トムプロジェクト

2018/07/31
【第1120回】

沖縄より只今戻ってまいりました...2018国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ「りっかりっかフェスティバル」に風間杜夫一人芝居「ピース」が招聘され行ってまいりました。沖縄に真の平和をと言ったところでしょうか...28日29日の2ステージだったんですが、早々にチケット完売、29日は追加公演までやってきました。沖縄の皆さんの芝居の反応もよく大成功、鳴り止まぬ拍手でおいらも感動しちゃいました。それに急遽決まった「銘苅シャイニングキッズ」の13名のダンサーが応援に駆け付け踊ってくれました。まさしく一人芝居に華を添えてくれましたね。沖縄の人達は本当に優しくのんびりしてます...思わずおいらもほっこりして嬉しくなっちゃいます。タクシーに乗っても、飲んでいても、心身ともにほぐれ「なんくるないさ」と思わず言葉が出てきてしまいそう...そうなると、ついつい夜の宴会で泡盛を飲みすぎちゃいます。この泡盛がアルコール度数が高いにもかかわらず翌日に残らないから困ったもんでございます。首里の古民家を居酒屋にした「あしびうなぁ」とってもよござんした。料理は良し、沖縄に来て飲んでる雰囲気がたまらんですばい。ついついこちらに住み日々来たくなるお店です...というのも、沖縄もすっかり都会の佇まいに近くなり、沖縄らしさを探すのも一苦労。そんな時に、こんな店を見つけると飲んべい共は嬉々とした顔になります。それにしても3日間、よく飲みましたな。杜夫ちゃん、スタッフの皆さん本当にお疲れさまでした。でも、このツアーやっとスタートしたばかりです。東京公演も含めて9月1日の北海道稚内公演まで猛暑が続く中、どうか無事に千秋楽を迎えることができますようにとプロデューサーのおいらは祈るのみです。

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沖縄2018

2018/07/27
【第1119回】

オルゴールの想い出...少年時代、オルゴールを貰い毎日聴いてました。「エリーゼのために」
あの手巻きの瞬間がなんとも夢の世界に誘ってくれるようであり音楽の目覚めだったのかもしれません。手動でネジを巻くなんてこと自体が、己の身体を通して器械に音色を送り込んでるみたいでワクワク、ドキドキ...このアナログ感やはり正しいのかもしれません。身の回りの物を見るとほとんどがデジタル、便利なのはいいのかもしれないが何とも味気ない。何かを生み出すのにはそれなりの労力が必要だし、生み出す過程を楽しむこと自体に価値がある時代が来る予感さえします。まさしく歴史は繰り返される...ゴールデン街の「ポニー」という店では、今時珍しい手巻き蓄音機が置いてあります。手動で立ち上げ針をレコード盤に落とすそのときめき感はたまりません。そして何よりも流れる音が肉声に近い。目の前で歌手がマイクを握り歌ってる感じがするんですから唯々感動しちゃいます。こんな風に日常の生活の中から、アナログ、ローテク感あふれるイロイロを見つけると和みます。デジタル世界は人をストレスの世界に誘導してるんじゃないかしら?
今年2月に上演した「Sing a Song」。この芝居で主演した戸田恵子さんが菊田一夫演劇賞を受賞し、そのお礼として戸田さんがキャスト・スタッフ全員にオルゴールを贈ってくれました。我が家にも置いてあります。時々、少年の頃を想い出し一巻き二巻き...あの芝居のラストで戸田さんが歌った「リリー・マルレーン」が心地よく流れてきます

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椅子まで付いてます♪

2018/07/25
【第1118回】

今週の28日~29日、沖縄の演劇フェスティバルで風間杜夫ひとり芝居「ピース」公演のための最終稽古を錦糸町の稽古場でやってます。いやこの暑さ、稽古場に行くだけで汗だらだらでございます。稽古場に向かう途中に聳え立つスカイツリーももう勘弁してください!という声が聞こえてきます。稽古場は、もちろんクーラーで癒されますが、いざ稽古が始まると杜夫ちゃんのテンションが一気に上昇し冷気も熱気にチェンジしてしまいます。それにしても、よくぞ台詞が流暢に出てくるもんだと感心しきり。居ない相手役が見えてくるんですから大したたまげた芸の虫。それも、ひとりで楽しんですから、どんなに気持ちがいいもんだか...と、見えるところがプロ中のプロ。実は天才は隠れたところで必死の努力をしてるんでございますよ。先日も大竹しのぶさんとの初めてのミュージカル共演の際、ミュージカル流の発声で血の滲むような自主稽古をしたそうな...お客さんからお金を頂いているからには、それに見合うものをお見せしないとプロとしては失格。己に厳しくなれない人は生涯陽の目を見ることが出来ないのが芸の世界。しかも浮き沈みの激しいこの世界で仕事が切れない役者なんぞはほんの一握り。来年、古希を迎える杜夫ちゃんが、未だこの立ち位置で俳優業を維持していること自体が押しも押されぬ実力人気俳優の証拠。沖縄公演、東京公演のチケットも完売。興行主としても嬉しい限りでございます。

