何故かしら?思えば、この医者ギラギラした目ん玉で切りたくて仕方ないという風貌についつい便乗してしまいました。

てなわけで、病院とはあまり縁なく過ごしてきました。改めて健康であることに感謝でございます。

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今日の神田川

2024/04/03
【第1875回】

おいらが芝居の世界に入るきっかけになった俳優さんが先月亡くなった。坂本長利さん、94歳の人生でした。おいらが20歳の時、大学に入学したものの例の学生運動が激しく大学も閉鎖状態。何か面白いものないかな?なんて気持ちでふらりと覗いたのが、代々木にあった代々木小劇場。山本安英さんを中心に活動していた「ぶどうの会」解散後に結成した小劇場運動の先駆け集団でした。ここで観た宮本研作「ザ・パイロット」観劇後、こんな面白い世界があったのかと大いに刺激を受けました。その後、この集団に所属していた坂本さんが演じたひとり芝居「土佐源氏」にもビックリ。民俗学者宮本常一の「忘れられた日本人」に登場する元馬喰(牛馬売買人)の一代記をロウソクの灯りだけで演じる坂本さんの姿に役者魂を感じた。最後の台詞「男という男は、わしにもようわからん。けんど男が皆、おなごを粗末にするからじゃろ。わしはな、人は随分だましはしたが、牛だけはウソつけんかった。おなごも同じで、かまいはしたが、だましはしなかった。」盲目の乞食が語る純粋な心の風景を見事に演じる俳優とはいったい何者か...しかも2,3メートルの至近距離で。

その後、坂本さんと同郷(島根県出雲市)の友達と同席し語り合ったことがある。坂本さんのゆったりした語り口と、おいらの酔いも加わって居眠りしてしまう失態を犯してしまう。

目が覚めた時に、にっこりと笑顔で返した坂本さんの佇まいが今でも忘れられない。

1967年~2023年まで海外も含めて1223ステージを重ねた「土佐源氏」。まさしく芸能の原点を感じさせる見事なひとり芝居でございました。        

                                     合掌

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七分咲き

2024/04/01
【第1874回】

2024年いよいよプロ野球開幕...いつもはワクワク感で一杯なんですが、ウクライナ、ガザなどの紛争、能登半島地震、そして政界の裏金問題、大リーグ大谷選手の通訳の不祥事なんかでスッキリしない感じでのスタート。せめてものスポーツの世界でモヤモヤを雲散霧消したいところなんですが、なんだかこの状況ではとシックリきませんな。

今年の我が心のライオンズ、なんとか楽天との試合2勝1敗でスタートすることが出来ました。投手力は両リーグ通じてナンバーワンと言われていますが、問題の打撃陣、相変わらず若手の伸び悩みというか、このシーンでどんなバッティングをすればいいのか?ということが理解されてないと思います。コーチがボンクラなのか選手そのものに能力がないのか、ここ数年同じ状況が又しても見せつけられるのが残念です。特に際立ったのが今年4年目の若林外野手、オープン3試合すべて選抜メンバーに選ばれながら13打数ノーヒット、数字はたまたまかもしれないが内容が良くない。少しは考えて打席に立てよ!とがっかりするバッティング、監督もそろそろ他の選手に替えるのかなと思いきやそのまま打席に送り出す始末。今年も松井監督続投ですが、おいらとしてはこの監督、選手時代はスタープレーヤーとしては認めるのだが指導者としては決断力のない監督だと思います。

一方、ライオンズに後ろ足で砂かけて出て行ったホークスの山川選手の動向が気になりますね。早速1号ホームンを放った後、いつものどすこいポーズ。少しは反省してるんですかね...人気商売の選手はやはりお手本になってなんぼの世界だと思います。数字残せば文句ないでしょう!なんて気持ちでプレーしていたらとんでもない人生になっちゃいますよ...

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週末満開かな...

2024/03/29
【第1873回】

昨日、下北沢ザ・スズナリで水谷龍二作・演出「お目出たい人」観劇。この芝居、今は亡きコメディアンたこ八郎さんのお通夜の時、皆笑顔で酒を酌み交わした光景を想い出して芝居にしたそうです。おいらも生前、新宿ゴールデン街でたこちゃんと何度か酒を酌み交わしたことがあります。ボクシング元日本フライ級王者から喜劇俳優由利徹の弟子になり、数々の伝説を作った怪優でもありました。右耳の三分の一が欠けていて「犬と喧嘩して噛み千切られた...」なんて言ってましたけど、実は居酒屋で客と喧嘩して噛み千切られたそうです。

いつも愛されキャラで酒場での人気者でした。そのたこちゃんも最後は水死の事故にあいました。海水浴場に行く寸前までゴールデン街で泥酔、海の家に着いても焼酎飲み続け海に帰っていったそうです。今から実に39年前の出来事でした。

今回の芝居をプロデュースした川手淳平君。以前、トムの新人公演にも出演したこともある役者なんですが、今回で3本目のプロデュース。プロデュース稼業を30年やってきたおいらも、彼の芝居に対する情熱、愛情、大したもんだと思いますよ。何といってもお金の問題、限られた入場者の中で如何に赤字を出さないか...借金抱えたらそれこそ一家離散なんてこともありえるんですから...そんなリスクを背負いながら役者である川手君がどうしてもやりたいという覚悟で臨んだ今回の芝居。プロデューサーとしても勿論、役者としてもなかなかのもんでしたよ。力の抜け具合、自分の立ち位置、素敵な役者ぶりでした。

人生、何事も夢中になれることがすべてです...どんなにお金、地位があっても燃焼できる対象を持ちえない人は寂しい時間の垂れ流しに違いないと思います。

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春の、ファンファーレ

2024/03/27
【第1872回】

冴えないこの国の唯一の希望の星であった大谷さん。連日メディアで推理合戦が報道されています。ほくそ笑んでいるのは裏金問題で困り果てていた悪相議員の方々でしょうね。それにしても先日、次期選挙に出ないと言うことで記者会見したあのおっさん、この国の幹事長を何年も勤めて居たのですから、驚き桃の木山椒の木でございます。質問した記者にふてくされた表情で答える姿がなんと醜いことか...同じ日本人としてとっても恥ずかしい。集金力が優れているだけで党の要職に就けること自体がおかしな話です。

所で大谷さんの記者会見。ほんとに怒りの感情を抑えての発言でしたね。長年、信頼し合って兄貴的な存在の一平さんに対する思いは確かに簡単な言葉で表現出来ないでしょう。スポーツの世界でほぼ頂点を上り詰めたら何かがあってもおかしくないと思います。好事魔多しって言葉がありますよね、調子がいいとき幸運が巡った時に、何故か水を差すサタンが登場するんですね...そりゃ人生ですから山あり谷あり、底に行ったときにどれだけ踏ん張り這い上がってこれるのかが勝負です。おいらも世界あちらこちら見させてもらいましたが、西欧人はどうしても有色人種に対しての優越感、もっと言えば差別意識はありますね。大谷選手に対しても快く思っていない人たちが居てもおかしくないと思います。こんな時こそ、良き伴侶になった方と二人三脚で乗り越えて欲しいと思います。

今日は春らしい陽気ですね。近くのサクラが一足早く挨拶してました。金曜日からは日本のプロ野球もいよいよ開幕、すべての人にとって喜ばしい心ときめく春であって欲しいのですがね...

