トムプロジェクト

2022/12/26
【第1700回】

今年も残すところ6日となりました。日本は、いや世界は大変な時代に直面しています。これらすべて、この状況を招いたのは、すべてこの地球上に住むひとりひとりに責任があると思います。国のトップを選択したのも、温暖化に突き進まざるをえなかった人間の欲望も...

この背景には、人間の奢りに原因があると思います。人の優しさが希薄になった時に、世の中はものの見事に凋落の道を進み始めます。それに歯止めをかけるのには、常に弱者の立場で想像、創造していく視点が大切だと思います。

そのよいお手本が、2019年12月にアフガニスタンで亡くなった中村哲さんの「一隅を照らす」という発想です。あまり光の当たらないところ、目立たない場所に「光をあてて明るくする」「だれもそこに行かないから、私たちが行くのです。だれもしないことだから、私たちがするのです。」哲さんはシンプルに思考しシンプルに行動しました...自分が今いる場所で、自分ができることを一生懸命やりましょう。

当たり前のことを、あまりにもこねくり回し思考し行動した結果が今の世界の現状です。

そろそろ気づかないと、世界はますますえらいことになっちゃいます。

トム・プロジェクトはなんとか今年も芝居をやることが出来ました。これもひとえに劇場に来ていただいた観客の皆様、コロナと日々戦いながらやり遂げたキャスト、スタッフの努力の賜物だと思っています。

この厳しい状況だからこそ、来るべき新しい年も良質な作品を創り、哲さんがいう「一隅を照らす」光にしたいものです。

明日は大掃除です。新年の仕事始めは1月4日です。今年一年「夢吐き通信」に目を通して頂き本当にありがとうございました。

皆さんも良い新年をお迎えくださいね!

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2022年ありがとう!

2022/12/23
【第1699回】

人はいとも簡単に忘れてしまうのだろうか...昨日、政府が原発の新規建設や60年を超える運転を認めることを盛り込んだ基本方針を発表した。この国の首相は何なんだろう?「聞く耳」どころか「聞かない耳に」方針転換したとしか思えない。防衛費しかり、たいした議論もせず勝手にお金だけ決めちゃうなんてあってはならないことだ。そして昨日の発言。いまだ避難民がいるのに、ウクライナ、電力不足にかこつけて余りにも拙速な判断じゃありませんか?あの事故からまだ12年弱、あの恐怖を思えば、この国が原発に依存するに値しない国土であることは一目瞭然。太陽光、風力、地熱などなど、まだまだ自然のエネルギーを活かす方策を探るべきではないかと思う。

もういい加減気付いて欲しいな...地道に自然と共に生活する手立てを考えないとこの国の未来はないと思います。農業然り、教育然り、この国の指導者の未来へのビジョンがことごとく貧困なためこの国は疲弊に突き進んでいます。

昨日も、新宿の南口でストリートミュージシャンのDariが白いTシャツ1枚で汗をかきながらライブをやってました。おいらが声を掛けると「この前はありがとうございました」ちゃんと覚えているんだなと感心し「CD聴いたよ...YouTubeも良かったよ」というと、「どんどん元気与えますから、持っててください!」なんて屈託のない満面の笑みをたたえて返してきました。

残念ながら、政治家なんかよりDariのほうがよっぽど説得力がありますがな。

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新宿サザンタワー

2022/12/21
【第1698回】

劇団桟敷童子の「老いた蛙は海を目指す」を観劇...コロナ、寒さに負けず演劇は粛々と行われております。この時期一番応えるのがキャスト、スタッフにコロナ感染者が出ることだ。舞台上での激しい台詞のやりとりなんかを観てるとハラハラドキドキいたします。かといって手加減するわけにもいかず、ここはケセラセラの心境でございます。

今回の芝居は、あのマキシム・ゴーリキの名作「どん底」を下敷きにした作品。作・演出の東憲司が青春時代にあこがれていた作品でもある。おいらも若い頃(1975年)俳優座劇場で観た公演での松本克平、滝田裕介、永井智雄、仲代達矢の豪華キャストで堪能いたしました。まさしく劇団俳優座の全盛時代。そして何と言っても今でも記憶に残る名演技を観させていただいたのが劇団民藝での滝沢修。この名優の「どん底」「セールスマンの死」「夜明け前」は絶品である。彼の一挙手一投足の残像はいまでも鮮明に覚えている。

そして桟敷童子版「どん底」、ここまで一貫して底辺に蠢く民衆を描いてきた東憲司ならではの作品である。暗闇で生きる人間の苦悩、情熱、ロマンを登場人物の各世代に振り分け、客演の役者を上手く使いこなしテンポよくラストまで進行していく。そしてラストの大掛かりなセットで、それまでの人間の葛藤を一気に浄化させる手法こそ、この劇団の真骨頂でございます。

劇場を後にしながら明りがついたスカイツリーを観ながら、今年も稽古場で無事作品を創り上げ何度も目にしたスカイツリーに思わずありがとうと言っちゃいました。もしや、スカイツリーは演劇の神様の分身かもしれませんな?

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今年もありがとう

2022/12/19
【第1697回】

今日は何故か眠くありません...昨日のサッカーワールドカップ決勝戦、ついつい見てしまいました。おいらサッカーでこんな時間使ったの初めてでございます。日本チームの活躍でここまで引っ張られた感じです。まさかのドイツ、スペインとの勝利、そりゃ盛り上がりますがな。今でも、ハッキリクッキリ覚えています。スペインに暮らしている時に日々テレビで観ていたスぺインサッカーのスピード感に圧倒され、こりゃ日本のサッカーは相手になりませんとお手上げ状態でございました。勿論、スペイン人の友人からも日本サッカーの現状について聞かれたこともありませんでした。スペインのサッカー熱は半端じゃありません。バルで一杯飲みながらまるで喧嘩してるが如く喧々諤々の大討論会になっちゃいます。おいらが飼ってたネコちゃんもサッカーが始まるや否や、のんべんだらりんとしてた身体が一瞬にして戦闘態勢になり、なんとテレビに映るサッカーボールに手を出す始末。この姿を見た時はおいらもびっくり!スペイン猫サッカーリーグがあるんじゃないかしら?と思った次第。

それにしても、深夜3時まで見続けたのはアルゼンチンに勝ってほしかったからでございます。判官びいきといいますか、南米大陸の小さな国がヨーロッパを代表する国を倒すなんて小気味いいじゃありませんか。文化でいえばシャンソンとタンゴの対決かな...シャンソンの粋とタンゴのパッション、どちらも捨てがたいが今回はタンゴの方につきました。

それにしても新旧のスーパープレイヤーのプレーも見ごたえがありました。アルゼンチンのメッシ、フランスのエムバぺ...いやいや日本も負けてませんよ。今回の堂安と浅野、いつの日か決勝の舞台に日本が残ってるなんてことも夢物語じゃありませんことよ。

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新宿マインズタワーのツリー

2022/12/16
【第1696回】

新国立劇場で「夜明けの寄り鯨」を観劇。若い頃、この近くに住んだことがあり、こんなところにこんな立派な劇場が出来るなんて想像もできなかった。まして国が作るなんてことも含めて。おいらもこの劇場(小劇場、中劇場)で数多くの芝居を見させていただきましたが、さすが国と民間企業が一体となって運営しているので羨ましい限りの設備です。海外では国の文化の程度が、その国の価値の基準になると言われているので、この劇場の建設はむしろ遅すぎたともいえる。

さて今回の芝居、客席に座った瞬間、舞台美術のシンプルかつ美しさに目を見張った次第である。開演までの15分間、そのセットを眺めながらいったいどんなドラマが展開されるんだろうか?ワクワクドキドキしてました。そして芝居が始まり、静かな口調の会話から一転、激しい議論の応酬を通じてそれぞれの登場人物の背景にある偏見、誤解、苦悩があぶりだされドラマが進行していく。そのリアルなやり取りと異彩を放つ舞台セットに違和感を感じるのはおいらだけなのか...深刻且つリアルなドラマツルギーだからこそアンバランスなセットで程よく中和させ、もう一つ異次元の世界に誘なうようにしているのか?そこは演出家の腕の見せ所だとは思うのだが、おいらにはもう一つ届きませんでした。

今回の芝居にトム所属の森川由樹が出演していました。由樹ちゃんとっても良かったです!「芸人と兵隊」「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」に続く今回の芝居、まさしくホップ、ステップ、ジャンプでございます。2013年トムの作品「百枚めの写真~一銭五厘たちの横丁~」でデビューして9年。由樹ちゃん、これからが真価を問われます。大丈夫です!自信を持って貴女の魅力を存分に発揮して、お客様を楽しませてくださいな。

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ナンテンと枯葉

2022/12/14
【第1695回】

我が街、新宿にも岡林信康がいました...最近、新宿南口の駅前でTシャツにギターを抱え野太い声で歌いまくる男を見かけ気になってました。名前はDari、なんと路上で100万枚のCDを売ると公言し都内に出没しているらしい。このストリートミュージシャン、プロダクション、事務所のお誘いは一切お断りという自信満々の若者。おいら気になって、程よいところで声を掛ける。「CDに何曲入っているの?」「1曲だけです」「千円高いんじゃないの?」「いやいや、自信の1曲です」いとも簡単に、笑みを浮かべての受け答え。面構えも少年の面影を残しつつ逞しさを兼ね備えている。この強気に、おいらも粋に感じ購入。すると本当に嬉しそうに「ほんとですか!」満面笑みを浮かべ嬉しそうな顔がこれまた可愛い。

と、甲州街道からパトカーが現れ「連絡が入ってます...すぐに撤収してください」なんとも無機質な声が流れてきた。路上でパフォーマンスする若者が気に食わないのか?おのれのストレスを通報することで発散させているのか?いずれにしても、こんな人はどこにいてもいるもんや...おいらも45年ほど前スペインで大道芸やっていたのだが、毎日が天国でした。1週間1時間の労働で1週間飲み食いの旅に味をしめ、すっかり甘い誘惑に誘われスペインに住んでしまいました。

それに比べて、いまだ路上の大道芸にお咎めするこの国は、どこか閉じてますな。

早速、CD聴いてみました。心赴くままに歌っていますね...1枚のカードに手書きでNO13057と書いてありました。残すところ986943枚かな?

自分の思いを即行動に移し未開の道を突く進んでいく人間、おいら大好きです。

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幻想庭園

2022/12/12
【第1694回】

久しぶりに岡林信康の歌聞きました...今時の人は誰?って答えが返ってきそうですね。この歌い手はフォークの神様と上げ奉られ1970年前後に高田渡、加川良、五つの赤い風船などと共に、プロテスト・フォーク、反戦フォークとして若者の間でブームとなった。おいらも、新宿西口広場で夜毎繰り広げられていた集会で反戦の歌声を耳にしてました。立ち止まって聴いていると若いお巡りさんが「ここは広場ではありません。通路ですから歩いてください...」なんて注意勧告を受けていたのを無視すると、いきなり暗がりに連行されました。

不当な扱いを受けたので、おいら抵抗するとボコボコにされました。あやうく新宿署に連行されそうになったのを心優しい年輩のお巡りさんに解放された次第です。この時代の機動隊と若者の対立は激しいものがありました。おいらの友人も何人かは留置所に入れられましたが、そんな光景を見ながらおいらの頭を過ぎったのは、親から仕送りを受けながら大学生活を送る若者と、田舎から出てきた若き機動隊隊員のなんともいえない剥き出しの感情の対立にも見えました。確かに既存の体制、価値観の変化を求めようとする若者の行動は尊いし支持もしたいのだが、卒業するやいなやいとも簡単に体制に繰り込まれいく姿を見るにつけ納得しがたいものを感じた次第です。

 

私たちの望むものは 生きる苦しみではなく
私たちの望むものは 生きる喜びなのだ

私たちの望むものは 社会のための 私ではなく
私たちの望むものは 私たちのための 社会なのだ

私たちの望むものは 与えられることではなく
私たちの望むものは 奪いとることなのだ

私たちの望むものは あなたを殺すことではなく
私たちの望むものは あなたと生きることなのだ

今ある不幸に とどまってはならない
まだ見ぬ幸せに 今跳び立つのだ

私たちの望むものは くりかえすことではなく
私たちの望むものは たえず変わってゆく ことなのだ

私たちの望むものは 決して私たちではなく
私たちの望むものは 私でありつづける ことなのだ

今ある不幸に とどまってはならない
まだ見ぬ幸せに 今跳び立つのだ

私たちの望むものは 生きる喜びではなく
私たちの望むものは 生きる苦しみなのだ

私たちの望むものは あなたと 生きることではなく
私たちの望むものは あなたを殺すことなのだ

今ある不幸に とどまってはならない
まだ見ぬ幸せに 今跳び立つのだ

私たちの望むものは
私たちの望むものは...


彼の歌う「私たちの望むものは」は今聴いても新鮮でございます。

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師走の晴天

2022/12/07
【第1693回】

やっぱり、果報は寝て待て!に徹すべきだったんだね。ついつい誘惑(初のベスト8になる歴史的瞬間)に負けて観てしまい、試合も負けてしまいました。それにしても今回のワールドサッカー2022でのジャパンあっぱれでございます。コロナ、不景気、ウクライナ侵攻、どれをとっても意気上がらない現状において、唯一の希望がジャパンサッカーではなかったかと言うのがこの国の大方の見方です。スペイン戦、クロアチア戦、深夜に関わらずテレビの視聴率も高いし、日本全国のあらゆる会場に多くの人が集まってることが証明しています。それにしてもクロアチア強い。バルカン半島に位置する410万ほどの国で、圧倒的人気があるのがサッカーです。今回の勝敗のカギを握ったPK戦でのクロアチアのゴールキーパーの身体見ただけでこりゃあかんですばい?と思った次第。案の定3本止められゲームセット。そりゃそうだ、サッカーに命を懸けてる国と戦えば仕方のないことですが、やはりサッカーの強豪国が集まっているところで揉まれてるチームはなかなかあなどれないしぶとさとしっかりとした戦略を持っているような気がします。それにしても、スペインもモロッコとの試合でPK戦で3本ミスしての敗戦。今回のワールドサッカー番狂わせの連続です。だからスポーツは面白いんですね...まさしく筋書きのないドラマでございます。

一段と寒くなったなか、しっかりと自己主張しながら咲いてる椿を見てるとなんだか燃えてきますな...負けちゃいられんですばい!

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寒椿

2022/12/05
【第1692回】

先週の週末は、新宿シアタートップスで、劇団ONEOR8「千一夜」を観てきました。この劇場1985年にオープンし2009年まで結構面白い芝居を上演していました。初期の頃の大人計画、東京サンシャインボーイズ、劇団☆新感線などなど、客席150ほどのキャパに新宿の街が醸し出すカオスが程よくマッチしていました。トム・プロジェクトも22年続いている風間杜夫ひとり芝居もここから始まりました。蟹江敬三ひとり芝居、戸川純ひとり芝居もこの劇場でした。唐十郎作・演出の佐野史郎ひとり芝居では、このクラスの劇場では珍しい廻り舞台を作りこみ摩訶不思議な芝居を上演しました。

そんな歴史を持つシアタートップスが2021年5月に下北沢に多くの劇場を運営する本多グループが引継ぎ再開することとなりました。

久しぶりにこの劇場に入った瞬間、まるで走馬灯のようにこの客席で観た数々の芝居が甦ってきました。何といっても舞台と客席の距離をほとんど感じさせない臨場感が素晴らしい。生の芝居で役者の表情が見えないなんてことは本来あってはならないことなのだが、制作側からすると、この程度のキャパでは採算を取れないのでなかなか難しい。そんなことを考えれば、この規模の芝居は大変贅沢な出し物であり、その反面役者の技量も白日の下に晒されるので演者にとっては戦々恐々の劇場でもある。

さて、この日の芝居は?この劇団の主宰者である田村孝裕の独特の世界感が行ったり来たり、まるで観客の感情をもてあそんでる感じがいたしました。

これから先、新宿シアタートップスを足場にして新たな演劇の歴史を作り上げる集団が出て来てくださいな...街を、人を、煽情のるつぼに巻き込むくらいの出し物を期待してまっせ!

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黄絨毯

2022/12/02
【第1691回】

おいらが月曜日に書いた通りになりました...果報は寝て待て!

一杯やっていつもの通り床に就き、今朝7時に起床。なんとカタール・ワールドカップの第3戦でスペイン代表と対戦し、2-1の逆転勝利。前回のコスタリカ戦の戦いぶりを見る限り、無敵艦隊スペインにどう考えても勝ち目はないと思った人が大半を占める中、奇跡が起きました。同点ゴールを決めた堂安選手「これで一戦目が奇跡じゃなくて勝ったと思ってもらえたと思います...」24歳の若武者の言葉、久しぶりに頼りになる日本青年が世界に発してくれた清々しいインタービューでの発言でした。こうなってくると、もしや優勝なんて夢を抱く人達も居るとは思いますが、まあまあ、ここまでやってくれたならばあとは純粋にサッカーを楽しみましょう。

11月30日には両国シアターXでポーランド国立民族合唱舞踊団「シロンスク」を観劇してきました。「シロンスク」は1953年創立され、5大陸44カ国で、9000回を超える公演を行ってきたポーランドを代表する舞踊団です。ポーランドの歴史と文化の伝統を電子音楽やコンテンポラリーダンスを交えて「伝統」と「今」を結び付けようとする試みでした。

鍛え抜かれた身体と、民族衣装の鮮やかさが印象的。世界がコロナによるパンデミック状況下、よく来てくれました!今回のような文化交流さえしてれば戦争なんかは起きないのにね。

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遠路はるばる ありがとう!

2022/11/30
【第1690回】

こまつ座の「吾輩は漱石である」を観劇。この作品1982年にしゃぼん玉座で木村光一の演出、小沢昭一の出演で初演されたものである。この年は東京・永田町のホテルニュージャパンで火災、東北新幹線開業なんかの記憶他、演劇の世界では転位21を主宰していた山崎哲氏が「漂流家族」「うお伝説」で岸田國士戯曲賞を受賞したことが印象に残っています。そんな折、俳優小沢昭一さんも自分がやりたい芝居をやりたくてしゃぼん玉座を立ち上げ井上ひさしさんに台本を依頼したんだと思います。

そんな経緯で書かれた戯曲、井上さんには珍しく最後まで試行錯誤で頭を抱えながら書いたであろうという悪戦苦闘の跡が随所に見られました。おいらも最近、夏目漱石の作品を読み返しているんですが、やはり文豪に相応しい作品ばかりです。すっと読み進むにはもったいないくらいの語彙の選択、人間の心理に奥深く立ち入り暫し熟考せざるを得ない展開、それに加えエンターテインメント性もあるんですから永遠のベストセラーであることは間違いないと思います。

さて芝居なんですが、この難攻不落というよりも、あちらこちらにとっ散らかっている戯曲を何とかしようとする演出家、それに応えようとする役者の奮闘する様を観せられた感がしました。そのなかでも漱石の妻・鏡子さんと、「坊っちゃん」のマドンナなど複数の役を演じた賀来千香子さんの芝居は十分楽しめました。そうなんです、難しい芝居程あまり考えすぎず心身解放して楽しめばいいのでございます。

でも、こうやって過去の作品に新しい命を吹き込んで創造しようとする姿勢は大切なことだと改めて感じた観劇日でした。

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明日から師走

2022/11/28
【第1689回】

昨日は大変な一日でしたね...大相撲九州場所では、千秋楽は本割で幕内高安に土をつけ、ともえ戦となった優勝決定戦で高安、大関貴景勝を撃破した平幕の阿炎が優勝。この力士、一昨年7月場所でコロナ対策の規則違反が発覚。3場所出場停止などの処分を受けて、一時は幕下まで転落した経歴をもつやんちゃな人。相変わらず、モンゴル勢におされがちな相撲界、これぐらいやんちゃじゃないとダメでごわす。それにしても貴景勝の体型と汗みてるとちょいと心配だな、見てる方が息苦しくなっちゃいますがな。

夜のゴールデンタイムのサッカー...歓喜に溢れていた日本列島、一瞬にしてしゅんとなっちゃいました。コスタリカ戦勝って当たり前?とんでもございません、中南米の小さな国ですがサッカーに命を懸けてる国でございます。日本の先発メンバーみて、ちょいとナメてるんじゃないかと思いました。次のスペイン戦なんてこと考える余裕なんてあるわけじゃないと思うのだが、前半のちんたら攻撃も含めて良くて引き分けだなとおいらは思いました。

どんな勝負事でも下駄を履くまで分からない...このグループ、なんとコスタリカと日本が二次リーグに進出なんてこともありえます。特に得点するのがなかなか難しいこのゲーム、まだまだ日本にもチャンスはありますが、次のスペイン戦のめりこむことなく楽しみながら観ましょうね?なんて言っても日本時間12月2日(金)午前4時キックオフとなりますと、おいら寝てますがな。

ちなみに「果報は寝て待て」なんてことわざもあるじゃありませんか皆の衆。

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秋の日はつるべ落とし

2022/11/24
【第1688回】

今日はサッカーでしょう!おいらも試合開始からテレビ観戦してたのですが、前半ほとんどドイツの猛攻を見せられ、こりゃ予想通りドイツの勝利で決まりだと寝る体制に入ったのだが、おいらの感ピューターがなぜかピコピコしてきたので後半戦の最初だけ見ることになりました。芋焼酎のお湯割り片手にほぼ諦め状態で観てると、前半とは打って変わってジャパンの動きが良くなっているではないか...もしやと思いきや30分にMF堂安律が同点ゴール、38分にはFW浅野琢磨が決勝ゴール。アディショナルタイム7分の表示が出た瞬間、1993年10月28日にカタールの首都・ドーハで行われたワールドサッカーアジア最終予選、試合終了間際まで2-1でリードしていながら、ロスタイムにイラク代表に同点ゴールを入れられ、一転して予選敗退する結末となったことが頭をよぎりました。メンタル面で弱い日本選手のことだからまたしてもと最後までヒヤヒヤもんでしたが何とか守り切りました。ゴールを決めた二人の選手のインタビューが、昔の代表選手と違っていかしてる(もはや死語かな?)じゃありませんか「俺が絶対決めてやる...そのために出てきたんだから。」頼もしい若者です。これはやはり二人とも海外でプレーしていることが大きいと思います。異国の地で多種多様な人種と混じりながら生活することがいかに大切なことか...おいらがいまこうやって仕事出来てるのも30代に海外を見聞したことが大きな財産になっています。思考、行動の幅が果てしなく拡がっていくこと間違いなし。スマホピコピコで明け暮れてちゃおもろい人生送れませんがな...今からでも遅くはありません、何でも見てやろう精神で海外ふらりと出かけてみませんか?

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今日のメタセコイア

2022/11/21
【第1687回】

米澤 穂信の作品「黒牢城」を読了。結論から言えば面白かった...というよりなかなか仕組まれた読み物、話の展開がミステリアスでついつい読まずにはいられない欲求をかきたてられる。歴史小説でありながらミステリ小説なんて贅沢な設定はなかなか成功しづらいなか、これは作家の才能以外なにものでもない。牢に拉致される黒田官兵衛の使いかたが絶妙である。この本の主役である村重と官兵衛の戦国時代を生き抜く武士としての人生観や世界観が丁寧に描き込まれていると同時に、ふたりの心理戦を交えたやりとりが、まるでその場に立ち会っているかのような緊張感がたまらない。

いい小説を読むと、おいらの頭のなかにあった言語化されていないなにかが、いまここに文章として再現されていることにとても感銘を受ける。それは、映像や音楽などと違って読んでいるおいらと分かちがたく結びついている。「美しい樹木」とあれば、それはおいらが見たもっとも「美しい樹木」と響き合い、「やわらかな肌」とあれば、それはおいらが知っている、もっとも「やわらかな肌」とほとんど同じなのである。それはリアリティというのとは違い、言葉という回路を通して、いつでもおいらに引き寄せてくれるより強い知覚力を感じる次第である。又、これまで経験したことや思考したことを、新しい言葉によってふたたび明りを灯され、未だ見ぬ新たな道標を示してくれるワクワク感がたまらない。

読書の秋である。色鮮やかな紅葉を見た後は心穏やかに本を開く...自然が織りなす色とは違う彩を味わうに違いない。

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燃える秋

2022/11/15
【第1686回】

トメちゃんのアニメと歌声がYouTubeで流れ始めました。タイトルは「らりるれロンドン」本名は留守晃(とめもりあきら)、シンガーソングライターであり俳優でもあります。初期のミュージカル「レ・ミゼラブル」では主要な役で出演しておりました。トメちゃんなかなかシャイで人付き合いも上手くなく、しかも自分の世界には拘りがあるっていうんですからおいらもとても心配していました。これだけの才能が溢れているのにじつにもったいないと常日頃思ってもおりました。そのうえここ3年コロナでライブはできないとなりゃ死活問題でございます。トメちゃんの歌がNHKの「みんなのうた」に日々流れて当然と思ってたおいらにとってはまさしく朗報。早速、拝見しましたがトメちゃんのセンスが画面いっぱいに拡がっておりました。テーマとしてもこの時代にぴったり、そしてトメちゃんの優しさがテンコ盛り...嬉しくなって何回も聴いちゃいました。

過去のライブで聴いた曲の中で、まだまだ珠玉の名曲が沢山あります。今回ほど完成度の高い画像を創るのには大変な労力だとは思いますが、第二弾、第三弾、待ちわびてる人は沢山いるはずです。そして、いつの日か全国ライブツアーなんかをやれるといいですね!

先ずは皆さん聴いて見てくださいな...きっと癖になりますよ。そしてお気に召したら両親、兄弟、友人、親戚、職場の仲間などなどに拡散してくれたら嬉しゅうございます。

トメちゃんのバラッド

2022/11/14
【第1685回】

先週の週末は村井國夫さんの歌を堪能してきました。場所は渋谷にあるセルリアンタワー東急ホテル2F( JZBrat SOUND OF TOKYO)なんともお洒落な空間です。

ダンディーな村井さんにぴったりでした。登場するやいなや愛の歌を連発、本人曰く暗い唄ばかりで...なんておっしゃっていましたが、あの渋くて甘い声で歌われると一瞬にしてロマンティックな世界に誘ってくれました。

近年、心筋梗塞、コロナで舞台を降板されるアクシデントがありましたが、紀伊國屋演劇賞個人賞、読売演劇賞優秀男優賞などを受賞され村井さんの役者としての魅力、実力をいかんなく発揮された3年間でもありました。勿論、トムの芝居にも立て続けに出演していただき芝居の質そのものをアップすることに大いに貢献、そして共演した若い俳優さんにも計り知れない刺激を与えてくれました。

村井さんの愛の歌を聴きながら思ったことは、このステージ本人の78年間に体験し感じた愛のメモリーだと思いました。様々な歌に思いを託し人前で歌うなんてなんと幸せなこと。そしてこの日集まったお客さんも、村井さんの歌を通してそれぞれの愛の思い出を今一度甦らせる一日となったことでしょう。

この日も奥様である音無美紀子さん、娘さんの村井麻友美さんが一生懸命にお手伝いなさっていました。國夫さんがこうやって元気でいられるのも家族の愛があってのことですね。

こんな愛に包まれ守られてる國夫さん、貴男が一番の幸せもんですたい。

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愛を歌う

2022/11/11
【第1684回】

今日も穏やかな一日になりそうです。都内の木々も秋色に染まりつつありますが本番はまだ先になりそうです。しかし、この時期の楽しみは日々変化していく木々の移ろいに、自然と目を奪われる時間を持てる喜びです。なんだかんだ言っても、今日も朝ご飯を頂き、清々しい音をバックに珈琲を味わい平穏な日常を持ち得ることに唯々感謝です。今この時にもウクライナでは、ロシアによる無法な侵略によって多くの命が失われています。世界の各地では自然災害も含め飢饉、飢餓の情報が流れない日がないくらいの危機的状態。

なのに、日本ではなんとも能天気な政治状況が続いています。瀬戸際大臣の更迭がなんとか済んだと思いきや、今度は法務大臣のアホとか言いようのない発言「朝、死刑のはんこを押して、昼のニュースのトップになるのはそういう時だけという地味な役職だ」おいおい葉梨じゃなくノウナシだろうといいたい。東大卒の元警察官僚、こんなのばっかりが大臣やってるんだから日本が良くなるわけがありませんがな...瀬戸際大臣辞めたと思ったら今度はコロナ担当大臣に就任なんてニュースも流れこれまた開いた口が塞がりませんがな。これからコロナの第8波が予想され危ぶまれてるのにこんな人に任せてたらまたもや瀬戸際に追い込まれそうな気がしませんか皆の衆?

