トムプロジェクト

2023/12/27
【第1840回】

トム・プロジェクトも今日が仕事納め。

今年は1作品だけ残念ながら中止になりましたが、ほかの4作品無事に完走できました。芝居はスタッフ、キャスト含め誰一人として欠かすことが出来ないものです。まだまだ感染症も油断できないなか、みなさん程よい緊張感を保ちながら現場を創造できたと思います。そしてなによりも、芝居を観て頂いた観客の温かい声援があったからこそ完走できたと、あらためて感謝。終演後、観客席から出てこられたお客様の表情でその日の芝居の出来が分かります。今年の作品はいずれも満足気なお顔でございました。中にはロビーに立っているおいらに近寄り「良かった!」なんて声を掛けられると苦労も吹っ飛んでしまいます。

芝居は何とか無事に終えることが出来たのですが、日々メディアで流れるウクライナ、ガザ地区での目を覆う惨状、気候変動による災害などなど、世界平和には程遠いのが現状です。日本の政治の劣化も困ったもんでございます。そして一瞬にして訪れる災難、昨日、おいらが良く散歩する道路を歩いていた家族の自動車による事故。奥さんと娘さんを亡くされた遺族の悲しみはいかばかりか...この時代、何が起きても不思議じゃない世の中になってしまいました。

来年こそは、少しでも平穏な時間が流れる年であって欲しいものです。

では皆さん良い新年をお迎えくださいね。

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寒椿

2023/12/25
【第1839回】

2017年に亡くなられた作家・赤染晶子さんのエッセイ55篇と、2011年1月から3月にかけて、翻訳家並びにエッセイストの岸本佐知子さんとの「交換日記」を収めた一冊「ジャムパンの日」読了。何気ない日々のなかで起こる出来事に彼女なりの妄想を絡めた文章が面白い。

 

わたしは蠅取り紙が大好きだ。蠅取り紙は美しい。あのヴィヴィッドな黄色はゴッホの「ひまわり」を越えている。そこに黒い蠅が止まることで、とても見事な色のコントラスが生まれる。蠅は命を投げ出して、この美しさを生み出すのである。これがご飯粒では様にならない。蠅でなければならない。もしかしたら、蠅は蠅取り紙に出会うために生まれて来たのではないか。わたしには夢があった。蠅取り紙に蠅がくっつく瞬間を見たい。芸術の生まれる瞬間を観たい。

 

このなんともシュールな妄想。もしかしたら創造、想像、妄想は人生を楽しく生きる三種の神器かもしれない。これを政治の世界でも生かして欲しいが一歩間違えば、ヒトラー、プーチン、北朝鮮のかりあげ君なんかを生み出す危険もあるので要は使い方次第だ。

おいらも今朝ある妄想に駆られました...いつもは朝早くからやってくる小鳥たちが来ないので、もしや昨日イブのためのチキンをぶら下げてるニンゲンの様子を見て、鳥たちも危機感を感じ、今日のクリスマスが終わるまで身を潜めていようということになったのかしら...

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師走の新宿

2023/12/22
【第1838回】

最近、BS12での東映映画「日本侠客伝」を良く観ています。懐かしいですな!勿論、あの高倉健さん主役のシリーズものです。筋立ては決まりものの勧善懲悪、ラストは健さんの渋い歌声に乗りドスを片手に極悪非道の親分のもとに殴り込むお決まりのコース。その助っ人が鶴田浩二、池辺良などなど豪華ゲストときたもんですからたまりません。ヒロインは藤純子、透き通るような肌にしっとりとした彫り物がこれまたたまりませんことよ。そして、脇役に藤山寛美、大木実、辰巳柳太郎、島田正吾、若山富三郎、二谷英明などなど豪華な顔ぶれ。伴淳三郎、上田吉次郎なんかの登場には思わず笑いがこみ上げてきました。

思えばこのシリーズ、今は無き新宿昭和館でおいらも観たもんでございます。客席には全共闘の学生も来ていました。健さんが殴りこみに行くシーンになると「待ってました健さん!」の声があちこちから聞こえてきました。彼らにすれば時の権力を打倒するためにゲバ棒持って国会に向かう姿をオーバーラップしたに違いありません。

旧きやくざ映画の典型ながら、役者の粋、色気、そして存在感、見世物としてはなかなかのものです。監督を務めるマキノ雅弘の職人芸にただただ感心します。映画に対する愛情がスクリーン一杯に溢れかえっています。

高倉健さんみたいなスターはもう出てこないでしょう...勝新太郎、三船敏郎然り、あの時代だからこそ誕生した俳優だと思います。それにしても何事にも窮屈になったこの時代、すべてがこじんまりとし、程よくまとまり過ぎたモノに覆い尽くされていて、おもろくありません...こうなったら、自分でおもろくするしかありませんな。

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新宿南口

2023/12/20
【第1837回】

昨日は中津留章仁作・演出の「STRANGE ISLAND」を観劇。新宿御苑前駅の近くにあるサンモールスタジオの一番前のかぶりつきなので緊張しました。最前列で観るなんてことは普段ありません(つまらん芝居であっても居眠り出来ませんからね...)美しい女性が次から次に登場するのでモデル系事務所主催の芝居かなと思いながら観ていたんですが、おっとどっこい、ここは中津留イズムがびっしりと貫かれ、各俳優熱演、2時間40分の長丁場ながら最後まで楽しめました。誰しもが持つ人間の欲、愛、情、のやりとりを描きながら、社会性とエンタメ性を交えながら人の生き様を炙り出すような作品。地図にも載っていない、ある島の、ある町で展開される話の中に、今まさに日本の政治で起きている問題をぶち込むところなんかはいかにも中津留章仁らしい。

トムに所属している中嶋ベンが良い味を出していましたな...どこにも居そうでありながら、この個性はなかなか貴重であります。なんと言っても彼の芝居にはいつもハートが感じられます。表現者としては当たり前のことですが、この当たり前のことが出来ていない役者さん以外と多いのですよ。来年は彼が出演する芝居をトムでも準備していますので是非自分の目で確かめて頂ければ幸いです。

それにしても、昨日の元ライオンズの山川穂高選手のソフトバンク入団会見なんなの?

そして自民党二つの派閥事務所への東京地検特捜部の家宅捜索、この異常な状況にそろそろ気付かないと日本沈没が目に浮かびますがな。

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師走のバラ

2023/12/18
【第1836回】

いやいや先週は怒涛の日々の連続。火曜から金曜は九州。帰京した翌日は銀座博品館で上演していた劇団NLT「二階の女」を観てきました。トムで公演した「沼の中の淑女たち」に急遽出演していただいた阿知波悟美さんが出演。この作品は昭和20年四国に疎開していた当時、愛媛新聞に短編小説として発表した獅子文六の作品を飯沢匡が脚本化した作品である。正体のしれない二階の女を象徴的に描きながら、当時の市井の人たちがてんやわんやの大騒ぎ、人生の悲哀、夫婦の愛情をユーモラスかつ厳しく描いた作品でありました。最後は第二次世界世大戦に向かう不吉な予兆を感じさせるエンディングでございました。

昨日は表参道のあるスパイラルホールで島田歌穂さんと島健さん二人によるXmas Special vol.13に出かけてきました。2009年にスタートしたこの会も13回目になるとのこと。旦那さんでもある島健さんのお洒落なピアノの音に歌穂さんが心地良い歌声を乗せながらの1時間45分。二人の篤い信頼と絆があってこそのスペシャルな時間でございました。年末を飾るにふさわしい贅沢なひとときを、皆さん味わったのではないかと...それにしてもあれだけの曲数をひとりで歌い続ける歌穂さんの日頃の体調管理、大変な努力をされているんでしょうね...頭が下がります。ラストには来年2月から再演します「モンテンルパ」の芝居の宣伝までしていただきありがとうございました。

いよいよ今年も残すところ2週間となりました。この歳になると、月日が流れるのがなんとも早く感じます。喜んでいいのか悪いのか?おいらもわかりませんことよ。

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師走の表参道

2023/12/15
【第1835回】

12月13日、博多西鉄ホールで風間杜夫ひとり芝居を観劇。今回の芝居は博多が舞台になっていたので満員の客席は大変な盛り上がりでした。博多弁が出てくるたびにお客さんは大喜び。愛嬌たっぷりの牛山明もラストのシーンでは客席からすすり泣きが聞こえてきました。笑いから哀愁たっぷりの男の変貌ぶりを魅せてくれるのも、千両役者だからこその芸のなせる業でございます。終演後の杜夫ちゃん、やり切ったという表情をしていました。

昨日は4年ぶりの東住吉小学校の同窓会。77歳、78歳になるおっちゃんおばさんたちなんですが皆元気でした。でも4年前に場を盛り上げた仲間の一人は昨年亡くなったとのこと、確実に年を重ねていることを実感しました。幹事の女性がコピーしてきた小学校、中学校の卒業写真を眺めていると、懐かしいあの日あの時が蘇ってきました。終戦間もない時期、貧しいながらも皆必死豆炭で生きよったばい!おいらは小学校3年生から新聞配達に励んでおりました。戌年のおいらはクンクンと鼻を効かせて博多の街を走り回り、今尚丈夫な身体を形成してくれたんだなと...小さい頃から、おきゅうと納豆売り、郵便配達、氷配達などなどよう働きよったばい。

今度はいつ会えるか?でも、こうやって幼いころの級友と会えるなんて幸せでございます。

連絡がつかず会えない人たちも、どこかで元気で幸せに過ごしていることを願って別れました。師走の夜の博多もクリスマス一色でございました。

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おいらはどこにいるのかな?

2023/12/13
【第1834回】

長崎県大村市シーハットおおむらで、杜夫ちゃんのひとり芝居観てきました。長崎は5年ぶりかな、いつ来ても情緒あふれる坂道が多い街です。芝居のほうは絶好調!長崎のお客さんのノリで、牛山明飛んだり跳ねたり愛嬌たっぷりの演技で笑いの渦でございました。

終演後に長崎市在住の歯科医を開業している原さんに、長崎のおいしい料理をご馳走になりました。原さんとはかれこれ50年近くの付き合いかな...今は無き福岡市六本松の名物ママがやっていた「ひろ」で会ったのが最初でした、おいらはアングラ芝居の役者、原さんは九州大学の学生でした。いやまさしく青春時代でございました。酒をへべれけになるまで飲み尽くし、政治、芸術の話からエロ話まで、いくら時間があっても足りないくらいのどんちゃん騒ぎのひとときを過ごしました。そんなエネルギッシュな時間を過ごしたからこそ皆それぞれここまで生き延びてきたんですね...思案橋近くにある「かまど茶屋」、長崎に行った際にぜひ立ち寄ってくださいね!とおいらがお薦めできる素敵な店でした。

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機内からの富士山

2023/12/11
【第1833回】

先週の週末からよく目にする指名手配風の写真5枚。なんと自民党安倍派の幹部議員なんですが、どうみても悪代官に見えますな。なんと20年以上にわたって裏金返金制度があったというのだから血税納めている国民は怒り心頭でございます。死者に鞭打つじゃございませんが、統一教会問題、改ざん問題も含め到底許すことが出来ません。こんな政治屋ばかりだから日本の経済30年間停滞するのも当然至極。でも、帰するところは日本国民の選挙において半分棄権し、投票結果も相も変わらず自民党一党独裁を許しているんですからね...

未だに進展がない国会議員に月額100万円支給される「調査研究広報滞在費」。使途の公開や未使用分の返還を盛り込んだ議員立法も審議入りのめどすら立たない状況でございます。

どこまで国民を愚弄しているのだろう!そのうえ、裏金もらって脱税しているのだから世も末状態です。この際徹底的に叩かないと又暗黒の時代が延々と続くこと間違いないですね。

そんな中、明るいニュースも飛び込んできました。大谷選手の大リーグドジャース入団。こんな日本の若者も出現し本当に嬉しい限りです。彼の育った環境、思考、行動を参考にすれば日本も少しはましになると思います。彼の表情にすべてが現れています。野球は勿論、人間としての佇まいが、この汚れちまった悲しい世界に微かな希望の光を感じます。

たかが野球、されど野球...なるほど奥が深いです。

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今日の空

2023/12/08
【第1832回】

福間健二著「迷路と青空」読了。先月、健二さんの遺作の映画「きのう生まれたわけじゃない」を観て来たばかりだが、この本を読んで改めて74年間の人生、まさしく既成の概念に疑いを持ちながら自ら迷路の中に踏み込み、日々移りゆく青空の下を突き抜けていったんだなと思いました。迷路をさ迷いながら自問自答し、未知へのドアをノックし、一気になおかつ簡潔に今生きていることを肯定したい...そういうことを願っているが、なかなかそうなってくれない。その一瞬一瞬、詩を綴りながら映画を創りながら自己確認する。健二さんは詩についてこんなことを述べている。

 

詩は生きている。私は以前からそう言ってきたが、最近思うのは、生きることそのものが詩であるというように生きるにはどうしたらいいかだ。自分のためだけに生きている人生では、そうなってくれないだろう。

 

健二さんが人と関わり自然と対峙しながら、生きることと表現すること追求できるのも、この世の人でない存在も含めて感謝の気持ちを忘れずにやってきたことがうかがい知れる。

それに反して、又もや政治と金の問題が浮上し、これまでと同様時間が経てば忘れてしまうだろうなんて問答が繰り返されている。政治屋が長年はびこっているのに、未だ変化の兆しすら見えないこの国の現状に楔を打ち込めない惨状にただただ呆れるばかりだ。

こんな時は、青空とまだまだ楽しませてくれる紅葉を眺めながら、千々に乱れる怒りと諦めを諫めるしかありませんな...

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幻想の世界

2023/12/06
【第1831回】

昨日、すみだパークシアター倉にて劇団桟敷童子「空ヲ喰ラウ」を観劇。錦糸町から徒歩15分~20分かかるのだが相変わらずコアなファンでいつも満杯である。今回のパンフに主宰者である東憲司さんがこんなことを書いていた。

 

来年、劇団を旗揚げして25年を迎える。今考えると、あっという間だったような気がする。まさか25年も劇団が続くとは思わなかった。旗揚げ公演は1999年秋、辰巳の倉庫でだった...魚の匂いが充満していた。なにもかも手探りだった、がむしゃらだった...コン畜生、コン畜生の精神でここまで続けてきたような気がする。現在劇団員は17人...東京にたくさん劇団がある中で、この桟敷童子を選んでくれた...それだけで感謝である。この劇団は俳優だけでなく、大道具も小道具も、衣装も、音響も、制作業務もやらされるのである。本当に大変だと思う。これをいつまで続けるのであろう。そろそろ終焉を考えるようになった。しんどい...(笑)

 

おいらは芝居創りの原点を見る思いも含めて観客、プロデューサとしてこの劇団のファンである。頑張ってきたどころか、演劇界の数々の賞を受賞している点からみても今やなくてはならない劇団のひとつである。出来、不出来以前にこの劇団の人たちの情熱、心意気、純粋さがおいらにとってはたまらない魅力である。

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劇場近くでカワセミ発見

2023/12/04
【第1830回】

風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~最後のロマンス~」昨日、無事に東京公演終えることが出来ました。芝居が終わったあとも、まだ観たい!帰りたくないという雰囲気が漂っていました。こんなに愛されている牛山明こと風間杜夫、なんとも素敵な俳優さんです。おいらも6ステージすべて観ましたがそれぞれの趣がありました。普通、芝居は当然のことながら相手役と観客とのやり取りで成立するものですが、このひとり芝居は観客と見えない相手役とのコミュニケーションでのイレギュラー版。やはり観客の反応がその日の劇場盛り上がりを支配します。誰も手助けしてくれない杜夫ちゃん、当然のことながらその日のお客の反応を敏感に感じ取りながらドラマを進めていきます...ヤバいと思ったり、予想通り、いや、ここは違う手でやってみようなどなど...台詞を吐きながら心中穏やかじゃない状態で演じてる様が手に取るように分かります。そんなことも含めて演じ続ける風間杜夫の飽くなき探求心と遊び心に拍手を送りたい。

ベースボールシーズンも終わり、冬のスポーツと言えばラグビーですね。昨日は大学ラグビー伝統の一戦、早稲田と明治の試合が東京・国立球戯場で行われました。1923年に第1回が行われた早明戦は今年で100周年(99回目)を迎えました。おいらも1987年12月6日に旧・国立競技場、雪が舞うなかでの早明戦、よく覚えています。その後も名勝負が続きラグビー人気を盛り上げた両校の戦い、いつも楽しませてくれます。新年2日の準決勝で再び両校が相まみえるのか...勝負ごとは筋書きのないドラマ、誰にもわかりません。

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まだまだ燃えてます

2023/12/01
【第1829回】

今日から師走です。本当に1年はあっという間ですね。歳を重ねると、良いのか悪いのか余計にひしひしと感じる次第です。

風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~最後のロマンス~」東京公演、昨日で3ステージを終えることが出来ました。いやいや、日毎にエンジンがかかり満員のお客様も満足気で劇場を後にしています。なにせひとりでやるんですから、百戦錬磨の杜夫ちゃんも壁にぶち当たることもあり、日毎の体調もあり、そりゃ大変な舞台だと思います。そんな時に、おいらはプロデューサー、一観客として終演後に率直な感想を述べに楽屋に直行します。ここは長い歳月を費やし築いてきた信頼関係もあり素直に耳を傾ける杜夫ちゃん...ここが名実とも一流の役者である所以だと思います。このキャリアの役者さんのほとんどは、他人の意見を聞かず身の保身に走る傾向が多々あります。一味違う役者さんは、創っては壊しを繰り返し常に新鮮な表現を目指しながら前に進んでいます。勿論、自信があってのことだと思います。

それにしても一人で連日客席を満員にしてしまうんですから、たいしたたまげた役者さんです。

これから寒さは一層厳しくなってきます。どうか一日も早くウクライナの侵略戦争、ガザ地区での戦闘を終え、いつものように平穏なクリスマスを迎えて欲しい!演劇も平和だからこそ素敵な一日を過ごすことができるんです...

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師走のバラ

2023/11/29
【第1828回】

風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~最後のロマンス~」東京公演、昨日俳優座劇場で無事初日を迎えることが出来ました。北海道、関西、九州を巡演しての公演です。地方公演とまた違って東京という演劇激戦区での初日というのもなかなかと緊張するものでございます。劇場には演劇評論家の方々を始め芝居に対して厳しい目で観劇される方も多々いらっしゃるので、もう一度褌を締めてかからねばなりません。勿論、風間さんを愛するファンの皆さんは、杜夫ちゃんの一挙手一投足、なにをやっても楽しいなんて見方をされているかとは思いますが油断禁物、どこに落とし穴が潜んでいるのか分からないのがナマの舞台の恐さでございます。百戦錬磨の風間杜夫も、その辺のところは当然熟知していて手探り状態で芝居しているのが良くわかりました。これがナマの面白さでありスリリングな舞台の魅力です。

石川県の知事、アホですな。いや正直もんですな。こんな人が国会議員になり知事になるんですから、選んでる人もアホですなと言われないようにせにゃアカンですな。

今回の芝居の中にも、時事ネタで今の世界、日本の現状を憂えています。日々変化する世相を上手く切り取り芝居に取り込むことが出来るのも現代劇の良さだと思っています。

今日は東京公演2日目。杜夫ちゃんどんな芝居みせてくれるのかな...楽しみです。

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場外でも熱演中

2023/11/27
【第1827回】

いきなり寒くなり人も樹木もおたおたしております...一足早く紅葉した葉もひらひらと地上に落ち始め思わず枯葉♪を口ずさんでしまいました。勿論、シャンソンの名曲ですがジャズでのマイルス・デイヴィス、ビル・エバンスの演奏も極上です。

それにしてもこの季節、黄や紅で多くの人を魅了する樹々に拍手を送りたい。そんな光景を見ながら、人間もこれほど見事に変身できれば楽しいに違いないと思ってしまう。新緑の鮮やかな緑に始まり燃えるような色に変化し、風に吹かれながら舞い踊る。枝で美しさを誇り、落ちて惜しまれるなんて最高の生きざまじゃございません。

 

「昨日より今日はまされるもみじ葉の明日の色をば見でや止みなん」 恵慶法師

 

ガザ地区での停戦、人質解放、取り敢えずほっとしています。この時代に相も変わらず殺戮が日常化し、なかなか止められない世界の現状悲しい限りです。でも、これこそ人間が背負わなければならなかった業なんですかね。見渡せば、他の生き物が良いお手本を見せてくれてるはずなんですが...困ったもんでございます。

余計なことには手を出さず、自然界の法則に則って命を全うすることが困難な環境であることは分かっちゃいるけど、すべて原点回帰でいかんと大変なことになりますぞ...

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まだまだ魅せます

2023/11/24
【第1826回】

福間健二は生きていました...昨日、東中野にある粋な映画館ポレポレ東中野で福間健二監督の新作で遺作になった「きのう生まれたわけじゃない」を観てきました。今年4月に健二さんが74歳で亡くなったのを知り即、伴侶でありプロデューサーである恵子さんに連絡し自宅に伺いました。知り合って40年、こんな別れがあるなんてとても信じられない一日でした。その時、恵子さんはすでに前を向き今回の新作上映の準備を進めていました。

心の通わない母と二人で暮らし、中学校に通わず、希望を抱けない14歳の七海(ななみ)。妻を亡くし、過去にとらわれた元船乗りの77歳・寺田。ふとしたきっかけで心を通わせた二人は、友人かつ家族のような日々を過ごす。そんな中で、新たな人生の歯車が動き出すというストーリー。なんと寺田の役を健二さん自身が演じていました。いい顔してました!遺作に監督自身が主要な役を務め、詩人に相応しい透明感のある言葉を散りばめ、日常を説得力のある映像で見せられると、あたかも自らの死を予感していたとしか思えませんでした。

そして健二さんの7作目になる今回の作品が、今までの作品の集大成に匹敵する作品ではないかと...健二さん、恵子さんとの交流を通じ二人が生きてきた志、思考、人間としての在り方においらも共感しお互いに切磋琢磨することが出来たと...様々な表現方法はあるのは当然のことながら、確かなことは福間健二でしか表現できない言葉、映像を新鮮な感覚で作品として観れることがおいらにとっては秘かな楽しみでした。

今回が遺作となったのだが、この新作の健二さんの全身から発する表情は、まさしく「きのう生まれたわけじゃない」彼が信じた世界が彼の中に存在する限り、未来永劫生きてることを証明している映画だと思いました。福間健二は生きています!

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福間ワールド

2023/11/22
【第1825回】

作家、堀田善衛さんが1997年7月、60歳になった日からスペインに住み始めて430日に渡る日々を記した「スペイン430日~オリーブの樹の陰~」を読み始める。読んでいるうちに、おいらがアンダルシアの小村サロブレーニャに住み始めたことを懐かしく想い出しました。 

最初にスペインに行き、次に来る機会があれば必ず住もうと決めた村がサロブレーニャでした。グラナダ県サロブレーニャ村。グラナダからコスタ・デ・ソル(太陽の海岸)に山越えバスで一時間半南下すると海を眺めるような白い鯨の形をした巨大な塊が見える。この塊がサロブレーニャだ。砂糖きび畑と海を持つこの村は、ほぼ自給自足で生活している。

この村に着き先ずは家探し。最初に借りたマンションは家財道具付の2DK、もちろん目の前は地中海を前にしたベランダ付。家賃は日本円にして1万5千円で言うことなし。喜び勇んで住み始めたが、日本人にとって生活の一部である浴槽に問題が発生。電気でタンクの水を温めるため、大きな浴槽の三分の一溜まれば、タンクが空になってしまう始末。浴槽に身を沈めても精々身体の半分しか浸かれない。そりゃそうだ、スペイン人には湯船にゆったりと身を横たえる習慣がない。ここはスペイン流に妥協も考えたが、長く住むことを考えると、ここはどうしても譲れないところだ。管理人に契約解除を申し出る。すると、善良そうな管理人ぺぺおじさん「何とかしてみる!」この善意を無碍にも出来ず、様子を見ることになった。次の日から修理道具一式を持ち込み必死の修理を試み、シャワーのお湯を出し「ほら、こんなに熱いお湯が出るでしょう」と自慢げにのたまう。僕もしっかりと言い返す。「熱いお湯はいい。問題はこの浴槽にたっぷりお湯が溜まらんといかんのよ...」と日本人の習慣を話すのだが、ぺぺおじさん不思議そうな顔をして納得がいかず、みずから上半身裸になり、石鹸をつけてシャワーを浴び「こんなに綺麗になるのに、なんの問題があるの?」洗えば綺麗になるのは当たり前、問題はねえ...僕もすかさず反撃を取るべく浴槽の中に入り横になり身振り手振りで説明するのだが、ぺぺおじさん「なんで浴槽の中でこんな格好しなきゃならんのよ...」まるで埒が明かない様子。自分が納得いかない以上、前家賃を返すわけにはいかないと渋い答え。そりゃそうだ!ここはスペイン。異質の文化の違いを目の当たりにしてサロブレーニャの生活が始まった。

今日みたいな青空と、紅葉を眺めていると第二の故郷スペインで生活していた日々が眼前に果てしなく拡がってくる。

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今日の紅葉

2023/11/20
【第1824回】

先週の週末は歌声を鑑賞してきました。金曜日には大和田獏さんと娘さんの大和田美帆さんによる「BAKUMIHO」。獏さんが芸能生活50年、美帆さんが20年を期にこのようなユニットを結成し今回の公演が実現しました。めちゃ明るい美帆さんのキャラクターと温厚な人柄獏さんによるとっても温かい雰囲気に包まれたひとときでした。この時間を過ごして感じていたことは、コロナで亡くなられた母であり妻であった岡江久美子さんがこの二人を見守りながら最後はみんなと一緒に大きな拍手をしているなと...

土曜日は、「コットンクラブ東京」での村井國夫さんの渋い唄を堪能しました。若い後輩の俳優さんとのコラボでしたが、さすが79歳の年輪とダンディズムに拘ってきた村井さんの表現は群を抜いておりました。この年齢になっても己に厳しく鞭打って表現者としての高みを目指しているところがたまらんですばい。

急に寒くなり、東京のあちこちの樹木もかなり色づいてきました。でも道行く人の服装も様々、冬物を着た人が居るかと思えば、半そで短パンで平気な顔で散歩している人も居る有様。この情景だけでも気候変動の異常さが理解できます。新宿で歩いている外国から来た旅行者の中には、ランニングシャツで汗拭きながら闊歩している輩がいるんですから驚いてしまいます。これは明らかに食べ物の違いでしょうね...おいらもいろんな国に行きましたが日本食がやはりベスト1です。最後の食事は、白いご飯に梅干、ちりめんじゃこ、着色なしの明太子で十分でございます。

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善福寺緑地公園

2023/11/17
【第1823回】

最近、芝居関係で地方に度々行っています。おいらは生来旅人、流れ者性分で生きてきましたので、地方に行くだけでワクワクしたもんでございます。この世界にはまだまだ隠されているものがある...その隠されたものが存在するのが地方だという気がします。自分の知らない未知なるものとの出逢いで、自分自身も成長出来たのではないかと...そんな期待も持ちながら出かける地方、最近は何処に行っても同じ顔をしています。地方都市の商店街はシャッターが閉まった店が軒を貫いていて、少し郊外に行くと大きな駐車場付のショッピングセンターがあるのが普通になってきました。昔は地方色豊かな個性的な店が点在し、耳を傾けると訛り言葉で話す言葉が聞こえてきました。お店も生活と深く繋がり人の営みがまともであることを嬉しく感じられました。この国の大切な序列が、お金と所有欲へと舵を切ったところからこうなることは十分予測されたことだと思います。

その後、村おこしとか町おこしなんて動きも出てきてはいますが、これもどうやら結局は特定企業が力を持ち、その企業に寄り添わないとなかなか本来のプロジェクトと縁遠い方向に向かうことが多々あります。

でも、まだまだ地方の魅力は必ずあると思っています。それを確かめるには自分の足で、町や村のなんでもない路地に迷い込み、知覚をピクピクさせながら何かを感じようとする好奇心があれば大丈夫です。この国にはまだまだ見知らぬ魅力があちらこちらに散りばめられているはずです。ひょっとしたら鈍感になりすぎたこの国の人より、異国の人がその魅力を楽しんでいるのかも知れませんね。

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新宿西口

2023/11/15
【第1822回】

あちゃ~プロ野球史上最悪のFA宣言の選手が誕生しました。西武ライオンズに所属しながら女性問題で不祥事を起こし、自ら事の顛末をひた隠し、今年の3月実施されたWBCにいけしゃあしゃあと出場し、そのまま今年のシーズンに入り1本のホームランも打てない有様。そりゃそうだわ、いつばれるかわからない爆弾抱えて心中穏やかではないのは当たり前。その後、週刊誌で報道され、無期限出場停止。その後、持論を展開しあたかも自分が被害者であるかのような態度。西武ライオンズもさすがにクビにせず練習場を与える温情を見せていたのだが、ほかの球団の意見も聞いて見たいとFA宣言。要は不祥事のことは水に流し、高いギャラで契約してくれるところに行きたいのでライオンズ以外の球団さん検討してくださいなと言うことですな。実績、そして成績さえよければ少々のことは目をつぶってくれるし、時間が経てばほとぼりが冷めるであろうプロ野球界の悪しき風潮を巧みに利用しようとしてるんだね。

冗談じゃございませんことよ!球場に来るお客さんは、そうは簡単に許してくれないどころかブーイングが鳴りやまないでしょう。多くの野球少年に今回のことをどう説明したらよいのかホトホト困っている親御さんも居るでしょう。今回のFAの届け出もギリギリ、しかも代理人を通しての届け出、迷惑かけたライオンズの選手たちにも謝罪もせず。人間として如何なものかと思える行動ばかり。

そんな選手を、4年間20億円で迎え入れようとしている球団が、又もやソフトバンク。博多のファンの皆さんこれでいいんですかね?大金注ぎ込んでも優勝できないわけを根本的に考え直さないとそのうちファンからもそっぽを向かれますよ。

この選手の名前?どすこいの山川穂高選手です。ほんまに男を下げましたな...

