トムプロジェクト

2023/07/31
【第1782回】

先週の週末、新宿歌舞伎町に新たにオープンした新宿シアターミラノ座で、唐十郎作「少女都市からの呼び声」を観てきました。この場所は嘗ての映画館「ミラノ座」があり巨大なスクリーンと大音響のスピーカーで数多くの名画を堪能した場所でした。前の広場を挟んで「コマ劇場」もありました。この劇場で美空ひばりも観ましたな...まさしく昭和の匂いがプンプンしてくる場所でもありました。この広場では、いろんな大道芸人が現れ道行く人たちを楽しませてくれました。そのなかでも印象的だったのは、殴られ屋で商売してるオッサンでした。「どうぞ私を思いっきり殴ってストレス発散しませんか!一分間、千円で殴り放題!」多くの人達が集まり皆興味津々、おいらが覗いた時は、いかにも悪そうで屈強な男が本気でオッサンに襲いかかりぼこぼこにされてました。腫れた顔でも丁寧に「ありがとうございました」とお礼を言ってましたな。新宿は、いつの世もカオスの街、得体のしれない人種がどこからか集まりどこかへ散っていくあぶくのような街...

所で芝居の方はといいますと、この新しくできた劇場、なんだか慌てて作った感じ。ロビーは狭いし客席も少々チープな感じがいたします。何といっても入場料¥12000しますからね。それなりの座り心地は欲しいもんでございます。

少女 雪子を演じた咲妃みゆさんの透明感が素敵でした。動き、声 、表情、全てがはまってました。そして芝居を締めていたのが風間杜夫ちゃんでございました。最後は歌まで唄って貫禄十分。そして主演を演じた関ジャニ∞安田章大さんを観るために駆けつけた多くの若い女性ファンが、これをきっかけに芝居を観に来てくれたらなと思った次第です。

この日は、4年振りに開催された隅田川花火大会とも重なり、新宿の街も外国観光客も含め大賑わいでございました。

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7月31日の空

2023/07/28
【第1781回】

「海をあげる」タイトルに惹かれ読了。沖縄に住む琉球大学教育学研究科教授の上間陽子さんが書き上げたノンフィクションです。沖縄に暮らす人たちの痛切な叫び声を無視し続け、観光地としての素晴らしさだけに注目する本土の人達に対する怒りを現地に住む人たちの声を通して描き綴っている。国の最高機関が最良の決定という大義名分の元、辺野古に土砂を投入した日本に対しても絶望的な言葉で抗議している。こうなると一連の流れは沖縄に対しての搾取であり差別だと断言する。「差別をやめる責任は、差別される側ではなく差別する側の方にある。」にも関わらず、彼らの問題として全てを押し付ける。

そして彼女はこの言葉で締めくくる。

 

そして私は目を閉じる。それから、土砂が投入される前の、生き生きと生き物が宿るこっくりとした、あの海のことを考える。
ここは海だ。青い海だ。珊瑚礁のなかで、色とりどりの魚やカメが行き交う交差点、ひょっとしたらまだ人魚も潜んでいる。
私は静かな部屋でこれを読んでいるあなたにあげる。私は電車でこれを読んでいるあなたにあげる。私は川のほとりでこれを読んでいるあなたにあげる。
この海をひとりで抱えることはもうできない。だからあなたに、海をあげる。

 

これは沖縄に住む人たちの絶望を、見て見ぬふりしているすべての日本人に託したメッセージである。

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ちびっ子盆踊り

2023/07/26
【第1780回】

アメリカの俳優労組がストライキを開始した。米ハリウッドでは、過去43年で最大規模のストとなるそうだ。労組は、動画配信大手や制作会社などに対し、利益の公正な分配と労働条件の改善などを求めている。これは将来、役者の仕事もAIにとって代わられるんじゃないかという危機感から発したものだ。事実、AIで作られた映像を見てびっくりしました!どんな人物の顔、声すべて出来てしまうんだから俳優の仕事は無くなってしまう時代が、もうすぐ近くまで来てるのだからストも当然のことかもしれない。

こうなると最後に生き残るのは演劇かもしれない。舞台での生モノの役者だけは代替えは効きませんな。様々な人生を背負った老若男女の役者を、今まさに目の前で観ることができるからこその演劇である。古代から世界各国で上演されてきた演劇の底力がこれからますます底光りするんじゃないかしらと思っています。

