トムプロジェクト

2015/10/07
【第740回】

村井健が亡くなった...昨日羽田空港で知った。村井とは大学の同級生であり、半世紀に渡る同志である。彼が全共闘の闘士で、軟弱な輩に檄を飛ばしている姿は今でもくっきりと覚えている。おいらは徒党を組むのが嫌で一人で戦っていた。そんなおいらをセクトに誘うこともなく安酒飲みながら、政治、文学、演劇そして好きな女性の話なんかを口角泡を飛ばしながら話したな...秋田から出てきたお前と、博多から上ってきたおいらとは何故か気があったな。おいらの芝居観て、お前がいつも言ってたな「おまえな、なまりが取れないと役者なれないぞ...」田舎もんのお前が、なんだかアカデミックなこと言いやがって、おいらはクソと思ったよ。そう言えば、お前は良く本を読み勉強してたな...その後、而立書房から売れない戯曲をたくさん出版し、今の演劇界を支えている数多くの作家を育てたな。おいらが海外放浪の旅から帰り、再び演劇の世界に戻ったときに、真っ先に電話したのもお前だった。お前のアドバイスで、トム・プロジェクトも21年続いてるよ。お前の、演劇に対する情熱、啓眼力は演劇界の大きな推進力になっていたな。今、話題になっている演劇人も、お前の強力な後押しがあったからこそ頑張れたと思うよ。彼らの後見人でもあったお前の訃報を聞いての悲しみはいかばかりか...でも、彼らはお前の演劇に対する姿勢を受け継ぎ、硬派な芝居を創り続けていくと思う。そう言えば、お前は辛口演劇評論家で敵も多かったな。でも、そこがお前の真骨頂。決して妥協することなく69年の生涯を全うしたな。お前は偉い!

最後に、お前が、今まで住んでた横浜の地に引っ越すときに、おいらが運転手で手伝ったのは良かったのだが、スピード違反で捕まり罰金払わされたな...とんだ出費になり悪かったな。もう、お前の威勢の良い辛口批評は聞けなくて寂しいけど、お前の鋼の精神を少しは見習って、少しでも良い芝居創ることが、お前への最善の供養かもしれんな...ゆっくり休んでくれ村井。

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合掌

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