先日の皆既日食ショー、多くの人が空を見上げる光景がなんと美しいのだろう...なんだかこのご時世、なんとなく気持ちも落ち込みうつむき加減な人を多く見かけていただけに嬉しくなっちゃいました。次の皆既日食は2035年の9月、おいらもなんとか生き延びて椅子に腰かけてじっくり鑑賞したいもんでございます。

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染まりゆく木々

2022/11/09
【第1683回】

これもちょいといい話かな...先日、京王線新宿駅改札口から出ると数人の人が通路に散らばった硬貨を拾い集めていました。誰ぞやの財布から硬貨が散らばったのであろう...それにしてもあんなに多くの人が必死に集めてる姿を見るにつけこの社会も捨てたもんじゃないとほっこりいたしました。と、おいらの足元にもなんと1円玉が転がっているではないか。早速拾って傍の女性に渡すと「私ではありません。落とした方...あれ、もう行っちゃいましたね。」あちゃ!手に取った1円玉どうすりゃいいんだと思案くれてたすぐ隣には、いつものホームレスのおっちゃんが投げ銭の器を置いて座っているではないか。その日はなんと立派なヘッドホンを耳にして身体を揺らしながらの待ち受け体制。おいらが手にした1円を器にチャリンと入れたいところだが、このおっちゃんなかなか威厳のある顔立ちしてるのでチャリンと同時に「こら、俺のこと馬鹿にしてるんか...1円で何買えるん?」と言わないまでも、そんな顔されそうなので止めました。仕方なく行き場を失った1円玉はとりあえずおいらのポッケに入れました。こんなことも考えました...交番に届けたらおまわりさんどんな対処をしてくれるんだろう?対面では失礼な言葉は返ってこないにしても内心「この人、少し頭変ちゃう...」と思われること間違いないでしょうね。

一番ちっちゃい1円玉からもいろんなドラマが生まれるんですね。まさしく街は激情、いつどこで何が起きるか分かりませんがな。ちなみにこの1円玉はコンビニで買い物した時、寄付金箱にチャリンと言いたいところだが、軽いので「お邪魔します」なんて感じで落ちていきました。1円玉のちょいとした旅日記でございました。

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皆既月食2022

2022/11/07
【第1682回】

先週は2本の芝居を観劇。1本目は文学座の「欲望という名の電車」、随分と昔に杉村春子、北村和夫、出演の芝居を観た記憶があります。この作品は文学座の財産ともいうべき芝居です。今回は出演者もがらりと変え今の劇団を支える人たちが奮闘していました。主人公のブランチが登場と共に口にする台詞「欲望と言う名の電車に乗って、墓場と言う名の電車に乗り換えて、六つ目の角で降りるように言われたのだけど...極楽というところで!」ニューオリンズの多人種が暮らす街の匂いがこの芝居の大きなポイントだと思います。1951年にエリア・カザン監督、ヴィヴィアン・リー、マーロンブランド主演で観た映画の印象があまりにも強力すぎて...なんともいえない色気と暴力性、そして滅び行く美学、こんな空気をどこまで出せるか?日本人が手がけるときの大きな課題だと思います。

2本目は小松台東という劇団が上演した「左手と右手」、主宰者が宮崎の出身ということもあり宮崎のある町を舞台にした物語です。どこにでもある物静かな日常が描かれる中に、言葉にならない感情が渦巻いて終末に暴発してしまう...何気ない日常を描くことほど難しいものはありません。普通に感じさせる表現ができた時が役者の芸としての到達点と言えるかもしれません。この劇団が目指しているところはそのあたりなのかな...

この息苦しい、なかなか出口が見えない世界、演劇の世界もこれに同調してる気配も感じます。そんな気分変えさせてくれるのがお祭りですね。今年も新宿恒例の花園神社の酉の市、商売繁盛、家内安全の熊手が飛ぶように売れてました。「福をかっこむ」といわれる縁起熊手の商いが成立すると、威勢の良い手締めの掛け声と拍手が境内に響き、なんだかおいらもおすそ分けしてもらった気分になっちゃいました。

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御手を拝借

2022/11/04
【第1681回】

昨日、文化の日はグラシアス小林の作品を池袋東京芸術劇場シアターウエストで観てきました。タイトルは「CARONTE」カロンテとは、ギリシャ神話に登場する冥界の渡し守のこと。作品の冒頭から千手観音らしき手の表現でたっぷりと見せながらフラメンコの踊りに持っていく前半。後半は地獄の亡者を登場させトスカ、女神ペルセポーナの舞を中心にバッハの受難曲の生演奏と共に、人間の持つ悲しみや痛み、欲望、希望そして愛を展開。

彼と会って45年、事あるたびにいろんな話をしたつもりであったのだが、こんなことを思考し表現したかったとは、ちょいとふいをつかれた感じがしました。しかし考えてみれば30年ものスペインに滞在し、自分のアイデンティティは日本人であり東北山形で育ったことから発する表現に拘ってたことは確かです。彼にとってフラメンコとは表現することのひとつの手段であって、彼が74年間生きて感じたことをアートにしたかったのでは...

それにしても74歳でフラメンコを踊るってことは大変なことでございます。いくつもの大病を乗り越え、こうやって舞台の立ち姿を観てるだけで感慨深いものがありました。

昨年はトム・プロジェクトの作品に俳優として出演してなかなかの評判でした。45年前スペインの地で二人して日々シナリオ創りに四苦八苦して「今日はこれでおしまい!」と投げ出しワインを浴びるほど飲んだあの日が懐かしい...夢であった映画は実現しなかったけど、こうやってともに舞台を創ってるんですから幸せもんですばい。

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都内も色づいてきました

2022/11/02
【第1680回】

ちょいといい話...先日無事公演を終えた「風を打つ」の出演者の一人いわいのふ健君から丁寧でお洒落な封筒で手紙が届きました。長い旅公演の感想とお礼の手紙でした。最後に追伸として、実は2日前に手紙を書いておりポケットに入れて郵便局へと向かう途中に落としてしまいこの手紙は2回目に書いた手紙であるとのこと。もし心優しい方が拾って下さり送ってくれたら手紙が重複してしまうかも...と記されていました。

なんとなんと心優しい方からその手紙が届きました。封筒の裏にこんなことが書いてありました。

 

こんにちは。通りがかりの者です。10月24日品川区後地に通りがかったときにかなり離れた私の前の自転車に乗った方のポケットから、この封筒が落ちました。懸命に追いかけたのですが、猛スピードについて行けず見失ってしまいました。切手は貼られていませんが多分、岡田様に届けられるはずのお手紙じゃないかと思いますので投函します。

 

なんと、この方が自腹で切手を貼っておいらのところに無事届きました。封筒だったので21円不足の通知の葉書も添付されてました。(勿論、この方の善意のバトンタッチを受け継ぎ21円切手を貼って投函しました)鉛筆で丁寧に書かれた文字と、62円と1円の切手を貼ったこの方がどんな方か?おいらいろいろと想像しちゃいました...男性?女性?年齢は?そんな思いを抱きながらおいらの心はポッカポッカになってきました。いやいや、久しぶりに人が人を思いやる温かい交流を手にした一日でございました。

こんな思いを誰しもが持って抱いていれば世界で争いなんか起こらないのにね...

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秋の薄暮

2022/10/31
【第1679回】

今年のプロ野球、セパ両リーグの息詰まる大熱戦で無事終了いたしました。昨日の試合も勢いに乗るオリックスのワンサイドで終わると思いきや、なんと8回の裏にヤクルトが1点差まで詰め寄る試合展開。こんな試合をされると今まで野球に興味が無かった人まで野球ファンになっちゃうんじゃないかしら...この両チーム、監督そしてコーチ陣が素晴らしい。この一、二年で今まで見なかった若手の選手を登場させ活躍させるんですから、指導だけではなく人としての教育もきっちりやってるんだろうなと思います。特にオリックスの中嶋監督、地味だけど地に足がついた采配が光ります。試合の後半に出てくるリリーフ投手陣の投げっぷりが観ていて気持ちがいい。しかもイケメンと来てるから、女性ファンが増えるに違いない。それに反してヤクルトのリリーフ陣は、吉本のお笑い芸人さんとか庶民的な演歌歌手のそっくりさんが出てくるのでなんともほんわかしちゃいます。今回の日本シリーズはいろんな楽しさ満載の7試合でした。

この7連戦でおいらが印象に残った選手は、オリックスの宇田川優希投手、2020年のドラフト育成3位で入団、今年7月に支配下選手となり9月の西武戦でデビューしたばかりの選手である。今回の選手権、ヤクルト選手を完璧に抑えあっぱれである。しかも年棒は450万円ときたもんだからたいしたもんでございます

一方、ヤクルトでは丸山和郁外野手、2021年ドラフト2位で入団した新人選手、巧みなバッティングコントロールで広角に安打を放ち50メートル5.8秒の俊足。青木選手の後釜が出て来たなと思った次第です。

この両チームを観ながら、我がライオンズ来シーズンは大丈夫かいなと正直不安が過りました。松井監督以下コーチ陣に期待するしかありませんな...それにしても来年こそ日本シリーズで戦う獅子を観たいもんでございます。燕と牛ちゃんに負けちゃいられませんぞ!

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先週末のスカイツリー

2022/10/28
【第1678回】

おいらが大好きな作家のひとり安西水丸さんの本が久しぶりに出版されたので早速購入しました。「一本の水平線」、本の帯には...いずれにしても、ぼくの心の中にはいつも絵がある。それが心の支えだなどというのもちょっと気恥ずかしいけれど、口に出しては言えないけれど、きっとそれが支えだろう。

決してうまい絵だとは思わないけど、水丸さんの優しい感性が鮮やかな色づかいとともに遊び心で満たされている。何気なく心の印象風景を構えずに自由なタッチで描かれているので、こちらの気持ちも思わずなごんでしまう。疲れた時に手を伸ばし眺めるにはもってこいの本である。亡くなる2年ほど前に、渋谷のシアターコクーンで見かけたのだが飄々とした佇まいは水丸さんの絵と文章そのものでありました。

この本の中の文と絵をふたつ

 

こんな風に生きたいと思っていることがある。

絶景ではなく、車窓の風景のような人間でいたいということだ。

 

人間は、どのように生きるかよりも、これだけはしたくない

というものを持って生きる方が格好いいですね。

 

さりげなく生きたいと思ってはいるもののこれがなかなか難しい...このさりげなさの本質を思考させてくれるヒントがさりげなく描かれているのが安西水丸の世界。秋の夜長に静かな音でも聴きながら手にするのにはピッタリの本でございます。

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さりげなく

2022/10/26
【第1677回】

久しぶりの青空、やはり心身共々晴れ晴れとしますね。道行く人も、公園でランチしてる人の表情も、昨日の寒さで縮こまった様子とは一変しておりました。これも昨日の寒さがあるから感じられることで物事全て表裏一体でございます。

公園で飛び跳ねる子どもたちを見ながら、ふとこの子どもたちに明るい未来は訪れるのか?とても心配しちゃいます。今年のロシアのウクライナ侵略に始まり、度重なる北朝鮮のミサイル発射、そして先日に決定された中国の習近平による一党独裁、島国日本の周囲にはきな臭い匂いがプンプン。間違って核でも打ち込まれれば、この国は一瞬にしてなくなってしまいます。今国会では防衛も含めていろんな議論がなされていますが、開会そうそう瀬戸際大臣が辞職、あんな人がいけしゃあしゃあと政治家やってるんですから開いた口が塞がりません。国の発展も止まったまま、なのに何の手も打てない政治の貧弱さ、何度やっても自民党の圧勝続き。おいらほぼ政治には期待しておりまっせん!ならば、この子供たちに何を残すために何をせねばならないのか...やはり一番大切なのは自立心を育むことです。今までの日本のシステムに添ったしつけ教育ではまったくもって駄目でございます。

何をやりたいか、それには好きなことに夢中になれる環境を作ってあげることが大切ですね。夢中この言葉がすべてです。夢を持っている限り人間には無限のチカラが沸々と沸き上がってきます。生きることに己が楽しくなければ他人も楽しくさせてあげられないのは自明の理でございます。

そんなことのたまわってる貴方、政治家なりゃいいじゃん!なんてこともよく言われますが、信じられないあの烏合の衆のなかに入っていったとたんおいら死んでしまいますがな...

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My Blue Heaven

2022/10/24
【第1676回】

これぞプロ野球...今年の日本シリーズもワクワクドキドキ満載シリーズでスタートしました。さすがセリーグ、パリーグを代表するチーム、クライマックスシリーズなんかやる必要なかったんじゃないのかな。このシステム、おいらいまだに納得できません。1年間必死こいて戦った日々は一体全体何だったんだろうなと思ちゃいます。1位になったのにリーグの代表として日本選手権に出場できないなんてこともあるんですからなんとも不可解であり、プロ野球機構の金儲け主義が透けて見えてきます...でも中には二度楽しめるなんて人もいるのも確かなのでおいらが頑張っても仕方がありませんことよ。

昨日の試合、9回表までオリックスが3対0で勝っていたのに、ヤクルトは9回裏、無死1、2塁から代打・内山壮真(高卒2年目20歳)が起死回生の3ランで同点。ホンマに野球は下駄をはくまでわかりませんな。まさかですよ、ひよっこみたいな選手にレフトスタンドに高々に運ばれるなんて、ほとんどの人が思いもしないことが起こるんですからね。延長戦に入っても一進一退、5時間過ぎに及ぶ熱戦の末引き分け。選手も大変だけど観客も大変ですな。終電に間に合うかしら?なんて心配しちゃいます。でも、こんな試合をしてるんだったらどちらのファンも大満足に違いありません。

来年こそは我がライオンズ、この時期にグランドに立ってプレーしていただきたいものです。頑張れがんばれライオンズ!

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仲良しコガモ

2022/10/21
【第1675回】

昨日、東京福岡県人会の懇親会に初めて出席しました。きっかけは先月上演した「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」の公演を知った方からの一本の電話です。見ず知らずの人ながら同郷であることだけでチラシの配布の手配、福岡県出身の方々をたくさん紹介して頂きました。昨日の懇親会の会場でも「芝居良かったよ!」と数人の方々からお褒めの言葉を頂きました。中に、今回出演した藤吉久美子さんの家庭教師をやったという方も居ました。それにしても福岡県人は明るくて元気よかですばい!よく飲み、よく食べ、よく喋る、こりゃおいらが住んでたスペインアンダルシアの人達と同じじゃん。そうです、福岡県人はラテン系のジャンルに属します。一方、ノリはいいんだが冷めるのも早い。芸能人もたくさん輩出してるんだが、いまだ博多にちゃんとした芝居小屋がないのも分かるような気がします。じっくり若い人たちを育てようなんて気がないのかな?お祭り気質なんで、わっしょいわっしょいとお祭り気分で騒いだ後は、それで終わりでございます。切り替えが早いと言えば聞こえはいいのだが、やはりコツコツと地ならししながら後輩のために道筋をつくる作業も必要なことではないでしょうか...

昨日の懇親会の会場である赤坂有薫は1985年開業で37年の歴史を持つお店だ。玄界灘を中心とした魚や、熊本の馬刺し、大長なすびなど、九州料理のテンコ盛り。郷土料理と郷土の尽きない話で、ついつい酒も進んでしまいいつもより早く酩酊気分になっちゃうのでご用心。

このところ秋晴れが続いています。散歩もよし、秋の夜長の読書もよし、勿論食欲の秋、五感が喜ぶアクションを一つでも起こせば、疲れた心身も緩んで、心晴れになりまっせ!

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どんぐり会議

2022/10/19
【第1674回】

遂に完走!9月2日からスタートした東北、中部・北陸ブロック演劇鑑賞会「風を打つ」の39ステージ。昨日、富山県となみ演劇鑑賞会で無事、大千秋楽を迎えることが出来ました。キャスト、スタッフの皆さん、そして呼んで頂いた演劇鑑賞会の皆様のおかげで、コロナをはじめあらゆる困難をはね除け上演できたこと本当に嬉しいの一言です。公演中、現場から電話が掛かる度に「もしやコロナ感染者が出たのでは...」ヒヤヒヤドキドキの日々でありました。勿論、旅の途上での皆それぞれが「自分が感染したら...」なんて不安を抱えながらの道中は厳しいものがあったと思います。感染した時点で公演中止になるんですから、そりゃ相当のプレッシャー、それを乗り越えての千秋楽。この公演にかかわったすべての人が感じた感無量の千秋楽の瞬間であったに違いない。芝居の神さんはちゃんとお見通しでございます。こんな素敵な芝居は多くの人達に観てもらわんといかんですばい!実はそんな神さんの声が聞こえ無事完走できるとは信じてはいたんですが...なにが起こっても不思議ではない今の世の中そりゃ心配しますがな。

それにしても今回の「風を打つ」どの会場でも大好評でございました。キャストのチームワークの良さ、スタッフの厳しい条件の中での踏ん張りが、より密度の濃い芝居を生み出したと思います。

さて、次なるものは?芝居創りには終わりがありません。来年、そして再来年、高い頂上を目指して一歩、また一歩、困難な山道を踏みしめる登山者と同じかも知れませんね...

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彩られ色づく秋

2022/10/17
【第1673回】

今日の東京は曇り空で時折小雨が降ってます。街行く人もやがて来る冬の季節に備えての服装が目立ちます。本来であれば、秋に相応しいファッションで目の保養をしたいところですが、なんともこの気候変動で季節の楽しみが奪われつつあります。

週末の吉祥寺はちょっとしたバザールでにぎわってました。傷んだ服無料で修理しますというお店があったので覗いたらパタゴニアでした。パタゴニアの目的「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」をキャッチフレーズに展開している会社です。これからはただ利益を追求するだけの会社は消費者に受け入れられないんじゃないかしら?この不確実極まりない時代に何らかの付加価値をつけないと生き残れないと思います。

それにして諸々の値上げラッシュには悲鳴を上げています。以前までは美味しくて安くコロナ対策万全の行きつけの焼き鳥店もとうとう値上げしちゃいました。お客は敏感なんですね、開店早々席が埋まってた頃に比べて客足が鈍くなったのではと心配しちゃいます。店を出ると、すぐ近くにある破格の値段で勝負しているお店にはたくさんの客で埋まってました。給料は上がらないのに物価、外食の値段が上がるとなると、そりゃ庶民の財布の紐が堅くなるのは当然です。街にはたくさんのコーヒ店があるのだが、ここが閉店に追い込まれると世の中かなりやばい状態だと思います。昔からコーヒ店は、安らぎ、交流の場であり、淹れたてのコーヒーを味わいながら唯一緩んでいられる憩いの場であるからです。

どんなに苦境に陥いっても、心身の片隅に余裕のココロが失せないよう日々チェックしたいもんでございます。

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秋の井の頭公園

2022/10/13
【第1672回】

連日にわたるプーチンのウクライナに対する無差別ミサイル攻撃は、嘗て第二次世界大戦でナチスドイツがスペインバスク地方にあるゲルニカの村を攻撃したことを彷彿させる出来事だ。おいらも45年前にこの村を訪れたのだが、村の一角には、ピカソによる絵画『ゲルニカ』と同寸のレプリカが飾られていました。バスクでとれた新鮮な魚介を村の食堂で食した記憶があります。この静かな村にいきなり無差別に爆弾が投下された光景はピカソが描いた絵の如く阿鼻叫喚の様であったと思います。テレビで流れるウクライナの状況を見るにつけプーチンの残虐性にただただ怒りを覚えます。そして又、このあとのロシアの国が苦難の道を歩まねばならないとするならば、ロシアの民衆が反戦の大きな声をあげなければと思うのだが、これも命懸けの行為です。要するに世界の安定を保つためには、独裁者を生み出さない土壌を日頃その土地で暮らす人達が養うしかありません。

20代の頃に読んだ夏目漱石の「こころ」を再読。若い頃に読んだ印象と、この年齢この時代の読後感はさすがに違いましたね。当たり前のことですが、己の人生経験と作者が描いた世界とのバトルを堪能させていただきました。それにしても漱石はさすがです。登場人物の心理描写、話の展開、ミステリアスな味付け、文学でありながらエンターテインメントの要素を盛り込みながら今なお燦然と輝く文学者でございます。

今日も肌寒い一日、新宿にもぼちぼちながら海外からの旅行者がマスクしないで散策しておりました。これからが冬本番、インフルエンザとコロナでまたまたてんやわんやの大騒ぎにならぬことを祈るのみでございます。

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雨に濡れるアンネのバラ

2022/10/11
【第1671回】

今年のライオンズの試合終了しました。昨年の最下位から今年は3位ですからなかなかよくやったというべきでしょうね。辻監督も今年で退任、6年間でリーグ優勝2回、Aクラス5度なんですから名監督であったと思います。いろいろ言われますが、気さくで明るい自由奔放なチームを形成し皆のびのびと野球を楽しんでいました。管理野球が野球をつまらなくした過去があるんで、このスタイルこそが本来のライオンズのチームカラーです。

それにしてもパリーグ・クライマックスシリーズ・ファーストステージ、ソフトバンクとの2試合、同じ選手に決定的なホームランを2度打たれるシーンを見ながら、森捕手のリードを疑いました。前日打たれたコースと同じところに投げさすんですからあちゃ~、森の野球センスはバッターとしては認めますがキャッチャーとしてはいかがなものかと改めて感じた次第です。FAの権利を取得したので他のチームに移籍する可能性十分にあります。セカンドを守っていた外崎然り、この権利は選手として長いことプレーしてきた選手の権利ですから他人がとやかく言うものではございません。他のチームの契約条件がよければどうぞ!ライオンズはあまりお金がないので、他のチームに比べても流出が多いチームですが、次から次に若い選手が出現する楽しみなチームです。おいらはこちら方が好きだな...ぐだぐだ言うなら、お金が欲しけりゃ、他のチームで頑張ってくださいな。今でも楽天に移籍したA選手、登場するたびにむにゅむにゅしますがな。

ロシアのウクライナへの報復ミサイル攻撃。プーチンの狂気の沙汰がますますエスカレートしてるみたいで無気味でございます。なにもできないけど、ただひたすら平和を願う気持ちだけは持ち続けたい!この願いの数がこの現況を変えてくれるに違いない...

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秋バラ
(花言葉~情熱)

2022/10/07
【第1670回】

昨日は久しぶりに銀座に行きました。日比谷にあるシアタークリエでの公演「アルキメデスの大戦」を観劇。映画にもなった作品で、舞台にするのはちょいと難しいのでは?と思ったんですが、そこは歴史物、特に第二次世界大戦にまつわる作品を数多く上演してきた劇団チョコレートケーキの作・古川健、演出・日澤雄介コンビが上手くまとめておりました。舞台は台詞が命、若い役者さんたちが想像力を駆使して懸命に表現しておりました。惜しいかなヒロインの女優さんがまだまだ舞台でお金取れるレベルではございませんでした。

この手の芝居でいつも感じることは、客層の90%以上が女性であること。そのお客様のほとんどが一部の男優さんの追っかけであること。おいらは前から7列真ん中の席だったんですが、両脇の女性客二人とも、お目当ての男優が登場するとオペラグラスをしっかりと手にして観劇しとりました。そんなことしなくてもハッキリ、クッキリと男前のお顔拝顔できるのにと思うのだが、そこはファン心理でござりまする。おいらがとやかく言うべきことではございませんが...でも、追っかけさんであっても、この芝居を観終わって平和の有難さ、戦争に対する不条理を今一度考えるきっかけになればいいなと思いました。更に言うならば、芝居の面白さにはまり、小劇場も含めて様々なジャンルの芝居に足を運んでいただければいうことなしでございます。

いやいや、急にブルブル寒い季節になっちゃいました。そのうちに春と秋がなくなるんじゃないかしら...春と秋があっての夏と冬。世相の味気なさと季節の移り変わりがなんだか似通ってきた嫌な予感がいたします今日この頃。

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秋の風物詩

2022/10/05
【第1669回】

新宿西口の象徴的な存在であった小田急百貨店新宿店本館が10月2日、55年にわたる現館での営業を終了しました。おいらは22歳の頃、百貨店というよりすぐ近くの思い出横丁(その当時はしょんべん横丁)を徘徊し安酒飲んだり、地下の西口広場の反戦フォーク集会を覗いたり、百貨店前で詩集を売ってた人と仲良くなったりと、この建物を軸にして行動してました。ちょいとお金が入ると、めったに買わないお洒落な衣服を購入した記憶もございます。貧乏青年にとって百貨店なんぞは高嶺の花、でも何事も感性をアップするためには高級な品々を見て廻ることも大切なことでした。なかでも海外の家具、照明器具、日本の伝統工芸品をじっくりと眺める時間は贅沢なひとときでもありました。この雄大な建物、大規模再開発に伴って解体されることになり、2029年度をめどに地上48階建ての超高層ビルになるそうです。東京の街の変貌はすさまじいほどのスピードで進んでいます。別に昔を懐かしんでいるわけではないのだが、おしなべて無機質な街になってることは確かだし、おいらとしては寂しい気がします。あの猥雑でエネルギッシュな街の佇まいから時代を変える文化が誕生していった経緯を体験しただけに尚更です。

あのサイドと後ろを刈り上げたオッサン、ついに日本上空に長距離ロケット砲を飛ばしました。このオッサンとプーチンには困ったもんでございます。まさか核攻撃?でも一寸先は闇、日本にも召集令状なんて時代くるかも...この世紀、何が起きても不思議でなくなった様相を呈しています。ゴシゴシ自分磨きをしないと大変なことになっちまいますぜ皆の衆。

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おつかれさまでした

2022/10/03
【第1668回】

久しぶりの舞踏、堪能いたしました。10月1日に行われた「天狼星堂舞踏公演10月~つづれ織り~」中野のテルプシコール。この小屋はおいらが20代の頃、演劇群走狗の打ち合わせで通ったところです。その後、舞踏の聖地として数々のダンサーがこの地で修練を重ねてきました。この舞踏においらが出逢ったのも20代です。今は亡き土方巽の公演ですっかりはまってしまいました。これこそあらゆる踊りの中で日本人が勝負できる表現だと確信しました。蟹股、重心を低くして空間を模索していく様は、まさしく宇宙であり肉体が氾濫しながら哲学の世界に誘っていく感覚がたまらなく愛おしくなった記憶があります。

早速、当時目黒にあった土方さんが主宰するアスベスト館に遊びに行きました。類まれなる天才、土方巽の一挙手一投足をつぶさに鑑賞させていただきました。このカリスマ性は誰も真似ができないほどの一世一代の話術、肉体表現でした。でもなぜかおいらはこの門を叩こうとは思いませんでした...そりゃそうだ生来の気質、組織の群れの一員になるのが嫌だったんですね。しかし土方さんから受けた影響は、おいらがスペインでの大道芸で稼ぐ日々の大きな財産になりました。45年前、白塗りに着流しふんどし姿で舞い踊る姿を異国の人たちは驚きの表情で観ておりました。お陰で1時間の踊りで1週間充分に生活出来る投げ銭を頂きました。その後、当然の如く舞踏は世界の舞踏へと拡大していきました。

この日の天狼星堂の主宰者である大森政秀さんとも長い付き合いです。彼特有の身のこなしはなんぞや?彼の出自、生まれ育った北海道三笠市で少年期、アンモナイト採集の日々に夢中になった少年を手繰り寄せる舞でもあり、いまだ正解のないこの世の不条理に心身を投げ出し模索する佇まいにも視えました。言葉がないだけに観る側の想像力を無尽蔵に掻き立ててくれます。4人のお弟子さんもなかなか個性的で素敵でした。なかでもワタルさん、大倉摩矢子さんまた拝見したいなと思いました。

この世の中、まだまだおもろい代物がたくさんありまっせ!ぼけっとしとったら損しますがな。

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摩訶不思議な世界

2022/09/28
【第1667回】

昨日はどのメディア見ても国葬の話題で持ちきりでした。国民の意見を分断してまで実施する必要があるのだろうか?多数の人がそう思っているのでは...反対する人のデモの様子を見ながら、これがロシアであれば即拘束、拷問、挙句の果ては戦地に兵として送られる羽目になるのではと思うと、つくづく自由の有難さを感じます。政治の世界は魑魅魍魎、何かを企画し行動にすること自体何らかの戦略があってのことだと思います。どんな人の死も平等、安らかに永眠されますよう、心よりお祈り申し上げますという気持ちであれば十分だと感じます。

まだまだ暑さは残ってますが、吹く風は秋の気配を感じます。コロナもなんとか数は減ってはいるもののまだ油断はなりません。芝居を抱えながらの日々、しばしリラックスするには酒と音楽と読書かな...最近、音楽では従来のジャズに加えクラシック音楽で心身をリフレッシュしています。ここのところ気にいってるのがバイオリストのアルテュール・グリューミオ―。ベルギー生まれで1986年に65歳で亡くなっている。彼のヴァイオリンの艶やかな音色と、瑞々しいまでの抒情性が心身を癒してくれる。そしてクラシック特有の気高い品格が豊かな気分にさせてくれる。

これからの秋の夜長の過ごし方次第で、この鬱としい気分払拭することが出来ますことよ。

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フィンランドのマリメッコ

2022/09/26
【第1666回】

昨日、無事に「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」千秋楽を迎えることが出来ました。あの昔の時代の話がどう観客に映るのかプロデューサーとしては、とても気になるところですが、ニンゲンの生き方なんぞは基本的にはそうそう変わるもんじゃないし、人の琴線に触れるところは普遍的なものだと思って創ってるんで心配はしてませんでしたが。

演劇評論家の方々もこんなことを書いてくれてました。

 

貧しいがたくましくまっすぐに生きていた時代への追憶の芝居。それはノスタルジーではない。それこそが人間本来の生活ではないか。74歳のたかお鷹が少年に見えてくるのだから、舞台は想像力だ。長屋のおばちゃん役の藤吉久美子が呆れるほど上手い。清純派がこんな泥臭いおばちゃんを。それが見事にはまった演技。演技とはこれを言う。作品の要となる娼婦の森川由樹がまた素晴らしい。少年の憧れを受け止める。女の悲しみを内包する。斉藤、清水もそれぞれ役を生きている。子役の涌澤昊生も元気でいい。舞台のアンサンブルが見事。役者全部がいいという舞台はめったにあるもんじゃない。今回の舞台はまるで奇跡をみているよう。全員、底抜けに明るいのがいいのだ。明るいからこそ悲しみが際立つ。後半から涙止まらず...