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新宿南口

2023/11/13
【第1821回】

ガザへのイスラエルの無差別攻撃、ロシアのウクライナへの侵略が止まらない。ほくそ笑んでいるのは武器商人である。過去の歴史からアメリカが世界の大国に成り得た一因が武器産業であることは明らかである。今回のアメリカの立ち位置が、ダブルスタンダードである訳は必然。そんな中、世界の若者がSNSを通じて停戦への訴えの輪を広げようとしている。日本でもその運動が芽生えているのが嬉しい。おいらの時代は学生が立ち上がり、権力に対峙し激しく行動に転じたものだが、最近の学生は何故かおとなしい...そりゃ、わかる気もします。おいらの世代が政治、経済、環境含めて諸々、今の社会を形成したんのですから責任があると思います。そんな経緯を知った若者たちはほとんどが白けてしまったのかもしれませんね。

でも、誰かがストップをかけないと世界の終わりが見えてきます。これからも戦争がない世界なんぞは夢のまた夢、いかに最小単位の紛争で留まらせるかが大きなポイントだと思います。日本の若い人たちがSNSを駆使しながら平和な世界を希求する姿を見るにつけおいらも少しは希望を持てました。スポーツを楽しみ、アートの世界に酔いしれることが出来るのも平和があってのことです。

平和ボケしたニッポンの皆様、平和は勝手にどこからかやって来るものではございません。一人一人が自分の可能な範囲で平和を手繰り寄せる意識、行動を怠ってはなりません。今、目の前で見せられている悲惨な光景をしかと記憶に刻みつけ、次なるアクションに繋げようではありませんか...

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アンネも願ってます!

2023/11/10
【第1820回】

風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~最後のロマンス~」昨日、北海道苫小牧市文化会館で無事初日を迎えることが出来ました。苫小牧はこの作品の作・演出家である水谷龍二さんの故郷である。水谷さんの同級生の方々の尽力で実現できた公演です。何年経ってもこうやってともに思いやる気持ちが素晴らしい。人の繋がりが稀薄になっている昨今、聞きなれた友情なんて言葉を超越した絆を強く感じる。水谷さんも幸せもんである。

芝居は見事な仕上がり、苫小牧の観客の温かい反応をしっかりと受け止め1時間25分、隙もなく観客の思いを鷲掴みにしてしまうところが千両役者たる所以かな。

ひとり芝居をやり始めての26年間の蓄積を感じます。間の取り方、観客に対する問いかけ、どれ一つとってもドンピシャ!ひとり芝居をやるために生まれてきた男です。

昨日は本番まで時間があったので苫小牧の街をぶらり散歩。レトロな喫茶店を見つけコーヒを一杯。なぜかBGMにJAZZが流れている1975年開業の老舗喫茶店。店内には重厚感のある木目の食器棚がカウンター席の正面にあり、中には色んな形のコーヒーカップが並んでいるまさにザ・昭和の店。こんな喫茶店が生き残っているだけでも苫小牧の人たちが信じられる気がしてきます。王子製紙の城下町でありながら北海道の大地を踏みしめ、しっかりと生きている苫小牧の皆さんありがとうございました。

又、来年も新作を持って再会できることを楽しみにしています。

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苫小牧にて

2023/11/08
【第1819回】

山本顕一著「寒い国のラーゲリーで父は死んだ」読了。この本は、2005年にトム・プロジェクトで公演した「ダモイ~収容所から来た遺書~」に登場する亡き父山本幡男さんの長男が、お父さんの遺した言葉を抱きしめて書かれた本です。山本幡男さんは第二次世界大戦後、旧満州で降伏した日本人兵士等約60万人がソ連シベリア領内に連行され、極度の寒さや飢えの中で過酷な強制労働をさせられた一人です。多くの人が帰国する中、9年間もの長い収容所生活の末、帰国の願いも空しくハバロフスクの収容所で病死しました。

収容所仲間に信頼が篤かった山本幡男さんの遺書を仲間が口移しで覚え、帰国した際に遺族に伝える感動的な話を、是非舞台化したいと思ったときに逢いに行ったのが顕一さんでした。大学教授を退職されていた時期で、大変穏やかな方で即上演の許可を頂きました。上演中にも何度も観に来てくださって感謝の言葉を述べられていました。そんな顕一さんの両親への思い、兄弟に対する責任感、この本を読んで改めて顕一さんの苦悩と強い信念を思い知らされた次第です。

4人の子供たちへの遺書には万感の思いが込められています。

 

君たちに会えずに死ぬることが一番悲しい。さて、君たちは、之から人生の荒波と闘って生きてゆくのだが、君たちはどんな辛い日があろうとも光輝ある日本民族の一人として生まれたことに感謝することを忘れてはならぬ、日本民族こそは将来、東洋、西洋の文化を融合する唯一の媒介者、東洋のすぐれたる道義の文化、人道主義を以て世界文化再建設に寄与し得る唯一の民族である。この歴史的な使命を片時も忘れてはならぬ。また君たちはどんなに辛い日があろうとも、人類の文化創造に参加し、人類の幸福を増進するといふ進歩的な理想を忘れてはならぬ。偏狭で驕慢な思想に迷ってはならぬ。どこまでも真面目な、人道に基く自由、博愛、幸福、正義の道を進んで呉れ。最後に勝つものは道義であり、誠であり、まごころである。

 

未だ戦争が止まない今、この遺書の言葉の持つ意味は重い。

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獲物は見つかったのかな?

2023/11/06
【第1818回】

昨日、風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~最後のロマンス~」の最終稽古を観てきました。

74歳の杜夫ちゃん、すっかり牛山明になりきって躍動しとりました。一人で1時間半近く喋って歌って飛び跳ねて、そりゃ観てるこちらが大丈夫かいな?と思いきや、エンジン掛かるといつものペースで楽しそうにやってるところがすごかですたい!彼に果たして老いなるものが訪れるのだろうかと逆に心配さえしてしまいます。

なにせ26年という長い年月に渡りひとり芝居を続けているんですから、たいしたたまげたもんでございます。勿論、ひとり芝居だけじゃございません。舞台、映画、テレビ、そして落語もプロ並みの腕。役者をやるために生まれてきた人なんでしょうね。普段は努力してる風は一切見せないんですが、おいらが思うに彼独自の日常と役者との切り替えがとても上手いんだと思います。稽古終わりに旨そうに飲む酒と、ダジャレを発するその瞬間にも役者、風間杜夫のチャーミングさと色気を垣間見せるところもさすがです。

11月9日、北海道苫小牧でスタートする今回の芝居、東京は勿論全国各地でも公演しますので是非とも劇場に足を運んでくださいね...

昨日は阪神タイガース38年ぶりの日本一。タイガースファンの皆さんの喜び痛いほど分かります。今年はWBCから始まって昨日の日本シリーズの激闘。野球ファンにとっては充実した1年だったと思います。来年こそ、我がライオンズの有終の美を観たいもんでございます。

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井の頭公園

2023/11/01
【第1817回】

昨日、神奈川県藤沢市湘南台文化センターでの「沼の中の淑女たち」を観に行ってきました。10月3日の東京公演以来、久しぶりの観劇でした。全国各地を巡演してこの日が20ステージ目の公演。まだまだ、コロナ、インフルエンザで油断できないこの時期にキャスト、スタッフの皆さんが一丸となってここまで無事に公演できたことにまずは感謝です。なにせ演劇はナマモノですから何か一つでも事故があれば中止に追い込まれる危機にいつも晒されています。旅中に起こる体調不良、移動中の事故、不意に訪れる台風の心配などなど、主宰してるこちらとしては、昼夜問わず心落ち着くことなんぞはございません。「今日も無事に公演できますように!」とただただ祈るというより信じるのみです。

昨日の公演、見事でした。芝居の良し悪しは、やはり座組の良さで決まるんだなということを実感した次第です。出演者の5人の女優さんの自由闊達な演技、間の良さ、おのおののキャラクターが上手く活かされ1時間35分があっという間に過ぎていきました。

芝居を支えるスタッフのチームワークも見事です。地方公演はほぼ1ステージですから当日セットを仕込み、当日ばらしも当然あります。限られた時間内でセット、照明、音響の数々を手際よく処理しなければならないので大変な作業です。

こうやって、みんなの思いが一つになって日本全国に芝居を届けられるこの仕事が、未来永劫続けられる世の中であって欲しいと願いながら劇場を後にしました。

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霜月

2023/10/30
【第1816回】

コスモスの季節ですね...庭の片隅に可憐に咲いているかと思えば、畑一面に群生しているコスモス。おいらがこの季節で一番のお気に入りの花です。中でも、福岡市博多湾に浮かぶ自然豊かな能古島アイランドパークで開花するコスモスは、遅咲きも含めると10月上旬~11月上旬まで見頃を迎えます。ピーク期には約50万本が咲き、海を望む丘は色鮮やかな花のじゅうたんで覆われます。この時期になるといつもこの島を想い出します。市営のフェリーで10分もあれば行ける島で、おいらが好きな作家・檀一雄さんもこの島がお気に入りで住んでいました。今は息子さんの檀太郎さんが引き継いで住んでいるみたいです。実は、おいらもこの年位になったらこの島で晩年を過ごしたいと思ったくらいの魅力ある島です。

島の浜辺で食べた魚介類、亡くなった芝居仲間と昼間から飲んだくれ、島の散歩道に立つ檀一雄文学碑に記された「モガリ笛 いく夜もがらせ 花二逢はん」の句を絶叫した日が懐かしい。

さだまさし作詞・作曲で山口百恵が歌った「秋桜」も絶品ですね

 

淡紅の秋桜が秋の日の
何気ない陽溜まりに揺れている
此頃 涙脆くなった母が
庭先でひとつ咳をする
縁側でアルバムを開いては
私の幼い日の思い出を
何度も同じ話くりかえす
ひとりごとみたいに 小さな声で

 

コスモスを見事に描写し、歌に昇華した昭和の名曲です。

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秋桜

2023/10/27
【第1815回】

今シーズンは不満たらたらの采配でシーズンを5位で終えたライオンズ松井監督が最後にやってくれました。昨日のプロ野球ドラフト会議で大学野球界左腕ナンバーワンの国学院大武内夏暉投手の交渉権を獲得しました。ソフトバンク、ヤクルト含め3球団の競合の中、くじを引き当てました。地元福岡の出身者だけにソフトバンクは相当に悔しいに違いない。なんだか最近福岡出身の選手がぞくぞくとライオンズに集まってきてるのも何となく縁を感じます。だってライオンズはもともと福岡の球団なんだもの...近未来、ライオンズが博多に戻り、ソフトバンクが大阪に帰るなんてこともありかな?なんて思ってしまう。

このドラフト会議1965年に開始されて58年になろうとしている。考えてみればプロ野球選手を夢見て希望の球団に入れないなんてなんだか可哀想な気もしますが、この制度が無ければ間違いなく金満チームが一人勝ちになるに違いない、ソフトバンク、巨人なんてところに有能な選手が集まればつまらんプロ野球になるに違いない。嘗て、この制度がありながらインチキして選手の我が儘を通して球界の盟主読売ジャイアンツに入団した投手が居ましたな...野球の神さんもちゃんとみてござる。最近の巨人はすっかり駄目になりましたね。

スポーツにはダーティなイメージは似合いませんことよ...女性問題でライオンズに迷惑掛けてしまったホームラン打者もどうするんだろうね?出処進退早くしないとますます印象悪くしちゃうと思いますがね。

久しぶりに御茶ノ水にあるニコライ堂の前を通りました。学生時代にニコライ堂の鐘の音を聴きながら癒された、あの日あの時を想い出しました。

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ニコライ堂

2023/10/25
【第1814回】

久しぶりに挫折してしまった。第168回芥川賞受賞作、井戸川射子著「この世の喜びよ」。

ハナシの筋は、50歳くらいと推定される主人公の務めるスーパーで、15歳の少女と出会い、仲良くなり、喧嘩し、仲直りに向かう、という小世界を描いたもの。この作家、もともと詩人で言葉の選択が独特と言うより、イメージ先行で思いついた言葉を感性に従って配置しているので、主語が途中で入れ替わったり、助詞の使い方などなど従来の文章と比べかなり違和感を覚えるぶんかなり読みづらい。そして何故か言葉がすんなりと入ってこないのである。作家が敢えて、従来の小説にたいする新たな試みとして新しい文学の在り方を提言、提案しようとしているのかな?でも、入ってこない言葉ほどイラつき虚しくいらだたしいこと極まりないのでございます。

権威好きで文壇という特殊な群れに安住なさってる芥川賞選考委員の高邁な先生方、時折、いったい何を基準にして賞を選んでるのかな?と思うときがたまにある。紙文化が危ぶまれている昨今、出版業界にも忖度しながら仕事しなきゃならんのも分かります。なにも無理して賞を出す必要もないと思います。今年度は受賞作なし!こんなことがあっても決しておかしくありませんことよ。

賞を受賞しなくても世界的な作家になった村上春樹氏が居るんじゃありませんか...権威を重んじるあまり逆に、この国のカルチャー地盤低下してるんじゃないかしら?と思ってしまいます。

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色づき始めました

2023/10/23
【第1813回】

太平戦争中の1943年10月21日、2万人以上の学生が、雨の神宮外苑競技場を行進する映像を観るたびに胸が詰まる思いがする。まだたくさんの勉強をしたかったに違いない若者が、勇壮な音楽にスタンドで手を振る大勢の女子学生に囲まれて、銃を持ってずぶ濡れの学生服のまま視線を前に向けながら進む姿に彼らの葛藤を感じる。入学したばかりなのになぜ戦争に行かねばならないのか?日本、家族を守るために命を捧げよう!

正直言って、戦死していったこの学生たちが生きていれば、この日本も少しはマシな国になったのかもしれない...勿論、敗戦後この国が見違えるような発展を遂げたのは、日本人の勤勉性があってのことだ。いつの世も、何故か必要な人ほど早く世を去ってしまう。

戦地でよく聞く話、軍隊の上層部は徹底的に部下をいじめ倒し、戦局が危うくなると民間人を置き去りに真っ先に逃げる。こんな人たちが戦後政治にかかわったお陰で今の日本国の姿があるのも事実だ。

昨日、長崎と四国で補欠選挙があった。あれほど二世議員の弊害が言われてるさなか、なんと又、二世議員が誕生しました。確かにすべてが悪いと言わないまでにしても、二世議員の無能さ、そして代々継承しながら政治屋商店を永続して行きたいというセコさにほとほと嫌になっているこの感覚がわからない旧態依然の村社会を見せられた思いです。

本日のお決まりの増税メガネおじさんの所信表明演説もいつもながら虚しゅうございます。

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ゼラニウム
~花言葉、決意~

2023/10/20
【第1812回】

ミラクルロッテマリーンズ。ファーストステージでの10回の逆転劇、そしてまたもや昨日の盤石のチーム力を誇るオリックスを相手に9回での逆転。おいらも長い間野球観てるけどこんなことは珍しい。金満球団に勝ってくれると本当に嬉しい。昨日も角中がチャンスを作り、若手がそれに応える。安田選手はラッキーボーイ的な存在になっている。おいらはロッテの選手の中で荻野外野手が好きだ。小柄ながらしぶとく塁を狙う果敢な姿になぜか応援したくなる。角中外野手も渋いね。ねちっこくバットを短めに構え投手に向かっていく姿はまさしく職人芸だ。派手さはないがチーム一丸となって最後まで諦めないベンチの様子を見てると、なんだかちぐはぐなライオンズも見習って欲しいものだ...ベンチでヘラヘラおしゃべりしてる松井監督、平石ヘッドコーチなんとかせんと来年もBクラス確定だ。今日ロッテが勝利すると本当にわからなくなる。

平和ボケしたこの国からガザ地区の悲惨な光景を見るたびに心が痛む。戦争はいつの世も弱者、子供たちに甚大な被害をもたらす。戦争をして得をするのは武器商人だけだ。その際たる国がアメリカ合衆国、バイデン大統領の姑息な手法がなんとも信用できない。第二次世界大戦後、世界のお巡りさんみたいな振る舞いをしながら常に富を蓄えていったアメリカ。富のチカラにふれ伏してはならない...一刻も早い停戦を願うばかりだ。

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こっちの蜜はあ~まいぞ

2023/10/16
【第1811回】

先週の土曜日は、横浜演劇鑑賞会が発足しての50周年記念パーティに出席してきました。トム・プロジェクも多くの作品を呼んでいただいた鑑賞会です。東京と言う日々250から300ステージばかりの演劇、ショーが開催されてる地からの近場で50年継続してきたことに先ずは驚きました。横浜の人たちの文化に対する関心度の高さを感じます。そして、この鑑賞会の人たちの肩のチカラの抜け具合、明るさ、親しみやすさがとても好きです。

ハマっ子と言えば、隣人やよそ者を尊重し、開放的で寛容、そしてのんびりマイペースに先進的、という開港以来からのハマっ子気質が共通しているように思えます。そして乗りがいいですね。「百枚めの写真」を公演した時に、観に来ていただいた幹事の方に、横浜で上演する時には戦時中の会員さんの家族の写真をロビーに展示したらいかがですか?と提案したら即実行、公演当日懐かしい写真がロビーを埋め尽くしていました。自分の意見を持つが、人の意見も素直に聞き入れる乗りの良さを実感した次第です。

この日会員さんは勿論、創造団体の方々も出席し楽しい時間を過ごすことができました。

これから演劇を続けていくこと大変なことですが、こうした芝居が好きで創造団体を応援してくれる方々が居ることは心強いことです。AIの脅威が迫る中、演劇だけはAIに取って代われないアートだと思っています。がしかし、クオリティが問題でございます。多種多様な楽しみ方があるなかで演劇がいかに残れる存在感を示し得るか?創造団体としては日々アンテナ張って邁進するしかありませんね。

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横浜 桜木町より

2023/10/11
【第1810回】

昨日はセパ両リーグの最後の試合がありました。パリーグのロッテと楽天の試合、勝った方がクライマックスシリーズに出場出来るのでまさしく大一番。おいらは勿論ロッテを応援しました。だってライオンズの浅村をはじめ、優秀な選手を言葉巧みに楽天へ連れ出した石井監督には良いイメージがありません。そりゃプロの世界、お金も大切だし本人の野球生命を考えると仕方ない面がありますが、この人のやり方には狡猾な臭いが感じられてどうしても好きになれません。楽天は震災があった時に優勝に導いた星野監督の時代が一番輝いていた球団だと思います。一方、ロッテはライオンズ同様資金不足の球団ながら、今年就任した吉井監督の下で良く戦ったと思います。黒木ピッチングコーチ共々、選手の体調管理をしっかりとしながらの選手起用も感心します。選手を使い捨てのコマみたいに使う指導者の下、選手寿命を短くしながら去っていった選手が何人居たことか...どの指導者の下でプレーできるかはもう運命としか言えないのかな。

昨日の試合の勝因はロッテ小島のナイスピッチングに尽きると思います。一回裏楽天、いきなり満塁の好機が訪れたのに岡島のゲッツーでチャンスを潰したのが痛かったですね。そのあともゲッツーの山、これじゃ勝てませんがな。その点ロッテはツキがありましたね。先取点の岡のポテンヒットによる先取点、追加点が欲しいときに安田によるレフトポールに直撃するホームラン。野球の神様はちゃんと見てたんですね!

土曜日からは、ロッテは地元でソフトバンクを迎えてのクライマックスシリーズ第一ステージ。こちらもおいらはロッテを応援しますよ。そういえば2010年に当時のロッテはクライマックスファーストステージで2位埼玉西武に連勝、ファイナルステージでは福岡ソフトバンクを相手に1勝3敗から怒涛の3連勝を飾りクライマックスを突破。日本シリーズでもセ・リーグ覇者の中日に4勝2敗1分で勝ち越し"史上最大の下克上"を達成。これはホンマに凄かった...今年は、どうかな?わずかながら期待してまっせ!

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北海道で見つけた秋桜

2023/10/10
【第1809回】

10月7日・8日、北海道の苫小牧と伊達に行って来ました。来月上旬に公演する風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~最後のロマンス~」に備えてのワークショップということで作・演出の水谷龍二さんと一緒に一人芝居に関わることをいろいろと話してきました。苫小牧は水谷さんの出身地ということで、同級生の方々もたくさん参加されていました。苫小牧と言えば王子製紙、嘗ては日本全国の新聞用紙を調達していた工場が今も稼働中。この企業城下町の中で育った水谷さんが如何にして物書きや稼業としての夢を育んできたのか興味深いところでもありました。そして、こうやって水谷作品を上演することに尽力してくれる仲間が居ることも水谷さんの人柄であると思います。その方々が用意してくれた昼食会場、第一洋食店のハンバーグ定食とっても美味しかったです。そりゃそうだ、104年の歴史がある雰囲気満点のレストランでした。

翌日は伊達市。おいらも初めて行く街でした。苫小牧から太平洋を左に見ながら鉄の街、室蘭を過ぎたところにあり、有珠山と噴火湾に囲まれて、豊かな恵みが至る所にありながら文化の香りがするところでした。なんと、トム・プロジェクトの作品を2004年からこれまで7本上演してるんですからなかなか見識が高いなるほど納得のいく街だと思いました。この日は集まった人たちに教材を使って台詞を喋っていただきました。緊張しながらも楽しく演じてくれました。質疑応答も楽しくあっという間の時間が過ぎていきました。こうやって地方の人達と接することによって一人でも多くの演劇人口が増えると嬉しいな...見知らぬ人たちの出会いはプロデューサーにとっても次なるヒントになる貴重な機会です。

今回の機会を設定してくれた北海道演劇財団の新堂猛さんにはただただ感謝です。

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総合公園だて歴史の杜正門

2023/10/06
【第1808回】

2023年第169回芥川賞受賞作、市川沙央さんの「ハンチバッグ」読了。43歳になる著者は筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側弯症および人工呼吸器使用・電動車椅子当事者でもある。読みだした途端に、ミオパチー患者の主人公がハプニングバーのエロ記事を書いているところ始まるのだからおいらも度肝を抜かれる。舞台となっているグループホーム、医療器具などの描写が緻密であると同時に、主人公の肉体感覚の描き方が、彼女に繋がれている器具の一つ一つの感触や体温と機密に接続しており、文章の描写力に圧倒される。その中に、彼女が紙書籍を読むのに難儀しているために電子書籍を「あれは本ではない」と主張する人たちを揶揄する件は、なるほど説得力がある。

全編を貫くものは安易な共感を決して許さないという姿勢だ。綺麗ごとでもない倫理でもくくれない人間それ自体を丸ごと小説に表現していることに著者の強い意志を感じる。

このなんとも予測しがたい時代に、書き手も含めどんな作品が出てくるのか?これまでの常識と非常識の捉え方、価値観も真逆になるかもしれませんね...でも人の優しさ愛そして感謝の気持ちだけはいつの世も不変であることを信じたい。

「沼の中の淑女たち」昨日、長野県中川文化センターで旅公演初日を迎えることが出来ました。11月2日の千秋楽まで何事もなく無事の公演できることを祈るのみです!

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秋の薄暮

2023/10/04
【第1807回】

「沼の中の淑女たち」東京公演、昨日無事に千秋楽を迎えることが出来ました。連日大入り、お客さんの笑いも絶好調。何よりもキャスト、スタッフ何事もなく終えたことに感謝です。今回も、いつものように速達でハガキ一杯に見事に編集し感想を自筆で書いたO氏の郵便物が劇場に届きました。

 

田村孝裕はやはり今というものを切り取る天才だと今日も芝居を観ながら納得していました。辛口大人の童話とでも申しましょうか大富豪の跡取り娘とそこに同居するなんだかいわくありげな女性3人と話の進行役のようで実は鍵を握る若い女性の組み合わせにこの「沼」と「推し」の現代語が絡んで芝居好きの心にサクサク入ってくる話の展開となりました。この話の見えない登場人物が韓流のアイドルだというところが一層今の世相を匂わせて、こちらまでハングルのアイドルを垣間見たくなるから演者一同の熱演まさに今日の「推し」です。演劇鑑賞という「沼」にはまって50年。本日もまた素敵な芝居に巡り会えました。感謝。

 

いちはやくこんな感想を送って頂き、こちらこそ感謝です。

明日から全国各地での地方公演が始まります。東京公演の勢いそのままを地方のお客様に観て頂ければ本望です。このどんよりした空気感を吹き飛ばす芝居ですから、おおいに笑いもやもやした気分を晴らしてくださいね。

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秋の木の実 ハナミズキ

2023/10/02
【第1806回】

「沼の中の淑女たち」東京公演、残すところ今日と明日2ステージとなりました。芝居は順調に、いや快調に手応えを感じながら進んでいます。土曜日の夜のステージ終演後にトークショーがありました。この日は2回公演だったために役者さんも相当お疲れだったと思いますが、お客様のためにしっかりと裏話を面白おかしく話されていました。その中で羽田美智子さんが「この芝居は6人で走ってきたからね...」と話されたときはおいらも熱いものを感じました。体調不良で無念にも降板した岡本麗さんと共に舞台を相務めていたんですね...この思いがあっての日々の舞台、そりゃ面白い芝居になるはずですわ。

これを観客にストレートに伝えることが出来る羽田さんの人間性がよくわかる。俳優である前に、一人の人間として人の前に立つことの意味を示された発言だったと思います。

それにしても、今回の芝居の座組の良さを改めて感じました。芝居はナマモノだけに当然トチリがあることも想定内の出来事、その場に遭遇した時のお互いの一瞬のやり取りで座組が上手く行ってるのか不協和音なのかが良くわかります。おいらがこれまで観る限りにおいて、この座組は限りなくハナマルに近いベストなチームです。

神無月に入りました。この月に日本中の八百万(やおよろず)の神様が、出雲の国(島根県)に集まり会議を開き、他の国には神様がいなくなってしまうことから「神無月」と呼ばれてきました。こんな呼び方ができる日本の言葉、ロマンを感じます。

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赤坂にある公園

2023/09/28
【第1805回】

昨日、「沼の中の淑女たち」の初日を無事に迎えることが出来ました。今回の芝居の稽古中、出演者の岡本麗さんの体調不良により急遽降板せざるを得なくなりました。残すところ本番まで2週間と迫ったときにとっさの判断で感ピューターを起動させるのもプロデューサーの仕事です。演出家、プロダクションと連絡を取り合い、一日で代役、阿知波悟美さんに出演していただくことになりました。今回のことも、相手のスケジュール次第では代役決定に至るまでにそれなりの時間を要するのにドンピシャで決まったことは、この芝居是非やってちょうだいな!という芝居の神さんの采配だと思ってます。勿論、来ていただくお客様の熱い思いも後押ししてくれたんだと思っています。

昨日の初日、お見事でした。芝居の初っ端からラストまで観客席は笑いの渦、終演後においらを見つけて「ここ最近いろんな芝居を観てるんですが、こんなに笑えたのは久しぶりです...」なんて大満足な表情で劇場を後にして行きました。

日本ではなかなか成功しないシチュエーションコメディ、ドタバタではなくエスプリの効いた喜劇の書き手がなかなか生まれない土壌なんででしょうね。少しは遊び心を持った生活環境に変えねば難しい課題でもあると思います。

それにしても、この難局を乗り越え見事な初日を迎えたキャスト、スタッフの皆さんには本当に頭が下がる思いです。

地方公演を含め11月2日までの長丁場、この世の中ホンマに何が起こるかわかりません...油断禁物、もう一度気持ちを引き締め今日も劇場を笑いの沼にハマらせまっせ!

