トムプロジェクト

2021/02/26
【第1451回】

昨日、埼玉県志木市民会館パルシティホールで「たぬきと狸とタヌキ」の公開舞台稽古をやってきました。昨年の9月から再開した3本の芝居はジャンル的にも、どちらかと言うと硬派という印象が強かったのだが、今回の芝居はコロナ禍のなかで狐とタヌキの騙しあい風のコメディに仕上がっています。この窮屈で何とも重苦しいご時世、笑い飛ばしてすっきり劇場を後にして頂ければと思っています。さすがプロという榊原、岡本両ベテランの丁々発止の掛け合いに小林、生津、カゴシマが入り乱れ、人間関係をより複雑にしていく運びはエンタメ演劇の王道ではないだろうか...観客を入れての初めての芝居は役者さんとっても緊張するもんでございます。ここはベテランも若手も一緒です。思わぬところで笑いが起きたり、受けようと思ってたところで反応がなかったりと、役者は薄氷を踏む思いで板の上に立ってるんでござんすよ。きっと心臓がパクパクとしていることでしょう...台詞が出てこなくなったときに巧みに誤魔化し危機を乗り越えていく様を見届けるのも、プロデューサーとして別の意味での楽しみですね(ちょいと意地悪な鑑賞方かな)そして、この日は、劇場での観劇が叶わないお客様にも、作品をお届けできるようイープラスの配信サービス「Streaming+(ストリーミングプラス)」での映像配信のカメラも入っていたので余計に緊張していたのではないかと思います。

今日の東京は肌寒い曇り空、白い可愛い梅の花もチラホラと散り始めていました。

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白梅

2021/02/24
【第1450回】

祝日開けの今日、またまた如月に相応しい気温になりましたが春は確実にやってきています。梅があちこちで咲いており、それにつれて人の外出も増えだしております。ここで油断するとコロナ第四波がやってきますぞ!と各々が自覚しないとコロナエンドレスなんてことになっちゃいますね。

最近TVでよく旅番組を見るんですが、なんだかホッコリするシーンが多くて豊かな気持になってきます。昨日観たラオスのビエンチャンの庶民の表情、邪心なんぞ感じません。世界遺産もなければ高層ビルもない、なんともゆるい街です。舗装されていない道を走る乗り合いバス、バイク、信号なんぞもあまり見かけません。乗り合いバスの運転手が荷台につるしたハンモックで昼寝してる姿なんぞは笑っちゃいます。おいらが過ごした昭和30年前後の博多の街にも似た感じがありました。お金なんかよりも大切なものがあった時代です。貧しくとも身近なものに感謝し、ささやかな喜びを見いだし生きている様に、人間本来のあるべき姿を見る思いです。すべての先進国が捨て去った不便さに、もういちど光を当てれば少しは平和を取り戻せるかも知れませんね...なんでせわしく、ぎすぎす、他を気にして生きなきゃならんのよ、ほっこり、のんびり過ごせばストレスなんか寄ってきませんがな。

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都庁裏の庭

2021/02/22
【第1449回】

暖かい日が続いています...先週の週末、劇団チョコレートケーキの「帰還不能点」を観てきました。なぜ日本は敗北を予想しながら、敗戦の道を辿る対米戦に踏み切ったのか。9人の男優が、亡き同僚の三回忌に奥さんが経営する居酒屋に集まり、劇中劇形式で時に笑わせ、時には激高しながら、当時の有様を息もつかせず展開していく。人間としての良心と責任を語り合うラストは、時代を超えて今に生きる人たちへの確かなメッセージとなっている。

今や教育の現場で教えられない戦争にまつわるエピソード、若い人達に是非観てもらいたい作品でもある。年明けて観劇する作品、ことごとくクオリティーが高い作品ばかりである。

コロナで苦しめられてる演劇人の何とかせねば!という気合と志の高さが垣間見えて嬉しい限りだ。まさしくコロナごときにくたばってたまるかという創造者たちの更なる前進に拍手を送りたい。そんな刺激的な現場に、どうぞ劇場に来て下さい!なんて言うことも緊急事態宣言下の中では恐縮するのだが、そんな中でも人間の尊厳を切々と訴える役者の姿を観てるだけでどれだけ勇気を貰えるか、どうかあなたの身体で感じてくださいな...勿論、中にはつまらんものもありますからその時は許してちょんまげ。

