トムプロジェクト

2017/04/28
【第947回】

昨日は西荻窪にあるライブハウス「音や金時」で、俳句・書、ベース、ダンスが三位一体となったパフォーマンスを観てきました...と、言うより感じてきましたかな?80年代より山下洋輔さんらジャズの先鋭的な人達と共演してきたベース奏者、吉野弘志さんの地を這うようなベース音を身体で感じながら踊る遠藤栄江さんの即興表現も素敵でした。おいらも20代の頃モダンダンスの公演に飛び入り参加したり、暗黒舞踏の創始者、土方巽氏の稽古場アスベスト館に良く出入りした経験があり、この手のパフォーマンスは得意の分野でございます。今や渋くて重厚な俳優として活躍している田中珉さんが、40数年前に中野の小さなスタジオでおちんちんに包帯巻いて(見せちゃうと公然猥褻罪になりますから)全裸で床を寝転びながらの踊りなんかよく観てましたから...舞踏なるもの、日本人の身体の特性をしっかりと見極め、外国人の体型に負けない踊りを独創的に考案したものです。足の短い日本人が腰を落とし大地を踏みしめながら内面の葛藤を表現する手法は、瞬く間に世界に拡がりました。そんなことを思いながら、昨日の公演を楽しませて頂きました。

この日、もう一人の主役は、音と踊りを身体で受け止め即興で句を創り壁面の白紙に書をしたためたMama-kinさんかもしれませんね...絶妙な間でしたためた毛筆は、このパフォーマンスに確かな彩りを添えていました。そして、スタジオ内に立ち籠める墨の匂いがなんともエロチックでございました。

さてさて、明日からGWでございます。夢吐き通信も5月7日までお休みでございます。皆さんも有意義なGMを楽しんでくださいね...

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新緑3

2017/04/26
【第946回】

今、藤原新也さんの新作「大鮃」を読んでいる...この作家はおいらより2歳年上で福岡県門司の出身である。彼の著作は「印度放浪」を皮切りに随分と読んでいる。旅が好きで写真と独特の文体で、その土地の体臭をプンプンさせながら綴られるドキュメント風小説は、鋭い文明批評にもなっている。おいらが最も好きな一冊は「鉄輪」である。彼の両親が門司で経営していた旅館が破綻し別府の鉄輪温泉に逃げたときの自伝小説でもある。写真家でもある彼の捉えた風景が、まるでその場にいるようなタッチで浮かび上がり、生と死、そしてエロスを匂わせてくれる。おいらが同じく少年時代に過ごした博多の長屋、遊郭、場末が見事にダブってくることに親しみを感じるのかも知れない...彼の著作「全東洋街道」「東京漂流」「メメント・モリ」どれもが、人が決して目に触れることのない事象をとことん凝視し続けることによって、物事の本質を突き詰めていく手法は変わることがない。

「大鮃」の中にこんな件がある

これまで太古(主人公の少年)が暮らしてきた日本のような国は、普通の日常でもテレビの中でもゲームのように人を飽きさせないようにめまぐるしく変化し、人々は数秒ごとにそれを忘れ、また次の興奮を求めて情報の渦に巻き込まれ、ついには疲れ果て、時にはひきこもりになったりする...「マークさん(太古が異国の旅先で出会った老人)。現実の世界というものはゲームの中やテレビや映画の中のように目の前が目まぐるしく変化したり、どんでん返しがあったりするような世界ではないのですね」

ハイテクに塗れ疲弊していく国家、人民の行く末に警鐘を鳴らすと同時に、己の眼、感性で現実に蠢いている自然の現象を感じ取り身体に焼き付けていくことがいかに大切なことかを書き続けてる作家の一人である。

年功序列、派閥均衡などなどで造られたアホな大臣がまたまた辞任。北朝鮮の刈り上げクンとアメリカのわざとらしい髪型クンとが一触即発だというのに、この日本の危機意識の無さ...しょんがなかんべさ!国民が選んだ政治屋さんばかりだもん...

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新緑2

2017/04/24
【第945回】

今年の獅子はいけますな...ライオンズ昨日も勝ちました。この3連戦ハムをむしゃむしゃと食いちぎり飲み込んでしまいました。あの巨大な昨年のハムは見る影もありません。それにしても監督が替わるだけでこれだけ違うんですね。昨年までは気の良いおっちゃん監督、人が良いだけでは試合には勝てませんがな。今年の監督は、西武ライオンズの黄金時代を守備と野球センスで支えた辻発彦。さすがに守りをキャンプでしっかりと鍛えました。打撃はもともと良いものを持った選手が存在していたので、投手を初め守備がしっかりさえすれば、Aクラスに位置するチームであることは間違いない事は分かっていました。その手始めに起用したのがショートを守る新人の源田。社会人から来た新人なんだがなかなかの逸材、昨年さんざん泣かされたエラーも改善され希望が見えてきました...と、思ってたら昨日、一昨日で4エラーしちゃいました。でも、それがあまり目立たないくらいの働きをしているので、まだまだ伸びしろ十分な選手です。辻監督のきめ細かい野球と、若い選手を育てようとしているビジョンがおいらにとってはとても楽しみなところです。GWには今年初めての西武球場に出かけてみようと思っとります。