稽古終わりの飲み会が凄まじい...稽古時間より長く盛り上がりも半端じゃございません。お客様が楽しんでくれるいい芝居に仕上がればすべて良しの世界でございます。

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熱中スカイツリー

2018/07/23
【第1117回】

フラメンコダンサー、グラシアス小林さんが古希を迎えた...彼が死にそうになったのを2,3度見守ったおいらとしては感慨深いものがあります。彼と出会ったのは42年前かな、おいらが単身スペインに渡り、いきなりマドリードのマヨール広場でインチキ大道芸やったり、蚤の市で物売りしたりと大胆なことやったので迷惑掛けたんじゃないかしら...こんなへんてこりんな日本人と知り合いになるんじゃなかったと...でも、彼とは同じデラシネの血が流れていることをお互いが共感し、その後は楽しいスペイン生活を過ごすことが出来ました。映画を創ろうと二人でシナリオ書いたり、キャンプに行ったり、彼は何処に行っても異国の人に負けない身体と面構えをしていました。30年に及ぶスペイン生活を終え日本に戻ってきました。その第一声が「俺は総理大臣になる!」この人、スペイン熱に冒され頭おかしくなったんじゃないかしら?と正直思いましたでございますよ。でも本気でしたね、衆議院選挙に茨城から出馬し、次点ながら4万票を集める大健闘。おいらも選挙戦初日の演説を見学したんだが、それはそれは今の政治家よりも立派なもんでございましたよ。その後、トム・プロジェクトの若者の俳優訓練にチカラを貸してもらったりと、日本での友情関係は繋がっていました。そして、満を期してのフラメンコスタジオ創設。自らダンサーとして舞台に立ちながらも、若いフラメンコダンサーを育てながらの古希を迎えた今日、美しいお弟子さんに囲まれとっても眩しかった。グラシアス小林が常々吐く言葉「フラメンコは生き方そのものである」まさしく貴方はそれを実践している中の一人です。これからも艶っぽく、そして男らしく舞ってくださいね...人生70なんてまだまだです。共に命ある限り過去を封印し未来に向かって突っ走ろうではありませんか!と言いながらも、この猛暑はたまりませんばい。

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前の人も眩しい

2018/07/19
【第1116回】

東急シアターオーブでミュージカル「エビーター」を観てきました...おいらミュージカルあまり観ないんです。何故?それは異国で作曲されたメロディに日本語が上手く乗っからないんですな。どうしても無理無理感が残り気持ち悪い。その無理が生じて演者の役の掘り下げが薄くなる。それをカバーするために自己陶酔型の演者が出てくるという始末。でも、音楽、踊りは、何といってもエンターテインメントの王道でございます。多くの人達を魅了する演目であることは間違いない。今回の「エビータ」はそのことをまさしく実証させてくれました。何といってもアンドリュー・ロイド=ウェバーの作曲が素晴らしい。彼は「オペラ座の怪人」「キャッツ」も手掛けてる才人。筋書きも、貧しい庶民から女優になり、大統領夫人の座まで上り詰めるが子宮癌で33歳で死を迎える波乱万丈の人生自体がドラマティックなんだ。このドラマをより立体的にしているのが革命家ゲバラの登場。ゲバラを狂言回し役として起用してのバランス感覚が絶妙。この役を演じたブロードウェイで絶大な支持を集めるミュージカル界のトップスター、ラミン・カリムルーの演技、歌唱力が絶品。勿論、主役エビーターを演じたエマ・キングトン嬢もよろしゅうございましたよ。この手のものはやはり生演奏、英語版のミュージカルに限ります。これだったら、おいらあまり好きでないスタンディングオベーションも理解できますな。おいらも立ちましたがな...だって全員総立ちで前のデッカイお尻見てどうすんね...5回ものカーテンコール、いやいやよろしゅうございました。