それにしてもこの暑さ、東京は37度。この先、地球はどうなってしまうんでしょうね?今のままではあらゆる災害に晒され、当たり前の生活が成立しなくなってしまうんじゃないかしらと悲観的な状況を考えてしまいます。地球温暖化を防止するためには、いまの生活を見直し二酸化炭素の排出量を減らすことが必要とわかっちゃいるけど止められない!というのが今の世界の現状です。政治家を筆頭にニンゲンという生きもの、いよいよ地球最後の日を迎えないと気付かない鈍感な生きものなのかもしれませんね。

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猛暑に負けずミンミンミン♪

2023/07/24
【第1779回】

先週の金曜日、新宿文化センターでの島田歌穂さんの「Musical,Musical,Musical!!」に行って来ました。スペシャルゲストに上白石萌音を迎えての華やかな会でした。今回のテーマは「ミュージカルとジャズ」、そういえばジャズのスタンダードナンバーの歴史を辿ると、実は元々ミュージカルのために作られた曲が多いのも事実です。おいらが20歳のときに新宿ジャズ喫茶DIGで聴き衝撃を受けたジョン・コルトレーンの「マイ・フェイヴァリット・シングス」もミュージカル「サウンド・オヴ・ミュージック」の挿入歌である。この日はジャズ喫茶で耳にしたナンバーをたくさん聴けてとてもハッピーな一日でした。

音楽監督である島健さんと演奏者との息もピッタリ、歌穂さんがのびのびと楽しく歌う姿に観客も大満足でございました。

来年は島田歌穂さん、大和田獏さん出演の「モンテンルパ」の再演が決まっています。芝居の中で歌われる歌穂さんの歌は絶品です。獏さんの芯の強さを表現した演技も見ものだし、真山章志の迫真のシーンも見ごたえがあります。出演者のなかでもっとも若い辻井彰太の生きの良さが舞台に弾みをつけています。2021年、コロナ禍のなかでハラハラドキドキしながら上演した芝居が、多くの人達の再演を望む声に押され上演できることは本当に嬉しい限りです。

週明けもアッチッチ!夏空に映える百日紅の花を見上げると暫し暑さも吹っ飛んでしまいます。

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サルスベリ

2023/07/21
【第1778回】

先日、トム・プロジェクトに3年半勤務した石井君の送別会を行いました。振り返ってみれば29年間いろんな人達がトムのために働いてくれました。演劇業界は昔からなかなか食べていけない産業の一つに数えられていました。役者になろうなんて言ったら「何が悲しゅうて河原乞食になるの?」てな言葉が返ってきたもんでございます。そんな世界で芝居を企画して制作するなんて無謀なこととは知りつつ何とかやってこれたのも、吐夢駅に立ち寄り関わった人たちのお陰だと思っています。演劇の世界からの人もいれば、全く関係ない仕事から入社した人もいます。考えてみれば社名が吐夢ですから「よっしゃ夢でも見ようじゃないか!いやいや叶えて見せまっせ!」という意気込みがなければ継続できない仕事です。

何もないところから立ち上げ、1本の芝居を創り上げることはなかなか大変だからこそやりがいがある仕事だと思っています。まさしく無から有、この過程の中に様々なドラマがあり発見があることに興味津々のある人ほど長続きするような気がします。

いろんな事情で退社した人たちにとっても共に芝居を創りあげるなかで得たものを、今後生きる上で役立てて欲しいと思います。

人生の旅、いくつもの駅で降り、いろんな人と出会い様々な体験を得て終着駅に向かいます。

そんな長旅の中、吐夢駅に立ち寄ってくれてありがとう!感謝の気持ちで一杯です。

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夏の空

2023/07/18
【第1777回】

いやいや、一歩外に出ればサウナ状態です。散歩なんぞしてると頭がぼんやりとして参ります。高齢者は心身ともに鈍くなっていますのでおいらは大丈夫なんて言ってるととんでもないことになっちゃいますからご用心。てなことで、どうしても散歩したいならば日が沈んでからがよさそうですな。こんな時は、クーラーかけて家に居るに限ります。昨日はアマゾンビデオで「ヒトラー~最期の12日間~」観ました。ヒトラーと言えば、狂信的な言動でユダヤ人大量虐殺を犯した捉え方の映画が数多いのだが、この映画はヒトラーの衰弱していく様を周囲の人間を通して丁寧に描いています。なんだか未来の窮地に陥っていくプーチンの姿とダブってきました...今なお侵攻継続のロシア軍の兵士の中からもこんな話が出ています。ロシア兵が前線でのウクライナ側への攻撃で弾が当たらないように撃ってるらしいとのこと。なぜならばロケット弾を撃ち尽くすと部隊は交代できる。だからはやく在庫切れして、前線から引き揚げたいのが本心らしい。普通に考えてみれば、侵略もされてもいないのに同じ民族を殺戮するなんてことは狂気の沙汰である。しかもプーチンの私利私欲のために命を捧げるなんてことはどう考えても理不尽である。良心のあるロシア人であればそろそろ気づき始めてもおかしくないことである。

