トムプロジェクト

2022/12/26
【第1700回】

今年も残すところ6日となりました。日本は、いや世界は大変な時代に直面しています。これらすべて、この状況を招いたのは、すべてこの地球上に住むひとりひとりに責任があると思います。国のトップを選択したのも、温暖化に突き進まざるをえなかった人間の欲望も...

この背景には、人間の奢りに原因があると思います。人の優しさが希薄になった時に、世の中はものの見事に凋落の道を進み始めます。それに歯止めをかけるのには、常に弱者の立場で想像、創造していく視点が大切だと思います。

そのよいお手本が、2019年12月にアフガニスタンで亡くなった中村哲さんの「一隅を照らす」という発想です。あまり光の当たらないところ、目立たない場所に「光をあてて明るくする」「だれもそこに行かないから、私たちが行くのです。だれもしないことだから、私たちがするのです。」哲さんはシンプルに思考しシンプルに行動しました...自分が今いる場所で、自分ができることを一生懸命やりましょう。

当たり前のことを、あまりにもこねくり回し思考し行動した結果が今の世界の現状です。

そろそろ気づかないと、世界はますますえらいことになっちゃいます。

トム・プロジェクトはなんとか今年も芝居をやることが出来ました。これもひとえに劇場に来ていただいた観客の皆様、コロナと日々戦いながらやり遂げたキャスト、スタッフの努力の賜物だと思っています。

この厳しい状況だからこそ、来るべき新しい年も良質な作品を創り、哲さんがいう「一隅を照らす」光にしたいものです。

明日は大掃除です。新年の仕事始めは1月4日です。今年一年「夢吐き通信」に目を通して頂き本当にありがとうございました。

皆さんも良い新年をお迎えくださいね!

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2022年ありがとう!

2022/12/23
【第1699回】

人はいとも簡単に忘れてしまうのだろうか...昨日、政府が原発の新規建設や60年を超える運転を認めることを盛り込んだ基本方針を発表した。この国の首相は何なんだろう?「聞く耳」どころか「聞かない耳に」方針転換したとしか思えない。防衛費しかり、たいした議論もせず勝手にお金だけ決めちゃうなんてあってはならないことだ。そして昨日の発言。いまだ避難民がいるのに、ウクライナ、電力不足にかこつけて余りにも拙速な判断じゃありませんか?あの事故からまだ12年弱、あの恐怖を思えば、この国が原発に依存するに値しない国土であることは一目瞭然。太陽光、風力、地熱などなど、まだまだ自然のエネルギーを活かす方策を探るべきではないかと思う。

もういい加減気付いて欲しいな...地道に自然と共に生活する手立てを考えないとこの国の未来はないと思います。農業然り、教育然り、この国の指導者の未来へのビジョンがことごとく貧困なためこの国は疲弊に突き進んでいます。

昨日も、新宿の南口でストリートミュージシャンのDariが白いTシャツ1枚で汗をかきながらライブをやってました。おいらが声を掛けると「この前はありがとうございました」ちゃんと覚えているんだなと感心し「CD聴いたよ...YouTubeも良かったよ」というと、「どんどん元気与えますから、持っててください!」なんて屈託のない満面の笑みをたたえて返してきました。

残念ながら、政治家なんかよりDariのほうがよっぽど説得力がありますがな。

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新宿サザンタワー

2022/12/21
【第1698回】

劇団桟敷童子の「老いた蛙は海を目指す」を観劇...コロナ、寒さに負けず演劇は粛々と行われております。この時期一番応えるのがキャスト、スタッフにコロナ感染者が出ることだ。舞台上での激しい台詞のやりとりなんかを観てるとハラハラドキドキいたします。かといって手加減するわけにもいかず、ここはケセラセラの心境でございます。

今回の芝居は、あのマキシム・ゴーリキの名作「どん底」を下敷きにした作品。作・演出の東憲司が青春時代にあこがれていた作品でもある。おいらも若い頃(1975年)俳優座劇場で観た公演での松本克平、滝田裕介、永井智雄、仲代達矢の豪華キャストで堪能いたしました。まさしく劇団俳優座の全盛時代。そして何と言っても今でも記憶に残る名演技を観させていただいたのが劇団民藝での滝沢修。この名優の「どん底」「セールスマンの死」「夜明け前」は絶品である。彼の一挙手一投足の残像はいまでも鮮明に覚えている。

そして桟敷童子版「どん底」、ここまで一貫して底辺に蠢く民衆を描いてきた東憲司ならではの作品である。暗闇で生きる人間の苦悩、情熱、ロマンを登場人物の各世代に振り分け、客演の役者を上手く使いこなしテンポよくラストまで進行していく。そしてラストの大掛かりなセットで、それまでの人間の葛藤を一気に浄化させる手法こそ、この劇団の真骨頂でございます。

劇場を後にしながら明りがついたスカイツリーを観ながら、今年も稽古場で無事作品を創り上げ何度も目にしたスカイツリーに思わずありがとうと言っちゃいました。もしや、スカイツリーは演劇の神様の分身かもしれませんな?