ミュージカルと言えば、劇団四季の創始者、浅利慶太さんが亡くなりました。創立当時のフランス演劇や寺山修司、加藤道夫を上演した時代がとても懐かしい。おいらも含めて、あれこれと言いたいことはありますが、学生演劇から始めて全員が芝居で食べていける劇団にしたこと、演劇の観客の裾野を拡げたことの功績は大だと思います。おいらは会ったことはないんだけどきっと寂しがり屋で可愛い人だったんだろうな...長い演劇人生ほんとうにお疲れさまでした。

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ブロードウェイに行かなくても観れますよ!

2018/07/17
【第1115回】

「石牟礼道子と出逢うpart2」に出かけてきました...今年2月に90歳で亡くなった石牟礼さんを偲ぶ会です。会場には沢山の人が集まっていました。彼女の生き方に共感した人、著作の愛読者、関係者などなど...5時半に始まり終わったのが9時。お別れの言葉を6人の方が述べ、作家・赤坂真理さんの講演と言うより楽器も参加しての公演。第二部の米良美一さんのコンサートは本当に良かった。米良さんもどことなくシャーマン的要素を持ってる方で、この日のイベントで石牟礼さんと魂の交流を最もしていたと思いました。彼が詠う「ヨイトマケの唄」絶品でした。実のところ本家本元美輪さんより良かった!美輪さんの臭さが無く、米良さんの小さな身体から絞り出される歌声が天空まで届きそうな感じがしました。この日、いろんな方が石牟礼さんに対する思いの丈を届けようとしていたのだが、おいらにとっての石牟礼さんは神格化された石牟礼さんではなく、水俣の渚にぽつねんと佇む農民、漁民、主婦であるからこそ、あれだけの言霊が産み出されたと思っています。観念から生み出された言葉ではなく、生活者の発する言葉を己の心魂に蓄積し醗酵し発せられた言葉だからこそ、読む者の奥底に沈潜し心動かせるチカラがあるんだと思います。

発展、進化の果てにうち捨てられた棄民、自然のうねりが石牟礼さんの数々の著作から聞こえてきます...怨念ではなく無垢なる言霊として。

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宵待ちコンサート

2018/07/13
【第1114回】

暑い日が続いています...西日本豪雨の惨状が日々拡がる様を知るたびに胸が張り裂けんばかりの思いです。おいらもボランティア活動したい思いがありますが、この暑さの中で熱中症にでもなって迷惑がかかりそうなので止めときます。こんな時に、参議院の定数を6議席増やすなんて頭に来ちゃいますな。こんな不要なお金、少しでも被災した人たちに回せってことだろう...出鱈目、嘘つき国会にどれだけのお金が注ぎ込まれてるんだろうか...ほんまに素直に抗議しない、怒らないこの国の人たち外国の人たちが驚いています。新宿の西口広場で抗議文を掲げ意思表示している人たちのほとんどが60歳以上のお年寄りです。残念ながら、若者の姿は見ませんがな。諦めてるんですね、どうせ誰がやっても同じだろう。余計なこと言ってエネルギーを消耗するんだったら、快楽の方に費やしたいのが楽しいに決まってんじゃん。こんな国はいずれ滅びますよ!なんて脅かしても上の空。今日も朝のテレビで居ない筈の場所に熊が出没。森林を伐採し野生の住処を侵された生き物は海を渡り別天地に行きますがな。この地球、人間だけのモノじゃないという自明の理を理解できない人たちも困ったもんです。この大宇宙のなかの小さな惑星地球でいろんな生き物が共生できる哲学を持ってる人たちが多数を占めれば、こんな災害も少なくなるんじゃないかしらと思う週末でした。

