トムプロジェクト

2018/07/11
【第1113回】

遅まきながら第158回芥川賞(2017年下半期)受賞作、若竹千佐子氏(64)の「おらおらでひとりいぐも」を読了...史上2番目の年長者受賞らしい。いやいや圧倒的な東北弁(岩手)の語りが読む側のリズムを鷲掴み。石牟礼道子さんの口承文学を感じさせる見事な文体だ。子供のころから小説家になりたいと思いながら家庭の主婦、子育てに追われ、なかなかチャンスがなかったのだが55歳の時、夫に死なれ、日々の悲しみの中から書いてみよう!という気持ちが生まれたそうだ。夫の死から沸々とこみ上げたものは、これまでの人生、自分の本来の欲望を見失って人の期待に生きて、自分を苦しくしてしまっているんじゃないか?旦那を支えるのが人生の第一主義であり、愛に通じるものと考えたものに疑問を抱き、その総決算として己の一番信ずる方言を駆使して書き上げた小説に見える。この小説の快テンポリズムは、作者の父が浪曲師・広沢虎造「石松三十石船道中」が好きで良く唸ってたのだが、子供の頃はよくわからず、YouTubeで聴き衝撃を受け、これを小説の文体にしようと決めたそうだ。すべての表現に一番大切なものはテンポ、リズム。これを兼ね備えていれば読者・観客は飽きることなく魅入られるってことだ。若竹さんの書こうとする意欲は、とことん生きようとする姿勢だ。諦めたらいけまっせん!この小説に「おらだば、おめだ」

「おめだば、おらだ」のリフレインが何度も出てきます。同じようにおいらの周辺に居るたくさんの人達、それぞれがおいらであり、友であり、母であり、父であり...ってことは、人なんて良くも悪くもそれぞれにいろんなもの抱えてるんだから、気にしないで思い切り好きに生きないともったいないってことだよね。

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覗いてみようかな...

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