【第697回】
今年秋の公演の演出を依頼していた高瀬久男さんが6月1日に亡くなった。享年57歳という若さである…トム・プロジェクトでは2004年「帰郷」2011年「あとは野となれ山となれ」2014年「淑女のロマンス」の演出をして頂いた。文学座の演出家である高瀬さんはアトリエ、本公演ともども、文学座の中でも革新的な作品に取り組み、淀み停滞しそうな演劇の世界に常に一石を投じる演出家でもあった。高瀬さんが演出する現場は、いつもピーンと張り詰めた緊張感で日々進行する稽古であった。稽古中に要らぬ私語、物音でも立てようなら褐!芝居に対する気概は誰にも負けないくらいのものを持っていたに違いない。だからこそ骨太で芸術性の高いものを創り出せた。でも、稽古が終わり一献傾けるときは実に柔和で、よく笑う人でもあった。そしてきりりとした顔で「歴史に学ばない演劇は駄目ですよね…」この言葉こそ、高瀬さんが死の間際まで拘っていた演劇であったのだ。
その最後の演出作品「明治の柩」が6月11日から上演される。足尾銅山にまつわる田中正造、木下尚、幸徳秋水が登場する宮本研の傑作である。
昨年の暮れ、最後に飲んだときも、この作品は是非やりたい!と語気を強めて話していましたね。
高瀬さん!おいらも気骨ある芝居好きですから、高瀬さんがやり残した大切なもの、きっちりと引き継いで創っていきますから、ゆっくりやすんでくださいね。
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