トムプロジェクト

2022/02/24
【第1586回】

島本理生「2020年の恋人たち」、森あゆみ「聖子」を読了。どちらも女流作家である。この二冊に登場する主人公に相通じるものは、好きになった男にはけっして従順にならず一人の人間として己を貫き通す点ではなかろうか...いろんなタイプの男性が次から次に登場するので自分はどのタイプかな?なんて読み方もできちゃいます。この時代男女平等、好きになれば犯罪を起こさない限りとことん愛し合い、嫌いになれば別れて当然。女性目線の展開なんですが、男性が取り残されることもなく引っ張っていく筆力は大したもんでございます。「2020年の恋人たち」の主人公が恋に陥る最後の男性とスペインバルセロナに旅するシーンは、スペイン大好き人間のおいらにとっては懐かしかったな。あのラテンの国に行くと愛のチカラが倍増し、ますます非日常の世界に陥ってしまうんですね。

「聖子」、新宿の花園神社近くに存在した文壇BARを経営し、太宰治の「メリイクリスマス」のヒロインのモデルになったといわれるママ林聖子さんの話。残念ながら2018年に90歳になった時点で閉店となりました。檀一雄、吉村昭、田村隆一などなどなど昭和の文壇を飾った作家の名前が嫌味なく登場します。このママさんも当然嫌味なく名だたる小説家と対等、そして可愛く接するところがとても心地よい。

ロシア、ウクライナに侵攻の報...世界はいよいよ覇権主義と自由主義の戦いに突入いたしました。独裁者が権力を握れば好戦的になるのは必然、そしてあれほど戦争の不条理を何度も味わっている筈なのに...歴史に学ばないアホな権力者にはほとほと呆れてしまいますばい。

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新宿花園神社の梅

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