トムプロジェクト

2018/11/30
【第1164回】

このところ紅葉の見事な色つけに魅せられている...「うらを見せおもてを見せてちるもみじ」江戸時代後期の僧侶、良寛の辞世の句だ。死ぬときに人生なんてストリッパーみたいな心境になるんですかね。生きてる間はニンゲン表と裏を上手に使い分けながら行かざるを得ないのだが、逝くときは裏も表もありゃしない...なるほどおいらも、今日の紅葉のひらひらと散る様を眺めながら、拘りを捨て慾を捨て残りの生を全うしなきゃと思うんだが、果たして出来ますことやら...ほんまに朽ち果てるまで同じ場所に立ち尽くし、風雨に晒されながらも、こんなに美しい姿を魅せてくれる樹木達。ニンゲンなんか太刀打ちできませんがな。舞い落ちる落ち葉が土壌を形成し、あらたなる作品を創り続ける自然の営みにあらためて感謝。所詮、人が創りあげるものなんて自然界が織りなす世界に敵わないとは思ってますが、自然への敬意を込めながら創ることによって、なんとか共生出来るんじゃないかしらと思う次第でございます。

ついでに良寛の「散る桜、残る桜も、散る桜」この句も見事...生きてると自然界はいろんなものを見せてくれる。ただぼーっと生きてたんじゃいけませんことよ。良寛まではいかなくとも少しは感性を研ぎ澄まし、眼ん玉ひん剥いてよく見、耳の穴かっぽじってよく聞けば、ちーとばかりいい句が浮かぶかも知れませんよ。よっしゃ!おいらもやってみよう...

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美の競演

2018/11/28
【第1163回】

先週の金曜日、勤労感謝の祝日に、劇団チョコレートケーキの主宰者である日澤雄介さんの結婚式ということで築地治作に行ってまいりました...昭和6年創業ですから87年、老舗に相応しく隅田川沿いに建つ日本家屋は実に風情があるものでございます。おいら結婚式やったことがないので式に行くたびに、こんなおいらに連れ添った方に申し訳ない思いで、いつも後ろめたいものがありますな。古今東西、芝居をやってる輩は河原乞食と蔑まれ結婚する相手の両親が苦虫を潰した顔をされたものです。芝居=貧乏この方程式は残念ながら今なお引き継がれているみたい...そう思われたらここは開き直ってアウトローで行こうじゃないか!犯罪そして人様に迷惑かけなきゃ何やっても構いませんことよ...嫌なことシコシコやりながら死んじゃうよりも好きなこと悔いなくやりまくってあの世に行った方がよござんしょ。というわけで、今回も芝居をやってた今日子さんとのめでたい席。日澤君は今や劇団の主宰者、演出家として演劇界で数々の賞も受賞している時の人。再来年にはイギリス演劇界からも招聘を依頼され、今後の日本現代演劇の若きリーダー。しかし、男はどんな状況であろうとも、常に将来の不安と日々の葛藤の中で生きてるしがない動物です。ましてや芝居稼業、こんな時にささえてくれるのが愛しき女房でございます。晴れて夫婦になった今日子さん、おいらと同郷福岡、愛情深く気っ風の良い九州おなご。日澤君いい人を伴侶しましたな...勝負はこれからです。いいことばかりではありません、躓きそうになったら、相手に感謝の気持ちを抱きすれば、たちまちピンチはチャンスへと変わること間違いなし!

いつまでもお幸せに...

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天然のアートⅡ

2018/11/26
【第1162回】

先週の週末もスケジュールびっしりバタバタしておりました...木曜日は劇団東演「屋根裏の仏さま」観劇。創立60年、老舗の新劇劇団です。女優11人、さすがに歴史ある劇団だけに年齢層も様々、いろんな形で観せてくれました。今から100年前、たった1枚の写真を頼りに新天地を求め、何週間も船酔いにあいながらアメリカにたどり着いた写真花嫁を劇化した作品。いやいや、大変な時代を生き抜いただけで充分ドラマチックでございます。こんな体たらくな時代を考えると、生き切ることを身をもって体験したんでしょうね。状況が過酷になればなるほど人は強くなれるんです...でも、この安穏とした支柱のないこの国の人達は心の疲弊で別な意味で大変な思いをしてますね。そうなると、時代、環境はあてにせず己の内なる宇宙を探索しながらの自分探しが一番全うな生き方なのかも知れませんな。

土曜日は「バルバラ セーヌの黒いバラ」を鑑賞。伝説的なシャンソン歌手バルバラを描いた作品なんだが、ちょいと凝りすぎてませんかな?という印象。実在の人物を描くにもいろんな工夫が必要だと思うのだが、どこにフォーカスを置いてるのか今一つはっきりしませんな。しかし、東急文化村の映画館、今回もそうなんだが文化の匂いを前面に出して芸術やってます感が強すぎてちょいと引きますな。アートの押し付けは得てして外してしまいます。この日も土曜日のいい時間なのにガラガラ、東急資本のチカラで屁でもないんでしょうが、やはりお客さんは正直だってこと理解しないと痛い目に遭いまっせ...