戦争、気候変動による地球規模の災害、そして独裁国家の不穏な動き...暑い暑いなんて言っていられないくらいの危機感を持ってないと、もしや一瞬にして地球は滅びてしまうかもしれませんね。

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納涼

2023/07/14
【第1776回】

先日、今年11月から上演する風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン最後のロマンス」のチラシ、ポスターの写真撮りをしました。現在、新宿歌舞伎町にオープンしたシアターミラノ座での公演中にも関わらず元気な姿で撮影スタジオに来てくれました。新宿梁山泊でのテント芝居に続いての本番で御年74歳になる杜夫ちゃんパワフルですな。シアターミラノ座では関ジャニ∞の安田章大、宝塚出身の咲妃みゆ他若手俳優に混じって連日大奮闘の舞台を演じきっているとのこと。

それにしても風間杜夫ひとり芝居、1997年にスタートして今年で26年。トム・プロジェクトが芝居を創り続けて来年で30年になります。トムの歩みとともに築いてきた作品です。日本国内だけではなく、ヨーロッパ、アメリカ、アジアまで巡演し数々の賞をいただいた価値ある作品でもあります。ひとつの作品がここまで長く継続できたのもスタッフの皆さんとの相性が良かったことと、お互いの信頼があったからだと思っています。勿論、映画、舞台、テレビでの長いキャリアを持つ杜夫ちゃん。どの作品も彼の魅力は発揮されているのだが、このひとり芝居は風間杜夫の人間性、表現力のすべてがてんこ盛りでございます。撮影中にも様々な表情を惜しげもなく見せてくれて現場の雰囲気は最高潮。74歳になってもお茶目で可愛い杜夫ちゃんでございました。

今週の週末からの3連休、アッチッチの日々が待ち受けております。そして連日報道される豪雨による被害、お天道様は今のニンゲンの振る舞いに相当怒りまくってるんでしょうね。こんな時代だからこそ、心穏やかに日々感謝して過ごしたいものでございます。

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夏の風物詩

2023/07/11
【第1775回】

先週の週末、女性ばかりの集団<理性的な変人たち>第三回公演「海戦」を観劇。この作品は1924年に築地小劇場のこけら落としで上演された作品です。第一次大戦中に、イギリス海軍とドイツ海軍の主力艦隊同士がぶつかった、同大戦中最大の海戦をモデルとしています。いや、面白かった!これぞ演劇でしかできないという要素が満載。音、美術、衣装、いろいろと趣向を凝らしていて飽きさせません。7人の女優も個性的、皆さんそれぞれ演技スタイルが違っていてそれなりに楽しめました。それにしても99年経った今、なぜこの作品を選択したのか?世界が又もやきな臭い世界に突入しようとしている現況を考えると当然かもしれません。そして女性だけで体当たりの演技でインパクトを与えようとしたことも正解。要するに今回の企画ハナマルでございました。おいらもこれまで、この集団の芝居すべて見てきましたが、まさしく<理性的な変人たち>の本性が見えてきたなという公演でした。トム・プロジェクトに所属している滝沢花野さんがとっても素敵でした。この集団のリーダー役でもあり、彼女の良さが随所に出てました。

表現はいつも新鮮でなければなりません。長年芝居やっているとついつい安全パイのなかでやってしまいがちですが、知らぬ間にこびりついた垢は洗い落としていかないとさし障りのない演劇になっちゃいます。勿論、経済基盤が脆い中での公演も厳しいのは承知の上なのですが、常に新しいことに挑戦、冒険していく心意気だけは忘れたくないと思っています。

そんなことを思わせてくれる一日でした。

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7月の空

2023/07/07
【第1774回】

劇団チョコレートケーキ「ブラウン管より愛をこめてー宇宙人と異邦人―」を観劇。これまで多くの戦中戦後に於ける歴史上の人物を、独自の視点で描き続けた劇団が新たな脈絡を手掛かりに創り上げた作品。作家・古川健が子供の頃に好きだった特殊撮影番組に登場するヒーローはじめ、番組にかかわる人たちとのやりとりに差別問題を絡ませる姿は、あたかもこうして芝居を創っている人間にもリアルに感じさせてくれる舞台でした。

