2024/12/06
【第1972回】
昨日は新宿シアタートップスにて名取事務所公演「メイジー・ダガンの遺骸」を観劇。日本でも珍しいアイルランド演劇です。アイルランドはイギリスを含む周辺諸国からの侵略や差別など度重なる苦難に耐え抜いてきた歴史があり、その影響からか国民は非常に我慢強い性格をしています。同時に、負けん気が強く、ある意味でとても頑固な性格とも言えますが、正義感や責任感も強く、情に深い一面があり、自分を曲げない芯の強さがあります。気骨、もしくは奇骨の民族であり死神のような低温のユーモアを持ち、起き上がった病み犬のような痛ましい威厳を感じさせる独自の修辞を供えているユニークな国でもあります。
この日のパンフレットにプロデューサーである名取氏が「んんー、読んだけどナニがナンだかサッパリワカラン。ワカランけどやることにした。」なんてメッセージが記されていた。この正直さが、この堅苦しい演劇界に新しい風を送り活性化させているのかもしれない。訳知り顔で能書きたらたらくっちゃべってる輩より余程信用できるかも...
芝居の内容は、焼け落ちたキッチンの残骸の空間に、愛情を素直に受け止めたりできない父親、生きづらい人生を送ったために死んだ方がましだと思う母親、誰からも愛されずネグレクトされて育った弟、両親の悪い模範を見て育ったために恋人の愛情表現が暴力的になってしまう娘、この4人が激しく罵り、時には暴力をふるう様を演じて見せる。異国での物語ではあるが世界のどこの家庭でもありうる話である。
娘を演じたトム所属の滝沢花野の思い切りの良い演技が印象的でした。最近トムではあまり出番がないのですが、演劇ユニット「理性的な変人たち」を立ち上げたり客演したりと旺盛な活動を通じて目を見張るような女優になって来ているのがとても嬉しい!
幻想