トムプロジェクト

2021/01/29
【第1439回】

「モンテンルパ」今日と明日の2ステージを残すのみとなりました...関係者皆さんの猛烈な自覚の賜物でここまで来たと思っています。いつも葉書にびっしりと感想を書いてくださるOさんから今回も届きました。

 

昨今、自粛が叫ばれ、外へ出ることも、人と会うことも少なくなった折に、劇場でこうした心に残る芝居に出会えることはまことに幸運なことです。人の生死を考えるにはまたとないきっかけですから。疫病で死者が出てもあまり動揺するでもない世間の鈍い反応を見ていると戦争に駆り立てられて行った当時の世相も、知らないうちに限られた者たちの決断によって不幸がまき散らされ、その尻ぬぐいをさせられるのは名もない人々であったのだと思いながらも、自分たちの責任を全うしないのも名もなき我々だと考えてしまいます。芝居を続けるには困難な事情が山積するなか、こうした心に訴えてくる話を世に問うご一同様の見識に頭が下がります。

 

この状況の中、しっかりと観て頂き感想を述べられる方々が居る限り我々も芝居をやり続けます。昨日は昼と夜の2回公演でしたが、役者も気合い十分、舞台で渾身の演技をしておりました。この気持こそがコロナを寄せ付けない要因かも知れません。

帰りには雪がチラホラと降っていました...厳しい冷えであったのだが、何故か暖かさを感じました。役者の熱気がそのまま、おいらの心身に残り火みたいに居留してたんですね。

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池袋西口

2021/01/27
【第1438回】

こんな時期に何で又?とお思いでしょうが、昨日から3月初旬に始まる「たぬきと狸とタヌキ」の稽古が始まりました。只今公演中の「モンテンルパ」も弾みがつき3ステージ目を迎える中、錦糸町の稽古場に...稽古前のPCR検査も無事済ませ(何とかなりませんかな...芝居やるごとに何度かやる検査、結構お金がかかって大変でございます。GoToばかりに忖度してアートの方には冷ややかな気がしてなりませんがな)キャスト、スタッフ元気な姿でほっといたしました。この作品は昨年6月に上演する予定だったんですが、コロナ禍の中、中止になった舞台です。なんとかやれないものかと奔走した末に実現しただけに皆嬉しそうでした。役者はやっぱり舞台に立ってなんぼの世界です。大御所Mさんも言っとりました。「芝居やってないと酒飲みのただのおっさんやね...」このコロナ禍で舞台に立てる喜びを一段と噛みしめた役者はたくさんいると思います。

「たぬきと狸とタヌキ」は「モンテンルパ」とは全く違う作品だけに楽しみです。え?こんな作品も創るんだ!なんてところが芝居屋の面白いところです。芝居なんて所詮、いかにお客様を裏切り騙すかってことですからね...騙し騙され、しばし日常を忘れさせてくれるなんて素敵じゃないですか!そして、この芝居自体が騙し騙されての話になってるんですから興味津々でございます。でも、下手な技では「ホンマに騙された!お金と時間を返せ...」なんてことになっちゃいますからね...とにもかくにも、3月の初日に向けてコロナに負けずに精進あるのみ。

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稽古初日

2021/01/25
【第1437回】

先週23日(土曜日)、「モンテンルパ」無事初日を迎えることが出来ました。見えない無気味なコロナに脅えながらのキャスト、スタッフの日々を思うと感無量です!そして、緊急事態宣言の中、劇場まで駆けつけたお客様には唯々感謝あるのみ!いやいや、大変だと思いますよ...初日は19時開演21時終演だったので20時過ぎの不要不急の外出自粛に触れちゃいますので、かなり躊躇されたのではなかろうかと推測いたします。それでも来てくれるんですから、まさしく応援団。そんな熱い応援に応えるべく役者の皆さんは入魂の演技で答えておりました。勿論、熱演即いい芝居ではございません...でも、前代未聞の状況の中で演じる役者の内面はただならぬものがあると思います。

初日に比べ、二日目の舞台は更にグレードアップされていました。まさしく芝居は生き物。危機を乗り越え舞台に立てる喜びが役者の身体に憑依し見違える芝居に仕上がっていました。劇場を後にするお客様から「元気もらえました!」なんて言葉を掛けられると、いや、こちらこそと言いたいところです。コロナが収束した数年後には、きっと昨年末から今年の初めの舞台は一生忘れることが出来ない貴重な財産になっていると思います。

