【第449回】
山田洋次監督「東京家族」観てきました。その前に八城潤一監督「ばななとグローブとジンベエザメ」銀座の昔懐かしい映画館・銀座シネパトスで観劇。映画よりもこの映画館の佇まいに感激いたしました。昭和初期を感じさせる雰囲気は、今時の気が抜けたサイダーみたいな映画は似合いませんな…中地下に映画館が三館。真ん中の通路を挟んで、串カツ屋、定食屋、居酒屋が軒を並べ調理中の油の匂い、焼き魚の煙が漂ってるんですから…「仁義なき戦い」「男はつらいよ」なんかだと最高ですね…でも、こんな雰囲気の中で人間ドラマ観ると、生きてるってことは、こんなことなんよ!てな説教臭くない感じがしていいんじゃないかしら…この映画街、近々取り壊されます。又一つ、昭和が消えていきます。
「東京家族」は新宿ピカデリー。昔は、いかにも新宿らしき旧き良き映画館だったのだが、時の流れに勝てずシネコンになってしまいました。確かに、清潔で気持ちよく観れるんですが、おいらの世代の映画小僧にとってはなんだか血が騒ぎませんな…あの昭和初期の三本立て映画を気が狂ったように観まくった博多の小便臭い映画観、東京で日々通い続けた数々の名画館。そこには、それぞれの人間が抱え込んだ事情が熱情のごとく渦巻いていました。白いスクリーンに映し出される人間模様は、あたかも己の人生の縮図の様でもあり、教養としての映画ではなく、生きることの根源を突きつけてくる劇薬であった気がしてなりません…
所で肝心の「東京家族」はどうだった?まあそうですな…シネコン映画観にピッタリ収まってるんじゃないかしら…昔観た山田洋次監督の「吹けば飛ぶよな男だが」の、とてつもないエネルギーは消滅し説明調の映画だと思います。吉行和子さんは良かった。林家正蔵、ありゃなんですかね?親の七光りはいいとして芸磨くどころか木偶の坊。橋爪功さん頑張っているんですが、いかんせん笠智衆さんの存在が大きすぎますね…まあ何事も命削って作品創っているんですから、温かい眼で観たいのだが、何事も緩く締まりのない世の中になっていますんで喝!の精神は弛めてはいけませんぞ…
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