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一足先に

2024/03/25
【第1871回】

先週、南青山にあるBAROOMにて上演された、村井國夫さんと沼尾みゆきさんによる歌と朗読による芝居を観てきました。題材は「「星の王子さま」、作者のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリが、むかし子どもだったひとりのおとな、親友のレオン・ヴェルトにささげた物語です。1943年にニューヨークで出版されて以来、世界のあらゆる国の人達に読み継がれた名作です。おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)という冒頭の一文から始まり数々の哲学的な言葉も含め、近代文明に毒された人類に語られる言葉が今なお突き刺さってきます。

とても簡単なことだ。ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない...こんな言葉を発しながら自然界の生き物を登場させながら意味深に語り掛けてくる構成が実に巧みで幻想的である。

村井、沼尾さんの息の合った歌声と朗読で心地よいひとときでありました。今年80歳になる村井さん本当に精力的に活動されています。老いなんて関係ないのかな...まだまだマグマのように吹き上がる感情の方が勝っているに違いない。これから、今年なんと3本の新作の芝居を抱えているのですからくれぐれもお体を大切にしてくださいね!

昨日の大相撲春場所千秋楽、新入幕での優勝は1914年以来110年ぶりという快挙を成し遂げた尊富士の優勝インタビューがなかなか。「記録より記憶に残る土俵を務めたい。」青森県五所川原出身の24歳の青年、なかなかいいこと言うじゃありませんか。共に健闘した石川県出身23歳の大の里と共に新しい相撲の世界を作り上げて欲しいと思いました。

そして、大谷さん...明日自ら会見に臨むそうです。まさしく人生万事塞翁が馬、一寸先は闇、何が起こるかわからないカオスの世界でございます。

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もうじきだネ

2024/03/21
【第1870回】

一昨日、東京スカイツリー近くにある「すみだパークシアター倉」で、劇団温泉ドラゴン第18回公演「キラー・ジョー」を観劇。アメリカ、テキサス州のダラス郊外のトレーラーハウスに住む一家の話。数千ドルの借金返済のために実母の殺害計画を、表の顔は警官だが裏の顔は殺し屋であるジョーに依頼し一家はとんでもない方向に崩壊してしまいます。いやはや、すさまじい芝居でした。公園のチラシに【トリガーアラート】本作は次の表現含みます。暴力描写 性暴力描写 セクハラ描写 流血描写 火薬による銃の発砲...さすがに子供さんは観客席には存在していませんでした。舞台上でこれほど生々しい行為があると、観る人によっては嫌悪感を抱く人も居るかもしれませんね。そんな予見を感じながら何故上演に至ったのか...主宰者は、演劇において舞台上が世界のすべてだとするなら、この一家の崩壊は世界の崩壊のメタファーです。資本主義、新自由主義を追求した果ての、つまり一部の人間が富を独占した結果としての世界の崩壊です...と述べています。

表現はある意味無限です。その無限の中から何を切り取り作品にするかが勝負です。当たり障りのないものを創って観客が退屈するよりも、より一歩、いや近未来に向けてのメッセージを届けようとするアーティストが待機しているのも事実です。より魅力的、刺激的な作品で生ぬるい我がニッポン豆腐列島に一撃を!

ここ数日、世の中は大谷選手の話題で満載。そんな折に今日とんでもないニュースが飛び込んできました。7年間通訳として共にしてきた水原一平さんが違法賭博に手を染めたという理由で解雇報道。いや、本当に人生何があるか何が起こるか分かりませんね...ついさっきまで幸せそうな状況が一転して不幸せに、まさしくどこかで観たことがあるドラマのように...

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寒桜とスカイツリー

2024/03/18
【第1869回】

大相撲三月場所も昨日で中日を迎えました。一時はモンゴル勢の勢いで純日本産の力士は見る影もない有様でしたが、ここのところ新鋭、大の里に新大関、琴ノ若の台頭で再び盛り上がりを取り戻しつつあります。おいらの年代は野球と同じく相撲も人気のスポーツでした。若乃花、栃錦、吉葉山なんて人気の力士が勢ぞろい。なかでもおいらは吉葉山のファンでした。よか男のうえに心優しい関取でした。のちに大横綱になった大鵬はまだやせっぽちで幕下あたりだったと思いますが、新聞配達の帰り道、宿を構えていた万行寺での早朝稽古を見学した時、既にこの力士は大物になる雰囲気を備えていました。激しい稽古で知られる二所一門の稽古、それはそれは激しいものでした。そんな稽古を見ながらキヨシ少年は、おいらはまだまだ甘いと思いながら気合を入れなおした次第です。

今、多くの優勝を積み重ね引退した白鵬親方の処遇を巡って相撲協会が揺れています。考えてみれば、ここ数年の相撲人気を支えてきたのはモンゴル力士の活躍があってからだと思っています。彼らが居なければとっくに潰れていたかもしれません。確かにモンゴル力士の品性は感心しないことも多々ありました。引退した元横綱、朝青龍なんて力士はひとり汚れ役を買って出たダーティーヒーロー。でも強かった!異国の地で一旗揚げる根性はただものではなかった気がする。日本の力士がなんとひ弱に見えたことか...日本も豊かになり、相撲の世界に入る若者が減少したのも理解はできますが、入門したからには頂点目指す気概は持って欲しいと思って観ています。スポーツ観戦で一番つまらないのは、気持ちが見えないプレー、現役生活そんなに長くはないのだからファンの皆さんの記憶に残るプレーを残して欲しいと思います。

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開花を待つ神田川

2024/03/15
【第1868回】

昨日の参院政倫審での世耕弘成議員の堂々たる態度にある意味感心した次第である。あそこまで堂々と演じきれれば千両役者である。誰が見てもそのからくりを知っていながら知らないと言い切る面の顔の厚さはただものではない。ほとんどの国民が説明されてないと声をあげているにも関わらず誰一人として一切明らかにしようとしない議員集団がこの国の権力を握ってることに只々呆れるばかりである。せめてもの若手の議員が立ち上がって異を唱える行動を起こせばまだしも、なんともへんちくりんパーティを開催し失笑を誘う有様である。誰もが我慢を重ねたコロナの時期、物価上昇でやり繰り生活を強いられた中、この厚顔無恥集団がコソコソと裏金作りに邁進していたかと思うと怒りを覚える。

一方、株価は上がり春闘での賃金アップ、なんだか景気の良い話に聞こえるのだが、この国の多数を占める中小企業の人達、年金生活者にとっては相変わらず苦境の日々が強いられているのが現状だ。世界幸福度ランキングも先進国の中では最下位。よく失われた30年なんて言葉を耳にしますが、このままだとこの先、失われっなっぱしの日本の未来が見えてきそうです。

「桜が一週間で散るのは、われら日本人が飽きっぽいからだ」なんて言われないようにますますの監視ともに、選挙には政治家の質をあげる投票をしましょう。

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弥生の月と星

2024/03/13
【第1867回】

昨日は春の嵐で一日荒れ模様の天気でしたが、今日は一転春らしい日和になりました。東京の桜開花宣言予想が3月19日と発表していました。年毎に早くなってきてますね。これも地球温暖化のせいでしょう。一年の中で、春の予感ほどウキウキするものはないでしょう。

人間生きてていつもこのワクワク感があれば人生楽しいに決まっています。その楽しみは待っていても訪れるものではありません。始終クンクンと嗅ぎつけ感じるチカラを保持してないとダメなんですね。

漫画家の東海林さだおさん、86歳になっても好奇心旺盛、生きることを楽しんでいます。

東海林さんの「おでん」に対する彼なりの見方が面白すぎて笑っちゃいます。

世界的和食ブームで、先陣を切ったのは寿司で次はおでんでは?でも、おでんはあまりにも身なりが貧しい。ほとんどが色は茶色、田舎っぽく、形もむさくるしい。たとえばチクワ、茶色いボロのようなものを全身にまとっている。おまけに体のまん中に穴が開いている。穴もボロも繕ってから人前に出るのが礼儀ではないのか。だが、聞くところによると、この穴はおでんのツユがよく染みこむようにチクワ自ら開けたのだという。チクワは我が身をなげうってまでおでんになりたかったのだ。だが、その一途は、はたして世界の人々に通じる一途なのだろうか。西洋合理主義から考えれば、商品の穴は欠陥である。だが、こういう考え方もある。チクワの穴の中には何も存在しない。無である。無は禅の教えにつながる。禅の教えを具現化したものがチクワということになる。ビートルズのジョン・レノンは禅に傾倒していた。ジョン・レノンは理論上チクワを食べていたことになる。そういうことになれば、世界中の人々はアッというまにチクワのファンになりおでんのファンになっていき、世界中におでんブームが巻き起こる...てな訳です。