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お空にスケッチ

2018/07/11
【第1113回】

遅まきながら第158回芥川賞(2017年下半期)受賞作、若竹千佐子氏(64)の「おらおらでひとりいぐも」を読了...史上2番目の年長者受賞らしい。いやいや圧倒的な東北弁(岩手)の語りが読む側のリズムを鷲掴み。石牟礼道子さんの口承文学を感じさせる見事な文体だ。子供のころから小説家になりたいと思いながら家庭の主婦、子育てに追われ、なかなかチャンスがなかったのだが55歳の時、夫に死なれ、日々の悲しみの中から書いてみよう!という気持ちが生まれたそうだ。夫の死から沸々とこみ上げたものは、これまでの人生、自分の本来の欲望を見失って人の期待に生きて、自分を苦しくしてしまっているんじゃないか?旦那を支えるのが人生の第一主義であり、愛に通じるものと考えたものに疑問を抱き、その総決算として己の一番信ずる方言を駆使して書き上げた小説に見える。この小説の快テンポリズムは、作者の父が浪曲師・広沢虎造「石松三十石船道中」が好きで良く唸ってたのだが、子供の頃はよくわからず、YouTubeで聴き衝撃を受け、これを小説の文体にしようと決めたそうだ。すべての表現に一番大切なものはテンポ、リズム。これを兼ね備えていれば読者・観客は飽きることなく魅入られるってことだ。若竹さんの書こうとする意欲は、とことん生きようとする姿勢だ。諦めたらいけまっせん!この小説に「おらだば、おめだ」

「おめだば、おらだ」のリフレインが何度も出てきます。同じようにおいらの周辺に居るたくさんの人達、それぞれがおいらであり、友であり、母であり、父であり...ってことは、人なんて良くも悪くもそれぞれにいろんなもの抱えてるんだから、気にしないで思い切り好きに生きないともったいないってことだよね。

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覗いてみようかな...

2018/07/09
【第1112回】

いやはや大変な豪雨災害ですね...今回の被害の状況を見るたびに年々地球が悲鳴を上げているのがよく分かります。もうこれ以上、森林を伐採したり、地球温暖化がもたらす1番の原因といわれる、自動車や飛行機を動かしたり、電気を作ったり、ゴミを燃やしたりすることで、たくさん発生している二酸化炭素の抑制。そして、地球温暖化の2番目の原因といわれる、牛や豚などの家畜のゲップや天然ガスを掘り出すときなどに出てくるメタン。世界の政治家、科学者が何十年も会議を重ねて対策を練ってはいるものの、時の権力者の人気どり政策でままならないのが実情だ...こんな恐ろしいことが起きてるのに、この国では原発廃止の声が盛り上がらないのがいい例だ。アメリカ、ロシア、中国の頭のオッサンたちも己の権力を維持するのに躍起になっているレベル。地球の未来、そして子供たちの将来を熟慮できる創造力と想像力を兼ね備えたリーダーが出現しない限りアウトですばい。

6日には、オウム真理教の教祖・麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚と6人の元教団幹部の死刑が執行された。7人が一日で処刑されるのも前代未聞である。確かに極刑に値する人たちであり人道的にも許されない人達であるが、その主たる要因も解明されないまま執行していいものだろうか?この事件から教訓を得ずして、この種の事件は必ずや起きるであろう。裁判官が麻原死刑囚は演技していると断定したことにも疑問が残る。何とか彼の口からこの事件に至る経緯を喋らせるべきではなかったか...それにしても、執行前日、上川法相は「赤坂自民亭」で女将役を務め、安倍首相をもてなし酒宴を開催...なんだか不気味ですね。どんな人間であれ死を前にしての作法があるんだろうとは思うんですがね。

今日の雲間に除く青空がいついつまでも見れますように!という願いは不可能だろうか?

残り少ない人生のおいらだって切に願ってますがな...

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この空が被災地に届きますように...

2018/07/06
【第1111回】

昨日、劇団唐組の辻孝彦さんが亡くなりました...52歳はまだ早いですね。唐十郎さんの世界を支える個性溢れる俳優さんの一人でした。強面の俳優さんが多い中、ひとりニコニコした表情が印象的でした。細身の体でありながらいったん舞台に登場するや否や、狂気すら感じる演技は観客の心を十分にとらえて離さなかったと思います。唐ワールドを会得するには、ただ単に演技の修練を積めば成立するものではありません。少々オーバーかもしれないが、唐十郎と寝食を共にしてかろうじてその世界を覗き見する程度かな...後は、己の特権的肉体と眼前に展開する唐ワールドの旅人としての一員としての覚悟があるかどうか...そんな厳しい状況の中、辻さん最後まで唐組を支えてきましたね。唐さんが病に倒れた後は厳しい日々があったと思いますが、先日に紅テント芝居を観ながら感じたことは、確実に若い人達にバトンタッチできてることを確認出来とても嬉しかった。その最後の仕事を辻さんが担っていたんですね。最後に会ったのが、今年2月下旬に帝国ホテルでの読売演劇大賞の授賞式でした。唐組の藤井由紀さんが優秀女優賞を受賞し唐組の皆さんと出席してました。おいらが声を掛けると「元気になって、またやりますよ...」とても元気だっただけに...でも、辻さん、貴方が演じ魅せてくれた芝居に、人間の不気味さの中に垣間見る優しや、弱さ、おいらの記憶の中にいつまでも残ってますよ。お疲れさまでした...ゆっくり休んでくださいね。