モノを創り上げるってことは何事も大変なことです。ましてや芝居なんぞは、貴重な時間とお金を頂いて2時間拘束してしまうんですから、一歩間違えば詐欺罪で訴えられてもおかしくないモノですね。しかも、こればかりは人の観方で180度変わることだってあるんですから手強いものかもしれません。そのなかで大切なことは、やはり創る側の主張、信念、哲学だと思います。ここがぶれちゃうとアウトです。その覚悟で芝居を創ること、あとは観客の判断にゆだねるしかありません。

観劇後、三軒茶屋から下北沢に繋がる茶沢通りをブラ散歩してると一軒のよさそうな焼き鳥店に入りました。おいらの感ピューター当たりでございました。家庭的な雰囲気と手作り感満載の焼き鳥と料理。しかもリーズナブルな価格で、28年間地元で頑張っているとのこと。お客さんは良く知っています。開店直後からなじみのお客さんが入って来てました。

要するに愛がある仕事をしなきゃ!すべてこれに尽きますな...

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カノコユリ
(七夕百合)

2023/07/05
【第1773回】

この時期にして我がライオンズはや終戦。おいら70年間、ライオンズを応援してきましたが今年ほど情けないシーズンはなかったのでは...監督、ヘッドコーチ、打撃コーチが最悪ですな。今年から就任した松井稼頭央監督、確かにプレーヤーとしては一流だったんですが、監督としてはお粗末な采配が続いています。残念ながらこの方の監督続投であればライオンズの暗黒時代が間違いなく訪れるでしょう。いつも隣に居る、平石ヘッドコーチもいかがなもんでしょうかね。いくらPL学園の先輩といえども言うこと言わんといかんでしょう!へらへらした二人が画面に映るたびに、厳しくいかんかい!と檄を飛ばしたくなります。昨日のロッテ戦、今井投手が8回1安打無失点で抑えたのに対して、8安打打ちながら完封負けしてしまう始末。采配が素人でも分かるくらいのえっ!の連続。野球通の一般ファンが呆れてしまうんですからあかんです。と言っても、ファンは弱くなったライオンちゃんでも応援し続けます。明日のライオンズを背負って立つ若獅子たちに熱い応援を送ってますよ。こんな暑いときに、熱い応援に沸く満員御礼のベルーナドームを見るたびにフロント陣、何とかせんかい!といいたくなります。今の戦力、残念ながらほかのチームに比べても随分と見劣りしますが、何とか残り試合意地を見せて欲しいもんでございます。

昨日は中野に用事があり行ってきました。50年間様々なイベントを行ってきた中野サンプラザが閉館していました。おいらも何度かコンサート、芝居を観に行きました。駅近で程良いキャパが心地よいホールでした。

東京の主要地区で再開発が進行中。人にやさしい再開発を期待したいもんですね...

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おつかれさまでした
中野サンプラザホール

2023/07/03
【第1772回】

はや文月になってしまいました...各地で熱中症患者も多くなっています。昔は夜にクーラーをつけるなんてことはなかったのに、この異常気象の中、なんだか頭もくらくら肌もじっとり、ついついONにしちゃいますね。団扇を扇ぎながらの夏の風物詩が懐かしゅうございます。おっちゃんたちはステテコ姿で長椅子ベンチでの将棋、ガキはアイスキャンデー舐めながら路地をぶらぶらしとりました。日が暮れて夜のとばりが訪れるあの時間帯の涼みかたが最高でした。

それにしても全国の水害による被害には驚いています。その元凶は地球温暖化に起因していることは勿論のことですが、森が少なくなっていることも大きく関係しています。森の土の中には、植物の根と土の間のすきまや、小さな動物の通り道、くさった根がつくったトンネルなど、大小さまざまなすきまがある。地中にしみこんだ雨は、このすきまに入りこみ、ゆっくり時間をかけて地下を通って、やがて川に流れこむ。つまり、森は一時的に水をためこむ、天然のダムのような役割をしているんです。そんな大切な樹木をばっさりと切り倒し、人間の欲望を満たすための開発が世界に蔓延し、年を重ねるごとに水害のニュースが増え続けているんですね。

最近話題になっている東京神宮の再開発問題然り、100年かけて育てた1000本近くの樹木を伐採しようとしてるんですから、驚き、桃の木、山椒の木。

もう開発はよかですばい...自然の中でゆったりゆっくり暮らしませんか皆の衆。

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