どうです!この飛躍、こじつけ、いや想像する遊び心...いつどんな時にもこうやって生きてりゃ言うことありまっせん!さあ、今日から実践してみてはいかが皆の衆。

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春の公園

2024/03/11
【第1866回】

東日本大震災から13年。未だに避難者が2万6000人、そして、人が死んでしまうレベルの放射線を放つ溶け落ちた核燃料「デブリ」の取り出しは数グラムでさえ、13年たった今もできていません。そんな状況の中、岸田政権は原発の再稼働どころか新原発の建設まで打ち出しているのですから狂気の沙汰としか言いようがありません。聞くところによると、日本の原発の停止はアメリカの都合によってできないそうです。すべてがアメリカのお伺いを立てられないと事が進まない敗戦国の宿命、そして日米軍事同盟の縛りがそうさせています。今年元日に発生した能登半島地震然り、このままいけば地震大国日本は自ずから消滅してしまうに違いありません。何とかアメリカを粘り強く説得できる政権が誕生することを願うばかりです。

未だに故郷に戻ることが出来ない帰還困難区域の人たちの諦めに似た表情、我が子を津波に流された海を眺めながら「死ぬまで諦めきれない...」とつぶやく年老いた母親、この日が来るたびにあの惨状が甦ってくる人たちの悲しみを、残された人たちがどう受け止めるか?腐りきった現政権は勿論、この現状を少しでも前に動かす人材、システムが機能しないことに怒りと悲しみを覚えます。

昨日、村井國夫、音無美紀子ご夫婦による、歌と朗読で紡ぐ愛の物語「恋文」に行ってきました。その中で、お二人の知人である方の手紙に思わず涙しました。東日本大震災当日、津波に遭遇しながら奥様が必死に手を差し伸べながらも力尽き流され、一カ月後に見つかったご主人。そのご主人にあてた「恋文」、音無さんのところに送られ直筆で書かれた巻紙を朗読する音無さん、その「恋文」に沿う歌を唄う村井さん。両夫婦の思いが一つになる感動的な瞬間でした。

原発のない、そして戦争がない世界...どうすれば良いのか!今生きているニンゲンが思考し行動しなければいけないことを肝に銘じなければならない3月11日です。

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「恋文」町田まほろ座にて

2024/03/08
【第1865回】

先月亡くなった小澤征爾の芸術と銘打ったCD16枚組の壮大且つ繊細なる音すべて聴き終えました。改めて、小澤征爾なる人物の生きざまが、命を懸けてタクトを振る姿が目に浮かぶ。魂をスパークさせる指揮が、決して西洋の借り物でなく音楽そのものに国境が無いということを実践した人でもありました。25歳の時、インド洋の真ん中で貨物船のテッペンに登って、水平線をジロジロ見回した時、なるほど地球は随分でかくて、丸いものだと思ったそうだ。敗戦を経て世界に対峙しようとした心意気を感じる。N響とのトラブルにもめげず「僕はただ音楽をやりたい!」と世界に打って出た行動力も半端ではない。

どの世界においても冒険心からスタートした人ほど、とてつもないものを生み出している。

夢は追うものではなく、しがみつくもの。地位や名誉に翻弄されることなく、己の忠実なる魂にしがみつき行動する姿こそが新しい価値観を生み出すのではないか。

小澤さんはこんなことも言っていた。楽器から流れ出す音は人間の声と同じである。だからこそ、あれほど人目もはばからず情熱をもって演奏者に伝えるスタイルを維持し続けたに違いない。

お隣の韓国、中国、そして我が日本、もうそろそろ立身出世の妄想にピリオドを打ちませんか?いい学校に進学、一流企業に就職したからといって幸せな人生とは言えません。そんなことにお金と時間を投資するんだったら、己の心に真摯に向き合うことに投資し決断、行動し、自分の道を切り開いていく生き方の方が魅力のある人生だと確信します...一度きりの人生ですから!

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今朝の杉並区

2024/03/06
【第1864回】

昨日、新宿西口地下イベント広場でこんなものを見つけました...懐かしいですね。おいらが子供の頃は、こんな看板に憧れて映画への夢を育んだ気がします。手書きの看板の前に佇み、観たいのはやまやまなんですがお金が無く、入場するおっさんの傍に寄り添いあたかも親子のようになりすまし無料鑑賞をしたこともありました。

この看板を描いた人は、今は亡き久保板観さんです。中学一年生の頃から映画看板の絵の練習にのめりこみ、昭和32年、中学卒業後に東京青梅市にある映画館「青梅大映」で看板絵師の仕事をスタート。年間365枚以上の映画看板を描く生活をしたそうだ。その後、テレビの出現により映画産業も斜陽の憂き目にあい仕事がなくなり、商業看板業に転職。平成3年から地元商店街町おこしに馳せ参じ、平成6年からは青梅の商店街に昭和の映画看板が飾られるようになった。久保さんは平成30年脳梗塞により逝去、享年77歳。

そんな久保さんが精魂傾けて描いた看板を前にして、暇さえあれば映画館に通った日々が甦ってきます。高校時代は福岡市高校映画連盟を創設し毎日のように会長という権限を縦横無尽に利用、いや活用し、中洲の映画館に入り浸りでございました。そして、お嬢さん学校も巻き込み映画談義で楽しい時間を過ごさせて頂きました。決して映画を利用したのではございませんことよ、とことんおいらは映画が好きだった!映画にかかわる仕事がしたいという思いで東京行きを決めた次第です。

それにしても、何事においても利便性が問われる現世、このローテクな職人芸、そして生き方、貴重ですし大切にしたいですね。

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昭和の名画

2024/03/04
【第1863回】

先週の土曜日、座・高円寺にて、糸あやつり人形一糸座による「崩壊 白鯨ヲ追ウ夢」を観劇。この一座の前身は結城座です。江戸時代から継承された糸あやつり芸を初めてみたのは50年前です。50人ほどの小さな小屋で人形を操る結城孫三郎の見事な芸にすっかり魅了された記憶があります。今回の一糸座は結城座から独立して20年になるそうです。「劇団桟敷童子」の東憲司氏による、あの有名なハーマン・メルヴィルによって書かれた長編小説「白鯨」を下敷きに書かれた作品でした。「白鯨」と言えば思い出すのが1956年に上映されたグレコリー・ペック主演による映画。片足の船長を演じたグレコリー・ペックの真に迫る演技が今でも鮮明に記憶に残っています。おいらが若い頃在籍していた演劇群「走狗」でも上演しました。勿論、アングラ芝居ですから原作からは、はるかに逸脱してはいたのですがハチャメチャ奇想天外な展開でテントに集まったお客はそれなりに楽しんでいました。博多公演では室見川河畔にテントを建て、ラストには今は亡き美術家・島次郎が作ったブリキの鯨が百道の海で遊泳する姿が懐かしく想い出されます。

あやつり人形を操作する人形がまるで生きているかのように見えるのは、あやつる人の技術ではなく、身体から糸を通じてどれだけ魂を吹き込められるかにかかっていることを再確認しました。今回の芝居でも、血筋を引く江戸伝内さんの繊細な糸の捌きが人形・船長エイハブの一挙手一投足に哀歓と激しい闘争心が痛いほど感じられました。その活き活きした人形にいかに対峙していくか?生身の俳優陣の奮闘ぶりも見応えがありました