と、楽しみにはしてるんですが北朝鮮...ほんまにどうなることやら?いやいや、世界は時計の針を逆回りにしてますな。まさしく歴史は繰り返す、歴史に学ぶなんて言葉を忘れちゃって、おれがおれがの我の世界に溺れていきそうな様相を呈しています。好きな野球を心置きなく楽しめる平和な世の中で居て欲しい!他人任せではなく、一人一人が真摯な気持ちとアクションを起こさないとほんまに地球滅亡もありまっせ...

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新緑

2017/04/21
【第944回】

先日、思い出横丁(ションベン横丁)にある「やぶ天」に焼き鯖定食を食べに行ったのだが、なんと閉店してるではないか...この店には半世紀通っていました。最初は大学時代、夜毎、新宿を徘徊する腹ごしらえとしてよく利用しました。戦後の闇市をそのまま残したションベン臭いこの横丁に立ち寄ると何故かほっとしました。狭い店内で肩寄せ合いながら飲食しているうちに見知らぬ人達と言葉を交わし、本来の人間性を取り戻せる場所だったんですね。その中でも「やぶ店」はアルコールを一切出さない食事に拘った店でした。築地で仕入れてきた魚はどれも新鮮でした。おいらが大好きだった焼き鯖、店内で年季が入った網でじっくりと焼いてる様をカウンター越しに見てるのがなんとも微笑ましい光景でした。それは子供の頃、おふくろが七輪に練炭で火をおこし頼りない網で鯖を焼いている姿を想い出させてくれました。最初の頃は、東北から出稼ぎに来たおばさんが10人入れば一杯になる店内を明るさで大いに盛り上げていました。おいらが帰るときはいつも「元気でね!」と声を掛けてくれました。貧乏学生におばさんなりにエールを送っていたんですね...しばらく行かなくなると、おばさんも居なくなり、大柄の男性が店を取り仕切ることになりました。一度、おいらが大切な時計を忘れ、翌日お店に行くとちゃんと保管してありました。この店の誠実さを改めて知らされた思いでした...その後も、何故か惹かれるように立ち寄り焼き鯖定食を食べていると、いつもあの日あの頃のおいらの姿が蘇ってきます...年を重ね、どんな立場、境遇になろうとも、いつも夢とロマンと冒険を追い続けたおいらの原点を忘れちゃいかんよ!ボロは着てても心は錦...三つ星かなんかしらんけど、格好付けたどんな店よりも、おいらにとっては満点星のような店でした。ありがとう!そしてお疲れ様でした。

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新宿の原点

2017/04/19
【第943回】

早速、温泉効果が出てますぞ...みんなの顔はピカピカ、声もすっきり、大変よろしゅうございます。本当に日本人に生まれて良かったと実感できる一つです。おいらは九州の出なので、九州の名湯は大体行ってます。一番人気の大分湯布院温泉、あまりにも有名になりすぎて昔の情緒風情が壊されつつありますが、田舎の佇まいを残しながら頑張ってますね。お湯もさることながら、おいらのお気に入りは金鱗湖の側にある喫茶店「天井桟敷」でございます。由布院の「御三家」と言われる亀の井別荘が経営しているお店です。江戸末期の造り酒屋の屋根裏を活かし、梁が組まれている店内はとても良い雰囲気です。BGMはグレゴリア聖歌、清らかな声を聴きながらの一杯の珈琲はたまりませんばい。熊本の黒川温泉もいいですね。標高700mのところに位置し、筑後川の支流である田の原川沿いに、懐かしさあふれる宿が立ち並び、湯治場の雰囲気を残している。このなんでもない普通の田舎に、ちょいとアイディアを活かしながら名温泉にした村の人達に拍手です...その他長崎県の雲仙、鹿児島の霧島、佐賀の嬉野などなど、九州はよかとこですたい。

トランプ、プーチン、金正恩、アサド、イスラム過激派、ヨーロッパ右翼の皆さん一堂に会して九州温泉サミットでも開いたら如何かな...争いがいかに馬鹿げたことか、心地よいお湯が理屈無しに教えてくれますがな。