まだまだ油断禁物、明日から30日まで舞台は続きますので気を引き締めて参りましょう。

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無事幕が開きました

2021/01/22
【第1436回】

緊急事態宣言が発令中、2本の芝居を観劇しました...1本目は神奈川芸術劇場で上演された「セールスマンの死」、2本目は下北沢ザ・スズナリの劇団ONE OR8「グレーのこと」両作品とも再演なのだが、初演と比べて数段良くなっていた。このコロナ禍のなか舞台に関わる人間にとっては、日々不安の中で如何に表現していったらいいのか?その苦悩、逡巡がより優れた舞台成果に繋がったのではないかと思う。

この状況の中、演劇は大きな矛盾を孕みつつ存在自体が厳しく問われている気がします。この時期に「どうぞ来てください!」と力を込めてお誘いできない歯がゆさが全てを物語っているのではなかろうか。劇場は会話をすることもなく観客は検温と消毒を済ませマスクをかけておとなしく観ているだけで何ら危険性はないとは思うのだが、「緊急事態宣言が出てるのに公演するのがおかしい!」「こんな時期に行くなんて信じられない」なんて仰有る人達が居るのも紛れもない事実です。

昨日の小劇場ザ・スズナリは座席の間隔を空けながらもほぼ満席だった。芝居をやる人間にとってこんな嬉しいことはない。こんな時期だからこそ演劇にエールを送りたい!芝居を観て未来に繋がるヒントを得たい!こんなアクティブな人達に支えられて芝居が成立してることを再確認した日でもありました。役者は観客の息遣いにより気づかされ成長していく生き物であり、演劇に関わる人達は全て、劇場に足を運んでくださる人達に最良のプレゼントを手渡したい!と言う一心で日々研鑽しているのでございます。

明日、「モンテンルパ」幕が開きます。

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下北沢の夕景

2021/01/20
【第1435回】

寒い日が続いています...酒飲みの老いたる輩にとっては、コロナの影響でそうそう簡単に酒場に足を運ぶことにためらう日々でございます。そんな今日この頃、家に帰り一杯やりながら旅番組を観ることは暫しの憩いのひとときです。旅好きなおいらの好きな番組にNHKBSプレミアム「世界街歩き」があります。この番組の良いところは歩き目線でカメラを移動させるところです。今まさに視聴者が街を歩き異国の見知らぬ地を散歩してる気分にさせてくれます。昨日はイギリスのヨークという町の街歩きでした。ヨーロッパの街並みは古い建築物が今なお立ち並び歴史を感じさせてくれます。まさしくいにしえの匂いがプンプンと立ち込めています。住人もその歴史に尊敬の念を抱きながらゆったりと暮らしているさまに人生の豊かさを感じます。このヨークの街にある古きパブが経営困難に陥ったときに、180人の住民が株主になり店を立て直し憩いの場として酒を飲みながら、それぞれ好きな楽器を持ち寄り演奏会を繰り広げているシーンは何とも素敵でした。

もう少しゆったり過ごしましょう...お金も大切だけど、一度きりの人生もっと大切なことがあるんじゃないかしら?団体旅行じゃなくふらりと旅してみませんか...いろんものがいろんな形をして視えてきますよ。そしてなにが自分にとって大切かということを教えてくれますよ。若い頃、世界あちこちを放浪したおいらが言うんですから間違いありませんことよ。

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春の兆し

2021/01/18
【第1434回】

今週も幕が開きました...先ほど「モンテンルパ」関係者30名ほどのPCR検査の結果が出ました。全員陰性。今週23日から始まる本番に向けてのGOが出ました。いやはや、ハラハラ、ドキドキ身体が持ちませんがな...この段階で陽性者が一人でも出たならば公演は中止。既に発注した大道具、小道具、衣装すべて無駄になり人件費も含めると大赤字になっちゃいます。そんなリスクを背負いながらの日々、ほんまにコロナちゃんいいかげんにしーやと言いたいところですが、欲塗れのニンゲンには徹底的に反省を促す勢いでございます。今日陰性が出たからといって安心は出来ません。明日以降にもメンバーの誰かが感染してしまったらアウトでございます。今日も新宿は相変わらず多くの人達が行き交っています。正直言ってどの顔にも危機感は感じられませんな。もう、政治家の意見なんて今や馬耳東風、だってあの総理のスポークスマンが辻褄合わないこと言ってるんだもん。「ランチはみんなと一緒に食べてもリスクが低いというわけではありません」どっちやねん!飲食店全店休業と言いたいところだが補償もせんといかんのですべて曖昧な言い回しでお茶を濁す始末。行ったり来たりの、ゆや~んゆよ~ん状態は今後も続くと思います。