演劇はあらゆる可能性を秘めています。今回のラストにも舞台に置かれたごみにしか見えない物体が、一瞬にして空飛ぶ鯨として泳ぐ姿を眺めながら、人の想像するチカラと創造する楽しみがなんと素敵なことであるかを再認識させられながら劇場を後にしました。

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もうすぐだね

2024/03/01
【第1862回】

今日から弥生です。下旬には桜も満開、春の到来で身も心も軽快になってくるんでしょうね。

昨日で、「モンテンルパ」全公演、無事に終えることが出来ました。本番間近にコロナ、インフルエンザの猛威に襲われ、あわや公演中止なんてことになりかねない状況を、見事はねのけての今回の舞台。芝居の神さんは又してもトムを守ってくれました。スタッフ、キャスト皆さんの頑張りに只々感謝です。そして、呼んでいただいた演劇鑑賞会の方々の温かい心遣いがあってこその公演でした。心待ちにしてくださった皆様に満足していただける芝居の仕上がりであったことを、日々の報告で知らされる度に内心ホットした次第です。

一方、この国の政治、ほんまにふざけた状況に直面しています。昨日、今日と2日間にわたり開かれた衆院政治倫理審査会、首相はじめ安倍派の幹部、皆知らぬ存ぜぬの一点張り。ふざけるんじゃないよ!と言いたい。ここまで国民をなめ切った姿に開いた口が塞がらない。誰一人として脱税の意識もなく、会計責任者に責任を押し付ける白々しい顔を見るにつけテレビ中継も見る気がしなくなりました。早く解散して、選挙で自民党をこき下ろしたいところだが、喉元過ぎれば熱さを忘れるのが常の日本国民性を思えば悲観的になっちゃいます。そんなもやもやを吹き飛ばすかのような大谷選手の結婚ニュース。ここまで完璧に知られない彼の思考、行動、改めて感心してしまいます。すべてが万能、こんな人物が野球界だけにとどまってしまうのもなんとももったいない。

土の中からひょっこりと花開く野の花。おいらの顔も思わず緩んでしまいます。

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クロッカス

2024/02/28
【第1861回】

昨日、高崎演劇鑑賞会で久しぶりに「モンテンルパ」を観てきました。高崎は群馬県では規模的には一番大きな町である。日本一のだるまの産地でもあり芸術活動も活発である。駅前では早速ストリートミュージシャンがいい音鳴らしておりました。

そんな街で活動を続けてきた高崎演劇鑑賞会もコロナの影響で、ここ数年大変苦しい時期がありましたが、演劇の灯を消してはならないとの思いから少しずつ盛り返し元気な姿でトムの芝居を迎えてくれました。

今月7日、東北演劇鑑賞会でスタートした「モンテンルパ」もいよいよラストが近づいてきました。久しぶりに会った役者5人衆、さぞかしお疲れモードかな?と思いきや元気もりもりでございました。芝居もさすがに回を重ね安定した舞台を魅せてくれました。いわき演劇鑑賞会では終演後、スタンディングオベーションで大盛り上がり、役者さんたちも大感激。トム・プロジェクトのキャッチコピーでもある

「舞台の素晴らしさは 新鮮な感動であり発見です!観る側と創る側が夢のある舞台を創りたい!」に相応しい現場を創出していることに感謝と勇気をもらえます。

残り今日と明日の2ステージ、無事に千秋楽を迎えることを願うばかりです。

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梅林

2024/02/26
【第1860回】

31年振りにビクトル・エリセに逢えました...おいらにとってエリセ監督の「ミツバチのささやき」「エル・スール」は映画史の中でいつまでも記憶に残る作品でした。今回のスペイン映画「瞳をとじて」なんと31年振りの長編映画です。3時間近くの作品、人によっては冗長なシーンが多く居眠りしちゃいそうなんて方もいるんでしょうね。よくよく観てみんしゃい、このデジタル化が進みテンポを要求される時代に、ここまでじっくりと登場人物の表情を、粘り強く映し出し内面に迫る姿勢に、こちらまで見続け記憶してしまう映像のチカラ、説得力に驚嘆。この映画は、登場人物の監督が制作中に疾走した俳優を探すというシンプルなストーリーなのだが、その過程で出会う人物像がすべて過去と現在そして未来を想定させるシーンの連続である。エリセ監督の映像はいつもながら静謐な色合いを醸し出す。要するに浮いていないのである。どこまでもより深く内面に沈着していく説得力がある。観る側もスクリーンに落とし込められてしまう映像の魔術師だといっても過言ではない。得てして、作品を創る際には面白くするためにテクニックを多用し興ざめしてしまう映画が多々ある。

この監督にはこのあざとさが一切感じられない。ただひたすらに、淡々と生きていく間に無くした心のよりどころとなる何かを拾い集め、その断片一つひとつに思いを馳せ思い出す、あの日、あの時の肌で感じた体温と高揚感。31年振りに創ることが出来た監督自身の現在の心境を綴った今回の作品は、映画は永遠不滅、どんな過去をも一瞬にして蘇らせる心の琴線であることを再認識させてくれました。

邪魔しない音楽も素敵でした。映画「リオ・ブラボー」の挿入歌、ライフルと愛馬のまさかの替え歌、監督のチャーミングな一面を感じました。そして、「ミツバチのささやき」に5歳でデビューしたアナ・トレントが50年振りに再びアナ役を演じていました。彼女が記憶を亡くした父親と対峙し「Soy anna(私はアナよ)」と呼び掛けて目を閉じる...

おいらの記憶が映画を支え、映画がおいらの記憶を支える。なんとも至福な時間でございました。

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瞳をとじて

2024/02/21
【第1859回】

昨日は、トラッシュマスターズ第39回公演「掟」を下北沢駅前劇場で観てきました。ある地方都市の市長選挙を巡る顛末を描いた作品です。日本のどこかで今でも、保守的な人たちと変革しようとする人たちとの闘いは日々繰り広げられているに違いありません。国会で問題になっている裏金なんてものは、地方都市ほど日常化し未だに改められることがなく、未だに続く自民党政権の温床になっていると思われます。

今回の芝居で一番驚いたのは、なんと新劇劇団のベテラン俳優の方々が4人も出演されていること...随分昔の話になりますが、おいらが芝居を始めたころはアングラ演劇が台頭し、その新しい動きに共鳴し、新劇劇団のなかからも反新劇運動がおこりいくつものグループが誕生しました。新劇の体質が持つアカデミック的なものにNOを突きつけた俳優、演出家、作家が古典ではなく今を描く作品を上演し喝采を浴びました。状況劇場、黒テント、早稲田小劇場、天井桟敷などなど、おいらも演劇群走狗なるものに所属し7年間テント担いで全国を駆け巡りました。今まさに大衆と同じ地平に立ち生の肉体を曝け出し吠えていたんでしょうね。

新劇で長い間培われたベテラン俳優さんと若い人たちの競演は見応えがありました。中津留章仁の作品をリスペクトしながら、3時間近くの芝居を成立させようとする姿は、演劇を超えた人間の深い繋がりの感じさせてくれました。どこの世界も年齢は関係ありません。

ミュエル・ウルマンの青春に関するこんな詩があるじゃないですか。
  青春とは人生のある期間ではなく心の持ち方を云う。
  薔薇の面差し、紅の唇、しなやかな手足ではなく、
  たくましい意志、ゆたかな想像力、燃える情熱をさす。
  青春とは人生の深い泉の清新さをいう。

おいらももうすぐ78歳、そりゃ体の衰えは日々感じますよ...でも、こうやって今日も目が覚めたら生きてるんだもん...よっしゃ!今日も楽しんでやろうなんて気持ちになっちゃいますね。

