トムプロジェクト

2022/09/28
【第1667回】

昨日はどのメディア見ても国葬の話題で持ちきりでした。国民の意見を分断してまで実施する必要があるのだろうか?多数の人がそう思っているのでは...反対する人のデモの様子を見ながら、これがロシアであれば即拘束、拷問、挙句の果ては戦地に兵として送られる羽目になるのではと思うと、つくづく自由の有難さを感じます。政治の世界は魑魅魍魎、何かを企画し行動にすること自体何らかの戦略があってのことだと思います。どんな人の死も平等、安らかに永眠されますよう、心よりお祈り申し上げますという気持ちであれば十分だと感じます。

まだまだ暑さは残ってますが、吹く風は秋の気配を感じます。コロナもなんとか数は減ってはいるもののまだ油断はなりません。芝居を抱えながらの日々、しばしリラックスするには酒と音楽と読書かな...最近、音楽では従来のジャズに加えクラシック音楽で心身をリフレッシュしています。ここのところ気にいってるのがバイオリストのアルテュール・グリューミオ―。ベルギー生まれで1986年に65歳で亡くなっている。彼のヴァイオリンの艶やかな音色と、瑞々しいまでの抒情性が心身を癒してくれる。そしてクラシック特有の気高い品格が豊かな気分にさせてくれる。

これからの秋の夜長の過ごし方次第で、この鬱としい気分払拭することが出来ますことよ。

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フィンランドのマリメッコ

2022/09/26
【第1666回】

昨日、無事に「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」千秋楽を迎えることが出来ました。あの昔の時代の話がどう観客に映るのかプロデューサーとしては、とても気になるところですが、ニンゲンの生き方なんぞは基本的にはそうそう変わるもんじゃないし、人の琴線に触れるところは普遍的なものだと思って創ってるんで心配はしてませんでしたが。

演劇評論家の方々もこんなことを書いてくれてました。

 

貧しいがたくましくまっすぐに生きていた時代への追憶の芝居。それはノスタルジーではない。それこそが人間本来の生活ではないか。74歳のたかお鷹が少年に見えてくるのだから、舞台は想像力だ。長屋のおばちゃん役の藤吉久美子が呆れるほど上手い。清純派がこんな泥臭いおばちゃんを。それが見事にはまった演技。演技とはこれを言う。作品の要となる娼婦の森川由樹がまた素晴らしい。少年の憧れを受け止める。女の悲しみを内包する。斉藤、清水もそれぞれ役を生きている。子役の涌澤昊生も元気でいい。舞台のアンサンブルが見事。役者全部がいいという舞台はめったにあるもんじゃない。今回の舞台はまるで奇跡をみているよう。全員、底抜けに明るいのがいいのだ。明るいからこそ悲しみが際立つ。後半から涙止まらず...

 

人はいつの時代になっても、生きるうえになにが大切かを模索しながら日々を過ごしている。この芝居がすこしでもそのためのヒントになり得たら、芝居屋にとっては嬉しい限りだ。

この困難な時代だからこそ、よか芝居創らんといかんですばい!

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ホソバヒャクニチソウ
(花言葉 友への想い)

2022/09/22
【第1665回】

昨日、「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ラインズ」俳優座劇場で無事初日を迎えることが出来ました。改めてこの作品、よか芝居と思った次第です。あの時代の匂いが舞台上から観客に伝わっていくさまが良くわかります。この芝居のテーマでもある匂い、そうなんですね、いまやこの国にとどまらず先進国といわれている国々はほぼ無味無臭のつまらん国になってしまいました。人間が醸し出す匂いが感じられなくなった途端に、自己中心の思考に陥り、生きる上で一番大切な優しさそのものが疎遠になっていき、人が人を思いやる感情が希薄になっていくのは自明の理。拝金主義、物欲に走り、果ては小さなもめごとから始まり、挙句の果ては戦争へ突き進むお決まりのコースでございます。

匂い、体温、この身近な感覚を失わないことが家族、街、国家、そして地球を守る大前提であることを、この芝居が教えてくれてる気さえします。決して高邁な思想を語らなくともごく身近な市井の人達から学ぶことの方が多いのではないか...