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名店「天井桟敷」

2017/04/17
【第942回】

週末、久しぶりに二泊三日で社員研修旅行に行って参りました。何処に行ったの?新年度にあたりこの時期に相応しいところといえば、そりゃ温泉でしょう。新緑近いひっそりと佇む群馬四万温泉で研修して参りました。あくまで研修ですから、源泉掛け流しでゆったりとしたところでないと良いアイディアは浮かばないので...創業1563年の老舗旅館、大浴場や露天風呂が合計8つあり、その全ては敷地内の自家源泉から沸く天然温泉を完全なるかけ流しで営業し続けている「四万たむら」...に決定。何度も湯に浸かり古くなった記憶を洗い流し、新しい斬新な構想を身体に記憶させました。テーブルを前にして、しかめ面で頭を捻ってもいい考えは浮かびません事よ。裸になって、自然の恵みの恩恵を十分に享受しながら頭を空っぽすると、自ずから智恵が飛び込んでくるもんでございます。風呂上がりのビールがこれまた極上の喉越しの飲み物。こんな時間を過ごした全員が集まる夕食時にはお湯で癒された心身は、まさしく日常のストレスが見事に払拭され爽やかスッキリのお顔でございました...で、どんな話をしたのか?これからのトム・プロジェクトの仕事ぶりをご覧になれば分かると思いますよ...皆さん期待しててちょうだいね!

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マイナスイオンたっぷり温泉

2017/04/12
【第941回】

50歳を機に朝日新聞の記者を退社した稲垣えみ子さんの「魂の退社」読んでます。小さい頃から優等生で、優秀な学校を卒業し朝日新聞に入社、まあそれなりにいい立場まで行ったのだが、このままでいいのか?と疑問を持ち退社。まあまあの給料で衣服、化粧品など買いまくり、それなりに満足していたのだが、香川県に赴任し安い讃岐うどんを食べながら暮らす人達を見てはたと気づいたそうな...「お金が欲しい」と思う人の処にはお金は集まらず、「別にお金なんていいや」と思った瞬間に、お金の方から近づいてきて、しかもなかなか離れていかない。そうなんです!男女の恋愛にも通じるところがあるんですね...人の欲望なんて果てしなく、そんな資本主義社会のシステムに乗っかって物欲、出世欲に取り憑かれた亡者になっちゃいけませんって事よ...会社は一生面倒みてくれるわけでもないし、定年後の第二に人生をいかに有意義に過ごすことを念頭に置いて早めの退社をしたそうな...その手始めに、今まで世界にはあらゆるものが「ある」世界を追求した彼女は、「ない」ということの中に実は無限の可能性があるのではないかということを実践したんですね。先ずは電子レンジ、扇風機、こたつ、ホットカーペット、電気毛布など電化製品を捨て始めたんです。どれもあったら便利と思い込んでたものが、なきゃないで済ますことが出来たんですね。電子レンジの代わりに蒸し器、ホットカーペットの代わりに湯たんぽ...少し工夫すれば快適であったり面白かったりするわけです。冷蔵庫がないと無駄な買い物もしなくなり日々新鮮なものを食べてたそうです。

彼女の生き方が全てではないですが、このなんでも「あり」の世の中に疑問を抱き、「ない」ことから想像する事から始まった時代に回帰することも必要ではないかしら...

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新宿御苑

2017/04/10
【第940回】

4月6日に加川良が亡くなった...フォーク全盛時代に、一人気になる存在だった。独特の声と風刺が効いていながら、何故か純粋な魂を彷彿させる歌詞に惹かれるものがあった。おいらが芝居を創り始めたときに、ふと気になって話したこともない彼と連絡を取り、一杯飲みながらいろんな事を話したのが22年前だったかな...おいらが想像してたそのままの加川良だった。一見ゲバラにも似た顔から少年のような風情を見せる表情に、おいらもついつい心を許してしまい、4時間ばかりの有意義なひとときを過ごしたことを、つい昨日のことのように覚えている。結局、彼との共同作業は実現しなかったのだが、その後も新宿の駅前で小コンサートを、こっそり拝見し、良さんしぶとくやってますなとエールを送った。その後は、彼に会いたくなったときはCDを聴きながら加川節を堪能させてもらっていた。今年、母の一周忌で博多に帰ったときに、弟が昨年12月6日博多で行った加川良のライブに行き購入したアルバムを聴かせて貰った。タイトルは「みらい」青空から始まる6曲は、いつまでも変わらぬ良さんだった。この博多でのライブが彼の最後の舞台であった。彼の代表作である「教訓1」こそ、今のきな臭い時代に対する遺言かも知れない...

