トムプロジェクト

過去の作品 演劇

僕と彼_チラシ.jpg

僕と彼と娘のいる場所


【作・演出】鄭義信
【出演】須藤理彩 和田聰宏 石丸謙二郎

2007年11月21日~11月29日
紀伊國屋ホール


毎日、新聞を開くと、僕みたいな気の弱い劇作家には思いもつかないような凶悪犯罪や殺人、
事故、災害......等々、おびただしい数の事件があふれている。
だけど、「うわっ、こりゃ、ひどい」と、目をそむけたくなるような事件も、次の日、
それよりもっと悲惨な事件が起こり、昨日の事件はすっかり忘れてしまうのだ。
時々、ふっと頭の片隅に消えていたその事件を思い出し、
(そういえば、あれはどないなったんやろなぁ......)
と考えてみたりもするが、すぐまた記憶の海に沈んでいってしまう。
事件の「その後」について......当事者、あるいは当事者の家族たちの「その後」について、
新聞やニュースはつぶさに物語ってくれるわけではない。
僕たちはどんどん忘れていき、どんどん麻痺していく。「その後」のことなどはどうでもよくなってしまう。
当事者にとっては一大事であっても、世間にとっては、あっという間に砂漠の砂の一粒になってしまうのだ。
だからこそ、僕は忘れることができずにいるひとたちを...
痛みを抱えて生きつづけなくてはならなくなってしまったそのひとたちを...
そのひとたちの「その後」を......記録しようと思う......。
― 作・演出 鄭義信 ―


【あらすじ】
地方都市。夏の終わり。誇りとカビと便所からのアンモニア臭が混じった匂いの漂う古い映画館「新生劇場」が、
繁華街のはずれに建っている。
劇場主・誠二のもとには、男勝りの娘・夏海が、亭主・悟の浮気に愛想を尽かせて戻ってきていた。
夏海は地方の平穏な流れの中で、しばし心身を休めるつもりだった...が、夏海にそんな時間は訪れない。
悟が夏海を追いかけて、遠方からやってきたのだった。
悟は、反省の弁を繰り返すも夏海は取り合おうとしない。
そんな夏海の態度とは裏腹に、誠二は「うち、泊まってくかい?」「今夜、一杯いきませんか」等々、何故か娘婿の悟に優しく接する。
父と夫の態度に逆なでされた夏海は、一人声を上げて父と夫に立ち向かうも、その甲斐むなしく、悟は新生劇場に住み着くのだが......