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今年もありがとう

2022/12/19
【第1697回】

今日は何故か眠くありません...昨日のサッカーワールドカップ決勝戦、ついつい見てしまいました。おいらサッカーでこんな時間使ったの初めてでございます。日本チームの活躍でここまで引っ張られた感じです。まさかのドイツ、スペインとの勝利、そりゃ盛り上がりますがな。今でも、ハッキリクッキリ覚えています。スペインに暮らしている時に日々テレビで観ていたスぺインサッカーのスピード感に圧倒され、こりゃ日本のサッカーは相手になりませんとお手上げ状態でございました。勿論、スペイン人の友人からも日本サッカーの現状について聞かれたこともありませんでした。スペインのサッカー熱は半端じゃありません。バルで一杯飲みながらまるで喧嘩してるが如く喧々諤々の大討論会になっちゃいます。おいらが飼ってたネコちゃんもサッカーが始まるや否や、のんべんだらりんとしてた身体が一瞬にして戦闘態勢になり、なんとテレビに映るサッカーボールに手を出す始末。この姿を見た時はおいらもびっくり!スペイン猫サッカーリーグがあるんじゃないかしら?と思った次第。

それにしても、深夜3時まで見続けたのはアルゼンチンに勝ってほしかったからでございます。判官びいきといいますか、南米大陸の小さな国がヨーロッパを代表する国を倒すなんて小気味いいじゃありませんか。文化でいえばシャンソンとタンゴの対決かな...シャンソンの粋とタンゴのパッション、どちらも捨てがたいが今回はタンゴの方につきました。

それにしても新旧のスーパープレイヤーのプレーも見ごたえがありました。アルゼンチンのメッシ、フランスのエムバぺ...いやいや日本も負けてませんよ。今回の堂安と浅野、いつの日か決勝の舞台に日本が残ってるなんてことも夢物語じゃありませんことよ。

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新宿マインズタワーのツリー

2022/12/16
【第1696回】

新国立劇場で「夜明けの寄り鯨」を観劇。若い頃、この近くに住んだことがあり、こんなところにこんな立派な劇場が出来るなんて想像もできなかった。まして国が作るなんてことも含めて。おいらもこの劇場(小劇場、中劇場)で数多くの芝居を見させていただきましたが、さすが国と民間企業が一体となって運営しているので羨ましい限りの設備です。海外では国の文化の程度が、その国の価値の基準になると言われているので、この劇場の建設はむしろ遅すぎたともいえる。

さて今回の芝居、客席に座った瞬間、舞台美術のシンプルかつ美しさに目を見張った次第である。開演までの15分間、そのセットを眺めながらいったいどんなドラマが展開されるんだろうか?ワクワクドキドキしてました。そして芝居が始まり、静かな口調の会話から一転、激しい議論の応酬を通じてそれぞれの登場人物の背景にある偏見、誤解、苦悩があぶりだされドラマが進行していく。そのリアルなやり取りと異彩を放つ舞台セットに違和感を感じるのはおいらだけなのか...深刻且つリアルなドラマツルギーだからこそアンバランスなセットで程よく中和させ、もう一つ異次元の世界に誘なうようにしているのか?そこは演出家の腕の見せ所だとは思うのだが、おいらにはもう一つ届きませんでした。

今回の芝居にトム所属の森川由樹が出演していました。由樹ちゃんとっても良かったです!「芸人と兵隊」「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」に続く今回の芝居、まさしくホップ、ステップ、ジャンプでございます。2013年トムの作品「百枚めの写真~一銭五厘たちの横丁~」でデビューして9年。由樹ちゃん、これからが真価を問われます。大丈夫です!自信を持って貴女の魅力を存分に発揮して、お客様を楽しませてくださいな。

