トムプロジェクト

2016/12/26
【第906回】

先週の23日、トム・プロジェクトスタッフと、トム☆トム倶楽部の会員の皆さんと忘年会をやりました。会場は新宿の中華レストランの3階を貸し切っての3時間の大宴会。芝居の興行は、お客様あっての生業でございます。貴重な時間とお金を払って、どんな出し物か分からないのに来て頂くんですからほんまにお客様は神様でございます。ましてや、年間会員になって一年に最低3本は見て貰ってるんですから神神様ですな...一人一言の挨拶の中でもトムの芝居に対する愛情がひしひしと伝わって嬉しい限りです。今年は「砦」「風間杜夫ひとり芝居~正義の味方」「百枚めの写真」「静かな海へ~MINAMATA」「挽歌」5本上演しました。振り返ってみれば5作品に共通してることは、この混迷の時代に世界が喘ぎ呻吟している、平和、環境、家族に関する諸々のテーマが盛り込まれてることである。何も、演劇で世の中を変えるなんて大それたことを考えてる訳じゃないんだが、この垂れ流し見て見ぬ振り状態の国に微力ながら楔を打ちこみたい...己が出来る範囲で声あげんとえらいことになりまっせ!とまあ、一年を総括しながら来年に向けて更なる展開を考えては居るんですが、なかなか読めない世界のとっちらかりにはどんな術策を労すればいいのか?ほんまに心身休まる暇がありませんことよ。そんなことをちらちら考えながらの忘年会、所属俳優のお笑い漫才対決があったり、じゃんけんによる景品獲得ゲームがあったりで無事楽しく終えることが出来ました。今年も残すところ、あと5日でございます。皆さん穏やかな年末、年始をお過ごしくださいね...一年間、おいらの戯れ言にお付き合いくださってありがとうございます。新年は、心新たに4日から夢を吐き続けたいと思っています。

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年の瀬、新宿の夜景

2016/12/21
【第905回】

昨日、神奈川県「杜のホールはしもと」で満員のお客の中で「挽歌」最後の公演を観てきました。11月18日の茅野市民会館の初日から一ヶ月ちょいの長丁場、24ステージ目でした。いつも思うのだが、全国をハードなスケジュールで駆け巡り、事故もなく無事終えることが出来るのは、当たり前に見えながら、実は本当に奇跡に近いことなのです。キャスト・スタッフが病に伏したら、移動中、本番での事故が起きれば即公演中止になることだって十分に考えられるのだが、何事もなく千秋楽を迎えることが出来たことは、この芝居に関わったすべての人に唯々感謝です。おいらは、いつも己の驕りを捨て、森羅万象全てのものに己が生かされてることに感謝しながら日々過ごそうと心掛けています。感謝の気持ちがあれば、いろんな人達、モノが自ずから手を差し伸べて物事が円滑にいくように手助けしてくれます。非難されても、罵倒されても、どつかれても、感謝?そりゃ、おいらだって普通の人間でございます...くそ、この野郎何様だと思ってんだ!と、怒り心頭に発することもございます。ここが勝負の分かれ目なんです、喉元から飛び出しそうな怒りの情念をぐいっと引き戻しおへその下にある丹田に収めるんでございます。丹田とは、気を集めて練る事により、内丹を作り出すための体の部位で気が集まる場所です。丹とは、気エネルギーが蓄積され赤く輝く状態を指し、田とは、その エネルギーを貯める器を指します。おいら、これを知ったのは若い頃、極真空手をやってるときでした。疲れたときの息吹という呼気運動があり、邪気を思い切り吐ききり新しい気を丹田に収めると瞬時にして疲れた身体を蘇生させてくれるんでござんすよ。これを知ってからのおいらは、マイナスの感情(怒り、嫉妬、恨み、怨嗟、憎悪、自棄、破壊衝動など)が噴出しそうになったら丹田に収め、平常心を保つようにしておるんでござんす。そして、いろんな人がいるんだなとお勉強の見本にさせて頂いています。いろんなお人がいるんでこの世の中バランスがとれ面白いんじゃありませんかな...とまあ、能書きはさておいて今年の全公演無事終えることが出来ました。おいらにもご褒美せなあかんと思い夜遅く好きなジャズ聴きながら大好きなスペインワインで乾杯しましたことよ。¡Salud!