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初日

2023/09/25
【第1804回】

先週の週末、新橋演舞場で「ふるあめりかに袖はぬらさじ」を観てきました。有吉佐和子による戯曲は当時話題になり、1972年に文学座が戌井市郎の演出、杉村春子の主演で初演した舞台を観た記憶があります。筋書きとしては尊王攘夷派と開国派がしのぎを削る幕末を舞台に、神奈川・横浜の遊郭を舞台にした物語が展開します。

大竹しのぶさん、ここのところ杉村春子さんが演じた名作に挑戦してますね。杉村春子と言えば新劇を代表する大女優。決して美人とは言えないけれど演技力、人間としての存在は他を圧倒するものがありました。昔の新劇俳優には社会の中で、役者である前に一人の人間としての矜持を大切にしながら舞台に臨んでいたような気がします。考えてみれば、自分の意見を言えない人間が舞台にあがり人前で演じるなんてもってのほかですね。その点、西欧、アメリカの俳優は政治的な立場も鮮明にして俳優業を続けています。まだまだ日本ではそこまで浸透してないのが何だかもどかしい気がします。今回の芸能界を仕切ってる会社の問題も然り、日本の芸能界の歪さを象徴しています。

今回の芝居、勿論、風間杜夫さんが出演していたので観に行ったんですよ。大竹さんが主演の時は必ず共演しています。大竹さんが杜夫ちゃんと一緒に舞台に立つことによって安心できてる雰囲気がプンプン匂ってくる舞台でございました。

ここ数日、一気に秋めいてきました。空を見上げると一目でわかる雲の表情、あの猛暑の日々を過ごした日々を考えると、なんだか嬉しくなっちゃいました。

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秋の空

2023/09/22
【第1803回】

福井県越前市いまだて芸術館に行ってきました。10月9日に公演する「沼の中の淑女たち」に関連したプレセミナー・ワークショップをやってきたのでございます。先ずはおいらが「今、なぜ演劇が必要なのか」というテーマで1時間15分ほど喋ってきました。この会館では、過去トム・プロジェクトの作品を7本上演してきたので話の通りがスムーズに展開しました。演劇は映像と違って、舞台上のすべての演者の芝居が均等に観ることが出来るので、観客それぞれが自分の感性、好みでフォーカスできることの話の件ではとても興味深く聞いておられました。来場者の一人の女性が「演劇を見た後のいつまでも消えない幸せ感、温かい感覚が何とも言えません。」と芝居に対する率直な意見を嬉々として話しておられたのが印象的でした。

次に、俳優中嶋ベンさんと来場者による寸劇。地元でアマチュア演劇をやっている方の芝居はなかなかのものでした。

実はこの日、おいらがスペインを旅しているときにバレンシアで知り合った増田頼保、智雪夫妻と40年ぶりの再会を果たしました。ご夫妻二人、今立でアーチストとして活躍されていました。今立現代美術紙展の実行委員長をやったり、アートに彩られた風力発電機を創ったり、地元独自の文化を発信し続けていました。40年前バレンシアの彼らの家に泊まらせていただいたときは、おいら見果てぬ夢話を延々と話していたそうだ...その後、これまでにどこまで実現できたことやら?

人口の少ない日本の地方都市で、演劇を愛する人達との交流は、制作する我々にとって励みになると同時に、芝居創りの初心に立ち返る貴重な時間でもありました。

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眼鏡の町

2023/09/19
【第1802回】

猛暑のなかでの3連休も終わり9月も後半戦に入りました...なのに今日も相変わらずのアッチッチ、週間天気予報によれば、「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句にあるように、辛いこともいずれ時期が来れば去っていくってことなんでもう少しの我慢でございます。

それにしても、この暑さの中でもたくさん人達が行楽地に足を運んだみたいですね。花火大会、避暑地、近場の遊園地、キャンプ場どこも賑わっておりました、それにしても道路の渋滞はなんとかならないものかと思います。おいらなんかは、あの渋滞見てるだけで逆にストレスを感じるので駄目ですね。やはり日本人は辛抱強い国民性に支えられているんですね。

9月27日に初日を迎える「沼の中の淑女たち」、出演者の一人である岡本麗さんが体調不良のため降板しました。彼女とは半世紀以上の付き合いなのだが、断腸の思いではなかったのでは...福岡飯塚で育った土地柄で、気っぷが良く裏表がない誰からも愛される可愛く色気のある女優さんです。トムの作品にも何度も出演してもらい、魅力を存分に発揮してもらいました。今はただ一日も早い回復を祈ってます。

その代役として、阿知波悟美さんに急遽出演していただくことになりました。帝劇での「レ・ミゼラブル」に長く出演し、2010年にミュージカル「キャンディード」で読売演劇賞優秀女優賞を受賞したバリバリの実力派の女優さんです。運よくタイミングが合ってのことで、ここも演劇の神様が手を差し伸べてくれたんだと感謝の気持ちで一杯です。

とにかく芝居の世界は何があるかわからない世界です...楽しみにしているお客様のためにも役者、スタッフ、稽古場で今日も汗を流しています。

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猛暑の9月と千日紅

2023/09/15
【第1801回】

昨日、トラッシュマスターズ第38回公演「チョークで描く夢」を観劇。

舞台は黒板に書くチョークを製造する小さな工場。1960年から知的障害者を雇用し始め現在でも川崎、美唄工場で多くの知的障害者が仕事に従事している稀有な会社。前半は戦後間もない昭和、後半は令和のリアルタイムなドラマが展開する。現代社会の矛盾を鋭く突きつけてきた作・演出家、中津留戯曲の真骨頂を観させていただいた一日であった。

2011年3月に起きた東日本大震災の年に、震災をテーマにした「背水の孤島」を上演し演劇界を震撼させた男が、更なる良質な芝居を創り上げた。今年2月に公演した「入管収容所」もタイムリーな作品だっただけに、今年の演劇界は中津留章仁の年と言ってもいいくらいの快進撃だ。

演劇は様々なジャンルで、多種多様な表現、演出で多くの作品を生み出している。世界的にも予測不能な昨今、日常を忘れさせてくれる楽しい演劇を上演している劇場に足を運ぶ人達が多数を占めるのは勿論理解できる。演劇も娯楽のひとつではあるのだが、演劇がより良き社会にするための役割を担っているのも紛れもない事実である。100人ほどの小劇場で採算を度外視してでも心身を駆使して諸悪の根源に向き合おうとする姿にはほとほと感心してしまう。なかには自己満足な舞台も少なくないのも確かなのだが...

いいい芝居を観た後の酒ほど心地よいものはございません。昨日もウキウキほろ酔い加減で無事帰宅することができました。

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よか芝居ですたい!

2023/09/13
【第1800回】

又々暑さがぶり返してはいますが、朝晩にはなんとなく秋の気配が感じられます。

それにしてもモロッコの地震、リビアの洪水、まさしく地球の崩壊を予感させる災害が世界各地で起きています。その最中、ロシアと北朝鮮の独裁者がなにやら不穏な会談をしております。災害に戦争、まともなニンゲンなら冷静に立ち止まって地球が存続する戦略を思考するところなんですが、いつの世も独裁者には通じないことが悲しいですね。

一方、日本ではジャニーズ問題。外国から報道されやっと動き出すこの国の闇を感じますね。そして忖度するだけしておいて、ちゃっかり金儲けに走ったマスメディアも罪深い。ようやく企業も腰を上げCM出演を考え直すとのこと。演劇の世界でもジャニーズ所属のタレント、俳優を出演させれば客席が埋まるということが分かっているので起用することが常識。おいらも幾度となくそれらの公演に出かけた経験があるのだが、演劇を鑑賞するということよりもお目当ての出演者を観たいという欲望が優先しての観劇。しかも公演中に何度も劇場に足を運ぶリピーター客がほとんどでございます。確かに、演劇を観る機会が増え芝居人口の底上げにつながる可能性もあることは否めませんが、何か違うような気もします。

長い目で見ても、結局は質の高い作品を創り上演することをしないと演劇の未来はないと思っています。

質の悪い文化を生み出す国からは、質の悪い政治家、役人、企業しか生み出せないのは自明の理でございます。

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新宿西口甲州街道

2023/09/11
【第1799回】

昨日、神楽坂にあるライブハウスTHEGLEEで山崎薫コンサート「海へ。」に行って来ました。女優でもある薫さんの歌声は素敵でした。童謡でもある「われは海の子」をこれほど力強く拡がりを感じさてくれたことは新鮮でした。童謡と言えば、何となく可愛らしく叙情的に歌いがちなのだが、薫さんの歌は従来の海の概念を覆すほどのスケールでした。こんな表現が出来るのも役者として培ったものが役に立っているのでは...第二部で歌った「時には母のない子のように」、おいらも浅川マキほか数々の歌手で聴いてきたのだが、今回は山崎薫風の歌になっていました。今回のピアニスト田口真理子さんのチカラも大きいと思います。歌い手の良さを上手く活かしながらのタッチがとても心地よかった。時にはジャズ風に、時にはブルースの味付け、そして基本のクラシックと千変万化の演奏は実に聴き応えがありました。どんなジャンルにしても、表現者として自分の色を持てれば観客には確実になにものかを伝えることが出来ると思います。でも、その色を獲得することが実は非常に難しいんです。

バスケットに続き、U―18ベースボールワールドカップでの優勝、そして昨日のワールドラグビーカップの勝利、スポーツ界の躍進が続いています。演劇界も負けておられんですばい!何といっても芸術の秋ですからね。

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秋祭り

2023/09/08
【第1798回】

社長業を退任して少しは時間の余裕が出てきたので、念願の勉強に時間を費やしています。ふらっと街中に出て、その日の自然を含めて街の空気を感じながらお気に入りのジャズ喫茶に向かいます。最近では神保町にある「オリンパス」、中野の「ロンパーチッチ」、西荻窪の「ユハ」、ジャズと美味しいコーヒを飲みながら、まだ芝居のプロデューサーは続行中なのであれやこれやと次の芝居の企画に思いを巡らせています。そしてどの店もレコードに針を落としているので、まだ見ぬレコードのジャケットに目を凝らしスマホで検索し各プレーヤーの名前を確認するのも楽しみの一つです。舞台でも映画でも然り、主役がすべてではありません。名バイプレーヤーが居てこその作品です。昨日も「オリンパス」で「レッドガーランド ピアノ」が流れていたのですが、ベースのポールチェンバース、ドラムのアートテイラーが絶品でした。喫茶店のあとは明治大学の図書館へ直行。卒業生であれば駿河台、中野、和泉、生田の図書館がすべて利用できるんですから便利です。若い現役の学生さんたちに混じりながらの読書はホンマにはかどります。今日は武井照子さんの「あの日を刻むマイク」を読了。戦中戦後アナウンサーとして仕事にかかわってきた中で、やはり人の出会いがあってこそやれた仕事。その中でそれなりの業績を残した人に共通することは、精神の明晰さに尽きるとのこと。精神の明晰さ!素敵な表現ですね。

又々、台風の襲来。世の中少子化が進んでいるってのに、台風一家は子だくさんみたいですな。

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神保町の黄昏

2023/09/06
【第1797回】

砂原浩太郎「『高瀬庄左衛門御留書』読了。時代小説はいいですね...山本周五郎、藤沢周平などの作品を貪るように読んだ青春時代に比べると、ここ最近の作品で気に入っていた葉室麟さんも5年前に66歳で亡くなり寂しい気がしていました。2011年に出版した『蜩ノ記』なんかは絶品でした。武士の矜持という言葉が現代人にビシビシと伝わってきました。前藩主の側室の密通の罪を問われ十年後の切腹を言い渡された男。しかし、彼の生き様はあくまで強く美しく清廉であり、武士の生き様と家族と恋愛も含め涙がちょちょぎれた記憶があります。

おいらにとっても葉室麟さんに次ぐ時代小説の作家が出現した思いで砂原さんの小説を読み終えました。五十を前にして妻と息子を失い、息子の嫁・志穂とともに手慰みに絵を描きながら寂寥と悔恨の中に生きていた高瀬庄左衛門。そんな彼に藩の政争の嵐が静かに襲いかかろうとしている...いや、優れた時代小説に共通することは、文体の格調と美しさ。そして家屋、生活用具、登場人物の佇まい、景色、そのすべてが丁寧に緻密に記されていること。そんな文章を読んでいるうちの己の身体に一陣の清らかな風が通り過ぎる感じがし、背筋がしゃきっとしてくる感覚がたまりません。

価値観の多様化は時代の流れとして仕方ないにしても、あまりにもすべてが乱れまくっている現世、人が人として生きる上で大切な、己を抑制しながらつつましく生きることを教えてくれる時代小説は現代社会に欠かせないものだと思います。

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今日の空

2023/09/04
【第1796回】

昨日から「沼の中の淑女たち」の稽古が始まりました。女優5人による丁々発止の芝居です。

ベテランの岡本麗、円熟の柴田理恵、映像でおなじみの羽田美智子、リズム感溢れる長尾純子、トム・プロジェクのホープ森川由樹。この出演者を並べただけでもワクワクいたします。個性あふれる女優たちによるバトルがいよいよ始まったという稽古初日でございました。

プロデューサー稼業の面白いところは、キャスティングが上手くはまった時ですね。持ち味が似た者同士じゃ面白みに欠けるし、かといってあまりにも芝居の質がかけ離れていてもバランスが悪いし、そこのところの味付けがなかなか微妙なんでござんすよ。

今回は、おいらの勘といたしましては、かなり成功率が高いと思います。あとは作・演出家の腕の見せ所と言ったところかな?

お客様も、今回の芝居は期待してるんでしょうね。東京公演は完売の日もありますし、ほかの日も近々完売しそうです。観劇予定の方はお急ぎくださいませ。今回は地方公演もあり、芝居を楽しみにしている方々にも楽しんでいただける作品になると思っています。

先週の週末から日本バスケットの話題で持ち切り。野球、バスケット、そして今月にはワールドラクビー。何となくパッとしない世の中ですから、スポーツ界から勇気と希望をもらってる感じがしますね。本来ならば、この国を司る方々からの発信力と行動力で国民を鼓舞させなきゃならんのに...望み薄ですから、アスリートの溌溂としたプレーを観ながら前に進むしかありませんな。勿論、こちらもいい芝居創ってお役に立ちたいと思ってます。

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稽古場がある錦糸町

2023/09/01
【第1795回】

今日から長月というのにこの暑さ。そして今日は100年前に関東大震災が起きた日でもあります。「天災は忘れた頃にやって来る」東日本大震災然り、いや、この時代忘れた頃ではなく明日にでも来たっておかしくない世の中になってしまいました。防災のための備蓄を怠ることなく、常日頃の心がけに今一つチェックいたしましょう。

昨日は杉並区の敬老会に顔を出してきました。敬老会?おいらにとっては縁のない催しだとは思っていましたが、いよいよ向こうから勝手に押し寄せてきました。どんなもんだかと杉並公会堂に行ってみました。75歳以上のおっちゃんおばちゃんがぞろぞろと会場に向かっていました。なかには自分は老人の仲間入りはしたくない!なんて意地を張り出席しない人達も居るんでしょう...確かに生きていく上で大切なことは若さを失わないことだと思います。年老いた人達の過去の自慢話を聞くよりも、フレッシュな集まりのなか未来に向けた発信をしている場に居たほうがどれほど有益なことか、自明の理でございます。

ところで敬老会どうだった?いや、区の関係の人達の挨拶はさておいて、日本フィルハーモニー交響楽団・弦楽アンサンブルの演奏が素晴らしかった。ヴィヴァルディ「四季」より秋、ボロディン「ノクターン」などなど、映画音楽・「虹の彼方に」「慕情」も懐かしかったな。

お年寄りの青春時代を想い出させてくれるような選曲でした。そして極めつけは「津軽海峡・冬景色」弦の音色を巧みに使い分け、まるで津軽海峡が目の前に現れてきました。

以前にも杉並公会堂でジャズを聴きに行ったことがあるのですが、このホールの音響システムは抜群、身体に心地よく染み込んでいきます。

トリはソプラノ歌手・七澤結さんによる歌のステージ。歌曲「わが夢の街」「旅愁」日本の代表的な童謡「ふるさと」。何故か「ふるさと」を聴いてる途中に涙が出てきました...おいらは確実に年とってるんだなと実感した次第です...いや、この涙はもっと違う意味での涙ではないか...なんとも不思議な気持にさせられた一日でございました。

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スーパームーン

2023/08/30
【第1794回】

明後日から9月というのに何という暑さだろう...この先の予報も来月末までは覚悟しておいた方がよさそうだ。こんな時には詩集なんかに目を通すと一服の清涼剤になる。

今日は長田弘全詩集から「言葉」を紹介します。

 

悲しみを信じたことがない。

どんなときにも感情は嘘をつく。

正しさをかかげることはきらいだ。

色と匂いを信じる。いつでも

空の色が心の色だと思っている。

黒々と枝をひろげる欅の木、

夕暮れの川面の光。

真夜中過ぎの月が、好きだ。

単純なものはたくさんの意味を持つ。

いくら短い一日だって、一分ずつ

もし大切に生きれば、永遠より長いだろう。

どこにあるかわからなくても、

あるとちゃんとわかっている魂みたいに、

必要な真実は、けっして

証明できないような真実だ。

人とちがえるのは、ただ一つ

何をうつくしいかと感じるか、だ。

こんにちは、と言う。ありがとう、と言う。

結局、人生で言えることはそれだけだ。

 

一人の言葉は何でできているか?

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猛暑に涼やかさを届けてくれるムクゲ

2023/08/28
【第1793回】

今週もスタートしました。気持ちばかり秋の気配がしておりますが油断はなりません。ベランダにいつもは元気に咲いている花も今年ばかりはぐったり枯れちゃいました...お花ちゃんたちにも日焼け止めクリームが必要な時代になったのかな。水をあげるとなんとも嬉しい悲鳴をあげてる感じがします。いつも美しい花をみせてもらってありがとう!又、元気になって頂戴ね。

それにしても、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に対する中国の反応が凄いですね。

中国政府は日本からの水産物輸入を全面的に停止。日本人学校に石や卵が投げ込まれ、日本では中国の国番号86で始まる迷惑電話が相次いでいる。何の関係もない埼玉のラーメン屋にも30件ばかりの迷惑電話が掛かって困っていました。不動産を含め、中国国内の景気の減速の不満を政府に抗議するとエライ目にあっちゃうので、その捌け口として日本の向けられてるのかな?困ったもんでございますが、海洋放出したからには、先ずは漁業で生計を立てている福島の漁民に救いの手を差し伸べるのが国の仕事です。なんだか言行不一致内閣の為すことに比例して支持率も下がってますから、ここは初心に戻ってと言いたいところだが、政治屋さんのオムツかなりマヒしてますから期待薄かもしれませんな。

子供たちの夏休みも今週で終わりになりましたね。夏休み、両親と行楽地に向かう子供たちのキラキラした表情を見るにつけ、キラキラ顔が持続継続できる未来を切に願います。

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想い出の夏休みだったかな?

2023/08/25
【第1792回】

何だか今年の夏の甲子園は盛り上がってますな。長髪高校同士の準決勝、そして決勝は107年ぶりの優勝を賭けた慶応と、夏2連覇を目指す仙台育英の一戦。大谷フィーバーに匹敵するほどの、それこそ暑い熱い戦いになりました。おぼっちゃん慶応のエンジョイベースボールはいいですね!坊主頭に根性丸出しの野球は次第に無くなっていくんでしょうかね...それはそれで寂しい気もしますがね。風になびく髪も美しいが、野球道にひたすら突き進む修行僧的な坊主頭も捨てがたい。決勝の甲子園球場はほぼ慶応の応援一色、仙台育英はアウェー状態で可哀そうでした。でも、いい顔して戦ってました。負けましたがこのチームの監督も素晴らしい方でした。試合後のインタビューで「人生は敗者復活」と話されていました。この哲学があってこそのいいチームですね。今回の二人の監督の下で三年間野球に打ち込めた生徒は本当に幸せ者だとも思います。

おいらも中学時代の野球部で、こんな先生に出会っていたら西鉄ライオンズの選手で活躍してたかもしれませんな?と夢みたいなことついつい夢想しちゃいました。

一方、パリーグの我がライオンズの酷さは力抜けちゃいます。オリックス相手に地元で3連敗、3試合での得点がホームランでのたったの1点。このくそ暑いなか蒸し風呂みたいな球場に貴重な時間とお金を出して観戦したファンが気の毒でなりません。こんなクソ試合するんだったら入場無料にしろよといいたい。試合は負けることはあるのは当然ながら負け方があまりにも情けない。松井監督、名選手であったことは認めるが監督には向いておりません。試合後のインタビュー明らかに語彙の貧困さが際立っています。指導者は豊かなイメージと説得力のある言葉が命です。今回の夏の高校野球決勝戦で戦った両監督のところで修行した方がいいんじゃないかしら...ほんまに情けなか!

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猛暑のなかの夕暮れ

2023/08/23
【第1791回】

今日も世界的な天候不順のなか各地で戦争が行われている。にもかかわらず今年の3月、千葉の幕張メッセで4年ぶりに武器見本市が開催された。平和憲法がある日本に、武器取引をする死の商人が集まっている光景を見るだけでなんとも不自然である。戦争があればもうかる死の商人たちのにこやかな歓談姿を見るのはなんとも気色が悪い。そしてなんと政府が後援した国際的な武器見本市と銘打ってるんだから開いた口が塞がりません。

戦争や犯罪は、人間にとっての最大の尊厳である「死」をないがしろにする。死の意味と共に、すべての豊かな「個」も死に絶える。ということは人間性のすべてが否定されるということになる。

そしてもうひとつ気になることが、SNSの存在である。自由になんでも発言できることをいいことに、暴力的なゴツゴツした言葉のつぶてが日常茶飯事に飛び交い無作為に見知らぬ誰かを傷つける。今や言葉が安っぽく使われ身体に届いてこない。言葉を吐くときには己のすべてを賭けてぶつけて欲しい。要するに言葉は言霊であるということを自覚して欲しい。まあ、世の中を治めている人達の言葉があまりにも軽いのでこんな時代になっちゃったのかなとも思います。

そして今日、樹木の中からひょっこりと顔を出してる葉っぱちゃんを見つけるとなんだか元気が出てきました。日々、猛暑のなかでも毅然たる姿で立ってる樹々はいろんなことを気付かせ学ばせてくれます。ありがとさん!

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生きてます!

2023/08/21
【第1790回】

先週の週末、練馬区下井草に拠点を構える、東京芸術座アトリエ公演「アンブレイカブル~敗れざる者たち~」を観劇。戦前から演劇活動をしていた村山知義さんが創立した歴史ある劇団です。今回の芝居は戦前の日本で治安維持法違反に問われ、特高警察による過酷な取り調べや劣悪な環境の中で命を落とした者たちの話です。今この国の現状を「新しい戦前」という発言があったように不穏な動きがあちらこちらで見受けられる中でのタイムリーな公演だと思いました。

この傾向の芝居の役作りは非常に厄介です。熱くならず、かといってあまりにも冷めた表現でも観客に伝わらず、そのあたりのさじ加減が難しいと思います。今回登場する役者さん、そのあたりをじっくりと本を読みこみ稽古で積み上げていったのではなかろうか。勿論、その表現を冷静に見続け演出した演出家の手腕があっての舞台です。

おいらも長いこと芝居に関わってきましたが、この劇団のように真摯に演劇に向き合っている集団に出逢うと嬉しくなってしまいます。驕ることなく常に市井の人達に寄り添って芝居を創る!この姿勢がある限り演劇が衰退することはありません。

それにしてもこの暑さ異常ですね...外出を控え、物価の値上げで消費を控えるなか、今日も長年地元の人たちに愛された居酒屋が閉店を余儀なくされた新聞記事を眼にしました。

一寸先は闇...危機感を感じながら楽しく生きるなんて矛盾してるようには思いますが、これが世界の現状でございます。

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新宿南口

2023/08/18
【第1789回】

パルコ・プロデュース「桜の園」観劇。ロシアの作家チェーホフが120年前、死の5ヶ月前に書いた最後の作品である。急変してゆく現実を理解せず華やかな昔の夢におぼれたため、先祖代々の土地を手放さざるを得なくなった、はかなく消えゆく貴族階級の哀愁を描いた演劇における不朽の名作である。おいらも若い頃、俳優座、文学座での名優の芝居で新劇の素晴らしさを実感した記憶があります。東山千栄子、細川ちか子、宇野重吉、米倉斉加年なんて役者さんが懐かしく想い出してくる次第です。

さて今回の芝居、冒頭からなんじゃろかいな?という舞台装置で観客の度肝を奪う設定。だってコンクリートの石棺が吊り上げられ、ビニールで覆われたものを取り払うと登場人物や家具が現われる。成程、封印された過去を解き放し現代に蘇えさせるための幕開けだったのか...演出は英国のショーン・ホームズ。気鋭の演出家と言われればこれまでやったことのない発想と演出で舞台を創りたいという気持ちは十分に理解できます。

確かに今まで観た作品とは随分違った感じがします。でも、役者の表現も含めてあまりにもポップになりすぎているのではないかと思います。これでは登場人物のおかしみ、悲しみの深さが薄められてしまいます。なんだかあの嘗てのロシアの大地とかけ離れた芝居に感じられました。その中で、地味ながらきらりと光る演技と存在感を示したのが村井國夫さんでした。あの立ち振る舞い、哀愁を感じさせる台詞術、とても印象に残る演技でした。

今日も猛暑、ここまで来たら覚悟して暑さを楽しむしかありませんな皆の衆。

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猛暑もなんのその!アンネのバラ

2023/08/16
【第1788回】

終戦から78年となった昨日8月15日、政府や東京都が主催する戦没者追悼式が相次いで行われました。遺族らは戦没者を悼み、戦争の惨禍が繰り返されないよう、平和を祈りました。おいらがいつも思うことですが、確かに国のために戦地で無念の死を迎えざるをえなかった人達に鎮魂の気持を持つことは当然です。がしかし、この国が他国に対して行った数々の加害的事実に対しても同じような気持で向き合わなければいけないと思います。アジアに侵略し他国の土地を奪い数々の残虐な行為を行った歴史。例えば、太平洋戦争中に、旧花岡町、いまの大館市に強制連行された中国人が、終戦直前の昭和20年6月30日に過酷な労働や飢えに耐えかねて一斉蜂起し、鎮圧やその前後の過酷な労働による死者もあわせると400人以上が死亡した花岡事件。これに類する出来事が多々あるにもかかわらず、あまり表ざたにしないこの国も、いまウクライナに侵略したロシアとなんら変わらない歴史があったことを忘れないで欲しい。

被害者意識ばかりを主張し、加害者としての贖罪意識なくしての平和運動は片手落ちではなかろうか...まあ、いつの頃からか教科書にも日本が起こした戦争に対してうやむやにしたことにも問題があると思います。

海軍第14期飛行予備学生で特攻隊要員だった100歳になる裏千家15代の家元千玄室さんは「平和」という言葉が嫌いだという。「平和」という言葉の前には、みんなで殺し合う国と国の衝突があるから。平和という言葉を使わない世界にしなくてはならないと...そして、帰還を許されない若き特攻隊員にお茶を点て、皆が「お母さん!」って故郷に向かって飛び立ったそうだ。「天皇陛下万歳!」って言葉はなかったとのこと。

8月だけではなく、常日頃こうしたことを忘れない国でありたいですね!