今回の芝居、少ないステージですが、こんな時代だからこそ是非見て欲しいと強く思った昨日の初日でございました。

前回、お知らせした台風で中止になった「風を打つ」ちた半島演劇鑑賞会での公演、いろんな方の尽力で振替公演ができることになりました。

まだまだ演劇の神さん健在でございます。

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雨あがる

2022/09/20
【第1664回】

いやいや、台風には敵いませんわ...今回の台風で、風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」広島県福山市の公演が早々と中止決定。昨日は、「風を打つ」愛知県中部ブロックちた半島演劇鑑賞会での公演、劇場にセットを建てこみ、さあこれからと言うときに行政からの台風による閉館指示が出され中止。芝居もやらないままセットのバラシはつらいものがあります。俳優陣も気が抜けちゃったんじゃないかしら...でも、何事も安全第一、芝居終演後に帰宅困難なんてなったらそれこそ一大事でございます。コロナに台風、ナマものである芝居、予測できない困難との闘いでもあります。

明日からは「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」が始まります。稽古を観に行ったのですが、なかなかいい仕上がりになっていました。登場人物5人が皆、昭和30年前後に生きていた人物になりきっているところが素晴らしい。あの時代の匂いを知っているのは、今回キヨシ少年を演じるたかお鷹さんだけなのに、あの日あの時の博多・末広長屋が甦ってくる感じがするんだから不思議なもんでございます。

埼玉のライオンズの方は、昨日の敗戦で終戦でございます。よりによってライオンズの選手を4人もかっさらい、第二ライオンズとも言われている楽天イーグルスに本拠地で3連敗するんですから開いた口が塞がりません。通算7連敗じゃ今年は5位かな?おいらも途中からテレビ止めちゃいました。要するに実力不足、チームとしての層の薄さを感じます。冷静になれば当然のことかもしれません。昨日のソフトバンクとオリックスの試合なんぞはワクワク、ドキドキの展開。これぞプロの試合でございます...はや、来期のライオンズに期待したいところだが...おいらは明日からの劇場の西鉄ライオンズのことで頭一杯でございます。

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久し振りの井の頭公園

2022/09/16
【第1663回】

おいらは万年筆大好きな人の一人だ。長年愛用していたモンブランの万年筆、インク漏れが始まったので、いつものように新宿伊勢丹のモンブラン専門店に修理依頼を相談に行ったところ、最低¥13500~¥36500の修理費がかかるとのこと、しかも修理に出すと、修理しなくとも¥6500がかかるってんだからなんとも腑に落ちない感じがいたしました。早速、ネットで調べたら文京区に川窪万年筆店が見つかり早速出かけることにしました。下町風情にある民家に店を構えた古いお店でした。最初は失礼ながら大丈夫かいな?と思ったのだが、万年筆を差し出すとさすがに三代続く万年筆職人。「15分あれば直せます!」ここでおいらもホンマかいな?とまたまた不安になったんですが、言葉通りに完璧に修理してくれました。しかもお値段が¥4950なんですからありがたやありがたやでございます。そりゃそうだ、昭和元年に初代・川窪長七(現三代目:川窪克実の祖父)が早稲田界隈の小さな店で、主として学生・大学教授様向けに万年筆を製造して販売。その後小石川林町(現店舗の文京区・千石)に移転し、同じ町内の菊池寛、宇野千代、川端康成、E.サイデンステッカーの愛用品の修理・調整を手掛け、二代目:川窪一夫(パイロット大型蒔絵万年筆の開発に携わる)、そして三代目:川窪克実と確かな万年筆全般に関する技術の継承が行われ、現在に至る名店だったわけである。

大都会東京には、これに類する職人芸を伝える名店が、今尚存続してるのがとても嬉しい。

一昨日、東京亀戸文化センター・カメリアホールで公演した風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」いやいや大変な盛り上がりで充実した一日でした。演者と観客が一体になることによって、至福の時間を持ちえることを改めて実感した次第でございます。

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愛をささやいてるのかな?

2022/09/14
【第1662回】

生きていくなかで、誰しも何度か拘りについて自問自答したことがあるかと思います。先日、早稲田にあるジャズ喫茶「ジャズナッティ」に行ってきました。早稲田大学のすぐ近くにある2008年にオープンした店です。先ずは玄関先に「ミュージシャンの魂を聴きとれ!」という看板に、おいら緊張してしまいました。その看板に一礼して店内に入るとお客は誰も居ませんでした。いやいや、襟を正して、背筋をシャキッと伸ばしてジャズミュージシャンのほとばしる魂の叫びに耳を傾けないと店主に怒られないかとヒヤヒヤもんでした。しかし、注文取りに来た店主は穏やかな紳士でここはひとまず安心。店内に入った時はCDが流れていたんですが、おいらの佇まいで判断したのかどうかも分からんのだが、早速レコードを取り出しアートファーマーの名盤「ポートレイト・オブ・アート・ファーマー」に針を落としてくれました。おいら特別にアートファーマーに思い入れはないんですが、やはりジャズ喫茶に来たならばレコードを聴きたいのが本音です。CDでお茶を濁してるお店はちょいと手抜きしてるんじゃないかしら?いやいや、お店にしてみれば繁盛もしてないのに、演奏時間が短いレコードの盤面を変える手間暇はありまっせん!と叱られるのは承知の上で申しているのですが、やはりジャズ喫茶の存在意義はレコード盤を聴けるということです。目を閉じ、巨大なスピーカーから流れる音を一音一音聞き漏らすことなく聴いてるうちに、緊張のあまりおしっこ漏らしそうになりトイレに行った次第です。