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オフィスビルでもクリスマス

2016/12/19
【第904回】

土曜日の京王線の車内での出来事は...おいらはかなり空いてた車両の優先席に座っていました。隣には品のいいおばあちゃん、年季の入った文庫本を読んでいました。おばあちゃんの横のドア付近で30歳前後の若いお母さんが、なにやらごそごそしています。そばには3、4歳ぐらいの男の子がぐずっています。おばあちゃんめざとくその様子を感じ取りながら、バッグの中からポリ袋を取りだし、若いお母さんに渡しました。そして自ら立ち上がり他の乗客に見えないように子供を囲みながら「大丈夫...大丈夫...」と声を掛けていました。おいらも、覗き込むわけにもいかず、どうしたんだろうと思っていたんですが、新宿の駅に着き判明しました。どうやら子供がおしっこを我慢できずに出してしまったんですね。品のいいおばあちゃんの優しさ溢れた手助けに若いママは本当に感謝しとりました。こんな光景を見るたびに、人の優しさがどれほど周りを温かくし、人間って手を差しのばせばいろんな事にまだまだ希望が見えるんだなと思いました。

日本とロシアの領土交渉...プーチンが一枚も二枚も上手ですわ。秘密警察出身の経済マフィアの男とアベちゃんでは格が違いますな。あの何を考えてるか分からない鉄面皮顔で睨み付けられたら領土返して下さいな!なんて言えまっせん。お金だけ湯水のごとく出させて、「ありがとさんアベちゃん、あんたはほんまにええ男や...」なんてあべこべにならんといてや...あの鈴木宗男のおっさんもなんだか嬉しそうな顔してアベちゃんをヨイショしてるんだが、おめでたいおっさんやな...一時は泣きながら国を憂う政治家として己の無罪を主張してたおっさんの出番なんだが、あまり調子こいてると又、どつかれますからほどほどにしときや...世界は混沌、一寸先は闇でございます。

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街はクリスマス一色

2016/12/16
【第903回】

「挽歌」旅公演中ながら、来年1月10日から始まる「萩咲く頃に」の稽古が始まりました。この公演は2014年に創った作品です。「挽歌」と同じく、東日本大震災に関わる作品です。作・演出のふたくちつよしさんは日常を淡々と描く、さしずめ演劇界の小津安二郎というべき作家ではなかろうか...おいらは、地味ながら人間の機微を細かく優しく語りかけてくれるふたくち節は好きですね。そして何よりも音無美紀子さん、大和田獏さんはじめ若手3人のチームワークが抜群です。この芝居は、地震を通じて壊れかけた家族が再生する話ですからキャストの信頼感は、すなわち芝居の仕上がりにも影響してきます。稽古始めの本読み、おいらも初演よりも更にグレードアップした作品になることを確信しました。

それにしてもだ!沖縄本島沖の海上で12月13日夜、アメリカ軍海兵隊の輸送機オスプレイが海上に墜落、不時着した事故を受け、在沖縄海兵隊トップが「感謝されるべきだ」と発言したと報じられた。住民に被害が出なかったから...なんじゃい!これがアメリカの常識だ。沖縄からアメリカ基地がなくなることはないだろうし、政府も儀礼上の抗議アピールをしたに過ぎない。この沖縄の置かれた立場どうすりゃいいんだ...結論から言えば、おいらも含めて日本の国民はみな狡いとしかいいようがない。残念ながらどうにも出来ないんだから...翻って言えば先の大戦も、東日本大震災の原発事故も、政治が停滞しているのも、この国の人達の怠慢と諦めと保全、すなわち狡さの結果だと思う。やはり、この国に住んでいる以上声をあげなきゃ駄目だと思う。今の国会の惨状目に余るものがある。なんでんかんでん多数の力を借りての強行採決の日々...これも国民が選挙で選んだ結果、しかも半数近くの人達が棄権。にんまりほくそ笑むのは政治家、大企業の資産家ですぞ...どうにかせんと、どげんもならんですばい!