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聳え立つ紅テント

2018/07/04
【第1110回】

この世の中、すべてがマニュアル化してしまうんだろうか...コンビニにお酒を買いに行くと必ず年齢承認のパネルが出てきます。おいおい、見りゃわかるだろう?と思いつつ、つい承認押さざる得ないのが実情だ。あるタレントがハンバーガーと飲み物をスタッフに差し入れしようと50個近く注文したところ、「店内でお召し上がりですか、お持ち帰りですか?」と聞かれたので頭に来て「こんなに一人で喰えないだろう!」と怒ったそうだ。そりゃそうだよね...なんでんかんでんマニュアル通りの教育をし、肝心かなめのお客とのコミュニケーションが疎かになる。ここから人は個に埋没し、ジレンマに陥り、病に、そして挙句の果てに犯罪さえ起してしまう。考えてみれば、アジアの労働者が増え、そうしなければならない実情もわからないではないが、お店は人と人との触れ合いで品物を手にし喜びを感じるのではござませんか。子供のころ駄菓子屋さんのおばちゃんと四方山話をしたころが懐かしかですばい。親の言うことは一切聞かず、おばちゃんのアドバイスは何故か説得力がありました。ついつい悩み事を聞いてくれ、いつの間にか子供人生相談所も兼ねるようになっちゃいました。ある意味、出先が世迷い人にとっての良き相談相手だった豊かな時代だったかもしれませんね...すべてが便利、合理性を求めていった至極当然なマニュアルシステム。もっと感情を出さんかい!と、おいらは思うのだが、若い人にすれば鬱陶しいでしょうな。でもなんだかスマホピコピコ静まり返った車内も不気味なもんございます。果たして人類はロボット化した生態系へと向かっていくんでしょうかね...最後のアナログ人類の一人として、おいらはぼちぼち楽しみながら生きていく所存でござりまするがな。

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梅雨明けと夏のはざま

2018/07/02
【第1109回】

いやいや、早や猛暑の日々が連日続いています...「ファントム・スレッド」鑑賞。音楽、衣装、名優の演技どれをとっても、こんな創造物を¥1100(ごめんなさいシニア料金です)で観れるなんてなんて幸せでしょう...不思議な映画です。SM的な愛なのか、究極の愛なのか、観る人によって愛の形が幾様にも変貌していく様が面白い。というより愛の迷路に嵌ってしまう。あんな田舎の娘に、立場あるアーチストがコロリとまいっちゃうのがなんだか滑稽にも思えてしまうのだが、徹底した映像美で最後までぐいぐい魅入ってしまうところがみそですな。史上初となるアカデミー賞主演男優賞3度受賞したダニエル・デイ=ルイスの、いかにもイギリス仕立ての演技も、おいらはあまり好きではないが計算しつくした知的演技はさすがです。田舎娘を演じたヴィッキー・クリープスはルクセンブルグ出身の34歳の女優。美人ではないのだが、あの手の顔は見る側の想像力を喚起させてくれる...したたかにも、純情にも、淫乱にも...なかなか掴みどころのない女性の不可思議さを十分に表現してるから相当の演技者と見た。目立たないけど気になるってところが役者としても最大の武器なのかもしれない。映画館に行くたびに思うのだが、あちらさんの俳優さんは皆惚れ惚れしますがな...それに比してこちらの俳優さんは、やっぱり残念ながら劣りますね。おいらだってこちらの映画頑張って頂戴なと念じてるんだが、どうしても旬なタレントさん重視の営業第一、コミック頼りの映画創りになっちゃうんで出来上がりがチップみたいな薄さ。あちらはビフテキ、こちらは魚、いやいや食べ物のせいではありませんことよ。もっと分厚い文化を根付かせなきゃならんのですが、この国の現状からして無理なんかな...と悲観的な思いを吹き飛ばすようなカンカン照り。いよいよ本格的な夏の到来、汗流しながらもなんとか生き延びなきゃ...

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梅雨明けの街路樹