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トムの支店ではございませんよ

2024/02/19
【第1858回】

おいらは、やはり詐欺師だった...先週、妻の誕生祝い(古希)で、とあるイタリアレストランに行くことになりました。初めての場所で、スマホ片手に目的地に向かうが、なかなかわからずお店に電話をしました。おいらの声がデカすぎたのか前行く二人のオッサンがおいらを振り返っていました。それにしても二人して振り返ることでもないとは思いましたが...先ずは間違えて一本目の道に迷い込み、ここではないと思い一つ先の道路に出ました。左右確認すると右手にイタリア国旗がはためいており、「この店に間違いない!」と歩き出し店のドアを開けようとした瞬間、おいらの後ろを歩いていた妻が二人のオッサンになにやら問いかけられているので、何しているのだろう?なんとこの二人のオッサン刑事だったんです。妻の話によると、先程のおいらの店探しの電話が、怪しいと感じ追跡したらしい。おいらがオレオレ詐欺の一味で、妻は騙されそうになった被害者女性と思いマークされたというわけだ...おいらが店のドアに立つ姿を指さしながら「夫です...」と答えたところ、二人の刑事はズッコケてしまいました。それにしてもこの二人、どうみても刑事には見えません、職人さんと見ましたね。その辺の服装、佇まい、見事というしかありません。まさしく演技賞もんです...妻に職務質問する前にきちんと警察手帳を見せたんですから間違いはありません。照れくさそうに立ち去る二人のデカ、疑ってスミマセンなんて顔していました。

ここで改めて、おいらはやはり詐欺師風情が拭いきれないなのかと...悲しみべきか、はたまた喜ぶべきか...でも、芝居なんてもの所詮、詐欺師の所業でございます。観に来ていただいたお客さんをいい意味で裏切り、騙すかを常日頃、思考し行動しているんですからね。

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如月の空

2024/02/15
【第1857回】

人が生きていく中で、人との出会いでその後の人生が左右されるのは当然だと思います。そして次に大切なのは、どんな本を読み、どんな映画・芝居・絵画を鑑賞し、どんな音楽を聴いてきたか?これらのことで、ほぼその人の人間形成が形創られ、豊かな人生のある程度のバロメーターになるのではないかと思っています。古典から今はやりの旬のものから何を選択するか?これも難しい判断であると同時に、やはり個々の感性が鍵となってきます。

音楽のジャンルも確かに幅広い。おいらは基本的にジャズが好きなんだが、これに拘ってるわけではない。若い頃から名曲喫茶に入り浸り(新宿にあった、らんぶる)世界のクラッシックを堪能しました。プログレッシブ・ロックの先駆者としても知られるピンクフロイドにもよく聴きました。勿論、自らギターを手にしてフォークにも熱中した20代もありました。じっくり歌詞を味わうことが出来る歌謡曲もいいですね♪旅心を唄う小林旭もなかなかよかもんです。

最近、よく聴くのがフランスのチェリスト、ゴーティエ・カプソン。今年42歳になる彼のチェロはなかなか心地よい。チェロと言えばスペイン人のカザルス、当時、独裁政権の反対しフランスに亡命しながらも、カタルーニャ人としての誇りを失わず、心を込めて格調高く演奏したカタルーニャ民謡「鳥の歌」はいつ聴いても胸に迫るものがあります。そしてもう一人、マイスキー。彼の演奏するバッハの無伴奏チェロ組曲を聴いていると、表現力豊かなバッハの世界を思う存分に描いていてエモーショナルな気分にさせてくれます。

要はチェロという楽器が「人間の声に一番近い音域」と言われているので、私たちの耳に心地よく響くのですね。

No Music No Life♪

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今宵もチェロを

2024/02/13
【第1856回】

先週の週末、久しぶりに吉祥寺井の頭公園に行ってきました。それにしても吉祥寺の街の賑わいは相変わらずです。この街の人気度、なるほどと言う点がいくつもあります。老若男女問わず楽しめるスポットが程よく点在しています。先ずは井の頭公園、池でのボート遊び、公園内のあちこちで繰り広げられる大道芸人のサービス、手作り作品が並ぶ出店、そして幼児に人気のブランコなどなど。勿論、若いカップルが愛を囁くベンチも随所に配備されています。四季折々を楽しむことが出来る樹木の種類の多さも魅力的です。

そして街中、昔ながらの戦後闇市バラック飲み屋街があると思えば、若者向きのお洒落な飲食店も変化は速いが次々とオープン。そして古着屋、安価でポップな品物があちらこちらにぶら下がっています。そして何よりも安心なのは、新宿の歌舞伎町とか渋谷、池袋に行けば必ず目にするデンジャラスゾーンがほとんどないということかな。おいらなんか、昔からクンクンと匂いを嗅ぎながら未知なる危険な地域に潜入するのが面白いと感じる人間にとっては、無味無臭な街かもしれませんね。

この日も、井の頭公園では多くの大道芸人が芸を披露していました。なかでも全身を赤銅色にコーディネートしたパントマイム芸人、前に置いた箱にお金を投げ込むと動き出しシャボン玉を飛ばしてくれました。大空に舞い上がるシャボン玉がはじけた瞬間...ウクライナ、ガザ地区で非業の死を余儀なくされている市民がオーバーラップしました。

平和は向こうから勝手に来るものではありません。平和呆けしているといつの間にか日本も徴兵制度復活なんて未来が待ち受けているかも知れません。そんなこと考えながら、この日は1万5千步歩いていました...勿論、徴兵に備えてではありませんぞ。

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平和な一日

2024/02/09
【第1855回】

昨日は久しぶりに北千住に行ってきました。もう少し足を延ばせば千葉県松戸市、そんな場所にあるシアター1010(センジュ)。この立派な劇場で「大誘拐」なる芝居を観てきました。勿論、風間杜夫、柴田理恵さんが出演しているからの観劇です。共演者は白石加代子、中山優馬。御年82歳になる白石さんの怪優ぶりは相変わらずでした。早稲田小劇場で鍛えられた声、肉体表現は世界でも十分通用すると思います。この芝居での風間、柴田さんのやり取りが観客を和ませる程よいスパイスになっていました。二人に共通しているのは遊び心です。しんどい芝居の進行のなか、ちょっとした遊びが観客の緊張をほぐして新たな緊張を呼び起こしてくれます。遊びらしく見せかけながらも、ドラマの中で成立させるのがプロの役者です。

終演後、ディープな居酒屋などが立ち並ぶ、「飲み屋横丁」を散策。この北千住も再開発が進み街の様子も一変したのですが、ここだけは戦後闇市を引き継いだ飲み屋街です。ネズミがウロチョロしているのを垣間見るだけでディープ合格。壁一面に芝居、音楽、美術のチラシを貼り、一日一組しか客を入れないと蘊蓄を語る飲み屋の親父が居ると思えば、一見の客お断りの餃子を食べさせるおかみさんの店。この横丁、変わりもんがいて歩いているだけでもおもろいところです。そんななか静かな佇まいでオープンしていた「DEVIL CURRY」に入店。店内は、カウンター席のみ、繁華街にある隠れ家のような雰囲気のお店でした。JAZZが流れる中、出てきたチキンカレー絶品でした。久々に美味なるカレーを食した喜びに浸ることが出来ました。ウロチョロ、キョロキョロ、クンクン、さすが戌年のおいら、いい店見つけることが出来ましたとさ。