ようやく、紅葉も空の色とマッチできるようになりました。所詮、自然が織りなすものには敵いませんことよ。

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天然のアート

2018/11/22
【第1161回】

横浜みなとみらいに「男の純情」観に行ってきました...今回も神奈川県民共済の主催で呼んでいただきました。このホールの責任者Sさんは、嘗て歴史ある新劇劇団で演出部に在籍した方で芝居を観る目は確かなものがあります。時には厳しい意見も遠慮なく言ってくれるので頼もしく思ってます。この方が、何故かいつもトムの芝居を呼んでくれるのでおいらとしては嬉しい限りです。この気持ちに応えるべく今回の「男の純情」お客様の心の琴線を大いにくすぐったんではないかと思っています。満員のお客様、笑いの渦に飲み込まれ溺れちゃうんじゃないかしらと心配しちゃいました。まさしく笑いは健康の源でございます。笑う門には福来るという言葉がありますね。この国の人、なんだか遠慮してるのか笑いを押し殺した笑いが美徳なんて考えてる人が居るらしいが、おもろいときは思いっきり大笑いした方がええがな...身体の毒素は出るし顔の筋肉体操にはなるし、観劇後のお酒も一段と美味しいに違いない...ということで、終演後、こちらもお世話になっている横浜演劇鑑賞協会の方々と、みなとみらいの美しい夜景をバックに楽しい一夜を過ごすことが出来ました。さすがに芝居好きな人に悪い人はいませんな...窓の向こうの観覧車を眺めながら、人生もぐるぐる廻る観覧車みたいなもんやと思った次第でございます。

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みなとみらい

2018/11/19
【第1160回】

横浜KAAT横浜芸術劇場に「セールスマンの死」を観劇...風間杜夫がアーサーミラーの名作に挑戦。いやいや原作完全ノーカットということで休憩入れて3時間20分の芝居でした。アメリカンドリームのなれの果ての一人の男の話。無駄に自信満々に夢を見続け、大事な言葉を受け止めようともせず、現実を直視するのを避け家族ともうまくいかない男の狂喜寸前の極限状態を杜夫ちゃんが演じてました。彼の一人芝居「カラオケマン」に相通じるものもあるのだが、アーサーミラーの世界はアメリカの戦後すぐに書かれた戯曲なのでより深刻さが際立つ。「カラオケマン」は人情喜劇を書かせればこの人、水谷龍二さんの作だけに笑いたっぷりの作品なのだが、今回は重い空気が一貫している。

終演後、劇場の近くで一杯。ほとんど出ずっぱりの芝居だったはずの杜夫ちゃん開口一番「いや、もう一回やれまっせ!」何ちゅうこと言うのかいなこの人...誰でもそうなんだが、好きなことやってると身体も心も疲れ知らずでいられるんですな...そうですな、おいらも好きなことして活きまっせ!と言っても、一本の芝居創るのにも、あれやこれやと大変ですし人間関係もいろいろと難しいものがありまして、この大海の渦の中で悪戦苦闘する「プロデュサーの死」なんて芝居もありかもね...いやいや、おいらは芝居で死ぬなんて嫌ですがな。人生なにごともケセラセラ♪

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休日

2018/11/14
【第1159回】

劇団チョコレートケーキ第30回公演「遺産」を観劇...第二次世界大戦のさなか、中国の満洲に傀儡国家満州国を建国し、1940年から1945年の間、細菌兵器を作るために中国人を実験台として残虐行為を行った悪名高き731部隊の話である。国という集団と、その中にいる個人の葛藤劇ではあるが、今なお世界で頻発に起きている出来事と相通じるものがあり極めて現代的なテーマである。現代と過去を交互に見せながら、個人の尊厳に加えて、医学者の倫理と言う国を越えた普遍的なテーマを見事な構成で綴ってくれる。舞台上ガラスで作られた試験管を散りばめ、まさしく一触即発状態での役者の演技はスリリングであった。終演後、演出家に聞いたのだが、ガラスが割れた時点でいったん公演は中止するとのことだった。こうやって役者に対して緊張感を強いるのも演出家の狙いだったのかもしれない。それにしても、この劇団、歴史上とても触れない題材を敢えて選び果敢に挑戦していく姿勢に拍手を送りたい。これこそが現代演劇である。多くの賞を受賞した大正天皇を題材にした「治天ノ君」ナチス政権時代を扱った「熱狂」「あの記憶の記録」どれもが現代演劇のトップランナーとしてのポジションンを維持し続けている。