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8月15日の空

2023/08/10
【第1787回】

この猛暑の中、第105回全国高校野球選手権記念大会が連日行われています。TV越しで観てるだけでも熱い戦いに暑さ倍増。高校野球の面白いところは終盤、特に9回の攻防で戦局が一変するところです。あと一球で試合終了という場面で奇跡の逆転なんて試合が何度もありました。あの甲子園球場には105年という長い年月の間に、きっと野球の魔物が潜んでいるに違いない。今日の第二試合、明豊(大分)と北海(北海道)の一戦、9回裏の土壇場で北海高校が同点に追いつき、更に延長戦で再び逆転し勝利しました。まさしく筋書きのない奇跡のドラマが用意されてるんですから野球の醍醐味十分といったところです。

こんなの見せられると芝居はとても太刀打ちできません!と白旗上げてちゃダメなんで、一工夫どころか発想の転換をしなきゃと言いたいところですが...芝居は芝居なりの良さがあると信じて創り上げるしかありませんね。

明日からお盆休みです。ご先祖様をご自宅にお迎えしてご供養する夏のいつもの風習ですが、今年は台風と重なりご先祖様、風雨にさらされ難儀されているんでは?と心配しております。

おいらがこうやって無事に生かされているのも多くの先人のお陰だと思っております。ついつい忘れがちな感謝の気持ちを、今あらためて感じる次第でございます。

「夢吐き通信」も15日までお休みです。皆さま良いお盆休みでありますように!

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夏雲

2023/08/09
【第1786回】

長年の友人でもあり、仕事も一緒にしたこともある日本舞踊春日流家元の春日鶴壽さんのお招きで「夏の涼み 芸者と屋形船」に行ってまいりました。深川の渡船場から屋形船が出発し、お台場で停船し自慢の江戸前料理、刺身と天ぷらを酒と共に食する暑気払いにぴったりのコース。この日は、鶴壽さんのお弟子さんである3人の芸者さんが日本伝統の芸をたっぷりとご披露してくれ大満足でございました。季節の踊り、お座敷遊び、江戸芸勢ぞろい、暮れ行く空と、レインボーブリッジ、湾に立ち並ぶ光景を眺めながらの大宴会申し分ありませんでした。世知辛いというか、すべてが西洋文化に押し流されている昨今、日本の伝統文化、しかも下町庶民にこよなく愛された芸の数々、改めて守らないかんと思い知らされた次第です。俺たちやっぱり日本人、踊りに歌、そして三味線、太鼓にしても、身体にしっくりきて気持んよかですばい!風情と情緒に酔いしれた2時間半でございました。

長崎は今日、78回目の原爆の日を迎えました。台風の影響で市内の屋内施設での平和祈念式典が営まれ、犠牲者に祈りをささげる様子をTVで拝見しました。鈴木史朗市長の平和宣言はハートがあり好感を持てました。改めて、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の核軍縮文書「広島ビジョン」が肯定した核抑止論に反発。「私たちの安全を本当に守るには、地球上から核兵器をなくすしかない」と強く訴えました。本気度が感じられないお偉いさんが出席しない分だけ簡素で意義ある式典だと思いました。

長崎で被爆した作家、林京子さんは「原爆による死は、人間の死じゃない...人間があのように扱われて死んでいいはずがない」と。この言葉、改めて肝に銘じたい。

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奴さんだよ

2023/08/07
【第1785回】

昨日は広島に原爆が投下されてから78年です。いつものように午前8時から行われた平和記念式典。市長、総理、国連関係の人たちのそれぞれの挨拶がありました。その中でも地元の小学生2人が「平和への誓い」として、「被爆者の思いを自分事として受け止め、自分のことばで伝えていきます。誰もが平和だと思える未来を、広島に生きる私たちがつくっていきます」と述べました。その通り、原稿用紙に目を通すこともなく、自分の言葉としてはっきりと訴えかける姿が印象的でした。総理なんぞは国会の答弁そのまま、官僚が書いた原稿をそのまま何の感情を交えることなく淡々と人間スピーカーを演じておりました。

おいらいつも思うのだが、唯一世界での原爆被爆国として世界に発せられる言葉としてはあまりにも安易ではなかろうか...発言者は、時間があるのだから、何度も何度も有効性のある言葉を自分の身体に叩き込み咀嚼しながらこの日に臨むべきなのではないだろうか。

いつもの決まり決まったセレモニーを毎年毎年見せられても本気かいな?と言う気がしてなりません。

それにしても、この国が未だ核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバーとしても参加してないことにも納得できない。それどころか核を所有しているからこそ戦争を止められるという核抑止論を助長する動きに同調する人達が増えてきている現状にも不安を感じます。

明後日は長崎での式典、台風の影響で会場も屋内に変更し、来賓者、式典出場者及び被爆者・遺族の代表者のほか、事前申込みをいただいた方や自治体など全ての参列を中止とのこと。大々的に実施するのではなく、心ある人たちによる平和の式典が実施されるいい機会になればいいのになと思います。

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テッポウユリ
~純潔~

2023/08/04
【第1784回】

連日の猛暑のなか夏休みも本番となりましたが、沖縄で想い出の夏休みを夢見た子どもたちにとっては可哀想な沖縄の旅になりました。飛行機が飛ばず、無駄な連泊を強いられ手持ちぶさたな表情がなんとも痛々しい。この台風、又もや沖縄に出戻り、更なる被害をもたらすってんだから始末が悪い。ほんまにこの世は変幻自在、人間は右往左往、確実に地球は大変換期を迎えております。

夏休みのスターはやはり花火でしょう。コロナの影響でやれなかった各地で4年振りに開催されています。東京の隅田川花火大会も100万人の人出でございました。仙台市の人口とほぼ同じ人数の人達があの狭い地域に集まったんですから、これも狂気の沙汰状態。花火処か汗だくの人をお互いに鑑賞し合ったなんて話も伝わってきています。

おいらの花火の想い出と言えば博多大濠公園での花火大会。早い時間から花火を見るための場所取りではなく、ラムネを売る場所を確保するための場所取りでございました。小さいときからよく働くキヨシ少年でした。大空に打ち上げられた美しい花火なんぞを見ている暇なんぞはありません。飛ぶように売れるラムネの球を抜く音と、打ちあがる花火の音の競演を楽しんでいた懐かしい昭和30年前後のあの日でございました。

「裸の大将」で有名な放浪の画家、山下清もちぎり絵で美しい花火の絵を創作しました。そしてこんな言葉を残しました。「みんなが爆弾なんかつくらないできれいな花火ばかり作っていたら、きっと戦争なんておきなかったんだな」

けだし名言でございます。

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「た~まや~」「か~ぎや~」

2023/08/02
【第1783回】

猛暑のなか葉月となりました。昨日の突然の豪雨にはびっくり!本当にこの現世なにが起こってもおかしくない、危険極まりない時代でございます。

そんな折、急激に勢力を拡大してきた政党の「立民がいても日本は何も良くならない」、共産に関して「日本からなくなったらいい政党」と公言し居直っている。まあ、当たり障りない発言でごまかしている輩が多い中、ここまで本音をズバリ発言していること自体驚きなんだが、この政党が政権を掌握した時の方が怖い気がする。何事も排除はよくありませんね。民主主義とは少数者の意見も聴きながら事を進めるのが基本でございます。

それにしても連日、防衛費、少子化対策への増税、どこから引き出すかなんて議論をしてますが、おいらに言わせれば議論している貴方たちの議員数を減らすことが先でしょう!と言いたい。当選回数に合わせて大臣を任命しても、官僚が書いた書類を棒読みする姿を見るたびにうんざりでございます。そんな人たちに多くの税金が払われると思うだけでも腹が立ちますバイ。庶民は度重なる物価の値上がりに悲鳴を上げています。この低迷する日本国を立て直す政治家出てこい!と言ってもすべてが程よく小さくなったこの国からは、なんとも無理な気がします。

暑い!暑い!といいながらもあっという間に夏も過ぎてしまいます。悔いのない楽しい夏にしたいもんでございます。

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8月の雲

2023/07/31
【第1782回】

先週の週末、新宿歌舞伎町に新たにオープンした新宿シアターミラノ座で、唐十郎作「少女都市からの呼び声」を観てきました。この場所は嘗ての映画館「ミラノ座」があり巨大なスクリーンと大音響のスピーカーで数多くの名画を堪能した場所でした。前の広場を挟んで「コマ劇場」もありました。この劇場で美空ひばりも観ましたな...まさしく昭和の匂いがプンプンしてくる場所でもありました。この広場では、いろんな大道芸人が現れ道行く人たちを楽しませてくれました。そのなかでも印象的だったのは、殴られ屋で商売してるオッサンでした。「どうぞ私を思いっきり殴ってストレス発散しませんか!一分間、千円で殴り放題!」多くの人達が集まり皆興味津々、おいらが覗いた時は、いかにも悪そうで屈強な男が本気でオッサンに襲いかかりぼこぼこにされてました。腫れた顔でも丁寧に「ありがとうございました」とお礼を言ってましたな。新宿は、いつの世もカオスの街、得体のしれない人種がどこからか集まりどこかへ散っていくあぶくのような街...

所で芝居の方はといいますと、この新しくできた劇場、なんだか慌てて作った感じ。ロビーは狭いし客席も少々チープな感じがいたします。何といっても入場料¥12000しますからね。それなりの座り心地は欲しいもんでございます。

少女 雪子を演じた咲妃みゆさんの透明感が素敵でした。動き、声 、表情、全てがはまってました。そして芝居を締めていたのが風間杜夫ちゃんでございました。最後は歌まで唄って貫禄十分。そして主演を演じた関ジャニ∞安田章大さんを観るために駆けつけた多くの若い女性ファンが、これをきっかけに芝居を観に来てくれたらなと思った次第です。

この日は、4年振りに開催された隅田川花火大会とも重なり、新宿の街も外国観光客も含め大賑わいでございました。

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7月31日の空

2023/07/28
【第1781回】

「海をあげる」タイトルに惹かれ読了。沖縄に住む琉球大学教育学研究科教授の上間陽子さんが書き上げたノンフィクションです。沖縄に暮らす人たちの痛切な叫び声を無視し続け、観光地としての素晴らしさだけに注目する本土の人達に対する怒りを現地に住む人たちの声を通して描き綴っている。国の最高機関が最良の決定という大義名分の元、辺野古に土砂を投入した日本に対しても絶望的な言葉で抗議している。こうなると一連の流れは沖縄に対しての搾取であり差別だと断言する。「差別をやめる責任は、差別される側ではなく差別する側の方にある。」にも関わらず、彼らの問題として全てを押し付ける。

そして彼女はこの言葉で締めくくる。

 

そして私は目を閉じる。それから、土砂が投入される前の、生き生きと生き物が宿るこっくりとした、あの海のことを考える。
ここは海だ。青い海だ。珊瑚礁のなかで、色とりどりの魚やカメが行き交う交差点、ひょっとしたらまだ人魚も潜んでいる。
私は静かな部屋でこれを読んでいるあなたにあげる。私は電車でこれを読んでいるあなたにあげる。私は川のほとりでこれを読んでいるあなたにあげる。
この海をひとりで抱えることはもうできない。だからあなたに、海をあげる。

 

これは沖縄に住む人たちの絶望を、見て見ぬふりしているすべての日本人に託したメッセージである。

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ちびっ子盆踊り

2023/07/26
【第1780回】

アメリカの俳優労組がストライキを開始した。米ハリウッドでは、過去43年で最大規模のストとなるそうだ。労組は、動画配信大手や制作会社などに対し、利益の公正な分配と労働条件の改善などを求めている。これは将来、役者の仕事もAIにとって代わられるんじゃないかという危機感から発したものだ。事実、AIで作られた映像を見てびっくりしました!どんな人物の顔、声すべて出来てしまうんだから俳優の仕事は無くなってしまう時代が、もうすぐ近くまで来てるのだからストも当然のことかもしれない。

こうなると最後に生き残るのは演劇かもしれない。舞台での生モノの役者だけは代替えは効きませんな。様々な人生を背負った老若男女の役者を、今まさに目の前で観ることができるからこその演劇である。古代から世界各国で上演されてきた演劇の底力がこれからますます底光りするんじゃないかしらと思っています。

それにしてもこの暑さ、東京は37度。この先、地球はどうなってしまうんでしょうね?今のままではあらゆる災害に晒され、当たり前の生活が成立しなくなってしまうんじゃないかしらと悲観的な状況を考えてしまいます。地球温暖化を防止するためには、いまの生活を見直し二酸化炭素の排出量を減らすことが必要とわかっちゃいるけど止められない!というのが今の世界の現状です。政治家を筆頭にニンゲンという生きもの、いよいよ地球最後の日を迎えないと気付かない鈍感な生きものなのかもしれませんね。

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猛暑に負けずミンミンミン♪

2023/07/24
【第1779回】

先週の金曜日、新宿文化センターでの島田歌穂さんの「Musical,Musical,Musical!!」に行って来ました。スペシャルゲストに上白石萌音を迎えての華やかな会でした。今回のテーマは「ミュージカルとジャズ」、そういえばジャズのスタンダードナンバーの歴史を辿ると、実は元々ミュージカルのために作られた曲が多いのも事実です。おいらが20歳のときに新宿ジャズ喫茶DIGで聴き衝撃を受けたジョン・コルトレーンの「マイ・フェイヴァリット・シングス」もミュージカル「サウンド・オヴ・ミュージック」の挿入歌である。この日はジャズ喫茶で耳にしたナンバーをたくさん聴けてとてもハッピーな一日でした。

音楽監督である島健さんと演奏者との息もピッタリ、歌穂さんがのびのびと楽しく歌う姿に観客も大満足でございました。

来年は島田歌穂さん、大和田獏さん出演の「モンテンルパ」の再演が決まっています。芝居の中で歌われる歌穂さんの歌は絶品です。獏さんの芯の強さを表現した演技も見ものだし、真山章志の迫真のシーンも見ごたえがあります。出演者のなかでもっとも若い辻井彰太の生きの良さが舞台に弾みをつけています。2021年、コロナ禍のなかでハラハラドキドキしながら上演した芝居が、多くの人達の再演を望む声に押され上演できることは本当に嬉しい限りです。

週明けもアッチッチ!夏空に映える百日紅の花を見上げると暫し暑さも吹っ飛んでしまいます。

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サルスベリ

2023/07/21
【第1778回】

先日、トム・プロジェクトに3年半勤務した石井君の送別会を行いました。振り返ってみれば29年間いろんな人達がトムのために働いてくれました。演劇業界は昔からなかなか食べていけない産業の一つに数えられていました。役者になろうなんて言ったら「何が悲しゅうて河原乞食になるの?」てな言葉が返ってきたもんでございます。そんな世界で芝居を企画して制作するなんて無謀なこととは知りつつ何とかやってこれたのも、吐夢駅に立ち寄り関わった人たちのお陰だと思っています。演劇の世界からの人もいれば、全く関係ない仕事から入社した人もいます。考えてみれば社名が吐夢ですから「よっしゃ夢でも見ようじゃないか!いやいや叶えて見せまっせ!」という意気込みがなければ継続できない仕事です。

何もないところから立ち上げ、1本の芝居を創り上げることはなかなか大変だからこそやりがいがある仕事だと思っています。まさしく無から有、この過程の中に様々なドラマがあり発見があることに興味津々のある人ほど長続きするような気がします。

いろんな事情で退社した人たちにとっても共に芝居を創りあげるなかで得たものを、今後生きる上で役立てて欲しいと思います。

人生の旅、いくつもの駅で降り、いろんな人と出会い様々な体験を得て終着駅に向かいます。

そんな長旅の中、吐夢駅に立ち寄ってくれてありがとう!感謝の気持ちで一杯です。

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夏の空

2023/07/18
【第1777回】

いやいや、一歩外に出ればサウナ状態です。散歩なんぞしてると頭がぼんやりとして参ります。高齢者は心身ともに鈍くなっていますのでおいらは大丈夫なんて言ってるととんでもないことになっちゃいますからご用心。てなことで、どうしても散歩したいならば日が沈んでからがよさそうですな。こんな時は、クーラーかけて家に居るに限ります。昨日はアマゾンビデオで「ヒトラー~最期の12日間~」観ました。ヒトラーと言えば、狂信的な言動でユダヤ人大量虐殺を犯した捉え方の映画が数多いのだが、この映画はヒトラーの衰弱していく様を周囲の人間を通して丁寧に描いています。なんだか未来の窮地に陥っていくプーチンの姿とダブってきました...今なお侵攻継続のロシア軍の兵士の中からもこんな話が出ています。ロシア兵が前線でのウクライナ側への攻撃で弾が当たらないように撃ってるらしいとのこと。なぜならばロケット弾を撃ち尽くすと部隊は交代できる。だからはやく在庫切れして、前線から引き揚げたいのが本心らしい。普通に考えてみれば、侵略もされてもいないのに同じ民族を殺戮するなんてことは狂気の沙汰である。しかもプーチンの私利私欲のために命を捧げるなんてことはどう考えても理不尽である。良心のあるロシア人であればそろそろ気づき始めてもおかしくないことである。

戦争、気候変動による地球規模の災害、そして独裁国家の不穏な動き...暑い暑いなんて言っていられないくらいの危機感を持ってないと、もしや一瞬にして地球は滅びてしまうかもしれませんね。

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納涼

2023/07/14
【第1776回】

先日、今年11月から上演する風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン最後のロマンス」のチラシ、ポスターの写真撮りをしました。現在、新宿歌舞伎町にオープンしたシアターミラノ座での公演中にも関わらず元気な姿で撮影スタジオに来てくれました。新宿梁山泊でのテント芝居に続いての本番で御年74歳になる杜夫ちゃんパワフルですな。シアターミラノ座では関ジャニ∞の安田章大、宝塚出身の咲妃みゆ他若手俳優に混じって連日大奮闘の舞台を演じきっているとのこと。

それにしても風間杜夫ひとり芝居、1997年にスタートして今年で26年。トム・プロジェクトが芝居を創り続けて来年で30年になります。トムの歩みとともに築いてきた作品です。日本国内だけではなく、ヨーロッパ、アメリカ、アジアまで巡演し数々の賞をいただいた価値ある作品でもあります。ひとつの作品がここまで長く継続できたのもスタッフの皆さんとの相性が良かったことと、お互いの信頼があったからだと思っています。勿論、映画、舞台、テレビでの長いキャリアを持つ杜夫ちゃん。どの作品も彼の魅力は発揮されているのだが、このひとり芝居は風間杜夫の人間性、表現力のすべてがてんこ盛りでございます。撮影中にも様々な表情を惜しげもなく見せてくれて現場の雰囲気は最高潮。74歳になってもお茶目で可愛い杜夫ちゃんでございました。

今週の週末からの3連休、アッチッチの日々が待ち受けております。そして連日報道される豪雨による被害、お天道様は今のニンゲンの振る舞いに相当怒りまくってるんでしょうね。こんな時代だからこそ、心穏やかに日々感謝して過ごしたいものでございます。

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夏の風物詩

2023/07/11
【第1775回】

先週の週末、女性ばかりの集団<理性的な変人たち>第三回公演「海戦」を観劇。この作品は1924年に築地小劇場のこけら落としで上演された作品です。第一次大戦中に、イギリス海軍とドイツ海軍の主力艦隊同士がぶつかった、同大戦中最大の海戦をモデルとしています。いや、面白かった!これぞ演劇でしかできないという要素が満載。音、美術、衣装、いろいろと趣向を凝らしていて飽きさせません。7人の女優も個性的、皆さんそれぞれ演技スタイルが違っていてそれなりに楽しめました。それにしても99年経った今、なぜこの作品を選択したのか?世界が又もやきな臭い世界に突入しようとしている現況を考えると当然かもしれません。そして女性だけで体当たりの演技でインパクトを与えようとしたことも正解。要するに今回の企画ハナマルでございました。おいらもこれまで、この集団の芝居すべて見てきましたが、まさしく<理性的な変人たち>の本性が見えてきたなという公演でした。トム・プロジェクトに所属している滝沢花野さんがとっても素敵でした。この集団のリーダー役でもあり、彼女の良さが随所に出てました。

表現はいつも新鮮でなければなりません。長年芝居やっているとついつい安全パイのなかでやってしまいがちですが、知らぬ間にこびりついた垢は洗い落としていかないとさし障りのない演劇になっちゃいます。勿論、経済基盤が脆い中での公演も厳しいのは承知の上なのですが、常に新しいことに挑戦、冒険していく心意気だけは忘れたくないと思っています。

そんなことを思わせてくれる一日でした。

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7月の空

2023/07/07
【第1774回】

劇団チョコレートケーキ「ブラウン管より愛をこめてー宇宙人と異邦人―」を観劇。これまで多くの戦中戦後に於ける歴史上の人物を、独自の視点で描き続けた劇団が新たな脈絡を手掛かりに創り上げた作品。作家・古川健が子供の頃に好きだった特殊撮影番組に登場するヒーローはじめ、番組にかかわる人たちとのやりとりに差別問題を絡ませる姿は、あたかもこうして芝居を創っている人間にもリアルに感じさせてくれる舞台でした。

モノを創り上げるってことは何事も大変なことです。ましてや芝居なんぞは、貴重な時間とお金を頂いて2時間拘束してしまうんですから、一歩間違えば詐欺罪で訴えられてもおかしくないモノですね。しかも、こればかりは人の観方で180度変わることだってあるんですから手強いものかもしれません。そのなかで大切なことは、やはり創る側の主張、信念、哲学だと思います。ここがぶれちゃうとアウトです。その覚悟で芝居を創ること、あとは観客の判断にゆだねるしかありません。

観劇後、三軒茶屋から下北沢に繋がる茶沢通りをブラ散歩してると一軒のよさそうな焼き鳥店に入りました。おいらの感ピューター当たりでございました。家庭的な雰囲気と手作り感満載の焼き鳥と料理。しかもリーズナブルな価格で、28年間地元で頑張っているとのこと。お客さんは良く知っています。開店直後からなじみのお客さんが入って来てました。

要するに愛がある仕事をしなきゃ!すべてこれに尽きますな...

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カノコユリ
(七夕百合)

2023/07/05
【第1773回】

この時期にして我がライオンズはや終戦。おいら70年間、ライオンズを応援してきましたが今年ほど情けないシーズンはなかったのでは...監督、ヘッドコーチ、打撃コーチが最悪ですな。今年から就任した松井稼頭央監督、確かにプレーヤーとしては一流だったんですが、監督としてはお粗末な采配が続いています。残念ながらこの方の監督続投であればライオンズの暗黒時代が間違いなく訪れるでしょう。いつも隣に居る、平石ヘッドコーチもいかがなもんでしょうかね。いくらPL学園の先輩といえども言うこと言わんといかんでしょう!へらへらした二人が画面に映るたびに、厳しくいかんかい!と檄を飛ばしたくなります。昨日のロッテ戦、今井投手が8回1安打無失点で抑えたのに対して、8安打打ちながら完封負けしてしまう始末。采配が素人でも分かるくらいのえっ!の連続。野球通の一般ファンが呆れてしまうんですからあかんです。と言っても、ファンは弱くなったライオンちゃんでも応援し続けます。明日のライオンズを背負って立つ若獅子たちに熱い応援を送ってますよ。こんな暑いときに、熱い応援に沸く満員御礼のベルーナドームを見るたびにフロント陣、何とかせんかい!といいたくなります。今の戦力、残念ながらほかのチームに比べても随分と見劣りしますが、何とか残り試合意地を見せて欲しいもんでございます。

昨日は中野に用事があり行ってきました。50年間様々なイベントを行ってきた中野サンプラザが閉館していました。おいらも何度かコンサート、芝居を観に行きました。駅近で程良いキャパが心地よいホールでした。

東京の主要地区で再開発が進行中。人にやさしい再開発を期待したいもんですね...

