トムプロジェクト

2023/01/30
【第1711回】

週末は「イ二シェリン島の精霊」を鑑賞。佳作「スリー・ビルボード」を創ったマーティン・マクドナー監督の最新作ということで期待して観に行きました。1923年のアイルランドの架空の島で繰り広げられるオッサン同士の仲違いドラマ。美しいアイルランドの島、荒涼とした土地に暮らす現地の人達の表情、象徴的に登場する動物たち、カメラワークも良し。悪くはないのだが何だか唐突すぎる出来事が沢山出てきます。あんなことぐらいで指をとか...とにかくおいら日本人には理解できないシーンが何度も映し出されるので、こちらも深読みしようとはするのだが、なかなか追いつかない。この映画、映像美におんぶにだっこに拘りすぎた雰囲気芝居で創ってるんじゃあ~りませんか?と思った次第です。2023年のゴールデングローブ賞で作品賞、主演男優賞、脚本賞を受賞したのだが、おいらとしては今一つ推せませんな。

強いて言わせて貰えば、この作品が今の時代に訴えたいことは、ボタンの掛け違えでこんな悲惨で残酷なことが起きてしまいますとの警鐘かな...家庭の崩壊、ロシアのウクライナに対する不条理な侵攻、身近に起こる歪な事件などなど...人はちょいとした勘違い、自分への執拗な拘り、相手との距離感、思いやりのなさで状況は一変し最悪の結末を迎えるってことを表現したかったのかな。

折角、週末の貴重なお金と時間を費やしたので、自分なりの納め方をしないと無駄な時間とお金になってしまいますがな。

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日本の精霊

2023/01/27
【第1710回】

昨日は、今でも博多駅近くにある東住吉小学校の同級生でもある彫刻家、望月菊磨君の個展に行ってきました。半世紀以上にわたり金属彫刻家として第一線で活躍してるアーチストです。田園調布のお洒落な邸宅を改装した「みぞえ画廊」。画廊自体が作品と言っても過言でない素敵な佇まいでした。全国に130か所以上のパブリック作品を手掛けてる望月君、こんなことを話してました。

ある日、大木の下でぼんやり空を見ていると、大木の若葉からこぼれる日の光の淡い緑色の諧調のある透過光が目茶苦茶にきれいで「自然は素晴らしい!」この自然をモチーフにして何かを作ろうとしたり再現しても絶対にかなわないと思ったそうだ。自然のものは自然に任せよう。では自分はどうしたら良いかと考えた時に、人間が人間のために創り出した素材で人間が生み出した技術でものを作り表現することに辿り着く。それは工業製品のようなもので金属やプラスチックを素材にして技術を加えて作品を作る、それも具象ではなく抽象で表現することがよりベスト。そして何かを創るという行為は叩く、曲げる、穴を開ける、削る、溶かすという破壊行為。破壊行為の集積が、ものを創るということであり破壊が創造の原点である...以上が望月君の哲学でございました。

おいらと同級生なんだが、顔の色艶はいいし、東京藝術大学出のエリート臭も全然ないし、良い歳の取り方をしてるなと思いました。高校時代はタモリさんと同じクラスで大の仲良しだったそうだ...トムの芝居にも来てくれる望月君、春になったら一杯やる約束をして別れました。

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望月ワールド

2023/01/25
【第1709回】

10年に一度の寒波が日本列島を襲来し、各地でトラブルが発生しているのだが、今のところ東京は難を逃れている状態です。程よい雪は風情がありますがドカ雪はえらいことになっちゃいますね。特に東京は雪に弱い街なので、大雪と聞いただけでブルッちゃいます。

それにしてもこちらもブルブルどころか嘆き節になっちゃいます...100万円で強盗、殺人の募集をかけ集まった若者が90歳のおばあちゃんを殺してしまう。こりゃ、もはや人間ではありません、獣ですね。いや獣の方がまだ秩序があるような気がします。捕まった若者の一人は生活保護を受けながら過ごしていたそうな。こんな人間を生み出した責任、この国のすべての人にあるような気もします。夢も希望も持てない国にしてしまった責任をもういちど考える必要があります。年老いたおばあちゃんを殴る蹴る拘束して死に至らしめる。しかも金品を奪うだけの理由で...狂ってるとしか言いようがないのだが、彼らにしてみれば命よりも物欲が勝っているんでしょう。

会社の隣に子どもたちの予備校があるのだが、夕方になると迎えにきたママ友が集まり四方山話をしております。名門小中学の受験は熾烈を極め、出来るだけ早い内から予備校に通わないと入学出来ないそうです。遊び盛りの子どもたちの疲れた顔を見る度に、この国も狂ってるとしか思えない。どうみても狂ってるとしか思えないことが、当たりまえに感じる人種が多数を占めると、おいらはますます肩身が狭くなっちゃいます。

時折、街中で年老いた人の手助けをしてる若者を発見すると嬉しくなっちゃいます。こんな人たちにこの国を任せたいな...

