トムプロジェクト

2023/12/27
【第1840回】

トム・プロジェクトも今日が仕事納め。

今年は1作品だけ残念ながら中止になりましたが、ほかの4作品無事に完走できました。芝居はスタッフ、キャスト含め誰一人として欠かすことが出来ないものです。まだまだ感染症も油断できないなか、みなさん程よい緊張感を保ちながら現場を創造できたと思います。そしてなによりも、芝居を観て頂いた観客の温かい声援があったからこそ完走できたと、あらためて感謝。終演後、観客席から出てこられたお客様の表情でその日の芝居の出来が分かります。今年の作品はいずれも満足気なお顔でございました。中にはロビーに立っているおいらに近寄り「良かった!」なんて声を掛けられると苦労も吹っ飛んでしまいます。

芝居は何とか無事に終えることが出来たのですが、日々メディアで流れるウクライナ、ガザ地区での目を覆う惨状、気候変動による災害などなど、世界平和には程遠いのが現状です。日本の政治の劣化も困ったもんでございます。そして一瞬にして訪れる災難、昨日、おいらが良く散歩する道路を歩いていた家族の自動車による事故。奥さんと娘さんを亡くされた遺族の悲しみはいかばかりか...この時代、何が起きても不思議じゃない世の中になってしまいました。

来年こそは、少しでも平穏な時間が流れる年であって欲しいものです。

では皆さん良い新年をお迎えくださいね。

1840.jpg

寒椿

2023/12/25
【第1839回】

2017年に亡くなられた作家・赤染晶子さんのエッセイ55篇と、2011年1月から3月にかけて、翻訳家並びにエッセイストの岸本佐知子さんとの「交換日記」を収めた一冊「ジャムパンの日」読了。何気ない日々のなかで起こる出来事に彼女なりの妄想を絡めた文章が面白い。

 

わたしは蠅取り紙が大好きだ。蠅取り紙は美しい。あのヴィヴィッドな黄色はゴッホの「ひまわり」を越えている。そこに黒い蠅が止まることで、とても見事な色のコントラスが生まれる。蠅は命を投げ出して、この美しさを生み出すのである。これがご飯粒では様にならない。蠅でなければならない。もしかしたら、蠅は蠅取り紙に出会うために生まれて来たのではないか。わたしには夢があった。蠅取り紙に蠅がくっつく瞬間を見たい。芸術の生まれる瞬間を観たい。

 

このなんともシュールな妄想。もしかしたら創造、想像、妄想は人生を楽しく生きる三種の神器かもしれない。これを政治の世界でも生かして欲しいが一歩間違えば、ヒトラー、プーチン、北朝鮮のかりあげ君なんかを生み出す危険もあるので要は使い方次第だ。

おいらも今朝ある妄想に駆られました...いつもは朝早くからやってくる小鳥たちが来ないので、もしや昨日イブのためのチキンをぶら下げてるニンゲンの様子を見て、鳥たちも危機感を感じ、今日のクリスマスが終わるまで身を潜めていようということになったのかしら...

1839.jpg

師走の新宿

2023/12/22
【第1838回】

最近、BS12での東映映画「日本侠客伝」を良く観ています。懐かしいですな!勿論、あの高倉健さん主役のシリーズものです。筋立ては決まりものの勧善懲悪、ラストは健さんの渋い歌声に乗りドスを片手に極悪非道の親分のもとに殴り込むお決まりのコース。その助っ人が鶴田浩二、池辺良などなど豪華ゲストときたもんですからたまりません。ヒロインは藤純子、透き通るような肌にしっとりとした彫り物がこれまたたまりませんことよ。そして、脇役に藤山寛美、大木実、辰巳柳太郎、島田正吾、若山富三郎、二谷英明などなど豪華な顔ぶれ。伴淳三郎、上田吉次郎なんかの登場には思わず笑いがこみ上げてきました。

思えばこのシリーズ、今は無き新宿昭和館でおいらも観たもんでございます。客席には全共闘の学生も来ていました。健さんが殴りこみに行くシーンになると「待ってました健さん!」の声があちこちから聞こえてきました。彼らにすれば時の権力を打倒するためにゲバ棒持って国会に向かう姿をオーバーラップしたに違いありません。

旧きやくざ映画の典型ながら、役者の粋、色気、そして存在感、見世物としてはなかなかのものです。監督を務めるマキノ雅弘の職人芸にただただ感心します。映画に対する愛情がスクリーン一杯に溢れかえっています。

高倉健さんみたいなスターはもう出てこないでしょう...勝新太郎、三船敏郎然り、あの時代だからこそ誕生した俳優だと思います。それにしても何事にも窮屈になったこの時代、すべてがこじんまりとし、程よくまとまり過ぎたモノに覆い尽くされていて、おもろくありません...こうなったら、自分でおもろくするしかありませんな。