今年の紅葉、なんだかぱっとしない感じだな...色褪せた感じ、これも地球がやせ細った所為なのかな。今日もニュースで流れてました。北京ではマスク無しでは外出できない危険な状態。いくら経済大国になったとしても、これは頂けません。人間ほんとにアホですな...

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カマちゃんも生きてます

2018/11/12
【第1158回】

先週の土曜日、トム・プロジェクトがお世話になっているアルファ税務会計20周年感謝祭に行って来ました...150人ほど集まった会場は熱気に包まれていました。おいらもアルファ税務会計さんには随分とお世話になっています。会社を経営してる人達にとって憂鬱なのは税務調査。細々とやってる中小企業に厳しくしないでちょうだいな!悪の権化の企業たくさんあるんだから、そちらにチカラをいれてちょうだいな!と言いたい。24年ほどで3回入りました。税務調査官は、何を根拠にしているのか嬉々としてやってきます。なにかしら確信があるんでしょうな...おいらのところは不正なんかしてないのに、そりゃ少々のミスはありますがな。その鬼のような税務官に敢然と立ち向かってくれるのが正義の味方アルファ税務会計の皆さんです。あれを出せ、これを見せろなんて高飛車に出てくる税務官にピシャリ苦言を呈します。その表情は、まさしく今年の流行語大賞候補の「ボーっと生きてんじゃねえよ!」のチコちゃんに迫るものがありました。いやいや頼もしい限りです。

何故なのか?おいらが乾杯の挨拶をし、2時間半、楽しいアトラクションも含めて大盛会でございました。世の中本当に厳しい情勢であることに変わりはありません...皆、一様に来年10月からの消費税アップの話で持ちきりでした。すんなり社会保障費に使われるのなら理解できるのだが、これまでの政治家が行ったことを考えると、どうしても納得できないものが多々あるんでございますな。議員の縮小もやらず、不正しっぱなしの政権に誰もが不信感を抱くのは至極当然のことでありんすよ。

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日本のいい塩梅と出会う

2018/11/09
【第1157回】

今日の東京は雨がしとしと降っています...アメリカの中間選挙、アメリカは分断の道を突き進んでいます。世界はポピュリズムが蔓延しつつあります。自国主義第一、これは嘗ての世界が苦い体験をした世界第一次、第二次大戦の再来を予感させるくらいの負のイメージを抱いてしまいます。人は何故歴史に学べないのか、我欲をコントロールできないのか、愚かとしか言えません。連日報道されるアメリカを目指す移民キャラバン、貧しさと暴力から逃れる人たちの表情から希望は見えません。アフリカからヨーロッパに移動する難民も然り、こうやって豊かさと貧しさを日々見せられることによって人は何を考え、行動するのか、何故かほとんどの人が無力感に駆られているのではなかろうか...おいらの人生は残り少ないのだが、死後の世界も何度も何度もこの繰り返しをしながら地球という星は死滅してしまうんではなかろうかという悲観的な観測...ホンマにもったいないことでございます。こんな素敵な星は宇宙のなかで皆無でございます。多様な命が様々な形で共存し助け合いながら生きる星、これにストップをかけてるのがなんと人間、しかも同種の人間が殺し合う滑稽さを何千年行ってきています。

今日、久しぶりに新宿の街を散歩しました。新宿駅の通路を堂々と、しかも誇らしげに自慢のおっぱいを、これみよがしに見せつけるゲイの姿を見ながら、ここ日本国新宿解放区はまだまだ大丈夫かなと思った次第です。

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にゃんこも生きてます

2018/11/07
【第1156回】

月曜日の行橋市での「男の純情」一時間半笑いが絶えない公演でした...今年の3月にも「Sing a Song」で訪れたばかりのコスメイト行橋。お客様が演劇を楽しみにしていることが良くわかります。こうやって良質な作品を持っていけば、確実に芝居好きな観客を増やすことができるのではなかろうか。終演後、地元福岡出身の山崎銀之丞さんが挨拶で話した「お客さんの温かい声援のおかげで背中を押され、最後まで無事務めることが出来ました」

