バックナンバー第487回

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【第487回】


京王線明大前駅の2番線ホームから鏡が消えた…上りホーム調布寄りの所に、日々鏡を覗き鞄から鋏を取り出し鼻毛を調整するひとりの紳士が居た。朝の通勤タイム午前9時に、この紳士、新宿行きの電車から明大前のこのホームに降り立ち、真っ先にこの鏡の前に立ち、いつもの儀式を3分間ばかり行うのである。ある程度の人混みの中で、鼻毛抜きの儀式を平然と行うので、なかなかの度胸の持ち主であろう…通り過ぎる人も見て見ぬ振りはしているものの、あんまり愉快なものではないはずだ…この紳士、いやこの振る舞いは紳士協定違反だということでオッサンかな?野武士然とした風貌で古武士の威厳さえ感じさせてくれるんだが、鼻毛をホームに撒き散らすなんて、こりゃいかんぜよ…風に吹かれて道行く人のお顔にピタ、お洋服にペタじゃ洒落にもならんぜよ…ホームで、相変わらず他人の気配も無視してスマートフォン操りながらの歩行馬鹿もアホなんですが、このオッチャンもいい歳して他人の視線を気にしないなんてアホですな…そんなオッチャンが愕然とした瞬間が鏡が取り外された日なのである。この日のオッチャンの悲しみ、絶望に彩られた顔は、おいらも迫真のホームドラマを見る思いであった。いつもは鼻毛もスッキリ、さあ今日も一日頑張ろうスタイルも、この日ばかりはショックのあまり近くのベンチにへたへたと座り込んでしまう始末。視線も何故か虚ろ…オッチャン何を思ったのだろうか?この一日の儀式があったからこそ、一日頑張ることが出来たのだろうか…所詮この世は不条理が顔を出す世界。オッチャン又、鏡見つけりゃいいじゃん、いや今度はトイレでの儀式にしときや…お家で身だしなみ整えるのが紳士だと思いますがね!車内でお化粧してるアホねいちゃんも然り!

 






 

2013/7/5  岡田潔