1838.jpg

新宿南口

2023/12/20
【第1837回】

昨日は中津留章仁作・演出の「STRANGE ISLAND」を観劇。新宿御苑前駅の近くにあるサンモールスタジオの一番前のかぶりつきなので緊張しました。最前列で観るなんてことは普段ありません(つまらん芝居であっても居眠り出来ませんからね...)美しい女性が次から次に登場するのでモデル系事務所主催の芝居かなと思いながら観ていたんですが、おっとどっこい、ここは中津留イズムがびっしりと貫かれ、各俳優熱演、2時間40分の長丁場ながら最後まで楽しめました。誰しもが持つ人間の欲、愛、情、のやりとりを描きながら、社会性とエンタメ性を交えながら人の生き様を炙り出すような作品。地図にも載っていない、ある島の、ある町で展開される話の中に、今まさに日本の政治で起きている問題をぶち込むところなんかはいかにも中津留章仁らしい。

トムに所属している中嶋ベンが良い味を出していましたな...どこにも居そうでありながら、この個性はなかなか貴重であります。なんと言っても彼の芝居にはいつもハートが感じられます。表現者としては当たり前のことですが、この当たり前のことが出来ていない役者さん以外と多いのですよ。来年は彼が出演する芝居をトムでも準備していますので是非自分の目で確かめて頂ければ幸いです。

それにしても、昨日の元ライオンズの山川穂高選手のソフトバンク入団会見なんなの?

そして自民党二つの派閥事務所への東京地検特捜部の家宅捜索、この異常な状況にそろそろ気付かないと日本沈没が目に浮かびますがな。

1837.jpg

師走のバラ

2023/12/18
【第1836回】

いやいや先週は怒涛の日々の連続。火曜から金曜は九州。帰京した翌日は銀座博品館で上演していた劇団NLT「二階の女」を観てきました。トムで公演した「沼の中の淑女たち」に急遽出演していただいた阿知波悟美さんが出演。この作品は昭和20年四国に疎開していた当時、愛媛新聞に短編小説として発表した獅子文六の作品を飯沢匡が脚本化した作品である。正体のしれない二階の女を象徴的に描きながら、当時の市井の人たちがてんやわんやの大騒ぎ、人生の悲哀、夫婦の愛情をユーモラスかつ厳しく描いた作品でありました。最後は第二次世界世大戦に向かう不吉な予兆を感じさせるエンディングでございました。

昨日は表参道のあるスパイラルホールで島田歌穂さんと島健さん二人によるXmas Special vol.13に出かけてきました。2009年にスタートしたこの会も13回目になるとのこと。旦那さんでもある島健さんのお洒落なピアノの音に歌穂さんが心地良い歌声を乗せながらの1時間45分。二人の篤い信頼と絆があってこそのスペシャルな時間でございました。年末を飾るにふさわしい贅沢なひとときを、皆さん味わったのではないかと...それにしてもあれだけの曲数をひとりで歌い続ける歌穂さんの日頃の体調管理、大変な努力をされているんでしょうね...頭が下がります。ラストには来年2月から再演します「モンテンルパ」の芝居の宣伝までしていただきありがとうございました。

いよいよ今年も残すところ2週間となりました。この歳になると、月日が流れるのがなんとも早く感じます。喜んでいいのか悪いのか?おいらもわかりませんことよ。

1836.jpg

師走の表参道

2023/12/15
【第1835回】

12月13日、博多西鉄ホールで風間杜夫ひとり芝居を観劇。今回の芝居は博多が舞台になっていたので満員の客席は大変な盛り上がりでした。博多弁が出てくるたびにお客さんは大喜び。愛嬌たっぷりの牛山明もラストのシーンでは客席からすすり泣きが聞こえてきました。笑いから哀愁たっぷりの男の変貌ぶりを魅せてくれるのも、千両役者だからこその芸のなせる業でございます。終演後の杜夫ちゃん、やり切ったという表情をしていました。

昨日は4年ぶりの東住吉小学校の同窓会。77歳、78歳になるおっちゃんおばさんたちなんですが皆元気でした。でも4年前に場を盛り上げた仲間の一人は昨年亡くなったとのこと、確実に年を重ねていることを実感しました。幹事の女性がコピーしてきた小学校、中学校の卒業写真を眺めていると、懐かしいあの日あの時が蘇ってきました。終戦間もない時期、貧しいながらも皆必死豆炭で生きよったばい!おいらは小学校3年生から新聞配達に励んでおりました。戌年のおいらはクンクンと鼻を効かせて博多の街を走り回り、今尚丈夫な身体を形成してくれたんだなと...小さい頃から、おきゅうと納豆売り、郵便配達、氷配達などなどよう働きよったばい。

今度はいつ会えるか?でも、こうやって幼いころの級友と会えるなんて幸せでございます。

連絡がつかず会えない人たちも、どこかで元気で幸せに過ごしていることを願って別れました。師走の夜の博多もクリスマス一色でございました。

1835-1.jpg

1835-2.jpg

おいらはどこにいるのかな?