ラグビートップリーグも延期、大相撲も横綱休場で貴景勝に期待がかかったんですが、ころころと土俵をころがっています。ちょいと太りすぎですな、なんだかロボットみてるみたい。

国民みんなが落ち込んでますんで、ここは颯爽と空気を変えるヒーローが出てきて欲しいもんでございます。

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冬の暮

2021/01/14
【第1433回】

綿引勝彦さんが亡くなりました...トムでは2009年に「逝った男の残したものは」に出演していただきました。あのこわもての顔とは裏腹に、とってもナイーブで優しい役者さんでした。舞台出身の役者さんだけあって芝居に対する厳しさも人一倍強いものがありました。今でも熊本の旅公演で、お酒を飲みながら馬刺しに舌鼓を打ってる嬉しそうな笑顔が忘れられません。悪役から優しいお父さん役までの幅広い演技は、綿引さんの一見人を寄せ付けない風貌を武器にしながら、しっかりと人間観察をしていたんだと思います。2008年にトム・プロジェクトが第43回紀伊国屋演劇賞団体賞を受賞した時に、奥様でもある樫山文枝さんも個人賞を受賞され、受賞会場で共に喜んだ日も良く覚えています。そして受賞から数日後、綿引さんから美しい花が送られてきました。デンドロビウムというラン科の花なんですが、なんとなんと毎年春の訪れとともに愛らしい花を咲かせてくれるんです。肥料も与えず水だけで11年間トムのベランダに今尚鎮座しております。その生命力、チカラ強さは綿引さんと同じだなとおいらなりに感心していました...なのに、逝ってしまったんですね。おいらと同学年であっただけに同時代の話も出来た人でした。でも、これだけ役者としての業績を残されれば悔いはなかったのではと思います。死して尚、綿引勝彦の生き方、演技は多くの人の記憶として刻まれ残ることも紛れもない事実です。

今日も綿引さんの笑顔を想い出しながら、会社のベランダのデンドロビウムに水をあげますね...本当にお疲れ様でした。

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おつかれさまでした

2021/01/12
【第1432回】

週末は不要不急の外出を控えました。こんな日は家で軽い体操をし、コーヒーを一杯。まずは新鮮なコーヒー豆を手廻しのミルでガリガリと豆が砕ける感触を味わいながら、立ち上がる芳しい香りに包まれる何とも心地よい良いひとときでスタート。この感覚を持ち得た時こそ、おいらも心のゆとりを持っているんだな~と実感するのでございます。次は抽出、ここはやはりネルドリップ、ネルフィルターを使うとコーヒー豆に含まれるオイル成分が多く抽出され、少しとろりとした滑らかな舌触りと豊かな芳香を楽しめるんですよ。挽きたての粉に湯が染み入り、コーヒー豆に含まれるガスが放出されて粉が膨張し、ふっくらと膨張する様がたまりません。こうして時間をかけて入れたコーヒーには、やはりそれに相応しいカップが必要ですね。琥珀色をしたコーヒーにはやはり白磁が似合いそうですね...あの魯山人も言っとります。「器は料理の着物」折角、心込めたコーヒーにもお似合いの器を用意してあげないと申し訳ありません。あとは、その日の気分にふさわしい音楽を聴きながらしみじみと手間暇かけたコーヒーを堪能するのでございます。

ここまで来たらアナログ世界に浸りましょう...レコードに針を落とし、知る人ぞ知るシャンソン歌手シャルル・デュモンなんていかがでしょう。エディット・ピアフとの繋がりが深い歌手なのだが、彼の深く語りかける唱を聴きながらのコーヒーは滋味深いひとときになること間違いありません。

てなことで、不要不急の有事をおいらなりに過ごしてみました。

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神さん頼みまっせ!

2021/01/08
【第1431回】

緊急事態宣言発令...どんよりと疲れ切った眼で相変わらず原稿を読みながらの頼りない姿。これがこの国の政治の現状を象徴しています。この有事に国会を閉め、当たり前のように給料、賞与をもらってるあんたら恥ずかしいと思いません?これは与党も野党も同罪です。市井の人達はコロナ禍の中、必死で生きてます。医療関係者は命懸けなんです。なのに議員は4人までの飲食にしましょうなんてルール作りに頭を悩ましています。ほんまにアホですバイ。コロナが発生してから1年間何やってたんでしょうかね...ムニャムニャ幹事長に忖度し又もや振り出しに戻りました。もはや、政治家の意見なんて聞く耳を持たず、今日も相変わらず繁華街では危機感を持たずちんたらしている人も随分見受けられます。今日から20時閉店なので昼間から密に飲んでる人達が居るのも事実です。ここまできたら一人一人の自覚に希望を持つしかありません。飲食店も大変でしょうが、おいら芝居屋も、タクシーの運転手も、介護施設も、衣料店などなどすべて必死豆炭でございます。飲食店一律1日6万円保障というのもなんだか大雑把でしっくりきません。一人で5,6人しか入らない店なんかは得したなんて言っとります。一事が万事、なにを信じていいやら?本当に情けない。でも、そんな政治にしたのも国民の政治に対する無関心から生じたことなんですよ!そのことを肝に銘じない限りこの弛んだ状況は一向に変わりません。取り敢えずは、次回の選挙で今ここにある危機に対してハッキリとした意思表示するしかありませんね。