そりゃそうでしょう、あれだけのお客の反応がドッカンドッカン来れば乗りやすい役者さん天まで上るでしょうな。まさしく芝居は生き物です。演者と観客のキャッチボールで場内は幸せな雰囲気に包まれめでたしめでたし。ホールを後にする40歳前後の女性に「いつも素敵な作品ありがとうございます」と声を掛けられ、おいらほんまに嬉しゅうございました。

この日で、今回の九州公演は終わりということで役者、作家と共に「魚やビストロ遊楽」で打ち上げ。この店の大将は魚大好きの料理人、旬の魚を地元漁師と提携してリーズナブルな価格で提供しお客さんに喜んで頂くことが生き甲斐という、お客にとっては神様みたいな経営者。この日は、プロの芝居屋とプロの料理人が相対しての素敵な打ち上げになりました。無事に芝居を務め上げた役者と作家が旨い!を連発しながらの食する顔は、舞台で見せる顔とは一味違う表情でございました。

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お疲れさまでした!

2018/11/05
【第1155回】

昨日は福岡県小郡市での「男の純情」公演に行ってきました。小さな町に500人の人達が来てくれました。ほんなごつありがたいことでございます...芝居創ってるおいらとしては、改めてよか芝居を持ってこんといかんですばいと思った次第でございます。つまらん芝居を観た人は二度と芝居を観ることがありません。時間とお金を奪われた人の悲しみは計り知れないものがあります。そして芝居が悪の権化として語り継がれると思うとぞっとします...昨日のお客さまの笑いと、劇場を後にしていく人たちの満足気な表情を見るにつけプロデューサー冥利に尽きます。

公演終了後、作家の水谷龍二さん、市川猿弥さんと一緒に博多の名店「さきと」でおいしいお酒と魚を食しました。ここはカウンターだけの店でありながら予約なしでは入ることができません。その日の選りすぐった魚と、銘酒が一日に疲れを癒してくれます。博多はどこに行っても美味しいものを安く頂けるというものの、やはりより吟味されたものを出してくれる店が名店と言われる所以です。高くておいしいのは当たり前、ほどほどのお金で鮮度抜群の魚を出してこそ心ある名店ではなかろうか...そして店主の凛とした立ち姿、これがあってこそ画竜点晴ってもんでございます。締めは、やはり中洲屋台のラーメン、夜風に吹かれて今日も一日無事過ごせたことに感謝!

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博多の夜

2018/11/02
【第1154回】

昨日、無事に「男の純情」東京公演千秋楽を迎えることが出来ました...キャスト、スタッフの皆さん事故もなく本当に感謝です。おいらも1ステージを除き日々楽しませて頂きました。jazz好きなおいらはjazzに見立てての観劇。今日はピアノトリオ、さしずめ山崎銀之丞はピアノ、市川猿弥はベース、宇梶剛士はもちろんドラムなんて想像しながら三人の丁々発止のやりとりの1時間半ライブを満喫。ある時は管楽器のトリオ、ある時は弦楽器という具合にjazzと演劇が融合しあう様においら自身新たな発見をした次第でございます。

それにしても、改めて芝居はアンサンブルの良さにかかってます。今回の出演者の三人とも稽古期間も含めて良くお酒を飲んだのだが、芝居は勿論、酒宴の席でも三人の掛け合いが芝居同様面白く、別物の芝居を観ているようでありました。特に宇梶さん、猿弥さんのやりとりは漫才レベルの面白さ。つっこみの宇梶さんに、ぼけの猿弥さん、このコンビの漫才いけまっせ!こうやって無駄な酒は飲んでませんことよ。稽古以外の時間にも次なる戦略を錬ることを怠らないのがプロの役者でございます。

昨日は、新宿花園神社の一の酉の日でもありました。商売繁盛を祈っての熊手を求め沢山の人が集まり賑やかな日々の始まりです。おいらは随分昔から顔を出してるのですが、最近、熊手の売り手の人達の顔が優しくなったのが物足りないですかね?昔は小指を落とした強面の兄さん、オッさんがゴロゴロ居てまして、修羅場を潜った人達から買ってこそ御利益がありそうな気がしてたんですが...こんな見方って変でございましょうかね。

さて、「男の純情」11月4日から旅公演です。こんなご時世ですから、ここは劇場に足を運んで思いっきり笑い転げて明日の糧にしてくださいな皆の衆。

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笑売繁盛