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おつかれさまでした
中野サンプラザホール

2023/07/03
【第1772回】

はや文月になってしまいました...各地で熱中症患者も多くなっています。昔は夜にクーラーをつけるなんてことはなかったのに、この異常気象の中、なんだか頭もくらくら肌もじっとり、ついついONにしちゃいますね。団扇を扇ぎながらの夏の風物詩が懐かしゅうございます。おっちゃんたちはステテコ姿で長椅子ベンチでの将棋、ガキはアイスキャンデー舐めながら路地をぶらぶらしとりました。日が暮れて夜のとばりが訪れるあの時間帯の涼みかたが最高でした。

それにしても全国の水害による被害には驚いています。その元凶は地球温暖化に起因していることは勿論のことですが、森が少なくなっていることも大きく関係しています。森の土の中には、植物の根と土の間のすきまや、小さな動物の通り道、くさった根がつくったトンネルなど、大小さまざまなすきまがある。地中にしみこんだ雨は、このすきまに入りこみ、ゆっくり時間をかけて地下を通って、やがて川に流れこむ。つまり、森は一時的に水をためこむ、天然のダムのような役割をしているんです。そんな大切な樹木をばっさりと切り倒し、人間の欲望を満たすための開発が世界に蔓延し、年を重ねるごとに水害のニュースが増え続けているんですね。

最近話題になっている東京神宮の再開発問題然り、100年かけて育てた1000本近くの樹木を伐採しようとしてるんですから、驚き、桃の木、山椒の木。

もう開発はよかですばい...自然の中でゆったりゆっくり暮らしませんか皆の衆。

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スモークツリー

2023/06/29
【第1771回】

今年3月に亡くなった詩人・映画監督の福間健二さんの伴侶であった恵子さんの「ポルトガル、西の果てまで」読了。この本を読んで、スペイン好きな恵子さんがポルトガルにより親密になっていったことが良くわかりました。

「ポルトガルは決して豊かな国ではない。人々の暮らしも芸術も交通も、ヨーロッパの「辺境」と揶揄されながら、それでもしぶとく独自のものを継承し息づかせてきた。それをささえているのは、この国の長きにわたる被支配の歴史と、近代に体験した「革命」のなかで身につけた忍耐と許容なのではないかとこのごろ思う。耐えること、受け入れること、それは自分と向き合うことである。」

岡山県の山間部で生まれ育った恵子さんにとって、ポルトガルは原風景に近いものを感じたに違いない。低い山と川に囲まれ、霧が立ち、虹が生まれ、樹々と花々があたりまえのように育つ。人々は遠い世界のことよりも狭い社会で生きることに懸命で、日々の糧のために働くことをよしとしている。

都会に長く住んでると、自分を形成してくれたアイデンティティが時折うずいてくる。そんな時、旅に出て、見る、聴く、歩く、待つことにより原点に立ち戻ることが出来る。そして己は己でしかないことを確認する。そして、旅の終わりは、次の旅のはじまりである。

この本を読んで、恵子さんは今尚、健二さんと共に素朴で誠実でシャイなポルトガルの人達と交流を重ねているような気がしてならない。

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今年も収穫しました

2023/06/26
【第1770回】

先週、6月23日は沖縄78回目の慰霊の日でした。第二次世界戦も末期、1945年4月1日、米軍が沖縄に上陸、住民をも巻き込みながら地上戦になりました。陸海空からのすさまじい物量攻撃で日本軍は南へ南へと追い詰められ抗戦する力も果て、遂に6月23日牛島長官と参謀の自決をもって沖縄戦は終結となりました。この戦いで20万人の命が奪われました。この日を慰霊の日と定め沖縄では鎮魂と平和への祈りがささげられます。

家の近くの高井戸にある居酒屋「ちゃんぷる亭」で34回目の「平和フェスタ」をやるというので出かけてきました。10人入れば満席になるお店に何とか入ることが出来ました。この日特別サービスの¥230の沖縄そばと泡盛を飲みながら、店主のママさんと息子さんによる「マブニのアンマー」の朗読、そして沖縄三味線を聴かせていただきました。手作りの温かい心のこもった会でした。中でもお客の一人、89歳になる元気なおばあちゃんの戦争に対する思いを力強く語る姿が印象的でした。

今なお沖縄に対して真っ向から向き合わない日本政府、そして又しても米中関係の緊張を背景に、自衛隊による沖縄への部隊配置が進められ、敵基地攻撃能力を持つミサイルの配備も取りざたされています。熾烈な戦争体験を持つ沖縄、そして世界で唯一の被爆国だから一番平和を訴えるチカラがあるのにいまだに米国の顔色を伺いながらの貧弱な外交に腹が立ちます。平和がつくられたと思ったら、瞬く間に蒸発するように消えてしまうのが今の日本です。ただ念仏みたいに平和を唱えていれば平和が来るわけではありません。憲法9条然り護持してればいいってことではなく積極的に運用、活用しなければただのお守りです。

辺野古をはじめ現状にあらがって平和を訴え、つくり続けている沖縄こそが平和製造工場の島かもしれんせんね。

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高井戸ちゃんぷる亭

2023/06/23
【第1769回】

昨日、相模原演劇鑑賞会にて今年度の「風を打つ」の大千秋楽を迎えることが出来ました。稽古を入れて2ヶ月と1週間、スタッフ、キャストが一丸となって事故もなく無事全公演をやり終えたことに唯々感謝です。見知らぬ土地に行き、まだまだコロナを恐れながらの長旅、よくぞやってくれたという思いです。これも今回呼んで頂いた各市民劇場、演劇鑑賞協会、演劇鑑賞会、労演の皆様のなみなみならぬ心温まる支援なくしては出来なかったこと。

コロナ禍のなか、なんとか演劇を通じて世の中を少しでもいい方向に軌道修したいと行動する会員さんのエネルギーを目の当たりにすると、創る側も自然と気合いが入るのも当然です。各会場での笑い、拍手がどれ程のチカラなるか、こればかりは舞台に立った者でしかわかりません。役者はいつも不安の中で舞台に立っているのでございます...己の表現が果たして観客に届いているのか...観客の反応を気にしながら針のむしろ状態で時空間を彷徨っています。そして、舞台を支えるスタッフの心身もタフでなければ当然勤まりません。

昨日の相模原演劇鑑賞会の皆さんの手作り満載の歓迎振りにも涙がチョチョ切れました。楽屋口に手作りの楽屋のれん、終演後の手書きで書かれた千秋楽祝いを舞台上にかざす会員の皆様。まさしく観る側と創る側が一つになった姿を見る思いでした。

何年やってても芝居はいいもんでございます...これからもいい芝居創って、演劇を楽しみにしている人たちに届けねばという思いを強くした今回の「風を打つ」でした。

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感謝

2023/06/21
【第1768回】

久しぶりに中野と新井薬師の中間にある、コーヒーお酒ジャズの店「ロンパーチッチ」に行って参りました。2011年の東日本大震災をきっかけに、どうせ死ぬんだったらやりたいことやらなきゃということで若いご夫婦が始めた店です。2000枚のレコードから程よい選曲でレコードに針を落とし、独自で選んできたコーヒー豆をドリップで時間を掛けて抽出する佇まいを見るだけで感動いたします。ジャズを愛し、来て貰ったお客様に有意義な時間を過ごして貰いたいという思いがお店全体に満ち溢れています。この日はチリ産の赤ワインまで頂いてしまいました。まさしく、コーヒーお酒ジャズの一日でした。

この店の帰りの楽しみが、近くにある手焼きせんべい「雷神堂」の割れ醤油煎餅を買って帰ることでしたが、なんとシャッターが締められ、こんなお別れの言葉が貼ってあった。

 

閉店のお知らせ

当店は6月15日(木)をもちまして閉店させて頂きました。お客様、ご近所様、クロネコヤマト様はじめ皆々様に大変お世話になりました。毎日、挨拶をしてくれる小学生達から元気を頂戴していました。あいロード祭りのお手伝いをしてくれた当時小学生のお嬢さん達が成人式に晴れ姿で来てくださいました。福岡に引っ越しされ幼児だった兄妹が6年ぶりに来店、自分のお小遣いで煎餅を購入下さいました。コロナ禍で実家の両親に会えないので、代わりに赤ちゃんを抱っこさせて頂きました。この店で多くの出逢いに恵まれました。これまでのご愛顧に心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

 雷神堂新井薬師店 店主

 


この文面を読んでいるだけでこの店の数々の人間ドラマが目に浮かんでまいります。世の流れとはいえ、人の触れ合いを大切にしてきたお店が又ひとつ無くなっていくことの寂しさを痛感した帰り道でございました。

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rompercicci

2023/06/19
【第1767回】

先週の土曜日は浅草橋にある「ルーサイトギャラリー」に出かけました。隅田川沿いにある風情ある建物です。この一帯は江戸時代から続く格式の高い花街として政財界や文化人らが通った社交場であったとのこと。時代の波には逆らえず街から料亭や芸者衆が消えていったなか、2001年秋、柳橋の活気を取り戻そうと昭和の流行歌手"市丸姐さん"の屋敷を改装し、骨董屋としてオープン。その後、今回の芝居を企画した鳥山昌克さんと相談し芝居、語りのイベントも開催されるようになりました。

いかにも色街の匂いを残した門をくぐり昔そのままの廊下、急な階段を上がると今日の演目を上演する広間に辿り着きます。目の前に広がる隅田川、川を行き交う屋形船、鉄橋を走る総武線の電車の音を背景に朗読会が始まりました。先ずは唐十郎作「銀ヤンマ」戦後の焼け跡が少しずつ復興していく中、当時、下谷万年町に住んでいた唐さんが少年時代に体験したであろう妖しさとロマンを、鍛え抜かれた声で鳥山昌克が語り掛けていきます。長年、唐十郎のもとで役者稼業をやった彼にとっては唐ワールドを展開するには最もふさわしいキャスティング。合いの手を入れる杉嶋美智子さんも雰囲気のある女優さんでした。

次の作品は室生犀星作「あじゃり」1926年発表の小説。優しい物腰で万人に慕われていた山寺の僧侶が、女のような童子を弟子に持ってから様子がおかしくなる話。杉嶋さんの語り口で哲学的な内容がより優しく切ない物語として再生していく構成となっている。

それにしても、演じる場所そのものが、すでに物語ってることを再認識した一日でもありました。先日の神戸、京都でも感じたことです。幾多の先人が生きてきた家屋、風景は何物にも代えられない貴重な財産でございます。

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朗読会の舞台

2023/06/16
【第1766回】

日本映画がカンヌで話題になっています...それにしても改めて黒澤明、小林正樹、小津安二郎、溝口健二、増村保造などなどの監督作品が今なお燦然と輝いています。その作品を支えたのは職人芸とも言えるスタッフと、主役から脇役に至るまで個性あふれる役者たち。黒澤明監督がこんなことを言ってます。「演技は大根でも存在感の牛肉役者、脇を固める器用な味付け役、くさい演技のにんにく役者、無味無臭の水のような奴、いろいろ居ますが全部必要です」さすが多くの名作を創り上げた人の言葉です。そんな役者を適材適所にキャスティングして巧みに操った才能があってこその名監督です。

そして日本映画全盛時代に、喜劇からシリアスな映画まで幅広く活躍した名優、森繁久弥さんも役者の本質を突いたような発言をしています。「ピンとキリを知ってれば、真ん中は誰でも出来るんだ!」戦中、満洲でラジオなどアナウンサーをやり戦後、舞台、映画を通じ人の醜さ穢さを嫌と言うほど舐め尽くしたが、自らが望む高い精神には触れることができなかった。そんなご時世で周囲を見渡すと、ピンからキリからも遠ざかりボヤっとした中間を漂ってるみたいな人ばかりだったという。

改めて感じます。役者は、その人の生き方のすべてが現れます...日々無数の感度の良いアンテナ立ててあらゆるものをキャッチし咀嚼して、はじめて人前に見せるものだと。

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梅雨の晴れ間

2023/06/15
【第1765回】

京都から東京に戻るのに少し時間があったので、久しぶりに「哲学の道」を散策したくなり足を延ばしてみました。「哲学の道」の中ほどには、西田幾太郎の名言「人は人、吾はわれ也、とにかくに吾行く道を吾は行くなり」と刻まれた石碑があります。20世紀初頭の哲学者である西田幾太郎氏が、毎朝思索にふけりながらこの道を歩いたことから、「哲学の道」と呼ばれるようになったとのこと。いつもは、のほほんと生きてるおいらもこの道を歩けば少しは哲学的思索に耽ることができるのかな?琵琶湖の水が流れる水路沿いの遊歩道を歩いてるだけでなんだか全身がほぐれる気がしてきます...もしや、この瞬間こそが哲学の入り口かもしれませんな。

途中バスにて熊野神社前で下車。京都に来れば必ず立ち寄るJazz Spot YAMATOYAでコーヒーを頂きました。1970年開店以来、もうすぐ80歳になるマスターが丁寧に入れてくれるドリップコーヒは勿論、なんと8000枚のレコード棚が圧巻。そのなかから当日の客層に合わせて選んでるとしか思えない選曲が絶妙。チック・コリアなど名だたるミュージシャンも何度も訪れた名店でございます。かと言って気取ったところもなく本当に心地よいお店です。JAZZを愛し、お客を大切にするこの店が、いつまでも存続することを願いながら帰路につきました。

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哲学の道

2023/06/12
【第1764回】

先週の週末は神戸演劇鑑賞会、京都労演での「風を打つ」公演に行ってまいりました。久しぶりの関西です。人情味あふれる関西弁がとても心地よくしてくれます。神戸での公演、観客の絶え間ない笑いに後押しされ、役者も大いに乗せられ上々の舞台でした。帰り際に90歳過ぎの会員さんが「芝居観て久しぶりに泣きましたわ...」笑わせて最後は号泣、こんな形で水俣を伝えることできれば本望でございます。終演後、俳優陣も改めて観客と一緒に舞台は創り上げるものだと思わせた神戸の2ステージでありました。

昨日は京都労演初日を拝見しました。なんとか雨も上がり、時折陽が差すなか呉竹文化センターに多くの会員さんが来てくれました。キャパ600人、芝居にはうってつけのホールです。京都の観客の芝居を観る目は厳しいぞなんて声を耳にしたことがあります。最近文化庁も移転したくらいの古都ですからね...おいらも後列から、芝居はもちろん観客の反応も探りながらの観劇でした。幕開きから、よしゃ!これはいけると思いました。あとは昨日同様、観客と役者の呼吸がぴったりと呼応しながら終盤のクライマックスからエンディング。昨日の舞台もそうでしたが、終幕だと思っての一回目の拍手がありました。と思いきや、正真正銘の太鼓打ちに始まるラストシーンがあり、なんだかお客様は二度楽しんだ感じがありました。

今回の神戸、京都公演で強く思ったことは、コロナもなんとか収束し再び演劇を楽しめることの喜びを取り戻しつつある兆しが見えてきたことです。アナログの魅力を兼ね備えた演劇の持つ底力を信じて全国各地を巡演したいもんでございます。

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神戸

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京都

2023/06/09
【第1763回】

梅雨の季節の楽しみのひとつが、色とりどりの紫陽花を鑑賞しながらの散策です。鮮やかな紫にうっとりして間もなく清楚な白色に心奪われ、千々に乱れる心模様を楽しんでいるのでございます。そんな散歩の道すがら、一軒の家の玄関前に4足のちびっこ靴がおかれていました。「サイズアウトしました。気にいっていただけるものがあれば、ぜひお持ち帰りいただけたら嬉しいです!」なんともほっこりする光景ではありませんか。今や世の中は消費、消耗が当たり前、まだまだ使えるのに平気で捨てちゃいます。昔なんぞは着るもの含め家具、調理品などなど擦り切れるまで使いこなしたもんです。だって、あらゆるモノすべて、己に出会うまでには様々の命が吹き込まれているはずです。それを思うとそうは簡単にポイ捨てはできまっせん。モノに対する愛着、愛情が希薄になったことと、未だ世界で無益な争いが絶えないことと無関係ではないと思います。4足のちびっこ靴を迷わず玄関前に差し出す人が一人二人と増えると争いも少なくなるはずです。人が人を思いやり、生きとし生けるものに精一杯の愛を注げば少しはましな世界になるのかな...

血迷ったプーチン、あの素晴らしい大地と芸術で世界を席巻したロシアを想いだし正気に戻り一刻も早くウクライナ侵攻を止めてちょうだいな!今日の写真を届けるのも効果があるかもね。

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ほっこり

2023/06/07
【第1762回】

昨日は、横浜演劇鑑賞会創立50周年記念観劇作品「風を打つ」を横浜関内ホールにて観劇。「風を打つ」日々進化していますね。杉坂家の家族の絆がより深く色濃いものになっています。芝居にとって重要な要素であるメリハリが鮮明になっていることが大きな要因だと思います。家族それぞれの思いを受け止める役者の受信器の感度が敏感になることによって、発信器の強度が高まり各シーンも引き締まる。当然、観客は五感を集中せざるをえなくなり舞台と客席がひとつになり、優れた芝居が出来上がるってわけですね...

それにしても演劇鑑賞会を50年継続させるって唯々敬意を表します。この長い歴史の中でいろいろ大変なことがあったとは思いますが、この3年間のコロナ禍による半端じゃない会員の減少は鑑賞会の存亡を脅かす出来事だと思います。そんななか会員として継続し会場に足を運んでくれる皆さんに「演劇鑑賞会を退会しなくて良かった!」と感じて頂く芝居やんなきゃ芝居屋じゃございません。終演後、観客の皆さんが満足げな表情で帰路につく姿を見ながらおいらもホッとした次第でございます。

横浜は風情がある街です。終演後、横浜演劇鑑賞協会をリードしてきた方々とお疲れ会をしました。関内にある「横浜ビール 驛の食卓」併設工場で造られたクラフトビールは絶品でした。芝居が上々だったので話も盛り上がり素敵な時間を過ごすことが出来ました。何年か後に又、トムの芝居でお会い出来たらという言葉を残し横浜を後にしました。

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横浜馬車道、牛馬の一服休憩所

2023/06/05
【第1761回】

先週の土曜日、劇団桟敷童子「海の木馬」すみだパークシアター倉にて観劇。いつもの劇団員一丸となって芝居創りをしているこの劇団は大好きです。今回の舞台は、終戦直後の混乱した時期に高知で起きた第128震洋隊で起きた爆発事故。2年前に「飛ぶ太陽」という戦後、福岡で起きた爆発事故を題材にした舞台の記事を見たひとりの老婆からの1本の電話から今回の芝居が始まったそうだ。「終戦直後、忌まわしい事故が全国各地でありました。それを世の中に知らせてください」そうなんです、歴史の闇に葬られた様々な出来事を伝えるのも演劇人の責務だと思います。

今回ゲスト出演した小野武彦さんの存在感が、この芝居を通奏低音として最後まで舞台を引き締めている。御年80歳の小野さん、演技をしているというよりも小野武彦ご自身の生きてきたそのものが舞台上に居る。これはなかなかできないことである。役者は常に何かをやりたがる生き物であり演じたがるものである。己に何枚もの飾り物を重ね観客に見せつけることを止め、すっぴんで舞台に上がることはなかなかできないことである。

今回の小野さんの存在を際立させているのは、勿論共演者の清廉な演技であることは間違いない。この劇団の主宰者である東憲司さんの演劇に対する姿勢が徹底していて気持ちが良い。ついつい応援したくなるのは当たり前でございます。

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錦糸町からの風景

2023/06/02
【第1760回】

昨日は久しぶりの晴天、毎年、新年に初詣に行っていた杉並区大宮八幡宮に今年は行けなかったので参拝してきました。やはり神社の佇まい、空気感しばし日常を忘れさせてくれますね。神が宿っているから神社です。その神社の杜を為しているのが大木です...何百年という間その土地の興亡を見続けた年輪の重さを感じます。そっと耳を添えて聞いてみたいもんですが、黙して語らず淡々とした表情で聳え立っています。それぞれがそれぞれの思いを抱きながら並んでいる様は神々しくもあります。勿論、神殿の中にはいろんな仏様が納められてるんですが、おいらはどうしても自然神のほうについつい気持を持っていかれます。

参拝するときの決まり文句は「生かして頂きありがとうございます。」その一言だけです。お願い事なんぞは一度もしたことはありません。お金ごときで神さんに頼むなんてこと甚だ失礼千万でございます。先ずは生かし活かされていることに感謝。あとは己が人のため社会のために何をなすべきかを思考し行動に移すだけ...きわめてシンプル。

一転、今日は台風の影響を受け朝から大雨、関東甲信地方も線状降水帯が発生する可能性があるとのこと。今日は長野県大町市文化会館で「風を打つ」の夜公演があります。長野地区での最後の公演でもあり無事に終えればと思っています。

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大宮八幡宮境内

2023/05/31
【第1759回】

生涯現役ええこっちゃ...昨日は20代の頃一緒に芝居やっていた仲間の芝居観てきました。

劇団ではない劇団・ぼっかめろん第33回公演「草稿 ジョバンニとカンパネルラの見果てぬ夜の夢の物語」。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」からヒントを得て創り上げた作品。作・構成・演出の倉沢周平、普段は明大和泉校舎正門のすぐそばでハンバーグ屋「ぐずぐず」を50年ほど続けています。心身ともボロボロになりながらも演劇に対する思いは今なお健在でございます。出演者の一人、小林達雄はもうすぐ80歳になるのですが、あっちこっち痛いと言いながら舞台上では相変わらず奇声を発しながら動き回っておりました。普段は地道なバイト生活を営んでおります。やはり好きなことをやっているのが健康には一番ですね。人間関係、お金を追いかける仕事で疲れ果て、いったい自分は何のために生きてるんだろう?なんて人が多数を占める中、周平、たっちゃんみたいに迷うことなく己の道をまっしぐらなんて生き方、潔いのではないかしら。

その真逆、この国のトップの息子の不祥事。汗水たらして必死で生きている庶民の生きざまも理解できず、世襲と言う悪しき伝統に胡坐をかいての今回の出来事。相も変わらずこんな人たちを選ぶ選挙区の皆様恥ずかしいことですぞ!広島サミットで点数上げたと思いきや、己の甘さからの大失態。こんな時にしっかりした野党が存在してれば緊張感あふれる政治が期待できるのだが...忘却の民は、今回の息子の件も10年、20年後には忘れてしまい、息子が国のトップに収まってたなんてことは十分あり得ますぞ...なんとか軌道修正しなきゃ皆の衆。

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明日から水無月

2023/05/29
【第1758回】

先週の土曜日、PLAY/GROUND Creation「桜川家の四兄弟」を観劇。作家と演出家ともにお母様を亡くされた実体験から生まれた芝居。このグループの芝居は初見なのだが、先ずは誠実な舞台創りに好感を持ちました。俳優陣のまっすぐな姿勢が狭い劇場にビシバシと伝わってきます。迫真の演技に若い観客も涙してました。誰しもがいずれは母との別れは必然です。おいらも数年前に尊敬する母との別れがありました。5人兄弟の中で唯一風来坊であったおいらをいつも心配しながら、でもどこかで信じていた母親の偉大さを、この芝居を観ながら考えていました。父親はおいらが17歳のときに亡くなったので、あまり感慨はありません。というのもおいら本人があまり家に居なかったので家族、家庭そのものの存在が希薄だったかも知れませんね。上京してから何年も博多に帰らなかったおいらに届く母の手紙から、初めて親の有り難さを感じた息子でした。書かれた文字の行間から母として親としての溢れんばかりの愛情が込められていました。こりゃ悪いことはできんばい!おいらに忍び寄る背徳の誘惑に楔を打ち込む一文字一文字でもありました。

それにしても母ものの芝居、映画はずるいと言えばずるい。誰だって泣きますよ。でも、こうやって何らの形で提示しないと、この忘却の時代、母親の有難さがわからなくなっちゃうんですね。

週明けの今日は梅雨入りみたいな一日です。こうやって季節を感じられる国、母親みたいに尊敬できる国になって欲しいもんですね。

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何か見つけたかな?

2023/05/26
【第1757回】

昨日は喜昇倶楽部公演「其の女」を下北沢にて観劇。劇団チョコレートの脚本・古川健、演出・日澤雄介コンビによる、渋谷はるかさんの一人芝居。広島で被爆しケロイドを負い、10年後、その治療のために渡米した25人の女性の一人、弘子さんにスポットをあてた芝居です。当時日本のマスコミは彼女たちを原爆乙女と呼び、原爆を落とした国に行ったと言うことで話題になりました。

先日も、サミットでの各国首脳が原爆資料館に入館したことで様々な記事が出ていました。おいらも広島、長崎での原爆資料館の記憶は今でも鮮明に刻み込まれています。あの惨状を体験すれば誰しもが核廃絶に気持が動くのは必然なのだが、ロシアのウクライナ侵攻から一気に核保有の必要性を論じる世界となりました。一部の頭が狂ったとしか思えない権力者のためにいとも簡単に世界の秩序が乱されるなんてこと何度繰り返せば済むんでしょうかね。

さて今回の芝居、文学座に所属する実力ある女優、渋谷はるかさんの初めての一人芝居への挑戦。数多くの一人芝居を手がけたおいらとしては若い俳優さんの一人芝居大いに歓迎。一人芝居の成否は、舞台上に居ない相手役の存在が見えてくるかがポイントだと思います。見えない登場人物を想像する楽しみが一人芝居にはあるんです。それは観る一人一人それぞれに違うのが更に面白い。渋谷さんの舞台も回を重ねる事に違った風景になるんでは...大いに楽しみです。

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出稼ぎバンド

2023/05/24
【第1756回】

わが心の西鉄ライオンズ、レギュラー選手で唯ひとり御存命であった中西太さんが90歳で亡くなりました。平和台球場での大きなお尻ふりふりしながらのでっかいホームランはおいら少年たちのスターでございました。1962年に選手兼任で西鉄ライオンズの監督を引き受け優勝したのが1963年、この年は南海(現ソフトバンクホークス)との最大14.5ゲーム差を逆転し、5年ぶり5度目のリーグ優勝を果たしたシーズンでもありました。おいらも勿論、平和台球場で喜びに浸っておりました。あの大きな体を胴上げしている選手の苦心惨憺ぶりがとても印象的でした。現役時代は"怪童"と称されたスラッガーで、本塁打王5回、首位打者2回、打点王3回のタイトルを獲得。監督としては一流にはなれなかったんですが、その後計8球団を渡り歩き、指導者として若松勉、イチローら名選手を育てた名伯楽でもありました。

最後にお会いしたのは2012年トム・プロジェクト「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」の博多公演でした。公演前にライオンズOBが集まっての座談会があり声をかけたところ嬉しそうな顔をされていました。この座談会には豊田、高倉、西村さんも同席し、お互いに遠慮することなく言いっぱなしの豪放磊落な楽しい会でもありました。

こうして西鉄ライオンズの選手たちはいなくなっていきました...でもあの日あの時の西鉄ライオンズは、残されたファンにとってはとてつもない宝物です。

そんな折、山川選手の事件はつらいですな。先人が築き上げた歴史に傷をつけちゃいかんばい!と言いたい。いつの世も野球は夢見る少年を虜にしてくれるものであることを肝に銘じてプレーしていただきたいもんでございます。

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今日の空

2023/05/22
【第1755回】

「風を打つ」昨日無事、東京公演千秋楽を迎えることが出来ました。各ステージ満席で本当にありがたい限りです。新しいメンバーを加えての再々演、日毎に劇中での家族の結束が強くなり、まさしく芝居は生き物だなと思った次第です。

観客のお一人がこんなことを話しながら劇場を後にしました。「この芝居こそ、今の世界に訴えるチカラがあると思います。環境、戦争、家族、皆が一様に抱えている諸問題を解決させてくれるヒントを随所に織り込んだ作品だと思います。」

そしてこんなハガキも来ました。「水俣を扱っているのに公害の悲惨さや、企業のあるいは為政者の巨悪ぶりなどが強調されることのない、それでいて切々とその恐ろしさと影響力の凄さを語りかけてくる原点に家族の再生とその愛があるからだと実感した公演でした。コロナで劇場へ足を運ぶこともめっきりと減った数年でしたが、観劇への勢いがついた作品でもあります。」

嬉しい言葉です。別に芝居の世界だけではないのですが、とにかくこれだけ物価が高騰するなかでの芝居創り厳しいものがあります。でも、こんな風に作品を観て頂ききっちりと昇華していただけると制作する側もテンションが上がります。

5月26日~6月22日まで演劇鑑賞会の公演21ステージの旅公演が始まります。芝居をこよなく愛する鑑賞会の皆様に、更なるグレードアップした作品を届けることが出来ると思いますので楽しみに待っててくださいね。

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両国駅前

2023/05/19
【第1754回】

まだ5月というのに夏の暑さのなか、昨日、両国シアターカイで「風を打つ」の初日を無事迎えることが出来ました。両国前では大相撲5月場所が開催されており海外観光客も含めて多くの人出で盛り上がっていました。大銀杏を結った力士が国技館に入る度に大きな拍手が送られ、力士も「よしゃ!」という感じで大きな体をゆさゆさと揺らしながらの背を見送っておりました。両国には多くの相撲部屋もあり、なんだかタイムスリップした感覚にとらわれ心地よい場所でもあります。劇場シアターカイの隣には、第4代将軍家綱よって建てられた回向院があり、浮世絵士の山東京伝、義太夫節を創った竹本義太夫、そして鼠小僧次郎吉の墓と、江戸時代は著名人の墓がいくつもあります。この近くには忠臣蔵で知られる吉良上野介義央(きらこうずけのすけよしひさ)の江戸上屋敷跡もあります。この辺りを散策していると江戸庶民文化の匂いがなんとなく漂って、近くの蕎麦屋に入り軽く日本酒を一杯という気にさせてくれますね。

ところで初日の芝居。満席の観客の前で上々の芝居を魅せてくれました。5人の役者のコンビネーションが抜群、カーテンコールの拍手が半端じゃないくらいの熱いものでした。この困難な時代、素敵な芝居を創ることの大切さを今改めて感じた次第です。

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国技館前

2023/05/17
【第1753回】

沖縄の本土復帰から5月15日で51年になりました。先日も石垣市で進む陸上自衛隊のミサイル基地配備計画のニュースが流れていました。島の住民の人達の意見も賛否半ばです。51年経っても一向に解決されない沖縄の苦悩、いやこれは沖縄の人達の問題ではなくその他の都道府県に住む人たちの見て見ぬふり問題だと思います。沖縄にほとんどの米軍基地を押し付け、身近に基地が来ようとすると反対する構図がなんら変わらない、変えようとしない身勝手な姿勢です。知識人も含めて沖縄に寄り添うと言ってはいますが、実際のところ沖縄は本土にとって都合の良い手段としてしか考えていないような気がします。

あの終戦を前にして、沖縄の人口の4人に1人が亡くなった沖縄戦。このきな臭い今、またしても沖縄がその最前線に立たされようとしています。台湾有事、北朝鮮、日本に復帰して沖縄は本当に良かったのか?

