トムプロジェクト

2022/02/28
【第1587回】

21世紀は地球上の生き物に難問を次から次へとぶつけているような気がします...その一番登場してならない独裁者を誕生させ新たな戦争の世紀を生み出そうとしています。いまウクライナで起こっていることはその序章かもしれませんね。不安定な時に必ず怪物が現れ、一瞬にして世界を混乱に陥れてしまうこの現状を止めるには、世界の良識ある人たちが声をあげるしかありません。あのプーチン、金正恩、習近平などなど独裁で支配してる人相はどうみたって悪相、こんな人物をトップに据えなきゃならん国民も可哀そうだが選ばざるをえなかったのも国民。日頃、為政者に対して監視の目を緩めるといつだってどこだって同じようなことが起きるってことです。

日々、ウクライナの現地から流れる映像を見るにつけ居たたまれない気持ちになってきます。無益な戦いで死んでいく人達の思いもいかばかりか...

今まさにこの時、トム・プロジェクトで上演中の「芸人と兵隊」のなかで戦地の慰問団の団長(村井國夫さん演じる桂銀作)が慰問中に、相方、妻(柴田理恵さん演じる花畑良子)を戦地で亡くした後に語る台詞。 

「戦争なんぞする国のお偉方は馬鹿揃いだ。少し考えりゃ分かることなんだ。銃を持って殺しあうより、笑いあうことの方がずっと素晴らしい。そんなこともわからない奴は大馬鹿だ。そんなことも分からずに戦場に兵隊さんを送り出す奴は救いようのねえ馬鹿だ...俺はな、戦争が憎い。俺から良子を奪った、美津子から母親を奪った戦争が憎い。」

この芝居、あのあんぽんたんな独裁者たちに観せたいもんでございます。

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平和な一日のおわり

2022/02/24
【第1586回】

島本理生「2020年の恋人たち」、森あゆみ「聖子」を読了。どちらも女流作家である。この二冊に登場する主人公に相通じるものは、好きになった男にはけっして従順にならず一人の人間として己を貫き通す点ではなかろうか...いろんなタイプの男性が次から次に登場するので自分はどのタイプかな?なんて読み方もできちゃいます。この時代男女平等、好きになれば犯罪を起こさない限りとことん愛し合い、嫌いになれば別れて当然。女性目線の展開なんですが、男性が取り残されることもなく引っ張っていく筆力は大したもんでございます。「2020年の恋人たち」の主人公が恋に陥る最後の男性とスペインバルセロナに旅するシーンは、スペイン大好き人間のおいらにとっては懐かしかったな。あのラテンの国に行くと愛のチカラが倍増し、ますます非日常の世界に陥ってしまうんですね。

「聖子」、新宿の花園神社近くに存在した文壇BARを経営し、太宰治の「メリイクリスマス」のヒロインのモデルになったといわれるママ林聖子さんの話。残念ながら2018年に90歳になった時点で閉店となりました。檀一雄、吉村昭、田村隆一などなどなど昭和の文壇を飾った作家の名前が嫌味なく登場します。このママさんも当然嫌味なく名だたる小説家と対等、そして可愛く接するところがとても心地よい。

ロシア、ウクライナに侵攻の報...世界はいよいよ覇権主義と自由主義の戦いに突入いたしました。独裁者が権力を握れば好戦的になるのは必然、そしてあれほど戦争の不条理を何度も味わっている筈なのに...歴史に学ばないアホな権力者にはほとほと呆れてしまいますばい。

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新宿花園神社の梅

2022/02/21
【第1585回】

あのタモリが、なんで街のチンピラがあれほど足上がるの?で当時話題になった1961年に上映された「ウエストサイド物語」が名匠スティーブン・スピルバーグ監督によってふたたび映画化されました。正直、大変気に入りました。何故この時期に制作されたのか?

その意図は十分に盛り込められていました。アメリカが抱える分断、世界が再び戦禍に晒されようとしているときに何が大切か、映画の基本であるエンターテインメント性を失わず157分飽きさせることなく魅せてくれるんですから、さすがスピルーバーグでございます。

TV映画「激突!」、「ジョーズ」(75)、「未知との遭遇」(77)、「レイダース 失われたアーク」(81)、「E.T.」(82)、「ジュラシック・パーク」(93)、そして「シンドラーのリスト」(94)でアカデミー作品賞と監督賞を受賞。この「シンドラーのリスト」のテーマ曲いつ聴いても心に染み入ります。この監督の少年のような遊び心と平和への希求、そしてどの映画にも共通する愛の大切さ、そりゃ娯楽性に満ちた良質な映画が出来ますわ。