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ナンテンと枯葉

2022/12/14
【第1695回】

我が街、新宿にも岡林信康がいました...最近、新宿南口の駅前でTシャツにギターを抱え野太い声で歌いまくる男を見かけ気になってました。名前はDari、なんと路上で100万枚のCDを売ると公言し都内に出没しているらしい。このストリートミュージシャン、プロダクション、事務所のお誘いは一切お断りという自信満々の若者。おいら気になって、程よいところで声を掛ける。「CDに何曲入っているの?」「1曲だけです」「千円高いんじゃないの?」「いやいや、自信の1曲です」いとも簡単に、笑みを浮かべての受け答え。面構えも少年の面影を残しつつ逞しさを兼ね備えている。この強気に、おいらも粋に感じ購入。すると本当に嬉しそうに「ほんとですか!」満面笑みを浮かべ嬉しそうな顔がこれまた可愛い。

と、甲州街道からパトカーが現れ「連絡が入ってます...すぐに撤収してください」なんとも無機質な声が流れてきた。路上でパフォーマンスする若者が気に食わないのか?おのれのストレスを通報することで発散させているのか?いずれにしても、こんな人はどこにいてもいるもんや...おいらも45年ほど前スペインで大道芸やっていたのだが、毎日が天国でした。1週間1時間の労働で1週間飲み食いの旅に味をしめ、すっかり甘い誘惑に誘われスペインに住んでしまいました。

それに比べて、いまだ路上の大道芸にお咎めするこの国は、どこか閉じてますな。

早速、CD聴いてみました。心赴くままに歌っていますね...1枚のカードに手書きでNO13057と書いてありました。残すところ986943枚かな?

自分の思いを即行動に移し未開の道を突く進んでいく人間、おいら大好きです。

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幻想庭園

2022/12/12
【第1694回】

久しぶりに岡林信康の歌聞きました...今時の人は誰?って答えが返ってきそうですね。この歌い手はフォークの神様と上げ奉られ1970年前後に高田渡、加川良、五つの赤い風船などと共に、プロテスト・フォーク、反戦フォークとして若者の間でブームとなった。おいらも、新宿西口広場で夜毎繰り広げられていた集会で反戦の歌声を耳にしてました。立ち止まって聴いていると若いお巡りさんが「ここは広場ではありません。通路ですから歩いてください...」なんて注意勧告を受けていたのを無視すると、いきなり暗がりに連行されました。

不当な扱いを受けたので、おいら抵抗するとボコボコにされました。あやうく新宿署に連行されそうになったのを心優しい年輩のお巡りさんに解放された次第です。この時代の機動隊と若者の対立は激しいものがありました。おいらの友人も何人かは留置所に入れられましたが、そんな光景を見ながらおいらの頭を過ぎったのは、親から仕送りを受けながら大学生活を送る若者と、田舎から出てきた若き機動隊隊員のなんともいえない剥き出しの感情の対立にも見えました。確かに既存の体制、価値観の変化を求めようとする若者の行動は尊いし支持もしたいのだが、卒業するやいなやいとも簡単に体制に繰り込まれいく姿を見るにつけ納得しがたいものを感じた次第です。

 

私たちの望むものは 生きる苦しみではなく
私たちの望むものは 生きる喜びなのだ

私たちの望むものは 社会のための 私ではなく
私たちの望むものは 私たちのための 社会なのだ

私たちの望むものは 与えられることではなく
私たちの望むものは 奪いとることなのだ

私たちの望むものは あなたを殺すことではなく
私たちの望むものは あなたと生きることなのだ

今ある不幸に とどまってはならない
まだ見ぬ幸せに 今跳び立つのだ

私たちの望むものは くりかえすことではなく
私たちの望むものは たえず変わってゆく ことなのだ

私たちの望むものは 決して私たちではなく
私たちの望むものは 私でありつづける ことなのだ

今ある不幸に とどまってはならない
まだ見ぬ幸せに 今跳び立つのだ

私たちの望むものは 生きる喜びではなく
私たちの望むものは 生きる苦しみなのだ

私たちの望むものは あなたと 生きることではなく
私たちの望むものは あなたを殺すことなのだ

今ある不幸に とどまってはならない
まだ見ぬ幸せに 今跳び立つのだ

私たちの望むものは
私たちの望むものは...


