【第364回】
もう30年、ここ新宿西口小田急百貨店前に、いつものように立っている…「私の志集」というプレートを首からぶら下げ、ガリ版刷り手作りの詩集を売っている一人の女性。30年前は初々しい乙女であったのだが、やはり30年の歳月は長い。といっても、瞳は少女の面影は十分に残している。詩集ではなく志集というところが良いじゃないですか!人にとって一番大切な志から紡ぎ出される言葉を、見知らぬ通り過ぎる人達に届ける立ち姿に癒される…場所柄、冷やかし半分で声を掛ける酔客を良く見かけるのだが、彼女は手慣れたもの、笑顔で手際よく応対する。「独身?」なんて野暮なこと質問せんで300円払って志集買わんかい!おいらは一応紳士です。「いつも、お疲れさま…」と挨拶して購入しました。早速帰りの電車で懐かしい時代を彷彿させるガリ版刷りの志集第46号「破られても」を開きました。
16ページ最後の詩「生きている」
それでも生きて
いるではないか
こんなになっても
それでもまだ
生きているではないか
彼女の、いや日本の、世界の今在る姿を見事に射影している。
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