数年前、沖縄に行ったときに乗り合わせたタクシーの運転手さんの言葉が忘れられません。

沖縄の米軍基地の話を持ちかけると「すみませんね...」という言葉が何度も返ってきました。いやいや、その言葉は沖縄に基地を押しつけている我々の言葉です。

沖縄、水俣、戦争、家族、差別などなど、まだまだ伝えていかなきゃならない課題山積といった所です。取り敢えず明日から「風を打つ」公演します。お陰様で金曜日を除いてチケットはすでに完売です。

今回の芝居を観てなにかを感じて頂ければ嬉しい限りです。

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あっちっち~水浴びしてます

2023/05/15
【第1752回】

先週の12日(金曜日)、「風を打つ」の追い込み稽古に行って参りました。今回が再々演になる作品です。何事もそうですが、芝居もステージを重ねていくと別物の作品になっていくものなんですね。芝居の冒頭から家族のなんともいえない温かさが伝わってきました。熊本県水俣市で患者の発生が公式認定されて、今年の5月1日で67年になりました。同じ魚を食べ、水俣病になりながら、チッソ企業城下町で差別と偏見の中で過酷な生活を強いられた実在の家族の話です。その悲惨な状況を乗り越え逞しく生き抜く上で一番大切なのが明るさです。この芝居に登場する5人のそれぞれが今回、より温かく、強く、逞しくなり、逆に水俣病に感染したことにより人として、親として、子として得るものがあったという前向きな思考と行動があってこその明るさがより増していた今回の稽古場。

貴重な時間と、お金を支払ってくださるお客様に、どんなプレゼントが出来るか?芝居を創る人間すべての人が日々苦心していることです。そのための稽古場は緊張と弛緩の振れ幅の中、新たな発見の場でもあります。

この3年間、芝居の現場はコロナ禍のなか戦々恐々の日々でした。ようやく5類ということにはなりましたが、まだまだ油断は出来ません。本番直前まで、皆マスクを付けながらの稽古です。18日の初日が無事迎えられますように...

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薔薇の館

2023/05/12
【第1751回】

京王井の頭線浜田山駅前に小さな街の本屋さんがあります。先日覗いたら、小出版社の本を並べたコーナーがありました。普通の本屋さんでは目にしないものが所狭しと並んでいました。全国的にも書店が次から次へと姿を消しています。昨年の統計で書店ゼロの市区町村が26%になったという報告。確かに、ネットでの購入は便利かもしれないが、ピンポイントで検索していると世界は極端に狭くなっていく感じがします。その点、本屋さんの書棚を眺めていると今まで未知なる分野の本がいやがおう応にも目に入ってきます。そして手に取り不可思議な世界に迷い込む体験ができるという場所が本屋さんなのです。おいらがたまに足を延ばす神保町の古書店巡りも自分の足で目で新たな読書への旅をしたいからです。

そして本屋さんも工夫しないと取り残されてしまいます。浜田山の書店のように、ただベストセラーの本を積むのではなく、なにかに特化したコーナーを常設するとか、コーヒーでも飲めるスペースを設置し心地よい音楽を流し、少しでも長く店内に居させるようにするとか...町の書店の存在は、その街の文化レベルをさえ変える大きな要素だと思います。

最近世間を騒がせている闇サイトで集められた若者による強盗事件。この若者が幼い頃から読書体験をしていれば、こんなアホな発想は生まれなかったのでは...想像と創造、至福な時間を過ごすに欠かせないこの二つを手にするには本を読むことは不可欠だと思いますよ。

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曇天

2023/05/10
【第1750回】

佐藤厚志「荒地の家族」、稲垣えみ子「魂の退社」、読了。第168回芥川賞受賞作「荒地の家族」は2011年の東日本大地震から13年、今なお抱える虚無感と、何とか立て直し生き抜こうとする40歳の主人公の葛藤をドキュメンタリータッチで描いた作品。被災にあった実体験からの話なので切実である。この目まぐるしい世の中の移り変わりの中、すべての事柄が風化していく様を危うい流れと感じてる人たちが居る中、文学、映画、演劇を通して風化への歯止めを果たしている役割は大切なことだと思う。こんな時代だからこそ過去に学ぶという生き方を、すべての人が共有しないと地球は確実に滅びます。

「魂の退社」はアフロヘア―姿で朝日新聞社の記者であった稲垣さんの退社への思いっきりのメッセージ。自宅の家電を次々と処分して生きることを実践し、人生の意味、意義を問い直す下りが実に痛快である。この本に何度も出てくる日本の社会が会社に帰属してなければ何事も困ったちゃん状態になってしまうという不条理。会社員以外は人間ではない過酷な状況に追い込まれる過程を自分の実体験を通し事細かに述べている。それにしても悲壮感がなく何となく楽天的なところが著者の真骨頂といったところか。

経済主体、功利主義で進行している日本社会に踊らされていた人たちが自分に気づき、人生を取り戻すキッカケになる本になるかもしれませんね。

今日も湿気がなく爽やかな一日。野に咲く花に挨拶し、空を見上げると間違いなく5月の空でした。

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野に咲くハルジオン

2023/05/08
【第1749回】

長年の友人である詩人、映画監督の福間健二さんが74歳で亡くなりました。健二さんとのいろんな想い出が蘇ってきます。「鷽」という雑誌に、おいらは西鉄ライオンズに関するエッセイを、健二さんは詩を提供しており、これを機に付き合いが始まりました。その後、健二さん、恵子さん夫婦が出版した「ジライヤ」に博多にまつわるエッセイ<エル・スール>を連載させて頂きました。都立大学教授、詩人、映画監督という三足のわらじを楽しみながらかつ精力的にこなされていました。スペインの地でもバルをはしごして千鳥足でホテルに帰ったこともありましたね...大学退任後は詩集で萩原朔太郎賞を受賞し、映画監督としてますます闘志を燃やしていた矢先のことでおいらもびっくりしました。

5月2日、国立の自宅にお線香をあげに行きました。悲しみを耐えて気丈に接する恵子さん、相当悔しいに違いない。不意打ちを食らったと言ってました。二人の夫婦として、そしてものを創り上げる戦友としての見事な夫唱婦随を見せられたものとしては恵子さんの気持ち良く分かります。でも、恵子さんの尽きぬ思いを作品に昇華していった健二さんの生き方も悔いがなかったと思います。今年の11月には死の寸前まで編集に追われていた新作の映画が公開されるそうです。

健二さんこれまでの貴重な時間ありがとう!恵子さんこれからまた楽しい時間つくりましょうね...福間健二さんの詩集『青い家』より「窓」

 

あなたの窓が閉ざされているから

わたしは目を閉じて

自分の入る箱を想像した。

ゆうぐれの

川べりに立ち

自分を入れて流れてゆく箱を想像した。

その箱は流れていって

夜の人々は迷路に消えて

わたしもいなくなって

いま

この空に

炸裂して光るもの。

ほかに何を見るのだろう。

あなたの目

魂の窓

それがひらかれるとき

わたしは帰ってくる。

むかしのわたしとはちがう

わたしの知らないだれかになって。

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健二さんが歩いた国立大学通り

2023/05/01
【第1748回】

いやいや日本国中、コロナから解放され行楽地には人が溢れかえっています。新緑の葉も育ち最高のGWを迎えております。そんな中、気になるのが神宮の森の再開発。先日も伊藤忠商事・三井不動産・日本スポーツ振興センター・明治神宮の4つの企業が進めている計画の記事が新聞に掲載されていました。おいらにとっても神宮の森は思い出深い場所です。神宮球場、秩父宮ラクビー場、そして秋になると紅葉していく銀杏並木。これらの古木1000本を伐採しようとする計画に、先月亡くなった坂本龍一さんも死の一カ月前、小池東京都知事に再開発反対の手紙を送りました。「これらの樹々を私たちが未来の子供達へと手渡せるように」「目の前の経済的利益のために、先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません」さて、小池都知事どう動くか?

樹木が伐採されるシーンを見るたびにおいらの心痛みます。勿論、その樹木が世のため人のためになっていることは承知の上でのことですが、100年、200年、同じ場所で根を張って生きてきた樹木の生命力が、どれだけ人に勇気を与え、そして癒されてきたことか。

緑のない世界を考えただけでぞっとします。おいらが上京して60年、三畳参千円のアパートの前にも緑がありました。疲れた身体も一本の樹木に触れるだけでエネルギーを頂きました。新緑から紅葉そして裸木、その一年の変遷からおのれの時間の経過を確認し前に進んでこれました。

経済優先より環境保全、そんなことも考えながらの楽しいGWになるといいですね...

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おもしろそうにおよいでる

2023/04/28
【第1747回】

明日から大型GWが始まります。いつものように高速道路の渋滞ぶりをメディアで報じていました。普段30分で行くところが2時間半かかるなんて当たり前のようです。おいらの思考では、この情報だけで遠方への行楽を止めますが、日本の社会の頑として変わらない体制の中、仕方なく皆出かけるんですね。何十年も前から、休日分散案が唱えられてきましたがいまだに実行の機運は熟さない状態です。おいらも過去に何度か車中でのイライラ体験は経験済みだが、あのなんとも虚しい感覚はたまらなく嫌ですね。左右前後の他の車中の人たちの諦めきった表情を見てるだけで、こちらの気分も一気に萎えてきます。

そんなGWのなかでの楽しみ方の一つに近場散策。普段見慣れた通りは勿論、ちょいと横道に入ると意外な光景に遭遇することがあります。こんな所に小粋な飲み屋があったりとか、レトロな佇まいの民家に心和んだりとか...最近も可愛いノラ猫を発見し、しばし観察させて頂きました。なにもお金を掛けて人混みの多いところに行くことないんじゃない。疲れるだけです。お互いに疲れた顔つき合わせてどうすんの?GW、お盆、正月、宿泊がいつもの倍の値段、この延々と続く悪しきしきたり、いい加減どうにかしてくんろ!

おいら、お日さまに照らされキラキラ輝く葉っぱちゃん見てるだけで十分にGWでございます。

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アンネのバラも咲きました

2023/04/26
【第1746回】

先月の末だったか、新宿西口近くの「思い出横丁」付近あたりを歩いていると女性から「岡田さんじゃないですか?」なんて声を掛けられました。今の時期、皆マスクを着けているので誰だかよくわかりません。よく見ると新宿ゴールデン街にある居酒屋「ポニー」でお見かけした女性じゃありませんか...おいらに声をかけた理由は、この店のママが亡くなったことを知らせたかったとのこと。勿論、おいらはびっくりしました。この「ポニー」は大好きな店でした。ママの人となりが店一杯溢れていましたね...店の中央には囲炉裏がでんと構え、炭火で沸かした南部鉄器のお湯で飲む焼酎がなんとも言えない味でした。そしてママの手作りの料理、お客に媚びない気質でありながら困った人にはとことん相談に乗ってあげる優しさ。新宿ゴールデン街には250店舗が存在するのだが、この店は他を圧倒する気品さを持ち合わせた店でもありました。時には三味線で都都逸も聴かせてくれました。艶のある声で一瞬、花柳界の席に迷い込んだ気にもさせてくれました...手回し蓄音機で聴いた広沢虎造の浪曲「清水次郎長伝」に感動し、早速CDを買い込み自宅で何度も聴きました。昔気質のママさんが粋な雰囲気で繰り広げる時空間は本当に素敵でした。

昨日、声をかけてくれた女性の案内で新宿にあるお墓に行ってきました。ママが眠るに相応しいお寺にあるお墓に手を合わせ、これまでの感謝の気持ちを伝えました。

この年になると別れも多くなります。無念な思いで亡くなった人達も含め、しっかりと生きねばと改めて感じた一日でもありました。

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満開のつつじ

2023/04/24
【第1745回】

今日はまた寒さがぶり返しています。昨日、おいらが住んでる杉並区でも区議会選挙が実施されました。今回は選挙公報などじっくり見ながら投票しました。おいらが投票した人のこれまでの実績に大いに賛同。先ずは、過去の選挙も含めて一切、宣伝カーを持たない、名前の連呼もしないということ。選挙が始まるとうるさいよね、本人が乗ってなくてウグイス嬢に名前を連呼させるなんて愚の骨頂。こんなことを未だにやってること自体でアウトですな。二つ目にこれまで、政策本位の活動に徹するため、ボス政治家とは一線を画し、一身独立し無所属を通してること。こんなことは当たり前だと思うのだが、企業・団体献金を受けない、有権者に私的な口利き(施設入居や就職のあっせん、その他入札・契約の斡旋)を行わない。なかでも画期的なのは、いままで馴れ合いの関係で運営されてた会館をオープンにしたこと。この国の最も顕著な馴れ合い談合にくさびを打てたことに拍手を送りたい。

今回の選挙も昨年、区長選挙で初めて選出された女性区長からの政策協定、応援演説の提案に異論はないのだが、貸し借りを作りたくないと言う理由で断ったとのこと。まさしく忖度なしのクリーンな区議さんだと思いますよ。

そのほかの地方選挙、相変わらず日本の国民は大きな変化は求めていないようですな...投票率も低いし、世界のあちらこちらで不穏な動きがあるのに、なんだかこの国の鈍感力にはいつもながら危機感を覚えます。

ところでさっき、杉並区議会選挙の結果が出ました。おいらが投票した人は当選。今まで通りがんがんやってくださいね!

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藤の花言葉
~君の愛に酔う~

2023/04/21
【第1744回】

久しぶりに新宿でチンドン屋さんに遭遇しました。この姿を見るとおいらの記憶は少年時代に戻ってしまいます。昔は新しいお店がオープンするとチンドン屋さんの登場です。かつらを被り太鼓にサックスでの賑やかな光景を目のあたりにするとおいらのテンションは一気に上がります。後ろに付いたお姉さんがチラシと一緒にお菓子を振る舞うと、お菓子が欲しい子供たちはぞろぞろとついていきます。ある時、なかなかお菓子の配布が始まらず、はたと気づいた時には見知らぬ街に迷い込んだことがありました。もしや、このチンドン屋人さらいかも?なんて不安になったもんでございます。

今や新宿の宣伝手段は、大型車に派手な広告を掲載し大音量で新宿の街を徘徊することが多くなりました。ホストクラブ、新作映画、新製品などなど目にしますがなんとも味気ない気がします。それに比べてこのチンドン屋さんのアナログ宣伝はほっとします。人間の血の通った訴えが郷愁を誘います。アスファルトジャングルのなかで、人は呼吸困難に陥り心身が疲弊しております。この日のチンドン屋さんの姿を見て、一服の清涼剤と感じた人は何人いたんでしょうかね?中にはなんだこりゃなんて人もいたんでしょうね...

今日も夏のような暑さ、世界はこの異常気象の中、地球の生態体系にも狂いを生じ不穏な空気が蔓延しております...こんな時こそ、ゆっくり焦らず大地に足をつけてチンドン屋さんの佇まいの如く生きていきたいもんでございます。

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郷愁

2023/04/19
【第1743回】

昨日の夜はほんとにええ日やったな...ライオンズが5年振りに東京ドームで試合をやるというので足を運びました。相手は金満球団ソフトバンクホークス、金欠ライオンズがどんな試合を観せてくれるのか興味津々。相手チームは80億かけて補強しまくり、こちらは打てる捕手が他チームに移籍するわ、WBCに参加した選手が骨折するわ、4番バッターが開幕早々怪我するわ、踏んだり蹴ったり状態でございます。でも、こんなときに不思議なチカラを発揮するのがライオンズの伝統。この日も先発した平良投手の調子がいまいち、こりゃあかんかなと思っていたら、なんと外崎が2本、中村が1本、おまけに助っ人ペイントンが1本、計4本のホームランが飛び出し勝利しました。8本のヒットのなかの4本がホームラン、なんと効率的なことか...中でも今年40歳になるベテランおかわり君こと中村選手の芸術的なホームランは見事でした。ライオンズの有力選手のほとんどが流出していくなか、ライオンズ一筋を通してきた中村、栗山選手はライオンズの宝です。やはり、こんな選手をいつまでも応援したいですね。

この日は贅沢なセレモニーがありました。試合前には郷ひろみの国歌斉唱、始球式は松坂大輔、試合後には郷ひろみのショー。大勝した試合後に居残った4万人の観客は大喜びでございました。昔、ある劇団の代表者が球場の多くの観客を見ながらこんなことを言ってました

「劇場にもこれだけの人が来てくれたら嬉しいな...」その気持ち、よーく分かりますがな。

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盛りだくさんな一日

2023/04/17
【第1742回】

先週の15日(土曜日)「風を打つ」の稽古が始まりました。昨年は東北ブロック、中部・北陸ブロックの演劇鑑賞会で大変な好評を頂いての再々演となります。公害病の一つである水俣病をテーマにしながらも、家族の強い絆を描いたこの作品で杉坂栄美子役を演じた音無美紀子さんが、初演で頂いた文化庁芸術祭優秀賞に続き、再演で読売演劇大賞優秀女優賞を受賞しました。今回の音無さんの受賞も、この困難な状況の中、頑張ってくれたキャスト、スタッフ全員での受賞だと思っています。芝居は、まさしく関わったすべての人たちの思い行動が一つにならないと成立しないし、観客に伝わらないものだと常日頃考えています。このことを逆算してキャスト、スタッフを選択しています。芝居の創り方も日常の人間関係と同じです。オレ我オレ我の我を出す人が一人でも居ると芝居は歪みを生じます...この芝居はどこに向かって成立させようとしているのか?これまで創ってきた作品がすべてパーフェクトだとはいきませんでしたが、こうやって30年近く継続できたことは、こうした思いを常に忘れずに企画制作したからだと思っています。

今回は、前回まで功一役を演じた高橋洋介に代わり、これまで2回トムの芝居で出演してもらった生津徹さんに出演していただくことになりました。稽古初日から気合十分、生津さんのこの作品に賭ける思いがヒシヒシと伝わってきました。5月18日の東京公演初日が楽しみでございます。

稽古終了後、音無さんの受賞のお祝いを兼ねて、久しぶり17人という大人数でのささやかな宴を催しました。久しぶりの歓談、皆ほろ酔い加減でございましたよ。

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週明けの空

2023/04/14
【第1741回】

星野博美著「世界は五反田から始まった」読了。著者の実家の町工場を舞台に、祖父、父を中心とした家族の歴史が描かれる。戦時中の東京大空襲、当時の国家の誤った指示で悲惨を極め人災でほぼ全滅したような満蒙開拓団の話。いつの世も、戦争は一部の権力者の手によって始められ、最終的には無辜の民が犠牲者になるというお決まりのコースに対し、星野さんは、浅はかな有力者や権力者と距離を置き、孤立しながらも生き延びる方法。重大な局面に立たされた時の、判断力。頼る人も組織もない場所にたった一人取り残された時、しなければならない交渉術。豊かさとも感動とも程遠い、ずる賢さ。この点を強調しながら話を進めていく。考えてみれば、誰しもが己の日常の基盤からこそ戦争を問い直すことが必要かもしれない。そうしないと、突然悲劇が訪れ対処の仕様が無いなんてことになっちゃいますぞ!と示唆してくれてる本でもありました。

この作家の本、何冊か読み、文体の軽妙さ大胆さには面白さを感じていました。でも今回の著作が第49回大佛次郎賞を受賞するとはちょいと意外でした。

この本を手にしたのも芝居にできる素材になるのではとの思いからでした。勿論、芝居とは関係なく読書の楽しみから本を手にはするんですが、仕事柄どうしてもついつい芝居にならんかな?と考えちゃうのも一種の職業病ですかね...

そんなこんなしているうちに明日から「風を打つ」の稽古が始まります。いやいや、月日が流れるのがこんなに早いとは...歳のせいかな?

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野に咲くシャクヤク

2023/04/12
【第1740回】

昨日、つい先日トム・プロジェクト所属が決まった村井國夫さん、大和田獏さん、そしてオーデションでの選考の結果、トムに入りたいと言ってくださった今年玉川大学を卒業したばかりの長野優華さんの写真撮りの現場に行ってきました。村井國夫さんはさすがに渋さと色気を兼ね備え貫禄十分、演者としての長い経歴と人生経験が適度にブレンドされて絵になりますね。大和田獏さんは、その人となりが全身から溢れています。誠実、可愛さ、優しさのオーラが醸し出されていました。撮影の間、獏さんの舞台を底支えする姿が目に浮かびました。長野優華さん、初々しさは勿論、健康美そのもの、トム最年少の役者となりました。どこまで成長していくかおおいに楽しみです。

これまでたくさんの俳優さんと出会い素敵な芝居を創ってきましたが、そのなかで実績十分な役者さんがトムに入ってもらえることは大変うれしいことであり心強いことです。ベテランのお二人、選択肢は沢山あったはずなんですが...いやいや、こうなればおいらもプロデューサーとして、このお二人のためにベストな舞台を企画せねばと気が引き締まる思いでございます。芝居は志を一つにしないといいものはできません。仲良しクラブでも駄目だし芝居の根っこの部分を共有できる人が居てこその舞台です。

昨日今日と夏日を感じさせる日が続いています。そんななかハナミズキが色鮮やかに咲き誇っていました。

 

薄紅色の可愛い君のね
果てない夢がちゃんと
終わりますように
君と好きな人が
百年続きますように

 

こんな歌をつい口ずさんでいました。

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平穏な日々が百年続きますように

2023/04/10
【第1739回】

新緑が美しい季節がやってきました。おいらが一年で一番好きな季節であり、命の尊さを痛感する日々でもあります。サクラが散り、新芽から芽生えるようにニョッキリと顔を覗かし、待ちわびたかのように樹々に色鮮やかな色彩を見せつけてくれる時間は、おいらの心身を開放してくれます。そして、日々成長していく葉の色も形も、まるで人間の性格、容貌がそれぞれに違うように樹木によってさまざまであり、その一枚一枚を眺めながら、あっ!この葉は、あの人、いやこの人なのかな?なんて楽しみ方もしております。誰が指図したわけでもなく、この季節に決まったように同じ風景を魅せてくれる自然界の大きなチカラ、そして遠い昔から争いと、破壊を繰り返してきたニンゲンに罰を与えるどころか、こんな素敵なプレゼントを飽きもせず与えてくれるなんて...ただただ感謝でございます。

地方選挙の前半の結果も出ましたね。いつもながら投票率も伸びず、もう誰でもいいんじゃない?なんて雰囲気になっていますね。要するに、立候補する人も投票する人もなんだか投げやりな気分じゃないかしら...そんななか、維新が野党第一党になるような状況が形成されそうな流れになっています。維新?まだまだ正体が見えない政党のような気がしますが、大阪から始めた、リーダー自らの給料を減らした分かりやすい手法が受けたんじゃないかしら...魑魅魍魎の政治の世界だけに、確かにシンプルさはアピール度が高いですね。

どうしようもない政治家の皆さん、この新緑をどう見てますかね?

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目にも鮮やか

2023/04/06
【第1738回】

加藤健一事務所の公演「グッドラック、ハリウッド」を観劇。1980年に一人芝居『審判』を上演するため加藤健一事務所を設立。以降現在に至るまで年間3、4本のペースで創り続け今回で114回目の公演である。今年73歳、歳は取っても、滑舌、凛とした立ち姿は日頃から体調管理が万全だと思う。一人の俳優が事務所を立ち上げ43年間舞台を継続できたことに頭が下がる思いだ。俳優として、経営者としての二束のわらじは並大抵のことではないはずだ。この事務所の芝居創りの特徴は、海外の埋もれた戯曲をチョイスし日本の観客にも抵抗感なくアレンジして舞台化させてきたことに尽きる。

今回の芝居も、アメリカのよくあるウエルメイド・コメディ。すっかり売れなくなった監督、脚本家(加藤健一)と新人脚本家(関口アナン)との世代間バトルに、老監督に優しく寄り添う助手(加藤忍)があと一歩新しい世界に踏み出せない老監督にそっと背中を押し続けていく2時間の芝居。3人の登場人物でありながら飽きさせないのは、何といっても戯曲のチカラだ。1938年生まれのリー・カルチェイムという劇作家なのだが、おいらも初めて知る作家である。一人の俳優として日頃から海外の作品を探し続けていること自体、芝居は台本が命だということは熟知している証拠でもある。

トム・プロジェクトも、来年で芝居創りを始めて30年。手前みそかもしれませんが、ここまで日本の劇作家に拘り、しかも100本全てが創作劇。こんな演劇制作会社ありませんことよ。

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スイセンとカルガモ

2023/04/03
【第1737回】

日本のプロ野球も開幕しました。WBCの熱冷めやらぬなかでのプレーボール、各チームの意気込みも半端じゃなかったと思います。我がライオンズも、昨年の覇者オリックスとの対戦で所沢の球場もすべてチケット完売の盛況。初戦は9回ツーアウトまでいきましたが、昨年までライオンズに所属していた森捕手に同点ホームランを打たれ、結局延長で負けてしまいました。移籍した途端に手荒い洗礼を受けましたね。このやんちゃな森、打撃はいいんだがピッチャーのリード、そして肝心な守備がいまいちなのでライオンズにとってもおいらはそんなに損失だとは思っていませんでした。移籍した人はライオンズとは既に関係ないのでどうでもええやんけ!好きだった秋山(広島)、そして去り際がスッキリしなかった浅村(楽天)などなど、まあ適当にやって下さいというのが本音です。

オリックス3連戦で見えてきたのが、トップバッターを任された助っ人マーク・ペイトン。なんじゃい?助っ人どころか、はやお荷物になった感じ。そして4番バッターの山川のふがいなさ。この方、来年はソフトバンクに行く噂が持ちきりなんだが、こんな無様な姿では契約金相当にたたかれてしまいますぞ...この選手のホームランは魅力的なんだが、なんともムラがあり来年他チームに行ってもおいらはそんなにショックではありません。

ライオンズの良いところは主力が出て行っても若い選手が次々と現れるところです。この3連戦でも新人守護神、青山選手など躍動感あふれる選手が登場し、松井新監督に初勝利をプレゼントしました。ライオンズ嫌だったらどんどん出て行ってくださいな。ライオンズファンは何の未練もありまっせん!