 

人はいつの時代になっても、生きるうえになにが大切かを模索しながら日々を過ごしている。この芝居がすこしでもそのためのヒントになり得たら、芝居屋にとっては嬉しい限りだ。

この困難な時代だからこそ、よか芝居創らんといかんですばい!

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ホソバヒャクニチソウ
(花言葉 友への想い)

2022/09/22
【第1665回】

昨日、「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ラインズ」俳優座劇場で無事初日を迎えることが出来ました。改めてこの作品、よか芝居と思った次第です。あの時代の匂いが舞台上から観客に伝わっていくさまが良くわかります。この芝居のテーマでもある匂い、そうなんですね、いまやこの国にとどまらず先進国といわれている国々はほぼ無味無臭のつまらん国になってしまいました。人間が醸し出す匂いが感じられなくなった途端に、自己中心の思考に陥り、生きる上で一番大切な優しさそのものが疎遠になっていき、人が人を思いやる感情が希薄になっていくのは自明の理。拝金主義、物欲に走り、果ては小さなもめごとから始まり、挙句の果ては戦争へ突き進むお決まりのコースでございます。

匂い、体温、この身近な感覚を失わないことが家族、街、国家、そして地球を守る大前提であることを、この芝居が教えてくれてる気さえします。決して高邁な思想を語らなくともごく身近な市井の人達から学ぶことの方が多いのではないか...

今回の芝居、少ないステージですが、こんな時代だからこそ是非見て欲しいと強く思った昨日の初日でございました。

前回、お知らせした台風で中止になった「風を打つ」ちた半島演劇鑑賞会での公演、いろんな方の尽力で振替公演ができることになりました。

まだまだ演劇の神さん健在でございます。

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雨あがる

2022/09/20
【第1664回】

いやいや、台風には敵いませんわ...今回の台風で、風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」広島県福山市の公演が早々と中止決定。昨日は、「風を打つ」愛知県中部ブロックちた半島演劇鑑賞会での公演、劇場にセットを建てこみ、さあこれからと言うときに行政からの台風による閉館指示が出され中止。芝居もやらないままセットのバラシはつらいものがあります。俳優陣も気が抜けちゃったんじゃないかしら...でも、何事も安全第一、芝居終演後に帰宅困難なんてなったらそれこそ一大事でございます。コロナに台風、ナマものである芝居、予測できない困難との闘いでもあります。

明日からは「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」が始まります。稽古を観に行ったのですが、なかなかいい仕上がりになっていました。登場人物5人が皆、昭和30年前後に生きていた人物になりきっているところが素晴らしい。あの時代の匂いを知っているのは、今回キヨシ少年を演じるたかお鷹さんだけなのに、あの日あの時の博多・末広長屋が甦ってくる感じがするんだから不思議なもんでございます。

埼玉のライオンズの方は、昨日の敗戦で終戦でございます。よりによってライオンズの選手を4人もかっさらい、第二ライオンズとも言われている楽天イーグルスに本拠地で3連敗するんですから開いた口が塞がりません。通算7連敗じゃ今年は5位かな?おいらも途中からテレビ止めちゃいました。要するに実力不足、チームとしての層の薄さを感じます。冷静になれば当然のことかもしれません。昨日のソフトバンクとオリックスの試合なんぞはワクワク、ドキドキの展開。これぞプロの試合でございます...はや、来期のライオンズに期待したいところだが...おいらは明日からの劇場の西鉄ライオンズのことで頭一杯でございます。

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久し振りの井の頭公園

2022/09/16
【第1663回】

おいらは万年筆大好きな人の一人だ。長年愛用していたモンブランの万年筆、インク漏れが始まったので、いつものように新宿伊勢丹のモンブラン専門店に修理依頼を相談に行ったところ、最低¥13500~¥36500の修理費がかかるとのこと、しかも修理に出すと、修理しなくとも¥6500がかかるってんだからなんとも腑に落ちない感じがいたしました。早速、ネットで調べたら文京区に川窪万年筆店が見つかり早速出かけることにしました。下町風情にある民家に店を構えた古いお店でした。最初は失礼ながら大丈夫かいな?と思ったのだが、万年筆を差し出すとさすがに三代続く万年筆職人。「15分あれば直せます!」ここでおいらもホンマかいな?とまたまた不安になったんですが、言葉通りに完璧に修理してくれました。しかもお値段が¥4950なんですからありがたやありがたやでございます。そりゃそうだ、昭和元年に初代・川窪長七(現三代目:川窪克実の祖父)が早稲田界隈の小さな店で、主として学生・大学教授様向けに万年筆を製造して販売。その後小石川林町(現店舗の文京区・千石)に移転し、同じ町内の菊池寛、宇野千代、川端康成、E.サイデンステッカーの愛用品の修理・調整を手掛け、二代目:川窪一夫(パイロット大型蒔絵万年筆の開発に携わる)、そして三代目:川窪克実と確かな万年筆全般に関する技術の継承が行われ、現在に至る名店だったわけである。

大都会東京には、これに類する職人芸を伝える名店が、今尚存続してるのがとても嬉しい。

一昨日、東京亀戸文化センター・カメリアホールで公演した風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」いやいや大変な盛り上がりで充実した一日でした。演者と観客が一体になることによって、至福の時間を持ちえることを改めて実感した次第でございます。

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愛をささやいてるのかな?

2022/09/14
【第1662回】

生きていくなかで、誰しも何度か拘りについて自問自答したことがあるかと思います。先日、早稲田にあるジャズ喫茶「ジャズナッティ」に行ってきました。早稲田大学のすぐ近くにある2008年にオープンした店です。先ずは玄関先に「ミュージシャンの魂を聴きとれ!」という看板に、おいら緊張してしまいました。その看板に一礼して店内に入るとお客は誰も居ませんでした。いやいや、襟を正して、背筋をシャキッと伸ばしてジャズミュージシャンのほとばしる魂の叫びに耳を傾けないと店主に怒られないかとヒヤヒヤもんでした。しかし、注文取りに来た店主は穏やかな紳士でここはひとまず安心。店内に入った時はCDが流れていたんですが、おいらの佇まいで判断したのかどうかも分からんのだが、早速レコードを取り出しアートファーマーの名盤「ポートレイト・オブ・アート・ファーマー」に針を落としてくれました。おいら特別にアートファーマーに思い入れはないんですが、やはりジャズ喫茶に来たならばレコードを聴きたいのが本音です。CDでお茶を濁してるお店はちょいと手抜きしてるんじゃないかしら?いやいや、お店にしてみれば繁盛もしてないのに、演奏時間が短いレコードの盤面を変える手間暇はありまっせん!と叱られるのは承知の上で申しているのですが、やはりジャズ喫茶の存在意義はレコード盤を聴けるということです。目を閉じ、巨大なスピーカーから流れる音を一音一音聞き漏らすことなく聴いてるうちに、緊張のあまりおしっこ漏らしそうになりトイレに行った次第です。

一時間ほどしたら一人の客が入店。おいらもなんだかほっとして帰れる気分になりました。

この店の拘りに魅せられ14年続いているんでしょうね...おいらも20代の頃、毎日のように新宿のジャズ喫茶DIGに通っておりました。老いたらジャズ喫茶やる計画だったんだが...人生なんて所詮、ケセラセラでございます。

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マイルスも感染予防中

2022/09/12
【第1661回】

先週の土曜日の中秋の名月は見事でございました。いつの世も、生きとし生けるものたちは夜空に浮かぶ月の変化を感じながら、その日一日の出来事を月に向かってなんとなく報告している感さえします。雲に隠れた日なんぞは、なんとなくその日のケジメがつかないモヤモヤ気分が残ってしまいます。昔、スペインアンダルシアのコスタ・デ・ソル(太陽の海岸)のすぐ傍に住んでた時には、満月なると浜辺で着流しの着物を着て踊りながら月に吠えておりましたおいらでございます。スペインの月は何故か人を狂わせる不気味な表情をしていました。

現在、東北ブロックの演劇鑑賞会で上演している「風を打つ」今日の仙台公演を含め10ステージ無事終えることが出来ました。どの会場でも評判がよく嬉しい限りです。風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」も昨日、北海道公演3ステージ、山形県の川西町を含め4ステージ、こちらも、どの会場も笑いが絶えない雰囲気だったと聞いております。「風を打つ」は残り29ステージ、「帰ってきたカラオケマン」は3ステージ、なんとなくコロナの感染者は少なくなってはきてますが、油断は禁物です。ちょいとした隙間からコロナちゃんは遊びに来ますから気をつけなくちゃなりませんね

来週は21日から「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」が始まります。よりによって、こんな時になんで3本も芝居やるんかい?と思う方も居るとは思いますが、こんな時だからこそやるんでございます...

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十五夜

2022/09/09
【第1660回】

スメタナの連作交響詩「わが祖国」、いつ聴いても心に染み渡る...今回のアルバムは歴史上いつまでも語り継がれる名盤である。1990年の「プラハの春」音楽祭でのオープニング・コンサートで演奏されたライブ版。チョコスロヴァキアの民主化の初の音楽祭に、独裁政権に反旗を翻し西側に亡命していた巨匠ラファエル・クーベリックが42年ぶりに祖国に戻り、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したのである。この年第45回を迎えた「プラハの春」は美しい自然と多くの歴史的な建物に囲まれた古都で、毎年5月12日、つまりチェコ国民音楽の父であるスメタナの命日に開幕し、そのオープニング・コンサートには、チェコフィルがスメタナの代表作である連作交響詩「わが祖国」を演奏することが恒例になっている。第1回の音楽祭が開かれたのは1946年のことで、当時チェコ・フィルの主席指揮者であったクーベリックは、その記念すべき最初のコンサートを指揮しているから、音楽祭には実に44年ぶりの登場になったわけである。

この交響詩の中の第二章の「モルダウ(ヴァルタヴァ)」、これを何度聴いても涙がちょちょぎれ感極まる。南ボヘミアのシュマヴァ山脈に源を発し、北流してプラハを通ってエルベ河に合流するモルダウ河を描いた傑作である。この旋律が流れるたびに、自然に囲まれ自由のありがたさに感謝しながら生きていくことがなんと素敵なことかを改めて感じさせてくれる。

この曲を聴きながら、ふと、わが祖国(日本)を考えてみるのも意義あることだ。円安、日本の国力の低下、政治の体たらくなどなど...理想の未来が見えないのがこの国の現実である。

そして、寺山修司のこの句が浮かびました。

 

マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや

 

ちょいとオーバーかも知れませんが、祖国の存亡がかかってるくらいの理念、気概を今一度持たないとあきませんがな...

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野に咲く花

2022/09/07
【第1659回】

月曜日、携帯をオフィスに忘れたまま帰宅しました。電車に乗って気づいたのですが、こんな時もあるわいなと思いオフィスには戻りませんでした。なんとこれが幸いして、そのあとの19時間を新鮮なひとときで過ごすことが出来ました。仕事柄、しかもよりによって同時に3本の芝居を抱えながらのこの時に、困ったなと一瞬そんなことが過ったのだが、どうにかなるわいなと携帯なしの時間を逆に楽しんだ次第です。誰からも連絡がこないんですから、この日は自宅でゆっくりとお酒と食事を楽しんだ後、好きな音楽を聴きながら読書をいたしました。他者との連絡が取れないことは不便に見えますが、心身ともに解放され自由な身になった爽快な気分でした。

考えて見りゃ、昔はよほどのことがない限り公衆電話もかけず、用があれば手紙のやりとりでコミュニケーションを図ったものでございます。思いの丈をたどたどしいながらもしっかりと相手に届くように綴った時間が何ともいじらしくもあり楽しい時間でした。今でも、万年筆、筆で手紙を書くときに感じる感覚は、細胞がいつもよりいきいきしてるように感じます。身体全体の思いを筆に託し、文字を産み出し真っ白な空間を埋め尽くしていく一瞬一瞬に喜びさえ覚えます。

なんでんかんでん便利になりやがって、不便なときに自ら思考し行動した尊い時間を忘れちゃいけません!ということを想い出させてくれた昨日でございました。

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長月のアレンジメント

2022/09/05
【第1658回】

劇団チョコレートケーキの「ガマ」を観劇。この劇団2022年8月17日~9月4日まで、東京芸術劇場で「生き残った子孫たちへ 戦争六編」と銘打って公演しました。小劇場の劇団がこういう形で硬派の芝居を六作品、長期間企画するだけでもあっぱれです。このクソ暑い中、しかもコロナ感染のなか、しんどい芝居にはなかなか足が向かないと思うのだが、今だからこそ戦争に向き合って欲しいという劇団のこだわりを感じます。演劇を志すものとしてこのこだわりは必要不可欠であり、これからの劇団の改めての決意表明ではなかろうか...

今回の「ガマ」は六篇の中で唯一の新作です。沖縄の悲惨な戦争体験はたびたび舞台化されてきましたが、この作品はまさしくガマ(沖縄戦時に避難壕や病院壕として使用され、その数はおよそ2000にも及ぶ)のなかでの人間ドラマ。おいらも、数年前、ひめゆり学徒隊が居たガマの前に立った時には、ガマの中でくり広げられた悲惨な惨状が頭をよぎり、しばし黙祷するしかなかった。

劇中、皇民教育に染まった少女を演じた清水緑が吐く台詞「帝国臣民」「聖戦貫徹」「私たち沖縄県民はどうやったら日本人になれるんですか」「友達は皆日本人として立派に死んでいった」それらの言葉を受け止め、「命は宝だから」と少女を諭す現地の老人を演じた大和田獏が秀逸。これも、勿論、劇団チョコレートの役者陣が支えてのこと。

戯曲、演出、舞台美術、照明、音楽、すべてがハナマルの公演でございました。

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久し振りのゴジラ

2022/09/02
【第1657回】

8月31日、埼玉県志木市民会館で「風を打つ」の公開舞台稽古を観てきました。今回の公演、今日から演劇鑑賞会の東北、中部・北陸ブロックで10月18日まで39ステージの公演を予定しています。コロナ禍と猛暑のなかでの稽古本当に大変でした。今日、この日初めて役者さんもマスクを外しての本番だっただけに感無量の思いでした。マスクをしながらの稽古は身体的にも苦痛が伴うのは当然なのだが、なんといっても相手の表情が読み取れないのが表現者にとっては最大の苦痛です。そんな状況が3年近く続いているんですから、いい加減コロナちゃん勘弁してくださいな!と叫びたい。

この日の芝居、困難な中この日を迎えた5人の役者さんの思いの丈が会場に響き渡っていました。この日の観客から頂いた割れんばかりの拍手に背中を押され、10月18日の千秋楽まで無事に完走してくれることを願うばかりです。いつものことながら演劇の神さん頼みまっせ!

昨日、新宿の西口で、9月27日に執り行われる安倍元首相の国葬について中止や反対を求める署名活動が行われていました。国民の半数以上の人が反対しているのに内閣だけで決めて実施するのはいかがなものかと思うのが当然でしょう。しかも問題になっている旧統一教会とずぶずぶの関係であった人だけに...とにもかくにも、ここらあたりで思い切った当たり前の政治に舵を切らんと、間違いなくニッポンえらいことになっちまいますね。

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長月の空

2022/08/31
【第1656回】

先週の土曜日、日本テレビでのドラマ「無言館」観ました。戦没画学生の家族を訪ねながら絵を収集していくさまを丁寧に描くことを主にした作品になっていました。監督が劇団ひとりということもあり窪島さんと野見山さんとのやり取りは喜劇タッチに描いていた。途中CMが頻繁に流れるという制約の中で、なんとか無言館オープンまでの道のりにたどり着いたという感じでした。トムの作品は、窪島さん自身の波乱万丈の人生が枝葉として随所に織り込まれ、無言館なるものの存在を複眼的にとらえていたのではないかと思っています。

いずれにしても、こうやって無言館の存在が多くに人に知られ、無言館を訪ねてみようという人が一人でも二人でも増えていけば素晴らしいことだと思います。そして、戦没画学生が描いた珠玉の絵画を目の当たりにすることにより、平和であることのありがたさ、尊さを今一度、胸に収め、自分の出来る範囲でアクションを起こしてくれれば世の中、少しはマシになるのでは...

京セラの稲森和夫さんが亡くなりました。コロナが感染し始めた頃、京セラ財団が文化団体に巨額の助成金を助成しました。国家に先んじて民間の会社が手をあげたことに驚きました。トムも芝居が中止になり思案に暮れてる時期に、稲盛財団の支援は本当に助かりました。

芸術が育たない国に繁栄はないという理念で日本の経済を牽引した稲盛さんに次ぐリーダーが現れないとこの国も心配でなりません。

思えば、コロナ禍のなかで学ぶこともたくさんありました。このウイルス、確かに人類の数々の驕りに対しての戒めであり、地球の一生物でしかない人間にたいし「もう一度原点に戻りなさい!」という警告だと思います。

ウクライナへの兵器援助、更なるワクチンの開発、これは果たして本当に地球全体のためになっているのだろうか?表層的なものに目を奪われてると未来はえらいことになっちゃいますがな。

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花と蝶

2022/08/29
【第1655回】

風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」土曜日、日曜日、満員の観客の中で無事公演を終えることが出来ました。会場の皆さん、杜夫ちゃんの魅力に取り憑かれ食い入る様に観ていらっしゃいました。そして随所で放つ小気味いい時事ネタで大笑い、そしてラストには涙、ナマの芝居のいいとこ取り満載の運びに、重苦しい日常を忘れさせてくれる時間であったことでしょう。沢山のアンケートも集まりました。

 

同じ世代のわたしにとってはマスクをはずして一緒に歌いたかったです。熱いパワーを注いで頂いた思いです。演劇の底力を感じました。これからも心に届くお芝居を楽しみにしています。「牛山明さん」ありがとうございました。

 

平和の大切さを強く感じました。高齢者のための政党、是非実現して欲しいと願います。

 

前回も観ているのですが、その時々の話題の違いにより内容が全く変わってくると言う思い、今回は心にしみいる曲ばかりでとても良かったです。

 

などなど。

演劇が閉塞した時代になんらかのチカラになり得たことは何度もありました。改めて演劇が時代と切っても切り離されない表現であることを改めて痛感しました。いろんなスタイルがあるとは思いますが、今回の芝居の主人公の如く庶民の視点から描く芝居だからこそ、身近に感じられ懐深く入り込んでいくのでは...

今日の新宿スペースゼロでの最終公演、先程無事終えることが出来ました。今回見逃した方、9月14日に江東区亀戸文化センター( カメリアホール)での公演もありますので...見逃すと一生後悔しちゃいますよ。なんて、プロデューサーは先へ先へと思いを巡らせております。

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こちらも熱きライブ

2022/08/26
【第1654回】

昨日、明日から新宿スペースゼロで始まる、風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」の最終稽古に行って来ました。御年73歳になる杜夫ちゃんのパワーに圧倒されました。とにかく本人は大変だとは思いますが、観てる方は徹底的に楽しんでひとり遊びをしているように見えるんですから不思議な感覚におそわれます。芝居の基本、演じてる側の楽しさがそのまま観客に伝わるってことを実証してくれてるんですね。

昨年の初演はコロナの規制に引っかかり、観客を半分にしての公演で忸怩たる思いがあっただけに今年はその鬱憤をはらしたいとスタッフも含めて気合いが入っています。と言っても、稽古中の日々の緊張感も勘弁してくれと言いたくなります。感染者が出た時点で公演が中止になるニュースが流れる度に、もしやなんて不穏な気分になっちゃうのはもう嫌だ!その点、このひとり芝居、出演者がひとりなのでリスクは最小限に抑えられることが救いかな...コロナ時代にピッタリなのが今回のひとり芝居。

ウクライナの侵略、統一教会問題、そして未だ止むことのないコロナなどなど、この世の不条理に対し、この芝居の主人公牛山明は庶民の立場から怒りを爆発させます。

この閉塞しきった現況、この芝居がモヤモヤを解消してくれる劇薬になることは間違いございません。迷わず劇場に足を運んでくださいな!

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最後のひと鳴き

2022/08/24
【第1653回】

昨日、今月31日からスタートする「風を打つ」の稽古を観に行ってきました。2019年に創った水俣にかかわる作品です。初演の時に大きな評価を頂き今回の演劇鑑賞会での公演が実現しました。昨日観て感じたことは、水俣病で苦しみながら懸命に生きようとする姿が、今まさにコロナ禍のなかで、もがき苦しみながらもなんとか未来につなげようとする世界の状況と相通じるものがあることを確認しました。苦境に陥れば陥るほど大切なのが家族の存在であることもこの作品が実証してくれます。この世界の平穏は核家族の絆があってこそです。社会を構成している基本の家族が上手くいってなければ、そこから歪が生じるのは自明の理。

「風を打つ」の作・演出家である、ふたくちつよしさんはいつもそこにフォーカスをあわせて芝居を創ってきました。決して派手ではないのだが、そのぶれない創作姿勢に共感しておいらもこれまでふたくちさんに依頼して良質の芝居を創ってきました。これも、作家とプロデューサーとの信頼関係がなければ成し得ないことも事実です。

稽古場では、この時期マスクをしながらの稽古は辛いものがあると思うのだが、皆さん一つ一つの台詞を確認しながら熱のこもったやりとりをしていました。少しでも油断すると、そこからほころびが生じ観客に届かないチープな芝居になってしまうのがライブの恐いところです。そのうえにコロナの恐怖が加わるんですからたまったもんじゃございません。

本番の日は刻々と迫っています。いつものように演劇の神様が「大丈夫だよ!」と、おいらには聴こえます。

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錦糸町稽古場前から

2022/08/22
【第1652回】

いやいや、コロナなかなか収まりませんな。トム・プロジェクトでは今週末から風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」をはじめ、10月18日まで「風を打つ」「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」計3本の芝居を公演します。スタッフ、キャスト、制作の皆さんがPCRの検査をやるたびにヒヤヒヤ、ドキドキしております。すでに3年目になるのに困ったもんでございます。先日の新聞にも「演劇存亡の危機」という特集が組まれていました。勿論、演劇業界だけではございません、飲食、観光などなど打撃を受けてるところは数知れないと思います。世界の状況からみても、この国のコロナ対策は相当遅れていて一番大変なのが病院、保健所だというんですからこれまで何やってたの?と政府、行政の責任が問われてもおかしくないんじゃないかしら...

トム・プロジェクトが上演した演目がテレビ、映画で上映されます。先ずは今年の6月に上演した「無言のまにまに」、8月27日(土)28日(日)に放送される日本テレビ24時間2022のなかで、スペシャルドラマとして8月27日の午後9時から「無言館」というタイトルで放送されます。次は2005年に上演した「ダモイ」が、「ラーゲリより愛を込めて」(瀬々敬久監督、12月9日公開)。いまだ終わらない戦争を通して、名も知れずに死んでいった庶民の声を救い上げる作業は、今生きてる人たちがやらねばと思っています。それは義務、責任と言っても過言ではない...亡くなった人達の犠牲の上に今の平和があるんですから当然だし、他人任せにしてるととんでもない未来が待っておりますぞ!

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四季の花アレンジ夏

2022/08/18
【第1651回】

昨日、東京福岡県人会の理事の方から電話がありました。来月21日から俳優座劇場で上演する「エルスール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」の件で、東京在住の福岡県人会の方に是非知らせたいという応援のメッセージでした。やはり、福岡の人は熱かですばい。おいらより年上の方ですが、当然あの日あの時の西鉄ライオンズの記憶は何よりも強烈であり、もはや忘れることができない大事件であることに違いない。今や、博多の街はソフトバンクホークスで盛り上がってますが、これも西鉄ライオンズが残した功績の上で成立しているのではなかろうか。昭和30年前後の博多の街の心の拠り所であり、文化の一翼を担っていたことは紛れもない事実です。おいらにとっては西鉄ライオンズ抜きには考えられない日々でした。田舎もんのチームが、花の東京の読売ジャイアンツを日本シリーズで3年連続打ち負かしたことから博多も一気に発展していったんじゃないかしら。

今回の芝居は、西鉄ライオンズに絡めてその当時の長屋に住む人たちの哀歓を描いています。作・演出の東憲司さん、出演者のたかお鷹さん、藤吉久美子さん、そしておいら、福岡出身で固めバリカタの博多発の芝居をお届けしようと思ってます。

この芝居、唯単なるノスタルジーで上演するんじゃございませんことよ。拝金主義、科学に依存し自然破壊に繋がった今こそ、人の命を大切に生きてきた庶民の姿に学ぶべきことがあるはずだし、あの時代の心の支えであった西鉄ライオンズに変わりえるものは今の時代ではなんなのか...この芝居にはいくつかのヒントが隠されておりますぞ。

人は流行、新しいものに惹かれるのが世の常なんですが、今の時代に光があたってないものが、ふと新鮮に感じられることを大切にしたいもんでございます。

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野武士軍団

2022/08/16
【第1650回】

昨日は77回目の終戦の日...各メデイアは一斉に太平洋戦争にまつわる出来事、生き残った人達のインタビューを流していました。誰しもが「戦争だけは絶対にダメ...」口を揃えて言っておりました。連日流されるウクライナの状況を見てれば戦争を知らない世代の人だって同じ思いを抱くに違いありません。でも、なかには自国を守るには防衛力を強化せねばという人達が居るのも現実です。ロシア、北朝鮮、中国を間近に控える日本としては確かに脅威を感じるのは当然です。がしかし、軍拡を始めるとその先にある世界は絶望が見えてきます。得をするのは軍需産業で潤っている国だけですし、力で見栄張って喜ぶのは権力者だけであることは今の世界の状況からして至極当然。

だって戦争は殺人ゲームなんですよ...誰だって人の命を兵器で奪いたくないし、殺されたくもありません。だとしたら軍備の増強は止めるべきだし、あくまで粘り強い外交の力を試すべきだと思います。ロシア、北朝鮮、中国に対して会話が成立するなんて無理だと決めつけないで、唯一戦争を放棄し平和を宣言した日本だからこそ出来るんじゃないかしら。そして被爆国であることを世界にアピールすることも説得力があると思う。

毎年毎年、何十年も役人の書いた文章を棒読みするこの国のトップの人達にはとても期待は持てませんから、この国の住民一人一人が起ち上がらねばといつも思うのですが...この国の人達平和呆けしてなかなか上手くいきませんな。

ウクライナの現状を写す映像、証言から平和への希求を探る方法だってあるし、嘗ての日本がアジアの各地を侵略し、結果的に悲惨な敗戦に追い込まれた過程から学ぶことだってあると思う。

それにしても、未だ止まぬ争い...ほんまにニンゲンアホですな!

