【第640回】
今年最後の公演、トム・プロジェクト20周年記念公演第六弾「萩咲く頃に」を、池袋東京芸術劇場で上演しています。3年9ヶ月前に起きた、東日本大震災を下敷きにした家族再生の物語です。この震災を扱った作品、いろいろとありますが、安易に手をつけると只単に震災を喰い物にした歪なものになってしまいます。今回の作品を書き上げた、ふたくちつよしさんも、そのことが脳裏に焼き付き、何度も推敲を重ね難産の苦しみ経た結果、今回の上演の運びと相成りました。そりゃそうです…あの震災直後、すべての人が思考停止状態に陥り、しばし呆然、先日亡くなった菅原文太さんは、山田洋次監督の「東京家族」の主演の話を断り、そのまま俳優業を辞める羽目になりました。芝居なんかしてる場合じゃありませんよ!あの惨状を目にして人間の無力をひしひしと感じました。そのことから、人は再びスイッチを入れ直し、今日まで来たのですが、道半ばというより、なんだか人の思いの多様性にかこつけながら、浮き世の流れに紛れてしまいそうな状況が続いています。日本人は忘却の民ではないかと思うことがあります。世界のある国は、過去の負の遺産を歴史に学び未来につなげる地道な生き方をしています。過去、現在、未来が常にリンクして、自己を確立する術を手にする学びをしないと、本当に不幸な未来が待ち受けているような恐怖を覚えます。
今回の芝居が、このことを気づかせ、よりよい国になるヒントになれば幸いです。12月7日まで公演してます。ちょいと覗いてみませんか?昨日は、劇場前で、童謡をジャズで演奏するパフォーマンスグループが道行く人たちを楽しませていました。
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