【第368回】
木まりさん死んじゃった…新宿ゴールデン街の名物おかまさん享年74歳。みゆきという店で知り合って20年になると思う。ギョロ目をちらつかせながら、生粋の江戸弁を速射砲のごとく捲し立てる木まりさんは可愛かった。日本語の美しさを再認識させてくれる見事さであった…少年時代に男でありながら、男に憧れていく禁断の性の不可思議を、まるでおとぎ話のように聞かせてくれた。そして一流のおかまになり財を蓄えたのであるが、好きなホストにしゃぶりつくされ無一文になった話を講談調で聞かせてくれた。とにかく話術の天才であった。これぞ接客業の鏡みたいな人であった。
話の最後「…じゃんじゃん!」「はいです!」と叫び、目ん玉ギョロリ。お釜の様なかつらが持ち上がりそうな迫力であった。
ある日、白昼の新宿、坊主頭のおっさんが前から歩いてきた…目ん玉ギョロリ!あっ木まりさんだ!と思った途端に、おっさん身を隠してしまった。木まりさん素顔で見られるのは嫌だったんだろうな…木まりさんはお店で見事に演じることによって、プロの佇まいを、おいらに見せてくれたんだ…ありがとう木まりさん!
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