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77年目の8月15日の夏空

2022/08/10
【第1649回】

「古くてあたらしい仕事」島田潤一郎著を読んでいる。小さな声を届けたいと言うことで2009年に東京吉祥寺で出版社を立ち上げた人である。若い頃作家を目指しバイトしたり就職もしたが定まらず、31歳になったのをきっかけに50社に就職願いを出すも不採用通知が来たという。すっかり自信をなくし自殺も考えたという。そんな時の唯一の救いが本だった。

 

「サルでもわかる」とか、「一日で身につく」というのは、ぼくにとって本である意味がなかった。そんな知識は、スマートフォンでじゅうぶん事足りる。それよりも、一回読んだだけではわからないけれど、ずっと心に残る本。友人に話したくなるけど、上手く伝えられなくて、「とにかく読んでみてよ」としかいえない本。ぼくの孤独な時代を支えてくれた大切な本。ぼくが死んだあとも残る、物としての本。

 

こんな思いで一人出版社「夏葉社」を創設した。不特定多数に宣伝する方法には興味がなく「本当に必要としている人」に本を届けたいというシンプルさがとてもいい。

考えてみれば仕事の核となるものはその人の個性である。仕事の堅に合わせるのではなく自分には何が出来、何が出来ないかを考え続けて日々の試行錯誤をしながら創っていくのだが、そこにはずば抜けた能力なんて必要ない。ノウハウや特別なコネクションも関係ないはずだ。それよりも、なにをやるべきか。もっといえば、今日、誰のために、なにをするか。

仕事の原点はいかなるときにもそこにあるということを肝に銘じたい。

芝居創りも然り!

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夏のスカイツリー

2022/08/08
【第1648回】

77年目の広島原爆の日...いつものようにセレモニーが行われていました。地元の人達の切なるメーセージに比べて、なんの工夫、やる気のない歴代の首相の言葉。広島出身の岸田さんだからこそ、あんたの出番じゃないの?とハッパ懸けたいところだが役人の書いた文章を無感情で読むだけでございました。世界で唯一の被爆国だからこそやれることたくさんあるにも関わらず、アメリカの核の傘で守られてることを言い訳に核廃絶に向けて積極的な行動をしなかったことから脱却をすべきではないか...ロシアのウクライナ侵略でプーチンが核使用をほのめかす発言、中国の台湾への圧力、北朝鮮の更なる核開発などなど世界の状況は大きく変わっています。核抑止力なんて言葉も、もはや死語に等しいくらい。いざとなれば、アメリカだって日本を守ってくれるかどうかは怪しい話だと思った方がいいくらいの予測不能でバカげた軍拡競争。悲しいかな、今後世界は独裁者が支配する国が増え続け核を含め軍事力でお互いを脅しあう悲惨な地球になっちゃうんじゃないかしら...

明日は長崎に二発目の原爆が投下された日です。悲観ばかりしてもいられません。若い人たちの中から今の現状を変えようという動きも出てきています。政治に期待するよりも閉塞状況に風穴を開けようとする若い力に期待したいものです。そして何よりも、この原爆の日だけではなく常日頃から戦争の不条理、平和の大切さに繋がる回路をいつも開きながら思考、行動することが大切でございます。

ボケっとしてたら...権力者の思う壺でございますことよ。

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こちらの鉄砲はOK
(テッポウユリ)

2022/08/04
【第1647回】

昨年、最下位になった我が心のライオンズなんと今日の時点で首位でございます。今年特筆すべき点は投手力の安定感です。OBの豊田コーチのチカラが大きいと思います。昨年までは見てられない弱体投手陣、一試合平均4点~5点は覚悟しないと言う有様ですから、山賊打線なんて言われた打撃陣もそうそういつも打てるわけじゃありませんから下位に沈んでもおかしくない状態でした。一転、今年は一試合平均2、5点ですから自ずから勝率は上がるってもんでございます。中でも試合後半に出てくるリリーフ陣が素晴らしい。本田、水上、平良、増田などなどで相手チームもなかなか打ち崩すことが出来ない。三割打者が一人もいないライオンズでも3点~4点得点すれば勝てる公算は大である。

昨日のオリックスの試合でも、森の2本のホームランで十分勝てる予感がするんだからこれまでのライオンズとは様変わりしたチームに思えてしまう。それとライオンズのチームカラーも自由奔放で選手たちが楽しみながらプレーをしています。時には打てないのにニヤニヤしてる山川選手なんかにムッとするときもありますが、まあ30本のホームランと64打点をたたき出してるんですから良しとしときましょう。

それにしても、ヤクルトの村上宗隆、22歳にして5打席連続ホームランの日本新記録を達成。ロッテの佐々木投手、オリックスの山本投手ともども将来は大リーグに行くんだろうな...今日も大谷翔平選手が1918年のベーブ・ル―ス氏以来104年ぶりの「2桁勝利&2桁本塁打」を目指して出場したんですが6回途中で降板し達成ならず。いつも思うのだが、さすが大リーグ、スピードとパワーに圧倒される。ライオンズから行った秋山選手も活躍できなかったのが良くわかる。やはりイチロー選手は別格だったんですね。

コロナと共生しながらのプロ野球、なかなか大変ですがファンのために頑張って頂戴な!

トム・プロジェクトも9月から始まる「風を打つ」の稽古が始まりました。いつどこで誰がコロナ感染するか?戦々恐々たる思いで過ごす日々でございます。

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JR新宿新南口

2022/08/02
【第1646回】

これだけ暑けりゃフラメンコがお似合いだとばかり、東京芸術劇場で北原志穗フラメンコリサイタルに出かけました。スペインの灼熱の太陽の下、嗄れ声のカンテと、叩きつけるギターの音色で踊り狂うダンサーのしたたる汗を見る度に、これぞスペインという光景を何度も目にしたおいらにとってはたまらん祝祭の出来事でございました。

今回のリサイタルは、アートを重視するよりも沢山の子どもたちと一緒にスペイン的なるものを楽しもうという意図で企画されたものでした。フラメンコをどのように解釈するかは人それぞれだと思いますし、要は理屈ではなくフラメンコなるものを楽しめじゃいいじゃんとおいらは思います。アンダルシアに住んでいたおいらが知ってるフラメンコは、居酒屋で三々五々集まった酒好きなおっちゃん、おばちゃんが自然発生的に歌い出し踊り出すってなわけで人にどう思われようなんて気持はさらさらありまっせんでした。

今回も舞台に出て表現することが楽しく嬉しそうな子どもたちの身体がキラキラしてたことこそがスペインそのものだった気がいたしました。

もう随分とスペインもご無沙汰しています。先日もNHKBS「世界ふれあい街歩き」でアンダルシアをやっとりましたが、町の住民さん変わらず他人に耳を傾けず自分の主張を嫌味なく楽しく話してました。今日一日が良ければすべて良し!この心意気で生きてりゃ人生まあ捨てたもんじゃございませんことよ。

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こんな時こそ、大地にしっかり根を張って!

2022/07/29
【第1645回】

戦前の日本映画の名作「無法松の一生」を鑑賞。1943年制作、稲垣浩監督、伊丹万作脚色、宮川一夫撮影という最高のスタッフに恵まれ、主人公無法松を坂東妻三郎(バンツマ)が見事に演じている。戦後に三國連太郎、三船敏郎、勝新太郎なども演じているがバンツマの富島松五郎がぴったりだ。純粋無垢でありながら直情径行という役柄なんだが、他の三人の役者は何か一癖二癖ありそうでこの役にしっくりこない気がする。特にこの映画の軸になっている陸軍大尉吉岡家の未亡人よし子に淡い恋を抱く心情をバンツマは繊細に演じている。他の役者さんではなんだか不自然な気がしてならない...未亡人に本気になっちゃうんじゃないかしら?

この映画で目を引くのは、宮川カメラマンが人力車の車輪を何度もオーバーラップさせ主人公の切ない思いを重ね合わせている点である。この時代にしては、かなりシュールな手法ではなかろうか。戦後、『羅生門』『雨月物語』などの傑作を手掛けるのも十分うなづける。

この映画のヒロイン吉岡よし子未亡人を演じる園井恵子が清楚な美しさを魅せてくれる。1930年に宝塚少女歌劇に入団。1942年、宝塚退団後は新劇女優に転向。本作への出演は、候補になっていた女優が妊娠したためのピンチヒッターだったが、映画の大ヒットによりその名は一躍全国に知れ渡った。1945年8月6日、当時所属していた移動劇団「桜隊」の活動拠点だった広島市で原子爆弾投下に遭い、同月21日に32才で死去した。

ここにも戦争による才能豊かなアーチストの喪失を知ることが出来る。

おいらの映画少年時代の悪役スターだった月形龍之介、日活で活躍していた長門裕之なんかも出演しており、映画全盛時代を思い起こさせてくれる。

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神田川に全員集合

2022/07/27
【第1644回】

昨日はプロ野球オールスター戦があった。最後を決めたのは日本ハムファイターズの清宮幸太郎選手。この誰も思わなかったこの選手が、サヨナラホームランなんてところが野球の面白いところだ。高校通算111本塁打の史上最多記録を引っ提げて4年前にプロの世界に入ったのだが、なんとなく鳴かず飛ばずの成績で終始してたのが、新庄監督が就任し減量を言い渡され、今シーズンはやっと二けたのホームランを打つようになったばかりだ。若い選手は指導者次第でがらりと変わる。その点、中日の根尾選手は何だかかわいそうな気がするね。おいらもあまりタイプではない立浪監督に守備位置を何度も変更させられ、挙句の果てにピッチャーなんて大丈夫かしら?阪神の藤浪投手もいまだ実力発揮とはいいがたい。

どの世界も同じ、どんな環境でプレーできるかが大きなカギとなってくる。我がライオンズの選手は自前の若手が次から次へと育ってる分、いい環境にあるのでは...なんせ親会社にあまり資金がないのでこうやって維持するしかないんだが。大リーグから帰ってきた秋山選手も迎えることが出来なかった金欠球団でございます。出ていくばかりで戻りなしのなんとも寂しいチームになってしまいましたが何とかパリーグ2位につけてるところが面白い。大枚はたいて選手を集めても下位に沈んでるジャイアンツ、ライオンズの選手をかっさらてもいまいちの楽天、選手個々の給料がけた違いに高すぎるソフトバンクだってぶっちぎりに強いわけではない。

金で買えないこともある!これを見せつけてくれるプロ野球の世界がおいらの望むところだ。

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ポツンと向日葵

2022/07/25
【第1643回】

カンヌ、アカデミー賞で話題なった「ドライブ・マイ・カー」をWOWOWで昨日観ました。この作品、観る人の評価がおおきく分かれてしまうんじゃないかしら?村上春樹の短編が原作なので村上文学が苦手な人にとってはいつの間にか首がストンと落ちてしまう。一方、根強い村上文学信奉者にとっては独特な言語に加え、濱口竜介監督の映像、構成力、巧みなずらしかたで3時間の長丁場を感じさせない不思議な感覚にさせられたのではなかろうか。おいらが一番面白く感じたのは、チェーホフの「ワーニャ伯父さん」の舞台を交えながらドラマを展開させていく手法であった。しかも、日本語、韓国語、手話を交えながらの作劇は興味深いものがあった。しかも役者の感情を排除し棒読み的な表現を試みることによって表現の本質を探ることが、この映画の本質にうまくマッチしているところにこの監督のセンスを感じた。その代表格が、ドライバー役を演じた三浦透子。一貫した無表情の演技、登場してからこの子はなにかあるな?とわかってしまうのが少し残念だったかな...

それにしても、日本の映画界も若い有能な監督が世界に進出していることは嬉しい限りだ。

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百日紅

2022/07/22
【第1642回】

セミが鳴きだした、この鳴き声を聴くと夏の季節を一段と感じさせてくれる。そして儚い一生で終わってしまうセミ君に、この夏を存分に生き切って欲しいと願う。

劇団トラッシュマスターズの「出鱈目」を観劇。若者の心情をべったりと描き出す小劇場が多い中、毅然とした姿勢で社会派劇団としての36回目の公演である。今回は現実に起きた表現の不自由展で話題になった言論と表現の自由と行政との対立を素材にしたドラマである。各々の意見、論調を芝居にするのはなかなか難しいのだが、作・演出の中津留章仁はエンタメ要素も絡めながらうまく構築している。2時間半の長丁場、観客を飽きさせない劇作術にはいつも感心させられる。そして、しばらく出演していなかったこの劇団の創立メンバーである、ひわだこういちが前回に引き続き出演し、これまた久しぶりのカゴシマジローとの競演がなんとなくほっこりさせてくれる。それにしても、コロナ禍のなかで演劇活動を継続していくのはなかなか困難な作業である。すべての作業が生身の人間が直に接しないと成り立たない演劇の宿命に、現場は日々戦々恐々たる思いで過ごしているのである。

なんと東京は3万人超え、そしてプロ野球、大相撲の世界でも感染者続出。これまでのルールーで社会は回っていくであろうか?甚だ疑問に思わざるを得ない。

トムも来月から3本の芝居を予定している。どうか演劇の神さん見守ってちょうだいな!

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夏の夕焼け

2022/07/19
【第1641回】

三連休の行楽地での沢山の人出を見て、こりゃコロナ感染者増えますがな...東京でも演劇の公演中止が相次いでいます。長いこと稽古していざ本番というときにあちゃ!ってどころか制作者は踏んだり蹴ったりでございます。前にも書きましたが、日本製のワクチン、治療薬の開発に力を注ぐわけでもなく3年近く何やってたの?いつものようにこの国の政治、行政の未来に対する想像力のなさに愕然といたします。

昨日、ここんところ何年もお世話になっている理髪店に行って参りました。浜田山にある「HairSalon WAKATSUKI」、穏やかなご夫婦二人が平成19年にオープンしたこのお店は心落ち着く癒しの場でもあります。店長一人で多くの方々の髪を扱ってきたと言うことは、この人達の人間観察をしたということです。きっと占いなんかもできるんじゃないかしらと思っちゃいます。店長にもぜひ読んでもらいたいと思い、荻原浩著「海の見える理髪店」を勧めてこともあります。いろんな性格の人たちとの接客のコツもなかなか大変だろうと思いつつ、理髪店を舞台にしながら数多くの相手役と対峙して数々のドラマを生み出したのではなかろうかと想像しちゃいます。

2002年に緒形拳さん主演で創った「子供騙し」も南三陸にある理髪店での話でした。緒形さんがおいらにぽつりと囁いてくれました。「男の顔はヘアースタールで決まりだよ...」天下の名優が言うんだから間違いないんじゃないかしらと...いろんな美容院、理髪店巡りをして辿り着いたのが浜田山のこのお店でした。

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浜田山 柏の宮公園

2022/07/15
【第1640回】

前回レポートしました「豆café enjyu」を後にして、すぐ近くにある「槐多庵」に足を運びました。ここも窪島さんが建てた素敵な空間です。普段は閉館してるんですが6月4日~7月18日の期間、土・日・月曜日のみ浅埜水貴個展が開催されてました。

広島の日本画家である浅埜さんが窪島さんと出会って今回の企画が決まったとのこと。箱モノは建てたのだが、中に入れるものに四苦八苦しているところが多い中、積極的に若いアーチストに夢場所を提供しているところなんぞが窪島さんの若さの秘訣かも...

よくよく「無言館」の近辺を散策して分かったことは、信州の鎌倉と言われるくらい多くの神社仏閣が点在しています。どこも素朴な佇まいで偉そうな顔してないところがとっても気に入りました。おいらの推測ですが、そんな場所こそが戦没画学生の残した絵画を展示するに相応しいと思ったのではないかと...戦局厳しき折、明日の命も分からない画学生がキャンパスに思いを込めたパッションの鎮魂の場として...

この芝居を企画し、様々な困難を経て上演した後にも、ゆかりの地を旅することによって又いろんなドラマに出逢えるところが芝居の面白いところです。

それにしてもまたまたコロナ感染者が増え出してきました。三年目だというのにこの国のトップの方々の学習能力、なんともしっくり来ませんな。芝居も中止になったり、飲食店も嘆き節が聞こえてきたり、毎度のことながら録音したテープを再び聞かされてる感じでお手上げ状態でございます。

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浅埜水貴個展
(槐多庵にて)

2022/07/13
【第1639回】

前回に続き「無言館」の話です。2019年に、窪島さんが断腸の思いで閉館した信濃デッサン館が「KAITA EPITAPH(エピタフ=墓碑銘) 残照館」と名称を変え、2020年6月6日に開館した場所に移動、この日は館長不在で閉館でした。この「残照館」は画家村山槐多をはじめ、若くして亡くなった画家の作品を中心に80~100点を展示してあります。

この日はその隣に併設された「豆café enjyu」でゆったりとした時間を過ごさせていただきました。この店を三年前からオープンしたお二人が「無言のまにまに」東京公演を観劇されたこともあり足を延ばしたわけでございます。食育インストラクターの王鷲美穂さんと、せいろと糀&シュクルリール洋菓子店主宰の吉池梨恵さんの素敵なお二人が切り盛りなさるこの店、おいらとっても気に入りました。自然に囲まれた立地条件に加え、二人が繰り出す食のコンセプトにまいってしまいました。地元の食材をしっかりと活かしながら、お客様にいかに喜んでもらえるかの工夫が隅々までいきわたっていることに感動いたしました。

何事もセンス、いや己にどれほどに美学、審美眼を持ち得ているかが問われます。この感性を養う旅は果てしないものがあるとは思いますが、臆せず己を信じてあせらず探訪すればめちゃくちゃに楽しいものです。76年間、様々な体験したおいらが断言します。なんでも見てやろう、書を捨てよ町に出よう、ポジティブに行動する気持ちさえあれば、あとは勝手に血となり肉となり誰にもない自分だけの感性が出来るんじゃないかしら...

ゆったりとした芝生を前にした椅子に座り、特製のかき氷を食べながらそんなことを考えていました。

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至福のひととき

2022/07/11
【第1638回】

先月公演した「無言のまにまに」の報告とお礼を兼ねて、「無言館」館長窪島誠一郎さんが住む上田市に行って来ました。場所は別所温泉にある「上松や旅館」これが又、奇遇で昨年、窪島さんに会いに行ったときの宿であり、東京公演にはこの宿の会長である倉沢さんも知人と一緒にいらして頂きおいらに観劇のお礼までいただいた方でした。そのときに倉沢さんが話されたことですが、無言館を建てる前に窪島さんが画材を抱えて別所温泉をふらふらと歩いている様子を見て旅館に泊めてあげたという御縁でもありました。そんな御縁繋がりでの「上松や」での夕餉、いやいや80歳になる窪島さんのエネルギーと欲をたっぷりと堪能いたしました。変に枯れちゃいかんぜよ、満身創痍の身体でありながら今なお反省、悔恨も含めて人間が本来生きる上に大切な欲望がいかに大切かを窪島さんが身をもっておいらの前に曝け出してくれました。

昨年来の「無言館」、夏の太陽と緑に囲まれた環境の中で静かに佇んでいました。芝居をやり遂げた後での再訪、またいつになるかわからないけど、この館に宿る無言の魂を全国に伝えていかねばと強く思いました。それは窪島さんがこの荒れ地を開墾し「無言館」を立ち上げていく道程と同じです。何事もバトンタッチ、残されたものが引継ぎ伝えていくしかありません。80歳の窪島さんに負けちゃいられませんですばい!

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文月の無言館

2022/07/08
【第1637回】

ONE OR8の「連結の子」を観てきました。昨年、狸シリーズを2本書いていただいた田村孝裕さんが主宰する劇団の公演です。人間誰しもが内包している様々な問題を、緻密なセリフで巧みに書き込んだ田村戯曲は俳優さんにとっては触手を伸ばしたくなるのも当然だと思います。今回はトムの作品にも出演していただいた高橋長英、藤田弓子、小林美江さんも客演しているので楽しみにしていました。

家族、そしてその周辺の人間関係悲喜こもごも、日本のどの町にもある日常をとても丁寧に描いた作品でした。長英さん絶品でした...トムで昨年上演した「にんげん日記」に続いて長英節がきらりと光った演技。笠智衆さんを継ぐのは長英さんで決まりってな感じでした。写真を撮る場面での森進一の物まねはズルいズルい、おいらとの飲んだ時にやる物まね合戦で魅せる二人だけの秘密の芸だったはずだったのに一般公開しちゃって罰金もんですぞ!

藤田さん、美江さんもとってもチャーミングでしたよ。舞台でも人間性がそのまま出るんですね、ついついほっこりしてしまいました。

明後日は参院選の投票日です。またしても選挙人の半数の人しか投票しない選挙になりそうです。ある人がこんなこと言ってました。「選挙に出るようなやつには投票したくない」なんだか逆説的な発言なのだが、結構真理を突いてるようにもみえる。今日も新宿で候補者が立派なこと言ってるんだが、あんたらほんまに出来るんかい?そんな候補者見てると、冷めちゃいますがな...いやいや、いろんな意味でもこの国を変える手段が今のところ選挙でしかないので、何とか目を覚まして一票を投じるしか手がありませんがな...

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昨日は七夕でしたね...

2022/07/06
【第1636回】

50年来の友である石橋幸ことタンコから、コンサートの案内と共にこんな手紙が入ってました。

 

「プーチンとその一味の気狂い選択と蛮行はロシアを世界の極悪国にしてしまいました。そうではないロシアを知る人々にとっては言葉を失くす苦渋の時です。在日ロシアの若者に強く背中押されました″歌ってください″と。正念場なんてものが在るのなら今が私のそれかも...墓場は近い!」

 

タンコは何十年にもわたり、私費でロシアに埋もれたかずかずの歌を採集しロシアをはじめ日本の各地で歌ってきました。言語の大切さを重んじるためにロシア語で歌うことに拘ってきました。そのほとんどが庶民の生活史、恋歌、政治犯が獄中で創作したものなどなど、いまだ日本人が耳にしない歌ばかり。もともと役者であったタンコですから表現力を交えての歌声は聴くものに深い感銘を残してきました。

今回は第24回石橋幸コンサート「僕の叫ぶ声~ロシア・アウトカーストの唄たち~」7月4日の新宿紀伊國屋ホールにはたくさんのお客が来てました。タンコも舞台上から歌の合間にこんなメッセージを送っていました。今日はロシアのいい風を送りますから!そして、マスコミと西欧諸国アメリカが一斉にロシアを叩いていますが、ロシアにも戦争悪と戦っている人たちが居ることを忘れないで欲しいと...

確かに今回のプーチンの行為は万死に値するとは思うのだが、この戦争で利益を生み出してるアメリカの武器商人が存在していることも事実。すべて短絡的に物事を見るのではなく冷静に客観的に事の推移をみることしか本当の平和も訪れてこないと思います。

この日のコンサート、本当にいい風が吹き流れていました。アーチストのできることも限られてますが、こうやって少しずつでもいい...アクションからしか未来の展望はありまっせん!

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タンコ

2022/07/04
【第1635回】

先月、「無言のまにまに」を上演した両国シアターX(カイ)に行って来ました。第15回シアターX国際舞台芸術祭2022を開催中。

この日の演目は大阪のダンスグループCDS OSAKAによる「記憶の青―Microplastics Dance」総勢16名による紺碧の海を汚染した人間に対するメッセージを、自分の身体に問いかけ発信する女性を中心にしたコンテンポラリーダンス。おいらも若い頃は、現代舞踊、舞踏などなどつまみ食いしましたが、とにかくカラダを動かすことからしか全ては始まらないということは今でも変わりません。

二番目に登場した加世田剛さんの「light」は見応えありましたな。武術ダンスと銘打つだけあってこの方の動きひとつひとつにサムライ的なる匂いがぷんぷんといたしました。なるほどプロフィールを見ると全米武術大会で3度優勝歴を持つ御仁。世の中にはまだまだ未知のアーチスがわんさか居ることを思い知らされた次第です。

三番目に登場した宇佐美雅司さんの「Listen to He:art Where is the truth?」はジャックプレヴェール原作「おりこうでない子どもたちのための8つのおはなし」を宇佐美さんが構成・演出・出演した作品。俳優として修行してきたカラダをフル回転させお客を飽きさせない構成はなかなかと思いました。特に三脚の椅子を動物にみたてながら使いこなす術には、観客の想像力を喚起するには十分すぎる効果があったと思います。

それにしても、16日間様々のジャンルのアーチストを集め、全公演¥1000の入場料で実行するシアターXの芸術監督兼プロデューサー上田美佐子さんの行動力に頭が下がる思いです。表現したくても、お金がない場がないというアーチストに広く門戸を開いてカンパ並の入場料で公演するなんてこと上田さん以外に出来ないのでは...マスメディアに左右されることなく我が道をゆくプロデューサーに拍手。

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落陽

2022/07/01
【第1634回】

今日も、青空を気持ち良く飛び回る鳥たちが焼き鳥になって落ちてきそうな猛暑でございます。歩いているとふと夢遊病者の気持ちがわかるくらいのフラリンコ状態。

昨日、新国立劇場で上演している「M.バタフライ」観てきました。フランス外交官が性別を偽ったスパイである中国京劇役者に溺れていく様と、文化大革命という背景を絡ませ、オペラ「蝶々夫人」を劇中に取り入れ、1988年ブロードウェイで上演されトニー賞最優秀賞演劇賞を受賞した作品である。日本では1990年に上演されて以来、32年振りの上演。

率直な感想。まず休憩入れて3時間半出ずっぱりの外交官役を演ずる内野聖陽の圧倒的な演技力と存在感。戯曲を読み、この役を絶対にやりこなして見せようという役者魂を感じる。相手役の京劇役者である岡本圭人もまだまだという感もあるが大健闘しているのではないかと思う。要は戯曲が素晴らしい。激動の時代に人間の愛憎ドラマを巧みに取り入れ、この複雑怪奇な現代にも十分通用する作品に仕上げたスタッフ、キャストに拍手を送りたい。

ここで、おいらの何処までも拭いきれない異見。皆さん素晴らしい演技をしているのだが、どうしてもフランス人に見えないのである。おいらがこれまで100本近く創作劇に拘ってきたのもここにある。翻訳劇を観劇しているときに付きまとう、日本人役者が演じる違和感...と言って、翻訳劇を否定しているわけではありません。海外の劇薬に接したいという気持ちは芝居を創るものとしては常に持っていることは当然至極。

休憩中のロビーで今回の演出をしている日澤雄介さんのお父様にばったり...ここのところ日本を代表する役者さんと意義ある仕事をしている息子さんの活躍を喜んでいらっしゃる様子でした。遅くともいいではありませんか...生んでくれた御両親に親孝行してこその人生ですぞ。

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新国立劇場

2022/06/29
【第1633回】

連日の暑さの中で、道行く人達の表情がなんとなく苦悶に満ちた感じがする...暑さのせいもあるのだが、いまだ止まぬウクライナへのロシアの執拗な攻撃。武器庫破壊という名目で住居、遊園地などといった無差別攻撃の映像を見るたびに心が折れてしまう。当然のことながら、テレビでウクライナ情報ばかり流すわけにはいかず、ごく日常のたわいのない番組を見ていても、この時間ウクライナで起こっていることを想像してしまうとなんだか虚しくなってしまう。

今週の日曜日は「ポツンと一軒家」の2時間特別番組。山奥で自然に囲まれ自給自足の生活をしている家族の姿をみるにつけ、世界の国のどの地区でもこんな自然で無理のない生活が出来ればどれだけ幸せであろうかと思った...当然、こんなことはありえない世界情勢ではあるのだが、このスタイルに少しでも近づけるヒントはこの番組には仕込まれている。夢のような話だと思わず、冷静に考えれば本当の幸せが身近に感じてくるかもしれません。

もう、競争は止めましょう!行きつく先は軍拡、果ては戦争、人間の幸せなんぞは千差万別なれど、やはりのんびりと空を眺め、道行く草花を愛で、身近な人を大切にして、生きとし生けるものすべてに感謝することからしか幸せは生まれませんことよ。

世界にいろんな宗教あれどホンマに役立ってるのかな?どの宗派の経典にも愛が基本になってるはずなんだが、この世界の状況をみれば真逆の憎悪に読み違えてるんじゃないかと残念ながら思ってしまいます。

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穏やかな風景

2022/06/27
【第1632回】

いやいやこの暑さはなんだ?といっても地球に生息するニンゲンどもがもたらしたものだから文句も言えまい。利便性を追求した末の地球温暖化、ロシアの侵略戦争でまたもや火力発電に頼ろうとしている現況、そして原発依存の国が加速しそうな勢い。こりゃどうにもならんと、世界の皆さん頭を抱えている中での物価高、先ずはこの国7月10日に参院選があるので現況を変える一票を投じることにしませんか...