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大誘拐

2024/02/07
【第1854回】

日本映画史上、傑作の一つである黒澤明監督の「七人の侍」を観ました。これまで何回も観た作品です。やはり素晴らしい!先ずはすべてがリアルだということ。衣装、メイク、かつら、小道具、セット、一分のスキがないくらい見事だ。1954年公開の映画としては、ここまで創ることが出来たのも黒澤明に対する信頼と期待の表れであろうかと思います。当時の通常作品の7倍に匹敵する2億1千万の製作費と1年を要して完成させた成果が随所に感じられます。そしてカメラワークによる実在感、黒澤映画の特徴的な撮影技法マルチカム撮影法を初めて導入している。マルチカム撮影法は1つのシーンを複数のカメラで同時撮影するという技法。その他目まぐるしく変化するシーンを8台のカメラを駆使しアングルの豊かさと臨場感を醸し出している。

この映画のテンポとリズムを生み出しているのが早坂文雄の音楽。主題曲の侍のテーマが特に素晴らしい。この曲が流れるたびに、戦国時代末期に仕事にあぶれ盗賊化した野武士軍団の襲撃に対抗する七人の侍と百姓たちに、おいらもエールを送りたくなってくる。映画を観終わってあとも、このテーマ曲を自然と口ずさみ己を奮い立たせてくれるってんだから映画音楽としての名曲であることは間違いない、

きらりと光る俳優陣の個性が堪らない。貫禄と武士の矜持を持つ志村喬、野放図さと愛嬌の三船敏郎をはじめとして、加藤大介、稲葉義男、宮口精二、千秋実、木村功の七人の侍。

百姓の藤原鎌足、土屋嘉男、左卜全、なかでも左卜全は最高でございます。意気地がなく間が抜けた役を与えたら彼にかなう役者はいないと思う。「生きる」のお通夜のシーンも絶品でございました。昔はホンマに良か役者がごろごろ居たんだなと、改めていい時代にいい映画を見せて頂いたことに感謝。

東京都心の雪騒ぎも一段落して今日は青空が広がる立春から二日目の日です。

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残り雪

2024/02/05
【第1853回】

2月2日から昨日まで、亀戸カメリアホールで上演した「モンテンルパ」無事に終えることが出来ました。今回の公演、稽古中にいろんなアクシデントがあり公演中止もありの状況の中、スタッフ、キャストの皆さんの奮闘で乗り越えることが出来ました。本当に生モノは恐いです。まさしくなにが起きるか分からないシナリオがないドラマですね。

3日間の公演全て拝見したのですが、日毎に芝居そのものが成長を遂げていました。緊張感を強いられる環境がそうさせたのかも知れません...演劇の最も難しいのは、ただやみくもに稽古をやれば良いというもではありません。やり過ぎて慣れてしまうのも良くないし、稽古不足はその稽古量の少なさがそのまま本番の舞台上にさらけ出されてしまいます。その辺りの按配をうまく調整しながら初日に照準を合わせていく難しさは、何度経験しても計算できるモノではありません。役者の精神、肉体、思考、プロデューサとしては役者を信じるしかありません...そんなことまでも熟考しながらのキャスティング。

2月7日からは、山形県鶴岡市民劇場からスタートし29日まで東北ブロック、関越ブロックの演劇鑑賞会の人たちに18ステージ観劇していただく予定です。冬の最も寒い中、この芝居で温かい気持ちになっていただければと思っています。

亀戸で70年商売している「亀戸餃子本店」に行ってまいりました。餃子と飲み物しかありません。ビールを頼むとすかさず餃子が出てきます。一皿5個食べ終わりそうになったら、すかさず絶妙なタイミングでおばちゃんが餃子再注文の催促。断ることが出来ない微妙な雰囲気なんですね...周りを見ているとビールと一皿¥300の餃子を2皿から3皿食べての会計。残された空き皿で素早く計算、まるで回転餃子といったところかな。一組の滞在時間ほぼ15分から20分。このシンプルな営業スタイル、商いの原点を見せられた感じがいたしました。

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ここにも梅が

2024/02/02
【第1852回】

戦後すぐ東京都台東区柳橋の隅田川沿いに建てられた、旧市丸邸を2001年にルーサイトギャラリーとしてオープンした古民家での朗読会を観てきました。個性的な俳優、鳥山昌克さんが数年前から企画している出し物です。今回は唐十郎「雨のふくらはぎ」泉鏡花「絵本の春」の朗読劇。二人の女優さんに囲まれて楽しそうに演じていました。唐さんの作品になるとまさしく水を得た魚、そりゃそうでしょう、20年間、唐組で唐ワールド漬けの日々だったんですから...唐作品に度々登場する鶯谷周辺の夕焼け、下谷万年町のいかがわしくも耽美な世界。これだけは身近に体験した人と心中する覚悟がないと身につけることができません。

役者にとっての存在感は大切な要因です。それをどこで獲得できるのか?勿論、まず第一は日々の生き方、何を視、何を感じ、己の中でいかように発酵させていくか。そして次に誰と出会い共同作業していくか。優れた作家、演出家と出会い、共に芝居を創ることが出来ることは千載一隅のチャンスだと思います。あとは己の努力あるのみ。

鳥山昌克さんと唐さんとの出会いも偶然ではなく必然ではなかったかと思います。これからも唐十郎の魅力を伝えていってほしい役者さんだと思いました。

それにしても、朗読中に目にする背景が素晴らしい。隅田川を行きかう屋形船、総武線を走る電車の音、高速道路の車の列、リアルタイムのなかで粛々と進行する幻想の世界は、とても贅沢なひとときでした。

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如月

2024/01/31
【第1851回】

あの似合わない黒いハットを被ったおっさん、又しても物議をかもす発言をいたしました。ほんまに情けない、こんな人をいつまでも選ぶ福岡の選挙民もこれまた情けない。この国を代表する女性外務大臣の名前は間違えるし、あまり美しくないと容貌にいちゃもん付ける人間が副総理なんて世界に対しても恥ずかしい限りだ...こんなことを言われた外務大臣も「失礼な発言です!」とお灸をすえればいいのに、聞き流す対応。なんだか女性初の首相なんて声を気にしての忖度なのかとも思ってしまいます。

連日の裏金問題の当事者の言葉もすべて虚しく聞こえてきます。一番の正直者は、議員辞職を願い出た長崎選出のオッサンかもしれませんな...悪徳5人衆なんぞは国会開幕初日、皆そろってニコニコしておりました。せめてもの芝居でもいいから「申し訳ありません!」なんて神妙な顔でもすればいいのに、あの厚顔無恥なるツラを見せられると開いた口が塞がりません。

日本の国の政治家に申したい!あなたたちは言葉に対して失礼じゃないかと思います。要するに相手(国民)の差し迫った言葉を機能として聴いているだけ。己の腹の底に染みわたる覚悟で聴いていないということだ。そしてお金のこととなると欲の皮が突っ張り、これだけは正直になるという体たらく。政治屋稼業の言葉だけが利便的にはびこっている世紀末的状況でございます。

言葉は暴力には無力でもあっても、ひとりひとりの生きるうえでの杖であったり、飢えたときの代用品になったり、身を守るシェルターにも成りうる人間のみに与えられた宝物でございます。そんな言葉をないがしろにする人達に国を任せるわけにはいきません...

