バックナンバー第455回

451.452.453.454.455.456.457.458.459.460 >>トップへ

【第455回】


東京には不思議な喫茶店があります。今日紹介するのは渋谷の名曲喫茶ライオン。創業がなんと1926年、まさに歴史ある草分け的な名曲喫茶でござる。道玄坂を昇り右に曲がるとストリップシアター「道頓堀劇場」の前を通り抜け、いかがわしいオッチャン、兄サンの客引きをかいくぐり、いまにも崩れ落ちそうな店に辿り着くのでございます。その先はホテル街。とても名曲に相応しい環境ではありませんが、店の中に入ると帝都随一を誇る、理想的な立体音響(店内で配布されるプログラムに書いてあるんです)帝都ですぞ…いやいや、この誇大広告に負けない巨大なスピーカーが前方に聳えて居るではありませんか…スピーカーの前には歴史を刻んだLPレコードがずらりと並んでいます。おさらに針を落とす前に、店主が曲名、演奏者を紹介するんですぞ…只の喫茶店じゃございませんことよ…お喋りしているお客はおりまっせんことよ。難しい顔して曲を聴きいっている者、本を読んでる者、書きものをしている人…確か劇作家の岩松了さんもここで芝居の本書いたと言ってましたな。でも、一杯500円のコーヒーで、何時間居れるかな?5時間も6時間も居られたら店も商売ならないし…そう言えば、喫茶店のはしごをしてると言ってましたな。ライオンは名曲を聴きながら名作を生み出した処でありました。
ちなみにおいらは20代の頃、新宿の名曲喫茶らんぶる、ジャズ喫茶DIGが読書室でした。狂った様に曲に酔いしれ濫読し、夜になると新宿ゴールデン街で安酒飲みながら口角泡を飛ばし、最後は殴り合いの喧嘩になる様を見物し、いろんなことを学ばさせて頂きました。今はそんな隠れ家が少なくなりなりました…マクドナルド、スターバックスじゃ、残念ながら、この世の中変える何かは生れませんな…

 




名曲喫茶 ライオン

 

2013/3/13  岡田潔