先週の週末は2本の演目を観劇。1本目は「氷川きよしコンサート2022in明治座」、確かに歌は上手いです。五木ひろし以降、演歌の世界を引き継ぐのは彼しかいないと思いました。あの圧倒的な声量、歌唱力は天性のものか...この日歌った中での新しい発見、ヤマザキマリ作詞「生まれてきたら愛すればいい」シャンソン風のこの曲は絶品でした。この道を進めばあの美輪明宏さんに近づけると思います。第一部は芝居だったんですが役者としてのきよしさんはまだまだという気がしました。こちらも美輪さんに教えを乞えばと勝手に思っちゃいました。きよしさんの才能十分わかってますので、今日くらいところで満足しちゃもったいないと思った次第です。

2本目は劇団桟敷童子の東憲司さんが書いた文学座公演「田園1968」タイトルにあるように1968年のある地方の家族の話である。1968年と言えば、ベトナム戦争、パリ五月革命、黒人指導者キング師暗殺、ロバートケネディ暗殺、文化大革命、チェコスロバキアソ連侵攻、そして日本では世界の激動の中、反戦運動が一気に高まり学生労働者による闘争激化。22歳のおいらもその波にのまれ騒乱状態の新宿の街を日々うろついておりました。すべてが刺激的であり生きてる実感をそのまんま享受した次第です。

この時代のカルチャーも勢いがありました、この芝居の中でも出てくる洋画「俺たちには明日はない」は格好良かったな。日本映画では「神々の深き欲望」、東映仁侠映画、音楽はビートルズにフォーク、出版界では吉本隆明「共同幻想論」つげ義春「ねじ式」、演劇ではアングラ芝居の出現などなど...

今回の芝居を観ながら、考えてたことはこの芝居東君が演出したらまた別の作品になってたんだろうなと...芝居はまさしく変幻自在、そこが面白いところです。

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梅雨明けのカシワバアジサイ

2022/06/22
【第1631回】

おいらが住んでる杉並区長選挙で初の女性区長が誕生しました。3期務めた現職になんと190票差で勝利したというんですからたいしたもんでございます。先の衆議院選挙でも長年杉並区の顔役であった自民党の石原伸晃氏を、新人の女性議員が議席を奪ったんですから、この杉並区民の政治意識は高いんじゃないかしら?保守陣営から言わせれば何も分からん奴らがただ掻き回して騒いでるだけなんてことかも知らんけど、もうそろそろおじさんたちの癒着政治からおさらばしないとえらいことになっちゃいますがな。この国の20年の歩み惨憺たるものです。給料は上がらないし物価を高くなるし、世界の先進国の中でもすべてに伸びしろが無くお先真っ暗の状態なのに、いまだに自民党に権力を握られっぱなし。勿論、対立する野党勢力のチカラのなさが大きな原因なんですがね。

と、こんなこと何度言ってもこの国の形は変わり様がありません。じゃあどうすれば?もっと選挙に行かなきゃならんのよと口酸っぱくいっても行かないこの国の駄目な成人たち。今回の杉並区長選挙もただただ普通の若い娘さん、子育て真っ最中のママ、未来の日本を憂いてるおばちゃんたちが手弁当で応援し、今回の選挙に立候補するため杉並区に転居したばかりの岸本聡子(47歳)さんを当選に導きました。これからは女性の時代です...世の中のオトコたち、しっかりせんといかんですばい!

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杉並区を流れる神田川

2022/06/20
【第1630回】

先週の週末は、劇団桟敷童子「夏至の侍」を観劇。久しぶりの青空で、錦糸町から「すみだパークシアター倉」までの徒歩15分の道程は、途中、大横川親水公園の紫陽花も色鮮やかで気持のいいものだった。墨田区の下町情緒に似合う劇団が桟敷童子である。今回も九州の小さな町の金魚屋さんの話だ。いつものような大がかりなセットの中で劇団員がのびのびと動き様はいつ見ても気持ちが良い。

今回のゲストは音無美紀子さん、若い俳優陣に混じっても違和感がないどころかなかなか馴染んでいましたよ...大病もしながらもいつも前向き、演技に対しては妥協することなく真摯に向き合う女優のお手本みたいな方である。トム・プロジェクトでも、すでに3本の作品に出演して貰っている。2014年に初演した「萩咲く頃に」は7年間上演し、2019年の作品「風を打つ」は今年9月~10月に再演が決まっている。確かな演技と清潔感、そして華やかさと庶民性を兼ね備えた存在感のある立ち姿に多くの観客は魅了される。

ベテランの俳優さんが出演したくなるのが劇団桟敷童子、代表である東憲司さんの描く世界と心底から芝居が大好きな俳優陣の魅力に惹かれてしまうのも分かる気がします。

この世の中の流れと同様、すべてがお洒落で合理的になっているなか、頑なに人間臭さをモットーに演劇活動を続けるこの劇団には、おいらとしては応援し続けたくなっちゃいますな。いくつになっても、目線はいつまでも少年でありたいから...

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大横川親水公園のアジサイ

2022/06/17
【第1629回】

先週の6月9日「無言のまにまに」に来て頂いた「無言館」館主、窪島誠一郎氏の新刊本「流木記」読了。終演後に、「今度出版した本、立ち読みで最初のページ読めば大丈夫ですよ...」なんて意味深な言葉を残し劇場を後にされました。早速購入し読み始めたところ、ああこのことかと...冒頭、2018年8月10日、ペニスをうしなった...と書かれてありました。ン百万人に一人いるかいないかという部位に発症した「陰茎ガン」により切除したという。これまでにも多くの病を抱え80年近く生きてきた窪島さんにとっての言葉で言い尽くせない喪失だったに違いない。そして若くして亡くなった、どちらかといえばマイナーな画家の絵を集め最初に建てた「信濃デッサン館」の売却の無念。

窪島さんの本はこれまでに何冊か読んだのだが、今回も実母との30数年後の再開の場面は目頭が熱くなる。自分を棄てた実母への許せない心情と、捨てた実母の慟哭、これも戦争という時代が引き起こした不条理。再開後に自死した実母の日記には母親の溢れんばかりの愛を感じて痛ましいくらいだ。

波乱万丈の生きざまを過ごした窪島さんがなぜ戦没画学生の絵を集め「無言館」を建てたのか?窪島さんはこう書かれています。

 

幼い頃から養父母や生父母に抱いていた誤解や偏見を解くこと、その確執を解くことなのではないかと考えているのです。そんなことと戦没画学生と何の関係があるのだといわれそうですが、やはり私は、あの戦争のなかを行きぬいた父や母のことをあまりに知らなすぎたのです。それは養父母に対してもいえることでした。あの戦争下に「新しい命」を産み、育てることがいかに困難で、しかし同時にそれがどんなに誇らしくかけがえのない人間の営みであったかということを、私は最近しみじみと考えるのです。そして、今自分にできる唯一の「戦後処理」といえば、そんな無限の愛情をもって産み育ててもらった命が、生きたくても生きられなかった多くの戦死者の命の上に存在していることを、あらためて想起させてくれるのが戦没画学生たちの絵であることに気づかされたのです。

 

窪島さんは何度も口にしています。「ひょっとすると、彼らの絵を探したのは、ぼくではなくて、ぼくの方が、探し出してもらえたような気がするんです...」

完璧、完全な人間なんてこの世にだれひとりとして居ません。どこかしら欠けた部分を探し求める旅そのものが生きることだと思います。

「無言のまにまに」再演できることを願っています!

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梅雨時の夕焼けはキレイ

2022/06/15
【第1628回】

おいらが住んでる杉並区の区長と区議会議員補欠選挙の投票日が今度の日曜日。12日に公示され一週間後に投票という短期で何の判断すればいいのかしらと言いたい。現区長がどんなことしてるのか、他の区とどんな違いがあるのか、今一つはっきりしない。一方、新たに立候補している人の経歴、何故今回立候補したのかも新聞、区報の記事だけでは判断しようがない。いずれにしても、この国の首長、議員の日頃の行動が見えにくい中での選挙では投票率も50パーセント前後であることも自明の理と言ったところか...以前は広報車がうるさいくらい名前を連呼して、ああ選挙だなという一応の雰囲気を醸し出してはいたのだが、コロナ禍と言うこともあってか静かな街の佇まい。これじゃ投票率も30パーセント前後に落ち着くんじゃないかしら...このところの地方選挙の投票率は大体こんなもんでございます。

東京市長などを務めた後藤新平がこんな言葉を残している。

「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すは上とす」

今の政治家さんは、この逆のケースの人が多いんじゃないかしら。人の道を外し恥ずべき行為をしても厚顔無恥。そういえばええ人相した政治家が少なくなり絵になりませんし、皆悪代官が主役の政治ドラマになっとりますがな。昔の予算委員会の与党と野党との丁々発止のやりとり、なかなか見応えがあったドラマだったのだが、今や予定調和のつまらん出来レースになっとります。

投票まであと5日、頭を悩ます選択でござりまする。と言う間もなく、先程、参院選も7月10日に決定...なんとも盛り上がりがない梅雨時に相応しい政治の季節です。

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今日の紫陽花

2022/06/13
【第1627回】

昨日、「無言のまにまに」東京公演、無事千秋楽を迎えることが出来ました。いやいや、今回もスリリングな出来事もあり一日一日が緊張する日々でありました。こうやって生モノの仕事やってると最後は神のみぞ知るなんて心境になってきます。そして仕事をやってるキャストスタッフを信じることの大切さを痛感いたしました。今回の芝居を成功するためには、日常の生活も油断なく過ごさねばとシビアな状況に追い込まれ、心身ともどもなかなか開放できずストレスが溜まっちゃうなんてことも多々あります。すべてコロナのせい!とわかっていてもどうにもならない2年6カ月...もうそろそろ、場所によってはマスク外してもよろしいんじゃございません?今日あたりの新宿、数人の若者たちは堂々とマスクをしないで街を闊歩しておりました。ちょいと横目で、嫌な顔してるおばちゃんの視線なんぞどこ吹く風、これでいいんです!いつの世も若い力で世の中は変わっていったんですからと思いたいところだが...

「無言のまにまに」東京の全ステージ観劇しました。芝居はまさしく生き物でございます。昨日より今日なんて調子でよくなってはいきました。と、同時にここはもう少し工夫の余地ありなんてシーンもいくつか見つけることも出来ました。芝居は総合芸術、役者の演技だけでは成立しません。照明、音楽の出し入れのタイミングで芝居全体の良し悪しが決まることがあるのも至極当然。すべてが上手くいった時こそがベストな芝居です。大切な時間とお金を、この芝居に投じたお客様にはベストな芝居を提供するのがプロの仕事です。

両国での9日間、梅雨入りと言うことで心配したのですがなんとか乗り切ることが出来ました。関取が小さな自転車に乗って買い物に行く姿に触れたり、劇場の隣にある回向院(えこういん)には、あの鼠小僧次郎吉の墓があったりで、この町は下町風情が残った粋な町でございました。

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両国吉良邸跡
(本所松坂町公園)

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両国と言えば相撲部屋

2022/06/10
【第1626回】

「無言のまにまに」昨日で6ステージを終えることが出来ました。そして、昨日は「無言館」の館主である窪島誠一郎氏が長野県上田市から来られました。窪島さんに会いに行き今回の芝居の許可を頂いたものの果たしてどのように感じられるか?プロデューサーとしては、はらはら、どきどきもんでございます。「この芝居は僕が生きてきた過去、そして無言館を作る意図が的外れ...」なんてことになったら以降の公演も出来なくなる可能性大ですから...終演後の窪島さんの反応は?と心配してたんですが、今回の全員野球で創りあげた渾身の舞台、窪島さんにも理解して頂いた様子でほっといたしました。終演後に出演者と和やかに談笑する姿に、本当にやって良かったというのが正直な気持ちです。

これまでも多くの創作劇を創ってきたのですが、実際のモデルの方が居て、しかもご存命と言うことになれば相当の神経を使います。演劇はあくまでフィクションではあるのだが、どこまで事実とフィクションを擦り合わせていくのか?戯曲を書く作家とプロデューサーとの喧々諤々も、芝居が成功すれば一件落着でございます。

東京公演も今日を入れて残すところ3ステージ。18日には唯一の地方公演が山形県大石田町で上演。芝居も種まきです...良質な芝居を少しづつ全国で公演し続けていけば、この国の形も少しはましなものになるんじゃないかと微かな期待を持ってはいるんですがね。

両国と言えば、ちゃんこ料理を出してくれる店が多数あります。そのひとつ「ちゃんこ巴潟」の店前で呼び込みをしてた人をパチリ、多分元関取だと思い声を掛けると「ごっつぁんです!僕の得意技は、見かけ倒しです。」なんてジョークを飛ばしておりました。

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ちゃんこの両国

2022/06/08
【第1625回】

北朝鮮のミサイル発射に対抗して、韓国軍合同参謀本部は6日、米韓両軍が同日に地対地ミサイル8発を日本海に向けて発射したと発表。いやはや、目には目を歯には歯をですな。核をどれだけ保有しているかが、自国を守る唯一の防御手段と言うんですから恐ろしい世界なったもんでございます。これだけの兵器に要する費用で、世界の飢餓も無くなるし、貧困層の減少も果たせるしと、いろいろ考えられるのだが...と理屈で分かっているもののそうにならないのが世の常。どんな時代にも、欲の塊が肥大し権力者が出現することで争いの火種が消えないことが大きな原因だと思います。この歴史的な事実は未来永劫なくなることがないことは悲しいかな間違いないと思います。そうと分かっていながらも、時の権力者にNOを突きつけている人たちが必ず存在していることも、人類がなんとか営みを継続してることで証明されていることが唯一の救いです。

そうなんです!諦めちゃいけません、誰かが止めなきゃ世界の人たちが武器を頼りに生活しなきゃいけない笑いのない悲しみと苦痛に満ちた世の中になっちゃいます。

6日(月)「無言のまにまに」の会場に、52人の小中学生が来てくれました。おいらも後方から観てたんですが、子供たちが食い入るように舞台を観ていたのが印象的でした。この芝居を通じて戦争のもたらす悲劇を少しでも感じて平和への希求心が芽生えてくれるのを願うばかりです。

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両国の紫陽花

2022/06/06
【第1624回】

6月4日に両国シアターカイで幕を開けた「無言のまにまに」昨日で無事2日目を終えることが出来ました。連日多くの方に来て頂き嬉しい限りです。やはりウクライナ侵略をきっかけに、戦争に対する様々な思いが演劇の現場にも顕著に表れているのではなかろうか。アンケートには「戦争は絶対に駄目!」と強い筆圧で書き込められているのが印象的でした。この芝居の中には勿論、家族をめぐるドラマも伏線として描かれています。血がつながっていなくとも、親が子を愛しく思う気持ちはどんな時代であろうとも永遠不滅なものであるという思いが語られています。

今回の芝居でとても印象的なセリフがあります。「無言館」を建てるにあたって戦没画学生の絵を集めるために立ち寄った遺族が語る言葉

「私はあなたが個人でお作りになる美術館だと聞いて兄の絵を預けようと...。兄は...お国の命令で戦地に駆り出されて死んだんですから。その兄の絵をまた国に預けるようなことはしたくありませんでしたから。」

過ちを犯した嘗ての日本の国に対する痛烈な一言だと思います。今まさにロシアで大義なき戦いで無念の死を強いられたロシア兵士の遺族も同じ思いではなかろうか...

一見穏やかな日本の現風景。両国にも太平洋戦争中の東京空襲で亡くなった方の遺骨が納められた「東京都慰霊堂」があります。「無言館」同様、こんな建物を必要としない平和な世の中にしたいものです。

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両国

2022/06/02
【第1623回】

昨日、今週の4日(土曜日)に初日を迎える「無言のまにまに」の最終稽古を観てきました。

5月28日に観た通し稽古に比べ随分と流れがよくなっていました。要するにこなれた感じですね...このこなれたってのがクセもんでございます。調子よく流れに身を任せるのは演じてる当人はとっても気持ちがいいんですが、上面だけの表現になる危険性を含んでいます。同じセリフを喋ってはいるんですが、相手役のその日の出方によって当然返しの言葉の音韻、気持ち、仕草も変わってくるはずです。慣れてはいけないんです...常に新鮮な身体で受信し発信してこそ、鮮度の高い舞台を届けることが出来ると思っています。

生の役者のザラザラ感、ゴツゴツ感が舞台の醍醐味であり、予測不能な展開で観客をいい意味で裏切る芝居こそがベストだと思っています。

水無月になりました。古くは清音。「水の月」で、水を田に注ぎ入れる月の意味です。梅雨、紫陽花、暑い夏の到来を前にして何となく昂ぶる気持ちを抑えてくれる月かもしれません。

未だにコロナも収まらず、ウクライナの情勢も一進一退...そんな状況下で演劇をやり続ける意義は?いろいろと考えますが、水の流れと同じで一旦止めてしまうとなかなか元には戻れない。生きることはアクション、動けば新たなことが視えてくるはずです。

誰も歩いていない帰路の道でマスクを外すと、夜の大気のなんと美味しいことか!当たり前のことが当たり前に感じられない異常な状態が一日も早く終息することを切に願う...

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水無月の空

2022/05/30
【第1622回】

先週の土曜日、6月4日に幕が開く「無言のまにまに」の通し稽古を観てきました。今月の2日から始まった稽古の充実振りが感じられる現場でした。ウクライナへの激しいロシアの侵略のまっただ中である今、第二次世界大戦中、大好きな絵を描きたかったにも拘わらず戦地で無念の死を遂げた画学生の絵が映し出される中、俳優陣はそれぞれの思いで各シーンを演じていました。今回の芝居も、声高に反戦を訴えてるのではなく、名もなき市井の人達の日常を通じて平和であることの大切さを伝えることが出来ればと思っています。

今回のウクライナの件、この国にも遠い国の話ではないかと思っている人が居ると思います。とんでもございません!こうやって戦争はひたひたと身近になっていく怖さを実感し想像力を働かせねば後の祭りでございます。

どんな些細なことでもよいので、戦争にまつわる情報をキャッチし己の範囲でアクションをおこすしかないのでは...本当に戦争は駄目です!この当たり前のことは誰しもが分かっていながら無くならないのが戦争と言う不条理、片や軍需産業で儲かる会社、国。

昨日もテレビでの「ポツンと一軒家」、欲を捨て自然と共に生きる人たちの笑顔、こんな集合体であれば戦争なんて起きるわけがない...そりゃそうだ!美しい空、清冽な湧き水、自分が育てた健気な花々、そして母なる大地、そんなもんに囲まれてりゃ邪心なぞ沸いてきませんがな。

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2年振りに咲きました。
(故綿引勝彦さんに13年前に頂いた花)

2022/05/27
【第1621回】

来週の土曜日に幕が開く「無言のまにまに」稽古も佳境に入って参りました。こんな世界の状況だからこそ上演せねばと強く思う作品です。

いつも思うことだが、どれだけのお客様が来てくれるだろうか?2020年の初春に始まったコロナ禍によるパンデミック、演劇の世界でも大変な影響がありました。今までは楽しみに来ていたお客様の足が遠のき、劇場で挨拶代わりにお互いの無事を確認することも出来なくなり寂しい思いをすることも度々です。コロナ感染を恐れての控えであればいいのだが、これだけ長引くことによって「もういいや...」なんて気持が芽生えてしまい面倒になるなんてことが起きてる気がします。これは芝居に限ったことではなく、この先コロナが収束し、日常が完全に戻ってきたときに、旅をしたい、外食したい、みんなで飲食してお喋りしたいという気持も戻ってくるのだろうか...そんな一抹の不安も覚えるが、同時に人類が営々と築いてきた楽しい習慣が2年半にわたる異常事態によって全く変わってしまうなんてことはないんじゃないかという期待もある。

いずれにしても今回のパンデミックで人との対し方、社会に対する考え方が大きく変化したことは紛れもない事実である。ストレスが溜まり他人、社会に対する寛容さがなくなっていくことが一番心配だ。先日、政府の発表で公園での散歩なんかのときはマスクを外してもいいとの達示があったにもかかわらず、ほとんどの人はマスクを着けたまま歩いている。そのなかで稀に外して散歩している人に対する眼差しが、なんだか正義に満ちた不寛容な様相を感じる...こんな些細なことから分断が始まり、しいては争いに発展する。おいらも含めて心しておきたい。

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朝雨の中のアネモネ

2022/05/25
【第1620回】

最近というか、このところ芸能関係者の死に触れるニュースが続いている。いや、芸能関係者ばかりではなく自殺者が増えているという。人の悩みの深さは他人がどれだけ考察してもわかり得ない。死に直面した当事者に対してどんなアドバイスをしてもお互いの意見が交わることはない...いずれにしても人の命はどんなものよりも尊いし重い。この世の中に人間として生まれて来たことが奇跡だと思っている。戦争、天災、事故で無念にも死んでいった人達のことを思えば一層、懸命に生きねばと思うのだが、人間の持つ弱みにつけ込んで死に神は突然やってくる。死に神を前にして、どれだけ「死にたい」と言う気持を持っていても、心の奥底では「生きたい」という気持が頭をもたげしばし両者が激しく綱引きをするに違いない...人生生きていると少なからず、そんな場面に遭遇することは誰しもあるに違いない。そんな時に、生きることが何故正しいのか?これは理屈ではなく先祖代々、おいらをはじめ人類が営々と生き続けてることが証明している。

生きてて良かったという事柄をどれだけ積み重ねることが出来るか、そのために何をしなければならないかと思っていれば自ずからそうは簡単に死に神が近づいてこないはずだ。

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生きていればこそ見れる夕焼け

2022/05/23
【第1619回】

我が心のライオンズ、なかなか思うようには吠えていませんな...故障者が続出していることもありますが、なにせ選手層がたまらなく薄い感じがします。他球団であれば当然2軍であろう選手が選抜メンバーに入ってるのですから試合前から白旗掲げてるようなもんでございます。投手陣は今までのライオンズと思えないほどの健闘振りなんだが、打撃陣の貧打振りには困ったちゃんです。ほとんどの選手が打率2割前後、なのにぶんぶん振り回すばかり、少しは頭を使うなり、必死こいて粘らんとどうしようもないぜよ。そんな中、素晴らしい選手が現れました。身長164cm体重65㎏はプロ野球の世界では一番の小柄、今年育成として入ったのに5月に支配下登録となり、いきなり先発メンバーとなった途端に大活躍。今年の春までまだ高校生だった18歳の滝澤夏央選手のお陰でなんとか試合を楽しめているってのが本音かな。あどけない顔して剛球をしっかりと捉え50メートル5秒8の俊足で塁を駆け巡る姿はわくわくいたします。守備のセンスもなかなかのもの、今のライオンズの攻撃陣での楽しみは、この滝澤選手と山川選手のホームランしかないんだから悲しすぎます。しかもこの滝澤選手の年棒280万というんだから何年もやって一向に1軍に定着できない先輩選手は情けないったらありゃしない。ベンチでへらへらせんとなんとかせんかい!と喝を入れたい気分でございます。

明日からセリーグとの交流戦が始まります。「グラウンドにはゼニが落ちている」20年以上南海ホークス(現ソフトバンクホークス)の監督を務めた鶴岡一人の台詞である。プロ野球選手はグラウンドで活躍してこそお金が稼げるものだ。短い野球人生、遊んでる暇ありゃしませんぜ...

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戻って来た青空、今日の新宿

2022/05/20
【第1618回】

昨日は世田谷三軒茶屋にあるシアタートラムで「青空は後悔の証し」を観劇してきました。1994年、トム・プロジェクトの第一回公演、片桐はいり一人芝居「ベンチャーズの夜」の作・演出である岩松了さんの最新作です。出演は風間杜夫さん、トムの作品にも出演して頂いた石田ひかりさん他3人の出演による濃密な作品でございました。男女の不思議な関係を覗き見しているようなスリリングな展開は岩松さんのもっとも得意とするところです。

ねじりにねじった台詞の応酬に役者がどこまでリアルに立ち向かえるか?役者の力量が試される舞台です。今年73歳になった杜夫ちゃん、さすがに百戦錬磨の舞台役者、飛翔し迷路の迷い込む言葉を見事に咀嚼し生活感溢れる元パイロットの役を演じきっていました。石田ひかりさんも人柄が滲み出る立ち姿で、新境地にチャレンジしてる姿に好感を持てました。

こうやって、舞台も少しずついつもの日常に戻りつつあるのかな?といってもまだまだマスクも手放せず、会話も控えめ、客席、ロビーが開放的な雰囲気になるにはもう少し時間がかかりそうですね。ロビーを華やかに飾っていた花々も久しく見ておりません。花屋さんも売り上げ減でへこんでいることでしょう。でも、花屋さんには申し訳ないのだが、花を贈る方、貰う方もなんだか見栄の張り合いみたいで、この際この習慣止めてもいいんじゃないのとの意見もちらほら聞こえて参ります。この世界もシンプルライフに!肝心の芝居がつまらなくてロビーの花ばっかりが見事なんてことになったら本末転倒じゃございません。

終演後、ロビーで久しぶりに岩松さんと少し話しをしました。初めて会った時は確か東京外国語大学の学生さんでした。あれから半世紀以上経つんだな...お互いにこうやって芝居やり続けていられることに唯々感謝でございます。

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平和の祈りを込めて、まだまだ咲いてます

2022/05/18
【第1617回】

今日は久しぶりの青空。やはり青い空とおてんとうさまを拝顔できますと、気分も爽やかからっと致します。人間なんて所詮単純な生き物でございます。やたら難しく理屈をこねてややこしくしてる輩が沢山いすぎて世界は混乱に陥いってるんじゃございません。シンプルに思考すれば争いは起こらないと思いますよ。

話は変わりますが、先の吉野家の役員の「若い田舎もんに牛丼の味をジャブ漬けしちゃえばこっちのもんだよ」講演会でいけしゃあしゃあとのたまうんだから大したもんでございます。まあ資本主義の社会ですからほとんどの企業の本音と言えば本音なんですが、場所をわきまえないとえらいことになっちゃいます。この世全て建て前と本音をいかに上手に使えるかどうかが勝負なんだが、この狭間であれこれと複雑に考えちゃうから世の中もおかしくなっちゃうんですな。店の現場の人は汗水垂らして一生懸命に働き、会社をフォローしてるのに少し偉くなっちゃうと勘違いしちゃうんだね。

ウクライナのマリウポリをロシアが完全掌握のニュースが流れています。連れ出されたウクライナの兵士の行く末が心配です。戦場から生み出されるのは憎悪、人が人を傷つけることによってこれから先、何十年何百年そのしこりが受け継がれ同じ争いが又繰り返されることを歴史が証明してるのにいつまでたってもあんぽんたんなニンゲン...