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初夏の様な今日の空

2021/02/19
【第1448回】

オリンピック組織委員会の会長に橋本さんがなったのは仕方が無いにしても、この人もオリンピック開催ありきを口にしている。国民の多くの人、そして国際的にも疑問視されているにも拘わらずどうしてもやりたいんですな...その皺寄せが我々演劇関係者を含むアートの分野に暗い影を落としつつあるようだ。夜の公演の制約、客席を半分に制限などなど、オリンピック開催の犠牲になるなんてとんでもない話だ。アメリカの大統領も言ってるじゃありませんか「五輪開催は科学に基づいて判断」と。コロナ収束無くしての開催はあり得ない話だというのに、開催ありきの進め方にはどうしても納得できない。そして話題の女性トロイカ体制で果たして上手くいくのか?三本木のオッさんの院政はないのか?いずれにしても、オリンピックごり押しでまたまた悲鳴を挙げなきゃならないなんて、ごめん被りたいもんでございます。

春の足音が日増しに聞こえてきます...鳥の声も一段と高らかに、木々の蕾もニョッコリと、川のせせらぎも太陽の光を浴びながらキラキラと輝いています。おいらはこんな風景を感じながら夕陽を眺めるのが大好きです。今日も一日、平穏無事に暮れていく景色に唯々感謝。

夕陽に向かって「明日も頼みまっせ!」と手を振りたくなります。

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今日も一日ありがとう

2021/02/17
【第1447回】

なかなか外でお酒を飲めない昨今、何気なくテレビで観た映画が当たりだと嬉しいものだ。先日観た「127時間」なかなか面白い作品でした。登山家アーロン・ラルストンが体験した実話を監督ダニー・ボイル、ジェームズ・フランコ主演で2010年映画化したサスペンスドラマ。なんと2011年第83回アカデミー賞の作品賞、主演男優賞にノミネートされてたんですね。アメリカ ユタ州にあるブルージョン・キャニオンという名の渓谷で岩壁のロック・クライミングを楽しんでいる際に、上から転がり落ちてきた大きな石に右腕を挟まれ そのまま見動きがとれなくなるという、なんとも不運としか言いようがないアクシデントに見舞われ、それから127時間残り少ない水を飲みながら過去と妄想と苦悶を彷徨いながら、なんと中国製の安っぽいポケットナイフで挟まれた右腕を切断して脱出すると言う話なんだが、カメラワーク、音楽のセンスの良さでなかなか飽きさせない。腕を切り落とすシーンは、さすがに目を背けてしまう程の痛い!痛い!痛い!のシーンでございました。それにしても岩に挟まれたこの場面だけでここまで膨らませていく映画人の創意工夫に拍手を送りたい。

今日から国内でワクチンの接種が始まった。テレビでライブ中継してるのにも驚いた。それだけ歴史的な事件だということだ。とにかく一刻も早くコロナ禍の収束を願うばかりだ。芝居も安心して出来ないし、老舗のお店は潰れるし、もうこれ以上悲しい気持にさせんで欲しいわ!しかし、このコロナ君、確かにこれからの新しい生き方の指針を指し示したことは間違いない事実だ。当たり前のことだが何事もバランス、どっちかに偏ると異常な現象が起こるってことを忘れませんように...

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アンコ椿は恋の花

2021/02/15
【第1446回】

いやいや、10年巡って再び、13日の地震には驚きました。東京もかなり揺れましたね...天災は忘れた頃にやってくるなんて言葉がありますが、10年前のあの爪痕はまだまだ記憶にしっかりと残っているだけにショックは大きかったと思います。こうなりゃ、もういつ来てもおかしくないという心構え、準備をするしかない。

この日の昼間は、天気も良かったので久しぶりに井の頭公園に行ってきました。コロナで縮こまった心身を解放すべき多くの家族、カップルが穏やかな日差しを浴びながら平穏な時間を楽しんで居ました。平和だから、健康だから持ち得る幸せなひととき、このありがたさを享受出来ることに感謝すると共に、どうしたら継続できるかを真剣に語り考えねばならないと思います。偶然に出来た平和ではないし、先人が汗と涙と、そして時には血を流しながら獲得した平和だからこそです。池を泳ぐカモたちも、憂き世のコロナ騒ぎを知ってか知らずかスイスイと気持ちよさそうにはしゃいでおりました。

帰りの電車の中で中年のカップルがいちゃついておりましたな...といっても二人でお手々を濃厚に触りながら囁いているだけなんだが、となりのオバサン嫌だったのかな?他の席に移動しました。人間観察が好きなおいらはなんとなく観ておりましたが、これは夫婦ではないなと見ました。まあどちらでも良いのだが、電車の中は公衆の場でありまして、先ずはマナー重視といきましょう...そのちょっとした仕草で、殿方淑女の生き方全てが出ちゃうんですぞ。いくつになっても、男も女も粋じゃなきゃね...

