トムプロジェクト

2022/09/09
【第1660回】

スメタナの連作交響詩「わが祖国」、いつ聴いても心に染み渡る...今回のアルバムは歴史上いつまでも語り継がれる名盤である。1990年の「プラハの春」音楽祭でのオープニング・コンサートで演奏されたライブ版。チョコスロヴァキアの民主化の初の音楽祭に、独裁政権に反旗を翻し西側に亡命していた巨匠ラファエル・クーベリックが42年ぶりに祖国に戻り、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したのである。この年第45回を迎えた「プラハの春」は美しい自然と多くの歴史的な建物に囲まれた古都で、毎年5月12日、つまりチェコ国民音楽の父であるスメタナの命日に開幕し、そのオープニング・コンサートには、チェコフィルがスメタナの代表作である連作交響詩「わが祖国」を演奏することが恒例になっている。第1回の音楽祭が開かれたのは1946年のことで、当時チェコ・フィルの主席指揮者であったクーベリックは、その記念すべき最初のコンサートを指揮しているから、音楽祭には実に44年ぶりの登場になったわけである。

この交響詩の中の第二章の「モルダウ(ヴァルタヴァ)」、これを何度聴いても涙がちょちょぎれ感極まる。南ボヘミアのシュマヴァ山脈に源を発し、北流してプラハを通ってエルベ河に合流するモルダウ河を描いた傑作である。この旋律が流れるたびに、自然に囲まれ自由のありがたさに感謝しながら生きていくことがなんと素敵なことかを改めて感じさせてくれる。

この曲を聴きながら、ふと、わが祖国(日本)を考えてみるのも意義あることだ。円安、日本の国力の低下、政治の体たらくなどなど...理想の未来が見えないのがこの国の現実である。

そして、寺山修司のこの句が浮かびました。

 

マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや

 

ちょいとオーバーかも知れませんが、祖国の存亡がかかってるくらいの理念、気概を今一度持たないとあきませんがな...

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野に咲く花

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