バックナンバー第456回

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【第456回】


鬼海弘雄氏の「眼と風の記憶」を読了。鬼海さんは1945年生まれの写真家だ。この写真家が写し取った一枚から様々なドラマを感じさせる…優れた写真家は名文家でもある。この本は、出身地である山形の新聞に連載されたものだ。彼の一貫した視点は、普遍的な生活である。白黒写真の中から、これほど叙事性と叙情性の相反するものが、同時に感じとれる写真も珍しいのではなかろうか…インド、トルコ、浅草と、何処に行ってもカメラを構える視点がぶれることはない…カメラのファインダーから覗いた瞬間に、彼の想念は決まっているのである…便利になりすぎ、不自由になった資本主義の堕落に歯止めをかけるが如くシャッターを切り続ける鬼海さんに親近感を覚える。
彼の写真には、彼の故郷、山形県寒河市の木訥な想い出が詰まっている…終戦後からの日本の20年には、日本のあちこちに大切なモノがひっそりと息づいていた気がしてならない。

 




笑うおばあちゃん



大工の棟梁

 

2013/3/15  岡田潔