2023/12/13
【第1834回】

長崎県大村市シーハットおおむらで、杜夫ちゃんのひとり芝居観てきました。長崎は5年ぶりかな、いつ来ても情緒あふれる坂道が多い街です。芝居のほうは絶好調!長崎のお客さんのノリで、牛山明飛んだり跳ねたり愛嬌たっぷりの演技で笑いの渦でございました。

終演後に長崎市在住の歯科医を開業している原さんに、長崎のおいしい料理をご馳走になりました。原さんとはかれこれ50年近くの付き合いかな...今は無き福岡市六本松の名物ママがやっていた「ひろ」で会ったのが最初でした、おいらはアングラ芝居の役者、原さんは九州大学の学生でした。いやまさしく青春時代でございました。酒をへべれけになるまで飲み尽くし、政治、芸術の話からエロ話まで、いくら時間があっても足りないくらいのどんちゃん騒ぎのひとときを過ごしました。そんなエネルギッシュな時間を過ごしたからこそ皆それぞれここまで生き延びてきたんですね...思案橋近くにある「かまど茶屋」、長崎に行った際にぜひ立ち寄ってくださいね!とおいらがお薦めできる素敵な店でした。

1834.jpg

機内からの富士山

2023/12/11
【第1833回】

先週の週末からよく目にする指名手配風の写真5枚。なんと自民党安倍派の幹部議員なんですが、どうみても悪代官に見えますな。なんと20年以上にわたって裏金返金制度があったというのだから血税納めている国民は怒り心頭でございます。死者に鞭打つじゃございませんが、統一教会問題、改ざん問題も含め到底許すことが出来ません。こんな政治屋ばかりだから日本の経済30年間停滞するのも当然至極。でも、帰するところは日本国民の選挙において半分棄権し、投票結果も相も変わらず自民党一党独裁を許しているんですからね...

未だに進展がない国会議員に月額100万円支給される「調査研究広報滞在費」。使途の公開や未使用分の返還を盛り込んだ議員立法も審議入りのめどすら立たない状況でございます。

どこまで国民を愚弄しているのだろう!そのうえ、裏金もらって脱税しているのだから世も末状態です。この際徹底的に叩かないと又暗黒の時代が延々と続くこと間違いないですね。

そんな中、明るいニュースも飛び込んできました。大谷選手の大リーグドジャース入団。こんな日本の若者も出現し本当に嬉しい限りです。彼の育った環境、思考、行動を参考にすれば日本も少しはましになると思います。彼の表情にすべてが現れています。野球は勿論、人間としての佇まいが、この汚れちまった悲しい世界に微かな希望の光を感じます。

たかが野球、されど野球...なるほど奥が深いです。

1833.jpg

今日の空

2023/12/08
【第1832回】

福間健二著「迷路と青空」読了。先月、健二さんの遺作の映画「きのう生まれたわけじゃない」を観て来たばかりだが、この本を読んで改めて74年間の人生、まさしく既成の概念に疑いを持ちながら自ら迷路の中に踏み込み、日々移りゆく青空の下を突き抜けていったんだなと思いました。迷路をさ迷いながら自問自答し、未知へのドアをノックし、一気になおかつ簡潔に今生きていることを肯定したい...そういうことを願っているが、なかなかそうなってくれない。その一瞬一瞬、詩を綴りながら映画を創りながら自己確認する。健二さんは詩についてこんなことを述べている。

 

詩は生きている。私は以前からそう言ってきたが、最近思うのは、生きることそのものが詩であるというように生きるにはどうしたらいいかだ。自分のためだけに生きている人生では、そうなってくれないだろう。

 

健二さんが人と関わり自然と対峙しながら、生きることと表現すること追求できるのも、この世の人でない存在も含めて感謝の気持ちを忘れずにやってきたことがうかがい知れる。

それに反して、又もや政治と金の問題が浮上し、これまでと同様時間が経てば忘れてしまうだろうなんて問答が繰り返されている。政治屋が長年はびこっているのに、未だ変化の兆しすら見えないこの国の現状に楔を打ち込めない惨状にただただ呆れるばかりだ。

こんな時は、青空とまだまだ楽しませてくれる紅葉を眺めながら、千々に乱れる怒りと諦めを諫めるしかありませんな...