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春を待つ井の頭公園

2021/02/12
【第1445回】

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長辞任、その本人が川淵氏を指命したのだが密室と非難され川淵氏も辞退。昨日の夕方自宅前で「人生最後の仕事だと思って、どんなことがあってもオリンピックを成功させます」と決意表明したばかりなのに...なにやってんの?何だか義理人情の古くさいドラマを見ているようであったのだが、今度は政治の介入。ほんまにこの国の体質はいつまで経っても変わりません。今度は女性じゃなきゃなんてご都合主義的な発言をする人も現れ、急に女性をクローズアップさせるなんておかしさ百倍になってる感じでございます。自民党も、都知事も風見鶏、様子を窺い、ここぞというタイミングで庶民を味方に付ける手法も見え見えでたまりませんばい...一体全体、この状況の中で本当にオリンピックが出来ると本気に考えてる人がいるのかな?世界の国のオリンピックに対する意見もいまいち伝わってこないし、第一アスリートは選出されてるのでしょうか?そんな記事みたことありませんがな。どの国もコロナでそれどころではないのに絶対やるなんてことを喋ること自体が可笑しくありません...最近のオリンピックは金塗れ、アメリカのNBCが多額の放映権を持っているのをはじめすべてが金絡み。この際、冷静にオリンピックなるものを再考するいい機会にしたいもんでございます。

オリンピックを夢見ながら試練に耐えたアスリートの方々には大変残念なことだとは思いますが、コロナが世の中の不条理に刃を突きつけている今、ここは未来を見据えてすべての人が真摯に思考し行動しなければいかんと思います。

何年経っても、同じ風景、光景をみせられて、ほんまにこの国変わるんかいな???

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梅は咲いたか~ 桜はまだかいな~

2021/02/10
【第1444回】

世界がコロナで大変な時期、おいらの第二の故郷スペインも、もちろん非常事態であるに違いない。でも、おいらの想像だが以外にものんびり明るく暮らしているのではなかろうか?あのキンキラした太陽のもとで暮らしてる人たちには何ともマスクがお似合いではなさそうだ。美味しいものを思いきり食べて、楽しい会話をたくさんして(人の話を聞かないでまずは自分が喋りたいことを優先するのが大前提だが)愛する人とこれでもかというぐらい愛し合ったならば死んじゃっても、悔いは無しなんて思ってるんじゃないかしら。いや、そうした方がコロナに勝てるに違いないなんてぶっ飛んだ発想で生きているに違いない。そんな国だから、ピカソ、ダリ、ガウディなんてとてつもないアーチストが生まれたんですな。

特においらが長年住んでたアンダルシアの人達に至っては、コロナさえも日々の祝祭として大好きなワイン、シェリー酒飲みながらバルで陽気に過ごしてるに違いない。

苦労して、悩んで、ストレス溜めながらの人生よりも楽しく人生を終わらせたい!そうは人生上手くいかないとしても、考え方としては正解ではなかろうか...

コロナ確かにやっかいですけど、あんまり煮詰まった思考ではほんまに疲れますがな皆の衆。

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スペインアンダルシア

2021/02/08
【第1443回】

週明けの東京は昨日に比べ寒い日となりました。まさしく三寒四温、春の足音が近づいていることは確かです...先週の週末、座・高円寺でトラッシュマスターズ「堕ち潮」観てきました。休憩挟んで3時間20分という大作です。この非常事態宣言下のなか、硬派の芝居を長時間上演するってことは余程自信があってのことでしょう。政治家の談合あり、差別問題あり、南京大虐殺を巡る教育など、いくつもの問題点を速射砲のごとく撃ってきます...この手強い弾を15人の役者が上手く捌いています。捌くというより自分の言葉にしているので時間を感じさせません。それぞれの役をきっちりと生きているんでしょう...この日は30分の間を置いて2ステージ目をこなすんだから頭が下がります。すべての演劇人が危機感を抱きながらステージをこなしてる様が目に浮かびます。

コロナの感染者数が下がったと言われても未だに不安感は払拭できない気がします。オリンピックに向けての数の操作かもしれないし、GoToトラベルの再スタートのための数合わせかもしれないし、とにかく不信感極まりない政治、行政のやることだし不透明としか言いようがない状況であることは間違いない事実です。救世主であるはずのワクチンだって半信半疑...この世の中、何が真実なのか?今日もメディアでピーチクパーチクいろんな分野の人たちがつぶやいております。この人たちにとって、コロナは飯のタネなんでしょうね。