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新宿サザンテラス

2023/01/23
【第1708回】

今週は大寒波が日本列島を襲来するらしい...なのにお相撲さんの艶々した肌を見てると、何だかこちらまでポカポカとしてくるから不思議なもんだ。おいらの家の近くにも芝田山部屋があるのだが、時折見かけるお相撲さんのその凛として勇ましい姿とは裏腹に、力士の近くに寄ると、どこか懐かしい甘い香りがする。その香りの正体は、鬢付け(びんつけ)油。力士の象徴ともいえる髷(まげ)を結うためには、かかせない存在なんです。

昨日の大相撲初場所の千秋楽、テレビ観戦しました。横綱不在、大関一人と言う寂しい場所でしたが、ここ最近ユニークな関取が出現し大いに楽しませていただきました。力士らしい力士、若隆景。憎たらしい顔つきだが根性丸出しのモンゴルの星、豊昇龍。変幻自在で忍者相撲で魅了満点の翔猿。その他、阿武咲、大栄翔、宇良なんかも面白い存在。それに反して先場所まで大関だった正代、多くのファンが嘆いておりますぞ。昨日の結びの一番、貴景勝なかなかでございました。連日、鼻血を出しながらの大健闘。あの体つき、ちょいと無理があるなとは思っていたのですが昨日の投げ技で新しい境地を磨いていけば横綱も無理ではありません。優勝インタビューがとっても良かったな。家族への感謝、自分を支えてくれた人達への感謝、すべてに感謝の気持ちが前面に出ていました。

これからの時代、感謝の気持ちがある人が生き残っていくことは間違いありません。この感謝の気持ちが無くなった時に人も国も世界も滅びていきます。今ここに立つ己は如何にして立てているのか...すべからく、生きとし生けるものに感謝でございます。

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ブルブル週間の初日

2023/01/20
【第1707回】

音楽を聴きながら読書する人、静かな環境で本に没頭する人...おいらは半々かな?本のジャンルによっても違ってきますね。今読んでる星野博美さんのエッセイなんかは先日紹介した新進気鋭のピアニスト、ヴァイキングル・オラフソンのCD聴きながら読んでると星野さんの怒りが、オラフソンの軽快にして幻想的なタッチでほどよくブレンドされテンポ良く次のページへと転調していく。

星野さんの怒りは、安さに定評がある「サイゼリア」に行ったときのことである。雨に濡れ冷えたからだで入店し温かいコーヒーを飲みたくてコーヒーマシンにカップを置きボタンを押しても冷たいコーヒーしか出てこないので男性の店員を呼んだところ、「コーヒーマシンが壊れているので冷たいドリンクをお飲み下さい」との返答。すかさず彼女「昨日も壊れていましたよ」と返すのだが、「修理がまだ終わっていませんので」とサイゼリアの男は、まるで星野さんを責めるような苛立ちの顔を浮かべ、安い値段で飲んでるのだから、つべこべ言わずにあるものを飲めよ、とでもいいたそうな顔で立ち去ったそうだ。機械が壊れるのは仕方がない。それを責めてるのではなく、謝ってもらえば気が済む話でもない。ただ、会話が会話にならないことに空しさを感じたそうだ。そりゃそうだ、たった180円のコーヒー、だからこの程度の誠意を示せば事足りる。この店員のそんな無意識の計算があまりにも悲しすぎる。

こんな体験、おいらも何度か経験したことがある。値段を安くしてくれることは客側からすると大変ありがたいことなのだが、価格の破壊が人間の大切な魂までも破壊しかねないことになっちまったら、それこそ主客転倒だ。

ピュア―な魂を保持するためにも、週末も心地よい音楽と読書を程よくブレンドして至福のひとときを堅持したいものでございます。

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遊び心満載のオラフソン

2023/01/18
【第1706回】

この国のセメント副総裁は困ったもんでございます...原発関係で日本の死者は一人も出てないとか、少子化問題では晩婚が原因とか、とにかく何年政治家やってんの?と開いた口が塞がらない。あんたらの未来への無策がすべてツケとなって今があるのに、何の反省もなく愚痴ってるんじゃないよと怒りを覚えるばかりだ。とにかく無能な政治家があまりにも多いのでまずは一刻も早く議員数を減らしてくださいな。辞任続きの大臣に税金払ってる身にもなってくださいなと言いたい。物価はじゃんじゃん上がってるのに給料は上がんないなんていう悲痛な叫びに政治はどう応える?なんて絶叫、連呼してもこの国の政治家のツラ見るかぎり、こりゃ無理ですわ!と、ほぼ諦め状態でございます。