ほとんどが無名に近い役者を起用したのも監督の映画に対する未来へのメッセージではなかろうか...むしろ無名の若手を起用したところに新しい「ウエスト・サイド・ストーリー」が誕生したとおもいます。この映画の見どころである「トゥナイト」「クール」「アメリカ」「サムウェア」など数々の名曲とダンスシーン、監督の映像マジックで大満足。おいらはシニア料金¥1200で何だか申し訳なくなるくらいの満足度でございました。

特に印象深かったシーンは、前作にアニタ役で出演していたリタ・モレノが歌う祈りの歌 Somewhereそして様々な争いに対し「話し合えばわかるはず...」と淡々と語る台詞。御年90歳になる老優の佇まいは監督の期待に十分応えておりました。

こんな映画はやはり大きなスクリーンと迫力ある音響設備を備えた映画館で観るべし!

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スピルバーグの挑戦

2022/02/18
【第1584回】

虚と実...遅まきながら「MINAMATA」観てきました。先ずは日本国内でもドキュメンタリーで水俣を扱ったものはあるものの、テレビ、映画でのドラマはなかったジャンルを異国の人の企画で実現に漕ぎつけたことに拍手を送りたい。ジョニー・デップの強固な意志を感じる。企業が生み出す公害に対して何となく腰が引けてるこの国のありように一石を投じたことは間違いない。がしかし、映画の随所で事実と異なる点がいくつか見受けられたのが残念でならない。水俣病が発症してから66年、この長い間には企業、住民との間には言葉に尽くせない軋轢があり当事者ではないと理解できないことが今なお山積している。映画はある意味フィクションでありドラマチックに仕上げるにはいくつかの嘘を盛り込むのもわかる気がするが、この重いテーマを考えるといかがなものかとも思う。しかし、この水俣も然り、時代と共に風化していく中で問題提起したこと自体が大切なことだ。

昨日の北京オリンピックの女子フィギアスケート、ドーピング問題のなか最後にプレイしたロシアのカミラ・ワリエワ選手の演技、彼女の実力からして考えられない度重なる転倒。

彼女が3位以内に入賞すれば表彰式もなし、前に演技したロシアの二選手は3位以内入賞は決まってる中、様々な憶測が生まれる。国家がらみのシナリオなのか、彼女の心理的な動揺から起きたミスなのか...なんとも後味が悪い大会になったことは間違いない。15歳の少女の日常は家とスケートリンクの往復のみ。今回彼女を指導したエテリコーチが、クラブを「工場」、選手を「原材料」と表現したことがある。この言葉から想像するに、選手は使い捨て商品として生産される非人間的な指導の中で進行しているさまが見えてくる。

ホンマに可哀そ過ぎるワリエワちゃん。独裁国家に帰国した彼女のこれからの人生に幸あれと願いたいのだが、虚と実に塗れたこの国に対する不信感は根強いものがあるのですごく心配しちゃいます。

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ウソかマコトか

2022/02/16
【第1583回】

寒風の中お疲れさんでございます...コロナなんかどこ吹く風、路上パフォーマーは生活がかかっております。いや、のし上がって我ここにあり!と叫びたい。新宿の南口で二組が演じておりました、パントマイムのお兄さんは少し切れが悪い感じがしましたが、この寒さのなか精一杯笑顔を見せておりました。一方、福岡から出てきた二人のお兄さん、甘い声で娘さんのハートをしっかりと捉え、ライブ中継をどこぞに送っていました。自家製のCDもそこそこ売れて少しは生活の足しになったかな。今は無名かも知れないが、いつの日か全国区になるに違いないという確信を持ちながら見つめる娘さん達の眼差しが何よりも強い味方でございます。

それにしても今年の北京オリンピック、なんだかしらけちゃいますね。おかしな判定、ドーピングなどなど中国、ロシア、バッハの暗い闇からのおかしな声が漏れてきそうな感じです。

なんども言いますが、オリンピックなんかは止めちまえ!各競技、世界選手権が設定されてるんだからそこで競いあえば充分だと思うんだが...金に塗れたオリンピックいつまでやるんでしょうかね。

「芸人と兵隊」先週、ねりま演劇を観る会の公演に行ってきました。芝居の中身は一段と進化していました。この状況がこのチームの結束をさらに強固にしている風にも見えました。この日は東京23区にも大雪警戒注意報が流され開催を危惧されてたんですが、ここでも演劇の神さんは芝居を守ってくれました。終演後に待ってましたとばかり大量の雪が降りだしましたが、お客様が口々に「今日はたくさんいいもの頂いた」なんて声を聞くにつけ、あらためて芝居創ってきてよかったと思った次第でございます。