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新宿南口イルミネーション

2016/12/14
【第902回】

今日もシリアの虐殺、世界各国のテロの報道、世界の平和はいつになったら来るんだろうか...おいらは、いつになっても来ることは無いだろうと思っています。人間のあくなき欲望は尽きることがありません。お金、権力を手にしたものはそれを守ろうとします。それに対する人達が必ず出現し争いになります。それにしても殺戮までにいたる人の心の崩壊に心が痛みます。おいらも沢山の芝居を創ってきましたが、この過程の中でも小さな争いはつきものです。そんな時は、争いをこちらが降りれば全面戦争には至らないはずです。こんな大変な世界の状況のなか、日本での生き方は、単なる比較では判断できない面もありますが、随分恵まれてる環境だと思います。がしかし、感謝の気持ちも持てず、自分の正義?もしくは感情で我を貫き通す人がいるのも事実です。そんな時、おいらはいつも思います。相手に指さし責めるのではなく、己に指を向け、おいらまだまだ勉強せねばと...悪しき感情に留まってると悪魔がすり寄ってきますぞ!くわばらくわばら...

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もうすぐ新年だにゃ~

2016/12/12
【第901回】

この季節「枯葉」をよく聴きます...「枯葉」と言えばシャンソンなんですが、おいらはジャズで聴きます。キャノンボール・アダレイのサックス、ビル・エヴァンスのピアノ、若いところでニッキー・パロット。この名曲をこれらの名手が様々なアレンジをしながら演奏してるのがたまらんですばい。先日も枯葉で広場の一面を、まるでクレーが描く作品にしてしまった公園を散歩しながら、思わず枯葉を口ずさんでしまいました。そのときそのときの気分でピアノ風になったりサックス風になったり、その瞬間は枯葉を舞台にしたおいらのひとり芝居です。自然がお膳立てしてくれた至福に時間に感謝です。

今日12月12日は漢字の日らしいです。「1(いい)2(じ)1(いち)2(じ)」=「いい字1字」の語呂合わせです。漢字は、おいら大好きです。この歴史と意義深い文字は本当に深いです。筆で遊んでいるうちに漢字が絵になっちゃう面白さをいつの頃からか味をしめ、いまでもひとり遊びをしています。ちょいとした遊び心で、世界は果てしなく広がっていきます。お金もかからんし、今時高いお金払ってスマホいじってる人達に教えてあげたいですな。遊び心と想像力、これが創造の両翼ですぞ皆の衆。

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枯葉

2016/12/09
【第900回】

昨日、亀戸文化センターに「挽歌」を観に行ってきました...芝居は見違えるほど進化しています。役者の情動が激しく交錯し、よりドラマチックになっていました。俳優の貪欲な表現への拘りが芝居を立体的に構築していくことを改めて感じた次第です。

終演後、楽屋に行こうとして劇場の通路を歩いていると、一人のご婦人がハンカチで顔を覆い咽び泣きをしていたので、おいら声を掛けました。すると65歳くらいのご婦人一言「帰りたい...」おいらすかさず「福島の方ですか?」と問いかけると「浪江町...」ぽつり答えてくれました。おいら、もうそれ以上話しかけることが出来ませんでした。江東区は福島からの避難民を沢山引き受けています。多分、区の広報を通じ今回の芝居を観劇したに違いありません。この芝居は、大熊町から同じ福島県の会津若松に避難してきた人達の、故郷に対する愛着を描いたものです。このご婦人が、大熊町と浪江町がダブったのは至極当然だったと思います。平成28年11月10日現在、全国の避難者等の数は、約13万4千人、全国47都道府県、1,102の市区町村に避難生活を余儀なくされています。

おいらは又しても声を大にして言いたい。オリンピック処じゃないだろう!今年起きた熊本地震後の被災地もままならないことも含めて、もっとメディアは現状を把握し報道しろってわけだ。韓国の大統領のスキャンダルばかりおもしろおかしく報道し、肝心の被災者のことは過去だと言わんばかりの、この国の在り方に異議申し立てをしたい。

そして、鹿児島の川内原発の再稼働、原発再稼働反対で当選した三反園知事あんたはなんじゃい!人は権力を手にすると簡単に寝返る良い見本です。原発の輸出、再稼働の動き、カジノ、この国は知らぬうちに汚染に塗れたしまりのない列島になりますぞ...