博多の舞鶴にあった名店「さきと」が閉店してました。博多に帰れば、この店の美味しい魚とお酒が楽しみでした。魚と酒の目利きである大将が集めた食材はどれも絶品の味でした。カウンターだけの13席の店は予約を入れないと入れないほどの人気で、もちろん一見さんの入店は無理でした。お客さんとの距離感も絶妙で、お互いに気を遣うことなく酒と魚に集中することが出来ました。博多には美味しい店は数々あれど、この空気感の中で頂く料理は、なるほど西日本の居酒屋番付で横綱と称される価値はあったと思います。

大将は現在入院中とのこと、一日も早く元気になって又、大将が捌いた魚を食したいもんでございます。

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今日の空

2023/01/16
【第1705回】

昨日の15日は、3年前に中国帰りの人からコロナ感染者が日本で初めて出た日でもありました。その日から3年、日本のみならず世界はコロナで振り回される日々でした。それまで当り前のように友人と連絡し、美味しい酒を飲みながら馬鹿話してた時間が吹っ飛んでしまいました。人とのつながりをストップされたのですが、自分を見つめなおす良い機会でもありました。人とはいつだって気楽に逢えるもんじゃないということを痛いほど味わい家で過ごす時間が増え、風来坊気質を持つおいらにとっては、ようやく地に足が着いた生活が出来るようになったのかなとも思えた3年間でありました。

それにしても、この年になるとやはり会えない友人の近況が気になります。若い頃に芝居した仲間も3人亡くなったり、ゴールデン街で痛飲した男たちも何人かは消えてしまいました。今年の年賀状に半世紀通ったゴールデン街「ガルガンチュア」での飲み仲間であったH先輩から「いい時代思う存分楽しくともに生きてきましたね...今年で年賀状はおしまいです」夜毎、酒を飲みながら政治、芸術談義をした熱い日々が本当に懐かしゅうございます。

最近の若者は他人との距離を置き、酒もあまり飲まないそうです。これも時代の流れとは思いますが、この空気感が日本をつまらなくしてるのかもしれませんね。

ロシアの狂気、中国の不気味な動き...この国ほんまに大丈夫かな?なんとも覇気を感じないこの国トップの海外訪問での表情観ながら心配になってきました。

それと、籠池夫妻に実刑判決が決まったのは理解できたとしても、文書改ざんをした政治家、役人が何のお咎めを受けないなんて、これだけでこの国バッテンマークでございます。

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久し振りの曇天

2023/01/12
【第1704回】

今年に入ってよく耳にするピアニスト、ヴァイキング・オラソン、1984年アイスランドで生まれた新進気鋭のピアニストである。作曲もする建築家の父とピアノ教師の母を持ち、ニューヨークの名門ジュリアード音楽院でピアノを学ぶ。普通ならこの後、著名な国際ピアノ・コンクールに出場し、コンクールでの受賞歴を引っ提げて華々しくデビューを飾るところだが、ヴィキングルはそういう道を歩まない。いつ受賞できるかわからない国際コンクールなどに目もくれず、自分の音楽を届けるためにレーベルを立ち上げ、さらにフェスまで作ってしまうというのが、ヴィキングルのスタイル。ポップスならともかく、クラシックでこういうキャリアを歩んでいるアーティストは、ほとんど前例がないらしい。

まあ、出自、経歴などはどうでも良い。おいらが耳にして感じたことは、このピアニストには、自分自身の音楽に対する確信的なモノを信じて、先人の創った様々な曲にリスペクトしながら新しい音を生み出そうとする姿勢。表現者として生涯持ち続けなければいけない最重要なことでもある。おいらが音楽を聴く基準に、使い古された言葉かもしれないかもしれないけれど、やはりその人の魂を感じることが出来るかどうかがポイントになる。得てしていい音楽とは、静謐と躍動のふり幅を縦横無尽に駆使して聴き手の想像力を否応なしに掻き立ててくれる。

とにかく、彼の最新アルバム「フロム・アファー」を聴いてくださいませ。こんなピアノソロもあるんだなと...何事も新しい年の初めに、新しいモノに触れ刺激されると、今年もやらんとあかんぜよ!という気持ちになるだけでもありがたいもんでございます。