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寄ってらっしゃい、見てらっしゃい

2022/02/14
【第1582回】

もう我慢ならない...そんな気持の人達が雪解けの街に繰り出していました。久しぶりの井の頭公園も犬の散歩、若いカップル、シニア世代の人達が「コロナも収束し、今年こそはほんまもんの春来ておくれ...」なんて願いを込めぶらついておりました。いつ終わるとも知れぬコロナちゃんにはほとほと疲れ果てましたなんて顔もありました。吉祥寺の街に唯一残っていた銭湯「弁天湯」も遂に閉業してしまいました。この地で80年近く営業してたんですから地元の方に愛されていたんでしょうね。土地柄、銭湯内でロックの生演奏もやっていたとのこと、役者、絵描き、ミュージシャンがたくさん住んでいる街なので当然かもしれません。それにしても日本から銭湯が次から次に消えていきます。

おいらも少年時代、博多の末広長屋での一番の楽しみはガラの広っぱでの野球、宝劇場では三本立ての映画、そして一日の最後の楽しみは銭湯でした。湯船の中で遊んだり、親父の背中を流したり、くりからもんもんを背負ったお兄さんにびくびくしたり、裸同士の生身のニンゲンの会話に何故かそそられたものでした。好きだった女の子と鉢合わせした時は、それはまあなんだかそわそわしながら、あれこれ想像しながら湯船に浸かっておりました。男湯と女湯の区切りはあったのだが湯船の下部は20センチぐらい空いて繋がっていたので余計に湯の温度と相まってのぼせていたのかもしれません。

トム・プロジェクトでも昨年10月に銭湯を舞台にした「にんげん日記」を上演したばかりです。3人の老親友が休業していた銭湯を復活するために悪戦苦闘する話でした。生身と言う言葉が疎遠になる昨今、この言葉が一番似つかわしい銭湯が無くなっていく様を見るにつけ、昭和が霧の彼方に消えていくようでもございます。

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銭湯すたれば、人情もすたる

2022/02/09
【第1581回】

新宿の街は相変わらず雑多な街である...昔ながらの古い建物が立ち並ぶ新宿ゴールデン街、思い出横丁(随分前まではしょんべん横丁と呼ばれてました)、新宿二、三丁目辺りなんぞは野良猫にとっては居心地が良い場所である。居並ぶ飲食店からのおこぼれ、ノラちゃんをこよなく愛する心優しきおばちゃんなんかが結構面倒を見ている。この寒い日が続く昼間なんかは、お日さまの暖かいぬくもりを求め警戒することもなく顔を出す。久しぶりに拝顔するノラちゃんの表情は様々である。このコロナ禍の中、野良猫社会も生存を懸けての仁義なき戦いが繰り広げられているのではないかという痕跡を見るにつけ痛々しい。傷だらけの顔に、きつい眼差し、食料難なのか毛並みも悪い。おいらが近づくと少し警戒する様子も窺える。平和な時代には向こうから甘えるようにすり寄ってくるノラちゃんも沢山いたのだが、やはり時代環境の影響は末端の生き物にも及んでいるに違いない。

昨日、岩合光昭の世界ネコ歩きを観たのだが、フランス・ブルゴーニュ地方を呑気に散歩するネコの背景がなんとも美しい。ブドウ畑、古い小さなお城、ワインの貯蔵庫を何気なく回遊するネコの佇まいに、なんと幸せなネコちゃんたちだろうと思った次第だ。人間も同じ、どこで生まれどこで育つかによって運を左右するってわけだ。

でも、新宿のノラちゃんの必死に生きる姿にも十分学ぶものがありました。ある日の新宿ゴールデン街、千鳥足で歩くおいらに厳しい眼差しを向けるノラちゃんが「しっかり生きんかい!」思わず背筋がしゃきっといたしました。

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居眠り運転はいかんニャー

2022/02/07
【第1580回】

北京冬季オリンピックが開幕しました。選手の皆さんは、この日のために錬磨したすべてを曝け出し気持ちの良いプレーを連日見せてくれている。なのに釈然としないのは習近平、バッハの動きである。ともに権力の座をさらに延長すべく、この大会を政治利用してる気がしてならない。北京中心部にぼったくりバッハ会長の銅像まで作っちゃうんだから笑っちゃうね。台湾が入場した時の習近平の苦々しい表情、ウクライナが入場した時のプーチンの居眠り顔。あまりにも露骨じゃありませんこと。なにが平和の祭典だい!もう、オリンピックなんか止めちまえ、世界各地で現在進行形の紛争をどうにかしてからのオリンピックじゃありませんかと言いたい。ぼったくり男爵が未来永劫計画している、お金によるお金のためのオリンピックにいつまですり寄ってくるのかな...先程のニュースで中国共産党の元高官と性的関係があったと告白した女子テニス選手が告発を否定したとのこと。これもバッハが仲介し習近平にゴマすってるんじゃないかしらとの疑惑ぷんぷんでございます。