一時間ほどしたら一人の客が入店。おいらもなんだかほっとして帰れる気分になりました。

この店の拘りに魅せられ14年続いているんでしょうね...おいらも20代の頃、毎日のように新宿のジャズ喫茶DIGに通っておりました。老いたらジャズ喫茶やる計画だったんだが...人生なんて所詮、ケセラセラでございます。

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マイルスも感染予防中

2022/09/12
【第1661回】

先週の土曜日の中秋の名月は見事でございました。いつの世も、生きとし生けるものたちは夜空に浮かぶ月の変化を感じながら、その日一日の出来事を月に向かってなんとなく報告している感さえします。雲に隠れた日なんぞは、なんとなくその日のケジメがつかないモヤモヤ気分が残ってしまいます。昔、スペインアンダルシアのコスタ・デ・ソル(太陽の海岸)のすぐ傍に住んでた時には、満月なると浜辺で着流しの着物を着て踊りながら月に吠えておりましたおいらでございます。スペインの月は何故か人を狂わせる不気味な表情をしていました。

現在、東北ブロックの演劇鑑賞会で上演している「風を打つ」今日の仙台公演を含め10ステージ無事終えることが出来ました。どの会場でも評判がよく嬉しい限りです。風間杜夫ひとり芝居「帰ってきたカラオケマン」も昨日、北海道公演3ステージ、山形県の川西町を含め4ステージ、こちらも、どの会場も笑いが絶えない雰囲気だったと聞いております。「風を打つ」は残り29ステージ、「帰ってきたカラオケマン」は3ステージ、なんとなくコロナの感染者は少なくなってはきてますが、油断は禁物です。ちょいとした隙間からコロナちゃんは遊びに来ますから気をつけなくちゃなりませんね

来週は21日から「エル・スール~わが心の博多、そして西鉄ライオンズ」が始まります。よりによって、こんな時になんで3本も芝居やるんかい?と思う方も居るとは思いますが、こんな時だからこそやるんでございます...

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十五夜

2022/09/09
【第1660回】

スメタナの連作交響詩「わが祖国」、いつ聴いても心に染み渡る...今回のアルバムは歴史上いつまでも語り継がれる名盤である。1990年の「プラハの春」音楽祭でのオープニング・コンサートで演奏されたライブ版。チョコスロヴァキアの民主化の初の音楽祭に、独裁政権に反旗を翻し西側に亡命していた巨匠ラファエル・クーベリックが42年ぶりに祖国に戻り、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したのである。この年第45回を迎えた「プラハの春」は美しい自然と多くの歴史的な建物に囲まれた古都で、毎年5月12日、つまりチェコ国民音楽の父であるスメタナの命日に開幕し、そのオープニング・コンサートには、チェコフィルがスメタナの代表作である連作交響詩「わが祖国」を演奏することが恒例になっている。第1回の音楽祭が開かれたのは1946年のことで、当時チェコ・フィルの主席指揮者であったクーベリックは、その記念すべき最初のコンサートを指揮しているから、音楽祭には実に44年ぶりの登場になったわけである。

この交響詩の中の第二章の「モルダウ(ヴァルタヴァ)」、これを何度聴いても涙がちょちょぎれ感極まる。南ボヘミアのシュマヴァ山脈に源を発し、北流してプラハを通ってエルベ河に合流するモルダウ河を描いた傑作である。この旋律が流れるたびに、自然に囲まれ自由のありがたさに感謝しながら生きていくことがなんと素敵なことかを改めて感じさせてくれる。

この曲を聴きながら、ふと、わが祖国(日本)を考えてみるのも意義あることだ。円安、日本の国力の低下、政治の体たらくなどなど...理想の未来が見えないのがこの国の現実である。

そして、寺山修司のこの句が浮かびました。

 

マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや

 

ちょいとオーバーかも知れませんが、祖国の存亡がかかってるくらいの理念、気概を今一度持たないとあきませんがな...