東京の桜もいよいよ終わりですね...3年ぶりに桜の樹の下で宴会を楽しんでいる人たちの姿を見るにつけ、あらためて平和の有難さを感じた週末でした。

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善福寺緑地公園

2023/03/31
【第1736回】

散る桜 残る桜も 散る桜

 

なんだかはっきりしない天気ですが、散りゆくの桜を愛でながら多くの人が桜の名所を散策しています。それにしても、今年の桜の咲き具合なんともさえない感じがいたします。

天候のせいなのか、はたまた世相の暗さなのか、桜もなんとなく不安げに咲いているみたいに見えるのはおいらだけなのか?まあ、これだけ物価が上がれば財布のひもも堅くなり老後の資金のために消費が冷え込んでしまうのは自明の理。物が売れなきゃ製造販売会社も利益が出なくなり、社員の給料も上がらない。まさしく負のスパイラルまっしぐらのわがニッポン。一方、フランスでは政府の年金改革を巡って国内が騒然としています。激しいデモ隊と警察とのやりとりを見ながら、70年代の学生運動を想い出してしまいます。亡くなった友の激しい怒り、あれだけ権力に立ち向かった輩が卒業するや大企業にすんなりと入社して行く姿、戦いのあとに残る様々な人の形になんともすっきりしないものがありました。

人の生き方は様々だと思いますが、やはり筋を通した生き方をしてる人においらは共感します。最近では、やはり中村哲さんですかね...「一隅を照らす」一人ひとりが自分のいる場所で、自らが光となり周りを照らしていくことこそ、私たちの本来の役目であり、それが積み重なることで世の中がつくられる。

改めて、残された人生、しっかりと生きねば思っとります。

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様々に咲いてます

2023/03/29
【第1735回】

もうええ加減ええやろ...いまだWBC関連のニュースがお茶の間に溢れています。コーチの裏話、今日はアメリカまで追っかけてヌートバー選手のお母さんまで登場しました。確かに連日暗いニュースが続く中、今回の件は、今まで野球に興味なかった人まで巻き込み大きな社会現象になったばかりか、人間教育論までに影響を及ぼした感があります。栗山監督の言葉「夢はできる・できないではなく、やるか・やらないかだけだ」これなんかは、今生きる人誰しもに贈りたいメッセージ。今回、ヘッドコーチとして監督と一緒に戦った白井コーチは「栗山監督を言葉で表すと、信じて、任せて、感謝する。そういう人だなと。任せたあとに何が起きても全てのことにありがとう。そこがね、本当に凄いなと思う」としみじみ話していました。日々、頬がこけていく栗山監督の姿を見るたびに、孤高の中でも人間としての矜持を感じました。誰しもが思ったでしょう...こんな人が父であり、上司であり、国のトップを司る人であったらなあと。

明日からは日本のペナントレースも始まります。暫くは、この勢いで野球人気が続くに違いありません。我がライオンズも31日にオリックスとの対戦でスタートします。WBCで骨折した源田選手は居ませんけど、ライオンズ伝統の若い新スターが現れ面白いゲームにしてくれることを期待しています。がんばれ!がんばれ!ライオンズ。

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久し振りの青空

2023/03/27
【第1734回】

「ソングマン」昨日、無事千秋楽を迎えることが出来ました。観劇後、様々な意見が寄せられました。え!これトム・プロジェクトの作品?「いや、楽しかった...青春時代を懐かしく思い出させてくれましたよ。」一方、「トムらしいテイストが感じられなかった...」いやいや

若い制作者に一切任せた公演ですから、これらの反響は想定内です。改めて芝居を観る側にも演劇に対する一定の規範があることが良くわかりました。演劇とは?長年にわたって芝居に関わったおいらにもまだまだ未消化な部分があります。しかし考えてみればジャンルを問わず、観る側と創る側が共に夢を持てるものであればすべて演劇だと思います。

変な偏見を持たず、今、目の前の舞台に素直に感じる気持ちがあれば今まで感じられなかったことの一つや二つの新鮮な発見があるはずです。何事もそうなんですが、好きなことに執着していくうちに、自分自身がその道のプロになっちゃった錯覚に陥ることがあります。そんな時は、一旦身に付けた鎧を外すと意外と新鮮な風が吹きぬけて新たな気付きに自分自身驚くこともありますよ...

でも、すべての舞台がそうでないことも確かです。おいらだって、このくそ舞台に貴重な時間とお金を奪われ、どうしてくれるんだ!と怒り心頭に発することもありますよ。

要は、何事も心身ともどもいつも風通しの良い状態にしていれば、ほんの少しでも生きるヒントを貰えるんじゃないかしら?

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今日のサクラ

2023/03/24
【第1733回】

世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし...古今和歌集53 在原業平朝臣の有名な歌である。そうなんですね、桜がなかったら、そろそろ咲くのかな?もう散ってしまうんだろうか?と思い煩うことなく平穏に過ごすことが出来ると思う。でも、今こうやって桜は現実咲いているし何とも悩ましい思いをかき立てている。その複雑な心情を通して桜の魅力、そして長い冬を経て訪れた春の悩ましさを見事に表現しています。

今日も、満開になった桜が吹く風に乗って心地よいリズムに乗って散り始める光景を眺めながら、未だ覚めやらぬWBCの余韻を感じています。この桜ってやつは、この国のシンボル的存在であることは紛れない事実です。桜の季節の別れと出会い、新たなスタート、戦時中には戦意高揚のために利用されたこともあります。人生の節目としても桜は欠かせないものです。パット咲いてパット散る、このなんともいえない時間に人はなにを思うか?

「ソングマン」も今日で4回目のステージを無事終えることが出来ました。さすがに若い人たちによる芝居、テンションが全然落ちません。喜寿を迎え、さすがのおいらも心身ともそれなりに落ちてきております。今回の芝居を観ながら、嘗ての青春時代のあれこれを想い出してしまいます。苦い想い出も含めて良いことも悪いことも、今ではすべて過去形です。人生全て3分前は過去だと潔く切り捨てればとは思いますが、少しは未練がましく思ってしまうのも人の性なんでしょう...

桜の見ごろも今週一杯かな?今年も思い残すことなくサクラ♪サクラ♪堪能いたしましょう。

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神田川のサクラ

2023/03/22
【第1732回】

やりました!WBC、日本が優勝しました。おいらもハラハラドキドキしながら最後まで観てました。8回ダルビッシュ、9回大谷の豪華リレーは夢のようなシーンでした。今後決して観ることが出来ない場面に遭遇出来たことに感謝。準決勝の9回裏の逆転サヨナラ、そして今日の痺れるような試合展開の中、大谷の気迫のピッチングで1点を守りきりました。勿論、大谷、ダルビッシュは凄いのだが、今回の日本チームの勝因はチームが一丸となって戦ったことに尽きると思います。地味目の若手投手陣の頑張りも見応えがありました。メキシコ、アメリカチームの選手のほとんどがメジャーリーグばりばりの現役選手、普通だったら縮こまって心臓パクパクになってもおかしくないのだが、胸を張って堂々と投げ込む姿に感動いたしました。今時の若いもんはなんて言葉がぶっ飛ぶくらいの活躍振りでございます。急遽呼ばれたオリックスの山崎投手はじめ出場の機会が無かった選手も、気持の上でしっかりと戦う姿勢を示していたこその優勝だったと思います。

最近、あまり良いニュースがなかっただけに、今回のWBC日本の人達に夢と希望と勇気をもたらしたに違いありません。

そして、トム・プロジェクト今年最初の東京公演「ソングマン」が昨日、無事に初日を迎えることが出来ました。19日の岩手県一関市の公演を経ての舞台、若手の皆さん、今回の侍JAPAN参加した若手選手に負けず劣らず弾けて演じていました。歴史が証明しています。世の中を変革していくのはいつの世も若者でございます。

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今日のサクラ

2023/03/20
【第1731回】

ノーベル文学賞作家、大江健三郎さんが亡くなりました。若い頃にこの作家の作品貪るように読みました。おいらが好きだったのは「飼育」「個人的な体験」「芽むしり仔撃ち」「万延元年のフットボール」「同時代ゲーム」位までかな。その後の作品は観念的になり文学そのものを解体し再構築していくようでもありました。その一方、戦後民主主義者を自認し、憲法九条を守る運動、広島、沖縄の対する忌憚のない発言をしつづけてきました。言語に拘りながら、世界の危機的状況に一貫して弱者の立場に立ちながら世界に発信してきた功績は計り知れないものがあると思います。

今から半世紀ほど前になりますが、新宿に在ったジャズ喫茶ビレッジバンガードで大江さんを見かけたことがある。物静かな佇まいで店内に流れる曲を耳にしながら心地よさそうにウイスキーを何杯も飲まれていた。村上春樹然り、ジャズを愛好している作家の文体は、いずれもスイング感が溢れ、ジャズファンとしては行間から音が零れ落ちそうな感覚にとらわれ二倍楽しめる読後体験。

この時代、こうやってまた一人、平和を希求する有能な旗振り役が姿を消していく現状に不安を覚えます。こうなったら一人一人の粘り強い行動で全ての争いを止めさせるしかありません。

生きている以上、それを放棄することはとんでもない犯罪行為に匹敵するかもしれません。

世界は、地球と言う惑星はそれほど危機的状況でございます。

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こんなの好きだな

2023/03/17
【第1730回】

そりゃ観たくなりますがな...大谷が投げて打って、おまけにダルビッシュ有まで出てくるんだから、まさしく夢の競演。芝居でいえば千両役者の揃い組といったところですな。昨日のゲームで一番しびれたのは大谷のバント。誰しもがホームランを期待しているなかチームの勝利のためにバント、慌てた投手は暴投、一塁ランナーが一挙に三塁まで走塁し次打者吉田が強いヒット性の当たりで貴重な先制点が入りました。この大谷選手ってホンマに世界一ですわ!世界のお父さんお母さん誰しもがこんな子が欲しいと願うのが良くわかります。これほど非の打ち所がないと逆に気持ち悪いものだが、そう思わせない爽やかな笑顔と時折見せる勝負師の顔、こりゃたまりません...こんなスーパースターになるとほとんど外出もままならない状態の中、苦にするどころか今はすべて野球のために時間を過ごすことが一番楽しいと言い切ってるところもなんとなく大谷らしい。

昨日の試合、我がラインズの源田の渋い守備と打撃も素晴らしかったです。骨折した小指にまかれたテーピングの痛々しい姿でのなか、はつらつとしたプレーをする職人源田選手に拍手。21日アメリカマイアミでの準決勝が楽しみです。確かに史上最強の侍JAPANらしい4試合でしたから十分優勝の可能性ありと思ってますが、勝負事は何が起こるかわかりません。だから野球は面白いんですよね?

「ソングマン」東京公演の前に、明後日19日(日)岩手県一関文化センターで公演します。

お近くの方は是非、若者たちの青春群像劇を観に来てくださいね。

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もう少し待っててね...

2023/03/15
【第1729回】

3月21日~26日まで新宿スペースゼロで上演する「ソングマン」の最終稽古を見てきました。今回の芝居はトムの若い制作者に任せました。おいら世代とは違う感覚で創ってもらいたいとの思いを込めて...いやいや、後味の良い芝居に仕上がっていました。若い役者のピュアな感性が嫌みなく表現された青春ドラマ。通俗的だと言えばそうだが、この混沌とした世界の状況の中、ましてやマスク生活で正常なるコミュニケーションがままならない昨今、青春真っただ中でひたむきに生きようとする姿はとても爽やかで勇気づけられる芝居だと思います。

長いこと芝居に携わっていると、いつのまにか自分の演劇観が固定化される傾向があります。要するに自分はこんな形の芝居を創りたい!何事も核になるものは必要なのだが、あまりにもその核に拘り過ぎて自縄自縛状態になるケースを何度も観た記憶があります。

創っては壊し、又新たなことにチャレンジしていくことが表現者としては理想形なのだが、一旦手にしたものを手放したくないのが普通の人間でございます。

今回の芝居も、おいらがこれまで創った芝居とは随分かけ離れた芝居だと思っていましたが、所詮、テイストは違えども、伝える側の志し次第で、どんな観客にも届けられる演劇として成立するものだと改めて納得できました。今回の作・演出、なるせゆうせい君とは27年前に彼が学生だった時に出逢いトム・プロジェクトの第一回新人公演を任せました。その後、彼も自分の会社を立ち上げ作・演出・監督としてこの業界で活躍しています...おいらにとっても久しぶりのなるせ作品。昨日見た段階で、その後の彼の切磋琢磨の時間を垣間見た感じがしてなんとも感慨深いものがありました。

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こちらも満開です

2023/03/13
【第1728回】

先週の木曜から昨日まで、この国はWBCの話題で盛り上がっています。おいらも全試合TVで見ましたが侍JAPANは強い。栗山監督の勘がズバリと当たりましたね。その大ヒットはラーズ・ヌートバー選手を入れたこと。まだまだアメリカでも未知数の選手であったのだが、走攻守すべてのおいて優れているうえに彼の人間性を見抜いたことが大きい。その彼をトップバッターに持ってきたのがまさしく大ヒット。ファーストストライクから果敢に打っていく積極性が他の選手にも乗り移り連日の大量点に繋がっている。2番バッター近藤が上手くつなぎ、待ってましたの大谷とくりゃ、そりゃ勝ちますがな。村神様は不振だが、そのあとのクールな吉田がこれまた打ちまくるんだから相手の投手はお手上げ状態でございます。それに比してJAPANの投手陣は粒ぞろい、このグループでの全勝は当然の結果かな。今回対戦したチームで好感度を持てたのがチェコ。この国の選手は野球の他にも仕事を抱えながらのプレー。大したもんでございます...佐々木朗希投手の剛速球を足に当てられ七転八倒してた選手が不服そうな顔もせず元気に立ち上がりプレーを続けたシーンは球場全体大きな拍手が送られてました。それに反して、韓国戦で、ヌートバー選手が背中に球を当てられたのに韓国の投手は帽子を取って謝りもせず逆に死球を食らった選手に歩み寄る有様。こんな仁義に外れたことしてるから韓国は一次リーグで敗退も至極当然でござんす。

このあとのヌートバー選手のインタビューがユーモアあふれて笑っちゃいました。背中にボールを当てられたことに対し「丁度、凝ってるところに当たったので良かったです...」このジョークをすんなりと喋れるこの選手こそが一次リーグのMVPでしょうね!

連日の試合の最中、東日本大震災後12年目にあたる3月11日がやってきました。まだ避難している人が居て、故郷に戻ることをあきらめた人が居て、事故に遭った福島第一原子力発電所の行く末もわからず...こんな状態なのに、この国のリーダー、原発の再稼働を追加で目指す方針や次世代原子炉の開発・建設の検討など原発政策を前に進めようとしています。

こんなリーダー、政権、だれが選んだの?野球ばかりに気が行っちゃってると、この国とんでもないことになっちゃいますよ皆の衆。

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もう、こんなに咲いちゃいました
~新宿東南口~

2023/03/10
【第1727回】

今日は勿論、昨日のショウタイムを書かねばならないでしょう...なんとTV41.9%の視聴率。そりゃ観るでしょうね、あの大谷翔平が投げて打つんですから。この日は朝の5時からドーム前でグッズの争奪戦で長蛇の列。これも16番のユニフォームが一番人気。このユニフォームを着て観戦するのが夢だったという人が溢れかえった一日でした。その期待に応えて投げては4回まで1安打無失点で抑える好投。打つ方でも4打数2安打2打点、こちらも申し分ない成績でした。これだけのプレッシャーのなかでも、いつものさわやかな表情でプレーする大谷、ほんまに世界の大谷ですわ!野球界に留まらず、アスリートとしての彼の存在は絶大なるものがあります。驕らず、謙虚に、爽やかにプレーする姿に誰もケチが付けられない選手もそうそう居るものではございません。

なんとも重苦しい中国戦でしたが、牧のホームラン、代打山田の追加点につながる一打で一気に日本の流れにしてしまいました。おいらなんぞは、この一戦10対0くらいで勝利すると思っていたのだが、なんと意外に中国も強かった。この大国いずれにしても末恐ろしい潜在力を持っている。中国の宣伝のためなら人とお金はとことん注ぎ込む全体主義。アメリカから来た老監督の佇まいが妙に可笑しかった。

今日は韓国戦、昨日オーストラリアに負けただけに、必死の思いでくるだけに恐い気がする。

先発のダルビッシュ、DH大谷の活躍を皆が楽しみにしているに違いない。だが、一つ狂い始めると何が起こるのかわからないのが勝負の世界...どうなりますことやら?

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新宿東南口に咲いた
タカトオコヒガンザクラ

2023/03/08
【第1726回】

庶民は怒ってます...この物価高で多くの国民が悲鳴をあげているのに、2月27日に参院運営委員会の庶務小委員会で麹町議員宿舎の家賃が月額2568円減額した8万9642円になることに反対したのは日本維新の会の一人だけと言うんだから腹が立つ。いつもは威勢よく反対をぶち上げてる共産党、立憲民主党もこの時はだんまり。民間ならば家賃相場は50万円から55万円という相場なのに政治家先生だけがいい思いをしてるとしか言えない。給料の他、月65万円の立法事務費などをひっくるめると年収は約4000万円といわれている。これらが必至豆炭に生きている庶民の血税から支払ってると思うと更なる怒りが増してくる。金額に見合った仕事せんかい!ちんたらちんたらした仕事ぶりを見てるとこの国の未来はありまっせん...異国の地で給料泥棒してるなんたら議員にも完全に持て弄ばれこの機に及んでようやく除名する始末。この際、除名に値する議員もわんさか居るんで一緒に辞めさせたら庶民の皆様もスッキリ致します。

今日の東京は4月並みの暖かさ、コートを脱ぎ捨てる感覚は実に気持ちが良いもんでございます。この気温が続けばサクラの開花も早くなりそう。この時期、桜のつぼみを覗くのもなんともいえないトキメキを感じます。そして野の花が肩を寄せ合い春の会議をしているさまがこれまた可愛いもんでございます。

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春の会議

2023/03/06
【第1725回】

日一日と春が近づいています...トム・プロジェクトもこの春の知らせに相応しいニュースが飛び込んでおります。3月1日の大和田獏さんの所属に続き、今日は村井國夫さん所属の発表です。お二人とも、おいらが説明することなくみなさんご存じの方です。獏さんとは「萩咲く頃に」に初めて出演していただき、役者大和田獏の魅力を存分に発揮していただきたいとの思いから、その後「Sing a Song」「モンテンルパ」に出演依頼。どのシーンにおいても舞台をきっちりと締めていく技量、そして心ある演技は観客の多くが納得済み。

村井國夫さんと言えばミュージカル俳優。「マイ・フェア・レディ」「レ・ミゼラブル」は今でも伝説の舞台として語り継がれています。そしてあの声、ハリソン・フォード、ジェラール・ドパルデューの吹き替えはあまりにも有名です。そんな村井さんに、情けない九州のおじさんの役をやらせてみたら面白いんじゃない?という発想から「満月の人よ」に出演していただきました。この芝居での脱力しっぱなしの役者村井國夫においらもびっくり、今までミュージカルを観てた人も驚愕したに違いありません。その後、「砦」「芸人と兵隊」「にんげん日記」と出演していただきました。

トム・プロジェクトも今年から新体制でスタートしています。第二次トム・プロジェクトを創り上げるためになんとも心強いお二人が入ってくれたと思ってます。

これからのトム・プロジェクトの芝居、ますます目が離せませんな...

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春だね!ハナサフラン

2023/03/03
【第1724回】

今日、嬉しいニュースが入ってきました。博多で芝居をやるときにいつもお世話になっている気象予報士の吉竹顕彰(よしたけあきら)さんが、放送事業の発展や放送文化の向上に功績のあった人たちに贈られるNHK放送文化賞を受賞しました。芝居関係では脚本家で演出家の三谷幸喜さん、俳優の吉行和子さんも同時受賞。実はおいらとは従妹関係なんですよ。思い起こせば、おいらが博多で初めてテント芝居に出演した時に、当時九大の学生であったあきらちゃんを、今は無き六本松の名物スナック「ひろ」に連れて行ったことを鮮明に覚えています。その後、地元で30年以上にわたってNHK福岡の夕方のニュース番組に気象キャスターとして出演し穏やかな語り口と飾らない人柄で親しまれていました。一方、災害時には連日、緊急ニュースに出演し、詳しい状況を伝えてきました。2017年の九州北部豪雨の際には、レーダーの雨雲の様子から線状降水帯の危険性を察知し「命を大切にして下さい。それに大変危険な状況です。すぐ避難をして下さい」と呼びかけ気象予報士による「命を守る呼びかけ」の先駆けとなりました。

あきらちゃん、トムの博多公演には夕方の番組終了後に韋駄天の如く毎回駆けつけてくれました。終演後、あきらちゃんを含め仲間と一緒の飲み会も博多公演の楽しみの一つでもありました。

前回にも書きましたが<世のためにつくした人の一生ほど美しいものはない>あきらちゃんも間違いなくその一人だと思います。

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今日の空模様

2023/03/01
【第1723回】

今日から待ちに待った弥生でございます。昨日に続き、今日も東京は春の陽気です。冬のコートを脱ぎ、春の装いで颯爽と歩く若者の姿を見るにつけ、もうすぐ春ですね♪てな嬉しい気分になっちゃいます。

でも、この3月は忘れてならない東日本大震災が発生した月でもあります。もうすぐ12年になりますが、この国がこれから先も忘れてはならない3月11日がやってきます。

先日、新聞でこんな記事が掲載されていました。

 

「モンティ先生」陽気な米国人先生は子供たちから親しみを込めてそう呼ばれていました。アラスカでの少年時代に両親を亡くした彼は、教師が一人一人の子供たちと長く付き合うことの大切さを大事にしていました。「将来は日本と米国の懸け橋になりたい、人の役に立つ仕事がしたい」という思いで外国語指導助手として2009年に岩手県陸前高田市にある米崎小学校に赴任してきました。校外でも、近所の住民とお茶会を開いたり、居酒屋に飲みに行き交流を深めていたそうです。2011年3月11日は彼にとって米崎小での最後の授業、副校長から一つのお願いをされました。それは司馬遼太郎が1980年代、日本の未来を憂いて小学生の国語教科書に書いた「洪庵のたいまつ」。その一説を子供たちに英語で紹介したいと英訳を頼まれました。<世のためにつくした人の一生ほど美しいものはない>彼は快く引き受け、サラサラと英訳を書きました。その後、授業終了を報告するため市教育委員会に向かいました。その約1時間後の午後2時46分、陸前高田市を震度6弱の地震が襲い津波が押し寄せました。市教委の入った建物は津波にのまれ教育長、次長も流されました。後日、彼も遺体で見つかりました。

あの日受け取った英訳の紙片は職員室の机の上に残っていました。その後、来日した遺族に遺品として渡したが、副校長は教員を定年退職した今も、紙片のコピーを大切に保管している。<世のためにつくした人の一生ほど美しいものはない>これは26歳で亡くなったモンティことモンゴメリー・ディクソン、あなたのことですよ...

 

この不穏な時代、一日一日、生かされてる者にとっては大切なことであることを改めて思い知らされる記事でありました。

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弥生

2023/02/27
【第1722回】

先週の金曜日、読売演劇大賞の授賞式が帝国ホテルでありました。トム・プロジェクト関係では「風を打つ」に出演して頂いた音無美紀子さんが優秀女優賞。トムの作品にもお馴染みの劇団チョコレートケーキが最優秀作品賞、そして見事、読売演劇大賞を受賞しました。音無さんは「風を打つ」の初演時にも文化庁芸術祭賞優秀賞を受賞しており、再演して再度評価された今回の快挙です。

一方、劇団チョコレートケーキ大賞受賞作「生き残った子孫たちへ 戦争六篇」は演劇史上でも画期的な公演でした。昨年2022年8月、東京芸術劇場シアターイースト/シアターウエストにて上演。再演五編、新作一編、いずれも日本が関わった戦争の物語です。短期間での稽古スケジュール、そして所属している3人の男優の掛け持ち出演は大変だったと思います。ロシアのウクライナ侵攻、コロナの脅威という状況の中で戦争の本質を突きながら、平和を願った作品はどれも観客の心を揺り動かしたに違いありません。

「風を打つ」は水俣を題材にした作品。今年も5月~6月にかけて再々演を展開します。環境、戦争、家族、人間がこの地球上で生きていくために未来永劫忘れてはいけないテーマだと思っています。この大切なテーマを盛り込みながら生身で創り上げていく演劇は、このハイテクな時代では最も効率は悪いのですが、だからこそ観客に伝わるものはより密度が濃いものになり思考、行動を変えてしまうチカラに転換出来うるものと信じています。

今回の受賞も、この世界の難局を乗り越えるための過程、今日から又新しい作品に向けての戦いは始まっています!

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おめでとう!

2023/02/24
【第1721回】

新国立劇場中劇場で音楽劇「逃げろ!」の東京公演初日を観劇。いやはや若い女性で満杯、キャンセル待ちのお客様も並んでおりました。ジャニーズ事務所の男優さんと、2.5次元での人気者男優のそろい組ということでの盛況らしい。おいらは村井國夫さんの出演ということで観に来たのですが、まあこんな機会でなければこの手の芝居はなかなか足を運びませんな...内容はモーツァルト傑作台本3本を書いたイタリア詩人・作家とモーツァルトのやり取りを描いた2時間の芝居。歌と踊りを交えて若い俳優さんが所狭しと舞台上で熱演してました。その中で、やはり存在感を示したのが村井國夫さん。お孫さんのような演者に対して、負けずとも劣らないどころか演技たるものの見本を魅せてくれました。そして、トムの芝居にも出演したことのある篠井英介さんも、彼でしかできない魅惑的な表現で舞台を締めていました。主役がどんなに頑張っても、やはり脇に控える役者が居てこその芝居ということを実感した次第です。この芝居を2時間牽引した3人のミュージシャンの音楽力も見事でした。3人だけで、まるでオーケストラに匹敵する質量を発する音を展開してくれました。

今回の芝居というより、お目当ての俳優さんを観るために駆けつけた多くの観客が、これをきっかけに芝居が好きになり他の芝居も観に来てくれれば、こんな嬉しいことはありませんことよ。

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渋い!

2023/02/22
【第1720回】

昨日は、東京芸術劇場シアターイーストで劇団温泉ドラゴン「悼、灯、斉藤」(とう、とう、さいとう)を観劇。この作品は、作者である原田ゆうさんの家で起こった実話を元にした作品です。2020年6月に介護士だった実母が突然亡くなり、残された三兄弟が集まり、これまでの人生を振り返りながら、語り合い衝突しながら関係を修復していく物語。勿論、その輪の中にお父さんの存在があり、親子の微妙なやりとりも描かれていました。

今回の作品の演出・主宰者であるシライケイタ、次男役いわいのふ健、亡くなったお母さん役の大西多摩恵、長男の妻を演じた林田麻里さん。この4人はトムでも過去に一緒に仕事した人達です。時間を経過した中で、それぞれがそれぞれの形で表現の変化を観るのもプロデューサーとして楽しみの一つです。今回、母を演じる女優さんが体調不良で降板され、2週間で創りあげた多摩恵さんの奮闘振りに拍手。芝居屋さんは助けられたり、助けたり、長年芝居やってますと、その辺りの案件を阿吽の呼吸で危機を乗り越えたなんて事例は数多くあります。

母ものはやはり涙なしでは見られないですね、会場のあちこちですすり泣きが聞こえてきました。これも役者の表現力、そして演出力があっての話。10年から20年、芝居をやり続け力を蓄えていく劇団の過程も大変ドラマチックでございます。

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Welcom to Japan

2023/02/20
【第1719回】

先週の週末は、劇団トラッシュマスターズの「入管収容所」を観てきました。2021年3月6日、スリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が名古屋出入国在留管理局で死亡したウィシュマさん死亡事件をモチーフに、日本の入管庁(出入国在留管理庁)の問題に斬り込んだ舞台。未だにこの国の為政者は、不法滞在の外国人はほとんどが悪い奴らと決めつけて対応している。移民、亡命者にたいする接し方も後進国並みだ。確かにこの資源に乏しい島国が、異国の人たちに制圧される光景を想像するとあまりいい顔しないのは分かる気がする。しかしながら、先にも触れたのだがこの国の働き手が少なくなっていく将来、異国の人たちと手を携えて生きていかなければならないことも想定しなければと思う。

トラッシュマスターズの芝居は、いつも今あるこの国の問題点をいち早く取り上げ舞台に仕上げていく。ある意味、演劇は今を描いてこそのアートかもしれない。今回の舞台もメディアで報道される上っ面のことではなく、劇作家、中津留章仁が綿密に取材したことを基本に自らの想像力を駆使して2時間40分の芝居に仕上げた。出入国在留管理局の非人道的な数々が目の前で繰り広げられ戦慄さえ覚えた次第だ。これも演劇が放つチカラに違いない。演劇とは己が信じた思考を行動に移す極めてシンプルな表現でございます。

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サギは後ろ向き

2023/02/17
【第1718回】

今、第168回直木賞、第13回山田風太郎賞と併せてダブル受賞に輝いた小川哲作「地図と拳」を読んでいます。なにせ全640ページという大作、半分あたりまで来ました。登場人物が複雑で多岐にわたり、あっちゃこっちゃと引きずり回されますが満洲を舞台にどこまでが真実かどこまでが架空の話か、読み応えのある小説であることは間違いありません。

先日、作家がこの受賞に対するエッセイを書いていました。

その中で興味深かったのが祖父に対する気持ちです。祖父が亡くなる10年ほど前に自伝を出版した時に、周囲の人たちは冷ややかな反応をしたそうだ。戦時中に共産党員だった祖父は党の活動のせいで逮捕され大学も退学。学徒動員で召集された時も負の感情を抱き、天国や神の存在を信じていなかったそうだ...そんな祖父に今回の受賞をどう報告されますか?と質問してきた記者は天国の祖父に感謝の気持ちを述べるだろうという予測に対し、彼はきっぱりと「祖父の人生を尊重する限り、もう死んで骨となった伝える言葉など、僕にはない」。記者会見の短い時間で、祖父の過去を説明できるはずもなく無理だと思ったそうだ。自分がどれだけ上手に説明しても、記事では切り取られてしまうかもしれない。だから、伝えることはないと答えた。祖父はすでに死んでしまったが、その存在はきっと自分の本の中で生きている。そして、本と言う形で自分の人生を残そうと考えた祖父のことを今でも尊敬していると記している。

久しぶりに作家としての矜持を強く感じた言葉でございました。

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如月の夜空

2023/02/15
【第1717回】

昨日は日生劇場でホリプロ制作のミュージカル「バンズ・ヴィジェット」を観劇。ミュージカルになんと風間杜夫ちゃんが出演しているので、どんな歌をご披露するのか楽しみにしていました。この作品はトニー賞で10部門を独占したのだが、従来のミュージカルと違い大規模で派手な趣向のある作品というわけでもない。しかし、イスラエルに演奏旅行に来たエジプトの音楽隊が道に迷い、地元のイスラエル人と一晩交流をするというシンプルな物語の中に、国境を越えた人の交流を丁寧な描きながら、心情溢れる空気とエキゾチックかつ独創的な音楽は過去のミュージカル作品にはないものを感じました。杜夫ちゃんは誇り高い楽隊長の役、抑制の効いた演技で地味ながらも存在感を示しておりました。期待していた歌は一曲だけでしたが相手役の濱田めぐみさんと上手くハモっておりました。

それにしても御年もうすぐ74歳になるというのに、若い俳優さんと一緒に演技している姿は元気をもらえます。ここが俳優業のいいところですな...なんといっても死ぬまで現役で居られんですから。と言っても舞台は台詞を覚えなきゃ成立しないので、覚えられなくなっちゃえば舞台俳優としては引退宣言。事実、この一件で引退した俳優も居ましたね。加齢とともに日常生活でも「あれ?あれ?」を連発することも度々。本当に出てこないんだよねこれが...ましてや舞台では高い入場料金頂いて足を運んで来てるお客さんの前で台詞が出てこないとなると失笑を買うと同時に、それまで築いてきた芸歴に傷が付き仕事が激減してしまうという最悪の未来が待ってます。だからこそ舞台は価値があるんですな。生身の身体を晒しながら己自身に鞭打つ姿をハラハラドキドキ見応え十分でございます。

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寒い一日

2023/02/13
【第1716回】

週明けの東京は雨が降り寒い一日です...連日報道されているトルコ、シリアの地震による甚大な被害。厳寒の中、焚火にあたる被災者の映像を見るたびに心痛みます。シリアでは内線が続いており政権側がしかるべき救済に当たってないこともあり、ここにも理不尽な状態が続いています。天災は人の手では何とかならないにしても、せめてもの戦争は人間の思考でなんとかなるはずなのに止めることが出来ない情けない世界、いや人類。天災は今後予想もつかない出来事が起こりそうなので、せめて戦争だけは止めて欲しいと誰しもが思っているのに止まらない。今はメディアもトルコの地震報道で一色だけれど、ウクライナもロシアの無差別攻撃で危機的状況。焼けただれた我が家の前で、呆然と立ち尽くす老婆の表情は怒りを通り越し諦観の境地。確かにウクライナがロシアに占領されれば民主主義、自由主義の敗北に繋がり世界の状況は一気に変貌するに違いない。それを阻止するため西側諸国は武器を提供しウクライナの勝利につなげるための援助はしているのだが、この状況が長引けば長引くほど死傷者が増え続ける...一人の独裁者の欲望、誰かストップかける奴おらんかいな!