思考も行動もシンプルライフに戻りましょう!地球を救うのはこれしかなかですばい。

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薄暮

2022/05/16
【第1616回】

昨日は沖縄が本土に復帰して50年。様々な催しがありましたが未だ平和な沖縄は取り戻せていない感は否めません。在日米軍基地の約75%が日本の国土のわずか0.6%の沖縄に集中しているなんてことが改善されないまま今日にいたっていることが大問題。毎年毎年日本全土に平等に基地を移動なんてこと言ってるけどなかなか難しいことであります。先ず、他県で基地移転反対運動が始まるし、受け入れる自治体が果たして在るのか否や?嫌なことをすべて沖縄に押し付けることは悪いと思いながら自分の身の安全だけを考えるなんて同じ国民としていかがなものかと思いますが...沖縄で未だに忘れられないのは、40数年前に沖縄宜野湾市に住んでたアパートの前に基地があり、基地内に入っていく若いママを金網越しに泣き叫んでいた女の子の姿です。この情景は今でも生々しくおいらの瞼に焼き付いています。最近では、芝居で沖縄に行った時に乗ったタクシーの運転手さんが何度も謝っていた姿です。「こんな沖縄で...」おいらの方が恐縮してしまいました。終戦の直前に日本本土の盾となり沖縄の人たちの4人に1人が命を落とし、いまだに多くの米軍基地を置きっぱなしにしていること、本当に申し訳ありません!とこちらが謝らなければいけないことなのに...

沖縄の青い空と海、のんびりした県民性、泡盛に沖縄豆腐ようをちびりちびりつまみながら三線の音を聴いてるひとときはパラダイス沖縄でございます♪基地を忘れてこんな至福の時間が早く訪れますように...

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蜜が大好きなクロアゲハ

2022/05/13
【第1615回】

梅雨の気配を感じる金曜日...最近CD「Moment」をよく聴いています♪『雨と休日』という独自のセンスで選んだCDを販売しているショップで最初に購入したのがこのアルバムです。帯に"近くにあっても気づかないことがある。遠くにあって身近に感じられることがある。音楽が鳴り出すとそこには今まで触れたことのない独特の世界が広がっていた。"

まさしくこのアルバムの本質を捉えているコピーである。美しく透明感のあるピアノの音色を包む繊細なパーカッションと、大地に根を張ったような重厚なベース。

このアルバムを創ったミュージシャンがウクライナのキエフ・アコースティック・トリオ。破壊されたウクライナでピアニストのパヴロ・シェペタ他二人が無事であるかどうかはわからない。勿論、この状況ではCDも入手することもできません。

でも、このアルバムに収められた8曲を聴いていると、あの素朴で美しいウクライナの景色が目に浮かんできます。遠くにあっても身近に感じることが出来る音楽のチカラ...

今日もロシア軍の侵攻が続くウクライナでは、北部チェルニヒウ州で学校への攻撃があった。未来の国を育む学びの場を焼き尽くすロシアの未来に待っているのは文化不毛の国であることを自覚すべきだと思うのだが、悪霊が取り憑いているプーチンには聞く耳を持たないに違いない...

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平和なウクライナが聴こえてきます♪

2022/05/11
【第1614回】

今年もアンネのバラが咲きました...ユダヤ系のアンネ・フランクさんは第2次世界大戦中、ナチスから逃れて2年もの間、オランダ・アムステルダムの隠れ家で生活していました。しかし1945年、15歳の時にナチスに見つかり、ベルゲン・ベルゼン強制収容所で病死しました。短い生涯を終えたアンネさんが、このウクライナ情勢に対して平和への願いを込めて咲かせてるようにも見えました。5月9日の戦勝記念日のロシアの映像、その当日にも爆撃を止めないロシア軍、異常を越えて狂気の沙汰としか言いようがない。戦争犯罪人プーチンを何とかせねばこの先何が起こるかわからないほどの不安を覚える日々です。

プーチンにアンネのバラを送りたいくらいだ。がしかし、ここまで悪魔にとりつかれているプーチンは自然が生み出した美しさすら感じることが出来ない状態になっているのではないだろうか。人の価値観なんて真逆になることも十分にありうるからだ。花の美しさを愛でるどころか、真っ赤な薔薇を見つめながらより一層殺戮の感情がメラメラと沸き上がるなんてことになっちゃうかもしれないな...日々映し出される彼の表情はあのヒトラーの狂気顔を彷彿とさせる。ネオナチとの戦いなんてプロパガンダでロシア国民を煽っているあんたこそナチスその者じゃんと言いたい。早く目を覚ませロシアの人民と言いたいところだが、この国もスパイだらけで本音は隠さねば生きていけません。

「無言のまにまに」の稽古、今のところ順調に進んでますが、又もやコロナ感染者が増えています。コロナ、ウクライナ、早くスッキリ、ハッキリした日常になってもらいたいもんでございます。

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平和への願い

2022/05/09
【第1613回】

またもやモノクロ映画の素敵な作品に出逢いました。あの「ジョーカー」で圧倒的な存在感を示したホアキン・フェニックス主演映画「カモンカモン」。妹の息子を預かり共同生活を始めるのだが、大人の視点、子供の視点が錯綜しながら話は進んでいく。決して答えを見出すことなくお互いの立場を認め合い感性を大切にしながらの台詞のやり取りが絶妙である。

自由奔放な息子のキラキラした瞳を観ているだけでも心洗われる感じがしてくるってのは、もはや息子ジェーシーを演じたウディ・ノーマンの類まれなる資質ではなかろうか。

映画の中で主人公ジョニーが、アメリカ各地で9歳~14歳の子供たちにインタビューする生の声のシーンも、この映画が今の世界を生々しくパワフルに伝える効果的な画像になっている。映像もさることながら、この映画全般、一言一言の言葉のチカラがきらりと光る。

それにしても、アメリカの子供たちのインタビューの発言、きちんと社会に対応した答えをしているのには驚いた。日本の子供ちゃんこんな答えはしないだろうなと思いつつ、なんだか不安になってきた。人格なんて幼児体験でほぼ決まっちゃうなんてのたまう人もいるのだが、この映画を観てるとなんだか納得してしまう。いかにいい親、大人(人間として豊かに生きていく道標となる知恵者)に育てられるかにかかっているんでしょうな...

ラスト近くに何度も吐く台詞、「この先何があるのかわからないんだからカモンカモン"前へ前へ"」この映画のメッセージでございます。

今年一番の優しい映画だったカモンカモン!

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前へ、前へ

2022/05/06
【第1612回】

5月4日久しぶりにベルーナドーム(西武球場)に行ってきました。ロッテとの一戦ということで、話題の佐々木朗希投手を観たかったのだが、当日は登板日ではなく残念。今年のライオンズ山川、森選手などの故障、いまだ登板のない今井投手などなど不運続きながら、なんとか今日の時点で勝率五割をキープ。先ずは上出来ではなかろうか...それにしても元ライオンズの選手をお金のチカラでかっさらっていった楽天が好調で首位をキープ。ライオンズとは7ゲーム差がついておりこれ以上離されるとちょいと厳しいかなと言う気がしています。

この日の試合は初回ロッテが5点をたたき出し前途多難、3回には2点追加、この時点で試合がほぼ決まった雲行き。それにしてもこの試合を任されたライオンズの松本投手、この日を楽しみに集まった満員のファンに対してなんともふがいない姿をさらしてしまいました。

十分な休養をもらいながらこの体たらく、この投手の精神面の弱さが露呈、今日の負けはほぼ決まり、もう帰ろうかなんて気分になっちゃいました。ところが、この7点のハンディキャップを負いながら打撃陣がなんとか5点を奪い少しは意地を見せてくれたのが唯一の救いだったかな。

GWということもあって多くのちびっ子ファンが来てました。皆、楽しそうにしていましたね。食べ物が楽しみで来たはずが、何となく盛り上がる球場の雰囲気に感化され野球が好きになり、そのなかからライオンズを支えるプレーヤーが生まれたら嬉しかですばい。

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頑張れライオンズ!

2022/05/02
【第1611回】

神戸芝居カーニバルを30年やっている中島淳さんと本当に久しぶりに逢いました。今年82歳になる中島さん、歳を感じさせない容貌と頑強な身体、尊敬しちゃいます。今やすっかり俳優として有名になった田中眠さんを呼んで浜辺で踊ってもらったり、今は亡きマルセ太郎さんの「スクリーンのない映画館」を世に知らしめたり、ユニークな企画を今尚続けていることに元気を頂きました。おいらも以前、神戸に呼ばれて「中島淳のアジト談義」で話をしに行ったのだが、集まった人たちの顔ぶれになんだか楽しくなり饒舌になった記憶があります。そのあとの飲み会、その後、神戸ゆかりのJAZZライブのお店にも行きご機嫌な神戸の夜を過ごさせていただきました。押しつけでもなく、みんなでおもろいことやりましょか!という雰囲気がここまで永く人の輪を作り保ってきたんだろうなという気がします。やはりリーダーシップになる人の人間性、人を引き付ける魅力、カリスマ性がないと集まり自体は何十年も続かないと思います。ましてや3年目に入ろうとしているコロナ、これは神戸芝居カーニバルにとっても大変な時期だったと話しておられました。経済的な部分も一人で背負うんですから情熱だけではやれるってもんでございません。目の輝きから言っても、まだまだへこたりまへんで!とおいらに激を飛ばしてるようにも見えました。

今日から「無言のまにまに」の稽古が始まります。中島先輩に負けないように、行くところまでいかなあきまへんがな...

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空に躍るや鯉のぼり

2022/04/27
【第1610回】

「ベルファスト」観てきました。おいら好みの映画でしたね。1969年の北アイルランドのベルファストで起きた宗教をめぐる事件を少年(監督ケネス・ブラナー)の目を通して映し出した物語。カラーから白黒に代わる画像、そして最後にまたカラーになるところが憎いです。音楽のセンスもなかなかよろしい!なんだか「ニュー・シネマ・パラダイス」を観てるような感じもしました。子役の良し悪しが映画の成否を握っている代表的な例です。人間誰しも生まれ育った故郷に対する郷愁の念はあると思います。この映画も、生まれ育った田舎町での映画を唯一の娯楽として過ごした体験が、最終的に映画監督に導いてくれました。

家族を担う俳優陣もベスト、特におばあちゃん役を演じたジュディ・デンチが最高でした。

「恋におちたシェイクスピア」(98)でアカデミー助演女優賞を受賞した実力派の女優さんです。現在88歳になる彼女がラスト近くに語り掛けるアップの表情に彼女の人生すべてが語られているようでした。幾筋も刻み込められた皺を隠すこともなく淡々としたシーンは圧倒的な人間の存在そのものを感じました。表現者、人間が一体となって己の歩んできた道を表情一つで表すことが出来ることの奇跡に近いシーンでもありました。

おじいちゃん役のキアラン・ハインズもなかなかいい味をだしていました。彼がしみじみと吐く台詞、「答えが1つなら紛争なんて起きない」「相手が何言ってるか分からないのは、聴こうとしていないから」...ウクライナに対する侵略が今なお続く中、説得力がある言葉でした。

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子カルガモはもうすぐかな?

2022/04/25
【第1609回】

先週。ミュージカル「メリー・ポピンズ」、小劇場公演「夜長姫」を観劇。一口に演劇と言ってもいろいろありまっせという世界でございました。先ず値段がミュージカルは¥14000、小劇場は¥3500.その値段はミュージカルを観ればなるほど納得できます。セット、小道具、衣装、出演者数、そしてなんといっても生演奏。それに莫大な上演権料を考えれば当然な入場料かな。片や芝居を通して身銭を切って舞台に上がる小劇場の役者たちが繰り広げる世界。どっちがいいと問われても困ってしまいます。お金を投資するのはお客さんが判断することですから正解はありません。おいらも芝居で飯食ってる人間の一人としての感想は、ミュージカルのあのショー的雰囲気をみんなと一緒に楽しんで拍手して過ごす一体感がたまらなく幸せなんだろうなと思います。一方、50人から70人のキャパで、真に迫る役者の汗にまみれた演技に心打たれ、なんだか叱咤激励された感覚に襲われるのが心地よいっていう人がいるのも確かです。

いずれにしても、なんでもありの演劇ですから生きてるうちにいろんなもの見て損はないと思います。と勝手なこと書いちゃって、観に行ったところ、もう二度と芝居なんぞは観たくないなんて芝居に出会ったら迷惑千万でございます。実際、おいらも正直そんな芝居と鉢合わせした経験もあり、時間とお金返してくれ!と心の中で叫んだ記憶がございます。まあ、どんな世界でも当てが外れたなんてことはありますので許してちょんまげ...

平和だからこそ、芝居をやれて観てもらえることに感謝でございます。

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バラが咲いた、バラが咲いた
まっかなバラが♪

2022/04/22
【第1608回】

いまだ止むことのないロシアの侵略、プーチンの支持率も80パーセント維持しているという。このアンケートもほとんどが電話によるアンケート、スパイだらけのロシアにおいてどこで誰が盗聴しているかわからない中、まともな答えはできないに違いない。戦争反対(戦争でなく侵略)なんて答えたらどんな仕打ちにあうかわからないので、支持しますと答えるのが順当なところでしょう。このロシア、そして中国なんて国は時の権力者に都合の良いプロパガンダで国を牛耳っているに違いない。

その例として、兵庫に住む72歳の女性のもとに、嘗て日本語ボランティアとして日本に留学し親しくなった中国の若い友人からこんなメールが届いたそうだ...「欧米はウクライナをロシアへの侵攻の前哨基地にしようとしており、ロシアの特別軍事行動には相当の正当性がある。戦争が起きた原因はウクライナ側にある」...そのあとに、日本ではどのように報じられてるかとの問いに、どう返事を書こうか悩んだ末に、彼女との信頼関係を信じてメールを送ったとのこと...「隣国の領土を侵し民間人を巻き込む武力行使は、いかなる理由でも許されない。ロシアや中国には厳しい報道規制があり、国民には事実が知らされていない。自由と民主主義は日本が苦い経験を経て学んだ大切な理念であり、一人一人がその理想に向かって努力しなければならない」

中国の若い女性はどう感じたか?先日、日本からロシアに退去を命じられた外交官関係の家族が日本を飛び立つニュースが流れていた。彼らは故国に帰って何を語るのであろうか?恐怖政治で支配している国が世界を蹂躙しようとしている今、世界のすべての人は人ごとではなく自分のこととして思考し行動しなければならない。

今日のプーチンの発言、1千人の市民、500人の負傷兵が身を隠しているとされるウクライナ南東部の港湾都市マリウポリのアゾフスターリ製鉄所に「ハエ一匹も通すな!」。人の命などなんとも思わぬ冷血漢らしい発言だ。こんな男の横暴を許さざるを得ない国連ってなんなんだろうね?

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モッコウバラ
花言葉~あなたにふさわしい人~

2022/04/18
【第1607回】

先週の土曜日は、半世紀前に一緒に芝居やっていた戦友の芝居を観劇。25歳半ば演劇群「走狗」でテント担いで全国を興行していた仲間です。今回の芝居のタイトルは「命短し、恋せよ少女、赤き唇褪せぬ間に 熱き血汐の冷えぬ間に 明日の月日のないものを」あんたらのあの日あの時の心情そのままじゃん。作・演出、倉沢周平、出演者の一人に小林達雄、二人とも集団の中では過激な人達でしたな。まあ、それだけ芝居に対して命懸けだったんですね。おいらも決して手を抜いてやってたわけではないのだが...唯、他の諸々よりは食べれないけど芝居の世界が面白かったので楽しみながらやっていたというのが本当のところかな。何だか面倒くさくなったらすっぱりと芝居の世界におさらばし海外ふらふらしたと言うことだけ。

それにしても、老骨むち打って終生アングラ役者として舞台に立っている今年78歳になる達ちゃん。その姿見てるだけでなんだか嬉しいです。なんだかんだ言っても己の道を信じて己の好きなことをやってるんですから潔いのではないのかな...ほとんどの人が生活のためといいながらやりたいことを半ば放棄しながら一生を終えるんですから。作・演出の周平も満足に歩けない姿で本書いて演出して一本の芝居に仕上げているんですから大したもんでございます。「走狗」の仲間もすでに3人亡くなりました...後何年、こうやって芝居に関わっていけるのかわかりませんが、今回の芝居のタイトルのように、熱き血汐の冷えぬ間に、明日の月日のないものと、肝に銘じながら生きていくしかありませんな。

おいらも然り。

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ハナミズキ
花言葉「私の思いを受けてください」

2022/04/15
【第1606回】

この季節の楽しみは日々増えていく新緑の光景を目にすることである。冬の寒い間にじっと耐えて春の到来を夢見て潜んでいた葉っぱちゃんのなんと若々しく鮮やかなこと。コロナ、ウクライナで晴れない心身を癒してくれる大きな存在です。生まれたばかりの赤ちゃんのすべすべした肌と同じです。秋の枯れ葉の時期まで少しづつ形を変え楽しませてくれる葉っぱちゃん、そして樹木に彩りを添える花々。考えてみりゃ、これら自然の生き物は無償の行為で人様に身を挺して差し出しているのに、人間どもは何と愚かな行為をしでかしているのか...地球と言う星は人間だけのものでないはずなのに、驕り昂ぶっているとしか言いようがない。

この時期、ウクライナの人たちも春の訪れを楽しみにしながら寒い冬の季節を過ごしていたに違いない。なのに、一人の権力者の欲望のために地獄絵図を見せつけられた。今回の侵略をきっかけに世界の各国が武力の強化、そしてエネルギー問題でまたして原発に依存しようとしている。原発にミサイルを撃ち込めば地球滅亡のシナリオが進行するというのに、そして抑止力の核の開発には拍車がかかる始末。

すべてが便利になり、快適に生活できるようになったのは理解で来るのだが、なんとも世知辛い世の中になってしまいましたな...今更、こんなこと言っても仕方がないとは思うのだが、貧しかったけどキラキラした周囲の人たちの表情に囲まれた昭和が懐かしい。

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待ってました...

2022/04/13
【第1605回】

いやいや90歳からだってやれるんだ!できるんだ!「90歳セツの新聞ちぎり絵」木村セツさんの本、読ませて見させていただきました。2018年末にご主人が亡くなり、2019年元旦から長女の勧めで新聞ちぎり絵を始めたそうだ。1929年奈良に生まれ戦時中は学徒動員、戦後は銀行などに勤めながら三人の子供を育てるという典型的な市井の人。ご主人が入院中に病室に飾ってあったちぎり絵に興味を示したのがきっかけだという。それにしても、これだけの色彩感覚、構図、センス、これらはセツさんが90年間に養われた美意識から生まれたに違いない。ご主人が亡くなる前に発した言葉「いくつになっても勉強せなあかん」という遺言もセツさんの気持ちを大きく動かしたに違いない。

そうなんです!人間死ぬまで学びです。いくつになっても分からないことが次から次へと出現し未知なる旅は果てしない、でもその旅は己の好奇心をくすぐり血肉、いや知肉を湧き立たせるってわけだ。お金を掛けなくたって夢中にさせるものがある人はホンマに幸せだ。

新聞紙をちぎってピカソ顔負けのアートを創っちゃうんだから頭下がります。

ちぎり絵はこれからも続けますか?という質問に

「やめやひん。続けたいですな。これが楽しい。生きがいです。これがないとどうも仕方ないわ、寂しいて。こんなにえらい熱中するもんなかったなあ。テレビもえらい好かんし...これやったら一生懸命やりますわ。妙になあ。不思議でならんわ。これなかったら生きがいないわ。」

いや、シンプルでござりまする。こんな言葉吐きながら健康で長生き出来たら最高ですたい。

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人生まだまだこれからだ!

2022/04/11
【第1604回】

昨日も暑かったけど、週明けの今日も、はや夏日と言ったところです...先週の週末「コーダあいのうた」を観てきました。今年のアカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚色賞の3部門を受賞したということで出かけたんですが、都内の上演館も一日2回ほどの上映で受賞後の盛り上がりは感じませんでした。それとも1月下旬からの上映開始なので興味ある人はもうすでに観ちゃったのかな?おいらは吉祥寺オデオンで観たのだが客席もそんなには埋まってはいませんでした。ストーリーは家族4人のなか、唯一聴力をもつ少女が聾者の家族との確執、そして自分の夢にゆらぎながらも猛進していくというもの。確かに障害を持つ人たちの家族の必死に生きる姿に歌が絡まって感動的な映画があることは紛れもない事実です。この映画に、勿論ケチをつける気はありませんが、作品賞としては腑に落ちない気がしました。おいらだったら「ウエスト・サイド・ストーリー」を推したいな。あの名作のリメイクを感じさせない最高級の映画テクニックを駆使し、オリジナルを現在の社会状況を照らしつつ、差別、ジェンダーなどなどにメスを入れる新たなミュージカル映画を創出した巨匠スティーブン・スピルバーグ以下スタッフ、キャストに一票投じたい。今回助演女優賞だけというのも納得できませんな。でも、このアカデミー賞も最近ぶれぶれのような気もします。これも政治的な配慮や、世界の動向なんかを気にしながらの選考になっているのかもしれない。式典で受賞者が殴るなんてハプニングもありますし、どの世界でも何が起こるかわからない予測不能な状況になっています。

プロ野球の世界でもありました。昨日の千葉ロッテマリーンズ佐々木朗希投手の完全試合達成にはビックリ。28年振り史上16人目、20歳5カ月史上最年少の記録、13連続奪三振、1試合計19奪三振、日本プロ野球84年の歴史で最高の投球と言っても良いという完璧さでした。東日本大震災で亡くなったお父さんもきっと喜んでることでしょう...

こんな素晴らしいことはいくら起きても嬉しいものですが...戦争だけはやめて欲しいし、起こしてはいけません。

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競艶

2022/04/08
【第1603回】

ウクライナの惨状が日々伝えられ、コロナの収束未だ見えない。暗澹たる状況のなかなんとか明るい話題を届けたいという思いなのだろうNHKの地上波が大リーグ、エンゼルス対アストロズの開幕戦を中継してました。もちろん大谷翔平選手が先発ピッチャー、トップバッターでの出場と言うことでの特番でございます。これまでも何名かの日本人プレーヤーの活躍はあったものの、彼の二刀流は本場で大きな衝撃と感動を与えたに違いない。あどけない表情でありながら、アスリートとしての類まれなる才能と、一人の人間としての思考、行動の素晴らしさが多くの人を魅了したに違いない。彼のグッドプレーを観て頂くことで、すさんだ気持ちを少しでも和らげて下さいとの趣旨でのNHKの英断といったところか。

残念ながら試合には負けましたが、5回まで投げて1失点9奪三振の好投、ヒットも出ませんでしたが次回に十分期待を持たせる最初のプレーでした。

それに反して我ライオンズの森捕手の行動はまことにいただけませんな...チームもなかなか上昇機運に乗れず途中で交代させられ、ロッカーに戻り商売道具であるキャッチャーマスクを叩きつけ、その時に中指を骨折したという醜態。完治まで二カ月かかるという最悪の事態。自分の顔を守ってくれるマスクを投げつけるなんて言語道断、ましてやチームの中心選手がそんなことしちゃったらチームワークにも影響するのに何考えてんの?と言いたい。どんな優れた成績を残そうとも、自分の生活を支えている道具をおろそかにする選手はあきまへんな。なんだか大阪桐蔭学高校野球部出身の不祥事が続いています...監督さん強けりゃいいってもんじゃございませんことよ。球を磨くのは当然として、心を磨くことを忘れちゃいけませんことよ。

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まだまだ散ってなるものか

2022/04/06
【第1602回】

新宿西口広場では、4月10日まで「April Dream」と称して302人の写真を展示して、それぞれの夢を語っている。4月1日と言えば嘘をついていい日として知られてきたのだが、これからは夢を語ろうという日にしようとする試みだ。考えてみれば今から半世紀前には、この西口広場は社会を変えようという若者で溢れかえっていた。広場のあちらこちらで討論会が始まり、夜になるとフォーク集会で広場は異常な盛り上がりをみせた。機動隊がここは広場ではない通路と言いながら集まった人たちを解散するようにと命じると小競り合いが始まり大変な騒ぎになりました。おいらも機動隊のお兄さんに「歌ってなんでいけないの?」というと、いきなり人が居ないところに連行されぼこぼこにされました。その時、優しい機動隊のおじさんが仲裁に入らなかったら、おいらは多分新宿警察署に連行されたに違いない。

そんなことを想い出しながら展示された写真を丁寧に見て廻りました。「プロレスラーとして後楽園のリングで戦いたい」「母をハワイ旅行に連れて行く」「昆虫食を広めたい」「ラーメン屋さんになって美味しいラーメンをたくさん食べたい」「手話で踊るよろこびを伝えるUDダンサーになる」などなど。夢を抱きそれに向かっていくことは誰しもできることだ。紆余曲折があるのは当然なのだが、その過程をいかに楽しむかは人それぞれだ。例えば海だって自分の所有物ではないのだが己の想像力でいかようにも変えることが出来るってもんでございます。夢のない人と話して退屈した経験は誰しもあると思います。ホラ吹くぐらいの夢だっていいんじゃありませんか、いついつまでも夢を持ち続けて生きましょうね皆の衆。

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Dreams

2022/04/04
【第1601回】

今日は又、冬に逆戻り、冷たい雨が朝からしとしと降り続いています...と言うことで最後のサクラを愛でる日だと思い先週の土曜日に井の頭公園に行ってきました。吉祥寺と言う人気の街を支えているのがこの公園です。適度の広さと交通の便の良さが人気の要因かな。この日も多くの人達が訪れ様々な楽しみ方をしていました、コロナがなければビニールシートを拡げて大宴会の様子をおすそ分けしてもらえるのですが、なかなか感染者数が減らない現状では、静かに桜並木を眺めながら通り過ぎるか、限られたベンチに座って小声の会話で時間を過ごすしかありません。でも、おいらはこちらのスタイルが好みかもしれません。酔っぱらって大声で叫ぶ姿は、サクラちゃんだってお耳ふさいで咲き心地がよくありませんことよ。「今年も咲かせてくれてありがとう」なんて感謝の気持ちと慈愛の眼差しで見つめると、花びらも嬉しくなって一瞬濃いピンクの色になっちゃう気がします。いずれにしても今年も咲いてくれました。景気、災害、戦争などなど世の中の変化にも動じることなく礼儀正しく咲き誇ってくれるサクラは、いつまでも争いを止めないニンゲンに無言の警告を発しているようにも見えました。

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散るサクラ残るサクラも散るサクラ

2022/04/01
【第1600回】

今日から新年度のスタートです。サクラの季節と相まって晴れ晴れしい季節のはずなんですがコロナ、ウクライナ、そして諸々の値上げでなんだか皆さんの顔も今一つパッとしない表情を日々見かける日々が続いています。そんな時は、モーツァルトの曲を聴くに限ります。おいらは普段はジャズを聴く機会が多いのですが、この暗雲垂れこめる世界の情勢を見聞きするうちにどうしても晴れない気分になってしまいます。もともとポジティブシンキングで生きてはいるのですが、このウクライナはかなりきついです。そしてまたまたコロナ第7波の予報なんて聞いちゃうとガックシでござりまする。その暗澹たる気持ちを一掃させてくれるのが天才モーツアルト。ピアノソナタ、ピアノ協奏曲、セレナーデ、弦楽四重奏曲、弦楽五重奏曲、交響曲などなど...まさしく天才の名にふさわしい幅の広さです。どれを聴いても飽きることなく、もやもやした気分も一瞬にして吹き飛んでしまいます。中でも、グレン・グールドのピアノソナタこれは絶品です。クラシックの枠を飛び越え自由自在、変幻自在に演奏する音色には遊び心満載。お堅い人には、独善的で邪道なんてことも言われかねないと思いますが、一音一音に緊張感と次なるジャンプ力を感じさせる悪魔的な魅力に溢れている点、彼も又天才かもしれない。彼の演奏によるバッハも、研ぎ澄まされた日本刀の切れ味を感じさせる凄みを感じます。

とにかくこの時期は、よりよい音を耳にすることによって心身のバランスを整えるしかありませんね。それにしても、多くの芸術を生み出したロシアに住みながらもプーチンは良き音楽に接する機会が無かったのかもしれませんな...今からでも遅くない!側近のイエスマンの方々、プーチンにモーツアルト全集を至急支給してくださいませ。

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井の頭線のサクラ

2022/03/30
【第1599回】

長いこと生きてるといろんなことがあるのは当然だ...その中でも、あまり居心地が良くないこととして自慢話を聞かされること。人生を振り返って苦労したのは分かるけど、あれをやったこれをやったと聞かされても、おいらはフンフンと聞くしかない。自慢話なんていうのは、所詮自分を誇らしくみせるための方便でしかないのではないか...たしかに何かをやり遂げた功績は認めるにしても、その逆、何をしなかったということにもっと意義を感じてもいいんではないかと思う。人を傷つけなかった、差別しなかった、欲に溺れなかった、争いに参加しなかった、人の上に立とうとしなかったなどなど、これは世の中を平穏にするための人として基本的な所作かもしれない。このことをわきまえていれば戦争なんてものは起こらないはずだ。世界を悲嘆に陥れたプーチンに聞かせてあげたいもんでございます。

今日も満開の桜がそれぞれの風景に溶け込み様々な景観を生み出しています。中でも河岸の桜並木は全国のあちらこちらで春の風物詩になっています。おいらが住む杉並区にも善福寺川、神田川なんかで毎年楽しませて貰ってはいるのですが、なんと今年は、神田川に気持ちよさそうにしなだれかかる枝を切り落としたもんだから間抜けな光景になってしまいました。勿論、樹木は頃合いをみて剪定しなきゃならんのは理解しているのだが切り落とされる様を見るたびにおいら自身が切り刻まれてる気がして痛々しい気分になっちゃいます。もしや、おいらの前身は樹木だったかもしれませんな...何百年も生き続けた大木に出会うと思わずハグしちゃいますことよ。

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菜の花とサクラ

2022/03/28
【第1598回】

全国のあちらこちらでサクラ満開の知らせが届いています。サクラの開花を見るにつけ春の到来と新学期、新社会人の新たな人生の門出を祝いたい気分になっちゃいますね。それなのにコロナはいまだに収束せず3年目に突入。そしてウクライナ、いつものように突き抜けた解放感でサクラを眺めることが出来ないのがとても残念です。サクラも一年待ちわびてやっとこさこの日を迎えてご対面というのに世界はとんでもないことになっていて戸惑っているんではないかと心痛みます。

この国も戦時中にサクラは戦争推進者に都合よく利用されていた過去がある。お国のために、サクラが散る姿を殉死ともてはやし、潔く散るなんてことを良しとする雰囲気を作り上げていました。美しい花を眺めていりゃ人を殺めるなんて発想は出てこない筈なんだが、日々流されるウクライナ戦地の映像は破壊されつくした灰色の光景。こんな風景が日常化した兵士には優しさなんて感情は皆無に違いない。心身とも疲弊し無慈悲かつ暴力的な思考が支配し殺戮さえいとわないロボット状態になってしまう恐怖集団と化してしまう。

サクラとともにプロ野球も開幕しました。我がライオンズ幸先良いスタートを飾りました。昨年のリーグ覇者オリックスに勝ち越し。昨日なんぞ三回まで6点先行され、こりゃあかんと思いきや逆転勝ち...最下位からの優勝も夢でないと思いたくなります。

ウクライナの人たちも春の訪れとともに、いつものように精一杯野原を駆け巡りたかったに違いない...そんな日常をいとも簡単に崩壊させるプーチン、一刻も早く冷静さを取り戻して欲しい!