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野に咲く花

2022/09/07
【第1659回】

月曜日、携帯をオフィスに忘れたまま帰宅しました。電車に乗って気づいたのですが、こんな時もあるわいなと思いオフィスには戻りませんでした。なんとこれが幸いして、そのあとの19時間を新鮮なひとときで過ごすことが出来ました。仕事柄、しかもよりによって同時に3本の芝居を抱えながらのこの時に、困ったなと一瞬そんなことが過ったのだが、どうにかなるわいなと携帯なしの時間を逆に楽しんだ次第です。誰からも連絡がこないんですから、この日は自宅でゆっくりとお酒と食事を楽しんだ後、好きな音楽を聴きながら読書をいたしました。他者との連絡が取れないことは不便に見えますが、心身ともに解放され自由な身になった爽快な気分でした。

考えて見りゃ、昔はよほどのことがない限り公衆電話もかけず、用があれば手紙のやりとりでコミュニケーションを図ったものでございます。思いの丈をたどたどしいながらもしっかりと相手に届くように綴った時間が何ともいじらしくもあり楽しい時間でした。今でも、万年筆、筆で手紙を書くときに感じる感覚は、細胞がいつもよりいきいきしてるように感じます。身体全体の思いを筆に託し、文字を産み出し真っ白な空間を埋め尽くしていく一瞬一瞬に喜びさえ覚えます。

なんでんかんでん便利になりやがって、不便なときに自ら思考し行動した尊い時間を忘れちゃいけません!ということを想い出させてくれた昨日でございました。

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長月のアレンジメント

2022/09/05
【第1658回】

劇団チョコレートケーキの「ガマ」を観劇。この劇団2022年8月17日~9月4日まで、東京芸術劇場で「生き残った子孫たちへ 戦争六編」と銘打って公演しました。小劇場の劇団がこういう形で硬派の芝居を六作品、長期間企画するだけでもあっぱれです。このクソ暑い中、しかもコロナ感染のなか、しんどい芝居にはなかなか足が向かないと思うのだが、今だからこそ戦争に向き合って欲しいという劇団のこだわりを感じます。演劇を志すものとしてこのこだわりは必要不可欠であり、これからの劇団の改めての決意表明ではなかろうか...

今回の「ガマ」は六篇の中で唯一の新作です。沖縄の悲惨な戦争体験はたびたび舞台化されてきましたが、この作品はまさしくガマ(沖縄戦時に避難壕や病院壕として使用され、その数はおよそ2000にも及ぶ)のなかでの人間ドラマ。おいらも、数年前、ひめゆり学徒隊が居たガマの前に立った時には、ガマの中でくり広げられた悲惨な惨状が頭をよぎり、しばし黙祷するしかなかった。

劇中、皇民教育に染まった少女を演じた清水緑が吐く台詞「帝国臣民」「聖戦貫徹」「私たち沖縄県民はどうやったら日本人になれるんですか」「友達は皆日本人として立派に死んでいった」それらの言葉を受け止め、「命は宝だから」と少女を諭す現地の老人を演じた大和田獏が秀逸。これも、勿論、劇団チョコレートの役者陣が支えてのこと。

戯曲、演出、舞台美術、照明、音楽、すべてがハナマルの公演でございました。

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久し振りのゴジラ

2022/09/02
【第1657回】

8月31日、埼玉県志木市民会館で「風を打つ」の公開舞台稽古を観てきました。今回の公演、今日から演劇鑑賞会の東北、中部・北陸ブロックで10月18日まで39ステージの公演を予定しています。コロナ禍と猛暑のなかでの稽古本当に大変でした。今日、この日初めて役者さんもマスクを外しての本番だっただけに感無量の思いでした。マスクをしながらの稽古は身体的にも苦痛が伴うのは当然なのだが、なんといっても相手の表情が読み取れないのが表現者にとっては最大の苦痛です。そんな状況が3年近く続いているんですから、いい加減コロナちゃん勘弁してくださいな!と叫びたい。

この日の芝居、困難な中この日を迎えた5人の役者さんの思いの丈が会場に響き渡っていました。この日の観客から頂いた割れんばかりの拍手に背中を押され、10月18日の千秋楽まで無事に完走してくれることを願うばかりです。いつものことながら演劇の神さん頼みまっせ!

昨日、新宿の西口で、9月27日に執り行われる安倍元首相の国葬について中止や反対を求める署名活動が行われていました。国民の半数以上の人が反対しているのに内閣だけで決めて実施するのはいかがなものかと思うのが当然でしょう。しかも問題になっている旧統一教会とずぶずぶの関係であった人だけに...とにもかくにも、ここらあたりで思い切った当たり前の政治に舵を切らんと、間違いなくニッポンえらいことになっちまいますね。

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長月の空