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冬のメタセコイア

2023/01/10
【第1703回】

おいらの冬の楽しみ二つのラグビー選手権が無事終わりました。最初は高校ラグビー。東福岡高校が報徳学園を破り6年振りの優勝。攻撃のチームから守備にチカラを入れたことに成功しました。ラグビー競技の醍醐味であるタックル、なんだか命懸けのプレーに手に汗を握る思いがいたします。己が犠牲となりチームに貢献する姿がとっても潔く胸を打つ。オレ我オレ我の世の中で、身を捨てる精神を持ち得る人が何と少なくなったことか...泥まみれになってぶつかり合う男たちの姿に酔いしれる至福の時間でございました。

8日に国立競技場で行われた大学選手権。帝京大学が圧倒的なチカラで早稲田を下し、2年連続の王者に輝きました。帝京大学の選手たちのフィジカルの強さだけが目立った試合でした。鍛え抜かれた筋肉の美しさに惚れ惚れしながら、このチームの選手の日頃の惜しみない努力が目に見えるようでもありました。指導者の適格な指導に素直に応える選手たちの資質の素晴らしさに頭が下がる思いです。

ラグビーのオールドファンたちは伝統校である早稲田、明治、慶應、同志社が強くないと面白くないなんてほざいておりますが、今はそんな時代じゃございません。真摯に物事に向かう姿勢を持つ者だけが生き残る時代であることを忘れてはなりません。過去の栄光忘れましょう!初心に帰って一から始めないとすべてのことが駄目になることに気付かないと世界はえらいことになっちまいますがな...そんなことを考えながら先週末のラグビーを楽しませていただきました。

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冬の薄暮

2023/01/06
【第1702回】

世の中ほんまに便利になったもんでございます。音好きなおいらとしては、今やスマホからあらゆるジャンルの曲が聴けるんですから贅沢極まりない。しかもワイヤレスイヤホンを耳に装着すれば面倒くさいコードも気にすることなく快適な音の世界が拡がっていく...

おいらもその恩恵を受けてはいるのだが、我が家に帰り、自分の聴きたいレコード、CDを取り出し音に向かう、このなんとも言えない高揚感は実に捨てがたい。幾多のミュージシャンが心血を注いだ作品には、それを享受する側も襟を正して向かいたい。なんて言ってると、この古臭い頑固おやじと思われそうだが、一事が万事、人が創り出したものに真摯な態度で接することが、この時代だからこそ大切な気がします。受け手の心音が亡くなった偉大な音楽家にも伝わり、音を通じて様々なコミュニケーションが楽しめます。レコード、CDには曲の解説、エッセイ、演者のプロフィールが掲載されておりそれらを読みながらの過ごし方も曲をより味わい深いものにしてくれます。そして何といっても様々な工夫を凝らしたであろうジャケット。特にレコードのジャケットはたまりません...まるで絵画を観てるかのような秀逸なものに接すると忘我の境地までいっちゃいます。

最近、レコード回帰の動きが出ています。歴史は繰り返す、ハイテクからアナログ、この世界も商売ですから流行に惑わされることなく、しっかりと心で捉えたいものですね。

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正月は明けましたよ

2023/01/04
【第1701回】

明けましておめでとうございます。

 

今日が仕事始めです。年末年始は我が家でゆっくり過ごしました。たまにテレビを見ると、なんだか人の死に触れた番組に多く遭遇しました。愛した妻が若くしてガンで亡くなり彼女と交わした手紙のやりとりを読み返し「もっと優しくしてやればよかったと...」つぶやく85歳の男性。同じく50歳でガン闘病の末に亡くなったロックシンガーの壮絶な生き方、その彼の日記には「自ら命を絶つ奴の命、俺にくれ!」そうなんです、こんな時代だからこそ命の重み、大切さが問われます。ウクライナ侵攻によるロシア、ウクライナの人たちの理不尽な死を始め、世界には人類の叡智で充分に防げる死があまりにも拡散してることには唖然とするばかりです。

昨日も、仕事でお付き合いしてる方のご子息が33歳の若さで亡くなったことを知らされました。考えてみれば生と死は背中合わせ、生を授かった瞬間から死も約束されてます。長く細く生きるのか、太く短く生きるかは己の生き方次第です。出来れば太く長く生きることが出来れば、ある程度生きててよかったなんて充実感を味わえるんじゃないのかな...

1週間振りの新宿、いつものように街は賑やか人達で溢れかえっていました。こんな当たり前な平和がいつまでも続いて欲しいと思う反面、いつ日本が戦争に巻き込まれてもおかしくないという危機感も抱きました...平和と戦争も背中あわせなんです。

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年始に唄う、吟遊詩人