2月生まれのおいら、よくぞこんな寒いときに生まれここまで活かしてくれたもんだと感謝いたしております。いつもながらの通り道にいつものように梅が咲いております。いつもの風景を今年も拝観し、あらためて平和の有難さを痛感した次第でございます。

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梅は咲いたか桜はまだかいな~

2023/02/10
【第1715回】

今日はしんしんと雪が降っています...いつも雪の日に感じることはなんだか心落ち着き、そして不思議な気分にさせてくれます。あの落ちてくる速度の緩やかさに思いを寄せ、いつもの日常を銀世界へと変貌をさせることによって、それまでのすべてをリセットさせてくれそうなマジック。その雪を眺めていると、おいらが好きな詩人の一人、吉野弘さんの「雪の日に」を想い出します。

 

雪がはげしく ふりつづける
雪の白さを こらえながら

欺き(あざむき)やすい 雪の白さ
誰もが信じる 雪の白さ
信じられている雪は せつない

どこに 純白な心など あろう
どこに 汚れぬ雪など あろう
               
雪がはげしく ふりつづける
うわべの白さで 輝きながら
うわべの白さを こらえながら
雪は 汚れぬものとして
いつまでも白いものとして
空の高みに生まれたのだ
その悲しみを どうふらそう

雪はひとたび ふりはじめると
あとからあとから ふりつづく
雪の汚れを かくすため

純白を 花びらのように かさねていって
あとからあとから かさねていって
雪の汚れを かくすのだ

雪がはげしく ふりつづける
雪はおのれを どうしたら
欺かないで 生きられるだろう
それが もはや
みずからの手に負えなくなってしまったかのように
雪ははげしく ふりつづける

雪の上に 雪が
その上から 雪が
たとえようのない 重さで
音もなく かさなってゆく
かさねられてゆく
かさなってゆく かさねられてゆく

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ユキツバキ

2023/02/08
【第1714回】

新宿西口広場に80歳前後のおばあちゃんが一人、俳人の金子兜太さんが書いた「アベ政治を許さない」のプラカードを掲げて立っていました。安倍政権時代には作家・九条の会呼びかけ人の澤地久枝さんが、毎月3日午後1時に掲げようと提案をし、あちらこちらで見かけたもんですが、ここ最近では久しぶりに見かけました。その横には菅元首相の名前も連記されてました。柔和な顔でありながら、刻まれた皺と同じく彼女の強い信念を感じた次第です。おいらもその凛とした立ち姿に思わず「お疲れさまです。」と声を掛けました。

新宿西口広場と言えば、一日の通行人数は相当の数だと思います。衆目の面前でこれだけの意思表示をすることはかなりの覚悟がいるはずです。おそらく家族、親戚には「みっともないから止めなさい!」「いい歳していい加減にしなさい...」なんて言われたに違いない。でも、彼女にしてみれば今のこの国の政治、国際情勢の大きな危機感から矢も楯もたまらず今回の行動に踏み切ったに違いない。諦めちゃダメなんです...この島国ニッポン、たしかに素晴らしい自然に恵まれ、繊細な気配りを持ち合わせてはいるんですが、こと政治になるとほぼ諦めの境地の人が多いんじゃありませんかね。

何が正解か分かりませんが、己の意見を持ち、間違いだと思ったらはっきりと異見する人間でありたい...そのためには、自分磨きを日々ゴシゴシしなきゃなりませんね。

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生きてます!

2023/02/06
【第1713回】

先週末は「モリコーネ~映画を愛した音楽家~」を鑑賞。稀代の映画音楽家エンニオ・モリコーネ、この伝説のマエストロに、弟子であり親友でもある「ニュー・シネマ・パラダイス」を監督したジュゼッペ・トルナトーレ監督が5年の歳月を掛け密着取材し完成させたドキュメンタリー映画である。おいらが大好きな映画のシーンとともに流れるモリコーネの曲がなんと心地良かったことか。「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」「アルジェの戦い」「ウエスタン」「ケマダの戦い」「1990年」「天国の日々」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」「ミッション」「ニュー・シネマ・パラダイス」「アンタッチャブル」「海の上のピアニスト」などなど上演時間2時間37分、あっという間の時間でございました。考えてみれば、いつまでも心揺さぶられる映画には琴線に触れる音楽が伴走していました。自分の音楽を客観的に見られなくなった時、エンニオは音楽をまず妻に聞いてもらうことを選択すると喋っていました。謙虚で才能溢れたアーチストにも妻という良き伴走者がいたんですね。インタビューを受けるモリコーネ実にいい表情していました。貴方だったら唯一無二の旋律で映画に愛と命を吹き込むことができるはずだと納得した次第です。

唯単なる叙情に溺れることなく、渇いたアバンギャルド的音を交えながら構成していく手法は、彼自身が常に前衛の気持ちを忘れずに曲創りに邁進したからだと思います。いつ聞いても新鮮で最後には泣いちゃいます...2020年7月に91歳で亡くなったモリコーネに乾杯!

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永遠なれモリコーネ

2023/02/01
【第1712回】

ぼったくり男爵の発言がまたまた話題になっている。現在、国際大会から除外されているロシア選手らの復帰を検討すると発表。このオッサン、オリンピックを自分の利益のための道具にしてるんとちゃうかいな。この極寒のなか、ロシアの無差別攻撃でインフラが破壊されたなかで生活しているウクライナの現状を視察してからものを言わなあかんやろ。まともなオリンピック運営者であれば、ロシアのウクライナ侵攻が止まない限りオリンピックは開催しません!と宣言するべきだろう。それにしても狂犬プーチンひとりのわがままで世界がひっくり返ってるなんて恐るべき世界である。

軍事評論家が、メディアで今後の戦況をまるで予想屋みたいに語るシーンを見るたびに虚しさを覚える。こんな非常時に、颯爽と現れ事を収めるスーパーマンみたいな人物はおらんのかい...戦争してる暇なんてないぐらい、地球は温暖化により悲鳴をあげ世界各地地で災害が発生し、この先さらなる危機に瀕しているというのに、ほんまにニンゲンアホですばい。

今日から如月、あっと言う間にひと月経ってしまいました。寒さと同時に各家庭の生活も冷え込んできています。物価の更なる値上がりに続き、電気代の値上がりが又しても火計を圧迫。原発稼働している関西、九州はそのほかの地区に比べて安いという皮肉な現状。又しても原発見直しの議論もなされているという。2011年3月11日以来、この国のエネルギー政策なにか進展はあったんだろうか?外国行って大臣のためにお土産買ってふらちんしてる息子を抱えたリーダーではこの先真っ暗闇でございます。

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如月初日

2023/01/30
【第1711回】

週末は「イ二シェリン島の精霊」を鑑賞。佳作「スリー・ビルボード」を創ったマーティン・マクドナー監督の最新作ということで期待して観に行きました。1923年のアイルランドの架空の島で繰り広げられるオッサン同士の仲違いドラマ。美しいアイルランドの島、荒涼とした土地に暮らす現地の人達の表情、象徴的に登場する動物たち、カメラワークも良し。悪くはないのだが何だか唐突すぎる出来事が沢山出てきます。あんなことぐらいで指をとか...とにかくおいら日本人には理解できないシーンが何度も映し出されるので、こちらも深読みしようとはするのだが、なかなか追いつかない。この映画、映像美におんぶにだっこに拘りすぎた雰囲気芝居で創ってるんじゃあ~りませんか?と思った次第です。2023年のゴールデングローブ賞で作品賞、主演男優賞、脚本賞を受賞したのだが、おいらとしては今一つ推せませんな。

強いて言わせて貰えば、この作品が今の時代に訴えたいことは、ボタンの掛け違えでこんな悲惨で残酷なことが起きてしまいますとの警鐘かな...家庭の崩壊、ロシアのウクライナに対する不条理な侵攻、身近に起こる歪な事件などなど...人はちょいとした勘違い、自分への執拗な拘り、相手との距離感、思いやりのなさで状況は一変し最悪の結末を迎えるってことを表現したかったのかな。

折角、週末の貴重なお金と時間を費やしたので、自分なりの納め方をしないと無駄な時間とお金になってしまいますがな。

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日本の精霊

2023/01/27
【第1710回】

昨日は、今でも博多駅近くにある東住吉小学校の同級生でもある彫刻家、望月菊磨君の個展に行ってきました。半世紀以上にわたり金属彫刻家として第一線で活躍してるアーチストです。田園調布のお洒落な邸宅を改装した「みぞえ画廊」。画廊自体が作品と言っても過言でない素敵な佇まいでした。全国に130か所以上のパブリック作品を手掛けてる望月君、こんなことを話してました。

ある日、大木の下でぼんやり空を見ていると、大木の若葉からこぼれる日の光の淡い緑色の諧調のある透過光が目茶苦茶にきれいで「自然は素晴らしい!」この自然をモチーフにして何かを作ろうとしたり再現しても絶対にかなわないと思ったそうだ。自然のものは自然に任せよう。では自分はどうしたら良いかと考えた時に、人間が人間のために創り出した素材で人間が生み出した技術でものを作り表現することに辿り着く。それは工業製品のようなもので金属やプラスチックを素材にして技術を加えて作品を作る、それも具象ではなく抽象で表現することがよりベスト。そして何かを創るという行為は叩く、曲げる、穴を開ける、削る、溶かすという破壊行為。破壊行為の集積が、ものを創るということであり破壊が創造の原点である...以上が望月君の哲学でございました。

おいらと同級生なんだが、顔の色艶はいいし、東京藝術大学出のエリート臭も全然ないし、良い歳の取り方をしてるなと思いました。高校時代はタモリさんと同じクラスで大の仲良しだったそうだ...トムの芝居にも来てくれる望月君、春になったら一杯やる約束をして別れました。

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望月ワールド

2023/01/25
【第1709回】

10年に一度の寒波が日本列島を襲来し、各地でトラブルが発生しているのだが、今のところ東京は難を逃れている状態です。程よい雪は風情がありますがドカ雪はえらいことになっちゃいますね。特に東京は雪に弱い街なので、大雪と聞いただけでブルッちゃいます。

それにしてもこちらもブルブルどころか嘆き節になっちゃいます...100万円で強盗、殺人の募集をかけ集まった若者が90歳のおばあちゃんを殺してしまう。こりゃ、もはや人間ではありません、獣ですね。いや獣の方がまだ秩序があるような気がします。捕まった若者の一人は生活保護を受けながら過ごしていたそうな。こんな人間を生み出した責任、この国のすべての人にあるような気もします。夢も希望も持てない国にしてしまった責任をもういちど考える必要があります。年老いたおばあちゃんを殴る蹴る拘束して死に至らしめる。しかも金品を奪うだけの理由で...狂ってるとしか言いようがないのだが、彼らにしてみれば命よりも物欲が勝っているんでしょう。

会社の隣に子どもたちの予備校があるのだが、夕方になると迎えにきたママ友が集まり四方山話をしております。名門小中学の受験は熾烈を極め、出来るだけ早い内から予備校に通わないと入学出来ないそうです。遊び盛りの子どもたちの疲れた顔を見る度に、この国も狂ってるとしか思えない。どうみても狂ってるとしか思えないことが、当たりまえに感じる人種が多数を占めると、おいらはますます肩身が狭くなっちゃいます。

時折、街中で年老いた人の手助けをしてる若者を発見すると嬉しくなっちゃいます。こんな人たちにこの国を任せたいな...

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新宿サザンテラス

2023/01/23
【第1708回】

今週は大寒波が日本列島を襲来するらしい...なのにお相撲さんの艶々した肌を見てると、何だかこちらまでポカポカとしてくるから不思議なもんだ。おいらの家の近くにも芝田山部屋があるのだが、時折見かけるお相撲さんのその凛として勇ましい姿とは裏腹に、力士の近くに寄ると、どこか懐かしい甘い香りがする。その香りの正体は、鬢付け(びんつけ)油。力士の象徴ともいえる髷(まげ)を結うためには、かかせない存在なんです。

昨日の大相撲初場所の千秋楽、テレビ観戦しました。横綱不在、大関一人と言う寂しい場所でしたが、ここ最近ユニークな関取が出現し大いに楽しませていただきました。力士らしい力士、若隆景。憎たらしい顔つきだが根性丸出しのモンゴルの星、豊昇龍。変幻自在で忍者相撲で魅了満点の翔猿。その他、阿武咲、大栄翔、宇良なんかも面白い存在。それに反して先場所まで大関だった正代、多くのファンが嘆いておりますぞ。昨日の結びの一番、貴景勝なかなかでございました。連日、鼻血を出しながらの大健闘。あの体つき、ちょいと無理があるなとは思っていたのですが昨日の投げ技で新しい境地を磨いていけば横綱も無理ではありません。優勝インタビューがとっても良かったな。家族への感謝、自分を支えてくれた人達への感謝、すべてに感謝の気持ちが前面に出ていました。

これからの時代、感謝の気持ちがある人が生き残っていくことは間違いありません。この感謝の気持ちが無くなった時に人も国も世界も滅びていきます。今ここに立つ己は如何にして立てているのか...すべからく、生きとし生けるものに感謝でございます。

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ブルブル週間の初日

2023/01/20
【第1707回】

音楽を聴きながら読書する人、静かな環境で本に没頭する人...おいらは半々かな?本のジャンルによっても違ってきますね。今読んでる星野博美さんのエッセイなんかは先日紹介した新進気鋭のピアニスト、ヴァイキングル・オラフソンのCD聴きながら読んでると星野さんの怒りが、オラフソンの軽快にして幻想的なタッチでほどよくブレンドされテンポ良く次のページへと転調していく。

星野さんの怒りは、安さに定評がある「サイゼリア」に行ったときのことである。雨に濡れ冷えたからだで入店し温かいコーヒーを飲みたくてコーヒーマシンにカップを置きボタンを押しても冷たいコーヒーしか出てこないので男性の店員を呼んだところ、「コーヒーマシンが壊れているので冷たいドリンクをお飲み下さい」との返答。すかさず彼女「昨日も壊れていましたよ」と返すのだが、「修理がまだ終わっていませんので」とサイゼリアの男は、まるで星野さんを責めるような苛立ちの顔を浮かべ、安い値段で飲んでるのだから、つべこべ言わずにあるものを飲めよ、とでもいいたそうな顔で立ち去ったそうだ。機械が壊れるのは仕方がない。それを責めてるのではなく、謝ってもらえば気が済む話でもない。ただ、会話が会話にならないことに空しさを感じたそうだ。そりゃそうだ、たった180円のコーヒー、だからこの程度の誠意を示せば事足りる。この店員のそんな無意識の計算があまりにも悲しすぎる。

こんな体験、おいらも何度か経験したことがある。値段を安くしてくれることは客側からすると大変ありがたいことなのだが、価格の破壊が人間の大切な魂までも破壊しかねないことになっちまったら、それこそ主客転倒だ。

ピュア―な魂を保持するためにも、週末も心地よい音楽と読書を程よくブレンドして至福のひとときを堅持したいものでございます。

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遊び心満載のオラフソン

2023/01/18
【第1706回】

この国のセメント副総裁は困ったもんでございます...原発関係で日本の死者は一人も出てないとか、少子化問題では晩婚が原因とか、とにかく何年政治家やってんの?と開いた口が塞がらない。あんたらの未来への無策がすべてツケとなって今があるのに、何の反省もなく愚痴ってるんじゃないよと怒りを覚えるばかりだ。とにかく無能な政治家があまりにも多いのでまずは一刻も早く議員数を減らしてくださいな。辞任続きの大臣に税金払ってる身にもなってくださいなと言いたい。物価はじゃんじゃん上がってるのに給料は上がんないなんていう悲痛な叫びに政治はどう応える?なんて絶叫、連呼してもこの国の政治家のツラ見るかぎり、こりゃ無理ですわ!と、ほぼ諦め状態でございます。

博多の舞鶴にあった名店「さきと」が閉店してました。博多に帰れば、この店の美味しい魚とお酒が楽しみでした。魚と酒の目利きである大将が集めた食材はどれも絶品の味でした。カウンターだけの13席の店は予約を入れないと入れないほどの人気で、もちろん一見さんの入店は無理でした。お客さんとの距離感も絶妙で、お互いに気を遣うことなく酒と魚に集中することが出来ました。博多には美味しい店は数々あれど、この空気感の中で頂く料理は、なるほど西日本の居酒屋番付で横綱と称される価値はあったと思います。

大将は現在入院中とのこと、一日も早く元気になって又、大将が捌いた魚を食したいもんでございます。

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今日の空

2023/01/16
【第1705回】

昨日の15日は、3年前に中国帰りの人からコロナ感染者が日本で初めて出た日でもありました。その日から3年、日本のみならず世界はコロナで振り回される日々でした。それまで当り前のように友人と連絡し、美味しい酒を飲みながら馬鹿話してた時間が吹っ飛んでしまいました。人とのつながりをストップされたのですが、自分を見つめなおす良い機会でもありました。人とはいつだって気楽に逢えるもんじゃないということを痛いほど味わい家で過ごす時間が増え、風来坊気質を持つおいらにとっては、ようやく地に足が着いた生活が出来るようになったのかなとも思えた3年間でありました。

それにしても、この年になるとやはり会えない友人の近況が気になります。若い頃に芝居した仲間も3人亡くなったり、ゴールデン街で痛飲した男たちも何人かは消えてしまいました。今年の年賀状に半世紀通ったゴールデン街「ガルガンチュア」での飲み仲間であったH先輩から「いい時代思う存分楽しくともに生きてきましたね...今年で年賀状はおしまいです」夜毎、酒を飲みながら政治、芸術談義をした熱い日々が本当に懐かしゅうございます。

最近の若者は他人との距離を置き、酒もあまり飲まないそうです。これも時代の流れとは思いますが、この空気感が日本をつまらなくしてるのかもしれませんね。

ロシアの狂気、中国の不気味な動き...この国ほんまに大丈夫かな?なんとも覇気を感じないこの国トップの海外訪問での表情観ながら心配になってきました。

それと、籠池夫妻に実刑判決が決まったのは理解できたとしても、文書改ざんをした政治家、役人が何のお咎めを受けないなんて、これだけでこの国バッテンマークでございます。

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久し振りの曇天

2023/01/12
【第1704回】

今年に入ってよく耳にするピアニスト、ヴァイキング・オラソン、1984年アイスランドで生まれた新進気鋭のピアニストである。作曲もする建築家の父とピアノ教師の母を持ち、ニューヨークの名門ジュリアード音楽院でピアノを学ぶ。普通ならこの後、著名な国際ピアノ・コンクールに出場し、コンクールでの受賞歴を引っ提げて華々しくデビューを飾るところだが、ヴィキングルはそういう道を歩まない。いつ受賞できるかわからない国際コンクールなどに目もくれず、自分の音楽を届けるためにレーベルを立ち上げ、さらにフェスまで作ってしまうというのが、ヴィキングルのスタイル。ポップスならともかく、クラシックでこういうキャリアを歩んでいるアーティストは、ほとんど前例がないらしい。

まあ、出自、経歴などはどうでも良い。おいらが耳にして感じたことは、このピアニストには、自分自身の音楽に対する確信的なモノを信じて、先人の創った様々な曲にリスペクトしながら新しい音を生み出そうとする姿勢。表現者として生涯持ち続けなければいけない最重要なことでもある。おいらが音楽を聴く基準に、使い古された言葉かもしれないかもしれないけれど、やはりその人の魂を感じることが出来るかどうかがポイントになる。得てしていい音楽とは、静謐と躍動のふり幅を縦横無尽に駆使して聴き手の想像力を否応なしに掻き立ててくれる。

とにかく、彼の最新アルバム「フロム・アファー」を聴いてくださいませ。こんなピアノソロもあるんだなと...何事も新しい年の初めに、新しいモノに触れ刺激されると、今年もやらんとあかんぜよ!という気持ちになるだけでもありがたいもんでございます。

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冬のメタセコイア

2023/01/10
【第1703回】

おいらの冬の楽しみ二つのラグビー選手権が無事終わりました。最初は高校ラグビー。東福岡高校が報徳学園を破り6年振りの優勝。攻撃のチームから守備にチカラを入れたことに成功しました。ラグビー競技の醍醐味であるタックル、なんだか命懸けのプレーに手に汗を握る思いがいたします。己が犠牲となりチームに貢献する姿がとっても潔く胸を打つ。オレ我オレ我の世の中で、身を捨てる精神を持ち得る人が何と少なくなったことか...泥まみれになってぶつかり合う男たちの姿に酔いしれる至福の時間でございました。

8日に国立競技場で行われた大学選手権。帝京大学が圧倒的なチカラで早稲田を下し、2年連続の王者に輝きました。帝京大学の選手たちのフィジカルの強さだけが目立った試合でした。鍛え抜かれた筋肉の美しさに惚れ惚れしながら、このチームの選手の日頃の惜しみない努力が目に見えるようでもありました。指導者の適格な指導に素直に応える選手たちの資質の素晴らしさに頭が下がる思いです。

ラグビーのオールドファンたちは伝統校である早稲田、明治、慶應、同志社が強くないと面白くないなんてほざいておりますが、今はそんな時代じゃございません。真摯に物事に向かう姿勢を持つ者だけが生き残る時代であることを忘れてはなりません。過去の栄光忘れましょう!初心に帰って一から始めないとすべてのことが駄目になることに気付かないと世界はえらいことになっちまいますがな...そんなことを考えながら先週末のラグビーを楽しませていただきました。

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冬の薄暮

2023/01/06
【第1702回】

世の中ほんまに便利になったもんでございます。音好きなおいらとしては、今やスマホからあらゆるジャンルの曲が聴けるんですから贅沢極まりない。しかもワイヤレスイヤホンを耳に装着すれば面倒くさいコードも気にすることなく快適な音の世界が拡がっていく...

おいらもその恩恵を受けてはいるのだが、我が家に帰り、自分の聴きたいレコード、CDを取り出し音に向かう、このなんとも言えない高揚感は実に捨てがたい。幾多のミュージシャンが心血を注いだ作品には、それを享受する側も襟を正して向かいたい。なんて言ってると、この古臭い頑固おやじと思われそうだが、一事が万事、人が創り出したものに真摯な態度で接することが、この時代だからこそ大切な気がします。受け手の心音が亡くなった偉大な音楽家にも伝わり、音を通じて様々なコミュニケーションが楽しめます。レコード、CDには曲の解説、エッセイ、演者のプロフィールが掲載されておりそれらを読みながらの過ごし方も曲をより味わい深いものにしてくれます。そして何といっても様々な工夫を凝らしたであろうジャケット。特にレコードのジャケットはたまりません...まるで絵画を観てるかのような秀逸なものに接すると忘我の境地までいっちゃいます。

最近、レコード回帰の動きが出ています。歴史は繰り返す、ハイテクからアナログ、この世界も商売ですから流行に惑わされることなく、しっかりと心で捉えたいものですね。

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正月は明けましたよ

2023/01/04
【第1701回】

明けましておめでとうございます。

 

今日が仕事始めです。年末年始は我が家でゆっくり過ごしました。たまにテレビを見ると、なんだか人の死に触れた番組に多く遭遇しました。愛した妻が若くしてガンで亡くなり彼女と交わした手紙のやりとりを読み返し「もっと優しくしてやればよかったと...」つぶやく85歳の男性。同じく50歳でガン闘病の末に亡くなったロックシンガーの壮絶な生き方、その彼の日記には「自ら命を絶つ奴の命、俺にくれ!」そうなんです、こんな時代だからこそ命の重み、大切さが問われます。ウクライナ侵攻によるロシア、ウクライナの人たちの理不尽な死を始め、世界には人類の叡智で充分に防げる死があまりにも拡散してることには唖然とするばかりです。

昨日も、仕事でお付き合いしてる方のご子息が33歳の若さで亡くなったことを知らされました。考えてみれば生と死は背中合わせ、生を授かった瞬間から死も約束されてます。長く細く生きるのか、太く短く生きるかは己の生き方次第です。出来れば太く長く生きることが出来れば、ある程度生きててよかったなんて充実感を味わえるんじゃないのかな...

1週間振りの新宿、いつものように街は賑やか人達で溢れかえっていました。こんな当たり前な平和がいつまでも続いて欲しいと思う反面、いつ日本が戦争に巻き込まれてもおかしくないという危機感も抱きました...平和と戦争も背中あわせなんです。

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年始に唄う、吟遊詩人