今日も23日の初日に向けて「モンテンルパ」の稽古に励んでいます。何とか観客の皆さんが安心して芝居を観れる環境になって欲しいと願うばかりです。

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今日の新宿西口の夕景

2021/01/06
【第1430回】

年末年始、久しぶりに自宅で「男はつらいよ」を3本ばかり観ました。改めて渥美清という役者の凄さを再認識した次第です。演技は間が命です...間は魔と同義、上手い役者はおしなべて間がいいのでございます。そしてリズム感、立て板に水を流すが如くのテンポ、そしてアーティキュレーションの良さ、聴いてる人はまるで音楽を楽しんでいる心地よさを感じてしまいます。このしゃべくりに完全にはまってしまう。そして一度観たら忘れることが出来ない顔立ち、細く小さな目であるのだが実に細やかに演じているのには恐れ入りました。まさしく、目は口ほどに物を言うことを見事に体現していました。そして、彼の実人生で体験した蓄積が芝居のあちこちに見え隠れしていました。若い頃の肺結核、浅草のストリップ劇場の下積みなどなど、病と闘いながらも人間の営みをしっかりと観察し自分の身体に蓄積していったに違いありません。何度も言いますが、役者は生き方そのものがありのままに現れる恐ろしい生業でございますから心して日々の生活をなさってくださいまし。

この「男はつらいよ」ほとんど観ているのだが、話はいつもの流れ、しかしこの映画が長く継続されたのは昔の良き日本の風情をこれでもかと描いてるところかな。そして家族に対する深い愛情、分かっちゃ居るけど思わずホロリとさせちゃいます。日本人の欲する真髄を憎たらし程心得ている山田洋次監督...おいらはこの監督の作為的なとことは昔から疑ってかかってはいるのだが、まあ映画はあくまでも娯楽なんですから、ここまでヒットさせる有能な職業監督であることは認めています。この監督よりも、同時代を生き昨年亡くなった森崎東監督の方が好きです。この「男はつらいよ」最初の原案は森崎東さんだったんですよ...この監督の描く人間像が、骨太で愚鈍で正直で不器用なところが信じられるから好きなんです。

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今日の冬空

2021/01/04
【第1429回】

あけましておめでとうございます。

 

新しい年が始まりましたが、コロナ感染が収束する気配はありません。今日も頼りにならない政府は緊急事態宣言を出すかどうかの議論が続いています。トムも今日から1月23日からの公演「モンテンルパ」の稽古再開です。トムは勿論、キャスト、スタッフ、そして観劇を予定されてるお客様の不安が高まる中でのスタートになりました。トムとしては劇場が封鎖されない限り、前向きに初日に向かって全力で走り続けたいと思っています。

年末年始、おいらはどこにも行かずのんびりしていましたが、たまにテレビを観ると正月恒例の福袋に、箱根駅伝の応援にワンサカ人の波...ここまで来たら、人はコロナに、もはや諦観の域に達しているのか、それとも己の我欲に支配されての行動なのか、この国の曖昧さの特性がそのまま表現されてる気がします。以前から言われているコロナによる死と、経済による死、この狭間で国も民衆も揺れ動いている1年だった気がします。このスポンジみたいな在り方は平和な時代にはとても有効な気がしますが、非常時においては有効な手段にはなり得ないのではないか...やはり、この国には秀でたリーダーが不在なのがまたしても浮き彫りになった。でも、そんな他人様のことを論評してても埒があきません。

演劇を生業にしてるおいらとしては、今年もあらゆるリスクを背負いながらも、何とか芝居の魅力を全国各地に届けることだと思っています。昨年の年末に公演した「砦」に参加したキャスト、スタッフ、観客の胸に迫る思いこそが芝居の醍醐味だと改めて確信したからこそ、今年も張り切ってやりまっせ!何卒、よろしくお願いいたします。

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今年は良い年に!