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善福寺川緑地公園

2024/01/29
【第1850回】

先週の土曜日、久しぶりに刺激的な映画を堪能しました。「女王陛下のお気に入り」のヨルゴス・ランティモス監督の最新作「哀れなるものたち」。観終わった率直な感想は、若い頃よく観たゴダール、フェリーニ作品を彷彿とさせるアバンギャルドの匂いがする問題作。何が問題かというと過激な性描写に目がいき、一見エログロに見せておきながら登場人物が語る言葉の背景には現代社会に潜む社会、化学、偏見、差別、政治、制度に辛辣なメッセージが込められていること。しかも説明的ではなくユーモアを交えてのやり取りにエンタメ性を感じさせてくれること。それにしても一番驚いたことは、2016年の傑作ミュージカル「ラ・ラ・ランド」で女優志望の主人公を演じ、ベネチア国際映画祭の最優秀女優賞や、アカデミー主演女優賞など数多くの賞を受賞したエマ・ストーンの体当たり演技。これがホンマの女優魂!日本の女優さんが観たら、なんでここまでやるの?と腰を抜かしそうな過激、過剰なシーンの連発。しかも、内面の演技もしっかりしてるんだから文句のつけようがない。アップで写し出される表情には一人の女性としての揺るぎない信念と持続する強い意志を感じる。

撮影、美術、衣装、ヘアメークどれをとっても新しいものを創る野心に満ち溢れた作品であることは紛れもない事実。エンドロールの流れる不思議な図柄と音楽、これにもまいりました。エンドロール賞をあげたいくらいの終わり方。映画にとって締めのエンドロールはとっても大切なシーンだと思います。すべてを終え、観客は余韻に浸っているなか如何に幕を閉じるか...終わりよければすべて良し!って言葉がありますよね。

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問題作

2024/01/26
【第1849回】

昨日は神保町のジャズ喫茶「オリンパス」と、明治大学図書館で一冊のノンフィクション小説を読破しました。美味しい赤いチキンカレーとコーヒー、そして4000枚のレコードの中から選曲されたレコードの心地良いノリで150ページを読み終え、残りの170ページは明治大学図書館の静寂な空間で...やはり、言葉の持つ滋味、深淵の魅力は心身を虜にしちゃいます。

それにしても、改めてノンフィクション作家の凄さを感じさせる読み応えでした。何年間もの間、対象となる土地、人物に密着し体当たりで本質に迫るには相当のエネルギーを必要とします。その人の過去、現在を含め洗いざらい聞き出すんですから、それなりの人間関係を構築しないと無理な話。

おいらも芝居を創るうえでいろんなジャンルのノンフィクション小説を読んできました。中でも、九州大分県中津で多くの書を書き続けた松下竜一さんには大いなる共感を覚え、「松下竜一 その仕事全30巻」を買い込み、中津に飛び、上演許可を頂いた思い出があります。そこはノンフィクション作家と同じくらいの情熱、エネルギーを有しないと、良質な芝居なんかは創れません。

それで昨日読了した小説は?こればかりはまだまだ今の段階では秘密でございます。すべてが明らかになった時までのお楽しみ...こうやって又、新たなことにチャレンジしていくことで己を奮い立たせる日々でございます。

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冬のメタセコイア

2024/01/24
【第1848回】

今日はこの冬一番の冷え込み。故郷博多もどうやら雪が舞うらしい。それにしても能登半島の人たちにとっては厳しい日々が続いている。そんな中、新宿の街かどで若い有志が被災者に向けての募金活動を行っていた。こんな風景を目にすると、この国もまだまだ希望が持てますばい。その傍では、路上シンガーからのスターを目指す若者も居る。一度きりの人生なんだから信じたものに賭け、悔い無き人生を送れば良いのだが、この国のつまらんシステムに未だ拘り一流大学、大企業なんてコースを選択しちゃうのがほとんどかな?大好きなことに夢中になり手に職を付けて、もの創りに励む人達の目はいつもキラキラしています。おいらはこんな人種が大好きです。

永井荷風の全集を読んでいます。この作家の定まることのない生き方とマッチした文章が実に面白い。それも学問に裏付けされた書物だから説得力がある。銀座のカフェ、遊郭、ストリップ劇場をこよなく愛し、その視線はいつも弱者に注がれていた。

1952年には「温雅な詩情と高邁な文明批評と透徹した現実観照の三面が備わる多くの優れた創作を出した他江戸文学の研究、外国文学の移植に業績を上げ、わが国近代文学史上に独自の巨歩を印した」との理由で文化勲章を受章する。最後は孤独死、そして彼の遺言として遺骨は吉原の遊女の投込み寺に葬られたいと記していたらしい。

裏金疑惑の安倍派の議員たちの神経にはほとほと呆れてしまう。「安倍さんに申し訳ない...」

あほんだら!謝る相手が違うやろ...こんなセリフをいとも簡単に吐いちゃうこの人たちに政治を任した選挙民も大いに反省せにゃいかんですばい。

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冬の暮

2024/01/22
【第1847回】

黒澤明監督の傑作「生きる」を、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの脚本によりイギリスでリメイクしたヒューマンドラマ「生きる LIVINNG」鑑賞。率直な感想、やはり黒澤作品の方が圧倒的な中身の濃さで軍配が上がるかな。やはり主人公が公園を作るためにいかに命懸けで奔走したかを回想する葬式の場面が、この映画の核心のような気がします。この時代に居た役人を含めた人間像が見事な演出、演技によって主人公を際立させる手法が永遠の名作にしています。中村伸郎、藤原鎌足、千秋実などなど名脇役の丁々発止のやり取りが実に人間的だ。とりわけ印象に残るのが左卜全の面白おかしい存在感。「七人の侍」の時もピカ一だったのだが、こんな役者が居なくなったのも日本映画が今一つパッとしない一因かもしれない。

リメイクした英国映画も健闘しているというか、やはり西欧の洒脱な物語である。日本人の持つ泥臭さと対照的にイギリス紳士の佇まいを前面に押し出している。Mr.ウィリアムズを演じるビル・ナイの端正で押し付けがましくない存在感が、日本版と違うテイストを生み出している。そして、なんといっても印象に残るシーンであるブランコに乗って口ずさむ歌。日本版は志村喬の、♪いのち短し 恋せよ乙女 あかき唇 褪せぬ間に 熱き血潮の 冷えぬ間に 明日の月日は ないものを♪「ゴンドラの歌」これが絶品でした。

英国版は、スコットランド民謡の「The Rowan Tree」=「ナナカマドの木」、この歌には、今際を覚悟することで、自身の故郷や親族などに想いを馳せているという意味があるそうだ。歌詞、メロディともに乾いた感がしました。

最後に、主人公が場末の歓楽街で嬉々として遊び解放するシーンがあるのだが、日本版ではあの怪優、伊藤雄之助がアクの強い演技の連続でスクリーンを釘付けにする面白さがあったのだが、英国版はなんともあっさりした俳優さんのお陰で無味無臭のシーンになったのが残念でございました。

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昨日、見かけた早咲き梅

2024/01/19
【第1846回】

能登半島地震の今後の行方が混沌としています...二次避難を呼びかけても避難者の一割の希望者だったとか。故郷への強い拘り、ひどいのは大学生が被災した家に入り込み高級蜜柑を盗んだのを知り、我が家を守らないとの思いで劣悪な環境でありながらも留まるケース。それにしても、こんな状況でもあっても悪い奴は居るんですね。こんな奴らは普通の窃盗罪の3倍、4倍の刑を科してもらいたいもんですね。最高学府で何を学んでいることやら...

大阪万博を中止して、これから掛かる費用をそっくり被災地の復旧に充ててもらいたいもんでございます。人口の島での万博終了後、はっきりとした設計図もないまま当初の予算をはるかにオーバーした予算で強行しようとする国、大阪府のやり方に半分の人が反対してるんですから。過去の例をみても、オリンピック然り、政治屋と企業の闇の談合でこれらの催事が実施され数々の不祥事が後日談として暴露されてます。この低空飛行が続く日本、先ずは被災地に投資するのが筋だと思いますが...

「モンテンルパ」の稽古場に行ってきました。出演者5人と演出家の息もぴったり。実に活気あふれる稽古場風景でした。世の中がなんとも不穏である今こそ、芝居で元気にできればと思っています。あと二週間、体調には十分気を付けて無事初日をむかえてもらいたい!

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詐欺ではありませんよ...