 

 命はひとつ 人生は1回
 だから 命をすてないようにネ
 あわてると つい フラフラと
 御国のためなのと 言われるとネ
 青くなって しりごみなさい
 にげなさい かくれなさい

 御国は俺達 死んだとて
 ずっと後まで 残りますヨネ
 失礼しましたで 終るだけ
 命の スペアは ありませんヨ
 青くなって しりごみなさい
 にげなさい かくれなさい

 命をすてて 男になれと
 言われた時には ふるえましょうヨネ
 そうよ 私しゃ 私しゃ 女で結構
 女のくさったので かまいませんよ
 青くなって しりごみなさい
 にげなさい かくれなさい

 死んで神様と 言われるよりも
 生きてバカだと いわれましょうヨネ
 きれいごと ならべられた時も
 この命を すてないようにネ
 青くなって しりごみなさい
 にげなさい かくれなさい

 青くなって しりごみなさい
 にげなさい かくれなさい

 青くなって しりごみなさい
 にげなさい かくれなさい

 

良さん!貴男の69年間の心情はCDにすべて歌い込められてますよ...昨日の夜も、貴男の天衣無縫な笑顔を想い出しながら最後のCD「みらい」を聴きましたよ...

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善福寺川緑地公園

2017/04/07
【第939回】

昨日は詩人、映画監督の福間健二夫妻と国立で桜見物と飲み会をやりました...大学教授を定年退職され、今は詩を書くことと映画を創ることに集中。夫妻とは40年来の友人で、ともにスペイン、ポルトガルを愛する仲間です。お互いにいくつになっても変わらんな!と思っていることでしょう...そうなんです、変わってたまるか!と言う志で生きてきました。最初に出した本も「変わるな!スペイン」初めての異国の地スペイン人の生き方に共鳴、便利さと利益に奔走する世界に背を向けて、日々の何気ない幸せを大切にする二つの国にメッセージを送ったという次第です。EUのお荷物?結構じゃありませんか!利潤を求め、挙げ句の果ては又もや戦争ごっこ、懲りない先進国の面々より人間として上等な気がします。そんなこんなで国立のメイン通り1㎞に連なる桜並木を眺めた後、健二さん行きつけの居酒屋で談笑、楽しい話だと酒も料理も数段美味しくなるものです。連れ合いの恵子さんもとてもチャーミングな方なんですが、映画のプロデュサーとなるとなかなか厳しいお方です。今年も新作を構想中で、健二さんと丁々発止のやりとりを聞かせて頂きました。おいらもそうなんだが、新しいものを創出するときのエネルギーは半端じゃありませんことよ...お金が絡み、人間関係の難しさを乗り越え誕生させる苦労たるや...時折、もうこんな面倒なことやめちゃえ!なんて思うこともあるんですがね...それにしても、健二さんよく飲みますな。ビール飲んで日本酒飲んで焼酎、これで終わりかなと思いきや「けっちゃんウイスキー飲まない...」飲んじゃいましたよ。国立から我が家までほろ酔い加減で帰宅しました...健二さん、あまり飲み過ぎないようにね!だって、お互いに語り合えることによって、いつまでも少年であることを確かめ合える仲間で居たいですからね...

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国立の桜並木

2017/04/04
【第938回】

東京の桜、満開宣言が出たのだが、まだまだ至る所でちらつきがあり、今週週末が見所かな...桜はいつ見てもいいもんですな。ピーカンの桜、薄曇りの桜、小雨降る桜、もちろん夜桜も風情があります...この桜を見る度に、今年もこうやって春を迎えることが出来たことに感謝です。あと何年、こうやって桜を眺めることが出来るんだろう?なんて感傷的な気分になってきたのも年の所為かなと思いつつも、良寛和尚が詠った「散る桜、残る桜も、散る桜」のごとく桜を眺めてると、生死を忘れしなやかに穏やかに自然に身を任せ生きることを指南してくれますな...

今年のアカデミー作品賞を意外な形で受賞した「ムーンライト」観てきました。これと言ったストーリーもなく淡々と時間が流れていくのだが、黒人俳優の素に見える演技力に脱帽。演技とはなんぞや?と思わせる表現と、その表情を決め細かくえぐり取った監督の思いに拍手を送りたい。こんな低予算で地味な作品に賞を贈るアメリカの良心もいいですな。明らかにトランプ大統領を意識してるのは分かるのだが、こうやって全世界に訴えるだけの求心力がまだまだ残っている多民族国家の良さを改めて感じます...それに比して、なんじゃらほいの我が日本。日本アカデミー賞の選定基準の甘さったらありゃしませんがな...何もかもがお上のお顔を伺いながら物事を進めていく日本システムにうんざりしながら手を打てないこのニッポン。教育勅語が教科書に掲載されるなんてまさか!いやまさかじゃありませんことよ...

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神田川の桜