彼の歌う「私たちの望むものは」は今聴いても新鮮でございます。

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師走の晴天

2022/12/07
【第1693回】

やっぱり、果報は寝て待て!に徹すべきだったんだね。ついつい誘惑(初のベスト8になる歴史的瞬間)に負けて観てしまい、試合も負けてしまいました。それにしても今回のワールドサッカー2022でのジャパンあっぱれでございます。コロナ、不景気、ウクライナ侵攻、どれをとっても意気上がらない現状において、唯一の希望がジャパンサッカーではなかったかと言うのがこの国の大方の見方です。スペイン戦、クロアチア戦、深夜に関わらずテレビの視聴率も高いし、日本全国のあらゆる会場に多くの人が集まってることが証明しています。それにしてもクロアチア強い。バルカン半島に位置する410万ほどの国で、圧倒的人気があるのがサッカーです。今回の勝敗のカギを握ったPK戦でのクロアチアのゴールキーパーの身体見ただけでこりゃあかんですばい?と思った次第。案の定3本止められゲームセット。そりゃそうだ、サッカーに命を懸けてる国と戦えば仕方のないことですが、やはりサッカーの強豪国が集まっているところで揉まれてるチームはなかなかあなどれないしぶとさとしっかりとした戦略を持っているような気がします。それにしても、スペインもモロッコとの試合でPK戦で3本ミスしての敗戦。今回のワールドサッカー番狂わせの連続です。だからスポーツは面白いんですね...まさしく筋書きのないドラマでございます。

一段と寒くなったなか、しっかりと自己主張しながら咲いてる椿を見てるとなんだか燃えてきますな...負けちゃいられんですばい!

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寒椿

2022/12/05
【第1692回】

先週の週末は、新宿シアタートップスで、劇団ONEOR8「千一夜」を観てきました。この劇場1985年にオープンし2009年まで結構面白い芝居を上演していました。初期の頃の大人計画、東京サンシャインボーイズ、劇団☆新感線などなど、客席150ほどのキャパに新宿の街が醸し出すカオスが程よくマッチしていました。トム・プロジェクトも22年続いている風間杜夫ひとり芝居もここから始まりました。蟹江敬三ひとり芝居、戸川純ひとり芝居もこの劇場でした。唐十郎作・演出の佐野史郎ひとり芝居では、このクラスの劇場では珍しい廻り舞台を作りこみ摩訶不思議な芝居を上演しました。

そんな歴史を持つシアタートップスが2021年5月に下北沢に多くの劇場を運営する本多グループが引継ぎ再開することとなりました。

久しぶりにこの劇場に入った瞬間、まるで走馬灯のようにこの客席で観た数々の芝居が甦ってきました。何といっても舞台と客席の距離をほとんど感じさせない臨場感が素晴らしい。生の芝居で役者の表情が見えないなんてことは本来あってはならないことなのだが、制作側からすると、この程度のキャパでは採算を取れないのでなかなか難しい。そんなことを考えれば、この規模の芝居は大変贅沢な出し物であり、その反面役者の技量も白日の下に晒されるので演者にとっては戦々恐々の劇場でもある。

さて、この日の芝居は?この劇団の主宰者である田村孝裕の独特の世界感が行ったり来たり、まるで観客の感情をもてあそんでる感じがいたしました。

これから先、新宿シアタートップスを足場にして新たな演劇の歴史を作り上げる集団が出て来てくださいな...街を、人を、煽情のるつぼに巻き込むくらいの出し物を期待してまっせ!

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黄絨毯

2022/12/02
【第1691回】

おいらが月曜日に書いた通りになりました...果報は寝て待て!

一杯やっていつもの通り床に就き、今朝7時に起床。なんとカタール・ワールドカップの第3戦でスペイン代表と対戦し、2-1の逆転勝利。前回のコスタリカ戦の戦いぶりを見る限り、無敵艦隊スペインにどう考えても勝ち目はないと思った人が大半を占める中、奇跡が起きました。同点ゴールを決めた堂安選手「これで一戦目が奇跡じゃなくて勝ったと思ってもらえたと思います...」24歳の若武者の言葉、久しぶりに頼りになる日本青年が世界に発してくれた清々しいインタービューでの発言でした。こうなってくると、もしや優勝なんて夢を抱く人達も居るとは思いますが、まあまあ、ここまでやってくれたならばあとは純粋にサッカーを楽しみましょう。

11月30日には両国シアターXでポーランド国立民族合唱舞踊団「シロンスク」を観劇してきました。「シロンスク」は1953年創立され、5大陸44カ国で、9000回を超える公演を行ってきたポーランドを代表する舞踊団です。ポーランドの歴史と文化の伝統を電子音楽やコンテンポラリーダンスを交えて「伝統」と「今」を結び付けようとする試みでした。

鍛え抜かれた身体と、民族衣装の鮮やかさが印象的。世界がコロナによるパンデミック状況下、よく来てくれました!今回のような文化交流さえしてれば戦争なんかは起きないのにね。

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遠路はるばる ありがとう!