2024/01/17
【第1845回】

昨日、「初春大歌舞伎」を歌舞伎座で観てきました。久しぶりの歌舞伎十分に堪能してきました。「當辰年歌舞伎賑」の賑やかしい踊りと、変化にとんだ長唄、三味線、鼓、笛の響きで幕開け。25分の休憩を挟んで「荒川十太夫」。赤穂義士四十七士のひとり堀部安兵衛が切腹する際に介添え役を務めた荒川十太夫を主役に据え、義を通そうとしたがゆえに苦悩を抱え葛藤する十太夫の役を尾上松緑が見事に演じていました。決して二枚目と言えないのですがハートがビシバシと伝わる歌舞伎役者。松平隠岐守定直役の坂東亀蔵の透き通る台詞と歯切れの良い演技もこれからの成長が楽しみです。

最後は35分の休憩(商業演劇はこの間、食事してもらったり、買い物を勧めたりでの時間でもあります。)後、「狐狸狐狸ばなし」この作品は2004年にトムでも上演しました。ケラリーノサンドロヴィッチ演出で板尾創路、篠井英介、六角精児、ラサール石井の出演での異色の芝居に仕上げた記憶があります。この芝居は通算220編余りの戯曲を書き上げた北條秀司氏の喜劇での最高傑作だと言われてきました。タイトルが示すように登場人物が織りなす狐と狸の化かし合いが目まぐるしく展開されます。その中に人間の欲、哀感がおかしみを取り混ぜながらの抱腹絶倒喜劇。松本幸四郎、尾上右近が安定した演技をする中、幸四郎の息子である市川染五郎が目を見張る芝居をしていました。将来の歌舞伎界を背負って立つ逸材であることは間違いありません。

終演は15時、歌舞伎のゆったりした時間がとても心地よかった。確かに¥18000の入場は高いと思いますが、まあこの規模で、この内容であれば納得できるかな...

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新春の歌舞伎座

2024/01/15
【第1844回】

能登半島地震の連日の報道の中、自民党のパーティ裏金疑惑、検察が一議員の逮捕で幕引きをしようという情報が流れてきました...本当にふざけるなと言いたい!まじめに働いている庶民には徹底的に厳しく税の要求をしておきながら、脱税に匹敵する犯罪行為を犯しながら国会議員というだけでこの甘い処置。この国は本当に腐りきっている...国の権力が一つの機関に集中すると濫用されるおそれがあるため、三つの権力が互いに抑制し、均衡を保つことによって権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障しようとする考え方で立法・行政・司法の三権主義があるのにこの有様。お互いが監視するどころか忖度するばかり...今からでも遅くありません。昨日の台湾での選挙での投票率71%、日本の投票率はいつも50%前後、半数の有権者が棄権している状態に危機感を持ちましょう!と言っても腰をあげようとしない体たらく状態。勿論、原因は政治不信であることははっきりしているわけだが、諦めちゃ悪徳政治屋の思う壺でございます。

そして、辺野古新基地での埋め立て強行。沖縄の人が何度も嫌だと意思表示してるのに何ら応えようとしない政府。おいら前から言ってるのだが、沖縄にある基地、日本の各地が負担するのが平等だと思います。先の大戦であれだけ沖縄に犠牲を強いながら、またしても台湾有事の際の盾にしようとするこの国の狡さに呆れてしまいます。この国がアメリカの属国であるのは理解できますが、いまだ沖縄だけにアメリカ軍基地の押しつけは勘弁してくださいな。昨日も、TV新日本風土記での沖縄のきれいな海と空に囲まれながらゆったりと時を楽しんでいる人たちを見るにつけ、この安穏な日々が永遠に続きますようにと思いました。

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睦月の空

2024/01/12
【第1843回】

この季節、すっかり葉を落とし毅然とした姿で屹立している樹木を眺めているとシベリアの収容所に8年間を過ごし、日本への帰国を果たせず病死した山本幡男さんの詩をいつも思いだします。


アムール遠く濁るところ
黑雲 空をとざして險惡
朔風は枯野をかけめぐり
萬鳥 巣にかへつて肅然

雄々しくも孤獨なるかな 裸木
堅忍の大志 瘦軀にあふれ
梢は勇ましくも 千手を伸ばし
いと遙かなる虚空を撫する


夕映 雲を破つて朱く
黄昏 將に曠野を覆はんとする
風も 寂寥に脅えて 吠ゆるを
雄々しきかな 裸木 沈默に聳え立つ

 

極まるところ 空の茜 緑と化し
日輪はいま連脈の頂きに沒したり
萬象すべて 闇に沈む韃靼の野に
あゝ 裸木ひとり 大空を撫する

 

理不尽な境遇のなか、極寒のシベリアの収容所で故郷、家族に思いを馳せながら書き綴った言葉に山本幡男さんの強靭な意思を感じる。
年頭の能登半島地震、羽田の航空事故然り、この時代、何が起こっても不思議ではない。そんな時には逆境の中で生を信じ、改めて命の尊さを感じながら過ごした人たちのことを忘れずに日々を過ごしたいと思っています。

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裸木

2024/01/09
【第1842回】

連日の能登半島地震の現地の生々しい報告を見るたびに心痛みます。コロナも落ち着き、久しぶりの一家での正月で10人の家族を亡くした男性の「何も悪いことしてないのに...なんでこんな目に合わなきゃならないのか!」涙して語る慟哭言葉が胸に迫ってきます。

13年前に輪島の朝市でふらり覗いた市中屋本店。格子窓の素敵な外観で、代々100年以上続く老舗店です。輪島塗というとなかなか敷居が高いと言われていますが、一歩店内に足を踏み入れるとなんとも懐かしい匂いと家庭的な雰囲気に魅せられついつい話し込んでしまいました。店内に展示されていたお重が気に入り半年掛かりで創っていただきました。塗っては乾かしの繰り返しでとても手間暇がかかる作業だとのことでした。

正月のおせち料理は、このお重に詰め込み新年を迎えるのが我が家の習いでした。

そんな思い出を持つ市中屋さんのご家族、親類と思われる名前が今回の地震での安否不明者のなかにありました。毎年、年賀状が来ているのですが焼失した朝市通りのお店には連絡しようがありません。今はただ無事であって欲しいと願うのみです。

焼けただれた家並みを前にして若き漆器職人が「命は助けてもらったので、残されたものがなんとか伝統を引き継ぐしかありません...」この言葉を信じるしかありません。東日本大地震然り、命ある限り残された人々がマイナスからプラスへと歩を進めてきました。

昨日、黒澤明監督「生きる」久しぶりに観ました。生きることの根源をシンプルに描いた傑作です。志村喬の鬼気迫る演技、他の共演者のキャラクターの活かし方、さすが黒澤明監督。

命ある限り、生きてさえいればなんとかなります...被災地の皆さんが一日も早く日常を取り戻し、必ずや自然の魅力に溢れた能登半島を再生してくれると思っています。

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市中屋さんのお重箱

2024/01/04
【第1841回】

明けましておめでとうございます。

 

いよいよ今年も始まり、今年こそは平穏な年であれという願いを元旦から、能登半島地震で砕かれた思いです。2日には羽田での航空事故。何とも波乱の幕開けとなりました。

ウクライナの侵攻、ガザ地区での戦闘も止むことがありません。

何としても、この不穏な流れを食い止めなきゃ未来はないと...今年も又、ひとりひとりがこの危機感をしっかりと意識して生きていかなければと強く感じています。

トム・プロジェクトも今日から「モンテンルパ」の稽古が始まります。2021年のコロナの恐怖に晒されながら、なんとか千秋楽を迎えることが出来た日のことを鮮明に覚えています。

再演である今回も、平和な日常がいかに大切であるかをこの作品を通じて伝えることが出来ればと思っています。

今年も、トムは芝居を通じて世界のいかなる人も皆平等に平穏な日々が訪れることを信じてやり抜いていきますので、皆さま何卒よろしくお願いいたします。

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謹賀新年