先日、新宿でうら若き女性に声を掛けられました。なんじゃろかいな?と耳を傾けると、その娘さんポケットから一枚の紙を取り出しおいらに見せつけました。「お金が無く、ドーナツもミルクも買えません。どうかお金を恵んでください。」手書きではなく印刷されてました。あらためて顔を見ると東南アジアの20歳前後の女性でした。たぶん怪しい組織に動かされてるに違いない。おいらも長年、新宿ぶらり散歩の達人をしておりますので、それくらいの見分けはできますことよ。

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梅は百花のさきがけ

2022/02/04
【第1579回】

昨日、第63回毎日芸術賞の授賞式がホテル椿山荘東京で行われました。昨年9月に上演した「帰ってきたカラオケマン」で風間杜夫さんが受賞しました。昨年の菊田一夫演劇大賞に続いての受賞。本当におめでたいことでございます。この賞の63年間の受賞者には滝沢修、宇野重吉、市川猿之助、中村吉右衛門、仲代達矢、蜷川幸雄などなどそうそうたるメンバーが名を連ねています。その中の一人になったのだからたいしたたまげた役者さんです。

人生よく運がいいとか悪いとかいいますが、間違いなく杜夫ちゃん運気を呼び込む気運を持っているんでしょうね...おいらも彼とは半世紀近くの付き合いになるのだが、酒と麻雀に明け暮れてる日々だと思っていたのだが天才はきっちりと人目につかないところで努力してたんですね。そうじゃなきゃあんな振り子の幅が広い芝居はできませんことよ。台本の読みが深いし、相手とのやり取りの間がいいし、もちろん声もよし、要望があればミュージカルだって挑戦しちゃうんだから恐るべし72歳。トムで25年間演じ続けたひとり芝居、まだまだ新作に挑戦する気概十分、多分ライフワークとして一生やっていく気でいると思います。と言うことはおいらも伴走者として走り続けなきゃいかんのですかね...

授賞式の後、いつもは盛大なパーティが開催されるのですがコロナちゃんのお陰で中止。受賞者を囲みながらの団欒がなんとも微笑ましく、賞の重さを改めて感じさせてくれる貴重な場になるのだが誠に残念...いつまで旅を続けるつもりなのかなコロナちゃん、もう十分に世界旅行を満喫したんではないかと思うんですがね。

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よっ!千両役者

2022/02/02
【第1578回】

昨日、無事に「芸人と兵隊」首都圏ブロックふなばし演劇鑑賞会で初日を迎えることが出来ました。オミクロンの爆発的な感染の中、開催にこぎつけた会員さんたちの獅子奮迅の活動には只々感謝です。役者なんぞは板の上に立ってなんぼの世界。それを支えるスタッフの皆さんも滞りなく閉幕してこその充足感でございます。まだまだスタートしたばかり、油断してはなりません...3月1日の松戸演劇鑑賞会まで一気にいきまっせ!

最近、ある演劇祭の企画概要の一部がWEBサイトに流れ話題になっています。その一文とは...「演劇が浸透していない」「人生において不必要なものにカテゴライズされてしまう」その理由のひとつとして、その要素の1つがかつて反権力が演劇や芸術の要であるかのような謂れを受け、今も根強くそのような言動が蔓延ることであるが、演劇が一般社会においてそのような印象を持たれることはその分野の未来的な展望を阻害することに他ならない。本来であればその権力というものにさえ左右されずに羽ばたけるものが、自身の構築した鎖によって自由と世界の広がりを失い、結果として今の演劇は公共、大衆というものから大きくかけ離れている...この演劇祭のスポンサーの一社が、テレビなんかにひょいひょい出演しカレーの宣伝してはるおばはん経営のホテル。おいらもこのホテルに宿泊して驚いた記憶があります。なんと客室内に南京大虐殺や従軍慰安婦問題を否定する書籍が置いてありました。いろんな考え方があるにしろここまで露骨に不特定多数人たちが宿泊する全部屋に配布することには明らかな政治的意図を感じさせずにはいられませんでした。よくは分かりませんが、今回の演劇祭このスポンサーの圧力があったのかな...

演劇にはいろんな考え方があって当然なのだが、何らかの圧力に屈しては断じていけませんことよ。

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冬の森