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【第536回】
西武新宿駅前に40代の美しい女性のホームレスが洋書を読んでおりました。植木を日除けにして家財道具が入ったボストンバックを背もたれにして、身体は見事なL字体になっていました。よりによって、何故こんな人混みの中のポジションを選択したのだろうか?近くに公園もあるし、静かな場所はたくさんあるはずなのに…もしや、どこぞやの女優が役作りの演技をしているのかも知れんぞや…と、もう一度確認のために観察したのだが、やはり正真正銘のホームレスらしい。知的な美貌の持ち主である彼女、普通なら、この近辺に常駐しているおっちゃんホームレスから声を掛けられてもおかしくないのだが、この端正な佇まいからして難儀なことは一目瞭然。この雑踏を行き交う、軽佻浮薄なスマートフォンピコピコながら族よりも気高い品格、人格を感じました。
その場を離れ、歌舞伎町に足を伸ばすと、新宿コマ劇場跡には30階建ての巨大なビルが建設中でありました。その前で会話している、ホームレス風の兄ちゃんと70代のお洒落でお金持ち風のおばさんの光景も不思議なものがありました。このおばちゃん暇にかまけて歌舞伎町でおもろい男を漁りに来てるんじゃないかしら?おいらがじっとみてると笑顔を返されました。「ねえ、ちょいとお茶でも飲まない…」そんな仕草にも見えました。
師走の新宿は、相も変わらず魑魅魍魎、魔界の街でありました。
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