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新宿に咲くサクラ

2022/03/25
【第1597回】

このご時世、若き女性のパワーは目を見張る勢いだ...演劇の世界も然り、男性の力を借りず女性だけの劇団があちらこちらで誕生している。昨日も演劇科という学部がない東京芸術大学の卒業生だけで結成された「理性的な変人たち」という集団の芝居を観てきました。既成の演劇という枠に収まることなく幅広いジャンルで活動している表現者が楽しく躍動感あふれる舞台を創っていました。今回のテーマは性暴力、今までは人前で言えず声を出すことをはばかれていた幼少時の性の屈辱的な事件を家族にからめてのストーリー。この集団のネーミングにふさわしく感情に溺れることなく理性的に展開してた気がします。

何事も諦めずに継続していくことが一番です。経済的にも大変でしょうが若さと表現に対する飽くなき情熱があれば怖いものなんかございませんことよ。いまだ人が観たことがない表現が一つでもあればやる意味があるってもんでございます。今回はコロナで二度中止になりやっと実現できた第二回目の公演。今日あらためて感じたことは女性のデリケートな諸問題、やはり女性だけで演じると実に説得力がございます。

性暴力といえばあの文春砲であげられた脇役男優、これが真実であれば「ぶらり途中下車の旅」でちょい不気味だがいい味だしていたのにOUTだね。出会ったお店の人もがっかりだし、なによりも苦労してなんとか役者として認められ始められたのに...人間ちょいとした気の緩みから又一から出直し。それにしてもおいらが一番嫌いなこと、立場を利用して弱い立場の人を私利私欲に走り傷つける行為。これやっちゃたら人間おしまいですばい!

プーチン、もはや遅いけど目を覚ませ!

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少しづつ...

2022/03/22
【第1596回】

演劇に関わる人間にとって、いやアートを愛する市民にとって悲しい出来事だ。ウクライナ南東部マウリポリで避難所として使われていた劇場が破壊された。続いてリビウ中心部にある劇場「レスクルバス」、1910年ごろに設計され、映画館、芸術劇場、大衆劇場として変遷を重ね普段は約100ある客席の多くが集まる人気の劇場でもあった。侵攻直前の2月23日までは現代劇を公演していたそうだ。3月も約20公演が予定されていた。侵略国ロシアも数々の芸術を生み出した国の一つであるはずだ。劇場にはありとあらゆるジャンルのアーチストの汗と涙と魂が棲みついている。その貴重な建物を意味なく破壊してしまうロシア兵、プーチンはもはや人間ではなく悪霊が宿り阿修羅と化してしまったに違いない。

昨日までは春を待ちわびて公演を散歩する老夫婦、子供連れの家族、若いカップルの姿があったのに、一瞬の間に地獄の戦場となり悲嘆にくれるウクライナの人達。今日と同じ明日が訪れるものと誰しもが思い描いて一日を生きる人々に思いが至らない権力者に鉄槌を下したい。人々の尊い日常をいとも簡単に奪う戦争の無慮さを気にとめない鈍感かつ無神経な権力者を持つと自国ばかりか隣国にも悲劇をもたらすいい例だ。

押しつぶされ踏みにじられた人達の思いを拾い上げ身近な人達に伝えていく。いくつになってもどんな境遇であっても、そんなデリケートな神経はいつまでも保っていたい。いつか戦争が終結し、今再び当たり前の日常が戻ったときに何よりも求められることであるに違いないからだ。

一昨日、東京は桜開花宣言。春を告げる桜、このときめき、今年もウクライナの人達と共有したかった...一刻も早い停戦を願う。

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サクラサク

2022/03/18
【第1595回】

コロナ、ウクライナ、そして地震...世界は混迷を深めるばかりだ。ウクライナの今の状態が同じように日本で発生すればという仮定の話のなかで、自分であれば武器を手に侵略に立ち向かっていくのか?命優先で積極的逃避を選択するのか?日本人誰しもが突きつけられる問題なのかも知れない。今の日米安保条約にしたって、米軍関係者が日本国内で事件や事故を起こしても、日本側が十分に捜査できないなどさまざまな問題を抱えた地位協定がある限り有事の際果たしてアメリカは日本を守ってくれるのかどうか?はなはだ懐疑的と言わざるをえない。

それにしてもロシアの国営テレビ「チャンネル1」の夜のニュース番組の生放送中、原稿を読むアナウンサーの後ろで、女性が「戦争反対。戦争止めろ。プロパガンダを信じないで。ここの人たちは皆さんにうそをついている」と書かれたプラカードを掲げた「チャンネル1」の編集者、マリナ・オフシャニコワさんの勇気...二人の子供がいるのだが亡命せず国内で戦争反対を訴え続けるという...あなたにこのような勇気ある行動が出来だろうか?今回のウクライナの出来事、世界の人たちがこれからの国の在り方、幸せの意義、争いのない世界の施策などなど多くの難題を提示しているに違いない。

コロナも来週の21日をもって全都道府県、蔓延防止法が解除される。この2年間いろいろあったのだが今一つ決め手がない様に感じる。これからはウィズコロナで行くしかないのではなかろうか...

一昨日の地震はさすがに目が覚めた。東日本大震災から11年目に又、同じ東北で発生するのだから油断できないということだ。いつだって地震に備えておく必要性を強く感じた。水、食料、電源などなど...そして、やはり地震大国日本での原発は命取りになりかねないことを確信した次第だ。

ささやかでもいい、地道に質素にいまあるすべてに感謝して過ごすことの大切さを教えられる今日この頃である。

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春が来た2

2022/03/16
【第1594回】

♪吹けば飛ぶよな将棋の駒に~「王将」昨日、下北沢の劇場で観劇。「王将」と言えば舞台では新国劇の辰已柳太郎、緒形拳、映画では坂東妻三郎、勝新太郎、三國連太郎がそれぞれ主人公坂田三吉を演じた。おいらの記憶では舞台では辰已柳太郎、映画では坂東妻三郎の坂田三吉が一番印象に残っている。この舞台設定、ストーリーは庶民の町大阪の匂いがたっぷりと盛り込まれ、「王将」=「大阪」というイメージでもある。おいらは大阪に行くと必ずと言っていいほど通天閣地域を散策する。今でもジャンジャン横丁では、坂田三吉の夢を追う将棋指しが集まる将棋クラブが存在する。老若男女が入り乱れる中、若者はもちろん藤井聡太を目指しているんだろう...でも、三吉の指した将棋は今でもこの場に息づいている。

昨日観劇した「王将」は星屑の会による公演である。でんでん、ラサール石井、小宮孝泰、渡辺哲さんなどなど、一癖も二癖もある役者さんが小さなセットでいぶし銀の演技で3時間ほどの舞台を見事に演じ切った。北條秀司さんの3部作戯曲6時間の作品を演出の水谷龍二さんがうまくまとめていた。

勿論、この「王将」トム・プロジェクトでも2000年に松尾スズキ演出、板尾創路、片桐はいり、宮藤官九郎、荒川良々さんらの出演で上演している。名作は時代を超えいつまでも朽ちることが無いと同時に、時代の空気にあわせながらこれから先も幾度となく上演されるに違いない。♪うまれ難波の八百八橋~月も知ってるおいらの意気地~

このご時世、芝居屋も意気地でやっとります!

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春が来た

2022/03/14
【第1593回】

この週末もウクライナの情報で各メディアは多忙を極めていたようだ。片や相変わらずたわいもないバラエティ番組を能天気に垂れ流しつづける平和惚けしたテレビ各社。たしかにわからないでもない。このたるんだご時世に、パラオリンピック開催中に、まるで戦争映画を観るような光景が突如現れたらどう対処したらいいのか戸惑ってしまう。そのうちにこれがまさしく現実だと理解し出すと、とても正視できない状態になりお笑い放送への逃避行がはじまったというわけ...しかし、想像力を働かせれば、この日本だって他山の石ではないはずだ。ロシア海軍の軍艦10隻が津軽海峡を通過し、方領土に配備された地対空ミサイルシステム「S300」の訓練を行ったと発表。こりゃ分からんぜよ、第三次世界大戦になると間違いなく北方領土を起点として日本に攻め込んでくるだろう。それに乗じて中国は台湾を侵略し、近くにある沖縄米軍基地を巻き込み、北から南から日本は包囲され日本沈没というシナリオを突き進むことは間違いない。

いまあるこの平和なんていうものも、ひとりのとんでもない権力者によってかくも容易に吹き飛んでしまうってわけだ。天災は防ぎようもないこともあるのだが、戦争と言う人災は人間の叡智で何とかなるとは思うのだが、核と言う恐ろしいものを手にした瞬間、その叡智そのものが砂上楼閣と化してしまうのだから皮肉としか言いようがない。

週末の公園、東京での親子の幸せな寛ぎと、ウクライナの母子の悲嘆にくれる姿、世界は引き裂かれた現状を我々に突きつけている。今やれることは何か?己が出来ることを発信するしかない...それにしても今日の東京は夏が来たくらいの異常な暑さだ。

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穏やかな公園

2022/03/11
【第1592回】

今日は東日本大震災が発生してから11年目になる日である。コロナ、ウクライナと目まぐるしく世界は混迷の度を深めているのだが、この震災はいつまでも忘れてならない出来事である。未だに行方不明者2523人、避難者38139人、原子炉の処理もこれからいつまで続くのかわからない現状のなか、まだまだ復興途上であることに間違いない。この時期になると、各メディアがその後の被災者の記事を掲載するのだが、この傷跡は生きてる限り癒されることがないことを痛感するばかり...復興された風景を見るにつけ、あの地元で生活した匂いらしきものは当然の如く感じられないし、無機質なコンクリートの塊を見せられると胸が痛む。街は人の体温が作り出すものであり、いかに立派な建物を作ってもそれはただの箱でしかない。津波を防ぐ要塞のような防波堤は勿論津波を防げても、海と人を遮断し海と共に暮らした人間にとっては目隠しをされたも当然。沿岸の人達が海を友として生きてきた歴史にも微妙な変化が見られる。

今回のウクライナ侵略によって、原発の再稼働の動きが世界の各国で見受けられるのも無気味である。原発がまさしく諸刃の剣となり、時の権力者が都合よく支配するなんてことになるとますます厄介である。世界で唯一の被爆国であるこの国ですら核保有の意見が出る始末、そしてロシアも北方領土に軍備拡大、なんだか一気にきな臭くなった世界。青い地球が戦禍で真っ赤になるなんてまっぴらごめんだと誰もが思ってるのに雲行きは怪しい。

ユニクロさん、やっぱり営業停止しましたね...それにしても、ユニクロがロシアで営業継続の報が入ったことを受けてメディアが何のコメントもしなかったこと、あれだけテレビでCM流してるんだから、そりゃ無理だよね。

それにしても、一刻も早いロシアの侵略が止むことを切に願う!

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しだれ梅

2022/03/09
【第1591回】

今おいらに課してる一日の数十分...筑摩書房が去年9月に出版した岸政彦編「東京の生活史」、聞き手を募集し、その後150人に聞き手それぞれが自ら選んだ語り手の話を聞き取り、合計150の生活史を集めるというプロジェクト。2段組み1200ページという分厚い本なので一気に読むわけにもいかないというより、1日ひとりの人生をじっくり味わうというおいらのプロジェクトを立てたという訳だ。まだまだ読み始めたばかりだが、どの話も面白く語り口からその時代の風景、背景が甦って来るってんだからたまらんですばい。ただ漠然と俯瞰しながら東京と言う街を眺めていれば気付くことがなかった人間に、しっかりと耳を傾ければはっきりとその人間の生き方が見えてくる。そんな人たちがこの東京という街を支えていることに改めて気づかせてくれる。

日常会話でよく聞くフレーズ「語るに足らぬ人生」、いやいや「語るに足る人生」テンコ盛りで芝居にも出来る話が満載。小難しい言葉を羅列するより、人間の生身の言葉のほうがざらざらとした感覚で心地よく身体に入ってくることを立証した本である。

ウクライナから隣国に逃れる女性、子供、老人、すべてを捨てて命を選択する人達。逃げたくとも小児がんに罹り逃げ場を失った子供たちと病院関係者。これらの映像を見ればプーチン政権も自壊するのだが情報統制してる現状ではなかなか難しい。世界が知恵を出し合い何とかしようとしてるのに、あのユニクロさん、ロシアから撤退しないなんてあり?

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桜を待つ梅

2022/03/07
【第1590回】

「ザ・ユナイテッド・ステイツVS.ビリー・ホリディ」鑑賞。おいらも長いこと聴き続けているビリー・ホリデイの名曲を圧巻の歌唱と熱演で2時間釘付けにしたアンドラ・デイに拍手を送りたい。特に彼女の代表作である「奇妙な果実」(歌詞が黒人へのリンチを歌った内容で、暴行されて木に吊るされた黒人の遺体を、"果実"にたとえた)をホリデイが憑依したかのようなステージでの姿は圧巻である。とても演技未経験な歌手だとは思えない。

この映画は伝記映画と言うよりも、アメリカの暗部をえぐった映画であり、今なおその差別も含めてアメリカの抱える病が継続していることで締めくくった事も意義深い。この映画を観ることで、アンドラが人間としてアーティストとして、ビリーと深くつながっていく変遷が堪らなく愛おしい。

早速、家に帰りビリー・ホリディのレコードとCDを聴き続けた。本人の歌声は優しく語りかけるように心地よく、今までとは違う形でストーンと身体に落とし込めた。アンドラの表現力がビリー本人との橋渡しをしてくれたに違いない。悲惨な人生だっただけに歌うことによって魂を昇華させようとする姿に、こちらが心洗われる思いだ。

こうやって映画を観たり、音楽を聴けるのも平和あってのこそ。ロシアのアーチストたちも心痛めているに違いない。一日も早くウクライナの侵略を止めて欲しい。爆撃で一歳半の子供を亡くし悲嘆にくれる若い母親の姿、逃げるところが無いと泣き崩れる老婆の諦めの表情、なんとか停戦を願う。

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憑依

2022/03/04
【第1589回】

キエフが危ない...35年前にシベリア鉄道でソ連に行ったことを想い出す。広大な大地を8日間かけての鉄道旅、停車した駅のソ連の人達の素朴な顔、乗り合わせた旅人も様々な人種、時には助け合い談笑しあったあの日あの時の光景、風景が懐かしい。モスクワボリショイ劇場で観たキエフバレー団の「白鳥の湖」の感動も未だに記憶している。東ヨーロッパ最古の都市で芸術に彩られた美しい街を気が狂ったとしか言いようのない権力者の一声で破壊されようとしている。日々流される映像を見ながらなんだか歴史が逆流し、なんとか少しでも死者が出ぬようにと願うしかない。ここまでくるとロシア人が反戦を訴えプーチン政権を打倒すればと思うのだが、声を上げただけで拘束されちゃうんだから話にならない。

訓練だと思って集結した若きロシア兵も、まさかの侵攻で戸惑い心中穏やかではない。そりゃそうだ、同じ民族を理不尽に殺めるなんて相当の葛藤があったに違いない。理性ある軍の指揮者が撤退を命じるなんてことを期待したいのだが、これも今のロシアの体制では反逆罪での死に繋がりかねないのでなかなか難しいのではないか...

こんな状況のなか、コロナもなかなか収束しないのだが、コロナどころではない不安と心配が世界を覆っている。確かにこの時期、酒を飲んでいても食事をしていてもなんともすっきりしない...世界の平和あってもこその日常の至福の時間を早く取り戻さねばならない。

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寄り添う

2022/03/02
【第1588回】

「芸人と兵隊」昨日、松戸演劇鑑賞会で無事千秋楽を迎えることが出来ました。昨年12月中旬に稽古を開始した時点は東京も一日25人程度のコロナ感染者だったのが、年が明けるとまたたくまに1万、2万と増えだし今回の公演も難しいのではと思っていました。がしかし、スタッフ、キャストの皆さんの並々ならぬ努力により昨日までの20ステージを完走しました。昨日、開演前と終演後に役者さんの楽屋に行きましたが皆、感無量、よくぞやりきれた奇跡だ!と口をそろえて言ってました。勿論、スタッフの皆さんの日々の暮らし方も大変だったと思います。こんな時こそ、何とか演劇の側から未来につながるヒントを発信したいという思いが一つになった結果だと思っています。一昨年の9月から今日まで10本の作品をコロナ禍のなかで無事上演できたことにおいら自身も驚いている次第です。芝居を待つお客様があっての演劇です。全国の演劇鑑賞会の皆さん、そして東京はじめ地方のホールに足を運んでいただいている皆さん、本当に感謝です!まして、こんな時期に周囲の反対を押し切って来ていただいているのですから普通の三倍四倍の感謝印です。

昨日もラスト近く、桂銀作役の村井國夫さんが一段と声を張り上げ「戦争なんぞする国のお偉方は馬鹿揃いだ...」この時期にこのセリフ、平和を願う人達の思いが込められていました。

無益な戦争で死んでいく人たちが出ないように...世界の知恵者が何とかウクライナ停戦に持ち込むようにアクションを起こすことを願う...

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平和な時を告げる

2022/02/28
【第1587回】

21世紀は地球上の生き物に難問を次から次へとぶつけているような気がします...その一番登場してならない独裁者を誕生させ新たな戦争の世紀を生み出そうとしています。いまウクライナで起こっていることはその序章かもしれませんね。不安定な時に必ず怪物が現れ、一瞬にして世界を混乱に陥れてしまうこの現状を止めるには、世界の良識ある人たちが声をあげるしかありません。あのプーチン、金正恩、習近平などなど独裁で支配してる人相はどうみたって悪相、こんな人物をトップに据えなきゃならん国民も可哀そうだが選ばざるをえなかったのも国民。日頃、為政者に対して監視の目を緩めるといつだってどこだって同じようなことが起きるってことです。

日々、ウクライナの現地から流れる映像を見るにつけ居たたまれない気持ちになってきます。無益な戦いで死んでいく人達の思いもいかばかりか...

今まさにこの時、トム・プロジェクトで上演中の「芸人と兵隊」のなかで戦地の慰問団の団長(村井國夫さん演じる桂銀作)が慰問中に、相方、妻(柴田理恵さん演じる花畑良子)を戦地で亡くした後に語る台詞。 

「戦争なんぞする国のお偉方は馬鹿揃いだ。少し考えりゃ分かることなんだ。銃を持って殺しあうより、笑いあうことの方がずっと素晴らしい。そんなこともわからない奴は大馬鹿だ。そんなことも分からずに戦場に兵隊さんを送り出す奴は救いようのねえ馬鹿だ...俺はな、戦争が憎い。俺から良子を奪った、美津子から母親を奪った戦争が憎い。」

この芝居、あのあんぽんたんな独裁者たちに観せたいもんでございます。

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平和な一日のおわり

2022/02/24
【第1586回】

島本理生「2020年の恋人たち」、森あゆみ「聖子」を読了。どちらも女流作家である。この二冊に登場する主人公に相通じるものは、好きになった男にはけっして従順にならず一人の人間として己を貫き通す点ではなかろうか...いろんなタイプの男性が次から次に登場するので自分はどのタイプかな?なんて読み方もできちゃいます。この時代男女平等、好きになれば犯罪を起こさない限りとことん愛し合い、嫌いになれば別れて当然。女性目線の展開なんですが、男性が取り残されることもなく引っ張っていく筆力は大したもんでございます。「2020年の恋人たち」の主人公が恋に陥る最後の男性とスペインバルセロナに旅するシーンは、スペイン大好き人間のおいらにとっては懐かしかったな。あのラテンの国に行くと愛のチカラが倍増し、ますます非日常の世界に陥ってしまうんですね。

「聖子」、新宿の花園神社近くに存在した文壇BARを経営し、太宰治の「メリイクリスマス」のヒロインのモデルになったといわれるママ林聖子さんの話。残念ながら2018年に90歳になった時点で閉店となりました。檀一雄、吉村昭、田村隆一などなどなど昭和の文壇を飾った作家の名前が嫌味なく登場します。このママさんも当然嫌味なく名だたる小説家と対等、そして可愛く接するところがとても心地よい。

ロシア、ウクライナに侵攻の報...世界はいよいよ覇権主義と自由主義の戦いに突入いたしました。独裁者が権力を握れば好戦的になるのは必然、そしてあれほど戦争の不条理を何度も味わっている筈なのに...歴史に学ばないアホな権力者にはほとほと呆れてしまいますばい。

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新宿花園神社の梅

2022/02/21
【第1585回】

あのタモリが、なんで街のチンピラがあれほど足上がるの?で当時話題になった1961年に上映された「ウエストサイド物語」が名匠スティーブン・スピルバーグ監督によってふたたび映画化されました。正直、大変気に入りました。何故この時期に制作されたのか?

その意図は十分に盛り込められていました。アメリカが抱える分断、世界が再び戦禍に晒されようとしているときに何が大切か、映画の基本であるエンターテインメント性を失わず157分飽きさせることなく魅せてくれるんですから、さすがスピルーバーグでございます。

TV映画「激突!」、「ジョーズ」(75)、「未知との遭遇」(77)、「レイダース 失われたアーク」(81)、「E.T.」(82)、「ジュラシック・パーク」(93)、そして「シンドラーのリスト」(94)でアカデミー作品賞と監督賞を受賞。この「シンドラーのリスト」のテーマ曲いつ聴いても心に染み入ります。この監督の少年のような遊び心と平和への希求、そしてどの映画にも共通する愛の大切さ、そりゃ娯楽性に満ちた良質な映画が出来ますわ。

ほとんどが無名に近い役者を起用したのも監督の映画に対する未来へのメッセージではなかろうか...むしろ無名の若手を起用したところに新しい「ウエスト・サイド・ストーリー」が誕生したとおもいます。この映画の見どころである「トゥナイト」「クール」「アメリカ」「サムウェア」など数々の名曲とダンスシーン、監督の映像マジックで大満足。おいらはシニア料金¥1200で何だか申し訳なくなるくらいの満足度でございました。

特に印象深かったシーンは、前作にアニタ役で出演していたリタ・モレノが歌う祈りの歌 Somewhereそして様々な争いに対し「話し合えばわかるはず...」と淡々と語る台詞。御年90歳になる老優の佇まいは監督の期待に十分応えておりました。

こんな映画はやはり大きなスクリーンと迫力ある音響設備を備えた映画館で観るべし!