今も、昨日の劇場のご婦人の悲しみ、悔しさをこらえながら涙する顔を忘れることが出来ません。

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夜空と紅葉

 

2016/12/07
【第899回】

本日、所用でふらり上野に行きました...上野は東北の人達の心の故郷です。東北からの集団就職、出稼ぎに上京したときの終着駅です。夢破れ故郷に帰るときの出発駅でもあります。おいらは九州博多の出身だから、あまり上野は馴染みが薄かったのだが、美術館、アメ横なんかに来たときに、上野独特の雰囲気になんだかほっとした気分にさせられました。どこがって?そりゃ、とっても田舎くさくて気取りがないので、安心して心身を解放されます。この地で気取ってると、浮いてしまっておのずからはじき飛ばされてしまいます。この地でお洒落してる人達は、お洒落を通り越して奇抜奇天烈なファッションが多いですな...昔、映画でもあったな、俺は田舎のプレスリーみたいな感じかな。なかなか個性溢れて面白い人達を見ることが出来る...あと、上野動物園にもよく来ましたな。若い頃、芝居やってるときに役作りに悩んでるときにヒントになるのが動物たちの一挙手一投足でございました。それはそれは、動物たちの表情は見事なものでした。暫し見つめ合っているうちに表現がなんたるものか?俳優養成所の小難しい理論をぶつ先生よりも、遙かに優れた教師でございました。

東京の都市も大きく変貌はしているものの、ここ上野はそれほどの変質もなく、昔の良き下町の拠点としての佇まいを残し続けて欲しいもんだと思った次第です。

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上野の西郷さん

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不忍池

2016/12/05
【第898回】

昨日で「挽歌」東京公演無事終了しました...今回の6ステージのうち5ステージを観たのだが、全て違うところが、さすがライブでございます。同じ事は決して出来ません。舞台の上は表現者にとって戦場であり、宝を探し出す宝庫でもあり、時には己の貧しさを指摘され奈落の底に突き落とされる非情の場でもあります...そんなこんなを思いながら、日々見続けることは大変スリリングなひとときです。

先日、著名な評論家A氏から芝居の感想文が送られてきました。

 

昨日(12月1日マチネー)の「挽歌」は素晴らしい作品でした。私は夢幻能を連想しました。林四郎(高橋長英)がシテ、他の人々はワキです。夢幻能ではシテは死者なので、事件の証人として最後の語り部になりますが、同時に現在の時間には決して関わってくることがありません。ところが「挽歌」ではシテは死者と生者の両方の役割を担って、この矛盾を鮮やかに解決しています。まことに驚嘆いたしました。

 

いやはや、演劇は見る人の視点でいろんな思いを想像させるんですね。これが芝居の面白いところです。軽佻浮薄な作りもんに夢中にならないで、たまには劇場に足を運び、己の想像力が錆び付いていないかどうか点検してみてはいかがかな...

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新手の宣伝(本日新宿にて)

2016/12/02
【第897回】

「挽歌」東京公演2ステージが終了しました...おいらが最初に観劇した長野県茅野市での公演から格段に良くなっていることは確かだ。まさしく芝居は生き物である、誕生した作品が観客の目に晒されることにより、俳優を多くのことに気づき新たな発見をする。だから役者は止められないのである。観客の声に出さない息遣いを微かに感じながら、表現の奥深さにわななき震え、さらなる表現の高見を目指す。俺は今、舞台で生きてるんだ!こりゃたまりませんばい...こうやって魔物の世界に魅せられ人生を棒に振る人も出る恐ろしい世界でございます。その修羅の世界を見たくてお金と時間を労してお客様はやってくる...

今回の芝居は、東日本大震災に被災した福島県大熊町の人達の物語。あの大変な状況にあった人達の悲しみ、思い、希望、不安、絶望をフィクションの世界でどれだけ現実に肉薄し、現況を変えうるエネルギーを生み出し得るか、そこが作品の正否を決める。

芝居がはね、出口に向かうお客の表情を見るのもプロデューサーの大切な仕事。芝居の温度がそのままお客の温度として、こちらに手に取るように分かるのが面白い。さてさて、明日はどうなることやら...芝居はまさしく博打でございます。

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今年もこれが見納めの彩り