トムプロジェクト

2021/01/06
【第1430回】

年末年始、久しぶりに自宅で「男はつらいよ」を3本ばかり観ました。改めて渥美清という役者の凄さを再認識した次第です。演技は間が命です...間は魔と同義、上手い役者はおしなべて間がいいのでございます。そしてリズム感、立て板に水を流すが如くのテンポ、そしてアーティキュレーションの良さ、聴いてる人はまるで音楽を楽しんでいる心地よさを感じてしまいます。このしゃべくりに完全にはまってしまう。そして一度観たら忘れることが出来ない顔立ち、細く小さな目であるのだが実に細やかに演じているのには恐れ入りました。まさしく、目は口ほどに物を言うことを見事に体現していました。そして、彼の実人生で体験した蓄積が芝居のあちこちに見え隠れしていました。若い頃の肺結核、浅草のストリップ劇場の下積みなどなど、病と闘いながらも人間の営みをしっかりと観察し自分の身体に蓄積していったに違いありません。何度も言いますが、役者は生き方そのものがありのままに現れる恐ろしい生業でございますから心して日々の生活をなさってくださいまし。

この「男はつらいよ」ほとんど観ているのだが、話はいつもの流れ、しかしこの映画が長く継続されたのは昔の良き日本の風情をこれでもかと描いてるところかな。そして家族に対する深い愛情、分かっちゃ居るけど思わずホロリとさせちゃいます。日本人の欲する真髄を憎たらし程心得ている山田洋次監督...おいらはこの監督の作為的なとことは昔から疑ってかかってはいるのだが、まあ映画はあくまでも娯楽なんですから、ここまでヒットさせる有能な職業監督であることは認めています。この監督よりも、同時代を生き昨年亡くなった森崎東監督の方が好きです。この「男はつらいよ」最初の原案は森崎東さんだったんですよ...この監督の描く人間像が、骨太で愚鈍で正直で不器用なところが信じられるから好きなんです。

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今日の冬空

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