1832.jpg

幻想の世界

2023/12/06
【第1831回】

昨日、すみだパークシアター倉にて劇団桟敷童子「空ヲ喰ラウ」を観劇。錦糸町から徒歩15分~20分かかるのだが相変わらずコアなファンでいつも満杯である。今回のパンフに主宰者である東憲司さんがこんなことを書いていた。

 

来年、劇団を旗揚げして25年を迎える。今考えると、あっという間だったような気がする。まさか25年も劇団が続くとは思わなかった。旗揚げ公演は1999年秋、辰巳の倉庫でだった...魚の匂いが充満していた。なにもかも手探りだった、がむしゃらだった...コン畜生、コン畜生の精神でここまで続けてきたような気がする。現在劇団員は17人...東京にたくさん劇団がある中で、この桟敷童子を選んでくれた...それだけで感謝である。この劇団は俳優だけでなく、大道具も小道具も、衣装も、音響も、制作業務もやらされるのである。本当に大変だと思う。これをいつまで続けるのであろう。そろそろ終焉を考えるようになった。しんどい...(笑)

 

おいらは芝居創りの原点を見る思いも含めて観客、プロデューサとしてこの劇団のファンである。頑張ってきたどころか、演劇界の数々の賞を受賞している点からみても今やなくてはならない劇団のひとつである。出来、不出来以前にこの劇団の人たちの情熱、心意気、純粋さがおいらにとってはたまらない魅力である。

1831.jpg

劇場近くでカワセミ発見

2023/12/04
【第1830回】

風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~最後のロマンス~」昨日、無事に東京公演終えることが出来ました。芝居が終わったあとも、まだ観たい!帰りたくないという雰囲気が漂っていました。こんなに愛されている牛山明こと風間杜夫、なんとも素敵な俳優さんです。おいらも6ステージすべて観ましたがそれぞれの趣がありました。普通、芝居は当然のことながら相手役と観客とのやり取りで成立するものですが、このひとり芝居は観客と見えない相手役とのコミュニケーションでのイレギュラー版。やはり観客の反応がその日の劇場盛り上がりを支配します。誰も手助けしてくれない杜夫ちゃん、当然のことながらその日のお客の反応を敏感に感じ取りながらドラマを進めていきます...ヤバいと思ったり、予想通り、いや、ここは違う手でやってみようなどなど...台詞を吐きながら心中穏やかじゃない状態で演じてる様が手に取るように分かります。そんなことも含めて演じ続ける風間杜夫の飽くなき探求心と遊び心に拍手を送りたい。

ベースボールシーズンも終わり、冬のスポーツと言えばラグビーですね。昨日は大学ラグビー伝統の一戦、早稲田と明治の試合が東京・国立球戯場で行われました。1923年に第1回が行われた早明戦は今年で100周年(99回目)を迎えました。おいらも1987年12月6日に旧・国立競技場、雪が舞うなかでの早明戦、よく覚えています。その後も名勝負が続きラグビー人気を盛り上げた両校の戦い、いつも楽しませてくれます。新年2日の準決勝で再び両校が相まみえるのか...勝負ごとは筋書きのないドラマ、誰にもわかりません。

1830.jpg

まだまだ燃えてます

2023/12/01
【第1829回】

今日から師走です。本当に1年はあっという間ですね。歳を重ねると、良いのか悪いのか余計にひしひしと感じる次第です。

風間杜夫ひとり芝居「カラオケマン~最後のロマンス~」東京公演、昨日で3ステージを終えることが出来ました。いやいや、日毎にエンジンがかかり満員のお客様も満足気で劇場を後にしています。なにせひとりでやるんですから、百戦錬磨の杜夫ちゃんも壁にぶち当たることもあり、日毎の体調もあり、そりゃ大変な舞台だと思います。そんな時に、おいらはプロデューサー、一観客として終演後に率直な感想を述べに楽屋に直行します。ここは長い歳月を費やし築いてきた信頼関係もあり素直に耳を傾ける杜夫ちゃん...ここが名実とも一流の役者である所以だと思います。このキャリアの役者さんのほとんどは、他人の意見を聞かず身の保身に走る傾向が多々あります。一味違う役者さんは、創っては壊しを繰り返し常に新鮮な表現を目指しながら前に進んでいます。勿論、自信があってのことだと思います。

それにしても一人で連日客席を満員にしてしまうんですから、たいしたたまげた役者さんです。

これから寒さは一層厳しくなってきます。どうか一日も早くウクライナの侵略戦争、ガザ地区での戦闘を終え、いつものように平穏なクリスマスを迎えて欲しい!演劇も平和だからこそ素敵な一日を過ごすことができるんです...

1829.jpg

師走のバラ