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【第358回】


 この一週間で、彩の国さいたま芸術劇場「海辺のカフカ」(村上春樹の原作をアメリカ人脚本家が戯曲にした)渋谷シアターコクーン「シダの群れ」を観劇。世界の蜷川演出、方や堤真一主演ということで両劇場ともたくさんのお客で溢れていた。「海辺のカフカ」は上演時間休憩を挟んで4時間。帰りの電車、埼玉から新宿行き最終電車が23時5分。終演が22時30分なので、なんとも慌ただしい…なのに、たくさんのお客が来るって事は、芝居の力業なのだろう。なんだかんだ言ってもお客が集まらないことには興業は成り立ちません事よ。
この二本の芝居を観て感じたことは、若い俳優の吐く台詞の軽さである。村上春樹、岩松了の言葉は、そうそう簡単に料理できるモノではございません。演じる役者もそれなりの想像力と人生経験がないと台詞が身体にストンと落ちてきません。身体に馴染まない言葉を、いくら並び立てても観客には届きません。だって喋ってる本人が分かんないのにお客が解るはずがありません事よ…と思いきや、この二作品に、それぞれ若き女優が身体張って台詞を投げつけていた。この開き直り、いや観念意味病に陥ったら肉体言語で勝負しちまえ!この潔さが理屈を越えて、おいらの身体を吶喊してくる…これぐらいの元気があると、こちらも受けようがあるってものだ。取り敢ず、観客席にピストル撃って届かなきゃ、こちらはどう反応していいやら困ります事よ…この女優「海辺のカフカ」土井睦月子「シダの群れ」市川美和子…「シダの群れ」風間杜夫ちゃん大人の色気ムンムンさせて楽しそうにやっとりました。終演後のお酒も又、ご機嫌でした…

 





座れば牡丹


 

2012/5/10  岡田潔