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スピルバーグの挑戦

2022/02/18
【第1584回】

虚と実...遅まきながら「MINAMATA」観てきました。先ずは日本国内でもドキュメンタリーで水俣を扱ったものはあるものの、テレビ、映画でのドラマはなかったジャンルを異国の人の企画で実現に漕ぎつけたことに拍手を送りたい。ジョニー・デップの強固な意志を感じる。企業が生み出す公害に対して何となく腰が引けてるこの国のありように一石を投じたことは間違いない。がしかし、映画の随所で事実と異なる点がいくつか見受けられたのが残念でならない。水俣病が発症してから66年、この長い間には企業、住民との間には言葉に尽くせない軋轢があり当事者ではないと理解できないことが今なお山積している。映画はある意味フィクションでありドラマチックに仕上げるにはいくつかの嘘を盛り込むのもわかる気がするが、この重いテーマを考えるといかがなものかとも思う。しかし、この水俣も然り、時代と共に風化していく中で問題提起したこと自体が大切なことだ。

昨日の北京オリンピックの女子フィギアスケート、ドーピング問題のなか最後にプレイしたロシアのカミラ・ワリエワ選手の演技、彼女の実力からして考えられない度重なる転倒。

彼女が3位以内に入賞すれば表彰式もなし、前に演技したロシアの二選手は3位以内入賞は決まってる中、様々な憶測が生まれる。国家がらみのシナリオなのか、彼女の心理的な動揺から起きたミスなのか...なんとも後味が悪い大会になったことは間違いない。15歳の少女の日常は家とスケートリンクの往復のみ。今回彼女を指導したエテリコーチが、クラブを「工場」、選手を「原材料」と表現したことがある。この言葉から想像するに、選手は使い捨て商品として生産される非人間的な指導の中で進行しているさまが見えてくる。

ホンマに可哀そ過ぎるワリエワちゃん。独裁国家に帰国した彼女のこれからの人生に幸あれと願いたいのだが、虚と実に塗れたこの国に対する不信感は根強いものがあるのですごく心配しちゃいます。

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ウソかマコトか

2022/02/16
【第1583回】

寒風の中お疲れさんでございます...コロナなんかどこ吹く風、路上パフォーマーは生活がかかっております。いや、のし上がって我ここにあり!と叫びたい。新宿の南口で二組が演じておりました、パントマイムのお兄さんは少し切れが悪い感じがしましたが、この寒さのなか精一杯笑顔を見せておりました。一方、福岡から出てきた二人のお兄さん、甘い声で娘さんのハートをしっかりと捉え、ライブ中継をどこぞに送っていました。自家製のCDもそこそこ売れて少しは生活の足しになったかな。今は無名かも知れないが、いつの日か全国区になるに違いないという確信を持ちながら見つめる娘さん達の眼差しが何よりも強い味方でございます。

それにしても今年の北京オリンピック、なんだかしらけちゃいますね。おかしな判定、ドーピングなどなど中国、ロシア、バッハの暗い闇からのおかしな声が漏れてきそうな感じです。

なんども言いますが、オリンピックなんかは止めちまえ!各競技、世界選手権が設定されてるんだからそこで競いあえば充分だと思うんだが...金に塗れたオリンピックいつまでやるんでしょうかね。

「芸人と兵隊」先週、ねりま演劇を観る会の公演に行ってきました。芝居の中身は一段と進化していました。この状況がこのチームの結束をさらに強固にしている風にも見えました。この日は東京23区にも大雪警戒注意報が流され開催を危惧されてたんですが、ここでも演劇の神さんは芝居を守ってくれました。終演後に待ってましたとばかり大量の雪が降りだしましたが、お客様が口々に「今日はたくさんいいもの頂いた」なんて声を聞くにつけ、あらためて芝居創ってきてよかったと思った次第でございます。

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寄ってらっしゃい、見てらっしゃい

2022/02/14
【第1582回】

もう我慢ならない...そんな気持の人達が雪解けの街に繰り出していました。久しぶりの井の頭公園も犬の散歩、若いカップル、シニア世代の人達が「コロナも収束し、今年こそはほんまもんの春来ておくれ...」なんて願いを込めぶらついておりました。いつ終わるとも知れぬコロナちゃんにはほとほと疲れ果てましたなんて顔もありました。吉祥寺の街に唯一残っていた銭湯「弁天湯」も遂に閉業してしまいました。この地で80年近く営業してたんですから地元の方に愛されていたんでしょうね。土地柄、銭湯内でロックの生演奏もやっていたとのこと、役者、絵描き、ミュージシャンがたくさん住んでいる街なので当然かもしれません。それにしても日本から銭湯が次から次に消えていきます。

おいらも少年時代、博多の末広長屋での一番の楽しみはガラの広っぱでの野球、宝劇場では三本立ての映画、そして一日の最後の楽しみは銭湯でした。湯船の中で遊んだり、親父の背中を流したり、くりからもんもんを背負ったお兄さんにびくびくしたり、裸同士の生身のニンゲンの会話に何故かそそられたものでした。好きだった女の子と鉢合わせした時は、それはまあなんだかそわそわしながら、あれこれ想像しながら湯船に浸かっておりました。男湯と女湯の区切りはあったのだが湯船の下部は20センチぐらい空いて繋がっていたので余計に湯の温度と相まってのぼせていたのかもしれません。

トム・プロジェクトでも昨年10月に銭湯を舞台にした「にんげん日記」を上演したばかりです。3人の老親友が休業していた銭湯を復活するために悪戦苦闘する話でした。生身と言う言葉が疎遠になる昨今、この言葉が一番似つかわしい銭湯が無くなっていく様を見るにつけ、昭和が霧の彼方に消えていくようでもございます。

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銭湯すたれば、人情もすたる

2022/02/09
【第1581回】

新宿の街は相変わらず雑多な街である...昔ながらの古い建物が立ち並ぶ新宿ゴールデン街、思い出横丁(随分前まではしょんべん横丁と呼ばれてました)、新宿二、三丁目辺りなんぞは野良猫にとっては居心地が良い場所である。居並ぶ飲食店からのおこぼれ、ノラちゃんをこよなく愛する心優しきおばちゃんなんかが結構面倒を見ている。この寒い日が続く昼間なんかは、お日さまの暖かいぬくもりを求め警戒することもなく顔を出す。久しぶりに拝顔するノラちゃんの表情は様々である。このコロナ禍の中、野良猫社会も生存を懸けての仁義なき戦いが繰り広げられているのではないかという痕跡を見るにつけ痛々しい。傷だらけの顔に、きつい眼差し、食料難なのか毛並みも悪い。おいらが近づくと少し警戒する様子も窺える。平和な時代には向こうから甘えるようにすり寄ってくるノラちゃんも沢山いたのだが、やはり時代環境の影響は末端の生き物にも及んでいるに違いない。

昨日、岩合光昭の世界ネコ歩きを観たのだが、フランス・ブルゴーニュ地方を呑気に散歩するネコの背景がなんとも美しい。ブドウ畑、古い小さなお城、ワインの貯蔵庫を何気なく回遊するネコの佇まいに、なんと幸せなネコちゃんたちだろうと思った次第だ。人間も同じ、どこで生まれどこで育つかによって運を左右するってわけだ。

でも、新宿のノラちゃんの必死に生きる姿にも十分学ぶものがありました。ある日の新宿ゴールデン街、千鳥足で歩くおいらに厳しい眼差しを向けるノラちゃんが「しっかり生きんかい!」思わず背筋がしゃきっといたしました。

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居眠り運転はいかんニャー

2022/02/07
【第1580回】

北京冬季オリンピックが開幕しました。選手の皆さんは、この日のために錬磨したすべてを曝け出し気持ちの良いプレーを連日見せてくれている。なのに釈然としないのは習近平、バッハの動きである。ともに権力の座をさらに延長すべく、この大会を政治利用してる気がしてならない。北京中心部にぼったくりバッハ会長の銅像まで作っちゃうんだから笑っちゃうね。台湾が入場した時の習近平の苦々しい表情、ウクライナが入場した時のプーチンの居眠り顔。あまりにも露骨じゃありませんこと。なにが平和の祭典だい!もう、オリンピックなんか止めちまえ、世界各地で現在進行形の紛争をどうにかしてからのオリンピックじゃありませんかと言いたい。ぼったくり男爵が未来永劫計画している、お金によるお金のためのオリンピックにいつまですり寄ってくるのかな...先程のニュースで中国共産党の元高官と性的関係があったと告白した女子テニス選手が告発を否定したとのこと。これもバッハが仲介し習近平にゴマすってるんじゃないかしらとの疑惑ぷんぷんでございます。

先日、新宿でうら若き女性に声を掛けられました。なんじゃろかいな?と耳を傾けると、その娘さんポケットから一枚の紙を取り出しおいらに見せつけました。「お金が無く、ドーナツもミルクも買えません。どうかお金を恵んでください。」手書きではなく印刷されてました。あらためて顔を見ると東南アジアの20歳前後の女性でした。たぶん怪しい組織に動かされてるに違いない。おいらも長年、新宿ぶらり散歩の達人をしておりますので、それくらいの見分けはできますことよ。

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梅は百花のさきがけ

2022/02/04
【第1579回】

昨日、第63回毎日芸術賞の授賞式がホテル椿山荘東京で行われました。昨年9月に上演した「帰ってきたカラオケマン」で風間杜夫さんが受賞しました。昨年の菊田一夫演劇大賞に続いての受賞。本当におめでたいことでございます。この賞の63年間の受賞者には滝沢修、宇野重吉、市川猿之助、中村吉右衛門、仲代達矢、蜷川幸雄などなどそうそうたるメンバーが名を連ねています。その中の一人になったのだからたいしたたまげた役者さんです。

人生よく運がいいとか悪いとかいいますが、間違いなく杜夫ちゃん運気を呼び込む気運を持っているんでしょうね...おいらも彼とは半世紀近くの付き合いになるのだが、酒と麻雀に明け暮れてる日々だと思っていたのだが天才はきっちりと人目につかないところで努力してたんですね。そうじゃなきゃあんな振り子の幅が広い芝居はできませんことよ。台本の読みが深いし、相手とのやり取りの間がいいし、もちろん声もよし、要望があればミュージカルだって挑戦しちゃうんだから恐るべし72歳。トムで25年間演じ続けたひとり芝居、まだまだ新作に挑戦する気概十分、多分ライフワークとして一生やっていく気でいると思います。と言うことはおいらも伴走者として走り続けなきゃいかんのですかね...

授賞式の後、いつもは盛大なパーティが開催されるのですがコロナちゃんのお陰で中止。受賞者を囲みながらの団欒がなんとも微笑ましく、賞の重さを改めて感じさせてくれる貴重な場になるのだが誠に残念...いつまで旅を続けるつもりなのかなコロナちゃん、もう十分に世界旅行を満喫したんではないかと思うんですがね。

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よっ!千両役者

2022/02/02
【第1578回】

昨日、無事に「芸人と兵隊」首都圏ブロックふなばし演劇鑑賞会で初日を迎えることが出来ました。オミクロンの爆発的な感染の中、開催にこぎつけた会員さんたちの獅子奮迅の活動には只々感謝です。役者なんぞは板の上に立ってなんぼの世界。それを支えるスタッフの皆さんも滞りなく閉幕してこその充足感でございます。まだまだスタートしたばかり、油断してはなりません...3月1日の松戸演劇鑑賞会まで一気にいきまっせ!

最近、ある演劇祭の企画概要の一部がWEBサイトに流れ話題になっています。その一文とは...「演劇が浸透していない」「人生において不必要なものにカテゴライズされてしまう」その理由のひとつとして、その要素の1つがかつて反権力が演劇や芸術の要であるかのような謂れを受け、今も根強くそのような言動が蔓延ることであるが、演劇が一般社会においてそのような印象を持たれることはその分野の未来的な展望を阻害することに他ならない。本来であればその権力というものにさえ左右されずに羽ばたけるものが、自身の構築した鎖によって自由と世界の広がりを失い、結果として今の演劇は公共、大衆というものから大きくかけ離れている...この演劇祭のスポンサーの一社が、テレビなんかにひょいひょい出演しカレーの宣伝してはるおばはん経営のホテル。おいらもこのホテルに宿泊して驚いた記憶があります。なんと客室内に南京大虐殺や従軍慰安婦問題を否定する書籍が置いてありました。いろんな考え方があるにしろここまで露骨に不特定多数人たちが宿泊する全部屋に配布することには明らかな政治的意図を感じさせずにはいられませんでした。よくは分かりませんが、今回の演劇祭このスポンサーの圧力があったのかな...

演劇にはいろんな考え方があって当然なのだが、何らかの圧力に屈しては断じていけませんことよ。

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冬の森

2022/01/31
【第1577回】

先週の週末は完全なる巣ごもり状態。明日からの「芸人と兵隊」首都圏演劇鑑賞会に備えオミクロンに感染するわけにはまいりません。家の近くを散歩するか、読書、音楽、テレビでの映画鑑賞で時を過ごすしかありません。昨日は、今年1月23日に亡くなったアメリカのジャズシンガー、ビージー・アデールを追悼する日でもありました。地味ながら年輪を重ねた音色は酒の相棒にはぴったりです。日本の曲も見事に彼女のものにして惚れ惚れいたします。2009年8月に77歳で亡くなったエディ・ヒギンズと彼女は対をなすカクテルジャズと言ったところかな...ジャズ愛好家の方々癖のある人達も随分いるので困ったもんでございます。セロニアス・モンク、ビル・エバンス、ジョン・コルトレーン、マイルス・デイヴィスなどなど名だたる奏者とこの二人を同等に扱うなんてけしからん!とのたまう権威主義者、教養主義者、教条主義者の人達はおいらに言わせれば、ホンマのジャズの真髄をわかってらっしゃらないと思いますよ。何が一流で何が三流か?学問じゃございませんことよ、聴く人の感性がより深くより広ければ心地よく身体に溶け込んでいくもんでございます。この二人に共通していることは、己の生き方が鍵盤を通して上品かつリリカルであること。おいらの歳くらいになると、この音色は至極のプレゼント、少しばかりオーバーかもしれませんが生きててよかったとさえ感じ、酒が一段と美味しくなるんでございます。

キャスト、スタッフも事前のPCR検査、全員陰性が先程判明。明日から3月1日までの公演無事終えることを願うだけ...演劇の神さん頼みまっせ!よしゃ!任せといてや...との声が聞こえてまいりました。

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酒を片手に♪

2022/01/28
【第1576回】

昨日、東京芸術劇場シアターウエストで公演している青年座の「ある王妃の死」を観劇。今から130年前に、日本の軍隊が朝鮮の王宮の壁を乗り越え王妃を引きずり出し殺害するという事件をシライケイタ氏が戯曲した作品である。韓国内ではほとんどの人が知っているのに日本人はほとんど知らない。こんな事柄があちらこちらに残っているのが未だ日本と韓国がしっくりしない要因であることは間違いない。演劇が歴史の闇に光を当て白日の下にさらけ出すことの役割は大切なことである。劇団青年座とシライケイタ氏の今回の上演に拍手を送りたい。

今回の芝居で、冒頭から最後まで生演奏でドラマを盛り上げた大藤桂子のチェロが素敵だった。奏でる音色で場面に登場する人物の心模様、葛藤を表現するチェロという楽器の素晴らしさを改めて思い知らされた次第だ。我が家に帰り早速、おいらの愛聴盤に聴き入った。

ラトビア(旧ソビエト連邦)出身のミシャ・マイスキー、姉がイスラエルに亡命したことにより強制労働収容所で18か月間の生活を強いられる波乱万丈の人生を送ったチェロ奏者である。今から35年ほど前、新宿ゴールデン街「ガルガンチュア」で耳にし即購入した「夢のあとに」は何度聴いたであろうか...J.S.バッハ: 無伴奏チェロ組曲もなかなかです。

もう一枚、おいらが愛するパブロ・カザルスの「鳥の歌 カザルス・ホワイトハウス・コンサート」スペインフランコ独裁政治に最後まで抵抗した20世紀最高のチェリストです。

鳥の歌を演奏するカザルスの息使い、声まできこえてくる演奏に何度も涙がちょちょぎれました。

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人の声に一番近い音域を持つ弦楽器

2022/01/26
【第1575回】

いやいや、オミクロンの感染のスピードがあまりにも速すぎ、到る所で困惑しております。舞台の世界でも役者、スタッフに感染者が見つかり公演中止の報が流れています。昨日の新宿の街ではマスクもしないで大声で叫んでいるオッちゃんがいました。注意したいのだが、逆襲に合いとんでもない事態に陥った事件が連発している昨今、そうはたやすく声は掛けれません。当人もコロナ禍の中、情緒不安定、錯乱状態に陥っているのでは...

カズオ・イシグロ「クララとお日さま」読了。ノーベル文学賞受賞後の作品、内容は人間と対等に付き合える程に進化したアンドロイドの視線からの物語。現世の人間の様々な視線、表情、見ている対象物、発言内容などを観察して、登場する人物の感情を読み取れる高度の能力を備えているロボットに着眼点をおき文学にしたのが素晴らしい。この主人公クララが人間以上のレベルで思考し感情を吐露する姿を通して、生身の人間に問いを発しているのでは...いや、近未来このロボット達が世界を支配する世界が来るかもね。

道の側の花壇に葉ボタンが咲いていました。この葉ボタンに「可愛いね、綺麗だね...」なんて声を掛けてる2,3歳の女の子には若い父親が連れ添っていました。コロナで保育園が休園になりパパが休みを取り世話をしているんじゃないかしら...オミクロンの包囲網に包まれつつある日本列島でございます。

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葉牡丹
(花言葉~愛を包む)

2022/01/24
【第1574回】

今日の東京は少し寒さが緩んだ感じです。「芸人と兵隊」東京公演無事に終えることが出来ました。東京の感染者1万人を突破したというのにキャンセルもせず劇場に足を運んでいただいたお客様に只々感謝です。単なる風邪と言う人もいるし、もっと厳しくとメディアを通じて吠える人もいるし、いずれにしても制作する側にとっては日々綱渡りの連続です。

2月1日からスタートする首都圏演劇鑑賞会17ステージも、3月1日のラストまで何事もなく上演できることを信じています。芝居を愛する鑑賞会の皆さんも万全の態勢で準備していることだし、あとはこちらが感染しないこと。マスクしないで飲食しているところは、この時期は絶対にアウトですね。このウイルスの恐いところは、自分が感染すると多くの人達の生活を奪うという危うさを抱えている点だと思います。おいらも今日はいつものお店のランチは控え弁当を買って感染に備えました。それにしてもこの国の感染症対策いつまでたってもスピード感が欠如してますな...政治と各省庁のパイプが詰まってるんじゃありませんか?

沖縄の名護市長選挙、沖縄の苦悩が視えてきます。誰も助けてくれない一人ぽっちの島に対して何のチカラにもなれないこの国、そして国民のひとりとして本当に恥ずかしいです。日本に返還されて今年で50年...今の体制がまたこれから50年続く予感さえします。あの青い空と海の美しい風景と等しい生活環境はいつ訪れるんでしょうか...何度か訪れた沖縄の人たちの、何かを訴えるような眼差しが目に焼き付いて離れません。

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おつかれさまでした。

2022/01/21
【第1573回】

19日に初日を迎えた「芸人と兵隊」も今日で一応、東京公演を終えます。

今日から蔓延防止が施行され現場はなお一層の緊張を強いられています。こんな状況の中劇場に足を運んで頂いてる皆さんが神様に見えてきます。家族には、こんな時にわざわざ芝居観なくても良いのにとの制止を振り切っての観劇。こちらもそんな気持ちに応えるべき芝居をしないとの思いを背負いながらの日々です。昨日の芝居はそんな声に十分に見合う芝居でございました。一寸したことから芝居を大いなる変貌をいたします。コロナが変異するんだったら芝居だって変異しないと割が合いませんことよ。こちらの変異は害ありません、思いきり変幻自在に変異しまくってお客さんに喜んでいただければ本望でございます。

芝居が終わってのカーテンコールの拍手が芝居の出来不出来を証明してくれます。拍手にも様々な表情があります。その微妙なニュアンスを感じ取るのもプロデューサーの仕事です。満足のいく拍手の質量を頂いた時はほんまにプロデューサー冥利につきまっせ...

昨日、読売演劇大賞の発表がありました。今回の芝居に関係している二人が受賞してました。村井國夫さんが優秀男優賞、つい最近上演したトム・プロジェクトプロデュース公演「にんげん日記」の演技に対しての受賞は嬉しい限りです。そして今回の演出を担当している日澤雄介さんも主催する劇団チョコレートケーキの作品賞、優秀演出家賞の受賞。なにも賞を貰いたいために芝居やってるんじゃないのだが、これもこれからの励みだと思ってのご褒美だと思えばよろしゅうございますことよ...

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今日千秋楽の亀戸

2022/01/19
【第1572回】

おいらが暮らす街のいつもの書店が突然閉店しました。40数年間地元の愛された素敵な本屋さんでした。大型書店と違って、この店のセンスで並べられた本を眺めているだけで幸せな気持ちになれました。おいらもできるだけこの店で本を購入しようと努力はしたんですが世の中の流れには勝てなかったんですね。だって、若い人あまり本読まなくなったもんね。電車に乗っても9割以上の人がスマホに一心不乱状態、そんなに情報欲しがってどうするの?ゲームの暇つぶし面白いのかな?誰かと連絡とってないと不安なのかな?スマホから何か新しいもの生まれるのかな...とにかく、この世界を息苦しくしているひとつの要因がスマホであることは紛れもない事実だと思います。そんな新兵器に追いやられたのが出版業界、この豊かな世界を築き上げた役割に本が果たした役割は多大なるものがあると思います。そして、悩み苦しんだ時に救いの手を差し伸べてくれたのも本に記された数々の言霊、その本を扱う書店が無くなったときは世界の滅亡といっても過言ではないと思います。

新しい本と出会い、趣向凝らした装丁を手に取りページをめくる感覚はまだ見ぬ世界に誘ってくれるワクワク感満載です。アマゾンで買えるじゃんなんて利便性もわかりますが本屋さんに行って書棚に並べられた書物を眺めるあの時間こそ読書の第一歩であると思います。今日も車内で、古びた文庫本を手に貪るように読書する女学生を見つけたときはおいらも何だか嬉しくなりました...まだまだこの国にも未来はあるのかもしれないななんてふと思っちゃいました。

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冬景色

2022/01/17
【第1571回】

寒い日が続いていますが今日はいくらか寒さも緩みました。昨日「芸人と兵隊」の最終稽古でした。さあ今年こそはと思っていた矢先のオミクロンちゃん、困ったもんでございます。芝居はまるで新作のような仕上がりでした。2019年の初演の時に比べキャストの皆さんの再演に対する心構え、そして一部キャストが変わり化学反応が起きたのかメリハリのついた芝居になっていました。改めて芝居ってものはまさしく生き物であり違う角度から異質の風、命を吹き込むと変異しちゃうもんだと思った次第です。コロナと同じやん、そっちが変わるんだったら芝居だって変わってみせるわい!それにしても現場の皆さんの気持ちはいかばかりか、気を付けてもかかっちゃうこのオミクロンに怯えながらの日々はつらいもんでございます。明後日の本番から又もやマンボウ、お客さんだってひいちゃいますがな...でも、来てくれるお客様が居る限り公演をやりきるのが我々の責務。このご時世、普段はマスクをしながらの稽古で相手の表情が今一つ見えずなかなかとやりにくいものだが、昨日は最終稽古と言うことでマスクなしでの一発勝負...気合十分でした。どこに行ってもマスク顔、これは異常な世界ですね。「目は口程に物を言う」ということわざがありますが、口の表情だって意味深なものがあります。目と口があってこその人様の表情、一日も早くマスクを外せる日が来ますように...

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冬空の裸木

2022/01/13
【第1570回】

不穏な日々が続く時には、こんなご時世ですから家で音楽、読書、映画なんぞで過ごすのが何よりです。昨日は久しぶりにスペイン映画の鬼才ペドロ・アルモドバル監督とペネロペ・クルスが、4度目のコンビを組んだミステリー仕立ての恋愛ドラマ「抱擁のかけら」を鑑賞。この監督ちょいと変態気味なんだが、色彩感覚、既成のモラルをぶち壊すエネルギーが心地よい。そして何よりも女優ペネロペ・クルスの美しさと大胆さにしびれてしまいます。1992年作「ハモン・ハモン」で鮮烈なデビュー、そして2007年の作品「ボルベール 帰郷」ではスペイン女性の生活感もたっぷりと魅せてくれました。いい意味でも悪しき意味でも最もスペイン的な女性ではなかろうか...それにしてもアルモドバル監督、女性を描くのがとても上手です。女性と言う生き物はこうなんですよと能書き垂れてるインテリよりも、彼が発する映像言語で理屈を超えてビシビシ伝わってくるところが奇才たる所以です。

スペイン映画でおいらが大好きな監督ビクトル・エリセ、81歳になるのだがなんと3本しか創っていない。1973年「ミツバチのささやき」、1982年「エル・スール」この2作品はおいらにとっては宝物みたいな映画である。スペインの風土、人物像、歴史的な背景を深く掘り下げ、まるで絵画を観てる感覚にさせ想像力を喚起させる貴重な作品。

スペインサロブレーニャに住んでる時に、アンダルシアの白い村アルプハラでエリセ監督を見かけた時に声をかけたことが懐かしいです。

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雪積もるシエラネバダの手前がアルプハラ村

2022/01/11
【第1569回】

3連休の明けの今日は雨がしとしと降る寒い日になりました...先週の週末は高校、大学ラグビーの日本一をかけた試合がありました。いつも思うのですが、あの大きな体でがっつんこしてもなかなか痛まない彼らの屈強な身体能力にただただ感服する次第です。コロナ禍のなかでのストイックな日々を過ごしての戦い、あっぱれでございます。15人が一体となって前に進む姿を観るにつけラグビーファンはたまらんですばい。
来週には「芸人と兵隊」の本番を控える中、オミクロン株の拡大に気をもんでおります。今年こそはと思ってた矢先こんなに早く感染者が増えるなんて困ったもんでございます。沖縄なんぞはひどいもんで、未だこの国はアメリカの属国なんだと思い知らされました。そしていつも真っ先に被害を被るのは沖縄。この島の人たちの苦渋はいかばかりか...今年は沖縄が本土に復帰して50年を迎えますがこのシステムはいつまで継続されるのか?北朝鮮、中国、ロシアの挑発が激しさを増す中、なかなか解決策が見つからない現状、こんな時こそ戦後非戦を貫いてきた日本が外交力を通じて力を発揮すべきだと思うのだが、この国の軟弱な政治家さんには悲しいかな期待が持てません。
神保町にある岩波ホールがコロナによって54年の歴史に幕を下ろすことになりました。本屋街にできたこのホールで名画を随分観させていただきました。「旅芸人の記録」「大樹のうた」「家族の肖像」「惑星ソラリス」「バベットの晩餐会」などなど...儲け主義のシネコンと違って質の良い映画を選りすぐって、いつも観客に何かを突きつける作品を上映してきました。時には、ちょいと芸術至上主義が鼻につく時期もありましたが、このミニシアターが果たした役割は大きかったと思います。

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先週の雪の日

2022/01/06
【第1568回】

裸木の季節がやってきた...枯れ葉が舞い散り、木々に宿っていた命も役目を終え凛々しく空に向かって屹立する樹木が美しい。贅肉をそぎ落とし寒風に対峙する武士のようでもあり、気ままに姿形を変えた枝たちは舞踏を楽しんでる風にも見える。何時間眺めていても飽きないこの季節の風物詩でもある。
この裸木を眺めながら2005年に上演した「ダモイ」を想い出した。シベリアに抑留された山本幡男さんが帰国の願いも叶わず病床から綴った一編の詩。

雄々しくも孤独なるかな 裸木
堅忍の大志 痩躯にあふれ
梢は勇ましくも千手を伸ばし
いとはるかなる虚空を撫する

極寒のシベリアで、葉を落としきって野に立つ樹木を見ながら書いた詩の一部である。そして自分は帰国できない覚悟で自分の思いを友に託す。
「今のぼくの考えをね、来るべき次の時代の...なんて言ったらいいんだ、右でも左でもない、赤でも黒でも...全体主義でも個人主義でもない新しい...第三の思想に繋げたいんですよ。どうしても...出来るかどうかは分かりませんが...。どうしても...。」
山本幡男さんの残した言霊を駆使しながら戯曲にした作・演出家ふたくちつよしさんの筆力も素晴らしかった。こんな時代だからこそ、この作品は上演せねばと今でも思っている。
こんなことを書いてるうちに外は雪景色、雪にめっぽう弱い大都会、そしてひたひたと迫ってくるオミクロン、今年もどうやら波乱含みの年になりそうですな。

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会社のベランダから

2022/01/04
【第1567回】

明けましておめでとうございます。

トムも今日から仕事始めです。新年早々、嬉しいニュースが飛び込んできました。風間杜夫さんが昨年上演した一人芝居「帰ってきたカラオケマン」で第63回毎日芸術賞(毎日新聞社主催)を受賞しました。72歳を感じさせないパワーで会場を沸かせたこの芝居、今年の9月に再演が決まっています。昨年は緊急事態宣言のなかでの公演で観客制限があり、相当のお客様を断らざるを得なかったこともあり見逃した方には是非観ていただきたい作品です。

それにしてもオミクロン株少しずつ増え始めていますね。年末年始の街中も人で溢れ大丈夫かな?という気がしていますが、もう以前みたいなスタイルに戻ることはないのではと思っています。とにかく油断しないで無茶しないことです。何事も気配に敏感であれということを肝に銘じて行動するしかありませんね。

おいらの正月は杉並大宮八幡神宮初詣でスタートしました。元旦の15時に行ったのだが長蛇の列、1時間半後にやっと初詣が出来ました。寒さの備え完全防備で向かったのですがさすがに身体が冷えちゃいました。もう若くないんだから、なにも元日に行かなくてもと思ってしまいました。焦らずに大地をしっかりと踏みしめて、今年も何とか素敵な芝居を届けることを念頭にスタートいたします。

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初詣2022