コロナ特需で喜んでいる人達、逆に泣いている人達。まさしく人生いろいろでございます。

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裸木

2021/02/05
【第1442回】

今日も東京は良い天気、春が間違いなく近づいています...「モンテンルパ」が終わるやいなや、「たぬきと狸とタヌキ」の稽古もピッチが上がっています。2月25日には埼玉県志木市で公開舞台稽古をやります。俳優という職業つくづく大変な仕事だと思いますね。あんな膨大な台詞を短期間で覚えての真剣勝負なんですから心身とも休まる暇がないのでは...役を創る過程での模索の中、一度、ダメでもいいんだと覚悟したときにふっと楽になり思わぬチカラが沸く瞬間があるのではといつも思う。開き直りとも違う、これぞ余分なチカラを抜くと言うことではないかしら。心身が解放された時に無敵になるってことかな...所詮、うまくいこうが、うまくいかなかろうが己は己以上でも以下でもないありのままの姿でしかないんだから。脱力こそが人生を楽しく生きる智恵なのではないでしょうか。

それにしても三本木のおっさん、完全に耄碌してるんじゃないかしら。昨日の記者会見、全然謝罪の気持皆無。むしろ俺は被害者と言わんばかりの憮然とした表情でございました。そんな老害者に対して現内閣の閣僚一人として辞任を進言しないんですから呆れて言葉も出ませんがな。都知事のオバサンも言わんかい!まあ、両者ともオリンピックの実績を歴史に刻みたいがために、権謀術数を弄しながらの様子見をしてるんでしょうな。ジェンダー・ギャップ指数、日本は144カ国中121位、何とも恥ずかしいお国でございます。政治は世襲、老害議員が睨みをきかせ、他の議員は口出しも出来ない有様。受難のこの時期に、公僕たる議員の給与削減すら出てこない政治屋には呆れるばかり...これは野党も共犯でござりまする。特権意識ぷんぷんの輩にはアチャ、困ったもんでございます。

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新宿の夕景

2021/02/03
【第1441回】

昨日は節分、おいらも豆まきいたしました。窓を開け「鬼は外、福は内!」こんな時期ですからコロナのことを考えながら思いっきり豆を放り投げた次第です。恵方巻も南南東に向かいガブリとやりました。おいらは神頼みというやつはしたことがなく、神社仏閣に行っても手を合わせ「生かして頂いてありがとうございます」と感謝の言葉をつぶやくだけです。でも、今年は豆に託してコロナ退治も必要なのかもしれませんね...緊急事態延長なんてことになってしまいました。庶民は日々一生懸命にまじめに行動してるのだが、政治家どもはいい加減な輩ばかりです。ほとんどの人が信用してないんじゃないかしら?そして又もや、補償金のいい加減さに怒髪天。相変わらずアートの世界もほったらかし状態でございます。客席は半分、外出自粛じゃ赤字公演は自明の理。それでも劇場に足を運んでくれるお客様はほんまに神様でございます。

あの養老孟子さんも言っとります。「都市の解毒剤」としてアートが存在してきたのではないか...けだし名言、ウイルスに汚染された時の特効薬はアートだと思います。「モンテンルパ」に来ていただいたお客様にこんな言葉がありました。「芸術がないとお肌もボロボロ、心もガサガサになって早死しちゃいます!芸術は人に生きる喜びを与えてくれます。」なんと嬉しいお言葉でしょう...勇気凛々、コロナが吹き飛ぶような芝居創らんといけませんな。

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新宿のオブジェ

2021/02/01
【第1440回】

先週土曜日「モンテンルパ」無事に千秋楽を迎えることが出来ました...緊急事態宣言下の中での公演が何事もなく無事に終えることが出来たこと本当に嬉しい!何度でも書きますが、キャスト・スタッフの心労いかばかりかと胸が痛む日々でございました。そんな状況での役者は、何故か芝居の神様の魂が乗り移った感さえしました。ラストステージは見事な舞台でした。コロナにもかかわらず劇場に足を運んでくれた皆様も大したもんでございます。この鬱屈した日々の中、舞台から何かヒントをもらえるのではないか?いや、こんな時こそ舞台人を援護したい!様々な思いを抱きながら来て頂いたのではないかと思っています。

終演後、普段であればおいしいお酒と食事で打ち上げをやるのですが、この状況では無理です。ロビーで軽く三本締めで締めました。勿論、再演を願って...

おいらは初日から舞台後方で芝居を見続けていたんですが、劇場に昨年亡くなられた大和田獏さんの奥様、岡江久美子さんがいらっしゃる感じがしてなりませんでした。今回の公演が成功したのも、きっと岡江さんが見守ってくれたに違いないと思います。劇場には目に見えない多くの舞台の先人が住みついています...カーテンコールでの獏さんの挨拶が何故か岡江さんに向かって「ありがとう!」と言ってるように見えました。

コロナに負けてなるものか!次ぎの芝居に走り続けます。

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東京芸術劇場前の広場